2.開口部(1 時間耐火壁)に関する性能検証 - maff.go.jp...21 2.開口部(1...

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21 2.開口部(1 時間耐火壁)に関する性能検証 2.1 検証対象の検討 2.1.1 検証対象の概要 検証対象とした開口部(1 時間耐火壁)の概要を図 2.1 に示す。本検証は、木造耐火構造(1 時間) の壁の開口部について、実用的な内周部措置の確立を目指したものである。具体的には、たて枠間隔を 調整することなく規格サッシや規格建具を活用できる納まりを目指している。 (1)開口ハ:試験体 C-a(開口内周部の措置:スギ材厚 30mm(2)開口ニ:試験体 C-b(開口内周部の措置:硬質木片セメント板厚 25mm2.1 検討対象とした開口部(1 時間耐火壁)の概要

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  • 21

    2.開口部(1 時間耐火壁)に関する性能検証

    2.1 検証対象の検討 2.1.1 検証対象の概要

    検証対象とした開口部(1 時間耐火壁)の概要を図 2.1 に示す。本検証は、木造耐火構造(1 時間)

    の壁の開口部について、実用的な内周部措置の確立を目指したものである。具体的には、たて枠間隔を

    調整することなく規格サッシや規格建具を活用できる納まりを目指している。

    (1)開口ハ:試験体 C-a(開口内周部の措置:スギ材厚 30mm)

    (2)開口ニ:試験体 C-b(開口内周部の措置:硬質木片セメント板厚 25mm)

    図 2.1 検討対象とした開口部(1 時間耐火壁)の概要

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    (3)開口ホ:試験体 C-c(開口内周部の措置:耐火シート厚 6mm)

    図 2.1 検討対象とした開口部(1 時間耐火壁)の概要(つづき)

    2.1.2 試験体の設計

    開口部(1 時間耐火壁)の措置は、次のように設計した。 ①開口内周部の部材:(開口ハ)強化せっこうボード厚21mm 重張りの1枚をスギ材厚30mm で代替

    (開口ニ)強化せっこうボード厚21mm 重張りの1枚を硬質木片セメント板厚25mm で代替 (開口ホ)強化せっこうボード厚21mm 重張りを耐火シート厚6mm で代替

    ②上記の取付方法:(開口ハとニ)コーススレッドビス留め(径3.8×長70mmを間隔200mm で千鳥配置) (開口ホ)専用木工ボンドで接着(150g/㎡)

    ③耐火被覆の補強:(開口ハ)開口内周部の下張材の角部と見込幅全てにアルミテープ張り (開口ニ)開口内周部の下張材の角部にアルミテープ張り (開口ホ)耐火シートと壁面下張材の取合い部に耐火シーラント充填

    ①について:耐火被覆を開口内周部に被せれば、この部分の耐火性能は確保される。つまり、開口内

    周部にも強化せっこうボード厚 21mm 重張りを施せば、耐火構造(1 時間)の要求性能は達成される。しかし、こうした部材構成では釘打ちができないため、必ず何らかのサッシ取付下地材が必要になる。

    そこで今回の性能検証では、そうしたサッシ取付下地材を不燃措置の一部に利用することを検証した。

    具体的には、強化せっこうボード厚 21mm 重張りの 1 枚をスギ材厚 30mm で代替した措置(開口ハ:試験体 C-a)と硬質木片セメント板厚 25mm で代替した措置(開口ニ:試験体 C-b)を検証対象とした。これらの開口部の左側にはアルミサッシ枠を模したアルミ製フラットバー材(厚 2mm)、右側には内装建具枠を模した構造用合板(厚 15mm)を設けた 1。

    さらに、耐火シートを用いた内周部措置(開口ホ:試験体 C-c)も検証した。この試験体の内周には、上下左右ともアルミ製フラットバー材(厚 2mm)を設けた。耐火シートが性能を発揮するには発泡代が必要になる。既往の試験によれば、最終的にアルミサッシ枠は溶融してしまうが、発泡初期段階では

