63ptnagano.jp/img/file33.pdf · 2020-04-14 · 63 発 行 一般社団法人...

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63 発 行一般社団法人 長野県理学療法士会 代 表佐藤 博之 (飯田市立病院介護老人保健施設ゆうゆう) 事務局380-0836長野市南県町685-2 長野県食糧会館5F TEL 026-234-3540 FAX 026-234-3550 編 集西入 洋一(鹿教湯三才山リハセンター三才山病院) 藤原印刷株式会社 特集 ・巻頭言 浅間南麓 こもろ医療センター 小林 丈人………………………………………………………………… 2 ・おしらせ …………………………………………………………………………………………………………… 13 ・こども福祉部情報 ………………………………………………………………………………………………… 15 ・学術の広場 「私たちがせん妄患者に対してできること」…………………………………………………………… 16 ・おすすめ!の一冊 「図解入門よくわかる首・肩関節の動きとしくみ」「心不全の基礎知識100」 ………………… 17 ・北から南から 三才山病院・ 瀬口脳神経外科病院 ………………………………………………………………… 18 ・徒然なるままに 「猿の温泉」 …………………………………………………………………………………… 20 ・賛助会員広告 ……………………………………………………………………………………………………… 21 ・編集後記 …………………………………………………………………………………………………………… 24 ①:海外活動で気づいた長野県理学療法士のチカラ ……………………………… 3 ②:小川村での10年の歩み 小さな村での大きな健康(夢)への挑戦 …… 9

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発 行●一般社団法人 長野県理学療法士会代 表●佐藤 博之    (飯田市立病院介護老人保健施設ゆうゆう)事務局●380-0836長野市南県町685-2    長野県食糧会館5F    TEL:026-234-3540 FAX:026-234-3550編 集●西入 洋一(鹿教湯三才山リハセンター三才山病院)    藤原印刷株式会社

特集

・巻頭言 浅間南麓 こもろ医療センター 小林 丈人………………………………………………………………… 2

・おしらせ ……………………………………………………………………………………………………………13

・こども福祉部情報 …………………………………………………………………………………………………15

・学術の広場 「私たちがせん妄患者に対してできること」……………………………………………………………16

・おすすめ!の一冊 「図解入門よくわかる首・肩関節の動きとしくみ」「心不全の基礎知識100」…………………17

・北から南から 三才山病院・ 瀬口脳神経外科病院 …………………………………………………………………18

・徒然なるままに 「猿の温泉」 ……………………………………………………………………………………20

・賛助会員広告 ………………………………………………………………………………………………………21

・編集後記 ……………………………………………………………………………………………………………24

①:海外活動で気づいた長野県理学療法士のチカラ ……………………………… 3

②:小川村での10年の歩み 小さな村での大きな健康(夢)への挑戦 …… 9

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巻 頭 言

東信ブロック局長を拝命し早 3年が経過しました。今回はブロック局(以下局)活動の紹介と最近の理学療法士について書きたいと思います。私が理学療法士として働き始めた頃、県士会の会員数は約 300 名程度、会長、副会長、事務局が主となり県全体で研修会などを行っておりました。月日は流れ現在会員数は 2000 名を超え、当局だけで 500 名余。いわば県内に 4つの県士会が存在する形となっています。仕事内容は各局で若干違いはありますが、主には各局単位の研修会開催(東信は年 2回)市民公開研修会や県学術大会の開催・担当、PT・OT・ST連絡会、スポーツサポート協力、施設間代表者会議の開催(年 2回)……その他諸々……です。これらはとても診療の片手間で行えるものではなく会員の皆様の努力で成り立つものです。今後も協力をお願いしたいところであります。最近の理学療法士に関してですが、局長をしておりますと著名な先生方と接することが多く、そこで不思議なことに必ず話題になる嫌な噂話があります。それは「最近の理学療法士治療は、患者をさすって、揉んで、歩かせるだけ」「理学療法士は、理屈は凄いが技術がない」……。長野県にはこのような理学療法士はいないと断言したいのですが、皆さんはこれについていかが思いますでしょうか?最近は EBM主体、頭で考えることばかりが先行し技術がついていかない何てこともあるのかとも思います。「疾患ではなく人間を見る」「先輩方の治療をしっかり見て、真似て、更に考えて、自分の技術を磨く」もう一度素直に自分の治療を見直し、自分の仕事が何なのかを考える。すると、このような噂話も吹き消されるのではないでしょうか。幸い長野県士会には教育プログラム、卒後教育など様々な教育が整備され、特に局主催研修会は技術研修を主とし技術向上には適したものとなっております。今後も積極的な参加をお願いしたいと思います。また、新たな教育システムも考案されています。今のうちに認定もしくは専門理学療法士の取得も考えてみてはいかがでしょうか。

東信ブロック局長 浅間南麓 こもろ医療センター 小林 丈人

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3News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

~タイ、チョンブリ県における町ぐるみ高齢者ケア・包括プロジェクトに参加して~

佐久総合病院 野牧 祐一郎

Ⅰ 自己紹介&はじめに佐久総合病院で訪問リハビリを担当しています、理学療法士の野牧祐一郎と申します。今回 JICAプロジェクトでタイ王国のチョンブリ県へ渡航し、高齢者ケアの一環として地域(在宅)でリハビリテーションを行う機会を頂きました。その様子やプロジェクトの背景等を今回記事にさせていただきました。

日本は世界で一番人口における高齢者の割合が多く(高齢化率世界 1位)、また世界一長寿な国(男女平均寿命世界 1位)となっています。少し意外に思いますが、1950 年代、主要先進国のなかで日本人が一番短命でした。現在、さまざまな要因から世界一に躍り出たことはとても誇らしいと思います。さらに長野県は日本における長寿の県ですので、長野県民としてなお誇らしいです。しかし、超高齢社会での課題も多くあります。中央省庁のHPを見れば生産年齢人口の減少、社会保障費の増大、介護負担の増加等、私たち理学療法士にとって密接に関係した問題が散見されます。今後半世紀で先進国のみでなく、開発途上国においても高齢化は急速に進展するとみられています。今回、プロジェクトで訪問したタイ王国においても例外ではなく、急速に高齢化が進んでいます。これらの背景において、長野県の理学療法士としての経験を生かし、タイにおける地域医療に貢献できたこと、またタイの皆さんと学び教わったことなどをご紹介させて頂きます。タイでは、日本車と日本のコンビニエンスストアをよく見かけます。多くの日本企業が進出していますし、また日本からの観光客も多い国です。食事は美味しく(また安く)、暑いなかでのビールは最高です。仏教を信仰している方が多く、温かい気候の影響もあるか親切で陽気な人柄を感じます。

