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20年後の理学療法 理事会報告 来る“県PT会(現協会)創立50周年に望む” -県士会の運営を振り返って ⑷ - Q&Aコーナー 2016リレーフォーライフ 今後開催予定の講習会・研修会等 10 賛助会員 11 求人広告募集 12 編集後記 12 № 152 20年後の理学療法 先日、「銀行がいらなくなる?」というニュースを見た。借り手と貸し手の仲介をする銀行業は、今後の ネット社会の中で役割が低下してくるというのである。巷には「20年後に消える職業は?」などと煽り立て る記事があるが、気にならないふりをしつつも理学療法士としてのぞいて見たくなる。 高齢社会の到来による医療・介護職の人材不足が懸念される一方で、遺伝子診断や遠隔手術など先端医療 の発達には目覚しいものがある。「20年後に残る診療科は?」という問いに、ある識者は「精神科」は確実 に残ると指摘している。産婦人科や小児科、整形外科も残るようだ。検査データや画像判読は、ビッグデー タを基にして医師よりもコンピュータが正確に診断してくれる。バイタルサインのチェックもスマートフォ ンで日常的に管理できる。適切な薬剤の選択も自動化されるだろう。見落としや判断ミスというヒューマン エラーは激減し、診断と治療の精度は飛躍的に向上するのかもしれない。多くの医師の役割は、医学が発達 する以前の「占い師」や「牧師」のようなコーディネーター的存在になるのではないかと勝手な予測をして いる。 そんな中で、精神科が残る理由は「人の行動変容を促すことができるのは人間しかいないからだ」と述べ ている。人間の心はコンピュータで操作できるものではないと考えているのだろう。「2045年問題」をご存 知だろうか。加速度的なコンピュータの発達で人工知能(artificial intelligence、AI)が人間を超え、人間が コンピュータを制御できなくなるのが2045年頃だという。人の行動変容を促すのは人間だけであると思いた いが、促す人間の行動すらビッグデータが説明してくれるかもしれない。何とも不透明な雲行きである。 医療ビッグバンのごとく変化する20年後に、理学療法の姿はどうなっているのだろう? 対象者に行動変 容を促す専門職なのか? それともコンピュータに指示された機械操作の下請け人なのか? もしかしたら アンドロイドにとって代わられているのかもしれない・・・。 再生医療で神経系が回復しても・・・、ロボットスーツで動作が可能になっても・・・・、人が人間らしい動きを 取り戻すためには、身体の動きを自らが能動的に学習しなければならない・・・・と信じたい。そしてその良き 支援者がセラピストであるはずだ。先端技術を活用した的確な理学療法は万人の望むところである。加え て、人の行動変容を網羅したビッグデータでも説明できない、人としての機微を備えた専門職として、その 「匠」を示さなければ「20年後に残る医療職」に名乗りを上げることができないかもしれない。理学療法士 に自らの行動変容が求められていることは容易に想像できる・・・・・、道標は決して明確ではないが、若い世代 のセラピストと共に模索して行きたい。時代は足早にnext stageに向かっている。 No.152 2016・12・20 発行 公益社団法人 高知県理学療法士協会

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Page 1: 20年後の理学療法 - kopta.net · 20年後の理学療法 1 理事会報告 2 来る“県PT会(現協会)創立50周年に望む”

