3.ech・eccd実験の進展 · helicalsystems,heliotron,ech,eccd,ebw 3. progress of the...
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3.3.1 はじめにトーラスプラズマにおいて,ECH・ECCDは,局所電子
加熱による電子温度分布制御,プラズマの電子密度や電流
分布の制御,MHD不安定性制御,熱・粒子輸送解析,不純
物排出,プラズマ計測,プラズマ生成等,多岐にわたる目
的に利用されてきている.ヘリカル系では外部磁場による
閉じ込め磁場配位形成が可能であり,オーミック電流を用
いずに基本波O-mode または第2高調波X-mode の ECH
によってプラズマの生成が行えることから,1980年代から
NBI,ICRF と並ぶ主要加熱機器として位置づけられ,数多
くのプラズマ実験が進められてきた.現在,プラズマ実験
が行われている LHD(日本),Heliotron J(日本),TJ-II
(スペイン),HSX(米国),H‐1(オーストラリア),
WEGA(ドイツ)において,ECH・ECCDはプラズマ生
成・加熱・電流駆動のために利用されており,2014年に実
験開始が予定されているW7-X(ドイツ)においても主要
加熱システムとして準備が進められている.本章では,ヘ
リカル系に特徴的な実験結果,特に,電子ルートの実現に
よるコア部の閉じ込め改善,高次高調波または電子バーン
シュタイン波を用いた高密度加熱,電子サイクロトロン電
流駆動,プラズマ生成物理機構,ECHによるプラズマの定
常維持について,最近の実験成果を中心に概説する.
3.3.2 電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH)3.3.2.1 電子ルートの実現によるコア部の閉じ込め改善
局所的なECHによるプラズマのコア領域における電子
の熱輸送の改善は,CHS,LHD,TJ-II,W7-AS をはじめと
するヘリカル装置において実現されている.その共通の特
徴は,極度にピークした電子温度分布とコア部における正
の径電場の存在が挙げられる.このような現象は,新古典
理論での輸送における径電場に対する両極性条件の「電子
ルート」解への遷移で説明され,非軸対称系磁場閉じ込め
装置であるヘリカル系に独自のものである.このような背
景のもと,国際ステラレータ/ヘリオトロン分布データ
ベ ー ス(International Stellarator/Heliotron Profile Data
Base : ISH-DB)活動の一環として,近年この改善モードを
「コア電子ルート閉じ込め:Core Electron-Root Confine-
ment(CERC)」と総称している[1,2].CERCの成立には,
衝突頻度�とECHのパワーに閾値があり,磁場配位(ヘリ
カルリップル),磁気島や有理面の存在が重要であること
が指摘されている.
新古典輸送理論によれば,ヘリカル系の低衝突領域すな
わち長平均自由行程(long mean-free-path: lmfp)領域にお
いて,電子ルートで実現される径電場��は,リップル捕捉
電子の径方向のドリフトを抑えるのに十分な大きさを持
ち,拡散係数の���領域での輸送を低減することが可能で
ある.電子ルートの実現によるこの���輸送の低減は,
CERCの研究の大きな動機となっている.CERC形成時の
特徴の一つは,中心ピークした電子温度分布の実現であ
る.図1は,4つのヘリカル装置において観測された
CRECの電子温度分布を比較したものである.コア部に集
束したECHによって極端に尖頭化した電子温度分布が得
小特集 核融合プラズマにおける電子サイクロトロン加熱・電流駆動の進展
3.ECH・ECCD実験の進展
3.3 ヘリカル装置における ECH・ECCDの進展
下妻 隆,長崎百伸1)
核融合科学研究所,1)京都大学エネルギー理工学研究所
(原稿受付:2009年5月12日)
プラズマの閉じ込め磁場が外部コイルによって生成され非軸対称性構造を持つヘリカル型プラズマ閉じ込め装置におけるECH・ECCDの役割に主眼をおき,最近のECH・ECCD実験を概観する.トカマク型をはじめとする他のプラズマ閉じ込め装置と同様に,高電子温度の達成,電子の閉じ込め改善,高密度領域での加熱手法,プラズマの密度や電流分布の制御方法としての役割,プラズマの定常維持実験,プラズマ計測の手法としての役割等があげられるが,ここでは特に,ヘリカル型装置において特徴的と思われる,電子ルート実現による電子の熱輸送の改善実験,高密度領域での有効な加熱が可能な電子バーンシュタイン波加熱実験,ECCDによる電流分布制御,プラズマ生成,そして最も特徴的であるプラズマの長時間維持について,最近の実験の進展を紹介する.
Keywords:helical systems, heliotron, ECH, ECCD, EBW
3. Progress of the ECH・ECCD Experiments
3.3 Recent Progress of the ECH・ECCD Experiments in Helical Devices
SHIMOZUMA Takashi and NAGASAKI Kazunobu authors’ e-mail: [email protected], [email protected]
J. Plasma Fusion Res. Vol.85, No.6 (2009)368‐377
�2009 The Japan Society of PlasmaScience and Nuclear Fusion Research
368
られている.この尖頭化した電子温度分布は,密度領域,
ECHパワーレベル,磁場強度の異なる条件の下で各々実現
されているものである.また,一般に密度が高くなるほど
急峻度は弱くなる傾向がある[3,4].このような電子温度
の尖頭化には,電子密度を固定した場合,入射ECHパワー
に閾値が存在している.このとき,イオンの温度には尖頭
化はみられておらず,電子の熱輸送のみが変化しているも
のである.他方,トカマクにおける電子内部輸送障壁
(electron internal transport barrier: e-ITB)では,このよう
なECHパワーに対する明確な閾値は認められておらず,
CERCの成立が,ヘリカル系に特有の径電場の分岐現象に
よる電子ルートへの遷移を示しているものと考えられる
[5].図2は,上記4つの装置において観測された径電場
��の分布を示したものである.CHSと TJ-II では,重イオ
ンビームプローブ(Heavy Ion Beam Probe : HIBP)によっ
て,LHDとW7‐ASでは荷電交換再結合分光法(Charge
eXchange Recombination Spectroscopy : CXRS)によって
測定されたものである.図中NCで示したものは,測定さ
れた電子温度,電子密度分布より計算された新古典的両極
性電場の分布である.このように半径方向における両極性
電場の分岐現象は,これらの装置において共通の特徴であ
ることが示されている.このような新古典的な分岐現象
は,中心付近での電位や電子温度の自発的な遷移によって
確かめられている[6].
