平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推 …...1 1. 事業の目的...

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平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推進事業 東アジアバイオマス利活用可能性調査等事業 調査報告書 平成 23 年 3 月 株式会社リサイクルワン

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平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推進事業

東アジアバイオマス利活用可能性調査等事業

調査報告書

平成 23 年 3 月

株式会社リサイクルワン

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目次

1. 事業の目的 ........................................................ 1

1.1 事業の目的 ........................................................................................................... 1

1.2 事業の流れ ........................................................................................................... 1

2. 東アジアバイオマス利活用可能性調査 ................................ 3

2.1 東アジアのバイオマス利活用動向調査と対象 2 か国の選定 ............................... 3

2.1.1 東アジア 10 か国のバイオマス利活用動向調査 ............................................... 3

2.1.2 対象 2 か国の選定 ............................................................................................ 8

2.1.3 対象 2 か国のバイオマス特性と課題 ............................................................. 10

2.1.4 対象 2 か国におけるバイオマス関連政策の内容 ........................................... 15

2.2 現地への協力要請と、バイオマス利活用ニーズ・課題の把握 .......................... 18

2.2.1 対象 2 か国における主要なバイオマス関連省庁と機関 ................................ 18

2.2.2 第 1 回現地調査の目的と調査内容 ................................................................. 23

2.2.3 第 1 回現地調査によるコーディネータ機関案の絞込み ................................ 27

2.3 現地で必要とされる技術・ノウハウの検討 ...................................................... 30

2.4 課題、方策の整理 .............................................................................................. 31

3. 東アジアバイオマスタウン構想策定可能性調査 ....................... 32

3.1 有望地域の選定 .................................................................................................. 32

3.1.1 第 2 回現地調査目的と調査内容 .................................................................... 33

3.1.2 有望地域への協力要請およびヒアリング結果 ............................................... 37

3.2 コーディネータの選定 ....................................................................................... 40

3.3 バイオマスタウン構想の方向性の検討 .............................................................. 41

3.3.1 対象地域のバイオマス利活用の現状 ............................................................. 41

3.3.2 対象地域のバイオマス利活用ニーズと課題 .................................................. 46

3.3.3 コーディネータへの現地研修 ........................................................................ 49

3.4 コーディネータ研修 .......................................................................................... 65

3.4.1 コーディネータへの国内研修 ........................................................................ 65

3.4.2 チーム発表による成果 ................................................................................... 67

3.5 日本でのバイオマスタウン優良事例視察 .......................................................... 68

3.6 平成 23 年度の作業内容とスケジュール ........................................................... 80

4. 東アジアバイオマス利活用指針策定 ................................. 83

4.1 東アジアにおけるバイオマス利活用の指針のとりまとめ ................................. 83

4.2 国内検討委員会 .................................................................................................. 88

4.2.1 国内検討委員会の構成 ................................................................................... 88

4.2.2 スケジュール及び議題 ................................................................................... 89

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略語一覧

略語 名称

BDF Bio Diesel Fuel

(バイオディーゼル燃料)

BPPT Badan Pengkajian dan Penerapan Teknologi

(技術応用評価庁)

EFB Empty Fruit Bunch

(パーム空果房)

FAO Food and Agriculture Organization of the United Nations

(国際連合食糧農業機関)

FFB Fresh Fruit Bunch

(パーム房実)

FRIM Forest Research Institute Malaysia

(マレーシア森林研究所)

GEC Global Environment Centre Foundation

(公益財団法人地球環境センター)

ICALRD Indonesian Center for Agricultural Land Resources Research and

Development

(インドネシア土地資源研究開発センター)

ITB Institut Teknologi Bandung

(バンドン工科大学)

JETRO Japan External Trade Organization

(独立行政法人日本貿易振興機構)

JICA Japan International Cooperation Agency

(独立行政法人国際協力機構)

MAFF Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries

(農林水産省)

MARDI Malaysian Agricultural Research and Development Institute

(マレーシア農業開発研究所)

MEB Malaysian Rubber Board

(マレーシア・ゴム公社)

MF Mesocarp Fiber

(パーム搾油後の繊維)

MHLG Ministry of Housing and Local Government

(住宅・地方自治省)

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略語 名称

MOSTI Ministry of Science, Technology and Innovation

(科学技術革新省)

MOU Memorandum of Understanding

(覚書)

MPOB Malaysian Palm Oil Board

(マレーシア・パームオイル公社)

MPSJ Majlis Perbandaran Subang Jaya

(スパンジャヤ市議会)

MSW Municipal Solid Waste

(都市固形廃棄物)

NEDO New Energy and Industrial Technology Development Organization

(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NSWMD National Solid Waste Management Department

(国家固形廃棄物管理局)

OPF Oil Palm Frond

(パーム葉茎)

PKS Palm Kernel Shell

(パーム搾油後の殻)

POME Palm Oil Mill Effluent

(パーム搾油工場から出る廃液)

SIRIM Standards and Industrial Research Institute of Malaysia

(マレーシア標準工業研究所)

SREP Small Renewable Energy Power Programme

(小規模・再生可能エネルギー・プログラム)

UPM Universiti Putra Malaysia

(マレーシア プトラ大学)

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1. 事業の目的

1.1 事業の目的

本事業は、豊富にバイオマスが存在しているが多くが未利用となっている東アジア地

域において、バイオマス利活用のスキームを地域単位で創出するという日本のバイオマ

スタウン構想の概念を普及させ、東アジア地域での地球温暖化対策、リサイクル、食料

の安定供給等の課題に対しての我が国の貢献を目指すものである。

このため、本事業では、東アジアにおけるバイオマス利活用の可能性を調査した上で、

バイオマスタウン構想策定ポテンシャルの高い地域を特定し、モデル的にバイオマスタ

ウン構想策定の可能性調査と方向性の検討を行う。調査結果を基に、バイオマス利活用

の基本指針を策定し、モデル地域以外においてもバイオマスタウン構想を展開できるよ

うな検討を行う。

1.2 事業の流れ

本事業は、下図のような流れで行う。

「(1)東アジアバイオマス利活用可能性調査」においては、東アジア 10 か国につい

てのバイオマス利活用の動向を調査した上で、モデル的にバイオマスタウン構想の方向

性の検討を行う 2 か国を選定する。さらに、当該 2 か国の関係省庁、研究機関等を訪問

し、本事業への協力要請及びバイオマス利活用ニーズ・課題を把握、整理する。

「(2)東アジアバイオマスタウン構想策定可能性調査」においては、当該 2 か国に

おけるバイオマスタウン構想の方向性を検討する。さらに、コーディネータに対して研

修、及び日本での先進事例視察を行い、今後の当該地域でのタウン構想策定のキーパー

ソンとして、バイオマスの利活用及びタウン構想についての認識、理解を高める。

「(3)東アジアバイオマス利活用指針策定事業」において、(1)(2)の結果を取

りまとめ、東アジア地域におけるバイオマス利活用の指針を取りまとめるとともに、本

事業の方向性ついて、有識者で構成される国内検討委員会で検討する。

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(1)東アジアバイオマス利活用可能性調査

(2)東アジアバイオマスタウン構想策定可能性調査

(3)東アジアバイオマス利活用指針策定事業

①東アジアのバイオマス利活用動向調査と対象2か国の選定②現地への協力要請とバイオマス利活用ニーズ、課題の把握③現地で必要とされる技術・ノウハウの検討④課題、方策の整理

①有望地域の選定②バイオマスタウン構想の方向性の検討③コーディネータ候補の選定④コーディネータ候補者への現地研修⑤日本でのバイオマスタウン優良事例視察

①東アジアにおけるバイオマス利活用指針の取りまとめ②国内検討委員会の開催③報告書作成

地域全般の概要把握モデル地域の選定

モデル地域におけるタウン構想の検討課題、方策の検討

図 1-1 本事業の流れ

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2. 東アジアバイオマス利活用可能性調査

2.1 東アジアのバイオマス利活用動向調査と対象 2 か国の選定

2.1.1 東アジア 10 か国のバイオマス利活用動向調査

対象 2 か国を選定するために、東アジア諸国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、

ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、中国、韓国)のバイオ

マス関連政策、動向を文献レベルで整理した。東アジア 10 か国は、農林水産省の支援

のもと平成 20 年度からバイオマスタウン構想策定の取組を進めているタイとベトナム

を除いた、ASEAN 及び中国、韓国を対象とした。

【調査対象国】

ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、

ミャンマー、フィリピン、シンガポール、中国、韓国

【調査項目】

・ 社会経済状況

・ 再生エネルギー、バイオマス関連政策、目標

・ バイオマス腑存、利活用状況

・ バイオマス利活用ニーズの高まりについて

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表 2-1 対象 10 か国のバイオマス腑存状況と利活用ニーズ

社会経済状況 農業廃棄物発生見通し(2030 年)廃棄物排出量の

見通し(2050)(千トン)

バイオマス利活用 ニーズの高まり

人口(2009) (千人)

1 人あたり

GDP(2008)(US$)

主な農産物 エタノール 換算:千 kL

中国 1,345,750 3,769 小麦、米、とう

もろこし、サト

ウキビ

N/A 1,666,969 豊富なバイオマスが腑存している。

再生可能エネルギーの中長期開発計画(2007)ではバイオ

マスエネルギーの消費量を 15%まで引き上げる計画(2008

年時点は 8%)。

2020 年までに BDF 製造目標 1,200 万トン。

イ ン ド ネ

シア

229,964 2,349 パーム、米、と

うもろこし、サ

トウキビ

72,055 334,938 バイオマスが豊富に腑存している。特にパーム油産業の未

利用廃棄物が政策課題。

日本政府、民間企業とのバイオマス関連の連携事業も多

い。

2025年までにバイオ燃料をエネルギー消費全体の5%まで

利用する計画(国家エネルギー政策 2003-2020)

バイオ燃料開発(バイオエタノール、バイオディーゼル)

で省庁・自治体等の連携を指示した。(大統領令 1 号、2006

年 2 月)

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社会経済状況 農業廃棄物発生見通し(2030 年)廃棄物排出量の

見通し(2050)(千トン)

