3-3 海外自動車メーカにおける開発状況...・...

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1053-3 海外自動車メーカにおける開発状況 3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況 海外自動車メーカにおける FCV の開発状況等を整理したものを表 3-3-1~表 3-3-5 示す。 3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 1自動車メーカ 協力メーカ Daimler Daimler Chrysler・ 燃料電池スタックは Ballard,燃料電池システムは Xcellsis が開発を担当。 ・ メタノール改質形 FCV や直接水素形 FC バスを開発,デモ運転実施。 2000 年,メタノール改質形 FCVNecar5」,「ジープコマンダー2」を 発表。 2001 年,日本で「Necar5」の公道走行試験を実施。約 1,300km 走行。 2001 7 月,ドイツの配送業者 Hermes Versand Service 社と協同で, 直接水素形 FCVSprinter」の 2 年間のフィールドテストを行うと発表。 2001 12 月,Millennium Cell 社の技術である,NaBH4 の水素貯蔵シ ステムを使った「Town & Country Natrium」を発表。 2002 10 月,高圧水素形 FCV の量販モデルである「F-Cell」(Ballard 製スタック)を発表(表 3-3-7)。2003 年から,欧州,米国,日本,シン ガポールにおいて,合計 60 台を限定的に市場導入し,日常利用の実証を 行う予定。販売方法はリース方式。 ・ 同時に高圧水素形 FC バス「CITARO」(Ballard 製スタック)を発表(表 3-3-6)。2003 年から,欧州 10 都市の交通事業者に合計 30 台を販売し, 通常の路線運転に導入するテストを行う予定。 2003 3 月,「F-Cell」が日本で大臣認定を取得。JHFC プロジェクト に参加し,公道走行実証試験を開始。 ・ 市販用「F-Cell」の二次電池に,三洋電機製ニッケル水素電池を搭載。 FC バス「CITARO」をスペイン・マドリッド市に納入し商業運転を開始。 2003 6 月,米国の宅配業者に,HEV FCV を提供すると発表。 2003 10 月,東京ガス,ブリヂストンとの間で,「F-Cell」の使用に関 するパートナーシップ契約を締結したと発表。2 社は,月額基本料 120 円を支払い,事業活動に使用する。同年 12 月に東京ガスに納入。 2005 9 月から北京で開始される FC バス実証試験に「CITARO3 の購入が 2004 4 月決定。 2004 7 月,「F-Cell」をベルリンでドイツテレコムなどに納入。 2004 7 月,シンガポールでスタートした SINERGY プロジェクトへ F-Cell を提供。 2004 9 月,オーストラリアのパースでスタートした STEP プロジェク トへ FC バス「CITARO」を供試。 2005 3 月,ジュネーブモーターショーで「F-Cell」より出力を向上 100kW へ)し,航続距離も大幅に延長(400km)した 70MPa 高圧水 素形で二次電池として Li イオン電池を搭載した「B クラス F-Cell」を発 表・展示(表 3-3-8)。 2005 3 月,愛知万博協会へ 2 台の「F-Cell」を貸与。 2005 10 月,東京モーターショーで F600 HYGENIUS 発表(表 3-3-9)。 2005 11 月,北京へ FC バス「CITARO」を納車。 2006 2 月,ロサンゼルス空港に F-Cell 5 台を納車。 2006 4 月,パトロールカータイプの F-Cell を発表。 2007 1 月,消防指揮車両タイプの F-Cell を発表。 BallardFordMillennium- Cell Chrysler 2008 1 月,デトロイトモーターショーにて Li イオン 2 次電池と燃料電 池を搭載したハイブリッド・コンセプト「ecoVoyager」を発表(表 3-3-10)。 注)Daimler には DaimlerChrysler 以前の情報も含む。 出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度~2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度~2007 年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。

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    3-3 海外自動車メーカにおける開発状況

    3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況

    海外自動車メーカにおける FCVの開発状況等を整理したものを表 3-3-1~表 3-3-5に示す。

    表 3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 1)

    自動車メーカ 概 要 協力メーカ

    Daimler (Daimler

    Chrysler)

    ・ 燃料電池スタックはBallard,燃料電池システムはXcellsisが開発を担当。 ・ メタノール改質形 FCVや直接水素形 FCバスを開発,デモ運転実施。 ・ 2000年,メタノール改質形 FCV「Necar5」,「ジープコマンダー2」を発表。

    ・ 2001年,日本で「Necar5」の公道走行試験を実施。約 1,300km走行。 ・ 2001年 7月,ドイツの配送業者 Hermes Versand Service社と協同で,直接水素形 FCV「Sprinter」の 2年間のフィールドテストを行うと発表。

    ・ 2001年 12月,Millennium Cell社の技術である,NaBH4の水素貯蔵システムを使った「Town & Country Natrium」を発表。

    ・ 2002年 10月,高圧水素形 FCVの量販モデルである「F-Cell」(Ballard製スタック)を発表(表 3-3-7)。2003年から,欧州,米国,日本,シンガポールにおいて,合計 60 台を限定的に市場導入し,日常利用の実証を行う予定。販売方法はリース方式。

    ・ 同時に高圧水素形 FCバス「CITARO」(Ballard製スタック)を発表(表3-3-6)。2003年から,欧州 10都市の交通事業者に合計 30台を販売し,通常の路線運転に導入するテストを行う予定。

    ・ 2003 年 3 月,「F-Cell」が日本で大臣認定を取得。JHFC プロジェクトに参加し,公道走行実証試験を開始。

    ・ 市販用「F-Cell」の二次電池に,三洋電機製ニッケル水素電池を搭載。 ・ FCバス「CITARO」をスペイン・マドリッド市に納入し商業運転を開始。 ・ 2003年 6月,米国の宅配業者に,HEVや FCVを提供すると発表。 ・ 2003年 10月,東京ガス,ブリヂストンとの間で,「F-Cell」の使用に関するパートナーシップ契約を締結したと発表。2社は,月額基本料 120万円を支払い,事業活動に使用する。同年 12月に東京ガスに納入。

    ・ 2005 年 9 月から北京で開始される FC バス実証試験に「CITARO」3 台の購入が 2004年 4月決定。

    ・ 2004年 7月,「F-Cell」をベルリンでドイツテレコムなどに納入。 ・ 2004 年 7 月,シンガポールでスタートした SINERGY プロジェクトへ

    F-Cellを提供。 ・ 2004年 9月,オーストラリアのパースでスタートした STEPプロジェクトへ FCバス「CITARO」を供試。

    ・ 2005 年 3 月,ジュネーブモーターショーで「F-Cell」より出力を向上(100kW へ)し,航続距離も大幅に延長(400km)した 70MPa 高圧水素形で二次電池として Liイオン電池を搭載した「Bクラス F-Cell」を発表・展示(表 3-3-8)。

    ・ 2005年 3月,愛知万博協会へ 2台の「F-Cell」を貸与。 ・ 2005年 10月,東京モーターショーで F600 HYGENIUS発表(表 3-3-9)。 ・ 2005年 11月,北京へ FCバス「CITARO」を納車。 ・ 2006年 2月,ロサンゼルス空港に F-Cell 5台を納車。 ・ 2006年 4月,パトロールカータイプの F-Cellを発表。 ・ 2007年 1月,消防指揮車両タイプの F-Cellを発表。

    Ballard,Ford, Millennium- Cell

    Chrysler ・ 2008年 1月,デトロイトモーターショーにて Liイオン 2次電池と燃料電池を搭載したハイブリッド・コンセプト「ecoVoyager」を発表(表 3-3-10)。

    注)Daimlerには DaimlerChrysler以前の情報も含む。 出典:2002年度までの JEVA海外調査報告書,2003年度~2004年度の JARI海外調査報告書,2005年度~2007

    年度の JARI欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。

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    表 3-3-2 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 2) 自動車メーカ 概 要 協力メーカ

    Ford

    ・ DOE/PNGV計画で,50kW直接水素形燃料電池の開発に参加。燃料電池は IFC社が担当した。

    ・ 1999年 12月,燃料電池に関して,DaimlerChrysler,Ballardと提携,共同で開発を進める。

    ・ 2000年,高圧水素形 FCV「Focus FCV」を発表。 ・ 2000年,EVS-17において高圧水素形 FCV 「P2000」を試乗車として提供。

    ・ 2002年 4月,新型の高圧水素形 FCV「Focus FCV」(Ballard製スタック)を発表(表 3-3-11)。試験的に 5台を顧客に提供した。

    ・ 2003年から 2004年にかけて「Focus FCV」を販売していく予定。 ・ カリフォルニア州サクラメント,フロリダ州オーランド,ミシガン州デトロイトの 3都市で,30台の水素燃料電池車を提供し,BPが水素再充填ステーションを建設し,テストを行う計画を 2004年 4月発表。

    ・ 2005年 5月からカナダのバンクーバーで開始される VFCVPプロジェクトへ「Focus FCV」を 5台供試。

    ・ 2006 年 12 月,ロサンゼルスモーターショーに水素燃料電池車 Explorerを出展(表 3-3-12)。

    ・ 2007年 1月,ワシントンモーターショーでプラグインハイブリッドFCV,「Ford Edge with HySeries Drive™」を公開(表 3-3-13)。

    ・ 2007年 7月,世界最速を目指した燃料電池車「Fusion Hydrogen 999」(表 3-3-14)を開発したと発表。

    DaimlerChrysler,Ballard, マツダ

    GM(オペル)

    ・ DOE/PNGV計画で,30 kWメタノール改質形燃料電池の開発に参加。燃料電池は Ballard社が担当した。

    ・ 1997年,メタノール改質形「Zafira」を発表。 ・ FCV開発で,トヨタと共同研究実施。 ・ 米国ではガソリン改質形 FCV,欧州では液体水素形 FCVを中心に開発。ガソリン改質技術で Exxon,BPと共同研究。

    ・ 2000年デトロイトモーターショーで「Precept」(水素吸蔵形)を発表。 ・ 2000 年ジュネーブモーターショーで「Zafira(液体水素)」を発表。シドニーオリンピックマラソン競技のペースカーに採用。北京で試乗会を開催。