CERC放電における電子のエネルギーバランスが各装置
で解析されている.ここでの解析では熱フラックス密度が
�����������で与えられるという純粋に拡散的描像のも
とで,実験的に熱拡散係数��を決定し,新古典理論からの
拡散係数と比較している.コア領域において実験的に得ら
れた熱拡散係数は,径電場を考慮しない新古典的な拡散係
数よりはるかに小さい値を示しているが,径電場を考慮し
た拡散係数よりは大きな値を示している.
CERCへの遷移に対する磁場構造の影響についても検討
されている.プラズマ中心付近での実効ヘリカルリップル
����が大きい磁場配位の時に,CERCに遷移しやすいという
新古典理論からの予想は,W7-AS や TJ-II で実験的に確認
されている.また,CERCの形成における磁気島,低次有
理面の存在の効果は,LHD[7,8]とTJ-II[9]において認め
られている.LHDにおいては,低次の有理面,特に
��������がプラズマの中心付近に存在し,NBI駆動電流に
よってその位置や回転変換分布は変化する.例えばco-NBI
入射の場合には,��������の有理面は,ほとんど中心付近
からなくなってしまうと予想される.CERC形成へのECH
パワーの明確な閾値は,counter-NBI の場合に明確に観測
されており,co-NBI の場合には不明確である.このような
違いは,コア部における��������面の存在と関係している
と思われる[7].また,磁気島の存在がCERC形成を促進
することが指摘されている[8].TJ-II の場合には,わずか
なオーミック電流を流すことによって,コア部での回転変
換分布を変化させることができる.これを使って,
��������の磁気島がプラズマコア領域に存在するとき
に,ECHパワーの閾値が下がることが示されている[6].
他の低次有理面に関する実験では,密度閾値が有理面の次
数に依存して変化することが示されている[10].
3.3.2.2 高密度領域での ECH
高調波加熱実験(X3と O2)
プラズマ閉じ込め装置において,電子サイクロトロン波
の有効な吸収が期待できる入射方法として,基本波での正
常波モード(O1),または第2高調波での異常波モード
(X2)が主に用いられている.それらの入射モードを可能
にする周波数は,閉じ込め磁場強度に応じて,たとえばプ
ラズマ中心での最大磁場強度3 Tの場合には,O1モードに
対して周波数は 84 GHz,X2 モードに対しては 168 GHz
になる.プラズマ中には種々のカットオフ層が存在するた
図1 各ヘリカル装置における CERC時の電子温度分布.(a)CHS(PECH~150 kW,ne~0.3×1019 m-3,B = 0.95 T),(b)LHD(PECH~970 kW,ne~0.15×1019 m-3,B = 1.5 T),(c)TJ-II(PECH~200 kW,ne ~0.7×1019 m-3,B = 0.95 T),(d)W7-AS(PECH~1.2 MW,ne~1.9×1019 m-3,B = 2.5 T).文献[1].
図2 各ヘリカル装置において測定された径電場 Er分布と,測定された電子密度,電子温度より求められた新古典的両極性電場の分布を比較して示した.(a)CHS,(b)LHD,(c)TJ-II,(d)W7-AS.文献[1].
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め,有効な中心加熱を行うためにはプラズマ密度に上限が
存在することになる.磁場に垂直に入射する場合には,正
常波モードに対してはプラズマカットオフに対応する密度
上限���が,���[1020 m-3]=(�[GHz]/89.8)2で決定される.
また異常波モードについては,右手サイクロトロンカット
オフ(R cutoff)と,左手サイクロトロンカットオフ(L cut-
off)が存在し,密度上限がそれぞれ��������
�� ����と
��������
�� ����で表される.ここで�は高調波の次数で
ある.具体的な数値としては,84 GHz の O1 モードが
����0.88×1020 m-3,168 GHz の X2 モードが�����1.75
×1020 m-3 となり,これ以上の密度領域に波動は近接でき
なくなる.現状の使用可能な百GHz帯の高パワー源を使用
して一層高密度領域でも加熱を可能とするために,近年さ
まざまな試みがなされている.その第1がさらなる高調波
加熱を利用する方法であり,第2がカットオフの存在しな
い静電波である電子バーンシュタイン波(Electron Bern-
stein Wave: EBW)へのモード変換を利用する方法である.
この第1の方法として,異常波の第3高調波加熱(X3)と
正常波の第2高調波加熱(O2)が検討されている.X3加熱
の場合には,磁場を下げて加熱することになるが(例えば
168 GHz の時は 2 T),カットオフ密度はX2加熱の場合の
4/3 倍になる.またO2加熱の場合にはX2加熱の2倍にな
る.
