2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速...

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Bank of Ayudhya PCL. 三菱UFJ銀行 経営企画部 経済調査室 MUFG Holding (Thailand) Co., Ltd. Bangkok MUFG Limited MUFG Participation (Thailand) Co., Ltd. 20202月号) 【目次】 1. タイ経済指標推移 ------------------------------------------------ P 1 2. タイ経済・政治・社会ニュース--------------------------------------- P 3 3. 為替相場動向 ---------------------------------------------------- P 5 4. バーツ金利動向 -------------------------------------------------- P 6 5. 主要金融指標 ---------------------------------------------------- P 7 6. 今月のトピックス<タイの観光産業>--------------------------------- P 8 7. タイにおけるMUFGグループのサービス体制について ------------------- P13 (2020年2月13日作成)

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Page 1: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

Bank of Ayudhya PCL.

三菱UFJ銀行 経営企画部 経済調査室 MUFG Holding (Thailand) Co., Ltd.

Bangkok MUFG Limited MUFG Participation (Thailand) Co., Ltd.

(2020年2月号)

【目次】

1. タイ経済指標推移 ------------------------------------------------ P 1

2. タイ経済・政治・社会ニュース --------------------------------------- P 3

3. 為替相場動向 ---------------------------------------------------- P 5

4. バーツ金利動向 -------------------------------------------------- P 6

5. 主要金融指標 ---------------------------------------------------- P 7

6. 今月のトピックス<タイの観光産業>--------------------------------- P 8

7. タイにおけるMUFGグループのサービス体制について ------------------- P13

(2020年2月13日作成)

Page 2: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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1.タイ経済指標推移

タイの主要経済指標2017 2018 2019 19/1-3 4-6 7-9 10-12

名目GDP(10億ドル) 456 505

人口(100万人) 66.2 66.4 66.6

1人あたりGDP(ドル) 6,883 7,605

実質GDP成長率(前年比、%) ( 3.9) ( 4.1) ( 2.8) ( 2.3) ( 2.4)

製造業生産指数(前年比、%) ( 2.5) ( 2.8) (▲1.2) (▲2.5) (▲4.3) (▲6.9)

民間消費指数(前年比、%)※ ( 2.3) ( 4.8) ( 2.5) ( 4.4) ( 2.2) ( 1.2) ( 2.1)

自動車販売台数(台) 871,647 1,041,739 1,007,552 263,549 260,221 238,077 245,705

       (前年比、%) ( 13.4) ( 19.5) (▲3.3) ( 11.2) ( 3.3) (▲7.5) (▲16.8)

消費者物価指数(前年比、%) ( 0.7) ( 1.1) ( 0.7) ( 0.7) ( 1.1) ( 0.6) ( 0.4)

失業率(%) 1.2 1.1 0.9 1.0 1.0

輸出(FOB)(100万ドル) 235,267 253,431 242,981 59,852 60,553 63,295 59,169

      (前年比、%) ( 9.8) ( 7.7) (▲3.2) (▲4.0) (▲4.2) (▲0.0) (▲4.9)

輸入(FOB)(100万ドル) 201,107 229,808 216,351 53,393 54,844 55,333 53,221

      (前年比、%) ( 13.2) ( 14.3) (▲5.4) (▲2.9) (▲3.4) (▲6.8) (▲7.6)

貿易収支(100万ドル) 34,161 23,623 26,630 6,459 5,710 7,962 5,948

経常収支(100万ドル) 50,211 37,736 37,308 12,723 5,067 9,239 10,389

資本収支(100万ドル) ▲ 12,429 ▲ 21,620 ▲ 5,109 ▲ 3,215 ▲ 1,045

 直接投資(100万ドル) ▲ 10,586 ▲ 5,670 ▲ 3,758 ▲ 1,510 499

 証券投資(100万ドル) ▲ 2,150 ▲ 5,431 ▲ 2,569 1,198 ▲ 6,138

 その他投資(100万ドル) 188 ▲ 10,554 969 ▲ 4,312 4,327

総合収支(100万ドル) 25,957 7,266 5,463 104 6,758 1,258

BOI外資申請金額(100万バーツ) 290,699 582,558 506,200 84,104 63,065 56,197 302,834

 うち日系 136,030 74,416 26,845 15,609 16,733

BOI外資承認金額(100万バーツ) 230,811 255,605 74,951 38,578 59,065

 うち日系 91,801 93,675 17,695 11,487 32,576

対外債務残高(100万ドル)◎ 155,225 162,376 164,495 166,791 166,220

外貨準備高(除く金)(100万㌦)◎ 196,121 199,296 216,821 205,792 208,837 213,249 216,821

翌日物レポ金利(%)◎ 1.50 1.75 1.25 1.75 1.75 1.50 1.25

為替(バーツ/ドル)* 33.93 32.32 31.04 31.63 31.61 30.72 30.27

株価指数◎ 1,753.7 1,563.9 1,579.8 1,638.7 1,730.3 1,637.2 1,579.8

タイの主要経済指標19/5 6 7 8 9 10 11 12 20/1

名目GDP(10億ドル)

人口(100万人)

1人あたりGDP(ドル)

実質GDP成長率(前年比、%)

製造業生産指数(前年比、%) (▲3.4) (▲5.3) (▲3.3) (▲4.5) (▲5.1) (▲8.1) (▲8.3) (▲4.3)

民間消費指数(前年比、%)※ ( 3.6) ( 2.4) ( 2.6) ( 1.2) ( 0.4) ( 2.4) ( 2.9) ( 1.7)

自動車販売台数(台) 88,097 86,048 81,044 80,838 76,195 77,121 79,299 89,285

       (前年比、%) ( 3.7) (▲2.1) (▲1.1) (▲6.9) (▲14.1) (▲11.3) (▲16.2) (▲21.4)

消費者物価指数(前年比、%) ( 1.1) ( 0.9) ( 1.0) ( 0.5) ( 0.3) ( 0.1) ( 0.2) ( 0.9)

