2018・19年度内外経済見通し...(1)見通し概要~世界経済見通しは6月予測から据え置き...

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Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved. 2018・19年度 内外経済見通し ~世界経済拡大続くも成熟段階、通商摩擦激化に警戒~ 2018.8.13

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2018・19年度 内外経済見通し

~世界経済拡大続くも成熟段階、通商摩擦激化に警戒~

2018.8.13

見通しのポイント

1

○ 世界経済は、2018年にかけ拡大基調継続、2019年も底堅く推移。ただし、成熟段階にあり、中

国経済減速やITサイクルのピークアウトから拡大モメンタムは徐々に鈍化

○世界経済は1~3月期のソフトパッチから持ち直すも、4~6月期のユーロ圏や中国の成長が鈍

化するなど、米国を除けば力強さを欠く状況

○ リスク要因は、貿易摩擦の激化、新興国不安の広がり、中東リスクと原油価格上昇など

○ 貿易摩擦については、米国が中国を中心に通商面での対外圧力を強めており、仮に米中間

の対立がエスカレートすれば、米中のみならず、世界経済の下押し要因に

○新興国不安については、米中貿易摩擦を背景に、当事国の中国および周辺のアジアに飛び

火。資金流出や通貨安で、トルコなど一部の新興国では金融問題に波及

○ 2018・19年度の日本経済は、消費増税の影響はあるものの、潜在成長率並みの回復を維持。

リスク要因はトランプ政権の保護主義政策で、自動車関連の追加関税は日本にとって影響大

○通商問題での不確実性を伴うものの、先進国を中心とした企業業績改善から株式市場には

サポート。米国中間選挙後は株価回復が多いこともサポートに

《 構 成 》

2

Ⅰ.全体概要 P 3

Ⅱ.海外経済 P 20

(1)米国経済 P 21

(2)ユーロ圏経済 P 30

(3)アジア経済 P 37

Ⅲ.日本経済 P 45

Ⅳ.金融市場 P 64

Ⅰ.全体概要

3

~米国中心に持ち直し、世界経済は底堅く推移~

(1)見通し概要~世界経済見通しは6月予測から据え置き

4

◯ 拡大モメンタムが徐々に鈍化するものの、2018年は拡大基調が継続し、2019年も底堅く推移

【 世界経済見通し総括表 】

(注)網掛けは予測値。予測対象地域計はIMFによる2015年GDPシェア(PPP)により計算。 (資料)IMF、各国・地域統計より、みずほ総合研究所作成

(前年比、%) (前年比、%) (%ポイント)

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2018年 2019年 2018年 2019年

暦年

予測対象地域計 3.6 3.4 3.9 4.1 4.0 4.1 4.0 - -

日米ユーロ圏 2.4 1.6 2.2 2.3 2.1 2.4 2.1 ▲ 0.1 -

米国 2.9 1.6 2.2 2.9 2.7 2.8 2.6 0.1 0.1

ユーロ圏 2.1 1.8 2.4 2.0 1.7 2.2 1.8 ▲ 0.2 ▲ 0.1

日本 1.4 1.0 1.7 1.0 1.3 1.1 1.1 ▲ 0.1 0.2

アジア 6.2 6.2 6.1 6.2 6.0 6.2 6.0 - -

中国 6.9 6.7 6.9 6.6 6.4 6.5 6.4 0.1 -

NIEs 2.1 2.3 3.2 2.8 2.5 2.8 2.5 - -

ASEAN5 4.9 4.9 5.3 5.3 5.0 5.3 5.1 - ▲ 0.1

インド 7.6 7.9 6.2 7.4 7.3 7.4 7.4 - ▲ 0.1

オーストラリア 2.5 2.6 2.2 3.0 2.7 3.0 2.7 - -

ブラジル ▲ 3.5 ▲ 3.5 1.0 1.5 2.5 2.0 2.5 ▲ 0.5 -

メキシコ 3.3 2.9 2.0 2.1 2.5 1.9 2.3 0.2 0.2

ロシア ▲ 2.5 ▲ 0.2 1.5 1.6 1.3 1.6 1.5 - ▲ 0.2

日本(年度) 1.4 1.2 1.6 1.2 0.9 1.2 0.8 - 0.1

原油価格(WTI,$/bbl) 49 43 51 68 72 67 72 0 -

(6月予測からの修正幅)(6月予測)

日本:成長率は18年度+1.2%、19年度+0.9%と予測

5

◯ 2018・19年度は潜在成長率並みの回復が続く見通し

‧ 2018年度は+1.2%と前回から変わらず。足元の成長率は下振れたものの、設備投資の上振れなどを見込む

‧ 2019年度は、10月の消費増税が成長率を若干下押し。輸出の減速なども加わり、成長率は+0.9%に

――― 2018年度からの成長率のゲタの上振れにより、前回(+0.8%)から小幅に上方修正

(注)網掛けは予測値。(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成

【 日本経済見通し総括表 】2016 2017 2018 2019 2017 2018 2019 2020

年度 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3

実質GDP 前期比、% 1.2 1.6 1.2 0.9 0.7 0.5 0.6 0.2 ▲0.2 0.5 0.5 0.3 0.4 0.3 0.3 ▲0.5 0.1

前期比年率、% - - - - 2.7 2.1 2.3 0.8 ▲0.9 1.9 1.9 1.3 1.6 1.4 1.1 ▲1.8 0.6

内需 前期比、% 0.4 1.2 1.1 0.9 0.6 0.8 0.0 0.3 ▲0.3 0.6 0.4 0.3 0.4 0.4 0.5 ▲0.9 0.1

民需 前期比、% 0.4 1.4 1.3 1.0 0.7 0.6 0.2 0.5 ▲0.4 0.7 0.4 0.4 0.4 0.5 0.6 ▲1.2 0.2

個人消費 前期比、% 0.3 0.8 0.9 0.7 0.5 0.8 ▲0.7 0.3 ▲0.2 0.7 0.3 0.1 0.2 0.4 1.5 ▲2.5 0.5

住宅投資 前期比、% 6.2 ▲0.3 ▲4.3 ▲0.2 0.8 1.3 ▲1.3 ▲3.0 ▲2.3 ▲2.7 1.3 1.1 1.3 1.9 ▲1.2 ▲3.8 ▲4.2

設備投資 前期比、% 1.2 3.1 3.3 2.4 0.6 0.5 1.2 0.8 0.5 1.3 0.7 0.6 0.5 0.6 0.9 0.3 0.3

在庫投資 (▲0.3) (0.1) (0.1) (▲0.0) (0.1) (▲0.1) (0.4) (0.1) (▲0.2) (0.0) (▲0.1) (0.1) (0.1) (0.0) (▲0.5) (0.5) (▲0.1)

公需 前期比、% 0.6 0.9 0.4 0.8 0.3 1.4 ▲0.5 ▲0.1 ▲0.1 0.2 0.4 0.1 0.3 0.1 0.4 0.0 0.0

政府消費 前期比、% 0.5 0.7 0.7 0.8 0.3 0.4 0.1 0.1 0.0 0.2 0.2 0.3 0.3 0.2 0.2 ▲0.1 0.3

公共投資 前期比、% 0.9 1.4 ▲0.6 1.1 ▲0.2 5.4 ▲2.9 ▲0.6 ▲0.4 ▲0.1 1.1 ▲0.6 0.3 ▲0.3 1.4 0.7 ▲0.8

外需 (0.8) (0.4) (0.1) (0.0) (0.1) (▲0.3) (0.6) (▲0.1) (0.1) (▲0.1) (0.1) (0.0) (0.0) (▲0.1) (▲0.3) (0.5) (0.0)

輸出 前期比、% 3.6 6.3 3.6 2.7 1.9 0.2 2.1 2.1 0.6 0.2 1.1 0.8 0.7 0.6 0.6 0.6 0.4

輸入 前期比、% ▲0.8 4.1 3.3 2.7 1.4 1.9 ▲1.5 3.3 0.2 1.0 0.5 0.8 0.5 1.1 2.0 ▲1.8 0.3

名目GDP 前期比、% 1.0 1.7 1.3 1.4 0.2 0.8 0.8 0.3 ▲0.4 0.4 0.8 0.3 0.1 0.6 0.4 0.2 ▲0.1

GDPデフレーター 前年比、% ▲0.2 0.1 0.2 0.5 ▲0.8 ▲0.3 0.1 0.1 0.5 0.1 0.3 0.2 0.1 0.3 0.1 0.8 0.8

内需デフレーター 前年比、% ▲0.5 0.6 0.9 0.7 0.0 0.4 0.5 0.6 0.9 0.5 1.1 0.9 0.7 0.7 0.4 0.9 1.0

前期比寄与度、%Pt

前期比寄与度、%Pt

日本:食料・エネルギーを除く消費者物価の基調は0%台半ばの伸びに

6

(注)1.網掛けは予測値。実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。2.消費者物価(税込、税抜ともに)は、2019年10~12月期、2020年1~3月期に幼児教育無償化の影響を反映している。3.経常利益は法人企業統計の全規模・全産業ベース(金融・保険を除く)。4.金融関連の指標について、無担保コール翌日物金利は期末値、新発10年国債利回りは月末値の期中平均値、その他は期中平均値。

(資料)各種統計より、みずほ総合研究所作成

【 日本経済見通し総括表(主要経済指標) 】2016 2017 2018 2019 2017 2018 2019 2020年度 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3

前期比、% 1.0 4.1 2.0 1.8 0.2 1.8 0.5 1.6 ▲ 1.3 1.2 0.8 0.5 0.5 0.8 1.2 ▲ 1.2 ▲ 0.4

10.0 6.9 5.57.3 12.5 17.9

前年比、% 2.4 2.3 2.5 1.7 1.4 2.2 2.2 1.9 3.1 4.3 2.1 1.8 1.7 1.5 1.9 1.7 1.7

% 3.0 2.7 2.5 2.6 2.9 2.9 2.8 2.7 2.5 2.4 2.5 2.5 2.6 2.5 2.6 2.7 2.6

新設住宅着工戸数 年率換算、万戸 97.4 94.6 96.2 92.5 97.2 98.7 95.5 94.8 89.2 96.8 93.9 96.2 98.5 99.3 93.7 89.8 86.9

経常収支 年率換算、兆円 21.0 21.8 20.1 17.3 21.4 20.0 23.2 23.6 18.7 22.0 20.6 19.1 17.4 15.9 14.7 18.7 18.5

前年比、% ▲ 2.4 2.7 2.3 1.8 0.9 2.1 2.8 3.3 2.5 2.6 2.9 2.1 1.4 0.9 0.8 2.8 2.7

前年比、% - - - 0.8 - - - - - - - - - - - 0.9 0.9

前年比、% ▲ 0.2 0.7 1.0 0.8 0.2 0.4 0.6 0.9 0.9 0.7 1.1 1.0 1.0 0.8 0.6 1.0 1.1

前年比、% - - - 0.4 - - - - - - - - - - - 0.1 0.1

前年比、% 0.3 0.2 0.4 0.6 0.1 0.0 0.1 0.3 0.5 0.3 0.4 0.4 0.5 0.4 0.4 0.8 0.8

前年比、% - - - 0.1 - - - - - - - - - - - ▲ 0.1 ▲ 0.1

% ▲ 0.06 ▲ 0.06 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.06 ▲ 0.07 ▲ 0.06 ▲ 0.06 ▲ 0.06 ▲ 0.07 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05

% ▲ 0.05 0.05 0.08 0.10 0.07 0.04 0.05 0.05 0.06 0.04 0.08 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

円 17,520 20,984 23,400 24,700 19,241 19,503 19,880 22,188 22,366 22,341 22,800 24,000 24,500 25,000 24,700 24,200 24,700

円/ドル 108 111 109 106 114 111 111 113 108 109 110 108 107 107 106 106 105

ドル/バレル 48 54 69 74 52 48 48 55 63 68 69 70 71 72 73 75 76WTI原油先物最期近物

対ドル為替相場

日経平均株価

新発10年国債利回り

無担保コール翌日物金利

鉱工業生産

経常利益(下段:特殊要因除く)

名目雇用者報酬

前年比、% ▲ 1.622.626.6 0.9 0.5▲ 1.40.80.20.0 0.7 ▲ 3.1

完全失業率

国内企業物価

   〃  (除く消費税)

生鮮食品を除く消費者物価

   〃  (除く消費税)

生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価

   〃  (除く消費税)

▲ 0.1 1.8 6.7

(2) 世界経済の全体観~ 4~6月期は米国を中心に持ち直し

7

◯ 世界経済は1~3月期のソフトパッチから持ち直すも、米国を除けば力強さを欠く状況

‧ 4~6月期の成長率は日米が持ち直すも、ユーロ圏や中国は成長鈍化

‧ 製造業の景況感も欧州を中心に鈍化傾向

【 日米欧中の四半期GDP成長率 】 【 グローバル製造業PMI 】

(資料)各国統計より、みずほ総合研究所作成 (資料)Markitより、みずほ総合研究所作成

48

50

52

54

56

58

14 15 16 17 18

世界

先進国

新興国

(Pt)

拡張

←景気→

縮小 (年)

企業の景況感

は鈍化傾向

6.0

6.2

6.4

6.6

6.8

7.0

7.2

▲1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ

2016 2017 2018

米国

ユーロ圏

日本

中国(右目盛)

(前期比年率、%) (前年比、%)

(四半期)

(年)

日米は

持ち直し

ITサイクル:足元で在庫調整圧力が強いのは、半導体よりも液晶パネル

8

◯ 在庫調整に陥っている電子部品・デバイスの内訳をみると、半導体以上に電子部品の出荷在庫バランスが悪化

‧ 電子部品の在庫はここ2カ月前年比+70%超え。出荷は7カ月連続の前年比マイナス

――― 半導体の在庫も積み上がっているが、出荷は春節の影響が出た2月を除けば前年比プラス傾向を維持

◯ 電子部品のうち、スマホやテレビの販売不振を背景に液晶パネルの調整圧力が増大

‧ 中国系メーカーを中心に、大型パネルの生産が増加し供給過剰に。32型パネルの価格は直近急落

▲ 200

▲ 150

▲ 100

▲ 50

0

50

100

150

13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1

半導体 電子部品

(前年比%Pt)

(年/月)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

15/1 16/1 17/1 18/1

(米ドル/枚)

(年/月)

【 電子部品、半導体の出荷在庫バランス 】 【 テレビ用液晶パネルの推移 】

(注)半導体は、半導体素子、集積回路、半導体部品を合成。(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成 (資料)日経NEEDS FQ より、みずほ総合研究所作成