X3モード加熱の先駆的な実験はHeliotron DR において
なされている[11].また,LHDにおけるX3モード加熱の
可能性の検討がなされ[12],実験的に有効な加熱が確認さ
れている[13].図3は,LHDで行われた第3高調波加熱実
験の結果を示している.実験は磁気軸上の磁場強度 1 Tに
おいて,NBIによって保持された電子温度1 keV,電子密度
0.6×1019 m-3のプラズマに,周波数84 GHz,ジャイロトロ
ンパワー 1.3 MWの電子サイクロトロン波を磁気軸をね
らって入射したときの電子温度と電子密度の分布を示して
いる.第3高調波加熱により中心密度をほぼ一定に保ちつ
つ約 0.3 keV の温度上昇がみられている.O2モードでの加
熱の可能性は,建設中のW7-X 装置において検討がなされ
ている[14,15].高調波加熱では一回通過吸収の効率が低
下するために,真空容器の対向壁にミラーを取り付け,複
数回プラズマコア部を通過させることによって吸収効率を
向上させる検討も行われている.
電子バーンシュタイン波による加熱
電子バーンシュタイン波(EBW)による電子サイクロト
ロン加熱・電流駆動と輻射計測の理論的背景については,
本小特集(2.1.3節)や前川による本誌の解説[16]に優れ
た記述があるので,詳細についてはそちらを参照していた
だきたい.ここでは近年行われてきたW7-AS,HeliotronJ,
CHS,LHDをはじめとするヘリカル装置での実験結果につ
いて概観する.
EBWは,磁場にほぼ垂直方向に大きな波数ベクトルを
持つ静電波モードである.オーバーデンスプラズマ(中心
付近の電子プラズマ周波数が入射波動の周波数より高い)
においては,通常の加熱方法である電磁波の正常波モード
(Oモード)や異常波モード(Xモード)は,プラズマ中に
カットオフ層が存在するため,中心付近の加熱領域に近接
することができない.静電波であるEBWは伝搬に密度上
限がないため,オーバーデンスプラズマでもプラズマの有
効な加熱が可能となる.トロイダルプラズマにおいて
EBWへ有効にモード変換を行わせるためには,入射電磁
波を高域混成波共鳴(UpperHybridResonance:UHR)へ近
接させる必要がある.この方法として以下の3つの方法が
考えられる.
1.強磁場側からの遅波Xモードの入射でEBWへモー
ド変換させる(SX-B シナリオ)
2.弱磁場から速波Xモード入射し,右手サイクロトロ
ンカットオフ(Rカットオフ)とUHRとの間のエバ
ネッセント層をトンネリングさせEBWにモード変
換させる(FX-B シナリオ).
3.弱磁場側よりOモードを斜め入射し,Xモードへの
変換を通してEBWへモード変換させる(O-X-B シ
ナリオ)
である.
ヘリカル系におけるEBW加熱については,古くは
Heliotron DR 装置におけるオーバーデンスプラズマでの
図3 第3高調波 ECHのパワー入射直前(t = 1.37 sec:白抜きシンボル)と入射中(t = 1.57 sec:塗りつぶしシンボル)の(a)電子温度と(b)電子密度を規格化小半径�についてプロットした.文献[13].
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ECHの有効な加熱機構として考察されている.プラズマ
カットオフ密度以上のプラズマにおいて,磁場強度によら
ない有効なコア部の加熱が観測されており,容器壁で多重
反射された電磁波のO-X-BまたはFX-Bのモード変換過程
を介したEBW加熱によるものと結論されている[11,17].
HeliotronJ,CHSやLHDを代表とするヘリオトロン磁場
配位におけるEBW加熱については,複雑な3次元的磁場
構造を考慮し,電磁波の軌道追跡コードを用いて長崎らに
よって詳細に検討された[18,19].特に上記の SX-B と O-
X-B シナリオについて検討されている.
ヘリオトロン配位においては,その3次元的な磁場構造
のおかげで,低磁場側にあるアンテナから波動を斜め入射
することによって,SX-B 加熱を可能にする入射経路が存
在する.ある角度を持たせることによってXモード偏波を
持つ波動は,Rカットオフ層を回避し,高磁場側よりプラ
ズマに近接する軌道をとることができる.この方法で加熱
できる密度領域はO-X-B シナリオよりは低いが,より広い
入射角ウインドウを持っている.Heliotron J での実験で
は,53.2 GHzのジャイロトロンパワー入射によるECHプラ
ズマ生成,加熱実験において,プラズマカットオフ密度程
度の密度領域で,中心付近にサイクロトロン共鳴層が存在
しない条件で,有効な中心加熱が起こっている.TE02 モー
ドで入射された電磁波が,壁面での多重反射により,基本
波共鳴層に対して高磁場側から入射され,SX-B のシナリ
オでEBWによる加熱が起こっている可能性を示した
[18].LHDではこの手法を使って高磁場側からXモード
で電磁波を入射し,モード変換によるEBW加熱を示唆す
る実験結果が得られている[20].またCHSでは,図4に
示したように真空容器内に設置したミラーを用いて,基本
波Xモードの高磁場側入射を実現し,プラズマ中心部のプ
ラズマカットオフ密度を超える領域で2倍近い温度上昇が
得られており,EBWへのモード変換による加熱が起こっ
ていると結論している(図5を参照)[21].