バイオマス利活用 ニーズの高まり

人口(2009) (千人)

1 人あたり

GDP(2008)(US$)

主な農産物 エタノール 換算:千 kL

フ ィ リ ピ

91,983 1,747 米、とうもろこ

し、ココナツ

19,797 163,137 ココナツ油、バガス等を原料とした BDF 開発が積極的に

行われている。

糖蜜産業が盛んでそれらの副産物を燃料化できており、バ

イオマス利活用は既に事業レベルで推進されている。

国家エタノール燃料プログラムを開始(2005~)。政府公

用車での B1 利用の義務化。

ココナツ油由来 BDF の軽油混合義務化の検討(2003)

ミ ャ ン マ

50,019 380 米、とうもろこ

し、サトウキビ

10,126 48,580 国土の約半分は森林で、家庭燃料は薪が中心。農村での所

得安定と電化が課題。

政府により再生可能エネルギーの開発・利用を推進すると

いう方針が出ている一方で、森林保全と食品供給とバイオ

マス燃料輸出のバランスを課題としている。

バイオマス利活用に関する初期の技術支援、人材育成ニー

ズが高い。

韓国 48,332 17,225 N/A N/A 114,380 バイオマス利用可能量は年間 8 千万トン(2008 年)。

再生可能エネルギー促進法により BDF 利用に政府支援が

設けられており、BDF 市場が拡大している。これに伴い、

原料確保が課題となっており、東南アジアの近隣諸国でジ

ャトロファ栽培開発を積極的に行っている。

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社会経済状況 農業廃棄物発生見通し(2030 年)廃棄物排出量の

見通し(2050)(千トン)

バイオマス利活用 ニーズの高まり

人口(2009) (千人)

1 人あたり

GDP(2008)(US$)

主な農産物 エタノール 換算:千 kL

マ レ ー シ

27,467 6,967 パーム、米 16,183 140,265 再生可能エネルギー(バイオマス、太陽光等)の活用を推

進し、国家バイオ燃料政策では、BDF プラント整備を 2020

年までに 500 万トン増産することを目標としている。

日本の政府、民間企業、大学等とのバイオマス関連事業で

の連携も多い。

パーム油産業の未利用廃棄物が政策課題。

カ ン ボ ジ

14,805 729 米、とうもろこ

2,908 39,853 バイオマスは広範囲に少量ずつ発生。大半が農村で燃料と

して使用されており、人口の急増による森林伐採が課題。

農村部の電化(カバー率 9%)を推進している。効率的な

再生可能エネルギー(バイオマス、小水力等)技術を強化

したいというニーズがある。

ラオス 6,320 884 米、とうもろこ

1,922 34,281 家庭、商業、産業すべてにおいて薪や炭等の木質燃料に依

存しており、人口の急増による森林伐採が課題。

政府が、バイオ燃料利用の推進を宣言。パームからの BDF

とサトウキビからのエタノール生産の政府支援がある。近

年それらの植林が進んでいる。

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社会経済状況 農業廃棄物発生見通し(2030 年)廃棄物排出量の

見通し(2050)(千トン)

バイオマス利活用 ニーズの高まり

人口(2009) (千人)

1 人あたり

GDP(2008)(US$)

主な農産物 エタノール 換算:千 kL

シ ン ガ ポ

ール

4,736 37,394 N/A N/A 72,940 2008 年のバイオマス廃棄物量 65 万トン(主に海運業から

の木質パレット、建設廃材、食品廃棄物、下水汚泥)で、

国内からのバイオマス発生量はそれほど多くはない。

近隣からパーム等のバイオマス燃料を輸入し BDF 事業を

展開している。

食品廃棄物と木質バイオマスのコジェネ事業等も計画さ

れている。

ブルネイ 399 26,385 N/A N/A 28,906 GDP の半分が石油・ガスの輸出であり、これら化石燃料

によって経済が潤っている。

農業は GDP の 2%程度で停滞している。食品は殆ど輸入に

頼っている。

石油・ガスが豊富なため、バイオマス資源の活用インセン

ティブが低い。

(出典:(1) 世界の人口推計 2008 年度版、国連、(2) 世界の国内総生産 2009、国連、(3) アジア諸国におけるバイオマス関連情報の取りまとめ及

びバイオマス関連事業の検討に関する調査報告書、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、株式会社三菱総合研究所,平成 19 年 3

月)、(4) 世界の廃棄物発生量の推定と将来予測に関する研究、吉澤佐江子,2004、アジアバイオマスハンドブック、社団法人日本エネルギー学

会,平成 19 年度、Bio-fuels Database in East Asia, http://www.asiabiomass.jp/biofuelDB/index.html )

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2.1.2 対象 2 か国の選定

本事業の目的を踏まえ、下記の観点から対象 2 か国を選定した。

中央政府がバイオマス利活用政策に積極的で、地方政府に対する強いリーダーシップ

が期待できること

国の政策や課題が、①地球温暖化防止、②循環型社会形成、③戦略的産業育成、④農

山漁村活性化というバイオマスタウン形成のねらいと共通していること

日本からの知見・技術移転による効果が高いこと

国内検討委員会との協議を踏まえ、マレーシア、インドネシアを、対象国として選定

した。対象国の概要と各国の選定理由は、以下のとおりである。

(1) マレーシア

人口:2,831 万人(2009 年)

国土面積:約 33 万 km2

(日本の 0.9 倍)

首都:クアラルンプール

宗教:イスラム教、仏教、儒教、ヒンドゥー教、

キリスト教、原住民信仰

GDP (2009):

・名目 GDP 総額:1,913 億ドル

・一人あたり GDP(名目):6,897 ドル

・GDP 成長率:-1.7%

主要産業:製造業(電気機器)、農林業(天然

ゴム、パーム油、木材)及び鉱業(錫、

原油、LNG)

【選定理由】

国家バイオ燃料政策(化石資源への依存度の低減、再生可能エネルギーの使用促進、国内資

源の活用、農業・産業・消費者の繁栄)によりパーム油の燃料への利用を進めており、バイ

オマス資源の地産地消が強化される可能性が高い。

マレーシアにおけるパーム油の生産量は、世界生産量の 40%以上を占めるが、パーム油の

用途は食用、工業用、燃料用と多岐にわたっている。バイオマスタウン形成による地域の一

体的な取り組みにより、未利用バイオマスの利活用に繋がる可能性がある。

ベニヤ板等の木材加工品の生産も盛んであることから、木質バイオマスの有効活用について

も日本の技術・ノウハウを活かすことができる。

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(2) インドネシア

人口:2 億 3,137 万人(2009 年)

国土面積:約 192 万 km2

(日本の 5.1 倍)

首都:ジャカルタ

宗教:イスラム教、キリスト教、ヒンズー

教、仏教、その他儒教

GDP (2009):

・名目 GDP 総額:5,402 億ドル

・一人あたり GDP(名目):2,329 ドル

・GDP 成長率:4.5%

主要産業:鉱業(石油、LNG、アルミ、錫)、

農業(米、ゴム、パ-ム油)、工業

(木材製品、セメント、肥料)

【選定理由】

NEDO が平成 18 年度に実施した「バイオマス資源量のポテンシャル等に関する調査」

では、アジア地域の中でも もバイオマス資源が豊富な有望国の 1 つと報告されてい

る。

インドネシア政府は、平成 18 年に大統領令による国家横断的なバイオ燃料開発国家チ

ームの設置やエネルギー法案等によるバイオ燃料の利用義務付け等において、バイオ

燃料等の導入に向けて積極的に取り組む姿勢を表明している。

一方で未利用農業残渣が大量に堆積されており日本の知見、技術を移転することによ

りインドネシアにおけるバイオマス資源の有効活用、エネルギー供給不足の緩和に貢

献できる。

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2.1.3 対象 2 か国のバイオマス特性と課題

マレーシアおよびインドネシアの主要なバイオマスは、ともにパーム産業によるバイ

オマス(中果実を取り出した後の空果房(EFB:Enpty Fruts Bunch)、中果実から油を

搾り出した後の搾りかす、種を分離した後の殻、製油工程で発生する廃液(POME:Palm

Oil Mill Effluent)、古木等)である。

下表より、両国においては、パーム油生産量はほぼ同じ規模である一方、その他のバ

イオマスも含めたバイオマスの全体量は、インドネシアが圧倒的に多いことが分かる

(表 2-2)。

表 2-2 バイオマス全体量

大分類 中分類 小分類 単位 マレーシア インドネシア

森林系 農産物

生産量

砂糖キビ(a) 万トン 69 2,600

米(a) 万トン 235 6,025

キャッサバ(a) 万トン 43 2,159

天然ゴム(a) 万トン 107 292

パームの実(a) 万トン 8,300 8,500

木材

生産量

丸太(b) 万 m3 2,565 10,058

製材・ベニヤ材(b) 万 m3 2,124 2,160

木質パネル(b) 万 m3 1,305 433

紙・板紙(b) 万トン 158 778

木質燃料(b) 万 m3 291 6,503

動物系 家畜

頭数

牛(a) 万頭 79 1,226

水牛(a) 万頭 13 193

羊(a) 万頭 12 961

ヤギ(a) 万頭 29 1,515

豚(a) 万頭 186 684

鶏(a) 百万羽 190 1,253

都市系 ゴミ

排出量

有機系(c) 万トン 349 N/A

産業廃棄物(c) 万トン 168 N/A

その他(c) 万トン 205 N/A

出典:a) Food and Agriculture Organization(FAO), UN, 2008 b) Food and Agriculture Organization(FAO), UN, 2009 c) マレーシア国廃棄物埋立処分場の安全閉鎖及び改善に係る調査、JICA、2005

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マレーシア、インドネシアともに、パーム油産業により発生する大量の残渣の有効活