失業率(%) 1.1 0.9 1.1 1.0 1.0 0.9 1.1 0.0

輸出(FOB)(100万ドル) 20,782 21,299 21,034 21,864 20,397 20,500 19,575 19,095

      (前年比、%) (▲7.2) (▲2.1) ( 3.8) (▲2.1) (▲1.5) (▲5.0) (▲7.7) (▲1.7)

輸入(FOB)(100万ドル) 19,380 16,898 19,341 18,281 17,711 18,410 17,606 17,206

      (前年比、%) (▲0.2) (▲9.6) ( 0.9) (▲15.5) (▲4.5) (▲9.2) (▲13.9) ( 1.8)

貿易収支(100万ドル) 1,403 4,401 1,692 3,583 2,687 2,090 1,969 1,889

経常収支(100万ドル) ▲ 376 3,923 1,768 3,990 3,553 2,905 3,375 4,109

資本収支(100万ドル) ▲ 4 ▲ 760 2,543 ▲ 1,436 ▲ 961 ▲ 1,380

 直接投資(100万ドル) ▲ 88 ▲ 222 ▲ 297 ▲ 110 2,147 232

 証券投資(100万ドル) ▲ 743 2,507 ▲ 254 ▲ 2,517 ▲ 3,244 ▲ 372

 その他投資(100万ドル) 827 ▲ 3,045 3,094 1,191 137 ▲ 1,240

総合収支(100万ドル) ▲ 577 1,874 4,495 1,009 1,042 1,088 936 ▲ 766

BOI外資申請金額(100万バーツ)

 うち日系

BOI外資承認金額(100万バーツ)

 うち日系

対外債務残高(100万ドル)◎

外貨準備高(除く金)(100万㌦)◎ 203,498 208,837 211,373 212,650 213,249 215,298 213,783 216,821

翌日物レポ金利(%)◎ 1.75 1.75 1.75 1.50 1.50 1.50 1.25 1.25 1.25

為替(バーツ/ドル)* 31.80 31.11 30.82 30.77 30.57 30.36 30.25 30.21 30.45

株価指数◎ 1,620.2 1,730.3 1,712.0 1,654.9 1,637.2 1,601.5 1,590.6 1,579.8 1,514.1

(注)*印:期中平均値、◎印:期末値。『民間消費指数』は季節調整値の前年比、輸出入および貿易収支は国際収支ベース。

(資料)タイ中央銀行、国家経済社会開発委員会、CEIC等より三菱UFJ銀行経済調査室作成

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2019年通年の自動車販売台数は前年比▲3.3%と 3年ぶりの減少

2019 年通年の自動車販売台数は 100.7 万台、前年比▲3.3%と 3 年ぶりに前年を下回

った。昨年が同約+20%と大幅な増加を記録していたことや、米中通商摩擦やバーツ

高によって消費者マインドが冷え込んだこと等が要因と考えられる。2020年について

は、昨年より減少し、100万台を割り込むとみる向きもある。

2019年通年の外国人来訪者数は前年比+4.2%と 5 年連続で増加

2019年通年の外国人来訪者数は 3,980 万人、前年比+4.2%と 5 年連続で増加した。国・

地域別の内訳をみると、欧州は同▲1.0%と減少したものの、全体の約 3 割を占める中

国が同+4.4%と増加を続けた。

図表 1:自動車販売台数の推移 図表 2:外国人来訪者数の推移

(経済調査室)

-60

-40

-20

0

20

40

60

80

100

0

20

40

60

80

100

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140

160

11 12 13 14 15 16 17 18 19

自動車販売台数〈左目盛〉同(伸び率)〈右目盛〉

(万台) (前年比、%)

(資料)タイ工業連盟統計より三菱UFJ銀行経済調査室作成

(年)-20

-10

0

10

20

30

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

11 12 13 14 15 16 17 18 19

その他 欧州NIEs ASEAN中国 全体(伸び率)〈右目盛〉

(万人)

(年)

(資料)タイ観光庁統計より三菱UFJ銀行経済調査室作成

(前年比、%)

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2.タイ経済・政治・社会ニュース

Source

【政治・経済関連】

1月2日

タイ中銀

“タイ中銀、バーツ高を注意深く監視=「引き続き荒い動き」”

タイ中央銀行は2日、年末年始休暇前に通貨バーツが上昇したことを受け、バーツ相場を注意

深く監視しているとの声明を発表した。

バーツは対ドルで上伸。ドルは1ドル=30バーツの水準を下回った。ただ2日の外為市場で

バーツは値を消し、中銀は流動性が通常に戻ったとの見方を示現。タイ中銀高官は声明で、「市場

が調整する中、バーツは引き続き荒い動きをする」と予想。「中銀はバーツを注意深く監視する」

と強調。

バーツは対ドルで2019年12月30日、29.91バーツと6年以上ぶり高値を付けた。

年明け2日の取引では、0528GMT(日本時間午後2時28分)時点で30.10バーツと

なった。タイの大幅な経常黒字を背景に、バーツは19年、8.8%上昇。アジア通貨で最も好

パフォーマンスだった。

1月10日

タイ商工会議

所大学経済研

究所

“12月の消費者信頼感指数、68カ月ぶりの低水準=経済不安続く”

タイ商工会議所大学経済研究所は10日、2019年12月の消費者信頼感指数が前月の

69.1から68.3に低下し、68カ月ぶりの低水準になったと発表した。10カ月連続で前

月を下回った。楽観・悲観の分かれ目とされる100を大きく下回っている。6カ月後の指数も

79.6から78.1に悪化した。

同研究所は指数低下について、政治的な不透明感や、世界的な景気減速とバーツ高に伴う輸出

不振などで、経済への不安が続いていることが要因だと説明した。

算出要素別では、経済情勢に関する指数が56.0(前月56.4)、雇用機会が64.8

(65.4)、将来の所得が84.2(85.6)でいずれも前月を下回った。

1月14日

一般報道

“19年の投資申請額、7561億バーツ=EEC向けが6割弱-BOI”