O-X-B シナリオに基づく高密度領域でのプラズマ加熱に
ついては,すでにHeliotronDR[17]やW7-AS[22]において
先駆的な実験が示されているが,同様な試みがCHSや
LHDでも近年行われている[23,24].OモードからXモー
ドへの変換を最適にするには,トロイダル方向の入射角,
すなわち磁場方向の屈折率に最適値������� ����������が
存在する.ここで �������(�は入射波の角周波数,
���は電子のサイクロトロン角周波数)である.磁場方向
の屈折率��が最適値からはずれるときには,エバネッセ
ント層が発生するため,エネルギーの伝達は指数関数的に
低下する.入射波の波数を�,��をポロイダル方向の屈折
率とし,密度勾配のスケール長を�������������とする
と,このエネルギー伝達関数は次の式で与えられる.
��������
��������� �����������������
����
�� �� �CHSでは,54.5 GHz,415 kWのジャイロトロンパワーを
NBIで維持された高密度プラズマに斜め入射しO-X-B加熱
を行った.図6は典型的なO-X-B 加熱の時間発展を示して
いる.Oモードのカットオフ密度はおよそ 3.8×1019 m-3
であり,密度がカットオフ密度を超えた状態で,ECH入射
で 30%以上の蓄積エネルギー増大が観測された[23].
LHDでは,オーバーデンスのプラズマに対して,O-X-
B シナリオでのEBWへのモード変換窓を探すためにアン
テナの集束位置をスキャンする実験を行った.その際 84
図4 X-B加熱時の入射配位を示す.ここで LCFS:最外殻磁気面,RC:右手サイクロトロンカットオフ,UHR:高域混成波共鳴,FR:基本波サイクロトロン共鳴(54.5 GHz に対して 1.95 T),X:異常波モード,B:電子バーンシュタインモードを各々表している.真空容器内に設置された最終ミラーの設定角度によって,反射されたミリ波はUHRに近接できる「窓」を通過できる場合(灰色実線)と RCで反射される(灰色破線)場合とがある.文献[21].
図5 X-B加熱時の放電波形を示す.上より NBIと ECH入射パワー,プラズマの蓄積エネルギーと輻射損失電力,線平均密度と中心電子温度の時間変化である.最下図での水平線は,54.5 GHzの O‐モードカットオフ密度である 3.8×
1019 m-3を表している.文献[21].
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GHz の入射パワーに47Hzの 100%パワー変調をかけてい
る.さらにスニーファープローブを用いて真空容器壁への
漏洩電磁波を観測した.その結果,計算によりEBWへの
モード変換効率が大きくなると予想された位置付近にアン
テナ集束位置を設定した時に,中心温度の上昇と漏洩電磁
波の減少が観測され,有効な加熱が起こっていることが示
された.電子温度に対応する電子サイクロトロン放射
(ECE)の信号を高速フーリエ変換し,ECHの変調周波数
である 47 Hz の振幅成分を規格化小半径に対してプロット
したものが図7である.(a)はモード変換が起こると予想
されるアンテナ設定位置付近の場合であり,Oモード入射
の場合に中心部の温度上昇が観測されている.(d)に示し
たようにXモード入射の場合には温度上昇はみられな
い.またその他のアンテナ集束位置でも温度上昇は観測さ
れていない[24].
3.3.2.3 ECHによるプラズマの定常維持
プラズマの閉じ込め磁場を外部コイルだけにより生成す
るヘリカル装置において,入射アンテナをプラズマから離
して設置できるECHにとって,核融合炉をめざしたプラズ
マの定常維持は究極の目標である.特に閉じ込め磁場を超
伝導コイルにより発生している LHDにおいては,安定な
定常保持プラズマを実証できる唯一の装置といって過言で
はない.近年,パワーソースであるジャイロトロンの定常
運転が現実のものとなり,ハードウェアの改善を行いつつ
段階を経て1時間を超える定常プラズマ維持を実証した.
LHDでは,周波数84 GHz,出力200 kWで定常出力が可
能であるジャイロトロン管を準備し,定常プラズマ維持実
験を行った.初期の実験では,70 kW程度のパワー入射と
間欠的なガスパフを用い,プラズマ密度を調整することに
よって平均電子密度 2.4×1017 m-3,756秒の放電維持を達
成した[25].この実験では,放電の維持時間は,伝送系の
温度上昇によって引き起こされた導波管内の真空度劣化に
よるインターロック動作で制限され,伝送系での電磁波損
失低減と十分な冷却が必要であることがわかった.
次の実験では,伝送系コンポーネントの電磁波損失に対
する見直しと全系に渡る十分な冷却を施した.磁場強度
1.5 T で,第2高調波共鳴でプラズマ生成を行っている.入
射パワーはおよそ 110 kWで,3900秒の保持に成功した
[26].放電時間はデータ収集の可能な時間で制約されてお
り,手動でジャイロトロンパワー入射を停止したものであ
る.図8はその際の入射パワー,ガス供給量,線平均電子
密度,ECEによる電子温度の時間変化を示したものであ
図6 O-X-B加熱時の放電波形を示す.カットオフ密度をはるかに超えたプラズマに,EC波を入射することにより蓄積エネルギーに顕著な増加がみられている.文献[23].
図7 O-X-B加熱時のECE信号変調成分(47 Hz)を規格化小半径に対してプロットした.(a)‐(c)アンテナ集光位置を3種類変化させ設定し,Oモードで入射した場合,(d)は(a)と同じアンテナ設定で Xモードで入射した場合を示している.文献[24].
図8 ECHのみの入射による3900秒放電時のプラズマパラメータの時間変化を示した.上から ECH入射パワー,ガス流量,線平均電子密度,ECEにより計測された規格化小半径0.136での電子温度である.文献[26].