特集①:海外活動で気づいた長野県理学療法士のチカラ

タイ王国

■基本データ■

人口:6,678 万人(2012 年)面積:51 万平方キロメートル(2011 年)1 人当たり GDP:5,479USD(2012 年)平均寿命:74 歳(2011 年)高齢者数(60 歳以上):890 万人(2010 年)*

高齢化率:12.9%(2010 年)*

出所:World Bank Databank, *UN World Population Prospects: The 2010 Revision

Population Database

ミャンマー

ラオス

タイ

カンボジアチョンブリチョンブリ

バンコク

ベトナム

マレーシア

インドネシア

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Ⅱ 高齢者プロジェクトの内容本プロジェクトは JICA(国際協力機構)、草の根技術協力の事業で佐久市、佐久大学とタイのチョンブリ県サンスク町、ブラパ大学の運営で行われています。事業名は「タイ、チョンブリ県における町ぐるみ高齢者ケア・包括プロジェクト―サンスク町をパイロット地域として」、佐久大学看護学部束田吉子教授がプロジェクトリーダーを務められています。ぜひHPをご覧になって下さいね。プロジェクトの目標はサンスク町における地域包括ネットワークの構築、介護、看護の人材育成等々で、佐久地域より佐久市役所、佐久大学に加え病院や企業など職域を跨ぎ、さまざまな専門家が参加しております。県士会員では佐久市役所高齢者福祉課小池香理氏、浅間総合病院リハビリテーション科神津哲也氏、鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院リハビリテーション部丸山陽一氏、当院理学療法科より市川美香、野牧(筆者)がタイへ渡航し、サンスク町を訪問し技術指導等を行っています。また現地での活動のほかに、タイより長野県へブラパ大学、サンスク町の方々が訪問された際は、浅間総合病院リハビリテーション科中心に介助技術習得の実技講習や福井県の理学療法士で友人でもある小林文平氏にご指導頂き、当院看護師坂井理恵氏と認知症に対するケア・リハビリテーションをテーマに講義や寸劇などを行いました。

技術指導(小池氏&市川氏)

日本での認知症講義(筆者)“ 認知症 ” は呪いや不徳ではなく、脳の病気である。(1 頁目)

現地でのリハビリ(丸山氏)

5News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

Ⅲ 理学療法士として行ったこと本プロジェクトは 2016 年 1 月より開始されており、さまざまな専門家がタイへ渡航し、またタイより多くの方が訪日され、日本の医療・介護(施設見学や訪問看護、リハへの同行等)を学ばれています。ここでは、私が理学療法士として実践したことを記載させていただきます。私の最初の渡航は 2017 年 8 月で、現地でブラパ大学の先生やサンスク町の職員さん(主には看護師さん)とお会いし、サンスク町役場でプロジェクトの進行具合の確認などを行い、実際に地域に出て、ケアを必要としているご家庭を訪問しています。2回目の渡航は 2018 年 1 月で前回同様地域への訪問と JICA タイ事務所、在タイ日本国大使館を訪問し、タイで私が感じたことなどお伝えさせていただきました。訪問を行う中でショッキングに思ったことは、日本では十分に回避出来そうな寝たきりや不要な臥床が、少ながらず訪問したなかでも複数名見られたということです。また、認知症や精神疾患の方を、家庭によっては隠してしまうということが事実ありました。2回の渡航での目標として、寝たきりからの脱却と活動性の向上、社会への参加を ICFの視点で提案、実践してきました。またこれらの取り組みはタイの皆さんの意欲が大きなパワーとなって、ある程度ではあるかもしれませんが良い方向へ進んでいる感触を得ています。印象的なケースをご紹介します。

Case 1主な疾患は Stroke写真でも感じるような印象的な表情をしていました。日中家族は仕事で、トイレには行けていません。外出はここ何年もしていませんでした。しかし、何をしたいですかとお尋ねすると、

「ヌードル」を食べに行きたいとおっしゃっていました。

麻痺は見られましたが、外出を制限される程度ではありません。ご本人の希望とあとはきっかけだけだったかもしれません。一緒に運動を開始し、「ヌードル」に向けた一歩が開始出来たと思います。表情もみるみる変わりました。2 回目にお会いした時に、みんなでヌードルを食べに行くことができました。今も LINE でリハの様子が送られてきます。

写真左:筆者

みんなでタイヌードル

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今回の取り組み、特に患者さんへのケアの視点で、欠かせない存在「オソモ」さんの紹介をします。サンスク町でも少しずつ看護師や理学療法士など専門職が地域を訪問していますが、日本に比べ専門職は圧倒的に少ない状況です。そこで登場するのが、地域のヘルスボランティアさん(日本の民生委員にあたるイメージ)、タイ語でオソモさんと言います(これは略語とのことです)。地域で困っている方を、地域の人たちが手助けする。今の日本では薄れてきているかもしれない地域の大きな強みが、このオソモさん達の存在です。1人の患者さんに対して、5,6 人で訪問しケアにあたっています。もちろん医療や介護を専門的に学んだわけではありません。しかし、今回のプロジェクトで我々と一緒に訪問し技術を身につけたり、座学を行ったり、また長野県にきて様々な知識、技術を習得されています。そして今まさに自分達の仕事の合間を縫って、地域に出てケアに当たっています。日本とタイの専門職、そしてオソモさんの力が合わさった時に大きな力となり、これからもタイで必要な医療、ケアを行えることを肌で感じています。

Case 2約 20 年前交通事故で脊髄を損傷しています。病院でリハビリを行い、松葉杖で退院しましたが、その後徐々に歩く機会が減り、数年前から寝たきりであったそうです。ご本人の思いは「死にたい」とのことでした。しかし、小池理学療法士のもと離床が開始され、私がお会いした時はもっと歩けるようになりたい。2 回目にお会いした時は外出したい、またバイクに乗りたいとおっしゃっていました。まさにこの方の元気に必要なきっかけとケアが日本、タイのチームで実現できたと思います。

