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2005 年度 修士学位論文 3D 骨梁波の軽量モデリング 2006 2 20 大学 大学院 : : : :

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2005年度 修士学位論文

3D骨梁波の軽量モデリング

2006年 2月 20日

大阪大学 大学院基礎工学研究科機能創成専攻 生体工学領域

勝原 慎介

主査:           日付:    

副査:           日付:    

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概 要

近年の高齢化社会への移行とともに『寝たきり』をはじめとする老人性疾患が社会問題となってお

り、人体の骨格を形成している骨における疾患も寝たきりの大きな要因である。現在、骨の評価方

法としては X線 CTや単純レントゲン写真を用いた骨量計測が主流である。しかし同程度の骨密

度でも骨折する場合としない場合があり、近年では厳密な力学モデルから骨評価をするコンピュー

タシミュレーション、内部構造や力の加わる方向等に対する脆弱性を考慮した超音波による骨疾患

等のリスク評価や治療などが発展している。その一方で、厳密な力学モデルを用いた骨評価におい

てはパラメタの設定や解釈に高度な専門性を必要とし、簡便かつ迅速な検査等への応用が困難であ

るという側面を持ち、超音波による骨評価法や治療法においては計測されたパラメタの臨床的意義

や、なぜ有効な治癒効果が得られるのかについては十分に解明されていない。本論文では、骨の微

細構造の情報を保有する μX線 CT画像をもとに構築した軽量モデルでの骨機能計測を提案する。

本論文は以下の六章で構成されている。

第一章では、コンピュータシミュレーションにおける軽量モデリングについて述べる。医療の現

場では、特定の疾患に対するシミュレーション結果が必要とされており、軽量モデルはその要求を

満たすものである。この章では、骨疾患の現状についても触れ、定量的な診断システムの必要性に

ついても述べる。

第二章では、骨の基本的な構造について記述する。骨は外側の厚く硬い皮質骨と内側の梁構造を

持つ海綿骨から構成されており、後者は骨の強度において重要な役割を担っている。本章では、骨

構造の計測法や治療法等の様々な方法についても述べる。

第三章では、骨機能の評価を目的とした骨モデリングにおける先行研究を記述し、それらの研究

の利点と欠点を示す。

第四章では、3次元骨梁構造を構築するための画像処理について説明する。まず、骨の μX線CT

画像から本研究で提案する閾値処理により骨梁の微細構造の連結性を保存し骨梁部位の抽出を行

なった。次に、3次元細線化処理を施し 3次元骨梁構造を構築した。この処理により元のオブジェ

クトのトポロジーを保存した線幅 1の 3次元骨梁ネットワークが得られる。さらに、この骨梁ネッ

トワークから局所的な骨梁が持つ端点、線分、分岐数などの情報を獲得し構造情報のみを保有した

骨梁の軽量モデルを構築した。

第五章では、骨梁中の波伝播のシミュレーション実験について述べる。本実験では骨梁中を伝播

する波の可視化が実現した。また、骨梁構造に対する波伝播の異方特性が明らかにされた。

第六章では、本論文と展望についてのまとめを述べる。

キーワード:骨梁、μX線CT画像、3次元画像処理、軽量モデル、シミュレーション、波伝播

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Abstract

This thesis presents the light weighted modelling for the quantitative evaluation of bone function.

The thesis consists of the following 6 chapters.

Chapter 1 describes light weighted modelling for computer simulation. Clinical sites demand

simulation results for the specific patient and the light weighted modelling responds the demand

very well. Moreover, the states of bone diseases is mentioned and the quantitative diagnosis

system will be desired.

Chapter 2 expresses the structure of bone. A bone is constructed from shaft of bone and

trabecular and the latter plays the important part for strength of bone. For bone structure

measurement and treatment, various methodologies are listed in this chapter.

Chapter 3 surveys the modelling studies to evaluate bone function. Furthermore, this chapter

summarize advantage and disadvantage of the researches.

Chapter 4 presents the image processing processes to reconstruct three dimensional (3D) bone

structure. First, trabecular bone was extracted from the X-ray CT images by performing bina-

rization. Second, 3D trabecular structure was obtained using skeltonizing procedure. Third, the

skeltonized trabecular was segmented for wave propagation.

Chapter 5 demonstrates the wave propagation in trabecular bone. The experimental results

shows that the wave could be visualized to be propagated in the trabecular bone and reveals that

the trabecular structure has the anisotropy for the wave propagation.

Chapter 6 concludes the thesis and describes the future view.

Keyword: Trabecular bone, μX-Ray CT image, 3D image processing,Lightweight model, Sim-

ulation, Wave propagation

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目 次

第 1章 はじめに 2

第 2章 骨構造と評価法 4

2.1 骨組織と階層的構造 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

2.2 骨粗鬆症 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

2.3 骨形態計測法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7

2.4 骨機能計測法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15

2.5 骨治療法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17

第 3章 骨モデリング 19

3.1 静的骨評価方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19

3.2 動的骨評価方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22

第 4章 骨梁の 3D軽量モデルの構築 25

4.1 骨梁の断層画像の獲得 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25

4.2 画像における骨梁部位の抽出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 28

4.3 骨梁ネットワークの抽出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 34

4.4 骨梁の局所的な連結数抽出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38

4.5 骨梁構造の配向性抽出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41

第 5章 骨梁波伝播のシミュレーション実験 42

5.1 波伝播のアルゴリズム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42

5.2 骨梁中波伝播の可視化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 44

5.3 外的刺激に対する骨梁の応答特性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 45

第 6章 まとめ 49

謝辞 50

業績 52

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参考文献 53

1

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第1章 はじめに

技術の発展は社会の様々な側面に大きな影響を与える。医学・医療の分野においても例外ではな

く、診断や治療等に続々と新しい技術が導入され、飛躍的な進歩をもたらしている。例えば、生体

内部の組織の状態を視覚的に見るという観点において、昔は切って見る方法しか無かったが、超音

波計測法、X線CT法 (Computerized Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等が開

発され、非侵襲的な体内の観察が可能になった。さらに、『治療』という点においても人の手だけ

では困難であった治療が可能になっている。手術支援用ロボットの『ZEUS』は、これまで人の手

のみでは困難であった微細な部分の手術を可能にした [1]。また、骨の超音波治療器は骨芽細砲の働

きを活性化させ、安静に固定する治療しか施すことが困難であった難治療骨折などの能動的な治療

を可能にした。こうした進歩はセンシング技術や制御技術と同時に、コンピュータによる情報処理

技術の飛躍的な発展に負うところが大きい。

さらに、コンピュータの計算能力の向上は医学や医療にコンピュータミュレーションという新たな

可能性を切り開いた。コンピュータシミュレーションの医学への導入は、1970年代のCAI(Computer

Assisted Instruction)と PaPa.(紙上患者)を用いた症例シミュレーションに始まり、医学教育にお

ける教科書や講義から臨床実習へと飛躍する中間媒体として位置づけられていた [2]。人命の犠牲を

伴うことなく繰り返し実践することができると共に、起こりうる様々なリスクやその組み合わせの

シミュレーションが可能になった。そして、現在では発病が確認されていない疾病などのリスクを

観察し、その治療法を検討するために複雑で実現が困難とされていた生体内の機能を解明する生体

機能シミュレーションへと応用されている。多大な情報を含んだ細胞・生体機能をシミュレーショ

ンにより記述できれば、生命現象の理解を進めるとともに新たな薬剤開発や医療分野の新技術開発

の効率化等が期待できる。

従来、生体機能シミュレーションを行う場合、多くの研究は多大な計算とパラメタで、より厳密

なモデルを構築するという構図をとっていた。しかしながら、厳密なモデルを構築しその機能のシ

ミュレーションを行なう場合、コンピュータの計算能力が向上したとはいえ、非常に長い計算時間

が必要である。更に、階層的構造をもった組織をシミュレーションするために階層内外の相互影響

も考慮しようとすると、問題設定はきわめて複雑で難解になる。このような問題点から、多くの入

出力パラメタを伴う複雑なシミュレーションの解析は、パラメタの設定や解釈に高度な専門性を必

要とするようになる。結果的に扱いにくくなり、簡便かつ迅速な検査等への応用は困難になる。こ

の様な問題に対して、『軽量モデル』という視点からの解析が考えられている。軽量モデルは多大

2

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な情報のうち特定の情報だけを取り出し、解析を簡便かつ迅速に行なえるという利点を持ち、生体

