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2019 年大阪大学】 産学官共創大学院構想と PM 技術習得への動機付け 概要 大阪大学の特徴の一つが産学共創への取組である。例えば、多面的な産学協働活動を展開する拠点として、 企業の研究組織を学内の協働研究所や共同研究講座として設置する制度を国内で初めて導入し、その数はすで 70 を超えている。この活動を通じて、研究の高度化や成果の産業への活用を促進してきたが、更にその活動を 教育と人材育成にも展開すべく、インターンシップ・オン・キャンパス制度などの産学官共創構想を検討している。その 教育手法については知識・技能を教授する座学型に加えて、受講者自らが課題を発見し、解決法までを考える PBLProject Based Learning)が有効であると考えられる。特に我々はビジネスエンジニアリング専攻におい て、ある程度の専門性を確立した大学院生向けの OJEOn the Job Education)演習手法を、産学共同で 開発・実践してきた。現在も受講生からのアンケートや自己成長に関する自己評価結果を参考に、教育効果を更 に高めるための方法論を模索中で、プロジェクトマネジメントについても選択的にカリキュラムに導入し始めている。今 後、更に産学官共創教育にまで展開した時に必要とされる能力とは何か、そのために何を教育すべきかなど我々が 検討している内容について紹介し、聴衆と議論したい。 講演者プロフィール 上西 啓介(うえにし けいすけ) 【現職】大阪大学 大学院工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻 教授 2008 大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 教授 2004 大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 准教授 2002 大阪大学大学院工学研究科生産科学専攻 講師 1996 トロント大学研究員(1 年間) 1992 京都大学大学院工学研究科金属加工学専攻 博士(工学) 1990 大阪大学工学部生産加工工学科助手任官 プロジェクト産業株式会 社入社 1990 京都大学大学院工学研究科金属加工学専攻 博士後期課程中退 講演資料 2019 年大阪大学】 産学官共創大学院構想と PM 技術習得への動機付け

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【2019年大阪大学】 産学官共創大学院構想と PM技術習得への動機付け

概要

大阪大学の特徴の一つが産学共創への取組である。例えば、多面的な産学協働活動を展開する拠点として、企業の研究組織を学内の協働研究所や共同研究講座として設置する制度を国内で初めて導入し、その数はすでに 70 を超えている。この活動を通じて、研究の高度化や成果の産業への活用を促進してきたが、更にその活動を教育と人材育成にも展開すべく、インターンシップ・オン・キャンパス制度などの産学官共創構想を検討している。その教育手法については知識・技能を教授する座学型に加えて、受講者自らが課題を発見し、解決法までを考えるPBL(Project Based Learning)が有効であると考えられる。特に我々はビジネスエンジニアリング専攻において、ある程度の専門性を確立した大学院生向けの OJE(On the Job Education)演習手法を、産学共同で開発・実践してきた。現在も受講生からのアンケートや自己成長に関する自己評価結果を参考に、教育効果を更に高めるための方法論を模索中で、プロジェクトマネジメントについても選択的にカリキュラムに導入し始めている。今後、更に産学官共創教育にまで展開した時に必要とされる能力とは何か、そのために何を教育すべきかなど我々が検討している内容について紹介し、聴衆と議論したい。

講演者プロフィール

上西 啓介(うえにし けいすけ) 【現職】大阪大学 大学院工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻 教授 2008年 大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 教授 2004年 大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 准教授 2002年 大阪大学大学院工学研究科生産科学専攻 講師 1996年 トロント大学研究員(1年間) 1992年 京都大学大学院工学研究科金属加工学専攻 博士(工学) 1990年 大阪大学工学部生産加工工学科助手任官 プロジェクト産業株式会社入社

1990年 京都大学大学院工学研究科金属加工学専攻 博士後期課程中退

講演資料

【2019年大阪大学】 産学官共創大学院構想と PM技術習得への動機付け

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産学官共創大学院構想と

PM技術習得への動機付け

2019年7月20日(土)

大阪大学 大学院

工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻

上西 啓介

PMI JAPAN FORUM 2019

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BE専攻の教育の考え方とOJE演習

大阪大学における産学共創活動

~Industry on Campus~

大阪大学における産学官共創大学院構想~Internship on Campus~

学生への教育効果と教員のFD活動

PBL実践のためのPM技術習得への動機付け

本日の講演の概要2

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大学としての役割

知価社会への構造転換を先導

イノベーションを担う人材を育成

社会のニーズ

(経済発展 等)