電子部品の悪化が顕著

ITサイクル:半導体への需要は底堅く、在庫調整への過度の懸念は今のところ不要

9

◯ 世界半導体売上高はいまだ+20%近傍の高い伸び率を維持。中国の輸入伸び率も高原状態

‧ 価格が低下しても、実質ベースの増加が継続

◯ 半導体需要はB to CからB to Bにシフトしつつあり、需要が大きく底割れする懸念は小さい。在庫調整への過度の懸念は

今のところ不要

‧ ただし、前年比+20%から伸び率が高騰するわけではなく、2019年まで緩やかに伸び率減速と予想

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

30

15/1 15/5 15/9 16/1 16/5 16/9 17/1 17/5 17/9 18/1 18/5

価格要因

数量要因

名目伸び率

(前年比、%)

(年/月)

▲ 40

▲ 20

0

20

40

60

80

05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

中国 半導体輸入 米国半導体輸入

世界半導体売上高

(前年比%)

(年)

【 世界半導体売上高 】 【 米中の半導体輸入 】

(資料)CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

半導体売上高は未だ+20%近傍で推移減速というより高原状態

(資料)CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

中国の輸入が大幅増

中国との報復合戦激化。EUとは通商交渉を模索する動きも 最先端技術を巡る中国との覇権争い激化。日本への影響懸念

(3) 通商問題 ~米中貿易摩擦は続く

10

《対米投資規制》《輸入関税》

(資料)みずほ総合研究所作成

《輸出規制》

(6/1)EU・加・墨へ制裁発動

(4/4)【中】対抗措置案(4/2)【中】対抗措置発動

(7/4)EUに自動車関税の撤廃を提案

3月

4月

5月

6月

(6/22)【EU】報復関税(28億ユーロ)WTO次第で36億ユーロ追加

(6/1)【EU】WTO提訴

(6/19)【中】対抗措置を取ると警告(6/19)【米】上記警告に対し、2,000億ドルを追加制裁

(6/26)【EU】7月に鉄鋼輸入制限へ

(4/3)中国製品500億ドルの対象案を公表

(6/15)中国製品500億ドルの制裁措置公表340億ドル(7/6)、160億ドル(8/23)

(6/18)追加制裁の対象を2,000億ドルへ拡大

7月 (7/6)中国製品340億ドルに追加関税

(6/15)【中】即日、報復を表明(6/16)【中】同規模の対抗措置を発表

(7/6)【中】即時、報復発動

(6/2・3) 第3回米中通商協議

(3/23)鉄鋼・アルミ追加関税

(5/31)譲歩国を対象除外

(3/12)トランプ大統領がクアルコムの買収(※1)に禁止命令

(※1)シンガポールに本社を置く通信用半導体大手ブロードコムによる米半導体大手クアルコムの買収

(4/30)EU・加・墨の猶予延長

(6/26)トランプ大統領はCFIUS(対米外国投資委員会)の権限強化と審査厳格化により対米投資を規制する方針を表明。議会審議中の法案成立を待つ

最先端・基盤技術の保護を目的に上下両院で輸出管理規制の強化について審議中

(6/8)【EU】米国と貿易摩擦緩和の枠組みを構築することで合意

(6/18)対米投資規制・輸出規制の強化法案、上院通過(※2)

(6/26)下院通過(※2)

(6/26)トランプ大統領は現行制度の枠組みで輸出管理規制の強化を図る方針を表明

(※2)上下両院の調整待ち

(5/3・4,17・18) 第1・2回米中通商協議

(4/5)中国製品1,000億ドルの追加制裁検討

(3/22)知的財産の侵害に対する対抗措置として中国製品500億ドルへの制裁を表明

(7/5)【EU】合意の姿勢示す

(7/11)【中】反撃すると警告

(7/10)2,000億ドルの追加措置案(9月以降)(7/25)米欧追加関税留保で合意

8月 (8/1)追加2,000億ドルの関税率25%に

2018年

グローバル:相互依存が進む米中、全面対立になれば影響は深刻

11

①早期解決シナリオ

・中国が米国の要求を受け入れる中国経済への影響を懸念し米国製品の輸入を拡大米国の対中直接投資も受け入れを拡大

・米国は対中制裁を解除し、対立解消

②貿易摩擦激化シナリオ

・米国は輸入制限を拡大、投資制限も追加関税の対象を対中輸入全体に拡大、中国の対米直接投資の制限も発動

・中国は抵抗措置を発動し、こう着状態に米国製品600億ドルと制裁の追加対象に

③全面対決シナリオ

・中国は追加関税に加え、質的対抗措置米企業の対中投資・M&Aを制限輸入検査の厳格化などの非関税障壁米国製品の不買運動人民元安誘導、米国債売却などで対抗

・米国は制裁強化を実施、対立が長期化

(注)グラフの輸出は12カ月移動平均の年率換算値。また直接投資は取得原価ベース。 (資料)米国商務省、各種報道より、みずほ総合研究所作成

米国

(輸出)約5,000億ドル(直投残高)約400億ドル

(輸出)約1,300億ドル(直投残高)約1,080億ドル

中国

米国の対中制裁

対象輸入額 追加関税 時期 対象品目等

輸入

340億ドル25%

7/6~ 産業機械航空機等160億ドル 8/23~

2,000億ドル10%→25%

(9月)食料品衣料品等

3,000億ドル 中国の追加措置後

投資 CFIUS(対米外国投資委員会)による対米投資制限

中国の対米制裁

対象輸入額 追加関税 時期 対象品目等

輸入

340億ドル25%

7/6~ 大豆、化学品

自動車等160億ドル 8/23~

600億ドル 米国の追加措置後

質的対抗措置

(非関税障壁)

・米国製品の輸入検査の厳格化

・米企業が絡むM&Aの阻止

・米国製品の不買運動 等の可能性

今後の展開【 米中間貿易 】

【 米中間投資 】

1,330

億ドル

5,210

億ドル

0

100

200

300

400

500

600

06 08 10 12 14 16 18

(10億ドル)

(年)

中国の対米輸出

米国の対中輸出

1,076

億ドル

395

億ドル

0

20

40

60

80

100

120

140

06 08 10 12 14 16

(10億ドル)

(年)

中国の対米直接投資残高

米国の対中

直接投資残高

▲ 0.35

▲ 0.30

▲ 0.25

▲ 0.20

▲ 0.15

▲ 0.10

▲ 0.05

0.00

カナダ

米国日本ドイツ

オーストラリア

台湾中国マレーシア

シンガポール

韓国香港タイフィリピン

ベトナム

インドネシア

インド

メキシコ

ブラジル

ロシア

南アフリカ

トルコ

先進国 アジア 中南米 その他

米国による対中2000億ドル関税の影響

米国による対中500億ドル関税の影響

中国による対米500億ドル関税の影響

米国による鉄アルミ関税の影響

(各国GDP比、%)

グローバル:500億ドルの影響限定的も、自動車関連へ波及などエスカレートには警戒

12

◯ 米国の鉄アルミ関税、米中相互の500億ドル相当の輸入関税の影響は、グローバルな輸出サプライチェーンに対し限定的

‧ アジアでは、米国の対中関税により中国向けの部材供給に影響は集中するが、輸出の押し下げは限定的な試算

‧ ただし、対中2000億ドルや自動車関連まで制裁が及ぶ場合、サプライチェーンを通じた輸出への直接的影響のみならず、

不透明感の増大を通じた投資や消費への間接的な影響が出る可能性が高まり、成長率の下振れが増幅されるリスク

【 関税措置と輸出の関係(右図の試算対象) 】 【 関税措置による輸出の下振れ(試算) 】

(注)需要の価格弾性値は1、付加価値貿易の構造はTiVA最新年の2011年から不変と前提。(資料)OECD TiVA、IMF World Economic Outlook Databaseより、みずほ総合研究所作成(資料)みずほ総合研究所作成

アジアなど

鉄・アルミ関税

対中関税

対米関税

部材供給

500億ドル相当

500億ドル相当

部材供給

加工組立

2000億ドル相当

加工組立

グローバル:不透明感による企業マインドの悪化から世界経済の下振れリスクも

13

◯ 米中貿易摩擦の先行きは依然不透明。こう着状態が続く間は、先行き懸念が株式相場の重荷に

米中の貿易摩擦が激化する場合、中国へのマイナスの影響が大きく、中国発の不安に留意の要

◯ 懸念されるのは企業マインド。貿易摩擦がエスカレートし、設備投資の抑制をもたらせば、世界経済の減速要因に

【 貿易摩擦の影響に関する試算 】【 米中貿易が20%減少した場合のGDPへの影響 】

(みずほ総合研究所モデル)

(注)投資、消費への影響、第三国への波及効果を含む試算。アジアに中国は含まない。

(資料)みずほ総合研究所「新興国不安を高める米保護主義」(2018/4)より、みずほ総合研究所作成

モデル(試算した機関)

影響(世界GDP)

前 提

IMF ▲0.5%

●米国による鉄鋼(25%)、アルミニウム(10%)、中国製品500億ドル(25%)、中国製品2000億ドル(10%)、自動車(25%)への追加関税、ならびに各国の対米報復を想定●各国の投資への影響も考慮

みずほ総合研究所 ▲1.0%●米中間貿易の20%減少を想定(米中貿易において輸入の価格弾性値=0.8、関税25%引き上げに相当)●各国の投資、消費への影響も考慮

OECD ▲1.4%

●米国、中国、欧州が、世界に対して関税等の貿易コストを10%引き上げた場合の影響●3地域の輸入が7~11%程度減少(価格弾性値が0.7~1.1程度)●各国の投資への影響も考慮

(注)IMFの試算は、影響が最大となる時点の値。(資料)みずほ総合研究所「新興国不安を高める米保護主義」(2018/4)、IMF「G-20

SURVEILLANCE NOTE」(2018/7)、OECD「Making Trade Work for All」 (2017/5)、OECD「OECD Economic Outlook」(2016/11)より、みずほ総合研究所作成

▲ 3.5

▲ 3.0

▲ 2.5

▲ 2.0

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

中国

米国

アジア

日本

中南米

その他

欧州

世界

(GDP比、%)

米国:追加関税はGDP比0.6%の「増税」。貿易相手国の対抗措置で米輸出にも悪影響

14

◯ 米追加関税では特に米自動車市場に大きな影響。貿易相手国の対抗措置により農水産品等の輸出にも打撃

‧ 乗用車関税(20%)が実施されれば、輸入乗用車は1台当たり6,000ドル弱の値上げに。部品関税も同様

‧ さらに自動車部品関税では、米国内での自動車生産コストが平均4%上昇(乗用車~大型トラックまで)

‧ 貿易相手国の対抗措置は幅広い分野にわたり、特に米国の主力輸出品である農水産品に焦点

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0

20

40

60

80

100

120

140

鉄・アルミ

$48bn

第一弾

$34bn

第二弾

$16bn

第三弾

$200bn

乗用車

$177bn

部品

$233bn

対中制裁 自動車

(10億ドル) (GDP比、%)

(注)表中の数字は通関統計より集計した2017年の米国の輸入額で公表値と異なる点に注意(特に自動車部品)。

(資料) 米国商務省より、みずほ総合研究所作成

【 追加関税の負担 】 【 主要貿易相手国の対抗措置 】

(注)✔は農水産品及びその関連。金額は2017年の米国からの当該国・地域向け輸出額。(資料) 米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成

鉄鋼・アルミ関税への対抗措置(EU、中国、カナダ、メキシコ)

対中制裁第一弾への対抗措置(中国)

鉄鋼

アルミ・同製品

鉄鋼製品

各種の化学工業品

各種の調整食料品

飲料、アルコール等

原子炉、ボイラー等

石鹸等

穀物、穀粉等

船舶等

紙等

家具等

プラスチック・同製品

食用果実等

4,9163,6932,3321,4571,3431,1621,1561,1281,1001,021

958876862821758

28,071

採油用の種及び果実等 12,869

自動車等 12,854

穀物 1,349

魚、甲殻類等 1,236

綿・綿織物 1,049

肉 522

食用の果実等 488

食品工業で生じるくず 414

酪農品 409

動物性生産品 269

野菜、果実等の調整品 232

飲料、アルコール等 184

たばこ 163

食用野菜、根菜等 48

肉等の調整品 40

✔✔

✔✔✔

✔✔✔

自動車・部品関税が実施された場合の日本の輸出企業の負担額(みずほ総研試算)乗用車 80億ドル自動車部品 38億ドル

(参考)鉄鋼・アルミ関税の負担額は4億ドル

500億ドル分

自動車関税の影響:米国での現地生産台数は日本からの輸出の2倍の規模

15

◯ 台数ベースでは、米国での現地生産分が輸出の2倍を占める規模

‧ 足元では現地生産は拡大基調にあり、一見すると、追加関税に対する耐性が高まっている状況

◯ しかし、米国向け自動車輸出は5.5兆円(部品含む、2017年)と、日本の輸出(78.3兆円)の7%程度のシェアを占める。

20%の自動車関税がかかれば1兆円を超える負担になる計算に(5.5兆円×0.2)

(資料)貿易統計、日本自動車工業会より、みずほ総合研究所作成

【 自動車の対米輸出と現地生産台数 】

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1996 98 2000 02 04 06 08 10 12 14 16

米国生産台数

輸出台数

(万台)

(年)

【 輸出額の構成(2017年) 】

(資料)貿易統計より、みずほ総合研究所作成

他地域向け・他品目53.0兆円

米国向け(品目計)15.1兆円

自動車+部品15.7兆円

米国向け自動車+部品

5.5兆円

自動車関税の影響:現地生産車であっても、部品への追加関税で影響大

16

◯ 米国で販売されている日本車のうち、米国産が半分強(メキシコ・カナダ産も加えれば4分の3程度)に上る計算

◯ もっとも、現地生産であっても、部品内生化率(米国・カナダ産部品の割合)は6割程度であり、部品課税が直撃する形

‧ 米国メーカーとそん色ないが、関税による負担増は不可避

(注)1. 左図の<>内は2017年の販売台数シェア。試算にあたり、モデルごとの価格差は反映されていないことに留意。2. 米国運輸省交通安全局が公表している車種別の生産情報と、自動車情報サイトGoodCarBadCar等に記載の車種別販売台数を対応させて作成。同一ラインにおけるモデルごとの販売台数が得られない場合は、便宜的にモデル数で按分して推計している。