機能シミュレーションの臨床応用を考えた場合、非常に有益であると考えられる。

近年の高齢化社会への移行とともに『寝たきり』をはじめとする老人性疾患が社会問題となって

おり、人体の骨格を形成している骨における疾患も寝たきりの大きな要因である。現在、骨の評価

方法としては X線CTや単純レントゲン写真を用いた骨量計測が主流である。しかしながら、現行

の方法では間接的に骨の脆弱性を定量評価することを目的に行なわれており、部位や力の加わる方

向等に対する脆弱性の考慮がなされていない。このような問題点に対して、超音波による骨粗鬆症

や大腿骨骨折などのリスク評価や治療への応用がなされている。超音波を用いることで従来の骨評

価法において欠如していた骨梁構造に依存した骨強度が得られ、治療においても超音波を骨に送波

することで骨形成を増進するといった報告がある。また、超音波が加わった場合、その波は独特な

異方性を持つ骨梁の構造と相互に作用することが確認されている。しかしながら、計測されたパラ

メタの臨床的意義や、なぜ有効な治癒効果が得られるのかについては十分に解明されていない。こ

のような骨の様々な機能をシミュレーションによって解明しようという動きがある [3]-[8]。骨の機

能シミュレーションは、内部構造の複雑さや骨髄液や骨の異方特性などを表現するために、有限要

素法や有限差分時間領域法などを用いた厳密な力学モデルを構築する方法が主流であった [4]-[8]。

しかしながら、骨には外側の厚く硬質な皮質骨と内側の網目構造をもつ海綿骨から構成されており、

それらの相互影響や骨梁の太さやその構造異方性、骨髄液の影響など様々な要因が含まれており全

ての機能を同時に解明することは非常に困難であると考えられる。また、先述した様に臨床応用と

いった観点からも、多大な計算が必要になる力学モデルは相応しくないと考えられる。それに対し

て、軽量モデルはシミュレーション結果の解析、計算時間の短縮という点において優れている。ま

た、軽量モデルでのシミュレーションを組み合わせることで、様々な情報を含んだ統合的なシミュ

レーションも実現可能であると考えられる。

本研究では従来の骨形態計測法や骨評価手法もふまえ、骨の機能を簡便に獲得することが目的で

ある。具体的には、X線 CT装置により撮影した骨梁の断層画像に対して画像処理を施し骨梁の 3

次元構造情報のみを保持したモデルを構築する。そして、本モデルに対して波動を与えた場合のシ

ミュレーション実験を行い、骨梁の波動伝播特性を獲得する。

3

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第2章 骨構造と評価法

人体の骨格を形成している骨は複雑な内部構造を持っており、その機能も非常に複雑である。近

年の高齢化社会への移行とともに『寝たきり』の原因となる骨粗鬆症や骨折のリスク評価に対して、

従来の骨密度だけではなく内部構造の機能も重要視されており、骨構造の計測法や機能計測法にお

いても様々な方法が考えられている。本章では、まず骨の基本構造について述べ、代表的な骨疾患

である骨粗鬆症の機序について述べる。そして、今日の骨形態計測法、骨機能計測法、骨治療法に

ついて触れる。

2.1 骨組織と階層的構造

骨組織は人体の骨組みを構成し、運動の中心ともなる筋肉とともに重要な内蔵器官を保護してい

る。骨組織はコラーゲンなどの糖蛋白、それに沈着しているカルシウムとリンより構成された骨塩

でできている。また、骨の中心にある骨髄組織は血液の産出の場所としても重要である。骨組織を

形成するカルシウム、リンは単に骨の強度を保持するだけではなく、エネルギー代謝、遺伝情報な

ど、生命の維持に関係する細胞内情報伝達機構で重要な役割を担っている。この生命維持に必要な

カルシウムの 99%、リンの 85%が骨組織に蓄積されている [9]。

骨の表面は骨を保護するとともに栄養、発育の場である骨膜で覆われ、表面近くは緻密な皮質骨

(緻密骨)、内側の骨髄近くは海綿状の骨(海綿骨、骨梁)で構成されている。外部の厚い層が皮質

骨で、内部の網目状の組織が骨梁である (図 2.1)。皮質骨は骨の外側に位置し、非常に硬質である。

特に脊椎動物の皮質骨は多数の層板構造から形成されており、図 2.2の拡大図のように、血管や神

経は同心円上の層板の中心や、層板を貫くように皮質骨内に分布している [10]。一方、海綿骨は骨

内部に梁状に存在し、網目状の隙間を多く含む海綿状構造を成し、骨梁を基本単位として骨の内部

を構成している。その構造は一見不規則に配列しているように見えるが、力学的に対応し得る配列

をとり、外力に対して抵抗力の大きくなるような方向性を示す [11]。

4

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図 2.1: 骨の階層的構造 [12]

(a) (b)

図 2.2: 骨組織 [13]

(a)大腿骨頸部 (b)枠内拡大図

5

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2.2 骨粗鬆症

骨粗鬆症とは、『骨量減少と骨組織の微細構造の変化を特徴とする全身的疾患であり、このため骨

が脆弱化し、骨折をきたしやすくなった病態』と定義され、一般に原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆

症に分類される [14]。原発性骨粗鬆症は単一の病態ではなく種々の原因により起こった病態の総称

であり、閉経後の女性や老年期に発症する退行期骨粗鬆症がほとんどである。また、原発性骨粗鬆

症は女性に多く、その女性患者数は男性患者数の約 10倍とされている。一方、続発性骨粗鬆症は、

年齢や性別に関わらずクッシング症候群などの内分泌疾患や重症糖尿病などによる基礎となる疾患

に続発して生じる。従って、続発性骨粗鬆症は基礎疾患が改善される場合に解消するものを指す。

原発性と続発性で発症原因は違うが骨量の減少の基礎にあたるものはカルシウムの欠乏である。

カルシウムは、体内で C.H.O.N.などの有機物質を生成する元素に次いで多く、その 99%が骨に存

在している。残りの 1%が軟部組織や血液などに存在し、その濃度は常に一定に保たれており濃度

の高低は痙攣や心停止等を引き起こし身体機能に重大な影響を与える。この為、血液中のカルシウ

ム濃度を正常範囲に維持することは生命維持に不可欠であり、カルシウムの摂取が不足している場

合は、副甲状腺ホルモンが分泌されて、骨からカルシウムを取り出す。加齢とともに血中カルシウ

ムは減少するため骨からのカルシウム損失が大きくなる [15]。また、原発性骨粗鬆症が女性に多い

原因としては男性に比べ骨吸収を抑制しているカルチトニンが少なく、更に加齢とともにカルチト

ニンが減少し一層骨の減少が進行するためである。一方、高齢者の発症原因は、カルシウムの吸収

を促す活性型ビタミン Dの減少が挙げられる。活性型ビタミン Dは皮膚で紫外線によって転換さ

れたあと腎で合成されるが、高齢者は日光にあたらないことが多く、また腎機能は加齢とともに著

明に低下するため、活性型ビタミン Dの合成は高齢者では少ない。この為、腸からのカルシウム吸

収は減少し、カルシウム欠乏が増進される。このように、副甲状腺ホルモン、カルチトニン、活性

型ビタミン Dなどのカルシウム調節の不具合により骨量の減少が起こる。そして、骨量減少によっ

て、海綿骨構造の欠如、皮質骨厚の減少が進行し図 2.3(b) に見られる様に骨粗鬆症が発症する。

(a) (b)

図 2.3: 腰椎骨 [16]

(a)健常者の骨 (b)骨粗鬆症患者の骨

6

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2.3 骨形態計測法

骨粗鬆症や骨折等の骨疾患に対する診断は、単純レントゲン写真や X線CT装置によって獲得し

た画像を用い医者が状態を判断する定性的な評価が一般的である。現在、骨形状画像化装置として

はX線CT装置が主流であるが、被爆の危険性が高いといった欠点を持っている。その為、被爆の

危険性が低くかつ骨の内部構造である骨梁の構造を獲得する方法として、MRI装置による骨形態計

測の臨床応用も考えられている。以下では、骨形態計測法として X線 CT法、MRI法の計測原理

について述べ、それぞれの方法で撮影された骨の画像を示す。

2.3.1 X線CT法

X線による計測はでは X線の物質を透過する性質を利用し、試料の内部構造を非破壊で計測する

ことができる。X線 CT法は 1970年代の初頭から発展し、現在では骨の形態計測の方法としては

最も使用されている方法である。以下で、X線CT法の計測原理について詳細を述べる。

計測方法

X線が物質を透過する時の透過量は、X線の強度、物質の構成元素、密度や厚さなどにより異な

る。この透過量の差異を蛍光体を用いて検出することにより、物質の透過像を得る。拡大率は、X

線の焦点から検出器の距離 (source object distance:SOD)と X線の焦点からサンプルまでの距離

(source film distance:SFD)の比で決定する (図 2.4)[17]。また、X線 CT法を用いることで断層像

を獲得することができる。CT画像はX線源からサンプルに対し X線を照射し (サンプルがテ-ブ

ルの上で回転することで多方向から照射する)、観察したい箇所を中心として一定の厚さ (μm単位)

でのX線透過デ-タを Image 電気信号に変換し投影デ-タとして集積される。集積された投影デ-

タから画像再構成により CT画像が再現される (図 2.5)[18]。

radiation source

SOD

SFD

focus sample sensor

図 2.4: 透過像撮影の原理図

7

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focus

focus

focus

rotation

rotation

reconstruction

tomogram

図 2.5: CT断面撮影の原理図

画像の再構成

1. 画像を再構成する問題の定式化

画像再構成の方法を論じる前に、まず解くべき内容を明らかにする。図 2.6に表すように被

写体を考え、これに固定した座標系 xOyを定義する。

x

X

y

Y

θ

f(x,y)

0

X

0

g(X,θ)

図 2.6: 被写体 f(x, y)と投影データ g(X, θ)との関係

8

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この座標 (x, y)においてX線吸収係数の分布を f(x, y)で表す。次に座標系 xOyに対して、角