物財・情報から都市・地域環境までも含めた「モノづくり」に関して

多様な知恵の価値を盛り込めるような,新しい技術体系の構築

産業界のニーズ

(資本備蓄 等)

ビジネスエンジニアリング専攻の設立

知価社会を担う技術体系の構築へ

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企業において,知価社会で通用する新規事業戦略のデザインができる研究開発・事業企画リーダー

新産業分野を創出できるベンチャー起業家

工学の新しいコンセプトを提案できるオピニオンリーダー

個人の好みを満たせる新しい都市環境を生み出す行政などのポリシーメーカー

技術に対する知識と経営センスの両方を有し,技術をベースにそれを事業化することができる人材を育成

BE専攻で育成する人材

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• 最先端の工学専門知識 + それを活用する深い思考力

BE専攻の特徴(教育の観点から)

他専攻同様に、工学教育、修士論文研究はしっかりと

• 経済学、経営学に関する基礎的な知識経済学研究科と連携

MBA基礎科目を履修科目にとり入れる

3年間で、工学修士と経営学修士を取得可能

• 工学や経営学的知識を実社会に展開するための教養・デザイン力・行動力社会的課題の解決をグループで探究するOJE演習

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機能創成デザイン論,知価社会論,

材料創成論,材料分析学

リスク評価論,都市・地域再生論、

創成コラボレーション・コミュニケーション論,

などに加え、他専攻科目も

専門科目

アカウンティング・マネジメント

オペレーションズリサーチ,

マーケティング・マネジメント、

人的資源管理、投資理論

技術経営論など

MBA基礎科目テクノロジーデザイン論・演習,

イノベーションデザイン実践,

ビジネスエンジニアリング研究,

知的財産権・演習、技術融合論,

国際ビジネスと標準化,技術経営概論

OJE演習科目

ビジネスエンジニアリング専攻博士前期課程

修士論文

BE専攻のカリキュラム

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OJE法による演習の概要、特徴

グループワークを中心とする、学生による主体的・対話的で深い学び(M1前期では半日、週3回)

時間をかけ学生たちの議論・自律的思考を待つ。

教員は我慢し「すぐ教えない」

社会活動、企業活動を題材

連携と専任の教員ペアで指導 → 産学連携の教育 民間企業など学外からの多数の招へい教員、

協働研究所、学内他部局(産学共創本部など)

学外(企業、地域、自治体)との接触体験、フィードバック

幅広い価値観の獲得と思考プロセスの習得を重視

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OJE科目多様で幅広い視点

課題発見・解決能力、コミュニケーション能力などの基礎力

各科目群の教育目的

MBA基礎科目

経営感覚

専門科目、修士論文

専門性を深める

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目的

テクノベート・リーンスタートアップ

ゴール

方法

デザイン思考の手法を用いて、阪大のシーズを使った新たなビジネスアイデアを創出

90分 × 2 のセミナーを6回

グロービス生(社会人)と阪大大学院生、各12名ずつが共同受講

6チーム(各4名)がビジネスのアイデアを提案

更に製品化を目指す場合には、グロービス、阪大でのビジネスピッチに参加

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産業界・社会との連携

テクノアライアンス棟工学研究科 センテラス棟

共同研究講座・協働研究所の数

98件

(2019年 2月時点)

【主な参画企業】カネカ、日東電工、パナソニック、コマツ、日立造船、ダイキン、日本触媒、NTN、三井造船、三菱電機、NEXCO西日本、新日鉄住金、凸版印刷 等

うち、工学研究科は 25件

産業界・社会との要請に応えるため、企業との共同研究を積極的に実施。 最先端の研究成果を実際に社会に役立てる実学の取組を推進。

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大阪大学 産学共創の現状

協働研究所システム

共同研究講座の発展系

キャンパスに企業の雰囲気を!

