3 マラウイの概要・概況 - ministry of foreign...

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24 3マラウイの概要・概況 3-1 マラウイの開発状況 3-1-1 政治経済状況 1. 政治体制 1政治 マラウイは,1964 年に英国から独立を果たした。そして,独立から 2 年後の 1966 年に,マラ ウイ会議党による一党独裁制の国家体制が敷かれた。初代大統領にはヘイスティング・カム ズ・バンダが選出され,1994 年まで 30 年近くの長期間にわたり,独裁体制が維持された。バン ダ大統領は,南アフリカ共和国と通商条約を結び,台湾やイスラエルとも国交を深めるなど,積 極的に独自の外交政策を推進した。1971 年にバンダ大統領は「終身大統領」となり,独裁色を 強めた。厳しい服装・頭髪規制やテレビ・ラジオの放送規制などを敷いたため,民衆からの反発 もあったが,同大統領が治めた 30 年間は,国内平和が比較的維持されていた。しかしながら, 90 年代前半の経済低迷と人権侵害行為の顕在化 9 に対し,国内外から大統領に対する非難が 高まり,同大統領は終身大統領としての身分を失った。そして,1993 6 月の国民投票で独 裁政権が倒され,複数政党制へ移行した。結果として,バンダ大統領時代は強権政治を背景に 社会規範は高く守られていた一方,経済/ 社会発展は国際的に大きく遅れを取った。バンダ大統 領時代は,「移住」,「個人資産の持ち出し」,「外貨持ち込み」などが法律で厳しく禁じられてい た。また,インド人や中国人は,特別区に居住することが義務付けられ,経済活動も制限されて いた。このような強権政治の影響で,民間レベルにおける留学などの国際交流はほとんど実施 されず,国際化に関しても他国に大きな遅れを取った。 複数政党制への移行が決定した翌年の 1994 年に,国政選挙・大統領選挙が同時に実施さ れ,多党民主制に移行した。選挙の結果,野党であった統一民主戦線( UDF United Democratic Front)が第一党となり,同党首のバキリ・ムルジが大統領に選出された。ムルジ大 統領は「貧困削減」と「民主化」を国家目標として掲げ,地方分権化の促進を実施した。1995 には地方自治体を設置し,98 年には関連法案を成立させた。地方に「権限・機能・責任」を委譲 し,地域のニーズに応えた社会・経済開発を進める計画であったが,実際には,2012 年現在に おいても,芳しい進ちょくは見られていない。ムルジ大統領は 2 期,10 年間,大統領として政権 を担当した。ムルジ大統領は,南東部出身のイスラム教徒(ヤオ人)であったことも影響し,北部 のキリスト教徒を中心とするトゥンブカ人は「反ムルジ大統領」の姿勢をとり,度々,ヤオ人に対 してデモやテロを起こした。ムルジ大統領は 3 選を目指して憲法改正を試みたが,否決され, 2004 年に同党のビング・ワ・ムタリカ大統領に大統領職を譲った。 9 バンダ政権時,特定の宗教団体に所属する人物が国外退去を迫られたほか,インド系のマラウイ人はインド人特別居住区へと 住むことを強制された。また,自由な移住や個人資産の海外への持ち出し,他国通貨の自国への持ち込みは法律で禁じられて いた。

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Page 1: 3 マラウイの概要・概況 - Ministry of Foreign Affairs出所:マラウイ財務省,「Malawi Aid Atlas 2010/11FY 」より評価チーム作成 外交に関しては上記のとおり,初代バンダ大統領時代には,台湾やイスラエルと国交を結ぶ

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第3章 マラウイの概要・概況

3-1 マラウイの開発状況

3-1-1 政治経済状況 1. 政治体制

(1) 政治 マラウイは,1964 年に英国から独立を果たした。そして,独立から 2 年後の 1966 年に,マラ

ウイ会議党による一党独裁制の国家体制が敷かれた。初代大統領にはヘイスティング・カム

ズ・バンダが選出され,1994 年まで 30 年近くの長期間にわたり,独裁体制が維持された。バン

ダ大統領は,南アフリカ共和国と通商条約を結び,台湾やイスラエルとも国交を深めるなど,積

極的に独自の外交政策を推進した。1971 年にバンダ大統領は「終身大統領」となり,独裁色を

強めた。厳しい服装・頭髪規制やテレビ・ラジオの放送規制などを敷いたため,民衆からの反発

もあったが,同大統領が治めた 30 年間は,国内平和が比較的維持されていた。しかしながら,

90 年代前半の経済低迷と人権侵害行為の顕在化9に対し,国内外から大統領に対する非難が

高まり,同大統領は終身大統領としての身分を失った。そして,1993 年 6 月の国民投票で独

裁政権が倒され,複数政党制へ移行した。結果として,バンダ大統領時代は強権政治を背景に

社会規範は高く守られていた一方,経済/社会発展は国際的に大きく遅れを取った。バンダ大統

領時代は,「移住」,「個人資産の持ち出し」,「外貨持ち込み」などが法律で厳しく禁じられてい

た。また,インド人や中国人は,特別区に居住することが義務付けられ,経済活動も制限されて

いた。このような強権政治の影響で,民間レベルにおける留学などの国際交流はほとんど実施

されず,国際化に関しても他国に大きな遅れを取った。 複数政党制への移行が決定した翌年の 1994 年に,国政選挙・大統領選挙が同時に実施さ

れ,多党民主制に移行した。選挙の結果,野党であった統一民主戦線(UDF:United Democratic Front)が第一党となり,同党首のバキリ・ムルジが大統領に選出された。ムルジ大

統領は「貧困削減」と「民主化」を国家目標として掲げ,地方分権化の促進を実施した。1995 年

には地方自治体を設置し,98 年には関連法案を成立させた。地方に「権限・機能・責任」を委譲

し,地域のニーズに応えた社会・経済開発を進める計画であったが,実際には,2012 年現在に

おいても,芳しい進ちょくは見られていない。ムルジ大統領は 2 期,10 年間,大統領として政権

を担当した。ムルジ大統領は,南東部出身のイスラム教徒(ヤオ人)であったことも影響し,北部

のキリスト教徒を中心とするトゥンブカ人は「反ムルジ大統領」の姿勢をとり,度々,ヤオ人に対

してデモやテロを起こした。ムルジ大統領は 3 選を目指して憲法改正を試みたが,否決され,

2004 年に同党のビング・ワ・ムタリカ大統領に大統領職を譲った。 9 バンダ政権時,特定の宗教団体に所属する人物が国外退去を迫られたほか,インド系のマラウイ人はインド人特別居住区へと

住むことを強制された。また,自由な移住や個人資産の海外への持ち出し,他国通貨の自国への持ち込みは法律で禁じられて

いた。

Page 2: 3 マラウイの概要・概況 - Ministry of Foreign Affairs出所:マラウイ財務省,「Malawi Aid Atlas 2010/11FY 」より評価チーム作成 外交に関しては上記のとおり,初代バンダ大統領時代には,台湾やイスラエルと国交を結ぶ

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ムタリカ大統領は 2004 年 UDF を脱却し,新党民主進歩党を立ち上げ,政権運営を実施した。

ムタリカ大統領は米国の大学院で経済学の博士号を取得し,経済政策に精通していると国民

に期待されていた。実際のムタリカ大統領の実績については評価が分かれるが,2005~2009年のサブサハラ・アフリカの平均経済成長率が 5.4 パーセントという地域的な追い風もあり,

2005 年からマラウイの経済成長率は飛躍的に上昇した。1 人当たり GDP は,175 ドル (2004年) から 350 ドル (2008 年) へと短期間で上昇し,2010 年の経済成長率も 2007 年 9.5%,

2008 年 8.3%,2009 年 9.0%,2010 年 6.5%,2011 年 4.3%と高い水準を維持している10。し

かしながら,経済成長による効果の貧困層への波及効果が期待されたが,2012年度の人間開

発指数は,0.400 で 187 か国中 171 位にランクされ,いまだに人間開発低位国の一つとなっ

ている。 ムタリカ大統領は 2 期目の 2012 年 4 月に逝去したため,現在はムタリカ政権の副大統領の

職にあった女性のジョイス・バンダ11が大統領に就任している。アフリカ地域で国家元首に女性

が就いている国は,バンダ大統領とリベリアのサーリーフ大統領の 2 名のみであり,バンダ大

統領はサブサハラ・アフリカ地域で初の女性国家元首である。

(2) 外交

ア 開発関係 政治外交は宗主国である英国,経済交流に関しては南アの影響をこれまで も大きく受けて

きた。英国の植民地であった影響で,現在でも公用語は英語であり,三権分立制度や司法制度,

教育制度などはすべて英国制度を踏襲している。しかし,2011 年 4 月に英国大使が独裁政治

を批判する公電を本国へ送電した際,その情報がムタリカ大統領に漏れるという事件が発生し

た。その結果,英国大使が国外退去処分になるなど,一時的に英国との関係が悪化した。 2012 年現在,マラウイの国家予算の約 4 割は,国際援助に依存している。国際援助の内,

DFID が 26%,ノルウェーが 14%,EU が 14%,世界銀行が 10%を拠出しており,援助機関と

の関係は密である12。海外からの援助額は,年度によって変動しているが,90 年代は平均で年

間4~6 億ドル,2000 年代に入ると約8 億ドルの支援を受けてきた13。なお,2000 年に 16 億ド

ルの債務免除が承認され,2006 年に実施されている。下図は,主要ドナーの援助実績の推移

である。

10 IMF,「World Economic Outlook October 2012」参照。 11 ジョイス・バンダは 1951 年にゾンバ県に生まれた。女性青年地域社会サービス省や外務大臣を勤めた後,2009 年 5 月に副

大統領となった。孤児の支援を初め,女性の教育やビジネスの支援などの社会貢献を精力的に実施してきたことがよく知られ

ている。 12 OECD-DAC,「2012 DAC ReportT on Multilateral Aid」参照。 13 マラウイ財務省,「Malawi Aid Atlas 2010/11FY」参照。

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(百万USドル)

2008/2009年度

2009/2010年度

2010/2011年度

図 3-1 主要ドナーの援助実績の推移 出所:マラウイ財務省,「Malawi Aid Atlas 2010/11FY」より評価チーム作成

外交に関しては上記のとおり,初代バンダ大統領時代には,台湾やイスラエルと国交を結ぶ

など独自路線を敷いていたが,2008年1月に中国の要求で,それまで42年間継続していた台

湾との国交を断交し,中国と新たに国交を樹立した。以降,中国は元借款事業で,国会議事堂

や国際会議場を建設するなどインパクトの大きい援助を実施している。マラウイは,近年,新興

国(中国,インド,ブラジル)との外交関係を強化し,欧米中心のドナーのみに頼る援助依存体

制から脱却しようとする動きを見せている。中でも中国は,マラウイに「今後5 年間で400 億マ

ラウイクワチャ(約2 億7 千万ドル)の多大な援助 (元借款) を実施する」14と表明し,存在感を

増している。 経済交流に関しては,南アフリカとの関係性が深い。マラウイが二国間貿易協定を結んでい

る国は,2012 年現在でも,南アフリカとジンバブエの 2 か国にとどまる。独立以前の 1960 年代

から南アフリカの鉱山などで多くのマラウイ人が出稼ぎ労働者として働いていたこともあり,バ

ンダ大統領は,南アフリカがアパルトヘイト政策を実施中の 1967 年に,南部アフリカでは初め

て正式な国交関係を樹立した。現在でも,マラウイから南アフリカへの出稼ぎ労働者は多い。南

アフリカとマラウイはいずれも 1994 年に民主的選挙を初めて行い,それ以降は外交関係を一

層深めている。2008 年に両国政府は安全保障協力の強化を通じて両国間の関係を強化する

ための覚書に調印した。 貿易額に占める相手国の割合は,下表のとおりである。輸出入とも南アフリカが 大の貿易

相手国である。

14 外務省「政府開発援助(ODA)データブック 2011」

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表 3-1 貿易品目と相手国(割合) 輸出 輸入

品目 タバコ,茶,砂糖,綿花,コーヒー,

ピーナッツ,木製製品 食料,石油製品,半製品,日用品,

輸送設備

相手国 (割合%)

南アフリカ(14.2%),エジプト

(9.8%),ジンバブエ (8.6%),米

国 (7.4%),オランダ (7%),ロ

シア (5.7%),ドイツ (5.7%)

南アフリカ(41.5%),中国 (7.3%),

インド(6.1%),タンザニア(5.4%),

米国(4.1%)

出所:外務省,「政府開発援助(ODA)データブック 2011」より評価チーム作成

品目に関しては,マラウイからの輸出品は第一次製品が多くを占めているのに対し,輸入品

は第 2 次製品が多数を占めている。

イ 対日関係 マラウイに対する援助は,1971 年に派遣が開始された JOCV を中心に,技術協力を主とし

て実施してきた15が,1980 年から無償資金協力および円借款を実施することになった。無償資

金協力では,道路・橋りょうなどのインフラ建設やかんがい事業などが実施され,マラウイの国

家開発に寄与している。一方,マラウイは,債務状況の悪化に伴い,重債務貧困国に認定され,

国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)・世界銀行の主導で包括的な債務救済の

適用を受けることとなり,日本は 2006 年度に円借款の債務の免除を実施した。無償資金協力

は累計で 710.60 百万ドルであり,技術協力は累計で 289.13 百万ドルである。以下の表は,近

年の対マラウイ ODA 実績額の推移である。

表 3-2 近年の対マラウイ ODA 実績額の推移 (支出純額ベース,百万ドル) 年度 円借款 無償資金協力 技術協力 合計

2006 年 -4.78 18.00 10.16 23.38

2007 年 -181.52 209.35 12.47 40.29

2008 年 16.71 14.08 30.79

2009 年 18.98 16.82 35.80

2010 年 49.59 19.86 69.46

累計 -35.38 710.60 289.13 964.31 出所:外務省,「政府開発援助(ODA)データブック 2011」より評価チーム作成

1992 年 2 月,ジマニ・カザミラ氏を初代駐日大使として駐日マラウイ大使館が東京に開設さ

れた。 一方,長年にわたりマラウイには日本大使館が置かれておらず,隣国の在ザンビア日

本国大使館が業務を兼任していたが,2008 年 1 月に首都のリロングウェに在マラウイ日本国

大使館が開設された。 15 マラウイは,JOCV の世界 大の受入国(累計 1,581 人)である。

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日本の対マラウイ貿易に関しては,2010 年の貿易額が輸出 18.9 億円,輸入 33.4 億円であ

