4 章 ファンデルワールス結合とファンデルワールス結晶(分子性結晶)...

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4章 章章章章章章章章章章章章章章章章章章章章章章章 章章章章 ● 章章章章 I 章章 章章 1) 章章章章章章章章章章2) 17 章章章 ( 章章章章章章 F, Cl, Br, I, At) 3) 18 章章章He, Ne, Ar, Kr, Xe, Rn), 4) 章章章章章章 CO 2 章章章 章章章章 I

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無機化学 I. 4 章 ファンデルワールス結合とファンデルワールス結晶(分子性結晶)   ●無機化学 I では、主に 1) ファンデルワールス力、 2) 17 族元素 ( ハロゲン元素 F, Cl, Br, I, At) 、 3) 18 族元素( He, Ne, Ar , Kr, Xe , Rn ), 4) ドライアイス CO 2 を勉強. 4-1) ファンデルワールス力 復習と目的. ●水素、酸素、炭酸ガスなどの分子は、 共有結合 で形成された分子である。共有結合を、ハサミなどを用いて切断して、バラバラの原子にすることは不可能である。 - PowerPoint PPT Presentation

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Page 1: 4 章 ファンデルワールス結合とファンデルワールス結晶(分子性結晶)   ●無機化学 I では、主に 1)  ファンデルワールス力、

4 章 ファンデルワールス結合とファンデルワールス結晶(分子性結晶)  ● 無機化学 I では、主に1) ファンデルワールス力、2) 17 族元素 ( ハロゲン元素 F, Cl, Br, I, At) 、3) 18 族元素( He, Ne, Ar, Kr, Xe, Rn), 4) ドライアイス CO2 を勉強 

無機化学 I

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4-1) ファンデルワールス力 復習と目的● 水素、酸素、炭酸ガスなどの分子は、共有結合で形成された分子である。共有結合を、ハサミなどを用いて切断して、バラバラの原子にすることは不可能である。● ところが、これらの分子の集合体でできた固体、たとえば CO2 の固体であるドライアイスを布巾でつつんで、硬い部分に打ち付けて粉砕したり、ドライバーなどで削りとることは簡単である(ファンデルワールス力)。

Page 3: 4 章 ファンデルワールス結合とファンデルワールス結晶(分子性結晶)   ●無機化学 I では、主に 1)  ファンデルワールス力、

● 黒鉛( graphite 、石墨)は、ベンゼン環が蜂の巣状に結合した共有結合板状平面が何枚も積み重なった層状化合物である。鋭利なカミソリを用いて、黒鉛の層に沿って層を切り離すこと(へき開性) 、また、セロテープで表面一枚をはがし取り黒鉛一枚の物質(グラフェン)を得ることは簡単であるが、共有結合平面を切断するのは極めて難しい。●採掘地は、スリランカ、メキシコ、カナダ、北朝鮮、マダカスカル、アメリカなど。硬筆に使われ石墨の和名を持つ。グラファイト(黒鉛)

a 黒鉛 b 黒鉛

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● 分子の集合体である分子性結晶(ファンデルワールス結晶、例:ドライアイス、ワックス)において、個々の分子は、大きな結合エネルギーをもつ共有結合やイオン結合で形成されているが、分子間をつなぐ結合は人の指でも十分切断できるほど弱い結合である。この弱い結合をファンデルワールス結合とよび、ファンデルワールス力が主要なものである。● 分散効果(全ての物質間)+誘起効果(双極子物質と無極性物質)+配向効果(双極子物質間)● 結晶を形成するのに必要なエネルギーの目安は格子エネルギー(=成分分子やイオンに分離するに必要なエネルギー、昇華熱)である。ファンデルワールス結晶の格子エネルギーは数10 kJ mol1 であり、イオン結晶(この結合も人の手で切断可能なものが多い)の格子エネルギー 250 ~ 1000 kJ mol1 に比べてかなり小さい ( 表 4.1) 。

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● ファンデルワールス相互作用のなかで最も重要な分散効果(ロンドンの分散力として知られる)の起因となる瞬間的電場とそれによる分子間相互作用エネルギーの大きさを示す。また、分子が充填して結晶を形成するときの最密構造と各原子のファンデルワールス原子半径を述べる。結晶の種類 代表 凝集エネルギー / kJ/mol 融点  /C分子性結晶 Ar

O2

7.747.1

189.4219.1

イオン結晶 NaClCaF2

764.01680

8031360

共有結合結晶 C( ダ イヤ モ ンド )Si

711446

35721410

金属 HgNaCuTiW

65107336468859

38.897.8108317253400

表 4.1  代表的な4種の結晶と例

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4 .1.1)  分散効果 ● 瞬間的電場 E により誘起分極 p ( ~ E 、:分極率 ) が生じることにより、分子間相互作用エネルギーが発生する。● 無極性の原子や分子にも働き、分子や原子が接近して電子雲がある程度重なり合うと強く現れる。極性分子:正電荷の中心と負電荷の中心が一致しない分子。双極子能率 (dipole moment) を持つ  HCl, H2O   非極性分子:正電荷の中心と負電荷の中心が一致する分子  He, H2, CO2 。双極子能率ゼロ分子内での全双極性モーメント(分子内での双極子モーメントの総和)はゼロでも、局所的にモーメントが強くなっているような分子も極性分子に含める場合がある(昔は双極子能率をマイナスからプラスへのベクトルとしていたが、現在はプラスからマイナスへのベクトル・・間違い)Hd+   -   Cld- Od- = Cd+ = Od-

双極子能率アリ 双極子能率ナシ

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r電 場E

図 4.2  無極性 2 分子に生じる誘起分極 p は矢印で示されるp = an E/40          (4.1)n:単位体積中の分子数  NA/cm3, 0   :真空の誘電率

距離 r 離れた無極性 2 分子(○)に生じる誘起分極 pを矢印で示す。電場 E がかかったときの分子の電子雲の歪みやすさの目安である分極率は、物質の誘電率と 4.1式で関係する。

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●1920 年以前は、無極性分子間に働く力が何に由来するのかが不明であった。重力によるものではないかとの見解もあった。この力は 1923 年のロンドン( F. London, 1900-1954 )による提案(ロンドンの分散力)により明確になり、すべての原子や分子の間に働く弱い力の根源と見なされた。 2分子間に働くロンドン力は弱いが、それらが集まると、有機物の結晶、ローソク、さらに生体組織まで、柔軟性をもつ集合体や固体を形成する力になる。ロンドンの分散力は短距離で初めて働く力であり1/r7 の関数である(クーロン力は遠方でも働く 1/r2

