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ジオ(地質遺産等)を中心とする ジオパーク形成に向けての調査

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Page 1: 3 ジオ(地質遺産等)を中心とする ジオパーク形成 …⑤保護(保存):ジオパークのある国・地域の法と規制、及び伝統に基づいて地質遺産

3 ジオ(地質遺産等)を中心とする

ジオパーク形成に向けての調査

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(1)県民所得の状況

四国の一人当たり県民所得(平成 15 年度)

は、2,490 千円ですが全国平均 2,958 千円の

84.2%と依然としてその格差は大きく、県別

にみると徳島県が 96.2%、香川県が 89.6%、

愛媛県が 78.6%、高知県が 75.7%といずれも

全国平均を下回っています。経済指標で見る

限りにおいて四国は遅れている地域という

ことになりますが、自然や歴史文化等の面

では豊かな地域であり、今後これらの資源の

活用が四国地域浮揚の一つの鍵になると考

えられます。

(2)観光入込客の動向 四国内の平成 17 年の観光客入込数(県外客)は、26,094 千人で前年比 3.7%の減少とな

っています。平成 11 年には「しまなみ海道」の開通もあり 30,012 千人でしたが、それ以

外の年は 26,000 千人から 28,000 千人台で推移し、大幅な増加は見られません。

~大地へ回帰!新たな観光資源の創出につながるジオ(地質遺産

等)を中心とした四国ジオパークの形成に向けて~

平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年総数 14,010 11,970 13,138 13,231 13,243 13,158 12,806 12,452

県外客 7,215 6,159 6,941 7,037 7,021 7,047 7,063 6,906総数 - - - - - - - -

県外客 8,127 7,709 7,306 7,283 7,378 7,780 8,047 7,893総数 21,047 26,469 23,720 23,457 23,869 24,192 24,994 23,484

県外客 6,549 11,173 8,836 8,584 8,517 8,839 8,912 8,225総数 - - - - - - - -

県外客 5,086 4,971 5,019 5,050 5,163 3,147 3,078 3,070高知県

合計 県外客

 

27,100 26,094

単位:千人  

(注)香川県及び高知県は県内観光客の統計を行っていないため、合計欄は県外客のみとした。高知県ではH15年から推計手法を見直している。

26,977 30,012 28,102 27,954 28,079 26,813

徳島県

香川県

愛媛県

観 光 客 入 込 数

参考資料:四国経済概観 平成19年度版/ 経済産業省 四国経済産業局編内、

グラフ「観光客入込数」資料:各県観光統計

2,718

2,790

2,552 2,431

2,620

3,1022,749

2,758 2,758

2,3982,579

3,085

2,728 2,6882,688

2,3342,472

2,9402,845

2,649 2,649

2,2382,490

2,958

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

徳島県 香川県 愛媛県 高知県 四国 全国

一人当たりの県民所得

7年度 12年度 14年度 15年度

(千円)

参考資料:四国経済概観 平成19年度版/ 経済産業省四国経済産業局編内、

グラフ「一人当たり」県民所得」(資料)内閣府 「県民経済計算年報」(平成18年度)

1.四国を元気にしよう、何とかしよう!

200

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今後は、これまで余り「光」の当たってこなかった地質遺産(ジオ資源と呼びます)等

を核として、国内はもとより、世界に向かっての新しい観光形態の創出を図り、四国の価

値創造に取り組んでいくことが必要です。四国の浮揚に向けて、新しい観光形態を作りま

しょう。

(1)「ジオパーク」とは何ですか?

地質遺産等を保全して地球科学の研究・教育や普及に活かすとともに、自然資源

や歴史文化資源等を組み合わせたツーリズムの創出を始めとする地域活性化手法を

検討し、それらを通じて持続可能な社会(まさに、これからの日本にとっての課題

です)の発展に貢献しようとする活動であり、主としてヨーロッパ、近年では中国

等において展開されています。

世界ジオパークの一員として認証を受けるためには、世界ジオパークネットワー

ク組織(GLOBAL GEOPARKS NETOWORK、以下GGNと称します)の示す、

次のような基準を満たすことが求められます。 ①規模と環境:明瞭に定められた区画と十分な面積をもつこと(ただし、面積につい

ては規模の制約はない)。単に地質学的に重要なサイトを有するだけで

なく、生態系との関わりや、地域の歴史・文化・伝統との関わりを示

すことが重要。 ②運営及び地域との関わり:確固とした運営組織と運営計画があること。 運営組織には公的機関、地域社会、会社などの民間団体、研究教育機

関などが参加すること。地域住民と地方自治体を中心として作成され

た地域の文化的価値や伝統を尊重した運営計画に基づき運営されるこ

と(地元企業組織も含まれます)。地域の景観を守りながら、持続的な

形で開発が行われること。 ③経済開発:地域の経済活動の活性化と持続可能な開発がジオパークの主要戦略目標

の一つ。地質遺産等を観光する「ジオツーリズム」を通じて環境的に持 続可能な社会経済開発を育成し、地場産業を活性化する。

2.そこで、ユネスコの提唱する「世界ジオパーク構想」による四国の活性化

を検討してみよう!

○ユネスコの世界遺産との違いは、世界遺産は保護が目的であり結果的に観光に結び

ついている場合が多い。その結果遺産の破壊が生じているケースもある。 ジオパークの場合、地質遺産の保全は当然のことながら、活用による経済活動も重

視しており、保全と活用の調和をめざしている。

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④教 育:博物館、自然観察路、自然観察センターなどを整備し、ガイドブックや 地図を発行し、ガイドを養成してガイド付きツアーを行うことにより、 多くの訪問者を受け入れ、地球科学や地球環境に関する知識を社会に伝 える。

⑤保護(保存):ジオパークのある国・地域の法と規制、及び伝統に基づいて地質遺産

を保護する。 ⑥世界的ネットワーク:世界的ネットワークの一員として地質遺産等を守り、地球科

学に対する世界の理解を深め、社会の持続的発展を確かなものとし、さ

らには世界的ネットワークの活動に貢献する。 ○ 四国固有の地質遺産等を保全・活用し「四国ジオパーク」の形成を図っていくため

には、以上の基準・ガイドラインに則った活動実績(または行動計画)について、

ジオパーク申請者が自己評価(採点)し、GGNの審査を受けることになります。 ①から⑥について評価対象となる各種事業・活動(ソフト事業が主)を実施していけ

ば、自ずとGGNがめざす「ジオパーク=持続可能な地域づくり」が実現できる仕組み

となっており、明確に進むべき道筋が示されているところにユネスコが支援する世界ジ

オパークの特徴があります。 GGNに認証を申請する地域(申請者)は、前述の自己評価表に基づいて自己採点し

なければなりません。その際、各項目の中でも運営組織に関する重み付けが も大きく

なっています。地質遺産に関する重み付けが大きいのは当然のことですが、それ以上に

ジオパークの運営組織の組織構成及び実践力が確固たるものであることが求められてい

ます。持続可能な地域づくりのためには、地域資源が固有のものであるとともに、それ

らを保全・活用する核となる組織の存在が不可欠であることを示唆しています。 (2)中国におけるジオパークの経済波及効果

○中国雲台山ジオパークの事例

○ 雲南省焦作市に創設、2001 年GGNの承認(認証) ・面積:556k㎡、隆起運動と流水の作用によって造り上げられ、自然の生態と文化

遺跡を持つ景観が特徴 ・本ジオパークの開発と設立によって、観光業界での雇用は急速に増加し、2004 年

末時点で観光業界での雇用は 3 万人を越え間接的な雇用は 22 万人に達した。 ・この 3 年間で観光産業全体の総収入は 47 億 7,500 万元(約 716 億円)。 ・2004 年のジオパーク訪問客は 805 万人で 1999 年の 17 倍である。