り,主要品目は,輸出が自動車,電気・通信用機器などであり,輸入は葉タバコ,ナッツ,コーヒ

ー,茶などとなっている16。

ウ 対近隣諸国関係 マラウイは,東南部アフリカのほぼ中央に位置し,タンザニア,ザンビア,モザンビークの 3

国と国境を接している。以前からマラウイ湖17の領有権を巡り,タンザニアと対立が生じている

が,解決の道筋は立っていない。 隣国のザンビアには,マラウイの 大部族でもある「チェワ人」18が大勢住んでいることもあり,

人・モノの交流が盛んである。さらなる経済の活性化を試みて,ザンビア,マラウイ,モザンビー

クの 3 か国の政府は,税関や通商面での経済協力体制「ZMM‐GT ( Zambia - Malawi – Mozambique Growth Triangle)」を形成している。同体制は,1999 年に国連開発計画

(UNDP:United Nations Development Programme)の発案で協議が開始され,2003 年に 3か国の署名がなされた。観光,農業,エネルギー,インフラなどの分野において,11 のプロジェ

クトが進ちょく中である。中でも現在,3 か国を結びつける幹線道路の整備やマラウイを縦断す

る鉄道整備など,大規模なインフラ整備が計画され,多大な経済効果をもたらすことが期待さ

れている。 地域横断的な共同体としては,マラウイは「SADC」と「東・南部アフリカ共同市場

(COMESA:Common Market for East and Southern Africa)」に所属しており,SADC では

2001 年に議長国も務めている。SADC は 2012 年現在,南部アフリカ 15 か国が加盟し,共同

市場の結成や関税同盟の結成,単一通貨の導入を目指している。また COMESA には 2012年現在,東南部アフリカ 19 か国が加盟し,同様に関税の撤廃などを目指している。2011 年 10月には,COMESA 首脳会合がマラウイの首都のリロングウェにて開催され,当時のムタリカ大

統領が COMESA 議長に就任した経緯がある。

(3) 行政 マラウイの行政全般は,中央集権的な体制である。1980 年代に実施された「構造調整」19

の影響もあり,1990 年代から地方分権化20が促進された。しかし,実際には地方分権化の進ち

ょく状況は芳しくなく,現在でも中央省庁が国全体の政策策定・実施,財政運営や執行のモニタ

リング,援助機関との交渉・調整などに関する多くの権限を有している。恒常的な財政難に悩む

マラウイでは,援助機関との交渉や調整が省庁の役人が果たす仕事の大きな割合を占めてい

16 外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/malawi/data.html)より。 17 マラウイは東南部アフリカのほぼ中央に位置し,国土の約 20%をマラウイ湖が占めている。マラウイ湖はアフリカで 3 番目,

世界では 9 番目の面積を有する。南端部は国立公園に指定され,UNESCO の世界遺産にも登録されている。 18 マラウイの公用語は,英語とチェワ語である。初等学校ではチェワ語は必須科目となっている。 19 マラウイでは世界銀行 (IBRD) や国際通貨基金 (IMF) の指導の下,1981 年から構造調整プログラム(structural adjustment)が実施され,民間領域の刺激活性化や,産業許可と価格統制の廃止,貿易自由化, 外国為替導入,税の合理化,

国営企業の民営化,公務員改革などが実施された。 20 特に 1994 年の複数政党制へ移行した以降は,民主化促進の一環として地方分権化が進められた。1995 年に憲法46 条で地

方自治体の設置が規定され,1998 年には,地方自治法が制定された。

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る。たとえば,2008/2009 年度の予算実績で言えば,判明しているだけでも国家予算の 4 割超

が,国外からの援助によるものであり,省庁の職員が責任を負う対外交渉,調整業務の負担は

少なくない。 行政の管轄は,上から州,県,区という区分で管轄されている。基本的な行政区分は,3 州

(北部,中部,南部) に分けられ,その中に 28 県がある。日本の行政区分と大きく異なる点は,

分野毎に地方行政区分が異なる点である。たとえば,教育分野であれば North(北部),

Central East(中東部),Central West(中西部),South East(南東部),South West(南西部),

Shire Highland(山岳部)の 6 州に分けられている。そして,各州の下部行政区として県

(District:34 県)が位置付けられている。さらに 10~15 校の小学校毎に,県の下部組織である

Zone(学区)が位置している。一方,保健分野では,上部行政区から5つのZone, 28のDistrictに区分されるなど,各分野により呼称も数も異なってくる。

(4) ガバナンス 2012 年に発表された 新の「汚職認識指数 2012」21によれば,マラウイは 174 か国中,88

位である。アフリカの中では 47 か国中,13 位と比較的健全な国であるといえるが,年々順位を

落としており,汚職率が相対的に悪化している。また,政治情勢や治安,法整備,経済状況,教

育や健康などの生活水準にかかわるアフリカのガバナンス指標を示した「モ・イブラハム指数

(2012 年)」22 においては 52 か国中,17 位である。このうち「安全と法の原則」という指数では

非常に高い評価を受けており,犯罪による死亡などの危険性が低い国として評価されている。

その一方で,「持続可能な経済機会」および「教育」の指数が低くなっている。中でもインフラ整

備の遅れが甚だしいとされており,電力の供給状況が非常に悪く,世界で「停電の頻度」,「停

電による経済的損失」が も多い国の 1 つとされている。

2. 経済状況

(1) マクロ経済指標 現在のマラウイ社会/経済状況を示す主要な指標は,以下の表のとおりである。

21 世界の汚職状況や透明性の確保を審査する機関である Transparency International 発表による指標。 22 2005 年にモ・イブラヒモ氏が設立した財団「モ・イブラヒモ財団」がアフリカのガバナンス(統治)向上とアフリカへの投資を呼び

こむことを目的に実施し,公表している指標。53 カ国のガバナンスを,85 種類の指標を使って分析している。

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表 3-3 マラウイ社会/経済一般指標 項目 指標 人口 約 15,447,500 人

平均余命 53.3 歳 一人当たりGNI 330 ドル

ジニ係数 39.0 人間開発指数 0.400

電力 16 億 9000 万 kWh (発電量), 15 億 7200 万 kWh (消費量) 貿易収支 -6 億 8000 万ドル

出所:UNFPA,「State of World Population 2012」,UNDP,「International Human Development Indicator」,世界銀行ウェブサ

イトなどより評価チーム作成

上記のとおり,2010 年の一人当たり GNI は 330 ドルであり,世界銀行の所得分類によると

依然として「低所得国」に区分されている。経済成長に関しては,農産物への依存体質,燃料不

足などが主要課題とされている。そのほかの課題としては,熟練労働者の不足,官僚の非効率

的な仕事,汚職,道路の維持整備不足,電力や水道および通信などの社会基盤の不十分さに

より,マラウイの経済発展が阻害されていることがあげられる。政府はこれらの課題解決に向

け,近年,道路状況の改善と,鉄道と通信分野への民間参入認可による投資環境の活発化を

優先目標とした対応を行っている。

(2) 産業構造 人口の約 90%が自給自足の農業に従事しており,大多数を占める小規模の自作農家はメイ

ズ,豆,米,キャッサバ,タバコ,ピーナッツなど,様々な作物を栽培している。2010 年の GDPでは農業分野が全体の約 30%,商品の輸出額では農業が約 80%を占めており,労働人口を

見ると約 85%が農業に従事している。 外貨収入の中心は「タバコ・茶・砂糖」である。中でもタバコ輸出に大きく依存した経済体質が,

近年より顕著になっているが,世界的なタバコの価格の下落や,タバコ生産量を抑制する国際

圧力の影響を受け,政府は他の有望な商品作物を探している。そのほか,栽培が行われてい

る作物には,綿花,メイズ,ジャガイモ,モロコシなどがある。伝統的に,多くの農民は主食であ

るメイズの自給自足を行っているが,1980 年代には,旱魃による食料不足が生じた隣国へ,相

当量の食料輸出を行っている。 製造業は,2010 年の GDP の約 11%を占めている。タバコ葉加工,製糖,縫製,食品加工,

プラスチック加工,製材などが主たる産業であり,マラウイ政府は,輸出品目の多様化,量的拡

大を目指している。しかし,国内で製造された製品の約 85%は国内消費に回り,外貨獲得には

貢献していない。輸出製造業の競争的環境を創るために,政府も各種優遇措置,工業団地と輸

出加工区の創設,近代的な情報通信インフラの整備,地域市場と国際市場とマラウイ市場を結

ぶ交通手段(空路)の充実など様々な産業振興策をとっているが,基本的に財政難のため,進

ちょく状況は芳しくない。他にも,牧畜や観光業で外貨獲得を目指しているが,国際競争力は依

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然低いままである。 鉱業は 2010 年の GDP の約 2%を占めている。北部でウランが発見されたこともあり,天然

資源の輸出が成長産業として期待されているが,現在の所,埋蔵鉱物資源に関する詳細な情

報が整備,確立されていない23ため,民間投資による鉱山開発が十分に進められる環境が整

備されていない。

(3) 国際収支 マラウイの国際収支は,以下のグラフで示すように基本的に赤字である。マラウイの外貨獲

得手段は上記のとおり,「タバコ・茶・砂糖」という 1 次産品の輸出が主であり,これらの 1 次産

品は国際価格や天候にも影響を受けるため,安定した外貨収入をもたらしていない。結果的に

マラウイの国際収入は安定せず,赤字を累積している。

図 3-2 マラウイの国際収支の推移 出所:IMF, 「World Economic Outlook 2012」より評価チーム作成

現在,IMF の融資制度である拡大信用ファシリティ(ECF:Extended Credit Facility)を利用し

て,国際収支バランスを改善するための長期的な構造改革を実施している。IMF は,マラウイ

が融資制度を利用するに当たり,通貨の切り下げを強く要求した。しかし,前ムタリカ大統領は

クワチャの切り下げを拒否し続けていたため,一時,融資は凍結された。政権が代わり,政府

はECFの再開に向けて,昨年5月にドルに対して50%という大幅なクワチャの切り下げを実施

した。これによりマラウイ国内では物価上昇が起こり,特にガソリン価格が大幅に上昇した24。

公定レートは市場と連動して変動するようになり,2012 年現在,1ドル=340 マラウイクワチャ程

度で推移している。

23 日本の「対マラウイ共和国 国別援助方針」等においても,レアアース等の潜在的な鉱物資源の存在(可能性)が指摘されてい

るが,具体的な埋蔵場所や量についての情報は依然として明らかになっていない。 24 2011 年の政府発表のインフレ率は 28%であった。

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3-1-2 社会開発状況 1. 貧困状況

マラウイはサブサハラ・アフリカ諸国の中でも後発開発途上国に分類されており,国民の

30%以上が1日1ドル以下で生活する貧困層が多い国である25。また,貧困層の約80%が農村

部で生活しており,伝統的な農業に従事している26。 近隣諸国と比較した貧困・MDGs関連指標は下記の表のとおである。マラウイにおいては,

一日1ドル以下で生活する人口の割合(絶対的貧困率)が73.9%と非常に高く,経済水準の底

上げが必ずしも進んでいないことが伺える。ジニ係数などの指標においても,国内格差が拡大

している実態が確認され,人間開発指数も非常に低く,社会開発にかかわる課題が大きいこと

が分かる。

表 3-4 貧困・MDGs 関連指標

指標 マラウイ モザン

ビーク タンザニア ザンビア サブサハラ・ アフリカ平均

途上国

平均 人間開発指標

(2011 年) 0.400 0.322 0.466 0.430

人間開発指標

(2011 年)順位 (187 か国)

171 184 152 164

一日一ドル以下で

生活する人口の

割合 (%) 73.9 60 67.9 64.3 50.9 26.9

出所:UNDP,「International Human Development Indicator」などより評価チーム作成

2. 保健・衛生

既存の医療施設や医療従事者の多くは都市部に偏在している一方,多くの国民は農村部で

生活しているため,必要なときに必要な保健医療サービスを受療できていない。たとえば,以下

の表から分かるとおり,2011年の妊産婦死亡率(対出生10万人)は510,HIV感染率(15~49歳)は11%と高い値を示している。

25 UN Statistics,「MDG Indicators」(2011)参照。 26 JICA,「マラウイ国 JICA 国別分析報告書」参照。

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表 3-5 保健・衛生に関する主要指標

指標 マラウイ モザン ビーク タンザニア ザンビア

サブサハラ・アフリカ平均 途上国平均

5歳未満乳幼児死亡率(1,000人当たり) 92 135 76 111 129 66妊産婦死亡率 (10万人当たり) 510 550 790 470 640 290HIV感染率 (15~49歳, %) 11 11.5 5.6 13.5 4.7 0.9出所:UNDP,「International Human Development Indicator」(2011)などより評価チーム作成。

3. 教育

マラウイの教育は英国制度を踏襲しており,8-4-4制である。教授言語は,初等学校の4年生

までは各地の現地語が用いられるが,5年生からは全て英語で実施することが規則になってい

る。マラウイでは,1994年に周辺諸国に先駆けて初等教育の無償化政策が導入されたが,義

務教育制度にはなっていない。無償化政策導入の影響などにより,初等教育就学者数は継続

的に増加しており,現在,初等教育純就学率は90%を超え,中等教育純就学率は20%を超え

ている。

表 3-6 基礎教育情報

指標 マラウイ モザン ビーク タンザニア ザンビア

サブサハラ・アフリカ平均

途上国平均

初等教育純就学率(%) 91.3 90.7 96.7 92.4 76.2 89

中等教育純就学率(%) 25.1 20.2 27.4 30.4 36 27

識字率(15歳~24歳 %) 86.5 70.9 77.4 74.6 72 87.7出所:UNDP,「International Human Development Indicator」(2011)など(2012 年 10 月時点で公開されていたもの)より評価チ

ーム作成

就学率が上昇する一方,マラウイでは以下の表で示すように,内部効率性やアウトプットに

関する指標(留年率,修了率,平均修学年数など)については,必ずしも改善傾向が見られな

い。

表 3-7 マラウイにおける初等教育の質の変化 教育の質 1995 年 2000 年 2011 年

児童数/教員数 - 122 76児童数/教室数 189 119 85

インプット

教育経常経費/GDP 5.3% 3.2% 5.7%

留年率(全体) 17.9% 15.4% 20.7%

中退率 - 10% 16%

内部効率性

修了率(8 年間) 52.9% 65.7% 66.8%

アウトプット 平均就学年数(初等教

育~高等教育) 10.9 年 10.3 年 8.9 年

出所: 世界銀行,「EdStats」より評価チーム作成

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4. 地域開発

上述したように,1994 年にバキリ・ムルジが大統領に選出され,地方分権化に係る施策を推

進した。1995 年には地方自治体を設置し,98 年には関連法案を成立させた。地域のニーズに

応えた社会・経済開発を進める計画としては,地域レベルの貧困削減プログラム(Poverty Alleviation Program)が 1994 年に策定され,加えて貧困対策が地方における重点施策である

ことを示すためにマラウイ社会行動基金(Malawi Social Action Fund)が設置された。当基金

は,地域住民との共同での費用負担の下で公共投資を行うスキームであった。 日本は,大分県発の「一村一品運動」を「(OVOP:One Village One Product)」として,2003

