2020年度政府(国・一般会計)予算について(ver.2) -社 …2020 年8 月5 日...

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2020 8 5 日医総研リサーチエッセイ No.87 2020 年度政府(国・一般会計)予算について(Ver.2) -社会保障費を中心とする第 2 次補正予算関係- 日本医師会総合政策研究機構 前田由美子 (お断り) 国・一般会計の 2020 年度当初予算および第 1 次補正予算については、以下にと りまとめ公表しました。 2020 年度政府(国・一般会計)予算について -社会保障費を中心に-」 2020 5 19 https://www.jmari.med.or.jp/download/RE081.pdf 本稿は 2020 6 12 日に第 2 次補正予算が成立したことを受けて、加筆、更新し たものです。そのため上記 5 19 日のレポートと重複している部分があります。 2020 年度の政府(以下、国・一般会計)当初予算および新型コロナウイ ルス感染症対策関連の補正予算の内容を確認し、社会保障財政への影響を 考察した。 2020 4 30 日に成立した第 1 次補正予算においてすでに、他産業で "Go To"キャンペーンをはじめ、コロナ収束後を見据えた予算が確保され ていた。一方、医療は未だ新型コロナウイルス感染症対策の真っただ中に あり、収束後を見据えた支援策も俎上に上がっていない。 2 次補正予算では、医療機関の感染症拡大防止等への支援も行われるが 実費に対する補助であり、医業収入の減少から来る大幅な損失を補てんで きるものではない。 受診控えにより、 2020 年度のそもそもの診療報酬改定財源は大きく残る。 地域医療の確保のためには診療報酬を緊急に戻しておく必要があるが、診 療報酬点数の引き上げは、患者負担増を伴う。患者負担増を生じさせない 対応が求められる。 2020 9 1 日 以下の修正を行っています。 9 頁 表 1.1.1 医療機関等の基金繰り対策→(正)資金

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  • 2020 年 8 月 5 日 日医総研リサーチエッセイ No.87

    2020 年度政府(国・一般会計)予算について(Ver.2)

    -社会保障費を中心とする第 2 次補正予算関係-

    日本医師会総合政策研究機構 前田由美子

    (お断り) 国・一般会計の 2020 年度当初予算および第 1 次補正予算については、以下にと

    りまとめ公表しました。 「2020 年度政府(国・一般会計)予算について -社会保障費を中心に-」

    2020 年 5 月 19 日 https://www.jmari.med.or.jp/download/RE081.pdf 本稿は 2020 年 6 月 12 日に第 2 次補正予算が成立したことを受けて、加筆、更新したものです。そのため上記 5 月 19 日のレポートと重複している部分があります。

    ◆ 2020 年度の政府(以下、国・一般会計)当初予算および新型コロナウイルス感染症対策関連の補正予算の内容を確認し、社会保障財政への影響を

    考察した。 ◆ 2020 年 4 月 30 日に成立した第 1 次補正予算においてすでに、他産業で

    は"Go To"キャンペーンをはじめ、コロナ収束後を見据えた予算が確保されていた。一方、医療は未だ新型コロナウイルス感染症対策の真っただ中に

    あり、収束後を見据えた支援策も俎上に上がっていない。 ◆ 第 2 次補正予算では、医療機関の感染症拡大防止等への支援も行われるが

    実費に対する補助であり、医業収入の減少から来る大幅な損失を補てんで

    きるものではない。 ◆ 受診控えにより、2020 年度のそもそもの診療報酬改定財源は大きく残る。

    地域医療の確保のためには診療報酬を緊急に戻しておく必要があるが、診

    療報酬点数の引き上げは、患者負担増を伴う。患者負担増を生じさせない

    対応が求められる。 2020 年 9 月 1 日 以下の修正を行っています。

    9 頁 表 1.1.1 ④ 医療機関等の基金繰り対策→(正)資金

  • 目 次

    はじめに .......................................................... 1

    1. 国・一般会計 .................................................. 2

    1.1. 歳出 ..................................................... 2

    1.2. 歳入 .................................................... 10

    1.3. 基礎的財政収支 .......................................... 12

    2. 社会保障費 ................................................... 13

    2.1. 社会保障費と消費税収の関係 .............................. 13

    2.2. 社会保障 4経費 .......................................... 15

    2.3. 社会保障費の自然増 ...................................... 20

    2.4. 社会保障の充実 .......................................... 22

    2.5. 診療報酬改定率 .......................................... 24

    おわりに ......................................................... 26

  • 1

    はじめに

    2012 年 2 月 17 日の「社会保障・税一体改革大綱」1によって、消費税率の段階的引き上げが決まり2、2014 年 4 月に消費税率が 5%から 8%へ引き上げられた。消費税率 10%への引き上げは 2 回にわたって延期された後3、2019 年 10 月 1 日に実施された。

    消費税率引き上げによる増収分は、社会保障の充実に充てることになって

    いる。2020 年度の政府の一般会計予算(以下、国・一般会計)で消費税収がどのように活用されているのか、社会保障関係費(以下、社会保障費)との

    関係を中心に確認する。 2020 年 4 月 30 日には、新型コロナウイルス感染症対策のため、第 1 次補

    正予算(追加額 5.7 兆円)、同年 6 月 12 日には第 2 次補正予算(追加額 31.9兆円)が成立した。追加分の財源はすべて国債でまかなわれた。このことが

    社会保障財政に与える影響についても考察する。

    1 「社会保障・税一体改革大綱」2012 年 2 月 17 日閣議決定 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kakugikettei/240217kettei.pdf 2 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律」 3 1 回目の延期は 2014 年 11 月 18 日である。安倍総理大臣が記者会見で、消費税率の予定どおりの引き上げは「個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなる」として、「18 カ月延期すべきであるとの結論に至りました」と述べた。

    https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1118kaiken.html 2 回目の延期は 2016 年 8 月 24 日である。「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置の概要」が閣議決定され、消費税率の 10%への引き上げが 2019 年 10 月 1 日に延期された。 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2016/280824shouhizei-gaiyou.pdf

