第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5w 1hの疑問文 12...

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第4章 病弱 病弱教育においては、児童生徒の疾患の種類や入院・入所施設の実態によって教育課程が異なる ことを考慮し、下表のような視点から本章の資料をまとめた。 *在籍期間について:年度途中に小中学校から転入しておおむね数ヶ月間(1年未満)で転出する場 合を「短期」とした。 なお、「下学年対応の教育課程」は「準ずる教育課程」の資料を、「知的障害を併せ有する場合の教 育課程」は「第5章・第6章 知的障害」の資料も参照されたい。 ◆ 本章の例示資料のポイント 1 準ずる教育課程における教科指導〈筋疾患・長期在籍・集団での指導・高等部〉 学年が上がり、病気が進行するとともに授業への積極的な参加が少なくなる。また、人間関係が 限定され、他者とのコミュニケーションが不足している。 コミュニケーション能力の向上を図る取組が大切である。 2 準ずる教育課程における教科指導〈慢性疾患・短期在籍・集団での指導・中学部〉 病気の種類も在籍期間も異なる生徒の集団での指導では、個々の体調や活動制限、前籍校での学 習状況、生徒同士の人間関係等に対する配慮が必要である。学習指導案の作成にあたっては、前籍 校の学習との関連を図るために、小中学校と同様に評価規準についても記載する。  3 準ずる教育課程における自立活動の指導〈心身症等・長期在籍・集団での指導・中学部〉 虐待等の不適切な環境で育ってきた生徒に対して社会性をはぐくむ指導を行う場合、人間関係や 環境の整備、集団での実施、日常生活への般化等の配慮が重要である。 4 準ずる教育課程における教科指導〈心身症等・短期在籍・個別指導・中学部〉 入院に至る背景や状態に配慮するとともに、1ヶ月程度の短期在籍の生徒に対して安心して過ご せる環境を整えることが大切である。 指導計画等の作成にあたっては、病院、前籍校及び関係機関との連携を図る必要がある。 5 準ずる教育課程における教科指導〈心身症等・短期在籍・個別指導・小学部〉 個別指導では、児童が教師を信頼し安心して学習できる関係性とともに、集団参加の機会を適宜 取り入れた社会性の発達を促せるゆとりも大切である。 また、集中を助ける学習環境や児童の病状の変化に対応した指導計画の工夫が必要である。 6 自立活動を主とする教育課程における指導〈重度重複障害・長期在籍・集団での指導・小学部〉 長期間にわたり入院療養生活を続ける。ベッド上での生活が長く、外界との接触等による刺激がき わめて少ない。諸感覚を活用して刺激を受け止められるように支援し、感情の表出を促すことが大 切である。 ◆ 指導案の例示について ・教育支援プランとの関連については、本文中はアンダーライン、展開部分は●で示した。 ・自立活動の指導と関連する病弱教育の特徴的な視点や支援については、ゴシック体で示した。 教育課程 主な疾患 在籍期間* 授業形態 例示資料 準ずる教育課程 筋疾患 長期 集団 慢性疾患 短期 心身症等 長期 短期 個別 4・5 自立活動を主とする教育課程 重度重複障害 長期 集団 - 69 -

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Page 1: 第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5W 1Hの疑問文 12 ・簡単な英語のあいさつ ・助動詞について ・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

 病弱教育においては、児童生徒の疾患の種類や入院・入所施設の実態によって教育課程が異なることを考慮し、下表のような視点から本章の資料をまとめた。

*在籍期間について:年度途中に小中学校から転入しておおむね数ヶ月間(1年未満)で転出する場合を「短期」とした。

 なお、「下学年対応の教育課程」は「準ずる教育課程」の資料を、「知的障害を併せ有する場合の教育課程」は「第5章・第6章 知的障害」の資料も参照されたい。

 学年が上がり、病気が進行するとともに授業への積極的な参加が少なくなる。また、人間関係が限定され、他者とのコミュニケーションが不足している。 コミュニケーション能力の向上を図る取組が大切である。

 病気の種類も在籍期間も異なる生徒の集団での指導では、個々の体調や活動制限、前籍校での学習状況、生徒同士の人間関係等に対する配慮が必要である。学習指導案の作成にあたっては、前籍校の学習との関連を図るために、小中学校と同様に評価規準についても記載する。 

 虐待等の不適切な環境で育ってきた生徒に対して社会性をはぐくむ指導を行う場合、人間関係や環境の整備、集団での実施、日常生活への般化等の配慮が重要である。

 入院に至る背景や状態に配慮するとともに、1ヶ月程度の短期在籍の生徒に対して安心して過ごせる環境を整えることが大切である。 指導計画等の作成にあたっては、病院、前籍校及び関係機関との連携を図る必要がある。

 個別指導では、児童が教師を信頼し安心して学習できる関係性とともに、集団参加の機会を適宜取り入れた社会性の発達を促せるゆとりも大切である。 また、集中を助ける学習環境や児童の病状の変化に対応した指導計画の工夫が必要である。

長期間にわたり入院療養生活を続ける。ベッド上での生活が長く、外界との接触等による刺激がきわめて少ない。諸感覚を活用して刺激を受け止められるように支援し、感情の表出を促すことが大切である。

・教育支援プランとの関連については、本文中はアンダーライン、展開部分は●で示した。・自立活動の指導と関連する については、 で示した。

教育課程 主な疾患 在籍期間* 授業形態 例示資料

準ずる教育課程

筋疾患 長期集団

1慢性疾患 短期 2

心身症等長期 3短期 個別 4・5

自立活動を主とする教育課程 重度重複障害 長期 集団 6

- 69 -

Page 2: 第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5W 1Hの疑問文 12 ・簡単な英語のあいさつ ・助動詞について ・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

特別な教育的ニーズ

・対象生徒は電動車椅子を使用しており、隣接する東埼玉病院に入院療養している。姿勢保持のためコルセットを付けて学習している。学習意欲は高いが、とても疲れやすく、板書事項の筆記などが困難で継続的な学習ができない。性格的には恥ずかしがり屋で、必要なこと以外あまり話さない。そのような特性、保護者の願いを踏まえ

①楽しみながら学習の定着の工夫を行う。②短い時間で効率的に学習や作業を進められるよう工夫を行う。③日常生活では健康面に留意し、必要な支援を行う。 等の特別な支援が必要である。

本人・保護者の願い ・真面目な性格でがんばっているので、温かく指導してほしい。また、楽しい学校生活を送ってほしい。(保護者)

教育機関の支援

目標・機関名 支 援 内 容 評 価

所属校

①積極的に他者と関わり、意見交換等をする。

②基礎学力の定着

○○特別支援学校

①集団の中で役割分担などを意図的に行い、積極的に活動する場を設ける。

②各教科ごとに基礎・基本の定着の工夫を行う。

指導方針 ・真面目な性格を生かし、基礎学力の定着を地道に指導していく。・疲れやすいことや板書事項の書き取りが困難なことに配慮した学習の支援

を心掛ける。・興味・関心の幅を広げ、主体的に生活できるようにする。 ・自信を持たせ、積極的な発言や友人との会話ができるようにする。

指 導 に 結 び つ く 実 態4 環境の把握 ・得意、不得意な教科はあるが、学習意欲は高くどの教科もがんばっている。

しかし体力的な面で疲れやすいので、長時間集中して学習することは難しい。5 身体の動き ・食事は介助が必要である。

・トイレは尿器を使用し、教員が介助を行っている。・板書事項の筆記等では手を動かすことが困難なので、支援が必要である。

2 心理的な安定6 コミュニケーション

・集団の中での活動が苦手で、必要なこと以外はあまり話さない。また、機能的にも大きな声で会話することは苦手である。

教科・領域等 学習課題・目標 指導内容・方法(手だて) 評 価英  語Ⅰ  ①英語学習に興味を

もち学ぼうとする意欲をもつ。

②音読に慣れ親しむ。③コミュニケーショ

ン活動を活発に行う。

①ゲーム活動を取り入れ、楽しみながら学習する工夫をする。

②ロールプレイングなど音読方法を工夫し、音声に慣れるようにする。

③文字よりも音声による学習のほうが身に付きやすいので、会話練習を多く取り入れる。

- 70 -

Page 3: 第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5W 1Hの疑問文 12 ・簡単な英語のあいさつ ・助動詞について ・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

教科名 英語Ⅰ 単位数 3 指導者大 宮 次 郎学年、生徒氏名 1年生 ○○ □□

学期 月 単元(教材) 計   画 実   施 備考指導内容 時数 指導内容 時数

前   期

・自己紹介・英文法の基礎・一般動詞・be動詞・現在進行形

・英語での自己紹介を聞き取ろう。・一般動詞とbe動詞の違い・3単現のSについて・Sの発音について

・一般動詞とbe動詞の違い・3単現のSについて・Sの発音について 7

・基本的な文法     の復習・一般動詞 ・be動詞 ・現在進行形

・一般動詞とbe動詞の疑問文、否定文

・現在進行形の文・簡単な英語のあ いさつ・プレゼンテーションソフトを

使用した文法事項の学習

10

・英語の文法構造について・現在進行形の文・プレゼンテーションソフト

を使用した文法事項の学習 10

・基本的な文法・いろいろな疑問文

・助動詞について (can will may )・一般動詞とbe動詞の過去形・5W 1Hの疑問文

12

・簡単な英語のあいさつ・助動詞について・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

13

7/

・簡単な英語の質問・異文化理解・Lesson 1 ・Lesson 2

・助動詞について (can will may )・コミュニケーション活動・プレゼンテーションソフトを

使用した文法事項の学習9

・コミュニケーション活動 (ALTとの会話活動など)・Lesson 1 ・Lesson 2・プレゼンテーションソフト

を使用した教科書の内容学習

11

9・Lesson 3・基本的な文法の      まとめ

・一般動詞とbe動詞、助動詞・There is / are の文・コミュニケーション活動

評価

後   期

10

・前期の復習・Lesson 4・Lesson 5

・現在形、過去形、語順・It is ~ (for ) to...の文 ・不定詞の用法・動名詞の用法・プレゼンテーションソフトを

使用した文法事項の学習

11

11

・Lesson 6・Lesson 7・英会話

・動名詞の用法の続き・現在完了形・プレゼンテーションソフトを

使用した文法事項の学習

11

12・Lesson 8・Enjoy Communication

・現在完了形の続き・how to ~の文・レストランでの注文の仕方

10

・The Tale of Peter Rabit・Lesson 8の続き・Lesson 9

・現在完了形のまとめ・物語を読み内容を把握する。・受動態について 9

・Lesson 9・Lesson 10・英会話

・不規則動詞活用表を用いた学習・関係代名詞・プレゼンテーションソフトを

使用した文法事項の学習

11

3 ・1年間のまとめ 総復習

・いろいろな文法の総復習 7

評価合計 105

- 71 -

Page 4: 第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5W 1Hの疑問文 12 ・簡単な英語のあいさつ ・助動詞について ・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