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る.線平均密度はおよそ 1.5×1018 m-3,ECEによる中心付
近の電子温度は 1.5 keV であった.
3.3.3 電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)ヘリカル系はプラズマ閉じ込めに必要の磁場が外部コイ
ルによって形成されるため,オーミック電流といった外部
駆動電流を原理的には必要としない.しかしながら,トカ
マクと同様,有限プラズマ圧力によってブートストラップ
(BS)電流が駆動され回転変換分布が変わるため,平衡・
安定性が影響を受ける.例えば,LHDでは BS電流によっ
て回転変換が増加し,������の有理面が低シア領域に移
動し,磁気島が形成されることで閉じ込めの劣化が生じる
ことが報告されている[27].トカマクにおいて電子サイク
ロトロン電流駆動(ECCD)はMHD不安定性の安定化,熱
輸送解析,プラズマ生成アシストに有効な手法として知ら
れている一方,ヘリカル系ではこれまで外部駆動電流の研
究はあまり行われていなかったが,最近になってBS電流
を抑制し磁気島が形成されやすい有理面を回避する手法と
しての利用が考えられている.また,計測の観点からは,
ヘリカル系ではオーミック電流がないことからEC電流を
1 kA以下の精度で測定できる長所を有している.
EC波は電子を磁力線に垂直方向に加速し,平行方向に
は直接運動量を与えないため,一見するとトロイダル電流
を駆動しないように思える.しかしながら,速度空間にお
ける磁力線に平行方向の非一様性の発生を考慮すると,駆
動電流が生じることがわかる.ドップラーシフトした電子
サイクロトロン共鳴条件�������������を満たす電子は磁
場に垂直方向に加速され,速度空間において低衝突領域に
入る.主にピッチ角散乱による衝突緩和過程によりマクス
ウェル分布に戻ろうとするが,衝突頻度は���の割合で速
度の増大とともに減少するため,低エネルギー電子に比べ
高エネルギー電子の���に関する対称化はゆっくりしたも
のとなる.その結果,衝突時間に比べて十分に長い時間が
たつと,ある一方向の���をもつ電子の数が逆方向のそれよ
りも多くなり,���に関する非一様性から,磁力線に沿った
電流が駆動される.これをFisch-Boozer効果と呼んでいる
[28].磁場にリップル構造がある場合,磁場の非一様性に
より捕捉粒子が発生する.EC波によって磁場に垂直方向
に加速された電子は通過領域から捕捉領域へと入り,磁気
リップル内で往復運動をすることで���に関する非対称性
は急速に失われる.定常状態において,ドップラーシフト
した加熱による捕捉過程は���に関して非対称であるのに
対し,捕捉粒子の脱捕捉過程は対称である.その結果,加
速される電子が元々いた速度空間での電子数は減少し,反
対方向の���をもつ電子の数が多くなり,Fisch-Boozer効果
とは反対方向の電流が形成される.この効果をOhkawa
効果[29]と呼んでおり,Fisch-Boozer 効果と逆方向に電流
を駆動する.
ヘリカル系ではW7-AS において ECCDが初めて調べら
れた[30,31].入射角や電子密度に対する依存性について
理論との比較を行っており,捕捉粒子の効果を入れた線形
理論と比較的良い一致があるものの,低密度領域では線形
理論や2次元フォッカープランクシミュレーションから得
られた値が実験値よりも高く,その理由は明確になってい
ない.ヘリカル系でのECCDを用いた閉じ込め制御の可能
性,また,トーラスプラズマに共通するECCD物理を探る
べ く,近 年,Heliotron J[32],TJ-II[33],CHS[34,35],
LHD[36]においてECCD実験が活発に行われるようにな
り,実験結果の比較も行われている[37].
ECCD理論から予測されるように,EC駆動電流の大き
さと方向は平行方向屈折率���に依存する.図9はトロイ
ダル電流値のEC入射角依存性である.どの装置において
も���の増加とともにトロイダル電流が増大し,ある���において最大値をとっている.これらの実験ではトロイダ
図9 トロイダル電流の EC入射角依存性,(a)Heliotron J,(b)TJ-II,(c)CHS.低密度領域であるため,BS電流の寄与は小さく,EC駆動電流が主たる成分である.文献[37].
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ル電流にBS電流も含まれているが,低密度であるためそ
の寄与は小さく,ほぼEC駆動電流と考えてよい.駆動方向
はFisch-Boozer効果で予測される方向に対応する.この傾
向は最近の LHD実験でも観測されている.EC駆動電流を
正確に評価するにはロゴスキーコイルで測定される非誘導
電流においてBS電流とEC電流を切り分けることが必要で
ある.一つの方法は,EC駆動電流が流れない垂直入射にお
いてBS電流を評価し,その値を有限の���の場合に適用す
る方法であり,もう一つの方法は,BS電流と EC駆動電流
の磁場方向に対する依存性の違いを利用することである.
BS電流は��∇�ドリフトによって駆動されることから,
外部磁場を反転すると駆動方向が逆になる一方,EC駆動
電流はサイクロトロン共鳴条件から決定されるので磁場の
方向には依存しない.後者の考えを用いてEC駆動電流を
求める実験がHeliotronJにおいてなされた.評価されたBS
電流は新古典理論と比較的良い一致を示すとともに,低密
度ではBS電流の寄与はEC駆動電流に比べて小さいことが
示された.