  • 2

    1. 国・一般会計

    1.1. 歳出 2020 年度の歳出総額は、当初予算では 102 兆 6,580 億円、第 2 次補正予

    算後では 160.3 兆円になった(図 1.1.1)。

    図 1.1.1 国・一般会計 歳出の推移

    28.2 29.8 29.2 29.2 30.2 31.4 32.2 32.5 32.6 34.1 35.9 36.740.5

    18.8 19.5 16.9 17.6 17.1 16.8 15.3 15.6 16.0 16.015.8 15.8 15.8

    19.5 19.6 21.0 21.3 22.2 22.5 22.1 22.5 22.523.5 23.4 23.5

    24.0

    12.2 15.1 13.5 13.2 11.1 10.5 10.5 9.6 9.710.1 10.0

    34.3

    61.7

    95.3100.7 97.1 100.2 98.8 98.2 97.5 98.1 99.0 101.5

    102.7

    128.3

    160.3

    0.0

    20.0

    40.0

    60.0

    80.0

    100.0

    120.0

    140.0

    160.0

    180.0

    2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2020

    決算 当初予算 1次補正

    2次補正

    (兆円)

    国・一般会計 歳出の推移

    社会保障費 地方交付税 国債費 公共事業費

    文教科学費 防衛費 その他・予備費

    *財務省「財政統計(予算決算等データ)」「平成31年度予算のポイント」「令和2年度補正予算等の説明」から作成。2012年度の社会保障費の対前年度減は、基礎年金国庫負担1/2の分を年金特例公債(つなぎ国債)で対応したため。これを含むと2012年度の社会保障費は28.9兆円。2019年度は臨時・特例の措置を含む。

  • 3

    主要経費別では、社会保障関係費(以下、社会保障費)は当初予算で 35兆 8,608 億円であり、一般会計の歳出に占める割合は 34.9%であったが、第2 次補正後は 40 兆 5,272 億円になり、構成比は 25.3%に縮小した。これは、今般補正予算では、中小企業対策費への追加額が大きかったためである(表

    1.1.1)。なお、医療機関への資金繰り対策もこの中に含まれる。

    表 1.1.1 2020(令和 2)年度当初予算および補正予算(主要経費別)

    (億円)

    構成比 構成比 構成比

    (%) (%) (%)

    社会保障関係費 358,608 34.9 8,735 37,929 46,664 8.1 405,272 25.3

    - - 1,490 22,370 23,860 4.1 23,860 1.5

    文教及び科学振興費 55,055 5.4 3,342 1,608 4,950 0.9 60,005 3.7

    国債費 233,515 22.7 1,259 5,395 6,654 1.2 240,169 15.0

    恩給関係費 1,750 0.2 0 0 0 0.0 1,750 0.1

    158,093 15.4 249 0 249 0.0 158,341 9.9

    防衛関係費 53,133 5.2 121 63 184 0.0 53,317 3.3

    公共事業関係費 68,571 6.7 0 0 0 0.0 68,571 4.3

    経済協力費 5,123 0.5 1,357 6 1,363 0.2 6,486 0.4

    中小企業対策費 1,753 0.2 79,720 142,501 222,221 38.6 223,974 14.0

    (再掲)資金繰り対策 - - 38,380 116,390 154,770 26.9 154,770 9.7

    (再掲)持続化給付金 - - 23,176 19,400 42,576 7.4 42,576 2.7

    エネルギー対策費 9,495 0.9 82 0 82 0.0 9,577 0.6

    食料安定供給関係費 9,840 1.0 2,465 542 3,007 0.5 12,847 0.8

    その他の事項経費 66,645 6.5 144,584 31,069 175,653 30.5 242,298 15.1

    (再掲)特別定額給付金 - - 128,803 0 128,803 22.4 128,803 8.0

    - - 10,000 20,000 30,000 5.2 30,000 1.9

    - - 15,000 100,000 115,000 20.0 115,000 7.2

    予備費 5,000 0.5 0 0 0 0.0 5,000 0.3

    歳出計 1,026,580 100.0 256,914 319,114 576,027 100.0 1,602,607 100.0

    *財務省「令和2年度補正予算等の説明」から作成

    補正後

    新型コロナウイルス感染症対策予備費

    第1次 第2次 計

    当初予算

    補正予算追加額

    (再掲)新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

    (再掲)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金

    地方交付税(地方特例交付金を含む)

  • 4

    【第 1 次補正予算 追加額 25.7 兆円】 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 1 兆円4 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金 1,490 億円(第 2 次補

    正後 2 兆 3,860 億円)。 第 1 次補正では、国 1/2、地方 1/2 で負担し、地方の財源は上記

    臨時交付金で手当てすることになっていたが、第 2 次補正で都道府県負担分 1,490 億円を国費で措置し、国 10/10 での補助になった。

    持続化給付金 2 兆 3,176 億円(第 2 次補正後 4 兆 2,576 億円)5 売上高前年同月比 50%以上減の法人・個人事業主への給付。医

    療法人、個人開業も対象であるが、日本医師会の調査では、2020年4月分の総点数前年同月比が50%以上減少したのは一般病院で 1.9%、一般診療所で 4.4%であった6。

    "Go To"キャンペーン 1 兆 6,794 億円 割引クーポン、利用クーポン等を付与。① Go To Travel、② Go

    To Eat、③ Go To Event、④ Go To 商店街。 経済産業省の資料には「新型コロナウイルス感染症の流行の収

    束状況を見極めつつ」7、観光庁の補正予算資料には「新型コロ

    ナウイルス感染症の流行収束後の一定期間に限定して」8と記載

    されていた。 県外観光も対象とする Go To トラベル事業について、国土交通

    大臣は「8 月の早い段階で開始」すると述べていたが9、多客期、繁忙期である夏休みが支援の対象となるようにとの要望があっ

    4 内閣府地方創生推進室「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金~脱コロナに向けた協生支援金~」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/rinjikoufukin/pdf/20200501_setsumeikai.pdf 5 経済産業省「令和 2 年度補正予算の事業概要(PR 資料)」13 頁 https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei_yosan_pr.pdf 6 日本医師会「新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査(2020 年3~4 月分)」2020 年 6 月 9 日 http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200610_6.pdf 7 経済産業省「令和 2 年度補正予算の事業概要(PR 資料)」20 頁 https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei_yosan_pr.pdf 8 観光庁「令和 2 年度観光庁関係補正予算」https://www.mlit.go.jp/common/001339606.pdf 9 2020 年 6 月 19 日 赤羽国土交通大臣記者会見要旨 https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin200619.html