・観光収入は市のGDPの 8.3%を占める。(*地質ニュース 635 号より抜粋:産総研)

注:中国はジオパークの整備に関し国家プロジェクトとして推進しており、ヨーロッパ

等と異なる。またジオパーク整備にあたっては、地域を囲い込むような施設整備を行い、

国民所得水準から見ると高額な入場料を徴収し、収益を上げている。

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(1)地質・自然・文化資源調査

ジオパークを形づくるものは地質資源ばかりではなく、地形によって醸し出される景観、

地質によって規定される貴重な植物群落(植生)、生態系、また対象地域に連綿と続く伝統

文化芸能、祭り、地域に根ざした暮らしの形態なども関連資源に含まれます。 一見地味に見えるこれらジオサイト(地質資源場所)ですが、優れたインタープリター※の

手によれば、その地域の大地創造の歴史と、地質に関連した植生を代表とする生態系、そ

してそこで暮らす人間の歴史・文化が見えてきます。 本調査では、これら資源の洗い出しをまず行い、収集した情報を地図上にプロットしま

した。 地質資源の他には四国の「文化財」「天然記念物」「特異な植生」「博物館及び各種資料館」 「環境団体等」「地酒や郷土料理」など、自然資源、歴史文化資源、ジオパークに関係する 施設や人的資源等について情報を収集・整理しました。これらの資源を組み合わせて、後 述のジオツーリズム(地質遺産等を巡る滞在型旅行)や環境教育の場づくりに活かすよう にしました。

※インタープリター 自然観察、自然体験などの活動を通して、自然を保護する心を育て、自然にやさしい生活の実践を促

すため、自然が発する様々な言葉を人間の言葉に翻訳して伝える人をいう(interpret=通訳)。

一般的には植生や野生動物などの自然物だけでなく、地域の文化や歴史などを含めた対象の背後に潜む

意味や関係性を読み解き、伝える活動を行なう人を総称していう。(EICネット〔環境用語集〕より)

3.四国のジオパーク資源には、どんなものがありますか?

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(2)地質資源の分布状況 地質資源については、四国各県の大学の地質学等の専門の先生に、国内はもとより、世 界的にも評価できる地質という視点で選んでもらいました。 徳島県 18 ヶ所、香川県 25 ヶ所、愛媛県 22 ヶ所、高知県 29 ヶ所ですが、これらはあく まで現時点でのものであり、今後、各県とも増える可能性があります。

提供:高知大学 横山俊治 高知 足摺・竜串 高知 室戸

高知 龍河洞提供:高知大学 横山俊治 徳島 宍喰浦の化石漣痕

徳島 大歩危・小歩危徳島 阿波の土柱高知 横倉山 愛媛・高知 四国カルスト

愛媛 砥部衝上断層

愛媛 別子銅山 香川 五剣山

香川 屋島

香川 小豆島 提供:牧野植物園

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(3)各種資源の集積状況 地質等以外の各種資源を重ね合わせてみたものが次の図です。地質資源のみで集客する

のは多様性に欠けるため、ターゲットが限られてきます。ジオパークの魅力を高めるため

には、この図で分かるように数多くの資源が地質資源(ジオサイト)周辺に存在しており、

これらをいかに組み合わせて観光客の多様なニーズに応えることのできるジオツーリズム

(地質資源を中心として各種資源を組み合わせた旅行形態)・メニューを、創出できるかど

うかにかかっています。四国には掘り起こせば、もっともっと魅力的な資源が存在してい

ます。 (1)ジオツーリズムとは ジオツーリズムとは、『地質及び地形や景観、風土、歴史、生活文化など地質に密接に

関連する領域を切り口として整備されたジオパークにおいて、「自然と人間(暮らし)と

の関わり」をテーマに訪れた人々が知的感動、楽しみ等を味わい、しかも将来に向けて

4.ジオツーリズムとは何ですか?

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の環境保全の大切さを胸に刻むことのできるツアー』の形態を意味します。 これまでのグリーンツーリズムなどとは切り口が異なっており、今までにない魅力を

感じさせるツアーでなくてはなりません。ツアー客のニーズは、近年非常に多様化して

おり、ジオツーリズムを成功させるためには多様なニーズに対応できるツアーメニュー

を創出する必要があります。

ジオツーリズムは、その定義からいえば各種ツーリズムと一部重なるが、それらの根

幹的・基盤的な位置づけにあります。 自然生態系や人々の暮らしの基盤である大地の成り立ち、歴史を知り大地ひいては地

球の大切さを体感することによって、今後の国土形成・保全の基礎知識を得ることが可

能となりますが、防災意識の向上にも役立ち、安全・安心の国づくりにもつながること

になります。 【ジオツーリズムとその他のツーリズムとの関係】 (2)ジオツーリズムの確立に向けての「入口」

「ジオツーリズム」という言葉や、ジオツーリズムの資源として基盤となるジオ資源(地 質遺産)についても、現時点で認知している人は殆どいないと考えられます。

ところが地質専門家(大学等の地質学教員、研究者または地質コンサルタント等)は、 海岸段丘という地形や河川の川原の石ころ 1 個からでも、地球生成の歴史、地質学的プロ

○ グリーンツーリズム:緑豊かな農村地域において、その自然・文化・人々との交流

を楽しむ、滞在型の旅行形態(農水省の定義) ○ エコツーリズム:自然豊かな地域をフィールドとして、旅行者が自然や文化につい

て正しい知識を得、その地域ならではの自然とのふれあいを体験

できるような旅行形態(一般的な定義) ○ その他ツーリズム:タウン(街並み)ツーリズム、ブルー(漁村)ツーリズム、ヘル

スツーリズム等、様々なツーリズムが提唱されている

エコ ツーリズム

その他の ツーリズム

グリーン ツーリズム

ジオ ツーリズム

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セスやメカニズムを読み取ることができるのです。 問題は、それらの興味深い、面白い事象をどうやって一般の人々に伝えるかです。地質

専門家=よき語り部という訳ではありません。そこで地質専門家の説明を一般の人々にう

まく伝える人材(インタープリター、サイエンスライター)が必要となります。英米にお

いては、こうした分野が職業として成立しているといわれていますが、日本においてはこ

れからの分野です。これは何も地質分野に限ったことではなく、地球科学、生態学等あら

ゆる自然科学分野に該当します。また「地質」を対象とする絵本、物語等を全国公募して

才能ある人材を発掘することも考えられます(公的な助成制度を利用するとか出版社に協

賛を呼びかける)。こうした動きを展開することによって、ジオパーク形成に向けての入

口が開かれるのです。

【インタープリターの必要性】

■インタープリターの役割

(1)ジオツーリスト(顧客)誘致のステップ

地質等の意義 (難解)

インタープリター (翻訳)

物語化 (誰にもよく

わかる)

○今、あなたが立っている場所は、はるか 2000 万年以上前、太平洋の海底であっ

た。 それが地球の地殻変動によって、四国の海岸までやってきて大地震による隆起と

沈降の繰り返しの中で、現在の地形が形づくられてきた。 海の中であった証拠に、ほら!そこの岩石には海底生物が這いまわった跡が、そ

のまま残っている。 ○現在も、あなたたちの目にはハッキリと見えないけれど大地は動いている。地球

は生きている。私たちが人類として生まれるはるか 46 億年前、地球が誕生して

からずっと。 ○私たちは、このかえがえのない地球の上で暮らし続けていかなければならない。

人間の一生は、この地球の歴史に比べれば一瞬の瞬きですらない。 ○だからこそ、自然に対して畏敬の念を持ち、大切にしながら後世に伝えていかな

ければならない・・・・・・。一度破壊された地質(地形・岩石・地層等)は二

度と戻らない!

