平成29年度学校法人会計基準研修会 · 2018. 3. 7. ·...
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平成29年度学校法人会計基準研修会
『平成29年度決算における留意事項
及び学校法人会計Q&A(収入編)』平成30年3月2日
日本公認会計士協会東京会 学校法人特別委員会 副委員長
東和監査法人 代表社員 公認会計士 富川 昌之
目 次
2
第1章 平成29年度決算の留意事項
Ⅰ 第4号基本金の計算の改正………………3
Ⅱ 計算書類の様式・記載科目について… 16
第2章 学校法人会計Q&A(収入編)
Ⅰ 学生生徒等納付金収入…………………26
Ⅱ 寄付金収入………………………………31
Ⅲ 補助金収入………………………………43
Ⅳ 付随事業・収益事業収入………………50
Ⅴ 雑収入……………………………………54
《略称について》
基準:学校法人会計基準
8号通知:学校法人会計基準の一部改正に伴う
計算書類の作成について(通知)
(平成25年9月2日)
9号通知:「恒常的に保持すべき資金の額につい
て」の改正について(通知)
(平成25年9月2日)
実務指針45号:「学校法人会計基準の一部改正
に伴う計算書類の作成について(通
知)」に関する実務指針
(平成26年1月14日)
研究報告16号:計算書類の注記事項の記載に関する
Q&A
(最終改正平成26年12月2日)
第1章 平成29年度決算の留意事項
Ⅰ 第4号基本金の計算の改正
3
今回の学校法人会計基準の改正に伴い、従来、算定の基礎で
あった消費収支計算書が事業活動収支計算書に変更され、新
たに収入支出を活動の種類ごとに区分することになったため、
「恒常的に保持すべき資金の額」の算定式が変更された。
また、「恒常的に保持すべき資金の額」は、従来は、当年度
の計算額が前年度に比べて大幅に下がった場合でも、前年度
の額を維持することとされていたが、学校法人の財政状態等
をより適正にあらわすために、支出が大幅に下がった場合に
は、それに合わせて恒常的に保持すべき資金の額を下げるこ
ととされた。
4
1.改正の趣旨 1/2
5
項目 改正内容
算定式の変更
・前年度の事業活動収支計算書における教育活動収支の人件
費(退職給与引当金繰入額及び退職金を除く)、教育研究経
費(減価償却額を除く)及び管理経費(減価償却額を除く)
及び教育活動外収支の借入金等利息の決算額の合計を12で除
した額に変更された。
恒常的に保持すべき資金の額の引下げ
・ 従来は、「恒常的に保持すべき資金の額」の計算額が、前年
度末の第4号基本金の額(前年度の維持すべき額)を下回る場
合、取崩しは行わず、当該金額を維持する必要があった。
改正後は、計算額が20%超減少した場合には、前年度末の第
4号基本金と当年度の計算額の差額を取崩すことが必要となっ
た。
1.改正の趣旨 2/2
6
学校法人基準の改正に伴い、従来の算定の基礎であった消費収支計算書が事業活動収支計算
書に変更され、新たに収入支出を活動の種類ごとに区分されることに伴い、算定式が変更さ
れた。変更後の算定式と従来の算定式の比較は以下のとおり。⇒ 実質的には変更なし
新算定式 旧算定式
前年度の事業活動収支計算書における教育活動収支の
①人件費(退職給与引当金繰入額及び退職金を除く)
②教育研究経費(減価償却額を除く)、管理経費(減価償却額を除く)
③教育活動外収支の借入金等利息
の決算額の合計を12で除した金額(百万円未満、端数切り捨て可)
前年度の消費支出の
①人件費(退職給与引当金繰入額(又は退職金)を除く)
②教育研究経費(減価償却額を除く)、管理経費(減価償却額を除く)
③借入金等利息
の決算額の合計を12で除した金額(百万円未満、端数切り捨て可)
2.算定式の変更
7
前年度 当年度旧基準との比較
前年度の保持すべき資金額の100分の120超当年度保持すべき金額として、計算額まで基本金の組入を行う必要がある。
→ 変更なし
120
前年度の保持すべき資金額の100分の100~120当年度保持すべき金額として、計算額まで基本金の組入を行うか前年度保持すべき額を当年度
保持すべき額とするか任意。
→ 変更なし
100
前年度の保持すべき資金額の100分の80~100未満前年度保持すべき額を当年度保持すべき額とする。 (基本金の取崩しは不可)
→ 変更なし
80保持すべき資金の額
(第4号基本金)