10人以上の「企業」研究者が常駐産学連携による研究開発者育成新事業スタートアップ研究

システマチックに、迅速に、キャンパス内で大学研究者と協働を継続

阪 大

研究者・施設・設備等を提供

産業界等

資金・研究者・研究資料等を提供

●2年から10年の設置

●共同研究に専念

●知的財産の活用を重視した取決め

●出資企業と大学が協議して運営

教授又は准教授 1名(准教授~助教) 1名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・企業研究者ポスドク、大学院生兼任教授、准教授 etc.事務員

・大阪大学・出資企業(出向)・その他の機関

選考

共同研究講座・共同研究部門

2006年

2000年

2011年

テクノアライアンス棟他

大阪大学未来戦略企業等との協働研究所や共同研究講座を通じた「Industry on Campus」を深化させるとともに、これらを利用して産学連携での人材育成や挑戦的な研究への取組みを進める。

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共同研究講座/協働研究所 実績

平成26年度産学官連携功労者表彰(文部科学大臣賞)

第12回産学官連携功労者表彰~つなげるイノベーション大賞~

文部科学大臣賞

平成28年度産学連携学会「業績賞」表彰

産学連携学会において大阪大学の取組みが表彰されました!

産学連携学会は、産学連携学の確立等を目的として産学官の学識経験者や実務家等が集まり活動している学会です。6月16日に開催された産学連携学会第14回大会において、大阪大学の産学連携の取組みが「業績賞」に表彰されました。これは、平成18年度より導入した共同研究講座制度が、これまでの共同研究の在り方を大きく変えるものであること、平成23年度からは共同研究講座制度を拡大させた協働研究所制度を導入し、共同研究のさらなる発展を図っていること、および、共同研究講座シンポジウムの開催や産学連携学会での発表等を通じて制度の普及に努めてきたこと等が高く評価されたものです。他のモデルとなる先端的産学連携活動を行い、業績を上げた個人・団体が対象となる同賞を大学として受賞したのは、本学が初めてのケースとなります。今後も、産学共創の促進に向け、共同研究講座等の活用にとどまらず、他大学等の先駆けとなるような制度設計を進めます。理事・副学長 吉川秀樹【Open Innovation】

「阪大NOW 7月」より

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新理工学のためのテクノリサーチアリーナ拠点の確立3つの好循環 産学官共創大学院構想

ー産学官連携の新たな教育研究システムー

大学の強み工学研究科の強み 知の好循環

従来からの共同研究講座・協働研究所

大学 企業

人材の好循環 資金の好循環

※「組織」と「組織」間の流動性

※クロアポの活用

※博士人材(修士と博士)の育成

※日本の大学の共同研究費

100万未満:39%300万未満:43%(文科省)

国立研究開発法人

Industry on CampusA long-term vision important for industrial competitiveness

はめ込まれていないピースは?

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大学にある産業界で学ぼう!

http://www.mit.eng.osaka-u.ac.jp/ioc

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インターンシップ・オン・キャンパス

インターンシップ・オン・キャンパスには2つの運用形態を推進。学内の共同研究講座・協働研究所等の強みを活かし、従来型学外インターンシップだけではなしえないメリットの実現へ。

16

M1

M2

D1

D2

D3

①企業がキャンパスで院生を教える(新産業開拓を涵養)・産業界側からは、社会と繋がった課題を提供.産学共同研究に至る以前のアイデア段階の未成熟な課題を題材に(新産業を興す分野の調査・開拓などオープンイノベーションのきっかけを見つける)・大学側教員は、院生の知識・活動の調整,討論のマネジメントを実施.・院生は徹底した少人数グループ討論の下,調査・分析からビジネスモデル提案までを実施.・途中成果/最終成果発表等は産業界側役員級の前で.

②院生がキャンパス内の企業で学ぶ(実践力を養う)・学内の共同研究講座/協働研究所等において院生が長期インターンシップ(半年~1年)を実施.・産業界側と大学との守秘義務の下,産学共同研究テーマの研究に院生が集中して実施.・産業界側にとっては学内の知的リソース(ヒト・モノ・情報等)を活用でき大学との協働をさらに推進.・途中成果/最終成果発表等は産業界側役員級の前で.・研究成果の早期な社会実装・迅速な社会還元の実現へ.

2つの「Internship on Campus」

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共研(協働研究所/共同研究講座)

産学官共創大学院構想

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BE専攻・基幹専攻

阪大

特任研究員/招へい研究員

企業

専任教員

共研・研究指導(協働研究所/共同研究講座)

阪大

特任研究職/招へい研究職連携教員に

企業

博士人材(産学官共創コース、前期・後期)

基幹専攻

BE専攻(産学官共創講座)

共研の戦力

産学官共創での博士人材育成

協働研究所 産学官共創大学院構想

企業・大学との連携しての人材育成

専任教員 特任教員

入試

志願生(学部生、修士、社会人)