高等部第1学年1組 英語科 学習指導案

日 時 平成○○年○月○日(○)第○校時場 所 高等部□組教室指導者 ○○○○  ○○○○

1 題材名    英会話を楽しもう

2 題材について ⑴ 生徒観   本学級の生徒(男子2名、女子1名、計3名)は明るい雰囲気で楽しく授業に参加している。

授業中の態度も良好で、教師の質問にも素早く応答できる。また、異文化に対しての興味・関心が強く、教師の話に真剣に耳を傾けることができる。しかしながら、英語の文法に対しての理解度は不十分で、中学校の学習内容の基本的な文法事項もあいまいな点が多い。どの生徒も手を自由に動かすことが困難なため、書く活動が不足しており、語彙の量も十分ではない。そのため英語で表現する内容も限られている。

そこでALTが参加する授業を多くする等、生徒の学習意欲を高めながら学習を続けることが望ましい。

   また、普段の生活においては教師と生徒のコミュニケーションが多く行われる学級であるが、男子1名は生徒同士のコミュニケーションを図ることが少し苦手で、積極的に友人と会話をすることが少ない。

 ⑵ 題材観   中学校で既習の簡単な英単語や文法を使用して、生徒相互のコミュニケーション活動が可能

な内容である。ビンゴゲームは簡単な単語を理解しながら、基本的な初歩の文法を使用して会話活動ができる。また、「なりきり英会話」では特定の人物や背景を設定することによって、生徒自身がより現実味を持った活動を楽しむことができる。また、いずれの活動も内容を変えることによって、語彙を増やすことや表現方法の定着が図れる。

   これらのゲーム活動を通して学習することにより、input活動を容易に行うことができるので、書くことによる定着が十分図れない本学級の生徒でも効果的に学習ができると思われる。

 ⑶ 指導観   本学級の生徒の中には他者(生徒同士)との

教師とはある程度会話をすることができるが、 そのような生徒でも本時のゲームを中心とした活動で、楽しみながら生徒同士の会話を行うことができる。また、英語のコミュニケーション活動においても、基本的な語彙や文構造を活用する力が十分身についていない状況なので、ゲーム的な活動を通して、そのような力を付けさせたい。特に、「なりきり英会話」では自分の言い方で相手に情報を伝える必要があるため、ある程度のパターンから外れた会話を行わなくてはいけない。そのためいろいろな表現方法を生徒が自ら考える活動になる。生徒には多少負荷がかかる活動であるが、普段のコミュニケーションの抵抗感を無くす練習ともなる。

   楽しい雰囲気の中で心理的抵抗感を無くしつつ、多少負荷がある活動を通して、日常的に友人とのコミュニケーションを楽しめる姿勢を身に付けさせたい。

- 72 -

Page 5: 第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5W 1Hの疑問文 12 ・簡単な英語のあいさつ ・助動詞について ・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

3 題材目標 ⑴ 乗り物、生き物、日常生活、職業など、様々な分野の英語の語彙を増やす。 (知識・理解) ⑵ 簡単な会話の定型文を覚え、それを使って表現できる。 (表現の能力) ⑶ 氏名、年齢、趣味などを記述した簡単な英文の内容を理解することができる。 (理解の能力) ⑷ 楽しみながら、積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲や態度を培う。 (関心・意欲・態度)

4 指導計画  ○第1時     いろいろな英語の語彙を増やす活動 ・・・1時間  ○第2時     ビンゴゲームと定型文の暗記 ・・・1時間  ○第3時(本時)  英会話を楽しもう ・・・1時間  ○第4時     ALTと話そう ・・・1時間

5 本時の学習 ⑴ 共通目標   ① 簡単な英語を使ったゲームを楽しむ。    ② 基本的な文法を理解する。   ③ 積極的にコミュニケーションを行おうとする意欲を高める。

 ⑵ 生徒の実態と本時の個人目標         

生徒の実態 個人目標

・手が自由に動かせないため、筆記については紙を移動して、記入する場所を正確に固定する必要がある。また、状況に応じて代筆を行うことも必要。

・学習意欲や能力は高いのだが、学習空白があり学習内容に不足がある。

・明るく、何事にも意欲的で自分の意見をはっきりと言うことができる。

・新しい語彙や定型文を身に付ける。・簡単な英文を使って、相手に内容を伝える。

・筆記については自分で書くことができる。・疲れやすく、横になって授業を受けること

も多い。・基礎学力が不足している部分がある。・明るく活発であるが、飽きやすい性格である。

・基本的な語彙や定型文を身に付ける。・教師の話を真剣に、集中して聞く。・興味をもって、ゲーム活動に参加する。

・板書事項の筆記は困難で介助や代筆が必要なときもある。

・学習意欲は高いのだが、疲れやすく、学習内容を定着させる努力を続けるのは難しい。

・自分から積極的に意見を言わない。教師とは必要なことを会話することができるが、生徒同士の会話は乏しい。

・今まで習った単語や定型文を思い出しながら、楽しみながらゲーム活動に参加する。

・間違いを恐れず、積極的にコミュニケーション活動に参加する。

- 73 -

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学 

習 

活 

動指

導上

の留

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・支

援評

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導       入

2分

5分

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12分

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る。

- 74 -

Page 7: 第4章 病弱 - 埼玉県公式ホームページƒ»5W 1Hの疑問文 12 ・簡単な英語のあいさつ ・助動詞について ・コミュニケーション活動 (英語でビンゴなど)

展       開

15分

○「な

りき

り英

会話

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、コ

、自

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ード

に記

入さ

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1、

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ま と め

5分

1分

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発音

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定型

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 楽

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コ 

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② 

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 ③

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目標

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 ⑸

 配

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→ 

右記

・わ

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を進

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英語

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極的

に話

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る。

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徒と

一緒

に楽

しい

雰囲

気で

活動

に参

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る。

・定

型文

を示

して

コミ

ュニ

ケー

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る。

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発音

をす

る。

●重

要文

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式の

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る。

- 75 -

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(年度途中に転入・転出する短期在籍児童生徒の場合は、小中学校に準ずる年間指導計画を作成しているため、ここでは例示しない。小中学校の年間指導計画を参照されたい。)

特別な教育的ニーズ

生活規制や自己管理を必要としている状況や本人・保護者の願いを踏まえ、①健康状態の維持・改善 ②健康回復への意欲の向上などへの支援が必要である。

本人・保護者の願い 前籍校の学習進度に遅れないようにしたい。(本人)完璧を求めすぎず、気楽に生活してほしい。我慢しすぎないでほしい。(保護者)

教育機関の支援

目標・機関名 支 援 内 容 評 価

所属校

①体調に応じた生活の仕方を身に付ける。

②不安やストレスへの対処法を身に付ける。

(○○特別支援学校)

①病気についての理解を深め、体調の自己管理ができるようにする。

②前籍校の学習進度を的確に把握して授業を行うとともに、ストレスを発散する方法を多くもてるよう興味・関心の幅を広げる。

在 籍 期 間 転入日  平成○○年4月25日 転出日指導方針 ○病気や治療についての理解を深め、治療による体調の変化に配慮しながら、

学習や学校行事に対して前向きな気持ちで取り組めるよう指導する。○周囲と協力して目標を達成した時の成就感を感じ取らせ、学校行事等への

参加意欲をもたせる。指 導 に 結 び つ く 児 童 生 徒 の 様 子

健康の保持 心理的な安定 人間関係の形成 環境の把握 身体の動き コミュニケーション○腹痛や頻回の便通があり、授業を中断することが多い。○食事や運動の制限があるためストレスを感じているが、活動制限を守って生活している。○体調不良や治療のためにベッド上安静が必要な時がある。○前籍校に戻る時の学習の遅れを心配している。○自分の気持ちを表現できずに我慢してしまうことが多い。○不安や緊張が体調の悪化につながることがある。○友達とのかかわりが少なく、集団での活動に消極的である。

教科・領域等 学習課題・目標 指導内容・方法(手だて) 評 価自立活動 ・病気や活動制限と上手

につきあいながら生活する力や、自分の気持ちを表現する力を身に付ける。

「ゲームをしよう」「体育祭の種目を考えよう」「じゃがいも掘り」「じゃがいも料理をしよう」

音 楽 ・曲想を感じ取って表現活動に生かす。

・曲想とテンポ(速さ)の関係を感じ取る。

・器楽表現の幅を広げる。

「明日という大空」「こげよマイケル」「主人は冷たい土の中に」パソコン音楽ソフトの使

用法「聖者の行進」「ラバーズコンチェルト」

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中学部第1学年 音楽科学習指導案

日 時 平成○○年○月○日(○)第○校時場 所 音楽室指導者 ○○○○

1 題材名  「リコーダーアンサンブルを楽しもう」  ~聖者の行進~ (アメリカ民謡)

2 題材について ⑴ 題材観   本題材では、教科の目標にある「音楽活動の基礎的な能力を伸ばし~」のうち器楽を取り上げ、

教材曲の特徴を感じ取り、自ら進んで表現する力を身に付けることをねらいとする。   中学校学習指導要領音楽科第1学年の目標の(2)にある「基礎的な表現の技能を身に付け~」

の「技能」という言葉を単に演奏技術向上ととらえるのでなく、演奏するに至るまでの練習方法の習得ととらえる。ここで使う「練習方法」という言葉を、「どうやればこの曲を演奏できるようになるのか」「まず何を練習するべきか」「なぜできないのか」など、各自または演奏グループの課題を自ら見つけ、課題克服の道筋を立てながら練習し演奏に至るといった一連の流れととらえる。

   リコーダーについては小学生でソプラノを、中学生でアルトを器楽で扱う学校が多い。多くの場合ソプラノからアルトへの移行は運指の違いからスムーズとは言えない。小学生のとき大好きだったリコーダーが中学生になった途端、嫌いになったという声を多く聞く。本校でも中学部において、可能な範囲でアルトリコーダーを扱う。アルトリコーダーで演奏できる曲のレパートリーを増やすというだけでは真の技能向上とは言い難い。音楽の授業は音楽教室のレッスンではない。演奏できるまでの過程において「音楽への興味や関心」「音楽活動の楽しさ」「音楽表現の豊かさや美しさ」を感じ取りながら演奏していくことが重要である。そして音楽表現活動で得られる成就感を仲間と共有する経験を積むことが「豊かな情操を養う」ことにつながると考える。

 ⑵ 生徒観   本校は病弱特別支援学校であり、

   音楽に対する関心は総じて高く、課題に意欲的に取り組む生徒が多い。1年生という発達段階からも「自分はできた」とか「自分はここを間違えた」といった個々の技能に対する課題を見つけることは比較的できるが、同じパートや他のパートの音を聴きながら演奏したり、全体の課題を見つけることは難しい。全体の課題を見出す話し合い活動や試しの時間を十分確保し、全員で同じ課題意識をもち、その課題を克服することで「気持ちを一つにした演奏」の価値を感じ取らせたい。

 ⑶ 指導観   本題材は3時間扱いとしているが

   教具としてノートパソコンと音楽ソフトを用意する。(簡単な旋律の創作で既に使用経験のある生徒が在籍している。)音楽ソフトを用いるメリットは、生徒が練習段階において音を取るための道具として、曲のイメージをつかむための道具として、更には伴奏の道具として使用す

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ることが可能だということである。

本題材においてノートパソコンを使用するかどうかは生徒に判断させる。また、演奏技術に関する教師の必要以上の支援により生徒の自発性を妨げることのないよう留意する。

   アルトリコーダーを中心に扱うが、手指や肘関節の動き、リコーダー演奏に必要な呼気等に困難がある場合は、リコーダーに工夫を加えたり他の楽器に変更するなどし全体及び個別の目標の達成を目指す。