前年度の保持すべき資金額の100分の80未満 ⇒ 当年度保持すべき金額として、計算額まで基本金の取崩しを行う必要がある。
→(旧)前年度保持すべき資金の額を維持
算定式に基づく保持すべき資金の
額0
旧基準では、計算された当年度で保持すべき資金の額が前年度保持すべき金額を下回る場合、前年度の金額を維持する必要があったが、当該改正に伴い、前年度保持すべき金額の100分の80未満(前年度に比べて20%超減少)に該当する場合は、会計基準第31条第1項第1号に該当するものとし、差額の取崩しが義務付けられた。
3.恒常的に保持すべき資金の額の引下げ
8
・支出が大幅に下がった場合には、資金の額を引き下げ(変更点)
(知事所轄法人) A<80% 80%≦A<100% 100%<A≦120% 120%<A
平成27年度(旧基準)
前年度の額 前年度の額当年度の額又は前年度の額
当年度の額
平成28年度(経過措置)
前年度の額 前年度の額当年度の額又は前年度の額
当年度の額
平成29年度(経過措置)
当年度の額 当年度の額当年度の額又は前年度の額
当年度の額
平成30年度(新基準)
当年度の額 前年度の額当年度の額又は前年度の額
当年度の額
前年度の保持すべき資金の額に対する当年度の計算した額の割合=A(当年度÷前年度)
(H28年度の計算額はH27年度の消費支出より⇒変更された算定式はH29年度より)
(9号通知Ⅱ2及び別添(特例と経過措置) 年度読み替え)
4.第4号基本金の取崩し
9
①平成27年度
②平成28年度
(知事所轄法人) A<80% 80%≦A<100% 100%<A≦120% 120%<A
26年度4号基本金 100
27年度の計算額 70 90 110 125
平成27年度(旧基準) 100 100 原則110、特例100 125
(知事所轄法人) A<80% 80%≦A<100% 100%<A≦120% 120%<A
27年度4号基本金 100
28年度の計算額 70 90 110 125
平成28年度(経過措置) 100 100 原則110、特例100 125
5.具体的計算例 1/2
10
(知事所轄法人) A<80% 80%≦A<100% 100%<A≦120% 120%<A
29年度4号基本金 100
30年度の計算額 70 90 110 125
平成30年度(新基準) 70 100 原則110、特例100 125
④平成30年度
A=100%の場合(当年度の計算額100)はいずれの年度においても100となります。
(知事所轄法人) A<80% 80%≦A<100% 100%<A≦120% 120%<A
28年度4号基本金 100
29年度の計算額 70 90 110 125
平成29年度(経過措置)
70 90 原則110、特例100 125
③平成29年度 ⇒ 要注意!
5.具体的計算例 2/2
11
➢ 今の私立学校を取り巻く厳しい経営環境を考えると、将来の不測の事態に備えて学
校法人が一定の支払資金を保有しておくべきという考え方を学校法人会計基準に
おいても維持していくことは重要であるため、今後も第4号基本金を維持。
➢ 年度末時点で第4号基本金に対応する資金を保有していない場合には、経営状況に問題の
ある恐れが高いため、法人の継続性に関する重要な情報として、その旨と対応策を計算
書類の注記事項として記載することを義務づけられた。
➢ 注記は貸借対照表の末尾に記載する従来の7項目に追加された。⇒ 8項目となる。
第4号基本金の金額に相当する資金が年度末時点で保有されていない場合は、その旨と対応策を注記する。(基準第34条第7項)
「第4号基本金に相当する資金」とは、現金預金及びこれに類する金融商品。
当該金融商品とは、支払資金としての機能を有し、かつ、支払資金として同様
に用いている金融商品のことを意味する。また、特定資産については、第4号
基本金に対応する名称を付した特定資産のみ。
6.第4号基本金相当の資金を有していない場合の注記 1/3
(注記例:該当しない場合)
7.当該会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有して
いない場合のその旨と対策
第4号基本金に相当する資金を有しており、該当しない。
12
(以上8号通知の注記例)
(注記例:第4号基本金の組入れがない知事所轄法人)
7.当該会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有して
いない場合のその旨と対策
