4. 分類 5. 抽出 · 2020. 5. 1. · no.1 no.2...

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-「プライマリー・ストラクチャー」の特性に着目した地域交流拠点の設計 - 道具的建築 農村、漁村という生産地域のイメージである風景の中に、食物を干すための架構や陶器を生成する釡など、生産のための構造物が出現して いる。これらの構造物は、生産者たちが効率よく作業を行えるように改良を重ねてきた、装置的な器である。そのため、構造物たちがもつディ ティールには、環境や需要の変化など、出会う問題に対して一つ一つ解答しているような明快さがあり、生産者たちはそれを自分の手先や道 具の延長であるかのように操作し、つかいこなしているようにも見える。本研究では、こうした構造物を「Primary Structure(プライマリー・ ストラクチャー)」(以下PS)と呼ぶことにし、これらが持つ特徴が環境に対してどう応えているかを把握し、建築を設計するエレメントとし て転換する。 1. PS に関する先行研究 これまでの PS に関する研究では、PS それぞれに対して素材・構法・地域性などの観点からなされてきたが、PS の環境条件に対する効果 や形状の観点から考察しているものは少ない。 そこで本研究では、PS の持つ形態と環境要素の関係性についての調査・分析を行い、得られ たエレメントを設計提案に取り入れる。 丸干し大根の大根やぐら 出典:食と建築土木 後藤治・二村悟 出典:食と建築土木 後藤治・二村悟 出典:https://www.jti.co.jp/ Culture/museum/ collection/ salt/s8/index.html 出典:http://kntryk.blog. fc2.com/blog-entry -1633.html?sp 出典:https://kotobank.jp/ word/112447 製塩架構 かきや のぼり窯 覆下茶園 2. PS の持つ可変性 生産者は、既存の PS の架構に新たに梁を乗せるなどして本来の機能を拡張し、能動的に使いこなしていることから、PS は生産者にとって 道具として認識されていると捉えることができる。ウィリアム・モリス(1834~1896)や柳宗悦(1889~1961)は、アーツ・アンド・クラ フツ運動や民藝運動において、「用(生活)と美(意匠)の融合」にこそ芸術の本質を見出しており、PSもこれに当てはまると感じた。PSの 構成を設計に取り入れることで、人間が能動的に使うことができ、愛着のもてる道具的建築の可能性を示す。 <根拠となる分析内容> 調査シートから自然環境との関係や効果を分析し、収集した 33 の PS を、環境に対する付加的価値があるものとないものに分類した。なお、ここでの環境 に対する付加的価値とは、風や光、熱などの自然環境要素と架構などの構造物が組み合わさり、空間の質を変化させている状態のことである。 例えば、茹で干し大根の大根やぐらは、海からの風を効率よく受けるための工夫が施されており、これは環境に対する付加的価値があると解釈する。 バラバラの形態、素材で構築されるヴァナキュラーな PS の中に潜む普遍性をあぶり出す作業として、似ているように感じるものを集め、ど の視点で見たときに似ているのかを考察し、また、他の視点で見たときに変わる効果を確かめていく、という作業を繰り返し行った。 4. 分類 茹で干し大根の大根やぐら 床素材 / 防風網またはエキスパンドメタル 設置場所 / リアス式海岸沿いの崖 効果・目的 / 干す 関係している環境要素 / 風、太陽 工夫 / やぐらは稜線からせり出すかたちで常設され ている。陸繋島に当たって吹き上げる風は、スノコ 状の櫓の床を抜けて、大根を乾燥させる。この風を 求めて農家は苦労してこの場所にやぐらを組んだ。 3. 分類方法の検討 抽出した空間構成要素から導かれる、抽象化した形態モデルを作り出し、どのような環境に対する付加的価値(効果)があるかを考え、建築を設計する要 素として転換する。 6. 形態モデルの創作 丸干し大根の大根やぐら かきや ・・・受光 ・・・通風 ・・・通風 ・・・遮光 ・・・遮光 ・・・遮光 PS 視覚的事実から導かれる形態モデル 環境に対する付加的価値 No.1 No.2 分類した 16 の PS の中から、空間構成要素(写真やスケッチから読み取れる視覚的事実)を抽出した。 5. 抽出 ・開口部の石・レンガを崩す。 ・床が階段状になっている。 ・暗い。 ・ドーム型である。 ・アーチの開口がある。 ・直線屋根と曲面屋根が重複している。 登り窯 ・屋根は着脱可能になっている。 ・湾曲している。 ・屋根部材は透明性がある。 ・藁葺きの屋根のものは水分蒸発の効果がある。 ・明るい。 ・物を上部に干している。 ・斜面にせり出している。 ・風が強い。 ・擁壁についている。 串柿のかきや ウド小屋 ・・・受光 ・・・遮光 ・・・遮光 ・・・通風 ・・・通風 ・・・保温 串柿のかきや No.3 No.4 No.6 48° ・・・遮光 ・・・除湿 ・・・保温 ・・・伝熱 凍み豆腐干し 天草倉庫 登り窯 No.7 No.8 No.9 茹で干し大根の大根やぐら