   基礎的な表現の技能を身に付けさせるには自由な発想で話し合うことが必要不可欠である。生徒が互いに音楽的な感性を刺激し合い高め合うために、生徒同士の話し合いや教え合いを大切にしたい。

   授業中は意図的に緊張をほぐす支援を行い、必要以上に緊張感が高まらないよう配慮する。 ⑷ 教材曲について  「聖者の行進」  アメリカ民謡   本楽曲は教育芸術社「中学生の器楽」にアルトリコーダーの二重奏練習曲として掲載されてい

る。元々は、アメリカ合衆国の黒人文化の中で葬儀の際に演奏された曲である。映画『五つの銅貨』(1960年)でこの曲が使用され、ルイ・アームストロングとダニー・ケイの歌ったこの曲が有名になった。

  本題材において教材曲として適している点は以下のとおりである。   ・ハ長調のため調号(♯や♭)が付かない。更に臨時記号(曲の途中に臨時に付けられる♯や

♭)が付いていない。   ・16小節と比較的短い曲である。   ・音域が狭くリコーダーの運指が比較的容易である。   ・弱起(小節内が完全でないところから始まる)の曲なので、複数で演奏する際には互いの音

を聴き合う必要がある。更に、前半は旋律の掛け合い、後半はハーモニーを奏すことから互いの息を合わせタイミングを図ることを要するためアンサンブル能力の向上が期待できる。

3 題材の目標 ⑴ 自分の受けもつ旋律を正しい運指で演奏することができる。 ⑵ 器楽合奏全体の課題を見つけ、①速度 ②アーティキュレーション について仲間と話し合

い、課題を解決していくことができる。

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4 生徒の実態             

5 評価規準 ⑴ 音楽への関心・意欲・態度  リコーダーに興味をもち、意欲的に活動に取り組もうとしている。 ⑵ 音楽的な感受や表現の工夫  曲の特徴(メロディーのかけ合いとハーモニー)を感じ取り、曲想にあった表現を工夫すること

ができる。

氏名 生徒の実態 題材の目標

平成  年  月転入○音楽に対して興味は高く、課題に対して何

事にも前向きに取り組む。○歌唱に対して苦手意識をもっている。曲想

を感じ取って表現しようとするが声量が少ないため、表現の幅が狭くなることがある。

○発問に対し反応が早く的確な回答が多い。

・自分の受けもつパートの演奏をテンポに乗ってタイミング良く奏すことができる。

・自らアルトリコーダー以外の楽器で合奏に参加したい旨を発言できる。

・友人のアドバイスを聞きいれながら、他の楽器で合奏に参加できる。

・自分の体調に応じた学習活動ができる。

平成  年  月転入○音楽に対する興味が高く、あらゆる活動に

意欲的である。歌唱表現も常に堂々と声を出し、メロディを覚えることが得意である。

○器楽表現では音符に階名をふり、一音一音丁寧に演奏しながら覚えていく。

○自分の演奏の正誤のみに関心がいってしまう傾向がある。

○友人からのアドバイスを受け入れることができない時がある。

・曲想に応じたテンポを決めるための話し合い活動に意欲的に参加し、他の意見を受け入れながら自分なりの意見が出せる。

・自分のパートをテンポにのってタイミングよく奏すことができる。

・友人からのアドバイスを受け入れたり友人に対して適切なアドバイスができる。

・全体の課題を見つけ、課題解決に向け友人と協力して練習を進めることができる。

・自分の体調に応じた学習活動ができる。

平成  年  月転入○ピアノを習っていた経験があり、音楽に対

する興味は高く、楽器演奏を好んでいる。○歌うことに苦手意識があるが、一生懸命に

歌唱に取り組む。○器楽演奏では進んで教員に質問するなど、

前向きに取り組む姿勢が多く見られる。

・自分の受けもつパートの演奏をテンポに乗ってタイミングよく奏すことができる。

・合奏全体の課題を見つけ課題解決に向け、友人と協力して練習を進めることができる。

・体調に応じた学習活動ができる。

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 ⑶ 表現の技能  他のパートの演奏を聴きながら、一定の速度や正確なアーティキュレーションでタイミングよ

く演奏することができる。

6 指導計画(3時間扱い)

7 本時(第1時)の学習 ⑴ 目標 ア 全体目標  ①「聖者の行進」の演奏に進んで取り組むことができる。  ②「聖者の行進」の楽譜の担当するパートの演奏に必要な練習を生徒同士で工夫できる。 イ 個別目標 (①音楽への関心・意欲・態度 ②音楽的な感受や表現の工夫 ③表現の技能 ④鑑賞の能力)

時 学 習 活 動 指導上の留意点 評価項目・方法 教材

1本時

○教材曲を聴く。○リコーダー等で教材

曲を演奏する。

○教材曲の雰囲気を感じ取らせる。○パートを決める際は活動制限に応じ

たパートになるよう配慮する。

○リコーダー等の演奏に進んで取り組んでいる。

[規準(1)活動観察]

聖者の行進

○録音した自分たちの演奏を聴く。

○合奏時の課題を意識して合奏練習する。

○録音を聴く際の観点を明確に示す。○生徒自身で課題を見つけられるよう

適宜助言する。

○正しい奏法で演奏することができる。

[規準(3)演奏観察]

○曲の雰囲気に応じてテンポやタンギング、アーティキュレーションを工夫する。

○教材曲にふさわしい速さを生徒が設定できるようメトロノームの活用を促す。

○演奏前に表現したい内容を明らかにさせる。また、聴き手を意識させる。

○イメージや曲想に基づいて表現方法を工夫することができる。

[規準(2)活動観察]

生徒 個   別   目   標

A・周囲と相談して決定したパートをキーボードで主体的に練習する。①・友人の助言を素直に受け入れながら課題を見つけ、工夫して練習することができる。②

・周囲と相談して決定したパートをアルトリコーダーで主体的に練習する。①・自分のパートをアルトリコーダーで演奏することができる。③・友人への助言などリーダー的存在として合奏を客観的に受け止め、適切な練習方法を見

つけ出しながら効果的な練習ができる。②・他の奏者の音を感じながらタイミングよく自分のパートを演奏することができる。③

・ソプラノリコーダーのパートを主体的に練習する。①・ソプラノリコーダーとアルトリコーダーの音色や役割の違いを感じ取りながら合奏する

ことができる。②・他の奏者の音を感じながらタイミングよく自分のパートを演奏することができる。③

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 ⑵ 展開

時間(分)

学習活動 指導上の留意点・支援 評価項目・方法

20

健康観察

○課題を把握する。

○パートの旋律を把握しパートを決める。

○個人・パート練習をする。

○授業中は終始観察を怠らず、変化があれば学部職員に応援を依頼し養護教諭に連絡をとる。

○課題の提示から克服までの流れを導入時に提示しておく。

●全員で演奏できるようになることが最終課題であることを前面に打ち出し、個人プレイではなく団体プレイであることを意識付け、学び合い教え合う雰囲気を作る。

○自分の不得意なこと(リコーダー演奏に困難さを感じるなど)を自分で申告するよう促す。

●それぞれの生徒の特性を理解しその特性を生かしたパート割りができるよう、生徒一人一人の長所を課題克服の観点から述べる。

○自分のパートのメロディーを認識しパートを決定するためにパソコンにデータを打ち込んでおき、生徒自ら操作しパートの旋律や合奏のMIDI演奏を聴けるようにしておく。

○課題を把握し積極的にパートを決定することができる。

 規準(1)・(活動観察)

○パソコンや教師の演奏・支援を有効に活用しリズムや指使いに注意しながら自分のパートが演奏できる。

 規準(3)・(活動観察)

○練習方法が見つからない場合は例示などするが、生徒が自ら考える時間は確保する。

A・・・ソプラノリコーダーをもっているのでソプラノパートを練習しようとすることが想定される。本人の体調や呼気の調子によっては無理させずに、他の楽器(キーボード)での合奏参加を促す。

     ソプラノリコーダーの演奏に意欲を見せた場合は、筋力的にも呼吸的にも無理の無いように予め用意した新たなパートの演奏を促す。

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15 ○合奏練習する。

○全体課題をつかむ。

○演奏を始めるときの合図の出し方についてアイデアを出し合い決定するよう促す。

●合図を出す役割りにBを指名しリーダー的存在として練習を進めることを意識させる。合図の出し方を例示するなどしてBに必要以上のプレッシャーを感じさせないようにする。

●タイミングよくスタートできたときは合図を出したBとそれを受け止めて演奏を始められたACを評価し、協同への意欲を高める。

○曲を通すだけの練習にならないよう演奏上の課題を教師が例示しながら練習する方法を考えさせる。

○スタート方法を考えることができる。

 規準(2)・(活動観察)

○合奏時の課題を見つけ練習の方法を工夫することができる。

 規準(2)・(演奏聴取)

5 ○次時にどんな練習をするかを決めておく。

●協力して練習が進められたことを評価する。

○合奏時の課題を例示・助言して次時の学習意欲を高める。

○次の授業時間の担当者への引き継ぎを確実に行う。

B・・・アルトリコーダーの全てのパートを自分で吹こうと試みることが予想される。●自分のパートがある程度演奏できるようになったところで、他のパートと一緒に演奏する練習に入れるよう、伴奏収録しているパソコンの活用を促す。Cとの合同練習も促す。

C・・・運指に不安があるため活動にやや消極的になることがある。終始、個人の活動のみにならないようパソコンやBの存在を意識させる。

    パートの動きを把握させると同時にBとの合同練習を促し、Bに運指や演奏のタイミングをアドバイスしてもらう雰囲気を作る。

AのつまずきをAだけの課題としてとらえ、Aの個人レッスンになることが予想される。●Aの課題を克服するためにB、Cがどんなサポートができるのかを考えさせる。合奏のタイミングが合わない部分を見つけ出し、繰り返しA、B、Cでその部分を合奏する中でAの課題を克服していかせる。

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特別な教育的ニーズ

・生育の中で、間違って身に付けた人間関係を学び直す。・人との信頼関係を築く基盤を養う。

本人・保護者の願い ・自立する力を身に付けてほしい。教育機関の支援

目標・機関名 支 援 内 容 評 価

所属校

・人間関係を学び直す。

・信頼関係を築く基盤を養う。

 (○○特別支援学校)

・対人スキルと社会性の向上。・適切な自己表現。・学力の向上。

指導方針 ○学校での集団生活を通して、対人スキルを学び、ルールやマナーに沿って気持ちよく学校生活を送れるようにする。

○適切な自己表現を覚える。○集中力、学力の向上をはかり、自信を養う。

指 導 に 結 び つ く 実 態3 人間関係の形

6 コミュニケーション

○大人にも友達にも一対一の関係を求め、自分だけとかかわってほしいという気持ちが強い。また、私ばかりが損をするという考えに陥りやすい。「あなたを大切に思っているよ」というサインが必要。信頼できる大人を足がかりに人間関係を広げる。

○自分の意思は伝えることができるが、かかわってほしい相手の都合が悪いと、悪口や怒らせる言動が多くみられる。ただ興奮していても、言うべきことを伝えるときちんと理解していることが多い。適切な自己表現することが課題。