5.どうやってジオパークを展開しますか?

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ジオパーク来訪者を一挙に増やすということは容易ではありません。前提となる知名

度がわが国においては低いからです。そこで以下のようなステップを考え、そのステッ

プに応じた誘致策を講じる必要があります。 ■第 1 ステップ ■第 2 ステップ

■第 3 ステップ

*地球環境の保全に自ら取り組み、行動する人々が集結し世界に情報発信する。 こうしたステップを踏みながらジオパーク訪問客を増やしていくことになりますが、こ

の動きと表裏一体で「ジオツーリズムメニュー」の内容充実を図る必要があります。顧客

満足度を高めなければ、1 回来ればそれでお終いになるからです。重要なことは顧客のニー

ズを把握することであり、ニーズに対応するメニュー(ニーズを先取りすることも必要)

づくりを充実し、情報発信を効果的に行って「ウォンツ(行動欲求)」にまで高めることで

す。 (2)旅行市場(マーケット)のグローバル化への対応 国内観光地においては、ますます観光客誘致競争が激化し、いわゆる「勝ち組み」「負け 組み」が明白になる可能性があります。いかに個性化(差別化)を打ち出すかが重要な鍵 となります。全国各地との競争に勝ち抜くことをめざすのは当然ですが、もう一つの戦略

として外国に目を転じることも必要です。 ヨーロッパには世界ジオパークが 32 箇所、存在しており、これらのGGN加盟国への情 報発信によってヨーロッパからの訪問客(ジオパークファン)を呼び込むことが可能です。 現在、四国へのヨーロッパ人の訪問客は微々たるもの(訪日外国人旅行者全体の1%強)

ですが、情報発信力の強化によってヨーロッパ圏から直接、四国への訪問客を増やすこと

は決して不可能なことではありません。

○ジオパークの認知、啓発普及 (地質遺産等の素晴らしさを情報発信) ○知的好奇心の充足

○リピーター、ファンづくり (いつ来ても新しい発見がある)

○ジオパーク地域づくりに参加するサポー

ターづくり (住民参加、企業との協働によるジオパーク

の維持・更新))

●GGNの認証 ・ネットワークへ

の加盟による認

知度の高まり

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いずれにしても、そのためには古都としての京都、奈良、大都市東京、大阪等の魅力とは 異なる四国の特異な地質(地形)資源、その大地に展開される日本の地方文化(エキゾチ ックな神楽、祭り、伝統文化、暮らし振り、食文化など)が醸し出す「和」のテイストが、

大の魅力、誘引力となることは間違いありません。 ○四国に外国人が集まるスポットとしては徳島の祖谷~大歩危があります。ここにはオ

ーストラリア人を主として年間約 5 千人のビジターが存在しています。オーストラリ

アは「ラフティング」が盛んであり、大歩危がラフティングサイトとして人気がある

ことや祖谷にオーストラリア出身者が宿泊施設を営んでいることが理由として挙げら

れています。 ○視点を変えると、ヨーロッパ等と異なる日本の地質や文化、とりわけ四国固有の世界

にアピールできる地質遺産、歴史文化に関する情報発信が成功すればビジターを拡大

することは十分可能であると考えられます。 (3)情報発信力の強化

今後のジオパークの展開にとって、情報戦略は大きな鍵となります。まだ認知度の低

い(ない)ジオパークへ観光客(ジオツーリスト)を誘発するために、どうやって情報

発信するか、が大きな課題です。 一般に観光に関するPRなど各種の観光情報提供に対しては、観光しようとする者は、

次の 4 段階区分に応じて行動するといわれています。 ■第 1 ステップ ■第 2 ステップ

・旅に出て「うまい物」

を「食べたい」 ・ふらっと旅に出て「癒

やされたい」・・・・とい

った欲求発生

・インターネット ・ポスター ・TV ・イベント など

行動形態 情報媒体

・ここに行きたい (観光地の選別)

・どうしても行きたい

・インターネット ・旅行雑誌 ・ガイドブック など

四国ジオパークのビジター拡大戦略は海外をターゲットとします。これから

はインターネットを介して(観光)市場がグローバル化します。大都市を経

由せず、地方から直接、世界に向けて情報発信できる時代が来ています。

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■第 3 ステップ ■第 4 ステップ ○各ステップにおける「情報媒体」の活用が重要です。

近年、インターネットによる観光情報利用が増加傾向にあります。すなわち観光情報

取得が従来のカタログ、パンフレット等の紙媒体からインターネットに移るとともに、

ブログ・SNS(ソーシャルネットワークシステム)利用者が増加しています(総務省:

平成 17 年ブログ・SNSの現状分析及び将来予測)。 ジオパークについても観光客が検索しやすいホームページを立ち上げ、魅力的なポー

タルサイト(情報の玄関口)を作成すべきです。ポータルサイトによってジオパーク関

連情報を一元化し、その中に観光客の行動を誘引する多種・多様なメニューづくりを進

める必要があります。これは国内向けだけという訳ではなく、外国からの観光客誘致を

戦略的に位置づけていることから、 低でも英語バージョンのホームページの作成が必

要です。(順次、ドイツ語版、フランス語版、中国語版、韓国語版等に取り組む) 【インターネットの活用による情報戦略】 ■第 1 ステップ (当面) *各ホームページの記載内容不統一、更新がなされないという事態が発生する可能性あり ■第 2 ステップ

○ジオパークのポータルサイトを立ち上げ、関係県市町村

の公式ホームページ(地図、各種資源、食文化、祭り、

宿泊施設等掲載)とリンクする

○広域的な集客・交流のための情報プラットホームの立

ち上げ(Web2.0 導入)の検討:情報の双方向性充実

・旅行スケジュールを立

てよう (旅行計画)

・インターネット ・旅行雑誌 ・マップ ・各種時刻表 ・電話帳 など

・現地の情報を把握して

おこう (現地状況の把握)

・観光案内所 ・ビジターセンター ・宿泊施設 ・案内掲示 ・パンフレット ・地域住民 ・地域観光事業者 など

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(4)ジオツーリズムの対象別メニュー ■ジオツーリズムメニューづくりの基本的考え方

ジオ資源(地質資源、植生、歴史・文化、食文化・・)は、いわば料理の素材です。

これらの資源の良さを 大限に引き出して、お客さんに満足してもらわなければ意味が

ありません。また、お客さんの好みによって、和風料理、フランス料理、ドイツ料理、

中華料理等を提供し、その中身は美味しい料理、身体にいい料理として際立たせ、心に

残る味に仕立てなければなりません。シェフ(プランナー)の腕にかかっているのです。 ジオパーク素材を使ってお客さんに満足感を与えるためには、自然科学分野・社会科

学分野のいわばシェフが共同して、他では味わえない料理=ツーリズムメニューを作り

上げることが求められるのです。そのためにはお客さんのニーズを先取りし、反応をみ

ながら味付けを変えていくことも必要であり、そうしたノウハウの積み重ねが「ジオパ

ークの魅力」を高めることになります。

Geo Park

どう調理するか?=Geo Parkの手法

素材

ジオツーリスト

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(対象者別ジオツーリズムのメニュー) (内 容)

