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1 胎児脳発達における母体ストレスの影響:特に抑制性神経との関係について 福田敦夫 浜松医科大学 医学部 神経生理学講座 要旨 脳の形成・発達は神経発生・移動・シナプス形成の段階を経るが、これらの諸段階で遺伝的因子と 環境的因子の交互作用により正常発達からの軽微な逸脱が生じうる。母体ストレスによっておこる胎 児の脳発達への影響は、動物モデルにおいても臨床例での疫学的・病理学的研究によっても、かなり の部分で抑制性ニューロンへの影響を介するものであることが明らかになってきた。しかし、胎児期 においてどのようなメカニズムでストレスが抑制ニューロン・システムに影響するか、まだわかって いない。我々を含めた最近の研究で、抑制性 GABA(γ-amino butyric acid)ニューロンの移動や発生 がかなり特異的に影響を受けることがようやくわかってきた。今後さらに、母体ストレスがどのよう にして神経発達上の障害を誘発するのかを生物学的・神経科学的に追及していくことは、ヒト脳機能 の健常な発達に対する様々な障害の原因を知り、それを予防する手だてを考えていくうえで重要なこ とである。 1.はじめに 赤ちゃん学では当然のことながら赤ちゃんの発達、特に脳と行動の発達に興味の中心がある。しか し、実は、赤ちゃんとして生まれてくる前の母親の胎内で脳は形態学的発達の大部分を終えている。 そのことを考えると、赤ちゃんの発達に与える影響という点では胎児の脳発達にもっと目を向けても よさそうである。実際に、赤ちゃんの時期からすでに発症の兆候も見られる自閉症スペクトラム障害 や、思春期に発症することが多いものの、その素因は胎児期からあると思われる統合失調症などの、 脳機能の広汎な発達の障害が基盤にあると考えられる精神神経疾患の病因を知るためには、胎児期の 脳発達は極めて重要な意味を持つ。脳の発生は遺伝的プログラミングによるが、発達期の脳はダイナ ミックに環境の影響をうけ、今日、自閉症や統合失調症などの脳の機能的発達の障害の発症にはその ような遺伝-環境交互作用がべースにあると認識されつつある[42]。つまり、環境因子は遺伝子発現を 修飾、あるいはその異常を増幅し、病態形成に影響すると考えられる。 これまで、自閉症の一卵性双生児の同時発症率の高さ(80-90%)から、その病因はほとんど遺伝因 子だろうと考えられてきた。そうしたなか、最近きわめて驚くべき研究が報告された[16]。一卵性と二 卵性双生児の大規模疫学と数理モデル研究から、遺伝因子(38%)よりも生育環境因子(58%)の方 が影響が強いという報告である。しかも二卵性での発症率が兄弟例よりも高いことから、生後環境よ り胎内環境の方が影響が強いと考えられる。統合失調症では一卵性双生児の同時発症率が約 50%と自