教科・領域等 学習課題・目標 指導内容・方法(手だて) 評 価自立活動 ・安心できる環境と安定

した関係を基に、対人スキルと社会性の向上を図る。自分の行動を振り返り、自らの課題として、問題解決をする力を身に付ける。

・マイプラン面接で気持ちの安定を図り、スモールステップで課題を達成し、自信を養う。

・ ソ ー シ ャ ル ス キ ル トレーニングを通して、対人スキルを身に付ける。

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題 材 目 標 実施回数及び方法主な指導内容

1学期 2学期 3学期マイプラン面接

教師との面談を通して、情緒の安定を 図 る と と も に、生活や学習における困難さを認識し、それを改善していこうとする態度を養っていく。

・毎週1時間(月曜日第1校時)。

・担任教師との1対1の面接を行う。

1週間の目標を立てる。目標を立てた1週間後に、目標に対する振り返りを行う。それ以外にも、生活面や学習面で抱えている問題や悩みについて話し合う。

ソーシャルス キ ル トレーニング

他者の意図や感情を理解するための具体的方法やその大切さを知り、状況に応じたコミュニ ケ ー シ ョ ン の方法を学ぶことで、より円滑な人間関係の形成を目指す。

・3週間に1時間。・学部全体で行う。

①自己紹介② 上 手 な 聴

き方③質問④ 仲 間 の 誘

い方

⑤ 仲 間 の 入り方

⑥ あ た た かい 言 葉 掛け

⑦共感する⑧ 優 し い 頼

み方⑨ 上 手 な 断

り方

⑩ 自 分 を 大切にする

⑪ ト ラ ブ ルの 解 決 方法

趣味・余暇活動

興味・関心のあることに取り組む中で、情緒の安定を図るとともに、自己理解を深め、余暇の過ごし方について考える。また、集団での活動を通し、他者とのかかわり方について学んでいく。

・週に1時間(ただし、ソーシャルスキルを実施する週は行わない)。

・3つのグループに分かれ活動する。

・希望を学期ごとに把握し、やりたい活動を決める。

・ そ の 活 動 に 集まった生徒の希望により、学期ごとに内容を決定していく。

運動

・バスケットボール・ドッジボール・ストレッチ        など

音楽

・合奏  ・歌唱           など

写真

・デジタルカメラを使っての撮影・写真の印刷・写真を使ってのコラージュ制作              など

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中学部合同 自立活動 学習指導案

日 時 平成○年○月○日(○)第○校時場 所 ○○教室指導者 MT○○     ST1○○ ST2○○ ST3○○    ST4○○ ST5○○ ST6○○

1 題材名     ソーシャルスキルトレーニング「上手な断り方」

2 題材について ⑴ 生徒観   本校は、保護者の不適切な養育や養育放棄による2次的障害として、情緒障害を有している

生徒が大半を占めている。   生徒は、育ってきた環境に適応してきた結果、「人を信頼できない、攻撃的な言動をする、

人にわざと嫌われるようなことを言う、場面に応じた会話が苦手」など、対人関係において、多くの課題を抱えている。

 ⑵ 題材観   社会生活は、お互い助け合いながら送るものである。しかし、育ってきた環境によっては、

自分の意思を主張することは認められず、他者の要求を一方的に受け入れることだけで、今まで生きてこられた者もいる。だが、そこには従属的な関係しか生まれてこない。この関係のみを経験してきたものは、成長したときに、弱い者へ逆の立場をとり、相手を従わせることで人間関係を形成してしまう可能性も少なくはない。

   時と場合によっては要求に応じられないこともあるが、そこでその人との関係が終わるわけではないと理解させたい。また、人から求められたことを受け入れるか、断るか、どちらが自分の本心に近いかを考えた上で、断られる相手の気持にも配慮しながら、自分の意思をはっきりと示す断り方を身に付けさせたい。

   今回の題材を設定するにあたり、埼玉県立総合教育センター指導相談担当が平成18年度に調査研究として報告した、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)に関する指導プログラムの開発を基に年間計画、学習指導案を作成した。

 ⑶ 指導観   上記のような実態にもかかわらず、本校に在籍するのは概ね2年程度であり、全員が近い将

来全く違う環境に直面しなければならない。現在は、制約された環境の中で、守られて生活しているため、本来の「社会」とは違った環境にいる。そのため、本校の生徒にとって、対人関係の実践的な力を養い、社会性を身に付け、将来的な自立へと結びつけることが最重要課題である。

   そこで、対人関係を円滑にすべく、ソーシャルスキルトレーニングが必要であると考え、自立活動の時間に実施することとした。

   本校の生徒の状況を踏まえ、ソーシャルスキルトレーニングを実施するうえで配慮している事項は次の点である。

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   ①については、 である。生徒の中には、提示しているもの以外へ気を取られやすい者がいる。そのため、提示した課題へ集中してもらうため、教室前面の掲示は極力行わず、その時間に提示する内容のみが黒板にあるような配慮が必要である。

   ②については、本校の生徒は前述のように、人間関係の面で課題を抱える生徒がほとんどである。学校から生活する施設へ帰っても、同じ顔触れで24時間生活している。そのため、生活場面で人関関係のトラブルが発生すると、それを引きずったまま登校することも多い。昨日仲の良かった二人が今日は口も利かないなどは、日常茶飯事である。下校後から登校までの生活の様子を、生活している施設から引き継ぎ、 した上で、誰とペアを組ませるか検討することが大切である。場合によっては、教師と生徒を組ませる。そうでなければ、せっかくソーシャルスキルトレーニングを実施しても、ロールプレイもやらず、身に付かないまま終わってしまい、1時間を棒に振ってしまうことになりかねないからである。

   ③については、②の内容とも関係してくる。生徒たちの精神的な状況は、些細なことで大きな影響を受け、不安定になる。直前まで意欲的に取り組んでいたかと思えば、何かをきっかけに消極的な態度になってしまう。生徒の様子をしっかり観察し、

していくことで、授業の雰囲気が活性化されたり、その生徒の自尊心を高めたりすることにもつながっていく。「やりたくない、興味がない」という生徒の雰囲気は、授業に参加している生徒全体へ強く影響してくるので、注意していかなければならない。

   ④については、教員がモデリングを行うようにしている。その にもなり、人前で何かすることへ抵抗を示す生徒も少なくないからである。また、場面設定を何にするかも重要である。生活経験が乏しい生徒が多い中で、イメージできない場面を設定されても、その時自分ならどう思うかというイメージがわかない。そこで、全員が共通して

することを心掛ける必要がある。一方、思い出したくないほど強く嫌な経験をした場面をもっている生徒もいる。すべてを把握するのは難しいが、そのような場面をロールプレイやリハーサルに極力設定しない配慮も必要である。

   ⑤については、本校の特色でもあるが、1学年の人数が少ないために、中学部全員での実施を考えた。多くの生徒がいることで、様々なロールプレイを見たり、他の人の考えや感じたことを聞くことで、よりよい学習効果を上げられる。さらに、全員で行うことで、

しやすいと考えた。 3 題材目標 ○より円滑な人間関係の形成を目指す。  ・他者の意図や感情を理解するための具体方法やその大切さを知る。  ・状況に応じたコミュニケーションの方法を知る。

4 生徒の実態              

氏名 生 徒 の 実 態 題 材 の 目 標

素直で大人に甘えを見せられるようになったが、周りの人間関係や環境の変化に影響されやすく、1日の中で気分に波がある。不安定になると暴言が目立つ。

自分の意思を一方的に伝えるだけでなく、相手の都合や気持ちを考えて、発言や行動ができる。暴言や暴力ではない、適切な自己表現をおぼえる。

B普段は穏やかで言葉遣いも丁寧だが、日常的に疲れを訴え、不安定になると暴言を吐く。人に気遣いもできるが、自分の本心は出そうとしない。

自分の気持ちを知り、相手の状況も考えながら、自分の気持ちを伝えられるようになる。

C人には、友好的に話しかけるものの場面や状況を判断するのが難しく、場違いな発言や行動が多い。全体と個々の言葉掛けの区別、声の大きさの調節も難しい。

自分の気持ちを知るとともに、相手の都合や気持ちを考慮し、不快感を与えることなく断る方法を知る。

以下、省略

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5 指導計画

6 本時の学習 ⑴ 共通目標  ・勇気をもって断る技術を身に付けることで、対等な人間関係を築く方法を学ぶ。  ・人から求められたことを、受け入れるか、断るか、どちらが自分の本心に近いかを考えた上で、

断られる相手の気持にも配慮しながら、自分の意思をはっきりと示す断り方を身に付ける。 ⑵ 個別目標

氏 名 本  時  の  目  標C・D・G 自分の本心がどちらにあるのか理解し、相手との距離感や間の取り方、言葉遣い、

表情に注意し、相手に不快感を与えることなく、断ることができるようになる。N 4つのポイント理解し、順を追って、場面に合った言葉を当てはめることができ

るようになる。A・F・H・I・L・P

ぶっきらぼうな物言いや単語だけの断りでなく、4つのポイントを理解し、伝え方を考えて断れるようになる。

B・E・J・K・M・O

断り方の4つのポイントを理解し、相手に配慮しながら具体的に断れるようになる。

主な学習内容 ね   ら   い 時間

1自己紹介 自分の肯定的な側面を見つけ、自分の考えや思いを人に伝えられる

ようになる。1時間

2 上手な聴き方 人の話に注意深く耳を傾け、上手に話を聴けるようになる。 1時間3 質問 聞きたいことを明確にして、適切な態度で質問できるようになる。 1時間

4仲間の誘い方 友達を誘うスキルを身に付け、多くの友達に声を掛けられるような

姿勢を身に付ける。1時間

5仲間の入り方 仲間に入りたいと思ったときに、自然に相手に声を掛けられるよう

な姿勢とスキルを身に付ける。1時間

6あたたかい言葉掛け

「ほめる」「励ます」「心配する」「感謝する」などの言葉掛けが状況に応じて使えるようになる。

1時間

7 共感する 相手の気持ちを知り、相手の立場に立って考えられるようになる。 1時間

8優しい頼み方 相手の気持ちを大事にしながら自分の気持ちや考えをはっきり伝え

られるようになる。1時間

9上手な断り方 相手の気持ちにも配慮しながら自らの気持ちをはっきりと示し、上

手に断れるようになる。1時間(本時)

10自分を大切にする

不当な要求に対して、勇気を振り絞って拒否する方法を知り、生活場面で生かせるようになる。

1時間

11トラブルの解決方法

人間関係のトラブルが起きた際に、問題をはっきりさせ、よりよく問題を解決する方法を選択し、実行できるようになる。

1時間

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 ⑶ 展開

時間 学  習  活  動 指導上の留意点・支援

(AはA生徒に対して 他は全体に対して)評 価

導   

・あいさつ

・友達からの頼みを、断らなければならない場面を実際の生活体験の中から思い浮かべ、その時どう対応するか考えさせる。

・どんな断り方をしたらいいのかという問題意識をもつ。

・教室前面には、掲示物を何もしない。●事前にモデリングやリハーサルを

するペアを決めておき、隣同士で活動ができるよう、座席を黒板に表示しておき、着席させる。

・生徒の体調(気持ち、意欲など)を把握しておく。

・身近に思い出せる具体例をあげ、場面を思い出させるようにする。また、発表はできそうな生徒にさせる。

●A表情を見て、発言できそうならさせる。

●様々な友達からの頼みに対して、受け入れるか・断るか、どちらが本心なのかを自分に問いかけることが大切だということを強調する。また、断ったからといって、その人との関係が終わってしまうことはないということも伝える。

