4 低温...
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§4 希釈冷凍とフェルミ統計
L.D. Landau, Sov. Phys. JETP 3, 920 (1957); ivid, 5, 101 (1957)
断熱接続• T = 0で準静的に粒子間相互作用をスイッチオンする
• 粒子数は不変
p, s
裸の3He原子
理想フェルミ気体(相互作用なし)
フェルミ運動量:
良い量子数:(運動の恒量)
素励起:
フェルミエネルギー:
px
py
pz
H29S 現代実験物理学 I(福山 寛)
1
𝑝" = ℏ(3𝜋(𝑛)+ ,⁄
𝜀" =𝑝"(
2𝑚
3He準粒子(有効質量: m*)
p, s
フェルミ液体(強い相互作用)
px
py
pz
代表例:液体3He重い電子系(4f伝導電子)
𝑝" = ℏ(3𝜋(𝑛)+ ,⁄
𝜀" =𝑝"(
2𝑚∗
ver.4
§4.1 フェルミ液体論福山寛「希釈冷凍機の原理としくみ」http://kelvin.phys.s.u-tokyo.ac.jp/files/dilution_fridge_v1.x.pdf
フェルミ液体の低温比熱T ® 0 とすると dnps ® 0 なので、十分低温(T << TF)では準粒子間相互作用は無視でき、そこでの比熱Cは、
を使って、以下のように書ける。
F1s : 準粒子間相互作用を表すランダウパラメータの一つ
dnps : 理想フェルミ気体のフェルミ分布からのずれ
TF**
TF*
TF*
D.S. Greywall, PRB 27, 2747 (1983)
液体3Heの比熱
• at T << TF**
• m*/m3 = 2.8 → 5.9 (P = 0 → 3.44 MPa)
(P = 0)
(P = 3.44 MPa)
TF* = (m/m*)TF
理想フェルミ気体重いフェルミ気体
現実の液体3He
2
𝑆 = −𝑘56𝑛78ln𝑛78 + 1 − 𝑛78 ln 1 − 𝑛78
�
7,8
𝑛78 = exp�̃�𝒑,𝝈 − 𝜇𝑘5𝑇
+ 1H+
𝐶 = 𝑇𝜕𝑆𝜕𝑇 =
𝑘5(𝑝K𝑚∗
3ℏ, 𝑇 = 𝛾𝑇
フェルミ液体の低温帯磁率
: 理想フェルミ気体の T = 0での帯磁率
外部磁場 H の印加によって準粒子分布に dnpsの等方的な変化が誘起される。それによるエネルギー変化は
µ0 : 3Heの核磁気モーメント
準粒子間相互作用による分子場
ここでdnp = -dnp¯なので、
∴
C : キュリー定数,
F0a : スピンの向きに依存した準粒子間相互作用を表すランダウパラメータの一つ
At T << TF**,
c/c0 = 9.2 → 23.7(P = 0 → 3.44 MPa)
c = const.
At T >> TF**,
:パウリ常磁性
:キュリー則
液体3Heの帯磁率A.L. Thomson et al., PR 128, 509 (1962)
TF** = (c0/c)TF
TF** = 0.430 K
TF** = 0.258 K
3
𝛿𝑛↑ = 𝑁 0 𝜇Q 𝐻 −2𝑓QT𝛿𝑛↑𝜇Q
𝛿𝜀7̃↑ = 𝜀7̃↑ − 𝜀78 = −𝜇Q𝐻+1𝑉6𝑓QT 𝛿𝑛7↑ − 𝛿𝑛7↓ .
�
7
––– m*/m = 2.5
X = 5%m*/m = 2.45
X = 1.3%m*/m = 2.38
pure 3He
D.O. Edwards et al., PRL 15, 773 (1965)比熱
A.C. Anderson et al.,PRL 17, 367 (1966)帯磁率
§4.2 3He-4He混合液
液体4Heの中に溶け込んだ3Heの準粒子エネルギーは:
液体4Heの素励起(phononーroton)は、低温(T≤ 0.5 K )では無視できる(mechanical vacuum).