学術的価値に興味・関心のある層

一般的な観光層

環境教育を志向する層

障害者や高齢者等の身体的弱者層

・大学の地質学関係、学会等の巡検コー

スをベースにしたルートづくり ・専門別の多様なルート ・専門ガイド付き(少なくとも英語可)

・時間的に余裕があれば「郷土料理」探

訪、その他文化財探訪 など

・景観的にインパクトの強い地質遺産を

主として巡るルートづくり ・歴史文化資源との組み合わせ ・郷土料理や地酒など「食文化」重視 ・いわゆる「名物」ガイド付き ・もてなしの宿(農家、漁家民宿)など

・小中高生、環境 NPO グループ等対象

・地質の特徴、植生、生物に関する知識

が学べ生態系の循環システムが体験

できるルートづくり ・専門ガイド付き ・体験フィールド ・合宿施設 など

・基本的に一般観光層と同じ ・車椅子利用可能、トイレ、休憩施設に

配慮したルート設定 ・場合によっては、介助者の手配 ・無理のない体験フィールドの設置 ・ユニバーサルデザインの導入 ・バリアフリーの宿 など

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○これら以外にも大学のサークル(地質、地理、環境等)向けメニューづくりを検討

します。 ○一般観光と環境教育をミックスした「修学旅行」向けメニューづくりを検討します。 ○必要に応じて、英語他、外国語のできるガイドの手配ができるシステムづくりも求

められます。 ○ガイド付きツアー以外にも、マップ、ガイドブック(外国語版が必要)を作成し、

個人やグループで自由に行動できるようにしておくことも必要です。 ○四季の花木、野草等の観察ルートも作り、通年で探訪しても変化のあるルート設定

も必要です。 ○事故発生等に対応するため保険制度の導入が必要です。

■ジオパーク内の移動手段 ○基本的に地球環境の保全に配慮し、自動車利用を規制します。 ○徒歩を主体としますが、マウンテンバイク等の利用は可とします。 ○障害者や身体的弱者は車椅子(介助者付き)の利用を可能とします。 ○アトラクション的要素として「馬車」「篭」利用の特別メニューも検討します。 ○安全面に配慮したうえで、地質遺産等めぐりの乗馬トレッキング(競馬を引退した

馬で気性のやさしい馬を選び訓練する:放牧場で飼育)の導入を検討します。 ○河川、渓谷沿いの地質遺産等巡りのツアーが設定できれば「カヌー」や「ラフティ

ング」の導入を検討します。 ○ジオパークの売り物として、ジオパークまで自動車利用で訪れる人には「カーボン

オフセットツアー」と銘打ってジオパーク内に広葉樹の植林してもらう制度の導入

を検討します。 ■ジオパークまでの移動手段 ○GGNでは、地球環境への負荷を軽減するため自動車等の個人利用より、公共交通

機関利用を推奨しています。 ○そこで四国ジオパークへの移動のために、 寄の公共交通機関と協議し、既存のル

ートを変更(一部寄り道的)等を交渉します。 ○公共交通利用者には、動機付けとして施設・設備料や、ジオパーク土産品の割引な

どの方針を打ち出し、周知することが必要となります。 (5)四国各県のジオツーリズム例 各県の地質資源(ジオサイト)を中心にジオツーリズムのゾーニングをしたものが次図

です。この図からも分かるように、各県地質資源の周辺には「植生」「自然景観」「歴史・

文化資源」「地酒・食文化」等各種のジオパーク資源が存在しています。これらの資源を組

み合わせて、いかに魅力あるツーリズムを創出するか(外国人にとってエキゾシチズム溢

れる歴史・文化資源、はたまた四国八十八ヶ所との組み合わせも必要)が今後の課題です。 以下に、例として四国各県のジオツーリズムコースを検討しました。

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Page 17: 3 ジオ(地質遺産等)を中心とする ジオパーク形成 …⑤保護(保存):ジオパークのある国・地域の法と規制、及び伝統に基づいて地質遺産

○徳島県・・鳴門~中央構造線~吉野川ジオツーリズムコース 阿波浄瑠璃、鳴門のワカメ・鯛、半田の素麺、吉野川の河川文化、大歩危

のラフティンング、祖谷のかづら橋等の組み合わせ ○香川県・・讃岐平野ジオツーリズムコース、小豆島ジオツーリズムコース うどん、醤油醸造、石文化、源平の歴史文化等の組み合わせ ○愛媛県・・石鎚~別子(銅山跡)ジオツーリズムコース

石鎚の植生、面河渓谷、産業遺産等の組み合わせ ○高知県・・室戸ジオツーリズムコース、(四国カルスト)・仁淀川中流域コース

亜熱帯植生、 御崎寺、マンボウ料理、海洋深層水関連施設等の組み合わ

せ 横倉山の植生、長者地すべりにまつわる歴史・生活文化、地酒、神楽等の

組み合わせ (6)住民参加によるジオパーク整備のあり方 四国ジオパークを整備する場合にも、その発展の鍵を握るのは「ジオパークファン」を

どう獲得するかにかかっています。すべての地域づくり活動に共通することですが、その

活動に対する地元住民の共感、参加なしに持続できないということは自明の理となってい

ます。

■ ジオツーリズムコース例 (イメージ図)

214

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そこで、ジオパークファンづくりの方策として、「ジオパーク六感レンジャー」制度の創

設が考えられます(ここでいうレンジャーは国立公園等の監視を兼ねる専門職としてのレ

ンジャーではなく、遊び感覚の子どもにも馴染みの深いテレビ番組の○○レンジャー的な

感覚のもの)。 ■ジオパーク六感レンジャー制度の概要

(趣旨)四国ジオパーク(仮称)の認知度向上、住民参加意識の盛り上げ (制度)四国ジオパーク組織による公募及び認定 (内容)人間の有する五感(「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「味覚」、「触覚」)プラス「心

覚」(居心地の良さ、もてなし:ホスピタリティ)の6感それぞれにジオパー

クレンジャーを設け、各人の希望に従って任命する。四国ジオパークのロゴ

入りワッペンを携帯する。 募集対象は、子どもから高齢者まで広範囲にする。

良い点は伸ばし、悪い点は改善策を講じる活動につなげ、自分達のジオパー

クであるという意識を醸成する。 ■ジオパーク六感レンジャー制度 こうした動きを展開することによって住民参加型のジオパークづくりも可能となるもの

と考えられます。

視覚レンジャー:ジオパーク内の景観、サ

イン、色彩等のチェック

聴覚レンジャー:ジオパーク内の騒音、鳥

の声、その他のチェック

嗅覚レンジャー:ジオパーク内の匂い、香

り(花木)等のチェック

味覚レンジャー:ジオパーク内の飲食(料

理等)のチェック

触覚レンジャー:ジオパーク内の体験メニ

ューのチェック

心覚レンジャー:ジオパーク内のもてなし、

ホスピタリティのチェッ

ジオパーク六感レンジャー

215

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(1)ジオパークを介した環境教育・ESD(持続可能な開発のための教育)