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1

胎児脳発達における母体ストレスの影響:特に抑制性神経との関係について

福田敦夫

浜松医科大学 医学部 神経生理学講座

要旨

脳の形成・発達は神経発生・移動・シナプス形成の段階を経るが、これらの諸段階で遺伝的因子と

環境的因子の交互作用により正常発達からの軽微な逸脱が生じうる。母体ストレスによっておこる胎

児の脳発達への影響は、動物モデルにおいても臨床例での疫学的・病理学的研究によっても、かなり

の部分で抑制性ニューロンへの影響を介するものであることが明らかになってきた。しかし、胎児期

においてどのようなメカニズムでストレスが抑制ニューロン・システムに影響するか、まだわかって

いない。我々を含めた最近の研究で、抑制性 GABA(γ-amino butyric acid)ニューロンの移動や発生

がかなり特異的に影響を受けることがようやくわかってきた。今後さらに、母体ストレスがどのよう

にして神経発達上の障害を誘発するのかを生物学的・神経科学的に追及していくことは、ヒト脳機能

の健常な発達に対する様々な障害の原因を知り、それを予防する手だてを考えていくうえで重要なこ

とである。

1.はじめに

赤ちゃん学では当然のことながら赤ちゃんの発達、特に脳と行動の発達に興味の中心がある。しか

し、実は、赤ちゃんとして生まれてくる前の母親の胎内で脳は形態学的発達の大部分を終えている。

そのことを考えると、赤ちゃんの発達に与える影響という点では胎児の脳発達にもっと目を向けても

よさそうである。実際に、赤ちゃんの時期からすでに発症の兆候も見られる自閉症スペクトラム障害

や、思春期に発症することが多いものの、その素因は胎児期からあると思われる統合失調症などの、

脳機能の広汎な発達の障害が基盤にあると考えられる精神神経疾患の病因を知るためには、胎児期の

脳発達は極めて重要な意味を持つ。脳の発生は遺伝的プログラミングによるが、発達期の脳はダイナ

ミックに環境の影響をうけ、今日、自閉症や統合失調症などの脳の機能的発達の障害の発症にはその

ような遺伝-環境交互作用がべースにあると認識されつつある[42]。つまり、環境因子は遺伝子発現を

修飾、あるいはその異常を増幅し、病態形成に影響すると考えられる。

これまで、自閉症の一卵性双生児の同時発症率の高さ(80-90%)から、その病因はほとんど遺伝因

子だろうと考えられてきた。そうしたなか、最近きわめて驚くべき研究が報告された[16]。一卵性と二

卵性双生児の大規模疫学と数理モデル研究から、遺伝因子(38%)よりも生育環境因子(58%)の方

が影響が強いという報告である。しかも二卵性での発症率が兄弟例よりも高いことから、生後環境よ

り胎内環境の方が影響が強いと考えられる。統合失調症では一卵性双生児の同時発症率が約 50%と自

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閉症よりも低く、かねてから環境要因の影響がかなり大きいことがわかっていたので[51]、この両疾患

にとって胎内環境の問題は極めて本質的と思われる。胎児期に受ける様々なストレス(母親の精神的

ストレスや感染、あるいは栄養など)のこれらの疾患との関係は多くのエビデンスで証明されている

[25]。一方で、この両疾患において、脳における抑制性ニューロンとその神経伝達物質である GABA

に関する異常についても多くの疫学的・病理学的証拠がある[31][33]。ではなぜ母体ストレスが胎児の

GABA システムに影響を与えるのか。残念ながら、これまでにこれら二つの因子の因果関係について

は殆ど知られていない。もし、胎内ストレスの影響のエビデンス(環境因子)と成長児に見られる

GABA システムの異常(遺伝因子)の因果関係を証明できれば、病因論にとどまらず、赤ちゃん(胎

児含む)研究にも生物学的見地から少なからず寄与できるのではないだろうか。

本稿では我々の研究と文献的考察を交えこの問題について考えてみたい。

2.胎生期における脳の発達

最初に、胎児の脳、特に大脳皮質の発達について概略を述べる。人間の脳は約 1400億個もの神経細

胞からできているが、もとは一本の神経管から形成されたもので、まず神経管内壁の単層の神経上皮

細胞が分裂して神経前駆細胞とグリア前駆細胞が作られる。その後、前駆細胞や発生したばかりの神

経細胞はプログラムされた位置に移動し、軸索と樹状突起を伸ばし始め、標的神経細胞とシナプスを

形成する。その結果、神経ネットワークが形成され、脳としての高度な情報処理が可能になる。

大脳皮質神経細胞のうちグルタミン酸を伝達物質とする興奮性の出力細胞(錐体細胞)は、側脳室壁

の脳室帯にある神経幹細胞(放射状グリア)が分裂することにより生み出され、多くは放射状グリアの放

射状突起を頼りに脳表面に対して垂直(放射状)に脳軟膜側へ向かって移動する(radial migration)。移

動した細胞は神経上皮の細胞層(脳室帯)と軟膜の間に蓄積され、最初に蓄積された細胞層はプレプレー

ト(prep1ate)と呼ばれる。さらに、生まれた細胞は次々と脳表に向かって移動していくが、プレプレー

トを軟膜側の辺縁帯と脳室側のサブプレートに分断するように入り込んで皮質板を形成していく。こ

のとき、後から生まれた神経細胞が先に移動を終えた細胞を追い越すようにして、順次脳軟膜側に位

置するので、細胞分裂時期の早い順に“内側から外側へ(inside-out)"の配列パターンをとることが知ら

れている。 サブプレートより内側は、中間帯、脳室下帯と区別されるようになる。生後は皮質板と中

間帯が発達して肥厚し、やがてそれぞれ大脳皮質の6つの層と白質となる。

一方、大脳皮質神経回路の機能に重要な抑制性神経細胞である GABAニューロンは、Dlx遺伝子に依

存して大脳基底核原基の ganglionic eminenceの脳室帯で発生し、新皮質原基を接線方向へ移動

(tangential migration)していき、大脳新皮質に配置される[1]。発生早期に GABAニューロンは中間帯と

脳室下帯の境界領域と辺縁帯との二つの層に分布するが、前者の領域の GABA 細胞が tangential

migration したのち、radial migration または斜め上方に移動して辺縁帯に移り、その層をいろいろな方向

に移動して皮質全体に行きわたってから、ふたたび深部へ移動して大脳皮質の各層に分布する[52]。し

かし、Rakicらはヒト胎児(10-25週目)では GABA ニューロンは ganglionic eminenceからだけでなく新

皮質原基の脳室帯でも発生し, radial migrationするものも多いことを報告している[30]。

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3.胎児期の GABA作用の特殊性(マルチモーダル GABAと Cl-ホメオダイナミクス)