勧誘・事前相談広報・説明会・面接

・IoCの演習指導・講義(産業技術論等)・就学支援(Dは必須)

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育成すべき人材像(産業指向型博士人材) 産学官共創大学院構想

研究力の高度化に加えて、経済発展に寄与する新産業の創出に資する博士人材

18

具体的な人材像・新規事業戦略をデザインできる研究開発・事業企画リーダー・新産業分野を創出できるベンチャー起業家・大企業において企業内起業を牽引するプロジェクトリーダー・工学の新しいコンセプトを提案できるオピニオンリーダー・新しい社会像を生み出す行政などのポリシーメーカー

研究力(イノベーション創出)

実践力~研究事業化・社会実装を実現する能力~

俯瞰力(市場・顧客・技術・ロードマップ・事業戦略)

++ +

着想者 挑戦者 調整者・遂行者(0から1の創造) (1を100へ

事業化への挑戦) (事業を発展)

従来の研究指向型博士人材育成

工学を軸にソリューションを組立て実践する産業指向型博士人材育成

連携力(連携先との協働・

働きかけ力・マネジメント)

人材

スキル

・目標設定・課題抽出・研究手法考案・研究計画策定/実施

研究力をベースに、俯瞰力・連携力に加えて実践力を有し、社会に貢献するリーダーへ

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教育カリキュラム(案) ~博士前期課程の場合~ 産学官共創大学院構想

「研究力・「俯瞰力」・「連携力」・「実践力」および産学共同研究活動(インターンシップ・オン・キャンパス)を特徴としたカリキュラムを設定。産業界視点の科目「産業技術論」等を産学で共同開発。

大阪大学大学院改革ビジョンにあるUniversity-wide major minor systemに対応。基幹専攻の主専門分野をmajorとし、産学共同研究活動をminorとするコースを先行して実施。

X専攻の修了要件を満たす専門科目の単位数(例:20単位以上)を修得

+ 産学官共創コースの科目10単位以上を必修に

マテリアル分野の研究力科目 俯瞰力・連携力・実践力 科目

【修了要件】 30単位以上を修得し修士論文審査に合格すること

共同研究講座・協働研究所の専門分野に関する研究力科目(例:10単位以上)を修得 + 産学官共創コースの科目

20単位以上を必修に専門分野の研究力科目 俯瞰力・連携力・実践力 科目

実践力 科目群 単位

インターンシップ・オン・キャンパス1 (※)必修

4

インターンシップ・オン・キャンパス2 (※)必修

4

研究力 科目群 単位

環境材料工学 2

界面制御工学 2

機能材料化学 2

結晶成長工学 2

材料加工学 2

材料組織学 2 (※)産学共同研究に従事

研究力 科目群 単位

マテリアル社会連携学1

2

マテリアル社会連携学2

2

マテリアル科学創成工学1

2

マテリアル科学創成工学2 等

2

連携力 科目群 単位

知的財産権 2

技術融合論 2

国際ビジネスと標準化

2

プロジェクトデザイン 2

創成コラボレーション論等

2

俯瞰力 科目群 単位

産業技術論 2

〇〇〇〇 2

テクノロジーデザイン論 2

イノベーションデザイン実践 等

2

必修選択選択選択選択

必修選択選択 選択

基幹専攻(X専攻) 産学官共創コースのカリキュラムのイメージ

ビジネスエンジニアリング専攻 産学官共創コースのカリキュラムのイメージ

【修了要件】 30単位以上を修得し修士論文審査に合格すること

(※)「産業技術論」は産業界視点の科目19

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専攻の教育に対する学生の評価(2018年度)

• 満足度、 従来受けてきた教育との比較 (5段階)•

5:大変満足 58% 4:比較的満足 38% 3:ふつう 4%

• 履修価値

5:大変良い 42% 4:比較的良い 58% 2:あまり 0%

• 向上した能力

チームでの活動能力

多様性・視点の広さ

問題発見能力

ファシリテーション能力

プレゼンテーション能力

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PM教育に対する考え

■BE専攻では授業を開講するのではなく、OJE演習により

プロジェクトを経験することにより、学生が自ら主体的にPMを

学ぶことができるようデザインしている。

■演習・カリキュラムのデザインにおいては、PMの考え方は大

変参考になる。

しかしながら、それを教え過ぎると、学生はその考え方に縛ら

れ、自由な発想や創造の妨げとなる可能性がある。

■手段が先行するのではなく、まずは学生にどのような能力を

つけさせたいのかを考え、そのためには何を教え、何を自分で

失敗を通じて考えさせるのかなどの、演習のデザインを行う必

要がある。PMIJ2016資料

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OJE教育の課題

■活発に行ってはいるが、協働的で深い学びが

本当に成立しているのか?