度 θだけ傾いた新たな座標系XOY を定義する。したがって、座標 (x, y)と (X,Y )との間の

変換は {x = X cos θ − Y sin θ

y = X sin θ + Y cos θ(2.1)

となる。ここで、Y 軸に平行に強度 I0のX線ビームを照射すれば、被写体 f(x, y) を通過し

た後の X線強度 I は

I/I0 = exp[−∫ ∞

−∞f(X cos θ − Y sin θ,X sin θ + Y cos θ)dY ] (2.2)

より与えられる。この X線強度の減衰率の対数変換 g(X, θ)(投影データと呼ぶ)は

g(X, θ) =∫ ∞

−∞f(X cos θ − Y sin θ,X sin θ + Y cos θ)dY (2.3)

により表される。このような関係で示される投影データ g(X, θ)を 0 ≤ θ < 2πにおいて与え、

吸収係数の分布 f(x, θ)を求めることが画像再構成の問題内容である。

2. 逆投影法

投影データ g(X, θ)から吸収係数の分布 f(x, θ)を求める方法として逆投影法がある。本研究

で用いた装置ではこの逆投影法を用いて画像の再構成が行なわれている。これは、図 2.7に示

すように着目した点 (x, y)に対して、ここを通過する X線ビームによって得られる投影デー

タ上の価を逆に投影して、これを全ての方向から重ね合わせる方法である。

x

X

y

Y

θ

f(x,y)

0

X

0

g(X,θj)

(x,y)

X

0

g(X,θi)

X = xcosθj+ysinθj

X = xcosθi+ysinθi

図 2.7: 逆投影法による画像再構成

9

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点 (x, y)に対して、座標系 xOyから角度 θだけ傾いた座標系 XOY のX 座標は

x = X cos θ − Y sin θ (2.4)

によって表される。したがって、逆投影法によって再構成される画像は

p(x, y) = 1/(2π)∫ 2π

0g(x cos θ + y sin θ, θ)dθ (2.5)

と表される。このようにして得られる p(x, y)は、真の分布 f(x, y)とは少し異なる。すなわ

ち、点 (x0, y0)にある点状の強度分布δ (x − x0, y − y0)は逆投影法によれば、この点の周囲

に放射状に広がる強度分布として再構成されている [19]。

獲得画像

以上の方法を用いて撮影された X線CT画像を図 2.8に示す。骨部分と軟組織の X線吸収量に著

しい差があり X線CT画像では骨部位が強調される。被験者の被爆等の危険性も有しているが骨の

形態を計測する方法として最も使用されている方法である。

図 2.8: 大腿骨遠位部の X線 CT画像 [20]

10

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2.3.2 MRI法

MRIはNMR(nuclear magnetic resonance:核磁気共鳴)を利用した画像診断方法である。MRI

で主に用いられるのは、体内に多く存在する水素原子中の原子核(プロトン)の核磁気共鳴である。

しかし、NMRは単一の試料の性質を調べる技術であり、信号の発生源は分からない。MRIはNMR

に位置情報を加えて、信号の強度分布を画像化したものである。以下で、MRIの計測原理について

詳細を述べる。

核磁気共鳴現象

磁場中の原子核はスピン方向が揃い (図 2.9)、磁場強度に比例した周波数 (ラーモア周波数)の電

磁エネルギーを吸収・放出するようになる。また、共鳴周波数ωは以下の式で求められる。

ω = γ · B (2.6)

上式で、γは原子核固有の比例定数、Bは磁場強度を示している。

magnetic moment

(a) (b)

H0

図 2.9: 強磁場中でのスピンの整列 [21]

(a)磁場 OFF (b)磁場 ON

11

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磁場中の原子核に RF(ラジオ波)信号を照射すると平衡状態からずれ一斉にある特定の方向を向

く。図 2.10はフリップ角 θで励起された状態を示している。そして、RFパルスを切ると原子核は元

の状態に戻る。この時に生じる信号を FID(Free Induction Decay:自由誘導減衰)信号と呼びMRI

ではこの信号を計測する (図 2.11)。

B0 x

y

z

θ

Mz = M

Mxy

B0 x

y

z

Mz = M

Mxy = 0

(a) (b)

図 2.10: プロトンの平衡状態と励起状態

(a)平衡状態 (b)励起状態

B0 x

y

z

θ

RF pulse

B0 x

y

z

θ

FID signal

RF pulse off

図 2.11: FID信号

空間エンコーディングと画像再構成

被験者の足から頭の方向が Z軸の方向だとすると、この方向に向かって磁場が次第に強くなるよ

うに傾斜磁場 Gzを印加する。これにより被験者の各横断スライスは異なるラーモア周波数により

共鳴することになる。そのためRFパルスの周波数を調整することで、特定のスライスにのみエネ

12

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ルギーを吸収させることが可能となる (図 2.12)。

Z

GRF

frequency

magnetic field intensity

slice thickness

bandwidth

図 2.12: スライス選択的な励起

2次元のスライスを XY平面とすると、MRIでは X方向に傾斜磁場 Gxを印加する周波数エン

コーディングと、Y方向にGyを印加する位相エンコーディングを行う。はじめにY軸方向に傾斜

磁場を短時間印加すると、わずかな時間に強い磁場を受けたところは速く、弱い磁場を受けたとこ

ろは遅く回転するために、傾斜磁場 Gy消失後 Y軸方向に沿って異なる位相のスピンが生じる (図

2.13)。次に、X軸方向に傾斜磁場を印加することにより、X軸に沿って異なる周波数のエコーが得

られる。以上の操作によりスライス選択 (Z軸)と空間エンコーディング (XY軸)が完了する。Nx

× Nyの画像を得たい場合、Nx個のデータ点によりこの信号をサンプリングする。次に Y軸方向

の傾斜磁場の度合い Gyを変化させながらこの過程を Ny回繰り返してNy個のエコー信号を得る。

この時得られた信号は、図 2.14(a)の様に並べられる。これを 2次元フーリエ変換すると、周波数

の違いから X,Y方向に展開され図 2.14(c)の様に画像が復元される [22]。

Z

Y

Z

Y

Z

Y1 2 3

overhead view1 2 3

Z

Y

Z

Y

Z

Y1 2 3

1 2 3

applied gradient magnetic field

ΔtX X X X X X

図 2.13: 位相エンコーディングの原理

13

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tx

Gy ωy

ωx x

y

(a) (b) (c)

図 2.14: MR画像の生成

(a)計測信号 (b)スペクトル (c)画像

獲得画像

MRI法によって撮影した画像を図 2.15に示す。骨は水分をほとんど含まない組織のためMRI画

像では骨部位の信号は計測されない。しかしながら、下図でも見られるように軟組織と骨髄間の組

織としてとらえることが出来る。また、骨の中に海綿骨構造を確認することができる。MRI装置は

X線CT装置に比べ被験者の被爆の危険性がないため、解像度の向上により骨の内部構造の形態を

計測する方法となると考えられる。

図 2.15: 大腿骨遠位部のMRI断層像

14

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2.4 骨機能計測法

現在わが国で用いられている骨機能の指標としては骨量が主流であり、測定された骨量値から骨

粗鬆症などの重度判定や骨折のリスク評価が行なわれている。骨量測定法として、単純レントゲン

写真を用いるRA法、2つの異なるエネルギのX線によって得られたレントゲン写真を用いるDXA

法や X線 CT画像を用いる QCT法、超音波を用いて伝播速度や減衰率から骨量を求める QUS法

などがある。以下で、それぞれの骨量測定法の詳細を述べる。

2.4.1 RA法

RA(radiographic photodensitometry)法は、X線撮影の際に標準物質 (アルミニウム)を用い、骨

における X線吸収度 (Optical Density)を標準物質と比較し骨密度を計測する方法で、精度の問題

から軟部組織の少ない部位に対して行なわれる。一般的に第 2中手骨 (Second Metacarpal)を用い

る方法であるMD法として普及している。MD法では第 2中手骨をアルミ階段ととともに X線撮

影し、レントゲン写真上で対象骨の濃度をアルミ階段の濃度によって校正する。そして、図 2.16の

様な作図により、骨幅D、骨髄幅 d、骨皮質骨幅 d1、d2ならびにアルミ階段に換算した GS1、GS2

を求め、平均の骨塩量や骨パターン等の指標を得ることができる。この方法は、体幹部の被爆はほ

とんどなく安価に行なえる検査であるが、撮影系や現像により測定値が変化する可能性があり、再

現性に限界がある。また、RA法は透過画像を用いるため 3次元的な骨密度変化の情報が欠如して

いる。

second metacarpal

scan

scan

D

d1 d2

ΣGS

d

scan

1 2 3 4 5 6 7 8 ......... 20

alminum step

0.5

1.0

1.5

step No.