についての検討

①生きる力を育む必要性 今後、知的創造力が 大の資源であるわが国にとって、子供たちの理科に対する興味・

関心を育み、豊かな自然科学的素養を身につけることが課題であることはいうまでもあり

ません。日本(四国)の多様かつ豊かな地質を始めとする自然を積極的に活用し、持続可

能性という明確なビジョンを持った教育体制が整えられれば、人間が失いつつある、机上

では絶対得られることのない、自然の法則に則った直観や判断力、バランス感覚を得られ

るだけでなく、人生の土台となる「生きる力」をも育むことが可能となってきます。

②ジオパークを介した環境教育の姿

生きる力

直観 感性

バランス判断力

教える側

場=ジオサイト

学ぶ・知る側

専門家(企業・大学)OB大学院生、先生OB

大学生、専門学校生通訳ガイド

団塊世代NPO、NGO学校の先生地質に興味のある人

海外からの旅行者日本人旅行者

大学生

地域住民

児童・生徒

プロ専門ガイド

専門ボランティアガイド

ローカルボランティアガイド

多様性

高度性

               ジオパーク事務局                

拠点施設見学・実験・講座開催

フィールド観察・体験

情報収集・整理

拠点施設見学・実験・講座開催

フィールド観察・体験

情報収集・整理

ジオパークを介した環境教育のフレーム

それぞれの段階に応じた講座や試験、研修後登録

様々なチャネルを通じて訪れる。その興味関心に応じてガ

イドを要請

アウトプット学ぶ意欲、知的好奇心

探究心の向上生涯学習の場提供

持続可能性に対する思考五感・感性を磨く

6.ジオパークでの環境教育等をどう進めますか?

216

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○特色としては、以下のものが考えられます。 ・ 継続的に観察や実験、体験的な学びができる。 ・ 様々な世代、年齢に応じてのプログラムがある。 ・ 学ぶ意欲、知的好奇心、探究心の向上を図れるような環境が整備されている。 ・ 地球科学に関する既知の知識や情報が蓄積され、分かりやすい形で学べる。 ・ 持続的発展可能な地域づくりについて考え学べる。

このような特色を実現するためには、興味の度合いや専門性に応じて、知識を与えるこ

とができる人材の育成や地球科学のプロガイドとして、その能力が発揮できる場を創出す

る必要があります。 ここでは一過性の教育とならず、持続的かつ継続的にジオパークにおける環境教育がな

される仕組みをいかに作るかが重要となります。 (2)ガイドやインタープリターなどの人材育成について

国籍や年齢を問わず、興味の度合いに応じて、様々な人々に地球科学に関しての知識を

分かりやすく伝える鍵を握るのが、ガイドやインタープリター(解説員)、学芸員です。特

に自然・地球科学といった分野は、対象自らが言葉を発するものではないため、ジオパー

クの素晴らしさを伝えるための人材育成が不可欠です。 ガイドは、単なる解説板やパネルめぐり、ガイドブックを持参しての単独旅行では味わ

えない魅力を演出してくれます。ジオ資源を前にして大地の歴史をまるで目の前で見える

ように説明してくれるガイドの存在は心に感銘を残し、それがやがて口コミでの評判にも

つながり、リピーター増にもつながります。 このような魅力的な人材の養成は、一律のプロセスでは難しく、より専門性の高いガイ

ドから子供たちに分かりやすく伝えるガイド、植物や歴史、文化等他の分野と関連させな

がらジオサイトの解説を行なうガイドなど、多様性が求められます。 また、ジオパークにおけるガイドやインタープリターは、既存の自然科学の素晴らしさ

を伝えるだけでなく、持続可能な環境共生社会に対する理解と倫理観を持ち、ジオパーク

を訪れる国内外の人々に、発信する役割も担っています。

認定プロガイド

サークルやボランティアガイド

ガイドサークル、人材バンク、NPO活動

大学院生、教授 学校の先生、OB

専門家等 大学生、専門学校生、

インターンシップ等

団塊世代、自然科

学に関心がある

人等

217

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(3)環境教育プログラムについて

国や地域を越えて、様々な世代の人がその興味と理解の段階、幅に応じて学ぶ場を提供

し、特に地域の子供たちにその大切さを伝える。これが、ジオパークが求める環境教育で

す。ガイドラインでは、特に地域における地学教育の中で、地元の生徒に地質遺産の重要

性を教えることの重要性を示しています。なぜなら、小中学校で郷土の地質、地形、自然

地理について教えるカリキュラムを組むことが、ジオパークの保存に役立つだけでなく、

郷土意識を喚起し、誇りを高め、自覚を促すことに直接つながるからです。 また、これ以外にも学校の生徒や先生向けの校外学習、セミナー、あるいは環境問題や

文化保存に関心を持つ人々、郷土の景色を観光客に紹介したいと考えている住民を対象と

した科学講座などの整備が紹介されています。このようなことを踏まえ、四国ジオパーク

においても、小中高の児童生徒向け及び理科の先生向け、大学生向け、地域の住民向け、

国内外からの旅行者向け等、様々な対象を想定したプログラムづくりが必要です。 四国内でも、これらの流れに沿う参考事例として、以下の事例があります。 ①学校・中学校向けの教育・・室戸青少年の家で実施されているウォーターワイズプ

ログラムのように、体験を中心としたプログラム ②高校生向けの教育・・スーパーサイエンススクールのように、大学と連携し、より

進んだ実験や体験ができる仕組み ③大学生向け・・国際協力論のように、四国内の大学、公的機関、NGO の連携により

総合的に学べる体系づくり ④地域の人向け・・中国やまなみ大学のように、産官学民の連携による市民向けの講

座開講の事例

【興味の対象と段階に応じた環境プログラム提供のイメージ】

ジオパーク

・データベース

・リソース

大学生

小学生

中学生

地域の人

高校生

国内外旅行者

企画、ガイド、学芸員、専門員、マーケティング等の関係者による企画

ニーズ把握

対 象

誰にどんなプログラムを

いつどうやってどれくらい

で提供するか?

ジオパーク

・データベース

・リソース

大学生

小学生

中学生

地域の人

高校生

国内外旅行者

企画、ガイド、学芸員、専門員、マーケティング等の関係者による企画

ニーズ把握

対 象

誰にどんなプログラムを

いつどうやってどれくらい

で提供するか?