・自分の体験から思い出すことはできたか。

10

モ  

デ  

リ  

ン  

・モデリングを見て、それぞれの断り方について、自分なりの感想を持つ。

・それぞれの断り方について、感じたことなどを発表し、互いの感想を共有する。

・「上手な断り方」の4つのポイントについて知る。

・教師4名がモデリングの役割を分担し、生徒たちの興味を引き付けるような演技をする。

・感じたことを発表できそうな生徒に、発表させる。どの感想も否定しない。

●視覚的にわかるように、4つのポイントを書いたカードを黒板に貼る。

 漢字が読めない生徒もいるので、ふり仮名をつけておく。

・興味をもってモデリングを見ることができたか。

・それぞれの断り方について、感じたことに違いはあるか。

・4つのポイントについて理解できたか。

教師のモデリング1 場面 部活動の顧問の先生から、今日の放課後の部活はミーティングを行うので、帰りの会が終わったら、す

ぐに集まるよう指示があった。急いで部活に行こうとしていたが、クラスの友達に明後日に行う総合的な学習の時間の発表資料作りを頼まれた場面。

2 役割(教員4名が役割を担当)  生徒A 総合的な学習の時間の発表資料作りを依頼する生徒  生徒B 友達に依頼され「攻撃的な表現」で断る生徒  生徒C 友達に依頼され「非主張的な表現」で断る生徒  生徒D 友達に依頼され「豊かな表現」で断る生徒3 役割演技の流れ <パターン1>「攻撃的な表現」:自分のことだけ考え、相手を無視して自分を押し通す表現 <パターン2>「非主張的な表現」いつも自分を抑えて相手を優先する表現 <パターン3>「豊かな表現」(上手な断り方):自分を大切にするとともに、相手のことにも配慮する表現

「謝罪」「理由」「断り」「代案」の4つのポイントについて説明する。

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・表情や態度も大きな意味をもっていることに気付く。

・その他にも大切なことを生徒に質問する。答えが出なかったら、ヒントを出す。

● A 雰囲気が和んできたところで、発表できるようなら発表させる。

・表情についても、以前の学習などから大切であることを思い出すことができたか。

25

リ   

ハ   

ー   

サ   

・場面を設定し、ペアを組み、上手な断り方のロールプレイをする。その際、4つのポイントに配慮しながら断り方を考える。

・演じてみて、ペアで振り返り、良かった点や、もっとこうするとよかったという点について確認する。

・発表してくれるペアを聞き、発表してもらう。

・ワークシートの演習を各自で考え、記入する。

・代表に<演習>で考えた言葉掛けを発表してもう。その言葉掛けで良かったことをほかの生徒に発表してもらう。

・ペアは教員があらかじめ決めておく。生徒によっては教員とペアを組ませる。

●A仲の良い友達とペアを組ませる。

・教員が様々なペアのところをまわり、机間指導の中で生徒たちの活動を評価していく。また、良い活動をしているペアを把握しておく。

●Aに対しては担任が時々活動の様子を見て、評価をし、意欲付けをする。

●発表してくれるペアがない場合には、よい活動をしていたペアに発表してもらう。Aが積極的な取組をしているようなら、発表してもらう。

・良い言葉掛けを書いている生徒を把握する。

・ポイントを理解しながら断ることができたか。

・違う場面でも、 ポ イ ントを理解し、断り方を自分なりに考えられたか。

10

ま 

と 

・今日の感想を書く。・上手な断り方の4つのポイント

を再度確認する。

・あいさつ

●頼まれたとき、断る・受け入れのどちらが自分の本心なのかをまず考えることを伝える。

 そのうえで、断り方のポイントを伝える。

・4つのポイント を 理 解 できたか。

・自分の本心がど ち ら か 理解 す る こ との 大 切 さ が分かったか。

1 場面  昼休みの時間、生徒Aは3日前に買った本を夢中になって読んでいる。あと、1日あれば読み終えることができそうなペースであり、ちょうどクライマックスに近づいている。そこへ、友達がやってきて「私もその本読みたかったんだ、ちょっと貸してくれる。」と頼まれた。2 役割  ・生徒A 夢中になって本を読んでいる生徒  ・生徒B 生徒Aが読んでいる本を借りたいとお願いする生徒3 上手な断り方のポイント ○謝罪(相手を不愉快にさせないようにする) ○理由(断らなければならない理由) ○断り(自分の意思を明確にする)      ○代案(状況が変われば引き受けることもできる)

<演習>今日の放課後は、特別教室の清掃分担の日に当たっている。掃除場所に向かおうとしていたところ、クラスメートがやってきて、「係の仕事をさぼって一緒に帰ろう。」と誘われた。どうやって断ればよいのだろうか。

○謝罪(     )○理由(     )○断り(     )○代案(     )

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7 評価 ⑴ 共通評価  ①相手の立場に配慮しながら、相手に心を伝える断り方ができたか。  ②断る理由や自分の意思を的確に伝えられたか。 ⑵ 個別評価

8 座席図

氏 名 本  時  の  目  標C・D・G 自分の本心がどちらにあるのか理解し、相手との距離感や間の取り方、言葉使い、

表情に注意し、相手に不快感を与えることなく、断ることができるようになったか。N 4つのポイント理解し、順を追って、場面に合った言葉を当てはめることができ

るようになったか。A・F・H・I・L・P

ぶっきらぼうな物言いや単語だけの断りでなく、4つのポイントを理解し、伝え方を考えて断れるようになったか。

B・E・J・K・M・O

断り方の4つのポイントを理解し、相手に配慮しながら具体的に断れるようになったか。

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   (年度途中に転入・転出する短期在籍児童生徒の場合は、小中学校に準ずる年間指導計画を作成しているため、ここでは例示しない。小中学校の年間指導計画を参照されたい。)

特別な教育的ニーズ

①精神状態の安定を図り、体験的な学習を通して興味・関心を広げる。②成功体験と自己肯定感をはぐくむ。

本人・保護者の願い 自分に自信がもて、他人の痛みも理解でき、自己主張ができ、優しい強い心をもった人間になってもらいたい。

教育機関の支援

目標・機関名 支 援 内 容 評 価

所属校

いじめに対する恐怖感や不安感を取り除くための手段を身に付ける。

(○○特別支援学校)

①成功体験を通し安定した精神状態を保てるようにする。

②退院後の安定した生活が送れるよう興味・関心が持てるように支援する。

在 籍 期 間 転入日 平成○○年7月2日 転出日指導方針 ○落ち着いた環境と人間関係を作り、気持ちを安定させる。

○本人の興味・関心のある活動を通して成功体験を積み重ね、自己肯定感をはぐくむ。

○安心、安定した人間関係を基礎に言葉によるコミュニケーションを育てる。○大人との安定した関係を基盤に同世代と関係がとれるよう指導をする。

指 導 に 結 び つ く 児 童 生 徒 の 様 子健康の保持 心理的な安定 人間関係の形成 環境の把握 身体の動き コミュニケーション

○ 言語、行動、読み書きの点で発達の遅れが見られる。○ 教科学習への集中時間は短いが、興味・関心のあることには、集中して取り組むことができる。○ 今までの体験から人間関係に不信感を持ち、集団には入ることが難しい。

教科・領域等 学習課題・目標 指導内容・方法(手だて) 評 価自立活動 ・落ち着いた環境と人間

関係を作り、気持ちを安定させる。

・本人の興味・関心のある活動を通して成功体験を積み重ね、自己肯定感をはぐくむ。

・安心、安定した人間関係を基礎に言葉によるコミュニケーション力を育てる。

・日々の連絡ノートを媒介として安心感をもたせ、気持ちを引き出す。

・朝の会にて、一日の目標を設定し帰りの会にて一日を振り返る。

・興味があるもの、興味を持てるものを取り入れる。

数 学 ・基礎計算力と数学に対する興味・関心を高める。

・正負の数の計算 加法と減法の計算

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中学部1年 数学科指導案

日 時 平成○年○月○日(○)第○校時場 所 病棟内中学部教室指導者 ○○○○

1 題材 「加法・減法の計算」

2 題材について ⑴ 生徒観   多くの生徒は、前籍校で不登校を経験している。したがって転入当初、多くの生徒は学習の

遅れを気にして「勉強しなければならない」と訴える。しかし自分が思うように学習に取り組むことができず悩むケース、また学習をすることで病状を悪化させてしまうケースが少なくない。

   本校に転入し先ず行うことは、生徒の話を聞く。そして「頑張らなくていいんだ」ということを知らせる。その中で生徒自身の内面を表現させ、今何をすべきかを知り、体調に合った学習活動を行うよう働きかけている。

   また、コミュニケーションに不安を感じている生徒も少なくない。転入当初はできる限り1対1の対応の体制を築き、担当教師をできるだけ限定し安心できる環境を築き、少しずつ集団を大きくするように取り組むことが必要な生徒である。

 ⑵ 題材観   小学校では、負ではない有理数の範囲の中で、整数や小数、分数の四則計算を学習してきて

いる。しかし、この数の範囲では減法を自由に計算することはできない。この単元では、数の範囲を負の数にまで拡張し、これまでの数の四則の世界を広げていく。これにより、減法が可能になることを理解することができる。

   本単元では、負の数の導入にあたり、生徒に身近な収入と支出、標高と海面下など反対の性質をもつ量を負の符号を使って表すことで負の数を使った表現に慣れさせる。そして、0は「無」なのではなく、基準になる数であることを気付かせる。このことから、正の数、負の数の必要性に気付き、その性質や関係を理解することができる。

 ⑶ 指導観   本単元は上記に示したとおり新しい数の世界の入り口である。新しく取り扱う負の数の導入

については身のまわりの反対する量を取り上げ、0が基準となることを生徒に強く意識させたい。正負の数の四則計算を指導する際には、ただ計算方法を教え込むのではなく、小学校との違いを明確にしながら計算の意味や方法を指導していきたい。また、単に計算能力の向上を目指すのではなく、 として、心に訴える指導を心がけていきたい。しかし、本校の在籍期間が短いため、できることは限られていることから信頼関係を築くのは容易ではない。前籍校と連携を密にとり少しでも多くの情報を入手し、生徒に即した教材を準備する。また、時間にこだわるのでなく生徒の実態に即した指導時間の組立ても重要であると考える。

3 題材の目標 正負の数の加法の計算方法を考えようとする。 ・正負の数の加法の原理を、数直線を用いて考えることができる。

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 ・正負の数の計算方法を理解する。 ・学習活動に集中してできるだけ長く学習できるようにする。

4 生徒の実態

5 評価規準【関心・意欲・態度】 ・学習活動に集中する時間を長くできるようにする。  ・正負の数の必要性に気付き、正の数、負の数の性質や関係を調べようとする。

【数学的な見方や考え方】 ・いろいろな事象を正の数、負の数を用いて表すこと、その計算に習熟することを通して、負の

数を用いて考えることの良さを見いだすことができる。【数学的な表現・処理】 ・正の数、負の数の四則の計算ができる。

【数量、図形などについての知識・理解】 ・正の数と負の数について具体的な場面での活動を通して理解することができる。 ・正の数・負の数の四則計算の意味を理解することができる。

6 指導計画(7時間扱い)