  • 5

    たとして、7 月 22 日からの前倒し実施を決定した10(7 月 17日に東京発着除外を決定)。

    経済産業省の"Go To"キャンペーン(消費喚起キャンペーン)のほか、観

    光庁でインバウンド需要復活への取り組み、農林水産省で国産農林水産物等

    の販売促進など、コロナ収束後を見据えた予算が確保されていた。一方、医

    療は未だ新型コロナウイルス感染症対策の真っただ中にあり、収束後を見据

    えた支援策も俎上に上がっていない。 なお、医療機関の融資については、福祉医療機構のほか、他産業と同じ並

    びで日本政策金融公庫や民間金融機関からも実質無利子・無担保の融資を受

    けることができるようになった11。

    10 2020 年 7 月 10 日 赤羽国土交通大臣記者会見要旨 https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin200710.html 11 関東経済産業局のチラシ(2020 年 7 月 17 日時点) https://www.kanto.meti.go.jp/kansensho/data/r2fy_shienpaper_iryou.pdf

  • 6

    【第 2 次補正予算 追加額 31.9 兆円】 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)1 兆 6,279 億円 新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金 2,922 億円

    医療従事者や職員が、始期(都道府県による)から 6 月 30 日までの間に 10 日以上勤務していれば、医療機関の役割に応じて 1 人 5 万円、10 万円、または 20 万円が交付される12。なお、自宅待機、子どもの預け先がない等で休職した医療従事者は対

    象外である。 医療機関・薬局等における感染症拡大防止等の支援 2,589 億円

    新型コロナウイルス感染症患者を受け入れていなくても、個人

    防護具、清拭・消毒、情報通信機器などの実費が補助されるが

    (有床診療所 2 百万円、無床診療所 1 百万円(いずれも上限))、実費支出に対する支援であり、損失補てんではない13。

    日本医師会の調査では、1 か月単月の医業利益(損失)が有床診療所▲3.6 百万円、無床診療所▲1.2 百万円の赤字である14。

    12 「令和 2 年度 厚生労働省第二次補正予算(参考資料)」20 頁 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/dl/20hosei04.pdf 「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」11 頁、2020 年 6 月 16 日、厚生労働省医政局長、厚生労働省健康局長、厚生労働省医薬・生活衛生局長 https://www.mhlw.go.jp/content/000640615.pdf 13 上記 6 月 16 日通知 15 頁「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」 14 2020 年 7 月 22 日 日本医師会定例記者会見資料

  • 7

    表 1.1.2 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)

    (億円)

    新規事業の追加 11,788億円 11,788

    重点医療機関(新型コロナウイルス感染症患者専用の病院や病棟を設定する医療機関)の病床の確保

    4,728

    新型コロナウイルス感染症の重点医療機関等における設備整備の支援 30

    新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業 2,922

    新型コロナ疑い患者受入れのための救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策

    1,518

    医療機関・薬局等における感染症拡大防止等の支援 2,589

    既存事業の増額 3,000億円 3,000

    一次補正の都道府県負担分(1,490億円)を二次補正において国費で措置 1,490

    計 16,279*厚生労働省「令和2年度厚生労働省第二次補正予算案(参考資料)」から作成

    予備費 10 兆円 麻生財務大臣は財政演説で、医療提供体制の強化に 2 兆円程度を向ける必

    要があると述べている。 第 201 回国会における麻生財務大臣の財政演説(2020 年 6 月 8 日)抜粋15

    なお、新型コロナウイルス感染症対策予備費の十兆円の追加につきましては、ま

    ず、第二波、第三波が襲来し、事態が大幅に深刻化した場合には、少なくとも 5 兆円程度の予算が必要になると考えているところです。その内訳につきましては、あ

    る程度の幅をもってみる必要はありますが、第一に、雇用調整助成金など、雇用維

    持や生活支援の観点から 1 兆円程度、第二に、持続化給付金や家賃支援給付金など、事業継続の観点から 2 兆円程度、第三に、地方自治体向けの医療・介護等の交付金など、医療提供体制等の強化の観点から 2 兆円程度が必要になるのではないかと考えております。

    その上で、今後の長期戦の中では、事態がどのように進展するかにつきまして、

    予見し難いところが大きいと考えております。このため、どのような事態が起こっ

    たとしても、迅速かつ十分に対応できるよう、万全を期すため、更に 5 兆円程度の予備費を確保することとしたものであります。

    15 https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/fiscal_policy_speech/20200608.html

  • 8

    表 1.1.3 2020(令和 2)年度 第 1 次補正予算追加額

    (億円)

    歳出(追加額)合計 256,914

    1 感染防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発 18,097

    (1) マスク・消毒液等の確保 1,730

    (2) 検査体制の強化と感染の早期発見 94

    (3) 医療提供体制の強化 13,314

    (再掲)新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 10,000

    (再掲)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金 1,490

    (再掲) 医療資材の確保 1,281

    65

    (4) 治療薬・ワクチンの開発加速 830

    (5) 帰国者等の受入れ体制の強化 121

    (6) 情報発信の充実 185

    (7) 感染国等への緊急支援に対する拠出等の国際協力 1,199

    (8) 学校の臨時休業等を円滑に進めるための環境整備 625

    2 雇用の維持と事業の継続 194,905

    (1) 雇用の維持 709

    (再掲)雇用調整助成金 ※ 690

    (2) 資金繰り対策 38,380

    (再掲)日本政策金融公庫等による資金繰り支援 10,442

    (再掲)民間金融機関を通じた資金繰り支援 20,714

    (再掲)独立行政法人福祉医療機構出資金 41

    (3) 事業継続に困っている中小・小規模事業者等への支援 24,293

    (再掲)持続化給付金 23,176

    (4) 生活に困っている人々への支援 131,274

    (再掲)特別定額給付金(全国全ての人々への新たな給付金) 128,803

    (5) 地方特例交付金 249

    3 次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復 18,482

    (1) 観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテイメント事業等に対する支援 16,794

    "Go To"キャンペーン(消費喚起キャンペーン)

    (2) 地域経済の活性化 1,687

    4 強靭な経済構造の構築 9,172

    (1) サプライチェーン改革 2,566

    3,014

    (3) リモート化等によるデジタル・トランスフォーメーションの加速 3,592

    5 今後の備え 15,000

    新型コロナウイルス感染症対策予備費 15,000

    6 国債整理基金特別会計へ繰入 1,259※ 一般会計で措置した週労働時間20時間未満の雇用者に係るものであり、20時間以上の雇用者について

    は、労働保険特別会計で7,640億円を措置*財務省「令和2年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)等の説明」「令和2年度補正予算(第2号、 特第2号及び機第2号)等の説明」ほかから作成

    (2) 海外展開企業の事業の円滑化、農林水産業・食品の輸出力の維持・強化及び国内供給力の強化支援

    項 目

    (再掲)国立病院機構及び地域医療機能推進機構における設備整備事業費

  • 9

    表 1.1.4 2020(令和 2)年度 第 2 次補正予算追加額

    (億円)