したがって、純粋液体3He以上にフェルミ流体論がよく適用できる (希薄系)。
Landau-Pomeranchuk理論L.D Landau and I. Pomeranchuk, Dokl. Akad. Nauk. USSR 59, 669 (1948)
I. Pomeranchuk, Zh. Eksper. I Teor. Fiz. 19, 42 (1949)
−E3: 化学ポテンシャル (< 0)(液体4Heに囲まれて、エネルギーが下がる)
m*: 有効質量(液体4Heに囲まれて、質量が重くなる)
相分離
4
3He-4He混合液体の相分離
µ3 (d-phase)
- E3
Exce
ss 3 H
ech
emica
l pot
entia
l (K)
X3He濃厚相 (c-phase)
T = 0
µ = -2.67 K (真空から)
C. Ebner and D.O. Edwards,Phys. Reports 2, 77 (1970)
a (0, 0) = 0.284 ± 0.005 (引力的)
液体4He中の3He原子の過剰体積:
3He化学ポテンシャルの増分:
G (T): 理想フェルミ気体のギプスの自由エネルギー
3He希薄相 (d-phase)
E3: 液体4He中の3Heの束縛エネルギー
G (T = 0) = TF µ X2/3
3He + 4He(X = 6.6 %)
pure 3He
d相の3He臨界可溶度:X = 6.7%
5
動作原理と特徴・3Heが濃厚相から希薄相へ溶け込む (蒸発する) ときのエントロピー差を利用。
・3Heを選択的に排気するための工夫(蒸留器の存在)。・T = 0でも希薄相の3He濃度 (実効的な“蒸気圧”) が有限に止まる (6.6%) ため、低温でも大きな冷却力をもつ。
・連続的にT ≈ 10 mKの低温を維持できる (数ヶ月間以上)。
フェルミ縮退した系のエントロピーはT に比例し、粒子密度n の2/3乗に反比例する。
§6.3 3He-4He希釈冷凍機
濃厚相から希薄相へ溶け込むときに奪う潜熱はだから単位時間当たりの3Heの流量を とすると、冷却力は、
とT 2に比例する。
(真空ポンプの排気速度:5 l/s)
6
𝑆 =𝜋(𝑘52𝑇K
𝑇 =𝜋(𝑘5(𝑚∗
ℏ( 3𝜋(𝑛 ( ,⁄ 𝑇
�̇� W = 84�̇�, mol s⁄ 𝑇(
福山寛「希釈冷凍機の原理としくみ」http://kelvin.phys.s.u-tokyo.ac.jp/files/dilution_fridge_v1.x.pdf
3He-4He希釈冷凍機の実際
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希釈冷凍機の原理3Heと4Heの飽和蒸気圧曲線
蒸留器(T ≈ 0.7 K)では選択的に3Heが排気される。
3He-4He希薄混合液の3He浸透圧
蒸留器(T ≈ 0.7 K)内はX ≤ 1%
0.3 0.410-1
100
101
102
103
104
105
0 0.5 1 1.5 2
P (
Pa)
T (K)
3He
4He
H. Preston-Thomas, metrologia 27, 3 (1990)
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希釈冷凍機の応用例宇宙マイクロ波背景輻射検出器(PLANCK衛星)
焦点面ユニット希釈冷凍機
PLANCK衛星
マイクロ波検出の心臓部をT = 100 mKまで冷却
ヨーロッパ宇宙機関 (ESA)2010-2013
T = 80 mKまで冷却した半導体熱容量検出器(超伝導ボロメータ式)でWIMP (weakly interacting massive particles) による原子核反跳を観測する。
米国ミネソタ大学・Soudan地下実験施設研究所
地下実験(深さ780 m)
暗黒物質検出器(CDMS)
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§4.3 ポメランチュク冷却法と超流動3Heの発見
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エポキシ樹脂
金属
キャパシタンスブリッジへ
真空真空BeCuベロー
195Pt核帯磁率温度計
BeCuひずみ容量圧力計
希釈冷凍機混合室へ
10 mm
D.D. Osheroff and hisPomeranchuk cooling apparatus (1971)
原理 • 3Heの液相と固相の大きなエントロピー差を利用した断熱固化(圧縮)冷却法• 3Heの融解曲線がT = 320 mKで極小点をもつことを利用
長所 • mK域で非常に大きな冷却力• 数T以下の外部磁化を印加して冷却力はそれほど落ちない
注意点 • 固体3Heの核磁気秩序温度 (0.9 mK) 以下で冷却力が急減• 可動温度範囲が狭い
T (mK)
冷却
吸熱
DQ
= TD
S
ln2
固体
液体
エントロピー:
S/
RP
(bar
)
液体
固体
3Heの相図とエントロピー
超流動3Heの発見 (1)
“Evidence for a New Phase of Solid He3”D.D. Osheroff, R.C. Richardson and D.M. Lee, Phys. Rev. Lett. 28, 885 (1972)
(1) ポメランチュク冷却過程で二つの相転移点(A, B)を発見
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A転移は冷却・加熱時で同じ温度で起こる→ Tc ≈ 2.7 mK,の2次相転移
固体3Heの2種類の反強磁性核磁気秩序か?