タイのソムキット副首相は13日、2019年におけるタイ投資委員会(BOI)への投資申

請件数が1624件、総額が7561億バーツだったと発表した。当初目標の7500億バーツ

を若干上回った。

申請件数は前年の1626件とほぼ同水準だったが、総額は9017億7200万バーツから

16.2%減少した。

このうち東部経済回廊( EEC) 向け投資申請は506件で、金額は全体の59%に当たる

4448億8000万バーツ。また、政府が手厚い優遇を与えて投資誘致を進めているハイテク

産業の申請は838件、金額は全体の38%を占める3865億2000万バーツ。業種別にみ

ると、電気・電子への申請額が最高の804億9000万バーツ。次いで自動車・同部品

740億バーツ、石油化学・化学品401億バーツなど。

BOIのドゥアンジャイ長官は20年について、外国企業のタイへの大規模投資促進のための

新たな政策パッケージ「タイランドプラス」の導入や、EEC域内のプロジェクトに対する投資

恩典の拡充などで、投資申請が増加するとの期待を示した。

1月22日

タイ工業連盟

“12月の工業景気信頼感、前月下回る=消費冷え込み・輸出減で”

タイ工業連盟(FTI)が22日発表した2019年12月の工業景気信頼感指数は前月の

92.3から91.7に低下した。

FTIは指数低下について、購買力低迷に伴う消費冷え込みや世界的な景気減速とバーツ高に

伴う輸出の減少などが要因と分析した。FTIは、3カ月後の工業景気信頼感指数の予測値を前

月の101.3から100.1に引き下げた。中東情勢の緊迫化や世界経済の不透明感が強まる

中、タイの最低賃金引き上げに伴う生産コストの上昇について、懸念が高まったことが理由。

指数は受注高や売上高、生産高、生産コスト、業績に基づいて算出。調査は連盟に所属する45

産業部会の加盟企業1207社を対象に実施した。

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1月23日

タイ商業省

“FTAとGSP利用の輸出額、1~11月は656億ドル超=前年比4%減”

タイ商業省のアドゥン外国貿易局長は23日、自由貿易協定(FTA)による関税の減免や一

般特恵関税制度(GSP)を利用した2019年1~11月の輸出額が656億4288万ドル

となり、前年同期比4.1%減少したと発表した。タイの物品輸出は、貿易摩擦に伴う世界的な

景気減速やバーツ高などの影響で落ち込んでいる。

このうち、FTAの関税減免を利用した輸出額は5.5%減の607億9030万ドル。FT

A利用率は対象品目の77.3%を占めた。FTAの関税減免を利用した輸出額が最も多かった

市場は、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けの227億1649万ドル。次いで中国

165億6645万ドル、オーストラリア72億8575万ドル、日本69億7105万ドル、

インド39億6352万ドルの順となった。また、輸出額上位5品目はトラック、配合ゴム製品、

生鮮ドリアン、砂糖、グアバ・マンゴー・マンゴスチンなどの果物。

一方、GSPを利用した輸出額は48億5257万ドルで前年同期から17.4%拡大した。

GSP利用率は対象品目の62.9%となった。このうち米国向けが11.0%増の44億

1348万ドルと大半を占め、GSP利用率は67.0%に達した。主な輸出品目はエアコン部

品やゴム手袋、加工食品、ジュース、眼鏡用レンズなど

1月29日

タイ財務省

“タイ財務省、20年のGDP予測を下方修正=予算法案の施行遅れや新型肺炎響く”

タイ財務省は29日、2020年のタイ国内総生産(GDP)成長率の予測をこれまでの前年

比3.3%増から2.8%増に下方修正したと発表した。19年見込みの2.5%増は上回る。

20年度(19年10月~20年9月)予算法案の施行遅れや中国での新型コロナウイルスによ

る肺炎の感染拡大が響く。

ラワロン財政政策局長によると、輸出見通しは従来の前年比2.6%増から1.0%増に引き

下げたが、前年のマイナスからプラス成長を確保できると見込んでいる。民間消費も3.5%増

から3.2%増に下方修正。しかし、民間投資は前年の2.4%増から4.2%増、政府部門の

投資は2.1%増から6.5%増にそれぞれ加速し、経済成長のけん引役になる見通し。

同局長は、中国政府が肺炎感染で中国国民の海外旅行を禁止したことについて、タイ観光に対

し約3カ月にわたり影響を及ぼすとの見通しを示した。それに伴いタイを訪れる中国人旅行者数

は約200万人減少し、タイ観光業界は約1000億バーツの収入を失うと予想した。

ラワロン局長は、財務省や観光・スポーツ省など関係機関が20年の外国人旅行者数の減少幅

を40万人程度に抑えるよう他国からの旅行者の誘致強化策を検討すると述べた。これにより訪

タイ外国人旅行者数は当初予想の4150万人から4110万人になる。

【中銀月例指標】

1月31日

タイ中銀 “タイ中銀、月例経済報告” タイ中央銀行は、12月月例経済報告(速報値)を発表した。主なデータは以下の通り。 ○ 民間消費指数 :前年同月比 +1.9% (前月改定値 同+2.7%)

○ 民間投資指数 :前年同月比 ▲4.8%(前月改定値 同▲5.8%) ○ 輸出額伸び率 :前年同月比 ▲1.7% / 輸出額 :19,095百万米ドル ○ 輸入額伸び率 :前年同月比 +1.8% / 輸入額 :17,206百万米ドル ○ 貿易収支 :+1,889百万米ドル (前月実績 +1,969百万米ドル) ○ 経常収支 :+4,109百万米ドル (前月実績 +3,375百万米ドル)

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3.為替相場動向

【ドルバーツ】

■ 1月のレンジ :30.10 - 31.28

■ 2月の予想レンジ :30.00 - 32.75 1月:

ド ル バ ー ツ

は コ ロ ナ ウ

イ ル ス へ の

懸 念 か ら 31

台 前 半 へ 急

○1月バーツ相場(対ドル)は30.12でオープンし、直後に月間バーツ高値30.10を示した。3日にイラン革命

防衛隊司令官が米軍の空爆で殺害されたことをきっかけに中東情勢が緊迫化し、新興国通貨売り圧力が強

まった影響で、ドルバーツは9日に30.33まで上昇した。その後両国が軍事的対立を回避するとの声明を出し

懸念が後退すると、ドルバーツも30.20台半ばへ小緩んだ。その後タイ国債市場協会会長の「海外投資家の

国債売りが続く」との発言が材料視されると、ドルバーツは17日に30.53まで急伸。加えて月後半からは中

国武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大を受けて市場心理が悪化し、バーツ売りに拍車がかか

った。世界各国で感染者増が報じられる中、25日には中国政府が27日以降団体海外旅行を中止すると発表。

中国人旅行客減少に伴う観光業への打撃を懸念する向きから、ドルバーツは30台後半へ急騰した。28日には

国内主要国際空港の外国人旅行客流入数大幅減が確認されたほか、中国人旅行客のキャンセルに伴う外貨

買い需要も相俟ってバーツ売りが殺到。30日には約7ヶ月ぶりの水準となる月間安値、31.28を示した。しか

し同水準では輸出企業のドル売り需要が強まり上値を抑えられると結局31.13まで反落して越月した。

○円バーツは100円=27.70でオープン。中東情勢緊迫化を受けたリスク回避姿勢の高まりの影響で上昇し

た円バーツは8日に28.15まで上昇した。その後15日の米中通商協議第一段階合意を受けて楽観論が台頭し、

14日には月間バーツ高値27.44まで反落した。以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響でバーツが急落し、

30日に月間バーツ安値28.83を示現、同水準で越月した。

2月:

ドルバーツ

は軟調地合

い継続か、ウ

イルス関連

報道を注視

○ドルバーツ相場では、新型コロナウイルスの影響と、MPC会合の結果及び声明文を注視する必要がある。

ウイルスが及ぼす外国人観光客及び経常収支への影響がタイ経済の先行き見通しに影を落とす中、金融面

からの下支えの観点から、5日に予定されているMPCにてタイ中銀が史上最低を更新する水準へと政策金利

を引き下げる、との見方が台頭している。但し、直近のバーツ安進捗を受けて利下げの主因となっていたバ

ーツ高が解消している手前、あえて金融の脆弱性を高めることとなりかねない利下げについては、MPCメン

バー内でも意見が分かれることが予想される。今回については様子見の観点から据え置きの選択肢を取る

可能性も残ると見られ、バーツ下落の抑止材料として機能することも考えられよう。一方、コロナウイルス

拡大の度合いによっては、中国人以外の外国人観光客もタイへの旅行を手控えるリスクがある。旅行収支の

悪化が一時的とはいえタイの経常収支均衡・または赤字転落に繋がるとの見方が広がれば、バーツは一段と

売られるリスクがある。また再開が遅れている中国製造業の操業が更に遅延すれば、物流の停滞に伴う需給

の悪化からバーツを含むアジア新興国通貨への売り圧力が強まることになる。目先のドルバーツ相場では

31台でバーツ軟調地合いが持続する可能性が高そうだ。

○円バーツは上昇基調維持を予想する。コロナウイルスの影響でバーツが売られる一方、中国・アジア経済

減速への警戒感からリスク回避姿勢が強まり、円に買いが集まり易くなっていることから、円バーツは堅調

地合いを維持すると考えられる。1月後半の上昇が早過ぎた側面もあり、一時的に調整が入る可能性はある

ものの、情勢が悪化する局面においては29台を試すことも考えられよう。

(出所:Reutersより弊行作成)

USD/THB 及び JPY/THB の推移

Page 7: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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4.バーツ金利動向

1月:

バーツ金利

は当初上昇

も、結局幅

広い年限で

低下

○1月2日にバーツスワップ5年金利は1.300%、タイ10年国債利回りは1.456%でオープン。月初は米軍の

空爆でイラン国軍特殊部隊司令官が殺害されたことをきっかけに中東情勢が緊迫化し、米金利、バーツ

金利とも低下圧力が強まった。市場ではリスク回避姿勢が強まり、バーツスワップ5年金利は1.2%台半

ば、タイ10年国債利回りは1.35%台まで低下した。

○その後は米国とイランが軍事的対立を回避する姿勢を示し、バーツスワップ5年金利は1.3%、タイ10

年国債利回りは1.4%を回復。加えて、米中通商協議が第1段階合意に至ったことが市場心理を改善させ、

米金利バーツ金利ともに上昇圧力が高まった。また、タイ債券市場協会(Thai BMA)会長による「2020年

も海外投資家による国債売りが継続する」との発言がタイ国債売り材料として意識され、17日にバーツ

スワップ5年金利は1.340%、タイ10年国債利回りは1.490%まで上げ幅を拡げた。

○22日に発表された12月タイ貿易統計では、輸出(前年比▲1.28%)と輸入(前年比+2.58%)が前月比

回復し、タイ景気減速懸念が若干緩和したが、市場参加者内では、前年10月をボトムに11月から始まった

反発に準拠した数値、との理解から強く意識されることは無く、バーツ金利上昇圧力は限られた。

○1月下旬は中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染拡大への懸念から世界経済の先行き不透明

感が強まると、リスク回避姿勢が再び強まり、バーツ金利には再び低下圧力が加わった。更に中国人観光

客と観光収入の減少によってタイ経済減速に対する思惑が拡がったことや、2020年度予算の執行遅延に

よる悪影響も取り沙汰され、タイ利下げ観測も高まった。バーツ金利の低下圧力は収まらず、バーツスワ

ップ5年金利は1.1%を下抜けて1.085%、タイ10年国債利回りは1.311%で越月した。尚、タイ国債市場の

各年限の利回りでは、2年債から11年債にかけて史上最低水準を更新するに至っている。

2月:

ダウンサイ

ドリスクが

強まる中、

バーツ金利

は低下基調

が続こう

〇今月の主要なイベントとしては、5日にタイMPC、7日に米1雇用統計、17日にタイ第4四半期GDP、19日に

米FOMC議事要旨、24日にタイ1月貿易統計等が予定されている。

○新型コロナウイルス感染拡大を巡っては、SARSなど過去のウイルスと比べて影響範囲が大きくなると

見込まれるほか、現状では収束時期も見通せず、少なくとも3ヶ月間程度は影響が続くと考えられている。

タイ経済にも先行き不透明感を与えており、今後も市場心理は不安定な情勢が続こう(5ページに詳述)。

加えて、一部議員による不正投票が原因で2020年度予算の議決有効性が問われている問題でも着地点は

見出せておらず、プラユット政権の求心力が揺らぐ中、同予算執行が遅れる見込みとなっていることも、

タイ中銀による国内経済活動下支え目的での利下げを求める声に繋がっている。我々は内外経済の下振

れリスクが強まる中、タイ中銀が政策金利引き下げで対応する可能性が高いと見込み、従来のバーツ金

利予想を変更し、2020年第1四半期において25bpの利下げを織り込むこととした。

○市場参加者内では、今月のタイMPCにおいて予防的措置として政策金利が25bp引き下げられる、と織り

込む動きが進んでいる。一方、昨年来懸念されてきた過剰なバーツ高の問題が後退し、12月の国内経済指

標の一部で持ち直しの兆しが見えていることを考慮すれば、今回については据え置きを選択する可能性

は残っている。実態経済と主要指標の状況を確認したいとの思惑から政策金利を1.25%に据え置く場合、

中銀は今後の金融政策余地を示唆すると予想され、発表後バーツ金利低下は一服しよう。逆に今回25bp

の利下げを決定する場合、長期金融安定性を保全する観点から当面の利下げ停止する姿勢が示されると

予想するが、市場参加者内では今後の政策運営に対する見方が割れることが必至で、発表後の金利低下

圧力は緩やかなものに止まると見られる。よって声明文及び、2週間後に公表される議事録の詳細も吟味

し、中銀の姿勢を正しく理解することが求められよう。

○なお、新型コロナウイルスの状況のみならず、米国・中国経済、世界各国中銀の緩和姿勢への関心も高

く、市場では関連ヘッドラインに神経質に反応する展開が続くと見られる。悪材料が供給されれば、各国

中銀に対する緩和期待とともにバーツ金利の低下圧力も強まり易く、引き続き関連情報を注視したい。

(出所:Reutersより弊行作成)

バーツ長短金利推移

Page 8: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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5.主要金融指標

2019/9 2019/10 2019/11 2019/12 2020/12020/2(予想)

タイ中銀   Reference Rate

30.575 30.181 30.227 30.121 31.134

弊行カウンターレート

USD/THB  TTM 30.53 30.19 30.23 29.92 31.12

TT-Buying 30.28 29.94 29.98 29.67 30.87

TT-Selling 30.78 30.44 30.48 30.17 31.37

SPOT

USD/THB 30.590 30.190 30.230 30.030 31.130 30.00-32.75

JPY/THB 28.300 27.930 27.570 27.400 28.830 27.30-30.00

政策金利(レポレート) 1.50 1.50 1.25 1.25 1.25 1.00

THBFIX (6ヶ月) 1.35916 1.41239 1.13903 1.15797 0.95728 0.60-1.20

国債 (5年) 1.39 1.43 1.40 1.26 1.11 1.00-1.30

SET指数 1,637.22 1,601.49 1,590.59 1,579.84 1,514.14

為替

金利・株式

Page 9: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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6.今月のトピックス≪タイの観光産業≫

1.はじめに

タイは古くから国家戦略として観光産業に力を注いできた。豊富な観光資源を活用して観光客を誘致すべ

く、タイ政府は1960年3月にタイ国政府観光庁を発足、以降60年近く政府主導で観光立国を推進している。

1968年にチェンマイに初の観光庁事務所を開設、現在はタイ国内には45ヵ所、タイ国外には29ヵ所の事務所

を保有している。2002年10月には観光・スポーツ省を発足させ、国を挙げて観光促進活動を実施している。

訪タイ観光客数は2014年以降で堅調に増加しており、特に近年ではインドからの訪タイ観光客数が増えてい

る。今回は、タイの観光産業について纏めたい。

2.各国観光産業との比較

(1)世界各国との比較

先ず、世界各国の中でのタイの位置を確認したい。図表1及び2は、各国の観光客数ならびに観光収入につ

いて2016年から2018年の3年間の実績を比べた表である。タイの観光客数は2016年(約32.6百万人)から2018

年(約38.3百万人)において約5.7百万人増加しており、2016年から3年連続で上位10ヵ国にランクインして

いる。また、国際観光収入の面でも、タイは2016年(約488億米ドル) から2018年(約630億米ドル)におい

て約142億米ドル増加、2011年から7年連続で上位10ヵ国にランクインしていおり、タイが世界を代表する観

光地として定着していることが分かる。タイの観光客一人当たりの観光収入についても、2018年は1,647ドル

(前年比+42ドル)と上昇している。

[図表1:国際観光客数(単位:百万人)] [図表2:国際観光収入(単位:億米ドル)]