タイでの勉強会声かけですぐに定員一杯です。

患者さん、家族にとってオソモさんは大切な存在です。

7News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

Ⅳ 長野県の理学療法士に求められたもの先に述べたように日本は世界に類を見ない超高齢社会で、この時代にどのような医療やケアが個人や家族、または社会のためになるのか、お手本となるものは多くありません。さらに長野県は寿命が長く、高齢者が多い県であるので、ここで実践していることがタイのみでなく、他の国にとっても自国の医療やケアを考えるスタディになると考えられます。実際に佐久での訪問リハビリをタイの方だけでなく、台湾、ブラジルからも医療の専門家が訪問し、見学されています。日々の臨床のなかで、私自身分からないことや解決できないことが多々あり、色々な方の力を借り何とか理学療法を提供出来ていますが、その困難であったこと、分からなかったことなど含め、今回のプロジェクトを通じてタイの方へ発信しております。(サンスク町のローカルテレビの取材でもお話しさせて頂きました)また、サンスク町で訪問リハビリを行うと、オソモさんや時に看護師さんに良い意味でビックリされることがあります。特別なことをタイで行っているわけではなく、日本で行われている標準的なリハビリテーションですが、それがタイでは新しい知識、技術であるということです。もちろんタイで教わったこと、日本での課題も多くあります。その最たるところは地域住民の結びつきだと思います。自分自身はサンスク町の方のように地域と関わり、結びつきというものを大切に出来ているのか自信がありません。日本においてもインフォーマルのケアは重要視させていますが、実践するのは難しさを大いに感じます。個人と個人の関わり、家族と家族との関わり、そういうものをケアに活かすこと。これからの課題にしていきたいと思います。

Ⅴ いち理学療法士としての思い日々仕事をするなかで、地域における理学療法のニーズが益々高まっているように感じます。住み慣れた地域で元気に自分らしく暮らすことは、高齢者のみではなくすべての世代に当てはまる思いであり、理学療法は‘元気’や‘自分らしく’のキーワードに大きく寄与すると思います。また日本は少子超高齢多死社会の時代を迎え、社会保障維持の観点からも地域ケア(またはセルフケア)が重要視されています。しかし、障害があっても地域で安心して生活を送るには、単一ではなく、さまざまな側面でのケアが必要なことが多くあります。だからこそ今回のプロジェクトに参加し、より一層「チーム医療」または「チームケア」の重要性を感じました。「チーム医療」という言葉は今でこそ当たり前なのかもしれませんが、私が理学療法士となり初めてその言葉を聞いたとき、衝撃を受けたのを覚えています。率直な思いとして、「リハビリは療法士のみが行うことではないのか」というものがありました。本プロジェクトは日本とタイの行政、大学、病院さらに企業やサンスク町のオソモさんまで沢山の方が地域住民を元気にしたい、地域をより良くしたいという思いで関わっています。特にオソモさんは強烈なパワーがあり、それに刺激され私自身大きなモチベーションになりましたし、チーム全体が人間味のある、表面上だけでない取り組みを行えていたと思います。そのような相乗効果が、プロジェクトを進める大きな力になったと思っています。チームケアとは目標に向かい、職種が違くも地位に差があっても、さらに国や人種すらも越えて、一人の患者さんのケアにあたる。そういうものではないかと思います。これからも(ほどほどに)いろいろな枠を越え、医療や介護を考えていきたいと思っています。個人的に枠を越えたチームを作るポイントは、「ワイワイ、食事会」じゃないかと思います。タイでも日本でも色々な方と立場を越え、一杯酌み交わしてきました(つまり飲み会です)。

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チーム佐久&サンスク

Ⅵ おわりに言語に関して、タイ語はもちろん英語すらままならない私ですが、周りのサポートで何とかコミュニケーションをとることが出来ました。もちろん長期間の渡航であれば言語能力による情報量の差などがより顕著となり、語学習得は重要なスキルなので(おそらく今後は)努力していきたいと思いますが……。また改めてノンバーバルコミュニケーションの重要性も感じております。日本で講習を行った際に「日本は世界一長寿ですが、あなたはそれを幸せに思いますか」と質問を受けました。様々な問題があり、人により全く考え方も違うと思いますが、私は「誇りに思います」とお答えしました。今の日本を形成していった先人に感謝しつつ、理学療法士をいう立場から社会に貢献していきたいと思っています。今回のプロジェクトに参加させていただき、人としての見聞を広げることが出来ました。束田教授はじめ関係各所の皆様、またタイのポワンチャイ先生、ラタナさん、サンスク町の皆様に感謝しています。またみんなで「ワイワイ、食事会」をしましょう!

オソモさんのバイクに乗る、左から ナロンチャイ町長、小松医師(佐久HP)柳田佐久市長、束田教授(佐久大学)

親愛なるポアンチャイ先生とラタナさん

9News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

~子どもから高齢者まで地域に近い場所で役に立ちたい~

NPO 法人 佐久平総合リハビリセンター 加藤 弘貴

NPO法人 佐久平総合リハビリセンター 代表理事の加藤弘貴です。今回大変ありがたいことに、この様な場を与えて頂き私の活動や思いをお伝え出来る事を嬉しく思っております。現在私はNPO法人を運営し、私を含め 4名の仲間を中心に東信・北信エリアでの地域事業をさせて頂いております。地域事業といっても幅は広く、各行政からの委託事業、障がい者施設、デイサービスでの機能訓練、保育・学校教育分野での運動器講習会、民間団体、企業からの健康増進事業、スポーツトレーナー活動、地域サロンでの介護予防講師など多岐にわたります。今回は私が 10 年以上関らせて頂いている小川村での地域事業についてご紹介をさせて頂きます。また大変名誉なことに小川村での保育園児から中学生までを対象とした運動器健康実践活動が、公益財団法人運動器の健康日本協会より平成 29 年度「運動器の 10 年 日本賞」の優秀賞に選ばれました。ここまで至るには行政をはじめ、学校関係者、保護者の皆様の御理解があり、何より前向きに一生懸命に取り組む子どもたち一人一人に改めて感謝を述べたいと思います。