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Page 1: 4. 分類 5. 抽出 · 2020. 5. 1. · No.1 No.2 分類した16のPSの中から、空間構成要素(写真やスケッチから読み取れる視覚的事実)を抽出した。

-「プライマリー・ストラクチャー」の特性に着目した地域交流拠点の設計 -

道具的建築

 農村、漁村という生産地域のイメージである風景の中に、食物を干すための架構や陶器を生成する釡など、生産のための構造物が出現している。これらの構造物は、生産者たちが効率よく作業を行えるように改良を重ねてきた、装置的な器である。そのため、構造物たちがもつディティールには、環境や需要の変化など、出会う問題に対して一つ一つ解答しているような明快さがあり、生産者たちはそれを自分の手先や道具の延長であるかのように操作し、つかいこなしているようにも見える。本研究では、こうした構造物を「Primary Structure(プライマリー・ストラクチャー)」(以下 PS)と呼ぶことにし、これらが持つ特徴が環境に対してどう応えているかを把握し、建築を設計するエレメントとして転換する。

1. PS に関する先行研究

 これまでの PSに関する研究では、PSそれぞれに対して素材・構法・地域性などの観点からなされてきたが、PSの環境条件に対する効果や形状の観点から考察しているものは少ない。 そこで本研究では、PSの持つ形態と環境要素の関係性についての調査・分析を行い、得られたエレメントを設計提案に取り入れる。

丸干し大根の大根やぐら出典:食と建築土木

     後藤治・二村悟 出典:食と建築土木

     後藤治・二村悟 出典:https://www.jti.co.jp/

Culture/museum/collection/

salt/s8/index.html

出典:http://kntryk.blog.fc2.com/blog-entry

-1633.html?sp

出典:https://kotobank.jp/word/112447

製塩架構かきや のぼり窯 覆下茶園

2. PS の持つ可変性

 生産者は、既存の PSの架構に新たに梁を乗せるなどして本来の機能を拡張し、能動的に使いこなしていることから、PSは生産者にとって道具として認識されていると捉えることができる。ウィリアム・モリス(1834~1896)や柳宗悦(1889~1961)は、アーツ・アンド・クラフツ運動や民藝運動において、「用(生活)と美(意匠)の融合」にこそ芸術の本質を見出しており、PSもこれに当てはまると感じた。PSの構成を設計に取り入れることで、人間が能動的に使うことができ、愛着のもてる道具的建築の可能性を示す。

<根拠となる分析内容>

 調査シートから自然環境との関係や効果を分析し、収集した 33 の PSを、環境に対する付加的価値があるものとないものに分類した。なお、ここでの環境に対する付加的価値とは、風や光、熱などの自然環境要素と架構などの構造物が組み合わさり、空間の質を変化させている状態のことである。 例えば、茹で干し大根の大根やぐらは、海からの風を効率よく受けるための工夫が施されており、これは環境に対する付加的価値があると解釈する。

 バラバラの形態、素材で構築されるヴァナキュラーな PSの中に潜む普遍性をあぶり出す作業として、似ているように感じるものを集め、どの視点で見たときに似ているのかを考察し、また、他の視点で見たときに変わる効果を確かめていく、という作業を繰り返し行った。

4. 分類

茹で干し大根の大根やぐら

床素材 /防風網またはエキスパンドメタル設置場所 /リアス式海岸沿いの崖効果・目的 /干す関係している環境要素 /風、太陽工夫 /やぐらは稜線からせり出すかたちで常設されている。陸繋島に当たって吹き上げる風は、スノコ状の櫓の床を抜けて、大根を乾燥させる。この風を求めて農家は苦労してこの場所にやぐらを組んだ。