年より対マラウイ援助の一環として実施している。同年,大分まで視察に訪れた大統領の主導

により,OVOP 事務局が設立され,「MGDS」では OVOP について総合農村開発政策の一つと

して明記されている。パーム油を原料にした石けんや天然のアクアマリンのアクセサリー,白土

粘土を使った陶器など,製品の種類は 30 以上にも及ぶ。 5. 水

マラウイは,アフリカの中でも水資源に恵まれた国である。アフリカ大陸で 2 番目に大きい湖

沼であるマラウイ湖を有し,マラウイ湖に流れ込むシレ川など河川の面積を合わせると国土の

約 20%が「水域」である。しかし,貴重な水資源を有効に活用するプランや戦略が, 近まで存

在せず,乱開発を招いてきた。マラウイ湖は世界でも希少な魚や固有種も多く存在する。しかし

ながら生活排水が流入し,漁業も乱獲を許している状況のため,年々汚染が進んでいる。政府

としては,UNESCO の世界遺産にも指定されたマラウイ湖を観光資源として活用していきたい

思惑があるが,水質汚染が進み,ビルハルジア(住血吸虫)が存在することが明らかになり,観

光客を遠ざけている。

表 3-8 水資源へのアクセス率(%)

指標 マラウイ モザン ビーク

タンザニア ザンビア サブサハラ・

アフリカ平均 途上国平均

改善された 飲料水への アクセス率(%)

80 47 54 60 31 84

改善された 衛生施設への アクセス率(%)

56 17 24 49 31 53

出所:UNDP,「International Human Development Indicator」(2011)などより評価チーム作成。

貴重な水資源を農業に活用する政策として,2010 年に「グリーンベルト・イニシアティブ」が

策定された。当該イニチアチブにおいては,マラウイ湖を中心とする水資源の活用によりかん

がい面積を拡大することが掲げられている。

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6. インフラ

マラウイのインフラ整備は,鉄道,道路などの交通インフラや発電システムなどの電力インフ

ラをはじめ,多方面で課題が山積している。特に内陸国であることを考慮すると,周辺国からの

接続を担う交通インフラが重要であるが,道路の舗装はあまり進んでおらず,これが輸送コスト

を押し上げる要因となり,産業の発展を阻害している。 航空路線に関しては,全部で44の空港が置かれているが,そのうち滑走路が舗装されてい

るのは6空港のみである。さらに,その中で国際線の定期便があるのは,首都のカムズ国際空

港と南部のブランタイヤにあるチレカ国際空港の2空港のみである。 鉄道インフラについては,ザンビアとの国境に近いムチンジ県西部から,リロングウェを経由

し,南部のブランタイヤやマカンガに至る区間が整備されている。マカンガ南部からモザンビー

クのベイラに至る区間は,モザンビーク内戦(1977-1992)以降閉鎖となったままであり,再建

のめどはいまだ立っていない。さらに,1997年に発生した大洪水の影響で,約3kmにわたるチ

ロモとバングラ間の(約3km)が被害を受け,現在にいたっても修復がなされず,輸送の大部分

をモザンビークを迂回するテテ回廊に依存しているのが実態である27。 7. 農業

上術のとおり,マラウイの国民の多くは自給自足の農業に従事している。農業形態は,小規

模農家がほとんどであり,耕地面積は年々拡大しているが,それを上回るペースで人口が増加

しており,結果的に 1 人当たりの耕地面積は減少傾向にある。マラウイの土地は豊富な水環

境の影響もあり,周辺国と比較して肥沃だとされているが,かんがい施設などが未整備なため,

1 ヘクタール当たりの作物収穫高は周辺国と比較しても低く,主食としているメイズの平均収穫

高は 1.5~2.0 トン/ヘクタールであり,世界平均の 3 トン/ヘクタールを下回る28。独立前に統

治政府が作った大規模農場は,独立後マラウイ人の所有になったが,この時期に大規模農場

を購入したのは,有力政治家やバンダ初代大統領が所有する企業など,政治権力に近い個人

や企業であった29。このような大規模農場で生産される商品作物である「タバコ・茶・砂糖」は,

個人での生産・販売が長らく禁止されていたが,タバコは 1990 年,紅茶は 2000 年代に入り,

解禁された。

27 JICA「マラウイ国 JICA 国別分析報告書」参照。 28 JICA「マラウイ国 JICA 国別分析報告書」参照。 29 高根務「マラウイの小農 —経済自由化とアフリカ農村—」,研究双書(2007)参照。

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3-2 マラウイの開発計画

3-2-1 ビジョン 2020 マラウイ政府は 2000 年に,国家開発目標の達成に必要な政策・戦略を示した「長期国家開

発計画(Vision 2020)」を定めた。この「ビジョン 2020」 では 2020 年までに,マラウイが中所

得国入りすることを宣言している。 「2020 年までにマラウイは,安全・民主的・持続可能な環境そして自信を持った国で,すべて

の民が平等な機会を得て活発に参加し,社会サービスを享受し,活気ある文化的宗教的価値

を有し,技術力に牽引された中所得国になる」 30

また,「ビジョン 2020」では,持続的経済成長と貧困削減のために以下 9 つの目標を掲げて

いる。

① グッドガバナンス ② 持続的経済成長と開発 ③ 活発な文化 ④ 経済インフラ ⑤ 社会開発 ⑥ 科学技術 ⑦ 所得・富の公平で公正な配分 ⑧ 食料安全保障と栄養改善 ⑨ 持続的な資源・環境管理 3-2-2 セクター別開発計画

現在のマラウイの主たる国家開発計画は,以下の 4 点に集約される。まず 10 年ごとに改定

される 上位の計画である「ビジョン 2020)」があり,その下に「マラウイ貧困削減戦略ペーパ

ー(MPRSP:Malawi Poverty Reduction Strategy Paper)」と,MDGsにおける8つの目標に対

して,マラウイとしての独自目標値を設定した「マラウイ・ミレニアム開発目標(MMDGs:Malawi Millennium Development Goals)」の2点を位置付けている。そして,この2つの計画目標の下

位に中期的な目標計画として「MGDS」が策定されている31。 以下,当該 4 計画書を中心に各セクター別開発計画の主旨を記載する。

30 JICA「マラウイ国 JICA 国別分析報告書」の邦訳を引用。 31 2012 年現在,第二期マラウイ成長開発戦略(MGDSⅡ)が策定されている。

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1. 保健

保健分野は,マラウイの開発計画において 重要課題の 1 つであり,2011 年の援助額およ

び政府予算(いずれも実績額)において 大額を占めている。具体的な計画は「第 5 次保健医

療計画(2004~2010 年)」において,以下 6 つの柱に分類され,これに基づき各県における活

動を軸とした実施計画が立てられている。 ① 人的資源の開発 ② 医薬品の供給 ③ 必要 低限の基礎医療機材の整備 ④ 施設インフラの整備 ⑤ サービス供給における日常業務の改善 ⑥ 中央レベルの業務政策,機構改革

以上の目標達成のためにマラウイ保健省は 2004 年に全国民を対象とした基礎保健パッケ

ージ(EHP:Essential Health Package)の提供を掲げ,国を挙げて投資を行ってきたが,下表

で示すと必ずしも十分な成果が得られていない。

表 3-9 保健分野の指標 指標 現状 2011年目標値 2015年(MDGs)目標値

乳児死亡率 6.6 % 4.8 % 4.47 %5歳未満死亡率 11.2 % 7.6 % 7.8 %妊産婦死亡率 0.807 % 0.56 % 0.156 %HIV陽性率 10.6 % 12%以下 0 %訓練を受けた医療従

事者による分娩率 58% 75%以上 ---

医師:人口 1 : 41,045 1 : 31,000 ---看護師:人口 1 : 2,643 1 : 1,700 ---医療施設:人口 都市部 1 : 9,870, 農村部 1:14,749 (目標値無し)

出所:JICA「マラウイ国 JICA 国別分析報告書」などより評価チーム作成

2. 教育

初等教育分野では,MDGs のゴール 2「2015 年までの初等教育の完全普及」の達成を目指

している。初等教育純就学率は上述のとおり 90%を超えているが,必要な教員・教室が十分に

確保されておらず,内部効率の低さ(中途退学率の高さ,残存率/修了率の低さ)も大きな課題と

なっている。中等教育分野については,学校・教室不足,就学率の低さ,女子就学率の低さ,有

資格教員不足,教育の質の低さ(国家試験合格率の低さ),政府標準校とコミュニティ中学校

(CDSS)間の教育格差などに課題が残る。

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また,MGDS では,マラウイの国全体における教育の役割が示され,教育を通じて,有能か

つ生産性の高い国民を養成することが国の目標として明示されている。特に,初等教育におけ

るアウトプットの質を高めることが必要であり,学校を頻繁に欠席する児童や留年,退学を早急

に減らす取り組みを国家政策として実施していくと記載されている。また,2008 年に策定された

「国家教育セクター計画(NESP:A National Education Sector Plan)」 」では,2015 年までに

初等教育の完全普及を達成するためには,「国際的な協力が不可欠」と指摘されている。 3. 水

水セクターの開発計画としては,MGDSにおいて,水開発を9つの重点分野のひとつに挙げ,

コミュニティから 500m 以内で安全な水にアクセスできるよう水資源開発を行い,そのアクセス

率を 2011 年までに 80%に上げることを目標としている。2008 年にかんがい水資源開発省と

開発パートナーが共同で実施した水・衛生に関するジョイントセクターレビューにおいて,アクセ

ス率は都市部と農村部でともに 65%以上と報告されたものの,農村部の給水施設のうち約

31%は機能していないことが明らかになった。 これらの原因としては,不十分な維持管理,不適切な評価・モニタリング体制,機能していな

い住民参加型管理(CBM:Community-Based Management),不十分な給水施設のスペアパ

ーツ供給網などが指摘されており,このことから,給水施設の維持管理と給水モニタリング体制

の構築が喫緊の課題となっている。都市部に比べて農村部の安全な水に対するアクセス率は

低い。十分な量の安全な水が住居の近くで確保できない農村部の住民は,生活用水の確保に

多大な時間と労力を費やさざるを得ず,そのため,経済活動が抑制され,貧困の解消を阻む一

因となっている。 4. インフラ

MDGsの交通インフラに関する目標については,輸出入にかかる輸送および手続の時間短

縮に輸送コスト削減,国内・周辺域内・国際市場へのアクセス改善,地域コミュニティの市場へ

のアクセスの改善による生産力の向上が明記されている。また,ンサンジェ内陸港湾開発を含

むシレ・ザンベジ水路開発が計画されている。 全体的にインフラ開発は大規模な政府予算に比して援助額が小さい。これは,燃料税収入を

もとにした道路基金による一定の自主財源があり,道路公社を通じて,主に道路維持管理への

整備,第2級道路整備などを独自で行っていることが一因である。しかし,幹線道路整備や橋り

ょう建設などの大型案件については,政府予算は十分ではないことから,開発パートナーの支

援に頼っている。他分野と異なり,旧ドナーによる援助だけでなく,アラブ系ファンド(クウェート

ファンド,石油輸出国機構,アラブ経済開発銀行)による援助が実施されており,同ファンドによ

り道路舗装が実施されている。また,シレ・ザンベジ水路開発プロジェクトは,建設-運営-譲渡方

式により民間企業が実施中であり,同プロジェクトではシレ川およびザンベジ川の水運航路シ

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ステム構築のための「ンサンジェ港」の建設も実施している。 5. 農業

MGDS では,上述のとおり持続的経済成長とインフラ整備を通じた貧困削減を 上位の目

標に掲げているが,農業と食料安全保障分野については,小規模農家による主要生産物の生

産拡大や地方分権化による農ビジネス技術の効果的な普及,土壌保全技術の普及などにより

農業生産性を向上させるとしている。 農業分野の成長と MGDS の目標達成を目的として策定された ASWAp では,①食料安全保

障,②商業的農業・農産物加工・市場開発,③持続的農地・水管理を重点分野としている。持続

的農地・水管理については,土壌肥沃度の向上,土壌浸食の防止,土壌水分の保持などに関

する技術の普及を通じて達成する方針である。

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3-3 ドナーの動向

3-3-1 二国間援助と国際機関を通じた援助動向の概観

OECD のデータベースをもとに,同データベースで集計されているすべてのドナーの援助額

を確認した。過去 10 年間の対マラウイ援助額は,総じて増加傾向にあり,2010 年には 10 億ド

ルを超える規模となっている。

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

図 3-3 対マラウイ援助規模(支出純額ベース,単位:百万ドル)

出所:OECD,「OECD Stat」より評価チーム作成

また,主要ドナーの対マラウイ援助の規模をみると,過去 10 年間は特に米国と英国の援助

額が非常に多くなっており,毎年 1 億ドル以上の額を援助している。米国,英国に次いで,ノル

ウェー,ドイツ,日本の援助が多くなっている(図 3-4 参照)。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

米国 カナダ 英国 アイルランド ドイツ デンマーク ノルウェー スウェーデン 日本 図 3-4 主要ドナーの対マラウイ援助規模(二国間援助,支出純額ベース,単位:百万ドル))

出所:OECD,「OECD Stat」より評価チーム作成

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マラウイ財務省が発行している,「MALAWI AID ATLAS 2010/11FY」には,二国間協力と多

国間協力の概要・規模などが整理されている。同レポートにより,2008~2010 年度のドナー別

の援助実施状況を確認したところ,世界銀行やEUの援助規模が,英国や米国と同レベルの水

準に拡大していることが分かる。特に,中国やインドといった,OECD-DAC のメンバーではな

い国の援助も多くなっていることが分かる。

百万ドル

2008年度

2009年度

2010年度

AusA

ID

アイスランド

カナダ

IFAD

FICA

アイルランド

アラブ諸国

GD

Cノルウェー

EU

Global Fund

DFID

US

AID

世界銀行

インド

中国

UN

ES

CO

UN

IDO

UN

AID

S

UN

HC

R

WH

O

FAO

UN

DP

WFP

UN

ICE

F

UN

FPA

国連

CD

C

AfD

B

日本

図 3-5 援助支出額(ドナー別,単位:百万ドル)

出所:マラウイ財務省,「MALAWI AID ATLAS 2010/11FY」

さらに,2010 年度の主要ドナーなどの援助規模をスキーム別にみると,ローンを提供してい

るのは,AfDB,中国やインドとなっており,他のドナーはあまり積極的にローンを提供していな

いようである。一方,技術協力を提供しているドナーも,日本,英国,EU と限定されており,全

般的には,無償供与を中心に対マラウイ援助を実施しているドナーが多い。

百万ドル

技術協力

有償資金協力

無償資金協力

中国

インド

OP

EC

ファンド

クウェート

BA

DE

A

UN

ES

CO

UN

IDO

UN

HC

R

UN

AID

S

AusA

ID

アイスランド

WH

O

UN

FPA

FAOカ

ナダ

IFAD

FICA

アイルランド

UN

DP

WFP

AfD

B

CD

C日本

UN

ICE

F

ノルウェー

GD

C

EU

DFID

Global Fund

世界銀行

US

AID

図 3-6 各ドナーのスキーム別の援助額(2010 年度,単位:百万ドル)