    ・ 2001年 1月,Clean Hydrocarbon Fuelを研究の主要な候補とすることでトヨタと合意。

    ・ 2001年 6月,水素貯蔵技術で Quantumと提携。 ・ 2001年 6月,水素インフラの構築に関わる分野で General Hydrogenと提携。

    ・ 2001年 8月,ガソリン改質形 FCV「Chevrolet S-10」を発表。 ・ 2001年 10月,スズキと燃料電池車を共同開発することで合意。 ・ 2001 年フランクフルトモーターショーで,補助電源を必要としない液体水素 FCV「HydroGen3」のプロトタイプ車を公開。

    ・ 2001年 10月,Hydrogenics(加)に資本参加,Giner(米)との提携関係を拡大。

    ・ 2002年 1月,液体水素 FCV「HydroGen3」を発表(表 3-3-15)。 ・ 2002 年デトロイトモーターショーでボディを選べるスケートボード形

    FCV「AUTOnomy」を発表。 ・ 2002年 5月,「Chevrolet S-10」がガソリン改質形としては世界で初めてとなる試走に成功したと発表。

    ・ 2002年 7月,Quantumと共同で 70MPaの高圧水素タンクを開発。 ・ 2002年 8月,運転操作を電子制御して車両に伝えるバイ・ワイヤー技術を搭載した直接水素形 FCV「HY-wire」を発表。

    ・ 2002 年 12 月,国際宅配便大手の FedEx Express と共同で,2003 年 6月から,日本の東京都内で「HydroGen3」を集配業務に使い,試験走行を行うと発表。

    ・ 2003年 2月,「HydroGen3」シリーズのザフィーラ・ミニバンに 70MPaの高圧水素タンクを搭載し,公道走行試験に成功したと発表。

    ・ 2003年 3月,「HydroGen3」が日本で大臣認定を取得し,JHFCプロジェクトに参加し,公道走行実証試験を開始。

    ・ 同年,燃料供給インフラ技術で Shell Hydrogenと提携。米国ワシントンD.C.周辺で,FCVと燃料供給インフラの共同実証実験を 2003年 10月から開始する予定。

    ・ 2003年 4月,FCVを BMW,オペルと共同で開発することを発表。2010年までに FCVの販売を目指す。

    ExxonMobil,BP, ChevronTexco,Quantum, General-

    Hydrogen, スズキ, Hydrogenics,Giner, ShellHydrogen

    出典:2002年度までの JEVA海外調査報告書,2003年度~2004年度の JARI海外調査報告書,2005年度~2007年度の JARI欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。

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    表 3-3-3 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 3) 自動車メーカ 概 要 協力メーカ

    GM(オペル) (つづき)

    ・ 2003 年 5 月,米国・ワシントン DC で FCV の実証運転プログラムを開始。2年間実施し,米国議会関係者や環境保護団体関係者などを対象に,最高 1万回の試乗機会を提供する方針。

    ・ 2003年 7月,東京都内で「HydroGen3」による集配業務を開始。 ・ 2003年 10月, 2010年に米国,日本,欧州,中国の 4地域で FCVの本格的な実用車の販売を始め,利益を確保した上で,その後 10 年間に 100万台を販売する計画を明らかにした。

    ・ 2004年 6月,アメリカの GMと郵政公社は,郵便配達車両に GM製 FCV「Hydrogen3」を導入することで合意。9月からワシントン DC周辺の配達作業を始める。

    ・ 2004年 8月,GMとスズキが開発している FCVの 70MPa圧縮水素貯蔵システムについて,日本の高圧ガス保安協会の認可を得たと発表した。04年内にも公道実証運転を開始する。この 70MPa水素ガス貯蔵システムは,アメリカの Quantum社が開発,住友商事がスズキに納入した。

    ・ 2005 年 1 月のデトロイトモーターショーにて最新のコンセプトカー「Sequel」を発表展示。70MPa高圧水素形で前後 3モータを有し 73kWの FC スタックと Li イオン電池とのハイブリッド FCV。航続距離は480km。(表 3-3-16)

    ・ 2005 年 2 月,FCV のリース販売を 2007 年までに現在の 5 倍になる 40台に引き上げる計画を発表した。

    ・ 2005年 6月,スウェーデンの家具販売会社 IKEAと共同で,ベルリンにおいて HydrogGen3の実用性テストを実施。

    ・ 2005年 4月,アメリカ国防総省と共同で FCピックアップトラックを開発,米軍に非戦闘用として1台を納車。

    ・ 2005年 11月,GM大宇が韓国で HydroGen3の実証プロジェクトを立ち上げることを発表。

    ・ 2006年 9月,第 4世代燃料電池推進システムを搭載した「Equinox」(表3-3-17)の実用化に向けて,顧客からの情報を収集するため,2007 年秋に 100台以上を消費者にリースすると発表。

    ・ 「Equinox」を米国陸軍に納車。 ・ 2006年 12月,50台以上の Equinoxを 2007年はじめにロサンゼルス地域で走行開始すると発表。

    ・ 2007 年 1 月,デトロイトモーターショーで E-Flex システムを搭載したプラグインハイブリッド車「VOLT」を発表。同車の内燃機関の代わりにFC搭載の可能性を発表。

    ・ 2007 年 4 月,上海オートショーで 2 代目 E-Flex システム(水素燃料電池システム)を搭載したプラグイン燃料電池車 Chevrolet Voltを公開。

    ・ 2008 年 1 月,「The Cadillac Provoq fuel cell concept」を発表(表3-3-18)。

    ・ 2008年 3月,同月下旬からロサンゼルス空港およびニューヨーク空港を利用する英ヴァージン航空のアッパークラス対象の無料送迎サービスとして,「Equinox」を 3台ずつ走行させると発表。

    プジョー/ シトロエン

    ・ 1996年から欧州燃料電池開発プロジェクトに参加。・ 2001年 7月,Millennium Cell社の水素貯蔵システムの供給を受け,共同開発の可能性あり。

    ・ 2001 年 12 月,仏原子力庁(CEA),国立科学研究所(CNRS)と自動車向け燃料電池の開発で提携。

    ・ 2004年 9月のパリモーターショーで FCV「Quark」を展示発表。 ・ 2006年 1月,仏原子力庁(CEA)と共同で小型 FCを試作したと発表。最大出力 80kW(出力密度 1.5kW/L以上),エネルギー変換効率 40~50%。商業化は 10年後。

    CEA,CNES

    出典:2002年度までの JEVA海外調査報告書,2003年度~2004年度の JARI海外調査報告書,2005年度~2007年度の JARI欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。

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    表 3-3-4 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 4)

    自動車メーカ 概 要 協力メーカ

    ルノー

    ・ フィーバープロジェクトへの参画。 ・ 液体水素を燃料とした燃料電池車の開発。ニッケル水素電池を補助電源と

    して採用。 ・ 日産とは,2002年 2月に UTC Fuel Cellsとともに燃料電池スタックの基礎技術部分を共同開発し,改質器などの部分についてはそれぞれが独自

    に手がけることで合意。 ・ 2004年,Nuvera-FCと共同開発した 70kW改質器などのコンポーネントを発表。

    ・ 2004 年秋から ADME 主導の「Respire Project」に参画。ルノーはガソリン改質器を担当。2009年以降車両開発を計画。

    日産

    Volkswagen/ Volvo

    ・ Capriプロジェクトを機会に燃料電池の研究開発を開始。 ・ メタノール改質形燃料電池車の開発。Johnson Matthey 社製メタノール改質器を採用。

    ・ 2000年 11月,液体水素形 FCV「Bora HyMotion」で CaFCPに参加。 ・ 2002年 2月,純水素方式の「HY.Power」を試作(PSI製 FCスタック)。 ・ 2004 年 9 月,CaFCP に新たに 35MPa の圧縮水素形 FCV「Touran

    HyMotion」を投入。バラードの 63kWFCスタック,シーメンスのモータ,パナソニック EVエナジーの Ni-MH電池を組み合わせたもので,航続距離は 160km。(表 3-3-19)

    ・ 2006 年 11 月現在,120℃の高温膜(HT-VW)を開発中。商品化は数年先であるとの見通し。

    ・ 2006年 6月,HyMotionを CEPに導入。今後 2年間で 2~3台追加提供の予定。

    ・ 今後開発する次世代 HyMotionでは,自社製スタックを搭載する予定。 ・ ドイツ Isenbüttel にて,ソーラーエネルギーによる水素供給実験設備を開発,デモンストレーションを行っている。

    ・ 2007 年 11 月,ロサンゼルスモーターショーでプラグインハイブリッド燃料電池車「space up! blue」を発表(表 3-3-20)。

    Johnson Matthey

    Zevco ・ アルカリ形燃料電池を利用した燃料電池タクシー(出力 5 kW)を実走行(1998年,ロンドン)。

    Shell

    BMW

    ・ 水素エンジン自動車の補機用電源(APU)として燃料電池の採用を検討。 ・ Delphiと SOFCを共同開発。 ・ 1970 年代より水素内燃機関自動車の開発を進めてきており,2006 年 11月現在,第7世代のバイフュエル(水素-ガソリン)内燃自動車「Hydrogen7」を開発中。今後数年間で欧州向けに 75台を製造予定。

    UTC-FC, Delphi

    Thor

    ・ 米国のバスメーカ Thor Industries.Inc.は,2001年の中頃に世界に先がけて北米における中型サイズの FCハイブリッドバス「サンダーパワー」を商品化すると発表。FCは UTC-FCが,ハイブリッド技術は ISE Reserch社が担当。

    UTC-FC, ISE Reserch

    Fiat

    ・ 2001 年 2 月,イタリア環境省との共同プロジェクトとして,2 人乗りの高圧水素形 FCV「SEICENTO-FCEV」を発表。

    ・ FIATの孫会社である IRISBUSと共同で 2種類の FCバス「CITYCLASS HS-FC BUS」(表 3-3-21),「CRISTALIS HS-FC BUS」を開発。2003年から行われる UTC-FC 製 FC スタック搭載 FC バスの実証試験CITYCELL Demoプロジェクトに導入される。