◇◇20年後の理学療法 1◇◇理事会報告 2◇◇来る“県PT会(現協会)創立50周年に望む”-県士会の運営を振り返って ⑷ - 5

◇◇Q&Aコーナー 8

◇◇2016リレーフォーライフ 9◇◇今後開催予定の講習会・研修会等 10◇◇賛助会員 11◇◇求人広告募集 12◇◇編集後記 12

№ 152

20年後の理学療法会 長 宮 本 謙 三

先日、「銀行がいらなくなる?」というニュースを見た。借り手と貸し手の仲介をする銀行業は、今後のネット社会の中で役割が低下してくるというのである。巷には「20年後に消える職業は?」などと煽り立てる記事があるが、気にならないふりをしつつも理学療法士としてのぞいて見たくなる。高齢社会の到来による医療・介護職の人材不足が懸念される一方で、遺伝子診断や遠隔手術など先端医療の発達には目覚しいものがある。「20年後に残る診療科は?」という問いに、ある識者は「精神科」は確実に残ると指摘している。産婦人科や小児科、整形外科も残るようだ。検査データや画像判読は、ビッグデータを基にして医師よりもコンピュータが正確に診断してくれる。バイタルサインのチェックもスマートフォンで日常的に管理できる。適切な薬剤の選択も自動化されるだろう。見落としや判断ミスというヒューマンエラーは激減し、診断と治療の精度は飛躍的に向上するのかもしれない。多くの医師の役割は、医学が発達する以前の「占い師」や「牧師」のようなコーディネーター的存在になるのではないかと勝手な予測をしている。そんな中で、精神科が残る理由は「人の行動変容を促すことができるのは人間しかいないからだ」と述べている。人間の心はコンピュータで操作できるものではないと考えているのだろう。「2045年問題」をご存知だろうか。加速度的なコンピュータの発達で人工知能(artificial intelligence、AI)が人間を超え、人間がコンピュータを制御できなくなるのが2045年頃だという。人の行動変容を促すのは人間だけであると思いたいが、促す人間の行動すらビッグデータが説明してくれるかもしれない。何とも不透明な雲行きである。医療ビッグバンのごとく変化する20年後に、理学療法の姿はどうなっているのだろう? 対象者に行動変容を促す専門職なのか? それともコンピュータに指示された機械操作の下請け人なのか? もしかしたらアンドロイドにとって代わられているのかもしれない・・・。再生医療で神経系が回復しても・・・、ロボットスーツで動作が可能になっても・・・・、人が人間らしい動きを取り戻すためには、身体の動きを自らが能動的に学習しなければならない・・・・と信じたい。そしてその良き支援者がセラピストであるはずだ。先端技術を活用した的確な理学療法は万人の望むところである。加えて、人の行動変容を網羅したビッグデータでも説明できない、人としての機微を備えた専門職として、その「匠」を示さなければ「20年後に残る医療職」に名乗りを上げることができないかもしれない。理学療法士に自らの行動変容が求められていることは容易に想像できる・・・・・、道標は決して明確ではないが、若い世代のセラピストと共に模索して行きたい。時代は足早にnext stageに向かっている。

No.152 2016・12・20 発行 公益社団法人 高知県理学療法士協会

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( 2) 高知県理学療法士協会ニュース № 152

(公社)高知県理学療法士協会 平成28年度第4回 理事会 議事録(要約)

日 時:平成28年8月17日(水) 18:45~ 20:45場 所:県士会事務室(レジデンスノナミ107号室)出席者:会長;宮本

監事;山田理事;大畑・小笠原・日野・山﨑・前岡・

和田・濱田・八坂・東・栗山事務局次長;滝本部長;財務(西村)・保健(木下)書記;田渕

<議 題>

1.「足の健康ひろば」イベント後援依頼について宮本会長より資料に基づき説明がなされ、本会

規定により後援は行わないことで承認された。2.会員の入会・退会・休会について栗山事務局長より、資料に基づき平成28年6・

7月の会員の入会および休会、退会について説明がなされ、審議の結果、入会者20名、退会者3名、休会者1名が承認された。8月1日時点での在会者数は、1,423名、休会者69名、計1,492名となる。3.士会組織機能強化に必要な解決策の検討および日本理学療法士協会への要望事項の提案について栗山事務局長より、資料に基づき説明がなされ、

士会組織機能強化に関する課題・要因・具体的な解決策の検討がなされ、宮本会長が士会強化のビジョンを作成し、要望書を日本理学療法士協会に提出することとなった。また、宮本会長より、士会組織強化にあたっては、事務員の雇用が必要であり、具体的な業務内容について検討がなされた。内容としては、総務部、財務部の業務が中心となると考えられるが、次回理事会までに各部からの要望を募り、栗山事務局長を中心に事務員に依頼する業務内容を取りまとめていくことで承認された。4.第16回全国障害者スポーツ大会トレーナー派遣者の推薦依頼について木下保健部部長より、資料に基づき説明がなさ

れ、審議の結果、保健部より推薦された3名を推薦することで承認された。5.「がんのリハビリテーション実施施設」の調査結果について前岡理事より、資料に基づき説明がなされた。審議の結果、調査結果は、高知県在宅緩和ケア推進連絡協議会への情報提供およびホームページ上での情報公開については承認された。6.Pertino登録パソコンの使用許可願いについて濱田理事より、資料に基づき説明がなされ、審議の結果、受講者登録をするために、事務室のパソコンを使用することで承認された。7.医療部アンケート調査(災害に関するアンケート)について東理事より、資料に基づき説明がなされ、審議の結果、承認された。