用が課題とされており、独立行政法人国際協力機構(JICA)、公益財団法人地球環境セ

ンター(GEC)、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)等におい

て、多くのプロジェクトが実施されている(図 2-1、図 2-2)。

また、急速な経済成長による人口増・都市化に伴い、都市廃棄物のリサイクル等も重

要課題であると報告されている(図 2-4)。

以上の既存の調査結果を整理・勘案し、対象 2 か国におけるバイオマス関連の課題は

下表事項が考えられる。

表 2-3 対象 2 か国において想定される課題

国 想定される課題

マレーシア パーム栽培の拡大によって、パーム搾油工場、加工工場からの廃液

や残渣の排出による河川の水質汚染やメタンガス発生等が課題とな

っている。

パーム油の EFB や古木、茎葉、パーム油廃液からのメタンガス等が

安定的に発生しているが、利活用が進んでいない。

直接埋立処分される家庭ごみ等も多いことから、廃棄物処分場にお

けるメタン発生、処分場延命のための廃棄物の減量等が課題となっ

ている。

インドネシア 農業残渣のうち、バイオマス燃料や肥料として、一部利活用が進ん

でいるが、技術的に未熟なため十分に発酵が進まない不完全堆肥と

なっていることが多い。

サトウキビの葉や頭部、パーム油の EFB や古木、キャッサバの葉、

稲わらなどは農園に放置されており、収集システムの確立と有効な

利活用方法が課題である。

都市固形廃棄物は、人口増加・経済活動の活性化などに伴い増加し

ており、また、主要都市では固形廃棄物全体の 60%以上が有機廃棄

物となっており、その全量が埋立処分されている。

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インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

インドネシアインドネシア

タイ

シンガポール

ブルネイ

マレーシア国全体

全国下水処理事業(JICA,1999) マレーシアにおける椰子殻発電事業からの炭素クレジット獲得プロセスの実態調査(GEC,2002)

サバ州

マレーシア・パーム搾油工場廃棄物のコンポスト化によるメタンガス発生抑制事業調査(GEC,2007)

マレーシア・サバ州パームオイル工場バイオマス利用事業調査(GEC,2005)

サバ州アピンアピン、カラマトイ

アカシア・ハイブリッド造林試験事業(JICA,2001-2011)

サバ州コタキナバル

ボルネオ生物多様性・生態系保全プログラム(JICA,2007-2012)

サラワク州

マレーシア・サラワク州におけるパーム搾油残さなどを活用したバイオマス発電CDM事業調査(GEC,2008)

サラワク州シミラジャウ-ビンツール地区、ラジャン地区

炭化を組み入れた持続的生産可能なCO2固定植林事業の可能性調査(GEC,1999・2000)

サラワク州、サバ州

マレーシア・パームオイル工場コベネフィッツCDMに関する調査(GEC,2007)

ジョホール州

マレーシア・ジョホール州パームオイル工場メタンガス排出削減事業調査(GEC,2005)

マレーシアにおける高効率バイオマス発電事業調査(GEC,2004)

ジョホール州ムア

マレーシア・パームオイル廃液処理によるコベネフィッツCDM事業調査(GEC,2008)

ジョホール州ジョホール・バル群

マレーシア 廃棄物のコンポスト化処理による埋立地からのメタンガス抑制事業計画実現可能性調査(GEC,2003)

ネグりセンビラン州

マレーシアパームオイル廃液嫌気処理池より放出されるメタン排出の削減技術の調査(GEC,2001)

ネグりセンビラン州バハウ

マレーシアパームオイル工場のメタン排出削減と固形廃棄物を利用したバイオマス産業の可能性に関する調査(GEC,2003)

ぺラ州イポ市

マレーシア・イポ市における廃棄物中間処理及びメタンガス発電の複合CDM実現可能性調査(GEC,2010)

マレーシア・イポ市における有機性廃棄物コンポスト化・最終処分場のLFG回収による廃棄物複合処理CDM事業調査(GEC,2009)

パハン州

マレーシアパームオイル工場のメタン排出削減対策技術と固形廃棄物利用に関する調査(GEC,2002)

トレンガヌ州

マレーシア・トレンガヌ州パームオイル工場メタン・固形廃棄物混焼発電事業調査(GEC,2005)

スランゴール州、クランタン州、ヌグリ・スンビラン州、クダ州、ジョホール州、サバ州

マレーシア・パームオイル工場排水処理施設の改善によるCDM事業化調査(GEC,2005)

※プロット種類 :パーム系、 :農業系、 :廃棄物系、 :その他 (出典:公益財団法人地球環境センター(GEC)、JICA、NEDO) 図 2-1 マレーシアにおける日本のバイオマス関連事業実績

Page 18: 平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推 …...1 1. 事業の目的 1.1 事業の目的 本事業は、豊富にバイオマスが存在しているが多くが未利用となっている東アジア地

13

マレーシア

マレーシア

パプアニューギニア

フィリピン

インドネシア国全体インドネシア・泥炭管理NAMA実現可能性調査(GEC,2010)

東カリマンタン州インドネシアの植林の評価方法に関する調査

(GEC,1999・2000・2001)東カリマンタン州、東ジャワ州インドネシア共和国東カリマンタン州及び 東ジ

ャワ州における植林事業調査(GEC,2002)

西カリマンタン州アランアラン草地多様な植生環境創造技術の開発による高生産型・環境保全

型森林経営手法の確立のための調査及びパイロット事業(GEC,2000・1999)

ジャカルタ市インドネシア・製鋼用アーク

炉におけるバイオマス利用の事業調査(GEC,2007)

カリマンタン州、東ジャワ州、中部ジャワ州インドネシア共和国3州における植林及びバイ

オマスエネルギー利用プロジェクト(GEC,2003)

西ヌサ・トゥンガラ州インドネシア・ロンボク島における住民参

加型植林事業可能性調査(GEC,2004)ロンボク島インドネシア国ロンボク島における住民参

加型CDM環境植林可能性調査(GEC,2003)

東ヌサトゥンガラ州シッカ県インドネシア・東ヌサトゥンガラ州にお

けるジャトロファ複合利用による地域開発CDM事業調査(GEC,2009)

ジョグジャカルタ特別州、東ジャワ州インドネシア・CSRニーズに最適化

した植林CDMプロジェクトの開発調査(GEC,2007)

中部ジャワ州インドネシア・スマラン埋立処分場メタンガス利用調査(GEC,2006)インドネシア・中部ジャワ州における木質バイオマス発電プロジェクト調査(GEC,2006)

西ジャワ州インドネシア・西ジャワ州廃棄物処理プログラ

ムCDM事業調査(GEC,2008)西ジャワ州バンドン市インドネシア・バンドン市近郊廃棄物処分場

バイオガス回収有効利用調査(GEC,2005)西ジャワ州ブカシ市インドネシア・ブカシ市廃棄物処分場バイオ

ガス回収有効利用調査(GEC,2005)インドネシアにおける廃棄物処分場バイオガ

ス回収有効利用調査(GEC,2004)

東ジャワ州インドネシア・東ジャワ州における木質バイオマス

発電CDM事業調査(GEC,2008)東ジャワ州シドアルジョ県インドネシア国都市固形廃棄物発電事業調査

(GEC,2004)東ジャワ州プロボリンゴ県インドネシア共和国東ジャワ州における地域住民

と協同で行うCDM植林と小規模CDM植林事業との比較検討調査(GEC,2004)

北スマトラ州インドネシア・北スマトラ州における

パーム搾油工場廃液からのメタンガス回収CDM事業調査(GEC,2009)インドネシア・北スマトラ州における

廃棄バイオマスによる発電燃料転換CDM事業調査(GEC,2009)

ランポン州東ランポン県インドネシア・ランポン州タ

ピオカ廃液からのメタン回収事業調査(GEC,2007)

西スマトラ州インドネシア・廃棄バイオ

マスの高品位燃料化及び有効利用事業のCDM事業化調査(GEC,2005)

南スマトラ州南スマトラ州の産業植林木等バ

イオマスを利用した炭化・発電事業の可能性調査(GEC,2001)

※プロット種類 :パーム系、 :農業系、 :廃棄物系、 :その他 (出典:公益財団法人地球環境センター(GEC)、JICA、NEDO) 図 2-2 インドネシアにおける日本のバイオマス関連事業実績

Page 19: 平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推 …...1 1. 事業の目的 1.1 事業の目的 本事業は、豊富にバイオマスが存在しているが多くが未利用となっている東アジア地

14

■粗パーム油生産量の推移

マレーシア、インドネシアにおける、粗パーム油生産量の推移を図 2-3 に示す。各

国ともに毎年5から 10%程度成長を続けている。2004 年と 2008 年を比較すると、イ

ンドネシアでは約 37%、マレーシアでは約 27%生産量が拡大している。

686778

9371,060

1,238

1,410

1,6051,690 1,690

1,0841,180 1,191

1,3351,398

1,4961,588 1,582

1,773

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

インドネシア マレーシア

図 2-3 粗パーム油(Crude Palm Oil)生産量の推移(1997-2007)(単位:万トン)

(出典:Food and Agriculture Organization(FAO), UN, 2008)

■経済指標の動向・推移

2009 年はリーマンショックの影響で一時的に成長率が悪化したものの、2005 年以降、

インドネシア・マレーシアともに 5%程度の GDP 成長率であり、高い経済成長率を保

持していることが伺える。2009 年の実質 GDP は、両国ともに 2005 年の約 2 倍の規模

となっている。

2,813

3,643

4,330

5,088

5,613

701

1,343 1,528 1,584 1,474

6.1%

4.5%4.6%

-1.7%

6.3%5.5%

5.6%6.3%

5.8%

5.3%

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

2005 2006 2007 2008 2009-4.0%

-2.0%

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%実質GDP インドネシア 実質GDP マレーシア

前年比成長率 インドネシア 前年比成長率 マレーシア

図 2-4 対象 2 か国の GDP(出典:外務省)

Page 20: 平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推 …...1 1. 事業の目的 1.1 事業の目的 本事業は、豊富にバイオマスが存在しているが多くが未利用となっている東アジア地

15

2.1.4 対象 2 か国におけるバイオマス関連政策の内容

対象 2か国におけるバイオマス関連政策の内容を、表 2-4および表 2-5に整理した。

マレーシアでは、国家レベルの政策として、各種バイオマスの有効利用を促進する方

針が打ち出されている。また、廃棄物の3R を促進し、2020 年までに都市固形廃棄物

(Municipal Solid Waste:MSW)のリサイクル率を 22%とするなど、具体的な目標も

掲げられている。

インドネシアでは、2006 年以降大統領令でパーム油等のエネルギー作物の生産拡大

を打ち出しているものの、廃棄物系バイオマスに関する明確な政策は出ていない。

表 2-4 マレーシアにおけるバイオマス関連政策

政策名称 内容

マレーシア計画(五

ヵ年開発計画)