次に、胎児期の GABA 作用の特殊性について述べる。まず、抑制性神経伝達物質の GABA だが、そ

の役割は実際には極めて多様である。GABA は、神経組織で発生初期から GAD65、67 により合成さ

れており、神経伝達物質のほかに神経発生での役割が考えられている[47]。また、未熟な脳では細胞内

Cl-濃度が高いため、GABAA 受容体を介した作用は脱分極性である。そして、シナプス形成前では

GABA は非小胞性の傍分泌・自己分泌により細胞外周囲環境に存在し、持続性脱分極をおこして神経

細胞の発生や移動に関与する[11][12]。これについては筆者の専門でもあるので、以下に少し詳しく述

べる。

GABAA 受容体は Cl-チャネルであり、Cl

-は電気化学勾配に従い、細胞の外から内に流入し膜電位を

過分極させようとするが、静止膜電位によって細胞内が常にマイナスにチャージしているので、陰イ

オンである Cl-は電気的には反発されて細胞外に押し戻されようとしている。そこで、もし[Cl

-]iが高く、

濃度勾配が小さくなると、もはや Cl-は反発する電気勾配に打ち勝って細胞内に入ることができず、電

気化学勾配は逆転し、GABA によって Cl-は細胞内から細胞外へ流出し、膜を脱分極する。神経細胞膜

には細胞内から細胞外へ Cl-を運ぶ排出型の Cl

-トランスポーター(K+-Cl

- cotransporter, KCC2)と、逆

に細胞外から細胞内に Cl-を運ぶ取込型の Cl

-トランスポーター(Na+,K

+-2Cl

- cotransporter, NKCC1)が

存在し、[Cl-]i のホメオスタシスを維持・制御している(図1)。成熟脳では GABA は Cl

-流入による

膜電位の過分極で抑制性神経伝達物質として作用するが、発達初期の神経細胞では Cl-トランスポータ

ーのうち、NKCC1 が KCC2 より優位に働き、NKCC1 による[Cl-]i蓄積によって[Cl

-]iが高く維持されて

いる。そのため、GABAA 受容体-Cl-チャネルが開口すると Cl

-は通常(成熟後)とは逆に細胞外に流出

して脱分極を惹起する[61]。つまり GABA は脱分極性に作用し、それによって惹起される[Ca2+

]i の振

動は神経系の発生、細胞移動、シナプス形成など、神経回路の発達過程に重要な役割を果たしている

[11][12]。やがて成熟と共に KCC2 の発現が増加して NKCC1 の発現が減少するため、[Cl-]iは低下し、

成熟した脳においては、GABA作用も過分極性になって抑制性に働くようになる(図1)[61]。

発達期では GABA が脱分極性に作用するというほかに、それが非シナプス性であるという特徴があ

る。未熟な神経細胞では、機能的シナプスがまだ未形成であるが、細胞周囲に漂う GABA による持続

性の GABAA受容体活性化は存在する。この GABA はシナプス形成前の GABA 細胞からの分泌による

が、シナプス伝達のような小胞性のものではなく、おそらく容積感受性の陰イオンチャネルからの放

出が有力である[9]。それでは、このシナプス形成前の持続的な GABAA 受容体活性化の生理的な意義

は何であろうか。

大脳形成過程の中間帯から脳室下帯にかけて tangential migration をしている GABA 細胞から傍分泌

的に分泌された GABA は、脳室帯の神経前駆細胞を GABAA 受容体を介して脱分極し、増殖を促進

[20]あるいは抑制[34]するが、脳室下帯では抑制する[20]。このような GABA 作用の違いには受容体の

サブユニット構成のほか、細胞外 GABA の濃度勾配も影響すると考えられている。細胞外 GABA の神

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経発生に関する影響は、脳の他の部位でも報告があり、普遍的現象なのではないかと思われる[12]。