<報 告>

1.総務部6・7月月間活動報告資料に基づき6・7月の会員の異動ならびに定期発送、公文書発行について報告がなされた。2.保健部活動報告資料に基づき7・8月の保健部の活動について報告がなされた。3.高知JRAT会議の報告東理事より、資料に基づき報告がなされた。

4.JIMTEF災害医療研修ベーシックコース受講報告東理事より、資料に基づき報告がなされた。

5.協会指定管理者研修についての報告大畑副会長より、協会指定管理者(初級)研修について、受講者は士会長の推薦状が事前に必要となることが報告された。

以上

理 事 会 報 告

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高知県理学療法士協会ニュース № 152 ( 3 )

(公社)高知県理学療法士協会 平成28年度第5回 理事会 議事録(要約)

日 時:平成28年10月19日(水) 18:45~20:45場 所:県士会事務室(レジデンスノナミ107号室)出席者:会長;宮本

監事;山本・山田理事;大畑・小笠原・日野・山﨑・前岡・

和田・濱田・八坂・東・栗山事務局次長;滝本部長;総務(稲岡)・財務(西村)・医療(片

山憲)・福祉(森野)書記;奥田

<議 題>

1.「平成29年新年講演会」への講師派遣依頼について栗山事務局長より、高知県臨床検査技師会から

の講師派遣依頼についての説明がなされ、審議の結果、前岡理事を派遣することで承認された。2.会費前納制の導入について栗山事務局長より、資料に基づき説明がなされ、

審議の結果、2018年度より会費前納制(3月)の導入に向け進めていくことで承認された。なお、導入に際しては、高知県理学療法士協会定款細則の変更が必要であり、平成28年度高知県理学療法士協会臨時総会において、承認を得ることとした。3.毎日新聞高知県版掲載「地域医療を考える」への協賛広告依頼について栗山事務局長より、資料に基づいた説明がなさ

れ、審議の結果、県内における毎日新聞の発行部数の観点より、今回は掲載しないことで承認された。4.会員の入会承認について稲岡総務部長より、資料に基づき8・9月の会

員の入会について説明がなされ、審議の結果、10名の入会が承認された。なお、平成28年10月3日現在の在会者は1,447名、休会者70名、会員総数1,517名となった。5.平成28年度 公社)高知県理学療法士協会 中間監査報告について山本監事より、平成28年10月17日に高知県理学

療法士協会事務室において、本年度中期の事業執

行状況および金銭出納状況に関して監査を実施した旨の報告がなされた。その結果および監事考察は、以下のとおりである。

<監査結果>1)年度当初の事業計画と予算どおり、おおむね順調に、事業が実施され予算執行がなされたこと。2)各部からの「事業進捗状況報告書(報告書)」にて、部の活動と執行状況が明確にされた。<監査考察>1)「報告書」執行済事業の記載においては、事業の共催者や開催場所など概要の記載を統一すること。2)年度末の事業報告では、事業詳細に関する資料を添付すること。3)月単位の報告書は、次月に、速やかに提出すること。4)「理学療法士講習会」決算報告を、各講習会で、速やかに作成し提出すること。5)「理学療法士講習会」の『参加受付』は、煩雑で混乱があるので、次年度に向け対応すること。6)5)について日本協会・他県士会と情報交換し、四国学会開催でも混乱と遅滞を避けられたいこと。7)事務文書の作成と発送においては、相手方に失礼のないよう、品位につき、さらに配慮されたい。

6.高知JRATの理学療法士メンバー追加について東理事より、資料に基づき、高知JRATのメンバーに高知県理学療法士協会から小笠原副会長の追加案が提示され、小笠原副会長の了承の後、承認された。7.JIMTEF災害医療研修の旅費支給について東理事より、資料に基づき、JIMTEF災害医療研修にかかる旅費についての説明がなされた。審議の結果、医療部の予算内で拠出することで承認された。

<報 告>

1.総務部月間活動報告稲岡総務部長より、資料に基づき8・9月の会員異動ならびに定期発送、公文書発行について報告がなされた。

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( 4) 高知県理学療法士協会ニュース № 152

2.座談会の事業枠にて第二回協会指定管理者研修を開催する件について濱田理事より、資料に基づき、平成28年9月に中

堅管理者研修の事業枠で『第一回協会指定管理者研修』を開催したが、さらに多くの会員の受講を促すために、本年度中にもう一度同内容の管理者研修を開催する予定である。但し、第二回中堅管理者研修の事業枠は既に研修内容が確定しており、『第二回協会指定管理者研修』を第二回座談会の事業枠で開催する予定である旨の報告がなされた。3.保健部活動報告9月の月間活動報告について、資料に基づき報

