4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法...

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- 130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1) 表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ 補修工法、断面修復工法を併用しなければならない。 (2) また、現場条件により止水及び導水対策を行わなければならない。 【解説】 (1)について 既設水路躯体にひび割れが有る場合、各表面被覆工法のひび割れ追従性を超えるひび割れの変 動があると被覆表面にひび割れが生じるおそれがあるため、ひび割れの状況と併せ行う被覆工法 の特性を踏まえて、各工法を施工しなければならない。また表面被覆工は、事前に既設水路躯体 (下地コンクリート)の断面修復を行うことにより、水路躯体との一体化が図られ、後から行う 被覆工法の施工性が確保される。 よって、表面被覆工法を行う際は、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、事前にひび割れ補 修及び断面修復を行う必要がある。 (2)について 既設水路躯体からの侵入水や湧水がある場合は、表面被覆工法の付着性の低下を来すおそれが あるため、事前に止水又は導水対策を施さなければならない。 止水及び導水対策の方法は、状況に応じて検討する必要がある。 写真 4.2.1-1 断面修復材の充填 写真 4.2.1-2 断面修復終了後 写真 4.2.1-3 ひび割れからの湧水の導水処理

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Page 1: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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4.2 補修工法の施工

4.2.1 表面被覆工法

(1) 表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

補修工法、断面修復工法を併用しなければならない。

(2) また、現場条件により止水及び導水対策を行わなければならない。

【解説】

(1)について

既設水路躯体にひび割れが有る場合、各表面被覆工法のひび割れ追従性を超えるひび割れの変

動があると被覆表面にひび割れが生じるおそれがあるため、ひび割れの状況と併せ行う被覆工法

の特性を踏まえて、各工法を施工しなければならない。また表面被覆工は、事前に既設水路躯体

(下地コンクリート)の断面修復を行うことにより、水路躯体との一体化が図られ、後から行う

被覆工法の施工性が確保される。

よって、表面被覆工法を行う際は、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、事前にひび割れ補

修及び断面修復を行う必要がある。

(2)について

既設水路躯体からの侵入水や湧水がある場合は、表面被覆工法の付着性の低下を来すおそれが

あるため、事前に止水又は導水対策を施さなければならない。

止水及び導水対策の方法は、状況に応じて検討する必要がある。

写真 4.2.1-1 断面修復材の充填 写真 4.2.1-2 断面修復終了後

写真 4.2.1-3 ひび割れからの湧水の導水処理

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4.2.1.1 無機系被覆工法

無機系被覆工法の標準的な施工手順を次に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順が多少異なる場合がある。

(1)準備工

(2)下地処理工

(3)表面被覆工(プライマー工、モルタル被覆工、仕上げ工を含む)

(4)養生工

【解説】

(1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

既設水路躯体(下地コンクリート)から侵入水や湧水がある場合は、表面被覆工の付着性の低

下を来すおそれがあるため、事前に止水又は導水対策を施す。

(2) 下地処理工

下地処理工については、「4.1.2 下地処理工」を参照されたい。

ポリマーセメントモルタルは、ひび割れ追従性を有していない。したがって、既設水路躯体の

ひび割れ部は、必要に応じてひび割れ補修を併用する必要がある。

同じく既設水路躯体の浮き・剥離及びジャンカ等のはつり箇所は、表面被覆工に先立って断面

修復工を行う。

(3)表面被覆工

無機系被覆工法の場合、水流摩耗による既設水路躯体表面の凹凸の不陸調整は、表面被覆工の

中で一体的に行う場合が多い。

1) プライマー工

既設水路躯体と表面被覆材の付着力を確保するため、専用のプライマーを使用する。材

料・工法によって、プライマーの使用量や施工方法が異なり、中にはプライマーを必要とせ

ず、水路躯体表面の湿潤管理(水湿し等)によるものもあるが、いずれの材料・工法も仕様

書に示される付着強度の規格値を満足している必要がある。

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2) モルタル被覆工

ポリマーセメントモルタルを所定の配合にしたがって練り混ぜた後、左官コテ又は吹付け機

械によりコンクリート表面に被覆する。

3) 仕上げ工

ポリマーセメントモルタルの表面に仕上げ養生材を塗布し、表面を平滑に仕上げる。

写真 4.2.1.1-1 プライマー塗布

写真 4.2.1.1-4 仕上げ工

写真 4.2.1.1-2 ポリマーセメント

モルタルの練混ぜ

写真 4.2.1.1-3 左官コテによる施工

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(4)養生工

直射日光や強風により、被覆表面に乾燥ひび割れ等が生じないように、必要に応じてシート養

生などを行う。また、冬期施工では、養生時の温度管理を行うとともに、初期凍害を防止するた

めの加温養生を必要に応じて行う。

所定期間の養生後、表面被覆工の付着強度及び被覆厚さが品質管理上の規格値を満足している

ことを確認する。

写真 4.2.1.1-5 付着強度試験 写真 4.2.1.1-6 表面被覆完了

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4.2.1.2 有機系被覆工法

有機系被覆工法の標準的な施工手順を次に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順が多少異なる場合がある。