の関数)。ポテンシャルエネルギーは 1/r6 の関数である( 4.5 式  0: 分子の固有振動数(第 1 イオン化電位))。

60

2

620

02

)4(43

rrh

Ua

a

(4.5)

F. London( ドイツ→イギリス→アメリカ)ハイトラーとともに分子間力の起源を解明、超流動

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● 表 4.2 にハロゲン、リン、硫黄、希ガスの融点・沸点を示す。分子量が大きく、電子雲が広がって分極率が大きい右側の分子ほど分子間相互作用エネルギーが大きく、融点、沸点が高い。F2 Cl2 Br2 I2 P4 白燐 (黄燐 )[猛毒 ]    紫燐

[ 無毒 ]硫黄 S8

融点 /C -223 -101 -7.3 113.7 44.1 589.5 119.0

沸点 /C -187 -34.1 58.8 184.5 280 444.6

He Ne Ar Kr Xe Rn融点 /C -248.6 -189.4 -157.2 -111.9 -71沸点 /C -268.9 -246.0 -185.9 -153.2 -108.1 -62

表 4.2  ハロゲン分子、リン、硫黄の沸点、    希ガスの融点・沸点(すべて無極性分子)

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参考  電場の大きさ● 真空中における 2 つの単位電荷 (–e : e = 1.610–19 C, 距離 3 Å とする ) 間のポテンシャルエネルギーは  7.7×10-19 J であり、この値はCO2 ( 直径 3.24 Å) が接したときの 2 分子のポテンシャルエネルギー (1.410-20 J) より大きい。水中の 2 電子間では 10-20 J であり、帯電していない分子間のポテンシャルエネルギーは水中の電子間のポテンシャルエネルギーにほぼ等しい。● つまり、これらの電場の大きさは約 108 Vcm1 つまり E ~ 1 VÅ1 で非常に大きい電場である。ちなみに、水素原子中のボーア (r = 0.529 Å) の第 1 軌道の電子には 60 VÅ1 の電場がかかっており(図 2.6 )、分散力を誘起する瞬間的電場は原子内部の電場の数十分の一である。

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1923 年 ロンドンの提案●無極性分子の平均電場は 0 であるが、ロンドンは、正電荷から負電荷に向かう力線をもつ電場が瞬間的に存在するはずで、電荷 q の 電場は q/r2 であるなら、双極子能率p ( qr の次元)の双極子の電場は qr/r3 = p/r3 であろう( r: 双極子からの距離)と推論した。● すると電場中の他の分子の分極ポテンシャルは Ep = –ap 2 /2r6 となり、ロンドン力の引力は 1/r7 の関数となる。分散効果は 4.5式 ( 分極率の 2 乗、距離の 6 乗に比例 ) で示された。● 次に、双極子モーメントをもつ分子による効果を考察する。

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4-2) 18 族元素:希ガス元素 (rare gas, noble gas, inert gas)  原子間相互作用はファンデルワールス力 , He, Ne, Kr, Xe, Rn ヘリウム  He(helium)   H2 の次に軽い気体・・気球( 1929 年就航  H2 を利用 ツッペリン号)・・ヒンデンブルグ号 1937年の爆発(水素爆発)・・ He (燃えない、爆発しない)気球

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● 沸点 4 K,   -269  ℃、液体 He● 放射性元素の a 崩壊で生成・・米国、中国(回収していない)   0.0005% 戦略物質の一つ カンザス州、オクラホマ州、テキサス州西部の地域のガス田● 超伝導体の冷却材( MRI, リニアモーターカー)、深海へ潜る際の呼吸ガス(ドナルドダック現象、ヘリウムと酸素の混合ガスであるヘリオックス、ヘリウム、酸素、窒素を混合したトライミックス)● 太陽の核融合  H2→He

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● 液体空気の分溜  Ne(0.002%), Ar(0.9%)●Ne  放電で赤く発光・・ネオンサイン●Ar  化学的不活性 ボンベに貯蔵し化学実験に利用不燃性で蛍光灯、白熱灯に封入アーク溶接(電気溶接:原子スケールでの溶接)の雰囲気ガス

ネオン( Ne, neon), アルゴン( Ar, argone)

クリプトン( Kr, krypton) :  F-Kr-F, 水、キノンと抱摂化合物キセノン( Xe, xenon): キセノンランプ、麻酔 ラドン( Rn, radon) : 放射性、放射能泉( Rn→Po)

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4-3) 1 7族元素:ハロゲン元素(halogen)  分子間相互作用はファンデルワールス力F, Cl, Br, I, At非金属:フッ素、塩素、臭素、ヨウ素非金属と金属の中間か?・・・アスタチン ( 不明元素)● フッ素( F2, F, fluorine ) 淡黄緑色の気体、反応性極めて高い、猛毒、電気陰性度最大の元素フッ化水素酸HF :腐食性強い、 ガラスのエッチングフロン:炭素との化合物、沸点が高くエアコン冷媒      ・・・・オゾン層の破壊(オゾンホール)テフロン:フッ素樹脂 耐熱性、耐薬品性、摩擦係数低い

          

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●塩素( Cl2, Cl, chlorine ) 黄緑色の気体、反応性極めて高い、猛毒、不快臭、殺菌(プール、浄水場)、漂白作用(さらし粉 Ca(ClO)2→ CaCl(ClO)2•H2O )    Cl2 ガスを用いずに、次亜塩素酸ナトリウムNaClO を使う(次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。強アルカリ性である。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる)   2NaOH + Cl2 → NaCl + NaClO + H2O特異な臭気(いわゆるプールの臭いや漂白剤の臭いと言われる臭い)を有し、酸化作用、漂白作用、殺菌作用がある。

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● 家庭用の製品の「混ぜるな危険」などの注意書きにもあるように、漂白剤や殺菌剤といった次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸などの強酸性物質(トイレ用の洗剤など)と混合すると、黄緑色の有毒な塩素ガスが発生する。浴室で洗剤をまぜたことによる死者も出ているので取り扱いには注意が必要である。     NaClO + 2HCl → NaCl + H2O + Cl2          ● 有機塩素化合物  DDT, BHC, PCB, ダイオキシン  ・・・人体に有害● ポリ塩化ビニル(塩ビ)                