告がなされた。4.士会ニュースにおける記載漏れ及びその後の対応について滝本事務局次長より、9月20日発行済みの第

151号県協会ニュース最終ページ掲載中の賛助会員リストにおいて、「南国中央病院」および「高知新聞社」の記載漏れがあり、お詫び状を送付するとともに次号(第152号)内で施設広告を掲載す

る旨の報告がなされた。5.災害リハビリテーション研修会(高知JRAT主催)の案内について東理事より、高知JRATの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士メンバーでの会議にて、高知県災害リハビリテーション研修会の開催が企画され、研修会案内を今月発送の医療部アンケート調査票郵送物に同封し発送した旨の報告がなされた。6.がんのリハビリテーション調査結果のHP掲載について前岡理事より、がんのリハビリテーション実施施設に関する調査結果の高知県在宅緩和ケア推進連絡協議会ホームページへの掲載について、第4回理事会において指摘のあった紹介元および紹介先を除く内容にて掲載された旨の報告がなされた。

以上

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高知県理学療法士協会相談役 中 屋 久 長

▽高齢(化)社会と県士会活動(その2) △

前回は高齢(化)社会への国の対策と士会活動との関連について当時の資料を合わせて論じた。今回は特に士会地域活動の梃子となった、老人保健法(老健法)における保健事業のひとつである機能訓練事業への関わりを2件の調査報告(1981年・1986年)を引用・参考にし、述べる。この事業の施行は地方公共団体の実施すべき施策で、1971年以来、在宅老人機能回復訓練事業や老人保健医療総合対策開発事業として推進が図られてきたものが老健法に組み入れられたものと考えられる。1985(昭和60)年3月高知県は老人保健事業調査委員会を設置、県士会に委員派遣の依頼があり土会長が参画。早速、大原啓志委員長(当時高知医科大学衛生学教室)の下、各市町村の調査を開始した。高知県においては1960年代後半より保健婦(師)活動の一環として在宅者のリハビリテーションが取り上げられ、さらに1970年頃より順次機能訓練機器の配置が図られ、その結果、通所による機能訓練に発展していった市町村も見られた。1984年2月、県によって実施された「保健事業の効果的実施法に関する調査」によると、調査時県下の53市町村中20市町村で、機能訓練事業が実施されていたが、このうち17市町村は老人保健法施行以前に開始されていた。一方、16市町村ではPTが参加しているが、その実施状況は、実施頻度、参加スタッフをはじめ市町村間の差は少なくなく、この差は各市町村がスタッフ、財源、地理的条件、対象障害者の特性などとも関連して各々独自に事業を推進させてきた結果と考えられる。また、老健法の施行に伴って出された保健事業実施要領では、基本動作および日常生活活動の訓練、手工芸、レクリエーションなど訓練内容や週2回の実施回数などが示されているが、同調査の結果で、週2回実施しているものは2町にとどまるなど、必ずしもこの指針に対応した実施が進展していないことを示していた。今回の調査は「機能訓練革業の効果的な推進の要件」を明らかにするために、これらの実施状況の差に関与する要因について検討し、会わせて実施市町村の同事業に対する評価を把握したいと考えた。調査は1985年1~3月に実施、対象市町村は「保健事業調査」により、実施回数、参加スタッフを考慮し、さらにあらかじめ保健所を通じて訓練内容の概要を把握したうえで、異なる状況のものを含むよう選定した。また老健法施行以降開始したものを加えた。この結果を踏まえ、市町村の機能訓練事業について、訓練会場を視察し、訓練内容・参加スタッフ・参加者数などを把握するとともに、関係資料の閲覧、スタッフへの聴取等により、歴史的な経過を合わせて開催頻度等の実施状況、運営の企画、参加者間の交流などについて調査した。また、事業の意義、効果、運営上の間題点、要点などについて、スタッフ、市町村担当者、訓練参加者の意見を聴取した。結果として、通所機能訓練の参加者、訓練効果、意義については、8市町村の訓練参加者はPTの訓練対象者を中心として1会場当たり6~15名程度で、その他に集団体操やレクリエーションへの参加者が見られた。県士会老人福祉部会の調査では、対象8市町村のPT訓練対象者の障害別は、脳卒中後遺症が87名中69名(79.3%)と多く、他はパーキンソン病、変形性関節症、腰痛症、脳性マヒなどが1~2名ずつとの報告がある。地域の機能訓練の対象は、①脳血管疾患等、医療終了後も継続した訓練の必要なもののほか、②変形性関節症、腰痛などの身体機能の障害、③軽い認知症など精神機能の障害、④老化による心身機能低下、とされているが、本調査では①に該当する例が多い(本県の特徴?)。訓練効果については、より一般的に機能低下