Heliotron J では,パワー吸収位置での磁場リップル構造
を広範囲に変えてEC駆動電流の磁場リップル依存性を調
べている.図10は,3つの異なる磁場配位でのEC駆動電流
の電子密度依存性である.リップルの山でのECパワー吸
収の場合は約5 kAのEC駆動電流がFisch-Boozer効果の方
向に流れ,リップルの谷での吸収の場合は駆動方向の反転
が見られている.駆動電流の反転の理由と一つとしては,
速度空間での捕捉粒子の効果が考えられている.ヘリカル
系では,大きな��を持つ電子はトロイダルリップル以外に
ヘリカルリップルにより捕捉されるため,Heliotron J での
実験結果はOhkawa効果がトカマクに比べて強いことを示
している.低回転変換・低磁気シアのヘリカル系では,少
しのトロイダル電流によっても回転変換分布が影響を受け
る.HINT2 コードのシミュレーション結果によれば,
HeliotronJ配位では5 kA程度の中心領域へのECCDによっ
て中心の回転変換が 0.56 から 0.18まで変化し,強い磁気シ
アが形成されることが予測されている.LHDにおいて
MSE計測を用いた回転変換分布が計測されており,図11に
co-ECCDと ctr-ECCDでの回転変換分布を示す.co-ECCD
は中心領域の回転変換を増大させ,ctr-ECCDは減少させ
ていることがわかる.今後はロゴスキーコイルで測定され
た電流との定量的な比較を進める必要があろう.
これまで電流駆動効率の評価には駆動電流と入射パワー
の比�������や������������が用いられてきたが,これら
の関数は無次元量ではなく,また,電子温度依存性を反映
していない.最近,電子温度依存性を考慮に入れた無次元
電流駆動効率
���
��
�
������
���������
������
����(1)
が提案されている[38].ここで,それぞれのパラメータの
単位は��[1020 m-3],���[A],�[m],���[W],および
�[keV]である.この無次元電流駆動効率が同じ電子密
度,電子温度の条件で変わるとするならば,電子の捕捉効
果や不純物の効果を反映しているものと考えることができ
る.ヘリカル系での電流駆動効率はトカマクに比べて1桁
低く,また,装置間で磁場分布に相違があるにもかかわら
ずヘリカル系での無次元電流駆動効率は0.03-0.05とファク
ター2の範囲で同程度である.これは,ヘリカル系では磁
場リップルによってOhkawa効果が強いことを示唆してい
るものと思われる.今後,理論との比較により捕捉粒子の
効果を定量的に明らかにすることが望まれる.電流駆動効
率はトカマクほど高くはないが,駆動されるEC電流はBS
電流と同程度であることから,トロイダル電流を制御する
ことが可能である.図12はHeliotron Jにおける電流制御実
験の一例である.1.5 kA の BS電流を ECCDによって抑制
し,トータル電流を 0.4 kA 以下にできることを実証し
た.こうした電流制御はCHSや TJ-II においても行われて
いる.
3.3.4 プラズマ生成ヘリカル系において,プラズマの生成は通常,基本波ま
たは第2高調波EC波を用いて行われている.これまでプ
ラズマ生成に関する実験および理論解析はいくつか行われ
図11 LHDにおいてMSEを用いて測定された回転変換分布.文献[37].
図10 Heliotron Jにおける EC駆動電流の電子密度依存性.磁場リップル構造を変えることで EC駆動電流方向が反転する.文献[32].
Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.6 June 2009
374
てきたが,トカマクに比べると系統的な研究は進んでいな
かった.これは,EC共鳴層が閉じ込め中心領域にあれば波
の偏波やビーム集束に依らず比較的簡単にプラズマ生成を
行うことができたためであろう.しかしながら,基本波に
よるプラズマ生成が線形理論で説明できるのに対し,第2
高調波によるプラズマ生成過程はそれほど単純ではない.
種となる電子のエネルギー増幅率がラーモア半径の自乗に
比例しプラズマ生成の初期フェーズでは実質的にゼロとな
るため,第2高調波によるプラズマ生成では波と粒子の非
線形相互作用を考慮に入れる必要がある.Carter[39]や
Cappa[40‐42]による非線形理論によれば,サイクロトロ
ン波によって加速された電子は中性粒子と衝突するまでに
電子なだれを引き起こすだけ十分に閉じ込められてなけれ
ばならない.有効なプラズマ生成のためには2つの条件を
満たす必要があることが指摘されている.一つは,磁場
リップルによって捕捉された電子が周期的振動を繰り返す
際に,そのピークエネルギーが中性粒子のイオン化ポテン
シャルを超えなければならないことであり,もう一つは,
電子と中性粒子の衝突周波数が非線形相互作用を妨げない
ほど十分低いとともに,中性粒子のイオン化プロセスの前
に捕捉電子が閉じ込め領域から逃げ出さないほど十分高く
なければならないことである.後者の周波数条件はプラズ
マ生成のためには中性粒子ガス圧に下限と上限があること
を意味している.
第2高調波ECHプラズマ生成について,Heliotron J
[43],TJ-II[44],CHS[45],HSX[46]において実験的に
調べられ,文献[47]において実験結果の比較が行われてい
る.図13はHeliotronJにおいてCCDカメラで見たプラズマ
生成初期フェーズにおけるプラズマ形状の例である.磁気
軸近傍において細いスネーク状のプラズマが形成された
後,最外殻磁気面へと拡がっており,ラングミュアプロー
ブで計測された周辺領域でのイオン飽和電流は中心電子温
度の立ち上がりから数msec 遅れて増加し始める.この第
2高調波ECHプラズマ生成は基本波ECHプラズマ生成と
対照的な結果である.基本波ECHの場合,基本波共鳴層が
真空容器内に現れたときにプラズマが生成される[43].初
期プラズマは基本波共鳴層に沿って形成され,最外殻磁気
面であっても真空容器内に基本波共鳴層があればプラズマ
生成は可能である.一方,第2高調波ECHの場合,共鳴層
が磁気軸から離れるにつれてプラズマ生成にかかる時間は
長くなり,ついにはプラズマが生成されなくなる.これは,
第2高調波ECでは加速された電子の閉じ込めが重要であ
ることを意味している.