3. 分類方法の検討

 抽出した空間構成要素から導かれる、抽象化した形態モデルを作り出し、どのような環境に対する付加的価値(効果)があるかを考え、建築を設計する要素として転換する。

6. 形態モデルの創作

丸干し大根の大根やぐら

かきや

・・・受光

・・・通風

・・・通風

・・・遮光

・・・遮光

・・・遮光

PS 視覚的事実から導かれる形態モデル 環境に対する付加的価値

No.1

No.2

 分類した 16 の PSの中から、空間構成要素(写真やスケッチから読み取れる視覚的事実)を抽出した。

5. 抽出

・開口部の石・レンガを崩す。・床が階段状になっている。・暗い。・ドーム型である。・アーチの開口がある。・直線屋根と曲面屋根が重複している。

登り窯

・屋根は着脱可能になっている。・湾曲している。・屋根部材は透明性がある。・藁葺きの屋根のものは水分蒸発の効果がある。・明るい。・物を上部に干している。・斜面にせり出している。・風が強い。・擁壁についている。

串柿のかきや

ウド小屋

・・・受光

・・・遮光

・・・遮光

・・・通風

・・・通風

・・・保温

串柿のかきや

No.3

No.4

No.6

48°

・・・遮光

・・・除湿

・・・保温

・・・伝熱

凍み豆腐干し

天草倉庫

登り窯

No.7

No.8

No.9

茹で干し大根の大根やぐら

Page 2: 4. 分類 5. 抽出 · 2020. 5. 1. · No.1 No.2 分類した16のPSの中から、空間構成要素(写真やスケッチから読み取れる視覚的事実)を抽出した。

・・・通風

・・・保温

木造ビニールハウス

No.5

・・・受光

・・・防風

魚垣

No.10

・・・防風

・・・防風

・・・冷却

・・・受光

・・・模型

・・・防風

・・・冷却

湯の花小屋

製塩架構

ワサビ田

No.11

No.12

No.13

・・・受光

・・・遮光 ・・・遮光

・・・保温

・・・伝熱

・・・伝熱

・・・通風

覆下茶園

ウイスキー工房

茶葉審査の日除け

No.14

No.15

No.16

7. 適用の手順 - モノのための建築からヒューマンスケールへ -

 プログラムの求める環境性能を風向きなど方角や用途から割り出し、それらに合わせて、形態モデルの形を少しずつ変えながら適用させていくことで、モノのためのスケールからヒューマンスケールへ変化させていく。 なお、仮設部分の設計においては 3-2. 調査シートに記した素材や接合部分を設計の手がかりとする。

アーチ状の断面を風向きに直行させ、縦方向に引き伸ばす。

Example 1 Example 2 Example 3

風を潜り抜けさせることで構造物自体へのダメージを減らし、風を感じる通路をつくった。

細分化されたカーテン付きのガラス屋根へ転用することで、天井から柔らかい光が落ちる洗面室をつくった。

架構に取り付けたアルミ版が揺れることで木漏れ日の入る壁をつくった。アルミ板に海が写りきらきら光る。

モデルを組み合わせ、天井面に転用。干し物を布に変換する。

モデルを組み合わせ、斜めの壁に転用。面の素材はアルミ板に変換。

創作した形態モデル

適用のための操作

生まれた空間 /付加価値

8. 計画敷地

 本計画は、三重県志摩市大王町の波切地区の中の二箇所を計画敷地とする。この地域は、石工や漁業の産業によって、石段や漁港、灯台など美しい街並みを残しており、絵描きの街として親しまれている。大王町は高齢化率が 40%を超える(平成 28 年度志摩市人口ビジョン図 12. 旧町別の高齢化率の推移より)超高齢化地域であり、今後縮退は免れない土地といえるだろう。

8-1. 地形と継ぎ接ぎ建築 8-2. 丘端

 人口の増加に伴って矮小な高台の土地へも家が建てられ、傾斜地集落となり、現在も昔の住宅が空き家となりそのまま残されている。また、石垣やコンクリート壁に防風対策としてシートをかぶせるなど、継ぎ接ぎしたような建築が多く目立っている。

 かつて高台の端部に存在した、老人たちの集まり場であり、それぞれの高台で港の見える丘に数カ所ずつ点在していた。なお、丘端(オカバナ)という呼び名は、この土地の造語である。コミュニケーションのきっかけを生む要として働いていた。

(*出典:11 の集落・外空間の構造) (*出典:11 の集落・外空間の構造)

階段状に広がる住宅地 石段と住宅のジョイント 防風装備の継ぎ接ぎ建築(*出典:11 の集落・外空間の構造)

丘端

9. プログラム

Site A ギャラリー・ゲストハウス・レストラン

 既存の「絵描きの町大王 美術ギャラリー」は、志摩市役所大王支所に併設されており、立地上観光客などの来訪者が訪れにくい。そこで今回は、アーティスト・イン・レジデンスの一環として、ギャラリーを新しく設けると同時に絵描きが一時的に滞在しながら絵を描き、展示していくことのできる建築を新しい土地に提案したい。波切の風景が更新されていく様子を、絵描きの手によってアーカイブしていく計画である。また、大王町には宿泊施設が少ないため、画家以外の来訪者でも泊まれるものとする。