そのほか、大脳の皮質板では GABAA 受容体を介した持続性脱分極が[Ca2+

]i 振動に影響し細胞移動

(radial migration)を減速するが[3][21]、中間帯では GABAC 受容体活性化を介しており、そこでは逆

に移動を加速する[6]。また、これらの GABA 作用は脱分極性であることが必要条件で、変異型 KCC2

を強制発現させて人工的に[Cl-]i を低下させてみたところ、本来移動が加速されるはずの中間帯で移動

が停止した [24]。一方、GABA ニューロンそのものに対しては、自己分泌的に移動( tangential

migration)を促進しているが、やはり KCC2 の発現により GABA 作用が過分極性になると移動を停止

させるようである[5]。この傾向は辺縁帯における GABAニューロンの”random walk”といわれる多方向

性の tangential migration でも同様である[23]。

以上のように、シナプスが形成される前の GABA は、自己/傍分泌的に容積感受性陰イオンチャネ

ルから放出されて細胞周囲に漂い[9]、その濃度は数十マイクロモルにも達して[44]、細胞増殖や細胞

移動に関わる。また、興味深いことに、母体由来のタウリンが胎盤のタウリントランスポーターで取

り込まれて胎仔大脳皮質で細胞外の濃度勾配を形成し、GABAA受容体のコ・アゴニストとして GABA

とともに作用して皮質板での移動の減速シグナルとなっていた[10]。さらに興味深いことには、細胞内

にタウリントランスポーターで取り込まれたタウリンは、Cl-トランスポーターをリン酸化する WNK

をリン酸化して活性化し、NKCC1 活性の上昇と KCC2 活性の低下をもたらす。すなわち細胞内タウリ

ンは Cl-ホメオスタシスを未熟型に維持することに寄与している[24]。胎児や新生児におけるタウリン

は殆んどが母体由来であることを考えると、母児間の環境因子あるいはその仲介因子として、胎児期

の GABA 作用の特殊性(マルチモーダル GABA と Cl-ホメオダイナミクス)におけるタウリン役割に

ついて、今後さらに研究が必要と思われる。マルチモーダルな GABA 作用について、大脳皮質の発達

過程を例にとって図2にまとめた。

4.自閉症スペクトラム障害(ASD)や統合失調症における母体ストレス関与の証拠

脳機能の発達障害が想定される精神神経疾患のいくつかでは、母体が受けたストレスとの因果関係が

疫学的に証明されている。なかでも、統合失調症の発症リスクと妊娠中に受けたストレスとの関連性

を示唆する報告は数多くある。たとえば、母親が妊娠中に縁故者の死亡を経験した場合[25]、妊娠その

ものが望まれないものであった場合[45]、さらに有名なのは、第二次大戦中のオランダへのナチス侵攻

や[57]アメリカでの竜巻[26]の事例を母親が経験した場合の統合失調症発症率の有意な上昇である。こ

れらの結果は、従来より支持されてきた、統合失調の発症要因の一つとして環境要因がある、という

仮説と矛盾しない。

統合失調症と同様に、自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder, ASD)発生率と母体が妊

娠中に受けたストレスにも、相関が認められている[48]。ストレスの種類も同様で、妊娠中の家族問題

などの生活上の出来事[4]、ハリケーンなどの自然災害[27]などであった。ASDに対して環境要因

(58%)は遺伝因子(38%)以上に寄与しており[16]、特に子宮内での環境要因が主に寄与しているこ

とが示唆されている。

5.ASDや統合失調症における GABAシステム異常の証拠

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多くの統合失調症の病理学的所見で、抑制性神経システムの異常が示唆されている[15]。中でもは