学校法人会計基準第39条の規定により、第4号基本金の組入れはない。
(研究報告16号Q13)
(8号通知の注記例)
≪ポイント:該当しなくても必ず注記≫ (実務指針45号5-6)
6.第4号基本金相当の資金を有していない場合の注記 2/3
13
(注記例:該当する場合)7.当該会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有していない
場合のその旨と対策
第4号基本金に相当する資金を以下のとおり有していない。第4号基本金×××円資金
現金預金 ×××円有価証券(※1) ×××円○○特定資産(※2) ×××円
計 ×××円
※1 有価証券は現金預金に類する金融商品である。※2 ○○特定資産は第4号基本金に対応した特定資産である。
現在、主要な債権者である○○等と協議の上、平成○○年度から平成○○年度までの経営改善計画を作成し、○○等の経営改善に向けた活動を行っている。
(8号通知の注記例)
当該注記が継続的に記載さ
れている場合、外部からは
継続性に疑義がある学校法
人と見られる可能性がある。
6.第4号基本金相当の資金を有していない場合の注記 3/3
14
7.知事所轄学校法人の特例について 1/2
Q10.知事所轄学校法人(高等学校を設置するものを
除く)は、新基準第39 条に定めるように「第4号
基本金」の全部又は一部を組み入れないことができ
ますが、現在「第4号基本金」の組入れをしている
法人が、今回の会計基準の改正に当たって、
全額を取り崩し、今後組み入れないことが
できますか。
A10.新基準第2条第4号で「採用する会計処理の原則及び手続並びに計
算書類の表示方法については、毎会計年度継続して適用し、みだりにこれ
を変更しないこと。」とされており、同第34 条第2項「重要な会計方針を
変更したときは、その旨、その理由及びその変更による増減額を脚注とし
て記載するものとする。」とされています。
以上から、正当な理由があれば会計方針を変更できますが、今回の改正
による第4号基本金についての変更は注記事項の追加であり、これをもっ
て会計処理の方針である基本金の組入れ方針を変更する正当な理由には該
当しないと解されますので、今回の会計基準の改正に当たって、
全額を取り崩し、今後組み入れないことはできません。
(H26年2月「学校法人会計基準の改正に関する説明会」への質問回答集Q10)
15
7.知事所轄学校法人の特例について 2/2
第1章 平成29年度決算の留意事項
Ⅱ 計算書類の様式・記載科目について
16
17
1.大科目の省略不可
【ポイント】
大科目の省略と変更は不可という考え方で処理を統一
(※貸借対照表は大科目と中科目の省略と変更が不可)
(H26年2月「学校法人会計基準の改正に関する説明会」への質問回答集Q9)
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2.基本金組入額合計・基本金取崩額の省略不可
基本金組入額合計・基本金取崩額は省略不可
⇒ 基本金組入額合計がなくても「0」として記載
⇒ 基本金取崩額がなくても「0」として記載
⇒ 基本金組入額合計と基本金取崩額は両方記載
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(1)基準改正後の様式に則った科目設定を行うこと
(例)資金収支計算書「付随事業・収益事業収入」
大科目については様式で示しているもの以外の科目の設定は
認められておらず、また省略もできない。
⇒ 寄附行為上の収益事業を行っていない場合にも
「付随事業・収益事業収入」の科目名を用いることになる。
3.会計システム上の科目設定の注意点 1/2
特に大科目に注意!
(2)大科目ゼロでも大科目だけ出力ということができるか
従来大科目で予算決算とも金額がない場合に、実務上は大科目を
省略する法人も多かった。
⇒ 会計システムでもそのような設定になっている場合には、
小科目だけ省略し 大科目(貸借対照表は大科目及び中科目)
だけゼロ表示ができるか。
20
会計システム(ソフト)の仕様は、処理標準通りの表示ができない理由に
はなりません!
3.会計システム上の科目設定の注意点 2/2
※ 作成する場合には、「1部門」+「総額」欄を記載
21
4.単数の学校のみを設置している場合の内訳表
内訳表の種類学校法人部門
の省略
作成の省略
※
資金収支内訳表 〇 〇
事業活動収支内訳表 〇 〇
人件費支出内訳表 〇 ×
「1部門」のみはNG!