    アルミサッシ枠が発泡を阻害する恐れもある。通常、アルミサッシ枠の左右両側と上部には 1cm ほどの 1 開口ハとニの内周の上側と下側は、耐火被覆(強化せっこうボード厚 21mm 重張り)で措置した。

  • 23

    サッシクリアランスが設けられる。前者は寸法調整をするため、後者はまぐさの変形を吸収するためで

    ある。こうした部分が初期の発泡代になると考え、開口ホにはサッシクリアランスに相当する部分を試

    験体に設けた 1。具体的には、アルミ製フラットバー材と耐火シートの間にパッキン材(構造用合板厚

    9mm)を挟み込んだ。 ②について:サッシ取付下地材は枠材に留める必要があるため、開口ハのスギ材と開口ニの硬質木片

    セメント板は、長さ 70mm のコーススレッドビスによって留付けた。つまり、釘打ちではなくコーススレッドビス留めを採用することによって締結力を向上させるとともに、接合具にはたて材の厚みの半分

    以上に到達する長さを確保した。 一方、開口ホの耐火シートは、専用木工ボンドを用いてたて材に接着した。 ③について:木造耐火構造(1 時間)の壁は、強化せっこうボード重張りなどで耐火被覆される。つ

    まり、開口内周のサッシ取付下地材には 70mm から 80mm ほどの縁空きが生じるため、こうした部材で耐火被覆を代替すると開口部の角部が熱的弱点となる。開口ハとニには、下張材の角部にアルミテー

    プを張って耐火被覆の補強を施したが、さらに開口ハには下張材の見込幅の全てにアルミテープを張っ

    て熱的弱点を補った。 一方、開口ホでは、開口内周部の耐火シートと壁面の強化せっこうボードの取合い部を工夫した。具

    体的には、耐火シートの小口をせっこうボードで覆い、その取合い部には耐火シーラントを充填した。

    表 2.1 試験体 C の全体

    写真 2.1 試験前 写真 2.2 脱炉後 。

    1 既製サッシを用いる場合、一般にアルミサッシ枠の下部は窓台に密着する。しかし今回の試験体では、窓台に張った

    耐火シートの発泡状況を確認するため、開口内周部の下側にもアルミ製フラットバー材と耐火シートの間にパッキン

    材(構造用合板厚 9mm)を挟んだ。なお、耐火シートの発泡状況を目視確認するため、アルミ製フラットバー材の中央には径 20mm の孔をあけた。

  • 24

    2.2 3種類の納まりに関する温度推移 2.2.1 温度測定の位置

    (1)開口ハ:試験体 C-a 温度測定位置

    (2)開口ニ:試験体 C-b 温度測定位置

    図 2.2 検討対象とした開口部(1 時間耐火壁)の温度測定位置

  • 25

    (3)開口ホ:試験体 C-c 温度測定位置

    図 2.2 検討対象とした開口部(1 時間耐火壁)の温度測定位置(つづき)

    2.2.2 温度測定の結果

    図 2.3 から 2.7 に主要な測定点の温度推移を示す。〈 〉内の数字は温度測定位置を示す。 開口内周部の措置にスギ材を用いた開口ハ(試験体 C-a)と硬質木片セメント板を用いた開口ニ(試験体 C-b)では、たて材も合板も加熱終了までは 100℃付近で推移した。しかし、加熱終了後には両者とも合板の温度が上昇し、その最高温度は開口ハ(試験体 C-a)では 210℃、開口ニ(試験体 C-b)では 194℃に至った。ただし、このような合板の最高温度に達するまでの時間は、開口ハ(試験体 C-a)では加熱開始から 128 分であったのに対し、開口ニ(試験体 C-b)では 191 分であった。 一方、開口内周部を耐火シートで措置した開口ホ(試験体 C-c)では、加熱開始 17 分付近で発泡が確

