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11 12 日本と東・東南アジアとの接点に位置する島嶼県沖縄は、 国内有数の長寿地域として知られていました。しかし2013 年の都道府県別平均寿命は女性が1位から後退して3位、男 性は30位であり、「330ショック」として沖縄の医療関係者 に大きな衝撃を与えました。要因として食生活の変化によ る生活習慣病の増加が挙げられます。一方で沖縄県の島嶼 部は高齢化が進んでおり、高齢者医療の充実が大きな課題 となっています。 保健学科は看護師、保健師、助産師、養護教諭を養成する 看護コースと臨床検査技師、健康食品管理士を養成する検 査技術コースからなり、沖縄県の健康長寿の復活を目指し、 また沖縄県民が安心して医療を受けられるよう、地域医療、 保健医療に貢献する人材を育成しています。学生は経験豊 かな教員陣から広範囲な知識を得る一方、早い時期から地 域医療機関での実習を行うことで、高い実践力を養い、地域 に根付いた医療が出来るよう実力を蓄えていきます。その ほか東南アジアの国々との交流を経て、グローバルな視点 から地域問題を考えていく力を養います。 保健学科は沖縄県の地域医療を牽引するリーダー、教育・ 研究に携わる教員、国際社会で活躍するグローバル人材の 育成に努めています。 医学教育企画室は、質の高い医療人の輩出および沖縄県の医療 水準向上のために、医学教育カリキュラム、臨床実習プログラムな ど学生の医学教育全般に関する企画・立案を行う事をミッション としています。室長(併任)の他、常勤教員2名と10名程度の企画 室員(併任)、事務員4名によって構成され、医療現場におけるコ ミュニケーション能力や初歩的診察スキルの取得を目的としたシ ミュレーション演習、将来のキャリア・パスについて考える医学概 論、チーム基盤型学習(TBL)形式でのチュートリアル学習に加え、 各種実習外来患者付添実習、体験学習(療養型施設 訪問見学実 習)、離島地域病院実習、離島診療所および海外の大学での参加型 臨床実習も積極的に行っています。医学科5年次・6年次の総合試 験の取りまとめも行い、医師国家試験合格率の向上も目指してい ます。また学務課と協力し、医学科4年次対象の共用試験(CBT・ OSCE)、医学科6年次対象の診療参加型臨床実習後客観的臨床能 力試験(Post-CC OSCE)の企画・ 運営にも関わっています。常に 医学生と向き合い、学習支援、修 学相談等を行い、グローバルな 基準に対応した医学教育を提供 できるよう努めています。 医学研究科は、近年の医学・医療のダイナミックな変化 や社会的なニーズに対応できる自己改新力と生涯持続力 を持った優れた人材を育成することを目的としていま す。博士課程では、健康長寿や新興感染症問題等の沖縄の 地域に根ざした問題やES細胞・iPS細胞の確立により近年 著しく進歩している再生・発生分野の研究等、研究プロ ジェクトに対応したコースワーク・リサーチワークを編 成しました。修士課程では、この新しい教育課程を取り入 れ、博士課程と連携した体系的な教育プログラムを提供 しています。 保健学研究科は、1986年に国立大学2番目の保健学専攻の 大学院として設置された伝統ある研究科で、数多くの優れ た人材を輩出して沖縄県の公衆衛生の向上、保健医療の発 展のために多大な貢献をしてきました。2007年に博士課程 を設置し、現在の保健学研究科保健学専攻博士前期課程・博 士後期課程となりました。本研究科は、心身ともに豊かな健 康・長寿に資する高度な研究能力を有する保健学分野の研 究者および指導者を養成することを目指しています。修了 生からは保健医療機関、行政のリーダーだけでなく、研究や 教育に携わる大学教員も数多く輩出しています。 沖縄県は今、多くの離島から成る亜熱帯・島嶼県とい う地域特性から、地域医療の充実とともに、地域特有の 感染症や急速な国際化に伴う新興感染症、本県に特徴的 な悪性腫瘍などに対抗する予防医学や先進医療の構築 が急務の課題となっています。