出所:UNWTO「International Tourism Highlights, 2019 Edition, 2018 Edition」

※国際旅客運賃による収入は、本件の数値には含まない

(2)ASEAN諸国との比較

次に、ASEAN諸国内におけるタイの位置付けについて比較してみたい。図表3は2018年時点でのASEAN諸国

の外国人観光客数ならびに国際観光収入を比較した表である。また、図4は2014年から2018年までのASEAN諸

国の外国人観光客推移を示したグラフである。The World Tourism Organization of the United Nations(以下、

UNWTO)に拠ると、2018年は中国及びインドからのアウトバウンド増加により、多くの国で観光産業の成長

に拍車がかかった。ASEAN諸国で観光産業が伸びており、2018年のASEAN全体では外国人観光客数は128.7百

万人(前年比+8.2百万人)、国際観光収入は1,423億米ドル(前年比+117億米ドル)となった。その中でも、

タイの外国人観光客数 (約38.3 百万人)及び国際観光収入(630億米ドル)は、ともに右肩上がりとなってお

り、ASEAN全体の観光産業を牽引している。タイの外国人観光客数は2017年度比+2.8百万人(ASEAN全体のう

ち34.1%)、同国際観光収入は2017年度比+61億米ドル(ASEAN全体のうち52.1%)と卓越した数値となってい

る。国際観光収入のGDP対比でもタイの国際観光収入(約636億米ドル)は同国GDPの約12.5%を占めており、カ

ンボジアの約18.0%に次ぐ高さである。これはGDP総額の差異に起因するものであり、タイがASEANを代表す

る観光立国であることが見て窺える。

順位 国名 2016年 2017年 2018年 順位 国名 2016年 2017年 2018年

1 フランス 82.7 86.9 89.4 1 米国 2,069 2,107 2,145

2 スペイン 75.3 81.9 82.8 2 スペイン 605 681 738

3 米国 76.4 76.9 79.6 3 フランス 545 607 674

4 中国 59.3 60.7 62.9 4 タイ 488 569 630

5 イタリア 52.4 58.3 62.1 5 英国 479 490 519

6 トルコ 30.3 37.6 45.8 6 イタリア 402 442 493

7 メキシコ 35.1 39.3 41.4 7 オーストラリア 370 417 450

8 ドイツ 35.6 37.5 38.9 8 ドイツ 375 398 430

9 タイ 32.6 35.5 38.3 9 日本 307 341 411

10 英国 35.8 37.7 36.3 10 中国 444 386 404

11 日本 24.0 28.7 31.2

Page 10: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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[図表3:2018年のASEAN諸国の比較]

出所:前掲UNWTO資料、IMF「World Economic Outlook(October 2019)」を元に弊社作成

[図表4:2014〜2018年のASEAN諸国の観光客数推移 (単位:百万人)]

出所:UNWTO「International Tourism Highlights, 2015Edition-2019 Edition」を元に弊社作成 ※タイは()にASEAN全体におけるシェアを記載

3.訪タイ外国人観光客の動向

(1)訪タイ外国人観光客数の推移

図表5は、2009年~2019年の訪タイ外国人観光客数とタイバーツ/米ドルの推移を示した表である。軍事ク

ーデターが発生した2014年を除いて、外国人観光客数は堅調に増加し続けている。2019年はバーツ高等が懸

念され、タイ中央銀行が同年8月、11月に過去最低の1.25%まで利下げを実施していたが、同年の外国人観光

客数は39.8百万人と過去最高値を記録した。2019年初は1米ドル32.245バーツだったものの、同年6月20日に

は2013年9月以来となる1米ドル30バーツ台まで上昇していた。2019年のバーツ高等に起因して、タイ・ホテ

ル協会は「チェンマイでは、観光のハイシーズン(7〜8月)のホテル稼働率が60%(前年同期比▲20%)まで

低下した」と説明している。そのほか、タイ旅行業協会も「1米ドル=31〜32バーツを上回る水準のバーツ

高が続けば、今後の外国人観光客の目標である41百万人〜42百万人を割り込む可能性がある」との懸念を示

した。しかし、図表の通り為替相場との外個人観光客数の相関関係は強くなく、依然として観光客数は増加

傾向にあり、従来までの外国人観光客数ランキングの増加水準を鑑みると、更なるランクアップの可能性も

ある。但し、タイにとっては後述の新型コロナウィルスが外国人観光客に対する影響は大きく留意が必要で

ある。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

タイ

マレーシア

ベトナム

シンガポール

インドネシア

フィリピン

カンボジア

ラオス

ミャンマー

日本(参考)

(29%)

(29%)

(29%)

(30%)

(26%)

国名国際観光客到着数

(2018年/百万人)

国際観光収入

(2018年/億米ドル)

GDP比較

(2018年)

GDP(IMF)

(2018年/億米ドル)

タイ 38.3 630 12.5% 5,049

マレーシア 25.8 191 5.3% 3,586

ベトナム 15.5 101 4.2% 2,413

シンガポール 14.6 205 5.6% 3,641

インドネシア 13.4 141 1.4% 10,225

フィリピン 7.1 75 2.3% 3,309

カンボジア 6.2 44 18.0% 244

ラオス 3.8 7 3.9% 181

ミャンマー 3.6 17 2.5% 686

(参考)日本 31.2 411 0.8% 49,718

Page 11: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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[図表5:2009〜2019年訪タイ外国人観光客とタイバーツ/米ドルの推移 (単位:バーツ・百万人)]

出所:UNWTO「International Tourism Highlights, 2009Edition-2019 Edition」, IMF「IMF Exchange Rate Archives by Month」を元に弊社作成