高知県理学療法士協会ニュース № 152 ( 5 )

来る“県PT会(現協会)創立50周年に望む”-県士会の運営を振り返って(4)-

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防止に役立っているとする指摘が多かった。また、外出の促進、閉じこもり防止、障害者同士の交流による自信獲得、積極性意欲の向上、本人及び家族の明るさなどの効果が多く指摘された。これは機能が回復したことによるものもあるが、「通所すること」自体にも意義があるとする指摘が多かった。機能訓練よりも、仲間づくり、生活のリズムづくりのようなデイケア的要素が望まれている。そのほか、実施の現状と課題について、会場、訓練内容、実施頻度およびスタッフ、企画、運営と保健婦(師)活動との関連、送迎問題などについて調査した。結果として、地域における機能訓練事業の意義として、動作機能回復・維持に加えて生活空間の拡大あるいは社会的活動への参加の視点からの意義の重要性が指摘された。また、1986年PT協会学術誌理学療法学、第13巻第6号に「高知県における機能訓練事業の現状と問題点」と題し、士会老人福祉部(後に社会福祉部)の報告がある。その書き出しに、高齢(化)社会が進むにつれて「障害老人」の問題が取り上げられている。成人病予防、老人病院・施設の充実等が進められてきたが、障害老人(高齢者)の「処遇」を考える上では、医療・施設面だけで補いきれなく、生活実態場面である地域(家庭)との関わりを持った活動の重要性が指摘されている。老健法の概要は健康手帳交付、健康教育、健康相談、健康診査、医療・機能訓練、訪問指導などであり、特に機能訓練事業については、PTにとって大きな関わりが生じている。高知県では老健法施行前より県下市町村の各種機能訓練事業に対しPTの協力・援助を行ってきたが、老健法施行後は県士会が窓口となり、士会単位で協力・援助を行ってきた。機能訓練事業実施市町村とPT参加の経緯については、1974年梼原町、奈半利町において健康づくり事業として開始され、年毎に増加し、老健法施行後は急激な増加を示し、1985年末には県下55市町村中27市町村(49%)に及んでいる。なお、老健法施行前のPT参加は、厚生年金リハビリテーション病院からの派遣または市町村と個人的契約により参加してきたが、事業実施市町村の増加に伴い対応に苦慮するようになった。県士会では1982年8月、会員に対し「地域リハビリテーション活動に関する意識調査」を行っていたが、同様の調査を老健法施行2年後の1985年3月に再度実施。結果、県士会関与のニーズ、会員の参加にかかわる諸状況を検討し、従来県士会生涯部で対応していたものを、l983年度より老人福祉部を新設し、県士会の社会活動の一環として位置づけ対応。両年度調査を比較しても県士会員の活動への参加意志、県士会の立場、役割の理解など関心が高くなっている。本事業と県士会の関わりと役割は、1)協力・援助及びPT派遣:県士会では老人福祉部が窓口となり、市町村行政担当者、保健婦(師)などより、事業計画・内容などの事情聴取後、部会に諮り、協力・援助の可否を決定、「可」の場合には、依頼市町村または近隣病院・施設に勤務するあるいは在住する会員を派遣することを原則とし、意識調査資料を基に予め会員の了解を得たのち、市町村長及び県士会長の派遣依頼文書を所属の施設長に送付し、許可を得る方法をとった。なお「否」の場合には、その理由を市町村に報告し、改善・整備の再検討をお願いする。2)事業開始に関わるコンサルテーション:依頼市町村に対してPTが果たせる役割、適切な実施場所(施設)、必要な訓練機器、記録・評価表(士会統一のもの)、対象者内容、訓練内容、事故対応・補償などのコンサルテーションを行う。3)老人福祉部による研修およびオリエンテーションは、専業の主旨・背景の理解、PTの役割、期待される機能の十分な検討、各対象者、各市町村に対し同レベルのサービスが提供できるよう県士会全体、派遣PTに対し派遣前にオリエンテーンョンを行い、年度末には地域リハビリテーション活動連絡会を実施、各市町村派遣PT間の情報交換を行っている。1980年5月、老人福祉部実施の「機能訓練事業実態調査」によると、実施市町村は24で調査できたのは20市町村(74%)。訓練事業実施頻度は「月4回」が8市町村(40%)と最も多く、以下「月2回」5市町村(25%)、「月3回」3市町村(15%)、その他4市町村(20%)。PT参加頻度は「月1回」13市町村(65%)と最も多く、以下「月2回」5市町村(25%)その他2町村(16%)だった。PT以外の参加専門職は「保健婦(師)」20市町村(100%)、「行政担当者」14市町村(70%)、「ヘルパー」5市町村(25%)、「ボランティア」3市町村(15%)、「医師及びOT」は各l市町村(5%)だった。機能訓練以外の行事はレクリエーション、手工芸、