    ・ 2004年 10月,NuveraFC製の 80kWFCスタックを搭載したNew Panda Hydrogenを開発(表 3-3-22)。

    ・ ZeroRegioプロジェクトに「Panda Hydrogen」を 3台提供予定。

    Nuvera FC, UTC-FC

    出典:2002年度までの JEVA海外調査報告書,2003年度~2004年度の JARI海外調査報告書,2005年度~2007年度の JARI欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。

  • -109-

    表 3-3-5 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 5)

    自動車メーカ 概 要 協力メーカ

    現代・起亜自動

    ・ 2000 年 4 月,UTC-FC 製の 75kWFC スタックを搭載した「Santa Fe FCEV」を発表。

    ・ 2001年 6月,Quantum製 350気圧の高圧水素タンクを搭載した燃料電池車がサクラメント-サンフランシスコ間を走行。

    ・ 2001年 10月,パナソニック EVエナジーの Ni-MH電池と組み合わせハイブリッド化した「Santa Fe FCHV」を発表。

    ・ 2004 年 3 月,ジュネーブオートショーで二次電池としてリチウムポリマー電池と組み合わせた「Tucson FCEV」を発表展示し,4 月には DOEによる FCV実証評価プロジェクトに参加することを表明(表 3-3-23)。

    ・ 2004年 9月,パリモーターショーで新型 SUV「Sportage」燃料電池車を発表。

    ・ 2006 年 9 月現在,Tucson FCV を AC-Transit に 7 台提供している。5カ年,12台の実証を行う計画である。

    ・ 2007年 9月,フランクフルトモーターショーで燃料電池コンセプトカー「i-Blue FCEV」(表 3-3-24)を出展。

    UTC-FC, Quantum

    中国

    ・ 2003年 1月,中国で初めて開発した FCV「超越 1号」の試運転が上海の同済大学構内で行われた。これは,上海汽車,同済大学など十数の企業,

    研究機関が共同開発したもの。2008年北京オリンピック,2010年上海万博に向け,実用化を目指している。

    ・ 2003年 10月,中国最大の自動車メーカ,第 1汽車集団公司は,FCVに関してトヨタ自動車の技術を導入する考えを明らかにした。

    ・ 上海市工業博覧会に「超越 2号」を出展。2005年から量産に入る見通し。 ・ 東風汽車と武漢理工大学が共同で開発中の「楚天一号」が完成。走行テス

    トで 100km/h以上を達成。 ・ 2004年 4月,D/Cの「CITARO」FCバス 3台が,北京の FCBデモプロジェクトとして落札。2005年 9月から導入され,EV863プロジェクトの一環として実証試験が開始される予定。

    ・ 2005年秋同済大学より「超越(start)3」を発表。 ・ 2005年 12月,清華大学にて自国製 FCCityBusを 5台製造し,走行試験開始。

    ・ 2006年 12月,上海郊外にある同済大学のキャンパスで中国製 FCV「超越-栄威」のお披露目が行われた。

    ・ 2007年 9月,上海神力科技有限公司が開発した新世代都市型 FCバス「神力1号」が上海で公開。

    ・ 2007 年 9 月,Shell の技術支援のもと安亭地区に水素ステーションが完成,10月オープン。

    上海汽車, 武漢理工大学,

    同済大学, 清華大学, 上海交通大学,

    大連化学物理研

    究所 等

    出典:2002年度までの JEVA海外調査報告書,2003年度~2004年度の JARI海外調査報告書,2005年度~2007年度の JARI欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。

  • -110-

    表 3-3-6 DaimlerChrysler CITARO (2002年 10月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 全長約 12 m

    乗車定員 70人 最高速度 80 km/h 航続距離 200 km

    電動機最大出力 200 kW以上 燃料電池 固体高分子形(Ballard製 Mark902)

    燃料電池出力 250 kW 燃料 圧縮水素(35MPa) 価格 120万ドル(メンテナンス費用込み)

    表 3-3-7 DaimlerChrysler F-Cell (2002年 10月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 3.785×1.720×1.590 最高速度 140 km/h 航続距離 150 km 電動機種類 誘導式

    電動機最大出力 65 kW 最大駆動トルク 210 Nm 燃料電池 固体高分子形(Ballard製 Mark902)

    燃料電池出力 68.5 kW 燃料 圧縮水素(35MPa)

    水素消費量 4.2L/100km (ディーゼル換算:23.8km/L)

    出力補助装置 ニッケル水素電池 価格 2003年 12月からリース販売

  • -111-

    表 3-3-8 DaimlerChrysler B-Class F-Cell (2005年 3月発表)

    外 観

    乗車定員 5人 航続距離 400 km

    電動機最大出力 100 kW 燃料電池 固体高分子形(Ballard製) 燃料 圧縮水素(70MPa)

    出力補助装置 Liイオン電池(20kW)

    表 3-3-9 DaimlerChrysler F600 HYgenius (2005年 10月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.348×2.017×1.700

    最高速度 174 km/h 航続距離 400km以上

    電動機最大出力 60kW/85kW 最大駆動トルク 210 Nm 燃料電池 固体高分子形(D/C製)

    燃料電池出力 80kW 燃料 圧縮水素(70MPa,4kg)

    出力補助装置 Liイオン電池(30kW/55kW)

  • -112-

    表 3-3-10 Chrysler ecoVoyager (2008年 1月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.856×1.915×1.600

    車両重量 1,247kg 航続距離 300mile(FC)+40mile(電池)

    電動機最大出力 200kW 燃料電池出力 45kW

    燃料 圧縮水素(70MPa) 出力補助装置 Liイオン電池(16kWh)

    表 3-3-11 Ford Focus FCV (2002年 4月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) (全長)4.338×(全高)1.758 車両重量 1,600 kg 最高速度 128 km/h 航続距離 260-320 km

    電動機最大出力 65 kW 燃料電池 固体高分子形(Ballard製Mark902)

    燃料電池出力 - 燃料 圧縮水素(35MPa)

    出力補助装置 ニッケル水素電池(三洋電機製)

  • -113-

    表 3-3-12 Ford Explorer(2006年 12月発表)

    外 観

    車両重量 2,560kg 定員 6人

    航続距離 560km 電動機最大出力 130kW(65kW×2) 燃料電池出力 60kW

    燃料 圧縮水素 燃費 350mpg M-H

    出力補助装置 50kW

    表 3-3-13 Ford Edge with HySeries Drive™(2007年 1月公開)

    外 観

    最高速度 136km/h 航続距離 360km(電池のみで 40km)

    燃料電池出力 35kW(Ballard製) 燃料 圧縮水素(35MPa),4.5kg 燃費 41mpg(ガソリン等価) 方式 プラグインハイブリッド FCV(シリーズ)

    出力補助装置 リチウムイオン電池,130kW,336V

  • -114-

    表 3-3-14 Ford FUSION HYDROGEN 999 (2007年 8月発表)

    外 観

    最高速度 207mph 燃料電池 Ballard製

    燃料電池出力 350kW 燃料 圧縮水素

    表 3-3-15 GM HydroGen3 (2002年 1月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.315×1.750×1.685 車両重量 1,750 kg 乗車定員 5名 最高速度 160 km/h 航続距離 400 km 電動機種類 三相非同期モータ

    電動機最大出力 60 kW 最大駆動トルク 215 Nm 燃料電池 固体高分子形

    燃料電池出力 94kW(定格)/129kW(最高) 燃料 液体水素(68リットル・4.6kg)

    4. Hydrogen3として,液体水素形以外に 30MPaおよび 70MPaの高圧水素形がある。

  • -115-

    表 3-3-16 GM SEQUEL (2005年 1月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.994×1.996×1.697

    車両重量 2,165kg 航続距離 480km 電動機種類 交流誘導式

    電動機最大出力 (前)60kW,(後)25kW×2 燃料電池 固体高分子形(GM製)

    燃料電池出力 73kW 燃料 圧縮水素(70MPa)8kg

    出力補助装置 Liイオン電池(SAFT製)65kW

    表 3-3-17 GM Equinox Fuel Cell(2006年発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.796×1.814×1.760

    車両重量 2,010kg 定員 4人

    最高速度 160km/h 航続距離 320km 電動機種類 交流誘導式

    電動機最大出力 94kW 燃料電池 固体高分子形(GM製)

    燃料電池出力 93kW 燃料 圧縮水素(70MPa)

    出力補助装置 ニッケル水素電池 35kW

  • -116-

    表 3-3-18 GM CADILLAC PROVOQ FUEL CELL(2008年 1月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.580×1.850×1.703

    最高速度 160km/h 航続距離 260mile(FC)+20mile(電池) 燃料電池 第 5世代

    燃料電池出力 出力 88kW 燃料 圧縮水素(70MPa,6kg)

    出力補助装置 リチウムイオン電池,9kWh 方式 プラグインハイブリッド FCV(シリーズ)

    表 3-3-19 VW Touran HyMotion (2006年モデル)

    外 観

    最高速度 140km/h 航続距離 160km 電動機種類 ASM

    電動機最大出力 80kW 燃料電池 固体高分子形(Ballard製)

    燃料電池出力 85kW 燃料 圧縮水素(35MPa),2.6kg

    出力補助装置 高出力 Ni-MH

  • -117-

    表 3-3-20 VW space up! Blue (2007年 11月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 3.680×1.630×1.570

    重量 1,090kg 最高速度 121km/h 航続距離 155mile(FC)+65mile(電池)

    電動機最大出力 45kW 燃料電池 高温型燃料電池 燃料 圧縮水素 方式 プラグインハイブリッド FCV

    出力補助装置 Li-ion電池(プラグイン可能)

    表 3-3-21 FIAT・IRISBUS CITYCLASS HS-FC BUS

    外 観

    全長(m) 12 乗車定員 73名 最高速度 60 km/h 燃料電池 固体高分子形(UTC-FC製)

    燃料電池出力 75kW 燃料 圧縮水素(20/35MPa)

    出力補助装置 鉛酸電池

  • -118-

    表 3-3-22 FIAT Panda Hydrogen(2005年モデル)

    外 観

    乗車定員 4名 車両重量 1,390kg 最高速度 150km/h以上 航続距離 220km(Urban Cycle) 電動機 3相 ACモータ 50 kW

    燃料電池システム Nuvera製 PEFC 60kW 燃料 圧縮水素(35MPa),68L

    出力補助装置 なし

    表 3-3-23 HYUNDAI TucsonFCEV (2004年 3月発表)