7 本時の学習 ⑴ 本時の目標・学習活動を20分程度とし、その時間は集中し学習できるようにする。(関心・意欲・態度)・自分の気持ちを伝えることができるようにする。(自立活動:コミュニケーション)・符号に注意して加法と減法の混じった計算を正しく行う。(数学的な表現・処理)

生 徒 の 実 態 題 材 の 目 標○在籍期間は約1ヶ月程度と短いため

実態把握を行いながら授業を進めている。

○数学に関しては、単純な計算問題については取り組むことができるが、文字式の操作、文章題、応用問題についてはつまずきが見られる。

○指導形態は生徒の状態及び過去の経験から

○1時間(45分)の授業に集中することが難しい。

○日常生活で私たちが普段用いる数として、記号「-」を使って表される数量があることを知り、マイナスとプラスに対する関心を高める。

○反対向きの性質をもった数量を、基準を定めて、+や-を用いて表すことができる。

○加法と減法の混じった式を、加法だけの式に直し、加法の交換法則や結合法則を使って計算することができる。

○加法と減法の混じった式を、項の和(代数和)としてとらえ、その計算ができる。

指導項目/指導時間 指  導  内  容

加法/3時間正負の数の加法の意味と計算の規則加法の交換法則、結合法則3つ以上の数の加法

減法/2時間正負の数の減法の意味減法を加法に直して計算すること

加法と減法が混じった計算 2時間 (本時1/2)

減法を加法に直して計算すること加法と減法の混じった式を代数和の見方でみること加法と減法の混じった式の計算

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 ⑵ 展開

8 評価  ・学習活動に集中し学習できたか。  ・自分の気持ちを伝えることができたか。    ・符号に注意して加法と減法の混じった計算を正しく行うことができたか。

時間 学習活動 指導上の留意点・支援 評 価導入5分

あいさつ健康観察

●前時の申し送りを基に、生徒の状態を観察する。

展開20分

既習事項の確認⑴正負の数の加法の計算をする。 ①(+5)+(+2)=+7  類似問題数題

⑵正負の数の減法の計算をする。 ①(+3)-(+9)=-6  類似問題数題

課題把握加法減法の混じった計算 -(+2)=-2、 -(-2)=+2 であるこ

とを理解させる。問題提示 括弧をはずし計算をする。 ①(-4) + (+1) + (-5)  =-4+1-5 =-8類似問題数題課題解決の確認自己評価

●状態が悪い場合は、

・+の符号に着目し支援する。・正負の数の加法の計算方法を確認

させることで次の問題につなげる。●生徒の様子を観察しながら1問ず

つ問題に取組ませる。・衝動的な行動に留意する。・負の符号に着目し支援する。・正負の数の減法の計算方法を確認

させることで次の問題につなげる。

・符号に着目させる。

・符号に着目し支援する●生徒の様子を観察しながら1問ず

つ問題に取り組ませる。・衝動的な行動に留意する。

 学習課題の達成度合いを確認させる。

課題に取り組めたか。符号の変化が理解できたか。正しく計算できたか。

間違いに気がつき、正しく修正できたか。

15分

数学の時間は終了し、興味を示すものに取り組む。本児が興味を示すと思われるものを提示する。<例示>卓球 将棋 創作活動など

●心理的安定を保つため、本児が興味を示すものに授業内容を変える。

●興味を示したものに取り組む

自ら選択できたか。

まとめ5分

本時の評価を行う。

次回の連絡あいさつ

●学習に積極的に取り組めたことを評価し、自信が持てるよう励ます。

楽しく活動にとりくめたか。

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   (年度途中に転入・転出する短期在籍児童生徒の場合は、小中学校に準ずる年間指導計画を作成しているため、ここでは例示しない。小中学校の年間指導計画を参照されたい。)

特別な教育的ニーズ

情緒的な不安定さや発達のばらつきなどがあり、不安を感じやすく自己肯定感が低下しやすい。こうした実態と、保護者の願いを踏まえ、①心理的な安定を図る ②適切なコミュニケーション方法を獲得する ③望ましい人間関係の形成などへの支援が必要である。

本人・保護者の願い ○対人関係がうまくとれるようになってほしい。○勉強したことを生活に役立ててほしい。

教育機関の支援

目標・機関名 支 援 内 容 評 価

所属校

①基礎・基本となる学力の定着を図り、学習習慣を育てる。

②適切な対人関係を育成する。

(○○特別支援学校)

①体験的な学習を多く取り入れる。達成感を得られるような学習活動で主体的に学習する意欲を育てる。

②相互に意見交流のある関係の中で学習活動を展開する。

在 籍 期 間 転入日 平成○○年○月○○日 転出日指導方針 ○安心感の中で、適切なコミュニケーション能力を高め、安定した人間関係

を築く力を育てる。○自己肯定感を大切にして、自信をもって学習できるようにする○適切な援助や教材の工夫を行い、学習や生活の中で、読む・書く・計算す

る力・考える力・伝える力の基礎を確実に身に付ける。指 導 に 結 び つ く 児 童 生 徒 の 様 子

健康の保持 心理的な安定 人間関係の形成 環境の把握 身体の動き コミュニケーション○大きな音が苦手である。○目に付いたものに興味を示す。初めて経験することなどに不安が強い面がある。○他の人たちが話していると、前後の脈絡なく入り込もうとすることが多い。○対人関係の上で適切な距離を保つことが難しい。

教科・領域等 学習課題・目標 指導内容・方法(手だて) 評 価自立活動 ・生活を通して対人関係

や活動レベルを適度にコントロールする。

・環境や学習課題を、視覚的に構造化する。

・相手とのやり取りを整理しながら話す。

算数 ・入院中の学習活動の継続・問題の意図を読み取り解

決できる。・自信の獲得

・下学年の学習内容の習熟を確認する。

・個別指導の落ち着いた環境で、新規の学習内容に取り組む。

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小学部3年 算数科学習指導案

日 時 平成○年○月○日(○)第○校時場 所 病棟内小学部教室指導者 ○○○○

1 単元名   水のかさをはかろう

2 単元について ⑴ 児童観   本訪問教育部は、入院中の児童生徒のための訪問学級である。この児童生徒らは入院時期も

転入時期もそれぞれ異なっており、また転出の時期もそれぞれである。入院や在籍の期間、ことや、 こと、また家族と離れ

て になっていること等が本学級児童生徒の特性としてあげられる。   本訪問教育部では児童生徒の実態を丁寧にみつめ、特定の教師が個別に関わることを通して

ことを大切にしている。また、退院前には前籍校や家庭でより健康的な生活が送れるように を見通した支援に努めている。

   指導日現在在籍は2名で、共に小学3年生である。治療経緯や転入時期、学習の習熟度などの違いから、算数科の指導は で行っている。本児Aにとって、教室での学習時間は他児との交流ができる貴重な時間でもある。個別指導の時間を確保して学習効果を高めるとともに、年齢相応の豊かな人間関係をはぐくむ場所として学級が機能していくことを目指している。本単元の指導にあたっては こと、 を楽しみながら集中して学習できることを重視した。

 ⑵ 単元観   本単元は、実際に道具を操作しながら学習を進めることができるので、児童の興味を引き出

しやすいものといえる。目で見ること、手を使うことなどを通して効果的に理解を促すことができる。そのためには、学習の環境が整備され集中を助ける静かな環境であることや、教師との間で「学習する」という関係性の確立が必要である。そのため転入当初は、教師との間でラポートを築くことを大切にし、具体的な道具の操作の伴う学習は、本児の学習時間や場面の理解が充分に深まってから取り組むことにした。

   また、かさの概念を身近な道具を使って獲得し、生活に生かしながら応用していくことで、立体図形や容積の学習への基礎を築くことにもつながっていく。単位の表記を確実に身に付けさせ、単位ごとの関係を実感もって理解できるよう支援する。

 ⑶ 指導観   本単元では生活に密着した身近な道具の操作を数多く取り入れる。本児Aにとって学習が役

に立ち、学ぶ喜びを保護者とも共有できることと同時に、保護者の願いである「生活に役立つ学習」にも結びつくと考えたからである。

   自立活動の指導については「生活の質の向上」を目指し、本単元で学習したことを普段の生活の中で定着させること、好ましい をねらっていきたい。

   入院の背景にもつながる実態や本児Aの特性から考えて、教えられる立場だけでなく、共に学んだり、誰かに教える体験を通して理解を深めたり思考を整理したりすることに重点を置くことが有効であると考え、こうした観点を個別学習の機会の中で実践することとした。

   学習意欲を高めるために、次の2点を学習指導の中に取り入れた。

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  ①シールの利用や採点の工夫   ・予定を立てた学習に取り組むことができたら好きなシールを与える。   ・誤答した場合でも×はつけず、二度考えたときには二重丸(◎)をつけたり本児の好きな色

での丸つけをしたりする。  ②目に見える学習成果   ・本人が見たいときや誰かに見せたいときに自由に使えるよう、取り組んだプリントは一つ

のファイルに保存し、本人に保管させる。   ・一回に取り組む課題を少なく提示し、小さな達成感を回数多く味わえるよう配慮する。

3 単元の目標 ⑴身近な入れ物のかさに関心をもち、いろいろな方法を工夫して比べようとする。  かさの測定の仕方や単位の関係について、長さの学習を基に考えようとする。〔関心・意欲・態

度〕 ⑵長さの学習経験を生かして、数値化することのよさや普遍単位の必要性を踏まえ、かさの比べ

方や表し方を考える。〔数学的な考え方〕 ⑶直接比較や間接比較、任意単位による測定などによってかさを比べることができる。  かさをℓや㎗を単位として正しく測定することができる。〔表現・処理〕 ⑷かさについての基礎的な概念や比較の仕方、任意単位や普遍単位による測定の方法を理解する。  測定の意味やかさの単位、及び単位の関係を理解する。〔知識・理解〕

4 児童の実態 対象児:小学3年女児A。  転入当初は病棟個室内で学習していたが、教室に登校するようになって○週間経過した。○週

間後に退院の予定である。児童の実態 単元の目標

学習空白があるが、時間の単位、長さの計算、掛け算九九について定着している。

・長さや重さの概念と比較し、かさの概念を獲得する。(知・理)

・数値化することが、かさの大小を正確に比較できる一つの方法であることを知る。(数思)

・身近な容器を使った学習を通して、ℓ・㎗の量を実感できる。(表・処)

・言葉での説明は苦手である。作業手順は見て理解することが多い。

・操作を伴う学習の中で、言葉で説明することで理解の定着を図っていく。(知識・理解)

・漢字の読みや書きが苦手である。新規の学習への意欲が高い。

・単位の相互の関係をつかみ、任意の単位を使って測定できる。(知・理)

・新しい表記の方法であるℓや㎗、mℓを単位を使ってかさを表すことができる。(表・処)

・達成感、成就感を強く求める傾向がある。「自分でやりたい」という思いが強い。

・目に見える学習成果や、教師の賞賛によって自己肯定感を向上させる。

・学習の成果や喜びを他者と共感しあう。共感の心地よさを知る。(自立活動)

・環境の刺激を受けやすく、情緒や行動が不安定になりやすい面がある。前籍校では、集団での学習の時に集中の困難さがみられたようである。

・安心できる空間で、知る喜びや学ぶ喜びを体験する。(自立活動)

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5 指導計画  『水のかさをはかろう』指導計画   (6時間扱い:本時4/6)

