2)藻場減少実態解析事業jsnfri.fra.affrc.go.jp/pref/fukui/2006/100-104g.pdf2)藻場減少実態解析事業...

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2)藻場減少実態解析事業 高垣 代雅和・仲野大地 1 日的 藻場は、沿岸域の生態系において重要な役割 を果た している。魚介類の生息場所や餌場、産卵場な どになっている他、環財 ヒ(二 酸化炭素の吸収や富栄養化の防止)作用ももっている。 しか し、近年 「磯 焼け」等によ り藻場の減 少が全国的に問題 となっている。 その原因 として、環境 (水温や濁度)の変化やアイ ゴな どの藻食性魚類や ウニ類 による食害が挙げ られ、各地で様々な取 り組みがな されている。本県でも、海藻の種類数の減少や藻食性魚類による食害が報告 されているが、その実態は十分に把握されていない。 本事業は、これ らの背景を踏まえて、本県沿岸の磯根資源の維持増大や沿岸環境の保全を図るため、藻場の状況や藻食他魚類によ る食害の実態を明 らかにす ることを 目的 とす る。 2 試験・調査内容 1)藻場回復試験 試験 は美浜町 日向地先 (水深 5m)において実施 した。方法は、前年度 と同様、岩盤 上に、アカモクお よびフシスジモクの種 を着 生 させたプレー ト (3×13cm)を各 10 枚 ずつ張 り付 けた区、プ レー トのみを張 り付 けた区、岩盤 表面の石灰藻等を剥離 した区、岩 盤表面をそのままの状態にした区を 1 区画 とした試験 区と、試験 区と同様の区画の上に食害防止網 を取 り付 けた対照区を設 けて、海 藻の付着 ・生育状況および食害防除効果 を調べた。各区画の大きさは 0.5×1 m とした。これ らの試験 は、海藻が生育 していない海底 (岩盤)を選定 して行 った。 なお、プ レー トの設置作業は㈱ マ リン ・エ ンジニアサー ビス-委託 した。 (設置作業: 18 6 19 ~21 日) 2) アカモク培養試験 平成 18 5 22 日に美浜町菅浜地先で採取 したアカモ クの母藻を用いて培養試験 を実施 した。培養には 0.5トン水槽を用いた。 幼腔の着生は、水槽内に採苗器 としてコンク リー トブロックを置き、一昼夜止水 に して行 った。培養水槽 は、屋外、屋内に各 1 水槽 を設置 し、幼腔 を着生 させたコンク リー トブロック上面か ら水面までの 水深 を 20 cm 程度 と浅 くして海水の流れをつ くった。 3)藻場調査 調査海域は、 越前地区、おお い地区、高浜地 区(図 12) において各 3 線ずつ、合計 9 定線 (表1)を 設定 して調査 を 行 った。 調査方法は、 ベル トトランセ クト法 (2×10 m区画)で連続 観察により海底 1調査海域 1調査定点 講査定 強位置 緯度 延長方位蓬長貞雄 ## St.1基点 35.57'41.6'N135 .58'16,9'E2 40° 140m 終点 35 .5 7' 40.1'N1 35 '58'13,4`E SL2 基点3 5.56' 3 7.2'N135●59'11.5`E 260' ㈲m 終点 35○56'翁.8-N 13 5●59′9.1'E St.3基点 35B5 3′58, 5'N1 3 5○59'仏3`E2 85 250m 鞍点 35 -53' 59.6'N 1 35●59 ′3 2. 6■E 大t SL1基点 35.32'47.g'N1 353 9'13 .6 E 3 68' 40m 35.33'0,0'N 1 353 9′ 10 .rE St.2基点 35.32'16,6 'N135'37'H.6'E 340B 2%m 終点 35.32' 22 .2'N 13 5 '37 ' 517'E St.3 基点 35○31 '6,6'N135●36 41 . 2'E33 5 ' 150rTl 終点 35'31 J10.3'N135.36'37.0'E 吉浜 St .1基点35. 30'26.0'N135'35' 45.1'E 3 20● 140m 終点 35.30'2日'N135●35′4 1. 5- St,2基点 35'32I11.8'Nー35○30 `5 3 .7'E 1 0● 130m 終点 35.32111.5'N ー35○30′53 .7`【 St.3基点 35-32'3).9'N135'ml59.8'E 州● 70m 35.32'32.3'N135'2g′58.1'E 地形や海藻の分布な どを調べた。また、各調査定線上の水深 2