    認された。さらに、加熱開始 29 分にはアルミ製フラットバー材がほぼ溶融して発砲した耐火シートが露出することになった。その温度推移は開口ハ(試験体 C-a)や開口ニ(試験体 C-b)とは大きく異なっており、加熱開始 30 分には合板の各部が 200℃前後に達し、加熱開始 60 分には最高温度 582℃に達した。ただし、たて材とよこ材の最高温度は 200℃前後に止まった。

  • 26

    図 2.3 開口部(1 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (1)たて材左

    図 2.4 開口部(1 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (2)たて材右

    図 2.5 開口部(1 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (3)合板左

    1 凡例の〈 〉内の数字は温度測定位置を示す(図 2.2 参照)。なお、硬木セ板は硬質木片セメント板を示す。

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    0 60 120 180 240

    温度

    (℃)

    時間(分)

    スギ材張り(開口ハ:試験体C-a)〈1〉 硬木セ板張り(開口ニ:試験体C-b)〈5〉 耐火シート張り(開口ホ:試験体C-c)〈9〉

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    0 60 120 180 240

    温度

    (℃)

    時間(分)

    スギ材張り(開口ハ:試験体C-a)〈2〉 硬木セ板張り(開口ニ:試験体C-b)〈6〉 耐火シート張り(開口ホ:試験体C-c)〈10〉

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    0 60 120 180 240

    温度

    (℃)

    時間(分)

    スギ材張り(開口ハ:試験体C-a)〈3〉 硬木セ板張り(開口ニ:試験体C-b)〈7〉 耐火シート張り(開口ホ:試験体C-c)〈15〉

  • 27

    図 2.6 開口部(1 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (4)合板右

    図 2.7 開口部(1 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (5)開口ホの上部と下部

    1 凡例の〈 〉内の数字は温度測定位置を示す(図 2.2 参照)。なお、硬木セ板は硬質木片セメント板を示す。

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    0 60 120 180 240

    温度

    (℃)

    時間(分)

    スギ材張り(開口ハ:試験体C-a)〈4〉 硬木セ板張り(開口ニ:試験体C-b)〈8〉 耐火シート張り(開口ホ:試験体C-c)〈16〉

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    0 60 120 180 240

    温度

    (℃)

    時間(分)

    耐火シート張り・よこ材上(開口ホ:試験体C-c)〈11〉 耐火シート張り・よこ材下(開口ホ:試験体C-c)〈12〉

    耐火シート張り・合板上(開口ホ:試験体C-c)〈17〉 耐火シート張り・合板下(開口ホ:試験体C-c)〈18〉

  • 28

    2.3 3種類の納まりに関する加熱試験の目視結果 加熱中と脱炉後の目視結果を表 2.3 に示す。

    スギ材で措置した開口ハ(試験体 C-a)は、加熱開始 30 分付近にはサッシ枠を模したアルミ製フラットバー材が溶融して消失し、ス

    ギ材が炭化した様子が確認された。内装建具

    枠を模した合板は 22 分ごろには完全に炭化した。その後、開口内周部を措置したスギ材

    は左右とも消失することになった。 一方、開口ニ(試験体 C-b)に設けたアル

    ミ製フラットバー材は溶融によって 43 分付近には消失した。内装建具枠を模した合板は

    開口ハと同様に 22 分ごろには完全に炭化した。ただし、開口内周部を措置した硬質木片

    セメント板は左右とも加熱終了後も残存し

    ていた。またコーナービートとアルミテープ

    は開口ハ(試験体 C-a)も開口ニ(試験体 C-b)も残っていた。

    表 2.2 目視記録(試験体 C)

    4 分:壁のボードが黒く変色。 7 分:パテがはがれ始める。 10分:開口ハ、ニから炎が噴出。 11分:開口ホのよこ材(上)が 100℃を超える〈11〉。 12分:開口ハ、ニの合板が炭化し、ヒビが入る。 14分:開口ホの合板の各所が 100℃を超える〈15、