    外 観

    最高速度 153km/h 航続距離 337km 燃料電池 固体高分子形(UTC-FC製)

    燃料電池出力 80kW 燃料 圧縮水素(35MPa)152L

    出力補助装置 Liポリマー電池(LGケミカル製)

  • -119-

    表 3-3-24 HYUNDAI i-Blue (2007年 9月発表)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 4.850×1.850×1.600

    最高速度 165km/h 電動機最大出力 (前)100kW,(後)20kW×2 航続距離 600km

    燃料電池出力 100kW 補助電源 スーパーキャパシタ,450V,100kW,13wh/L 燃料 圧縮水素(70MPa,115リットル)

    表 3-3-25 Van Hool A330 Fuel Cell (2005年モデル)

    外 観

    全長×全幅×全高(m) 12.192×2.591×3.480

    定員 座席数 30,定員 48名 航続距離 400~480km モータ Siemens ELFA Drive;

    AC induction motor(85kW)×2 駆動システム ISE ThunderVolt® hybrid drive system 燃料電池 UTC Power PureMotionTM120

    固体高分子形(UTC-FC製) 燃料電池出力 120kW

    燃料 圧縮水素(5000psi,50kg) SCI製 typeⅢタンク

    出力補助装置 ZEBRA®電池

  • -120-

    3-3-2 Ballard Power Systems社を中心とした提携関係

    カナダの Ballard Power Systems社は,1997年 12月に DaimlerChrysler社(当時は Daimler Benz),Ford 社と燃料電池開発連合を結成した。2008 年 1 月になって,DaimlerAG,Ford社,Ballard Power Systems社は,合弁によってカナダのバンクーバーに Automotive Fuel Cell Cooperation(AFCC)を設立した。AFCCでは自動車用FC システムの研究開発を行う。なお,製造は Ballard 社に委託する見込みである。出資比率は DaimlerAGが 50.1%,Fordが 30%,Ballard Power Systemsが 19.9%である。Ballard社における自動車用 FCの研究開発グループは AFCCに異動し,バラード社はこれによって定置用等の自動車以外の FC用途に特化することになる。

    3-3-3 欧米 PEFC関連メーカの事業の展開状況

    表 3-3-26に JARI等が過年度に実施した海外調査から推定した欧米PEFCメーカの各コンポーネント別の製品化・開発状況を整理する。

    表 3-3-26 燃料電池事業(PEFCセル関係)の展開(2008年 1月現在,推定を含む)

    高分子膜 触媒 GDL MEA ガスケット セパレータMEA+ セパレータ

    MEA+ セパレータ+ ガスケット

    スタック

    DuPont

    製品化

    製品化 製品化

    研究中 研究中 研究中 研究中 研究中

    3M

    製品化

    製品化

    研究中 研究中 研究中 研究中 研究中 研究中

    BASF(含. PEMEAS,

    Engelhard)

    製品化 製品化 製品化

    研究中

    Gore

    製品化 製品化

    研究中

    JohnsonMatthey

    製品化 製品化 製品化

    研究中 研究中 研究中

    Umicore

    製品化 製品化

    SGL-Carbon

    製品化 製品化 製品化

    Ballard Power

    Systems(定置用)

    製品化研究中 研究中 研究中 研究中 研究中

    AFCC(自動車用)

    研究中 研究中

    UTC Fuel Cells

    製品化 研究中 研究中 研究中

    Nuvera

    Fuel Cells

    製品化 製品化

    製品化研究中 研究中 研究中 研究中 研究中 研究中

    Siemens

    研究中 研究中 研究中

    注:「製品化」とは,規模を問わず,専用ラインを用いて製造し,少量でも商品として販売している段階を示す。「研究中」とは,基礎研究段階から,サンプル出荷の段階までを示す。

  • -121-

    3-4 わが国における燃料電池車開発促進に向けた取組み状況

    3-4-1 わが国政府における取組み状況

    (1) ニューサンシャイン計画注1)

    石油代替エネルギーの導入の一環として,新エネルギーの実用化にむけた技術開発が

    進められてきた。通商産業省工業技術院(現在の産業総合研究所)では,新エネルギー

    に関する研究開発の推進を目的として,1974 年に太陽光発電等の新エネルギー技術の研究開発を行う「サンシャイン計画」を,1978 年に省エネルギー技術の研究開発を進める「ムーンライト計画」,1989 年に地球環境保全技術に係る研究開発制度をスタートさせた。これらの計画により研究が,産官学の連携のもとで進められ,基本技術の確

    立やその実用化,関連分野への技術的波及等の成果を着実に実らせている。しかし,新

    エネルギー技術,省エネルギー技術,地球環境保全のそれぞれの技術には重なる部分も

    多いため,一層連係して進めていくため,1993 年に,「ニューサンシャイン計画」をスタートさせ,中,長期的に顕著な効果が期待できる革新的技術として太陽光発電や燃

    料電池などが重点的に研究されてきた。

    (2) 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)計画注2)

    WE-NET(World Energy Network)計画は,ニューサンシャイン計画の一環として,1993年より NEDOのプロジェクトとして実施された。WE-NET計画は,再生可能エネルギーを利用して水素を製造し,これをエネルギー消費地へ輸送し,この水素をエネル

    ギーとして利用するという世界規模のクリーンエネルギーネットワークを構築すること

    を最終目標とした。 WE-NET計画は,1993年度から 2002年度まで続けられ,2003年度からは新たなプロジェクトである「水素安全利用等基盤技術開発」(後述)にとってかわることになり,

    過去 10年間にわたる成果は,この新しいプロジェクトに反映されていくこととなった。

    (3) 水素安全利用等基盤技術開発

    わが国のエネルギー供給の安定化・効率化,地球温暖化問題(CO2)・地域環境問題(NOx,PM 等)の解決,新規産業・雇用の創出,水素エネルギー社会の実現等に資するため,固体高分子形燃料電池の早期の実用化・普及を目指す「固体高分子形燃料電池

    /水素エネルギー利用プログラム」の一環として,2003 年度から 2007 年度の 5 年間(2004 年度末までを前期,その後を後期と設定)実施される。2003 年度の事業規模は43億円で,2004年度は 64億円,2005年度は 39億円,2006年度は 29億円であった。 なお,2006年度の研究開発分野は以下のとおりである。

    注1) 新エネルギーガイドブック概論編新エネルギー・産業技術総合開発機構(著作権者:新エネルギー・産業技術総合開発機構)

    注2) WE-NETホームページより(http://www.enaa.or.jp/WE-NET/contents_j.html)

  • -122-

    ① 車両関連機器に関する研究開発(燃料電池自動車用機器の研究開発) ② 水素インフラに関する研究開発(70MPa級の圧縮水素や液体水素に係わる要素技術開発等)

    ③ 水素に関する共通基盤技術開発(水素利用に関する基盤横断的研究開発) A. 共通基盤技術に係わる実用化技術 B. 共通基盤技術に係わる国際共同研究及び支援研究

    (4) ミレニアム・プロジェクトにおける燃料電池関連事業

    小渕元首相の発案により,新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え,人類

    の直面する課題に応え,新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととなった。

    これを新しい千年紀のプロジェクト,すなわち「ミレニアム・プロジェクト」という。

    「ミレニアム・プロジェクト」は,今後の日本の経済社会にとって重要性や緊要性の高

    い情報化,高齢化,環境対応の三つの分野について,技術革新を中心とした産学官共同

    プロジェクトである。このプロジェクト全体の予算は 1,206 億円注)であった。FC 関連プロジェクトの大きな目標は,「2005年までに,燃料電池自動車,住宅等における燃料電池コージェネレーションシステムの導入を図る」というものであった。表 3-4-1 にスケジュールを整理する。燃料電池に関しては,平成 16年度で終了となった。

    表 3-4-1 ミレニアム・プロジェクトの「燃料電池」の年次計画

    平成12年度(2000年度)

    平成13年度(2001年度)

    平成14年度(2002年度)

    平成15年度(2003年度)

    平成16年度(2004年度)

    水素製造・貯蔵の技術開発・検証

    燃料電池の試験研究

    燃料電池の評価手法の確立

    燃料電池関連基準の整備

    評価手法確立のための調査・研究

    基準整備のための調査,検討 基準整備

    国際標準の具体的提案国際標準活動への参加・対応

    安全性,耐久性等評価手法の確立

    安全性・耐久性等の試験研究の実施と試験結果のフィードバック

    技術開発 技術実証・データ収集

    燃料優位性の比較

    注) KYODO NEWS ONLINE(1999.12.19)より。

  • -123-

    (5) 日米水素・燃料電池共同声明注1)

    2004年 1月 8日,水素・燃料電池に関する研究開発や規格・基準に係る日米間の協力を強化するため,経済産業省および米国エネルギー省の間で,日米間の協力取り決めの

    締結に向けた交渉に着手することに合意し,坂本経済産業省副大臣とエイブラハム DOE長官は,日米水素・燃料電池共同声明に署名した。 この日米水素・燃料電池共同声明は,以下に示すような内容を意図している。

    ① 燃料電池並びに水素の生産,貯蔵および輸送の技術分野において相互に決定した

    問題に関するワークショップおよびセミナーを開催し,参加するために,認識を

    ともにした政府関係者および民間を含む専門家を結集すること。 ② 専門家の交流を行い,水素燃料インフラを整備するための共通の規格,基準およ

    び規制ならびに要求に対する提言を含む,燃料電池および水素分野における現在

    の政策,技術プログラムおよび開発に関する情報を供給すること。 ③ 相互の同意により決定される追加的活動に参加すること。

    (6) 経済産業省の燃料電池実用化戦略研究会

    1999年 12月,経済産業省は,燃料電池の導入の意義を明確化するとともに,その実用化に向けた課題の抽出と課題解決の方向性を探るため,資源エネルギー庁長官の私的

    研究会として産学官から構成される「燃料電池実用化戦略研究会」(座長:茅陽一 現東京大学名誉教授)を設置した。その後 9回にわたり国内外の企業,関係団体,外国政府等による報告と,これを踏まえた議論,検討が行われ,2001年 1月 22日に開催された第 9回研究会において報告が取りまとめられた注2)。