(1)東京都補助金(私学部のみ)
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5.補助金の計上区分 1/4
29年度補助金名 区分 備 考
1 産業・理科教育
施設設備整備費補助金
産振:施設
理振:経常費等
産業教育設備は500千円以上。理科は小学校1万円、中学校2
万円、高等学校4万円以上の設備
2 園務改善のためのICT化支援事業補助金
施設 ランニングコスト(通信費・リース料等)は対象外。(初年度のみ対象)
3 私立幼稚園等環境整備費補助
経常費等 遊具・運動用具・教具・保健衛生用品・防犯設備等
4 私立幼稚園教育振興事業費補助金
経常費等
5 私立特別支援学校等経常費補助金
経常費等
23
29年度補助金名 区分 備 考
6 私立幼稚園特別支援教育補助 経常費等
7 私立通信制高等学校経常費補助金 経常費等
8 私立幼稚園等特色教育等推進補助金 経常費等
9 私立高等学校都内生就学促進補助金 経常費等
10 私立幼稚園預かり保育推進補助金 経常費等
11 私立学校安全対策促進事業費補助金
施設 耐震対策工事・アスベスト囲い込み工事
12 安心こども基金による幼稚園耐震化促進事業補助金
施設 耐震化促進事業
13 認定こども園新制度移行支援特別補助金
経常費等 事務職員の人件費
5.補助金の計上区分 2/4
(2)東京都私学財団助成金
24
29年度補助金名 区分 備 考
1 私立専修学校等耐震化事業費助成金
施設 耐震診断、耐震補強工事
2 私立学校非構造部材耐震対策工事費助成金
施設 非構造部材の耐震工事、耐震点検
3 私立専修学校教育環境整備費助成金
施設 教育設備装置で耐用年数1年以上、300万円から2000万円
4 私立学校ICT教育環境整備費助成金
施設 機器購入と付帯工事、消耗品を除く
5 私立学校災害時対応環境整備費助成金
経常費等 非常用食糧の購入
5.補助金の計上区分 3/4
25
29年度補助金名 区分 備 考
6 私立学校省エネ設備等導入事業費助成金
施設 省エネ設備の設計・設備・工事費
7 私立学校外国語指導助手活用事業費助成金
経常費等
8 私立高等学校外部検定試験料助成 経常費等
9 私立学校研究助成金 経常費等
10 私立学校外国語科教員海外派遣研修事業費助成金
経常費等
11 私立高等学校等授業料軽減助成金 経常費等
12 私立高等学校定時制及び通信教育振興奨励費助成金
経常費等
5.補助金の計上区分 4/4
第2章 学校法人会計Q&A(収入編)
出典:公益財団法人東京都私学財団 学校法人会計Q&A(2016年版)
Ⅰ 学生生徒等納付金収入
26
Q3 授業料減免に伴う表示方法
27
Q》授業料を減免した場合には、純額表示(減免後の
金額で表示)で差支えないか。
A》地方公共団体が補助金を通して行う場合は純額表示が原則で
あるが、学校法人が独自に行う場合は、減免前の金額を学生生
徒等納付金収入に計上し、減免額を減免の理由によって人件費
支出又は奨学費支出等に計上する総額表示となる。
なお、通常授業料の減免という場合は、教職員の子弟である
こと、学業優秀であること、スポーツ技能優秀であること、経
済的困難であること等々を理由として学校法人が独自に行う場
合を指すことが多い。
Q11 休学者に対する授業料等徴収額
28
Q》休学者に対する授業料等を学則で別途定めている
が、どのように処理すべきか。
A》学則において休学者の授業料等が定められている場合には、
その額を「(大科目)学生生徒等納付金収入」の
「(小科目)授業料収入」等で計上すればよい。
Q14 高等学校等就学支援金と学費の減免
29
Q》当校では、特待生に対し授業料全額を免除している。この
場合、その生徒に対する就学支援金は支給されるのか。
また、半額を免除した場合はどうか。
A》法令上、就学支援金は、生徒に授業料負担額が発生している
場合に、その負担額に応じて支給されることとされている。
質問のように、学校独自の減免制度によって授業料負担額が
発生しないケースでは、就学支援金は支給されない。
また、半額のみを免除している場合には、授業料負担額が
発生しており、その負担額の範囲内で就学支援金が支給される。
参考:高等学校等就学支援金Q&A(東京都生活文化局)
Q16 中高一貫校における入学金の処理
30
Q》中高一貫校であり、高校から入学する生徒については入学
金を徴収するが中学からの内部進学者については入学金を徴
収しないこととしている。この場合であっても入学金収入と
奨学費支出を両方計上すべきか。
A》この内部進学者の入学金について学則で徴収しないことが定められている場合には、そもそも入学金収入として計上すべき額はないので、奨学費支出を計上する必要はない。また、内部進学者の入学金について、学則で高校からの入学