3. 日系と米国系メーカーのそれぞれ販売台数上位50種(販売台数の90~95%程度をカバー)を集計。考慮したブランドは下記の通り。日系:Toyota, Lexus, Nissan, Infiniti, Mitsubishi, Honda, Acura, Mazda, Subaru米国: Buick, Cadillac, Chevrolet, GMC, Ford, Lincoln, Chrysler, Dodge, Fiat, Jeep, (Teslaは上位50種に入らず)

(資料)米国運輸省交通安全局(NHTSA)、GoodCarBadCar、各種報道より、みずほ総合研究所作成

【 米国自動車市場における各国メーカーの供給構造(2017年、試算値) 】

最終組立地の構成 内生化率:米・カナダ産の部品が占める割合(加重平均)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

日系

<39%>

米国系

<41%>

米国カナダ・

メキシコ日本

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

日系 米国系

全体 米国産

(4)高まる新興国不安~ 新興国で資金流出、株価も下落

17

◯ 新興国向け投資は急速に先細り、春先からは資金を引揚げる動き

‧ 新興国株は2015年以来の下落局面

▲ 60

▲ 40

▲ 20

0

20

40

60

05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

株式投資

債券投資

新興国向け投資

(10億ドル)

(年)

リーマンショック後

テーパータントラム

2度の人民元ショック

米国大統領選挙後

資金流入↑

↓資金流出(引揚げ)

2018/4~7

【 新興国向け証券投資 】 【 新興国株指数の推移 】

(注)IIF推計値の3カ月移動平均。2018/6~7は速報値。(資料) IIFより、みずほ総合研究所作成

(資料) MSCIより、みずほ総合研究所作成

80

90

100

110

120

130

140

150

160

10 11 12 13 14 15 16 17 18

(2010/1/1=100)

(年)

新興国株

(MSCIエマージング)

新興国懸念は、米中貿易摩擦を背景に、当事国の中国および周辺のアジアに飛び火

18

◯ 新興国株は、当初は中南米を中心に下落していたが、その後はアジアも下落し、特に中国が軟調

◯ 新興国通貨をみても、4~6月は中南米通貨を中心に下落したが、7月以降はアジア通貨の下げが目立つ

‧ トルコリラは春先から足元まで継続的に下落

85

90

95

100

105

110

115

120

125

17/7 17/9 17/11 18/1 18/3 18/5 18/7

(2017/6/30=100)

(年/月)

ダウ平均

中東欧株

中南米株

アジア株

上海総合

【 株価の推移 】

(資料) Thomson Reuters、MSCIより、みずほ総合研究所作成

【 対ドルレートの月間変化率 】

(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

▲20

▲15

▲10

▲5

0

5

10

トルコ

中国ベトナム

韓国インドネシア

タイインド

台湾マレーシア

ロシア

香港フィリピン

シンガポール

南アフリカ

ブラジル

アルゼンチン

メキシコ

4月 5月 6月 7月(%)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

トルコ

パキスタン

アルゼンチン

南アフリカ

マレーシア

インド

メキシコ

インドネシア

ブラジル

中国

フィリピン

タイ

ロシア

2018年初の外貨準備に対する比率

直近の外貨準備に対する比率

(%)

資金流出や通貨安で、トルコなど一部の新興国では金融リスク上昇

19

◯ 資金流出や通貨安を受け、巨額の対外債務や経常赤字を抱える新興国では外貨繰りが窮地に

‧ アルゼンチンは既にIMFに支援要請、パキスタンも後に続くとの観測があり、トルコも外貨不足が強まっている様子

◯ 通貨防衛のため急ピッチで利上げしたトルコとアルゼンチンでは、利払い負担が大幅に上昇

‧ 今のところアジアの利上げは限定的だが、債務/GDP比率が高いため一定の利上げ幅に対して利払いが増えやすい構造

‧ アジアについては、利上げに対する潜在的なリスクは大

▲ 1

0

1

2

3

4

5

6

7

香港

中国

韓国

マレーシア

タイ

トルコ

南アフリカ

ブラジル

ロシア

インド

メキシコ

インドネシア

アルゼンチン

年初来の政策金利変更に基づく変化

金利が1%上昇した場合の変化

(%Pt)【 対外資金必要額(経常赤字+短期債務償還)の試算 】 【 利払い負担(GDP比)の変化の試算 】

(注)1.短期債務償還と経常赤字は、2018~20年のIMF予想平均。2.1に基づく対外資金必要額について、外貨準備(年初および直近)に対する比率を図示。

(資料) IMFより、みずほ総合研究所作成

(注)1.政策金利の変更が借入金利に完全に伝わると前提し、「非民間部門の総債務×金利変化幅÷GDP」として試算。実際は、固定金利借入があるため、試算ほどには利払い負担は高まらない可能性に留意。

2.中国の金利は7日物リバースレポレート、トルコは後期流動性貸出金利とした。(資料) BISより、みずほ総合研究所作成

アルゼンチンは既に外貨不足で5月にIMFへ支援要請(6月に承認)

外準が急減し、国外からの外貨調達の必要が強まる 高レバレッジのため、

1%の利上げに対し利払いが増えやすい

Ⅱ.海外経済

20

~米国は堅調、ユーロ圏やアジアは拡大ペース鈍化~

(1)米国経済~ 堅調な景気拡大と物価安定併存、年内あと2回の利上げを予想

21

○ 2018年4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.1%と高い伸び。4%台は2014年7~9

月期以来。個人消費と設備投資がけん引役。外需の寄与度も高いが、輸出の一部に追加関

税実施前の駆け込みが出ている

○ 2018年、2019年の成長率見通しは+2.9%、+2.7%で、共に前回(6月)から上方修正(+0.1%

Pt)。足元の経済活動は極めて良好。今後も堅調な雇用・所得の伸びが続き、消費を支える。

GDP統計改訂により個人貯蓄率が大幅に上方修正され、「借り入れ主導の消費」という懸念が

払しょく。元利返済負担も低く、消費・景気の持続性の強さを確認

○ コアPCEデフレーター上昇率は、昨年前半に生じた携帯関連物価の下押し要因が剥落、前年

比ベースで2%近傍に回帰。しかし4%の高成長下でもなお2%を上回る強いインフレ圧力は

みられず、2%の物価目標が「天井」になっている。FOMCは年内2回の利上げを実施し、利上

げ局面終了と展望

○ 先行きにはアップサイド・リスク(インフレ・リスク)と3つのダウンサイドリスク:①人手・設備不

足による減速(ボトルネック・リスク)、②通商摩擦による投資抑制(トランプ・リスク)、③地政学

問題や新興国市場の不安定化に伴う金利や為替のボラティリティ増大(グローバル・リスク)

米国:堅調な景気拡大が続く。物価は安定

22

◯ 2018年、2019年の実質GDP成長率は前年比+2.9%、+2.7%。前回6月見通しからいずれも上方修正(+0.1Pt)

‧ 2018年7~9月期も3%台の高い成長を見込むが、その後は2%台後半~2%弱へと緩やかに減速

――― 潜在成長率を上回るペースでの拡大が続く

‧ コアPCEデフレーター上昇率は2%近傍で推移。物価安定と景気の堅調さを背景に、年内あと2回の利上げを予想

【 短期見通し総括表 】

(注)網掛けは予測値。(資料)米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成

2017 2018 2019 2017 2018 2019

暦年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

実質GDP 前期比年率、% 2.2 2.9 2.7 1.8 3.0 2.8 2.3 2.2 4.1 3.0 2.6 2.7 2.5 2.3 1.9

個人消費 前期比年率、% 2.5 2.6 2.5 1.8 2.9 2.2 3.9 0.5 4.0 3.2 2.4 2.3 2.3 2.1 2.1

住宅投資 前期比年率、% 3.3 0.6 2.5 11.1 ▲ 5.5 ▲ 0.5 11.1 ▲ 3.4 ▲ 1.1 ▲ 2.0 5.0 3.0 3.0 3.0 3.0

設備投資 前期比年率、% 5.3 6.7 5.1 9.6 7.3 3.4 4.8 11.5 7.3 3.1 5.4 6.2 4.5 4.7 4.0

在庫投資 前期比年率寄与度、%Pt 0.0 ▲ 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.8 0.2 1.0 ▲ 0.9 0.3 ▲ 1.0 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.3 ▲ 0.2 0.0 ▲ 0.2

政府支出 前期比年率、% ▲ 0.1 1.8 4.0 ▲ 0.8 0.0 ▲ 1.0 2.4 1.5 2.1 3.4 4.0 6.0 4.7 2.0 1.0

純輸出 前期比年率寄与度、%Pt ▲ 0.3 0.1 ▲ 0.3 ▲ 0.1 0.1 0.0 ▲ 0.9 ▲ 0.0 1.1 ▲ 0.3 ▲ 0.5 ▲ 0.5 ▲ 0.4 ▲ 0.2 ▲ 0.1

輸出 前期比年率、% 3.0 5.0 3.6 5.0 3.6 3.5 6.6 3.6 9.3 2.8 2.8 3.5 3.5 3.7 3.2

輸入 前期比年率、% 4.6 4.4 5.0 4.8 2.5 2.8 11.8 3.0 0.5 4.2 5.7 6.1 5.7 4.4 3.3

失業率 % 4.4 3.9 3.6 4.7 4.3 4.3 4.1 4.1 3.9 3.8 3.7 3.6 3.6 3.5 3.5

個人消費支出デフレーター 前年比、% 1.8 2.0 1.7 2.0 1.6 1.6 1.8 1.9 2.2 2.2 1.9 1.7 1.6 1.6 1.7

食品・エネルギーを除くコア 前年比、% 1.6 1.9 1.7 1.8 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9 2.0 1.9 1.8 1.7 1.7 1.8

米国:力強い拡大が続き、1年後には米史上最長の景気拡大を達成に

23

◯ 足元の米国経済は財政政策の追い風を受け、潜在成長率を上回る勢いで拡大

‧ 2018年4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.1%(前年比+2.2%)、1.8%の潜在成長率(CBO)を上回る伸び

‧ 2018年8月時点で景気拡大期間は110カ月目、過去2番目の長さ

【 米国の実質GDP成長率 】

(注)潜在成長率は前年比、実績は前期比年率。 (資料)米国商務省、NBER、Blue Chip Economic Indicatorsよりみずほ総合研究所作成

▲10

▲8

▲6

▲4

▲2

0

2

4

6

8

10

1980 85 90 95 2000 05 10 15 20

(前期比年率、前年比、%)

(年)

92カ月 120カ月 73カ月 2019/6に120カ月で過去最長に並ぶ

潜在成長率

実質GDP成長率

減税

米国:4~6月期のけん引役は消費と設備投資。外需も貢献したが、米通商政策の影

24

◯ 消費(前期比年率+4.0%)と設備投資(同+7.3%)は高い伸び。輸出も好調だが、一部は追加関税前の駆け込みの可能性

‧ 消費と機械・知的資産投資は減税がサポート。建設投資(除く住宅)は原油高が掘削投資を押し上げ

‧ 海外経済に減速懸念が燻る中、輸出(同+9.3%)も好調。ただ農産品が前期比2割増、対中制裁関税を避ける動きを示唆

‧ 堅調な最終需要(同+5.1%)を背景に在庫投資寄与度は大幅マイナス。在庫投資には抑制トレンド

【 米国の実質GDP成長率 】

(注)棒グラフは寄与度。(資料)米国商務省よりみずほ総合研究所作成

(注)在庫投資と純輸出の白抜き欄は水準(10億ドル)。(資料)米国商務省よりみずほ総合研究所作成

前期比年率% 2018.Q2 寄与度 2018.Q1

実質GDP +4.1 - +2.2

個人消費 +4.0 +2.69 +0.5

住宅投資 ▲1.1 ▲0.04 ▲3.4

設備投資 +7.3 +0.98 +11.5

在庫投資 ▲27.9 ▲1.00 +30.3

純輸出 ▲849.9 +1.06 ▲902.4

 輸出 +9.3 +1.12 +3.6

 輸入 +0.5 ▲0.06 +3.0

政府支出 +2.1 +0.37 +1.5

国内最終需要 +3.9 - +1.9

GDPデフレーター +3.2 - +2.0

1.52.3

1.9

1.81.8

3.0 2.8

2.3

2.2

4.1

▲2

0

2

4

6

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2

2016 2017 2018

住宅投資 政府支出

純輸出 在庫投資

設備投資 個人消費支出

実質GDP

(四半期)

(年)

(前期比年率、%、%Pt)

米国:楽観論が強い家計・企業経営者

25

◯ 雇用増を背景に家計では所得期待が強まっており、中小企業経営者の間でも「業容拡大の好機」と考える割合が急増

‧ 特に企業マインドの改善は、1980年以降でも最高水準。景気拡大後期のマインド改善という点でも初めての動き

‧ ただし、米通商政策がもたらす不透明感が、センチメントを冷え込ませるリスクが残存

【 消費者の所得期待 】

(注)半年後の所得が「増加する」と回答した割合と「減少する」と回答した割合の差。(資料)コンファレンスボードよりみずほ総合研究所作成

【 中小企業の業容拡大期待 】

(注)「今が業容拡大の好機」と答えた中小企業経営者の割合。(資料)NFIBよりみずほ総合研究所作成

▲20

▲10

0

10

20

30

40

1970 75 80 85 90 95 2000 05 10 15

(%Pt)

(年)

悲観的

楽観的

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1980 85 90 95 2000 05 10 15

(%)

(年)

米国:高貯蓄率が示唆する金融危機の後遺症。見方を変えれば消費・景気の持続力大

26

◯ 金融危機後の米銀の貸出抑制や先行き不安で個人貯蓄率が高止まり。一方、貯蓄率が高い分だけ景気拡大の余力も大

‧ 金融危機の前後で個人貯蓄率の平均水準に格差(2000-2007:4.7%、2008-直近:6.9%)⇒金融危機ショック

‧ 一方、規制緩和によって米銀(コミュニティバンク)の貸出が積極化すれば、貯蓄率には下げ余地が生まれることに

‧ 米家計の債務返済負担は金融危機前と比べて低位推移(←低金利と堅調な所得の伸び)。追加的な借入余力を示唆

【 米個人貯蓄率 】

(注)網掛けは景気後退。(資料)米国商務省、NBERよりみずほ総合研究所作成

(注)網掛けは景気後退。元利返済額÷可処分所得。GDP統計改定による影響を反映。

(資料)FRB、米国商務省、NBERよりみずほ総合研究所作成

【 米家計の債務返済負担 】

0

2

4

6

8

10

12

2000 05 10 15

(%)

(年)

改定後

改定前

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

6.5

7.0

7.5

2000 05 10 15

(%)

(年)

消費者信用

住宅ローン

米国:完全雇用・物価安定の達成目前のFRB。年内あと2回の利上げ

27

◯ 金融政策の正常化を進めるFRBは、完全雇用・物価安定という「2つの使命」達成が目前。年内はあと2回の利上げを予想

‧ 政策金利誘導レンジは足元1.75~2.00%。FRB保有債券残高も昨年10月から自然減(条件付)、累積1,685億ドル減少

‧ 直近の失業率は3.9%(7月)と低水準。コアPCEデフレーター上昇率(前年比)は1.9%(6月)となり、2%の物価目標近傍

(注)FF金利は誘導水準もしくは誘導レンジ上限。(資料) FRBより、みずほ総合研究所作成

【 政策金利とバランスシート 】【 2つの使命:完全雇用と物価安定 】

(注)インフレ率は食品・エネルギーを除く個人消費支出デフレーター上昇率(前年比ベース)。(資料) 米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0

2

4

6

8

10

12

2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

(%) (前年比、%)

(年)

インフレ率(右目盛)

2%近傍

失業率

20年ぶりの低水準

0

1

2

3

4

5

6

2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

(%、兆ドル)

(年)

FF金利:2015/12に最初の利上げ

保有債券残高

2017/10縮小開始

累積1685億ドル減

利上げは年内で終了

漸進的利上げ継続

米国:緩和スタンスからの脱却準備を声明文で示した6月FOMC

28

◯ 6月声明文で、「(名目)中立金利よりも低い水準に政策金利を留める」というこれまでの方針を削除

‧ 声明文にある「長期水準」とは、長期的に完全雇用と物価安定が達成された状況下の政策金利で、中立金利を意味する

‧ 「金融政策は緩和的」との文言は残っているが、これも早晩、見直される公算が大

【 FOMC声明文で示されている政策スタンスと先行きの方針(フォワードガイダンス) 】

5月FOMC声明文 6月FOMC声明文金融政策は緩和的・The stance of monetary policy remains accommodative.