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エダーさんとは「Wolfgang Eder」さんで、ユネスコの元地球科学部長です。エダー さんは「世界ジオパークの生みの親」と呼ばれている人です。そのエダーさんに「四国は 世界ジオパークに認証される可能性があるのか」という視点で、モデル(候補)地域を視 察していただきました。一つは台風情報で必ずニュース等に流れる「高知県東部の室戸地 域」、もう一つは「日本の地質学発祥の地といわれる佐川・越知町を主とする仁淀川中流地 域」が対象です。 本調査では、調査期間の制約やエダーさんの事情で高知県の2地域の視察に止まりまし たが、他の四国3県で視察を行えば、同じような評価が得られたと考えられます。 (1)四国ジオパークモデル(候補)地域調査

①室戸地域(高知県室戸市)の特色

○多様な地質資源により、“生まれる大地”を実感し、“大地に回帰”できる地域。 ○室戸岬一帯は、アコウなど亜熱帯性樹林とウバメガシなど海岸植物群落が自生してお

り、「室戸岬亜熱帯性樹林及び海岸植物群落」として国の天然記念物に指定されている。 ○奇岩乱礁や南国らしい植生など、室戸岬は「日本八景」「国名勝」にも指定されている。

○室戸市の海岸のほとんどは室戸阿南国定公園の指定を受けている。 ○吉良川の国重要伝統的建造物群保存地区は、強い風雨を避けるため、水切り瓦を多用

した土佐漆喰仕上げの家や「いしぐろ」(石垣)が見られ、地域性豊かな町並み。 ○四国遍路八十八ヶ所のうち室戸市には 御崎寺・津照寺・金剛頂寺がある。また「行

水の池」「御厨人窟」など空海伝説と関わりの深い地象も多い。 ②仁淀川中流域(高知県佐川町・越知町・仁淀川町)の特色

○横倉山から佐川町にかけては、4 億年以上前の赤道付近の地質が存在するなど、多様な

地質が存在し、学術的に重要な地域である。本地域は明治時代にナウマン象で名前を

知られるエドモンド・ナウマン博士が調査来訪したことで“日本の地質学発祥の地”

とも呼ばれる。 ○蛇紋岩植生・石灰岩植生など、地質に起因する植生があり、珍しい植物が現在も自生

している。また横倉山は神社有林であったこともあって原生林が残っている。 ○佐川町出身の世界的にも著名な牧野富太郎博士が多数の新種植物を発見した地域でも

ある。貴重な植物が現在でも自生している。 ○平家の落人伝説や安徳天皇陵墓参考地などの史跡もあり歴史文化も残されている。 ○佐川地質館、横倉山自然の森博物館などの施設がある。 ○長者地区では、大規模な地すべり地域で暮らしてきた住民の生活・文化が存在する。 棚田の中に存在する集落景観は日本でも有数といわれる。

7.エダーさんと行く四国ジオパークのモデル(候補)地域

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■室戸地域案内図

220

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■仁淀川中流域 案内図

221

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(2)エダーさんはこう語った

【室戸地域】

○各サイト(地質資源)は地質学的に見ても素晴らしい。散策路も今のままで十分である。

台風等で維持管理に問題はあるかも知れないが説明版、案内版があればジオパークの資源

として認められる。

○八十八ヶ所にまつわる空海(弘法大師)や土佐日記の記述といった文化的事象もジオパー

クという傘の下に入れるべきである。

○アコウ、サボテン、アロエ、タロイモ等の植物もジオパークの傘の下に入れよう。

○( 御崎寺で)四国八十八ヶ所にちなんで「ジオ遍路」というのもいいね。お経を聞いた

り、鐘を撞いたりできる体験もいい。

○(吉良川の国重要伝統的建造物群保存地区の古い建物を生かした喫茶店で)おいしいコー

ヒーもマスター夫婦のギターとピアノの生演奏も古い街並みも、みんなジオパークの傘の

下に入ったらよい(すべてジオパークの資源である)。

【仁淀川中流域】

○(長者の地すべり地域の棚田、集落を見て)こうした地質と暮らしの関わり、神社建築等、

素晴らしいものが残っている。地元の発展のために地質学をはじめ科学が使われるべきだ。

○(地元の酒造場で)酒と地質は、結局酒と水で結び付く。おいしい酒と食事はジオパーク

に是非とも必要。ジオパークに行くとおいしい酒が飲めるという風になればよい。

○(佐川地質館で)今、存在している博物館をそのまま利用すればよい。展示の仕方やプレ

ゼンテーションを少し変えるだけでよい。

○(農家民宿の囲炉裏を囲んで地元の食材を使った料理を食べ、地酒を飲みながら)ワンダ

フル!

~以上、抜粋~

【モデル地域調査後の報告会における講演内容の一部】

モデル地域調査を行う中で「Rock Green Ca,

fe」という喫茶店に入った。この名前は英語

としてもフランス語としても文法的におかしいが「ジオパーク」の本質を表している。

Rock は「地質」,Green は「植物、あるいはもっと大きく自然そのもの」,Ca,

fe は「人々が

集まり楽しむこと」、これらの 3つの要素が統合されているのが「ジオパーク」である。

ジオパークの基本にはきちんとしたレベルの高い地質(学)があること、そして美しい自然と

人間が共生していること、人々が癒され、憩い、ジオパークに行くと楽しいことがあること、こ

れらがすべてジオパークの傘の下に入ることによって、多くの人々に愛されるジオパークが実現

できる。四国ジオパークが実現することを祈っている。

○ 高知県以外の四国 3 県においても、現地視察調査が可能であれば、ジオパーク資源

としての評価は高かったと考えられます。 ○ エダーさんは、景観的に世界レベルでなくても、他の様々な資源と組み合わせて四

国らしいツーリズムを提供すれば、十分通用するとおっしゃっていました。

222

Page 26: 3 ジオ(地質遺産等)を中心とする ジオパーク形成 …⑤保護(保存):ジオパークのある国・地域の法と規制、及び伝統に基づいて地質遺産

(1)ジオパーク実現に向けての検討

①ジオパークのあるべき姿

ジオパークを実現するためには、次の3つのエンジン部分が必要です。

○プランニングエンジン:企画部門、財務・事務部門(地質専門家、その他社会科学、自然

科学分野の専門家等の外部協力も想定)

○メインエンジン :博物館等の専門部門、ガイド部門などジオパークの現場担当

○ビジネスエンジン :ジオパークを支える地域産業部門、マーケティング部門、広報部

門(ジオパークへのビジター増加とそれに対応する地域産業(地

場産業)部門

これら、3つの部門が個別に動くのではなく、ちょうど3つの歯車が連動するように稼動する

とき、ジオパークのあるべき姿に向かって前進できるのです。

当初は馬力が弱くても、地域住民の参加・ジオツーリストの増加という「燃料の増加」によっ

て、さらにエンジン部門の馬力(活力)が向上し、あるべき姿に向かって力強く前進することが

可能となり、ベクトル方向もあるべき姿の高みに向かうことができるのです。

○四国ジオパークのあるべき姿、目指すべき姿とは「持続可能な地域社会」を築き上げ、日本、

さらには世界のモデルとなることです。

ジオツーリスト

プラ ンニングエンジン

ビジネスエンジン

メイ ンエンジン

地域住民

Geo Park

ジオツーリスト

プラ ンニングエンジン

ビジネスエンジン

メイ ンエンジン

地域住民

Geo Park

ジオパークのあるべき姿

・学際を超えた知識と知恵の融合

・新しい価値の創造(環境共生)

・持続可能な地域社会

8.どうやってジオパークを実現しますか?