Site B 鰹節の燻小屋・老人ハウス・ショップ

 老朽化に伴い建て替えが必要な燻小屋の設計。燻小屋は見学に訪れる観光客が多く、波切にとって重要な観光資源である。 同時に、かつて山先丘端にあった老人ハウスを再建する。現在は各々の住宅の玄関口にその役割はうつってしまったが、数年前まで井戸端会議を行っていた集落の核と言える丘端を再構築することで、地域交流の場に繋げる。このふたつは、鰹を燻す匂いや港の風景が、この土地を想起させる要素にもなれば良いと考え、コンプレックスとする。

stay&

sketch

gallerypainter

stone stock

smell

factoryNursing homeOKABANA

stone stock

Site A プログラムダイアグラム Site B プログラムダイアグラム

 創作した形態モデルには、風や日光など気候の要素を取り入れ、空間に微気候をつくり出すことが得意なものや、地形に応えるようつくられたものがある。 このことから、対象敷地内に形成されている微地形と、方角から読み取ることのできる情報を敷地モデルに示し、適用の手がかりとする。

10. 地形と形態モデルの転用

空間に微気候を生み出すmodel

地形に対応するmodel

Page 3: 4. 分類 5. 抽出 · 2020. 5. 1. · No.1 No.2 分類した16のPSの中から、空間構成要素(写真やスケッチから読み取れる視覚的事実)を抽出した。

 作成した形態モデルを用途と地形に合わせて変形(スケールの適合・素材の変更など)を行い、適用させていく。

Site A 形態モデルの転用

3 面アーチ階段 トライアングル・ストラクチャー うきぐもギャラリー

点対称ダイニングジグザグ天井の化粧室 雀型ゲストハウス

テラス

化粧室

トイレ

SiteA 1F Plan

ダイニング

浴室

洗面所

仮設舞台

ギャラリー

厨房客席

a

b

c’

a’

b’