(2)訪タイ外国人観光客数の内訳

では、どの国の人々がタイへ観光に訪れているのだろうか。図表6は2019年の訪タイ外国人観光客を国籍

別に纏めた表、図表7はその上位5カ国の2015年~2019年の推移である。2020年1月末時点で中国やインドを

含む18ヶ国のタイ入国時のビザ取得料金が免除されており(詳細は後述)、2019年も中国人観光客(約10,995

千人)が昨年に続いて一番多く、2015年(約7,937千人)から2019年までの5年で39%増加している。次いで

マレーシア(約4,167千人)、インド(約1,996千人)となっており、2016年から2018年まで3位であった韓国

を抜いて、インドからの観光客が増加傾向にある。また、図表8では中国人観光客のアジアにおける国別訪

問者数が多い5カ国の推移を示しており、米中貿易摩擦の影響を受け、バーツ高人民元安の低水準にあるこ

とや、中国経済の減速にもかかわらず、中国人観光客数は依然として増加傾向にあり、タイは香港に次いで

人気の観光先であることがわかる。なお、隣国マレーシアからタイへの観光客は安定(毎月の観光客数約30

万人)しており、観光収入においても中国に次いで2番目のシェアを占める結果となった。ラオスや日本等

からの訪タイ観光客数も増加傾向にあり、訪タイ観光客数を底上げし、観光収入全体の底上げにも寄与して

いる。政府主導で食文化を楽しむ食旅や、タイ各地で開催されるマラソン大会への誘致を図るラン旅等、様々

なコンセプトで新規観光客の誘致を行っており、リピーター向けには地方県の紹介をホームページ上で行う

等の誘客を進めている。

[図表6:訪タイ外国人観光客2019年の上位10カ国 (単位:千人)]

出所:前掲Ministry of Tourism and Sportsを参照し弊社作成

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2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(百万人)THB/USD 観光客数

暗黒の土曜日

軍事クーデター

洪水

バンコック爆弾テロ

タイバーツが

31ヶ月ぶりに最

高値を更新

(年間9.9%上昇)

(バーツ)

順位 国名 観光客数 増減率 順位 国名 観光客数 増減率

1 中国 10,995 4.4% 6 日本 1,806 9.1%

2 マレーシア 4,167 3.6% 7 ロシア 1,483 0.7%

3 インド 1,996 24.8% 8 米国 1,168 4.1%

4 韓国 1,888 5.1% 9 シンガポール 1,057 ▲1.2%

5 ラオス 1,845 10.9% 10 ベトナム 1,048 1.9%

Page 12: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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[図表7:2015年〜2019年 訪タイ上位5カ国の推移 (単位:百万人)]

出所:前掲Ministry of Tourism and Sportsを参照し弊社作成

※中国は()にシェアを記載

[図表8:中国人観光客のアジアの国別訪問者数上位5カ国の推移(単位:千人)]

※出所「⽇本政府観光局(JNTO)」

(3)訪タイインド人観光客について

先述の通り、近年インドからの訪タイ観光客は増加傾向にある。UNWTOに拠れば、「中国人観光客ならび

に近年経済成長が著しいインド人観光客は、東南アジアの観光産業におけるアウトバウンドを大きく占めて」

おり、インド人観光客はタイ観光産業にとっても重要である。本項では、インド人観光客について触れてみ

たい。

図表9は2014年~2018年のインド人観光客のアジアにおける国別訪問者数が多い5カ国の推移を示した表で

ある。2014年まではシンガポールが1位であったものの、2015年以降はタイが1位となっている。2018年の訪

タイインド人観光客は約1,597千人(前年比182千人、同率+12.9%)、さらに直近の2019年には1,996千人(前

年比+398千人、同率+24.8%、図表6御参照)と2015年から5年間で87%増加し、毎月20万人近くの観光客がタ

イへ訪れる状況である。この要因として、インド等一部の国・地域の観光客へのビザ免除等が考えられる。

タイでは2018年の12月から中国人、インド人を含む21ヶ国・地域の旅行者に対して到着ビザの無料化を実施

している。2019年8月にタイ政府は閣議においてスポーツ・観光省の提案した、一部の国・地域に対して観

光ビザ免除(観光目的で1回の訪問につき30日以内の滞在でタイに入国する場合、査証取得を必要としない

もの、現在49ヵ国が対象となっている)を却下・再検討としたものの、ビザ取得料金免除は2020年4月まで

の6ヶ月間継続を決定した。このビザ免除措置等が、インドからの訪タイ観光客増加の一因と考えられる。

2018年時点でインド名目GDPは世界7位(約2兆7,190億米ドル)と成長を続けており、経済発展成長を背景に、

今後も同国からの観光客が増加する可能性がある。

[図表9:インド人観光客のアジアの国別訪問者数上位5カ国の推移(単位:千人)]

国名 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

タイ 933 1,069 1,195 1,415 1,597

シンガポール 944 1,014 1,097 1,272 1,442

中国 710 730 799 819 864

マレーシア 770 722 639 553 600

インドネシア 267 320 422 537 596 ※出所「⽇本政府観光局(JNTO)」

1

3

5

7

9

11

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

中国

マレーシア

インド

韓国

ラオス

日本(参考)

(32%) (29%)

(29%)

(30%) (30%)

国名 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

香港 19,077 17,997 17,365 18,526 19,902

タイ 4,636 7,937 8,758 9,806 10,536

日本 1,314 2,409 4,994 6,374 7,356

ベトナム 1,947 1,781 2,697 4,008 4,966

韓国 6,127 5,984 8,068 4,169 4,790

Page 13: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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(3)中国で発生した新型コロナウイルスに伴う懸念

前述の通り、中国人観光客がタイ観光で占める割合は大きい。そのため、2020年初に中国湖北省武漢市で

発生した新型コロナウイルスは、タイ観光産業の打撃となる可能性が高い。2020年1月31日時点でタイ国内

での同病の患者は19人に上り、中国国外における発症者数としては最も多い。中国人旅行者の団体旅行が停

止措置も発表されており、タイ観光産業への影響が懸念される。タイ旅行代理店協会によれば、グループツ

アーでタイを訪れた中国人は19 年に約310万人を数え、中国人観光客数の28%を占めていた。タイ旅行代理

店協会によると、個人旅行を計画していた中国人も旅行に消極的になっており、心理的な影響が出ていると

いう。中国国内の10 都市が閉鎖されているため、個人旅行者の空港への移動にも支障が出ている。アユタヤ

銀行は「2003年のSARS発生により、タイへの外国人観光客数は5ヶ月連続で縮小し、同年の外国人観光客増

加率は▲7.4%となった。新型コロナウイルスが直ぐに収束しない場合、タイの観光産業及び今年度のタイの

経済成長への大打撃となるであろう。」との見解を示している。この状況に対してタイ政府観光庁は2020年

にタイを訪れる中国人観光客は前年の1,100万人から200万人減少、全体では当初40百万人超の外国人観光客

数を見込んでいたが、36百万人(前年比▲9.5%)に下方修正した。2020年の観光収入目標の3兆1600億バー

ツは2兆9100億バーツに下方修正し、今後はアジアやインド、日本などの中国以外の国地域からの誘客を強

化する方針を示した。なお、アユタヤ銀行は「新型コロナウイルスのタイ経済前提への影響として、GDPを

▲0.4%引き下げるリスクがある(2020年2月時点)」と分析している。

[図表10:ASEAN諸国の新型コロナウイルス入国制限状況(2020年2月7日時点)]