    2004 年 3 月 11 日に開催された第 12 回研究会では,燃料電池に関する取組みの現状の報告があり,とくに定置用燃料電池に関しては,燃料電池自動車と比べ認知度が低い

    という現状が報告され,実証試験のあり方等について意見が出された。また,水素エネ

    ルギー社会の将来像(表 3-4-2,表 3-4-3),水素社会に向けた普及のシナリオ(表 3-4-4)が提案され,2005年以降の第 2フェーズに向けた考え方等が議論された。提案された水素エネルギー社会の将来像,水素社会に向けた普及のシナリオを以下に示す。

    注1) 第 12回燃料電池実用化戦略研究会資料より抜粋。 注2) 報告書の概要については,2006年度調査報告書,もしくは経済産業省「燃料電池実用化戦略研究会の報告について」(平成 13年 1月 22日)を参照。

  • -124-

    表 3-4-2 燃料電池自動車に関する将来イメージ

    フェーズ 将来イメージ ①2005~2010 (導入期)

    ・ 水素インフラの整備には相当な資金と時間を要し,当面は現実的には制約がある

    ことから燃料電池自動車は,大都市圏,および工業地域等で副生水素が比較的近

    くで得られるエリアにおいて導入が進む。 ・ この段階では都市内フリート走行車に導入が進展すると考えられ,路線バス,公

    用車等を中心に,2010年において 5万台の燃料電池自動車の導入を期待する。 ・ 想定される水素需要量は約 3.6万 t(約 4億 Nm3)であり,必要な水素ステーションは,500箇所程度(ガソリンスタンドの約 1%)と見込まれる。

    ・ 水素ステーションで供給する水素の燃料源については,基本的に各種燃料のコス

    トや燃料補給の難易度等を比較衡量して事業者が判断するものであるが,この段

    階では,水素の需要が限定的であるため,オフサイト型では副生水素のローリー

    輸送による供給,オンサイト型では化石燃料改質が中心になると想定される。 ②2010~2020 (普及期)

    ・ 水素インフラのエリアが拡大し,全国の主要都市と,その周辺地域に普及する。

    ・ 全国の路線バスと公用車に加え,業務用乗用車等に導入が進み,2020年においては 500万台の燃料電池自動車の導入が期待される。

    ・ 想定される水素需要量は約 58万 t(約 65億 Nm3)であり,必要な水素ステーションは,3,500箇所程度(ガソリンスタンドの約 7%)と見込まれる。

    ・ 水素供給の中心は,引き続き副生水素および化石燃料改質と想定される。 ・ 水素需要量が増加するため,副生水素の供給源に近くかつ大規模なステーション

    では,パイプラインによる水素の供給が始まる。 ・ 効率的な水素貯蔵技術が確立されれば,ローリー輸送によるオフサイト型水素ス

    テーションが主流となる可能性もある。 ・ 水素ステーションから近くのエリアへの直接水素供給や,ステーションに定置用

    燃料電池を設置し,電気や熱を供給するようなモデルも想定される。 ③2020~2030 (本格普及期)

    ・ 水素インフラが全国に拡大し,燃料電池自動車も全国に普及する。燃料電池自動

    車の生産拡大とコスト低下が相まって,自立的な導入が進展する。 ・ 自家用乗用車にも導入が進展し,2030年において導入が期待される燃料電池自動車は,1,500万台と見込まれる。

    ・ 想定される水素需要量は約 151万 t(約 170億 Nm3)であり,必要な水素ステーションは,8,500箇所程度(ガソリンスタンドの約 17%)。

    ・ 水素需要量が副生水素による供給可能量を上回ることとなるため,オンサイトの

    化石燃料改質に加え,再生可能エネルギーによる電気を用いた水電解による水素

    製造や,石炭ガス化ガスからの改質による水素製造も,現実的な製造方法の一つ

    となる可能性がある。 ・ 効率的な水素貯蔵材料(金属系,化学系,炭素系等)が実用化されれば,オフサ

    イト水素が大規模集中システムで製造され,水素ステーションに効率的に水素が

    輸送されるシステムが確立する。 出典:第 12回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成

  • -125-

    表 3-4-3 定置用燃料電池に関する将来イメージ

    フェーズ 将来イメージ ①2005~2010 (導入期)

    ・ 家庭用については,世帯人員や床面積の観点から,比較的熱需要が多いと想定

    される世帯に 1kWの家庭用燃料電池の導入が進むと見込む。 ・ また業務用については,既存技術である内燃機関のコージェネレーションでは

    高い発電効率が得られなかった数 kW クラスの規模を中心に,燃料電池の導入が進む。

    ・ 天然ガス,LPG,灯油等の既存のインフラを活用する形で,2010年において 220万 kWの定置用燃料電池の導入を期待する。

    ②2010~2020 (普及期)

    ・ 生産量の増加,技術開発のさらなる進展により,定置用燃料電池の価格が低下

    し,比較的熱需要の多いと想定される世帯の多くに 1kWクラスの燃料電池が導入されると見込む。

    ・ また,高温形の燃料電池の性能も向上し,業務用を含む比較的大きな規模の需

    要についても,燃料電池の導入進展が想定される。 ・ 定置用燃料電池の普及率が高まることにより,集合住宅や,工業地域等の需要

    家が密接している地域において,改質器を共有して水素を直接配管で供給する

    システムや,改質器と燃料電池を共有し,各需要家に直接電気と温水を供給す

    るようなシステムが実現することも想定される。 ・ さらに,特定の地域においては,各家庭や事業所等に設置された燃料電池を相

    互に連携制御し,熱電エネルギーの大半を域内で賄うシステム(マイクログリッ

    ド)が実現する。 ・ 2020年において導入が期待される定置用燃料電池は1,000万kWと見込まれる。

    ③2020~2030 (本格普及期)

    ・ 2020年までに導入された燃料電池は,引き続き運転を続けると想定する。 ・ また,高温型燃料電池のコンバインドサイクルによる超高効率発電が実用化し

    てくることが見込まれる。 ・ 2030 年において導入が期待される定置用燃料電池は,1,250万 kWと見込まれる。

    出典:第 12回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成

    表 3-4-4 将来に向けた普及のシナリオ

    2010年 2020年 2030年 燃料電池自動車 約 5万台 約 500万台 約 1,500万台

    定置用燃料電池 約 210万 kW

    (地球温暖化大綱

    では 220万 kW)約 1,000万 kW 約 1,250万 kW

    出典:第 12回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成 2005 年 4 月 19 日に開催された第 13 回燃料電池実用化戦略研究会においては,固体高分子形燃料電池先端基盤研究センターの設立(後述)についての報告とともに,「定

    置用燃料電池市場化戦略検討会報告書(2005年 4月 11日)」についての報告が行われた。この報告書の中で,家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの本格的普及に

    向けてはシステムコスト低減が課題であり,その中でも周辺機器(補機類)のコストダ

    ウンが重要であるとし,国が取り組むべき課題として「燃料電池用の補機に必要とされ

    るスペックの公表を行い,コストダウンにとって重要な課題である補機供給に新規企業

    の参入を促すべき」という提言が行われた。

  • -126-

    (7) 日本のエネルギー戦略

    日本の様々なエネルギー戦略の関係を図 3-4-1に整理する。

    図 3-4-1 日本のエネルギー戦略一覧

    資料:平成 19年度水素・燃料電池プロジェクト JHFCセミナー資料

    1) 新・国家エネルギー戦略

    2006年 5月,エネルギーを取り巻く内外の環境変化に関する現状認識に基づき,エネルギー安全保障を軸にわが国の新たな国家エネルギー戦略を再構築することが不可

    欠であるとの認識から,経済産業省において「新・国家エネルギー戦略」が策定され

    た。 戦略によって実現を目指す目標は以下の 3 点であり,表 3-4-5 に示すような具体的取組みを行う。

    ① 国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立 ② エネルギー問題と環境問題の一体的解決による持続可能な成長基盤の確立 ③ アジア・世界のエネルギー問題克服への積極的貢献

  • -127-

    表 3-4-5 新・国家エネルギー戦略における具体的取組み目標

    (1)世界最先端のエネルギー需給構造の確立

    およそ 50%ある石油依存度を,2030 年までに 40%を下回る水準とする。

    ①省エネルギーフロントランナー計画

    2030 年までに更に 30%,エネルギー効率の改善を目指す。

    ②運輸エネルギーの次世代化

    石油依存度を,2030 年までに 80%程度とすることを目指す。

    ③新エネルギーイノベーション計画

    太陽光発電コストを 2030 年までに火力発電並みに。バイオマスなどを活用した地産地消型取組みを支援し地域エネルギー自給率を引き上げる。など。

    ④原子力立国計画 2030 年以降においても,発電電力量に占める比率を30~40%程度以上。

    (2)資源外交,エネルギー環境協力の総合的強化 ①総合資源確保戦略 石油自主開発比率を,2030 年までに,引取量ベースで

    40%程度とする。 ②アジアエネルギー・環境

    協力戦略 省エネをはじめエネルギー協力を展開し,アジアとの共生を目指す。

    (3)緊急時対応の充実 (4)その他 資料:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」を基に作成 運輸エネルギーの次世代化計画の具体的取組みを以下にまとめる。また,運輸エネ

    ルギーの次世代化に向けた動向と課題を図 3-4-2に示す。

    エネルギー市場の変化に対し柔軟かつ強靱で,エネルギー消費効率の高い需給構造を,

    運輸部門に確立するため,以下の課題に対し,並行して,効果的に取り組むこととする。

    ① 自動車燃費の着実な改善 ⅰ) 自動車の燃費改善を促す燃費基準の策定 ⅱ) レギュラーガソリンのオクタン価向上

    ② 燃料多様化に向けた環境整備 ⅰ) バイオマス由来燃料供給インフラの整備 ⅱ) ディーゼルシフトの推進 ⅲ)バイオマス由来燃料及び GTLの一層の活用のためのインフラ整備