2020 年までに先進国になるという目標を達成するために 5 年毎に策定

される成長目標と開発計画を盛り込んだ計画で、現行は、第 9 次マレー

シア計画(2006-2010 年計画)である。

第 9 次マレーシア計画の「エネルギー分野」「都市固形廃棄物管理分野」

は、以下の通りである。

「エネルギー分野」

-再生可能エネルギーの開発と利用強化

-MSW を利用した再生可能エネルギープロジェクトの推進

-再生可能エネルギー購入制度(REPPA)の改善

-CDM 事業を利用した再生可能エネルギーの普及

「MSW 管理及び産業廃棄物分野」

-衛生環境が不完全な既存埋立処分場の整備

-新しい埋立処分場の建設

-リサイクル施設付きの一次保管所の整備

-廃棄物3Rの推進(2020 年までに、リサイクル率を 22%とする)

-有害廃棄物の再生利用の促進

2010 年 6 月に第 10 次マレーシア計画(2011-2016)の概要が発表され

た。12 の国家主要経済領域には、「パーム油および関連製品」と「農業」

が含まれおり、それぞれ生産性の向上、経営改善、技術開発等の目標が

掲げられている。

長期展望計画 The

Third Outline

Perspective

Plan(2001-2010):

2001 年策定

ゼロ・エミッション技術の利用促進、省エネ推進、廃棄物を新しい素材

として再利用、再生(Regeneration)する方針が打ち出されている。(2)

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政策名称 内容

第 3 次国家農業政

策:1998 年策定

食料との競合を含めてパーム油産業の持続的成長を図るためのマレーシ

ア政府の考え方と施策を述べている。

①サバ、サラワク州での栽培面積の拡大

②高付加価値製品(オレオケミカル製品)生産の拡大

③未利用パーム系バイオマス資源(パーム幹部、茎葉部)の有効利用

小規模再生可能エ

ネルギー発電プロ

グ ラ ム (SREP) :

2001 年 5 月開始

バイオマス、バイオガス、ごみ、太陽光、小水力発電等の再生エネルギ

ーに適用され、発電事業者が、電力会社に対する売電によって安定的か

つ速やかに収入を得ることを目的に制度設計されている。ただし、制約

条件も多い。(3)

再生可能エネルギ

ー導入促進のため

の税制優遇

過去(2001 年予算)には、以下のような税制優遇が設けられたことがある。

(3)

a) 期間 5 年間で所得税 70%免除または投資税 60%を控除。

b) 再生可能エネルギープロジェクトのために輸入された非国内産の機

械や設備に対する関税および消費税の控除。国内産は消費税の控除。

国家バイオ燃料計

画:2005 年策定

パーム油需要促進および燃料自給率の向上を目的としたバイオ燃料開発

のための戦略を策定している。

「環境にやさしい、持続可能かつ生育可能なエネルギー源を使用し、枯渇

していく化石燃料への依存度を低減させる」「安定かつ有利な価格を通じ

て農業及び商品ベース産業に関わる利害関係者すべての繁栄と福利を向

上させる。」

(出典:(1)水素化分解法によるパーム油由来バイオ燃料製造モデル事業実施可能性調査(マレ

ーシア)、NEDO,2008 年 3 月、(2)平成 18 年度アジア各国における産業廃棄物・リサイクル

政策情報提供事業報告書、日本貿易振興機構,2007 年 3 月、(3)マレーシアにおける椰子殻発電

事業からの炭素クレジット獲得プロセスの実態調査、環境省,2003 年 3 月)

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表 2-5 インドネシアにおけるバイオマス関連政策

名称 内容

大統領令 1 号:2006

年 2 月

バイオ燃料開発(バイオエタノール、バイオディーゼル)で省庁・自治

体等の連携を指示した。(大統領令 1 号、2006 年 2 月)

国家エネルギー政

策、大統領令 5 号:

2006 年

エネルギー供給源のうち、石油由来の割合を現在の 51.6%から 2025 年

までに 20%に減らし、バイオ燃料の割合を 5% にする。(大統領令 5 号、

2006 年)

国家バイオ燃料計

画 と ロ ー ド マ ッ

プ:2006 年

大統領を長とした 13 省庁の閣僚等から構成される National Committee

が発表したものである。(2006 年)

バイオ燃料の生産拡大のために、2010 年までにパーム、ジャトロファ、

キャッサバの作付面積を 150 万 ha、サトウキビの作付面積を 75 万 ha

拡大することを目標としている。

戦 略 計 画

(Strategic Plan) :

National

Committee により

発表(2006)

2015 年までに新規にパーム油の作付面積を 400 万 ha に拡大し、年間

1,770 万キロリットルの生産を行う。

ジャトロファについても新規に 300 万 ha の作付面積を 450 万 ha に拡

大し、年間 100 万キロリットルのバイオディーゼルを生産する計画であ

る。

エネルギー自給村 国内 12 地区の 200 の村落において、「エネルギー自給村(ESSV)」を構築

し、地域におけるエネルギー自給率を向上させるとともに、雇用の拡大

や貧困削減を図っている。

廃棄物系バイオマ

スについて

廃棄物の処理・処分を主たる目的としている法律はなく、またリサイク

ルに関する法律も整備されていない。

ただし、2004 年から 2009 年までの国家中期開発計画では、大都市・中

都市でコンポストを普及させ有機農業を発展させるモデル事業を行うこ

となどが盛り込まれている。

(出典:アジア諸国におけるバイオマス関連情報の取りまとめ及びバイオマス関連事業の検討に

関する調査、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,2007 年、インドネシア・マ

レーシアにおけるバイオディーゼル政策と生産構造についての比較・分析、農林水産政策研究第

15 号,2009)

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2.2 現地への協力要請と、バイオマス利活用ニーズ・課題の把握

本事業ではモデル的にバイオマスタウン構想を策定・公表することを目標としている

ことから、現地を訪問し、対象国のバイオマスに関連する省庁(中央政府)に対し本事

業の意義、目的を伝え、本事業に対する理解と協力を依頼した。

第 1 回現地訪問は、平成 22 年 10 月に行った。

2.2.1 対象 2 か国における主要なバイオマス関連省庁と機関

本事業においては、現地中央政府の巻き込みが重要である。また、その中央政府が地

方政府やバイオマス関連機関と連携して取り組む必要がある。したがって、協力要請の

ための第 1 回現地調査では、中央政府を中心に訪問し、本事業の趣旨・目的を説明した

上で、管轄分野に関連するバイオマス利活用ニーズと課題についてヒアリングを行った。

(1) マレーシアのバイオマス関連省庁と機関

マレーシアの行政機関およびバイオマス関連の専門機関は、図 2-5 および表 2-6 に

示すとおりである。2.1.1 および国内検討委員会の有識者からの指摘を踏まえ、

・ 天然資源・環境省、およびその研究機関であるマレーシア森林研究所

・ プランテーション産業・商品省

・ パーム油産業の業界団体であるマレーシア・パームオイル公社

・ エネルギー・環境技術・水省

・ 住宅・地方自治省の国家固形廃棄物管理局

・ 農業・農業関連産業省の研究機関であるマレーシア農業研究開発所

・ バイオマス利活用研究が盛んなマレーシアプトラ大学

を訪問先として選定した。

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内閣

内務省

教育省

公共事業省

財務省

農業・農業関連産業省

国内流通・協同組合・消費省

国防省

高等教育省

科学・技術・革新省

外務省

住宅・地方自治省

情報・通信・文化省

国際貿易産業省

エネルギー・環境技術・水省

運輸省

人的資源省

青年・スポーツ省

地域・地方開発省

プランテーション産業・商品省

保健省

観光省

女性・家族・社会開発省

連邦直轄区・都市福祉省

天然資源・環境省

首相府

マレーシア・パームオイル研究所

マレーシア・ゴム局

マレーシア標準工業研究所

マレーシア農業研究開発所

マレーシア・森林研究所

訪問先

国家固形廃棄物処理局

図 2-5 マレーシア国の行政機関

(出典:マレーシアの概況、JETRO,2010 年 7 月)

表 2-6 マレーシアのバイオマス関連機関(政府系専門機関、大学等)

機関名 略称 概要

マレーシア標準工業研究所

所管省庁:科学技術環境省

(旧科学・技術・環境省)

SIRIM 5 つの研究技術センターを持つ。研究センターの 1

つ、本研究所の環境・バイオ加工技術センターでは、

主にバイオ加工と科学工学技術、環境工学技術、エ

ネルギーと自然製品の開発を中心に活動している。

マレーシア・パームオイル公

所管省庁:プランテーション

産業・商品省(旧第一次産業

省)

MPOB パーム油とパーム油産業に関する研究開発から、パ

ーム油産業に関するすべての活動の管理や調整を行

っている。これまで、日本との共同研究も盛んに行

ってきている。

マレーシア・森林研究所

所管省庁:天然資源・環境省

(旧科学・技術・環境省)

FRIM 森林業の発展と森林資源の保存を目的に、森林管理

や森林製品の利用向上のための研究を実施してい

る。

マレーシア農業研究開発所

所管省庁:農業・農業関連産

業省(旧農業省)

MARDI ゴムとアブラヤシを除く農作物全てと家畜の生産・

利用・加工に関する技術研究と社会経済研究を実施

している。農業に関連する情報収集、案内、普及・

技術研修センターとしての役割も担っている。

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機関名 略称 概要

マレーシア・ゴム公社

所管省庁:

プランテーション産業・商品

省(旧第一次産業省)

MRB 生産から 終製品の利用までゴム産業のすべてを担

っている。技術研究と優れた技術を生産者に移転す

るサービス提供を行っている。

マレーシアプトラ大学 UPM 前身は農業学校で設立は 1931 年(現在の大学名にな

ったのは 1997 年。生物化学、農業食品政策研究、熱

帯林と森林製品研究、熱帯農業学等。日本の九州工

業大学と研究交流が盛んに行われている。

(出典:マレーシアの概況、JETRO,2010 年 7 月)

