20160820夏期大脈状
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脈状の種類と意義経絡治療夏期大学研究科大上勝行
季節と陰陽
春分 夏至 秋分 冬至 春分
弦
浮洪
石
脈状とは?• 祖脈の組み合わせである• 陰陽・虚実・表裏・寒熱に置換して考える
1,浮沈①浮
浮「これを挙げて有余、これを按じて不足」 陽(表・浮)の部位での熱の停滞
• 頭痛・発熱・関節痛・腰痛・悪寒
浮の虚実• 実 陽実(洪)–外感(陽実)• 肺虚陽経実熱証・脾虚陽明経実熱証
• 虚 陰虚(芤・濡・散)• 無力而浮是血虚(陰虚)
– 肝虚熱証・腎虚熱証
洪(浮実)「極めて太く指下にあり」• 病理病証–陽経に熱が多くなったとき
• 刺法–熱のある部位を瀉す。時に瀉血する。
濡(浮虚)「極めて軟にして浮細」• 病理病証
① 下焦の陽気が虚して、陰陽ともに虚したときに現れる。腎虚寒証。② 湿邪。水のために陽気が損なわれる
• 刺法① 腎陽を補う(土)。関元の補② 脾を補う。太白、商丘、脾兪、胃兪
散(浮虚)「大にして散。散は気実血虚し、表に有りて裏になし」• 病理病証–陽虚 • 血が虚したために、気が表に集まってきているが、それもなくなろうとしている• 腎虚で三焦の元気も虚
• 刺法• 陰陽ともに補う(土・原・絡)。
芤(浮虚)「浮大にして軟。これを按じて中央空しく、両辺は実す」• 病理病証–急性期の血虚。血便・血尿などの出血。
• 刺法–陰をしっかり補う。–肝虚寒証(土)
1,浮沈②沈
沈「これを挙げて不足、これを按じて有余」• 病理病証–陰(内・裏・臓)の部での病変–有力 陰実• 気鬱・瘀血・水滞
–無力 陽虚• 寒症状・下痢
伏「極めて指を重くしてこれを按じ、骨に着きてすなわち得ん」• 病理病証–陽虚 思慮過度、慢性的な寒証–陰実 陰経や臓の部に瘀血や積聚
• 刺法–陽虚 深く刺して留め補う。置鍼。または接触鍼–陰実 深く刺して寫す。
牢「堅牢なり。沈にして力あり、動じて移らず」• 病理病証– 陰実
• 癥瘕・瘀血– 陰虚
• 腎虚熱証– 陽虚
• 肝虚寒証・腎虚寒証– 陽気が少なく、胃の気が少ないため柔らかみがない。
• 刺法– 陰陽とも補う
2,遅数
遅「呼吸に三至、去来、極めて遅し」• 病理病証–寒症状• 有力は停滞(痰・癥瘕・積聚)• 無力は虚寒(陽虚)
• 刺法–長く留める–有力な部位は寫
数「去来、促にして急」• 数は熱–有力は実火(陽実・陰実)–無力は虚火(陰虚)
• 刺法–有力なら瀉–無力は補
3,虚実
脈の虚実のみかた• 脈の力(強弱)に主眼を置く–大小–強弱–脈幅
• 気血の状態をみる
3,虚実①実
滑「往来すすみしりぞきて流利展転とし、替替然として珠の指に応ずるがごとし」.• 病理–陽気(熱)が多い 内熱–陰(水・津液・血・痰)が多い 停滞
• 刺法–陰を補い、陽のある部位、停滞のある部位を瀉す。
弦「これを按げて有ることなく、これを按ずれば弦の状のごとし」• 病理病証–陽気の発散がうまくいかない• 実(停滞) 脾虚肝実熱証• 虚 陰虚
• 刺法–虚実に応じた手技
緊「しばしば縄を切するが状のごとし」• 病理病証–陽虚 寒冷・痛み
• 刺法–陽気を補う(金・土)–脾胃を補う