金融政策は緩和的

利上げは漸進的・The Committee expects that, with further gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace in the medium term and labor market conditions will remain strong.・Economic conditions will evolve in a manner that will warrant further gradual increases in the federal funds rate.

利上げは漸進的≪1つの文章に集約≫・Further gradual increases in the target range for the federal funds rate will be consistent with sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term.

政策金利は、しばらくの間、長期水準を下回る・The federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run.

≪中立金利よりも低い水準に

政策金利を留める方針を削除≫

実際の金利政策は条件次第・In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective.・The actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.

実際の金利政策は条件次第≪2つめの文章を削除≫

(資料)FRBより、みずほ総合研究所作成

米国:実質中立金利やフィリップス曲線は追加利上げ余地が少ないことを示唆

29

◯ 実質中立金利には改善がみられるが依然としてマイナス圏の可能性。フィリップス曲線がスティープ化している証左なし

‧ LWモデル及び修正モデルによる実質中立金利の推計値は改善方向だが、後者は依然マイナス圏内

‧ 金融危機後のフィリップス曲線は失業ギャップに対するインフレ率の感応度低下とインフレ率の長期水準低下を示唆

‧ フィリップス曲線に足元スティープ化している様子はみられず。コアインフレ率も2%目標が「天井」となっているような動き

▲2

▲1

0

1

2

3

4

5

6

1960 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 10 15

(%)

(年)

修正モデル

LWモデル

レーガノミクスによる実質金利の上昇

欧州債務危機による安全資産需要の増大

リーマンショックによる安全資産需要の増大

トランプノミクスによる実質金利の上昇

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

▲5 ▲4 ▲3 ▲2 ▲1 0 1

(%)

(%Pt)

失業率ギャップ

コアインフレ率

●は2008年~直近

○は2001年~2007年

フラット化

Y切片が下方シフト

【 実質中立金利 】

(注)コアインフレ率は前期比年率上昇率の後方4半期移動平均値。(資料) 米国労働省、CBOより、みずほ総合研究所作成

フィリップス曲線のY切片は失業ギャップゼロ

=経済が安定成長しているときのインフレ率(長期インフレ率)

【 フィリップス曲線 】

(注)Laubach=Williamsモデル及びその修正モデルについて、NY連銀HP上に公開されているRプログラムを用いて推計(一部、プログラムを修正)。2018Q2のGDP・物価統計を反映。対数尤度はLWモデル:-520.5、修正モデル:-418.7であり、修正モデルのほうが「もっともらしさ」が高い。

(資料) LW論文(2003)、小野(2016)より、みずほ総合研究所作成

(2)ユーロ圏経済 ~景気拡大は途切れないが、成長率の再加速は見込み難い

30

○ 2018年4~6月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.3%と、天候など一時的要因の影響も

あって低下した1~3月期(同+0.4%)を更に下回る期待外れの結果。背景には、投資の低調

さ、輸入の強さ(外需寄与度がマイナス)

○ 足元で企業業況は改善し、夏場以降もユーロ圏の景気拡大が途切れていないことを示唆。た

だし、景気の先行指標の改善には一服感が生じており、ユーロ圏が2017年のような高成長を

再び謳歌することは期待し難い。みずほ総研では、ユーロ圏GDP成長率が2018年に+2.0%、

2019年に+1.7%と予測、両年とも前回6月時点からは下方修正

○ ユーロ圏の賃金上昇率は高まりつつある。ドイツの強めの賃金交渉の結果を踏まえると、当

面、ユーロ圏全体でも高めの賃金上昇率が見込まれる。一方、トレンド・インフレ率には上昇

の兆候がうかがわれず、値上げに対する企業の慎重姿勢は解消されていない。ユーロ圏の

コア・インフレ率は、引き続き緩慢な上昇ペースにとどまる

○ ECBは、2018年6月の政策理事会で、同年12月の資産購入終了を発表。最初の利上げは

2019年9月の預金ファシリティ金利の引き上げ。他方、基調インブレ率の上昇ペースは緩や

かで、物価動向次第で利上げ時期が後ずれする可能性も

ユーロ圏:景気拡大が続くが、2017年並みの高成長は期待出来ず

31

◯ ユーロ圏成長率は2018年が+2.0%、2019年が+1.7%と予測。いずれも6月見通しから下方修正

‧ 2018年は、4~6月期の下振れ、足元の景気指標を踏まえた7~9月期の下方修正を反映したもの

‧ 2019年の成長率は18年より低下し、巡航速度への回帰が鮮明に

‧ コア・インフレ率は、見通し期間を通じて、緩慢な上昇ペースにとどまる

【 ユーロ圏短期見通し総括表 】

(注) 網掛けは予測値。(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

2016 2017 2018 2019

暦年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

実質GDP 前期比、% 1.8 2.4 2.0 1.7 0.6 0.7 0.7 0.7 0.4 0.3 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4

内需 前期比、% 2.2 1.8 1.8 1.8 0.1 0.9 0.3 0.2 0.7 0.4 0.3 0.4 0.5 0.5 0.5 0.4

個人消費 前期比、% 1.9 1.7 1.4 1.5 0.4 0.5 0.4 0.2 0.5 0.3 0.3 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4

総固定資本形成 前期比、% 3.7 2.9 2.5 2.7 ▲ 0.5 2.0 ▲ 0.1 1.4 0.3 0.3 0.6 0.7 0.7 0.7 0.7 0.8

政府消費 前期比、% 1.8 1.2 0.9 0.8 0.1 0.5 0.5 0.3 0.1 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2

在庫投資 前期比寄与度、%Pt ▲ 0.0 ▲ 0.0 0.2 0.2 0.0 0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.3 0.3 0.2 ▲ 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.0

外需 前期比寄与度、%Pt ▲ 0.3 0.8 0.3 0.0 0.5 ▲ 0.1 0.5 0.5 ▲ 0.3 ▲ 0.1 0.1 0.0 0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0 0.0

輸出 前期比、% 3.0 5.5 3.7 4.5 1.6 1.1 1.5 2.4 ▲ 0.9 1.0 1.3 1.2 1.2 1.0 1.0 0.9

輸入 前期比、% 4.0 4.2 3.3 4.9 0.6 1.5 0.5 1.4 ▲ 0.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.1 1.1 1.0

消費者物価指数 前年比、% 0.2 1.5 1.6 1.5 1.8 1.5 1.4 1.4 1.3 1.7 2.0 1.6 1.5 1.4 1.5 1.5

食品・エネルギーを除くコア前年比、% 0.9 1.0 1.1 1.4 0.8 1.1 1.1 0.9 1.0 0.9 1.0 1.2 1.3 1.3 1.4 1.5

2018 20192017

ユーロ圏:4~6月期の景気拡大ペースは緩やか

32

◯ 4~6月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.3%と、1~3月期(同+0.4%)から小幅に低下

‧ ユーロ圏の需要項目の内訳は未公表だが、投資が勢いを欠いたと推察されるほか、外需寄与度はマイナスとなった模様

――― 資本財販売は5月にかけて2カ月連続で減少し、機械投資の弱さを示唆。一方、建設業生産には底堅さ

――― 輸出は復調するも、その増加率は輸入の増加率を下回ったとみられる

‧ 主要国では、フランス(同+0.2%)やイタリア(同+0.2%)は低成長が継続。スペイン(同+0.6%)は堅調だが成長率は低下

――― フランスの弱さは、一時的要因(天候やストライキ)が下振れ要因

【 ユーロ圏の投資関連の一致指標 】【 ユーロ圏・主要国のGDP成長率 】

(資料) Eurostat、各国統計局より、みずほ総合研究所作成(注) 資本財販売は、名目販売額を生産者物価(資本財)でデフレートしたもの。(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2

2014 15 16 17 18

ユーロ圏 ドイツ フランス

イタリア スペイン

(前期比、%)

(年/四半期)98

100

102

104

106

108

110

112

2016/5 16/8 16/11 17/2 17/5 17/8 17/11 18/2 18/5

ユーロ圏建設業生産

ユーロ圏資本財販売

(2015/1=100)

(年/月)

ユーロ圏:景気拡大ペースの顕著な加速は見込み難い

33

◯ 夏場の企業業況、景気の先行指標は、7~9月期の景気拡大ペースが4~6月期と同程度であることを示唆

‧ 7月のユーロ圏合成PMIは54.3と6月(54.9)から低下。発表元Markit社によると受注改善の勢いが鈍い

‧ 7月のユーロ圏企業の雇用見通しDIは高水準を維持するも頭打ち感。雇用増勢の加速は期待薄

‧ 銀行からみたユーロ圏企業の固定投資向け資金需要は軟化

――― 欧州委ユンケル委員長と米トランプ大統領の会談を受け、EU・米国間の通商を巡る事態の更なる深刻化は回避。

ただし、今後の通商交渉の着地点が予想しづらい中、通商面における不確実性は残存

【 ユーロ圏企業の資金需要 】【 ユーロ圏企業の雇用見通し 】

(注) 今後3カ月の雇用見通し。(資料) 欧州委員会より、みずほ総合研究所作成

(注) 直近の調査期間は6/18~7/3。(資料) ECBより、みずほ総合研究所作成

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

2016/7 17/1 17/7 18/1 18/7

製造業 サービス業 全産業(DI、%pt)

(年/月)

▲ 50

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

2011 12 13 14 15 16 17 18

企業の銀行借入需要

固定投資向け資金需要

(DI、%Pt)

増加↑

借入需要

↓減少

(年)

ユーロ圏:インフレ率は2%へ。一方、コア・インフレ率は1%にとどまる

34

◯ 食品・エネルギー物価の上昇により、7月のユーロ圏インフレ率は前年比+2.1%に上昇

‧ 天候要因を背景に食品物価は更に上昇する可能性も。ヘッドラインのインフレ率には上振れリスクあり

‧ 7月のコア・インフレ率は前年比+1.1%。6月(同+0.9%)より上昇したものの、旅行など一時的要因の影響に注意が必要

――― 同月の財物価(除くエネルギー・食品)は同+0.5%(6月同+0.4%)、サービス物価は同+1.4%(6月同+1.3%)。

この内、サービス物価は、パック旅行などが大幅な押し上げ要因

‧ 今後の為替・原油変動がコア・インフレ率に及ぼす影響は、ある程度相殺され、総じてみれば限定的

(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

(注) 2017年以降のユーロ実効レートと原油価格が、16年末から一定だった場合と実績値(18年Q3以降はみずほ総研の予測値に基づく)の通りだった場合とで、ユーロ圏コア・インフレ率に及ぼす影響を試算したもの。

(資料)Eurostat、ECBよりみずほ総合研究所作成

【 為替・原油変動がコア・インフレ率に及ぼす影響 】【 ユーロ圏のインフレ率 】

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

2017/7 17/10 18/1 18/4 18/7

ユーロ圏インフレ率コア・インフレ率エネルギー・食品・アルコール・煙草(右目盛)

(前年比、%) (前年比、%)

(年/月)

▲ 0.10

▲ 0.05

0.00

0.05

0.10

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

2017 18 19

ユーロ高の影響

原油高の影響

(乖離、%Pt)

(年/四半期)

ユーロ圏:ECBは、当面政策を据え置き、最初の利上げは2019年9月

35

◯ ECBは、6月の政策理事会にて資産購入策の年内終了を発表、当面は政策効果を見極めへ

‧ 「少なくとも2019年の夏まで」政策金利を低位に据え置くことをECBは約しており、9月頃の利上げがメインシナリオに

――― ただし、基調インフレ率の上昇がみられなければ、利上げ時期が遅れる可能性あり

【 ECBの金融政策見通し 】 【 基調インフレ率の推移 】

(資料) ECB、Eurostatより、みずほ総合研究所作成

(注)基調インフレ率は、コアCPI、10%刈込平均CPI、スーパーコア(Bloomberg推計)、旅行関連を除くコアの4つの基調インフレ率指標のレンジを示したもの。折れ線は平均値。

(資料)Eurostat、Bloombergより、みずほ総合研究所作成

-20

0

20

40

60

80

100

▲0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

2015 16 17 18 19

ECBの毎月資産購入額(右目盛)限界貸出金利主要リファイナンスオペ金利預金ファシリティ金利コアインフレ率

(みずほ総研の見通し)

(10億ユーロ)(%)

(年)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

2013 14 15 16 17 18

(%)

(年)