公益財団法人運動器の健康日本協会 HP より http://www.bjd-jp.org/award/result_2017.html

小川村は、長野県の北西に位置し人口 2,607 人(平成 30 年 1 月現在)の小さな村になります。おやきが特産であり、小川村から眺める北アルプスは絶景で多くの観光客が年間を通して訪れます。山間部に囲まれた地域には診療所が一箇所、保育園、小学校、中学校が各一校、デイサービスや居宅支援を行う福祉施設が一箇所、プールやトレーニングルーム、体育館を併設する総合運動施設が一箇所あり、役場を中心に利用し易い場所に位置しています。小川村での活動は平成 19 年 10 月から開始され、当初は診療所からの訪問リハビリを行っていました。思い起こせば小川村との関りは、私の恩師や諸先輩方から活動をご紹介頂き、行政や診療所の先生の御理解により理学療法士が介入出来た経緯があります。一つの縁に多くの方が関って今に至る事を心から幸せに思います。介入当初より小川村保健センターに勤務する保健師さんには、ご指導を頂く機会が多く小川村の介護医療福祉の問題や保健事業ついて学ばせて頂きました。その中の一つに子どもの体力低下や体の不器用さなどの問題も上げられました。村内の子どもの運動量低下を憂慮した保育園園長と保護者から相談をきっかけに子どもの成長に合った遊びの必要性、姿勢指導が注目され、運動指導を定期的に開始しようと平成 20 年より保育園での「体育遊び」が開始されました。平成 21 年にはライフコーダーを用い園児の日中の活動量を測定したところ、先行研究より歩数、活動時間が少ない事が分かりました。この事からも保護者や園の先生方から改めて運

特集②:小川村での10年の歩み 小さな村での大きな健康(夢)への挑戦

前列右より 2 番目が加藤

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動の大切さの声を上げて頂き、保育園での活動は現在も継続して行っています。

〇保育園での体育遊び保育園での活動は現場の先生方、保護者が日頃から感じる「何か動きが変?」「姿勢が悪い?」「すぐ疲れるけど大丈夫?」といった声から始まっています。現場では内股で歩いている、掌を着く動作で指が開かない、四つ這いで上手く動作が出来ない。どことなく不安な動きに気付くことは出来ても、なぜそうなるのか?どうしていけばいいのか?そのことに関して悩んでいる事が分かりました。保育士は遊びのスペシャリストです。子どもたちを心から楽しませ、様々なアイディアで遊びを展開していきます。そんな環境の中に、理学療法士の視点を導入することで、手足の支え方や、姿勢の維

持、体の使い方などを促す要素を取り入れることができます。対象は年少~年長クラス、年間約 10回関らせて頂いております。可能な限り保育士の先生方にも体育遊びのコンセプトをご理解いただき、体の使い方、遊び方のねらいを共有し日常生活に馴染みやすく子どもたちが自発的に取り組む遊びを作れるよう連携しています。特に姿勢と柔軟性は年間通してのテーマとさせて頂き、良い立ち方・座り方など習慣になるように取り組んでいます。体の硬さでは年少クラスから下肢の柔軟性低下が目立ち、立位体前屈が取れない子がよく目立ちます。ストレッチや遊びの中で環境を工夫し体の使い方を促していく事で、柔軟性の改善や体の使い方が向上していきます。写真③の様に動物歩きを行う際に平均台を少し広めに配置し、あえて股関節の外転を促すことで四肢で支えると股関節の可動性も促されます。写真④は今年の年長組の体前屈の様子です。全員がしっかり膝を伸ばし前屈が出来るようになりました。このように専門職同志お互いの良いところを遊びに取り入れ、いくつもの遊びを作っていく事で楽しみながら身体を育む事が可能になります。小さな村だからこそ行政・保育現場・保護者・医療専門職の連携がとり易く、保育現場に理学療法士が介入するといった小川村ならではの活動が出来ているのだと感じています。

〇小学校での関わり保育園での取り組みを卒園して終わらせるのではなく、小学校へ引き継ごうとH23 年には小学校への姿勢・運動器指導がスタートしました。小学校ではラジオ体操のような運動習慣をつけるために学生専用のオリジナル体操を作成し全学年、授業間や朝礼に定期的な実施を促しています。運動器指導は虫歯教育をヒントに関節の老化とその障害を生徒にもわかるように関節磨き、体磨きとして普及に努め、今ではほぼ全生徒が身体に大切なストレッチや正しい姿勢を取れるようになりました。写真⑤は 3・4 年生の授業中に大腿四頭筋のスト

11News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

レッチを実際に行っている様子です。太ももの前を伸ばすには?と聞くとほぼ全員がしっかり実施してくれます。嬉しいことに平成 28 年度の体力測定では全学年で柔軟性の項目に改善が見られ、一定の成果を得ることができました。学校現場では子どもだけでは無く教職員の御理解と御支援が大きく、特に体育主任や養護教諭の先生方と連携を取る事の重要性を感じています。PTAにも親子で出来るパートナーストレッチの技術研修などを開催してきました。保護者には着替え中に出来るストレッチや、姿勢を良くするため椅子やテーブルの高さ指導など細やかに伝えました。また毎年の体力測定の結果や健康診断のデータを基に、養護教諭・体育主任・担任と話し合いを行い、日常生活での運動器指導を個別に実施しています。養護教諭の先生方とは成長期になり易い運動器疾患についての研修会や対処方法について定期的に連携を図っています。運動器検診が開始され、運動器疾患の早期発見・治療が以前よりスムーズに行える半面、医学的に異常がなく身体の機能、使い方に問題を抱える子を良く見かけます。そういった子ども達にこそ運動器指導をしっかり行い、体を良くする習慣が定着する様努めています。

〇中学校での関わり平成 24 年からは中学校での運動器障害の予防活動、養護教諭と連携し個別相談を開始しています。特に中学校では平成 28 年度より開始された運動器検診の結果から、疾患の早期発見を年に 1回の検診だけではなく、年間通して保健室で運動器検診が出来る仕組みづくりを行いました。また養護教諭から正しいストレッチ、ケアの仕方を生徒に伝えられる様、エクササイズシートを作成しシステムの構築を同年に行いました。医療機関へ受診するケース以外に対し、しっかりと体の機能を改善するプログラムを保健室で提供することは山間地の子ども達にとっては非常に有益な事であり、休まず部活動を続けることに繋がっていきます。その甲斐もあり運動器の問題に対し、生徒が体の状態を理解し自らストレッチや体のケアを行い改善が見られるケースも出ています。写真⑥の生徒は腰痛の緩解と増悪を繰り返し、養護教諭より相談を受けました。柔軟性低下も見られましたが、体の使い方があまり上手ではなくスクワットの姿勢も取れない状況でした。いくつか柔軟性を改善する体操と、体を支える体操を伝えたところ、不十分ではありますがいくらか改善してきたので継続して指導を行いました。(写真⑦)