    16、17、20〉。 17分:開口ホのアルミバー材孔から白いもの(耐火

    シート発泡と考えられるもの)が見える。 19分:開口ハのアルミバー材がたわむ。開口ハから

    激しく炎が噴出。パテが半分以上剥落。 22分:開口ハ、ニの合板が完全に炭化。白くなり大

    きくヒビが入る。 開口ホのアルミバー材が黒く変色。

    24分:開口ホの耐火シート発泡が 3面から確認。 26分:開口ホの合板(右)が 200℃を超える〈16〉。 29分:開口ホの上部及び側面の耐火シートが露出す

    る。 30分:開口ハのアルミバー材が消失。スギ材が炭化。 38分:開口ホの耐火シート発泡が完全に露出。 43分:開口ニのアルミバー材が消失。 50分:開口ホの合板(上)が 500℃を超える〈17〉。 60分:加熱終了。 注)〈〉内の数字は温度測定位置を示す

    開口ハ:試験体 C-a (開口内周部の措置:スギ材厚 30mm)

    試験前

    写真 2.3 試験前の開口ハ

    加熱中

    写真 2.6 加熱開始 17 分時点 炎噴出

    脱炉後

    写真 2.8 脱炉後

  • 29

    表 2.3 開口部(1 時間耐火壁)に関する目視結果の一覧 (1)

    開口ニ:試験体 C-b (開口内周部の措置:硬質木片セメント板厚 25mm)

    開口ホ:試験体 C-c (開口内周部の措置:耐火シート厚 6mm)

    写真 2.4 試験前の開口ニ 写真 2.5 試験前の開口ホ

    写真2.7 加熱開始44分時点の耐火シートの発泡状況

    写真 2.9 脱炉後 写真 2.10 脱炉後

  • 30

    耐火シートを使用した開口ホ(試験体 C-c)

    については、加熱開始 17 分付近でアルミ製フラットバー材にあけた孔から発泡が確認

    された。その後、加熱開始 29 分には、フラットバー材がほぼ溶融し、発砲した耐火シー

    トが露出することになった。 脱炉後に上張材や下張材を解体した状態

    を表 2.5 に示す。開口ハ(試験体 C-a)と開口ニ(試験体 C-b)の木部の状態を確認したところ、開口ハ(試験体 C-a)では構造用合板の角部の一部に軽微な炭化が生じていた。

    一方、開口ニ(試験体 C-b)では構造用合板にもたて材にも炭化は見られなかった。

    耐火シートを使用した開口ホ(試験体 C-c)では、中央部が盛り上がる形で耐火シートが

    発泡していた。開口ホ(試験体 C-c)の木部の状態を確認したところ、構造用合板には明

    らかな炭化が全体的に見られた。一方、たて

    材とよこ材は最高温度が 200℃前後に止まったため、構造用合板に比べると炭化は軽微で

    あった。

    開口ハ:試験体 C-a (開口内周部の措置:スギ材厚 30mm)

    上張材(強化せっこうボード)解体後

    写真 2.11 上張材解体後

    下張材(強化せっこうボード)解体後(1)

    写真2.14 開口ハの左側(アルミ製フラットバー材を設置した部分)

    下張材(強化せっこうボード)解体後(2)

    写真 2.17 開口ハの右側(合板を設置した部分)

  • 31

    表 2.4 開口部(1 時間耐火壁)に関する目視結果の一覧 (2)

    開口ニ:試験体 C-b (開口内周部の措置:硬質木片セメント板厚 25mm)

    開口ホ:試験体 C-c (開口内周部の措置:耐火シート厚 6mm)