出所:マラウイ財務省,「MALAWI AID ATLAS 2010/11FY」

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42

さらに,対マラウイの援助額をセクター別に集計した結果をみると,保健・医療分野,経済ガ

バナンス分野,教育分野の援助が多くなっている。依然として,保健,医療,教育などのマラウ

イ国民の生活の基礎的な部分にかかわる援助の必要性が高いことをうかがわせる。

水・衛生・かんがい

災害脆弱性とリスク管理

産業・貿易・民間セクター開発

観光、野生動物、文化

道路・公共工事・交通

行政

統合的な地方開発

情報技術

保健

ジェンダー・青少年・スポーツ

環境・土地・自然資源

エネルギー鉱山

教育

経済政治

民主政治

農業

2008年度

2009年度

2010年度

百万ドル

図 3-7 援助支出額(セクター別,単位:百万ドル)

出所:マラウイ財務省,「MALAWI AID ATLAS 2010/11FY」

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3-3-2 国際機関の動向 1. 世界銀行 32

世界銀行によるマラウイへの援助は,1996 年から順次策定された「国別援助戦略(CAS:

Country Assistance Strategy)」を指針として行われてきた。2011 年には第 4 次 CAS(2007-2011)が終了し,2012 年中に第 5 次 CAS(2012-2016)が作成される見込みとなってい

る。

第 4 次 CAS は,マラウイ政府の MGDS に添う形で作成され,下記の 4 分野を柱として実施

された。

小規模農家 : かんがい施設の整備と市場インセンティブを通じて,11 の地域の小規模

農家の生産性と食糧安全保障を向上させることを目標とした。3 つのプログラムを通じて,

大規模かんがいスキームを回復させた他,人口密集地域から 1 万5 千人を移住させること

により移住した人の農業生産性を2~3倍に増加させた。 HIV/AIDS および栄養 : HIV 感染率の減少のための意識改革,ARV(抗レトロウイルス

薬:Anti Retroviral Drug)治療の普及,2歳未満の児童の栄養状況の向上のための政府の

計画作成を目標とした。抗レトロウイルス治療を受けた患者は,2010 年までには 5 万 7 千

人(2006 年)から 20 万人に増加した他,成人の HIV 感染率は 2011 年末までに約 10%に

減少した。また,医療へのアクセスの改善により,平均寿命は38歳(2005年)から 52歳に

延びた。 ビジネス環境 : 電力供給の効率性と信頼性の向上,国際貿易の拡大,ビジネス立ち上

げコストの低下を目標とした。2007 年には高等裁判所商事部が設立され,2011 年の商事

訴訟の平均解決時間は 2006 年の 337 時間から 98 日に短縮された。また,世界銀行の道

路維持改修プロジェクトにより構築された道路データベースと道路基金により道路の改修

も行なわれた。 政府歳出管理の改善 : MGDS と政府予算の関連性が向上した。2008 年から政府が導

入した成果ベースの予算枠組みにより,省庁などは MGDS に沿って予算を申請するよう

になった。

第 5 次CASは,マラウイ政府の MGDSⅡ(MGDS の改訂版)に留意して作成されている。新

しい CPS は,MDGs の達成が不十分な点を,下記の 3 分野のプログラムを通じて改善すること

を目的としている。

持続可能で,多様性があり,包括的な成長の促進 : 安定したマクロ経済管理の修復,ビ

ジネス環境の向上,金融サービスへのアクセスの向上,エネルギーやそのほかのインフラ

32 世界銀行ウェブサイトや国別援助戦略等を参照して評価チームが作成

Page 21: 3 マラウイの概要・概況 - Ministry of Foreign Affairs出所:マラウイ財務省,「Malawi Aid Atlas 2010/11FY 」より評価チーム作成 外交に関しては上記のとおり,初代バンダ大統領時代には,台湾やイスラエルと国交を結ぶ

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の制約の解消,起業の増加およびスキルの向上,地域統合の促進,多様性の強化と生産

性の向上,のための努力を支援する。 人的資本の向上および脆弱性の軽減 : 教育・保健・栄養・青少年育成・上下水道におけ

るサービスの提供を通じて,政府の MDGs 達成に向けた努力を支援する。 開発効率性の向上のためのガバナンスの統一 : 供給サイドと需要サイドの双方を強化

する横断的な努力を行う。供給サイドでは,公的金融の管理方法やモニタリング・評価,統

計システムなどの改善など,政府機関が内部統治を行う基礎となる公的部門の統治メカニ

ズムを改善する。需要サイドでは,末端のサービス提供部門や地方政府などへの財政移

転状況の情報開示を通じてサービス提供の社会的責任を強化する。

世界銀行が 2012 年 11 月時点において実施中のプロジェクトは以下のとおりである。

表 3-10 世界銀行による対マラウイ援助プロジェクトのリスト(2012 年 11 月時点)

承認日 件名 金額 (単位:百万ドル)

2012 年 7 月 17 日 第三次社会活動基金のための第二次追加給付 50 2012 年 7 月 17 日 かんがいと農村生活,農業開発 50 2012 年 6 月 14 日 シレ川水盤管理プログラム 131.58 2012 年 6 月14日 マラウイ:シレ川水盤管理プログラム フェーズ1プロジェクト 136.3 2012 年 5 月 10 日 ヌクホタコタ野生動物保護区の参加的開発と管理 2.39 2012 年 3 月 17 日 マラウイ食糧と HIV/AIDS プロジェクト 103.1 2012 年 3 月 22 日 マラウイ農業開発プログラム補助プロジェクトへの追加給付 80.8 2011 年 6 月 28 日 エネルギー分野 84.7 2011 年 6 月 22 日 リロングウェ都市開発戦略 フェーズ3 0.25 2011 年 6 月 02 日 第二次国家水資源開発プロジェクト 120 2011 年 3 月 31 日 鉱業ガバナンスと成長補助プロジェクト 25 2011 年 3 月 25 日 障害のある児童に対する包括的教育 1.83 2011 年 3 月 24 日 マラウイ金融セクター技術的補助プロジェクト 28.2 2010 年 9 月 20 日 かんがい,農村生活,農村開発プロジェクト 12.7 2010 年 6 月 30 日 第三次社会活動基金のための追加給付 14.7 2010 年 6 月 17 日 マラウイの教育の質を改善するプロジェクト 256 2008 年 6 月 24 日 農業開発プログラムサポートプロジェクト(08 年度) 47.5 2008 年 6 月 24 日 農業開発プログラム 37.8 2008 年 6 月 20 日 マラウイ第三次社会活動基金 51 2007 年 5 月 24 日 第二次国家水資源開発プロジェクト 173 2007 年 5 月 24 日 技術的支援を強化するビジネス環境 18.7 2006 年 6 月 27 日 インフラサービス 41.3 2005 年 11 月 29 日 かんがい,農村生活,農業開発プロジェクト 40

出所:世界銀行ウェブサイトなどをもとにして評価チーム作成

2. AfDB 33

AfDB の現行の対マラウイ援助戦略は,2011 年 3 月に公表された「2011-2012 マラウイ暫定

33 AfDB,「Interim Country Strategy Paper for Malawi for the years 2011-2012」(2011)や AfDB,「2005-2010 Results Based Country Strategy Paper」(2008)等をもとに評価チーム作成

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国別戦略文書(Interim Country Strategy Paper for Malawi for the years 2011-2012)」である。

これは,2008 年 4 月に公表された「2005-2010 成果重視国別戦略文書(2005-2010 Results Based Country Strategy Paper)」を継承するものである。

「成果重視国別戦略文書はマラウイ政府の MGDS と関連付けられており,MGDS が懸念し

た厳しい貧困,食料安全保障,失業率,輸出拡大の低迷,能力・スキルの格差といった主要な

開発課題に対応できるよう作成されていた。また,成果重視国別戦略文書は以下の相互補完

的な 2 つの柱に注力して政府と民間セクターを援助することを目的としていた。 地方部のインフラの拡大 : (ⅰ)食糧安全保障と収入および輸出の増加のためのかんが

いインフラ,(ⅱ)地方部のコミュニティを市場,医療施設,学校,そのほかの施設と結ぶた

めの交通インフラ,(ⅲ)安全な飲料水とコミュニティから 500 メートル以内の下水施設を提

供するための上下水道インフラに力点を置く。 人材の育成と組織的能力の開発 : (ⅰ)民間セクター開発,(ⅱ)ガバナンス・予算援助,

(ⅲ)保健分野の SWAp の支援,(ⅳ)マラウイの教育支援計画(「EducationⅣ」と

「EducationⅤ」)を援助する。

暫定国別戦略文書も MGDS の戦略的指針の枠組みの中で作成されており,AfDB は,マラ

ウイ政府の輸出志向型の開発目標を受けて,下記の相互補完的な 2 つの柱に取組むものとし

ている。 インフラの改善 : マラウイの競争力を削いでいるインフラのボトルネックを取り除くことを

主な目的とする。小規模農家のためのかんがい設備プロジェクトを通じて農業生産の増加

と輸出作物の多様化を図る他,貿易コストの削減と国際的な競争力の獲得による地域市場

へのオープンアクセスの実現を支援する。 民間セクター開発の加速 : ビジネスの成長と革新を促進するための環境の創設を主な

目的とする。農業生産の増加と作物の多様化による収益を中小企業のために役立て,バリ

ューチェーンを統合し,ビジネスインフラを改善し,金融へのアクセスを向上させることによ

って「中小企業の欠如(missing middle)」を形成することに焦点が当てられる。

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AfDB が 2012 年 11 月時点において実施中のプロジェクトは以下のとおりである。

表 3-11 AfDB による対マラウイ援助のプロジェクトリスト(2012 年 11 月時点)

承認日 件名 金額

(単位: 百万ドル)

2012 年 7 月 11 日 財政の安定の回復および社会的保護 262012 年 2 月 8 日 高等教育,科学,技術,専門的・起業・職業指導プロジェクトへの援助 302011 年 12 月 16 日 競争力と雇用創出支援プロジェクト 102011 年 11 月 10 日 農村生活と農業のための気候適応 1.912010 年 12 月 9 日 地域経済開発のための貸付けの追加給付 3.462010 年 1 月 28 日 水分野の強化 1.762009 年 12 月 28 日 リロングウェ の都市貧困層の上下水道へのアクセス性向上 567.32009 年 9 月 9 日 農業開発計画 172009 年 5 月 22 日 マラウイ幹線道路修復:ブランタイヤ-ゾンバ,ムズズ-ンカタベイ道路 26.712008 年 9 月 24 日 地方経済開発への援助 18.662008 年 7 月 2 日 Malawi RWSSI (水・かんがい分野のプロジェクト) 1552006 年 6 月 7 日 高等教育(Education V)支援計画 16.662005 年 11 月 24 日 保健分野への支援計画 483.6

出所:AfDB ウェブサイトなどより評価チーム作成

3. ユニセフ(UNICEF:United Nations Children's Fund)34

UNICEFユ ニ セ フ

は1964年からマラウイへの援助を行っている。現在,UNICEFの対マラウイ援助の

指針である「マラウイ政府国別協力プログラム(UNICEF /Government of Malawi Country Programme of Cooperation)」では,児童の生存,育成,保護,参加を通じて児童と女性の権

利を実現していくというマラウイ政府の努力を支援することを,UNICEF の 2008~2012 年の機

関における対マラウイ援助の目的としている。また,同プログラムは,「児童の権利に関する条

約(Convention on the Rights of the Children (CRC))」 , 「女子差別撤廃条約( the Convention on the Elimination of all Forms of Discrimination against Women (CEDAW))」, 「MDGs」や「ミレニアム宣言(the Millennium Declaration)」の達成も意図して策定されている。

さらに,同プログラムは,国連開発援助枠組計画(UNDAF:United Nations Development Assistance Framework) を通じて MGDS とも関連づけられている。

「マラウイ政府国別協力プログラム」は,下表に示すとおり,5 つの領域について,活動内容を

詳細に設定している。

34 UNICEF,「Malawi Annual report」(2010)等をもとに評価チーム作成

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表 3-12 UNICEF の対マラウイ援助の概観 領域 活動内容

保健と栄養

• 「Child Health Days(UNISEF が実施している子ども向けの栄

養剤の提供キャンペーン)」35による支援が 6 か月から 5 歳の

対象児童の全員に実施された。

• 深刻な栄養失調にある2万5千人の児童がコミュニティベース

の管理を通じて治療を受け,79%が回復した

• 10 万人の 5 歳未満の児童が治療を受けた

• 7,780人の乳児がHIV検査を受け,陽性だった約20%の乳児

が抗レトロウイルス治療を受けた

上下水道,衛生促進

• 14 の地域で 16 万6 千人以上が安全な飲料水へのアクセスを

獲得した

• コミュニティ主導の総合下水道整備により,2 万 5 千人が屋外

排泄から免れた

• 安全な飲料水のある学校が 82%以上に増加した

基礎教育と青少年育成

• 50 万人近い学校児童が児童に配慮した学校施設の提供を受

けた

• 未就学の 6 万人の青少年に HIV 教育を行った

• 「Fast Track Initiative Catalytic Fund」が教育分野に 9 千万ド

ルの援助を行なった

孤児,そのほかの脆弱な

児童,および児童の保護

• 30 万の幼い孤児や脆弱な児童が早期のケアを受け,コミュニ

ティベースのセンターで育てられた

• 6 歳から 18 歳の 17 万5 千人の児童が相談所を通じて心理社

会的な支援を受けた

• 児童保護のための法案が成立した

社会政策,計画アドボカ

シー,コミュニケーション

• 6 万 8 千 人 の 貧 困 児 童 が , 「 Social Cash Transfer Programm」を通じて不可欠なサービスにアクセスできるよう

になった

• 子どもを世帯主とする 5,000 の家庭が日用品を受取った

• マラウイ政府が初めて「Social Cash Transfer Programme」に

予算をつけた(30 万ドル)

• 行動改革メッセージが,ラジオを通じて 67%のマラウイ人に,

テレビを通じて 450 万人の人々に届いた 出所:UNICEF,「UNICEF/Government of Malawi Country Programme of Cooperation」(2010)より評価チーム作成

35 UNICEF ウェブサイト(http://www.unicef.org/esaro/5479_child_health_days.html)参照

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4. UNDP 36

UNDP はマラウイが独立した 1964 年から現地に事務所を設置し,マラウイにおける各種活

動を実施している。2006 年にマラウイ政府が貧困削減政策として MGDS を発表してからは,

MGDS を通じた MDGsの達成が UNDP の対マラウイ援助の中心に位置付けられている。 UNDP では,MGDSⅡが掲げる優先事項,「UNDAF 2012-2016」の課題,UNDP の統合戦