223

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②ジオパーク実現における計画の重要性 ジオパーク実現にあたり、その活動に も大きな影響を与えるのは、計画がどの領域まで、ど

の程度詳細に計画され、かつそれが現実的なものであるかによります。プロジェクト計画での一

般的な要素としては日程・予算・組織・設備・財務・人事・事故・予測・変更等が、それぞれ計

画書として綿密に作成されているか、どうかがプロジェクトの成否を決するといっても過言では

ありません。また、初期に作成された計画に変更や失敗があることを計画自体に織り込んでおき、

必要時に的確な対応を行うことが重要です。ジオパーク申請にあたっては、GGNの自己採点表

を読み解く限り、以下の各種計画が策定されていなければ「認証」を得ることは困難であると考

えられます。たんなる机上の計画ではなく、実行性の担保されたものでなければなりません。 世界で 52 番目にGGNの認証を得たマレーシアのランカウイ・ジオパークの責任者へのヒアリ

ングによると認証を目指して得るまでに 8 年かかったということです。従来のリゾート地として

の評価に付加価値を加えることが目的でしたが、国家プロジェクトとして国の支援を受けながら

も長期間かかっています。こうした点を考慮すればジオパーク実現に向けては上記の各種計画に

ついて長期的には 10 年間を計画期間として計画策定に取り組み、plan、do、check、action のサ

イクルを繰り返し(PDCAの原則)、実現に向かって前進していく必要があります。(ただし、

認証までに 8 年かかるという訳ではありません。ジオパーク整備に向けての事業の進捗度合い、

熟度によって期間の短縮はありえます。) GGNの認証を得るためには、ジオパークのコンセプトに基づいたツアーの実績、環境教育の

実践、ガイドの育成など、ある程度の実績が求められます。そのためにも着実に実行できるプラ

ンニングが前提となるのです。 例えば、自己評価表の項目にある「資格を持つ専門ガイドがいますか」という点について「現

在、雇用しているのでいます」というのでは回答になりません。ジオパークは持続可能な組織体

であることが命題であり、そのためには 3 年後には 3 名育成する、5 年後には、10 年後には 10名育成するといったような計画があり、その実行がなされなければジオパーク計画は画に描いた

餅となってしまいます。 マーケティング計画に基づいた○○年後はビジターを○○人に増やすとか、すべての計画にわ

たって目標(数値)が明確にされていなければ、計画のチェックもできません。日本でジオパー

クをめざす地域、組織団体はこのことに無頓着であってはならないのです。 GGNの評価項目から読み解いた必要な計画と も肝要である運営組織の関係を次図に示しま

す。計画の後ろに記述している数字は自己評価項目表に該当する番号です。運営組織については

後述します。

224

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四国ジオパーク全体計画

A地区構想

基本理念・コンセプト ガイドラインの全項目

基本計画(短・中・長) 2.2,2.3,2.4,2.9,2.10,4.13,5.1

運営計画  2.1,2.2,2.9,2.10,4.1,4.9,4.13,5.1,5.2

財務計画  2.9,4.1,4.13,5.1,5.2

マーケティング計画  2.5,2.9,4.13,5.1,5.2

地域開発計画 1.1,1.2.2,2.6,2.10,4.1,4.6,4.10,5.1,5.2,5.3,5.4,5.6,5.7

環境計画  1.3.3,.3.2,4.6,4.10

教育・研究計画 1.3.3,2.9,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8

広報計画  1.3.3,2.7,2.8,2.9,2.10,3.3,3.4,3.5,3.6,3.9,3.10,4.2,4.4,4.7,4.8,4.9,4.11,5.4,5.7

交通計画  2.6,4.1,4.3,4.4,4.10,4.12

維持管理計画  1.2.1,1.2.2,1.2.3,1.2.4,1.2.5,1.3.1,1.3.2,1.3.3,2.6,2.10,3.4,4.10

ガイドツアー計画  2.9,3.6,3.7,3.8,4.5,4.9,4.10,4.11,4.12

申請計画  ガイドラインの全項目

統括マネージャー(1名)

最高責任者(1名)

意志決定役員会(10名程度)

地球科学者顧問(1~5名)

マーケティング部門(1名と外部)

企画部門  (1名と外部)

財務・事務部門  (3~5名)

博物館部門(2~4名)

ガイド部門(5~10名)

ビジネス部門(地域・団体)

広報部門(1名か外部)

ジオパーク計画と運営組織

ジオパーク運営組織

↓プランニングエンジン

↓メインエンジン

↓ビジネスエンジン

B地区構想

(2)運営組織の検討 上述のジオパークの運営計画に基づいてジオパーク組織の持続的運営が可能でなければなりま

せん。基本的な考え方は単純化すると次のとおりです。

■収入マイナス支出>0が正常な形

逆に、収入-支出≦0

であれば、経営が成り立ちません。持続不可能ということになり、GGNのジオパークのコンセ

プトに合致しないことになります。

経営を持続させようとすると外部から資金を調達せざるを得ないことになるが、経営の成り立

たない組織に一般の人々や金融機関は投資しないのが通常です。

であれば、公的資金の投入ということが考えられるが、昨今の国を始め、地方自治体の財政状

ジオパーク

運営に伴う

支出

ジオパーク運営

に伴う収入

225

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況を考慮すると国民のコンセンサスを得ることは簡単ではないと考えられます。

民間の経営感覚を活用した運営計画の策定が求められる所以です。

(3)連携による運営状況の改善

ある特定のジオパーク候補地域の一つでは運営(ジオパークに来る観光客が落とすお金と運営

にかかるお金のバランス)が困難と解される場合が生じます。しかし、詳細に検討すれば運営可

能となる場合も考えられます。

(例)個別ケースでは、

それぞれ運営が困難(あくまでイメージである)

(収支<0)

(収支<0)

■四国ジオパーク

(収支>0にもっていける連携体制の構築)

○ 連携することによって、人員配置の効率化による経費削減、施設運営費、その他の経費も削

減できる可能性が生じます。

○ 連携することによって互いにビジター増につながる策やマーケティング戦略を講じることが

できます。

○ 今後は、(民間資本の投資を促すような)詳細なビジネスプランの検討が課題となります。

B候補地域

A候補地域 A候補地域

B候補地域

連携

A候補

B候補

C候補

D候補

連携

(収支>0または=0になるかも知れ

ない)

226

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詳細なビジネスプランを検討することによって、 適な連携体制を作ることができます。

(「四国は一つ」という意識形成につながる)

(1)「四国は一つ」としての連携の具体的な仕組みの検討

現実的に考えて四国 4 県別に4つの世界ジオパークが認証されるということは困難ではないか

と考えられます。また、こうした形を取った場合、四国は一つとしてというよりはバラバラな活

動になるおそれがあります。 そうした点を考えると次のような位置づけも考えられます。

○ 四国内のジオパークとしてのポテンシャルの高い地域を1ヶ所選定し、そこを世界のジオ

パークとして認証を受け、その他のジオパーク候補地は、そのブランチ(いわゆる支店、

衛星)・ジオパークとしてネットワーク化し活動していく。 ○ 名称は「GGN認証四国ジオパーク:○○地域」といった形にする。

○ 終的には、それぞれのブランチジオパークが「四国ジオパーク:△△地域、××地域、・・」

という形で認証を受け、GGN認証を名乗ることになる。 ○ こうした連携方法によって、「四国は一つ」としてのジオパーク整備を進めていくものとす

る。

○ こうした整備の進め方については、エダー氏もモデル地域調査の際に提唱していた方

法です。 ○ 世界遺産に関しては、拡大登録の仕組みがあり、既に認められている遺産と数百キロ

離れた遺産を一つの世界遺産として認めています。 ○ GGNの世界ジオパークは、もっと緩やかな制度であり、上記の方法によって「四国

は一つ」としての連携体制を取ることが可能です。

○ここまで詳細に検討した結果、運営が困難である場合に始めて公的補助が登場します。

しかし、その場合も持続的運営が可能となる時期までに限られます。ジオパーク地域

全体に及ぼす経済的波及効果を勘案しながら、運営に対する公的補助が検討されるこ

とになります。

9.四国は一つとしてのジオパーク構想は可能ですか?