ユーロ圏:10月前後の政治リスクに注意

36

◯ 10月以降は、①ブレグジット交渉が大詰め、②イタリア予算協議、③ドイツの州議会選挙などイベントあり

‧ ブレグジット協議については、2019年3月29日の離脱期限に向けて政治情勢が流動化するリスクも

‧ イタリアでは、来年度の予算協議が始まり、欧州委とイタリア新政権の対立が深まる可能性

‧ ドイツのバイエルン州選挙では、CSUやAfDの得票率が焦点に

◯ こうした中でECBは資産購入を縮小させる予定であり、イタリアなど国債利回りは上昇しやすい地合い

【 10月前後の欧州の政治日程 】

(資料)各種報道等より、みずほ総合研究所作成

2018年9月20日 非公式EU首脳会合:ブレグジットに関する協議(於ザルツブルグ)

9月27日 イタリア・新たな中期財政・経済見通しの伊議会提出期限

9月30日~10月3日 英・保守党党大会(於バーミンガム)

10月から ECB、資産購入額を毎月150億ユーロへ半減の予定

10月14日 ドイツ・バイエルン州の州議会選挙

10月15日 イタリア、2019年度予算案の欧州委員会への提出期限

10月18日 EU首脳会合:ブレグジット交渉大筋合意目指す

10月29日 欧州委、イタリア予算案に対する意見公表期限(注)

12月13・14日 EU首脳会合:ブレグジット交渉大筋合意の事実上の期限か

12月末 ECB、再投資を除く資産購入を終了の予定

2019年3月29日 英国のEU離脱協定の締結期限

(3)アジア経済~ 2019年にかけ景気拡大ペースは緩やかに減速

37

○ 中国では、2018年4~6月期の成長率が3四半期ぶりに減速。金融リスク防止の構造調整な

どから内需を中心に景気は減速局面。そのうえ、米中貿易摩擦で先行き不透明感強まる

○ 今後の中国については、先行き不透明感に対して金融緩和と財政積極化で対応する方針が

示され、成長率のソフトランディングを図る見通し

○ 中国を除くアジアでも、4~6月期の成長率は多くの国で低下。各国別にみると、輸出に関して

は概ね堅調だが、内需に関してはNIEsで振るわない一方、ASEANおよびインドでは堅調な模

様で方向感が割れる。インドネシアとフィリピン、インドは利上げ実施

○ 今後の中国を除くアジアでは、中国の緩やかな減速やITサイクルのピークアウトを受け、輸

出を中心に総じて景気拡大ペースは鈍る。内需依存度の高いインドネシアとフィリピン、イン

ドについては、利上げが成長を抑制する要素

○ アジア全体で2019年にかけ景気拡大ペースは緩やかに減速

アジア:中国、NIEs、ASEAN、インドとも緩やかに減速へ

38

◯ 中国は、金融リスク防止の構造調整や貿易摩擦で不透明感が高まるが、景気対策を打ち出しており緩やかな減速へ

◯ NIEsは、中国の減速やITサイクルのピークアウトを受け、輸出を中心に緩やかに減速

◯ ASEANも、総じて緩やかに減速。NIEsと同様に輸出が鈍化し、内需依存度の高いインドネシアとフィリピンでは利上げがマ

イナス要素。ただし、インドネシアについては来年の国政選挙に向けた関連支出が景気を下支え

◯ インドは、高額紙幣廃止等の影響が一巡して2018年に成長率がいったん持ち直し、利上げの影響で2019年は小幅減速

【 アジア経済見通し総括表 】

(注) 実質GDP成長率(前年比)。網掛けは予測値。平均値はIMFによる2016年GDPシェア(購買力平価ベース)により計算。(資料)各国統計より、みずほ総合研究所作成

(単位:%)

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

6.4 6.2 6.2 6.1 6.2 6.0

中国 7.3 6.9 6.7 6.9 6.6 6.4

NIEs 3.5 2.1 2.3 3.2 2.8 2.5

韓 国 3.3 2.8 2.9 3.1 2.8 2.6

台 湾 4.0 0.8 1.4 2.9 2.4 2.3

香 港 2.8 2.4 2.2 3.8 3.5 2.4

シンガポール 3.9 2.2 2.4 3.6 3.2 2.7

ASEAN5 4.6 4.9 4.9 5.3 5.3 5.0

インドネシア 5.0 4.9 5.0 5.1 5.2 5.2

タ イ 1.0 3.0 3.3 3.9 3.8 3.0

マレーシア 6.0 5.1 4.2 5.9 5.5 4.9

フィリピン 6.1 6.1 6.9 6.7 6.3 6.2

ベトナム 6.0 6.7 6.2 6.8 6.9 6.6

インド 7.0 7.6 7.9 6.2 7.4 7.3

(参考)中国・インドを除くアジア 4.2 3.8 3.9 4.5 4.4 4.1

(参考)中国を除くアジア 5.4 5.4 5.7 5.3 5.8 5.6

アジア

(注)矢印は方向感のイメージ。(資料)みずほ総合研究所作成

アジア:足元で成長率が低下した国が多い

39

◯ 2018年4~6月期の成長率は、1~3月期に比べて低下した国が多い

‧ 輸出は概ね堅調だが、一部で投資が減速。インフラの弱さ(中国)、住宅の規制強化(韓国)、設備投資一服(台湾)等が背景

◯ 一方、ASEAN主要国のインドネシアでは、4~6月期の成長率は上昇し、輸出と消費が堅調

◯ インドは、4~6月期の成長率は未公表ながら、内需が堅調な模様

◯ 中国は金融をやや緩和したのに対し、インドネシア(5月以降、1%Pt)、フィリピン(同)、インド(6月以降、0.5%Pt)は利上げ

【 実質GDP成長率 】 【 主要国の内外需動向 】

(資料)各国統計、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

輸出消費投資

コメント

中国・輸出は機械系を中心に前年比二桁増が続く・7月の輸入車減税前の買い控えもあり、小売りは停滞・インフラ関連を中心に投資は停滞

韓国・輸出は船舶中心に鈍化したが、主力の半導体は好調・雇用環境は悪化するも、インフレ抑制等が消費下支え・住宅および設備投資は減速

インドネシア・資源関連需要増で輸出拡大・インフレ抑制、雇用環境の改善が消費下支え・投資の伸びは高水準を維持するも低下

インド・輸出は5~6月に前年比二桁増・自動車販売と資本財生産は消費と投資の堅調示唆

(単位:前期比年率、%)

10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6

韓国 2.9 4.0 2.6 5.7 ▲ 0.8 4.1 2.8

台湾 2.6 1.9 2.7 4.0 4.8 0.8 3.1

香港 4.6 3.5 3.5 2.9 3.4 8.7 ▲ 0.9

シンガポール 9.7 ▲ 1.5 2.8 11.2 2.1 1.5 1.0

タイ 3.2 4.8 5.3 4.0 1.9 8.1 N.A.

マレーシア 5.5 6.9 5.1 7.2 4.2 5.6 N.A.

フィリピン 7.6 5.4 8.2 6.9 5.6 5.9 5.3

(単位:前年比、%)

中国 6.8 6.9 6.9 6.8 6.8 6.8 6.7

インドネシア 4.9 5.0 5.0 5.1 5.2 5.1 5.3

ベトナム 6.7 5.2 6.3 7.5 7.7 7.5 6.8

インド 6.8 6.1 5.6 6.3 7.0 7.7 N.A.

201820172016

中国:投資や消費を中心に減速、輸出は好調も先行き下振れ懸念が強まる

40

◯ 中国の株安・通貨安は米中貿易摩擦への懸念が影響。実体経済に2015年人民元ショック時ほどの弱含みはみられない

‧ 6月にみられた消費の停滞感も、7月からの輸入車値下げを前にした買い控えが一因

‧ 経済指標はトレンドを上回っており、景気の下振れが「中国売り」を拡大させた2015年ほどの弱含みは観測されていない

◯ しかし、投資はインフラ関連を中心に伸びが急速に鈍化。中国経済は、今後、停滞感が生じる可能性がある

◯ 好調な輸出も貿易摩擦を背景に下振れ懸念。中国政府は金融・財政による景気の下支えを強める方針

▲ 0.20

▲ 0.15

▲ 0.10

▲ 0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

▲ 0.03 ▲ 0.02 ▲ 0.01 0.00 0.01 0.02 0.03

2012/1

2013/1

2014/1

2015/1

2016/1

2017/12018/1

拡張減速

停滞 回復

2018/6

(トレンドから上振れ)

(トレンドから下振れ)

(%Pt)

(%Pt)

▲0.5

0.5 輸入

トレンド

(%Pt)

▲0.2

0.2 小売

トレンド

(%Pt)

▲0.1

0.1 投資

トレンド

(%Pt)

▲2.0

2.0

12 13 14 15 16 17 18

輸出

トレンド

(年)

(%Pt)

【 中国のビジネスサイクルクロック 】<景気動向指数(推計)>

(注) 景気動向指数は、生産、社会消費品小売総額、固定資産投資、輸入、求人倍率、企業収益の6指標についてそれぞれ基準化・トレンド除去・外れ値処理などを実施後、同一ウェイトで合成。Y軸はトレンドからの上振れ・下振れ、X軸は循環成分の時系列変化(前月差)。

(資料) 中国国家統計局、中国海関総署等より、みずほ総合研究所作成(注) Y軸はトレンドからの上振れ・下振れを示す。輸出は景気動向指数(推計)に含まれない。(資料) 中国国家統計局、中国海関総署等より、みずほ総合研究所作成

<主要指標> 全体として底堅いも

小売・投資が弱含み輸出・投資が落ち込み

停滞感が

生じる可能性

中国:2018年後半以降、地方債発行加速などによりインフラ投資をテコ入れ

41

◯ 地方債発行の減少や環境規制の強化等を背景に、2018年4~6月期の実質インフラ投資は前年割れ

‧ 適正化を進めるPPP(官民連携)は、2018年に入って計画数が減少に転じるも、実行数は着実に増加

◯ 今後、7月の国務院会議で、外部環境の不確実性に対処するために「積極的財政政策をさらに積極化する」との方針を明

示。減税・手数料削減に加え、地方専項債券の発行加速によりインフラプロジェクトの前倒しを目指す

‧ 2018年の地方債発行総額は4.4~4.5 兆元程度と見積もられているが、年前半の発行額は1.4兆元にとどまる

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

30

35

2012 13 14 15 16 17 18

電気ガス水道

運輸・倉庫

水利、環境・公共施設管理

インフラ投資

(前年比、%)

(年)

【 実質インフラ投資 】 【 地方債発行額 】

(注) 2015年前半の発行額が小さいのは、地方政府による起債が認められたのが2015年(予算策定は2015年3月全人代)であったことが一因とみられる。

(資料) 中国国家統計局、中央国際登記結算有限責任公社より、みずほ総合研究所作成

(注) 固定資産投資価格指数(建築)により実質化。(資料) 中国国家統計局より、みずほ総合研究所作成

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

2015 2016 2017 2018

(億元)

(年)

【 政治局会議で示された金融政策等に関する方針 】

(資料) 「中共中央政治局召开会议」(『人民网』、2018年8月1日)等より、みずほ総合研究所作成

中国:金融政策を従来に比べ緩和方向に転換する方針

42

◯ 7月31日開催の政治局会議で、 「穏健な」金融政策を実施する方針を公表。年初に示された「穏健中立な」金融政策から

変化し、緩和方向に進んでいた最近の金融政策運営を追認

‧ 既に3回にわたる預金準備率の引き下げや、大規模なMLF実施などを通じ、「合理的で十分な」流動性を供給

‧ シャドーバンキング規範化の制度整備を進める一方、それに伴う企業の資金調達への悪影響を軽減する措置を実施

政治局会議で示された内容 年初来の措置

金融政策

・穏健な(※従来は「穏健中立な」)金融政策を堅持・資金供給の門をしっかりと見張る(※従来は「しっかりと管理する」)・合理的で十分な(※従来は「合理的で安定的な」)流動性を維持する

・預金準備率の引き下げを3回実施(1月、4月、7月)・5,000億元規模のMLFを実施(7月)

金融リスクの防止

・リスク防止の取り組みを、実体経済への貢献とより良く結びつける・デレバレッジに揺るぎなくしっかりと取り組む・(デレバレッジの)度合いとペースを首尾よくコントロールし、各種政策公表のタイミングを適切に調整する

・商業銀行の貸倒引当金の要求水準を引き下げ(3月)・「資産管理業務の規範化に関する指導意見」の公表(4月)・MLF実施時に必要な担保となる対象債券を拡大し、AA格付け、AA+格付けの企業債(従来はAAA格付けのみ)等も対象に(6月)

アジア:IT輸出の伸びは緩やかにピークアウトへ

43

◯ 半導体輸出の伸びは、2017年をピークに、2018年以降は鈍化を予測

‧ 韓国の半導体輸出は減速するも、主力とするメモリの需要は底堅いため、他国に比べて高い伸びを維持

――― 半導体は、供給不足改善やスマホ販売の伸び悩み等で価格が下落しており、数量でなく価格主導で輸出減速へ

‧ 台湾、シンガポール、マレーシアの半導体輸出については、世界的な半導体市場の成長率低下に合わせて減速

‧ ベトナムやフィリピンでは、対内直接投資の増加を背景とする電子電機輸出の急拡大が一服へ

▲20

0

20

40

60

80

2014 15 16 17 18 19

韓国台湾シンガポールマレーシアWSTSによる半導体市場の成長率

予測値

(前年比、%)

(年)

【 半導体市場の伸び、半導体輸出の見通し 】

(注)名目ベース、「半導体」はHS8541、8542。(資料)各国統計、Comtradeに基づく実績値、WSTS(世界半導体市場統計)

の予測値を元に、みずほ総合研究所作成

【 電子電機輸出に関するアジア主要研究機関へのヒアリング内容 】

(注)みずほ総研の提携先であるLG経済研究院等、アジア各国の主要研究機関にヒアリング。(資料)みずほ総合研究所作成

項 目 概 要

2018年前半までの半導体需要の評価

・世界経済の回復、第4次産業革命関連部門が需要けん引・スマホの高度化も半導体好調の背景・データセンター関連メモリの需要増加が年前半需要増の主因

2018年後半以降の予測

・伸びは緩やかに鈍化の可能性、急激な縮小の可能性は小さい・減速するも、既に受注も出ており、大幅減速は見込みにくい・2019年にかけて減速を見込む。WSTSの予測値とイメージは近い