( 6) 高知県理学療法士協会ニュース № 152

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趣味活動などの実施は12市町村(60%)。併せて実施している在宅訪問事業は12市町村(60%)である。事業対象者状況は、1985年5月特点で20市町村計241名(1市町村平均12名)。内訳は男性152名(63%)、女性89名(37%)、男女比1.7:1。平均年齢は61歳(男63歳、女60歳)。構成は60歳代が90名(40%)と最も多く、以下「70歳代」57名(24%)、「50歳代」45名(20%)。そのほか、機能障害度、疾患別 、リスク管理、補償制度、実施協カシステム、機能訓練担当者、PTの役割認識等々を調査している。さらにまとめとして、本事業は地域リハビリテーションサービスの向上はもとよりPTの職域拡大とも関連しており、現在までPTが本事業に何をもたらしたか、実施目標年度(1986年)を迎え、どのような見直しがあるのかが見当がつかないが、いずれにせよ今後の活動の再検討を行いPTのとるべき方向性を明確にしたうえで、諸問題の解決に取り組まなければならない。…と結んでいる。斯くして士会の地域活動は老人福祉部(後に社会福祉部)を中心に飛躍的な活動進展を遂げ、県下市町村の機能訓練事業に関わることとなる。最終的には全市町村(98%、1町のみ地元在所PTと個人的契約)に関わることとなった。その後さらに、老人(高齢者)施設職員の研修会、寝たきり老人介護講習会、各市町村ホームヘルパー講習会、在宅訪問指導協力、家庭介護者研修会、などの講師派遣、県高齢者総合相談センター委員派遣、障害者施設や特養ホームへの支援、県社協と共催「介護者の集い・相談」開催等々、多くの地域活動がなされた。但し、すべて順調とはいかず、当初は何かと問題が生じた。その一つとして、ある日突然、士会長に電話があり、いきなり「うちの職員を勝手に使うな!」とのこと。訳を話し「何とか日曜日でも」とお願いしたが、「休みは休養のためにあるので、ダメ」という。「これからは高齢化社会に入り、障害高齢者が多くなります。障害の予防、機能の維持が特に重要です」と諸事情と本事業の主旨を申し述べ、了解を得ました。その他、訓練中の事故(膝靭帯損傷)の補償問題等々で、障壁が次々とあり、社会福祉部長以下部員は大変ご苦労をされていました。朗報として、県から助成金を出すとのことだったが、士会が法人でないことから給付できないこととなったが、当時の担当保健環境部長の計らいで僅かであったが支給された。このことを契機に士会法人化の機運が更に高まった。扨、当時に描いたPTの地域活動のその後、如何でしょうか?個人的には事業所を開設されているPT、専業所や高齢者施設に勤務しているPT、確かにこの分野への参入は大変多くなりました。士会(県PT協会)の指導体制も重要となります。PTの専門分野・役割を堅持しつつ発展を願ってやまない。次回、最終回は県下におけるPT数の間題と養成校の開校について、当時の諸事情を述べる。

引用・参考文献1)大原啓志・中屋久長:地域における機能訓練事業の実施状況と今後の課題。

公衆衛生:50巻6号、563~567.l9802)小嶋裕・中屋久長 他:高知県における機能訓練(老人保健事業)の現状と問題点。

理学療法学:13巻6号、430~435 .1986

高知県理学療法士協会ニュース № 152 ( 7 )