略とアフリカ地域戦略を踏まえて,「2012-2016 国別プログラム文書(Country Programme Document 2012-2016)」が策定されている。この中で,下記の 4 つのプログラムを対マラウ

イ援助の方針としている。 持続可能な経済と包括的な成長 : 起業革新,包括的市場開発,貧困撲滅ビジネスモデ

ル,金融包摂を提供する 災害危機管理,気候変動,環境,持続可能な開発 : 政策の強化,データ・情報管理の向

上,気候変動などの担当機関との共働やそのモニタリングを行う他,14 の災害危険地域で

政府・国連機関と協力して DRM を行なう MDGsの達成;ジェンダーと HIV : MDGsのすべてのジェンダー指標が遅れを取ってい

るため,新たな枠組みと行動計画を援助するために国の能力を動員する ガバナンスと公的部門のマネジメント改革 : マラウイ電力公社(Malawi Electoral

Commission)の運営能力,責任,管理能力を強化する。マラウイ人権委員会(Malawi Human Rights Commission)とオンブスパーソンの能力開発計画を援助する

UNDP マラウイ事務所では,「国別プログラム文書」と「UNDAF 行動計画 2012-2016」に沿

って,下記の6つの目標を対マラウイ援助の目標として設定している。

貧困撲滅/民間部門の包括的成長 : 2016 年までに,女性,青少年,脆弱性のある人々,

家庭が,しかるべき雇用の獲得,収入創出,貧困撲滅,民間部門の成長により便益を受け

る 災害危機管理,気候変動,環境とエネルギー : 2016 年までに,選択された地域の対象

の人々が,環境,天然資源,気候変動,災害リスクの管理により便益を受ける HIV/AIDS : 2016 年までに,国の HIV 対策を確かな情報に基づいて作成し,統一化,持

続可能的な財源の分配,効率化,法規や政策による基礎付けを行う 民主的ガバナンス : 2016 年までに,国家機関が民主的ガバナンスの促進と人権の尊重

により,透明性を向上させ,責任の所在を明らかにし,参加を促し,特に女性と児童の司法

へのアクセスを向上する 公的部門改革 : 2016 までに,公的機関が効率的な開発とサービス提供を行えるように

なるために,より効果的に財源を管理・配分・活用する

36 UNDP,「Country Programme Document 2012-2016」や UNDP ウェブサイトをもとに評価チーム作成

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ジェンダーの平等 : 2016 年までに,国家機関がジェンダーの平等を促進し,女性の置

かれた状況を改善する

2008 年~2011 年の期間の「国別プログラム文書」に基づく行動計画であった「国別プログラ

ム行動計画(UNDP’s Country Programme Action Plan (CPAP))」では,6 つの開発成果の

達成目標が設定され,目標と対応する形でプロジェクトが展開されていた。「国別プログラム行

動計画」のアウトカムとしては以下の6点があげられていた。 2011 年までの天然資源の保全強化 減災や緊急マネジメントのためのシステムを強化するとともに,国家レベルと準国家レベ

ルにおける災害対応のための効率的な体制を整備 「Three Ones」の理念に基づき,2011 年までに国家レベルと地方レベルの相応において,

HIV 対策の能力を強化 国民がグッドガバナンスと人権について積極的に主張 脆弱なグループの権利を保護するため,政策立案やマネジメント,監視,サービス提供能

力を国家レベルで強化 ジェンダー間の平等と女性のエンパワーメントの強化(社会的地位の向上)

5. IMF37

IMF は 1999 年から貧困削減・成長ファシリティの枠組みにより 貧国への融資を行ってきた

が,この金融援助に柔軟性をもたせ,より柔軟に対象国のニーズに応えるために,新たに ECFを創設している。

ECFは,貧困削減・成長ファシリティと同様に貧困の削減と成長を通じて安定性と持続性のあ

るマクロ経済の実現を目指すものであり,慢性的な国際収支問題に直面する 貧国を対象とす

る。原則として 3 年間の枠組みであるが,例外的に 2 年の延長が認められることもある。 ECF においては,対象国が一定の政策を実行して安定性と持続性のあるマクロ経済の実現

を目指すことが趣意書(letter of intent)で確認される。IMF はそれらの政策の実行に集中する

ためのプログラムへの条件付与(コンディショナリティ)を統一しており,ECF 支援プログラムは

対象国独自の開発戦略を基礎とし,社会的な保護を目的とするものでなくてはならない。 マラウイは,2010 年から 2012 年までを期間とする SDR 52.05 百万(約 79.4 百万ドル)の

ECF の承認を受けた後,2012 年7月に,期限を 3 年間とする SDR 104.1 百万(約 156.2 百万

ドル)の新たな ECF の承認を受けている(旧 ECF は解除)。新しい ECF では理事会の決定に

より SDR 13.02 百万(約 19.5 百万ドル)の緊急融資も可能となる。 この ECF の援助により実施されるマラウイ政府作成の中期的プログラムは MGDSⅡに沿っ

たものになっており,「低いインフレ率で安定したマクロ経済環境を達成と維持すること」,

37 IMF ウェブサイトをもとに評価チーム作成

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「2015 年末までに,2012 年末の約 1 月の輸入量相当額の外貨準備を 3 か月分に増加させる

こと」,「2015 年以降,GDP 成長率を 2012 年の 4.3%から 低でも 6.5%に引き上げること」と

「社会保護プログラムの規模を拡大し,調整措置が も脆弱性のある人々にもたらす悪影響を

緩和すること」を目標としている。そして,これらを達成するために,下記の戦略を掲げている。 財政政策を国内歳入の機動性強化に向け,政府支出を財源の範囲にとどめ,政府優先事

項に即したものにし,国内借入を減少させる マラウイ準備銀行の運営の独立性を高め,低いインフレ率の達成と外貨準備の構築という

目標を追及できるようにする 金融システムの深化と包括化のための構造改革を行い,投資環境と国際競争力(交通イン

フラや電力供給の向上を含む)の強化策を作成する

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3-3-3 二国間援助の動向 1. 米国

米国によるマラウイへの援助は,(1)USAID によるもの,(2)ミレニアム・チャレンジ・コーポ

レーション(MCC:Millennium Challenge Corporation)によるもの,(3)そのほか(大統領イニ

シアティブによる省庁横断的なものなど),に大きく分けられる。

(1) USAID 38 USAIDは,1964年にマラウイが英国から独立する以前から,マラウイで活動を行っている。

昨今のUSAIDのプログラムは,保健,教育,民主主義と統治,民間部門の成長,農業,環境に

焦点が当てられている。 2010 年に USAID がマラウイ向けに策定した「戦略的援助指針 2010-2015」の中では,対マ

ラウイ援助の目標として,「選択された地域における医療施設のアクセス性と活用度を高める

ための支援」や,「保健省の政策,運営などの強化による保健体制機能の拡大の支援」などが

挙げられている。

(2) MCC39 MCCは,2004年に米国議会が創設した独立の海外援助機関である。国務長官,財務長官,

USAID 長官などからなる MCC 理事会が支援対象候補国を審査し,基準を満たした国の提案

プログラムを修正・援助するという枠組みで援助を行なっている。この審査では,民主的ガバナ

ンス,人への投資,経済的自由に関する指標が用いられる。 MCC の援助には,5 年間の大規模援助である「コンパクト(Compact)」と,小規模の「個別プ

ログラム(Threshold Program)」の2つの枠組みがある。「コンパクト」による援助を受けるため

には,国として上述した指標の一定水準を満たしている必要がある。また,「個別プログラム

(Threshold Program)」を受けるためには上述の指標を満たしつつあり,かつ,今後の指標改

善を図ることに政策的に強くコミットする必要がある。 MCC はこれまで世界中で下記の分野に関連する援助を行っている。

• 農業とかんがい • 交通(道路,橋りょう,港) • 上下水道 • 医療アクセス • 金融と企業育成 • 腐敗防止イニシアティブ

38 USAID,「Strategic Direction and Procurement in Support of the POW and EHP in Malawi 2010-2015」(2010)や USAID ウ

ェブサイトをもとに評価チーム作成 39 米国政府,「Millennium Challenge Corporation」」ウェブサイト(http://www.mcc.gov/)参照

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• 土地の権利とアクセス • 教育へのアクセス

マラウイは 2004 年に「個別プログラム(Threshold Program)」の援助を受けることが認めら

れ,財政管理を改善し政治腐敗を打破するためのプログラム(総額 20,920,000 ドル)が 2005年に米国とマラウイの間で調印された。このプログラムに基づき,多数の機関の設立や,マネ

ーロンダリング防止法の制定,司法取引制度の導入が行われた。 その後マラウイは「コンパクト(Compact)」の援助を受ける資格も獲得し,2011 年4 月に電力

部門再活性化プロジェクトが採択された(総額 350,700,000 ドル)。このプロジェクトは,マラウ

イの電力網の能力と安定性の向上により電力コストを削減し,農業,製造業,サービス産業に

従事する企業や家庭の生産性を向上させることを目的とするものである。

(3) そのほかの対マラウイ援助 米国大統領が主導して行う省庁横断的なプログラムで,マラウイも支援対象となっているもの

としては,「米国大統領緊急エイズ援助計画(PEPFAR:United States President's Emergency Plan For Aids Relief)」「米国のマラリア対策のイニシアティブ(PMI:President's Malaria Initiative)」「国際保険イニシアティブ(GHI:Global Health Initiative)」「国際飢餓・食料安全保障

イニシアティブ(FtF:Feed the Future)」などがある。以下に概要をとりまとめた。 「米国大統領緊急エイズ援助計画((PEPFAR)」40

-HIV/AIDS 対策を緊急的なものから国家の持続可能なプログラムへ移行させること,パ

ートナー国の対応能力を強化することなどを目的とする。 -国務省,USAID,防衛省などが実施機関。 -2009 年度から 2011 年度にかけて,マラウイは PEPFAR から 166 百万ドルの援助を受

けた。これにより,28 万 9,000 人の HIV 陽性患者の治療,15 万 3,100 人の孤児と脆弱性

のある児童に対する支援,18 万 7,000 人の HIV 感染妊婦への援助などが行われた。

「米国のマラリア対策のイニシアティブ(PMI)」41 -アフリカの 19 か国でマラリアへの感染予防と治療を行い,マラリアによる死亡を半減す

ることを目標とする。 -USAID が主導し,福祉省と実施する。 -援助予算総額は 2011 年度で 578 百万ドルであった。 -マラウイにおける 2012 年度の予算総額は,23.4 百万ドル。

40 米国政府,「United States President’s Emergency Plan For Aids Relief」ウェブサイト(http://www.pepfar.gov/)参照。 41 USAID,「PRESIDENT’S MALARIA INITIATIVE Malaria Operational Plan (MOP) MALAWI Year Six -- FY 2012」(2010)参照。

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「国際保険イニシアティブ(GHI)」42 -主に,「女性への投資,母親の保護」「AIDS の無い世代の創設」「自己と世界の課題の

解決(投資の拡大とレシピエントの自己充足)」に重点を置いている。 -USAID,国務省,保健省などが主導して行う。 -マラウイにおいては,「保健分野の人材育成」「医療インフラ不足対策」「リーダーシップ・

統治・運営・責任性の向上」が重視されている。 -2009 年に終了した 6 年間の人材育成計画では 95 百万ドル以上が援助された43。

「国際飢餓・食料安全保障イニシアティブ(FtF)」44

-世界の空腹と食糧安全保障に関するイニシアティブである。 -マラウイにおける中核的な投資対象としては,「女性と児童の栄養状態の改善」「市場開

発と栄養源の増加を目的とするバリューチェーンへの投資」「政策環境向上のための政府

との取組み」が掲げられている。 2. 英国(DFID)45

英国は,2007年から2009年の期間に,マラウイに対する援助の17%を拠出しており 大の

ドナーの一つとなっている。今後,2015年までは年間平均93百万ポンドの援助を予定している。

DFID における対マラウイ援助の 優先事項は,「特に保健,上下水道,司法へのアクセスとい

った基礎的サービスの向上と,女児と女性の重視」,「成長のための民間部門の原動力化」,

「国の会計監査と地方の説明責任の有効性と透明性の向上と,貧困者と脆弱な者に対して公

的リソースが 大の影響を与えることの確実化」となっている。 英国の支援計画である「2011-2015 実施計画(Operational Plan 2011-2015)」は,英国も作

成に関与したマラウイ政府の MGDSⅡ2011-2016 の 9 つの優先事項と成果枠組みに沿うもの

となっている。具体的に,「2011-2015 実施計画(Operational Plan 2011-2015)」の目標は以下

のとおりとなっている。

富の創造 : 2014 年までに DFID の援助により 15,100 人が金融サービス受けられるよう

になる 貧困・飢餓・脆弱性 : 2015 年 3 月までに DFID に直接支援された 35 万人が,自然災害

や気候変動の影響に対処できようになる 保健/HIV : 2011 年から 2014 年までの累積で,113,600 人が,看護師,助産師,医師

の助けを借りて出産を行なう ; 2011 年から 2014 年までの累積で,22,500 人の女性が

DFID の援助を通じて近代的な出産計画を行うようになる

42 米国政府,「Global Health Initiative」ウェブサイト参照 43 米国政府,「Malawi Global Health Initiative Strategy Document 」ウェブサイト参照 44

米国政府,「Feed The Future, “Malawi Multi-Year Strategy,” 」ウェブサイト 45 DFID,「Operational Plan 2011-2015」や DFID ウェブサイトより評価チーム作成

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教育 : 2014 年に,DFID の援助により 443,000 人の児童(うち女児が 233,000 人)が小

学校に通学する ; 2014 年に,DFDI の奨学金で 15,000 人の女児が中学校に通学する 上下水道 : 2011 年から 2014 年までの累積で,750,000 人(うち女性が 385,500 人,

51%)が清潔な飲料水と改善された下水設備を持続的に利用することができるようになる 統治と社会保障 : 2014 年までに,DFID の援助を通じて 406,900 人の女児/女性が社

会保障サービスと司法サービスを受けられるようになる

DFID による 2010 年以降のセクター別の計画支援額を下表に示す。

表 3-13 DFID による対マラウイ援助の計画額(単位:千ポンド) 年度

優先事項 2010/11 2011/12 2012/13 2013/14 2014/15 計(2011~15)

富の創出 500 2,201 2,760 6,750 9,900 21,611気候変動 - 0 268 0 0 268統治と社会保

障 4,401 6,748 11,900 11,268 8,244 38,160

教育 12,241 17,917 21,000 23,000 24,666 86,583保健 19,666 10,723 23,296 23,000 24,150 81,169マラリア対策 0 0 0 0 0 0HIV/Aids 4,565 5,107 5,000 5,000 5,000 20,107その他保健 2,568 1,239 7,800 7,500 7,500 24,039上下水道 500 629 1,500 7,382 7,580 17,091貧困・飢餓・