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Page 1: 2)藻場減少実態解析事業jsnfri.fra.affrc.go.jp/pref/fukui/2006/100-104g.pdf2)藻場減少実態解析事業 高垣 守・川 代雅和・仲野大地 1日的 藻場は、沿岸域の生態系において重要な役割を果たしている。魚介類の生息場所や餌場、産卵場などになっている他、環財

2)藻場減少実態解析事業

高垣 守 ・川 代雅和 ・仲野大地

1 日 的

藻場は、沿岸域の生態系において重要な役割を果たしている。魚介類の生息場所や餌場、産卵場などになっている他、環財 ヒ(二

酸化炭素の吸収や富栄養化の防止)作用ももっている。しかし、近年 「磯焼け」等により藻場の減少が全国的に問題となっている。

その原因として、環境 (水温や濁度)の変化やアイゴなどの藻食性魚類やウニ類による食害が挙げられ、各地で様々な取り組みがな

されている。本県でも、海藻の種類数の減少や藻食性魚類による食害が報告されているが、その実態は十分に把握されていない。

本事業は、これらの背景を踏まえて、本県沿岸の磯根資源の維持増大や沿岸環境の保全を図るため、藻場の状況や藻食他魚類によ

る食害の実態を明らかにすることを目的とする。

2 試験・調査内容

1)藻場回復試験

試験は美浜町日向地先 (水深5m)において実施した。方法は、前年度と同様、岩盤上に、アカモクおよびフシスジモクの種を着

生させたプレー ト (3×13cm)を各 10枚ずつ張り付けた区、プレー トのみを張り付けた区、岩盤表面の石灰藻等を剥離した区、岩

盤表面をそのままの状態にした区を1区画とした試験区と、試験区と同様の区画の上に食害防止網を取り付けた対照区を設けて、海

藻の付着 ・生育状況および食害防除効果を調べた。各区画の大きさは0.5×1mとした。これらの試験は、海藻が生育していない海底

(岩盤)を選定して行った。なお、プレー トの設置作業は㈱ マリン ・エンジニアサービス-委託した。

(設置作業 :18年6月 19日~21日)

2)アカモク培養試験

平成 18年5月22日に美浜町菅浜地先で採取したアカモクの母藻を用いて培養試験を実施した。培養には0.5トン水槽を用いた。

幼腔の着生は、水槽内に採苗器としてコンクリー トブロックを置き、一昼夜止水にして行った。培養水槽は、屋外、屋内に各 1水槽

を設置し、幼腔を着生させたコンクリー トブロック上面から水面までの

水深を20cm程度と浅くして海水の流れをつくった。

3)藻場調査

調査海域は、

越前地区、おお

い地区、高浜地

区 (図1・2)