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Q 近年、大規模災害が頻回に起きるようになりDMATやJRATといった団体の活動をよく耳にするようになりました。南海地震も必ず起きると言われており災害リハがどのようなものかと興味を持つようになってきました。が、実際にDAMTやJRATとして活動するためには、どうすればよいか。必要な資格がいるのか。またどのような勉強をすればよいのか等々わからないことが多いので、どなたかアドバイスいただけないでしょうか。よろしくお願いします。

西森 大地

A 理学療法士が災害医療に関わることの必要性は、WCPTが2016年3月に公表した「The role of physicaltherapists in disaster management」というレポートからも読み取れます。また、日本理学療法士協会においても、JPTA NEWS等で災害リハビリテーションに関する情報を公開しています。さて、ご質問いただいた災害時に理学療法士が行える支援について、DMATとJRATの活動、資格につ

いてご説明いたします。DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは災害急性期に活動する医療チームで、医師1名、看護師2名、業務調整員1名を基本構成としています。この中で、理学療法士は業務調整員としてチームに入ることができます。実際、DMAT隊員として活躍している高知県理学療法士協会の会員もいます。DMATには日本DMATと都道府県DMATがあり、前者は厚生労働省が実施する研修の受講、後者は都道府県が実施する研修の受講が必要になります。ただしDMAT研修を受講できるのは災害拠点病院の指定を受けている医療機関が原則で、その他、救護病院の指定を受けている医療機関に限定されています。JRAT(Japan Rehabilitation Assistance Team)は災害時のリハビリテーション支援に特化したチームで

す。DMAT同様に都道府県組織があり、高知県では高知JRATが組織されています。高知JRATにはJRAT主催の災害リハビリテーション・コーディネーター研修修了者が5名(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)おります。この災害リハビリテーション・コーディネーター養成研修については今後の開催は未定です。高知県理学療法士協会の会員がJRATとして災害支援を行うためには、まず、高知JRATに災害支援の登録をする必要があります(災害時に支援の必要があれば高知JRATから高知県理学療法士協会へ支援可能な会員の募集があります)。特に必須の研修はありませんが、今後は災害リハビリテーションに関する研修の受講が義務づけられるかもしれません。その他、災害時に役立つ資格として、災害支援から救命処置、避難所運営などを総合的に学べる防災士、

災害医療に特化したものとしては日本理学療法士協会が賛助会員となっているJIMTEF(Japan InternationalMedical TEchnology Foundation:国際医療技術財団ジムテフ)主催の災害医療研修ベーシックコース/アドバンスコースなどもあります。日本赤十字社の救急法基礎講習や救急員養成研修、AHA等のBLS研修なども災害時に役立つ資格だと思いますし、手話ができるなら聴覚障害のある方への支援、語学に堪能なら外国人被災者の支援など、自身の特技を生かして災害ボランティアとして活動する方法もあります。今後は、高知県理学療法士協会においても災害支援に関する情報提供や研修の企画を行なっていきたい

と考えておりますので、ご協力をよろしくお願いいたします。高知県理学療法士協会 理事 東 大和生

( 8) 高知県理学療法士協会ニュース № 152

身近な疑問にお答えする Q A コーナー身近な疑問にお答えする Q & A コーナー

今号より、高知県理学療法士協会ニュースでは会員の皆様が、日頃抱かれている疑問点に対しお答えするQ&Aコーナーを開始します。今回は皆さんにも身近になりつつあるDMAT・JRATについて、高知県理学療法士協会の東理事にお伺いしました。

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高知県理学療法士協会ニュース № 152 ( 9 )

2016 リレーフォーライフ2016 リレーフォーライフ

広報部 小 松 由 典

リレーフォーライフはアメリカ対がん協会(ACS)が国際ライセンスを持っている企画で、日本では公益財団法人日本対がん協会にライセンスが与えられています。がん患者さんやそのご家族を支援し、地域全体でがんと向き合い、がん征圧をめざすチャリティー活動です。1985年、一人の医師がトラックを24時間走り続け、アメリカ対がん協会への寄付を募りました。「がん患者は24時間、がんと向き合っている」という想いを共有し支援するためでした。ともに歩き、語らうことで生きる勇気と希望を生み出したいというこの活動を代表するイベントは、2015年は世界25カ国、約6000ヵ所で開催され、年間寄付は470億円にのぼります。 2016年、日本では49ヶ所に広がったようです。Save Livesを使命とし、がんの告知を乗り越え、生きていることを祝福し(祝うCelebrate)旅立った愛する人たちをしのび(しのぶRemember)がんに負けない社会を作る(立ち向かうFight Back)ことをめざします。リレー・フォー・ライフ活動の締めくくりとして2日間のイベントを開催します。会場ではチームの仲間とタスキをつなぎ、夜通し歩きます。2015年度は、日本全国47カ所・約8万人が集いました。高知県では2016年10月8日(土)、9日(日)に城西公園のグランドで24時間チャリティイベントが開催され、