1

2

3

4

5

6

78

optical density

second metacarpal alminum step

GS1 GS2

図 2.16: MD法とパラメタの算出 [23]

15

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2.4.2 DXA法

DXA(dual-energy X-ray absoptiometry)法の原理は、2つの異なるエネルギの X線を人体に照

射する。そして、X線吸収係数の異なる軟部組織密度と骨密度を別々に計測し演算処理を行なうこ

とにより、脊椎骨・大腿骨近位端・全身骨等の骨密度を算出する方法である。この方法は、X線の

投影画像によって得られた骨塩量 (g)を面積 (cm2)で割ったBMD(bone mineral density:g/cm2)と

して算出される。DXA法は RA法に比べ再現性が高いが、投影像であるので骨の大きさが骨密度

に反映されてしまうという問題点がある。また、RA法と同様に DXA法は透過画像を用いるため

3次元的な骨密度変化の情報が欠如している。

2.4.3 QCT法

QCT(quantitative computed tomography)法は、DXA法やRA法等の 2次元の投影画像を用い

るのではなく、X線 CTによる 3次元断層像を用いる。X線 CTの断層像は、各 voxelあたりの X

線吸収係数の分布を示すものである。この方法では、骨量の定量化を行なうために、CT施行時に

骨塩等価物質の標準物質を内蔵したファントム (図 2.17の下部)を目的部位の骨とともにスキャン

し、各濃度の骨塩等価物質と骨の CT値を比較することで骨塩量を求める。算出される値は、単位

体積当たりの骨密度 (g/cm3)として求めることができ 3次元的な骨量を測定することができる現在

では唯一の測定法である。また、海綿骨部位と皮質骨部位の骨密度を分離して得ることができる。

図 2.17: QCT法による断層画像

16

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2.4.4 QUS法

QUS(quantitative ultrasound)法は、超音波が骨を伝播する場合の超音波伝播速度と減衰率を測

定する方法である。超音波は骨内部の構造を透過した応答となって計測されるため、骨量のみでな

く、海綿骨微細構造を反映した情報も得ることができると考えられている。超音波計測によって求

められる指標のうち超音波伝播速度は Young率と物質の密度によって規定される。一般的に骨密

度の増加に伴って Young率は増加し、密度の高く硬い骨でより伝播速度は速くなる。また、広帯域

の周波数成分を有する超音波が骨を透過すると、周波数によって減衰率が異なる。各周波数の骨透

過後の減衰を求めることで超音波減衰定数という指標を得る。QUS法は、X線源を用いないため

被爆の危険性がないが、計測されたパラメタの臨床的意義が十分に解明されていない。しかしなが

ら、超音波測定法は骨構造に関わる情報を提供している可能性が高いという報告があり [24]、骨折

のリスク評価に応用が可能であると考えられている。

2.4.5 テクスチャ解析法

テクスチャ解析法は、骨の単純X線写真等を画像解析により骨構造起因の骨強度を調べる方法で

ある。骨構造を解析するテクスチャ解析には、Run length法や Fractal解析法などがある。現在で

は、X線CT装置やMRIを用いた画像撮影が可能となっており、3次元的なシミュレーションによ

り骨の強度やその機能特性を獲得する動きがある。シミュレーションによる機能特性の獲得は、従

来の方法で得た情報等を付加することが可能であり、また再現性も高い。

2.5 骨治療法

骨粗鬆症や難治療骨折などの骨疾患に対する治療では、超音波による骨折部位治療が開発され、

骨疾患に対する治療方法が発展している。超音波骨折治療器は、パルス状の超音波の音圧による機

械的刺激を骨折部位等に与え、骨癒合を促進させる [25]。図 2.18に実際の臨床に用いられている超

音波治療器の超音波を示す。この方法は、『骨の再構築は再構築速度を支配する力学的な外的刺激

に応答する』というWolffの法則に合致している。この治療法によって、難治骨折を含め骨折後の

日数に関わらず、約 80%以上の癒合成功率が認められており有益な治療法として期待されている。

しかしながら、機械的な刺激が骨治癒促進させることは分かっているが、超音波が骨梁構造によっ

てどのように伝播しているのか、またその波動は骨梁の各場所でどのような影響を与えているかと

いった情報は獲得されていない。超音波の伝播機序の解明が可能になれば、適切な方向から適切な

周波数の超音波を与えることが実現でき、治療効果に対して有益な情報になると考えられる。

17

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1000 μs

200 μs

input inputinterval

ultrasonic frequency : 1.5MHz

cycle period : 1.0kHz

図 2.18: 超音波治療器によって入射される超音波 [25]

骨粗鬆症等の骨疾患に対する評価としては、X線CT画像などを用いて医師が定性的に診断する

方法とともに、DXA法や RA法などによる骨塩量計測によって定量的な評価基準も加わりその評

価精度は向上している。また、超音波診断装置の登場により骨の全体的な骨塩量だけではなく、骨

の内部構造である海綿骨を透過するため骨構造に関わる情報の獲得が可能となった。しかしながら、

同程度の骨密度であっても骨折しやすい場合としにくい場合があり、近年では骨梁構造などを考慮

した骨機能の獲得が求められている。骨梁構造を計測する方法としては先述したように画像計測が

主流であり、骨評価においても様々な画像解析法が考えられている。

18

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第3章 骨モデリング

現在、骨機能の獲得法として、骨梁の分布・連続性・異方性などの構造特性を Fractal 解析や

RunLength法等の画像解析や有限要素法を用いたシミュレーションモデルによる解析など様々な試

みがなされている。本章では、骨強度や骨機能の獲得を目的とした幾つかの研究について説明を行

なう。

3.1 静的骨評価方法

骨の評価法として、骨自体が持つ強度や異方性などを解析する方法があり、このような方法を静

的骨評価法と定義する。この方法は古くから 2次元のX線レントゲン写真等に対して行なわれてお

り、近年では X線CT装置の登場により 3次元的な解析が可能になっている。以下で、幾つかの静

的骨評価法を示す。

3.1.1 Fractal解析法

Fractalとは特徴的な長さを持たない形状や構造・現象の総称である [26]。特徴的な長さを持たな

い形状と呼ばれるものは、幾何学的に単純な形状を用いた近似が困難なものであり、その図形は自

己相似性という性質を持つ。自己相似性とは、対象としている図形の一部を見た場合、同様の構造

を持つ性質を指す。そして、自己相似性の大小により物体の構造の複雑さを表す指標としてフラク

タル次元が定義される。Fractal解析法による骨評価は、骨梁構造の異方性や複雑さを Fractal次元

で評価する方法である。すなわち、健常な骨梁は同様の形状を持った骨梁構造が多く存在するため

Fractal次元は小さくなる。また、骨粗鬆症を患った骨梁は構造の欠損によって様々な骨梁構造が発

生し、結果的に Fractal次元が大きくなる。このように、骨梁構造の差によって骨内部の状態を観

察することができる [27]。

3.1.2 Run-Length法

Run-Length法は、Gallowayによって提案された画像解析法の一つである [28]。画像中に含まれ

る図 3.1に示すようなある濃度を持った直線の出現頻度を直線 (Run-Length)の方向ごとに求め、単

純なテクスチャ特徴量を算出するものである [28]。この方法を骨梁構造を示す画像に施した結果、

19

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求まる長さの平均値は走査方向における骨梁の平均幅となる [29]。そして、この処理を各方向に対

して行なうことで、各方向に対する骨梁の平均的な幅 (太さ)を求めることができる。

trabecular bone

scan

図 3.1: Run-Length法

3.1.3 Node-Strut法

Node-Strut解析法は骨梁構造を点と線のみの構造体とみなし、骨梁構造を評価する方法である。

まず、骨梁像にモルフォロジ処理を施し骨梁構造を骨格化させ、図 3.2のように 3個以上の骨梁の

接合点 (node:Nd)、他の骨梁と接合していない端点 (terminus:Tm)、それらの間の骨梁軸 strutを

定義する。そして、骨梁構造指標として Nd数、Tm数、各 strutの長さなどが求められる [10]。治

癒効果判定等において、内部構造変化を見ることができるこの方法が有用であると考えられている

[30]。

: node

: terminus

trabecular

図 3.2: Node-Strut解析

20

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3.1.4 Star Volume法

Star Volume法は Gundersenらのグループが考案したパラメタであり、物体の Star volumeと

は、任意の点から全ての方向において、遮ることなく見渡せる範囲の体積と定義される [10]。この

方法においては、任意の点が骨梁内に存在する場合と骨随腔にある場合でそれぞれ trabecular star

volume(Vt)とmarrow star volume(Vm)という指標を得る。例えば、任意の点が骨梁内に存在し

た場合、骨梁画素が途切れる境界までの長さを求めることになる。この走査を各方向に行なうこと

で、任意の点の周りの同要素を含む密度を求めることができる。図 3.3のように、骨梁の連続性が

保たれている場合は Vmは小さく、連続性が減少し孔が大きくなるにつれ値は大きくなる。また、

Vtは逆に骨梁の連続性が保たれている場合は値が大きくなる [31]。

: trabecular

: marrow

(a) (b)

図 3.3: Star Volume法

(a)任意の点が骨梁内に存在する場合 (b)任意の点が骨髄腔にある場合

3.1.5 Mean Intercept Length法

Mean Intercept Length(MIL)法は、構造異方性を評価する手法の一つで、金属や結晶の配向を

測定するために使われ、骨梁構造の異方性評価にも用いられている。図 3.4(a)に示すように、MIL

は任意の角度の平行線群が海綿骨によって区切られる切線の長さの平均で、角度を変数とした関数

となる。これを極座標にプロットすると図 3.4(b)の様な楕円に近似でき、これをMIL楕円と呼ぶ。

この楕円の長軸と短軸の比をとることで異方性の定量化が可能である。

21

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θ

0

90

180

270

(a) (b)