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(2) インドネシアのバイオマス関連省庁と機関

インドネシアの行政機関およびバイオマス関連の専門機関は、図 2-6 および表 2-7

に示すとおりである。これまでの調査結果および国内検討委員会等の助言を踏まえ、第

1 回現地調査における訪問先として、農業省、エネルギー・鉱物資源省、技術応用評価

庁および国のバイオマスエネルギー関連政策にも深い関わりのあるバンドン工科大学

を訪問先として選定した。

技術応用評価庁(BPPT)

農業省

州 (Provinsi)

エネルギー・鉱物資源省

技術応用評価庁(BPPT)

農業省

州 (Provinsi)

エネルギー・鉱物資源省

図 2-6 インドネシア国の行政機関

(出典:インドネシアの地方自治、財団法人自治体国際化協会(シンガポール事務所),2009)

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表 2-7 インドネシアのバイオマス関連機関(政府系専門機関、大学等)

機関名 略称 概要

技術応用評価庁

(大統領直属機関)

BPPT 非主要政府機関。政府機関として取り組むべき技術の評価・

応用を担う。

インドネシア土地資

源研究開発センター

所感官庁:

農業省

ICALRD 農業、畜産に関する研究開発、指導から食料安全保障、土地・

水の管理、検疫まで幅広く担当している。

国立パーム油研究所 - パーム油に関する全般的な研究を行っている国立研究所。パ

ームの育成、オイルの搾取から残渣の利活用まで、パーム油

に関する幅広い研究を行っている。

バンドン工科大学 ITB インドネシアで も優れた理工系大学。

パーム油等農業系バイオマス資源の残渣からのバイオディ

ーゼルやバイオエタノールに関する研究を行っており、国家

の再生可能エネルギー関連政策への関わりも強い。

(出典:インドネシアの地方自治、財団法人自治体国際化協会(シンガポール事務所),2009)

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2.2.2 第 1 回現地調査の目的と調査内容

マレーシアに 4 日間、インドネシアに 3 日間滞在し、全行程で 18 機関を訪問した。

そこで、本事業の説明と各国のバイオマス関連省庁の役割分担、ニーズ、課題、および

本事業を進める上での提案事項等のヒアリング調査を実施した。

表 2-8 第 1 回現地訪問の概要

第 1 回現地訪問

目的 ①現地中央政府への当該事業に対する理解と協力要請

②コーディネータ機関の選定のための情報収集、意見聴取

(省庁間の役割分担、省庁間の関係性等の特徴、当該事業への関心有無、バイオ

マス利活用に関する課題・ニーズ等の把握)

③構想策定の対象地域の選定のための情報収集、意見聴取

(対象地域候補及びその地域のバイオマス利活用に関する課題・ニーズの把握)

訪問日程 平成 22 年 10 月 20 日(水)~10 月 27 日(水)

マレーシア 4 日間、インドネシア 3 日間

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(1) マレーシアへの第 1 回現地調査

マレーシアでは、平成 22 年 10 月 20 日から 23 日の 4 日間で 11 機関を訪問した。訪

問先と機関毎の訪問目的は以下のとおりである。

表 2-9 マレーシアの第 1 回現地調査訪問先と訪問目的

分類 訪問先 目的

行 政

機関

農業・農業関連産業省 事業説明、農業・畜産関連のバイオマスに関するヒアリング

プランテーション産業・

商品省

事業説明、パーム関連残渣等に関するヒアリング

住宅・地方自治省 国家

固形廃棄物管理局

事業説明、都市固形廃棄物・食品・下水等の有機性廃棄物に

関するヒアリング

天然資源・環境省 事業説明、所管バイオマスに関するヒアリング

エネルギー・環境技術・

水省

事業説明、所管バイオマスに関するヒアリング

大学 マレーシアプトラ大学 事業説明、マレーシアにおけるバイオマス全般、プロジェク

ト実施状況等に関するヒアリング

専 門

機関

マレーシア・パームオイ

ル公社

事業説明、油やし関連産業によるバイオマス利活用状況、課

題に関するヒアリング

マレーシア農業研究開発

事業説明、農業、畜産関連のバイオマス利活用状況、課題、

研究内容に関するヒアリング

マレーシア森林研究所 事業説明、木質バイオマス等の利活用状況、課題に関するヒ

アリング

事例 某パーム搾油工場 現地視察、パーム関連バイオマスの利活用の現状、課題・ニ

ーズ等に関するヒアリング

日 系

機関

独立行政法人日本貿易振

興機構(JETRO)クアラ

ルンプール事務所

マレーシアにおける JETRO の活動方針、日本企業に対する

情報提供や支援の現状、課題・ニーズについてヒアリング

独立行政法人国際協力機

構(JICA)マレーシア事

務所

マレーシアにおける JICA の支援方針、バイオマス利活用に

関する政策、課題・ニーズ等のヒアリング

Page 30: 平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推 …...1 1. 事業の目的 1.1 事業の目的 本事業は、豊富にバイオマスが存在しているが多くが未利用となっている東アジア地

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マレーシアプトラ大学での協議 農業省及びマレーシア農業研究開発所との協議

天然資源・環境省との協議 マレーシア森林研究所との協議

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(2) インドネシアへの第 1回現地調査

インドネシアでは、平成 22 年 10 月 25 日から 27 日の 3 日間で 6 機関を訪問した。

訪問先と機関毎の訪問目的は以下のとおりである。

表 2-10 インドネシアの第 1 回現地調査訪問先と訪問目的

分類 訪問先 目的

行 政

機関

農業省

土地・水管理

総局

事業説明、農業関連のバイオマス利活用状況、課題に関する

ヒアリング

プランテーシ

ョン総局

事業説明、プランテーション関連のバイオマス利活用状況、

課題に関するヒアリング

畜産業総局 事業説明、畜産業関連のバイオマス利活用状況、課題に関す

るヒアリング

エネルギー・鉱物資源省 事業説明、バイオマス全般、プロジェクト実施状況等に関す

るヒアリング

技術応用評価庁 事業説明、インドネシアにおけるバイオマス全般、プロジェ

クト実施状況等に関するヒアリング

大学 バンドン工科大学

事業説明、油やし関連産業によるバイオマス利活用状況、課

題に関するヒアリング

農業省土地・水管理総局との協議 エネルギー・鉱物資源省との協議

Page 32: 平成22年度東アジア等におけるバイオマス利活用推 …...1 1. 事業の目的 1.1 事業の目的 本事業は、豊富にバイオマスが存在しているが多くが未利用となっている東アジア地

27

バンドン工科大学との協議

2.2.3 第 1 回現地調査によるコーディネータ機関案の絞込み

本事業においては、現地中央政府の巻き込みが重要である。また、その中央政府が地

方政府やバイオマス関連機関と連携して取り組める必要がある。これらを基準に、有望

なコーディネータ機関案を検討した。なお、下記コーディネータ機関に対しては、以降

で実施する。

(1) マレーシア

住宅・地方自治省国家固形廃棄物管理局およびマレーシアプトラ大学から、本事業へ

の高い関心とプロジェクトへの前向きな回答が得られた。

表 2-11 マレーシアのコーディネータ機関及びその他協力機関

項目 名称 選定理由

コーディネ

ータ機関

住宅・地方自治省

国家固形廃棄物管

理局

・都市固形廃棄物の分別システムの構築や都市固形廃棄物に

占める有機性廃棄物の埋立量の低減を目指しており、日本

の廃棄物・リサイクル関連政策にも関心が高い。

・地方自治体の所管省庁であることから、対象地域の地方自

治体を巻き込み、協力を得るだけの影響力がある。

マレーシアプトラ

大学

環境バイオテクノ

ロジー リサーチ

グループ

・日本のバイオマス関連政策にも精通しており、本事業に対

する理解度も高い。

・アリ教授は、プトラ大学の幹部としてマレーシアの国家戦

略にも関わっており、バイオマスに関連する複数の行政省

庁及び専門機関との強いコネクションを持つ。

・プトラ大学は対象地域候補の Sri Serdang 地区に立地。同

大学のスタッフと学生が同地区に居住しており、地方自治

体や地域住民からの協力も得やすい。

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項目 名称 選定理由

コーディネ

ータ機関

(予定)

スバンジャヤ市議

会(MPSJ)

・対象地域候補のスリセルダン地区を管轄する自治体。

・住宅・地方自治省国家固形廃棄物管理局の局長に依頼し、

本事業への協力及びコーディネータの提供を依頼予定。

その他協力

機関

マレーシア農業研

究開発機関

(MARDI)

・農業・農業産業省所管の農業研究機関であり、農業・家畜

等の残渣利活用技術を研究開発している。

・プトラ大学の敷地内に立地し、実証研究プラントも所有。

プトラ大学を始め、JICA 等日本の機関との共同研究も行

っている。

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29

(2) インドネシアにおける協力要請結果

農業省土地・水管理総局および技術応用評価庁(BPPT)から、本事業への高い関心

とプロジェクトへの前向きな回答が得られた。

表 2-12 インドネシアのコーディネータ機関及びその他協力機関

項目 名称 選定理由

コーディネ

ータ機関

農業省

土地・水管理総局

・農業省の中でも特に関心が高く、組織としてしっかりとし

た対応であった。

・組織として連携できるかどうかの判断をするため、多くの

質問と更なる情報提供を要求され、コーディネータ機関と

して信頼できる組織になるとの印象を受けた。

・化学肥料補助金の低減を課題とし、コンポスト化施設の設

置政策を行っている。

技術応用評価庁

(BPPT)

・インドネシアの大統領直下のエンジニアリング機関で、国

家戦略に基づく国の強化分野(バイオマス関連も含む)に

ついて、技術開発・設計・施工までを手がける。

・中央政府、地方政府、民間企業全てと取引し、中立的な立

場で幅広いネットワークを持つ。

・家庭からの廃油回収のプロジェクト実績も持ち、バイオマ

スタウン構想への理解・関心も高い。

コーディネ

ー タ 機 関

(予定)

スリウィジャヤ大

・パレンバン市内に立地する総合大学。農学部では日本の大

学(三重大学、北海道大学等)との交流も盛んに行ってい

る。パレンバン市が対象地域となった場合、調査協力を依

頼予定。

その他

協力機関

バンドン工科大学

Bioprocess

Engineering

Tjandra Setiadi

Ph.D.