    写真 2.12 上張材解体後 写真 2.13 上張材解体後

    写真2.15 開口ニの左側(アルミ製フラットバー材を設置した部分) 写真 2.16 開口内周部は耐火シートの炭化

    写真 2.18 開口ニの右側(合板を設置した部分) 写真 2.19 上部の耐火シートが 10cm 発泡

  • 32

    2.4 性能検証結果に関する考察 2.4.1 今回の試験の結果

    今回の試験結果の概要を表 2.5 に示す。

    表 2.5 性能検証結果の概要(開口部(1 時間耐火壁))(表 1.8 再掲)

    検証対象 開口ハ

    (試験体 C-a) 開口ニ

    (試験体 C-b) 開口ホ

    (試験体 C-c) 左 右 左 右 左 右

    試験体の 仕様

    強化せっこうボード厚21mm +スギ材厚 30mm

    強化せっこうボード厚21mm +硬質木片セメント板厚25mm

    耐火シート厚 6mm (c 仕様)

    角部と開口部の下張材の幅全体(上張材の小口も含む)

    をアルミテープ補強 角部をアルミテープ補強 アルミテープ補強なし

    アルミ 厚 2mm

    合板 厚 15mm

    アルミ 厚 2mm 合板厚 15mm

    アルミ 厚 2mm

    たて材

    最高温度 (達した時間)

    121.8℃〈1〉 (149 分)

    126.1℃〈2〉 (168 分)

    180.0℃〈5〉 (197 分)

    113.0℃〈6〉 (225 分)

    206.8℃〈9〉 (90 分)

    205.9℃〈10〉 (90 分)

    燃焼痕 ビス周り変色 (熱橋による影響)

    変色も炭化もなし 変色

    変色も炭化もなし 角部炭化 角部炭化

    合板

    最高温度 (達した時間)

    190.5℃〈3〉 (101 分)

    209.8℃〈4〉 (129 分)

    193.5℃〈7〉 (191 分)

    169.8℃〈8〉 (162 分)

    465.1℃〈15〉 (61 分)

    536.0℃〈16〉 (60 分)

    燃焼痕 角部炭化

    (軽微な炭化が

    見られた)

    角部炭化 (軽微な炭化が

    見られた)

    変色も炭化もなし

    変色も炭化もなし

    角部炭化 (脱炉時に火は

    確認されず)

    角部炭化 (脱炉時に火は

    確認されず)

    備考 スギ材炭化し

    て焼失 アルミテープ

    残存

    スギ材炭化して焼失

    アルミテープ残存

    木片セメント板残存

    アルミテープ残存

    木片セメント板残存

    アルミテープ剥離

    耐火シートは7cm 発泡

    耐火シートは8cm 発泡

    評価 △ △ ○ ○ × × △ スギ材の厚さを増すか、角部を保護するアルミテープの厚さを増す程度の補強で合格する可能性がある。 注)〈 〉内の数字は温度測定位置を示す(図 2.2 参照)。なお、開口ホは上下のよこ材も評価対象としたが、本表では省

    略した。

  • 33

    2.4.2 関連する既往試験について

    スギ材厚 30mm や硬質木片セメント板厚 25mm を用いた開口内周部措置には、先行する既往試験(以

    下、2015 年 8 月 5 日試験と呼ぶ)がある。その結果を表 2.6 に示す。 2015 年 8 月 5 日試験の開口 D(上)では、耐火被覆の補強のためのアルミテープ張りは、下張材の

    角部のみに施した 1。しかし、この部分からたて枠の炭化が進行しており(表 2.7)、脱炉後に確認したところ、炭化が目立つたて枠左では下張材の角部に張ったアルミテープが剥離していた。つまり、アル

    ミテープが剥離した部分から熱が浸入し、炭化がたて枠左の全体に広がったと考えられた。そのため、

    今回の検証では開口ハのアルミテープによる耐火被覆の補強をより強化することにした。具体的には、

    アルミテープを下張材の角部だけでなく、開口部の下張材の幅全体(上張材の小口を含む)に対して張

    ることにした(図 2.1(1)参照)。 一方、開口ニは 2015 年 8 月 5 日試験の開口 F(上)と同一の納まりである。この納まりは 2015 年 8

    月 5 日試験によって木造耐火構造(1 時間)の壁の耐火性能を損なわないことが確認されているが、今回の検証と 2015 年 8 月 5 日試験を結びつけるためのベンチマークとして試験を行った。