    319,114

    1 新型コロナウイルス感染症対策関係経費 318,171

    (1) 雇用調整助成金の拡充等 ※ 4,519

    雇用調整情勢金 ※ 2,808

    新型コロナウイルス感染症対応休業支援金 1,711

    (2) 資金繰り対応の強化 116,390

    55,683

    32,375

    12,442

    8,905

    (3) 家賃支援給付金の創設 20,242

    (4) 医療提供体制等の強化 29,892

    ① 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援金の拡充 22,370

    (再掲)医療分 16,279

    (再掲)介護分 4,132

    ② 医療機関等への医療用マスク等の優先配布 4,379

    ③ ワクチン生産体制整備等 2,056

    ④ 医療機関等の資金繰り対策 365

    医療機関等危機対応融資に要する経費(福祉医療機構) 330

    診療報酬の概算前払に必要な借入利子等への補助事業費 35

    ⑤ その他 724

    (再掲)新型コロナウイルス感染症の検査体制整備費 366

    (再掲)検査キット等買上げのための経費 179

    (再掲)帰国者等の検査に必要な施設の借上げ等経費 63

    (再掲)新型コロナウイルス感染症に係る情報基盤整備費 42

    (5) その他の支援 47,127

    ① 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の拡充 20,000

    ② 低所得のひとり親世帯への追加的な給付 1,365

    ③ 持続化給付金の対応強化 19,400

    ④ その他 6,363

    中小・小規模事業者の次なる事業展開支援 1,094

    農林漁業者の経営継続補助金の創設 200

    文化芸術活動への緊急総合支援パッケージ等 580

    政府部門の感染防止対策の徹底 163

    地域公共交通における感染防止対策 138

    日々の暮らしに困っている方々へのきめ細やかな支援 2,566

    学びの保障等 1,547

    「新しい生活様式」に向けた取組 75

    (6) 新型コロナウイルス感染症対策予備費 100,000

    2 国債整理基金特別会計へ繰入 963

    3 既定経費の減額(議員歳費) ▲ 20※ 一般会計で措置した週労働時間20時間未満の雇用者に係るものであり、20時間以上の雇用者について

    は、労働保険特別会計で8,576億円を措置

    (再掲)資本性資金供給・資本増強支援(中小・小規模事業者)

    (再掲)危機対応融資及び資本性劣後ローン(中堅・大企業)

    項 目

    歳出(追加額)合計

    (再掲)日本政策緊急公庫等による実質無利子融資の継続・拡充(中小・小規模事業者)

    (再掲)民間金融機関を通じた実質無利子融資の継続・拡充(中小・小規模事業者)

  • 10

    1.2. 歳入

    【2020 年度 当初予算】 2020 年度の歳入総額は 102.7 兆円(対前年度 1.2 兆円増)で、このうち

    消費税収が 21.7 兆円(同 2.3 兆円増)である(表 1.2.1)。消費税収は 2020年度に所得税収を上回った(図 1.2.2)。税収が増加した分、公債金(国債発行収入)は減少傾向にあり、2020 年度は 32.6 兆円と、当初予算としては過去 10 年間で最低の水準であった。

    【2020 年度 補正予算】

    第 2 次補正後、公債金が 90.2 兆円になった。税収は補正後も当初予算横這いのままであるが、今後の税収減が予測される。

    表 1.2.1 国・一般会計歳入の推移

    (兆円)

    2019

    2017 2018 当初予算 当初予算 1次補正 2次補正

    税収 57.7 59.1 62.5 63.5 63.5 63.5

    (再掲)所得税 18.9 19.9 19.9 19.5 19.5 19.5

    (再掲)法人税 12.0 12.3 12.9 12.1 12.1 12.1

    (再掲)消費税 17.5 17.7 19.4 21.7 21.7 21.7

    その他収入 5.4 4.9 5.1 6.6 6.6 6.6

    公債金 34.4 33.7 31.9 32.6 58.2 90.2

    通常分計 97.5 97.7 99.4 102.7 128.3 160.3

    - - 1.2 0.0 0.0 0.0

    公債金 - - 0.8 0.0 0.0 0.0

    臨時・特別の措置計 - - 2.0 0.0 0.0 0.0

    合計 97.5 97.7 101.5 102.7 128.3 160.3*財務省「令和2年度予算フレーム」ほかから作成

    預金保険機構の利益剰余金、2017年度決算剰余金等

    決算 2020

  • 11

    図 1.2.1 国・一般会計 歳入の推移

    41.5 42.8 43.9 47.0 54.0 56.3 55.558.8 60.4 62.5 63.5 63.5 63.5

    42.3 42.8 47.5 40.938.5 34.9 38.0 33.6 34.4 32.7 32.6

    58.290.2

    16.7 24.3 16.4 18.2 12.2 11.0 9.3 11.310.9 6.3 6.6

    6.6

    6.6

    100.5110.0 107.8 106.0 104.7 102.2 102.8 103.6 105.7 101.5 102.7

    128.3

    160.3

    0.020.040.060.080.0

    100.0120.0140.0160.0180.0

    2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2020 2020

    決算 当初予算 1次補正

    2次補正

    (兆円)

    国 ・一般会計 歳入の推移

    税収 公債金 その他

    *財務省「財政統計(予算決算等データ)」「平成31年度予算のポイント」から作成。2012年度の公債金には年金特例公債金を含む。

    図 1.2.2 国・一般会計 所得税・法人税・消費税収の推移

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0(兆円)

    (年度)

    国・一般会計 所得税・法人税・消費税収の推移

    所得税 法人税 消費税

    *財務省「財政統計一般会計歳入歳出決算」「平成29年度租税及び印紙収入概算」から作成。2018年度までは決算。2019年度以降は当初予算。

  • 12

    1.3. 基礎的財政収支 基礎的財政収支は、2020 年度当初予算では▲9.2 兆円であったが、第 2 次

    補正後は▲66.1 兆円になった(表 1.3.1)。なおこの時点で、2020 年度の税収減予想は織り込まれていない。

    表 1.3.1 国・一般会計 基礎的財政収支対象経費と税収

    (兆円)