(1) 準備工

(2) 下地処理工

(3) 不陸調整工(必要に応じて)

(4) 表面被覆工(プライマー工、中塗り工、上塗り工、仕上げ工を含む)

(5) 養生工

【解説】

(1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

表面被覆材の計量、練り混ぜ及び塗布作業を行う施工現場では、あらかじめシート等で養生し

て作業を行う。特に、吹付け工法では、ミストの飛散が多いため養生により周辺環境への配慮が

必要である。

有機系被覆材は、不透水材料が多いため、背面からの水圧に抵抗できない場合がある。よって、

既設水路躯体に侵入水や湧水が見られる場合は、事前に止水又は導水処理を行う。

写真 4.2.1.2-1 ビニールシート養生設置 写真 4.2.1.2-2 ビニールシート養生設置内部

(2) 下地処理工

下地処理工については、「4.1.2 下地処理工」を参照されたい。

(3) 不陸調整工(必要に応じて)

下地処理後、既設水路躯体(下地コンクリート)表面に不陸がある場合など、躯体断面の復旧

と表面を平滑にするため、必要に応じて、無機系不陸調整材などをコテ又は吹付けで塗布し、断

面復旧及び不陸調整工を行う。

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(4) 表面被覆工

有機系被覆工法の表面被覆工には、塗付け工法と吹付け工法の 2種類がある。

用いる材料・工法によって使用する材料が異なるため、施工仕様(設計・工法の特徴)を確認

する。

①プライマー工

工法の仕様により、既設水路躯体と表面被覆材の付着力を確保するため、専用のプライマーを

使用する。製品によって使用量や施工方法が異なる。

プライマーを塗布するにあたり、既設水路躯体又は不陸調整材の表面含水率を測定するものと

し、高周波容量式水分計で 5%未満とする。

写真 4.2.1.2-4 プライマー工

②中塗り工

ⅰ) 配合及び練り混ぜ

主材、硬化材及び粉体などの配合は、製造業者の仕様を遵守する。材料の練り混ぜは、ハ

ンドミキサー等を用い、気泡の巻き込みが少ないように注意しながら混合する。

なお、吹付け工法で塗装機を用いて施工する場合は、塗装機の設定は材料製造業者の仕様

を遵守する。

写真 4.2.1.2-3 不陸調整工

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ⅱ) 中塗り材塗布

塗付け工法では、表面被覆層はピンホールが生じないようにローラー、金ゴテ、専用塗装機

等で入念に塗布する。また、設計膜厚に応じて塗装回数を調整する。

吹付け工法では、専用塗装機を用いて吹付ける。表面被覆層を吹付けで膜厚を均一に施工す

るため、実施箇所を区割りし、これに要する表面被覆材の量を算出して区割り塗装する等施工

管理が必要である。

表面被覆材の塗り重ね時間間隔は、製造業者の仕様のもとに、施工計画に記載して遵守する。

写真 4.2.1.2-5 吹付け用専用塗装機 写真 4.2.1.2-6 吹付け

写真 4.2.1.2-7 塗付け

図 4.2.1.2-1 吹付け型被覆工法用塗装機例

COMGPAC

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1 1

2

2

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.5

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運 転 ス イ ッチ

運 転停 止

運 転停 止

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入3 0A

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漏 電

AC100-200A

感 度

高 速 型

ブ レ ーカ

A S型

松下 電工株式 会社株 式会社

必動

ず作

月確

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③上塗り工、仕上げ工

工法の仕様により上塗り材、仕上げ材を塗布する。

写真 4.2.1.2-8 上塗り材塗布

(5) 養生工

表面被覆工の後、表面被覆層が使用に耐える状態になるまで、表面被覆層が雨や結露等の影響

を受けることがないように適切に養生する。

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4.2.1.3 パネル工法

パネル工法の標準的な施工手順を以下に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順が異なる。

(1) 接着方式パネル工法

1)準備工

2)下地処理工

3)不陸調整工(必要に応じて)

4)プライマー工

5)パネル設置工

6)パネル目地工

7)樹脂注入工

8)養生工及び仕上げ工

(2) アンカー固定式パネル工法

1)準備工

2)不陸調整工(必要に応じて)