者とは異なる額を定めている場合にも、当該定められた額を入学金収入として計上すればよく、奨学費支出を計上する必要はない。なお、一律徴収を前提として減免制度の一つとして成績優秀
者等と同様に内部進学者を減免対象としている場合には、入学金収入を計上した上で奨学費支出を計上することになろう。
第2章 学校法人会計Q&A(収入編)
出典:公益財団法人東京都私学財団 学校法人会計Q&A(2016年版)
Ⅱ 寄付金収入
31
Q24 寄付金の計上区分 1/2
32
Q》寄付金については寄付者の意思によって事業活動収支計算
書の計上区分が異なるとのことだが、具体的にはどのよう
に区分されるのか。また、現物寄付についてはどうか。
A》寄付者の意思が施設設備拡充等のためであることが明確な寄付
金のみを事業活動収支計算書における「特別収支」の「その他の
特別収入」に「施設設備寄付金」として計上し、それ以外の
寄付金は「教育活動収支」の「寄付金」に「特別寄付金」又は
「一般寄付金」として計上する。
寄付者の意思は、寄付金趣意書、寄付金申込書等により可能
な限り明確にすることが望ましいが、寄付者の意思が明確でない
場合は、「教育活動(による資金)収支」の「特別寄付金(収入)」
又は「一般寄付金(収入)」として計上することになる。
Q24 寄付金の計上区分 2/2
33
現物寄付については、施設設備の受贈を事業活動収支計算書における「特別収支」の「その他の特別収入」に「現物寄付」として計上し、貯蔵品、固定資産に計上しない機器備品、雑誌等の受入れのように施設設備以外の受贈は「教育活動収支」の「現物寄付」として計上する。以上、科目の区分を取りまとめると下表のように整理される。
〔出典:「寄付金収入・補助金収入に関する留意事項」(平27.10.7 学校法人委員会研究報告第31号)〕
Q26 後援会を通じて受け入れる寄付金 1/3
34
Q》学園の施設および教育内容の充実のため、後援会が寄付金を
募集し、これを学園に助成してもらうことを検討しているが、
このような流れによる募金の受入れおよび学園への助成を行う
ことにあたり留意すべき点はあるか。
A》入学者又はその保護者等関係者を対象とした寄付金又は学校債
の募集を巡っては、過去に入学試験の公正確保が損なわれる事態
が生じたことから、「私立大学における入学者選抜の公正確保等
について(通知)」(平14.10.1 文部科学事務次官通知 14文科高
第454号)が発出され、「入学者又はその保護者関係者から大学
の教育研究に直接必要な経費に充てられるために寄附金又は学校
債を募集する場合は、後援会等によらず、すべて学校法人が
直接処理すること」とされている。
Q26 後援会を通じて受け入れる寄付金 2/3
35
しかし近年、入学時の寄付金等の受入れに限らず、教育研究に
充てられるべき寄付金及び保護者から徴収している教材費等に
ついて、不適切な処理の事例が判明したことから、「学校法人に
おける寄付金等及び教材料等の取扱いの適正確保について(通
知)」(平27.3.31 文部科学省高等教育局私学部参事官通知 26高私
参第9号)が発出された。この通知では前述の平成14年の事務次官
通知の趣旨徹底に加えて「学校法人が保護者等関係者から教育研究
に直接必要な経費に充てるために受け入れた寄付金等は、すべて学
校法人が直接処理し、学校法人会計の外で経理することが
ない」よう、周知が図られたところである。
Q26 後援会を通じて受け入れる寄付金 3/3
36
本来、後援会は学校法人とは別の組織であるため、後援会独自
の活動として寄付金等を募ることを否定するものではなく、また
後援会の諸活動の結果、後援会から学校法人へ寄付を行うことも
あり得る。しかし、学校における教育研究に直接必要な経費に充
てられることを目的とした寄付金等については、学校法人の管理
運営の適正を図る観点から、学校法人が直接受入れるべき
とされたものである。
なお、後援会が前述以外の寄付金を募集する場合においても、
管理運営の適正確保の観点から、文部科学省通知の趣旨にのっと
り慎重に対処する必要がある。特に後援会の事務を学校法人の
職員が兼務している場合等においては、それぞれの事務を明確に
区分し経理の混同が生じないよう、万全な体制を講じるよう留意
されたい。 〔出典:実務問答集改正会計基準対応版27〕
Q28 翌年度入学予定者に係る寄付金の収入計上 1/2
37
Q》高等学校だが、翌年度入学予定者から寄付金の入金があった。
入学金と同様に収受した当年度においては前受金収入として
処理し、入学年度に寄付金収入とすることはできるか。
A》翌年度入学予定者から寄付金を受入れた場合の会計処理について
は、受領した年度の寄付金収入として計上する方法と、入学年度の
寄付金収入として計上する方法の二通りが考えられる。