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●臭素( Br2, Br, bromine ) 赤褐色、重い液体(全元素中 Hg と Br2 のみ液体)・・・取扱に注意(ドラフト使用) ピペットから落ちる・・蒸発しやすい・・赤色気体・・吸引しないこと、猛毒、刺激臭、性欲減、皮膚に臭素が触れると腐食を引き起こす臭化銀 (AgBr)  銀板写真の原料●ヨウ素( I2, I, iodine )黒紫色固体、高い昇華性、毒物AgI: 人工雨、でんぷんの検出:ヨウ素でんぷん反応、●消毒薬:ヨウ素のアルコール溶液がヨドチンキ、ヨウ素とヨウ化カリウムのグリセリン溶液がルゴール液

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● ヨウ素は体内で甲状腺ホルモンを合成する。人体に摂取、吸収され、ヨウ素は血液中から甲状腺に集まり、蓄積される。●チェルノブイリ原子力発電所の事故では、核分裂生成物の 131I ( 放射性同位体 ) が多量に放出されたが、これが甲状腺に蓄積したため、住民に甲状腺ガンが多発した。● 放射能汚染が起きた場合、放射性でないヨウ素の大量摂取により、あらかじめ甲状腺をヨウ素で飽和させる防護策が必要である。●そのため、日本は国民保護法に基づく国民の保護に関する基本指針により、核攻撃等の武力攻撃が発生した場合に武力攻撃事態等対策本部長又は都道府県知事が、安定ヨウ素剤を服用する時期を指示することになっている。

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訂正    さらし粉  CaCl(ClO)•H2O●塩素( Cl2, Cl, chlorine ) 黄緑色の気体、反応性極めて高い、猛毒、不快臭、殺菌(プール、浄水場)、漂白作用(さらし粉 Ca(ClO)2→ CaCl(ClO)•H2O )    Ca(ClO)2 は溶液中での状態 またはさらし粉から   CaCl2 を除いた高度さらし粉の主成分Cl2 ガスを用いずに、次亜塩素酸ナトリウムNaClO を使う(次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。強アルカリ性である。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる)   2NaOH + Cl2 → NaCl + NaClO + H2O特異な臭気(いわゆるプールの臭いや漂白剤の臭いと言われる臭い)を有し、酸化作用、漂白作用、殺菌作用がある。

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4.1. 2 )  双極子がつくる電場 図 4.5 の双極子モーメント p (= ed) が点O につくる 静電ポテンシャルは以下のようになる。

e

- e

r’d

O

図 4.5 双 極 子 ed が 作 る静電ポテンシャル

r

)1'

1(4

)(0 rr

erV

222 sin)cos(

1'

1

ddrr

)cos1(1)cos21(1)cos2( 2/12

22/122

rd

rrdrd

rdrdr

d<<r より、

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20

20 4

cos4

cos)(r

pr

edrV

したがって、 O点での電場の強さ E   [ ( r 成分) +(y 成分)の二乗平均 ]  

30

30

4sin1)(

4cos2

rpV

ryVrddyy

rp

rVr

 方向)の成分これに垂直方向(

方向の成分

従って、 O点に誘起される電場は 4.8 式である。

30

2/122/12

30

23

0 4)cos31(})

4sin()

4cos2{(

rp

rp

rpE

(4.8)

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4.1. 3 ) 誘起効果双極子 ed から距離 x 離れた位置O にある誘起双極子を考える ( 図 4.6)

点O での電場 E に存在する分子に生じる誘起双極子モーメントは pi = ex = aE で、モーメント pi を生じるに必要な仕事は

生じた双極子モーメントのもつポテンシャルエネルギーは– piE = – E2 で、それらの和に 4.8 式を代入する。全エネルギー:

edx

21O

x x

ExedxxeeEdx0 0

2222

21

2a

aa

)cos31()4(2

}4

)cos31({21

21 2

620

22

30

2/122

a

aa

rp

rpE

図 4.6  双極子 ed が作る誘起双極子

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分子の向きが無秩序であると  < cos2 > = 1/3              (4.9)

なので、 となり、同種 2 分子間の相互作用エネルギーは 4.10 式で表される ( 分極率の 1 乗、双極子モーメントの 2 乗、距離の 6 乗に比例 ) 。                                              (4.10)

620

2

21 )4( rpU

a

6

2

620

2

)4(2

rp

rpU a

a

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4.1. 4 ) 配向効果 双極子モーメントが熱的にゆらいでいるときの分極率は ,   p2/3kBT となるので、 4.10 式に代入すると、 1対の双極子同士の相互作用エネルギーは 4.11 式 ( 双極子モーメントの 4 乗、温度の 1 乗、距離の 6 乗に比例 ) となる。                (4.11) 

6

4

6B

20

4

)4(32

Trp

TrkpU

4.1.5 ) ファンデルワールス相互作用ファンデルワールス力による相互作用エネルギーは、

4.5 式の分散効果+ 4.10 式の誘起効果+ 4.11 式の配向効果 ( この項のみが温度依存を示す ) の加算で示される。表 4.4 で、 2 分子間ポテンシャルを比較し(20C) その特徴をまとめる。、

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分子 p/1030 C m a/1040 Kg1 S4 A2 h0/ eV 配向効果 誘 起 効果

分 散 効果

He 0 0.22 24.5 0 0 1.2Xe 0 4.45 11.5 0 0 221CO 0.40 2.21 14.3 0.0034 0.057 67.8HCl 3.44 2.93 13.7 18.6 5.60 114HBr 2.60 3.98 13.3 6.1 4.34 204HI 1.27 6.01 12 0.35 1.57 420NH3 5.0 2.46 16 83 10 94H2O 6.14 1.65 18 189 10.0 48

表 4.4   2 分子間ポテンシャルエネルギー ( - Ur6 J m6/10-79)*)

* 単位) p について:  1D( デバイ ) = 1018 esu cm = 3.361030 C( クーロン ) m; a について: Kg1 S4 A2 = C m/ V m1 を40=1.1131010 m3 Kg1 S4 A2 で割ると、単位は m3