⑥ ⑦

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当初の目標の一つに子どもの頃から運動器について指導を行うことで、学生の頃から自分の身体を大切にする習慣が身についてほしいと願い取り組んできました。学校卒業生から「ストレッチすると痛みが出なくなりました」「体操していると調子いいです」などと声を掛けてくれる事が何よりの幸せです。長年にわたり活動させて頂ける背景には行政や学校教育関係者、保護者の皆様の御理解とご支援のお陰であり深く感謝いたします。

〇今後の展望山間過疎部に関わり、小川村の現状や方向性など様々な事を考えながら私に出来る事を取り組ませて頂いております。恐らく県内の山間過疎部は少子高齢化に始まり、医療・介護・福祉、保健事業、学校教育と少なからず行き届いていない活動や問題を抱えているかと思います。近年では高齢者の介護問題や地域格差から地域包括ケアシステムの推進が急務の課題となっていますが、やはり子どもから高齢者の生活や健康をしっかり支えていく考えを持たなければいけないと痛感しています。「子どもは未来の高齢者」私の尊敬する先輩からこの言葉を教えて頂き、やはり子どもへの関わりの大切さを感じています。可能であれば多くの理学療法士や体の専門家に教育現場に入って頂き継続して関われる環境になってほしいと切に願います。私の関わる小川村では、中学卒業生の中に私の活動に興味を持ち理学療法士になろうと頑張っている子が数名います。嬉しいことに小川村に帰って地域を守りたいと話してくれる子が出てきました。自分の育った地域で多くの方の役に立てることは、地域住民にとっても嬉しいことであり、その将来を思い描くと本当に胸が熱くなります。今でこそ地域の介護予防事業などに理学療法士が出ていく事は多くなってきましたが、私はまだまだ不十分だと思っています。各地域に異なった課題があり、その地域を知り適切なビジョンを持ち、しっかり専門職と地域を繋ぐことができるコーディネート力を持った人材が必要になります。現在人口減少や高齢化率上昇の渦中にある長野県に於いて、理学療法士が地域で貢献できる内容はいくつもあります。各地域に参加するには課題もたくさんありますが、地域に出て理学療法士の力が十分に発揮できる環境の構築を目指し、後進の育成、私自身のスキルアップ、各地域との連携を続け、最終的には多くの地域住民へしっかり貢献し道を切り開いていきたいと思います。少しずつ地域活動に興味を持った若い理学療法士が増えてきました。時代に合わせ理学療法士として各地域事業で活躍する仲間が増える事を近い将来実現できるようこれからも精進していきたいと思います。

最後になりますが、地域事業の面白さ、難しさを私に教えて下さり、理学療法士としての基礎を築いてくださった恩師の中村崇先生、活動に賛同してくださり全面的に御支援いただいた行政、学校関係者の皆様、長い月日をかけ未熟な私を励まし信頼してくださった住民の皆様、共に切磋琢磨し良い地域を本気で目指してくれる仲間、関わってくださった全ての皆様に衷心より感謝を申し上げます。

13News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

おしらせ

会員各位 平成 30 年 4 月 1 日 (一社)長野県理学療法士会

会 長 佐藤 博之(公印省略) 第 47 回長野県理学療法学術大会

学術大会長 武田 健治(公印省略) 第 47 回長野県理学療法学術大会開催のご案内

拝啓

春暖の候,ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。さてこの度,第 47 回長野県理学療法学術大会を下記の通

り開催いたします。何かとお忙しい中とは存じますが,多数ご参加いただきますよう,ご案内申し上げます。

敬具

記 1.期 日 平成 30 年 6月 17 日(日)

2.場 所 伊那市生涯学習センター いなっせ (伊那市荒井 3500-1)

3.特別講演・市民公開講座および講師

テーマ 『地域包括ケアと理学療法』

講 師 石井 慎一郎 先生(国際医療福祉大学大学院 教授)

4.日 程 9 時 00 分~9時 30 分 受付

9 時 40 分~9時 50 分 開会式

10 時 00 分~11 時 00 分 演題発表Ⅰ・Ⅳ ※プログラム・抄録集は 5 月中に発送致します

11 時 10 分~12 時 10 分 定期総会 授与式

12 時 10 分~13 時 00 分 昼休み(昼食は各自持参してください)

13 時 00 分~14 時 00 分 特別講演 市民公開講座

14 時 10 分~15 時 20 分 演題発表Ⅱ・Ⅲ・Ⅴ

15 時 30 分~15 時 50 分 閉会式

5.参加費:会員は協会のマイページ(セミナーID 16445)から代金決済をして下さい。

事前申込:会員 PT 1,000 円 県 OT、ST 士会員 1,000 円

(楽天カード決済は手数料なし。現金振込の場合は別途 300 円の手数料がかかります。)

当日申込:会員 PT 1,500 円 県 OT、ST 士会員 1,500 円 非会員 PT 4,000 円

新卒者(PT OT ST)1,000 円 一般市民 無料 学生 500 円

※ 事前申込で代金決済手続をされた方はキャンセルによる返金は致しませんのでご注意ください。

6.当日は、受付にて理学療法士協会発行の会員カードが必要になりますので、必ずご持参いただくよう

お願い致します。

7.本研修会は「生涯学習」および「新人教育プログラム」のポイント対象となります。

8.託児 研修会当日は無料の託児室が設置されます。別紙を参照ください。

9.申し込み方法

①会員は、日本理学療法士協会のマイページからお申し込みをお願い致します。

②県 OT、ST 士会員の事前申込は、必要事項(研修会名、氏名、士会名、性別、生年月日、郵便番号、住所、

電話番号、メールアドレス)に必ずふりがなを振って明記し [email protected] にメールで連絡をして下さい。

(後日、現金振込用紙が送られてきます。別途 300 円の手数料がかかりますのでご了承ください。)

10. 申込締め切り 口座振替 5 月 8 日(火) 現金振込 5 月 28 日(月) 楽天カード 6月 3日(日)

11. 問い合わせ先

伊那中央病院 リハビリテーション技術科 準備委員長 有賀 正利

TEL: 0265-72-3121 E-mail: [email protected]

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平成 30 年 4 月 1 日

会 員 各 位

(一社)長野県理学療法士会

会 長 佐藤 博之(公印省略)

学術大会長 武田 健治

第 47 回長野県理学療法士学術大会における託児室のご案内

第 47 回長野県理学療法士学術大会参加者のために託児室を開設いたします.利用は無料となります

ので,お子様連れで参加される方はご利用下さい.