■自由に発想はしているが、創造的なアイデアが

本当に出せているのか?

■失敗を通じて、どの程度学び、考えられているか?

■発散はできるが、収束が苦手

最低限の方法論は演習をミックスした授業で教える

教材化することにより、指導できる教員を増やす

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プロジェクトデザイン論 ~PBLのための教育コンテンツ

学習項目 学習目標1.チームビルディング チームとしての協働・仕事への取組み⽅や、⾃分とチームの関係性について

考え、チーム形成に資する能力を⾝に付ける。2.アイデア発散/収束 アイデアワークを通じ各種技法を修得する。

3.ロジカルシンキング ボトムアップ/トップダウン型の思考や、MECE、ロジカルツリー、PDCA等を意識した論理的思考を⾝に付ける。

4.情報整理 情報収集や、収集した情報の深読み、情報の活用・整理等に資する能力を修得する。

5.プロジェクトデザイン 目的の決定・共有や、成果イメージ、行うべきアクションの見える化と構造化や工程表等に関する技能を⾝に付ける。

6.ファシリテーション 到達点の設定、論点の絞り込み、論点把握のステップや、インタビュー力、傾聴力などに資する技能を修得する。

7.プレゼンテーション/報告書作成

5W1Hによる資料準備、グループでの資料作成、報告書とプレゼンテーションの違いを理解し、資料を作成する能力を修得する。

8.ビジネススキル(Eラーニング)

論理的に考える力、マーケティング、経営戦略、定量的な思考力、会計、リーダーシップ力、組織マネジメント力、グローバル環境、等のスキルをEラーニングにより修得する。

OJE演習の導入科目としての位置付けで、チームで研究・プロジェクトを立案し、設計、遂行する上で必要な方法論を教授。

過去のBE研究の実施内容をケーススタディとして解説。受講生には現在のBE研究のテーマに当てはめて考えさせる演習を実施。

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立ち上げプロジェクト憲章、ステークホルダー特定

計画要求事項収集、スコープ定義WBS・スケジュール作成

を「PM始めの一歩」を参考にしながら講義・演習

チームビルディング

5年前から導入し、効果が表れる

PD論におけるPM教育

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2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

A. チームビルディン

グ・プロジェクト目的

B. アイディアの発散・

収束

C. クリティカル・ロジカ

ルシンキング

D. 情報整理

E. 議事録F. 計画・スケジュール

管理

G. ファシリテーション

H. 成果報告書

I. プレゼンテーション

アンケート結果

H30.4/11

H30.5/30

H30.7/25

(ガイダンス時)

(第1学期中間発表会時)

(第1学期成果発表会時)

H30年度受講生を対象に、グループ演習で活用したスキル・手法について9分類(25項目)を挙げ、各々について5段階評価で回答。(1:完全に×, 2:少し×, 3:少し〇, 4:ほぼ〇, 5:完全に〇)

演習の経過に伴い、4月時に比べて12月下旬では全ての項目において向上。

Eラーニング教材ではクリティカルシンキングに関するコンテンツが豊富に用意。

講義で議事録のポイントを教授。受講生は毎週活用せざるを得ない状況。

H30.12/25(第2学期成果発表会時)

Page 27: 2019 年大阪大学】 - 一般社団法人 PMI日本支部2019年大阪大学】 産学官共創大学院構想と PM技術習得への動機付け 概要 大阪大学の特徴の一つが産学共創への取組である。例えば、多面的な産学協働活動を展開する拠点として、

専攻発足以来、15年間OJE演習というアクティブラーニング教育を産学協働で開発、実践してきた。

産学官共創構想の展開に伴い、その教育コンテンツとして、

PBL教育を充実させる必要がある。

学ぶ意欲を喚起させる課題の選択と、成果ではなくプロセス

を重視した、学生の学びを見守る姿勢が重要と考えている。

PBL教育のデザインにおいては、PMの考え方は大変参考に

なり、より多くの教員がPMを理解することが効果的と考える。

産業界からは社会課題を、大学からは学生の特性を双方に

伝え、育成したい人材像を明確にして、新たな産学官共創教育

コンテンツを共創していきたい。

まとめ