1) NH3 と H2O 以外は、分散効果が相互作用エネルギーの大部分を占めている。 2) 永久双極子モーメントをもつハロゲン化水素において、ヨウ素のように分極率の大きなイオンを含むHIでの分散効果は (配向+誘起 ) 効果の 200倍程度、臭素の場合は 20倍程である。 HCl でも、 (配向+誘起 ) 効果より分散効果のほうが5倍程度大きい。 3) NH3 においてもまだ分散効果の方が配向効果より少し大きい。 4) H2O 分子での配向効果は分散効果の 4倍程度である。このように、瞬間的電場によって引き起こされる引力(分散効果)は、分子性化合物の凝集に大きな寄与をしている。

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4. 4 ) 結晶中での分子の充填六方最密構造と立方最密構造●同じ大きさの球(パチンコ玉を考えるとよい)を箱に詰めることをする。● 第 1層に隙間なく詰めた状態は、 1個の玉の周りに 6個が配位した六方最密平面格子となる。その格子点を A とする。隙間に B と C の 2種類がある ( 図 4.7) 。●2層目の 1個のパチンコ玉が B点を占めたとすると、他のすべての玉も位置 B を占めることにより 2層目の六方最密平面格子( B層とする)ができる。もし、 2層目に置く最初の1個が C点なら、 C点のみを占めた六方最密平面格子( C層とする)ができる。

A

B

C

A層

B層

六方最密平面格子

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この段階で下層からの積層様式は AB または AC の 2種類が可能である。 AB の場合、 3層目は A または C の格子点を占める六方最密平面格子が可能となる。このように箱に満杯になるまでパチンコ玉を詰めた場合、どのような詰め方でも個数は同じであるが、その積層方向の周期性は多彩である ( 図 4.7下図 ) 。

そのうち、●最も単純な ABABAB•• の 2層周期の積層様式が六方最密構造 (hexagonal close packing, hcp)●ABCABC••• の 3周期が立方最密構造 (cubic close packing, ccp)ともに , 1個の玉は同じ層に属する6個、上下の層に属すそれぞれ 3個の玉に接しているので、配位数 (coordination number) は 12 である。配位数 12 の構造はイオン結晶では見られず、単体原子または分子が密に詰まり安定化する系で見られる。

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図 4.7  六方最密平面格子の積層様式と六方最密構造 (   )と立方最密構造(  )。 ABABA(   ), ABCAB( ) の他にABABC, ABACA, ABACB など 16種の充填様式を示す。

A    

B C    

A C A B    

B C A B B C A C   

A C A B B C A C A C A B B C A B  

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●立方最密構造は面心立方格子 (face centered cubic, fcc) (図 4.8左)に相当し、不活性ガス( Ne, Ar, Kr, Xe )、貴金属類( Au, Ag, Cu, Pt )、 C60 (図 4.8右)などがとる。● 球の半径をrとすると A層中の A1 の球は B層に属する球のうち面心に位置する 3個の球と接しているので、球の半径は 4r= 2a   (a は格子定数 ) を満たす。単位格子中に 4個の球があるので、球の占有率 (充填率 ) は (4/3)(2a/4)34/a3 = 2/6 = 0.741 である。つまり、箱いっぱいのパチンコ玉を熔かすと、箱の約 3/4 弱を金属が占めることになる。

A

A

BC

a

図 4.8 立方最密格子(面心立方格子)と C60 単結晶

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4.5 ) ファンデルワールス半径● 分子性結晶の結晶構造解析より原子のファンデルワールス半径が与えられる。●多くの論文や教科書においてポーリングのファンデルワールス半径が使用されてきた。しかしポーリングの値は、有意な分子間原子接触を過大に見積もることが明らかで、ポーリングの値よりも一般に少し小さなファンデルワールス半径を用いる(ボンデイ (A. Bondi) 、表4.6 )。●表中の Li, Na, K, Ga, In, Sn の値は非結合状態の金属での値で、これに相当するのは他に、 Tl: 1.96, Pb: 2.02, Ni: 1.63, Cu: 1.4, Zn: 1.39, Pd: 1.63, Ag: 1.72, Cd: 1.58, Pt: 1.75, Au: 1.66, Hg: 1.55, U: 1.86 Å がある。また、パラフィン中の H 、パラフィン中の C や CH3 に、各々、 1.35, 1.90, 2.0 Å がある。H 1.20

1.20He 1.50 1.40

Li  ― 1.82

C ― 1.70

N 1.5 1.55

O 1.40 1.52

F 1.35 1.47

Ne 1.60 1.54

Na  ― 2.27

Mg  ―   1.73

Si ― 2.10

P 1.9 1.80

S 1.85 1.80

Cl 1.80 1.75

Ar 1.92 1.88

K  ― 2.75

Ga  ― 1.87

Ge  ― 2.1

As 2.0 1.85

Se 2.00 1.90

Br 1.95 1.85

Kr 1.97 2.02

In ― 1.93

Sn ― 2.17

Sb 2.2 Te 2.2 2.06

I 2.15 1.98

Xe 2.17 2.16

表 4.6ファンデルワールス半径 [2] ( Å, 上はポーリング、下はボンデイ)

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4.6 ) ドライアイス( dry ice)● ドライアイスは常温常圧環境下では液体とならず、直接気体に昇華する。比重 : 1.56 、昇華温度 : -79℃( at 1 気圧)冷却能力は同容積の氷の約 3.3倍となる。◎製造方法● 気体の二酸化炭素(炭酸ガス)を、約 130 気圧前後に加圧して液化させ、その液体の二酸化炭素を急速に大気中に放出。その際に気化熱が奪われることにより自身の温度が凝固点を下回ることを利用して粉末状の固体にした上で、それを成形して製品にする。● この方法で製造した場合、ドライアイスは細かい粉体(パウダースノー(粉雪)状態)で圧縮しても固めることができない。したがって、市販されるブロック状のドライアイスは固めるために数パーセントの水が添加してある。

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水にドライアイス→白煙(水の微少固体)

寒剤有機溶媒とドライアイスとの混合物は寒剤とすることができる。たとえば、エチルアルコールとドライアイスとでは -72℃ 、エチルエーテルとドライアイスとでは-77℃ の低温が得られる液体窒素  77 K, −196 ℃

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4章の② 水素結合、酸・塩基 (Hydrogen-bond, Acid, Base)

復習と目的● 水素結合および擬似的水素結合を紹介した後で、水素結合の延長であるプロトンの移動(ブレンステッドの酸 塩基• )について述べる。酸・塩基の相互作用は化学における大きな分野である。平衡定数は化学反応の平衡状態を物質の存在比で表したもの。通例 K で表される。   aA + bB + cC + dD ···· ⇌ aAB + bCD + gEF····· という反応では、