っきりとしているのは、前頭前皮質における GABA 合成酵素の GAD67 の減少である[18][19]。これに

加えて、同じ部位で GABAA受容体サブユニットの減少も証拠がある[18]。これらのデータは、GABA

伝達がシナプス前(GAD67 の減少)とシナプス後(GABAA受容体)の双方で減弱していることを示

している。さらに、GABA に関して統合失調症で特に明らかな証拠があるのは、GABA 細胞のうちパ

ルブアルブミン(PV)と呼ばれる Ca結合蛋白を有する特定のグループの GABA 作動性介在ニューロ

ンがやはり同様の部位で特異的に減少していることである[18][32][40]。重要なことに、この PV含有介

在ニューロンは、認知機能と密接な関係のある作業記憶と脳波のガンマ振動の基礎になると考えられ

ており[2]、統合失調症の患者では、認知機能の低下に伴い、作業記憶の障害と、ガンマ振動の異常所

見を示す[32][56]。

統合失調症と同様に、多くの研究は、ASDでの抑制性神経システムの異常を示唆している。自閉症

患者の死後脳研究では、大脳皮質と小脳で GAD67の減少が報告され[7]、GABAAレセプターも減少し

ている[8][41]。さらに、前頭葉での GABA 濃度の減少や[17]、ガンマ振動の異常所見[60]などの事実は

統合失調症の場合と類似しており、共通の病因の存在を示唆する。事実、ASDは、抑制性神経システ

ムの異常に伴うてんかんを高率に合併することからも抑制性神経システムの異常があることが強く示

唆される。

6.ASDや統合失調症のモデル動物における母体ストレスと GABAシステム異常の関連

母体ストレスを用いた動物実験で、成熟した仔の脳で抑制性神経回路に異常があることは多くの報告

で明らかになっている。母体ストレスの影響で明らかなのは、皮質ステロイドの分泌や糖質コルチコ

イド受容体の変化を介して[58][59]、出生仔の視床下部-下垂体-副腎系の hypothalamo-pituitary-adrenal

(HPA) axisのストレス反応性が高まっていることである[22]。HPA軸が変わるもう一つの経路は、視床

下部を直接または間接的にコントロールする神経回路であるが、多くの場合これらは GABA 作動性で

ある。たとえば、視床下部の上位の辺縁系において母体ストレス胎仔の GABAA受容体サブユニットが

減少していた[28]。ストレスホルモンの影響はシナプス後側でだけでなくシナプス前でも認められ、カ

ルレチニンやカルビンジンといったカルシウム結合タンパク質を発現するタイプの GABA作動性ニュ

ーロンが扁桃体で減少していた[62]。さらに、母体ストレスモデルにおいて、GAD67 の減少と抑制ニ

ューロン数の減少が脳の様々な部位で数多く報告されており、これらは辺縁系だけでなく、前頭皮質

などでも明らかである[38]。これらの部位の GABAニューロンは、海馬、視床下部に投射しているの

で、これらの部位の GABA システムの変化がその下流の視床下部に作用して HPA軸の反応性を変化さ

せた可能性は十分考えられる。そして、GABA ニューロンが減少した原因としては二つのことが考え

られる。一つは GABA ニューロンの tangential migration が障害される場合で、もう一つは脳基底核原

基の ganglionic eminenceでの GABAニューロンの発生が障害される場合である。

以上の動物モデルの組織学的所見は実際に患者で見られた病理学的所見をよく反映している[35]。特

に統合失調症モデルでも自閉症モデルでも、PV含有介在ニューロンの異常は、特に重要な役割を持つ

ようである[32]。メタアナリシスで、ASD の多くのマウスモデルにおいて、PV 含有細胞が減少してい

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ることが明らかとなり[14]、ガンマ振動にも影響を及ぼしているようである[55]。それでは、行動上も

そういった疾患の症状を反映しているのだろうか。母体ストレスモデルの動物は不安行動の変化

[43][49]や社会性行動の低下[49]を示し、疾患のフェノタイプを反映していた。さらに興味深いことに、

このストレス脆弱性の臨界期は[13]、基底核原基で発生した GABA細胞が tangential移動して大脳皮質

に入り、脳室帯で発生して皮質板を radial移動してきた glutamate細胞と会合して大脳皮質を形成して

いく時期[36]とまさに一致する。したがって、ヒト疾患においても母体ストレスが原因となって GABA

ニューロンの減少が起こった可能性がある。しかし、それを証明するためには、動物モデルの胎仔で

確かにストレスの影響で GABAニューロンの移動や発生が影響を受けることを示さねばならないが、

残念ながらこれまでそのような報告は殆んどなかった。それらの知見に関しては、我々のデータも含

め以下に述べる。

7.母体ストレスと GABA システムに見られる遺伝-環境相互作用(GABA 関連遺伝子異常と母体ストレ

スの相乗効果)