図 3.4: MIL法による異方性評価

(a)各方向におけるMILの算出 (b)MIL楕円

3.2 動的骨評価方法

骨自体の強度のみならず外的刺激に対する応答や、皮質骨・骨髄等の影響を考慮した骨評価を目

的とした研究が行なわれている。また骨再生メカニズムの解明を目的とした研究も行なわれており、

近年の研究は静的骨評価から動的骨評価へと移行している。以下で、幾つかの動的な骨評価方法を

示す。

3.2.1 有限要素法

有限要素法 (Finite Element Method)とは、物体を仮想的に有限の大きさの要素に分割して、物

体をそのような要素の集合体として解析する方法であり、骨組構造を取り扱う構造工学においては

古くから知られている方法である [32][33]。構造工学においては、実際の構造物を有限個の節点で

結合された構造要素 (例えばトラス部材)の集合体と考え問題を取り扱っている。従って、個々の要

素に対する荷重と変位の関係が分かっていれば、構造全体の特性を導き、その挙動を解析できる。2

次元、3次元的な形状の物体では、骨組構造における節点に対応する接合点の数が無限であり、こ

こに解析上の難点が存在する。有限要素法の概念は、物体を有限個の節点においてのみ互いに接合

された要素の集合体と考え、この難点を克服しようとするものである [34]。このような物体のモデ

ル化が許されるのであれば、問題は骨組み構造と同じように解析が可能になる。

図 3.5(a)に示す引張り荷重を受ける骨梁構造がある場合、生じる応力と変形を有限要素法を用い

て解析するには、図 3.5(b)のような、例えば三角形要素の集合体としてモデル化する。このモデル

についての特性方程式を解けば、解を得ることができる。結果として有限要素法による骨評価は、

骨に荷重がかかった時の骨の力学的なストレス分布を計算することができ、更には時間的な骨のス

22

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トレス変化も知ることができる [35][36]。

(a) (b)

modeling

図 3.5: 骨梁構造のモデル化

(a)骨梁構造 (b)有限要素によるモデル

3.2.2 FDTD法

FDTD(finite difference time domain:有限差分時間領域)法とは、Maxwellの微分方程式や弾性

波の微分方程式を差分化し、時間領域で解く方法である [37]。FDTD法を用いた骨評価法の例とし

て、図 3.6に示すような 1次元の骨梁構造がある場合を考える。

trabecular bone

elastic wave

trabecular bone element

1 2 3 4… …… … i element number

(a) (b)

図 3.6: 骨梁構造のモデル化

(a)骨梁構造 (b)領域の離散化

この骨梁構造を伝播する弾性波の微分方程式は式 (3.1)、(3.2)で与えられる。

δf

δt= c

δu̇

δx(3.1)

δu̇

δt=

δf

δx(3.2)

23

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上式において、fは応力、u̇は粒子速度、cはスチフネス、ρは密度を表す。FDTD法では、式 (3.1)、

(3.2)の時間及び空間微分を中心差分で近似した次式を解く。

fn(i) = fn−1(i) + cδt

δx{u̇n− 1

2 (i +12) − u̇n− 1

2 (i − 12)} (3.3)

u̇n+ 12 (i +

12) = u̇n− 1

2 (i +12) +

δt

δx{fn(i + 1) − fn(i)} (3.4)

nは時間ステップを表し、その離散間隔は δtである。また、iは空間離散点の番号を表し、その離散

間隔は δxである。この様な近似式を解くことで、骨梁構造の応力や粒子速度を求めることができ

る [37]。FDTD法は有限要素法に比べ、精度を保つ為には要素数は多いがそれぞれの式の演算量が

少ない。また、時間空間で計算を行なうので領域の各要素の時間応答解析を行なうことができる。

FDTD法は生体組織中の音波伝播解析に適応されており、先述した骨粗鬆症の診断や治療に用いら

れている超音波の伝播特性のシミュレーションにも用いられている [38][39]。

コンピュータの計算能力の向上により、多大な計算を必要とする厳密な力学モデルより骨の機能

を獲得することが可能になっている。また、Fractal解析や Run-Length法などの静的骨評価法で

は獲得することが困難であった外力に対する応答を獲得する研究も行なわれている。骨の外力に対

する応答や波動伝播特性を解析することは、近年の超音波を用いた診断や治療におけるパラメタの

臨床的意義や治癒機序を解明する上でも非常に有益であると考えられる。しかしながら、多くの入

出力パラメタを伴う複雑なシミュレーションの解析は、パラメタの設定や解釈に高度な専門性を必

要とする。臨床応用や汎用性を考えた場合、コンピュータの計算能力への依存が少く簡便なシミュ

レーションにより機能を獲得することが望ましいと考えられる。

24

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第4章 骨梁の3D軽量モデルの構築

骨の内部構造は複雑な網目構造をとっており、また太さも部位により異なっており骨の内部の厳

密な力学的モデルを構築することは困難である。本研究では、μX線CT装置を用いて撮影した X

線CT画像から 3次元骨梁構造を抽出し構築したモデルに、波動伝播のアルゴリズムを適応させそ

の伝播特性の獲得を行なった。次章では 3次元骨梁構造の抽出方法についての詳細を述べる。本章

では、まず実験対象となる試料の作製とその断層画像を示し、次に骨梁の軽量モデルを構築するた

めに施した画像処理の詳細を記す。

4.1 骨梁の断層画像の獲得

実験試料として牛の右大腿骨 (図 4.1) を用い、その骨頭部成長板から海綿骨を切り出した (図

4.2(b))。次に、切り出した海綿骨をマイクロカッター (MC-201、MARUTO)を用いて、立方体状

(10mm× 10mm× 10mm)に形を整えた。そして、超音波クリーナを用いて、研摩によって附着し

た骨粉や海綿骨内部の脱脂を行ない実験で用いる試料とした。

図 4.1: 牛大腿骨

25

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Femur

Distal

SuperiorAnterior

Medial

10mm10mm

10mm

(a) (b)

図 4.2: 計測試料

(a)切り出し部位とパラメータ (b)海綿骨試料

図 4.2(b)の海綿骨試料を X線CT装置 (図 4.3)を用いて撮影を行なった。画像の解像度は横断面

(Medial-Anterior平面)において 42μm× 42μm、骨軸方向 (Superior-Inferior方向)において 64μm

とし、断層画像を合計 100枚撮影した。

図 4.3: X線CT装置 (日鉄エレックス NX-HCP-C80-1)

獲得した断層画像を図 4.4に示す。

26

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図 4.4: 骨梁の X線CT画像

27

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4.2 画像における骨梁部位の抽出

X線CT装置によって獲得した断層画像から骨梁部位と背景を分離するために 2値化処理を行な

う。しかしながら、X線 CT装置によって獲得した断層画像には図 4.5のような撮影環境に起因す

る雑音が含まれている。図 4.5に含まれる雑音は画像の中心に多く存在し同心円上に広がっている。

本研究では正確な骨梁構造を抽出するために、この雑音によって骨梁構造の連結性の欠如を防ぐ必

要があり、また骨梁と背景の境界を保存する必要がある。このような目的から本研究では、雑音除

去の方法として中央値フィルタを用いた。以下で処理過程と結果を示す。

図 4.5: 撮影環境による雑音

図 4.6において、注目画素 (pixel of regard)画素値 50という画素は雑音と仮定する。点線で囲ん

だ領域の画素値を小さい順に並べ、中央値を求め、出力画素として保存する。今回は、注目画素に

は 150という値が保存される。この処理を断層画像に対して施した結果、図 4.7に示す画像を得た。

50

150 170 60 50 160

170

180150

160200

210150160

150

pixels of input image

150

50 60150150150160170200210, , , , , , , ,

pixel of regard

pixel value of output image

図 4.6: 中央値フィルタの処理過程

図 4.5における骨梁部位は雑音により、その連結性が欠如している部位が確認できるが、中央値

28

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フィルタ処理後の図 4.7では欠如していた部位が連結しており、撮影環境に依存する雑音を取り除

き、骨梁構造を再生することができた。

図 4.7: 中央値フィルタを施した断層像

次に、骨梁部位の抽出を行なう。骨梁部位の各画素の画素値は 1枚の断層画像領域において場所

により異なっており、また各断層像毎にも画素値に差がある。このような画像に対して、単純な閾

値処理を施し背景と骨梁位の画素を分離することは困難である。その為、本研究では 2段階の閾値

処理を施すことで、骨梁構造の欠損を抑えるアルゴリズムを用いた。以下で処理過程と結果を示す。

まず、中央値フィルタを施した後の断層画像毎に画素値のヒストグラムを取り、最小極小値以下の

画素値を持つ画素を背景と分離する。次に骨梁部位候補画素 (1段階目の閾値処理で背景にならな

かった画素)に対して図 4.9の処理を施す。点線で囲んだ領域に存在する骨梁部位候補画素の画素

値の平均を取り経験的に閾値=平均値-10とし、注目画素値がその値より大きい場合は骨梁部位 (画

素値= 1)、小さい場合は背景 (画素値= 0)とし、骨梁部位と背景を分離した。

29

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0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