・数多くの共同プロジェクトによりインドネシア環境省との

強いコネクションがある。また、インドネシアの再生可能

エネルギー政策に関連する国内の調査プロジェクト等、国

内のバイオマス関連プロジェクトの情報や関わった機関

についての情報にも詳しい。

・豊橋技術科学大学を始め、日本国内の大学教授との関わり

も深く、本事業においてアドバイザーとしての協力につい

てご快諾いただいた。

その他協力

機関(予定)

パレンバン市

(市長)

南スマトラ州

(州知事)

・パレンバン市が対象地域となった場合、バイオマスタウン

構想策定に対する合意と協力を依頼予定。地方行政の状況

によって、市と州の両方、もしくはどちらか一方への協力

依頼とする可能性がある。

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30

2.3 現地で必要とされる技術・ノウハウの検討

第 1 回現地調査においてバイオマスに関連する現地中央政府にヒアリング調査を行

い、現地のバイオマス利活用ニーズ、必要とされる技術やノウハウについて検討した。

マレーシア、インドネシアともに、バイオマス変換技術だけに限らず、それらを効率

よく分別回収するための政策や、住民を巻き込むための社会システム作りが、特に必要

とされている。地域一体となって取り組むバイオマスタウン構想が、彼らの必要として

いるノウハウに近いイメージであったことから、本事業に対して高い関心が示された。

表 2-13 バイオマス利活用ニーズと必要とされる技術およびノウハウ

国 バイオマス利活用ニーズ 必要とされる技術・方策

マレーシア 有機性廃棄物利活用による埋立

処分量の削減

市民の環境意識の向上(廃棄物の

分別等)

コンポスト化等、パーム油産業に

よる未利用バイオマス利活用シ

ステムの確立と横展開

分別の社会システム作り(政策や

普及啓発等のノウハウ)

ショーケースとなる成功事例と

効果的な PR 方策(メリットの見

える化)

低コストな技術(コンポスト化、

炭化、メタンガス利用、液肥化、

BDF 化)

インドネシア 農業残渣や家畜糞尿を活用した

コンポスト化

埋立処分場から発生するメタン

の有効利用

有機性廃棄物利活用による埋立

処分量の削減

市民、農家の環境意識の向上(廃

棄物の分別等)

BDF 化のための廃食油利活用シ

ステムの確立と横展開

良質なコンポスト製造技術、ノウ

ハウ

埋立処分場のメタンガス高効率

回収・利用システム

分別の社会システム作り(政策や

普及啓発等のノウハウ)

ショーケースとなる成功事例と

効果的な PR 方策(メリットの見

える化)

低コストな技術(コンポスト化、

メタンガス利用、BDF 化)

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2.4 課題、方策の整理

現地調査で把握した課題と現地ニーズを踏まえ、食料等の既存製品の生産、未利用分

の収集、変換、変換後利用までの総合的なシステムを構築するための課題、方策を検討

した。

表 2-14 課題に対する方策の方向性

項目 課題・ニーズ 方策の方向性

既 存 製 品

の生産 ・ 資源作物と競合す

るリスク。 ・ 加工過程の廃棄物系バイオマス等の未利用バイオ

マスをターゲットとする。(例:粗パーム油の BDF化は一次製品と競合する可能性があるが、廃食油

の BDF 化は競合しない)。

収集 ・ 分別の仕組みも習

慣もないことから、

未利用資源が集ま

らない。 ・ 分別キャンペーン

だけで終わるので

はなく、継続的な仕

組みを作りたい。 ・ 未利用資源を埋立

処分場周辺等で収

集し生活の糧とし

ている人々がいる。

・ 日本の成功事例、失敗事例、仕組みが構築される

過程を伝えることで、政策だけでなく住民意識に

浸透させる仕組み作りを支援する。 ・ 協力者には社会コストの低減による経済的メリッ

トなどが見える分かりやすい仕組みを提案する。

・ 一つ目のモデル地域には、短期的に未利用資源を

有効活用できる具体内容を盛り込み、ショーケー

スとして成功している部分が、実際に見えるとこ

ろまで実現させる。 ・ 資源収集を産業として育成させることも視野に入

れた検討を行う。

変換 ・ 低コストでシンプ

ルな技術が求めら

れている。 ・ 機械は設置されて

いるが、効率的に運

転されていない。

・ 分別、前処理等のノウハウを移転することで、現

地の変換技術もしくは既存設備を可能な限り活用

する。 ・ 需要家が実際に物を見て、ノウハウを学ぶ場を提

供するなど、適正な運転管理、原料調整を育成す

る。 ・ 前処理設備を追加することで効率が改善される可

能性がある。

変 換 後 利

用 ・ 農家がコンポスト

を使用してくれな

い。

・ コンポスト需要と農家のニーズを把握し、それに

見合った品質と価格のコンポストを作る。 ・ 経済的メリットが出る形を作る。

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3. 東アジアバイオマスタウン構想策定可能性調査

3.1 有望地域の選定

本事業において、各国初のバイオマスタウン構想を策定するにあたり、どのような地

域を対象地域として選定すべきかについて、現地政府機関及び研究機関等と討議した結

果、以下の要件に基づいて地域を選定することとした。

多種多様なバイオマスが発生していること

バイオマス関連機関(研究機関や大学等)が近くに立地していること

ショーケースとして PR しやすい地域であること(国内横展開の観点から)

第 1 回現地調査において、マレーシアでは、住宅自治省国家固形廃棄物管理局とプト

ラ大学と上記の条件に基づいた協議の結果、セランゴール州スパンジャヤ市議会

(MPSJ)のスリセルダン地区が有望地域として推薦された。一方、インドネシアでは

BPPT、農業省土地・水管理総局との協議の結果、南スマトラ州パレンバン市が推薦さ

れた。

表 3-1 各国の有望地域

国 名称 選定理由

マレーシア スリセルダン地区

(Sri Serdang)

※セランゴール州

スバンジャヤ市内

・バイオマスとしては、農業、畜産、都市廃棄物、剪定枝、

小規模なパームプランテーション残渣等がある。

・多様なバイオマスを対象とすることが出来ることから、モ

デルケースとして適している。

・プトラ大学と MARDI が立地しており、当該研究施設が保

有するバイオマス利活用関連の実証研究プラントを活用

することが可能である。

インドネシ

パレンバン市

(Palembang)

※南スマトラ州の

首都

・スマトラではメダンに次ぐ大都市。地元にスリウィジャヤ

大学が立地しており、本事業への協力を得ることができ

る。

・周辺には、パーム油産業や農業(ジャトロファ、米、キャ

ッサバ、サトウキビ)、畜産も盛んなことから、都市廃棄

物も含め多様なバイオマスを対象とできる。

・BPPT が設置した BDF 製造プラントも立地しており、同

プラントを活用することが可能である。

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3.1.1 第 2 回現地調査目的と調査内容

第 1 回現地調査で選定した有望地域に対して協力要請をし、当該地域のバイオマスタ

ウン構想の方向性を検討すること、また、コーディネータ機関に対し、コーディネータ

の役割、メリットについて説明し、国内研修にて来日するコーディネータ(各機関 1 名)

の選出を依頼した。マレーシアに 2 日間、インドネシアに 3 日間滞在し、全工程で 12

機関を訪問した。

表 3-2 第 2 回現地訪問の概要

第 2 回現地訪問

目的 ①有望地域の地方自治体に対する事業説明、ヒアリング、協力要請

②コーディネータ機関に対するコーディネータ選出依頼

訪問日程 平成 22 年 12 月 6 日(月)~平成 22 年 12 月 10 日(金)

(マレーシア 2 日間、インドネシア 3 日間)

(1) マレーシアへの第 2 回現地調査

マレーシアへは、平成 22 年 12 月 9 日(木)から平成 22 年 10 日(金)の 2 日間で 5 機関

を訪問した。訪問先と機関毎の訪問目的は以下のとおりである。

表 3-3 マレーシアの第 2 回現地調査訪問先と訪問目的

分類 訪問先 目的

行 政

機関

住宅・地方自治省

国家固形廃棄物管理局

タイ・ベトナム事例報告、コーディネータ機関としての協力

要請、コーディネータ機関の役割についての説明と国内研修

に参加するコーディネータ(1 名)の選出依頼

文部科学省 事業説明、ヒアリング

スバンジャヤ市議会

(MPSJ)

事業説明、ヒアリング、コーディネータ機関としての協力要

請、コーディネータ機関の役割についての説明と国内研修に

参加するコーディネータ(1 名)の選出依頼

大学 マレーシアプトラ大学 タイ・ベトナム事例報告、コーディネータ機関としての協力

要請、コーディネータ機関の役割についての説明と国内研修

に参加するコーディネータ(1 名)の選出依頼

日 系

機関

独立行政法人国際協力機

構(JICA)マレーシア事

務所

マレーシアの廃棄物関連政策のヒアリング、バイオマス利活

用に関する政策、課題・ニーズ等のヒアリング

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国家固形廃棄物管理局での プトラ大学学長との協議

コーディネータ合同会議

マレーシアプトラ大学での協議 文部科学省での協議

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(2) インドネシアへの第 2 回現地調査

インドネシアでは、平成 22 年 12 月 6 日(月)から平成 22 年 12 月 8 日(水)の 3 日間で

7 機関を訪問した。訪問先と機関毎の訪問目的は以下のとおりである。

表 3-4 インドネシアの第 2 回現地調査訪問先と訪問目的

分類 訪問先 目的

行 政

機関

農業省 土地・水管理総

タイ・ベトナム事例報告、コーディネータ機関としての協力

要請、コーディネータ機関の役割についての説明と国内研修

に参加するコーディネータ(1 名)の選出依頼

環境省 事業説明、ヒアリング

技術応用評価庁

タイ・ベトナム事例報告、コーディネータ機関としての協力

要請、コーディネータ機関の役割についての説明と国内研修

に参加するコーディネータ(1 名)の選出依頼

南スマトラ州農政局 事業説明、ヒアリング

南スマトラ州知事 事業説明、ヒアリング

パレンバン市 事業説明、ヒアリング

大学 スリウィジャヤ大学 タイ・ベトナム事例報告、コーディネータ機関としての協力

要請、コーディネータ機関の役割についての説明と国内研修

に参加するコーディネータ(1 名)の選出依頼

南スマトラ州知事との協議 パレンバン市長との協議

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農業省土地・水管理総局との協議 南スマトラ州農政局との協議