3)パネル取付工

4)パネル目地工

5)グラウト注入工

6)養生工及び仕上げ工

【解説】

(1) 接着方式パネル工法

1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

2) 下地処理工

下地処理工については、「4.1.2 下地処理工」を参照されたい。

3) 不陸調整工(必要に応じて)

凹凸が大きい箇所等、必要に応じて、既設水路躯体(下地コンクリート)の不陸調整を行う。

4) プライマー工

水路面、パネル裏面にプライマーをローラー刷毛で薄く均一に全面に塗布する。

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写真 4.2.1.3-1 プライマー工

5)パネル設置工

パネルを既設水路躯体に SUS 製アンカーネジ(ビス)で仮固定する。

写真 4.2.1.3-2 パネル設置工

6)パネル目地工

液状接着樹脂が漏れ出ないよう、事前にパネルの目地を目地材料でシーリングする。

既設水路躯体に目地又は大きなひび割れがあり、パネル敷設後に動くおそれが有る場合、過度な

集中荷重がかかりパネルにひび割れが発生する原因となるため、パネル目地を躯体の目地又は大き

なひび割れの箇所に合わせて設置する。やむを得ず躯体の目地を跨いで貼る場合は、接着樹脂硬化

後にコンクリートカッターでパネルに切れ目をいれ、目地コーキング処理を行う。

写真 4.2.1.3-3 パネル目地工

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7)樹脂注入工

液状の接着樹脂に固化材を混ぜ、十分に撹拌し、パネル背面の既設水路躯体との隙間へ注入す

る。接着樹脂は少量ずつ混合し、数回に分けて空気だまりが無いよう目視と打診棒等で打音を確認

しながら注入する。常に充填量を測定しながら確実に注入する。

写真 4.2.1.3-4 樹脂注入工

8)仕上げ工

樹脂注入後、パネル表面の保護シートを剥がし清掃する。パネル及び樹脂注入部の上端部を側

壁の天端にシーリング材を用いて斜めにすり付ける。

写真 4.2.1.3-5 仕上げ工

9)施工時の留意事項

①使用材料の保管及び取り扱い

使用する材料は、パネルに反りや欠けが出来ないように保管や取り扱いに注意する。直射日光を

避け、ゴミ、雨、雪等の影響を受けないように密閉した状態で保管する。

②ドライ施工

パネル接着工法は、接着材を使用するため、雨天の施工は厳禁とし、ドライ施工を基本とする。

壁面に湿気があっても施工は可能であるが、水膜があるほど濡れた状態で施工してはならない。接

着面に湧水が認められた場合には、モルタル詰めなどの簡易止水作業を行う。また、天候によりシ

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ート養生が必要な場合は、事前に準備工を行う。表面の湿潤状態の目安は、コンクリート表面の含

水率が 6.5%以下とする。この状態は、表面が黒くしみて見えても、手で直接触って手に水が付着

しない状態が目安である。

(2) アンカー固定方式パネル工法

1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

なお、必要に応じて、事前にアンカーボルトの引抜強度を確認する。アンカー引抜強度試験にお

いて引抜強度が品質規格を下回った場合は、打設アンカーの数量を見直す。

侵入水や湧水のある箇所については、事前に止水又は導水対策を行う。

2) 不陸調整工(必要に応じて)

凹凸が大きい箇所等、必要に応じて、既設水路躯体(下地コンクリート)表面の不陸調整を行

う。

3) パネル取付工

既設水路躯体にアンカーボルトでパネルを固定するが、材料・工法の違いにより取り付け方法が

異なる。

固定金物を設置する仕様の場合は、事前に固定金物を接着系アンカーボルト等で水路躯体に固定

した後、固定金物にパネルを取り付ける。

金属拡張式アンカーで躯体に直接取り付ける仕様の場合は、事前に、水路底版及び側壁にドリル

等で穿孔のうえ内部を清掃し、パネルにはアンカー挿入孔とパネル背面に水路躯体との間隔を確保

するスペーサーを取り付ける。その後、パネルと躯体のアンカー孔を合わせ、アンカーを打設して

パネルを取り付ける。

写真 4.2.1.3-6 アンカー打設用下穴削孔 写真 4.2.1.3-7 アンカー打設によるパネル取付工

4) パネル目地工

パネルの継目部にプライマーを塗布し、乾燥後に目地材を充填する。充填後は、ヘラ等で平滑に

仕上げ、養生を行う。

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写真 4.2.1.3-8 パネル目地工

5) グラウト注入工

既設水路躯体とパネルの間にグラウト材を注入し、注入後は、所定の期間、養生を行う。

グラウトの打設圧力でパネルの変形が想定される場合は、必要に応じて、支保工を設置する。

なお、グラウト打設圧に対して抵抗できる剛性を有するパネルを使用する場合は、支保工設置を

省くことができる。

写真 4.2.1.3-9 グラウト注入工(ポンプ圧入の場合)