メモリの動向 ・穏やかな価格調整の予測で、企業業績の大幅悪化は見込まず・AI、ディープラーニング等の発展を背景に、メモリ需要は底堅い

半導体製造装置の動向

・中韓の半導体設備投資が今後1年程度の製造装置需要をけん引・韓国の半導体製造装置の国産化は進まず、日蘭に依存

パネルディスプレイの動向

・LCDパネルは、中国企業による過剰供給が価格下落の主因。当面生産は抑制されず、需給バランスの改善は困難・OLED市場は、LCDパネル市場とは違い、展望は明るい

アジア:雇用はASEAN中心に改善、物価は概ね安定だが一部でインフレ対応の利上げ

44

◯ 失業率は、ASEAN(タイを除く)でいち早く低下して消費を後押しした一方、NIEsでは改善に手間取る

◯ インフレ率は、各国・地域で概ね安定し、実質購買力の観点から消費環境に変調はうかがわれず

‧ ただし、フィリピンとベトナムのインフレ率はターゲットを超え、インドもターゲット上限に向け上昇しており、注意が必要

‧ フィリピンとインド、そしてインドネシアも利上げを実施したことは、内需にとって冷却要素

【 失業率(前年差) 】

失業率改善

(資料)各国統計より、みずほ総合研究所作成 (資料)各国統計より、みずほ総合研究所作成

【 インフレ率の推移(月次、2018年1~6月) 】

▲0.8

▲0.6

▲0.4

▲0.2

0.0

0.2

0.4

16 17 18

香港

台湾

シンガポール

韓国

(%Pt)

(年)

▲0.8

▲0.6

▲0.4

▲0.2

0.0

0.2

0.4

16 17 18

フィリピン

インドネシア

マレーシア

ベトナム

タイ

(%Pt)

(年)

0

1

2

3

4

5

6

7

中国

韓国

台湾

香港

シンガポール

インドネシア

タイ

マレーシア

フィリピン

ベトナム

インド

インフレ率

インフレターゲット

(前年比、%)

Ⅲ.日本経済

45

~緩やかな回復を維持~

日本経済 ~ 海外経済の拡大、内需の堅調な推移から景気は回復基調を維持

46

○ 2018年4~6月期のGDP成長率は、前期比年率+1.9%と2四半期ぶりのプラス。個人消費が大

きく増加したほか、設備投資もバブル期以来となる7四半期連続のプラスとなり、伸びが加速。

他方、輸出は力強さを欠き、外需寄与度は小幅なマイナスに

○ IT部門のけん引力は徐々に弱まるものの、IoT関連や資本財に支えられて輸出は緩やかに回

復する見通し。海外経済の回復に加え、五輪関連や生産性向上投資が押し上げ要因となり、

設備投資も増勢を維持。個人消費は、良好な雇用環境が追い風となる一方、エネルギー価格

などの上昇が実質賃金を下押しし、力強さを欠く見込み。2018年度のGDP成長率は+1.2%と

予想

○ 2019年度は、消費税率引き上げや輸出・設備投資の減速などを背景に、成長率は+0.9%と鈍

化(前回:+0.8%。成長率のゲタの影響により上方修正)。ただし、消費税引き上げでも各種所

得支援策の実施から、実質所得への下押し圧力は従来見立てよりも縮小

○ リスクとして、当面は米国の保護主義的な通商政策の影響に注意。不確実性の高まりが企業

マインドの慎重化を招くほか、自動車・部品の追加関税が発動されれば影響大(冒頭参照)

見通し概要:2018・2019年度とも1%前後の回復が継続

47

◯ 2018年度は+1.2%と予想

‧ 輸出や設備投資を起点とする景気の拡大が続く見込み

◯ 2019年度は、消費増税や輸出の減速などを背景に、+0.9%と伸びの鈍化が続く

◯ コア消費者物価は、エネルギーが押し上げに寄与。エネルギーを除くベースの伸びは、需給ギャップの改善や労働コスト

の上昇が緩やかながら一定の価格転嫁につながると想定し、0%台半ばで推移する見通し

――― なお、2019年度下期は、幼児教育無償化により0.5%Pt程度下押しされる計算

▲3.0

▲2.5

▲2.0

▲1.5

▲1.0

▲0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2011 12 13 14 15 16 17 18 19 20

GDPギャップ

CPI前年比(除く生鮮食品)

CPI前年比(除く生鮮食品・エネルギー)

(%)

(年)

予測

【 実質GDPの寄与度分解 】

(資料)内閣府「国民経済計算」等より、みずほ総合研究所作成

【 需給ギャップと消費者物価の見通し】

(注) 需給ギャップはみずほ総合研究所の推計値。消費者物価は消費税を除くベース(幼児教育無償化の影響を加味)。

(資料)総務省、内閣府等より、みずほ総合研究所作成

0.8

2.6

▲0.3

1.41.2

1.61.2

0.9

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

2012 13 14 15 16 17 18 19

家計(民間消費+住宅)民間設備投資民間在庫投資公的需要外需実質GDP

(前年比、%)

(予想)

(年度)

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2

2015 2016 2017 2018

家計(民間消費+住宅) 民間設備投資民間在庫投資 公的需要外需 実質GDP

(前期比、%)

(期)

(年)

現状・予測:4~6月期は内需を中心に持ち直し

48

◯ 4~6月期の実質GDPは前期比年率+1.9%と、2四半期ぶりのプラス。サービス輸出の下振れなどにより外需寄与度は

小幅なマイナスとなったが、個人消費・設備投資が大きく増加

◯ 夏場以降も景気の回復は継続

‧ 4~6月期の鉱工業生産は再びプラスとなったものの、1~3月期の減産の取戻しには至らず、やや力強さに欠ける状況

――― 電子部品・デバイスを中心に、出荷在庫バランスは悪化傾向

‧ もっとも、生産計画(7月10日時点)は7・8月ともプラス。電子部品の在庫調整が重石となるも、緩やかな増産が続く見通し

(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成

【 実質GDPの四半期推移 】 【 鉱工業生産指数の推移 】

(資料)経済産業省「鉱工業生産指数」より、みずほ総合研究所作成

▲15

▲10

▲5

0

5

10

15

90

92

94

96

98

100

102

104

106

108

110

15/1 16/1 17/1 18/1

(2010年=100) (%Pt)

(年/月)

鉱工業生産

出荷在庫バランス

(右目盛)

補正値

予測指数

西日本豪雨:短期間で収束する可能性がある一方、物流網への影響を見極める必要

49

◯ 熊本地震では、県内の生産は2~3カ月程度で震災前の水準を回復

――― ただし、輸送機械など一部の業種では影響収束まで半年程度を要したケースも

◯ 他方で、物流網への影響が長期化すれば、影響は被災地域以外にも波及する恐れ

‧ 景気ウォッチャー調査では、豪雨によって物流コストの上昇に拍車がかかったという声も

(資料)内閣府「景気ウォッチャー調査」より、みずほ総合研究所作成

(注) <>内の数値は付加価値ウェイト(2010年基準)。

(資料)熊本県「鉱工業指数年報(平成28年)」より、みずほ総合研究所作成

【 熊本県の鉱工業生産 】 【 豪雨による物流への影響に言及したコメント 】

(2018年7月景気ウォッチャー調査)

コメント 景況感

人手不足による物流コストの上昇に加えて、豪雨による混乱でコスト増に拍車が掛かっている(南関東・化学工業)

やや悪い

豪雨、台風などで、在庫や物流が混乱している(近畿・その他飲食) やや悪い

豪雨の影響で物流が滞り、景気が悪くなっている(中国・一般レストラン) 横ばい

豪雨の影響で交通網の混乱があり、営業時間短縮や物流の遅れなどで来客数は減少している。(中国・一般レストラン)

横ばい

豪雨で寸断された物流網の影響で、お中元などに多数の返品が発生している(中国・食料品製造業)

やや悪い

豪雨の影響で、・・・、道路や鉄道の毀損で貨物物流量も減少している(中国・会計事務所)

やや悪い

豪雨の影響で多少物流が鈍化している(四国・商店街) やや悪い

荷主に対する価格転嫁交渉が難航しており、豪雨の影響で広島以北の物流に困窮するというダブルパンチがきている。JR山陽線の復旧が11月頃まで掛かる見通しであり、配送料も通常よりかなり高騰しているため、更に利益を圧迫している状況である(九州・輸送業)

横ばい

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

鉱工業<10000>

電子部品・デバイス<1823.9>

輸送機械<1293.4>

(2016/3=100)

2016年1月

西日本豪雨:豪雨による消費関連指標への影響は限定的

50

◯ 自然災害による消費関連指標への影響は、豪雨と地震で相違

‧ 豪雨では、住宅被害規模と当月・翌月の消費変化率に明確な関係は確認できず

‧ 一方、地震では住宅被害規模が大きいほど、当月の消費減、翌月の消費増が生じる傾向

――― 豪雨による住宅への被害は地震に比べ局所的とみられ、被災による消費減・反動増が当月内に均される可能性

(注)2008~2017年の都道府県別データ。消費は地域別消費総合指数の季節調整値。 (資料)消防庁、内閣府より、みずほ総合研究所作成

【 災害発生当月の消費への影響 】 【 災害発生翌月の消費への影響 】

2011/3 岩手

2011/3 宮城

2016/4 熊本

▲25

▲20

▲15

▲10

▲5

0

5

10

15

0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000 10000

地震

豪雨

住宅被害計(1万世帯当たりの被害棟数、対数目盛)

2018/7 岡山災害当月の消費変化率(前月比、%)

2011/3 岩手2011/3 宮城

2011/3 群馬

2016/4 熊本

▲15

▲10

▲5

0

5

10

15

20

25

0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000 10000

地震

豪雨

住宅被害計(1万世帯当たりの被害棟数、対数目盛)

2018/7 岡山

災害翌月の消費変化率(前月比、%)

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

160

10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3

輸出向け

国内向け

(2010=100)

(年/月)

輸出・生産活動:近年の資本財出荷は産業用ロボットの輸出がけん引

51

◯ 資本財出荷の仕向け別内訳をみると、輸出向けが高い伸び

‧ 世界経済が回復する中、主要国の設備投資持ち直しや、米国や中国などで省力化・効率化のニーズが旺盛に

◯ 寄与度でみれば、産業用ロボットが資本財出荷をけん引している構図

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

2010 11 12 13 14 15 16 17 18

その他

産業用ロボット

電気計器

分析機器

工業用計重機

ショベル系掘削機械

半導体製造装置

資本財出荷

(除く輸送機械)

(前期比、%)

(年)

【 資本財出荷の内訳 】 【 資本財出荷の品目別寄与度(累積) 】

(資料)経済産業省「鉱工業出荷内訳表」より、みずほ総合研究所作成(注) 2018年は1~6月の前年比を用いて延長。(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成

輸出・生産活動:中国向けロボットが急増。受注残高は高水準

52

◯ 産業用ロボットの出荷増は輸出がけん引。全体的に増加基調の中、仕向地別では、中国向けの大幅増加がドライバーに

◯ 足元の受注は失速気味だが、受注残高は過去最高を更新し続けており、当面のロボット輸出は底堅く推移する見込み

▲40

▲30

▲20

▲10

0

10

20

30

40

50

60

70

11 12 13 14 15 16 17 18

海外からの受注

輸出(ロボット工業会)

(前年比、%)

(年)

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

00 02 04 06 08 10 12 14 16 18

(億円)

(年)

(注) 受注残高は国内からの受注も含む(原数値)。

(資料)日本ロボット工業会、内閣府「機械受注統計調査報告」より、みずほ総合研究所作成

【 産業ロボット受注と輸出 】【 産業用ロボットの仕向地別輸出 】

(注)会員ベースの金額。2018年は1~6月の前年比を用いて延長。(資料)日本ロボット工業会より、みずほ総合研究所作成

受注残高

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2013 14 15 16 17 18

中国 アメリカ

韓国 台湾

ドイツ 他

(億円)

(年)

設備投資:実現率を勘案しても、設備投資は高めの伸びに

53

◯ 日銀短観の設備投資計画は、6月時点としては過去最高の伸びに

‧ 省力化ニーズや、五輪・インバウンド関連投資が押し上げ

◯ 過去の平均的な実現率を踏まえて試算すると、計画よりは多少下振れるものの、着地も高い伸びに

‧ 非製造業を中心に、実現率の高い中小企業が大企業の下振れをカバーする形

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

計画(製造業)

実現率勘案(製造業)

計画(非製造業)

実現率勘案(非製造業)

(%)

(年度)(注) 土地を除き、ソフトウェアを含むベース。

業種別・規模別に、上期・下期の平均的な実現率を勘案して試算。(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測」より、みずほ総合研究所作成

【 設備投資計画 】 【 実現率勘案後の設備投資 】

(注) 土地を除き、ソフトウェアを含むベース。(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測」より、みずほ総合研究所作成

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

10

12

3月調査 6月調査 9月調査 12月調査 見込 実績

(前年比、%)

2017年度

2018年度 2015年度

2016年度

雇用・消費:失業率は2%台前半まで低下。ただし、依然として未活用の労働力も

54

◯ 失業率は5月に2.2%まで低下。4~6月平均で見ても90年代前半以来の低水準

‧ 就業者数は4~6月期に1953年の統計開始以来、過去最高を更新

◯ 依然として未活用労働力が多く存在。特に女性の35~54歳に偏在

‧ 税・社会保険制度の壁や正社員の働き方の硬直性などにより、フルタイムで働きにくいことが背景に

‧ 潜在労働力(仕事探しをしていないが働ける人)は高齢者に多く、自分に合う仕事があれば働きたいと考えている様相

(資料)総務省「労働力調査」より、みずほ総合研究所作成

【 失業率・就業者数の推移(四半期平均) 】 【 性別・年齢別の未活用労働力 】

(資料)総務省「労働力調査」より、みずほ総合研究所作成

5900

6000

6100

6200

6300

6400

6500

6600

6700

6800

0

1

2

3

4

5

6

90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18

(%)

(年)

(万人)

失業率

就業者数(右目盛)0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

15

24

25

34

35

44

45

54

55

64

65

15

24

25

34

35

44

45

54

55

64

65

男 女

②仕事探しをしていないが働ける人

①労働時間を増やしたい人

(万人)

(参考)雇用・消費:失業率低下の背景は、失業者への流入減&失業者からの流出増

55

◯ 就業状態の変化割合をみると、「就業者→完全失業者」が減少したことに加え、「完全失業者→就業者」が急増

‧ 「就業者→完全失業者」の人数が失業者数に占める割合は足元で11%を切り、バブル期並みの歴史的低水準

‧ 一方、「完全失業者→就業者」が同14%超と急上昇。1993年以来の高水準

――― 雇用環境の改善により、就業者が失業しにくく、かつ失業者が就業しやすくなっていることを示す結果。なお、

「非労働力人口→完全失業者」の急上昇は、雇用環境改善による労働参加の増加を反映したものとみられる

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

80 85 90 95 00 05 10 15

完全失業者→就業者 完全失業者→非労働力人口(%)