(公社)高知県理学療法士協会も参加しました。当日は、あいにくの天気でグランドの状態も悪かったのですが、イベントには数多くの団体、病院、企業等、参加されており、24時間交代で歩き続けました。又、がんリハビリテーションについて意見を聞けたりと、とても有意義な時間を過ごすことが出来たように感じます。これでは堅そうなイメージですが、保健部の皆さんがBBQやおでん、お菓子を準備してくださり、協力いただいた理学療法士さんやご家族に振る舞っていただき、ワイワイと楽しく参加できるイベントでした。又、夜中はベテラン理学療法士が手薄になった理学療法士協会ブースでアルコールを補充し歩き続けたと聞いております。次年度開催の折には、多数の皆さんに参加していただき、真面目な話や、真面目でない話を沢山しつつイベントを盛り上げることが出来ればと思います。

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本年度も新人会員紹介を募集しております。下記項目をメールで [email protected] 宛に、2月20日までに送ってください。なお、ネット環境がない方につきましては、下記の宛先まで郵送で送っていただいてもかまいません。(〒781-8134 高知県高知市一宮中町2丁目9-4 あったかケアみずき 理学療法士 小松由典)*本年度は写真の掲載は致しません。アンケートを施設ごとに取りまとめて送るようにしてください。ご協力お願いします。

アンケート ①名前 ②所属 ③出身校 ④趣味 ⑤今後の意気込み

● ●今後開催予定の講習会・研修会等

「住民主体の介護予防の取組」研修会

1.日 時:平成29年1月26日(木)午後1時30分~4時30分

2.場 所:県立ふくし交流プラザ2階多目的ホール(高知市朝倉戊375-1)

3.対 象:市町村及び地域包括支援センター職員、介護予防や高齢者の健康づくりに従事する関係

者及びリハビリテーション専門職等

4.内 容:講義「住民主体の介護予防の進め方及び『いきいき百歳体操』の効果的な実施のポイント

について」

5.講 師:高知市高齢者支援課 理学療法士 長谷川 雅人 氏

6.定 員:100名程度

7.申込期限:平成29年1月13日(金)

その他の講習会や研修会に関しては士会ホームページ(http://www.kopta.net)をご覧ください

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求人広告募集拝啓、皆様方にはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。また、平素は本士会の活動のために何かとご尽力を賜り心より御礼を申し上げます。さて、本士会にて発行しております機関紙(高知県理学療法士協会ニュース)の求人広告を随時募

集いたしております。ご希望の方はHPを参照いただき、お手数ですが、用紙をプリントアウトし記入の上、お申し込みくださるか事務局まで連絡いただければと思います。

敬 具

○ お申し込みは随時募集いたしておりますが、ニュース発行の時期と重なりますと、次号に持ち越されるなど、掲載が遅れる場合があります。何卒ご了承くださいますようお願いいたします。

高知県理学療法士協会ニュース No.152 平成28年12月20日発行

発行所 公益社団法人 高知県理学療法士協会(連絡先)〒781-1102 土佐市高岡町乙1139-3

高知リハビリテーション学院 理学療法学科内TEL & FAX (088)850-2335http://www.kopta.net e-mail:jimukyoku@kopta.net

発行者 宮 本 謙 三広報部編集委員会

編 集 後 記2016年も残すところあとわずかとなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。毎年のように

聞かれる「ついこの前、年が明けたばかりなのにね…」という会話を耳にして、年の瀬を実感するとともに、年齢を重ねることに対し、嬉しいような悲しいような複雑な心境になります。まだまだ忘年会が待ち構えている方も、年が明けてからは新年会が待ち構えている方も居られる

こととは思いますが、飲み過ぎ・食べ過ぎにはくれぐれも注意していただき、良い新年をお迎えになられることを願っております(私自身、お酒があまり強くないので自分が心配ですが…)。それでは、皆様来年も高知県士会ニュースをよろしくお願いいたします。よいお年を…。

(Y・K)

広報部では、Q&Aコーナーへの引き続き皆様方からの質問や疑問をお待ちしております。お気軽に広報部([email protected])までお知らせくださいませ。