3d timonで、 モノづくりの形を変えてきた · 現在、アルプス電気様では、3d...

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Q Q Q Q アルプス電気株式会社 精密加工技術部加工技術G主任技師に聞く 家電、モバイル機器、自動車、産業機器など、全世界2,000社を超えるメーカーに、 様々な電子部品を供給しているアルプス電気株式会社では、 3D TIMONをどのようにご活用されているのかを今回インタビューさせて戴きました。 3D TIMONで、 モノづくりの形を変えてきた アルプス電気株式会社 精密加工技術部 加工技術G 主任技師 麻山 聡 3D TIMONとの出会いについてお聞かせください 1995年ごろ、それまで使っていた樹脂流動解析ソフトから、新しいソフト への更新を考えていました。当時はまだ、CAEが社内的に認知されておらず、 予算も限られていました。そんな中で当時のPC TIMON(3D TIMONの 前身)にランナーバランス機能を搭載して頂けることになり、1996年 PC TIMONの正式採用に至りました。 1996年当時、実際にTIMONを使って初めて知った こと、良かったこと、困ったことなどその頃のエピソードを お聞かせください。 当時は多数個取金型の解析を主に行っており、36個取金型では解析が 有効なことを示せました。また、ウエルドラインを特定の場所から避ける ためにも解析が有効であることを示せました。その一方で、当時はシェル モデルでしか解析が出来なかったため、面だけで構成できない形状への 適用は出来ませんでした。たとえば、部品の大きさが3mm以下で肉厚も 1mm以下などという部品では、解析結果は現物とは合いませんでした。 また、端子インサート成形品が7~8割と多かったのですが、当時はま だインサート解析機能がなかったため、これもまた解析結果は現物とは 合いませんでした。 お話を伺うと、解析の適用対象を限定するなど、運用に 苦労されていた様子が伺われます。 現在ではアルプス電気様は3D TIMONのビッグユーザ でいらっしゃるのですが、どのようなことが転機となっ たのでしょうか? また3D TIMONの活用に関して、麻山様が社内表彰さ れたと伺っていますが。 2000 ~ 2002年頃でしょうか、設計に3D CADが本格導入され始めて状況 が変わり始めました。Voxelメッシュでの解析を活用することで、設計で のモデル変更が発生した際、直ちに解析を行い成形不良の事前検討が 出来るようになりました。 新製品を作る前から解析して成形不良の問題点を事前に見極めて新しい 金型を起工することが出来るようになりました。これは運用開始1~ 2年で 目に見える成果が出始め、 2003年には年間業務改善表彰、 2006年には 功績賞を社長から直接頂きました。 3D TIMONの運用でモノづくりの 形をかえてきたと思っています。 さて、アルプス電気様といえば、国内だけでなく 海外でのモノづくりにも3D TIMONを ご活用頂いていると伺っております。 海外展開についてのご苦労話を伺いたいのですが・・・ 現在、3D TIMONは中国、韓国、マレーシアの現地で活用しています。 いずれの国でもポイントは共通しています。まずは、最初の教育をきちっと やらないといけません。日本人のようにあいまいな表現は分かってもらえ ません。教育は具体的に、文書化・数値化して行ないます。 また新しいことは2 ~3 ヶ月ではできません。業務で使えるようになるには 1年近くかかります。そして成果を出せるようになるには、到底1年では 無理です。海外で解析技術を定着させることは日本より難しい側面も あることから、海外の担当者と日本の担当者とが常に技術的な交流を 行なう必要があります。 また大きなネックは、新しい技術が文章やTV会議ではなかなか伝わらず、 現地で直接モノや解析結果を見ないと納得してもらえないことです。 このようなことから、定期的に技術者が交互に訪問し合う、または技術者を 相互に交流させるような仕組みが必要だと思っています。

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アルプス電気株式会社 精密加工技術部加工技術G主任技師に聞く

家電、モバイル機器、自動車、産業機器など、全世界2,000社を超えるメーカーに、様 な々電子部品を供給しているアルプス電気株式会社では、3D TIMONをどのようにご活用されているのかを今回インタビューさせて戴きました。

3D TIMONで、モノづくりの形を変えてきた

アルプス電気株式会社精密加工技術部 加工技術G

主任技師 麻山 聡 氏

3D TIMONとの出会いについてお聞かせください1995年ごろ、それまで使っていた樹脂流動解析ソフトから、新しいソフトへの更新を考えていました。当時はまだ、CAEが社内的に認知されておらず、予算も限られていました。そんな中で当時のPC TIMON(3D TIMONの前身)にランナーバランス機能を搭載して頂けることになり、1996年PC TIMONの正式採用に至りました。             

1996年当時、実際にTIMONを使って初めて知ったこと、良かったこと、困ったことなどその頃のエピソードをお聞かせください。

当時は多数個取金型の解析を主に行っており、36個取金型では解析が有効なことを示せました。また、ウエルドラインを特定の場所から避けるためにも解析が有効であることを示せました。その一方で、当時はシェルモデルでしか解析が出来なかったため、面だけで構成できない形状への適用は出来ませんでした。たとえば、部品の大きさが3mm以下で肉厚も1mm以下などという部品では、解析結果は現物とは合いませんでした。また、端子インサート成形品が7~8割と多かったのですが、当時はまだインサート解析機能がなかったため、これもまた解析結果は現物とは合いませんでした。