227

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(2)四国ジオパークの連携構造 ○世界ジオパークネットワーク(GGN)認証の「四国ジオパーク」が実現する。 ○認証を受けるレベルに達しないが、GGNのコンセプトに基づいて持続可能な地域社会

を整備する国または県レベルのジオパークが当然、存在してもよい。ただGGNの名称

は使用できない。 ○同様に市町村レベルのジオパークが存在してもよい。 ○ジオパークと名乗るほどの面積の無い、地質資源単体または数個のポケットパーク的な

ものがあってもよい。 【四国ジオパークの連携構造】 * ジオパークと言うほどの面積の無い「ポケットジオパーク(地質資源が1~数個)」群

GGN認証を受けた「四国ジオパーク(A

地域・B地域・C地域・・・)

国または県レベル(GGNの認証にまで至らな

い)ジオパーク

市町村レベルのジオ

パーク 市町村レベルのジオ

パーク 市町村レベルのジオ

パーク

・・・・・・

○ これらがGGNの四国ジオパークネットワーク群を形成すること

によって、名ばかりではなく実態を伴った「四国は一つ」としての

連携体制が可能となります。 ○ このネットワークの形成によって、四国内の多様なジオツーリズム

のメニュー・コース設定が可能となります。

228

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(1)四国ジオパーク推進協議会の組織・機能 ①組織構成 四国ジオパークを実現するためには、まず四国ジオパーク推進協議会(仮称)の設立が必要で

す。構成メンバーとしては次のようなメンバーが考えられます。 ○四国の産業団体代表 ○観光関連団体代表 ○運輸・旅客業団体代表 ○四国内の大学 ○地域づくり・環境関連NPO団体代表

○行政(国、県、市町村) 世界ジオパークのコンセプトに賛同し、その実現に向けて持続的に活動できる「熱い思い」を

有する人材を集める必要があります。 ②機能 GGNに対して四国を代表する窓口機能を有するとともに、ジオパーク運営に関する意思決定

を行いますが、長期的スパンに立って意思決定しなければなりません。民間を始め必要な場合に

は国等の幅広い支援を求める機能も備えていなければなりません。 (2)ジオパーク運営組織 四国全体の動きに関しては、四国ジオパーク推進協議会(仮称)が意思決定を行うが、実際に

GGNに認証を申請するジオパークを運営する組織が必要となります。地元のGGNのジオパー

クの考え方に対する理解、実現に向けての熱意が不可欠です。組織としては上述の地元版組織構

成となります。 ○活動形態:民間主導の体制を取る ○組織形態 株式会社(特別目的会社など)、第 3 セクター(民間が持ち株過半数以上)といった形態が考え

られます。 実際に運営組織を形成する場合、以下のような項目について計画を作成することが必要です。 ■ジオパークの整備計画に関する項目 整備目標 基本理念 目的と効果 題材 コンセプト

事業規模 整備スケール(カテゴリー/サイズ) 施設規模 想定集客数 事業コスト

領域形態 スポット型 エリア型 ルート型

施設形態 単独施設 複合施設 重複施設 連携施設

管理形態 閉鎖型 開放型

基本メニュー 原位置展示メニュー 情報メニュー インフラメニュー

オプションメニュー 体験メニュー 箱モノメニュー 商品メニュー

10.四国ジオパークの運営はどうしますか?

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事業形態 単独事業 連携事業 支援事業 ボランティア事業

事業組織 自治体 事業主体 企画・設計専門家組織

業務組織 業務スタッフ コーディネーター サポーター ナビゲータ 地域ボランティア

支援組織 地元支援組織 ジオパーク愛護組織 ジオパーク専門組織 国の機関

コスト計画 整備コスト 運営コスト 維持補修コスト (露頭)再生コスト 事業収入

事業計画 財源確保(単費 基金 国の機関等の諸支援事業 モデル事業・制度)

運営計画 業務分析 業務体制 スタッフ

管理計画 清掃 除草植栽管理 施設管理 スタッフ

再生計画 掘削更新 代替露頭 新規展示 リピーター対応

人材育成プログラム ジオガイド 地域ボランティア

ビジネス的仕掛け 異業種・類似業種施設連携 旅行・観光ビジネス関連 教育・研究機関 地域

産業 地域物産製造業

集人集客的仕掛け ブランド ラベリング 学習・体験イベント ファンクラブ リピータ対応

情報発信 学術イベント(シンポジウム、フォーラムなど) 学術情報発信(機関紙、

HPコンテンツ)

学術継続調査 地質素材・関連素材調査(コーディネーター、サポーター、連携機関)

注:「美しき日本の国造り、地域造り、地人造りとしてのジオパークの提言」(平野勇)より引用、一部変更

本調査においては、下記の地質素材調査、関連素材調査、既存施設調査等は実施済みですが、

それら以外は、今後、より現実的な調査が課題となります。

また、GGNへの申請に向けて具体的動きを取る地域のジオパーク運営組織は、以下の項目に

ついても対応する必要があります。

■ジオパークの設計と整備に関する項目

コンセプトデザイン ジオパークネーミング コンセプト ロゴ ロゴマーク マスコ

ット

統一デザイン シンボルカラー 施設ネーミング 施設仕様・構造設計

展示メニュー情報 展示メニュー基本情報ファイル

原位置展示メニュー 視点設定 掘削整備 ライトアップ 安全対策 保存対策

ハード情報メニュー 原位置展示(地質存在地点)説明板 施設案内板 利用ガイド板

ソフト情報メニュー ハードプリント 施設内電子案内 電子情報(HPコンテンツ等)

インフラメニュー ルート 動線 観察路 案内標識 手摺り ガイドロープ 広場

駐車場 トイレ

体験メニュー 既設メニューを参考にしつつ創意工夫 新規開発

箱モノメニュー フィールドミュージアムなど既設メニューを参考にしつつ創意工

商品メニュー 既設メニューを参考にしつつ創意工夫 新規開発

注:前出

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Page 34: 3 ジオ(地質遺産等)を中心とする ジオパーク形成 …⑤保護(保存):ジオパークのある国・地域の法と規制、及び伝統に基づいて地質遺産

四国は世界遺産をめざしている「八十八ヶ所(巡礼)」に代表されるように、まさに「心(HE

ART)」の癒しの場として認識されています。 この「HEART」をキーワードとすると次のような切り口が見えてきます。 こうした切り口(キーワード)とジオパークを組み合わせると、多様なツーリズムメニュー、

環境教育メニューが見えてきます。 年度ごとに「健康」をテーマにジオパークのツーリズムメニューを作成し、イベントやツーリ

ストを募集することや「環境」とジオパークを絡めた修学旅行を誘致することも考えられます。 地質に影響される「農業」とジオパークに絡めた体験メニューも出てきます。また、毛色を変

えて「芸術文化」(神楽)とジオパークの組み合わせメニューも外国人向けには面白いのではない

でしょうか。 まさに四国のジオパークは多様性に富んだ、世界に類のないジオパークを形成することも可能

です。

H:Hospitality(もてなし)、Health(健康)・・・ E:Environment(環境)、Ecology(生態系・生態学)、Economy(経済) Education(教育)・・・ A:Art(芸術)、Amenity(快適)、Agriculture(農業)・・・ R:Research(調査研究)、Resort(手作りリゾート)・・・ T:Truth(本物)、Treasure(宝物)・・・・ これら以外にも知恵を寄せ集めればいくらでも出てきます。

11.多様性(ダイバーシティー)に満ちた四国ジオパークをめざして!

【キーワード】

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