琉球大学医学部附属病院 では「病める人の立場に立った、質の高い医療を提供す るとともに、国際性豊かな医療人を育成する」という理 念に基づき、患者本位の質の高い医療を提供できる医療 人の養成、 “高い専門性”や“豊富な知識”に基づく総合力 を発揮し先進医療の開発・推進を担う人材の養成に努め ています。また、琉球大学医学部附属病院では沖縄の医 療特性に根ざし、生活習慣や環境の変化・感染や腫瘍が健 康障害をもたらす分子メカニズムについて最先端医学を 通して多面的に習得できる研修・教育システムをも充実 させています。 熱意のある指導者のもと屋根瓦式の教育体制により、 基本的臨床能力(知識、技能、態度)の修得に加え、専門性 の高い予防医学や先進医療、臨床研究への応用力や国際 化への適応能力を獲得し、時代の要請や地域社会のニー ズに応えられる幅広いステージで活躍できる“多様な医 療人”を輩出していきます。 おきなわクリニカルシミュレーションセンターは、沖縄県 全域での医学・医療教育、医療安全、医療従事者の技術養成・ 維持・向上を目的として、平成24年3月に設立され、県内の臨 床研修指定病院を中心とした多くの医療機関、教育機関に利 用が広がっています。 過去4年間のセンターでの指導者養成セミナー・ワーク ショップで多くのインストラクターが育ち、医学教育に関与 しています。医学生、看護学生、医師、看護師のほか、薬剤師、 歯科医師、養護教諭、助産師、検査技師、臨床工学技士など幅 広い職種にわたり利用されています。 利用実績としては、平成24年度13,777人、平成25年度 14,837人、平成26年度16,669人、平成27年度16,859人、平成28 年度18,708人と着実に利用者が増えています。海外、県外か らの利用者も過去3年間で2,606人となり利用者全体の約5% を占めています。 基本トレーニングからアドバンストコースまでさまざま なシミュレーションレベルに対応できるよう多くのシミュ レーターが揃えられています。シミュレーション教育は技能 の獲得のみならずチーム医療や医療安全を理解するために も特に重要です。医療安全を保つことは病院の最も重要な役 目であり、今後さらに多くの 方々に利用して頂けるよう改 善を進めたいと思います。 各種情報については、 http://okinawa -clinical-sim.org/ をご参照ください。 保健学研究科は、人間健康開発学と国際島嶼保健学の2領 域で構成されており、沖縄県の社会文化的環境および亜熱 帯性自然環境を基盤とした健康・長寿の維持増進および再 生に資する研究や健康資源の解明に関する研究、アジア・太 平洋地域の島嶼・僻地・地域保健の課題とその対策に関する 研究などのユニークなテーマに取り組んでいます。この2つ の領域は互いに融合し、亜熱帯性自然環境を基盤とした研 究から得られた成果は、アジア・太平洋・アフリカ諸国での 保健医療の増進に寄与し、さらに僻地での教育活動を通し てそれらを支える人材の育成にも貢献しています。 南に開かれた研究科として、現在アジア・太平洋諸国の研 究機関と積極的な人材交流と共同研究を推進しています。 フィリピン大学、タイ・チェンマイ大学、ラオス健康科学大 学とは交流協定を締結し、学生交流、共同研究が活発に行わ れています。また国費留学生特別プログラムの下、これらの 大学出身者を大学院生として迎え、グローバルヘルスに関 する研究を推し進めています。 保健学研究科修了生が世界に羽ばたき、各国の保健医療 機関さらには WHOで施策に 携わるなど、グ ローバルに活 躍する人材の 育成を目指し ます。 教育における特色 医学教育 (医学教育企画室) 医学教育 (医学教育企画室) 長寿県沖縄の島嶼地域医療人材養成 (保健学科) 長寿県沖縄の島嶼地域医療人材養成 (保健学科) 臨床教育 (附属病院) 臨床教育 (附属病院) シミュレーション教育 (附属病院) おきなわクリニカルシミュレーションセンター シミュレーション教育 (附属病院) おきなわクリニカルシミュレーションセンター アジア・太平洋地域との学術交流 (保健学研究科) アジア・太平洋地域との学術交流 (保健学研究科) 医学研究科・保健学研究科 医学研究科・保健学研究科 教育・研究・診療の特色 Education, Research and Clinic Education, Research and Clinic 3