6 本時の学習⑴ 個別目標・かさの測定をして比較できる。・異なる単位のかさの計算に挑戦する。・教師とのやり取りや共感関係を通して、学習の意欲を高められる。

時 学習内容と目標 指導上の留意点 評価規準

①かさの概念・大きいと重いもの、大きくて軽いもの

もあることを理解する。・かさを知ると、生活に役に立つことに

気付く。

新規の学習への意欲を高める。新しい学習単元に関 心 が も て た か。

(関・意・態)

身近なものを挙げてかさの概念をつかもうとすることができたか。(関・意・態)数値化することで比較ができることを知ったか。(数思)

ℓや㎗の表す量を実感できたか。(知・理)

②かさの測定見た目の大きさでなく基準の単位を使って、いろいろな入れ物の水の量を比べる。

・1ℓは1㎗10杯分であることを知る。・コップ1杯は2㎗であることに気付く。・正しい測定方法を身に付ける。

身近な容器で、直接比較と間接比較を行う。身近な容器のかさを知らせる。

正しい測定の方法を考えさせる。無駄のない動作での測定を支援する。

③単位間の関係㎗、mℓの関係を理解し、書いたり読んだりできる。単位が表す量を実感できる。・同じ量を表すのにいくつか方法がある

ことに気付く。

市販の飲料水の容器の表記を見せ、別の単位での計量をさせ比較を促す。

かさを測定し任意の単位を使って表現できる。(表・処)

4  

本時

④かさの比較と計算かさの測定をして比較する。異なる単位のかさの計算に挑戦する。

・単位を変えると計算しやすい、わかりやすいことに気付く。

・㎗、mℓ、の表記の練習をする。

正しい測定の方法を確認する。

計量の道具を示し、測定のイメージを浮かばせ計算させる。単位表記の書き方を支援する。

測定の方法を獲得し、目盛の読みを行えたか。(数思)

(表・処)

5 6

定着していない項目について反復学習する。異なる単位のかさの計算に挑戦する。

未定着の学習内容を確認する。未定着部分の反復学習に取り組めたか。(関・意・態)既習の、任意の単位を使ってかさの計 算 が で き た か。

(知・理)

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 ⑵ 展開

6 評価の観点  ・積極的に学習活動に参加できたか。(関心・意欲・態度)  ・かさの単位(㎗)を読み書きできたか。(表現・処理)  ・かさの計算に取り組めたか。(知識・理解)  ・単元の学習を通じて、生活の質の向上につながったか。(自立活動)

時 間 学習活動 指導上の留意点・支援 評  価導入 (5分)

展開1 (15分)

展開2 (10分)

まとめ (10分)

・開始のあいさつ

・前回までの復習 (㎗とmℓの関係)

①予想②手順確認③実際の測定

・プリント学習

・採点

・学習の終わりを告げる

●遊び活動への興味が強い時は「課題終了後に設定する」ことを提案する。

・「どのくらい」をかさで捉えることを促す・㎗とmℓの間の混同がないか確認する。

・かさの計量の方法の想起を促す・「1㎗=100mℓ」を、測定してみせ確認させる。

・無駄のない操作での測定を支援する。手順を再度確認する。

●具体操作の中では生活に密着した道具を利用する。

・予想と測定結果を照らし合わせる。

(児童の興味・関心の高い、生活に密着した発問をする)・単位の変換によって、計算が可能なことに

気付かせる。●具体操作のない学習に取り組む機会をもつ。●誤答には無印で、複数回の取組でその数の

○をつけ、意欲を高める。●プリント課題を細分し、視覚的な課題量を

調節する。

・学習への取組を評価し、努力を賞賛する。●教員とのやり取りを楽しみながら、学習活

動の成果を定着へと導く。

●学習空間など意識し、取組の姿勢になったか

●言葉で説明しようとしたか。

測定の方法と単位の使い方を理解したか。

具体的操作によって正しく測定できたか。

●興味の高い活動を自制し、取組の中で達成感を得られたか。

発問:「このペットボトルにはどのくらいの水が入っているのだろうか」

発問:「どのようにはかれば、正確な量がわかるだろうか」

指示:「㎗の単位を使って実際に計って確かめよう。」

発問(発展):「2㎗と300mℓは合わせることができるだろうか」

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7 教室内環境図  ・院内学級小学部教室を利用する。  ・本児の集中を助けるための教室整備を行う。

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特別な教育的ニーズ

 本児は、四肢機能障害に点頭てんかんを併せ有し、服薬もあるため生活リズムは不安定である。不随意運動が多く、四肢の変形・拘縮もみられる。外界からの刺激や人との関わりでは感じたことを少しずつ表出している。このような状況から、①心身を覚醒し、生活リズムを形成する。②心身のリラクセーションを促し、変形・拘縮の進行を予防する。③さまざまな感覚を活用し、本児なりの表現方法を身に付ける。等の支援と医療機関との連携が必要である。

本人・保護者の願い 楽しい学校生活を送ってほしい。教育機関の支援

目標・機関名 支 援 内 容 評 価

所属校

①覚醒している時間を長くしていく。

②身体の緊張のリラクセーションと各部位の変形・拘縮予防。

③諸感覚を活用し、人や物からの刺激を受け止め、感情を表出する。

(○○特別支援学校)

①言葉掛け、手顔拭き、やさしく触れる等で覚醒を促す。

②弛緩や様々な姿勢、動き等で緊張を緩め、心身のリラクセーションを促す。

③諸感覚を活用した様々な体験を通し、感情の表出を促す。

指導方針 体調の変化や発作に留意し、①昼夜の生活リズムを少しずつ整え、授業時の覚醒を促す。②身体全体の緊張を弛緩させて心身のリラクセーションを図り、変形・拘縮の進行

を予防する。③周囲の環境を受け止める力・感じる力を高め、快・不快や感情の表出をさらに促す。以上のことを心地よい、ゆったりとした流れや関わりを大切にし、心身が安定した状態のなかで指導することを心がけたい。

指 導 に 結 び つ く 実 態2  環 境 の 把 握

(認知・認識・感覚の活用・学習面など)

・突然の音には、びっくりして身体のつっぱりや声が出ている。発作が起きることはほとんどない。

・音楽が流れると動きを止め音源に目を向ける。緊張が緩むなど聴いている様子がみえる。

・身体への触刺激での強い緊張は見られず、くすぐったさには敏感である。・温冷や質感の違う物に触れると動きが止まったり、手を握ったり指を反ら

したりする。・様々な匂いや香りに表情を変え、口をつぐんだりする。・強い光に目を閉じたり、狭い範囲の不規則な動きがあるものは目で追った

りすることがある。・色のはっきりしたものは注視しやすく、そこから追視することも増えてきた。

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教科・領域等 学習課題・目標 指導内容・方法(手だて) 評 価

自立活動

感  覚

・諸感覚を活用することで周りのことに気付く。

・快・不快を自分なりに表出する。

・興味を拡大する。

・いろいろな物を見る、聴く、触る、嗅ぐことで素材の変化や質感に気付かせる。(映像、効果音、紙、粉、粘土、草花など)

・発声や身体での表現を細かく読みとり、応えてあげる。

粗大運動

・様々な動きを楽しむ。 ・抱っこや遊具での動き(傾き、揺れ、スピード感)に気付かせ、要求の表現を引き出すようにする。(エアートランポリン、水袋、キャスターボード等)

自立活動(粗大運動)

学習グループ指導者

○○○○  ○○○○ ○○○○○○○○  ○○○○小・訪1,2

ねらい

・様々な遊具を使って粗大運動の揺れや動きを楽しむ中で、気付いたことや感じたことを表出する。・主に前庭覚へのかかわりを通して、運動機能、感覚機能を養い高める。・集団の雰囲気を感じて、人と関わる力を養う。

期 月 指  導  内  容 評     価

前     

4「HTWで遊ぼう」2回(※HTW…○◯特別支援学校ワールドの略)1.始まりの曲 2.あいさつ 3.準備運動 4.活動① 5.活動② 6.クールダウン (Eパレード)    (タッピング)  (車椅子ダンス)(エアトラ、Cボード)

授業時数 

 

15

5「電車に乗って HTWへ行こう」

9「劇遊びをしよう『ふしぎなたねとなかまたち』」(感覚・粗大運動・リズムをあわせた学習)秋の果物、砂、大きなお絵かき、楽器遊び、劇遊び、台車、エアートランポリン等

後     

10「エアートランポリンを満喫しよう」 エアートランポリンでの活動のみ (その中での動きを個々の実態により変える)

授業時数 

 

21

11「冬が始まるよ」 エアートランポリンでの活動のみ (BGMなどで冬の雰囲気を感じる)

12

1日本のお話「♪おにはそと~♪」 ビデオ or 指人形 or 絵本により学習を知る マメの感触や匂いを感じ、豆をまく

2「春の野原で遊ぼう」(前庭覚、触覚、視覚、聴覚、嗅覚等)ガタガタ道、春のトンネル、桜の香り

3「卒業・修了式をしよう」(触覚、視覚、聴覚等) 卒業・進級作品づくり(粘土等)

1.始まりの曲2.あいさつ

3.活動① (台車)

4.活動② (遊具)

5.クールダウン6.終わりの歌

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訪問・訓練棟グループ 自立活動(粗大運動)学習指導案                         日 時 平成○年○月○日(○)第○校時                         場 所 ○○○病院プレイルーム                         指導者 MT○○○○  T1○○○○                             T2○○○○  T3○○○○                             T4○○○○

1 題材名     「電車に乗ってHTWへ出かけよう」(※HTW…◯◯特別支援学校ワールドの略)

2 題材について ⑴ 児童生徒観    訪問グループの児童7名は○○○病院に入院している。そのうち

を得ている児童は6名である(※1名はベッド学習のみ)。6名ともに隣接する訓練棟、またはプレイルームで学習

している。   身体面について、全員生活全般に支援が必要で、移動方法は5名が車椅子、1名がベッドの

ままである。姿勢を保持する力の向上が見込まれる児童や運動制限が極めて多い児童がいる。   健康について、2名の児童は安定しており訓練棟の授業に出席している。1名の児童は

をしている。   環境の把握について、視覚をよく活用し人や物を追視する児童が1名。残りの児童は明暗の

程度がわかるか否か不明と診断されているが、人や物を注視している様子もある。聴覚に関しては大きな音にのみ気付きを見せる児童や、小さな音にも気付き音楽等に傾聴していると思われる児童もいる。

   コミュニケーションについて、抱っこや語りかけ、その他様々なかかわりに対して、快・不快の気持ちを身体の緊張や弛緩、微細な口もとの動きなどで表出していると思われる者から、明確な笑顔で応えられる児童まで実態は幅広い。

 ⑵ 題材観   上記のような実態に差がある児童に対して本グループでは「自立活動」の授業として「心理的

な安定」「コミュニケーション」を大切にしながら以下のような区分を考慮し、取り組んでいる。○身体作り…個別の学習「健康の保持」「身体の動き」を重視した内容○感覚  …集団の学習「環境の把握(見る、触るを中心に)」を重視した内容○リズム …集団の学習「環境の把握(聴くを中心に)」を重視した内容○粗大運動…集団の学習「身体の動き」を重視した内容