弱者 9,739 21,868 10,976 10,600 10,460 53,904

人道 469 325 500 500 500 1,825そ の ほ か のMDGs-GBS 19,000 - - - - -

国際協力 - - - - - -総計 73,649 66,757 85,000 95,000 98,000 344,757出所:DFID 関係資料より評価チーム作成

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昨今,マラウイにおいて実施された主要なプロジェクトを下表に示す。

表 3-14 DFID による昨今の対マラウイ援助のプロジェクトリスト プロジェクト名 状態 予算 詳細

保健部門援助プログラム 継続中 £99,230,000

5 歳以下の子どもに対する肺炎治療,親

に対する結核治療,医療従事者の派

遣,出産計画の提供,成人に対する抗レ

トロウイルス剤療法,児童の治療,マラ

リアの治療,蚊帳の提供,など マラウイ保健セクター・ ワイド・アプローチ援助 完了 £98,731,850

保健に関する MDGs達成のための,財

政マネジメント・調達による支援

教育部門改革プログラム 継続中 £50,000,000マラウイ政府と開発パートナーによる効

果的で効率的な教育部門実行計画の実

教育部門技術的協力援助 完了 £49,469,710学びの質とアクセス・継続という面にお

けるマラウイの小学校の持続的な改善

を一般化 農業-農家補助金 プログラム 継続中 £32,037,500

価格的に購入可能な高品質のメイズと

豆の種子を家庭に提供 女児の通学の継続 継続中 £27,319,820 小学校と中学校を卒業する女児の増加 マラウイ上下水道 プログラム 継続中 £19,520,000

地方のコミュニティで改善された上下水

道設備へのアクセスを増加 マラウイ貧困削減予算援

助 2010/11

完了 £19,056,000成長と基礎的公共サービスに関する政

府の支出増とマクロ経済の安定性の促

マラウイ貧困削減予算 2009/10 完了 £19,000,000

マクロ経済の安定と成長,政府支出の

効率性と効果の向上,サービス提供の

援助 助成とメイズ市場介入 2007~11 完了 £18,400,000

農業生産の増加とマラウイの肥料,種

子,メイズ市場の開発の促進 出所:DFID ウェブサイトより評価チーム作成

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3-4 日本の対マラウイ援助動向

3-4-1 援助の基本方針

マラウイに対する国別援助方針は,2012 年に初めて策定され,援助の意義や基本方針,重

点分野などが明示されている。

対マラウイ共和国 国別援助方針 平成 24 年 4 月

1.援助の意義 マラウイは人口(約 1,500 万人)の 8 割近くが小規模農家として農業に従事する農業国

で,同国経済は主食のメイズや主要輸出産品であるタバコ栽培などの一次産品に依存してい

るが,典型的な天水農業が中心である。近年,食糧事情は改善しているが,かんがい開発の

遅れや低い農業生産性などから依然として経済基盤は脆弱であり,一人当たり所得水準も低

い 1。 また,内陸国であることから輸出産品の輸送コストも割高で,著しい電力不足により停電も頻

発しており,こうした問題がマラウイの経済成長や社会開発の阻害要因となっている。今後,農

業生産性の向上やインフラ整備などを通じて持続的な経済発展と社会開発を進めていくことが

緊急の課題となっている。 近年マラウイではレアアースなどの潜在的な鉱物資源開発に注目が集まっており,さらに周

囲をザンビア,モザンビークなどの資源国に囲まれ,これらの資源輸出の要路として位置する

ことから,対マラウイ支援は,南部アフリカ地域の成長や資源の安定供給にもつながる。これら

の支援は,貧困削減や人間の安全保障,および TICAD2 プロセスによる支援方針とも合致す

る。 2.援助の基本方針(大目標):深刻な貧困からの脱却のための支援

マラウイでは 貧国からの脱出を目標に開発に取り組んでおり,マラウイ成長・開発戦略

(MGDS)で示された 9 つの優先課題を踏まえ 3,国全体の経済成長とともに国民の基礎的サ

ービスへのアクセスの確保が不可欠である。このため,我が国は国民の 8 割が従事する農

業および今後の開発が期待される鉱業分野や,これら産業の発展を底上げするインフラ整備,

および教育・水などの基礎的社会サービス分野を中心に,貧困削減に向けた取組を支援する。

――――――――――― 1 一人当たり GNI が 330 ドル(2010 年),人間開発指標も 169 か国中 153 位(同)。

2 アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development)。アフリカの開発をテーマとする国

際会議。1993 年以降,日本政府が主導し,国連,国連開発計画(UNDP)および世界銀行などと共同で開催。5 年

に 1 回の首脳会合に加えて,閣僚級会合などを開催しており,2008 年 5 月には,横浜において 4 回目となる

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TICAD IV(第 4 回アフリカ開発会議)を開催した。

3 ①農業・食料安全保障,②かんがい・水開発,③輸送・交通インフラ,④エネルギー開発,⑤統合された地方開

発,⑥HIV/ AIDS 対策とその予防,⑦教育・技術開発,⑧気候変動・天然資源・環境および⑨青年育成・能力開発

3.重点分野(中目標) (1)農業・鉱業などの産業育成のための基盤整備

高い人口増加率に対して食料自給を維持するためには,主要産業である農業の生産性向上

は不可欠であり,かんがい開発や土壌肥沃度向上のための支援を行う。また,環境保全・気候

変動への適応策の一環として,植林や流域保全を含む自然資源管理のための協力を行う。 さらに,外貨獲得源として期待される鉱物資源の開発を支援するとともに,これらの産業の

効果的な発展を目指し,国際回廊およびその周辺地域における効率的な人の移動と物流を促

進するため,運輸交通分野などのインフラ整備を支援する。

(2)基礎的社会サービスの向上 持続的経済成長の基盤として,マラウイでは Basic Human Needs(BHN)の充足が引き続

き重要な課題であるため,これまでの日本の長年にわたる支援の実績・経験を活かし,教育お

よび水分野を中心として基礎的サービスへのアクセスと質の改善を目指す。 教育分野では,多くのドナーの支援が初等教育に集中する中,中等教育における就学率や

教育の質が圧倒的に低い状況にあるため,我が国が比較優位を有する中等教育の整備・拡充

を重点的に支援し,国の開発の担い手づくりに貢献する。 水分野では,近年乱開発が進み水資源の枯渇が懸念されている状況を踏まえ,水資源開発

戦略を策定し,持続可能な水利用・管理を推進するとともに,給水施設の修復・維持管理体制

強化を通じて既存の給水施設を効率的に活用し,安定的な給水率の向上を支援する。

4.留意事項 (1)人材育成の重視

我が国の支援を効果的に実施するためにも,長期的視野で,行政分野における人材育成と

組織能力強化を支援する必要がある。

(2)ボランティア事業の戦略性強化 従来から,多くの青年海外協力隊員が派遣されることで,親日派の形成に貢献してきた。今

後,各協力プログラムにおける青年海外協力隊およびシニアボランティア派遣と他のプロジェ

クトとを一層連携させることにより,成果の 大化を図る。 (了)

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3-4-2 援助の実績

日本のマラウイに対する ODA は,1971 年に JOCV を派遣したことに始まり,技術協力を中

心とした援助を展開してきた。1980 年より無償資金協力および円借款を実施したが,マラウイ

の財政状況の悪化に伴い 2004 年に円借款の債務放棄に伴う債務免除を行って以降,円借款

は供与されていない。なお,マラウイに対する JOCV の累積派遣人数は,1,581 名と世界 多

(2012 年現在)となっている。 2002 年度以降の援助実績は,下表のとおりである。

表 3-15 日本の対マラウイ援助実績

日本の対マラウイ ODA 実績(円借款・無償資金協力年度 E/N ベース,技術協力年度経費ベース,単位:億円)

年度 円借款 無償資金協力 技術協力 合計 2002 - 29.76 14.72 44.48 2003 - 9.05 14.58 23.63 2004 - 6.86 15.80 22.66 2005 - 18.35 11.39 29.74 2006 - 15.57 13.29 28.86 2007 − 23.50 13.06 36.56 2008 − 20.03 15.01 35.04 2009 − 33.22 17.59 50.81 2010 − 40.68 14.22 54.90 累計 331.49 599.79 345.26 -

注:円借款の累計は債務繰延・債務免除を除く(2004 年度に 282.25 億円,2006 年度に 227.79 億円の債務免除を実施)。 2010 年度の日本全体の実績については,JICA 実績のみ。 出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成

0.00

50.00

100.00

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

暦年

億円

円借款 無償資金協力 技術協力 政府開発援助計

図 3-8 2002 年以降の日本による対マラウイ援助の動向 出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成

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1. 無償資金協力

(1) 一般プロジェクト無償資金協力 2003 年度以降に実施された一般プロジェクト無償は 31 件であり,教育分野,インフラ分野,

医療・保健分野の援助が多く,供与金額は数千万円から 10 数億円の規模まで多様である。 各案件の供与金額および概要は以下のとおりである。

表 3-16 2003 年度以降の日本の対マラウイ援助(一般プロジェクト無償資金協力)

年度 案件名 供与金額 概要

2011 第二次中等学校改善計画 10.85億円 ・この協力は,マラウイ北部および中部の中等学校6校に対し一般教室,理科実験室

および図書室等並びに女子寮(農村部における5校分)を増設するための資金を供

与するものある。

2011 第二次国道一号線南ルクル橋

架け替え計画 1.11億円

・本計画は,橋脚の護岸工事等を完了させるために必要な資金を供与するものであ

る。

2010 地下水開発計画 4.26億円 ・この協力は,対象地域にハンドポンプ付き深井戸給水施設を120箇所整備するも

のである。

2010 カムズ国際空港航空航法シス

テム改修計画 7.78億円

・本計画は,厳しい財政事情をかかえ十分な整備を行うことができずにいるマラウイ

に代わり,同空港の改修を行うものである。

2010 中等学校改善計画 11.98億円 ・この協力は,マラウイ南部州および中央州の中等学校6校に対し一般教室,理科実

験室および図書室など並びに女子寮(農村部における4校分)を増設するための資

金を供与するものである。

2010 気候変動による自然災害対処

能力向上計画 5.00億円

・この協力は,緊急時の給水,築堤・堤防補強および井戸掘削などを行うための資機

材の整備に必要な資金を供与するものである。

2010 マラウイ警察楽器整備計画 0.34億円 ・本計画は,マラウイにおける音楽活動を通じた文化振興,医療・教育・治安面など

の広報・啓発活動を通じた社会開発のために,マラウイ警察音楽隊の活動に必要な

楽器を整備するものである。

2010 ブランタイヤ市道路網整備計画

(第二次) 8.99億円

・この協力は,国際回廊の結節点であるブランタイヤ市における交通状況の改善の

ため必要な資金を供与するものである。

2010 森林保全計画 17.00億円 ・この協力は,マラウイの地方電化を促進し,地方での薪炭使用のための森林伐採

を抑制するため,将来のスマートグリッドの導入をも念頭に置いた配電・変電用の資

機材の整備に必要な資金を供与するものである。

2009 国道1号線南ルクル橋架け替え

計画 8.83億円

・本件協力は,ルクル橋を2車線橋の南ルクル橋として架け替える際に必要な資金を

供与するものである。

2009 太陽光を活用したクリーンエネ

ルギー導入計画 6.60億円

・本計画は,首都リロングウェの国際空港であるカムズ空港施設の電力系統に連系

する太陽光発電システムの整備に必要な資金を供与するものである。

2009 ノン・プロジェクト無償 6.00億円

・マラウイ経済は,農産物価格の国際市況の変動に左右される脆弱な状態に置かれ

ており,日本政府は,2008年5月に開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)

において,アフリカにおける貧困の削減と平和の定着を支持していくことを表明し

た。

2008 ブランタイヤ市道路網整備計画 5.29億円 ・マラウイ政府地方自治・開発省が,同国南部のブランタイヤ市内の幹線道路2路線

(7.9km)の改修・整備を実施するための協力を行う。今回の協力は計画の第2期で

あり,チペンベレ・ハイウェイおよびリビングストン通りの改修(約4.36km)を行う。

2008 第二次部ワンジェバレーかん

がい施設復旧計画 0.35億円

・マラウイ農業食糧安全保障省が,「ブワンジェバレーかんがい施設復旧計画」にお

いて仮設建設した迂回水路で,大規模降雨により流出した土地の現状復帰の工事を

行う計画の実施に必要な資金を供与する。

2007 食糧援助(WFP経由) 4.20億円 ・マラウイ共和国内の社会的弱者の食糧事情を改善すべく,米,メイズの購入および

その輸送に必要な資金をWFPに供与する。

2007 リロングウェ西地区地下水開発

計画 2.87億円

・マラウイ政府水資源開発省が,地下水源開発のため,同国中央部のリロングウェ

県西南部の2郡において深井戸施設の建設を実施するための資金を供与する。(今

回は計画の3期目であり,コンゴニ郡61本,カロロ郡55本の合計116本の深井戸建

設を行う。)