しかし、翌年度入学予定の学生生徒等に係る寄付金を、受領年度
においては前受金収入とし、翌年度の事業活動収入とすることがで
きるのは、所轄庁の指示がある場合に限るとされている。
従来、二通りの実務が見られたが、東京都においては特段
の指示はしていないことに留意されたい。
Q28 翌年度入学予定者に係る寄付金の収入計上 2/2
38
また、都は、翌年度入学予定者からの寄付金の募集については、
「私立高等学校等の寄付金及び学債の募集について(平16.1.16 15生
文私行第2327号)」の通知を発出しており、「寄付金及び学債の募
集を行う場合、募集の開始は入学手続後に行うこと。」としてい
るので、この通知の趣旨に十分留意する必要がある。
一方、大学については文部科学省より「私立大学における入学者選
抜の公正確保等について(平14.10.1 14文科高第454号)」の通知が
発出されており、翌年度入学予定者の寄付金の募集開始時期は入学後
とされている。
なお、文部科学省より都道府県知事あてに「学校法人における寄付
金等及び教材料等の取扱いの適正確保について(通知)(平27.3.31
26高私参第10号)」が発出されており、寄付金等の取扱いの注意喚
起がなされている。参考:「寄付金収入に関する会計処理及び監査上の取扱い実務指針」(平27.10.7 学校法人委員会報告第39号Ⅱ-1)
Q33 寄付金収入の管理方法 1/2
39
Q》旧校舎を取壊して新校舎を建設する計画が具体化してきた。
ついてはこれから寄付金を広く募集することになるので、寄付
金収入の事務処理に関してどのような点に注意すればよいか。
A》金額、収入時期などが不規則な寄付金の性格にあった管理が必要である。学生生徒等納付金はその収入する額や時期が規則的なので、比較
的管理しやすい。しかし、寄付金は一般的に寄付者によって寄付金額や時期がまちまちである。そのため、事故やトラブルが起きないような管理体制が重要である。具体的には、
(1)理事会、募金委員会などの権限ある機関の承認を受けて寄付金募集の基本的枠組みを作る。例えば、募集期間、一口の金額、集金方法(預金口座の設定な
ど)、募集方法、管理責任者など。
Q33 寄付金収入の管理方法 2/2
40
(2)募集要項、募金趣意書などが作成され、寄付金の使途、募集の
目的、目標額、募集期間、寄付金の管理方法等を内外に明確にする。
(3)寄付金の申込み及び払込みは、全て所定の様式によって
行われること。
(4)現金で受領しないで、必ず指定した預金口座のみで取扱う
こと。
多額の現金が動くことは事故のもとになるので、寄付金のお願い
や案内状に所定の銀行口座を指定し、できれば専用の振込用紙を
用意して証拠が残るようにする。
(5)寄付金収入の実績(寄付者名、寄付金額)を発表したり、礼状を
発送したりして寄付者自身がチェックできるようにする。
(6)一人の担当者が寄付金に関する全ての業務を行わないで、必ず
複数の人間が携わり、相互に牽制するようにする。
Q34 設立母体から受領している経常経費への助成金 1/2
41
Q》本法人の設立母体である宗教法人から、本法人の経常的経費の
支出にあてるため、毎年一定額の助成金を受けている。この助成
金については補助金、寄付金のいずれの科目に計上すべきか。
A》 「寄付金収入・補助金収入に関する留意事項」(平27.10.7
学校法人委員会研究報告第31号)によると、補助金収入の定義は
「補助金収入は、国又は地方公共団体からの助成金をいい、日本
私立学校振興・共済事業団及びこれに準ずる団体から
の助成金を含む。なお、日本私立学校振興・共済事業団及び
これに準ずる団体からの助成金とは、国又は地方公共団体か
らの資金を原資とする間接的助成金をいう。」とある。
Q34 設立母体から受領している経常経費への助成金 2/2
42
この定義の趣旨では、補助金収入となる交付主体は国、地方公共団体、
日本私立学校振興・共済事業団およびそれに準ずる団体(各都道府県
の私学振興会および私学協会等)に限定しており、公益法人等は含
めないとしている。
従って、設立母体たる宗教法人や後援会等から継続的に受領してい
る助成金は税金を原資としない財産の受贈であるため、寄付金収入と
して取り扱うこととなる。
また、学校法人の経常的経費に充当する目的の助成金であるから、
一般寄付金(収入)として計上することが妥当である。区分計上につい
ては活動区分資金収支計算書では「教育活動による資金収支」に、事業
活動収支計算書では「教育活動収支」に計上することが妥当である。
〔出典:実務問答集改正会計基準対応版26〕
編者注:なお、東京都においては、公益財団法人東京都私学財団の助成金が、国又は
地方公共団体からの資金を原資とする間接的助成金に該当する。
ポイント!