    ③ バイオマス由来燃料,GTL等新燃料の供給確保 ⅰ) バイオマス由来燃料の供給促進・経済性向上 ⅱ) 次世代燃料に関する技術開発促進

    ④ 電気・燃料電池自動車等の開発・普及促進 ⅰ) 電気・燃料電池自動車等の普及促進策 ⅱ) 「新世代自動車」向け電池に関する集中的な技術開発の実施 ⅲ)燃料電池自動車に関する技術開発の推進

  • -128-

    ※1 京都議定書目標達成計画において,2010 年度に,原油換算 21 万 Kl の ETBE を含め,全体として,原油換算

    50 万 Kl のバイオマス由来燃料を導入することが目標とされている。 ※2 HCCI(予混合圧縮着火燃焼)エンジンとはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を併せ持ったエンジン。NOx や粒子状物質の生成が少なく,熱効率の高いエンジンが実現できると期待されている。

    図 3-4-2 運輸エネルギーの次世代化に向けた動向と課題 出典:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」

    2) 次世代自動車・燃料イニシアティブ

    2007年 5月,経済産業省は,自動車関連の 2030年までの展望や目標を示した「次世代自動車・燃料イニシアティブ」をまとめた。これらの内容および目標は,以下の

    ようになっている。

  • -129-

    ① 運輸部門の石油依存度を現在の 100%から 2030年には 80%程度に引き下げる。 ② バイオ燃料は,建築廃材や稲ワラなどを原料にする技術開発を進め,2015 年までに製造コストを現状の 150円/L前後から 40円/Lに引き下げる。

    ③ ITを駆使した交通制御を強化し,都市部の平均速度を 2倍に引き上げる。 ④ FCVの本格普及を図るため,向こう 5年間は年間 320億円程度の研究開発を継続,1台数億円の現行価格を 2030年までにガソリン車並みの 300万円に下げる。

    ⑤ 次世代バッテリー技術開発プロジェクトの立ち上げと充電スタンドの整備,そ

    れにより 2010年にコンパクト EVを,2030年に EVの本格普及を目指す。 ⑥ クリーンディーゼル推進では,GTL,水素化バイオ軽油などの軽油系新燃料の研究開発と,2009年以降ポスト新規制に対応したディーゼル乗用車の導入。

    3) Cool Earth -エネルギー革新技術計画―

    2007年 5月に安倍総理のイニシアティブ「美しい星 50(クールアース 50)」が発表され,「世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して 2050 年までに半減する」という長期目標を提案した。この目標の実現は,従来の技術の延長では困難であり,

    革新的技術の開発が不可欠である。 このため,2050年を見通した上で,エネルギー分野における革新的な技術開発の具体的な取り組みのあり方について検討を進め,検討内容を取りまとめたものが「Cool Earth -エネルギー革新技術計画―」である。 重点的に取組むべきエネルギー革新技術を図 3-4-3に示す。

    図 3-4-3 重点的に取り組むべきエネルギー革新技術

  • -130-

    燃料電池自動車に関しては,コスト面では車両価格を 2010年に ICV比で 3~5倍,2020 年に 1.2 倍まで低減することを目指す。耐久性については,2010 年に 3,000 時間,2020年に 5,000時間まで向上させることを目指し,航続距離は 2010年で 400km,2020年で 800kmまで向上させることを目指すとしている。

    (8) 日本における燃料電池自動車・水素関連プロジェクト

    平成 19年度に実施された,日本政府主導の FCV・水素関連プロジェクトを表 3-4-6,表 3-4-7に整理する。

    表 3-4-6 平成 19年度に実施された日本政府主導のプロジェクト(1)

    分類 主体 プロジェクト名 概要 期間 H19 年度予算(億円)

    基礎 研究

    経済 産業省

    水素先端科学基礎研究事業 (Hydrogenius)

    水素の輸送や貯蔵に必須な材料に関し,水素脆化等の基本原理の解明及び対策の検討を中心とした高度な科学的知見を要する先端的研究を,国内外の研究者を結集し行うことにより,水素をより安全・簡便に利用するための技術基盤を確立する。

    H18 年度~H24 年度

    16.65

    燃料電池先端科学研究委託 (FC-Cubic)

    燃料電池の基本的反応メカニズムについての根本的な理解を深めるために,独立行政法人産業技術総合研究所において,高度な科学的知見を要する現象解析及びそのための研究体制の整備を行い,現状の技術開発における壁を打破するための知見を蓄積する。

    H17 年度~H21 年度

    9.96

    水素貯蔵材料先端基盤研究事業 (HYDRO☆STAR)

    世界トップ水準の優れた研究者を中核に,国内外の研究機関・企業バーチャルな連携の下,高圧水素貯蔵に比べコンパクトかつ効率的な水素貯蔵を可能とする水素貯蔵材料の性能向上に必要な条件等を明らかにすることにより,燃料電池自動車の航続距離の飛躍的向上を図る。

    H19 年度~H23 年度

    7.57

    文部 科学省

    次世代型燃料電池プロジェクト

    燃料電池の本格的普及に向け,高性能・低コストの高温運転型次世代燃料電池を実現する革新的材料開発と電池性能の実証を行う。

    H15 年度~H19 年度

    2.00

    ナノ構造化燃料電池用材料研究

    燃料電池の普及を加速させるために,材料の基礎に立ち返って材料中の微細構造,界面構造および表面構造などがイオン伝導度や触媒機能等に与える影響を精査し,潜在する機能を十分に発揮できるような組織制御を行って,優れたイオン伝導性,耐食性,触媒機能や機械的強度を持ち,実際の燃料電池システム,水素製造システムなどで長期にわたって使われる材料の開発を目指す。

    平成18年度~

    1.00

    技術 開発

    経済 産業省

    固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発

    自動車用,家庭・業務用等に利用される固体高分子形燃料電池の実用化・普及に向け,要素技術,システム化技術及び次世代技術等の開発を行うとともに,共通的な課題解決に向けた研究開発の体制の構築を図る。

    H17 年度~H21 年度

    51.30

    水素安全利用基盤技術開発

    燃料電池等の水素利用技術の導入・普及に資するため,水素の製造・貯蔵・輸送等に係る関連機器の信頼性・耐久性向上,小型化,低コスト化のための研究開発を行う。

    H15 年度~H19 年度

    22.53

  • -131-

    表 3-4-7 平成 19年度に実施された日本政府主導のプロジェクト(2)

    分類 主体 プロジェクト名 概要 期間 H19 年度予算(億円)

    経済 産業省

    将来型燃料高度利用研究開発

    燃料電池の普及・実用化に必要になる,効率的な石油系燃料からの水素製造技術,及び当該水素の効率的な供給システム等の開発を行う。

    H17 年度~H19 年度

    9.37

    技術 開発

    次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発

    燃料電池自動車の早期導入,プラグインハイブリッド自動車・電気自動車の実用化等に資する蓄電池技術の開発を行うことにより,蓄電池の高寿命化,高出力化,高密度化,低コスト化,安全性の向上を図る。

    H19 年度~H23 年度

    49.00

    環境省

    本庄・早稲田地域での G水素モデル社会の構築に関する技術開発

    廃シリコン,廃アルミ,バイオマス等の廃棄物を利用した G(グリーン)水素の製造,水素吸蔵合金(以下 MH)による水素精製・貯蔵・輸送システム,G 水素を利用した各種利用システム-燃料電池(以下FC)システム,FC信号機,小型FC自動車(ULFCV,COMS),FC 車椅子,FC フォークリフト,MH 自動販売機-を開発し,本庄・早稲田地域において水素エネルギー特区の認定を受け,G水素モデル社会を構築する。

    H17 年度~H19 年度

    6.21

    実証 研究

    経済 産業省

    燃料電池システム等実証研究

    実条件に近い中での燃料電池自動車の実証試験や多角的な燃料供給システムの検証を進め,水素エネルギー社会における水素利用の課題等を抽出するとともに,燃料電池・水素に対する国民的理解の醸成を図る。

    H18 年度~H22 年度

    18.00

    環境省 燃料電池自動車啓発推進事業

    市民に最も身近な地方公共団体において,燃料電池自動車のイベント展示,試乗会や学校などでの学習利用により,地域社会へ の啓発推進を図るとともに,様々な利用形態での走行による社会実験と,その活用方法について検討・実証する。

    H15 年度~ ?

    基準・ 標準化

    経済 産業省

    水素社会構築共通基盤整備事業

    固体高分子形燃料電池システム等の導入・普及に資する基盤整備のため,製品性能の試験・評価手法及び国内外の基準・標準の確立を図る。

    H17 年度~H21 年度

    25.50

    燃料電池システム普及用技術基準調査

    容器貯蔵圧力を 70MPa とした燃料電池自動車及び供給スタンドの技術基準を整備するため,会議あの規制内容を調査するとともに安全性に係わる実証試験結果の評価を行なう。

    H18 年度~H20 年度

    0.85

    国土 交通省

    燃料電池自動車実用化促進プロジェクト

    深刻な大気汚染問題を抜本的に解決し,地球温暖化対策に資する究極の低公害車である燃料電池自動車の早期普及を図るため,燃料電池自動車の世界統一基準の策定に向けて必要なデータを取得する。

    H15 年度~ 0.66

    (9) 経済産業省の「Back to Basicによる研究推進」プロジェクト

    1) 固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター(FC-Cubic)の設立

    燃料電池の重要なアプリケーションである燃料電池自動車では,技術的課題に加え,

    非常に厳しいコスト要求に直面しており,単にエンジニアリング手法に頼るのではな

    く,サイエンスの基本に立ち返った根本的な「既知の物理限界」の打破が強く求めら

    れている。こういった産業界からの要望に応え,2005年 4月,独立行政法人産業技術総合研究所に固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター(以下 FC-Cubic:Polymer Electrolyte Fuel Cell Cutting-Edge Research Center)が設置された。

  • -132-

    2005年 4月 1日から 5年間の予定で,平成 17年度の予算は約 10億円である。「電極触媒」および「セル構成要素と界面移動物質との相互作用」「電解質膜」に研究テー