(年)8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

80 85 90 95 00 05 10 15

就業者→完全失業者 非労働力人口→完全失業者

(%)

(年)

(注)前月の失業者数に対する割合の後方12カ月平均値。労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計」に基づき補正。

(資料)総務省「労働力調査」より、みずほ総合研究所作成

【 完全失業者への流入率 】 【 完全失業者からの流出率 】

(参考)雇用・消費:一部の業種では外国人労働者の活用が既に進展

56

◯ 一部の業種では既に外国人労働者への依存が進んでいる状況

‧ 建設業と製造業、運輸・郵便業では外国人労働者の増加分が日本人よりも多い

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

30

35

40外国人 日本人

(2013~2017年の増減、万人)

複合サービス事業

医療、福祉

教育、学習支援業

生活関連サービス、

娯楽業

宿泊業、

飲食サービス業

学術研究、専門・

技術サービス業

不動産業、

物品賃貸業

金融業、保険業

卸売業、小売業

運輸業、郵便業

情報通信業

電気・ガス・

熱供給・水道業

製造業

建設業

80

【 外国人労働者の増減 】

(資料) 厚生労働省「外国人雇用の届出状況」、総務省「労働力調査」より、みずほ総合研究所作成

雇用・消費:統計が示すほど、家計の所得環境は改善していない可能性

57

◯ 賃金は足元で上昇ペースの加速がみられるも、統計作成方法の変更に伴うサンプル要因の可能性大

‧ サンプル入れかえ要因を除くベースでは、賃金に明確な加速感はみられず

◯ エネルギー価格の上昇に加え、猛暑の影響による野菜価格の高騰も実質賃金の下押し圧力に

(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」より、みずほ総合研究所作成

【 賃金の推移 】 【 野菜価格の推移 】

(注)平年比は平成25~29年度の食品価格動向調査業務による調査価格の5カ年平均価格と比較したもの。

(資料)農林水産省「食品価格動向調査(野菜)」より、みずほ総合研究所作成

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4

公表値

共通事業所

(前年比、%)

(年)

60

80

100

120

140

160

180

4/9

4/16

4/23

5/7

5/14

5/21

5/28

6/4

6/11

6/18

6/25

7/2

7/9

7/16

7/23

7/30

2018年

キャベツ レタス

きゅうり トマト

(平年比、%)

(週)

雇用・消費:他方で、増税の実質所得への影響は前回の4分の1程度に

58

◯ 消費増税による実質可処分所得の押し下げ効果は、2014年度増税時に比べ大幅に縮小

‧ 2019・20年度の可処分所得押し下げ幅はそれぞれ0.5%Pt未満。なお、2014年度は約2%Pt

――― 税率引き上げ幅の縮小、増税実施月の違いによる影響の分散、幼児教育無償化などの軽減策が背景

(資料)財務省、日本銀行、各種報道より、みずほ総合研究所作成

【 実質可処分所得の寄与度分解 】 【 増税後の所得支援策 】

(注)物価要因は家計最終消費支出デフレータ(除く帰属家賃及びFISIM)。

消費増税には幼児教育無償化の影響を反映。

(資料)内閣府より、みずほ総合研究所作成

▲4

▲3

▲2

▲1

0

1

2

3

2010 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

消費増税 物価要因(税抜)

その他純受取 年金給付等

賃金・俸給

(前年比、%)

(年度)

見通し2014年増税時 規模

住宅措置等 0.6兆円

住宅ローン減税等 0.2兆円

合 計 0.8兆円

2019年度増税時 規模

軽減税率 1.0兆円

支援給付金等 0.5兆円

幼児・高等教育無償化子育て層支援、保育士・介護人材処遇改善

1.7兆円

合 計 3.2兆円

雇用・消費:2014年消費増税後の消費低迷は、高頻度購入品目の値上がりが背景

59

◯ 家計の「体感物価」は、2014年の消費増税実施後、CPIを上回って上昇し、その後高止まり

‧ 消費増税後の家計の購入頻度が高い品目(一部の食料やガソリンなど)の値上がりが、体感物価に影響

――― 家計は、(統計的なCPIへの影響度にかかわらず)身近な品目の価格動向を重視

‧ 2019年10月の増税時に軽減税率が導入されることは、体感物価の上昇を抑制

‧ 一方、増税時の価格改定機をとらえ、仕入コスト・人件費上昇を転嫁する動きが出た場合、体感物価の上昇要因に

(注) 高頻度購入品目は年間購入頻度15回以上の品目(約40品目。コアCPIに占めるウェイトの割合は約12%程度)。低頻度購入品目は年間購入頻度0.5回未満の品目(約190品目。コアCPIに占めるウェイトの割合は約19%程度)。消費増税の影響を除く。

(資料) 総務省より、みずほ総合研究所作成

(注) CPIは持家の帰属家賃除く総合。体感物価は「1年前に比べ現在の物価は何%程度変化したと思うか」とのアンケート調査における回答の中央値。

(資料) 日本銀行、総務省より、みずほ総合研究所作成

【 CPIと体感物価の推移 】 【 品目の購入頻度別でみたCPIの推移 】

▲1

0

1

2

3

4

5

6

13/6

13/9

13/12

14/3

14/6

14/9

14/12

15/3

15/6

15/9

15/12

16/3

16/6

16/9

16/12

17/3

17/6

17/9

17/12

18/3

18/6

体感物価

CPI

(%)

(年/四半期)

体感物価がCPI以上に上昇

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

14/1 14/2 14/3 14/4 14/5 14/6 14/7 14/8 14/9

コアCPI

高頻度品目

低頻度品目

(前年比、%)

(年/月)

高頻度品目で価格がより大きく上昇

物価:エネルギーを除くCPIは足元伸び悩み

60

◯ コアCPIは、エネルギー価格上昇で伸びが拡大(6月は前年比+0.8%)

◯ 一方で、生鮮・エネルギーを除く日銀版コアCPIは、食料の伸びの鈍化(酒税法改正による前年の値上げの反動等)や

携帯電話通信料のマイナス幅拡大で低迷(同+0.2%)

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4

その他

教養娯楽

携帯(電話機+通信料)

保健医療

生鮮除く食料

日銀版コア

(前年比、%)

(年/月)

(資料)総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成(資料)総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成

【 生鮮食品・エネルギー除くCPIの寄与度分解 】

携帯電話関連が一定の下押し圧力に

【 消費者物価の推移 】

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

15/4 15/10 16/4 16/10 17/4 17/10 18/4

(前年比、%)

(年/月)

生鮮食品を除く総合

生鮮食品及びエネルギーを除く総合

食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合

▲ 2.0

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

11/4 12/4 13/4 14/4 15/4 16/4 17/4 18/4

SPPI

日銀版コアCPI

(前年比、%)

(年/月)

物価:B to Bの価格設定とは対照的に、B to Cの値上げは進まず

61

◯ B to B の価格動向を表す企業向けサービス価格指数は足元で上昇ペースが加速、一部では価格転嫁の動きが進展。し

かし、根強い家計の節約志向を受け、B to C への価格転嫁には発展していない

◯ 足元の推移を踏まえ、消費者物価の見通しを前回(6月)から下方修正

‧ コアCPIは2018年度+1.0%(6月:+1.2%)、2019年度+0.8%(6月:+1.2%)と予測

※2019年度は幼児教育無償化実施を今回の見通しに反映(年度ベースで▲0.2~0.3%Pt)

(注)シャドーは、みずほ総研算出の節約志向指数(CPI伸び-家計平均単価、後方3カ月移動

平均)がプラスの局面。SPPI、CPIとも、消費税を除く。

(資料)総務省「消費者物価指数」、日本銀行「企業向けサービス価格指数」より、

みずほ総合研究所作成

【 企業向けサービス価格指数(SPPI)とCPIの推移 】 【 消費者物価の見通し 】

(注) 教育無償化の影響については、保育所保育料は3~5歳の児童と0~2歳児童のうち非課税世帯が無償となる前提で、年齢区分ごとの保育料総額で按分して無償化される保育料の割合を算出。私立幼稚園の保育料、入園料、非課税世帯の割合の置き方によって計数が変動するため、試算結果は幅をもってみる必要がある。

(資料)総務省「消費者物価指数」等より、みずほ総合研究所作成

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3

2017 18 19 20

幼児教育無償化分 消費増税要因(軽減税率含む)

エネルギー 米国基準コア

食料(生鮮食品・酒類を除く) 生鮮食品を除く総合

(前年比、%)

(期)

(年)

見通し

(参考)物価:ECの拡大により、CPI上昇率を0.1~0.2%Pt押し下げ

62

◯ 先行研究(Cavallo, A. (2017))によれば、日本はインターネット販売価格が店頭販売価格対比で低い

‧ インターネット販売価格は約13%割安、価格が同一の品目を含めた場合で約7%の割安

◯ EC(Electronic Commerce)拡大が、価格競争の激化を通じて、CPIに一定程度の下押し圧力となっている可能性

‧ 試算では、2017年以降の日銀版コアCPIについて、原材料費や人件費の上昇が押し上げ要因となる一方、インターネット

消費割合の上昇(Amazon Effect)が下押し(日銀版コアCPI前年比を0.1~0.2%Pt程度押し下げ)

【 ネット価格の店頭価格に対する平均価格差 】

(資料) Cavallo, A. (2017)より、みずほ総合研究所作成

【 日銀版コアCPIの寄与度分解 】

(注)日銀版コアCPIは家賃、通信費、制度要因(高校授業料や診療代)を除いた上で、インターネット消費割合、企業物価指数、単位労働コスト、自己ラグで回帰することで寄与度を推計。

(資料)総務省「家計調査」「家計消費状況調査」等より、みずほ総合研究所作成

▲ 14▲ 12▲ 10▲ 8▲ 6▲ 4▲ 20246

アルゼンチン

オーストラリア

ブラジル

カナダ

中国

ドイツ

日本

南アフリカ

英国

米国

全体

価格が同じ品目を含まない場合

価格が同じ品目を含む場合

(%)

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

16/3 16/6 16/9 16/12 17/3 17/6 17/9 17/12 18/3

その他

原材料費要因

人件費要因

Amazon Effect要因

慣性要因

(%)

(年/月)

日銀:副作用の状況を注視しつつ、政策金利は消費増税まで据え置き

63

◯ 日銀は見通し期間内の物価目標達成を断念。政策の持続性を高め、物価のモメンタム維持に重点をシフト

‧ 7月会合ではイールドカーブ・コントロールやETF買入れの柔軟化など持続性を高める政策を決定

◯ 政策金利のフォワードガイダンスにより消費増税まで政策金利を据え置くと予想。その後は物価のモメンタムが維持でき

る範囲で徐々に金利引き上げに動く可能性。市場ではマイナス金利解除を織り込む動き

【 展望レポート(2018年7月) 】

(注)政策委員の大勢見通し。( )内は政策委員見通しの中央値。

(資料)日本銀行より、みずほ総合研究所作成

(対前年度比、%)

【 OISカーブ 】

(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

実質GDP

消費者物価指数(除く生鮮食品)

消費税率引き上げの影響を除くケース

2018年度 +1.3~+1.5(+1.5)

+1.0~+1.2(+1.1)

4月時点の見通し +1.4~+1.7(+1.6)

+1.2~+1.3(+1.3)

2019年度 +0.7~+0.9(+0.8)

+1.8~+2.1(+2.0)

+1.3~+1.6(+1.5)

4月時点の見通し +0.7~+0.9(+0.8)

+2.0~+2.3(+2.3)

+1.5~+1.8(+1.8)

2020年度 +0.7~+0.9(+0.8)

+1.9~+2.1(+2.1)

+1.4~+1.6(+1.6)

4月時点の見通し +0.7~+0.9(+0.7)

+2.0~+2.3(+2.3)

+1.5~+1.8(+1.8)

▲ 0.3

▲ 0.2

▲ 0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

(%)

(年)

イールドカーブ・コントロール

導入前(2016年9月20日)

2017年1月4日

7月会合後

(2018年8月2日)

Ⅳ.金融市場

64

~金利上昇は緩やかに留まり、米国株は底堅い~

65

金融市場 ~ 日米独長期金利上昇は限定的、米国株は底堅い

○ 金融市場は、貿易摩擦への警戒から新興国で通貨安、株安の動きが見られるも、米国株は米

景気・企業業績の改善期待を背景に底堅さを維持。米国株は、企業業績の改善に沿って緩や

かに上昇。日本株は国内政治や景気動向を巡る不透明感などから上値が重い

○ FRBは資産縮小を遂行するとともに、2018年内に2%台に利上げ。ECBは資産購入減額を進

め、2019年に利上げ開始。日銀は物価目標の早期達成を断念し長期戦へ。政策金利のフォ

ワードガイダンス導入により消費増税まで政策金利を維持

○ 米10年債は良好なファンダメンタルズを背景に緩やかな上昇圧力がかかるが、長短金利差が

縮小しており、先行きの利上げ打ち止めが意識され易い。欧州金利はECBのフォワードガイ

ダンスにより当面低位での推移。日本の10年債は日銀のイールドカーブ・コントロール柔軟化

を受け0.1%程度を中心としつつも上昇圧力を内包

○ ドル円相場は当面、日銀のフォワードガイダンス強化と米政治に対する警戒感から横ばい圏

内での推移を見込むがトランプ政権の通商問題の行方に神経質な動き。ユーロドルは年後半

にかけてECBの資産買入れ停止により緩やかにユーロ高へ

金融市場:FRBの利上げは2018年中に計4回、ECBは2019年に利上げ開始を予想

66

【 金融市場の予測(2018年8月) 】

(注) 網掛けは予測値。予測値は期中平均。但し、無担保コールO/N、FFレート、ECB主要政策金利は期末値。ユーロ円TIBORは360日ベース。スワップ5年は6カ月LIBORに対する固定金利払。為替相場はニューヨーク終値ベース。

(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

2017 2018 2019 2020

年度 年度 年度 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3

日本

無担保コールO/N (末値、%) ▲ 0.06 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.07 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05

ユーロ円TIBOR (3か月、%) 0.06 0.10 0.10 0.09 0.09 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

金利スワップ (5年、%) 0.10 0.14 0.15 0.11 0.13 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15

新発国債 (10年、%) 0.05 0.08 0.10 0.04 0.08 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

日経平均株価 (円) 20,984 23,400 24,700 22,300 22,800 24,000 24,500 25,000 24,700 24,200 24,700