    表 2.6 開口部(1 時間耐火壁)に関する既往試験(実施日 2015 年 8 月 5 日)の結果

    (開口D(上)の内周部措置:スギ材厚 30mm、開口F(上)の内周部措置:硬質木片セメント板厚 25mm)

    開口 D(上) F(上) 場所 たて枠左 たて枠右 たて枠左 たて枠右

    仕様 強化 PB21 スギ 30 アルミ 2

    強化 PB21 スギ 30 合板 15

    強化 PB21 木片セ 25 アルミ 2

    強化 PB21 木片セ 25 合板 15

    補強 アルミテープ補強 アルミテープ補強 最高の温度

    (達した時間) 293.3℃

    (217 分) 192.4℃

    (196 分) 157.8℃

    (240 分) 140.8℃

    (240 分)

    燃焼痕 全体に炭化

    ※ただし、脱炉時に

    火は確認されず。

    ビス周り変色 (熱橋による影響) ※ただし、脱炉時に

    火は確認されず。

    角部変色

    ※ただし、脱炉時に

    火は確認されず。

    健全

    ※脱炉時に火は確

    認されず。

    備考 スギ材炭化 アルミテープ剥離

    スギ材炭化 アルミテープ残存

    木片セメント板残存 アルミテープ残存

    木片セメント板残存 アルミテープ残存

    注)速報の表 1 を抜粋 2。なお本表では、PB はせっこうボード、木片セは硬質木片セメント板を示している。

    1 2015 年 8 月 5 日試験の開口 D(上)のアルミテープ補強は図 2.1(2)と同じになる。 2「木造耐火構造壁開口部性能確認試験速報」((一社)日本ツーバイフォー建築協会、(一社)日本木造住宅産業協会、

    2015.8)、p.11。なお当該試験は 2015 年 8 月 5 日に建材試験センター中央試験所にて実施された。

  • 34

    表 2.7 開口部(1 時間耐火壁)に関する既往試験の目視結果 1

    (開口D(上)の内周部措置:スギ材厚 30mm、開口F(上)の内周部措置:硬質木片セメント板厚 25mm)

    D(上) F(上)

    写真 2.20 開口廻り解体後開口 D(上) 写真 2.21 開口廻り解体後開口 F(上)

    写真 2.22 開口 D(上)たて枠左 写真 2.23 開口 F(上)たて枠左 注)開口内周の左側にはアルミ製フラットバー材(厚 2mm)、右側には構造用合板(厚 15mm)を取付けて試験を実施。

    2.4.3 硬質木片セメント板厚 25mm を用いた開口内周部措置(1 時間耐火壁)について

    硬質木片セメント板厚 25mm を用いた開口内周部の措置は、2015 年 8 月 5 日試験と同様、今回の性

    能検証でも耐火構造(1 時間)の壁の耐火性能を損なわないことが確認された。

    2.4.4 スギ材厚 30mm を用いた開口内周部措置(1 時間耐火壁)について

    スギ材厚 30mm を用いた開口内周部の措置は、今回の性能検証では合板の小口に軽微な炭化が見られ

    た程度であり、たて材の最高温度は 125℃前後に止まった。したがって、スギ材を厚くするか、角部を

    1 「木造耐火構造壁開口部性能確認試験速報」((一社)日本ツーバイフォー建築協会、(一社)日本木造住宅産業協会、

    2015.8)、pp.5-6。なお当該試験は 2015 年 8 月 5 日に建材試験センター中央試験所にて実施された。

  • 35

    保護するアルミテープを厚くする程度の補強で、耐火構造(1 時間)の壁の耐火性能を損なわない措置へと発展させる可能性があると考えられる。 2.4.5 耐火シート厚 6mm を用いた開口内周部措置(1 時間耐火壁)について