B転移は大きな過冷却が観測される→ Tc ≈ 1.8 mK,の1次相転移
(2) 核磁気共鳴(NMR)法で磁気的な変化を調べたところ…
A点以下の温度で “液体3He”のNMR信号が高周波側へシフト
A転移は液相の相転移だった !
圧縮前の液体3Heの信号
圧縮開始後の固体3Heの信号均一磁場中
超流動3Heの発見 (2)
Position
|H0|H0
solid liquidH1
空間分解能を得るために、試料に磁場勾配を印加してNMR測定してみた
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B転移近傍のNMR吸収曲線と融解圧力
時間
圧力
NMR信号
Position
NMRイメージング (1次元MRI)
B転移も液相の相転移だった !B点より低温で液相のNMR信号強度が半減する
“New Magnetic Phenomena in Liquid He3 below 3 mK”D.D. Osheroff, W.J. Gully R.C. Richardson and D.M. Lee, Phys. Rev. Lett. 29, 920 (1972)
超流動3Heの発見 (3)
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David M. Lee Robert C.Richardson
Douglas D.Osheroff
Nobel prize in Physics 1996
"for their discovery of superfluidity in helium-3"
from Osheroff's lab notebook (1971)
1 2 3T (mK)
0
1
2
3
4
P (M
Pa)
超流動A相
超流動B相
常流動
固体
三重点
u2d2
3Heの低温相図
フェルミ粒子(3He, 電子)の超流動・超伝導:・粒子2個がクーパー対を作ってボース・アインシュタ
イン凝縮する
通常の超伝導体のクーパー対
異方的超流体
異方的クーパー対 (スピン三重項クーパー対):・軌道角運動量 L =1 (p波)・スピン角運動量 S =1 (スピン三重項)
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"for pioneering contributions to the theory of superconductors and superfluids"
Nobel prize in Physics 2003
Anthony J. Leggett(1938−)
超流動ヘリウム3の微視的理論
超流相3He-A相のクーパー対
Y = forb(r1, r2) yspin(s1, s2)偶 (l = 0: s波) × 奇 (S = 0: 一重項)奇 (l = 1: p波) × 偶 (S = 1: 三重項)偶 (l = 2: d波) × 奇 (S = 0: 一重項)
: 通常の超伝導体: 超流動3He, Sr2RuO4(?), ...: 銅酸化物高温超伝導体
:クーパー対の波動関数
P = 2.87 MPa
液体4Heと3Heの超流動転移
Tl = 2.17 K @s.v.p.x (0) ≈ 0.1 nm
液体3Heの超流動転移はBCS型Tc = 0.93 mK @s.v.p.
x (0) ≈ 80 nm
液体4Heの超流動転移はラムダ型
T.A. Alvesalo, T. Haavasoja and M.T. Manninen,J. Low Temp. Phys. 45, 373 (1981)
臨界温度域(tG)に関するギンツブルク条件:
(3D-XYモデル)
tG ≈ 1×10 -5臨界温度域は極めて狭い(分子場的):
(t ≤ 1×10 -6にplanar相が存在?)