米国

FFレート (末値、%) 1.50~1.75 2.25~2.50 2.25~2.50 1.75~2.00 2.00~2.25 2.25~2.50 2.25~2.50 2.25~2.50 2.25~2.50 2.25~2.50 2.25~2.50

新発国債 (10年、%) 2.41 3.00 2.95 2.90 3.00 3.10 3.10 3.00 3.00 2.90 2.90

ダウ平均株価 (ドル) 22,926 25,900 28,300 24,600 25,200 26,500 27,300 27,600 28,000 28,500 29,000

ユーロ圏

ECB主要政策金利 (末値、%) 0.00 0.00 0.25 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.25 0.25

ドイツ国債 (10年、%) 0.44 0.55 0.85 0.49 0.50 0.60 0.65 0.70 0.80 0.90 1.00

為替

ドル・円 (円/ドル) 111 109 106 109 110 108 107 107 106 106 105

ユーロ・ドル (ドル/ユーロ) 1.17 1.19 1.23 1.19 1.18 1.19 1.19 1.20 1.22 1.24 1.26

WTI原油先物価格 (ドル/バレル) 54 70 74 68 69 70 71 72 73 75 76

20192018

金融市場:米通商政策の不透明感による市場への影響に注意

67

◯ 投資家の不安心理を示すVIX指数は株価急落で一旦上昇するも、その後はメルクマールとなる20を下回る推移

◯ 米通商政策への警戒感などから、欧米投資家はキャッシュ比率を引き上げ。不透明感長期化による市場への影響に注意

【 VIX指数の推移 】

(注) VIX指数はS&P500のオプション・インプライド・ボラティリティ指標であり、投資家の不安心理を示すと言われる。

(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

【 欧米投資家の資産配分 】

10

15

20

25

30

35

40

1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 (月)

チャイナ・ショック

英国民投票

(Index)

米大統領選

2018年2017年2016年

株価急落

(資料)ロイター国際分散投資戦略調査よりみずほ総合研究所作成

3

4

5

6

7

8

9

45

47

49

51

53

55

57

59

61

15 16 17 18

キャッシュ比率(右目盛)

(%) (%)

株式比率

(年)2015

内外株式:貿易摩擦への警戒感からグローバルに株価下落も、米国株堅調

68

◯ 特に新興国株はドル高に伴う通貨安・資金流出への警戒感もあり下落基調が顕著だが、米国株は相対的に堅調

◯ 企業業績は、先進国においてはペース鈍化も改善基調が続く一方、新興国は頭打ち感。米国については、ペースは鈍化

しつつあるも相対的に強い改善基調が続く

【 主要株価指数の推移 】

(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

【 主要株価指数の予想EPS(12カ月先)の推移 】

(資料)Thomson Reutersより、みずほ総合研究所作成

70

80

90

100

110

120

130

140

150

160

170

16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7

TOPIX

S&P500

ストックス・ヨーロッパ600

MSCIエマージング

(2015年末=100)

(年/月)

80

90

100

110

120

130

140

16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7

TOPIX

S&P500

ストックス・ヨーロッパ600

MSCIエマージング

(2015年末=100)

(年/月)

内外株式:選好される米国株

69

◯ 欧米投資家の株式の地域別配分比率は、足元で米国株のみ引上げの動きも

◯ バリュエーション面で相対的には割高である米国株だが、景気の堅調さを背景に資金流入

株価指数年初来騰落率(%)

予想PER(倍)

予想PBR(倍)

TOPIX ▲3.5 13.3 1.2

S&P500 5.3 16.7 3.1

ストックス・ヨーロッパ600

0.6 14.0 1.7

MSCIエマージング

▲6.1 11.3 1.5

【 主要株価指数のバリュエーション 】

(注)予想PERと予想EPSは、12カ月先、7月31日時点。(資料)Thomson Reutersより、みずほ総合研究所作成

【 欧米投資家の地域別株式配分比率の変化 】

(資料)ロイター国際分散投資戦略調査より、みずほ総合研究所作成

60

80

100

120

140

160

12/12 13/12 14/12 15/12 16/12 17/12

北米 ユーロ圏

日本 アジア(除く日本)

(年/月)

(2012/12=100)

米国株:中間選挙の後に株価上昇の可能性

70

◯ 過去の中間選挙の前後1年の平均的な株価の動きは、中間選挙前まで上値重く推移し、中間選挙後に上昇する傾向

◯ ただし、中間選挙によって上下両院とも同一政党が多数党を占めていた状況からねじれになった過去2回のケースは、

選挙後1年以内に調整局面も

【 中間選挙前後のS&P500指数の推移 】

(注)中間選挙投票日を基準としたS&P500指数の前後の変化。 (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

1950年以降の全中間選挙平均

ブッシュ政権(2006年)

オバマ政権(2010年)

(%)

投票日

1年前 1年後

日本株:目先は上値の重い展開も、年度後半には年初の高値を回復する見通し

71

◯ 年初以降の下落を一部を取戻し、日経平均株価は一時23,000円に迫るも、米通商政策への警戒感等から再び軟調な

推移。国内政治や景気動向を巡る不透明感を背景に海外投資家による売り越しが継続

◯ 予想PERは13倍台まで低下。下値を模索する展開は見込みづらいものの、米国の通商政策を巡る不透明感は目先の

重石。国内政治や米通商政策に対する警戒感が和らぎ、底堅い業績が確認される年度後半に上昇基調に復する見通し

【 日本株(現物)の投資部門別売買動向 】

(注)二市場一・二部合計。(資料)東京証券取引所より、みずほ総合研究所作成

【 TOPIXの12カ月先予想PERとEPS 】

(資料)Thomson Reutersより、みずほ総合研究所作成

11

12

13

14

15

16

17

90

100

110

120

130

140

15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 18/7

予想EPS

予想PER(右目盛)

(円) (倍)

(年/月)▲30

▲20

▲10

0

10

20

30

17/6 17/9 17/12 18/3 18/6

信託銀行(年金等)事業法人投資信託個人海外投資家

(千億円) 月次

(年/月)

▲150

▲100

▲50

0

50

100

150

200

06 08 10 12 14 16

買い越し

売り越し

(年)

(千億円) 年次

米国金利:米国金利は良好なファンダメンタルズ背景に上昇圧力はあるが上昇限定

72

◯ 米中貿易摩擦を巡る先行き不透明感から、米10年国債利回りは3%弱で推移

‧ 原油価格が高止まりしている一方、期待インフレ率は今年に入って横ばい圏で推移

◯ 米10年国債利回りは、良好なファンダメンタルズを背景に緩やかな上昇を見込む

‧ 6月FOMC以降、一旦後退した利上げ期待を徐々に織り込む形での利回りの上昇を予想

【 米10年国債利回りと期待インフレ率 】 【 市場参加者の米政策金利見通し 】

(注)期待インフレ率は、ブレーク・イーブン・インフレ率(10年)。(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

(注)FF金利先物市場からみた先行きの利上げパス。18年は既に実施分を含む。(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

▲10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1.6

1.8

2.0

2.2

2.4

2.6

2.8

3.0

3.2

17/7 17/10 18/1 18/4 18/7

(前年比、%)(%)

(年/月)

原油価格(右目盛)

米10年国債利回り

期待インフレ率

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

18/1 18/2 18/3 18/4 18/5 18/6

(回)

(年/月)

18年中の利上げ回数 19年中の利上げ回数

欧州金利:独金利は強力なフォワードガイダンスにより、当面低位での推移

73

◯ 6月ECB理事会で政策金利を当面維持することが決定し、独10年国債利回りは0.4%前後で推移

‧ 米中貿易摩擦懸念から0.3%台での推移が続いたが、日米の金利上昇の流れを受けて足元0.4%台で推移

◯ 強力なフォワードガイダンスの影響で、独国債利回りは当面低位での推移

‧ OISカーブ(EONIA)を見ると、ECB理事会後に市場参加者の利上げ観測は後退

▲2.0

▲1.5

▲1.0

▲0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 18/7

(%)

(年/月)

独10年国債利回り 期待インフレ率 実質金利

【 独10年国債利回り 】 【 OISカーブの変化(EONIA) 】

(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

▲0.375

▲0.350

▲0.325

▲0.300

▲0.275

▲0.250

1M 2M 3M 4M 5M 6M 7M 8M 9M 10M11M 1Y 15M18M 2Y

(%)

2018/7/31

2018/6/14

2018/6/13

0.22

0.94

0.10

0.61

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1年 2年 3年 5年 7年 10年 15年 20年 30年 40年

7月会合前:

2018年7月30日

マイナス金利導入直前

:2016年1月28日

(%)

量的・質的金融緩和導入から

マイナス金利導入前までの平均

(2013年4月~2016年1月)

国内金利:10年国債は0.1%を中心としたレンジ下、上昇圧力内包

74

◯ 10年国債利回りは、日銀がイールドカーブコントロール運営を柔軟化したことにより、これまでよりもレンジの上方シフトを

予想。ただし、先行きの物価下振れが見込まれ、金利上昇の勢いは続かず

◯ 国債買入れ額は、年間増加額40兆円を下回るペースまで減額。今後は現状程度の買入れペースが維持されると予想

‧ 現状の国債買入れペースは、新規国債発行額30兆円台に近く、持続性のある水準

(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

【 10年国債利回りの推移 】 【 イールドカーブ 】

(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

▲0.4

▲0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3

0.1%

(年/月)

(%)

為替:米大統領の為替水準への言及や日銀政策変更観測を背景に上値重い

75

◯ ドル円は、内外金利差の拡大に伴い円安が進展。約6カ月ぶり113円台まで円安進展

‧ トランプ大統領がドル高に対する懸念(7/20)から、ドル円相場は上値重く推移

◯ ドル円相場は当面、日銀のフォワードガイダンス強化と米政治に対する警戒感から横ばい圏内での推移

‧ 10月に米財務省から発表される為替報告書における中国(人民元)に対する警戒感が示される可能性も

‧ 米中間選挙(11月)に向けトランプ政権による保護主義姿勢が強硬になるようであれば円高リスク、和らげばドル高に戻る

ことも

1.5

1.9

2.3

2.7

3.1

100

105

110

115

120

16 17 18

トランプ大統領による強いドルへの懸念(円/ドル) (%Pt)

(年)2016

ドル円

日米10年国債金利差

(右目盛)

【 ドル円相場と日米長期金利差 】 【 ドル円相場と投機筋ポジション 】

(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

100

105

110

115

120

125-150,000

-100,000

-50,000

0

50,000

100,000

16 17 18

先物ネットポジション

ドル円(逆・右目盛)

(枚) (円)

(年)2016

原油:イラン・リスクに揺れる原油相場。基調は需給に沿った緩やかな上昇トレンド

76

◯ OPECはイラン原油の供給状況をにらみながら、今後の増産に

‧ シェールオイル生産や原油需要を考慮し、需給バランスをコントロール

◯ 米中貿易摩擦が世界経済に大きな影響を及ぼさない限り、基調としては緩やかな原油高トレンド

◯ ただし、イランを巡る情勢は引き続き注視が必要。短期的な上振れリスクに留意

【 原油相場の推移 】

(資料)Thomson Reutersより、みずほ総合研究所作成

【 原油相場の予測 】

(注)需給バランスは、12カ月移動平均。(資料)Thomson Reuters、EIAより、みずほ総合研究所作成

55

60

65

70

75

80

18/1 18/2 18/3 18/4 18/5 18/6 18/7 18/8

(ドル/バレル)

(年/月)

米1月雇用統計

サウジアラビア

80ドル発言

サウジアラビア

100ドル発言

米、イラン核合意

からの離脱表明

OPEC

減産緩和発言

OPEC総会

減産緩和

米、イラン産原油

輸入停止発言米、イラン制裁の適用除外を示唆

OPEC月報で

サウジアラビア6月増産

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

40

20

0

20

40

60

80

100

120

140

98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18 20

需給バランス(右目盛)

〃 予測 (右目盛)

原油相場(WTI)

〃 予測

(ドル/バレル)

需要超(在庫減)

↓供給超(在庫増)

(%)

(年)

(参考資料)主要国の政治日程

77

11月 中間選挙 11月 大統領選挙

3月 英国EU離脱期限 7月末迄 スペイン総選挙

5月 欧州議会選挙

10月 ドラギECB総裁任期満了

9月 自民党総裁選 4月 天皇退位 7~9月 東京オリンピック・パラリンピック開催

5月 新天皇即位、改元

春 統一地方選挙

夏 参議院選挙

10月 消費税増税

2月迄 タイ議会選挙 1月 台湾総統・議会選挙

4月 インドネシア大統領・議会選挙 4月 韓国議会選挙

5月迄 インド下院選挙 9月頃 シンガポール議会選挙

11月迄 オーストラリア上院下院選挙 9月 香港立法議会選挙

年内 中国四中全会 年内 中国五中全会

10月 ブラジル大統領選挙

アジア

その他

2018年 2019年 2020年

米国

欧州

日本

(資料) みずほ総合研究所作成

【経済予測チーム】武内浩二 (全体総括) 03-3591-1244 [email protected]

・米国/欧州経済小野 亮 (総括・米国) 03-3591-1219 [email protected]田村 優衣 (米国) 03-3591-1418 [email protected]吉田健一郎 (欧州) 03-3591-1265 [email protected]松本 惇 (欧州) 03-3591-1199 [email protected]

・アジア経済小林公司 (総括) 03-3591-1379 [email protected]大和香織 (中国) 03-3591-1368 [email protected]菊池しのぶ (アジア) 03-3591-1427 [email protected]

・日本経済市川雄介 (総括) 03-3591-1289 [email protected]有田賢太郎 (政府・物価) 03-3591-1419 [email protected]大野晴香 (企業) 03-3591-1243 [email protected]宮嶋貴之 (外需) 03-3591-1434 [email protected]服部直樹 (家計) 03-3591-1298 [email protected]酒井才介 (家計、政府・物価) 03-3591-1241 [email protected]平良友祐 (政府・物価) 03-3591-1306 [email protected]坂本明日香 (外需) 03-3591-1435 [email protected]矢澤広崇 (企業) 03-3591-1432 [email protected]越山祐資 (家計) 03-3591-1416 [email protected]

・金融市場野口雄裕 (総括) 03-3591-1249 [email protected]井上 淳 (新興国・原油) 03-3591-1197 [email protected]大塚理恵子 (内外株式) 03-3591-1420 [email protected]殿岡直樹 (海外金利) 03-3591-1248 [email protected]

78

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