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Page 1: 3 and Clinic · 習)、離島地域病院実習、離島診療所および海外の大学での参加型 臨床実習も積極的に行っています。医学科5年次・6年次の総合試

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 日本と東・東南アジアとの接点に位置する島嶼県沖縄は、国内有数の長寿地域として知られていました。しかし2013年の都道府県別平均寿命は女性が1位から後退して3位、男性は30位であり、「330ショック」として沖縄の医療関係者に大きな衝撃を与えました。要因として食生活の変化による生活習慣病の増加が挙げられます。一方で沖縄県の島嶼部は高齢化が進んでおり、高齢者医療の充実が大きな課題となっています。 保健学科は看護師、保健師、助産師、養護教諭を養成する看護コースと臨床検査技師、健康食品管理士を養成する検査技術コースからなり、沖縄県の健康長寿の復活を目指し、

また沖縄県民が安心して医療を受けられるよう、地域医療、保健医療に貢献する人材を育成しています。学生は経験豊かな教員陣から広範囲な知識を得る一方、早い時期から地域医療機関での実習を行うことで、高い実践力を養い、地域に根付いた医療が出来るよう実力を蓄えていきます。そのほか東南アジアの国々との交流を経て、グローバルな視点から地域問題を考えていく力を養います。 保健学科は沖縄県の地域医療を牽引するリーダー、教育・研究に携わる教員、国際社会で活躍するグローバル人材の育成に努めています。

 医学教育企画室は、質の高い医療人の輩出および沖縄県の医療水準向上のために、医学教育カリキュラム、臨床実習プログラムなど学生の医学教育全般に関する企画・立案を行う事をミッションとしています。室長(併任)の他、常勤教員2名と10名程度の企画室員(併任)、事務員4名によって構成され、医療現場におけるコミュニケーション能力や初歩的診察スキルの取得を目的としたシミュレーション演習、将来のキャリア・パスについて考える医学概論、チーム基盤型学習(TBL)形式でのチュートリアル学習に加え、各種実習外来患者付添実習、体験学習(療養型施設 訪問見学実習)、離島地域病院実習、離島診療所および海外の大学での参加型

臨床実習も積極的に行っています。医学科5年次・6年次の総合試験の取りまとめも行い、医師国家試験合格率の向上も目指しています。また学務課と協力し、医学科4年次対象の共用試験(CBT・OSCE)、医学科6年次対象の診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験(Post-CC OSCE)の企画・運営にも関わっています。常に医学生と向き合い、学習支援、修学相談等を行い、グローバルな基準に対応した医学教育を提供できるよう努めています。

 医学研究科は、近年の医学・医療のダイナミックな変化や社会的なニーズに対応できる自己改新力と生涯持続力を持った優れた人材を育成することを目的としています。博士課程では、健康長寿や新興感染症問題等の沖縄の地域に根ざした問題やES細胞・iPS細胞の確立により近年著しく進歩している再生・発生分野の研究等、研究プロジェクトに対応したコースワーク・リサーチワークを編成しました。修士課程では、この新しい教育課程を取り入れ、博士課程と連携した体系的な教育プログラムを提供しています。

 保健学研究科は、1986年に国立大学2番目の保健学専攻の大学院として設置された伝統ある研究科で、数多くの優れた人材を輩出して沖縄県の公衆衛生の向上、保健医療の発展のために多大な貢献をしてきました。2007年に博士課程を設置し、現在の保健学研究科保健学専攻博士前期課程・博士後期課程となりました。本研究科は、心身ともに豊かな健康・長寿に資する高度な研究能力を有する保健学分野の研究者および指導者を養成することを目指しています。修了生からは保健医療機関、行政のリーダーだけでなく、研究や教育に携わる大学教員も数多く輩出しています。