期 日 平成 30 年 6月 17 日(日)

場 所 安全上のため研修会会場受付にて案内致します.

対象年齢 0歳〜小学生

保 険 対象児は傷害保険に加入していただきます.(保険料は士会で負担)

利用時間 9:15~16:00(予定)

申し込み 下記の申し込み用紙にご記入のうえ,5 月 28 日(月)までに下記アドレス宛にメールにて

お申し込み下さい.E-mail: [email protected]

受付完了の返信メールを送信いたします。

そ の 他 後日,申込者には持ち物などの詳細をご連絡いたします.

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【送付・問い合わせ先】

伊那中央病院 リハビリテーション技術科 原 双葉(託児所担当)

TEL: 0265-72-3121 FAX: 0265-78-2248 E-mail: [email protected]

15News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

こども福祉部情報

長野県立こども病院紹介

長野県立こども病院は平成 5年に開院し、平成 22年には独立行政法人長野県立病院機

構に移行し“未来を担うこども達のために、質が高く、安全な医療を行います”という病

院理念の下に活動を続けてきています。

リハビリテーション技術科は、理学療法・作業療法・言語療法・心理療法・視能訓練の5部門で構成され

ています。また、他科と共催した4つの専門外来(発達障害専門外来、摂食・嚥下外来、補装具外来、ボト

ックス外来)を行っています。いずれもチームでお子さんの診察・評価をして発達段階や特性を確認し、治

療を行うことや、保護者や関係者に対応方法についての助言をしています。

理学療法部門では、赤ちゃん(新生児期)から原則 18歳までのお子さ

んを対象に介入を行っています。

・急性期治療を必要とする呼吸を悪くしたお子さんや、心臓の病気により

肺の合併症のあるお子さんの呼吸理学療法。

・中途障害や手術、長期入院により、発達や運動機能の改善を図る必要が

あるお子さんの運動療法。

・予定より早く生まれた赤ちゃんや、生まれつきや生まれたてから発達の

支援が必要な赤ちゃんの発達評価・支援(新生児理学療法)。

・哺乳が未熟な赤ちゃんに対しての哺乳評価と支援。

・お子さんが家に帰るための準備や練習(在宅移行支援)。

・運動発達の支援が必要なお子さんの発達に合わせた体の使い方の練習や指導。

・重度障害のお子さんの機能維持のための体操や呼吸理学療法、補装具等の

必要物品の作製。

・評価が必要と判断されたお子さんの6ヵ月・1歳の発達評価。

入院されていたお子さんたちは、退院後も外来通院にてフォロー

したり、お子さんの地元の中核病院や訪問リハビリテーションにてフ

ォローしたりしていただけるよう、各施設と連携しつつ行っています。

また、現職 PTや OTへの臨床研修や見学研修も受け付けています

ので、ご興味のあるみなさまは、詳細についてホームページをご確認

いただければと思います。

(長野県立こども病院 西川良太)

こども福祉部情報

長野県立こども病院紹介

長野県立こども病院は平成 5年に開院し、平成 22年には独立行政法人長野県立病院機

構に移行し“未来を担うこども達のために、質が高く、安全な医療を行います”という病

院理念の下に活動を続けてきています。

リハビリテーション技術科は、理学療法・作業療法・言語療法・心理療法・視能訓練の5部門で構成され

ています。また、他科と共催した4つの専門外来(発達障害専門外来、摂食・嚥下外来、補装具外来、ボト

ックス外来)を行っています。いずれもチームでお子さんの診察・評価をして発達段階や特性を確認し、治

療を行うことや、保護者や関係者に対応方法についての助言をしています。

理学療法部門では、赤ちゃん(新生児期)から原則 18歳までのお子さ

んを対象に介入を行っています。

・急性期治療を必要とする呼吸を悪くしたお子さんや、心臓の病気により

肺の合併症のあるお子さんの呼吸理学療法。

・中途障害や手術、長期入院により、発達や運動機能の改善を図る必要が

あるお子さんの運動療法。

・予定より早く生まれた赤ちゃんや、生まれつきや生まれたてから発達の

支援が必要な赤ちゃんの発達評価・支援(新生児理学療法)。

・哺乳が未熟な赤ちゃんに対しての哺乳評価と支援。

・お子さんが家に帰るための準備や練習(在宅移行支援)。

・運動発達の支援が必要なお子さんの発達に合わせた体の使い方の練習や指導。

・重度障害のお子さんの機能維持のための体操や呼吸理学療法、補装具等の

必要物品の作製。

・評価が必要と判断されたお子さんの6ヵ月・1歳の発達評価。

入院されていたお子さんたちは、退院後も外来通院にてフォロー

したり、お子さんの地元の中核病院や訪問リハビリテーションにてフ

ォローしたりしていただけるよう、各施設と連携しつつ行っています。

また、現職 PTや OTへの臨床研修や見学研修も受け付けています

ので、ご興味のあるみなさまは、詳細についてホームページをご確認

いただければと思います。

(長野県立こども病院 西川良太)

こども福祉部情報

長野県立こども病院紹介

長野県立こども病院は平成 5年に開院し、平成 22年には独立行政法人長野県立病院機

構に移行し“未来を担うこども達のために、質が高く、安全な医療を行います”という病

院理念の下に活動を続けてきています。

リハビリテーション技術科は、理学療法・作業療法・言語療法・心理療法・視能訓練の5部門で構成され

ています。また、他科と共催した4つの専門外来(発達障害専門外来、摂食・嚥下外来、補装具外来、ボト

ックス外来)を行っています。いずれもチームでお子さんの診察・評価をして発達段階や特性を確認し、治

療を行うことや、保護者や関係者に対応方法についての助言をしています。

理学療法部門では、赤ちゃん(新生児期)から原則 18歳までのお子さ

んを対象に介入を行っています。

・急性期治療を必要とする呼吸を悪くしたお子さんや、心臓の病気により

肺の合併症のあるお子さんの呼吸理学療法。

・中途障害や手術、長期入院により、発達や運動機能の改善を図る必要が

あるお子さんの運動療法。

・予定より早く生まれた赤ちゃんや、生まれつきや生まれたてから発達の

支援が必要な赤ちゃんの発達評価・支援(新生児理学療法)。

・哺乳が未熟な赤ちゃんに対しての哺乳評価と支援。

・お子さんが家に帰るための準備や練習(在宅移行支援)。

・運動発達の支援が必要なお子さんの発達に合わせた体の使い方の練習や指導。

・重度障害のお子さんの機能維持のための体操や呼吸理学療法、補装具等の

必要物品の作製。

・評価が必要と判断されたお子さんの6ヵ月・1歳の発達評価。

入院されていたお子さんたちは、退院後も外来通院にてフォロー

したり、お子さんの地元の中核病院や訪問リハビリテーションにてフ

ォローしたりしていただけるよう、各施設と連携しつつ行っています。

また、現職 PTや OTへの臨床研修や見学研修も受け付けています

ので、ご興味のあるみなさまは、詳細についてホームページをご確認

いただければと思います。

(長野県立こども病院 西川良太)