において各3定

線ずつ、合計9

定線 (表 1)を

設定して調査を

行った。

調査方法は、

ベル トトランセ

クト法 (2×10

m区画)で連続

観察により海底

図1調査海域

1調査定点術 講査定強 位置 緯度 事

は 延長方位 蓬長貞雄## St.1基点 35.57'41.6'N135

.58'16,9'E 240° 140m終点 35

.57'40.1'N135'58'13,4̀ESL2基点 35.56'37.2'N135●59'11.5̀E 260' ㈲m

終点 35○56'翁.8-N135●59′9.1'ESt.3基点 35B53′58,5'N135○59'仏3̀E 285

● 250m鞍点 35-53'59.6'N 135●59′32.6■E大t

SL1基点 35.32'47.g'N135● 3

9' 13.6〝 E 368' 400m鮎 35.33'0,0'N 135○

39′10.rESt.2基点 35.32'16,6'N135'37'H.6'E 340B 2%m終点 35.32'22.2'N

135'37'517'ESt.3基点 35○31'6,6'N135●36′41.2'E 335' 150rTl終点 35'31

J10.3'N135.36'37.0'E吉浜 St

.1基点 35.30'26.0'N135'35'45.1'E 320● 140m終点 35.30'2日'N135●35′41.5-

【St,2基点 35'32I11.8'Nー35○30̀53.7'E100● 130m終点 35.32111.5'N

ー35○30′53.7̀【St.3基点 35-32'3).9'N135'ml59.8'E 州● 70m鮎 35.32'32.3'N135'2g′58.1'E

地形や海藻の分布などを調べた。また、各調査定線上の水深2

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4)食害生物 (アイゴ)調査

アイゴによる海藻摂食の実態を把握

するために、市場 (高浜町漁協)に水援

げされた個体の消化管内容物調査を実

施した。

3結果および考察

1)藻場回復試験

10月の調査では、試験区、対照区と

も沈降物等が多く堆積しており、種付け

したアカモク、フシスジモクとも消失し

ていた。また、種付けしたプレー ト以外

の区画 (岩盤面そのままの区画 ・岩盤面

の石灰藻等を剥離した区画・海藻の種付

けをしていないプレー トを付着させた

区画)においても海藻の自然着生は確終

されなかった。また、調査区画 (試験区・

対照区)近辺の岩盤でも海藻の着生は確

認されなかった。

これらの試験は、元々海藻が着生して

いない場所を選んで行った。食害防止網

を設けた区の種付けした区画において

も、海藻の生育がみられなかったことか

ら、食害藻場が衰退した原因は食害では

なく、海底地形や流れなどの環境要素が

St.1

図2 各地区の調査地点

海藻の着生や生育に不適であったためと考えられる。今後、着生基盤投入などにより藻場造成を行う場合は、造成海域の環境要素を

十分に見極めてから行う必要がある。

2)アカモク培養試験

・屋外水槽

培養開始当初 (6月上旬)は、幼腔の着生は確認されたが、6月中旬の観察時には、ブロック表面や水槽壁面が付着珪藻やフクロ

ノリに覆われたことにより、アカモクは生育が阻害され消失した。

・屋内水槽

6月中旬の観察では、藻長1

C血程度のアカモクの幼体がブロ

ック表面や水槽壁面に密生して

いた (写真1)。しかし、9月以

降生育が徐々に衰退し、lo月上

旬には、密生していた幼体全て

が消失した。

試験期間中の照度 (屋外 ・屋

内)を図3に示した。屋外の照

度は10,000-100,00OLuxの範

写真1 アカモクの生育状況園で大きく変動していたが、屋内の照度は10,000Lux以下で推

移していた。- 101-

≡.一一一屋内12001000× 800⊃」⊂⊃≡ 6u×

也藍 4002000㌔

▲ i+ I

一.I方 I ∫ T I

r II

▲1

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3)藻場調査

詳細は、平成18年度藻場減少実敵解析事業にかかる落水調査委託報告書に記載。

・枠取り調査

枠取り採取における海藻類の出現状況を表2に、枠取り採取結果一覧を表3示した。

表2 枠取り採取における海藻類の出頭状況

No. 綱 目 料 属 種名 越前地区 大飯地区高浜地区St.1 St.2 St.3 St.1 St.2 St.3

St.1 St.2 St.31緑藻 シオrサ ウキオリソウ アミモ∃ウ アミモヨウ ○2 シオrサ シ◆ユス●モ シ◆ユス◆モ属

○3 シオrサ シオゲサ属 ○ ○ ○○ ○ ○ ○ ○ ○4 イワス◆タ イワス◆タ イワス◆タ フサイワス◆タ ○5 ミル ミル ミル ミル ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○6 褐藻 シオミト◆口 シホト◆口 - シホト◆ロ科 ○○7 クロがシラ クロ力◆シラ

ク口がシラ ク口がシラ属 ○8 アミ./rサ アミシ◆ク◆サ ヤハス●ク●サ ヘラヤハス◆○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○9 シワヤハス

◆ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○10 アミシ◆rサ アミシ◆rサ ○ ○ ○○ ○ ○ ○ll 二セアミシ◆ フクリンアミシ◆ ○ ○ ○ ○

12 フタエオオキ◆ フタ工オオキ● ○ ○ ○○ ○ ○ ○ ○13 サナタ◆rサ サ

ナタ◆rサ ○ ○14 ウミウチワ ウミウチワ ○ ○ ○ ○

15 コナウミウチワ ○ ○ ○ ○ ○16 シマオオキ● シマオオキ' ○17 ナがマツモ ナがマツモ 舛モ クロモ ○ ○

○18 イシモス●ク イシモス●ク ○○ ○ ○19 フトモス◆ク フトモス◆ク

○ ○20 ナがマツモ モス'ク モス●ク モス●ク ○ ○21 ウイキョウモ lVl◆モドキ Nl◆モドキ 八八◆モド

キ ○22 カヤモノリ フク口ノリ フク口ノリ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○23 力コ◆メノリ 力コ◆メノリ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○24 セイヨウ川l●ノリ /い◆′l) ○ ○ ○25 ウルシrサ ウブシク◆サ ウルシゲサ ケウルシrサ ○