    2017 2018 2019

    決算 決算 当初予算 当初予算 1次補正 2次補正

    社会保障関係費 32.5 32.6 34.1 35.9 36.7 40.5

    地方交付税 15.6 16.0 16.0 15.8 15.8 15.8

    公共事業関係費 6.9 6.9 6.9 6.9 6.9 6.9

    文教及び科学振興費 5.7 5.7 5.6 5.5 5.8 6.0

    防衛関係費 5.3 5.5 5.3 5.3 5.3 5.3

    その他 9.6 9.7 10.1 10.0 34.3 61.7

    基礎的財政収支対象経費 75.6 76.4 77.9 79.3 104.9 136.2

    税収等 70.1 71.3 68.8 70.1 70.1 70.1

    基礎的財政収支 ▲ 5.5 ▲ 5.1 ▲ 9.2 ▲ 9.2 ▲ 34.8 ▲ 66.1

    *財務省「予算書・決算書データベース」ほかから作成

    2020

  • 13

    2. 社会保障費 2.1. 社会保障費と消費税収の関係

    消費税率 10%のうち国分 6.28%を、国・一般会計の社会保障 4 経費(年

    金、医療、介護、子ども・子育て)に充てることになっている(図 2.1.1)。 また、国・地方あわせて、消費税率 5%から 10%への引き上げ 5%増収分

    の約 14 兆円から、社会保障の充実に 3.89 兆円を充てることになっている。

    図 2.1.1 社会保障 4 経費と「社会保障の充実」財源

    社会保障4経費と「社会保障の充実」財源

    紙面の都合で縮尺は合っていない

    消費税率10%

    5%

    国・一般会計 社会保障4経費(年金、医療、介護、子ども・子育て)

    地方交付税

    地方消費税

    国 分

    社会保障の充実

    消費税+5%14兆円のうち

    3.89兆円

    6.28% 1.52% 2.2%

    5%

  • 14

    2012 年に消費税率 5%から 10%への引き上げを決定した時点では、引き上げ分 5%のうち、社会保障の充実に 1%程度、社会保障の安定化(財政再建)に 4%程度を充てることになっていた16。しかし、2017 年 12 月の「新しい経済政策パッケージについて」(以下、新パッケージ)17でこれを変更し、

    その時点ではすでに消費税率 8%であったが、10%への 2%分 5 兆円強を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、財政再建とに、それぞ

    れ半分ずつ充当することになった。その結果、2020 年度予算では、消費税率10%への増収分 14.1 兆円のうち広義の社会保障の充実に 3.89 兆円、うち当初予定分(新パッケージ以外)に2.31兆円を充当することになった(図 2.1.2)。

    図 2.1.2 消費税増税財源の使途

    社会保障の充実 3.89兆円

    消費税増税財源の使途(公費(国・地方))

    1%程度

    4%程度

    社会保障の充実 2.8兆円

    社会保障の安定化

    11.2兆円

    基礎年金国庫負担割合1/23.2兆円

    後代への負担のつけ回しの軽減(財政再建) 7.3兆円

    消費税率引上げに伴う社会保障4経費の増 0.8兆円

    当初予定

    当初予定分 2.31兆円

    新パッケージ 1.59兆円

    基礎年金国庫負担割合1/23.4兆円

    消費税率引上げに伴う社会保障4経費の増 0.6兆円

    後代への負担のつけ回しの軽減(財政再建) 5.8兆円

    ※出所)財務省「令和2年度社会保障関係予算のポイント」増収額は軽減税率制度による減収影響を除いている。紙面の都合で縮尺は合っていない

    新パッケージ後2020年度14.1兆円※

    16 2011 年 6 月の「社会保障・税一体改革成案」(政府・与党社会保障改革検討本部決定)では、消費税引上げに伴う社会保障支出等の増 1%相当、機能強化(制度改革に伴う増、高齢化等に伴う増、年金2 分の 1(安定財源)(税制抜本改革までの 2 分の 1 財源))3%相当、機能維持 1%相当とされていたが、2012 年 1 月 20 日の関係 5 大臣会合「一体改革・広報に関する基本方針」で社会保障の充実 1%程度、社会保障の安定化 4%に修正された。「一体改革・広報に関する基本方針」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/5daijin/240120/siryou.pdf 17 「新しい経済政策パッケージについて」2-8 頁, 2017 年 12 月 8 日 閣議決定 https://www5.cao.go.jp/keizai1/package/20171208_package.pdf

  • 15

    2.2. 社会保障 4 経費 消費税率 5%までは消費税収(国分)を高齢者 3 経費(基礎年金、老人医

    療、介護)に充てており、これを「福祉目的化」といった。 2012 年の「社会保障・税一体改革大綱」において、消費税率 8%以降は、

    消費税収(国分)は「社会保障目的税化」になった(図 2.2.1)。「社会保障目的税化」は、厳格には社会保障 4 経費のために消費税を徴収し、消費税収(国分)が不足した場合には、消費税率の引き上げで対応することをいうが、

    現実には不足分は国債を発行してまかなっている。

    「社会保障・税一体改革大綱」(2012 年 2 月 17 日閣議決定)18 国分の消費税収について法律上全額社会保障目的税化するなど、消費税収(国・

    地方、現行分の地方消費税を除く。)については、その使途を明確にし、官の肥大

    化には使わず全て国民に還元し、社会保障財源化する。

    図 2.2.1 消費税の使途

    消費税収の使途

    7.8% 国分

    6.28%

    地方交付税1.52%

    地方消費税2.2%

    消費税率10%

    消費税率5%

    社会保障4経費年金医療介護

    子ども・子育て

    4%国分

    2.82%

    地方交付税1.18%

    地方消費税 1%

    *縮尺はあっていない

    社会保障目的税化福祉目的化

    高齢者3経費

    基礎年金老人医療

    介護

    18 「社会保障・税一体改革大綱」2012 年 2 月 17 日閣議決定 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kakugikettei/240217kettei.pdf

  • 16

    社会保障 4 経費の具体的な科目は、毎年、国・一般会計の予算総則で決定される(表 2.2.1)19。

    表 2.2.1 国・一般会計 社会保障 4 経費の内訳

    (兆円)

    2018 2019

    当初 当初 当初 補正追加額

    基礎年金拠出金等年金特別会計へ繰入、国債費(年金特例 11.9 12.3 12.7公債償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入)※1