こども福祉部情報

16

長野中央病院 栗田 潔

学術の広場私たちがせん妄患者に対してできること

整形外科、内科病棟を中心に一般病棟のリハビリを担当している私にとって、せん妄症状の患者と接することは少なくありません。

せん妄の概念として、原因を問わずびまん性の脳機能障害の結果生じる様々な器質的な病態全体を指すと言われており、何らかの身体疾患により一時的に脳に機能不全が起こることでせん妄となります。せん妄は全身状態の悪化や不調を示す症状であり、単なるストレスでは基本的に症状は出現しないと言われています。また近年、虚弱性を表すフレイルの状態にある心臓外科術前の患者は、術後せん妄を発症しやすいという報告があります。もともと中枢神経系に器質的な脆弱性を持ち、機能的予備力が低下した状態にあるフレイル患者は、手術侵襲に対して脳機能を維持することが困難になり、せん妄を発症しやすいと言われ、術前のフレイルの状態の評価は極めて重要であるようです。

また、せん妄は認知症と類似点も多くあり混同されがちです。臨床上認知症にせん妄が被さるケースは多々あり、認知症がある患者はせん妄を発症することが多いという報告もあります。ですが、せん妄と認知症を比較して考えることも大切であり、発症時期や意識レベル、日内変動など異なる点は幾つかあり、正確な評価には入院前の ADL や IADL の情報収集も極めて重要だと考えられます。せん妄の評価にはDSM − 5、CAM、ICDSC など様々な評価ツールが存在しており医師や看護師中心に適切な評価が求められています。

せん妄の対策としては大きく発症予防と重症化の予防があり、薬物療法では抗精神病薬を用いた予防の取り組みが中心で、少量の投与で重症化を防げるという報告があるようです。非薬物療法としては確実な予防効果をもつ介入方法は示されていませんが、私たちにも関連がある点としては環境因子の調整(日中の運動量の確保、術後の早期離床、感覚入力、見当識を促すような声掛けや activity、脱水予防、疼痛評価など)に効果があるとされており、リハビリの中でも様々な視点からせん妄に対して評価やアプローチができるのではないかと感じました。また、リハビリを通じフレイルの予防がせん妄予防にもつながる可能性も少なからずあるように思いました。集中治療領域でも ABCDE ハンドルのようにせん妄とリハビリを関連付けた考え方も広がりつつあり、私たちにできることも多くありそうです。

まとめきれませんが最後に、せん妄を体験した患者の 2 人に 1 人はせん妄の体験を記憶しており、その 80%の患者が苦痛であったと報告した研究があります。せん妄症状の患者は苦痛や不安感が強くあるということを念頭に置き、背景にある身体疾患を評価しながら関わっていくことが重要だと思います。

〈参考文献〉・せん妄診療 はじめの一歩 誰も教えてくれなかった対応と処方のコツ 小川朝生 著・上坂建太 他 ICU および超急性期における精神機能障害に対するリハビリテーション Clinical

Rehabilitation25 巻 11 号 2016.11.15 p.1068-1074

17News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

会員の皆様のおすすめの書籍を紹介させて頂きます。

タイトル:『図解入門よくわかる首・肩関節の動きとしくみ』著  者:永木 和載監  修:大平 雄一出版社名:秀和システム

本書は、その題名、表紙からもわかるように、いわゆる専門書ではなく、一般書です。中も題名の通り、図や写真が多く、見開きでわかりやすい構成になっています。わかりやすいだけでなく、内容を見ると、筋による2つの頸部安定化理論だとか、肩の夜間痛の2つの原因説など、なかなか侮れない部分も多く、頸部~肩周囲の解剖、運動学を再確認できます。読んでいて新たな発見があるかもしれません。また、参考文献が細かく記されていて、より内容を深

く知るための一助になっています。著者は理学療法士であり、実は本書は、あとがきにもあるように「他人のからだに何かを施す立場」の人に向けて書かれたものです。ところどころ「理学療法士なら、こういうことは知っておこうぜ(もちろんこんな書き方はされていませんが)」的な、著者からの熱い思いも伝わってきます。手元に置いて、広く読んで知識の確認をするにも、気になる項目を選んで読むにもいい1冊です。著者の言う「はずれくじをひいた」と患者さんに思わせない理学療法士であるために。� 飯綱町立飯綱病院 田畑 哲

タイトル:『心不全の基礎知識100』著  者:佐藤 幸人出版社名:文光堂

今回、私が紹介させて頂く本は【心不全の基礎知識100】(著�佐藤幸人)です。心不全は多くの理学療法士が関わることの多い疾患の一つではないでしょうか。また、心不全と聞くと苦手意識から身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。理学療法実施時はもちろん、後輩に質問された時やチームで話をする際にある程度の知識が必要と感じられる方は多いと思います。この本の内容は病態や生理、心電図やエコー・カテーテルなどの検査の見

方、内服薬やその他の治療について、生活指導や運動指導についてと多岐にわたり簡易的に表記されています。また、題名に『100』とあるように1項目2~4頁の100の項目に分けて解説されています。図式や表も多く、一つの項目を読むのに時間を要しませんし、気になる項目だけ読むにも便利に感じています。是非、これを機に心不全について再確認してみてはいかがでしょうか。� 丸子中央病院 小峯 大明

おすすめ!の一冊

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●鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 三才山病院� 寒川 弘一

リハビリテーション 最後の砦を目指す!! 