 沖縄県は今、多くの離島から成る亜熱帯・島嶼県という地域特性から、地域医療の充実とともに、地域特有の感染症や急速な国際化に伴う新興感染症、本県に特徴的な悪性腫瘍などに対抗する予防医学や先進医療の構築が急務の課題となっています。琉球大学医学部附属病院では「病める人の立場に立った、質の高い医療を提供するとともに、国際性豊かな医療人を育成する」という理念に基づき、患者本位の質の高い医療を提供できる医療人の養成、“高い専門性”や“豊富な知識”に基づく総合力を発揮し先進医療の開発・推進を担う人材の養成に努めています。また、琉球大学医学部附属病院では沖縄の医

療特性に根ざし、生活習慣や環境の変化・感染や腫瘍が健康障害をもたらす分子メカニズムについて最先端医学を通して多面的に習得できる研修・教育システムをも充実させています。 熱意のある指導者のもと屋根瓦式の教育体制により、基本的臨床能力(知識、技能、態度)の修得に加え、専門性の高い予防医学や先進医療、臨床研究への応用力や国際化への適応能力を獲得し、時代の要請や地域社会のニーズに応えられる幅広いステージで活躍できる“多様な医療人”を輩出していきます。

 おきなわクリニカルシミュレーションセンターは、沖縄県全域での医学・医療教育、医療安全、医療従事者の技術養成・維持・向上を目的として、平成24年3月に設立され、県内の臨床研修指定病院を中心とした多くの医療機関、教育機関に利用が広がっています。 過去4年間のセンターでの指導者養成セミナー・ワークショップで多くのインストラクターが育ち、医学教育に関与しています。医学生、看護学生、医師、看護師のほか、薬剤師、歯科医師、養護教諭、助産師、検査技師、臨床工学技士など幅広い職種にわたり利用されています。 利用実績としては、平成24年度13,777人、平成25年度14,837人、平成26年度16,669人、平成27年度16,859人、平成28年度18,708人と着実に利用者が増えています。海外、県外か

らの利用者も過去3年間で2,606人となり利用者全体の約5%を占めています。 基本トレーニングからアドバンストコースまでさまざまなシミュレーションレベルに対応できるよう多くのシミュレーターが揃えられています。シミュレーション教育は技能の獲得のみならずチーム医療や医療安全を理解するためにも特に重要です。医療安全を保つことは病院の最も重要な役目であり、今後さらに多くの方々に利用して頂けるよう改善を進めたいと思います。 各種情報については、http://okinawa -clinical-sim.org/をご参照ください。

 保健学研究科は、人間健康開発学と国際島嶼保健学の2領域で構成されており、沖縄県の社会文化的環境および亜熱帯性自然環境を基盤とした健康・長寿の維持増進および再生に資する研究や健康資源の解明に関する研究、アジア・太平洋地域の島嶼・僻地・地域保健の課題とその対策に関する研究などのユニークなテーマに取り組んでいます。この2つの領域は互いに融合し、亜熱帯性自然環境を基盤とした研究から得られた成果は、アジア・太平洋・アフリカ諸国での保健医療の増進に寄与し、さらに僻地での教育活動を通してそれらを支える人材の育成にも貢献しています。 南に開かれた研究科として、現在アジア・太平洋諸国の研究機関と積極的な人材交流と共同研究を推進しています。フィリピン大学、タイ・チェンマイ大学、ラオス健康科学大

学とは交流協定を締結し、学生交流、共同研究が活発に行われています。また国費留学生特別プログラムの下、これらの大学出身者を大学院生として迎え、グローバルヘルスに関する研究を推し進めています。 保健学研究科修了生が世界に羽ばたき、各国の保健医療機関さらにはWHOで施策に携わるなど、グローバルに活躍する人材の育成を目指します。

教育における特色医学教育(医学教育企画室)医学教育(医学教育企画室)

長寿県沖縄の島嶼地域医療人材養成(保健学科)長寿県沖縄の島嶼地域医療人材養成(保健学科) 臨床教育(附属病院)臨床教育(附属病院)

シミュレーション教育(附属病院)おきなわクリニカルシミュレーションセンターシミュレーション教育(附属病院)おきなわクリニカルシミュレーションセンターアジア ・ 太平洋地域との学術交流(保健学研究科)アジア ・ 太平洋地域との学術交流(保健学研究科)

医学研究科・保健学研究科医学研究科・保健学研究科

教育・研究・診療の特色 Education, Research and Clinic

Education, Research and Clinic3