で平衡定数が算出できる。平衡定数はギブス自由エネルギー Gとの間で次の式を満たす (R は気体定数 J/K mol) を示す。      DG RT lnK● プロトン移動以外の酸・塩基の概念 ( ルイスの酸・塩基、硬い柔らかい酸・塩基 ) を紹介する。ルイスの酸・塩基は有機化学、無機錯塩化学においてきわめて有用な概念である。関連して配位結合を説明する。

・・・・・・dc DC

EFCDABK][][[B][A]][][][

ba

ba

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4 .8) 水素結合   4 .8.1) 水素● 水素原子は、その1 s 軌道の電子の数により原子(ファンデルワールス、イオン)半径が、 H + (proton) で 10-5 Å 、 H• (hydrogen) で 1.2 Å 、H - (hydride) で 1.54 ~ 2.08 Å と、大きく変化する。● ヒドリド( H -)のイオン半径は、 Br - 1.82 Å )、 Se2 - (1.84 Å) 、 Te2 - (2.07 Å) に匹敵するほど大きい。これは、 1s 軌道に入った 2個の電子間のクーロン反発エネルギーによるもので、 1つのサイトを 2個の電子が占めることによる電子相関( electron correlation, on-site Coulomb 反発)の効果の最も顕著なものである。 2個の電子間のクーロン反発が電子雲を広げている。

以下に水素原子、分子の特徴を記す。水素原子H• + e H - + 16.4 kcal 電子親和力  EA = 16.4 kcal mol-1 = 0.75 eV mol-1

H• + 312 kcal H+ + e イオン化エネルギー  Ip = 312 kcal mol-1 = 13.6 eV mol-1

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4.8.2 ) 水素結合( hydrogen bond )の性質図 4.1  有機カルボン酸の水素結合● 水素結合の形成が可能ならば、分子の詰め込みは悪くとも、水素結合エネルギーで利得のある、異方性をもった結晶構造を取る。●OH基や NH2基をもつ分子は多くの水素結合が形成されるように結晶化し易く、方向性を持つことから多形が見られる。また強い水素結合を含む結晶は融点の上昇、溶解性や揮発性の減少などが見られる。● 水素結合による安定化の原因は、静電力、電荷移動力、分散力などの総合による。●蟻酸 (formic acid) や酢酸 (acetic acid) の 2量体、蓚酸 (oxalic acid) ( , b型)、水中およびベンゼンに溶解した安息香酸 (benzoic acid) 、分子内水素結合を示すサリチル酸(salicilic acid) を図 4.1 に示す。●表 4.1 に各種水素結合のエネルギーを示す。これらは 10 ~30 kJ mol-1 ( 水で 33 kJ mol-1) で、ファンデルワールスエネルギーと大差はない。

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図 4.1  有機カルボン酸の水素結合 サリチル酸をそのまま飲むと胃穿孔を起こし腹膜炎の原因となる。酸性を弱め胃を通過できるようにしたものがアセチルサリチル酸(アスピリン)である。

CO

O HC

O

OHH3C C

O

O HC

O

OH

acetic acid 酢酸

formic acid 蟻酸

H

H

CH3

CO

O

H

H

H

H

HO

CO

O

HC

O

O

H

benzoic acid 安息香酸

水中 ベンゼン中O

O

C O

OH

H

salicilic acidサリチル酸

C COO

O OH H

C COO

O OH H

C COO

O OH H

C COO

O OH HCC

O O

OO HH

oxalic acid 蓚酸

a-型

b-型

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表 4.1  幾つかの水素結合の結合エネルギー( kJ mol-

1 )

CC

N

N

OH

OH

H3C

H3Cdimethylglyoximeジメチルグリオキシム

水素結合

物質 昇華熱 フ ァ ン デ ル ワ ー ル スエネルギー

水 素 結 合 エ ネ ルギー

OH ・・ O メタノール 41.8 17.1 24.7シクロヘキサノール 60.6 36.4 24.2フェノール 67.7 48.9 18.8

NH ・・ O アセトアミド 56.8 31.8 12.5- カプロラクタム 83.2 53.9 29.3

OH ・・ N ジメチルグリオキシム 97.0 53.1 22.0

HN O

-caprolactamカプロラクタム

カプロラクタムはナイロン 6 の原料。その世界需要の約6割が繊維用途、約 4割が樹脂用途となる。繊維用途はほぼ同率で衣料用繊維、タイヤコード、カーペット用となる。樹脂用途は約 3/4 がエンジニアリングプラスチック用、 1/4 がフィルム用となる。

CH3CONH2 アセトアミド ( acetoamide)

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4.9 ) プロトン移動と酸・塩基 [2]4.9. 1) ブレンシュテッド - ローリーの酸・塩基  酸は H+ を供与する分子( HAA -+ H+ )、塩基は H+ を受容する分子( B+ H + BH+ )と定義された( 1923 年)。水中では、H2O が塩基または酸として働く。  溶液中   HA   +   B    ⇌ A - +  BH +      

(4.2)     酸    HA  +  H2O ⇌   H3O + +  A -     

( 4.3 )

    より ,           pKa =- logKa               (4.4) 塩基   B + H2O HB⇌ + + OH - (4.5) より ,     pKb= - logKb                   (4.6)  共役酸・塩基で    pKa + pKb = 14.0    (4.7)である。

O][HA][H]A][OH[

'2

3a

KHA][

]][AO[HO][H' 32aa

KK

O][B][H]][OHHB['

2b

K ]B[]][OHBH[]OH[' 2bb

KK

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4 .9 .2) 内在的酸性度●上記酸性度は水溶液中で溶媒和された状態の値である。気相での絶対的な値は、反応 AH ⇌ A - +H+ の反応熱 H0 で示され、 H0( 内在的酸性度 , intrinsic acidity) は以下の方法で求められる。●AH A⇌ - +H+ を 3 つの反応に分解し、各エネルギーの総和は 4.8 式。             1)   AH A• + H• D(AH): 結合解離エネルギー2) H• H+ + e - Ip(H•) :水素原子のイオン化エネルギー (Ionization energy)3) A• + e - A - - EA(A•) : EA(A•) は A• の電子親和力 (Electron affinity) DH0 = D(AH) + Ip(H•) - EA(A•) (6.8)●DH0 や [D(AH) - EA(A•)] が小さいほど強い酸