6) 仕上げ工

側壁の天端部及び上下流端部等をシーリング材などにより仕上げる。

写真 4.2.1.3-10 仕上げ工

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4.2.1.4 シート工法

シート工法の標準的な施工手順を次に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順が異なる。

(1) FRPシート工法

1)準備工

2)下地処理工

3)不陸調整工(必要に応じて)

4)プライマー工

5)シート貼付工

6)紫外線照射工

7)仕上げ工

(2) 無機系ライニングシート工法

1)準備工

2)下地処理工

3)プライマー工、接着用ポリマーセメント塗布工

4)シート貼付工

5)保護モルタル塗布工

6)養生工

【解説】

(1) FRPシート工法

1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

水路躯体に侵入水や湧水がある場合は、事前に止水又は導水対策を行う。

2) 下地処理工

下地処理工については、「4.1.2 下地処理工」を参照されたい。

3) 不陸調整工(必要に応じて)

凹凸が大きい箇所等必要に応じて、断面修復工や既設水路躯体(下地コンクリート)表面の不

陸調整を行う。

4)プライマー工

水分計を用い、既設水路躯体(下地コンクリート)の水分を測定し、5%未満であることを確認

した後、プライマーをゴムベラやローラー等でシートを貼り付ける範囲全体に塗布する。表面含

水率が高周波水分計で 5%以上であった場合は、強制乾燥等を行い施工する。

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写真 4.2.1.4-1 ローラーによるプライマーの塗布状況