    マを絞り,それぞれ燃料電池内部の基礎的・根本的な現象解析を行う。

    2) 水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)の設立

    (独)産業技術総合研究所水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)は,水素利用社会の実現を技術的に支援するため,水素と材料に関わる種々の現象を科学

    的に解明して各種データを産業界に提供するとともに,安全で簡便に水素を利用する

    ための技術指針を確立することをミッションとし平成 18 年 7 月 1 日に設立された。具体的には,産業界から提供される開発・実証から出てくる課題から,水素物性等に

    係る基本原理を解明し,水素社会実現に向けたデータベースの構築と技術基盤整備を

    行うことを目的としている。研究期間は平成18年度から平成24年度の7年間である。

    3) 水素貯蔵材料先端基盤研究事業(HYDRO☆STAR)

    水素貯蔵材料に関しては,日本は基礎研究が極めて弱い状況にある。研究者の数も

    少なく,質的にも欧米に対して劣っている状況にある。水素貯蔵材料の実用化が直近

    でないとすれば,技術よりも基礎研究に力を入れた方が得策であるし,将来応用研究

    を行なうにしても,基礎をしっかり学んだ人材を育てていかなければならない。こう

    いった危惧から,2007年度に水素貯蔵材料先端基盤研究事業が開始された。 参加団体は,産業技術総合研究所と,文科省管轄の大学と団体。具体的な目標は設

    定されていない。材料開発を目標とはせず,材料開発を担当する水素安全利用等基盤

    技術開発の研究などで生じた問題に対して支援を行うことを想定している。また,こ

    のプロジェクトでは各団体のエース級の人材を集めて仮想的な組織を作り,各エース

    は自らの組織に所属しつつ,持ち帰りで事業に参加してもらうというように進めてい

    く方針だという注)。

    (10) 経済産業省の「家庭用燃料電池システム周辺機器(補機類)の仕様リスト」

    第 13回燃料電池実用化戦略研究会において報告された「定置用燃料電池市場化戦略検討会報告書(2005年 4月 11日)」の中で,家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの本格的普及に向けて国が取り組むべき課題として「燃料電池用の補機に必要とさ

    れるスペックの公表を行い,コストダウンにとって重要な課題である補機供給に新規企

    業の参入を促すべき」と提言されている。 経済産業省はこの提言を受け,家庭用燃料電池システムの周辺機器(補機類)に求め

    られる仕様(スペック)について,システムメーカへのアンケート調査等の結果からと

    注) 参考資料-XXX参照

  • -133-

    りまとめ,4月 21日に公表した。さらに,共通仕様リストは,その後の状況変化を踏まえつつ,さらに共通化を推進するために,あらためて要求スペックを精査し,ほぼ一本

    化された「家庭用燃料電池システム関連補機類の共通仕様リスト」として 12月 27日に公表した。

    2008年 1月には,新しい共通仕様リストが発表された。これは,2005年以降の状況変化等を踏まえつつ,更に共通化を推進するために改めて要求スペックを精査し,ほぼ

    一本化された「共通仕様」として公表されたものである。各補機について,簡単な説明

    と要求スペック(2008年 1月時点の最新情報に基づいたもの)および目標コスト(これは 1万台生産時の 1台あたりのコスト)が記されている。 ここで,周辺機器に要求されるポイントは,以下の 5点であるとされている。

    ① 低消費電力 ② 運転範囲(出力の範囲が 100~20%程度まで広くとれること,低負荷時においても流量制御等の性能が変動しないこと)

    ③ 長時間耐久性(最終目標として 10年程度あるいは 6~7万時間) ④ 環境性(低騒音,低振動等) ⑤ 低コスト(上記①~④を維持しつつ低コスト化を追求)

    (11) NEDO技術開発機構および経済産業省による燃料電池車に関するロードマップの策定注)

    NEDO技術開発機構では,平成 17年 6月に,エネルギー分野のうち,燃料電池・水素,バイオマスエネルギー,太陽光発電について,2020年頃までを視野に入れ,技術ロードマップを策定した。 燃料電池・水素技術分野を巡る状況は刻一刻変化しているとの認識から,見直しを行

    い,平成 18年 6月には燃料電池・水素技術開発ロードマップ Ver.2を作成した。図 3-4-4に自動車用 PEFCに関するロードマップを示す。 また経済産業省では,平成 17年 10月に 2100年までの長期的視野から地球的規模で将来顕在化することが懸念される資源制約・環境制約をのり越えるために求められる技

    術の姿を将来から逆算(バックキャスト)することによって,「技術戦略マップ~超長

    期的エネルギー技術ビジョン~」を描き出している(図 3-4-5,図 3-4-6)。 平成 18年 4月,経済産業省は「技術戦略マップ 2006」を公表した。自動車関連では,高出力スーパーキャパシターや二次電池の高性能・長寿命化などが対象となっている。

    注) その他のロードマップについては 4-1-2節参照。

  • -134-

    図 3-4-4 NEDOによる PEFC(自動車用)の技術ロードマップ 出典:「2006燃料電池・水素技術開発ロードマップ」NEDO

    ※点線は R&D 段階,実線は商用開始以降

    図 3-4-5 燃料電池自動車関連の経済産業省の技術戦略マップ 出典:経済産業省 HPより

  • -135-

    ※点線は R&D 段階,実線は商用開始以降

    図 3-4-6 水素貯蔵技術および水素供給技術における経済産業省の技術戦略マップ 出典:経済産業省 HPより

    (12) 経済産業省の固体高分子形燃料電池システム実証等研究

    経済産業省の「固体高分子形燃料電池システム実証等研究」注)は,燃料供給インフラ

    を含めた燃料電池利用システムの実証等研究を支援する事業であり,平成 14年度から 3年間の計画でスタートした。この事業では,燃料電池本体だけでなく,燃料供給インフ

    ラも含めて,実使用条件における技術的課題を抽出するとともに,環境特性,エネルギー

    総合効率,燃料性状,安全性等に関するデータを取得し,得られた情報等を開発・普及

    施策に反映させていくことを目的としている。平成 14 年度には 20 億円,平成 15 年度には 25億円が投入された。 この事業は 3つの実証研究で構成されている(図 3-4-7)。

    注) 平成 15年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFCセミナー(2004年 3月 12日)資料

  • -136-

    経済産業省

    燃料電池自動車実証研究 実施者:財団法人日本自動車研究所

    燃料電池自動車用水素供給設備実証研究 実施者:財団法人エンジニアリング振興協会

    定置用燃料電池実証研究 実施者:財団法人新エネルギー財団

    JHFCプロジェクト

    図 3-4-7 固体高分子形燃料電池システム実証等研究の実施体制

    出典:平成 15年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFCセミナー(2004年 3月)資料を基に作成 燃料電池自動車実証研究では,財団法人日本自動車研究所注)(JARI)を中心として,平成 14年度から 17年度にかけて,国内外の燃料電池車および国内 12箇所の水素供給ステーションでの走行試験を行った。なお,平成 16 年度には,愛知県で開催された万国博覧会「愛・地球博」会場に 2箇所設置された水素ステーションを使い,会場間の移動手段として燃料電池バス 8台による運行を行った。 燃料電池自動車用水素供給設備実証研究では,財団法人エンジニアリング振興協会

    (ENAA)を中心として,水素供給ステーションの設置・運営および液体水素製造実証研究を行った。この 2つの実証研究は,水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFCプロジェクト:Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)として,共同で進められた。

    JHFCプロジェクトは当初平成 14年度から平成 16年度までの 3ヶ年の予定であったが,1 年延長し平成 17 年度まで続けられた(詳細は 3-4-2 節(2):水素・燃料電池実証プロジェクト参照)。平成 18 年度からは,「燃料電池システム等実証研究」(第 2期 JHFC プロジェクト)として引き継がれている。JHFC プロジェクトにおける FCVの実証走行試験の状況については後述する。 また,定置用燃料電池実証研究では,財団法人新エネルギー財団(NEF)を中心に,平成 14年度から 16年度まで定置用燃料電池コージェネレーションシステムの実証研究が行われた。そして,平成 17 年度からは,600 万円/台を上限として補助する「定置用燃料電池大規模実証事業」へと移行し,日本全国で第 1期,第 2期あわせて 480台が導入された。平成 18 年度は 450 万円/台を上限として補助が行われ,777 台が,平成 19年度には 350万円/台を上限として 930台が導入された。(詳細は 3-6-1節参照)

    注) 平成 14年度は財団法人日本電動車両協会(JEVA)が実施主体となっていたが,平成 15年 7月 1日の財団法人日本自動車研究所(JARI)との統合化により平成 15年度以降の実施主体は JARIとなっている。

  • -137-

    (13) 燃料電池関連の予算

    平成 19 年 12 月 24 日に公表された経済産業省平成 20 年度予算の概要注)等より,燃料電池関連予算を抽出したものを平成 19年度予算と併せて表 3-4-8に整理した。 定置用燃料電池大規模実証事業は予算を縮小して,継続して行われる。全体的な傾向

    としては,平成 19年度とほぼ同程度の予算が組まれている。 また,平成 20年度から「水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発」「固体酸化物燃料電池システム要素技術開発」「将来型燃料高度利用技術開発」が新規事業として計上

    された。

    表 3-4-8 平成 20年度燃料電池関連予算(単位:億円)

    平成 19年度 平成 20年度 伸び率 (%)

    資源エネルギー関係 新エネルギーの導入促進 1,065 1,113 △ 4.5 (内) 燃料電池・水素に係る技術開発

    ・導入促進等301 289 ▼4.0

    (内)水素貯蔵材料先端基盤研究事業 7.57 9.08 △19,9 (内)燃料電池先端科学研究委託費 9.96 9.00 ▼ 9.6 (内)水素先端科学基礎研究事業 16.65 17.50 △ 5.1 (内)水素安全利用基盤技術開発 22.53 - - (内)水素製造・輸送・貯蔵システム等

    技術開発-

    17.00 (新規) 新規

    (内)固体高分子形燃料電池 実用化戦略的技術開発

    51.30 66.69 △30.0

    (内)燃料電池システム等実証研究 18.00 13.00 ▼28.8 (内)定置用燃料電池大規模実証事業 34.20 27.11 ▼20.7 (内)水素社会構築共通基盤整備事業 25.50 14.00 ▼45.1 (内)セラミックリアクター開発 4.50 - - (内)固体酸化物形燃料電池システム