以上のような胎児期に起こるストレスは、胎児の脳の発達上のプログラムされたイベントと相互作

用する母体要因を通して、脳機能の発達に影響を与える可能性がある。それには先に述べたような胎

生期の特殊な GABA システム(マルチモーダル GABA)も含まれる。母体ストレスは、機序は不明な

がら、ニューロンの発生、生存、分化に影響を及ぼすことが知られている[29]。したがって、ASD や

統合失調症とその関連疾患、あるいはその動物モデルにおいて頻繁にみられる GABA ニューロンの異

常と、母体ストレスが影響を及ぼす臨界期を考えると、母体ストレスが抑制ニューロン特異的に発生、

移動、分化といった、その発達のプロセスに影響するのかもしれない。しかし抑制システムに対する

母体ストレスの発達上のメカニズムを調査した研究はこれまでまだ数件しかない。

Stevens らによると、GABA ニューロン前駆細胞の tangential 移動が母体ストレス直後から遅くなっ

ており、GABA ニューロン移動に関与するとされる転写制御因子の Dlx2 と Nkx2.1 の変化を伴ってい

た。この影響は新生仔の内側前頭皮質における GABA ニューロンの減少として表れていた[50]。また、

母体の偽感染による免疫系の賦活でも同様の結果(特に Dlx2)が得られており[46]、出生前リスクと

してこれら 2 つが GABA ニューロンに作用するのに何か共通のメカニズムがあるのかもしれない。ま

た、母体ストレスは、GABA ニューロン遺伝子発現のエピゲネティックな抑制にも関与があり、reelin

と GAD67 遺伝子の持続的なメチル化を誘導し、前頭皮質でこれらが減少する原因と考えられた[39]。

このような遺伝的因子と環境的因子の交互作用による胎児期の正常な発達への摂動が、脳機能の発達

の障害が想定される精神神経疾患のリスクを高める可能性について我々は以下の研究を行った。

実験には GAD67 遺伝子(Gad1)を GFP(green fluorescent protein)遺伝子で置換した GAD67-GFP

knock-in マウス用いた[52]。このマウスでは GAD67 遺伝子発現の代わりに蛍光蛋白の GFP が発現する

ので、GABA ニューロンが GFP の緑色蛍光を発する。ヘテロ接合体(Gad1 ヘテロ欠損)では、

GAD67 が通常の半分しか発現しておらず(ホモタイプは致死性)、胎仔期の大脳皮質内の GABA 量

は約 4 割減少していた[44]。脳内の GAD67 減少が母体および胎仔のストレス応答のリスクファクター

として働く可能性を調べるため、このマウスを用いて母体ストレス実験を行った[53]。ヘテロ接合体

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(GAD67+/GFP)雄と野生型(GAD67

+/+)雌、または GAD67+/GFP 同士を交配し、妊娠 15 日目の母体を

50 cc用プラスチックチューブに入れ、150ワットの白色光下 50センチ(照度 2500 ルクス)に 45分間

静置する。このストレスを一日に 3 回、妊娠 17 日目まで 3 日間続けた。ストレス直後の血中コルチコ

ステロン量を測定したところ、GAD67+/GFP 母体は非ストレス条件下でも GAD67

+/+母体よりも血中コル

チコステロン濃度は有意に高く、ストレス負荷によりさらに上昇した。また GAD67+/+母胎において、

母体ストレスによる胎仔の体重減少は GAD67+/GFP 胎仔が GAD67

+/+胎仔よりも有意に大きかった(図

3)。胎仔のコルチコステロン量は非ストレス条件下でも GAD67+/GFP 胎仔が GAD67

+/+胎仔よりも有意

に高く、母体ストレスによる有意な増加によってもこの差は維持された。これらのことから GAD67 の

ヘテロ欠損で母仔双方のストレス応答性が亢進しており、特に妊娠や胎生そのものがストレスとなる

可能性が示唆された。したがって GAD67 の遺伝子異常ないし脳内 GAD67 の異常は広汎性にストレス

脆弱性を亢進していると考えられた[53]。

そこでわれわれは野生型のメスとヘテロ型の雄を交配したモデルを用いて神経発生や移動への影響、

特に GABA システムへの影響がないかさらに詳しく調べることにした[54]。胎生 15 日に BrdU を母体

腹腔内投与し、ストレス負荷後に胎仔脳を取り出し、大脳皮質の皮質板細胞と GABA ニューロンの発

生や移動への影響をヘテロ型(GAD67+/GFP)胎仔で解析した。胎仔大脳新皮質における皮質板細胞

(将来の錐体細胞:グルタミン酸作動性興奮性細胞)の発生と移動は母体ストレスによる影響を受けな

かった。しかし中間帯から脳室下帯にかけて母体ストレス中に発生した GABA ニューロン(GFP/BrdU

両陽性)の数が有意に減少していた。TUNEL 法で検定した死細胞数には変化がなかったため、胎仔の

内側基底核原基(medial ganglionic eminence: MGE)における GABA ニューロンの発生数の減少か、あ

るいは発生後の大脳新皮質への移動(tangential migration)の障害の可能性が考えられた。そこで、胎

生 12 日に BrdU を母体腹腔内投与して検討した結果、ストレス負荷前の胎生 12 日生まれの GABA ニ

ューロンの細胞数と tangential migration は正常であった。すなわち、GABA細胞の前駆細胞の発生のみ