○ ○26 コンプ チがイソ ワカメ ワカメ ◎◎◎◎◎◎◎◎◎27 ツルモ ツルモ ツルモ ○ ○

○28 コンプ● 力シ◆メ クロメ ・◎◎◎◎◎◎◎◎◎29 ヒハ◆マタ ホンダワラ. シ◆ヨロモク

・>'∃口モク ◎ ◎ ◎◎30 ホンタ●ワラ フシスシ◆モク ◎ ◎31イソモク ◎◎◎◎ ◎◎◎32 ア力モ

ク ◎◎◎◎◎◎◎ ◎33 ノコキ◆リモク ◎◎◎◎◎◎◎◎◎34 トケ◆モク ◎ ◎◎ ◎◎35

ナラサモ ◎ ◎36 ヤツマタモク ◎◎◎◎◎◎◎◎37 マメタワラー ◎◎◎◎◎◎◎◎38 ヤナキ◆モク ◎ー◎◎◎◎◎◎◎◎39 ヨレモク ◎◎◎◎◎◎◎◎◎40 エント●ウモク ◎ ◎41 エソ◆ノネ

シ◆モク ◎◎◎ ◎42紅藻

単子葉植物 ウミtJ'ウメシ がラがラ ヒラ

力◆ラ力●ラ ヒラ力◆ラがラ ○○ ○43 フサノリ 二セフサノ

リ ○44 ウミソ●ウメン ウミソ●ウメン ウミソ.●ウメン ○ ○ ○45 サンコ◆モ サンコ◆モ カニノテ

カニノテ属. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○46 サンコ◆モ tol)ヒハ◆ ○ ○ ○ ○ ○ ○○ ○ ○47 モサス◆キ モサス●キ属 ○

○ ○ ○48 ヘリトリカニノテ ヘリトリカニ′テ属 ○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○49 サt' サヒ●亜科 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○50 テングサ テングサ テングサ マクサ ○ ○ ○51 か◆クサ か◆クサ ○52 スキ●ノリ リユウモンソウ ヒヒ●ロウト● ヒヒ●口ウド ○ ○ ○53 スキ◆ノリ. スキ◆ノリ 力イノリ ○ ○

○54 スキ◆ノリ ツ′マタ属 ○

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表3 枠取り調査結果一覧場所 越前 おおい 高浜St 1 2 3 1 2 3 1 2 3

種類数緑 藻 1褐 藻 12紅 藻 20

0 011 1015 1026 20令 計 33

2 0 3 312 10 4 1015 11 11 1529 21 18 28

4 34 918 1726 29

蘇種類別湿重量(g/0.25m2)

2.3 17.69 6 3.68 2.98 0.32

褐 藻 304.25 558.54 399.09 477.82 1426.65 928.46 708.25 249.11 178.86紅 藻 164.27 522.39 399.09 765.61 188.42 329.77 896.8 353.89 306.49合 計 470・82第1位 ワカメ