写真 4.2.1.4-2 ヘラによるプライマーの塗布状況

5)シート貼付工

①シート貼付及び脱泡作業

プライマーが固化する前にシートを貼り付け、プライマーとシートの間の空気を金属ヘラ等

で脱泡する。

シート表面(紫外線照射側)の保護フィルムに汚れやプライマーが付着している場合、硬化

の阻害となる場合があるため、紫外線を照射する前に保護フィルム表面をウエス等で清掃する。

写真 4.2.1.4-3 脱泡作業状況

②シートの重ね幅

シートの重ね幅は、50mm 以上とする。

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6)紫外線照射工

①シートの硬化方法

シート貼付後、紫外線遮蔽用設備を外し、太陽光を利用して紫外線を照射する。

太陽光が届かない場所においては、紫外線照射器によりシートを硬化させる。

②硬化確認

シートの硬化確認は、JIS K 5600-5-4「引っかき硬度(鉛筆法)」に準じて行う。芯の先を尖

らせない状態でシートに引っかき傷が残らなければ硬化完了とする。

写真 4.2.1.4-4 硬化確認状況

7)仕上げ工

①端部調整

表面の保護フィルムを剥がし、シート端部からはみ出したプライマーの重合わせ部分のまく

れ等をスクレーパーなどで削り取り、平滑にする。

さらに、既設水路躯体とシートの継目をプライマーでスムーズに平滑に仕上げる。

②トップコート塗布

紫外線によるシート劣化防止のため、表面に、ローラー、刷毛を併用し、色むら塗り残し、

ダレ等がないようトップコーティングする。

写真 4.2.1.4-5 トップコート塗布状況

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(2) 無機系ライニングシート工法

1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

2)下地処理工

下地処理工については、「4.1.2 下地処理工」を参照されたい。

水路躯体に侵入水や湧水がある場合は、事前に止水又は導水対策を行う。

既設水路躯体のひび割れは、必要に応じてひび割れ補修を併用し、断面修復工は、表面被覆工

に先立ち行う。

3)プライマー工、接着用ポリマーセメント塗布工

プライマーを既設水路躯体(下地コンクリート)に塗布し、水路躯体表面及びシートの接着材

として、接着用のポリマーセメントをペースト状に塗布する。

4)シート貼付工

接着用ポリマーセメント塗布後、速やかにシートを貼り付け、シートとポリマーセメントの間

の空気をハンドローラーで押えて除去する。シート面下に空気溜りが残ると接着不良の原因とな

るので、空気抜きを入念に行う。

写真 4.2.1.4-7 シートの貼付け状況

写真 4.2.1.4-6 ポリマーセメントの塗布状況

Page 18: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

- 147 -

5)保護モルタル塗布工

シートの上から、ポリマーセメントモルタルをシート面に刷り込むように塗布する。表面は金

コテで平滑に仕上げる。

6)養生工

施工中、保護モルタルに乾燥ひび割れが生じないよう、必要な養生を行う。低温時の施工に当

たっては、施工中の加温養生等の対策が必要である。

保護モルタルが流水で流亡しないように、3~4 日間養生してから通水する。

写真 4.2.1.4-8 保護モルタルの左官仕上げ状況

Page 19: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

- 148 -

4.2.2 ひび割れ補修工法

ひび割れ補修工法の標準的な施工手順を次に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順は異なる。

(1) ひび割れ注入工法

1)準備工

2)清掃

3)注入用器具の設置

4)ひび割れ表面のシーリング

5)注入

6)養生

7)注入用器具撤去

8)表面仕上げ

(2) ひび割れ充填工法

1)準備工

2)ひび割れ表面のUカット

3)清掃

4)プライマー塗布

5)充填

6)養生

【解説】

(1) ひび割れ注入工法

ひび割れ注入工法の施工方法は、手動式・機械式注入工法、自動式注入工法の 2 種類がある。

自動式注入工法は、ゴムの復元力、空気圧やスプリングを使用した専用の注入用器具を用いて、

注入圧 0.4MPa 以下の低圧かつ低速で注入する工法である。エポキシ樹脂の自動式低圧注入器具(例)

を図 4.2.2-1 に示す。

出典:財団法人 建築保全センター 建築改修工事監理指針

図 4.2.2-1 エポキシ樹脂の自動式低圧注入器具(例)

Page 20: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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ひび割れ注入の材料の種類によっては溶剤を含むものがあり、火気に対する安全・衛生(換気等)

に注意しなければならない。また、エポキシ樹脂等化学反応系の材料には皮膚への刺激等があるの

で、防護具を使用する。

1)準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

2)清掃

既設コンクリートとひび割れシーリング材及び注入用器具の付着を確保するため、ひび割れ部

のコンクリート表面をワイヤブラシ等を用い、ひび割れに沿って幅 50mm 程度のレイタンスや塵芥

を除去し清掃する。

3)注入用器具(座金等)の設置

注入用器具(座金等)をひび割れ上に接着材(シーリング材)で取り付ける。取付間隔はひび

割れ幅によって異なるが、ひび割れ幅が 0.2~1.0mm の場合は、250~300mm 程度を目安とする。

4)ひび割れ表面のシーリング

ひび割れ部表面をシーリング材により注入材が流出しないようにシーリングする。特に、自動

式注入工法の場合は、微細なひび割れからも注入材が漏れることがあるので、幅広くシーリング

することが必要である。シーリング材は、エポキシ樹脂パテや合成ゴム系の剥離性シーラー等が

ある。

コンクリート表面が濡れていたり湿っている場合は、ひび割れシーリング材の接着性の低下を

招き、塗膜の膨れを生じることがあるため、コンクリート表面の含水率は高周波水分計で 8%以

下であることを確認する。

写真 4.2.2-1 ひび割れ部の清掃の例

Page 21: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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5)注入

シーリング材が硬化した後、注入用器具(シリンダー等)を取付け、注入圧力 0.4N/mm2以下で

注入材を注入する。必要に応じて、注入材の補充(追加注入)を行う。なお、貫通ひび割れを伝

って開水路背面から注入材が漏れるおそれのある場合は、協議の上、背面にシーリングを行うか

又は背面より流出しない粘度の注入材を使用する。

エポキシ樹脂注入の施工にあたっては、ひび割れ毎に注入された樹脂の量を記録する。設計注

入量と比較し、大幅に注入された場合は、内部にジャンカ等が有るか背面に流出している可能性

があるため、原因を調査する。

6)養生

注入完了後は、注入器具を取り付けたまま硬化養生をする。

7)注入用器具撤去

注入材の硬化後、注入器具を撤去する。

8)表面仕上げ

ディスクサンダー等でシーリング材を除去し、平滑な面に仕上げる。パテは、ディスクサンダ

ーを用いて削り取るか、ポットガンを用いて加熱し軟らかくなったところを皮すき等で削り取る。

(2) ひび割れ充填工法

1)準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

2)ひび割れ表面のUカット

Uカット用のブレードを用いて、ひび割れに沿ってU字形の溝を電動カッターで設けるものと

する。溝幅 10mm 程度、深さ 10~15mm 程度が望ましく、ひび割れ幅が曲がりくねっている場合は、

できるだけ小さいブレードを用いると良い。

写真 4.2.2-2 注入用座金の設置と

ひび割れ表面のシーリング状況

写真 4.2.2-3 注入用器具による注入例

Page 22: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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3)清掃