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● しかし、 D(AH) や EA(A•) の実測は困難で、解決策として既知の酸( A1H, 具体的には HCl) と比較し、 H0 や [D(AH) - EA(A•)] を求める。 A1H + A2

- ⇌ A1- + A2H の反応熱は

DH120 = DH0(A1H) - H0(A2H) = D(A1H) -

D(A2H) - EA(A1•) + EA(A2

•)   (4.9)

で、 HCl の D(HCl) = 432 kJ mol1, EA(Cl•) = 348 kJ mol1, DH0(HCl) = 1396 kJ mol1 を用い、●DH12

0 を実測して、 [D(AH)-EA(A•)] や H0 を求める。結果を表 4.2 に示す。

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表 4.2  内在的酸性度酸 D(AH)-EA(A•) DH0 酸 D(AH)-EA(A•) DH0

NH3 376 1690 C6H5OH 151 1464H2O 318 1632 CH3COOH 145 1458CH3CN 251 1563 C6H5COOH 103 1415HF 240 1552 HCl 84 1396CH3COCH3 235 1547 CH2(CN)2 71 1406ピロール 192 1503 HBr 42 1351フルオレン 164 1478 CF3CO2H 38 1350H2S 161 1473 HI 3 1315

NH

ピロール(pyrrole)

CH2

フ ル オ レン(fluorene)

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1)  ハロゲン化水素の気相での酸性度は HI>HBr>HCl>HF で、ハロゲンの電気引性度の順 I< Br < Cl < F の逆である。 X -のH+ をひきつけるクーロン引力の順は F - > Cl - > Br - > I -であり、 H+ はその逆の順で HX から離れやすいことになる。2) アセトンは HF より少し強い酸である。また、表中の有機酸の強さは、 CF3CO2H > C6H5CO2H > CH3CO2H > C6H5OH > ピロール > アセトン > アセトニトリルの順である。3) 注目すべきことに、 CH2(CN)2 (malononitrile 、マロノニトリル ) は HCl と同程度の強い酸である。マロノニトリルと NaHの反応( 4.10式)で生じる陰イオンにおいて、マイナス電荷が2 つのシアノ基にまで非局在し、陰イオンが安定化することに起因する。一対の非結合電子対 (: で示す ) をもつ 3 配位の炭素陰イオンをカルバニオン(カルボアニオン、 carbanion) という。                                                                           (4.10)

HC

H

CN

CNCH

CN

CN

+ H2NaH

表 4.2  内在的酸性度の特徴

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4.10) ルイスの酸 -塩基  ● ブレンシュテッドの酸・塩基の提案と同じ 1923 年に、八偶説(オクテット則)を提唱したルイスが提案●酸は共有結合を形成するため他の物質から一対の電子対を奪い(電子対受容体、ルイス酸)、塩基(電子対供与体、ルイス塩基)は電子対を与え、ともに希ガス型電子配置をとる。●H+ を含まないものまで酸・塩基の概念を拡張。有機合成化学におけるルイスの酸・塩基触媒として発展。●BF3 + : NR3 ⇌   F3B : NR3 を八偶説に沿って図示(図4.5 )。

: NR3

RR N R

F3B : NR3

F

FFB

RRN R

BF3

FF

F

B

図 4.5 :最外殻電子、 B3個、 N5個、 F7個、 R1個、   :正常共有原子価結合、   :配位共有原子価結合 G. N. Lewis, W. H. Nernst, A. Langmuir の業績、人柄、 相克をWikipedia で調べると、幅広く、先端的な研究を行った Lewis がなぜノーベル賞を取れなかったのか、興味ある事例が記されている。

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F

BF3

分子構造からは sp2

混成

F

B F

共有結合

B の電子(sp3電子 3電子) F の電子( 2s22p5電子 7電子)

F の周りには8電子・・満杯B の周りには赤3個+青3個・・・6電子・・2個分余裕あり

: NR3

RR N R

BF3 ( F 上の緑の線が関与していない電子を除く)

F

FF

B

F3B : NR3

B

RRN

配位結合

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4.11  配位結合( Coordinate bond)● 結合を形成する 2 つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合である。電子対供与体(ルイス塩基)となる原子から電子対受容体(ルイス酸)となる原子へと、電子対が供給されてできる化学結合であるから、ルイス酸とルイス塩基との結合でもある。● したがって、プロトン化で生成するオキソニウムイオン( 3 つの化学結合をもった酸素のカチオンの総称(最も単純なオキソニウムイオンはヒドロニウムイオン H3O+ 。より正確にはオニウムイオン、図 4.6 )は配位結合により形成される。

O x x2Rx R' OR'

R R

図 4.6 オキソニウム  R2R’O+

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● 酸素の 6 個の最外殻電子(赤丸)に 2 個の RX ( X

は不対電子)が共有結合 (covalent bond) で付き、酸素周りに 8 個の最外殻電子が存在する(飽和状態)。ここに、 R’ (電子対受容体)が酸素の電子対に配位し、結合を形成する。

図 4.7 ヒドロニウム H3O +

x xOH H H x xOH HH

O H HH O HHH

非共有 ( 非結合、孤立 ) 電子対 (lone pair)

H+

H2O

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● オクテット則を満たさない第 13 族元素 (B, Al) の共有結合化合物は、空の軌道(空軌道 ,   vacant orbital,  非占有軌道 unoccupied orbital )を持つので強いルイス酸で、配位結合により錯体を形成する。●遷移金属元素の多くは共有結合に利用される価電子の他に空のd軌道などを持ち(空軌道)、多くの種類の金属錯体が配位結合により形成される。●非共有電子対が空軌道に入り込む非共有電子対

NH3(sp3)

x xBF FF

xxx

x x

xx

xx

xx

x x

x xx x

x x

空軌道

酸塩基

NH3BF3

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● アンモニウムイオンはプロトン化における配位結合の良い例。● アンモニアの窒素は 5 つの価電子(赤丸)をもち、 3 つの水素原子と共有結合を形成して閉殻状態 (8 電子 ) になる。● アンモニア窒素には水素との共有結合に参加していない 2 つの電子( 1 つの非共有電子対)が存在し、電子対を供与することが可能なルイス塩基である。

x xNH

H H H x xNH

H HH

NH

H HH NH

HHH

x x

図 4.8 アンモニウム NH4

●H+ がルイス塩基と配位結合すると、窒素の原子が+電荷を持ったオニウムイオン(アンモニウムイオン)となる。● 配位結合と共有結合も同じく分子軌道により形成されるので本質的には違いは無いが、その分子軌道の構造やそのエネルギー準位により結合自身の性質が決定される。 NH4+ の 4本の結合に違いは無い。