50 100 150 200 250

pixel value

pixe

l cou

nt

background trabecular bone

図 4.8: 1段階目の閾値処理過程

150

150 170 60 50 160

170

180150

160200

210150160

150

pixels of input image

pixel of regard

pixel value of output image

mean value = 156

threshold value = 146

150 > threshold value

1

図 4.9: 2値化の処理過程

30

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2段階閾値処理を全ての断層画像に対して施した結果、図 4.10に示す画像を得た。図 4.10にお

いて骨梁は白色、背景は黒色で表示している。閾値処理により骨梁部位の抽出を行なったが、処理

前に連結していたと考えられる場所の連結性が欠如している部位 (図 4.11)も確認される。このよ

うな部位の欠如は正確な骨梁の連結構造を表現する上で、連結性を復元する必要がある。本研究で

は、閾値処理による連結性欠損部位を復元するために膨脹縮退処理を施した。以下で処理過程と結

果を示す。

図 4.10: 骨梁部位抽出画像

image before binarizing image after binarizing

図 4.11: 2値処理による骨梁連結性の欠損

図 4.12のように、骨梁部位 (画素値= 1)の 8近傍に背景が 1つでも存在する場合、その背景画素

を画素値 1に置き換える (膨脹処理)。次に、膨脹させた画像における骨梁部位 (画素値= 1)の 8近

傍に背景が 1つでも存在する場合、その骨梁画素を背景に置き換える (縮退処理)。縮退処理におい

ては膨脹処理によって復元された 3次元的な骨梁の連結性を失わないアルゴリズム (図 4.13)を用い

31

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た。具体的には膨脹処理によって連結した領域が縮退処理によって違う領域になることを防いでい

る。この処理により閾値処理によって連結性が損なわれた部位の連結性を復元した。この処理を断

層画像に対して施した結果、図 4.14に示す画像を得た。

1

11

1 1

1

1 1 1

1 dilation

1

11

1 1

1

1 1 1

1

1 1

1

1

1

1

1 1

1

1

1 erosion

1

11

1 1

1

1 1 1

1

1

1

1

image after binarizing

図 4.12: 膨脹縮退の処理過程

dilation

erosion

dilation

erosion

(a) (b)

図 4.13: 連結性保持アルゴリズム

(a)縮退不可の場合 (b)縮退可能の場合

32

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image after binarizing image of trabecula structure

図 4.14: 膨脹縮退処理による骨梁の連結性の復元

以上の処理を X線CT装置によって撮影した全ての断層画像に施し雑音の除去、骨梁連結性の復

元、骨梁部位の抽出を行なった。図 4.15は骨梁部位を抽出した断層画像を 3次元再構成したもので

ある。

図 4.15: 3次元骨梁画像

33

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4.3 骨梁ネットワークの抽出

前節で得られた画像から骨梁ネットワークを抽出するために 3次元細線化処理を行なう。画像に

おける骨梁ネットワークは一般的に実際の組織学上の構造とは同一ではない。しかしながら、実際

の特性に密接な関係がある構造として、機械的な特性を獲得することができるとされている [40]。

細線化アルゴリズムは 6サブサイクルのアルゴリズムを用いる。各サブサイクルの画像上走査手順

を図 4.16に示す。各サブサイクルで 1画素を 0画素に置き換える条件として Hilditchの細線化アル

ゴリズムで使われている条件を 3次元に拡張している。各サブサイクルでは、1画素を 0画素に置

き換える条件を画像上の操作手順を 2回行なって調査する。第 1回目の走査で 1画素を 0画素に置

き換える条件を満足する 1画素にマークをつけ、第 2回目の走査でマークのついた 1画素を 0画素

に置き換える。6サブサイクル終了後に 1画素から 0画素の置き換えがなくなればアルゴリズムを

終了する。以下で消去可能条件と細線化アルゴリズムについて説明する。

4.3.1 消去可能条件

骨梁は複雑な異方性を持ちまた、空洞と呼ばれる部分が存在する可能性を持っている。このため

に、連結成分、ハンドル (穴)、および空洞のいずれの個数も変わらないよう、トポロジーを保存す

るような消去可能条件を用いた。

i

j

k

図 4.16: 3次元画像の走査

34

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y17

y15y16

y11y18 y12

y13

y14

y10

y27

y25y26

y21y28 y22

y23

y24

y20

y37

y35y36

y31y38 y32

y33

y34

y30

i

j

k

図 4.17: 変数 yab(a=1,2,3,b=0,1,2,3,4,5,6,7,8)の配置

条件 1 (連結条件)

鳥脇らが示した画素の消去可能性の必要十分条件を満足する [41]。この条件は 1画素 xの連

結数N(m)c (x)と成分指数 R(m)(x)が 1になることを調査する。1画素 xの連結数N

(m)c (x)は

画素 xの 3 の近傍領域の画素値を用いて擬似ブール式によって計算し、成分指数 R(m)(x)は

1画素 xを中心とする 3 の領域内において画素 xと連結する 1画素の連結成分数である。m

は 26連結を用いる。

条件 2 (空洞が発生しない条件)

1画素 xを中心とする 3 領域において、周りの 26近傍の全ての画素が 1画素ではない。

条件 3 (端点でない条件)

対象とする 1画素の 26近傍にある 1画素の画素数が二つ以上である。

条件 4 (孤立点保存条件)

図 4.15の走査手順で既走査した画素でマークの付いた 1画素を 0画素に置き換えたとき、対

象とする 1画素の 26近傍にある 1画素の画素数が一つ以上である。

条件 5 (近傍と同時に消去しても連結性が保存される条件)

対象とする 1画素を x = (i, j, k)とし、この 26近傍画素を図 4.17に示す変数 yab(a=1,…,3,

b=0,1,…,8)を用いて表す。対象とする画素 xを y20として、既走査した三つの近傍画素の組

を y10, y13, y17, y27、y10, y11, y15, y21、y21, y26, y27, y28とおく。各々の組でマークの付いた 1画

素を 0画素に置き換えて画素の消去可能性の必要十分条件を調査し、すべての組でこれを満

足する [42]。

35

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4.3.2 細線化アルゴリズム

入力画像を F、作業用画像を Gとする。画素 xとこの 26近傍画素は図 4.17の変数 yabを用いる。

また、Gの変更を表す指標としてフラグを用いる。

STEP1

G=Fをすることで Gを初期化する。

STEP2

図 4.15の画像上の走査手順で Fの 1画素値を持つ画素 xを調べ、この 6近傍画素値によって

グループ分けする。

y10 = 0 ならば Fの画素 xの画素値を 2にする。

y30 = 0 ならば Fの画素 xの画素値を 3にする。

y21 = 0 ならば Fの画素 xの画素値を 4にする。

y25 = 0 ならば Fの画素 xの画素値を 5にする。

y27 = 0 ならば Fの画素 xの画素値を 6にする。

y23 = 0 ならば Fの画素 xの画素値を 7にする。

6近傍画素中で 0画素が 2画素以上ある場合は Fの画素 xの画素値に最も小さい番号を割り

当てる。

STEP3

フラグを 0にする。

STEP4

グループ 2から 7の順番で、Fの画素 xのうち画素値 2~7を持つ画素に対して消去可能性を

調べる。もし、消去可能であれば Gの同位置の画素 xに-1を与え、フラグを 1にする。

STEP5

フラグが 0であれば、Fを細線化した結果として処理を終了する。それ以外は STEP1にも

どる。

36

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この処理により、骨梁のネットワークが明らかになった。一般的に 3次元細線化処理では形状雑音

により多くの『ひげ』が生成される。骨梁構造において部位によりその太さは異なり『ひげ』の発

生も予想される。本実験で用いたアルゴリズムでは細線化処理時に発生する『ひげ』を除去してい

る。画像の任意の場所の骨梁の太さの平均が 5画素であった為、細線化処理後の画像に存在する 5

画素未満の長さを『ひげ』と定義し消去した。以上の処理を 3次元骨梁画像に施した結果を図 4.18

に示す。また、図 4.19では各画素の保有する情報を示している。細線化処理後の各画素は全て同

じ濃度の情報を保有しており各画素が周り (26近傍)の画素との局所的な構造は獲得されていない。

局所的な構造を獲得することは骨梁波の伝播過程を記述する上で重要な情報である。

図 4.18: 骨梁の 3次元細線化画像

図 4.19: 細線化処理後の画像に含まれる情報

37

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4.4 骨梁の局所的な連結数抽出

これまでの処理により、波が伝搬するための 3次元骨梁構造を獲得した。この細線化モデルには、

注目画素が端点であるのか、分岐点であるのか、線分であるのかといった局所的な構造情報は獲得

されていない。局所的な構造情報を獲得することで、波がある時刻に存在する場所の情報、次時刻

に移動する場所の情報が明らかになり、その情報をもとに波の強度を計算することが可能になる。

また、分岐数等の情報をシミュレーションを行なう前に獲得しておくことはシミュレーション時の

計算量を減らすことができる。骨梁の局所的な構造情報の抽出方法として、画像を図 4.15のよう

に走査し骨梁画素が存在した場合、その画素を注目画素とする。そして、注目画素を中心とする 26

近傍画素を注目画素からの距離により、連結距離が 1(cd1)、連結距離が 2(cd2)、連結距離が 3(cd3)

に分類する (図 4.20)。

y15

y11 y12

y13

y14

y10

y27

y25y26

y21y28 y22

y23

y24

y37

y35y36

y31y38

y17

y30 y33

y18

y16

y32

y34

y20

: notice pixel

connective distance 1 = (y10, y21, y23, y25, y27, y30)

connective distance 3 = (y12, y14, y16, y18, y32, y34, y36, y38 )

connective distance 2 = (y11, y13, y15, y17, y22, y24, y26, y28, y31, y33, y35, y37 )

図 4.20: 26近傍の距離による分類

骨梁における局所的な構造情報抽出のアルゴリズムのフローチャートは図 4.21のようになる。各

距離 (cd1,cd2,cd3)に骨梁を示す画素が存在する場合は 1、存在しない場合は 0とする。

38

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No one of cd1s =1 ?