   今回の授業「粗大運動」では  ・様々な遊具を使って粗大運動の揺れや動きを楽しむなかで、気付いたことや感じたことを表

出する  ・姿勢保持の力や身体の意識を高める  ・身体を動かすことへの興味・関心を高める  ・集団の雰囲気や人との関わりを感じコミュニケーション能力を高める  をねらいとしている。本題材「電車に乗ってHTWへ行こう」では準備運動の導入、児童生徒同

士の距離感を大切にした集団での活動、それぞれの児童生徒が好きな遊具で遊ぶ活動、心と体を落ち着けるリラックスタイムを、見通しやすいようにストーリー性をもたせ構成している。

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 ⑶ 指導観   準備運動は毎回同じBGMを使用して個々の児童にあった運動をすることで、授業の見通し

をもつことと、身体をほぐすことを意図している。展開の前半は児童の距離感を大切に一つの台車に2~3人で乗り一緒に活動をする。一緒に活動していることを直接感じにくい児童には教員が媒介となり声を掛けながら、一緒に活動している雰囲気を感じてもらいたい。また怪獣の登場は動きの変化への明確な印象と、怪獣とのやりとりを感じてほしい。あわせて

の児童も歌を歌いながらの活動や怪獣の登場等から楽しい雰囲気を感じとってほしい。後半の遊具遊びでは、好きな遊具に乗ることで、快や楽しい、嬉しいという気持ちを教員に表現し、またその気持ちを教員がくみ取りそれに寄り添った活動になることをねらいとしている。その上で、活動に抗重力姿勢を取り入れ姿勢保持の力などを身に付けていけるようにしたい。リラックスタイムでは穏やかな雰囲気のなかで、身体と心のリラックスを図る。

   これらの活動から友達や教員と一緒に活動するよさを感じ取り、人や物とかかわる力が高まることを願い、本題材を設定した。

3 単元目標 ⑴ 遊具の動きや活動の変化を感じて気持ちを表すことができる。(理解・表現) ⑵ 好きな遊具や揺れの活動を見つけ、楽しみながら活動できる。(思考・判断・意欲・態度) ⑶ 友達や教員とのかかわりに気付き、気持ちを表すことができる。(関心・理解・表現) ⑷ 活動に見通しをもち、授業に気持ちを向けることができる。(知識・理解・意欲・態度) ⑸ 姿勢保持の力や身体への意識を高める。(関心・技能)

4 児童の実態               生活全般の実態 単元における実態と経過

A(小2女)

訓練棟での授業に常時参加できていて、5月から週に1回登校している。視覚は光を感じる程度、聴覚は聞こえが良くないとされているが、迎え時には声を掛けると表情が和らぐ。定頚していない。緊張が強く、急な姿勢変換などで驚いた時には両手が上がって力が入ってしまうことがある。声を掛けると、口もとがほころんだり、穏やかな表情になったりする。両腕を上下に揺らすと笑顔になることもある。

・台車に乗った活動では表情の変化などの表出はあまりないが、キャラクターが追ってきたり、声を掛けると、表情が和らいだりすることがあった。

・エアトランポリンの膨らみを仰臥でよく感じている。揺れについてはクッションチェアで身体を起こした姿勢であれば、よく感じているようだ。

(小6男)

5月下旬頃から体調が安定し、訓練棟の授業が続いている。睡眠-覚醒のリズムが不安定なため、授業時間中眠っていることが多い。視覚に関しては大きく色がはっきりしている物については注視することが多くなってきている。聴覚に関しては音を聴いていると思われる反応がある。授業に見通しを立てているか否かは不明。定頚は不完全だが、支持有りの座位保持はできる。上肢の不随意運動が多い。場の雰囲気を感じ取っているか否かは不明だが、集中している時や快の時には不随意運動が減る。

・怪獣が現れると目を向けて見ていると感じられる様子がある。台車の動きの変化には体動で気持ちを表す。

・エアトランポリンの小さな揺れではリラックスしたような穏やかな表情をする。激しい動きになると、腕を動かし始める。しぼむ時には息がもれ、弛緩している様子が見られる。

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5 指導計画 「電車に乗って出かけよう」

6 本時の学習目標 ⑴ 共通目標    ○台車や好きな遊具の動きを楽しみ、気付いたことや感じたことを表す。    ○友達や教員、キャラクターとのかかわりから、集団活動の雰囲気を感じ、気持ちを表す。 ⑵ 個別目標

 ⑶ 展開

あいさつ・準備運動 活動① 集団活動10/10(本時) 活動② 好きな遊具リラックス

タイムA

○始まりの音楽

○あいさつ

○準備運動

電車に乗って出かけよう

○友達と一緒に台車に乗ったり、車椅子等の動きを感じたりする。

○怪獣とのかかわり

好きな遊具で遊ぼう

・エアトランポリン

Mスカーフと風船を見な が ら リラックス

B ・エアトランポリン

△ ・エアトランポリン

□ 腕ブランコ 楽器

▽ ・エアトランポリン

◇ ・エアトランポリン

A○友達と一緒に活動していることに気付き表情や体動で表すことができる。○エアトラで友達と活動していることや大きい揺れに気付き、気持ちを表すことができる。

時間

学習活動指導上の留意点・支援

備考 評価A

5

【出かける準備をしよう】○始まりの音楽を聴く・学習の始まりに気付く。

○始めのあいさつをする。

・何らかの返事が返せるように十分な間を取り、表出にあわせて言葉掛けを返す。

BGM1

BGM2

口、目、体の動きで返事をすることができたか。

・マット上で安心できる姿勢で学習を始める。

・体調により、抱っこかマットで安心できる姿勢で学習を始める。

・何らかの返事が返せるように十分な間を取り、表出にあわせて言葉掛けを返す。

・口のもぐもぐや目を向ける様子があったらほめる。

●声を掛け、目の動き発声、体動に変化がみられたら応え、ほめる。

○準備運動をする・身体をほぐし気持ちを

学習に向ける

・1対1で身体を揺らしたり、動かしたりしながら身体をほぐす。

・動きを共感できるように話しかけながら身体を動かす。

・臥位で腰や脚を揺らす。

・揺らす部位がどこなのか声を掛けながら行う。

・心身の覚醒を促すようにタッピングと全身のくすぐりを行う。

・動かす部位の言葉掛けをしながら行う。

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10

【みんなでHTWへ出かけよう】

○友達と一緒に汽車(台車・BGMに合わせて身体を動かす)で出かける。

・友達や教員を意識する。・台車の動きを感じ楽し

む。・気持ちを表す。

○怪獣の登場・場面の変化を感じる。・怪獣とのやりとりを感じ楽しむ。・気持ちを表す。

○HTWへ行くことを伝え、台車を提示する。●台車では近くに友達がいることを感じられ

るようにお互いが見える位置をとる。●BGMに合わせて歌いながら楽しい雰囲気

作りをする。ゆっくりとした動きからはじめ、動きを共感できるような言葉掛けも交えながら台車の動きを感じたり、身体の動きを感じたりできるように配慮する。

BGM3

台車クッション

BGM4

楽しい雰囲気や台車の動きに対して表情その他で気持ちを表出することができたか。

キャラクターに目を向けたか。

・友達と向かい合って台車に乗る。一緒に活動している様子を伝えるような言葉をかけながら動く。

●友達と向かい合って台車に乗る。一緒に活動している様子を伝えるような言葉をかけながら動く。

○怪獣はやりとりに気付けるように一人一人をまわり、目の前まで近付いたり手を握ったりする。

・怪獣とのやりとりが分かるような言葉掛けをする。共感・代弁するような言葉掛けをする。

● 怪 獣 は 騒 が し く、タッピングを交えながらかかわる。共感・代弁するような言葉掛けをする。

○怪獣と戦う。・怪獣とのやりとりを感

じ楽しむ。

○動きに前後・前輪を振る・大きく動かすなど強くし、怪獣と戦い、動きが変化していることが気付くようにする。

・活動を盛り上げるような言葉掛けをする。・動きの変化を感じ、楽

しむ。・気持ちを表す。

○HTWに到着

・Cチェアごとに動かし、大きな揺れに気付けるようにする。

・静かになった時に、場面が変わることを共感するような言葉掛けをする。

・前後や左右の大きな細かい揺れの変化に気付けるようにする。

●刺激に対して表れた、目や身体の動きに呼応するように言葉掛けをする。

BGM切 揺れに気付くような表情や動きを示したか。

20

【HTWの好きな遊具で遊ぼう】

○移動し、エアトランポリンの音を聞く。

・場面の変化に気付く。・これから自分の好きな

遊具で遊ぶ見通しを立てる。

・それぞれのクッションチェアやマット、指定の場所に移動する。

○MT場面の変化に気付くように十分な間を設けてから、「3・2・1」の合図でエアトランポリンのスイッチを入れる。

エアトランポリン

音に対して体の反応を示したか。

・マットへ移動する。・音に対して、口の動

きが表れるのを待ってから言葉掛けをする。

・マットへ移動する。●音に対して、目の動

きや腕の動きが表れるのを待ってから言葉掛けをする。

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 ⑷ 評価

○好きな遊具で遊ぶ。・エアトランポリンの好

きな動きを楽しむ。膨らみ→小さな揺れは4人で、その後1~2人乗り順番で好きな動きを行う。

・快、楽しいという気持ちを表す。

○順番を待つ。○活動の終わりを感じる。・エアトランポリンのし

ぼみに気付く。

・活動に一体感がもてるように始まりのかけ声「3・2・1」は全員で声を出す。

●エアトランポリンでは、膨らみの小さな揺れは全員で感じ、その後は順番に1~2人乗り、好きな動きを行う。動きの有無を感じ、気持ちを表せるように活動の最中にも止まる時間を設ける。

●それぞれの気持ちを代弁・共感するような言葉掛けをする。

BGM5エアトランポリン入

エアトランポリン切

動きの有無を感じ、表情に快や楽しさを示す変化を見せたか。

エアトランポリンのしぼみを 感 じ、表情や体で示すことができたか。

・膨らみ、小揺れは臥位で感じるようにする。好きな動きでは臥位・チェアに乗り横揺れ、回転させる。

・表情の変化に注意し、共感するように言葉掛けをする。

・臥位で乗る。好きな動きでは膨らまし、縮みの連続を行う。

●大揺れでは興奮から、体動が大きくなる。この動きに代弁するような言葉掛けをする。発声があった活動を繰り返す。

・友達の活動の様子が見えたり、感じられたりできる位置をとる。

・Cチェアで待つ。 ・Cチェアで待つ。・安心してしぼみを感じられるように、頭が

下がらないように等姿勢に配慮する。【リラックスタイム】○身体と心を休める。・A・B・C・Eはエア

トランポリン上に寝転がりスカーフや風船を見ながら休む。

○終わりの歌を歌う。・学習の終わりに気付く。

・活動の余韻を感じられるように静かな雰囲気付くりを心がけ、雑音は立てず静かに語りかける。

BGM6

ムーブメン ト スカーフ風船

スカーフに目を向けたり注視したりできたか。

・スカーフを目前で動かしたり風船に触り感じたりするようにする。

・スカーフの動きを注視したり目で追ったりできるようにゆっくりと動かす。

・学習の終わりを意識できるように静かに歌いかける。

Aキャラクターに目を向けることができたか。口元がほころんだり、穏やかな表情になったりしていたか。

Bキャラクターを注視できたか。手を動かしたり、声を出したりできたか。

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 ⑸ 配置図

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