    基礎年金等国家公務員共済組合負担金 ※2 0.4 0.4 0.4

    計 12.3 12.7 13.1

    高齢者医療 後期高齢者医療給付費等負担金、後期 5.8 5.9 6.1高齢者医療財政調整交付金、後期高齢者医療費支援金負担金・補助金等

    一般医療 国民健康保険医療給付費等負担金、全 4.0 4.0 4.2国健康保険協会保険給付費等補助金等

    特定疾患 難病医療費等負担金、小児慢性特定疾 0.1 0.1 0.1病医療費等負担金

    障害保健福祉 障害者医療費負担金等 0.3 0.3 0.3

    生活保護 医療扶助 1.4 1.4 1.5

    その他 結核医療費負担金・補助金、原爆被爆 0.04 0.03 0.03 0.02者医療費、新型コロナウイルス感染症入院医療費公費負担等

    計 11.6 11.9 12.2介護給付費等負担金、介護納付金負担金・補助金、介 3.0 3.1 3.3護給付費財政調整負担金、地域支援事業交付金等

    生活保護(介護扶助) 0.1 0.1 0.1

    計 3.1 3.2 3.4

    大学等修学支援費 - - 0.49

    児童手当年金特別会計へ繰入 1.1 1.1 1.1

    子どものための教育・保育給付等年金特別会計へ繰入 0.8 1.0 1.3

    子ども・子育て支援事業年金特別会計へ繰入 0.04 0.05 0.05 0.02

    育児休業手当金国家公務員共済組合負担金 ※3 0.0001 0.0001 0.0001

    その他 0.13 0.37 0.14

    計 2.1 2.6 3.0 0.0

    合計 29.1 30.3 31.7 0.0※1)年金国庫負担財源を賄うため消費税率引き上げまでのつなぎとして、2012・2013年度に年金特例国債が  発行されておりその償還分※2)基礎年金等国家公務員共済組合負担金  ※3)育児休業手当金国家公務員共済組合負担金*国の予算書から作成

    年金

    医療

    介護

    子ども

    2020

    19 地方においては社会福祉等にも充当される。 地方税法第 72 条の 116(地方消費税の使途) 道府県は、前条第二項に規定する合計額から同項の規定により当該道府県内の市町村に交付した額を控除した額に相当する額を、消費税法第一条第二項に

    規定する経費その他社会保障施策(社会福祉、社会保険及び保健衛生に関する施策をいう。次項にお

    いて同じ。)に要する経費に充てるものとする。 2 市町村は、前条第二項の規定により道府県から交付を受けた額に相当する額を、消費税法第一条

    第二項に規定する経費その他社会保障施策に要する経費に充てるものとする。

  • 17

    2020 年度第 2 次補正後では、社会保障費は 40.5 兆円、消費税収(国分)を充てる社会保障 4 経費は 31.7 兆円である(図 2.2.2)。補正予算は主に「保健衛生対策費」に追加されたので、社会保障 4 経費は当初予算からほとんど異動がない(図 2.2.2)。

    図 2.2.2 国・一般会計 社会保障費と社会保障 4 経費

    数字は2020年度第2次補正予算(兆円)

    ( )内は当初予算

    *財務省「社会保障関係予算のポイント」「予算書・決算書データベース」ほかから作成。縮尺は合っていない。 四捨五入の関係で内訳と合計が合わないところがある。

    年金給付費 12.5 (12.5)

    医療給付費 12.2 (12.2)(医療扶助を含む)

    介護給付費 3.4 (3.4)(介護扶助を含む)

    少子化対策費 3.1 (3.1)

    保健衛生対策費 3.9 (0.5)

    雇用労災対策費 0.6 (0.04)

    その他※ 0.7

    社会保障費 40.5(35.9)

    年金

    医療

    介護

    子ども・

    子育て

    社会保障4経費

    31.7(31.7)

    生活扶助等社会福祉費 4.9 (4.2) ※その他基礎年金等国家公務員共済組合負担金等 0.4国債費(年金特例公債償還財源) 0.3

  • 18

    2020 年度当初予算で消費税収(国分)は 17.5 兆円、社会保障 4 経費(年金、医療、介護、子ども・子育て)は 31.7 兆円であり、不足分(スキマ)が14.2 兆円ある(図 2.2.3)。なお、2020 年度の年金の増加は、消費税率 10%への引き上げに伴う「年金生活者支援給付金」(4,908 億円全額国庫負担)によるものである。

    2019 年 10 月に消費税率が 10%に引き上げられたが、2020 年度予算にお

    いて社会保障 4 経費の増加により、スキマはほとんど埋まらなかったうえ、2020 年度は消費税収の減少も予測されるところである。

  • 19

    図 2.2.3 国・一般会計 消費税収(国分)と社会保障 4 経費(当初予算)

    13.3 13.6 15.417.5

    15.4 15.515.0

    14.2

    12.1 12.3 12.7 13.1

    11.5 11.6 11.9 12.2

    3.0 3.1 3.23.42.1 2.1

    2.6 3.028.7 29.1

    30.3 31.7

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    35.0

    消費税収

    (国分)

    社会保障

    4経費消費税収

    (国分)

    社会保障

    4経費消費税収

    (国分)

    社会保障

    4経費消費税収

    (国分)

    社会保障

    4経費

    2017年度 2018年度 2019年度 2020年度

    (兆円)国・一般会計 消費税収(国分)と社会保障4経費(当初予算)

    *国の予算書から作成

    年金

    医療

    介護

    子ども・子育て

  • 20

    2.3. 社会保障費の自然増 これまでの社会保障費の自然増抑制について振り返っておきたい。 「骨太の方針 2001」(小泉内閣)で聖域なき構造改革が打ち出され、2002

    年度以降の 5 年間(2002~2006 年度)で社会保障費(国・一般会計)は 1.1兆円削減された(当初予算ベース。以下同じ)。

    「骨太の方針 2006」(2006 年 6 月)では、過去 5 年間(2002~2006 年度)

    の社会保障費の削減を継続することとされた。「骨太」は「機械的に 5 年間均等に歳出削減を行うものではない」としていたが、毎年 2,200 億円削減をされ、「骨太の方針 2009」(麻生内閣)で撤回されるまで 3 年間継続した。

    「骨太の方針 2015」20(第 3 次安倍内閣)の「経済・財政再生計画」(以

    下、「再生計画」)により、過去 3 年間(2013~2015 年度)の社会保障費の伸び 1.5 兆円を継続すること、2020 年度に向けて社会保障費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさ

    めることを目指す方針が示された。 「骨太の方針 2018」21は、先の「再生計画」で社会保障費の実質的な増加

    を高齢化による増加分に相当する伸びに収めることとされていることを踏ま

    え、2019 年度以降、その方針を 2021 年度まで継続することとした。 社会保障費の増加について、「骨太の方針 2019」22は「骨太の方針 2018」

    を踏襲する、「骨太の方針 2020」23は「骨太の方針 2019」を踏襲24するとされている。

    20 「経済財政運営と改革の基本方針 2015」2013 年 6 月 30 日閣議決定 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2015/2015_basicpolicies_ja.pdf 21 「経済財政運営と改革の基本方針 2018」2018 年 6 月 15 日閣議決定 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/2018_basicpolicies_ja.pdf 22 「経済財政運営と改革の基本方針 2019」2019 年 6 月 21 日閣議決定 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2019/2019_basicpolicies_ja.pdf 23 「経済財政運営と改革の基本方針 2020」2020 年 7 月 17 日閣議決定 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf 24 「骨太の方針 2020」において、「骨太の方針 2019」のうち、「本基本方針に記載が無い項目についても、引き続き着実に実施」するとされている。