図14はHeliotron J,TJ-II,CHSにおける入射EC波の偏
波面に対する依存性を示している.すべての装置におい
て,最も早いプラズマ生成がX-mode 偏波のときに得られ
ており,X-mode の割合が下がるにつれて生成時間が長く
なってゆく.プラズマ生成初期では電子温度は低いので,
一回通過吸収はかなり低い.それにもかかわらず,X-mode
入射がプラズマ生成に有効なのは,一回通過のX-mode の
電場によって真空容器内にある種電子が加速されているた
めであると思われる.一方,基本波ECHプラズマ生成では
入射波偏波に対する依存性がないことが観測されている.
基本波ECHプラズマ生成のために必要なECパワーは小さ
く,また,壁からの反射が一回通過ビームと同程度の効果
がある.
共鳴層位置依存性はHeliotron J,HSX,CHSにおいて調
べられ,共通の現象が観測されている.ECビームと共鳴層
の交差する領域が磁気軸に位置した場合,プラズマ生成は
最も早くなる.入射ビームをポロイダル方向にスキャンさ
せて交差点を周辺領域へと移動するにつれて,プラズマ生
成は遅れ,あるプラズマ半径よりも交差点が外になった場
図12 Heliotron Jにおける ECCDによる BS電流抑制実験.(a)EC電流を流さない場合,(b)EC電流によって BS電流を抑制した場合.文献[32].
図13 Heliotron Jにおいて CCDカメラを用いて観測された初期プラズマの接線画像,(a)第2高調波 ECH,(b)基本波ECH.共鳴層は(a)の場合は磁気軸中心,(b)の場合は最外殻磁気面より外側にある.(a)中の実線は磁気軸であり,×印は磁気軸と入射 ECビームが交差する点を示している.
Special Topic Article 3.3 Recent Progress of the ECH・ECCD Experiments in Helical Devices T.ShimozumaandK.Nagasaki
375
合,プラズマは生成されない.同様の傾向が磁場強度ス
キャンによる共鳴層シフトでも観測されている.共鳴層が
移動するのに合わせて初期プラズマの位置は移動する.
図15の初期プラズマ画像からわかるように,共鳴層と入射
ビームの交差点でプラズマが形成されている.Heliotron J
でのプラズマの形状と磁力線計算軌道とは一致しており,
また,マルチチャンネル��線検出器を用いて計測された
放電初期の時間発展も同様の結果が得られている[48].
HSX装置では,プラズマ生成に対して磁場スペクトラムが
どう影響するか 28 GHz ECH(RFパワー 50 kW,ガス圧
3×10-5 Torr)を用いて調べている.磁場スペクトルにバ
ンピー項を加えて準ヘリカル対称からミラー対称へと変
え,捕捉効果が強く電子損失しやすい弱磁場に共鳴層を移
動させたとき,プラズマ生成が大きく遅れることが観測さ
れた.一方,準ヘリカル対称では弱磁場と強磁場加熱では
プラズマ生成時間は対称な結果となっている.また,ECH
入射位置を磁場リップルの谷にした場合,プラズマ生成は
より遅れる結果となっており,磁場リップル構造がプラズ
マ生成に重要であることを示唆している.この傾向は
Heliotron J でも観測されている.
3.3.5 まとめヘリカル系プラズマ閉じ込め装置におけるECH,ECCD
の役割に主眼におき,最近のECH,ECCD実験での最近の
成果について紹介した.特に,ヘリカル型装置において特
徴的な,電子ルート実現による電子の熱輸送の改善実験,
高密度領域での有効な加熱が可能な電子バーンシュタイン
波加熱実験,小電流でも測定可能なECCD実験,プラズマ
生成,そして最も特徴的であるプラズマの長時間維持につ
いて,最近の実験の進展を紹介した.本章では紹介しな
かったが,上記の実験結果以外の最近の成果として,磁場
リップルでのECパワー吸収位置を変えることによる電子
密度制御[49],低衝突領域での高エネルギーイオンテイル
生成[50],透過波計測による一回通過吸収評価[51],ま
た,計測への応用として,協同トムソン散乱計測によるイ
オンエネルギー分布評価[52]などが挙げられる.これまで
エネルギー閉じ込め時間程度の物理現象が多く論じられて
きたが,ジャイロトロン定常運転化により,電流拡散時間
を超える長いタイムスケールの現象を調べることができる
ようになってきた.トカマク同様,ヘリカル系においても
ECH・ECCDの役割はこれまで以上に重要になるだろう.
図15 トーラス外側ポートから見たHeliotronJの初期プラズマ形状(a)�0/�= 0.46(B = 1.15 T),(b)�0/�= 0.48(B = 1.21
T),(c)�0/ omega = 0.50(B = 1.26 T)and(d)�0/�= 0.53
(B = 1.32 T)[48].共鳴層の移動に合わせて初期プラズマの生成位置が動いている.
図14 第2高調波プラズマ生成の入射波偏波面依存性[46].(a)Heliotron J,(b)TJ-II,(c)CHSでの実験結果を示す.どの装置においても X-mode入射でプラズマ生成が最も早い.
Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.6 June 2009
376
謝 辞本章をまとめるあたり,Heliotron J,TJ-II,CHS,LHD
実験スタッフのご協力いただきました.ここに感謝いたし
ます.本原稿に示した国際共同研究の一部は,「国際共同
研究拠点ネットワークの形成」,双方向共同研究(NIFS04
KUHL005,NIFS04KUHL001-010)の援助を受けて行われ
ました.
参 考 文 献[1]M. Yokoyama et al., Fusion Sci. Tech. 50, 327 (2006).[2]M. Yokoyama et al., Nucl. Fusion 47, 1213 (2007).[3]T. Shimozuma et al., Plasma Phys. Control. Fusion 45,
1183 (2003).[4]K. Ida et al., Phys. Rev. Lett. 91, 085003 (2003).[5]K. Ida et al., Plasma Phys. Control. Fusion 46, A45 (2004).[6]T. Estrada et al., Plasma Phys. Control. Fusion 46, 277
(2004).[7]Y. Takeiri et al., Phys. Plasmas 10, 1788 (2003).[8]T. Shimozuma et al., Nucl. Fusion 45, 1396 (2005).[9]F. Castejon et al., Nucl. Fusion 44, 593 (2004).[10]T. Estrada et al., Fusion Sci. Technol. 50, 127 (2006).[11]N. Yanagi et al., Nucl. Fusion 31, 261 (1991).[12]U. Gasparino et al., Nucl. Fusion 38, 223. (1998)[13]T. Shimozuma et al., Plasma Fusion Res. 3, S1080 (2008).[14]V. Erckmann et al., Fusion Sci. Technol. 52, 291 (2007).[15]N.B. Marushchenko et al., Plasma Fusion Res. 2, S1129
(2007).[16]T. Maekawa, J. Plasma Fusion Res. 78, 508 (2002).[17]S. Morimoto et al., Nucl. Fusion. 29, 1697 (1989).[18]K.Nagasaki et al., Proc. the 12th Joint Workshop on ECE and
ECH, p317 published by World Scientific Publishing Co.Pte. Ltd., 2003, ISBN 981-238-189-9.
[19]K. Nagasaki andN. Yanagi, Plasma Phys. Control. Fusion44, 409 (2002).
[20]H. Igami et al.,Plasma Fusion Res. 1, 052 (2006).[21]Y. Yoshimura et al., Plasma Fusion Res. 1, 053 (2006).
[22]H.P. Laqua et al., Phys. Rev. Lett. 78, 3467 (1997).[23]Y. Yoshimura et al., Plasma Fusion Res. 1, 029 (2006).[24]H. Igami et al., Rev. Sci. Instrum. 77, 10E931 (2006).[25]S.Kubo et al., PlasmaPhys. Control.Fusion47,A81 (2005).[26]Y. Yoshimura et al., J. Phys. Conf. Ser. 25, 189 (2005).[27]Y. Narushima et al., J. Plasma Fusion Res. 1, 004 (2006).[28]N.J. Fisch and A. Boozer, Phys. Rev. Lett. 45, 720 (1980).[29]T. Ohkawa, General Atomics Report GA-A13847 (1976).[30]V. Erckmann et al., Nucl. Fusion 43, 1313 (2003).[31]H.Maaßberg et al., Plasma Phys. Control. Fusion 47, 1137
(2005).[32]G. Motojima et al., Nucl. Fusion 47, 1045 (2007).[33]A. Fernandez et al., Fusion Sci. Technol. 53, 254 (2008).[34]Y. Yoshimura et al., J. Korean Phys. Soc. 49, S197 (2006).[35]Y. Yoshimura et al., Fusion Sci. Technol. 53, 54 (2008).[36]T. Notake et al., Plasma Fusion Res. 3, S1077 (2008).[37]K. Nagasaki et al., Plasma Fusion Res. 3, S1008 (2008).[38]R. Prater, Phys. Plasmas 11, 2349 (2004).[39]M.D. Carter, D.B. Batchelor and A.C. England, Nucl. Fu-
sion 27, 985 (1987).[40]A. Cappa, F. Castejon, F.L. Tabares and D. Tafalla, Nucl.
Fusion 41, 363 (2001).[41]A. Cappa and F. Castejon, Nucl. Fusion 43, 1421 (2003).[42]A. Cappa et al., Nucl. Fusion 44, 406 (2004).[43]K.Nagasaki,K.Takahashi,T.Mizuuchietal.,Nucl.Fusion
45, 13 (2005).[44]A. Cappa, F. Castejon, K. Nagasaki et al., 32nd EPS Conf.,
Tarragona (2005), P2.099.[45]Y. Yoshimura, T. Akiyama, M. Isobe et al., J. Plasma Fu-
sion Res. SERIES Vol. 6 (2004).[46]J.W.Radder et al., Proc. 13th Int. Stellarator Workshop (Can-
berra, 2002) PI:18.[47]K. Nagasaki et al., J. Korean Phys. Soc. 49, 18 (2006).[48]S. Kobayashi et al., Rev. Sci. Instrum 77, 10E527 (2006).[49]S. Kubo et al., Plasma Fusion Res. 3, S1028 (2008).[50]S. Kobayashi et al., Proc. 17th Int. Toki Conf. P2-071 (2007).[51]K. Nagasaki et al., Plasma Fusion Res. 2, 039 (2007).[52]久保 伸 他:プラズマ・核融合学会誌 84, 877 (2008).
Special Topic Article 3.3 Recent Progress of the ECH・ECCD Experiments in Helical Devices T.ShimozumaandK.Nagasaki
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