3,虚実②虚
緩「去来また遅。少しく遅よりはやし」• 病理病証–本来はゆったりとした健康な脈–気血とも虚して、循環が悪くなっている
• 刺法–気を補う(金)
濇「細にして遅、往来難、短かつ散、あるいは一止してまた来る」• 病理–血虚• 血は陰液となし、多ければ滑利し、少なければ枯渇す
–気滞• 結果として瘀血もある
細「少しく微より大。常に有りてただ細きのみ」• 病理病証–気血ともに虚。胃の気も少。–各寒証
• 刺法–陰陽ともに軽くゆっくりと補う。
弱「極めて軟にして沈、細。これを按ずれば指下にて絶せんと欲す」• 病理病証–肝虚寒証• 気血ともに虚。
• 刺法–陰陽とも補う(土・絡)
微「極めて細くして軟、あるいは絶せんと欲し、有るがごとく無きがごとし」• 病理–気血ともに虚 陽虚
• 刺法–細い鍼で、使用穴も少なくし、陰陽ともに補う
革「沈と伏に似ることあり。実大にして長、微に弦」「弦にして芤。按ずれば鼓の皮のごとし」• 病理病証–肝虚寒証 陽気と精の虚–流産・遺精
• 刺法–陰を補う(金・土・絡)
4,上下の幅
長「指下に余り有りて、本位に過ぐ」• 病理–本来は健康人の脈である–胃の気のない堅い脈は病脈–気逆・火盛有余
• 刺法–内熱の瀉法–陽明経の熱を瀉す
短「長ならざるなり.両頭になく,中間にありて,本位に及ばず」• 病理–短 + 熱• 気の巡りが悪くて、熱が停滞• 湿熱(飲酒)・血滞(瘀血)・痞
–短 + 寒• 気虚、寸(頭痛)・尺(腹痛)
• 刺法–気を巡らせるように補う(金・土)
動「関上にあらわれ、頭尾なく、豆大のごとく、厥厥然と動揺す」• 病理病証–陰陽のバランスが極端に崩れたとき–痛と驚を主る
• 刺法–陰をしっかり補う• 陽盛の場合はその裏側、陰盛の場合は元気を
5,不整
促「去来が数。時に一止し、また来る」• 病理病証–血(モノ)の不足 腎虚熱証・肝虚熱証で心熱・肺熱
• 刺法–腎・肝の補(火・金)–心・肺の瀉(火の補・水)
結「往来が緩、時に一止し、また来る」• 病理病証–陰実 積・鬱–脾虚肝実瘀血証・肺虚肝実証
• 刺法–陰実の寫
代「来ることしばしば中止し、自ら還る能わず。よってまた動ず。脈結の者は生き、脈代の者は死す」• 病理病証–臓の気血津液が虚し、同時に三焦の元気もなくなろうとしている
• 刺法–陽虚
6,脈状と病理
血虚
正常
寒証 (陽虚 )
熱証(陰虚)
陰虚
陰陽とも虚
瘀血外
内
弦大沈実 沈細実脾虚肝実熱証
脾虚肝実瘀血証
肝実と肝虚肝虚熱証 肝虚寒証平肝実瘀血 肝実熱
実 虚
傷寒(正邪の争い)
正
寒
正
寒
正
寒
熱証
寒証
伝経太陽陽明少陽太陰少陰厥陰
外
穀道
肺虚太陽経実熱証脾虚陽明経実熱証脾虚肝実熱証脾虚胃実熱証
浮長弦沈
傷暑1. 虚に乗じて暑に冒される2. 熱が表に停滞して熱実 – 洪滑 陽実– 身熱・頭痛・煩躁・大渇・大汗・喜冷水・大便干結・小水赤痛– 脾虚陽経実熱証・脾虚肺熱証・脾虚胃実熱証– 火穴・金穴・郄穴
3. 汗がもれる。壮火は気を食む4. 津液 (精 )の虚、熱の内攻 – 沈細虚散 陽虚– 倦怠感・煩熱・泄瀉・食欲不振– 脾虚寒証・脾虚腎虚寒証・肝虚寒証– 土穴・金穴・絡穴– 熱があっても瀉してはいけない。補って潤す。