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4.12) ピアソンの酸 -塩基 : Hard and Soft Acid-Base(HSAB)

●ピアソンは、 1963 年に硬さと軟らかさで酸・塩基を分類した。この硬さ・軟らかさは電子雲の性質と考えればよい。最外殻の電子軌道が外電場に対して分極し難い物質が硬い酸・塩基であり、大きく分極する物質が軟らかな酸・塩基である。

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● 硬いおよび軟らかい酸・塩基は、以下のようにまとめられる硬い塩基:分極し難い、 EA が大きい    酸:体積小さい、高い正電荷をもつ、 Ip

が小さい

イオン性結晶を与えやすい共有結合結晶を与えやすい

軟らかい塩基:分極し易い、 EA が小さい       酸:体積大きい、低い正電荷、 Ipが大きい

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硬い酸:硬い塩基と安定なイオン性化合物を作る酸 : H+, Li+, Na+, K+, Be2+, Mg2+, Ca2+, Sr2+, Mn2+, Al3+, N3+, As3+, Cr3+, Co3+, Fe3+, Si4+, Sn4+, BF3, AlCl3, CO2

中間の酸: Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Zn2+, Pb2+, Sn2+, Sb3+, Bi3+, Rh3+, Ir3+, B(CH3)3, SO2, NO+, Ru2+, Os2+, R3C+, C6H5

+, GaH3

軟らかい酸:軟らかい塩基と共役結合性化合物・分子性化合物を形成する酸 : Ag+, Cu+, Au+,Tl+,Hg+,Pd2+, Cd2+,Pt2+, Hg2+,Pt4+,Tl3+,RS+, I+, HO+, I2, Br2, ICN, 有機アクセプター硬い塩基(分極し難い): H2O, OH - ,F - ,SO4

2 - ,PO43 - ,CH3CO2- ,RO - ,Cl - ,ClO4

- , NO3- , ROH, NH3, RNH2,

中間の塩基: C6H5NH2, C5H5N, N3- , Br - , NO2

- , SO32 - , N2

軟らかい塩基(分極し易い): R2S, RSH, RS - , I - , SCN - , R3P, CN - , RCN, CO, C2H4, C6H6, H - , R - , 有機ドナー

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硬い酸

軟らかい酸中間の酸

元素に関しては図 4.8 を参照のこと。図 4.8  各元素の酸としての硬さ、軟らかさ

H

Li Be B C N O

Na Mg Al Si P S Cl

K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br

Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I

Cs Ba La Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At

Fr Ra Ac Th Pa U

● この概念は HSAB則として、無機化合物や無機錯塩の結合(金属:ルイス酸、配位子:ルイス塩基)、構造、反応、物性の解釈に大いに貢献した。

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●SCN基は [S (軟らかい部分) CN (硬い部分) ] より成り、硬い酸である金属とは N 原子で配位し、イソチオシアナート錯体を与える;例、 MnII(NCS)42 - ,

MnII(NCS)64 - , FeII(NCS)4

2 - , FeIII(NCS)63 - [ ただし、 Mn,  

Fe は中間の酸 ] 。また、軟らかい酸である金属イオンとは S 原子で配位しチオシアナート錯体を与える;例、 PtII(SCN)42 - , PtIV(SCN)6

2 - , AuIII(SCN)4- , HgII(SCN)4

2 -。●Cu+ は S および N に配位できる。●Co3+ は中間の酸に分類され、 SCN -が2つの Co3+ を架橋した塩がある (NH3)5CoⅢ - NCS - CoⅢ(CN)5, (NH3)5CoⅢ - SCN - CoⅢ(CN)5]

●AgSCN は共有結合性で、 ( - Ag - NCS - ) のジグザグ鎖からなる。

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4.13) マリケンのドナー、アクセプター●マリケン( R. S. Mulliken )は、 2種の分子、原子、イオン間での電子の授受を考え、電子を供与する化学種を電子供与体( electron donor, D )、電子を受容する化学種を電子受容体 (electron acceptor, A) とした。● 生成する錯体(電荷移動錯体)は、 Dd+ ・ Ad -と記され、は電荷移動量である。電荷移動量は 0 以上の値で、整数である必要は無い。またその上限は、 D, A の組み合わせにより決まる。● 電子供与体のカリウム K と電子受容体の C60 では K1C60 からK6C60 まで可能であり( C60 が- 12価の Li12C60 もある)、 Kと黒鉛の間の錯体では、炭素 8個当りに K+ が 1個入るまで可能である。          D  +  A     ⇌ Dd+ ・ Ad - (6.13)    電気の流れる有機物、超伝導体   ●D と A 間でのマリケンの電荷移動の概念はルイスの酸 -塩基の概念をさらに拡張したもので、 D が塩基に、 A が酸に対応する。ドナー、アクセプターとしての強さは、各々イオン化ポテンシャル、電子親和力で表される。

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4.14) ハメットの σ● ハメットの σ は、ブレンシュテッドの酸・塩基の強さに対する置換基効果の定量的取り扱いから得られた置換基の電子吸引や電子供与の能力を示すパラメータである。● 有機反応や電子物性にまで適用できるとともに、分子設計指針を考えるパラメータの 1 つとして重要なものである。●基準とする酸は安息香酸( HA0) で、置換基 X をもつ安息香酸を HA とする。その間での酸・塩基平衡は HA + A0

- ⇌ A - + HA0  で、 KHA-Ao = (6.14)

KHA-A0 は酸HA0 を基準とした酸HA の強さを示す。 DG = RTlnKHA-A0 = DH TDS          (6.15)生成エンタルピー (DH) は結合に関する因子の影響を主に反映、また、生成エントロピー (DS) は溶媒の種類、反応粒子数、オルト、メタ、パラ置換体などの立体因子の影響を主に反映する。

CO2H CO2H

X

HA0 HA 00

0

0

0

]H][A[][HA

]HA[A][H][

]HA][A[][A][HA

KK

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したがって、1 )溶媒を一定とし、立体因子も一定なら  S ~ 0 , また     2 ) TDS と H が TDS = p' + q'DH の関係(芳香族の酸・塩基置換系で成立)なら G = p + qDH  であり、 H+ と塩基( A0