第2章 学校法人会計Q&A(収入編)
出典:公益財団法人東京都私学財団 学校法人会計Q&A(2016年版)
Ⅲ 補助金収入
43
Q36 補助金の計上区分 1/2
44
Q》補助金については、その交付目的によって事業活動
収支計算書の計上区分が異なるとのことだが、具体的に
はどのように区分されるのか。
A》資金収支計算書に計上される「補助金収入」のうち、交付補助金
の根拠法令や交付要綱から、その目的が「施設設備の拡充等の
ため」であることが明確である場合は、事業活動収支計算書で
は、「特別収支」の「その他の特別収入」に「施設設備補助金収入」
として計上する。
施設設備の拡充等の目的以外の補助金収入は、事業活動収支計算書
では、「教育活動収支」に「経常費等補助金」として計上し、活動区
分資金収支計算書では、「教育活動による資金収支」に「経常費等補
助金収入」として計上する。
45
以上、科目の区分を取りまとめると下表のように整理される。
〔出典:「寄付金収入・補助金収入に関する留意事項」(平27.10.7 学校法人委員会研報告第31号)〕
Q36 補助金の計上区分 2/2
Q39 補助金の未収計上
46
Q》東京都私学部から平成29年3月30日付の補助金交付決定通知書
(500万円)がきたが、実際の入金は翌4月になった。
この補助金を未収入金に計上すべきか。
A》未収入金に計上すべきである。
未収入金として計上する条件は、収入の帰属年度が当該年度であり、
かつ交付を受けることが確定していることである。補助金について
は交付決定通知書が発行されれば金額が確定し、確実に入金する。
したがって、未収入金に計上することが妥当な処理である。
なお、当該補助金が施設設備拡充のための補助金である場合には、
活動区分資金収支計算書は「施設整備等活動による資金収支」の活
動区分に、事業活動収支計算書は特別収支の区分に「施設設備補助
金(収入)」として計上されることに留意する。
Q40 老朽校舎建替融資に係る利子補給 1/2
47
Q》築30年を経過している老朽校舎の建替えをするために、日本私立
学校振興・共済事業団から融資を受ける予定である。この融資に対
して、利子助成が行われるとのことだが、この助成金はどのように
会計処理すればよいのか。
A》国が実施している利子助成は、築30年を経過している老朽校舎の建替えをするために日本私立学校振興・共済事業団から融資を受けた学校に対して、利子返済額の一部の軽減を図ることを目的としている。資金収支計算書では大科目「補助金収入」の小科目「国庫補助金収
入」で処理するのが妥当である。なお、施設の充実を図る目的で補助されるものであるので、補助金の交付者の目的に照らして
活動区分資金収支計算書では「施設整備等活動による資金収支」の活動区分に計上することになる。また事業活動収支計算書では、補助金の交付者の目的に基づき、「特別収支」の大科目「その他の
特別収入」の小科目「施設設備補助金」として処理する。
Q40 老朽校舎建替融資に係る利子補給 2/2
48
なお、公益財団法人東京都私学財団も同様の利子助成を行っている。
この場合は、大科目「補助金収入」の小科目「東京都私学財団補助金収
入」で処理することになる。
また、活動区分資金収支計算書及び事業活動収支計算書については国
庫補助金収入の場合と同様に処理する。
参考:文部科学省 学校法人経理事務担当者研修会資料、「学校法人基準の一部改正に
伴う計算書類の作成について(通知)」に関する実務指針(平26.1.14 学校法
人委員会実務指針第45号1-4、2-3)
Q41 研究委託の補助金の収入科目
49
Q》教職員が行う研究について、公益財団法人東京都私学財団から、
助成金10万円の支給を受けた。収入科目を教えていただきたい。
A》東京都私学財団補助金収入である。
補助金収入は、「寄付金収入・補助金収入に関する留意事項」(平27.10.7 学
校法人委員会研究報告第31号)において定義している。
すなわち、補助金収入とは国又は地方公共団体からの助成金をいい、日本私
立学校振興・共済事業団及びこれに準ずる団体からの助成金を含む。なお、日
本私立学校振興・共済事業団及びこれに準ずる団体からの助成金とは、国又は
地方公共団体からの資金を原資とする間接的助成金をいう。
日本私立学校振興・共済事業団に準ずる団体とは例えば、「公益財団法人東
京都私学財団」等がこれに該当する。
したがって、公益財団法人東京都私学財団からの助成金は、資金の原資が東
京都の資金であり、日本私立学校振興・共済事業団に準ずる団体であるから、
補助金収入となる。なお、活動区分資金収支計算書は「教育活動による資金収
支」の活動区分に、事業活動収支計算書は教育活動収支の区分に計上される。
第2章 学校法人会計Q&A(収入編)
出典:公益財団法人東京都私学財団 学校法人会計Q&A(2016年版)
Ⅳ 付随事業・収益事業収入
50
Q48 夏期講習会の受講料 1/2
51
Q》従来、業者に委託していた受験対策の夏期講習会を学校主催で実施したい
が、その際の受講料の受入れと、経費の支出はどの科目で処理すればよいか。
A》夏期講習会の性格による。
希望者を募って開催する場合、収入は「(大科目)付随事業・収益事
業収入」、「(小科目)補助活動収入」で、支出は「(大科目)管理経費
支出」、小科目は必要に応じて報酬・委託・手数料支出、消耗品費支出等
を使う。なお、事業活動収支計算書において大科目は「付随事業収入」とな
る。
また、一定のクラスや一定の成績者を対象として開催する場合、収入は
「(大科目)付随事業・収益事業収入」、「(小科目)課外活動収入」等で、
支出は「(大科目)教育研究経費支出」、小科目は必要に応じて教材費支出、
報酬・委託・手数料支出、消耗品費支出等を使う。なお、事業活動収支計算
書において大科目は「付随事業収入」となる。
Q48 夏期講習会の受講料 2/2
52
「教育研究経費と管理経費の区分に関するQ&A」(平26.9.3改正
学校法人委員会研究報告第30号)Q6に、「収入の処理科目に
よってその経費(支出)が教育研究経費(支出)か、管理経費
(支出)かに区分されて処理されるので科目細分については充分
な注意が肝要である。」と説明している。
したがって、事業内容が教育補完事業であって、収入の処理科目が
教育補完事業であることが明白な場合に、対応する経費の処理科目を
教育研究経費にすることができる。
ポイント!