Uカット後は、切粉の清掃を入念に行わないと充填材の接着不良を起こす原因となるので、溝

内部の切粉等をワイヤブラシ、刷毛等で除去し、清掃する。

4)プライマー塗布

刷毛等でプライマーを溝内部に塗り残しのないように均一に塗布する。プライマーは、充填材

製造業者の指定するプライマーを使用する。

5)充填

2 液性の充填材の場合は、製造業者が指定する配合比で混合し、色が均一になるまで十分練り

混ぜてから、コーキングガンで気泡を巻き込まないように充填する。

溝内へ充填材をコーキングガンで空隙や打残しのないよう加圧しながら充填し、へらで押え既

設コンクリートと密着させて表面を平滑に仕上げる。

6)養生

充填材が硬化するまでは、ほこり等がつかないように、また、降雨のおそれがあるときは、シ

ート等で必要な養生を行う。

写真 4.2.2-4 U字カットの例 図 4.2.2-2 プライマー塗布

開水路

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4.2.3 断面修復工法

断面修復工法の標準的な施工手順を次に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順が多少異なる場合がある。

(1) 準備工

(2) 下地処理工

(3) 断面修復箇所・範囲の特定、はつり方法の決定及びはつり工

(4) 防錆処理工

(5) 断面修復工(プライマー工、仕上げ工を含む)

①プライマー工

②左官工法

③吹付け工法

④充填工法

(6) 養生工

【解説】

断面修復工法の施工は、左官工法、吹付け工法(乾式、湿式)、充填工法の 3 種類であるが、いず

れの工法も施工の良否によって発揮する性能が大きく異なるため、該当する工法に応じた適切な施

工を行うことが重要である。

(1) 準備工

準備工については、「4.1.1 準備工」を参照されたい。

(2) 下地処理工

下地処理工については、「4.1.2 下地処理工」を参照されたい。

(3) 断面修復箇所・範囲の特定、はつり方法の決定及びはつり工

下地処理後、断面修復工法を施工する箇所と範囲を特定し、構造物の耐力に影響を与えないよ

うに、コンクリートのはつり方法を決定する。断面修復の範囲とはつり形状の例を図 4.2.3-1 に、

コンクリートのはつり方法とその特徴を表 4.2.3-1 に示す。

図 4.2.3-1 断面修復の範囲とはつり形状の例

(10~20mm 程度)

Page 24: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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内部鉄筋が腐食している場合の断面修復の範囲は、断面修復箇所の端部のフェザーエッジ(図

4.2.3-2 参照)を回避するため、劣化部の範囲より多少広く設定し、コンクリートカッターで切

れ目(目安として 10~20mm 程度)を入れ、鉄筋背面まではつり取ることとする。

(4) 防錆処理工

露出した鉄筋は、ケレン棒やディスクサンダー等により錆を除去した後、鉄筋防錆材を塗布す

る。

(5) 断面修復工

断面修復工は、左官工法、吹付け工法及び充填工法の 3 種類があり、標準的な施工方法を以下

に示す。

施工に際しては、温度管理を行い、必要に応じて寒中対策又は暑中対策を行う。

①プライマー工

既設開水路のコンクリートと断面修復材の付着力を向上させるため、専用のプライマーを塗

布する。プライマーは、材料・工法の相違によって、使用量や施工方法が異なり、プライマー

を必要としない場合もある。特に、開水路特有の施工条件における付着性能は、プライマーの

性能により大きく異なることがあるため、注意が必要である。

はつり方法 特 徴

ハンマー+ノミ、

電動ピック

コンクリートのはつり量が少ない時に用いる方法である。簡易な工

具、施工機械で容易に行える方法であるが、はつり能力が低い。

エアーチッパー

コンクリートブレーカ

コンクリートのはつり量が多い時に用いる方法である。コンプレッ

サーを使用するため、はつり能力が高い。健全なコンクリートにダ

メージを与えないように注意する必要がある。

ウォータージェット

コンクリートのはつり量に応じて水圧・水量を調整し、水でコンク

リートをはつり取る方法である。健全なコンクリートへのダメージ

が少ないが、超高圧水噴射装置や水処理施設等の設備が必要となる。

図 4.2.3-2 フェザーエッジの例

表 4.2.3-1 コンクリートのはつり方法とその特徴

Page 25: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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②左官工法