- ,   A -)の結合に関する因子( H項 ) のみを考慮し、 G の差を KHA-A0 に結びつけることができる、すると      log KHA-Ao = log K - log K0 = aDH =        (6.16)つまり、 log KHA-A0 は HA における H+ と A の結合の切断と、 H+ と A0 との結合の生成エンタルピー変化に比例する値で、置換基の効果を示す。これをハメットの(表 6.9 )という。●置換基がオルト位の場合、置換基のサイズが大きいと原系と遷移状態での構造が大きく変わることがあり、オルト位置換体ではハメット関係は成立しがたい(オルト効果)。

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● < 0  水素に比べベンゼン核へ電子密度を増加させる置換基(電子供与基)で、塩基性↑  酸性↓   HOMO↑ ( Ip↓ )~ドナー性↑● > 0 水素に比べベンゼン核の電子を引きつける置換基(電子吸引基)で、 塩基性↓ 酸性↑  LUMO↓ ( EA↑ )~アクセプター性↑ ここで、矢印の↑、↓は各々増加、減少を示す。表 6.9  ハメットの値

CH3 NO2

CO2H CO2H

< 0 > 0

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置換基 meta para 置換基 meta para

O - -0.71 -0.52 CONH2 0.281)

NHCH3 -0.30 -0.84 OCOCH3 0.39 0.31N(CH3)2 -0.211,-0.21) -0.600,-0.831) SCOCH3 0.39 0.44NH2 -0.161 -0.660 CHO 0.36 0.22(0.99)NHNH2 -0.02 -0.55 CO2H 0.37,0.351) 0.45CH3 -0.069,-0.062) -0.170,-0.142) COCH3 0.376 0.502C2H5 -0.07 -0.151 CO2C2H5 0.37 0.45CH(CH3)2 - -0.151 F 0.337 0.062,0.152)

C(CH3)3 -0.10 -0.197 Cl 0.373 0.227Si(CH3)3 -0.04 -0.07 Br 0.391 0.232C6H5 0.06 -0.01 I 0.352 0.18,0.271)

OH 0.121 -0.370 SO2NH2 0.46 0.571)

OCH3 0.115,0.102) -0.268 SOCH3 0.52 0.49OC2H5 0.1 -0.24 SO2CH3 0.60 0.728OC6H5 0.252 -0.320 CF3 0.43,0.461) 0.54,0.531)

CO2- -0.1 0.00,-0.071) CN 0.56 0.600(1.00)

H 0.00 0.00 NH3+ 0.63 (0.56)

SO3- 0.05 0.09 IO2 0.70 0.76

SH 0.25 0.15,0.01) NO2 0.710 0.778(1.26)SCH3 0.15 0.00 N(CH3)3

+ 0.881) 0.821)

SeCH3 0.1 0.0 NH2CH3+ 0.96

NHCOCH3 0.210 0.00 N2+ 1.76 1.91

( 内はアニリン誘導体に用いる .

< 0

> 0

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族 1 2 13 14 15 16 17周期2 Li2O BeO B2O3 CO2

CON2O5NO2

3 Na2O MgO Al2O3 SiO2 P4O10 SO3SO2

Cl2O7

4 K2O CaO

酸性酸化物、両性酸化物、塩基性酸化物1.酸性酸化物:水に溶けて酸となる酸化物(赤色部分)   SO2 + H2O→H2SO3 SO3 + H2O→H2SO4 2.塩基性酸化物:水に溶け塩基となる酸化物(青色部分) Na2O + H2O→2NaOH3.両性酸化物:酸とも塩基とも反応する酸化物(黄色部分) Al 2 O3 (酸化アルミニウム、水に不溶)は HCl, NaOH と    反応し AlCl3, NaAlO2 を与える

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名称 化学式酸 1塩基

酸塩酸 : hydrochloric acid

HCl hydrogen chloride(HCl) の水溶液1 硝酸 : nitric acid HNO3 蒸気の吸入、皮膚に付けることは厳禁、

有機物を激しく酸化、猛毒2 硫酸 :sulfuric acid H2SO4 水に混合で激しく発熱、猛毒2 亜硫酸 :sulfurous acid H2SO3 SO2 の水溶液、水和した SO2 として存在、

H2SO3 分子は存在しない2 炭酸 :carbonic acid H2CO3 CO2 の水溶液3 リン酸 : phosphoric

acidH3PO4 P4O10 の加水分解で生じる種々のオキソリ

ン酸の総称をリン酸といい、オルトリン酸が H3PO4

塩基1酸塩基

アンモニア :ammonia NH3 臭い、有毒1 水酸化ナトリウ

ム :sodium hydroxide

NaOH 潮解性、水に溶解すると多量の熱を発生(強アルカリ性、皮膚に付けない)

2 水酸化カルシウム :calcium hydroxide

Ca(OH)2 消石灰、水に難溶、飽和水溶液を石灰水という

NHO

O

OS

HO O

OHOHNO3 H2SO4 H2SO3

S

HO

O

HO

P

OH

OH

O

HO

H3PO4

多塩基酸、多酸塩基

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水素イオン指数( hydrogen ion exponent )     pH = - log10[H+]     ( 1909年の提案)[H+] は水素イオンのモル濃度 (mol/dm3)

●25 , ℃ 中性で  [H+] = [OH-]=10-7 mol/dm3 pH = 7    酸性  pH <7, 塩基性  pH > 7

● 強酸  H+ を出しやすい酸:塩酸  強塩基  OH- を出しやすい塩基:水酸化ナトリウム

pH試験紙

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● 中和反応:酸と塩基の反応で水と塩が生成する  塩の加水分解:塩と水との反応で酸と塩基が生成 酸 塩基 塩 水+ +中和加水分解●生じた塩中に、依然として H+ が存在する塩:  酸性塩: H2CO3 + NaOH →NaHCO3 + H2O●生じた塩中に、依然として OH- が存在する塩:  塩基性塩: Ca(OH)2 + HCl →CaCl(OH) + H2O●塩中に、 OH-, H+ が存在しない塩:正塩●塩の水溶液の酸性・塩基性 中和反応における酸と塩基の内、強い方の性質   NaHCO3 (酸性塩)は?  NaCl( 正塩)は?