お話を伺うと、解析の適用対象を限定するなど、運用に苦労されていた様子が伺われます。現在ではアルプス電気様は3D TIMONのビッグユーザでいらっしゃるのですが、どのようなことが転機となったのでしょうか?また3D TIMONの活用に関して、麻山様が社内表彰されたと伺っていますが。

2000~2002年頃でしょうか、設計に3D CADが本格導入され始めて状況が変わり始めました。Voxelメッシュでの解析を活用することで、設計で

のモデル変更が発生した際、直ちに解析を行い成形不良の事前検討が出来るようになりました。新製品を作る前から解析して成形不良の問題点を事前に見極めて新しい金型を起工することが出来るようになりました。これは運用開始1~2年で目に見える成果が出始め、2003年には年間業務改善表彰、2006年には功績賞を社長から直接頂きました。3D TIMONの運用でモノづくりの形をかえてきたと思っています。

さて、アルプス電気様といえば、国内だけでなく海外でのモノづくりにも3D TIMONをご活用頂いていると伺っております。海外展開についてのご苦労話を伺いたいのですが・・・

現在、3D TIMONは中国、韓国、マレーシアの現地で活用しています。いずれの国でもポイントは共通しています。まずは、最初の教育をきちっとやらないといけません。日本人のようにあいまいな表現は分かってもらえません。教育は具体的に、文書化・数値化して行ないます。また新しいことは2~3ヶ月ではできません。業務で使えるようになるには1年近くかかります。そして成果を出せるようになるには、到底1年では無理です。海外で解析技術を定着させることは日本より難しい側面もあることから、海外の担当者と日本の担当者とが常に技術的な交流を行なう必要があります。また大きなネックは、新しい技術が文章やTV会議ではなかなか伝わらず、現地で直接モノや解析結果を見ないと納得してもらえないことです。このようなことから、定期的に技術者が交互に訪問し合う、または技術者を相互に交流させるような仕組みが必要だと思っています。

現在、アルプス電気様では、3D TIMONのどのような機能をどういう業務にどのように使っておられるか、お聞かせ下さい。

通常の3D TIMONは、自動車の外装部品や機構部品の解析に使っています。SuperThinは、板厚が0.1~0.3mmのコネクター(当社の場合は、狭ピッチコネクターではなくSDなどのカードコネクターが主流)の解析に使っています。初期そり量を0.1mm以下にしたり、3D TIMONの出力を他の構造解析と連成したりして活用しています。東レ様の協力もあり、非常に精度良く予測出来る状態になっております。車載部品では内装パネルを2色成形で作るものもあり、MultiMoldで解析しています。MultiMoldは2色成形品だけでなく、様々な成形状態を解くために、温度連成解析を活用しています。当社の製品はガラス強化樹脂を使っている部品が7割を占め、異方性収縮を考慮した構造解析にABAQUS連成が欠かせません。

3D TIMONでは、Tetraメッシャーと1層テトラでの解析がひとつの特徴となっていますが、何か優位点を見いだしていただけましたか?

Tetraモデルでの解析は、解析が速い、体積誤差が少ない、特に金型冷却解析が速いなどの特徴から、条件だしや、深い穴を持つモデルへの適用が増えて来ています。さらに最近では短いリードタイムで解析結果をお客様に提出しなくてはいけないケースが増えてきています。短いリードタイムにどう間に合わせるかという課題に対し、Tetraの活躍場所が増える方向です。             

時間も少なくなってきました。まとめとして3D TIMONに対する要望をお聞かせ下さい。

いつまで経っても、「もっと細かく、もっと速く、もっと正確に、もっと精密に」です。特にモデルを細かく解析しようとするとメッシュが足りなくなってしまいます。また、新しい成形方法、新しい成形機に対応していただきたい。現在ではまだ、金型の全数解析が出来ておらず、取りこぼしている問題もあります。メリハリをつけての運用を強いられていますが、3D TIMONの機能だけでは足りないのかもしれません。今後の機能拡充に期待しています。

最後に東レエンジニアリングに対する印象をお聞かせください。

私はCAEでしか、お付き合いがないのですが・・・技術の悩みや相談を直接東レエンジニアリングのエンジニアの方へ投げかけることができ、すぐに対応いただいています。タイミングよく、レスポンスよく対応いただき、助かっています。心強く思っています。

インタビューを終えて3D TIMON黎明期からお客様でいらっしゃるアルプス電気様では、マンネリ化や形骸化に陥ることなく、常に新しい目で3D TIMONをお使いいただいていることがよく分かりました。アルプス電気様には、これからもモノづくりの形を変えてゆくツールとして、3D TIMONを活用いただきたいと思うと同時に、我々自身も3D TIMONのユーザの皆様の声に耳を傾け、開発・サポートに努めてゆかねばならないことを、強く感じました。

© Toray Engineering Co.,Ltd.

※3D TIMONは、東レエンジニリング株式会社の登録商標です。その他、記載の会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。

〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町3-3-16

東レエンジニアリング株式会社 エンジニアリング事業本部 CAEソフト事業部 TEL 03-3241-1543 FAX 03-3241-1545

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企業概要社 名: アルプス電気株式会社

本社所在地: 〒145-8501 東京都大田区雪谷大塚町1-7

設 立: 1948年11月1日

http://www.alps.com/j/