スリウィジャヤ大学学長との協議

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3.1.2 有望地域への協力要請およびヒアリング結果

第 1 回現地調査で推薦されたスリセルダン地区(マレーシア)およびパレンバン市(イ

ンドネシア)の自治体に対し、第 2 回現地調査で協力要請を行った。その結果、両地域

ともに本事業への高い関心とプロジェクトへの前向きな回答が得られた。

また、コーディネータ機関からも、有望地域においてバイオマスタウン構想を検討す

ることについて、合意を得ることが出来た。

(1) マレーシアでの有望地域に関する討議

スリセルダン地区を管轄する自治体であるスバンジャヤ市議会(MPSJ)にスリセル

ダン地区を対象地域とすることを提案し、合意が得られた。

コーディネータ機関のプトラ大学では、学長と面談することができた。学長からは、

地域住民と連携した地域貢献活動に力を入れており、本事業に強い関心があるとのコメ

ントをいただいた。

表 3-5 マレーシアの有望地域に関する討議

機関 先方担当者 討議内容

スバンジャヤ市議

会(MPSJ)

※スリセルダン地

区を管轄する自治

アブドゥラ氏(副会

長)、

アズラ氏(環境政策担

当)

・ スリセルダン地区が居住地域であり、農業や畜

産地域ではないことが懸念点としてあげられ

た。

・ しかし、プトラ大学と連携して取り組むこと

等、スリセルダン地区の選定理由をご理解いた

だき、合意が得られた。

住宅・地方自治省国

家固形廃棄物管理

ユスリ氏(主任アシス

タントディレクタ

ー)、他 5 名

・モデル地域選定基準やプトラ大学と連携しなが

らスリセルダン地区で取り組むことを確認し、

合意が得られた。

プトラ大学

環境バイオテクノ

ロジーリサーチグ

ループ

タンスリ学長

アリ教授、

他 3 名のグループス

タッフ

・第 1 回現地調査にてスリセルダン地区を推薦。

・スリセルダンはプトラ大学(以下 UPM)とマ

レーシア農業開発研究所(以下 MARDI)が立

地している。居住区と商業区が主だが、農業大

学である UPM と MARDI からの農業残渣が少

量だが発生するため、多様なバイオマスが得ら

れる。

・UPM と MARDI のバイオマス利活用施設が活

用できる。

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(2) インドネシアでの有望地域に関する討議

第 2 回現地調査で、パレンバン市長に対し本事業の事業説明を行い、本事業の対象地

域をパレンバン市とすることで合意をした。また、パレンバン市は南スマトラ州の州都

であるため、南スマトラ州知事とも面談し、知事よりパレンバン市でのバイオマスタウ

ン構想策定を支持し支援したいとのコメントをいただいた。

このような市町、州知事との日本政府(農林水産省)との面談については、地元メディ

アの関心も高く、翌日の地元新聞で大きく取り上げられたほどであった。

表 3-6 インドネシアの有望地域に関する討議

機関 先方担当者 討議内容

パレンバン市 エディ氏(市長) ・緑化やリサイクルなど環境分野に力を入れてい

る。パレンバン市で構想を策定すること、どの

ように本市に適用するかに関心がある。

・全面的に協力する。

農業省土地・水管理

総局

南スマトラ州農政

アミール氏(土地・水

管理局課長)

ネリー氏(食品・穀

物・園芸室室長)

・パレンバンの中からモデル地域を選定すること

に合意を得た。

・パレンバン全体だと広範囲すぎる。農業系バイ

オマスが豊富なパレンバン市もしくはバニュア

シン地区が良いと思う。

・南スマトラ州農政局も立地しているため、パレ

ンバン市がより良いと思う。

技 術 応 用 評 価 庁

(BPPT)

エンジニアリング

テクノロジーセン

ター

アディアルソ氏(エ

ンジニアリングテク

ノロジーセンター長

)

・第 1 回現地調査の時点からパレンバンを推薦。

・パレンバンに立地するスリウィジャヤ大学との

連携を推薦。

スリウィジャヤ

大学

バディア氏(学長) ・パレンバン全体だと広範囲すぎる。

・パレンバン市の市長は環境問題に関心が高いこ

とから、パレンバンの中でもパレンバン市を有

望地域として推薦する。

南スマトラ州 アレックス氏(州知

事)

・1 か所しか選定できないなか、南スマトラ州を

選んでくれたことに感謝している。

・コンセプトに非常に関心がある。南スマトラ州

が目指す地域発展ニーズと合致するため支援し

たい。

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■パレンバン訪問翌日の地元新聞

南スマトラ州知事との面談

パレンバン市長との面談

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3.2 コーディネータの選定

第 2 回現地訪問において、本事業(1 年目から 3 年目)に想定されるコーディネータの

役割について、コーディネータ機関に説明し、理解を得ることとともに、日本で行われ

る国内研修に参加するコーディネータを選定いただくよう依頼した。

これを受けて、各国コーディネータ機関より、下記のコーディネータを推薦いただい

た。

表 3-7 コーディネータ一覧

国 機関 役職 名前

マレーシア 住宅・地方自治省 国家固

形廃棄物管理局

Principal Assistant

Director

Mr. Mohd Yusri Yusof

マレーシアプトラ大学 Professor Dr. Mohd Ali Bin Hassan

Lecturer Dr. Alawi Sulaiman

スバンジャヤ市議会 Environmental

Control Officer

Ms. Azura Binti Mohd

Don

Landscape

Architect

Ms. Azlina Binti Mat

Salim

インドネシア 農業省 農業・インフラ・

施設総局

Director Mr. Amier Hartono

技術応用評価庁 Engineer Dr. Yoga Peryoga

スリウィジャヤ大学 Professor Dr. Muhammad Faizal

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3.3 バイオマスタウン構想の方向性の検討

3.3.1 対象地域のバイオマス利活用の現状

平成 22 年 12 月末に、現地コーディネータ機関に対し、対象地域のバイオマス利活

用状況を把握するためのデータ収集を依頼した。約 1 ヶ月の期間で、現地コーディネー

タから得られた情報は限定的であった。対象地域毎に把握できたデータは以下のとおり

である。

(1) マレーシア スリセルダン地区の概要とバイオマス利活用状況

<スリセルダン地区>

人口:14,360 人

面積:310.2 km2

地域特徴:住宅、商業地域

主要なバイオマス:

生ごみ

食品加工残渣

廃食油

街路樹・公園等の剪定枝

農業残渣(隣接するマレー

シアプトラ大学およびマレ

ーシア農業研究開発所より

発生)

表 3-8 スリセルダン地区のバイオマス利活用状況

バイオマスの種類 発生およ利活用状況 利活用事例

生ごみ

食品加工残渣

スリセルダン地区で 重要課題とさ

れている廃棄物系バイオマス。

発生量、利活用量ともに不明。

一部実験的にコンポスト化されてい

るものの全量埋立処分されている。

スバンジャヤ市議会(MPSJ)

の分別・コンポストプログラム

にて、実験的にコンポスト化が

行われている(詳細は現地視察

先概要を参照)。

廃食油 発生量は不明。

一部民間企業により BDF 向けにリサ

イクルされている。

民間企業 CGV インダストリー

が、レストランやホテルから廃

食油を BDF 化する事業を行っ

ている(詳細は現地視察先概要

を参照)

街路樹・公園等

の剪定枝

発生量、利活用量ともに不明。 なし

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バイオマスの種類 発生およ利活用状況 利活用事例

農業系残渣 発生量、利活用量ともに不明。

スリセルダン地区に隣接するマレー

シアプトラ大学およびマレーシア農

業研究開発所より発生している。

マレーシアプトラ大学にてパ

ーム油産業残渣の EFB のコン

ポスト化実験が行われている。

マレーシア農業研究開発所に

てパームプランテーション残

渣であるパームの葉の飼料化

が行われている。

(備考:コーディネータ機関へのアンケートおよびヒアリング調査に基づき作成)

生ごみおよび食品加工残渣の利活用が課題となっているが、都市固形廃棄物について

は、以下のような流れで処理が行われている。スリセルダン地区には、埋立処分場がな

いため、地区外の民間企業が運営する埋立処分場に運ばれている。

住宅や商業施設、オフィス等から回収された都市固形廃棄物は、集積所を経由すると

のことであるが、詳細は不明である。廃食油のリサイクルも、スバンジャヤ市議会のコ

ンポスト実験も独自の回収ルートで行われている。

Landed property

Commercial area

High-rise building

Commission

Jeram Landfill(Worldwide Landfills Sdn Bhd)

Cooking Oil

Glass

Food WastePlasticMetal

Others

Biodiesel plant(Intrack Technology Sdn BhdCGV Industries Sdn Bhd)

Recycling center(Nanda Kumar)

Collection Centre

Sorting?Compacting?

1 facility for all wastes?1 facility for all sources?

3 times / wk3 times / wk

6 times / wk6 times / wk

6 times / wk6 times / wk

Collection company

Industries

Sewage Sludge? ?

Industrial Waste?Landscaping Waste?