断面修復材を左官コテで塗布する工法であり、断面修復の厚さが大きい場合は、数回に分け

て施工する。

左官工法は、使用材料の種類によって施工方法が異なるので、その材料に適した方法や条件

で施工しなければならない。特に、使用する材料に応じて、施工時の天候・気温・湿度、被着

面の状態・塗り間隔等、適した条件で行わなければならない。

③吹付け工法

吹付け工法には、乾式と湿式がある。

乾式吹付け工法は、骨材を表乾状態程度にする水量若しくは全く水を添加しないで断面修復

材を練り混ぜ、0.7N/mm2程度の圧縮空気により圧送し、吹付けノズル部分で所定の水を混入し

て吹付ける方法である。

湿式吹付け工法は、断面修復材の練混ぜ時に所定量の水を添加して、所要の流動性を確保し

た断面修復材をポンプ等で圧送し、圧縮空気を吹付けノズル部分で挿入して吹付ける方法であ

る。両工法のシステムの例を図 4.2.3-3 及び図 4.2.3-4 に示す。

写真 4.2.3-1 左官工法の例

図 4.2.3-3 乾式吹付け工法のシステム例

図 4.2.3-4 湿式吹付け工法のシステム例

Page 26: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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吹付け作業では、所定の厚みになるよう凹凸や鉄筋の背面などに巣穴が発生しないように均

一に吹付ける。厚みを管理するため、針金、鉄筋などにより施工厚み管理のためのガイドを設

置する。最大吹付け厚みは、天井面及び壁面で 20~50mm 程度を目安とする。

多層施工を行う場合の層間の間隔及び吹付け界面の処理は、使用する断面修復材の特性値及

び仕様に従うものとする。

④充填工法

充填工法は、対象となる修復断面に型枠を設置し、断面修復材をポンプ等を用いて注入する

工法である。充填工法のシステムの例を図 4.2.3-5 に示す。

充填工法による断面修復は、設置された型枠のため充填状況を細部まで確認することが困難

であり、充填開始時から施工完了までの手順及び手法、充填状況や完了時の確認方法などを明

確にすることが重要である。

断面修復工の表面は、所定の形状寸法と表面状態が得られるよう仕上げを行う。部分的に凸

部が生じた場合には、これを削り取るものとする。

(6) 養生工

断面修復後は、風や直射日光、降雨、外気温の影響を避け、適切な手法及び期間の養生を行う。

図 4.2.3-5 充填工法のシステム例

写真 4.2.3-2 吹付け工法の例

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4.2.4 目地補修工法

目地補修工法の標準的な施工手順を次に示す。

なお、材料・工法の相違によって、施工手順は異なる。

(1) 目地充填工法

1)準備工

2)カッター工、ケレン

3)バックアップ材設置(必要に応じて)

4)充填箇所の養生

5)プライマー塗布

6)目地材充填、仕上げ

7)養生

(2) 目地被覆工法

1)テープ(シート)貼付方式

①準備工

②下地処理工

③目地被覆工

2)シート固定方式

①準備工

②予備成形

③プライマー塗布、シーリング材打設

④シート取付け

⑤仕上げ(端部処理)

(3) 目地成型ゴム挿入工法

1)準備工

2)カッター工、はつり工

3)接着材塗布

4)成型ゴム挿入

5)仕上げ(端部処理)

【解説】

目地補修工法は、施工の良否により施工後の性能が左右されることから、適切に施工しなければ

ならない。工法によって施工手順が異なることに留意して、入念に施工するものとする。

(1) 目地充填工法

1) 準備工

目地補修は、表面被覆工法と併せて施工する場合は、表面被覆工の施工後に行うことを標準

Page 28: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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とする。表面被覆工の施工中は、目地に目地棒等を設置し、表面被覆材が目地内部に入らない

ようにする。

なお、目地部背面からの湧水が見られる場合は、別途、止水処理又は導水処理を行い、次工

程へ移る。

2) カッター工、ケレン

既設目地の変状や、既設目地の断面形状を勘案し、必要に応じて既設目地部コンクリートに

カッターを入れ、適宜はつり作業を行い、設計の目地形状を確保する。また、充填材の接着性

を確保するため、ディスクグラインダー等により既設目地部の接着面(2 面)のケレンを行う

ことが望ましい。

3) バックアップ材設置(必要に応じて)