2007 ブランタイヤ市道路網整備計画 8.54億円 ・マラウイ政府地方自治・開発省が,同国南部のブランタイヤ市内の幹線道路2路線

(7.9km)の改修・整備を実施するための協力を行う。今回の協力は計画の第1期で

あり,「チペンベレ・ハイウェイ」の改修を中心に行う。

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年度 案件名 供与金額 概要

2006 食糧援助(WFP経由) 2.0億円

・マラウイ,スワジランド,ザンビア,ジンバブエを含む南部アフリカ地域は,世界で

も高いHIV/AIDSの感染地域となっており,このことが労働生産者層に影響を及ぼ

し,その結果,農業生産性低下や食糧生産量減少につながり,WFPによれば近く

140万人の食糧支援が必要となるとしている。 ・WFPはこれらの国々を含む南部アフリカ地域におけるHIV/AIDS患者などの社会

的弱者に対象を絞った食糧支援事業を2005年1月から行っており,2006年11月から

2007年3月の期間については430万人の裨益者を目標としている。

2006 地方保健医療施設改善計画 7.17億円

・マラウイの保健医療事情は,サハラ以南アフリカ諸国の中でも劣悪であるにもかか

わらず,地方部の保健医療施設の多くは建設から40年~60年以上を経て老朽化が

激しく全国広範囲に亘っており,同国の限られた保健医療予算で対応するには困難

であるため,本計画では,地方保健医療施設の改善および機材の調達に必要な資

金を供与するものとする。

2006 リロングウェ地下水開発計画

(第2期) 3.71億円

・本計画では,給水率23%という給水事情が悪い地域であるリロングウェ県西南部

カロロ郡,コンゴニ郡を対象に,ハンドポンプ付き深井戸施設の建設,右の工事に必

要な井戸掘削関連機材の調達,および同政府が進めるコミュニティベースの維持管

理プログラムの技術指導を行うものとする。

2006 ブランジェバレーかんがい施設

復旧計画 9.6億円

本計画では,ブワンジェバレーかんがい施設の復旧とそれに伴うかんがい農地の

均平作業や農地再配分の支援,住民の水管理や洪水被害軽減・補修工法に対する

技術支援を行うものとする。

2005 ノン・プロジェクト無償 6.00億円

・マラウイの一人当たりGNIは低いが,世界銀行およびIMFの支援の構造調整の

下,民主化と貧困削減を目的とした社会経済改革を積極的に推進している。このノ

ン・プロジェクト無償資金協力は,係る貧困削減計画に取り組んでいるマラウイに対

し支援するもので,この計画の一層の推進に必要な商品を購入する代金の支払い

のために使用される。

2005 ブワンジェバレーかんがい施設

復旧計画(詳細設計) 0.38億円

本計画では,ブワンジェバレーかんがい施設の復旧とそれに伴うかんがい農地の

均平作業や農地再配分の支援,住民の水管理や洪水被害軽減・補修工法に対する

技術支援を行うものである。

2005 バラカーサリマ間国道五号線橋

りょう架け替え計画 6.91億円

・本計画は,国道5号線南部区間サリマ-バラカ間にある,洪水によって被災し損傷が

激しく,技術的にも修復が難しい4橋の架け替えにつき,マラウイ国政府がわが国に

無償資金協力を要請してきたものである。

2005 リロングウェ西地区地下水開発

計画(第1期) 3.06億円

・本計画は,23%という非常に低い給水率であるリロングウェ県西南部カロロ郡,コ

ンゴニ郡を対象に,ハンドポンプ付き深井戸施設の建設,右の工事に必要な井戸掘

削関連機材の調達,および同政府が進めるコミュニティベースの維持管理プログラ

ムの技術指導を行うものである。

2005 食糧援助(WFP経由) 2.00億円 ・WFPより国際社会に対してアピールが発出されたことを受け,人道的見地から,ま

た地域の安定と復興を支援する観点から,WFPを通じ,米・メイズなどの穀物を購入

するための資金を供与する。

2004 ドマシ教員養成校改善計画 5.68億円 ・本計画は,ドマシ教員養成校において中等教育養成学校として必要な施設の改善

および機材の整備に必要な資金を供与するものである。

2004 食糧援助(WFP経由) 1.00億円

・紛争,干ばつ,高いHIV/AIDS感染率による貧困などにより深刻な食糧不足に見舞

われているマラウイに対し,WFPより国際社会に対しアピールが発出されたことを

受けて,人道的見地より,WFPを通じ,米などの穀物を購入するための資金を供与

するものである。

2003 マラリア対策計画 2.77億円 ・本計画では,マラリア感染リスクの高い5歳未満児と妊産婦を主なターゲットにした

蚊帳の配布に必要な資金を供与するものである。

2003 債務救済無償 5.25億円

・この無償資金協力は,マラウイ政府が1998年3月31日までにわが国政府と行った

円借款取決めに従って締結された借款契約に基づき負っている債務のうち,平成15年1月31日までに返済期限の到来した元本および約定利息のうちの実際の返済額

に相当する額を供与するもので,債務救済措置の一つである。

2003 食糧援助(WFP経由) 1億円

・アフリカをはじめとする世界各域においては,紛争,干ばつなどにより深刻な飢饉

に直面し,大量の食糧不足が見込まれている状況の下,WFPより国際社会に対し

緊急アピールが発出されたことを受けて,わが国としては,人道的見地より,WFPを

通じ,米・小麦などの穀物を購入するための資金を供与することとしたものである。 出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成

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(2) 日本 NGO 連携無償資金協力 2004 年度以降に実施された日本 NGO 連携無償資金協力は 12 件であり,農業・農村開発

分野および医療・保健分野が多く,供与金額は数百万円から数千万円規模である。 各案件の供与金額および概要は以下のとおりである。

表 3-17 2003 年度以降の日本の対マラウイ援助(日本 NGO 連携無償資金協力)

年度 案件名 供与金額 概要

2011 循環型農業と衛生改善による包

括的な環境保全型村落開発事業

(第2フェーズ) 0.390億円

・本事業は,マラウイ共和国中部州ドーワ県ナンブーマ地区26か村を対象として,

フェーズ1で組織化された村落内の各種委員会と協働で,井戸(12基)やエコサン

トイレ※(60基)の建設やフェーズ1で立ち上げたローカルシードバンク運営指導に

加えて,新たに蚊帳配布および啓蒙活動による感染症対策やヒマワリ油を用いた

商品開発および販売事業を開始する。

※エコサントイレ:エコロジカル・サニテーション・トイレの略で,し尿を分離して衛

生的に処理し,堆肥としての利用を可能とする。

2011 ムジンバ県における地域活性化

に向けた農民自立支援プロジェク

ト 0.487億円

・ムジンバ県内の約420世帯の小規模農家を対象に,(1)営農技術などの改善に

向けた研修を実施し,(2)習得技術の実践による生産性と収入の向上を図り,(3)

成功・失敗体験をノウハウとして他の農家に伝授する「伝達農家」の育成を行う。

この一連のプロセスを地域活性化のモデルとして国内全土への波及を狙う3か年

事業。 ・今次第3フェーズは 終年として,主に,農民グループのレベルアップに向けた

農業経営能力の強化,伝達農家が実施する研修の質の向上と組織強化に向けた

フォローアップ支援,また,政府による普及手法の採用に向けた働きかけなど,

終了後の自立発展を見据えた活動を行う。

2010 HIV/AIDS検査相談所(HTCセン

ター)整備計画事業 (第3フェー

ズ) 0.939億円

2010 循環型農業と衛生改善による包

括的な環境保全型村落開発事業

(第1フェーズ) 0.250億円

2010 マラウイ共和国中部ンコタコタ県

における保健・医療・衛生および

栄養改善事業(フェーズ3) 0.544億円

2010 ムジンバ県における地域活性化

に向けた農民自立支援プロジェク

ト(第2フェーズ) 0.330億円

2009 マラウイ共和国中部ンコタコタ県

における保健・医療・衛生および

栄養改善事業(フェーズ2) 0.499億円

2009 マラウイ共和国ムジンバ県におけ

る地域開発活性化に向けた農村

支援プロジェクト 0.103億円

2008 マラウイ共和国中部ンコタコタ県

における保健・医療・衛生および

栄養改善事業(フェーズ1) 0.445億円

2008 マラウイにおけるHIV/AIDS検査

相談所(HTCセンター)整備計画

事業 (第2フェーズ) 0.999億円

2007

マラウイにおけるHIV/AIDS検査

相 談 所 ( VCT : Voluntary Counseling and Confidential Testing)整備計画事業

0.893億円

2004 マラウイ・タンザニア国境地域に

おけるHIV/AIDS対策事業 0.099億円

出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成

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(3) 草の根・人間の安全保障無償資金協力 2003 年度以降に実施された草の根・人間の安全保障無償資金協力は 18 件であり,水資源

開発分野,教育分野,医療・保健分野が多く,供与金額は 2 千万円弱の一件をのぞいて数百万

円規模である。 各案件の供与金額は以下のとおりである。

表 3-18 2003 年度以降の日本の対マラウイ援助(草の根・人間の安全保障無償資金協力)

年度 案件名 供与金額(単位:円)

民生環境 19,684,894

2011 カスング県サンテ地区・ウィンベ地区安全な水供給計画 9,976,633

2010 カトゥンガ地区安全な水供給計画 4,749,256

2008 ンジェワ地区井戸建設計画 4,959,005

教育研究 52,537,943

2011 ングウェニャ小学校校舎建設計画 9,934,803

2011 カフクレ地域中高等学校女子寮建設計画 9,557,888

2011 カスング中高等学校施設修復計画 8,156,049

2010 グブランタイヤ市ンディランデ・ヒルビュー小学校校舎増築計画 4,992,716

2009 ンシガリラ中高等学校 孤児のための無料中高等学校拡大計画 4,949,871

2009 マンゴチ県マンゴチ中高等学校女子寮建設計画 4,781,878

2008 ナテンジェ研修所改修計画 4,970,418

2008 ゼヨ小学校建設計画 2,490,068

2003 ベンブ小学校普通教室増築計画 2,704,252

医療保健 57,737,915

2011 ムジンバ県ムコマ・ヘルスセンター設備修復計画 2,664,215

2010 ダエヤン・ルケ・ミッション病院CTスキャン医療サービス導入計画 19,928,000

2007 クリニック太陽光発電電化計画 8,797,092

2004 第2次クリニック太陽光発電電化計画 8,243,950

農林水産 4,935,966

2009 ンカタベイ県チクウィナ研修所内農民研修者用宿泊所建設計画 4,935,966

通信運輸 0

-

その他 3,929,965

2009 カロンガ地震被災地カウンセリング計画 3,929,965

出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成

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2. 技術協力

2004 年度以降に実施された主要な技術協力プロジェクトは 16 件であり,対象分野および具

体的なインプット(機材,専門家,資金など)の種類および量は多岐にわたる。 各案件の概要は以下のとおりである。

表 3-19 2003 年度以降の日本の対マラウイ援助(技術協力)

年度 案件名 インプット 概要 相手国機関名 2006 ~2009

小規模かんがい開発技術協力プロジェクト

機材供与:約20,896 千円 ローカルコスト負担: 約69,572 千円

日本側投入: 1. 長期専門家 2名 2. 短期専門家 3. 機材供与 4. 普及員向け国内研修 5. かんがい技術者向け本邦研修

相手国側投入: 1. 受益農民グループからの労働力提

供 2. 小規模かんがい施設建設のための

諸資材 3. 地方普及局,県普及局,普及所,各

レベルでの人的支援 4. 事務所スペース 5. かんがい局からのカウンターパート

人材

・マラウイ国において農業は,持続的な経済成長と貧困削

減への鍵となる重要なセクターと位置付けられているが,

そのほとんどは天水に依存する自給自足的農業であるた

め,農業生産性は低く干ばつなどの自然災害に対し脆弱

である。 ・しかし,これらの諸問題の解決策としてのかんがい農業

開発は,政府の財源,および参加型開発を推進できる人

材の極端な不足,技術の不足などの制約から遅々として

進んでいない。 ・こうした背景から,JICAは開発調査や専門家派遣を行い

さらなる実証的な技術支援を行ってきた。これに対し,先

方政府から当該技術協力のさらなる普及・展開が要請さ

れた。

かんがい水資源開

発省

2011 ~2015

地方給水運営維持管理プロジェクト

日本側投入 : 1. 専門家派遣 2. 機材供与(事務機器,車両,バイク,

など)

相手国側投入: 1. 人件費,専門家執務スペース,など

・マラウイでは,都市部に比べて農村部の安全な水に対

するアクセス率は約50%と低い。 ・これに起因する様々な課題に対応するため,マラウイ政

府は,世界銀行やUNICEFなどの支援により,CBMによ

る維持管理フレームワークの構築に取り組んでいるが,

その確立までにはいまだ至っていない。 ・このような背景の下,マラウイ国政府は「地方給水運営

維持管理プロジェクト」を日本に要請,これを受け,我が国

は,2010年11月に詳細計画策定調査団を派遣し,技術協

力の必要性を確認,協力内容の枠組みについて先方政

府と合意した。

農業かんがい水資

源開発省

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年度 案件名 インプット 概要 相手国機関名 2007 ~2012

シレ川中流域における

村落振興・森林復旧プロジェクト

日本側投入: 総額約4.1億円 1. 長期専門家 3名 2. 短期専門家 2名 3. 資機材 4. 現地活動費

相手国側投入: 総額約0.5億円 1. 人員の配置 2. 建物・施設 3. プロジェクト予算

・シレ川中流域は,当国 大の商業都市ブランタイヤ市の

北部に位置するため,同市への農産物,電力などの供給

において重要な地位を占めるが,同地域の森林資源は

人口増加に伴う薪の採取と畑作地の拡大により急激に減

少し,同地域のみならず広範な地域に悪影響が発生する

に至った。 ・このため,マラウイ国政府は日本政府に対し,当地域の

森林資源の減少を食い止める方策についての支援を依

頼し,我が国は1999年から2000年までにマスタープラン

調査を,2002年から2004年までに開発調査による実証

調査を実施した。 ・調査の結果,同手法のパイロット地域における一定の成

果が確認されたことから,マラウイ国政府は我が国に対

し,これまでの協力で有効性の実証された手法をより広

範な地域に拡大することを目的とする技術協力プロジェク

トの実施を要請した。

鉱物資源エネルギ

ー環境省

2011 ~2014

中規模かんがい開発プロジェクト

3.5 億円

日本側投入: 1. 長期専門家 2. 短期専門家 3. その他,必要に応じて人材を派遣 4. 供与機材(車輌など) 5. 研修員受入れ

6. 活動に必要な費用の一部

相手国側投入: 1. カウンターパート人件費 2. プロジェクト事務所 3. 活動に必要な費用

・本プロジェクトは,マラウイ共和国のかんがいガイドライ

ンに基づき,プロジェクト対象地域におけるかんがい事業

(新規開発・改修)の実施を通じて,計画・施工管理~維持

管理にかかるかんがい事業関係者(かんがい技師・農業

普及員)の能力強化,並びにモニタリング・評価体制の構

築を目的とするプロジェクトである。

農業かんがい水資

源開発省

2005 ~2005

かんがい施設管理

日本側投入: 1. 個別専門家1名(6.0 M/M) 2. 現地業務費 3. (必要に応じ)機材

相手国側投入: 1. カウンターパートの配置 2. 専門家執務スペースの提供

・日本政府は,マラウイ国政府の要請に基づき,かんがい

施設などの建設を行ったが,大規模な洪水による堤防の

決壊や幹線水路の破壊により十分なかんがい用水の供

給ができず,当初期待した効果を得られていない状況に

ある。 ・このため,ブワンジェバレーかんがい地区を対象とし

て,重機を用いたかんがい施設管理(特に圃場整備)に係

る技術指導を行い,圃場整備を促進することを目的として

専門家を派遣する。また,OJTによる圃場整備の結果とし

て,かんがい可能面積の拡大も目的とする。

農業かんがい食糧

安全保障省

2006 ~2010

医療機材維持管理プログラム

支援プロジェクト

日本側投入: 1. 長期専門家:1名

(1年次:1,000万円,2年次以降:

2,000万円×3か年, 終年次:600万

円) 2. ローカルコンサルタント:1名

(1年次:990万円,2年次以降:1,100万円×3か年, 終年次:200万円)

3. 機材供与:現地研修用機材など 4. 在外事業強化費(研修実施費など)