Landscaping

?Source: The result of questionnaires

図 3-1 スリセルダン地区のバイオマス利活用フロー

(コーディネータ機関へのアンケート結果に基づき作成したため、不明な部分がある。)

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(2) インドネシア パレンバン市の概要とバイオマス利活用状況

<パレンバン市>

人口: 1,535,952 人

面積: 400.61 km2

地域特徴:

農業: 米、キャッサバいも、パーム、とうもろこし、バナナ

畜産業: 鶏、牛、ヤギ、羊

産業: ゴム、化学肥料、石油製油、粗パーム油、セメント加工業

表 3-9 パレンバン市の農業系バイオマスの利活用状況

分類 面積 生産量(t/年)利用可能なバイ

オマス(t/年) 技術

産業廃棄

物利用率

農業 米 6,577 ha 25,256 t/年 稲わら 60,000 t

もみ殻 10,000 t

埋立 0%

コーンスタ

ッチ

186 ha 961 t/年 N/A N/A N/A

キャッサバ 97 ha 1,394 t/年 N/A N/A N/A

合計 6,869 ha 27,611 t/年 70,000 t/年 - -

(備考:コーディネータ機関へのアンケート結果に基づき作成)

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表 3-10 パレンバン市の家畜系バイオマスの利活用状況

分類 頭数 生産量

(t/年)廃棄物量

(t/日) 廃棄物量

(t/年) 技術 利活用率

畜産 牛 14,907 3,807 糞尿 0.3t/日 食肉加工残渣

0.6t/日

糞尿 110t/年 食肉加工残渣 219t/年

堆肥と埋

立 10%

ブロイラ

ー 3,699,000 3,525 N/A N/A 堆肥と埋

立 50%

Purebred chickens

493,000 1,183 N/A N/A 堆肥と埋

立 50%

豚 17,527 998 N/A N/A N/A N/A

山羊、羊 7,056 295 N/A N/A N/A N/A

鶏(卵用) 433,000 201 N/A N/A 堆肥と埋

立 50%

カモ 35,722 40 0 t 0 t 未処分 -

合計 4,700,212 10,049 0.9 t/日 328.5 t/年 - -

(備考:コーディネータ機関へのアンケート結果に基づき作成)

表 3-11 パレンバン市の都市固形廃棄物系バイオマスの利活用状況

分類 排出量(t/日)排出量(t/年)

1 年(365日)構成 技術

廃棄物

利用率

食品廃棄物 317 115,720 39% N/A N/A

紙 122 44,621 15% N/A N/A

プラスチック 118 43,136 15% N/A N/A

葉 69 25,284 9% N/A N/A

その他 65 23,798 8% N/A N/A

革 21 7,738 3% N/A N/A

金属 20 7,439 3% N/A N/A

繊維 17 6,245 2% N/A N/A

ゴム 13 4,745 2% N/A N/A

ガラス 2 894 0% N/A N/A

食用油 0 0 0% N/A N/A

合計 766(2,397 m3/

日)

279,619(874,904

m3/年)

100% コンポス

トバイオ

ガス、堆肥

60%

(備考:コーディネータ機関へのアンケート結果に基づき作成)

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畜産業のうち、鶏糞の 50%、牛の糞尿の 10%が、コンポスト化によりリサイクルさ

れているとのことであるが、利用先等の詳細については確認できなかった。また、都市

固形廃棄物の 60%がリサイクルされているとのことであるが、こちらも詳細なデータ

については確認できなかった。

農業、畜産業、都市固形廃棄物等の廃棄物系バイオマスについては、大半が市内に 2

か所ある埋立処分場に搬入されている。2 か所の埋立処分場の規模は、それぞれ 25 ヘ

クタールと 14 ヘクタールである。25 ヘクタールの処分場では毎日約 400 トンの廃棄物

が搬入されており逼迫している状況である。もう一方の処分場でも同様の状況というこ

とであった。新たな処分場を作る場所も見つからずに、埋立処分場の逼迫解消が、市の

重要課題となっている。

Households

Commercial area

Office buildings

Industries

Plantation

Animal husbandry

Agriculture

Slaughtering

residues

Food wastes

Crumb rubber

Rice straws

Paper

Rice husks

Cassava stems

Plastics

Leaves

Composting centers

?

Landfills

Shortage of dump sites

Biogas facilities(anaerobic digester)

Cooking

Methane gas

Industrial wastes

Human waste

How are they collected?

Excreta ?

Source: The result of questionnaires

図 3-2 パレンバン市のバイオマス利活用の現状

(コーディネータ機関へのアンケート結果に基づき作成したため、不明な部分がある。)

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3.3.2 対象地域のバイオマス利活用ニーズと課題

対象地域のバイオマス資源の量や利用可能量について、全体が把握できていないため、

コーディネータ機関のニーズや問題意識に基づいている段階であるが、各国の対象地域

におけるバイオマス利活用ニーズについては、以下のように整理できる。

表 3-12 対象地域のバイオマス利活用に関するニーズ

国 マレーシア インドネシア

対象地域 スリセルダン地区

(セランゴール州スバンジャヤ)

パレンバン市

(南スマトラ州パレンバンの首都)

背景

埋立処分場の逼迫(都市固形廃棄物の

約 4 割を占める食品廃棄物が全量埋立

処分されている)

政府や自治体主導の分別やリサイクル

プログラムに対する住民の関心が低い

パーム油産業による未利用バイオマス

の有効活用

化学肥料助成金の削減(農業省が年間

約 1800 億円負担)

ムシ川上流からの廃棄物による環境汚

染問題(肥料、殺虫剤等の農業廃棄物

が上流で川に廃棄されている)

埋立処分場の逼迫と周辺の衛生問題

パーム油産業による未利用バイオマス

の有効活用

ニーズ

有機性廃棄物の分別、リサイクルの仕

組み作り

市民の環境意識の向上(廃棄物の分別

等)

コンポスト化等、パーム油産業による

未利用バイオマス利活用システムの確

立と横展開

農業残渣や家畜糞尿を活用したコンポ

スト化

埋立処分場から発生するメタンの有効

利用

埋立処分量削減のための分別、リサイ

クルの仕組み作り

市民、農家の環境意識の向上(廃棄物

の分別等)

BDF 化のための廃食油利活用システム

の確立と横展開

(利活用

ニーズの

高い)バ

イオマス

の種類

家庭ごみからの有機性廃棄物

飲食店等からの有機性廃棄物

パーム油産業の未利用バイオマス

造園廃棄物(剪定枝等)

廃食油

家庭ごみからの有機性廃棄物

飲食店等からの有機性廃棄物

農業残渣

家畜糞尿

パーム油産業の未利用バイオマス

廃食油

(関心の

高い)

利活用

技術

コンポスト化

炭化

メタンガス利用

液肥化

BDF 化

コンポスト化

メタンガス利用(特に埋立処分場のメ

タン回収)

BDF 化

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対象地域におけるバイオマスタウン構想の方向性を議論するために、事前にコーディ

ネータ機関から収集したバイオマス利活用情報および、第 1 回および第 2 回現地調査等

で得た現地ニーズを整理(表 3-12)し、それをもとに作成した構想イメージを議論の

たたき台とした。

各対象地域での議論のたたき台として作成した構想イメージは以下のとおりである。

(1) マレーシア スリセルダン地区

スリセルダン地区では、分別収集によるバイオマス資源の効率的な回収と、既存のバ

イオマス利活用設備(計画含む)を可能な限り活用したバイオマスタウン構想案を提示

した。

既存のバイオマス利活用設備(計画含む)は、マレーシアプトラ大学に既に設置され

ているコンポスト化設備、今後設置が予定されている炭化、バイオガス、およびバイオ

プラスチック製造設備を主要設備としている。

また、新たな提案としては、バイオガス設備の排水から液肥を作るシステム、分別回

収されたプラスチックや紙から石炭等の代替燃料を作る RPF 設備を加えた。

Landed property

Commercial area

High-rise building Cooking Oil

Glasses

Food Wastes

Biodiesel plants

Recycling Centre

Collection centers (Sort &

compact)

Sewage Sludge

Landscaping Wastes

Landscaping

Compost plants

Agro Wastes (Oil Palm Biomass)

Electricity

Compost

By-productWaste water

InputsInputs

BDF

Glass cullets

OutputsOutputsConversionConversionCollectionCollectionSeparation and efficient transport system

UsersUsers

Biogas plants

Biochars

Bioplastics

MARDI & farmers

UPM

Water/gas scrubber

Biogas plant

Bioplastic Stores

Liquid fertilizer

Plastics

Collection tracks

Papers

Schools

Glass companies

Crushing machines

Compacting machines Industries

(for coal alternatives)

RPF*

MARDI & farmers

*RPF=Refuse Paper and Plastic Fuel

Digestive fluid tanks

図 3-3 スリセルダン地区のバイオマスタウン構想の初期イメージ

(備考:第 3 回現地調査における討議資料)

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(2) インドネシア パレンバン市

パレンバン市においても、分別収集によるバイオマス資源の効率的な回収と、既存の

バイオマス利活用設備を可能な限り活用したバイオマスタウン構想案を提示した。

既存のバイオマス利活用設備は、農業省土地・水管理総局が建設中のコンポスト化設

備、スリウィジャヤ大学に設置されている BDF 設備等を主要設備とした。

また、新たな提案としては、バイオガス設備の排水から液肥を作るシステム、分別回

収されたプラスチックや紙から石炭等の代替燃料を作る RPF 設備を加えた。

なお、現地で埋立処分場を視察する前段階での構想案だったため、この段階では、埋

立処分場のメタン回収については含まれていない。

Landed property

Commercial area

High-rise building

Industries

Plantation

Animal husbandry

Agriculture

Slaughtringresidues

Food wastes

Crumb rubber

Rice straws

Papers

Rice husks

Cassava stems

Plastics

Leaves

Cement factory(as coal alternatives)

Composting centers

Biodigester(anaerobic) Residences

(for cooking)

Industrial wastes

Human waste

Separation and efficient transport system

Excreta

InputsInputs ConversionConversion OutputsOutputs UserUserCollectionCollection

Crushed rubber

RPF*

*RPF=Refuse Paper and Plastic Fuel

Crushing machine

Compacting machine

Compost Farmer

Cooking oil

Methane gas

BDF

Bioethanol

Liquid fertilizer Farmers

Biogas plant

Electricity

Animal feed

Biodiesel plant

Bioethanolplant

Collection tracks

Public vehicles

Electricity companies

Farmer

Digestive fluid tank

図 3-4 パレンバン市のバイオマスタウン構想の初期イメージ

(備考:第 3 回現地調査における討議資料)