目地内部に目地深さが所定の寸法になるようにバ

ックアップ材を設置する。

4) 充填箇所の養生

目地周辺の汚れを防止するためにマスキングテー

プを貼り付ける。マスキングテープが殆ど張り付か

ない状態は乾燥が不十分であるため、バーナー等に

より施工面を十分乾燥させた後、施工する。

5) プライマー塗布

専用プライマーをローラー、刷毛等で目地部のコンクリート面に塗り残しがないよう均一に

塗布する。

6) 目地材充填、仕上げ

プライマーの乾燥後、弾性シーリング材をコーキングガンで充填し、シーリング材がコンク

リートによく密着するようヘラでしっかりと押さえ、表面を平滑に仕上げる。

7) 養生

シーリング材が硬化するまでは、ほこり等がつかないように、また、降雨のおそれがあると

きは、シート等で必要な養生を行う。

(2) 目地被覆工法

1) テープ(シート)貼付方式

① 準備工

目地補修は表面被覆の施工後に行うことを標準とし、表面被覆の施工中は、目地に目地棒等

写真 4.2.4-1 シーリング材の充填

Page 29: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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を設置して表面被覆材が目地内部に入らないようにする。

目地部背面から湧水が見られる場合は、別途、止水処理又は導水処理を行い、次工程へ移る。

② 下地処理工

表面被覆工法と同一の下地処理方法とするが、表面被覆工を施工しない場合は、所定の下地

処理方法で行うものとし、事前に試験施工を行って付着強度の確認を行う。

③ 目地被覆工

各製品の施工要領に従ってプライマー又は接着材を塗布した後、目地被覆材(塗料、テープ、

シート)を塗装又は貼り付ける。

2) シート固定方式

① 準備工

高圧洗浄機等により、水路面の泥、藻、脆弱部を除去し、欠損部、ひび割れ部は断面補修す

る。洗浄後は、バーナー等により十分に施工面を乾燥させる。

② 予備成形

下地形状に沿わせてシートの予備成形を行う。

③ プライマー塗布、シーリング材打設工

プライマーは施工面に塗布し、シーリング材はプライマーを塗布した施工面、若しくは製品

のSUS鋼板の裏面に打設する。

④ シート取付け

予備成形した製品を施工予定箇所に戻し、ハンマードリル等で製品の上から既設水路躯体コ

ンクリートに穴を開け、専用アンカーを打ち込み固定する。

⑤ 仕上げ(端部処理)

写真 4.2.4-4 完成状況

写真 4.2.4-2 接着材の塗布 写真 4.2.4-3 シートの貼り付け

Page 30: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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シート取付け固定後、シートの端部はシーリング材を用いて既設水路にすり付ける。

(3) 目地成型ゴム挿入工法

1) 準備工

目地補修は表面被覆の施工後に行うことを標準とし、表面被覆の施工中は、目地に目地棒等

を設置して表面被覆材が目地内部に入らないようにする。

目地部背面から湧水が見られる場合は、別途、止水処理又は導水処理を行い、次工程へ移る。

2) カッター工、はつり工

本工法の要求性能を確保するためには、既設目地部のコンクリートを各製品に定められた幅で

はつり、そこに成型ゴムを圧縮した状態で正確に挿入、接着することが重要である。

既設目地部コンクリートに所定の目地幅で墨入れし、コンクリートカッターを入れた後、コ

ンクリートチッパー等により所定の幅及び深さまで箱抜きする。箱抜きの形状は、成型ゴムが

目地の幅の変動に追従し性能が確保できる幅及び深さであることが重要である。

写真 4.2.4-11 カッター入れ 写真 4.2.4-12 はつり作業

写真 4.2.4-8 シート取付け アンカー削孔

写真 4.2.4-10 完了

写真 4.2.4-5 下地処理 写真 4.2.4-6 プライマー塗布 写真 4.2.4-7 シーリング材打設

写真 4.2.4-9 シート取付け アンカー打設

Page 31: 4.2 補修工法の施工 - maff.go.jp...-130 - 4.2 補修工法の施工 4.2.1 表面被覆工法 (1)表面被覆工法の施工にあたっては、各工法の特性を踏まえ、必要に応じて、ひび割れ

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3)接着材塗布

成型ゴムの側面に専用の接着材を塗布する。この際、成型ゴムと接着材と馴染みを良くするた

め、あらかじめ専用のプライマーを塗布する工法もある。

4) 成型ゴム挿入工

接着材を塗布した成型ゴムを圧縮し、箱抜きした目地部に挿入する。

その際、原則として、施工目地を一本製品で挿入するものとするが、やむを得ず突き合わせ施

工が生じる場合は、設計流下断面外に設けなければならない。

5) 仕上げ(端部処理)

目地の端部(気中部)を弾性シーリング材により処理する。

写真 4.2.4-13 接着材の塗布状況(1) 写真 4.2.4-14 接着材の塗布状況(2)

写真 4.2.4-15 成形ゴム挿入 写真 4.2.4-16 端部処理

写真 4.2.4-17 完成状況