  • 21

    表 2.3.1 国・一般会計 社会保障費自然増の削減内訳

    一部概数であり差引や合計が合致しないところがある (億円)

    2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

    自然増 ※1 8,400 9,900 8,300 6,700 6,400 6,300 6,000 5,300

    診療報酬本体 498 588

    診療報酬 0.47%分 500

    ▲ 150

    薬価改定(薬価等) ▲ 1,336 ▲ 1,100薬価 ▲ 1,247 ▲ 1,456 ▲ 493材料価格 ▲ 115 ▲ 99 ▲ 10

    ▲ 310

    高額薬剤(オプジーボ)の薬価引下げ ▲ 196

    医薬品価格の適正化 ▲ 502

    ▲ 56

    大型門前薬局等に対する評価の適正化 ▲ 38

    経腸栄養用製品に係る給付の適正化 ▲ 42

    ▲ 27

    ▲ 77

    高額療養費の見直し ▲ 224

    後期高齢者の保険料軽減特例の見直し ▲ 187

    入院時の光熱水費相当額の見直し ▲ 17

    介護報酬改定 ▲ 1,100

    高額介護サービスの見直し ▲ 13

    介護給付金の総報酬割の導入・拡大 ※2 ▲ 443 ▲ 610 ▲ 600

    生活扶助基準の見直し ※2 ▲ 30

    住宅扶助基準及び冬季加算の見直し ▲ 66

    ▲ 1,200

    ▲ 461 ▲ 205 ▲ 321 ▲ 140

    年金スライド分(+0.1%) 100

    その他 ※4 ▲ 160

    制度改革による減 ※2 ▲1,200 ▲ 1,700 ▲ 1,700 ▲ 1,700 ▲ 1,400 ▲ 1,300 ▲ 1,220 ▲ 1,200

    社会保障関係費の実質的な伸び ※3 - - - 4,412 4,997 4,997 4,774 4,111出所 ※1  財務省「概算要求に当たっての基本的な方針について」(各年度)

    ※2 財務省「最近の社会保障関係費の伸びについて」2019年4月23日 財政制度等審議会財政制度分科会資料2019年度の介護納付金の総報酬割の拡大と生活扶助基準の見直しの数値

    ※3 財務省「社会保障関係予算のポイント」(各年度)※4 2019年度は「社会保障関係予算のポイント」ではこれまでに定められた制度改革の実施等▲800億円程度(介護保険料の総報酬割の拡大、

    生活扶助基準の見直し等)となっているが、上記※2から内訳が判明しているので、残りをその他とした

    「7対1入院基本料」算定病床の要件の厳格化

    いわゆる大型門前薬局に係る調剤報酬の適正化

    削減内訳

    生活保護の適正化(2015年度までの効果額を含む)

    協会けんぽ超過準備金分の国庫補助特例減額措置

    うがい薬のみの処方の保険適用除外等の合理化・効率化

    その他(湿布薬の1処方当たりの枚数制限等)

    新薬創出等加算の抜本的⾒直し、⻑期収載品の価格の段階的引下げ等の薬

    価制度の抜本改⾰

  • 22

    2.4. 社会保障の充実

    2020 年度は、社会保障の充実は広義で 3.89 兆円、このうち当初予定分が2.31 兆円である(前述)。

    当初予定分は消費税増収分 2.31 兆円に、社会保障改革プログラム法等に基づく重点化・効率化による財政効果▲0.4 兆円25を活用して、全体で 2.7 兆円である(表 2.4.1)。

    2020 年度は、診療報酬改定で、勤務医の働き方改革への特例的な対応と

    して改定率+0.08%(公費 126 億円程度)を確保した(次頁対前年度 126 億円の部分)26。診療報酬のこのほかの分は一般財源による。つまり、診療報

    酬は特別なケースを除いて、消費税率 5%以降の「社会保障の充実」で手当される対象ではない(※)。

    ※)2019 年度までの診療報酬への対応については下記参照。 「2016 年度の社会保障関係予算と診療報酬改定および経済成長との関係」 2016 年 4 月 前田由美子 https://www.jmari.med.or.jp/download/WP360.pdf なお、2020 年度は、上記の働き方改革に係る診療報酬の対象にならなかっ

    た医療機関以外で、働き方改革の取組を実施している医療機関に対して、地

    域医療介護総合確保基金(医療分)が 143 億円上積みされた(次頁対前年度160 億円の内数)。

    25 後期高齢者支援金の全面総報酬割、年金受給資格期間の短縮に伴う生活扶助費の減、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大の平年度化、特別養護老人ホーム入所者等への補足給付の見直しの平

    年度化等。 26 救急用の自動車又は救急医療用ヘリコプターによる搬送件数年間で 2,000 件以上の病院を対象に地域医療体制確保加算を創設。

  • 23

    表 2.4.1 消費税増収財源による社会保障充実分の内訳(「新パッケージ」を含む分野別)

    (億円)

    対前年度

    子ども・子育て 3,060 5,189 6,005 6,959 6,959 7,017 7,017 0

    医療(難病・小児慢性特定疾病を含む) 1,849 6,177 6,729 8,559 8,407 8,895 10,149 1,254

    (再掲)地域医療介護総合確保基金(医療分) 544 904 904 904 934 1,034 1,194 160

    353 392 422 442 473 476 602 126

    (再掲)医療情報化基金 - - - - - 300 768 468

    介護 43 2,232 2,528 2,570 2,600 3,454 4,326 872

    年金 10 20 32 300 694 2,564 5,620 3,056

    当初予定分 4,962 13,618 15,294 18,388 18,660 21,930 27,112 5,182

    - - - - - 4,418 14,854 10,436

    - - - - - 421 1,003 582

    新パッケージ - - - - - 4,839 15,857 11,018

    計 4,962 13,618 15,294 18,388 18,660 26,769 42,969 16,200

    構成比(当初予定分+新パッケージ) (%)