※出所 NNA等ニュースをベースに弊社で編集

4.最後 に

タイ経済において観光産業は基幹産業の一つであり、豊富な観光資源を活かし、安定的に観光客・観光収

入を増加させてきた。2019年はバーツ高等の懸念要因があったものの、訪タイ観光客数は堅調に増加してい

る。2020年以降も増加率が最も著しいインドをはじめとする様々な国からの外国人観光客数増加により、本

来タイの観光産業は引き続き成長する可能性があった。しかしながら、2020年初に中国で発生した新型コロ

ナウイルスに影響で中国人観光客の大幅減少などを受け、タイの観光産業にとっては打撃となる見込みであ

る。現時点では新型コロナウィルスが収束する見込みがたっておらず、どの程度までタイの観光産業にマイ

ナスの影響となるかは予測が困難な状況とえいる。今後もタイ観光産業の動向に注目して参りたい。

以上

(参考文献) ・Krungsri Research ・UNWTO「International Tourism Highlights, 2019 Edition」 ・Ministry of Tourism and Sports, Thailand「International Tourist Arrivals to Thailand 2009-2019」

・IMF「World Economic Outlook(October 2019)」 ・European Central Bank ・タイ国政府観光庁HP「Amazing THAILAND」

・タイ経済 ・日本政府観光局(JNTO) ・IMF「IMF Exchange Rate Archives by Month」

国名

タイ なし

マレーシア 1月27日から、湖北省に居住する中国人国籍者へのビザ発給停止。サバ州コタキナバルと中国の直行便の運航停止

ベトナム2月3日から、中国に一時帰国後、再入国する中国人労働者・専門家の入国を事実上停止。1月29日から、香港とマ

カオを含む中国人への観光ビザ(到着ビザ含む)発給停止。2月1日から中国との直行便の運航停止

シンガポール2月1日から、中国滞在歴(14日以内)のある外国人の入国拒否。トランジットも許可しない。中国人へのビザ発給

停止。中国滞在歴のある国民や外国人居住者は入国後、14日間の経過観察を義務付け

インドネシア2月2日から、中国滞在歴(14日以内)のある外国人の入国拒否。トランジットも許可しない。中国人へのビザ発給

停止。5日から、中国との直行便の運航停止

フィリピン2月2日から、中国・香港・マカオ滞在歴(14日以内)のある外国人の入国拒否。中国人への到着ビザ発給停止。中

国から帰国するフィリピン人には14日間の隔離を義務付ける。フィリピン人の中国への渡航も一時的に禁止

ミャンマー 中国人ツアー客への到着ビザ発給停止

(参考)日本 2月1日から、湖北省滞在歴(14日以内)がある外国人の入国拒否、湖北省発給パスポート所有者の入国拒否

Page 14: 2020年1月号)2/12 2019年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と加速 昨年12月の消費者物価上昇率は前年比+0.9%と、前月(同+0.2%)より伸びが加速

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7.タイにおけるMUFGグループのサービス体制について

BANGKOK MUFG Limited (旧名:Bangkok BTMU Limited)

住 所 : 898 Ploenchit Tower, 9th Floor, Zone B1, Ploenchit Road, Lumpini, Pathumwan,

Bangkok 10330 Thailand

電 話 : 電話(代表):662(263)0856、FAX:662(263)0860

主 要 業 務 : 出資業務、アドバイザリー業務

MUFG HOLDING (THAILAND) CO., LTD. (旧名:BTMU Holding (Thailand) Limited)

住 所 : 同上

電 話 : 電話:(代表)+662(263)0856、FAX:+662(263)0860

主 要 業 務 : 出資業務、アドバイザリー業務

MUFG PARTICIPATION (THAILAND) CO., LTD. (旧名:BTMU Participation (Thailand) Limited)

住 所 : 同上

電 話 : 電話:(代表)+662(263)0856、FAX:+662(263)0860

主 要 業 務 : 出資業務、アドバイザリー業務

BOT LEASE (Thailand) Company Limited (旧名:BTMU LEASING (THAILAND) CO., LTD.)

住 所 : 54 Harindhorn Tower, 4th Floor, North Sathorn Road, Silom, Bangrak, Bangkok

10500 Thailand

電 話 : 電話:(代表)+662(266)3060 FAX:+662(266)3067

主 要 業 務 : リース、割賦金融業務

バンコック三菱UFJリース / BANGKOK MITSUBISHI UFJ LEASE CO., LTD.

住 所 : Asia Centre Tower 26th Floor, 173 South Sathorn Road,Thungmahamek, Sathorn,

Bangkok 10120, Thailand

電 話 : 電話:(代表)+662(163) 6400、FAX:+662(163)6411、+662(163)6422

主 要 業 務 : リース、割賦金融業務、メンテナンス付オートリース

三菱UFJリサーチ&コンサルティング/ MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.

住 所 : Spaces Summer Hill, 3F Summer Hill ,1106 Sukhumvit Road, Phrakhanong

Klongtoey, Bangkok 10110, Thailand

電 話 : 電話:(代表)+662(126)8042、FAX:+662(126)8080

主 要 業 務 : タイ及び周辺諸国におけるコンサルティング事業、リサーチ事業

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様ご自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されてますが、当

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