が特異的に障害されていたことになる。その原因を探るため、ストレスによって胎仔で増加するコル

チコステロン[53]に対する受容体の分布を調べた。その結果、興味深いことに GABA 細胞前駆細胞と

分化直後の GABA ニューロンには、グルココルチコイド受容体の強い発現を認めたが、脳室帯の皮質

板細胞前駆細胞にはその発現はごくわずかであった。この結果は GABA 細胞前駆細胞への特異的なス

トレスの影響を示唆するものであった。

また、生後 21 日においても、母体ストレスを受けた Gad1 ヘテロ欠損(GAD67+/GFP

)仔では、スト

レス中に発生した GABA 細胞数(GFP/BrdU 両陽性)が有意に減少していた。MGE で発生した GABA

細胞の多くは parvalbumin(PV)陽性となるので[36][37]、PV 陽性 GABA 細胞数(GFP/PV 両陽性)を

カウントしたところ、内側前頭皮質の全層、体性感覚皮質 III 層、海馬 CA1 で有意に減少していたが、

運動皮質では変化がなかった。これとは対照的に、PV 陰性 GABA 細胞(GFP 陽性/PV 陰性)はいず

れの部位でも有意な減少を認めなかった。これらの所見は統合失調症でみられるものと類似していた

[31][32][37]。さらに、母体ストレスに暴露された野生型(GAD67+/+)胎仔を成長させ、同様の解析を

行ったが、PV 陽性 GABA 細胞数はコントロール群と有意差がなかった。すなわち、GAD67 遺伝子

(Gad1)ヘテロ欠損(遺伝的リスク)と母体ストレス(環境的リスク)の交互作用があって初めて、成

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8

長後の脳の PV 陽性 GABA 細胞の特異的減少という、ASD や統合失調症に共通してみられる病的所見

を再現することができた[54]。以上から、ASD や統合失調症のリスクとしての GAD67 遺伝子異常と母

体ストレスは、同時に暴露された場合に交互作用によりさらに強いリスクとなることが示唆された。

今回の我々の研究を含めてもまだわずかだが、これまで報告されている結果の全ては、ASDや統合

失調症における出生前ストレスの疫学と、GABAシステムの遺伝学的・病理学的所見を説明するのに

矛盾しない。したがって、母体ストレスは環境的リスクファクターとして、ASD や統合失調症および

その関連疾患にみられる「抑制性神経系の異常」という病態の原因の一つになりえることが示唆され

た。

8.むすび

本稿で紹介した GABA のマルチモーダルな作用は脳発達に重要な意味を持つが、最近では脳機能の

広汎な発達の障害が想定される自閉症や統合失調症で GABA システムの異常が数多く報告され、病因

や病態と何らかの関係があることは間違いない事実となってきている。また、発達期の GABA システ

ムを撹乱する後天的要因も多い。たとえば麻酔薬や抗てんかん薬は GABAA 受容体作動性のものが多

く、母体への投与が胎児へどのような影響を及ぼすか懸念がある。胎生期の様々な危険因子がどのよ

うに GABA システムが関わる脳発達に影響するのかを理解することが、母体ストレスの脳発達への影

響を知る上で重要である。母体ストレスと一言でいっても、精神的・肉体的の違いや時期の違い、そ

の他さまざまな違いがあるのは当然であるが、本稿ではあえて詳述せず、母体ストレスと総称した。

統合失調症や自閉症ではもちろん GABA 以外にも、たとえばドパミン、NMDA などの神経伝達物質・

受容体や NRG-1 や DISC1 などの遺伝子が関与することも明らかであるが、本稿では筆者らの研究から

どのように母体ストレスと胎児脳の発達障害との因果関係に切り込めるかという視点で書いたので、

多くの論点は割愛した。しかし、いずれにせよ胎児の脳の発達に影響を与える要因を、胎内ストレス

と GABA システムの観点で、神経科学的にもっと集中的に研究していく必要がでてきていることは、

間違いないであろう。

筆者は産婦人科医として医師としてのスタートを切り、その後に神経生理学の道に進んだ経緯から、

神経発達、特に胎児期の脳発達に興味を持っている。そのなかで、「胎教」すなわち子宮内胎児の脳

発達への(子宮内)環境要因がようやく生物学的な研究の対象となりえるようになったと感じている。

これまで抑制性神経伝達物質である GABA が胎仔脳でみせる実に多様な働きと、その根底にある Cl-

ホメオダイナミクスについて研究してきたが、そのモデュレーターとしての母体のタウリンやストレ

スを見出すことができたので、今後はそれらの知見をもとに、赤ちゃん学の一分野としての胎児脳発

達学にもアプローチしていきたい。

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13

図説

図1:脳発達期の Cl-ホメオスタシス

発達初期の神経細胞では KCC2 は未発達であり、NKCC1 の作用により[Cl-]iが高値であるため、GABA

が Cl-流入による過分極ではなく、逆に Cl

-流出により脱分極性に作用する。発達とともに KCC2の発現

が増加し、逆に NKCC1 は減少するので[Cl-]iは低下し、GABA の作用も Cl

-流入による過分極性に変わ

ってくる。この抑制は脳における最も主要な抑制で、発達した脳機能には必要不可欠なものである。

図2:大脳皮質発達におけるマルチモーダル GABA作用