当院は標高 850m、東北信・中南信を結ぶ交通の要衝である三才山トンネル近くの山間に位置する 237 床の病院です。「こんな所に病院があるの?」と初めて来られた方は皆さん驚かれます。歴史は古く、昭和 40 年に長野県医師会直営 奥鹿教湯温泉病院として開設しました。当時、この地に温泉が出たこともあり、手術室も完備されたリハビリテーション専門病院として注目されたようです。開設当初から脳卒中、交通事故等の後遺障害の方達を主な対象として診療を行ってきました。その後、医師会から経営移譲され平成元年に長野県厚生農業協同組合連合会 鹿教湯三才山病院となりました。そして平成 19 年には鹿教湯病院と経営統合され鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 三才山病院となり現在に至っています。同平成 19 年には、長野県下医療機関では最初となる指定療養介護事業所を開設し、18 歳以上の神経・筋疾患患者等の受け入れを始めました。現在では 80 床を擁し、当院の特徴的な診療部門となっています。この他に 34 床の回復期リハビリ病棟をはじめ、ボツリヌス療法やロボットスーツHAL、rTMSなどニューロリハビリテーションを行う医療療養型病棟が 93 床、介護療養型病棟が 30 床あります。リハビリテーション部のスタッフは医師 2名(内専門医 1名)、PT19 名、OT18 名、ST8 名、健康運動指導士(医療体育)2名、MSW4名、診療調整科事務 1名の計 54 名で、他に非常勤で鹿教湯病院から義肢装具士、臨床心理士が診療に参加しています。従来より「リハビリテーション最後の砦」「納得の医療」をスローガンに回復期から生活期までの長い期間、患者さん、入所者さん、利用者さんの気持ちや生活に寄り添った診療に心がけています。また、「働きがいのある、働きやすい職場を作ろう」という職場目標も掲げており、スタッフ 1人 1人がチームの中で成長できることを目指し、日々頑張っています。

北から南から

19News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

●医療法人円会 瀬口脳神経外科病院� リハビリテーション科

当院は、昭和 53 年に脳脊髄疾患の専門病院として開設しました。飯田下伊那地域の脳卒中救急救命に関わり、急性期から亜急性期リハビリテーションを実施しています。リハビリテーションスタッフは理学療法士 8名、作業療法士 4名、言語聴覚士 2名です。脳卒中専門病床 9床、一般病床 51 床、地域包括ケア病床 6床を有しています。スタッフ数は少ないですが、平成 14 年から 365 日体制を開始し、入院当日からリハビリテーションが開始できるようにしています。同一法人内に、介護老人保健施設「円会センテナリアン」(理学療法士 3名、作業療法士 3名、言語聴覚士1名)があり、リハビリテーションスタッフは生活期のリハビリテーションを経験できるようにローテーションを実施しています。

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丸子中央病院内山 奈美子

リレーエッセイ

猿の温泉

先日、天気の良い日に地獄谷野猿公苑へ行ってきました。目的は温泉に入っているお猿さんを見ること。駐車場から 30分程歩くのですが、雪が溶けてジャリジャリしている部分や凍ってツルツル滑る部分がたくさん。転ばないよう必死に歩きました。ようやく公苑に到着。猿は沢山いましたが、一匹も温泉に入っていません。せっせと何やら拾って食べ、温泉の近くに来てもお湯を飲むだけ。カメラを構えてシャッターチャンスを狙う人が沢山いましたが、お猿さんが温泉に入る気配は全くありません。後々分かったことですが、猿は天気の良い日は日向ぼっこをし、温泉に入る確率は低いそうです。こんなに寒いのにお猿さんは湯冷めしないのかな?と心配になりましたが、猿は汗腺が少なくあまり汗をかかないため湯冷めをし難いそうです。行く機会があれば、悪天候でとーっても寒い日を狙って行ってみて下さい。温泉に入っているお猿さんに会えるかもしれません。

21News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

TEL :0263-40-1122 E-mail [email protected]

22

長野市丹波島2丁目10-127070026 283

381-2246

土屋メディカル株式会社

■ 本    社 〒390-0873 松本市丸の内8-1 TEL.(0263)38-0411 FAX.(0263)38-0266■ 安曇野事業所 〒399-8204 安曇野市豊科高家2287-3 TEL.(0263)71-3030 FAX.(0263)71-3033■ 商品管理センター 〒399-8204 安曇野市豊科高家2287-3 TEL.(0263)71-3020 FAX.(0263)71-3022

■ 長 野 事 業 所 〒381-0022 長野市大豆島3107-1 TEL.(026)221-1380 FAX.(026)221-1248■ 伊 那 営 業 所 〒399-4511 上伊那郡南箕輪村田畑5565-3 TEL.(0265)73-2281 FAX.(0265)74-1006■ 伊那営業所飯田分室 〒395-0804 飯田市鼎名古熊2151 1-1 TEL.(0265)55-1160 FAX.(0265)55-1161

■ 佐 久 営 業 所 〒385-0011 佐久市猿久保127-6 TEL.(0267)68-8810 FAX.(0267)68-8479■ 専 任 事 業 所 〒390-0873 松本市丸の内8-1 TEL.(0263)38-0366 FAX.(0263)38-0367■ 介護用品営業所 〒390-0873 松本市丸の内8-1  (ヘルスケアテック) TEL.(0263)32-4124 FAX.(0263)32-6115

23News of the Nagano Physical Therapy Association No.63

長 野 営 業 所 tel. (0263) 48-2061

ながの PT PR後藤

2016/08/03

本 社: 〒485-8555 愛知県小牧市大字林210番地の3 tel.(0568) 47-1701 名 古 屋 営 業 所/静 岡 営 業 所

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開発協力:長野中央病院リハビリテーション科 中野友貴先生

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開発協力:総合病院 南生協病院 元田英一先生

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原稿掲載依頼

「PT�ながの NEWS」へ原稿の掲載をご希望される方は、広報部までご連絡をお願い致します。メールアドレス:[email protected]

編集後記

冬季オリンピックは過去最多のメダルラッシュとなり嬉しい限りではあります。オリンピック、パラリンピックが終った後、テレビなどで選手は世界を目標に日々トレーニングを重ねているという特集をよく目にしました。今号の特集にもあるように私達も世界に目を向け、活動の幅を広げられるように日々研鑽が必要だと痛感した今日この頃です。今年度も皆様へ様々な情報を発信できるように広報部一同、活動していきたいと思います。� 細田 智彦

事務局移転のお知らせ

住所・電話番号をお間違いのないように。

(一社)長野県理学療法士会事務局

〒 380-0836 長野市南県町 685-2 長野県食糧会館 5FTEL:026-234-3540 FAX:026-234-3550 (一社)長野県理学療法士会ホームページ

http://www.pt-nagano.or.jp