tG ≈ 10-1臨界温度域が広い:
15𝑡a =1
32𝜋(𝑘5∆𝐶𝜉,
(
∝1𝜉e
𝑡 ≡ 1 − 𝑇 𝑇g⁄
界面熱抵抗(カピッツァ抵抗)熱流の担い手は物質で異なるので、異種物質の界面には、付加的に熱抵抗 (RK) が発生し、低温では熱伝導の妨げになる。
K. Andres and W.O. Sprenger, Proc. 14th Int. Conf. on Low Temp. Phys. 1, 123 (1975);
A.I. Ahonen et al., J. de Physique 39 suppl. 8, C6-265 (1978)
焼結銀粉と液体3Heの間の界面熱抵抗
液体4He:フォノン (密度波)液体3He:準粒子 (フェルミ面上の粒子)金属:伝導電子 (準粒子)、フォノン
(1) フォノンが界面熱伝導を担うとき
(2) 金属中磁性不純物の電子スピンと3He核スピンが界面熱伝導を担うとき
RK∝ T -1
RK∝ T -3
3He-4He希釈冷凍機の熱交換器には、数十~数百m2の大表面積をもつ焼結金属粉が使われる。
16
17
希釈冷凍機の応用1: 重力波検出器(AURIGA)
アルミニウム棒の共鳴器をT = 100 mKまで冷却M = 2.3 tL = 3 mf0 = 1 kHz
重力波による振幅 ≈ 10-20 m熱振動による振幅:
http://www.lnl.infn.it/~auriga/イタリア・Legnaro国立研究所
= 4 × 10-18 m at T = 0.1 K18
希釈冷凍機の応用例: 暗黒物質検出器(CDMS)T = 80 mKまで冷却した半導体熱容量検出器(超伝導ボロメータ式)でWIMP (weakly interacting massive particles) による原子核反跳を観測する。
http://cdms.berkeley.edu/米国ミネソタ大学・Soudan地下実験施設研究所
地下実験(深さ780 m) 19
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3He供給危機 (Helium-3 Supply Crisis)
米国国土安全保障省 (DHS)がテロ対策として中性子検出器用3Heガスを大量に使用し始める。
米国エネルギー省 (DOE)が水爆用の3Hを製造する際の副産物である3Heを安定供給
1989─冷戦の終結(ベルリンの壁崩壊)
1988─3Hの製造停止
2001─9.11同時多発テロ
2007まで─2~3万円/L, 年間供給量6万L
2010─50~60万円/L
2009─年間供給量3.5万L (需要は21.3万L)
入手がかなり困難 (特に米国以外では)。Science 326, 778 (2009)
米国議会下院科学技術委員会小委員会にて、3He供給問題の科学者ヒアリング (2010年4月)
低温物理の必要量は年間0.3-0.5万L (3He-4He希釈
冷凍機、3He冷凍機)
代替中性子検出器の開発
が急がれる (BF3ガス、シンチレータ, ...)
6Li + 1n → 3H + 4He,3H → 3He+ + e- + ne(半減期12.4 年、ne:電子ニュートリノ)
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月には大量の3Heガスが埋蔵されている !?
q 太陽風に含まれる3Heが、数十億年の間、月の裏側の地表近くに大量に吸着されているはず。
q 将来、月面基地でこれを原料に核融合発電したり、地球に持ち帰る。
Ø ガスを高効率で吸着するチタン鉱物は月の裏面には少ない。
Ø 含有量はせいぜい10-8 (重量比)? ←核融合には十分?
Science 303, 1603 (2004)
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量子固体
3He
hcp構造bcc構造
量子固体 (引力のためではなく、斥力を避けるために量子局在する)
L
Vmax
quantum tunneling
e, s : L-Jポテンシャルのパラメータa : 格子定数
: 作用
CP : 数係数sP : symmetry factor
固体He中原子の量子トンネリング
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固体4He中の希薄3He不純物原子のトンネル拡散
S.N. Ehrlich and R.O. Simmons, JLTP 68, 125 (1987)
拡散係数 :
a : 格子定数V0 : 不純物 (3He)-不純物 (3He) 相互作用
A.F. Andreev, Sov. Phys. Usp. 19, 137 (1976)
固体4He中で3He原子は準粒子のように動き回る。
相分離曲線 (同位体相分離)
(3He濃度)
圧力緩和時間 (t) の3He濃度 (x) 依存性V.N. Grigor'ev, et al., Low Temp. Phys. 29, 883 (2003)
(cm2/s)
固体4He中の3Heのトンネル周波数J34 ≈ 1.3 MHz ≈ 1 µK
24
f
Heisenbergモデル(有効スピンハミルトニアン)フェルミオン2粒子系の波動関数 (Y) :
これと同じ固有値を与える有効スピンハミルトニアン(Heff):
Heisenberg型有効スピンハミルトニアン:
Jij > 0: FM Jij < 0: AFM2J ≡ Es – Ea : 交換相互作用
軌道部分 スピン部分
V (r)
r0
He系は運動エネルギーが、電子系はクーロン相互作用がJ の正負を決定 25
固体3Heの磁気的性質(常磁性相)
R.A. Guyer, R.C. Richardson and L.I. Zane,Rev. Mod. Phys. 43, 532 (1971)
exchange narrowingT2 µ |J |
W.P. Kirk et al., PRL 23, 833 (1969)
帯磁率T2交換相互作用 J
強い体積依存性|J | µ V 18
反強磁性的qW (= -4J) < 0
:Curie-Weiss則
:Weiss温度 26