NoYes

Yesnumber of cd3=1with a neighbor cd1=1

connectivity number

scan 26 neighborhood of notice pixel

number of cd2

number of cd3

+

+

: notice pixel

cd3

y20

cd3cd3

cd3

cd3

cd3 cd3

cd3cd2

cd2

cd2

cd2

cd2cd2

cd2 cd2

cd2

cd2

cd2

cd2

cd1

cd1cd1

cd1

cd1

number of cd1 = 1 one of cd2s =1 ?

number of cd2=1with a neighbor cd1=1

-

+

number of cd3=1with a neighbor cd2=1

+-

- +

++

+

図 4.21: 連結数抽出のフローチャート

39

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本研究では、細線化処理時の特性から図 4.22のような連結構造が存在した場合、連結距離が近い

ものを連結成分とした。この処理を行なった結果、画像は次の図 4.23のようになり局所的な構造情

報を獲得することができた。本章で行なった処理により、骨梁の構造情報のみを保有した軽量モデ

ルを構築した。

y15

y11 y12

y13

y14

y10

y27

y25y26

y21y28 y22

y24

y20

y37

y35y36

y31y38

y33

y17

y23

y30

y16

y18

y32

y34

y15

y11 y12

y13

y14

y10

y27

y25y26

y21y28 y22

y24

y20

y37

y35y36

y31y38

y33

y17

y23

y30

y16

y18

y32

y34

:pixel of regard :trabecular pixel

connectivity number = 3

図 4.22: 局所的な連結数

: Node : Strut: End-point

図 4.23: 局所的な構造情報抽出後の画像に含まれる情報

40

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4.5 骨梁構造の配向性抽出

前節までの処理において、骨梁の局所的なつながりが保存されたモデルが獲得された。本研究で

は、このモデルにおいて骨梁の方向性は保存されていると考えられる。このことから、骨梁構造の

配向性を以下の手法を用いて算出した。まず注目画素において連結している要素が存在するかどう

かを調べ、存在した場合はその向きを構成している各方向 (図 4.24)に対して、配向性を等配分し

た。図 4.24では、各連結成分の配向性の例を示している。この処理を骨梁構造を構成する各要素に

対して施し、加算したものを全連結成分数で割ったものを各方向における配向数とした。

y12

y13

y14

y27

y25y26

y21y28 y22

y24

y20

y37

y35y36

y31y38

y33

y17

y23

y30

y16

y18

y32

y34

:pixel of regard :trabecular pixel

y15

y10

y11SI

AP

ML

SI = 1 , AP = 0 , ML = 0

SI = 1 , AP = 1 , ML = 1SI = 3 AP = 3 ML = 3

図 4.24: 局所的な骨梁の配向性

41

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第5章 骨梁波伝播のシミュレーション実験

骨梁に力が加わった場合、その波は独特な異方性を持つ骨梁の構造と相互に作用することが確認

されている。しかしながら、加えられた力が骨内部でどのような相互影響を行なっているかは明確

に示されていない。また、波動の透過応答は加える波の波長、内部構造、入射方向などの間にはど

の様な関係があるのかは不明瞭である。本実験では骨梁に刺激が加わった場合の透過特性を可視化

することで確認し、その透過性と刺激の波長依存性を調べた。また、骨梁の方向性と伝播特性との

関係も検討した。以下で、それらの詳細を述べる。

5.1 波伝播のアルゴリズム

獲得した局所的な構造情報をもとに、骨梁を伝播する波のシミュレーションを行なう。波の性質

として、波の独立性、反射、透過などがありそれらを考慮する必要がある。波が伝播する上で、生

体の微粒子の密度に変化が生じる場合、各々の境界の圧力は変化する。この圧力差に対する粒子速

度の比を固有音響インピ-ダンスと呼ぶ。固有音響インピ-ダンスは、媒質の密度と音速の積によっ

て決定される。波は、二つの媒質の間でそれぞれの固有音響インピ-ダンスの差が大きい場合は反

射し、小さければ透過する性質を持つ。骨髄液を水ととらえると、骨髄液の音響インピ-ダンスは

1.48× 10−6kg/m2・sで、骨の音響インピ-ダンスは 6.00× 10−6kg/m2・s であり大きく違う。従っ

て、骨から骨髄液への波の透過はほとんど起こらないものと仮定し、骨梁に入射された波は骨梁上

をのみ伝播するとした。また、波の強度の距離による減衰は次式で与えた [43]。

強度 I(x) = I0 · exp−kx (5.1)

I0は初期位置での波の強度、xは伝播距離、kは強度吸収係数を表す。本研究では、強度吸収係数

として皮質骨における値を用いている。また、分岐点では分岐数に応じた減衰をすると考えた。分

岐点での波の強度の減衰は次式で与えられる。N は波が次時刻に分岐する分岐数である。以上の減

衰条件を次に記す波伝播のアルゴリズムに適応した。

強度 I(x) =I(x0)

Nexp−kx (5.2)

本研究では、計算する要素数を抑えるアルゴリズムを構築した。まず、骨梁を表す各画素毎に 26

近傍に対応した配列を与え、frame N-1に波が存在した位置とその強度を保存する (図 5.1左)。次

42

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に、波が存在する画素の 26近傍を走査し、frame N-1に波が存在した画素以外の骨梁画素に波を伝

播させ、frame N+1における波の位置と強度を求める。

:pixel of regard :trabecular pixel

y15y16

y11y18 y12

y13

y14

y10

y27

y25y26

y21y28 y22

y24

y20

y37

y35y36

y31y38 y32

y33

y34

y17

y23

y30

y15y16

y11y18 y12

y13

y14

y10

y27

y25y26

y21y28 y22

y24

y20

y37

y35y36

y31y38 y32

y33

y34

y17

y23

y30

frame N frame N+1

図 5.1: 波伝播のアルゴリズム

本アルゴリズムでは複雑な計算はなされておらず、各要素では 26近傍における波の強度計算のみ

がなされている。本実験で用いた PCの仕様はCPU:Intel Pentium4 2.8GHz、Main Memory:1GB

であり、6mm× 6mm× 6mm切片における波動伝播の処理計算に所要した時間は 31分 10秒で

あった。

43

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5.2 骨梁中波伝播の可視化

骨に対して刺激が加わった場合の伝播過程を見ることは難しい。実際に骨に対して刺激を与えそ

の伝播過程を確認する方法としては刺激の入射面と反対側にセンサを取り付け、応答を計測する方

法しかなかった。しかしながら、この計測方法では刺激が骨内部で減衰した場合その動向を捉える

ことはできない。そこで本研究では、波伝播過程を確認する方法として可視化を行った。前節のア

ルゴリズムを用い骨梁の一部に孤立波を入射した場合の伝播の可視化を行った。波伝播の時間経過

を図 5.2に示す。可視化により骨梁に刺激を与えた場合の拡散程度や伝播距離を確認することがで

きた。また、入射する波長を変え波伝播の可視化を行った結果、その伝播過程に違いが生じた (図

5.3)。一般的に均一でない構造を持つ物体に刺激が加わった場合、その伝播過程は物体の持つ構造

と波長の相互作用や材質などの減衰要素により振動伝達率に違いが生じるとされている。本実験で

は骨梁の材質 (太さの情報)を一定としているため、可視化における波伝播過程の違いは骨梁構造と

波長の相互作用による減衰を示しているといえる。波伝播の可視化を骨全体の骨梁構造に対して適

応することで、入射された波動が骨梁構造においてどのような部位まで到達するかといった動向を

調べることができると考えられる。

(a) (b) (c)

図 5.2: 骨梁波の可視化

(a)Time=0μs (b)Time=0.48μs (c)Time=2.4μs

44

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(a) (b) (c)