    技術開発15.30 - -

    (内)固体酸化物燃料電池システム 要素技術開発

    -13.50

    (新規) 新規

    (内)固体酸化物燃料電池実証研究 7.65 8.00 △ 4.6 (内)新利用形態燃料電池技術開発 3.40 2.50 ▼26.5 (内)将来型燃料高度利用研究開発 9.37 - - (内)将来型燃料高度利用技術開発 - 6.00

    (新規) 新規

    (内)次世代蓄電システム実用化 戦略的技術開発

    49.00 53.00 △ 8.2

    出典:経済産業省「平成 20年度資源エネルギー関係予算案の概要」(2007年 12月),総合科学技術会議「第 72回総合科学技術会議配布資料 1-2『優先度判定等を実施した科学技術関係施策の平成 20年度予算案』」を基に作成

    注)経済産業省発表資料「平成 20年度経済産業省予算の概要」(2007年 12月)

  • -138-

    (14) 地方公共団体における取組み

    表 3-4-9~表 3-4-12に地方公共団体における燃料電池関連への取組みを整理する。

    表 3-4-9 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 1)

    青森県

    2005年 12月 14日の電気新聞によると,青森県は 12月 13日,“あおもり水素エネルギー創造戦略”をまとめた。将来的な水素エネルギー社会への移行を念頭に,原子力発電や風力

    発電,農林水産資源などから水素を生産,FC の活用を通して県内産業の底上げを図ろうとする内容である。さらに戦略では水素製造にかかる固定資産税の減免や遊休公有地の貸与な

    ど公的支援の必要性を謳っている。また,CO2を排出しない水素製造を実現するために,原子力発電から水素を取り出す技術の意義についても言及している。

    秋田県注1)

    燃料電池・水素関連産業の創出に向けて,ものづくりの技術を活かした取組みや,製品開

    発や技術研究など,燃料電池関連産業分野への参入に取り組む県内企業を積極的にバック

    アップし,より具体的な産業創出に繋げるための推進組織として,2005年 12月 6日に「秋田県燃料電池関連産業導入促進協議会」を設立した。

    東京都

    東京都では,2003年 8月 28日より,わが国で初めて FCバスが営業運行を開始した注2)。運行台数は 1台で,東京駅八重洲口-東京テレポート駅,または門前仲町-東京テレポート駅の路線を 1日数往復した。しかし,2004年 6月,同バスと同じ構造の FCV用高圧水素タンクに水素洩れが発生したため,トヨタ自動車が FCBを回収したため運行を停止した。 その後,7月から運行を再開した。また,10月 1日からは霞ヶ関や銀座三越前での運行を

    行った。晴海ふ頭-勝どき駅前,銀座4丁目-東京駅の路線を 1日 1往復,晴海ふ頭-銀座4丁目-四ツ谷駅の路線を 1日 2往復した。10月 16日からはメーカからの引き取り要請によって運行を休止したが,高圧水素タンクの交換および安全確認が行われ,12月 21日より門前仲町-東京テレポート駅での運行が再開され,営業運行試験の終了日である 2004年 12月 28日まで運行された。 この事業は都の「水素供給ステーションパイロット事業」ならびに経済産業省の「水素・

    燃料電池実証プロジェクト」および国土交通省の「燃料電池自動車実用化促進プロジェクト」

    と連携し実施された。FCバスはトヨタ自動車,日野自動車の「FCHV-BUS2」であった。また 2006年 4月 3日,「東京都再生可能エネルギー戦略」注3)を策定した。この中で,

    「都内の水素供給ステーション施設を活用し燃料電池自動車の普及を図っていくとともに,

    再生可能エネルギーを活用した水素供給のあり方について検討を進める」としている。 東京都 練馬区注4)

    2006年 12月より練馬区内の住宅に家庭用の燃料電池装置を設置する場合,上限 10万円として工事費の一部を補助する事業を開始した。

    東京都 荒川区注5)

    2006 年 5 月,エコ助成金制度として,区民や事業者による環境に配慮した設備の導入を支援するための助成を始めた。1kW級家庭用燃料電池装置については,助成限度額 10万円として設置経費の半額の助成補助が受けられる。2007年 3月 16日までに設置完了することが条件。

    つくば市

    つくば市では,2005 年開通予定のつくばエクスプレス沿線で新エネルギー機器の導入の促進を図るとともに,市民生活・地域社会と密着した新エネルギー研究開発の促進を図る構

    造改革特別区域計画(つくば市新エネルギー特区)が平成 15 年 8 月に認定された注6)。この特区では,2019年ごろまでに 400戸以上の家庭用燃料電池の導入を目標に掲げている。特区では,電気事業法上の家庭用 FCの設置に関する規制を一部緩和し,保安規定の届出と電気主任技術者の選任を不要とする措置が取られる。また,不活性ガスボンベの常備義務も

    撤廃される。

    注1) 秋田県 HPより 注2) 東京都広報資料等より 注3) 東京都「東京都再生可能エネルギー戦略-エネルギーで選びとる持続可能な未来―」2006.4 注4) 練馬区 HPより 注5) 荒川区 HPより 注6) 構造改革特別区域推進本部 HPより

  • -139-

    表 3-4-10 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 2)

    静岡県

    静岡県は,燃料電池・水素エネルギーの先進県となることを目指し,2001 年に「燃料電池・水素エネルギー研究会」を発足させた。県として何ができるか,何をなすべきかなどに

    ついて検討を行い,平成 14年 3月に報告書をまとめている。報告書では,県の取組みの試案として,大きく①燃料電池の普及の促進,②研究開発の支援,③新産業の創出などの支援,

    ④燃料供給インフラ整備の検討の 4 項目を掲げている。④のインフラ整備の検討については,国,民間企業等との連携により,水素供給ステーションやパイプライン等のモデル施設

    についての検討,住宅団地等への燃料電池の導入支援を挙げている。平成 15 年度,それまでの 2年間の研究会の活動を基盤として,この分野に強い関心を持つ企業,大学,行政等を対象とした会員制の「しずおか燃料電池・水素エネルギーパートナーシップ」を創設した注

    1)。 また,平成 15年 3月に策定された「しずおか新エネルギー等導入戦略プラン」において,

    2010年度までに燃料電池 7.24万キロワットの導入を目指すとしている。更に平成 17年度からは,燃料電池の理解促進・普及啓発を図るため,県内の燃料電池関連企業の協力により,

    高校生を対象とした「ECOエネルギー・スクール」を開催している。注2) 燃料電池の開発,利活用などの研究を目指し産学官が連携する「静岡燃料電池技術研究会」

    の設立総会が 2006年 12月 8日,静岡ガス総合技術研究所(静岡市駿河区)で開催された。県,静岡工業技術センター,静岡大をはじめ,燃料電池の研究を進める飲料メーカ,部材供

    給を目指す部品メーカなど 20社前後の企業が参加する見込み。注3)

    愛知県

    平成 17年 2月に「愛知県水素エネルギー産業協議会」を設立した。地域分散型実証モデルの提案・検討,水素供給および燃料電池技術課題の各種研究会活動,プロジェクトの立ち

    上げ,ならびに情報発信などの事業を行う。その一環として,愛知県は知多市,東海市と共

    同で「知多地域水素インフラ活用研究会」を 11月 9日に立ち上げた。製鉄所や製油所,LNG基地,都市ガス等水素供給インフラを活用した新エネルギーシステムの形成,在り方につい

    ての検討を行う。 FCVの普及に向け,官民一体となって関連プロジェクトを推進する「あいち FCV普及促

    進協議会」が平成 17年 7月 1日に発足した。愛知県や豊田市,常滑市,新日本製鉄,東邦ガス,トヨタ自動車,大陽日酸が参加し,今後の燃料電池自動車に係るプロジェクトの企画

    提案や普及啓発などの取組みを行うという。 また,平成 17年 11月,燃料電池の開発に取り組む地域中小企業に対し,試作品の特性評

    価,技術相談・指導,情報提供,材料研究など,総合的な支援を行う窓口を設置し,地域産

    業の競争力強化と新産業の創出に資することを目的とする「燃料電池トライアルコア」を,

    愛知県産業技術研究所内に開設した。都道府県の試験研究機関が燃料電池に特化した技術支

    援拠点を開設するのは,全国で初めてのことである。注4) 愛知県は 2006年 7月 5日,名古屋市中区の県公館に設置した家庭用燃料電池の実証試験

    の開所式を行い,「愛知県小型燃料電池実証試験」をスタートした。この家庭用 FCは,日本ガス協会が「愛・地球博」に出品したものを移設している。また,2006 年 8 月には「あいち臨空新エネルギー研究発電所」を開設した。愛知万博会場において長久手日本館などに

    電力供給を行っていたプラントを,中部臨空都市(空港対岸部)に移設して実証研究の継続

    をはかるもので,常滑市役所等へ電力を供給する。注5)

    大阪府注6)

    大阪府は,平成 15年 9月,エネルギーや環境対策面から次世代の自動車として期待が高まっている燃料電池自動車の普及促進を図るため,在阪の関係機関(近畿経済産業局,近畿

    運輸局,大阪府,大阪市,岩谷産業,ダイハツ工業,大阪ガス,(財)都市交通問題調査会)

    で組織される「おおさか FCV 推進会議」を設立した。都市再生と自動車公害対策の面から官民が連携して独自のプロジェクトを展開し,水素ステーションの設置と府内での走行試験

    に乗り出す。 平成 16年 6月に庁用車としてダイハツMOVE FCVを導入,平成 17年 10月にはトヨタ

    FCHVを導入し,普及啓発活動に活用している。

    注1) しずおか新エネルギー情報 HPより。 注2) 静岡県 HP 注3) 静岡新聞オンライン記事(2006.12.7)より 注4) 愛知県 HPより 注5) 愛知県産業労働部新産業課 HPより 注6) 大阪府広報資料,新聞報道より

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    表 3-4-11 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 3)

    三重県

    三重県は,平成 15 年 4 月 21 日,三重県四日市市および川越町,楠町全域