神経前駆細胞、移動中および移動直後の皮質板細胞では、NKCC1 の高発現と KCC2 の低発現で[Cl-]iが

高く GABA に対し脱分極に応答する。非シナプス性に放出された細胞周囲環境の GABA による持続的

(トニック)な GABAA受容体活性化による持続的脱分極は、脳室帯で神経発生を促進ないし抑制する

が、脳室下帯では抑制する。また、皮質板細胞の GABAA受容体活性化による脱分極は radial 移動のブ

レーキとして働くが、GABA 細胞の tangential 移動には逆にアクセルとなっている。一方で、中間帯で

は GABAC受容体活性化により radial 移動を加速する。移動終了後の GABA 細胞とのシナプス形成に関

しては、小胞から放出された GABA による反応が NKCC1 の働きにより興奮性に作用することが必要

である。以上のマルチモーダル GABA のどこかで異常がおこると、正常な脳の発達から逸脱する可能

性がある。

図3:胎仔の GAD67遺伝子型による母体ストレスへの応答の差異

野生型(+/+)母体のストレスにより+/+とヘテロ(+/GFP)両遺伝子型の胎仔で体重が有意に減少した。

ストレス後の+/GFP 胎仔体重は+/+胎仔より有意に軽かった(A)。一方、両遺伝子型の胎仔のコルチ

コステロン(CORT)量は母体ストレスにより有意に増加したが、+/GFP 胎仔の CORT 量はストレスの

有無にかかわらず+/+胎仔より有意に高かった(B)。文献[53]より転載。

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神経伝達抑制神経伝達抑制マルチモーダルな作用マルチモーダルな作用

発達期発達期 成熟期成熟期

神経伝達抑制神経伝達抑制マルチモーダルな作用マルチモーダルな作用

高い 細胞内Cl-濃度高い 細胞内Cl-濃度 低い 細胞内Cl-濃度低い 細胞内Cl-濃度

Cl-Cl-

過分極過分極KCC2KCC2

K+

脱分極脱分極

Cl-K+

N + /K+

KCC2KCC2

ClCl--流出流出ClCl--流出流出

GABAAGABAA

2Cl-

Na+ /K+Cl-

NKCC1NKCC1

GABAAGABAA Cl-Cl-

2Cl-

Na+ /K+

NKCC1NKCC1

Cl

ClCl--流入流入ClCl--流入流入

発達発達発達発達 VDCC CLC2CLC2VDCC CLC2CLC2Ca2+

Cl-

GABAGABA

[Cl-]i=7 mM

過分極(抑制性)過分極(抑制性)GABAGABA

[Cl ] 25 M

脱分極脱分極

GABAGABA [Cl ]i=7 mM[Cl-]i=25 mMGABAGABA

GABAGABA

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辺縁帯 GABAGABAGABAGABAGABAGABA

神経発生・移動期神経発生・移動期

辺縁帯

シナプス性脱分極GABA

シナプス性分泌

皮質板細胞GABAGABAGABAGABAGABAGABA

GABAGABAGABAGABAGABAGABA

ClCl‐‐ClCl‐‐

Na +, K+Na +, K+

Cl‐Cl‐ ClCl‐‐

Na +, K+

Cl‐ClCl‐‐

皮質板 シナプス形成

シナプス性分泌

Radial migrationのブレーキ

ClClClCl

ClCl‐‐ClCl‐‐K+K+

ClCl

ClCl‐‐K+

Na +, K+

ブプ

GABA反応

傍分泌

移動中の皮質板細胞

ClCl‐‐

サブプレートClCl‐‐

非シナプス性脱分極GABA

GABA受容体block

Radial migrationのアクセル

傍分泌

移動中のGABA細胞

Na + K+

脱分極GABA

tangential migrationのアクセル

中間帯

自己分泌GABAGABA

移動中のGABA細胞

NKCC1ClCl‐‐

ClCl‐‐

Na , K

脳室下帯神経発生の抑制 NKCC1NKCC1

傍分泌GABA受容体block

KCC2GABAA receptor

神経前駆細胞

脳室帯 神経発生の促進/抑制非シナプス性脱分極GABA GABAC receptor

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1 controlstress

**A B *

0.8

ght (

g)

stress***

*** 100

7.5

controlstress

ng/ml

****

0.4

0.6

Bod

y W

eig

60

80

leve

l at E

1

**

0.2Feta

l B

20

40

etal

CO

RT

0(+/+) (+/-)

n=34 n=28 n=22 n=23in GAD67+/+ mother in GAD67+/+ mother

GAD67+/GFPGAD67+/+0

(+/+) (+/-)

Fein GAD67+/+ motherin GAD67+/+ mother

n=9n=8 n=9 n=7

GAD67+/GFPGAD67+/+

in GAD67+/+ mother in GAD67+/+ mother in GAD67 motherin GAD67 mother

*; P < 0.05, **; P < 0.01, ***; P < 0.001