137.51

第2位 ピリヒハ̀111.52

第3位 ・)'ヨロiう93

1080.93 798.18ヒリヒハ● ワカメ358.48 720

マメタワラ ヒリヒハ207.75 229.22ワカメ サンゴ7164 153.16

605.98 485.67

マクサ ヒリヒJl●307.27 152.01ショロモク マクサ248.21 96.28

ワツナキ◆ソウ ワカメ41.42 69.01

1261.12 1615.07 1264.23 1608.73サンコ◆モ ワカメ ワカメ ヒリヒハ●374.36 1057.99 88.96 502.18

ヒリヒハ ショロモク ヒリヒ/l ワカメ280.32 230.99 323.92 448

ワカメ ヒリヒJl● サナダゲサ ウスカワカニノテ151.69 154.69 26.11 387.86

優占種

湿重量:g/0.25m2

海藻類の出現数を表3・図4に示した。出現数は、越前地区で20-33種類、おおい地区で18-29種類、高浜地区で26-29種類

であった。また、藻場を構成している優占種は、越前地区で3-6種類、おおい地区で1-6種類、高浜地区で2-4種類であった。

次ぎに、0.25m2当たりの海藻

現存量を表3・図5に示した。

現存量が最も多かったのは、お

おい地区の st2(大島地先)で、

1615.07g/0.25m2で合計21種

類が確認され、その他に大型海

藻はコンプ科が2種類、ホンダ

ワラ科が7種類の合計9種類が

確認された。被度が高かったの

は、ワカメ (平均藻長 30-

60cm)、ノコギリモク (平均藻

長 30-5伽m)およびマメタワ

ラ (平均藻長 30-5伽m)で、

ノコギリモクは定線全域で確認

された。小型海藻は23種類が確

認された。その中で、シワヤハ

ズ、フタエオオギおよびフクロ

ノリ、ピリヒバ、サビ亜科およ

びイワノカワ科がいずれも被度

20%とわずかに高かった。また、

シワヤハズ、アミジグサ、フク

ロノリおよびカゴメノリ、カニ

ノテ属、-リトリカニノテ属、

サビ亜科およびイワノカワ科が

定線全域で確認された。

この調査定線の底質は、定線

全域で岩盤が広がり、離岸距離

10-20mにおいて転石、巨疎お

よび大磯が散在していた。

一方、0.25m2当たりの海藻現

存量が最も少なかったのは、越

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前のstl (玉川地先)で470.82g/0.25m2であった。ここでは、合計33種類が確課された。大型海藻はコンプ科が2種類、ホンダ

ワラ科が11種類の合計13種類が確認された。被度が高かったのは、ノコギリモク (平均藻長60-8(九m)、ヤツマタモク (平均藻長●

60-12伽m)およびジョロモク (平均藻長20-150cm)で、クロメ、イソモクおよびヤツマタモクは定線全域で確認された。小型海

藻は25種類が確認された。その中で、カニノテ属、ピリヒバ、サビ亜科およびマクサが被度20%とわずかに高かった。また、カニ

ノテ属およびへリトリカニノテ属、サビ亜科およびイワノカワ科が定線全域で確認された この調査定線の底質は比較的浅場に大磯

や岩盤が見られるが、転石が優占していた。

今回、枠取り採取した海藻の総湿重量に占める湿重量の割合が多かった優占種として、ワカメとピリヒバが9地点中8地点で上位

3位以内に入っていた。その優占害恰 は、ワカメが平均36.0% (12.0-69.8%)、ピリヒバが平均 24.3% (9.6-33.2%)であった。

ワカメの優占割合が高かった理由の1つとして、底質に起因するところが大きいと考えられるが、調査した時期がワカメの繁茂期に

当たる6月であったことも大きな要因であると考えられた。

4)食害生物 (アイゴ)調査

平成 17年は6-10月にかけて定期的にアイゴを入手することができ、胃内容物を調査することができた。その結果、8月にシオ

グサが、10月にはアカモクの幼体が、一部のアイゴの胃内容物から確認された。これら調査した個体の大きさは、平均 200-300g

サイズであった。

しかし、平成 18年は、例年漁獲量が増える9月以降11月まで漁獲がなく、12月に入りはじめて定置網-の入網があった。漁獲さ

れた個体は、17年に比べて極めて小型 (平均34.8g)であった。入手した198尾のうち50尾の胃および腸内容物を調べた結果、空

胃率は94%と高かったが、全ての個体の腸から幅1mm、長さ数血程度の大きさの褐藻類 (ホンダワラ類)や紅藻類、緑藻類 (アオサ)

が確認された。さらに、これらに混じって、体長5血程度の小型甲殻叛やヒドロ虫類も確課された。これらは葉上生物であることか

ら、海藻を摂餌する際、同時に食されたものと思われた (衰4)0

4 アイゴ消化管内容額胃内容物 空胃率平均重量

腸内容物平均重量 重量葡

(g) (g)主な内容物

調査尾数 尾叉長 体重

(mm) (g)228.7 252.7214.5 176.2234.9 250.4251 303.1

iEiO

0.020.040.14

㈲一10086・87044

H17年6月8月9月

10月H18年9月

10月11月

38382050〓

12月 50 130.6 34.8

シオグサ

アカモク幼一

0.0056 94 0.43 0.03-1.28 *海藻・動物他*海藻:褐藻坂(ホンダワラ類)・紅藻類・緑藻類(アオサ) 動物:エビ類・ヒドロ虫類)

福井県の藻場では、アイゴの増加や早期出現傾向は認められておらず、大規模な衰退も観察されていない。しかし、近年、沿岸水

温が上昇傾向にあることから、アイゴなど南方系の藻食魚の動向については十分注意を払う必要がある。

-104-