図 5.3: 骨梁波伝播過程の波長依存性

(a)波長=168μm (b)波長=1680μm (c)波長=2016μm

5.3 外的刺激に対する骨梁の応答特性

骨梁構造は力学的に対応し得る配列をとり、外力に対して抵抗力の大きくなるような方向性を示

すと言われる。大腿骨成長板等では骨梁には全方向から様々な強度の力が加わっているためその構

造強度は全方向性に対してほぼ均等であると考えられる。しかしながら、骨頸部等の骨梁では一定

の方向に対しての強度が強くなる性質を持っていると言われている。このように空間的な方向によっ

て性質や特性が異なることを異方性という。異方性を持つものにおける波伝播の記述子として代表

的なものに地震発生時における波動伝播速度異方性がある。この場合、伝播速度の異方性は伝播す

る物体における構造の配向性に依存すると言われ、一般的に配向性の高い方向に対して伝播速度は

速くなる。異方性を持つ骨梁構造においても、刺激が加わった場合その透過特性は骨梁構造の配向

性に依存すると考えられる。本実験では、細線化処理後の骨梁構造の配向性を調べ、骨梁波の透過

特性との関係を調べた。試料としてウシ大腿骨の骨頸部を用い、海綿骨を 4切片切り出し立方体状

(6.0mm× 6.0mm× 6.0mm)に整形した (図 5.4)。そして、μX線 CT装置で撮影を行ない断層画

像を獲得した。画像の解像度は骨軸方向 (Superior-Inferior方向)において 53.5μm、骨軸方向に垂

直な面において 32.6μm× 32.6μmとし、断層画像を合計 94枚撮影した。本論文では、試料のうち

Sample1を取り上げて骨梁の透過特性について説明する。Sample1の獲得画像の一部を図 5.5に示

す。図 5.5において (a)は配向性が確認できないが、(b)、(c)では骨梁構造が SI方向に強い配向性

を持っていることが確認できる。この配向性を確認するために、細線化処理後の骨梁モデルより骨

梁が連続する方向を前章の方法を用いて調べた。結果を表 5.1に示す。表 5.1の結果から、Sample1

における骨梁は SI方向への配向が大きいと考えられる。

45

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図 5.4: 本実験で用いた骨梁切片

(a) (b) (c)

図 5.5: 断層画像における骨梁構造の方向性

(a)Superior-Inferior (b)Anterior-Posterior (c)Medial-Lateral

表 5.1: 細線化モデルにおける骨梁構造の方向性 (%)

number of each-directed trabecularSI-direction AP-direction ML-direction

Sample1 37.45 32.61 29.94Sample2 33.41 30.82 35.77

46

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骨梁波の透過のシミュレーションは前章の方法を用いて骨梁の軽量モデル (図 5.6)を構築し、波伝

播のアルゴリズムを適応して行なった。実際の骨梁切片に刺激が加わる場合、刺激は面による入力

となる。本実験では、以下で記す方法を用いて面刺激入力を記述した。図 5.7において、finは入力

刺激を表し、foutは骨梁構造を通った応答を表している。入射面に存在する骨梁部位を表す全ボク

セルに同強度の信号を入力し、面による刺激入力を表現した。次に出力面における骨梁部位を表す

ボクセルに到達する信号を獲得し、時間毎に出力面に存在する信号の強度の和を取ることで面出力

を表現した。

図 5.6: 骨梁の 3次元軽量モデル

fin Σ fout

propagation path of the waveinput surface output surface

Skeltonized trabecular bone

図 5.7: 面入力と面出力の概念

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Sample1の3次元軽量モデルのSI(Superior-Inferior)方向、AP(Anterior-Posterior)方向、ML(Medial-

Lateral)方向からインパルス波を入射し、その透過応答を獲得した (図 5.8)。図 5.8は波の強度を

それぞれの最大値で正規化したものであり、表 5.2に透過後の強度の最大値を記す。波形としては、

インパルス波入力に対して SI、AP方向での応答は急峻なピークが見られ、ML方向においてはな

だらかなピークを持った応答を得た。また、透過後の信号強度は SI方向で最大となり、続いてML

方向、AP方向となった。信号強度の異方性として骨梁構造の配向性との依存関係は見られなかっ

た。この原因として、信号強度の減衰は透過距離による減衰よりも通過した分岐数に依存し減衰す

るためであると考えられる。さらに、出力面に到達した時間は SI方向において 1.176μs、AP方向

において 1.368μs、ML方向において 1.632μsであった。骨梁波の伝播速度は骨梁の配向性に対し

て速くなることが確認され、骨梁波の伝播速度の異方性と骨梁構造の配向性との依存関係が確認さ

れた。他のサンプルにおいても骨梁の配向性が最大の方向において透過時間は最短であった。

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

00 2.52.01.51.00.5

Time [μs]

Nor

mal

ized

In

ten

sity

図 5.8: 入射方向による透過特性 (Sample1)

黒:SI方向 (b)青:AP方向 (c)赤:ML方向

表 5.2: 骨梁透過後の最大波強度

Input directionSI-direction AP-direction ML-direction

Sample1 38.29 3.53 7.94Sample2 28.38 5.29 56.2

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第6章 まとめ

生体機能シミュレーションの発展に伴い実現が困難とされていた生体内の機能解明が期待されて

いるとともに、その臨床応用が求められている。生き物の骨格を形成している骨も例外ではなく、

その機能解明が目指されている。しかしながら、骨においても各組織間で様々な相互影響の関係は

莫大であると考えられ、骨に作用が加わった場合の応答に対する原因を解析することが困難である

とされてきた。本研究では従来の多大な計算とパラメタで、より厳密なモデルを構築するという構

図ではなく、多大な情報のうち特定の情報だけを取り出し、解析を簡便かつ迅速に行なえるという

利点を持つ軽量モデルによる骨の機能評価を提案した。

具体的には、X線CT画像から骨梁部位抽出、骨梁ネットワークの構築、骨梁の局所的な連結性

を画像より抽出した。また、本モデルに対して波伝播のアルゴリズムを適応させ、骨梁中の波動伝

播過程の可視化と骨梁構造に対する波の透過特性のシミュレーションを行った。結果として配向性

と波伝播時間に依存性が認められ骨梁波伝播速度の異方性が確認された。

現在、骨梁の機能解明に限らず生体機能シミュレーションはコンピュータの計算能力に依存した

厳密なモデルによる解析が主流である。しかしながら、多くの変数を用いて計算を行ない得られた

結果は、やはり多くの情報が絡み合い合成されたものである。このような結果は、実装実験と同じ

く統合的に厳密な機能を表現することは可能であると考えられるが、実装実験の場合と同じく、ど

のような原因がその機能をもたらしているのかという原因の特定を行なうことは困難である。本研

究では、このような問題の解決策として、軽量モデルの適応を提案し、簡便なモデルにおいても骨

梁の機能を得られることを示した。本研究で提案した軽量モデルという考えが骨機能解明、シミュ

レーションの臨床応用への礎となることを期待する。

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謝 辞

本研究の機会を与えて下さり、研究の方針や内容について多大なる御指導を賜りました、大阪大

学大学院基礎工学研究科 大城 理教授に深甚の謝意を表します。また、多くの発表や実験の機会を

持たせて頂きましたことは、研究を行なう上で非常に有益でした。重ねて御礼申し上げます。

本研究をまとめるにあたり、ご厚情に満ちた御指導、数々の有益な御教示を賜りました大阪大学

大学院基礎工学研究科 田中 正夫教授に感謝するとともに厚く御礼申し上げます。

日々の研究において直接指導して頂き、更には本研究をまとめるにあたり多大なる御指導を賜り

ました大阪大学大学院基礎工学研究科 増田 泰助手に深く感謝いたします。

骨の断層像撮影を行うにあたり、μX線 CT装置を使用させて頂きました大阪大学大学院基礎工

学研究科 林 絋三郎名誉教授 (現 岡山理科大学 技術科学研究所教授)に感謝するとともに厚く御礼

申し上げます。

X線CT装置の解説、実験試料であるウシ大腿骨の御提供、更には試料作製の手法について丁寧

に御説明頂きました大阪大学大学院基礎工学研究科 松本 健志助教授、内藤 尚助手ならび中嶋 順

子氏、溝渕 亘祐氏に厚く御礼申し上げます。

MRIによる骨梁構造の計測を行うにあたり、MRI装置によって大腿骨の断層画像撮影を行なっ

て頂きました済生会御所病院 放射線科 兵藤公一氏に厚く御礼申し上げます。最後になりましたが、

常日頃からお世話になり互いの研究について助言し合った生体計測学講座の皆様に感謝致します。

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業 績

• 論文

1. 大城 理, 勝原慎介; 骨梁中波伝搬による骨の機能情報センシング: 電気学会論文誌 E,

センサ・マイクロマシン準部門, 125, pp.165-169 (2005).

• 国内発表

1. 勝原慎介,大城 理; 骨梁を伝播する波の可視化: 第 19回生体・生理工学シンポジウム論

文集, 1C1-5,pp97-98(2004).

2. 勝原慎介,大城 理; 骨梁における波伝播過程の波長依存性: 第 44回日本生体医工学大

会プログラム・論文集, PJ2-5-12, p.441 (2005).

3. 勝原慎介, 増田 泰, 大城 理; 外的刺激に対する骨梁の応答特性: 電子情報通信学会技

術研究報告, MBE2005-70, pp.9-12(2005).

4. 勝原慎介,増田 泰,大城 理; 骨中を伝播する波の骨梁構造による透過特性: 第 45回日本

生体医工学大会プログラム・論文集, 発表予定 (2006).

• その他

1. 勝原慎介, 増田 泰, 大城 理; 骨梁構造による刺激減衰のシミュレーション実験: JOINT

ミーティング (2005/12/01).

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