    耐火シート 6mm を用いた開口内周部の措置は、今回の性能検証では合板が炭化することになった。

    また、たて材の最高温度も 200℃前後に達し、その一部が炭化することになった(表 2.8)。ただし、耐火シートと耐火被覆の納まりを工夫することによって木部の炭化を防げる可能性があると考えられる。 耐火シートに熱が不均等に加わると十分に発泡しない恐れがある。そのため、今回の検証では、加熱

    側の耐火被覆(強化せっこうボード)が耐火シートの小口を覆う納まりとした(図 2.1(3)参照)。しかし、耐火シートの発泡が始まるまでに、強化せっこうボードに生じた隙間から熱が侵入してしまったと考え

    られる。したがって、例えば耐火シートを耐火被覆の小口に被せてしまい、耐火シート小口からの発泡

    を促進させることよって、木部の温度上昇を抑制できる可能があると思われる。

    表 2.8 試験後に耐火シートを除去した状態(開口ホ:試験体 C-c)

    写真 2.24 開口の角部の状態 写真 2.25 たて材の状態

    写真 2.26 たて材と合板の状態 開口ホのサンプル採取位置

    加熱側から見て右側の

    たて材を含む部分

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    2.開口部(1時間耐火壁)に関する性能検証2.1 検証対象の検討2.1.1 検証対象の概要(1)開口ハ:試験体C-a(開口内周部の措置:スギ材厚30mm)(2)開口ニ:試験体C-b(開口内周部の措置:硬質木片セメント板厚25mm)図2.1 検討対象とした開口部(1時間耐火壁)の概要(3)開口ホ:試験体C-c(開口内周部の措置:耐火シート厚6mm)図2.1 検討対象とした開口部(1時間耐火壁)の概要(つづき)2.1.2 試験体の設計表2.1 試験体Cの全体

    2.2 3種類の納まりに関する温度推移2.2.1 温度測定の位置(1)開口ハ:試験体C-a 温度測定位置(2)開口ニ:試験体C-b 温度測定位置図2.2 検討対象とした開口部(1時間耐火壁)の温度測定位置(3)開口ホ:試験体C-c 温度測定位置図2.2 検討対象とした開口部(1時間耐火壁)の温度測定位置(つづき)2.2.2 温度測定の結果図2.3 開口部(1時間耐火壁)に関する木部の温度推移2F (1)たて材左図2.4 開口部(1時間耐火壁)に関する木部の温度推移1 (2)たて材右図2.5 開口部(1時間耐火壁)に関する木部の温度推移1 (3)合板左図2.6 開口部(1時間耐火壁)に関する木部の温度推移3F (4)合板右図2.7 開口部(1時間耐火壁)に関する木部の温度推移1 (5)開口ホの上部と下部

    2.3 3種類の納まりに関する加熱試験の目視結果表2.3 開口部(1時間耐火壁)に関する目視結果の一覧 (1)表2.4 開口部(1時間耐火壁)に関する目視結果の一覧 (2)

    2.4 性能検証結果に関する考察2.4.1 今回の試験の結果2.4.2 関連する既往試験について表2.7 開口部(1時間耐火壁)に関する既往試験の目視結果6F(開口D(上)の内周部措置:スギ材厚30mm、開口F(上)の内周部措置:硬質木片セメント板厚25mm)2.4.3 硬質木片セメント板厚25mmを用いた開口内周部措置(1時間耐火壁)について2.4.4 スギ材厚30mmを用いた開口内周部措置(1時間耐火壁)について2.4.5 耐火シート厚6mmを用いた開口内周部措置(1時間耐火壁)について表2.8 試験後に耐火シートを除去した状態(開口ホ:試験体C-c)