相手国側投入: 1. カウンターパート配置 2. JICA専門家執務室 3. ローカルコスト負担:研修実施経費

・地方部4か所に建設された州維持管理ユニット,県の医

療機材技術者およびユーザーに対する医療機材維持管

理能力強化のための技術支援の要請があった。

保健省

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年度 案件名 インプット 概要 相手国機関名 2006 ~2009

地方電化推進プロジェクト

日本側投入: 1. 長期専門家:1名

短期専門家:4名 2. 本邦/第三国研修 年間2人×3週間

程度 3. 機材供与(コンピュータなど) 4. 運営費用 5. 調査団

相手国側投入: 1. カウンターパートの配置 2. 執務室の提供 3. 現地調査の出張費

・エネルギー鉱業天然資源省エネルギー局地方電化課を

中心とするマラウイ政府の地方電化事業実施能力の向上

を図り,マラウイ政府が進める地方電化プログラムの計

画実施能力を改善することを目的として実施するものであ

る。

エネルギー鉱山省

(当時)

2011 ~2015

持続可能な土地管理促進プロジェク

ト 2.9 億円

日本側投入 : 1. 専門家(短期・長期) 2. カウンターパート研修 3. 資機材(車輌など)

相手国側投入: 1. 人員配置 2. 施設など 3. 管理費(人件費,光熱費,など)

・本事業は,マラウイ共和国が促進する持続的土地管理

技術(Sustainable Land Management)について,土壌肥

沃度向上技術を強化すると同時に,既存の技術をベース

に専門技術員・普及員を対象とした研修を行うことを通じ,

農業食料安全保障省の持続的土地管理技術の普及能力

を向上させることを目的とする。

農業かんがい水資

源開発省

2006 ~2010

県教育開発計画

制度化プロジェクト

2.1億円

日本側投入: 1. 長期専門家: 1名 2. 短期専門家: 1名 3. 供与機材: 車両,コンピュータ,など 4. 在外事業強化費: 研修費,など 5. 調査団 6. 本邦研修: 2009年度3名,2010年度

1名

相手国側投入: 1. カウンターパートの配置 2. コアトレーナーの配置 3. プロジェクト執務室の提供 4. プロジェクト経常経費:研修費,など

・マラウイ共和国では,初等教育レベルの就学率が急速

に増加する一方で,就学者数の増加に対する教育施設や

教材,教員の不足が顕在化し,さらには初等学校の中途

退学率増加や,各教育レベルの試験合格率が低下する

など,教育の質の低下も深刻な課題となっている。 ・2000年11月には,「全国スクールマッピング・マイクロプ

ランニングプロジェクト(NSMMP)」が開始され,また上記

調査のフェーズ2として2003年から「全国地方教育支援計

画策定調査」が実施された。 ・上記2つの開発調査による支援を通じて,県教育開発計

画の意義は関係者に認識されることになったものの,県

教育開発計画が継続的に策定・更新されるためには県教

育行政官の能力向上と制度化に向けたさらなる取組が不

可欠であることから,技術協力プロジェクト「県教育開発計

画制度化プロジェクト」の実施が日本国政府に要請され

た。

教育科学技術省

2009 ~2011

投資計画(PSIP

能力向上プロジェクト

日本側投入: 1. 長期専門家:1名 2. 短期専門家 3. ローカルコンサルタント 4. 機材 PC他 5. ワークショップ・セミナー開催経費 6. 本邦研修・第3国研修・現地国内研修

相手国側投入: 1. マラウイ経済計画開発省事務次官,

PSIP部が属する開発局の局長,副局

長,スタッフ(9名) 2. プロジェクト執務室の供与,改装 3. プロジェクトに必要な経常経費

・マラウイ共和国では,中期的開発戦略としてマラウイ成

長開発戦略(Malawi Growth Development Strategy:MGDS)(2006/07~2010/11)を策定している。 ・しかしながら,2008年に大統領府と UNDP が共同で実

施した公務員能力開発評価では,マラウイ共和国政府の

プログラム・プロジェクト管理能力向上が課題となってい

る。 ・こうした背景から,JICAはPSIPプロセスにおけるマラウ

イ経済計画開発省の開発計画・運営・管理能力強化を目

的として,2009年7月から2011年7月までの予定でマラウ

イ経済計画開発省をカウンターパート(C/P)として「公共

投資計画(PSIP)能力向上プロジェクト」を実施している。

開発計画協力省

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年度 案件名 インプット 概要 相手国機関名 1999 ~2004

在来種増養殖

技術開発計画プロジェクト

8.9億円

日本側投入: 1. 長期専門家:2名 2. 短期専門家(必要に応じて) 3. 研修員受入れ(必要に応じて) 4. 機材供与(必要に応じて)

相手国側投入: 1. カウンターパートスタッフ 2. 施設など:国立養殖センター・ドマシ本

・小規模養殖農家の養殖池における在来種食用魚類の適

正養殖技術の開発,およびその手法の先方政府C/Pへの

技術移転に関し,マラウイ国政府からの強い要請があっ

たため,持続可能な適正小規模養殖技術の開発と普及の

ため,2004年から2年間の延長協力を実施した。

鉱山鉱物環境省

2011 ~2016

一村一品グループ支援に向けた

一村一品運動実施能力強化プロジェクト

日本側投入: 1. 長期専門家:2名 2. 短期専門家 3. 本邦研修 4. 第三国研修(タイおよびその他一村一

品関係実施国を想定) 5. 現地活動費 6. 供与機材

相手国側投入: 1. マラウイ側スタッフの配置 2. 予算の確保 3. 事務所スペースの確保

・マラウイ共和国では,大分県の「一村一品運動」を参考

にしてマラウイ版「一村一品運動(OVOP)」に取り組んで

おり,2003年には政府内にOVOP事務局を設置した。 ・一方で,OVOPグループによる生産活動が軌道に乗る

に伴い,各グループにおいてはさらなるマーケットへのア

クセスや,品質コントロール,経営力強化など様々な課題

が出てきている。OVOP事務局は既存のOVOPグループ

支援に忙殺され,新たな課題に十分応えられない状況に

ある。 ・この状況に対応し,さらなるOVOP推進を目指して,マラ

ウイ政府は我が国に対し技術支援を要請した。

産業貿易省

2008 ~2012

中等理数科現職教員

再訓練プロジェクトフェーズ2

3.5億円 日本側投入: 1. 長期専門家:2名

短期専門家:必要に応じて派遣 2. 機材供与 3. 在外事業強化費 4. 調査団 相手国側投入: 1. ナショナルコーディネーター:2名 2. フルタイム中央研修講師:7名

パートタイム中央講師:7名 3. 執務環境 4. カウンターパート人件費,光熱費 な

・マラウイ国における劣悪な教育環境を鑑み,JICAによっ

て2004年から3年間,中等理数科現職教員再訓練プロジ

ェクト(SMASSE)フェーズ1を実施し,マラウイ国南東部

教育管区において,理数科教員向けの教員研修を支援し

た。 ・フェーズ1終了時には,マラウイ国教育科学技術省より,

対象地域を全国6教育管区(北部教育管区,南東部教育

管区,南西部教育管区,中西部教育管区,中東部教育管

区,南高地部教育管区)として展開させるべく,SMASSEフェーズ2が要請された。

教育科学技術省

2004 ~2007

日本側投入: 1. 長期専門家の派遣 2. 短期専門家の派遣 3. カウンターパート研修 4. 機材供与 5. INSET実施運営費の一部負担 相手国側投入: 1. カウンターパート,運営管理スタッフ配

置 2. 建物・施設の提供 3. プロジェクト運営経費(ランニングコス

トなど)

・マラウイ共和国の中等教育においては,理数科科目の

有資格教員の極端な不足が大きな課題の一つである。 ・国家教育政策であるPIF(教育政策と投資計画)や,ケニ

アにおいてSMASSE(中等理数科強化計画)を共同で実

施しているが,経済的および技術的インプットは限られて

いる。 ・現在までに積み重ねられた成果をさらに強化し,中等理

数科現職教員に対する支援を本格的に開始して目に見え

る効果を上げるためには,技術協力プロジェクトとして包

括的・体系的な協力を行う必要があると判断され,本プロ

ジェクトの要請がなされた。

教育省 中等理数科

現職教員再訓練プロジェクト

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年度 案件名 インプット 概要 相手国機関名 2005 ~2010

一村一品運動のための

制度構築と人材育成プロジェクト

日本側投入: 1. 長期専門家の派遣 2. 短期専門家の派遣 3. C/P研修 4. 機材供与 5. カウンターパート研修 6. 調査団の派遣 7. 事業運営経費の負担 相手国側投入: 1. カウンターパートおよび総務スタッフ

の配置 2. 土地,建物および他の必要な施設の

提供

・マラウイ共和国では,一村一品戦略計画策定,一村一品

プロジェクトガイドライン策定など,推進の枠組みが整備

された。2004年3月には全国10箇所で地域産品振興プロ

ジェクトが開始された。 ・これに対し,日本政府もワークショップへの見返り資金

の提供などを通じて協力を行った。 ・こうした両国の協力実績を踏まえ,マラウイ共和国は,

2004年5月に,我が国に対して技術協力プロジェクトの要

請を行ない,この要請に対して,OVOP推進体制の確立

に対する支援と研修を中心とした人材育成を図ることを目

的として本件プロジェクトを開始した。

一村一品運動事務

2005 ~2008

北部H

IV/AIDS

検査相談所(VC

T

整備計画プロジェクト

日本側投入: 1. 資機材(試薬保管用冷蔵庫,啓発活動

のための車両や映写機器など) 2. 啓発資材印刷 3. 人件費・活動費 相手国側投入: 1. クリニック職員

・マラウイ共和国当局は,「国家HIV/AIDS戦略」(2000年)

において,VCTを,社会経済基盤を揺るがすHIV/AIDSま

ん延のインパクトを緩和する重要な手段の一つとして位

置付け,今後国内で一層のサービス拡充を目指す,とし

ている。 ・しかし,サービス提供が可能な地域は,主要都市部と南

部県と限られた状態にあり,地方部住民にとって,当該サ

ービスへのアクセスはきわめて限られている状況であ

る。 ・本プロジェクトによる性感染症予防と治療,家族計画普

及機能を備えた統合型VCTへのアクセス向上は,病院内

VCTと並んで費用対効果が高く,さらにマラウイ共和国に

おいて社会的弱者とされる女性に対する配慮という点か

らもインパクトの大きいプロジェクトとされる。

出所:JICA ウェブサイトより評価チーム作成

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3. 有償資金協力

日本は,過去10年間程度,マラウイの財政状況などに鑑み,マラウイに対して円借款を供与

していない。有償資金協力に関連して,2004年度および 2006年度に1件ずつ,債務救済措置

を実施している。

表 3-20 2003 年度以降の日本の対マラウイ援助(有償資金協力) 年度 案件名 供与金額 概要

2006 債務救済措置(債務免除方式) 227.79億円

今回の債務救済措置(債務免除方式)は,拡大重債務貧困国イニシアティブの

枠組みにおいて包括的な債務救済を受けるために必要な条件を満たした国に対

し,JBICの円借款債権および適格な商業債権を放棄するという1999年のケルン・

サミットおよび2000年の九州・沖縄サミットにおける声明に基づく日本政府の方針

の下,行われるものである。

※拡大HIPCイニシアティブとは,重債務貧困国(HIPC)の債務を持続可能な水準

まで引き下げることを目的とした,国際的な債務救済措置イニシアティブである。

1999年のケルン・サミットで合意された。(1996年のリヨン・サミットの合意(HIPCイニシアティブ)をさらに拡大した形で,より手厚い債務救済の実施につき定めた

もの。)

2004 債務救済措置(債務免除方式) 282.25億円

本件債務救済措置(債務免除方式)は,1978年の国連貿易開発会議

(UNCTAD)第9回特別貿易開発理事会第3回会期で採択された決議第165号*に基づき,JBICが保有する同決議の対象となる円借款債権を放棄するとの我が国

政府の方針に従って行われるものである。

※1978年3月に開催されたUNCTADの貿易開発理事会において,深刻な債務返

済困難に直面する開発途上国に対し,先進援助国は過去の二国間ODA条件の

調整措置などをとるよう努力することが決議された。

出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成

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4. 緊急援助

緊急援助は 2002 年度に 2 件実施しており,供与金額および概要は以下のとおりである。

表 3-21 2003 年度以降の日本の対マラウイ援助(緊急援助) 年度 案件名 供与金額 概要

2002 洪水災害に対する緊急援助 0.1億円

日本政府は,2003年1月28日(火),大規模な洪水災害に見舞われたマラウイ共

和国に対し,約1,000万円相当の緊急援助物資(テント,簡易水槽,浄水器,ポリタ

ンク)を供与することを決定した。 マラウイでは1月2日から6日にかけて発生した熱帯低気圧「デルフィナ」(サイクロ

ン8号)による洪水被害により,同国北部,中央部,南部にわたる広い地域で,農

地,住宅,道路などが冠水した他,高圧線鉄塔や幹線道路の橋が流されるなど多

大な被害が発生し,現在までに判明している被害状況は死者7名,行方不明者3名,被災者19,265名,被災家屋3,853戸,被災農地5,465ヘクタール,被災農家

59,996世帯である。 このため,バキリ・ムルジ・マラウイ大統領は1月10日,「災害事態宣言」を発出

し,国際社会に食糧やテント,毛布など緊急援助を要請するとともに,マラウイ政

府は16日わが国政府に対し緊急援助の要請を行った。

2002 食糧危機に対する支援(緊急無償

および食糧援助) 約3,000万ド

わが国政府は,2002年8月21日(水),深刻な食糧危機に直面する南部アフリカ

諸国7か国(レソト,マラウイ,モザンビーク,スワジランド,ザンビア,ジンバブエ,

アンゴラ)に対して,約3,000万ドルの食糧支援を行うこととした。 今回の支援は,世界食糧計画(WFP)を通じ,1,240万ドルの緊急援助(無償資金

協力)を9月初めにも行うとともに,その後,二国間および多国間の支援としてさら

に約1,760万ドルの食糧援助を実施する方針である。 今回対象の7か国のうち,アンゴラを除く6か国においては,10年に1度と言われ

る干ばつにより約1,300万人が深刻な食糧危機に直面しており,国連は,年内に

30万人以上が飢饉などにより死亡すると予測している。このような状況を受け,

WFPは本年7月,国際社会に対して支援を求める緊急アピールを発出した。 また,アンゴラにおいては27年におよぶ内戦が終結したことにより,元兵士の武

装解除が進められているが,元兵士とその家族が集結する同国内のキャンプに

おいては,食糧不足問題が深刻化しており,今年末には国外からの帰還難民を

含め,約150万人が食糧不足に苦しむと予測されている。

出所:外務省 ODA ホームページより評価チーム作成