    対前年度

    子ども・子育て 61.7 38.1 39.3 37.8 37.3 42.7 50.9 8.2

    医療(難病・小児慢性特定疾病を含む) 37.3 45.4 44.0 46.5 45.1 33.2 23.6 -9.6

    介護 0.9 16.4 16.5 14.0 13.9 14.5 12.4 -2.1

    年金 0.2 0.1 0.2 1.6 3.7 9.6 13.1 3.5

    合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 0.0*財務省「社会保障関係予算のポイント」(各年度)から作成

    2019

    子ども・子育て支援(待機児童の解消、幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化)

    医療・介護サービスの提供体制の改革(介護人材の処遇改善)

    20202014 2015 2016 2017 2018

    (再掲)診療報酬改定における消費税財源等の活用分

    2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

    地域医療

    体制確保

    加算

  • 24

    2.5. 診療報酬改定率 2014(平成 26)年度改定以降、「全体(ネット)改定」という表現が使わ

    れなくなっており、「1.診療報酬本体 2.薬価等」という形で公表される

    ようになった。 さらに、2020(令和 2)年度の診療報酬改定では、診療報酬「本体」とい

    う言葉がなくなって「1.診療報酬 2.薬価等」と発表され、薬価は診療

    報酬の一部ではないという書きぶりになった。診療報酬については、勤務医

    の働き方改革への特例的な対応として「※2 消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」分が確保され27、従来の医

    科、歯科、調剤は「※1 ※2を除く改定分」という表現になった(いずれも厚生労働省発表資料ママ28)。

    近年は、薬価マイナス改定財源を診療報酬本体に充てることにはなってい

    なかったものの、薬価マイナス改定財源は社会保障費自然増の抑制には寄与

    してきた。2020 年(令和 2)年度改定で、薬価は診療報酬の一部ではないという表記になったが、今後の財源配分にどのような影響を与えるのか注視し

    たい。 2020 年には新型コロナウイルス感染症対策で、オンライン診療の要件が

    時限的に緩和されたり、新型コロナウイルス感染症患者の受入れに係る特例

    的な入院料が引き上げられたりするなど、診療報酬上の対応がとられている。

    しかし、ほとんどの医療機関で受診控え等によって経営が悪化し、当初、医

    療のために用意された対価(診療報酬)を使い切っていない。別の言い方を

    すれば、診療報酬を残した分、医療に綻びが生じつつある。

    27 救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数年間で 2,000 件以上の病院を対象に地域医療体制確保加算(入院初日 520 点)を創設。厚生労働省保険局医療課「令和 2 年度診療報酬改定の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000608533.pdf 28 「診療報酬改定について」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000577631.pdf

  • 25

    表 2.5.1 診療報酬改定率

    改定率(消費税対応および2019年10月の薬価改定を除く) (%)

    2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020

    全体(ネット)改定率 ▲ 0.82 0.19 0.00 - - - -

    1. 診療報酬本体 0.38 1.55 1.38 0.10 0.49 0.55

    1. 診療報酬 0.55

    ※1 ※2を除く改定分 - - - - - 0.47

    医科 0.42 1.74 1.55 0.11 0.56 0.63 0.53

    歯科 0.42 2.09 1.70 0.12 0.61 0.69 0.59

    調剤 0.17 0.52 0.46 0.04 0.17 0.19 0.16

    - - - - - - 0.08

    2. 薬価等 ▲ 1.2 ▲ 1.36 ▲ 1.38 ▲ 1.36 - - -

    ① 薬価 ▲ 1.10 ▲ 1.23 ▲ 1.26 ▲ 1.22 ▲ 1.22 ▲ 1.65 ▲ 0.99

    ② 材料価格 ▲ 0.10 ▲ 0.13 ▲ 0.12 ▲ 0.14 ▲ 0.11 ▲ 0.09 ▲ 0.02

    全体改定率と薬価等の「-」は計算可能であるが公的資料で公表されていない部分

    国費(消費税対応および2019年10月の薬価改定を除く) (億円)

    2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020

    全体改定率 ▲ 660 - - - - - -

    1. 診療報酬本体 - 4,000 5,500 100 498 588 605

    ※1 ※2を除く改定分 - - - - - 517

    - - - - - - 88

    2. 薬価等 - - ▲ 5,500 ▲ 1,336 - - -

    ① 薬価 - - ▲ 5,000 - ▲ 1,247 ▲ 1,766 ▲ 1,083

    ② 材料価格 - - ▲ 500 - ▲ 115 ▲ 99 ▲ 27全体改定率と薬価等の「-」は計算可能であるが公的資料で公表されていない部分

    2008年度は別途制度・施策の見直しがあった

    2010年度は医科急性期入院医療のみ記載

    2014年度は本体改定+0.01%、7対1病床から受け皿病床への円滑な移行+0.15%、計249億円と公表されており按分して計算

    2016年度は別途診療報酬・薬価等に関する制度改革事項があった

    *中医協総会資料「診療報酬改定について」、財務省「令和2年度社会保障関係予算のポイント」(各年度)から作成

    ※2 消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応

    ※2 消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応

  • 26

    おわりに 1. 医療が危機的な状況にあった段階から、他の産業では消費喚起キャン

    ペーン等のための予算が確保されていた。一方、医療は未だ新型コロナ

    ウイルス感染症対策の真っただ中にあるだけでなく、収束後を見据えた

    支援策も俎上に上がっていない。 2. 今般の新型コロナウイルス感染症への対応で、基礎的財政収支が大幅に

    悪化した。今のところ、来年度以降も社会保障費の自然増抑制圧力がつ

    づく恐れがあるが、今年度は決算ベースでは社会保障費はかなり抑制さ

    れると見込まれる。したがって、むしろその分を取り戻す(健康を取り

    戻すと言ってもよいだろう)必要がある。 3. 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金等は、社会保障 4 経費で

    はないので、消費税収入(国分)と直接関係しない。しかし、そもそも

    消費税収(国分)は社会保障 4 経費に対して大きく不足している。一方で、直近では消費税減税を求める声もある。「社会保障目的税化」である

    消費税収の減少は、厳格にいえば社会保障 4 経費の削減に直結しており、社会保障費と消費税収のあり方についての議論は避けられない。

    4. 新型コロナウイルス感染症対策で、診療報酬上で特例的な引き上げ等が

    行われているが、受診控えにより 2020 年度のそもそもの診療報酬改定財源は大きく残る。地域医療の確保のために診療報酬を緊急に戻しておく

    必要があるが、診療報酬点数の引き上げは、患者負担増を伴う。患者負

    担増を生じさせない形での財源の投入や患者に対する支援が必要である。