c

効果

操作

付加的価値 付加的価値

用いた形態モデル

名称

適用箇所

効果

操作

用いた形態モデル

名称

適用箇所

3 面アーチ階段

レストランアプローチ

風を潜り抜けさせることで構造物自体へのダメージを減らし、

風を感じる通路を生む。

防風

アーチ状の断面を風向きに直行させ、縦方向に引き伸ばす。

トライアングル・ストラクチャー

レストラン客席部分

逆三角形のヴォリュームによって、建築周辺に大きな日影をつくる。

遮光

頭でっかちなヴォリュームとするため、W 型に木材を組む。

傾斜地下から吹き上げる風が通り抜ける逆三角形通路

日影をつくる逆三角形の塊

めくり上げることで庇となる布側面のアーチ形状によって接地

面を減らし、強風によるダメージを減らす

頭でっかちな構成を実現するW柱

うきぐもギャラリー

ギャラリー

ゲストハウスキッチン

点対称ダイニング

ダブルスキンの屋根によって保温効果を補い、階段状の床の蹴上部分からは風が通る。

南からの浜風が吹き抜けることを防ぎ、建物へのダメージを軽減する。

受光・伝熱・保温・通風

防風

形態モデルを組み合わせ、形態は維持したまま素材を適合させる。

四角形の床に、点対称性を導入。

木造ビニールハウスで用いられているビニール屋根面を引用した、光の透過する屋根

登り窯の重複した屋根の構成と連続アーチ型を引用した屋根形状

点対称の切り妻屋根を実現する多面体屋根面

外部からの視線を遮断しながら、自然光を取り入れる装置

室内の温度を一定に保つ、地形に沿ったヴォリューム

床を地面から離し、段差が現れた部分に通風の開口を設ける

効果

操作

付加的価値

付加的価値

用いた形態モデル

名称

適用箇所

効果

操作

用いた形態モデル

名称

適用箇所

入射光を拡散させるジグザグ架構と布

曲面を用いた天井を湯気が伝達する

座ると暖かい、リビングの床

湯気の出る吹き出し口

木漏れ日の入る分割カーテン付きの天窓

ジグザグ天井の化粧室

レストラン化粧室

ジグザグ状に組んだ半透明布によって入射する光を拡散し、

自然光のもとお化粧ができる部屋。

光の拡散

スケールを縮小し、ジグザグの密度をあげ、天井面に転用。

雀型ゲストハウス

絵描きのいえ

窓から吹き出し口までの湯気の通路を曲面を用いてつくることで、湿気を逃しつつも保温し、

柔らかい採光が湯船に落ちる。

保温・伝熱・遮光

モデルを組み合わせ、別のエレメントに転用。

光を通す塩ビ波板の覆い

施工の段階で石積み壁に十字柱を挿入し、取り替え可能な 4本の木柱

効果

操作

付加的価値 付加的価値

用いた形態モデル

名称

適用箇所

効果

操作

用いた形態モデル

名称

適用箇所

クツイシによって、同じ位置に仮設舞台を再現する 地形の影響をそのまま受けることで現れた段差から植栽を覗くレストランの化粧室では、ジグザグ天井によって、たくさんの光が拡散する

ジグザグ天井:施工の段階で石積み壁に十字柱を挿入して固定し、架構の 4 本の木柱は取り替えることができるようになっており、雨水をダイレクトに受けても数年で更新可能な仕様。

雀型ゲストハウス:曲面天井によって誘導される浴室の湯気は、くちばしの窓から排出され、逆に窓から入射した光は、間接的に浴室まで届く。

トライアングル・ストラクチャー:斜めの壁がついていて、めくると軒がさらに伸び、傾斜地に溜まり場をつくる。このような可変的な仕掛けを設計に組み込むことで、PS の道具性の導入を試みる。

Page 4: 4. 分類 5. 抽出 · 2020. 5. 1. · No.1 No.2 分類した16のPSの中から、空間構成要素(写真やスケッチから読み取れる視覚的事実)を抽出した。

Site B 形態モデルの転用

吹き上げ干場

グラデーション燻小屋 合掌造りの除湿倉庫

パタパタ屋根の防風庇工場

鰹節製造倉庫

煮釡

干場

焚き口

リフト

燻小屋

階段室

ショップ兼老人ハウス

SiteB 1F Plan

df

f’

e

e’

d’

SiteB d-d’ Section

パタパタ屋根:動く屋根によって風を吹き抜けさせる。また、開閉式屋根を引き上げることで、生まれた軒下は道を歩く人々が立ち寄れる休憩スペースとなる。

吹き上げ干場・合掌造りの防湿庫:干場は吹き上げる風が通るよう、透過性のある床が連続する。

48°

48°

風が吹き上げ、パタパタと動く110 の板

換気のため開くと庇になり、領域を広げる可動式屋根

石の曲面壁により、風を受け流す

架構から木の板を吊り、自由に動かせる棚

石をぶら下げることで木漏れ日が落ちる石のカーテン

二重構造により除湿効果をうむ屋根

蛇籠での防風

45°の片流れ庇

パタパタ屋根の防風庇倉庫

鰹節製造倉庫

合掌造りの除湿倉庫

倉庫・ショップ・老人ハウス

崖下から吹き上げる浜風が石積みに当たり、片面留めの屋根面材を吹き抜けることで、

建物へのダメージを軽減する。

多孔質な素材(エキスパンドメタル)と屋根の二重構造により

中空層をつくり、除湿効果を生む。

防風 除湿・防風・遮光

石壁とモデルを組み合わせる。

石壁とモデルを組み合わせる。

効果

操作

付加的価値 付加的価値

用いた形態モデル

名称

適用箇所

効果

操作

用いた形態モデル

名称

適用箇所

吹き上げる風を利用するため、透過する床面

煙が抜ける網

煙をムラなく配分する、焚き口部分に挿入したプレート

煙の濃淡が現れるよう、レベル差をつける燻システム

架構にぶら下げることで遮光し、ゆらゆら揺れながら木漏れ日を入れるアルミ板の帯

吹き上げ干場

干場

透過性のある床面を崖地に接地することで、吹き上げる風を利用した干場となる。

防風・遮光・通風

スケールを拡大し、モデルを組み合わせる。

グラデーション燻小屋

燻小屋

カツオを並べる床レベルに差をつけることで、燻製具合に差をつけ、良質な鰹節を製造する。

通風

モデルを組み合わせる。

風が吹き上げ、パタパタと動く屋根面

効果

操作

付加的価値 付加的価値

用いた形態モデル

名称

適用箇所

効果

操作

用いた形態モデル

名称

適用箇所

この干場には、この地域で採れる海藻を並べる。干す場所を増やせるような仕掛けや、生産物を運ぶリフトを装備させるなど、建築に道具性を導入した

木漏れ日を作る吊るしアルミ板は揺れながら海を写し、きらきら光る

開閉式屋根を引き上げることで、倉庫内に風を送りつつ、生まれた軒下は道を歩く人々が立ち寄れる休憩スペースとなる