Q49 未就園児対象の参加料収入
53
Q》当幼稚園では、未就園児を対象とする教室を開講し、実費程度の
参加料を徴収している。会計処理はどのように行えばよいか。
A》「(大科目)付随事業・収益事業収入」(事業活動収支計算書においては
「付随事業収入」)で処理することになるが、小科目については、未就園児
は在園児ではないので、主として在園児を対象とする「補助活動収入」は妥
当ではなく、当該事業の実態に応じた適当な小科目(例えば「未就園児教室
収入」等)を設けて処理するのが望ましい。
支出については、実態に応じて判断することになる。その教室開講が例え
ば幼稚園に推奨される地域の子ども子育て支援を目的とした公開講座的な活
動であることが明確である場合には、「教育研究経費(支出)」としても差
し支えないであろう。
一方、入園説明会とセットとなっているような園児募集活動にかかる経費
と考えられる場合には、「(大科目)管理経費(支出)」の該当小科目で支出す
ることになろう。
第2章 学校法人会計Q&A(収入編)
出典:公益財団法人東京都私学財団 学校法人会計Q&A(2016年版)
Ⅴ 雑収入
54
Q65 雑収入の小科目 1/3
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Q》資金収支計算書および事業活動収支計算書(大科目)雑収入には
どのような小科目があるか。
A》「基準」別表第一および第二では、雑収入とは「施設設備利用料収入、廃品
売却収入その他学校法人の負債とならない上記の各収入以外の収入をいう。」
と定義されている。
また、同別表では、欄外の(注)で、小科目は必要に応じて適当な科目を追
加することができること、小科目を追加する場合は形態分類によること、とさ
れている。
したがって、(大科目)雑収入に追加できる小科目は、同別表中で「雑収
入」より上に記載されている大科目(別表第一・資金収支計算書であれば「学
生生徒等納付金収入」~「受取利息・配当金収入」、別表第二・事業活動収支
計算書であれば教育活動収支の事業活動収入の部の「学生生徒等納付金」~
「付随事業収入」)に属する小科目には形態分類上、計上し難い性質の収入を
計上するものとなろう。
Q65 雑収入の小科目 2/3
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設定できる小科目には特段の制約はないが、上記をふまえ、実務上、取り扱わ
れている事例としては、次のものが挙げられる。
(1)退職金財団(社団)に関するもの
私立大学退職金財団交付金、退職金社団交付金、退職金団体交付金、退職金
財団給与金、私学退職金社団返還金 等
(2)保険金に関するもの
火災保険金、学生保険制度保険金 等
(3)手数料に関するもの
公衆電話利用料、印刷・複写費、什器使用料、文献複写料、受取手数料 等
(4)入学案内等に関するもの
入学案内・入試要項等売却、願書販売、試験問題等販売 等
(5)戻入等に関するもの
出向先人件費負担・過年度修正 等
Q65 雑収入の小科目 3/3
57
なお、「(大科目)雑収入」は、通常であれば活動区分資金収支計算書・事業
活動収支計算書とも活動区分は「教育活動」となるが、過年度修正に係る
小科目については、活動区分資金収支計算書上の活動区分は「その他の活動」、
事業活動収支計算書上の活動区分は「特別収支」となり、通常とは異なる活
動区分に属することとなる点につき、留意されたい。
〔出典:実務問答集改正会計基準対応版347〕