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4.4 腫瘍免疫(p118)
• はじめに:癌の臨床統計・臨床研究の紹介• 441 腫瘍細胞の抗原性• 442 免疫学的監視機構• 443 免疫エスケープ機構• 444 癌の免疫療法
結核 脳血管疾患
悪性腫瘍
肺炎
心疾患
肝疾患
日本における死亡率の推移
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肺癌は増えている!!
出典:がんの統計‘03
手術が増えている!!
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肺がん治療法のプロトコール例:ステージごとにさまざまな治療を選択
肺癌患者の生存曲線の例
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がんの分子標的薬(日本で発売さているもの)
中外リンパ腫B細胞CD20リツキサン
(リツキシマブ)
アストラゼネカ非小細胞肺癌EGF-Rイレッサ
(ゲフィチニブ)
中外乳がんHer-2(ErbB-2)
ハーセプチン
(トラスツズマブ)
ノバルティス慢性骨髄性白血病BCR-ABLグリベック
(イマチニブ)
販売会社対象疾患標的分子製品名
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Gefitinib = EGF-R
イレッサの効果
新薬といえども満足度は低い!!
癌と免疫
• 免疫機能を使えば,患者の満足度は上がる?夢の新薬?
• 癌は自己細胞なのに,非自己となる?• 癌に対する免疫応答は起きる?• 癌は免疫で治るの?• ・・・・・
• それほど単純ではない.他の方法が見つかったわけでもない.
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がん研究の流れ
• がんウイルスの発見– 1911 Peyton Rous ラウス肉腫ウイルスの発見– 1950 Sarah Stewart ポリオーマウイルスの発見
• 発がんを誘導する環境因子の発見– 1775 煙突掃除をしていた少年に陰嚢癌が多発– 1940 脂肪を取り過ぎたラットに大腸癌,乳癌多発– 1915 山極・市川 コールタールでウサギに癌作成
– 1932 吉田富三 アゾ色素をラットに食べさせ肝臓癌誘導
– 1943 アゾ色素投与中のラットの腹水に吉田肉腫を発見– 1954 杉村隆 ニトロソグアニジンで胃癌を選択的に作成
癌は遺伝子の変異だが,微生物や環境因子が関わっている
臨床上の問題点の発見
がん研究とノーベル賞いずれも,癌はウイルス感染と密接に関ることを示唆している
• 1966年,FPラウス,発がん性ウイルスの発見
• 1975年,ダルベッコ,腫瘍ウイルスと遺伝子の相互作用に関する研究 (定量法)
• 1989年,レトロウイルスのがん遺伝子が細胞起源であることの発見
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種々の環境要因ががんの発生に関係する
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化学発がんに関わる要因環境因子による発ガン研究も進展した.
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癌と「癌細胞」の分子生物学がんの征圧のために知識を集積し,有効利用する
・がんは「遺伝子の病気」との認識は古くからあった.例えば,
①がん細胞で染色体異常がしばしばあった.
②動物にがんを起こす発がん物質の多くは細菌の遺伝子を変異させる変異原物質であった.③家族性に発生するがんがあった.
・これらの背景は「がん研究に分子生物学が必要」との認識を持たせた.
DNA複製酵素の発見遺伝子組換え技術試験管内遺伝子増幅(PCR)ヒトゲノムの解読
・結果として,20世紀の分子生物学の歩みによって,がん細胞の有する特徴が詳細に解析されてきた.集大成として,「がん遺伝子」「がん抑制遺伝子」が多種類発見され,がん細胞の特徴も明らかになってきた.
4.4 腫瘍免疫(p118)
• 441 腫瘍細胞の抗原性• 442 免疫学的監視機構• 443 免疫エスケープ機構• 444 癌の免疫療法
・ 自分の細胞由来なのに,癌細胞に抗原性はあるか?・ 治療ターゲットになる?
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腫瘍マーカー
• がん細胞自身,あるいは,がんに対する生体の反応によって生産され,組織,細胞あるいは血液,体液中からの検出が臨床的にがんの診断に有用な物質を示す.
• 多発性骨髄腫で尿中に出現するベンズジョーンズタンパク質は医学上最古の腫瘍マーカーである.
• 血中に出現するマーカーの量は微量であるので,「モノクローナル抗体」の出現によって汎用されるようになった.
保険で認められる腫瘍マーカー
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腫瘍マーカーの分類
腫瘍マーカー測定の臨床的意義
• 一次スクリーニング–神経芽細胞腫,前立腺がんPSA測定
• 二次スクリーニング–進行癌を見逃さないための最低限の目安
• 高危険群のフォローアップ• 術後再発,転移,治療効果の判定• (問題点)良性疾患でも検出されることがある.
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腫瘍抗原(癌抗原)がん細胞には様々な変異「遺伝子の傷」があることがわかってきた.
これらの「傷」は免疫系が認識する対象となるのか?抗原性を示すのか?,抗原特異的な免疫応答には必須である.
がんに対する炎症応答腫瘍マーカー:特異性はあるが,治療には?腫瘍拒絶抗原:治療に用いうる抗原
癌に対する免疫応答
ヒト腫瘍抗原
• ヒトにもウイルス誘発腫瘍がある.これらではウイルスゲノムにコードされた抗原が見出される.– ヒトT細胞白血病– バーキットリンパ腫(EBウイルス)– 子宮頚癌(パピローマウイルス)
• 大部分のヒト腫瘍では・・・?– リンパ球浸潤のない癌と比べてリンパ球浸潤している癌のほうが予後がよい.炎症応答の重要性
– 自家腫瘍に特異的な細胞障害性T細胞が末梢血や腫瘍に浸潤したリンパ球から培養できた.
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がんに対する炎症応答
• DCをはじめとする免疫担当細胞が腫瘍局所に浸潤して初めて免疫応答は惹起される.
• DCは腫瘍抗原を捕捉し,所属リンパ節に移行して,T細胞の活性化に望む.
• 腫瘍局所に集積したリンパ球機能が発揮しやすい環境が整わないと,抗腫瘍作用を発揮しにくい.
• 一方で,「好中球」の集積が強い,炎症性の腫瘍の予後は著しく悪い.
癌抗原遺伝子の同定(Boonらの功績)
• マウスP815mastocytomaのcDNAライブラリーを作り,細胞障害性T細胞(CTL)を刺激する抗原をコードする遺伝子を同定した.
• 同様の方法によって,ヒトメラノーマにおいてCTLが認識する癌抗原をコードする遺伝子のクローニングに成功した.– Melanoma antigen-1 (MAGE-1)
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腫瘍/精巣抗原
• MAGE gene family• メラノーマをはじめ,頭頚部腫瘍,肺非小細胞癌,膀胱癌など広く分布.
• 正常組織では精巣に発現,しかし,MHCが発現していないので腫瘍抗原ペプチドにはなり得ない.
癌遺伝子・癌抑制遺伝子産物
• HER-2/neu:EGF受容体遺伝子c-erbB2産物.活性型ではチロシンキナ—ゼ活性が亢進している.CTLが誘導される患者がいる.
• 変異ras:12番目,61番目のコドンに変異を有するペプチドがCD4T細胞に認識される.
• WT1:白血病で多く発現,固形癌由来の細胞株でも発現.CTL誘導が確認されている.
• 変異p53:多くの癌で認められている.
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免疫学的監視機構が働けば,癌は消えるはず
• 免疫機能の低いヒトは,癌の発生率が高い.
• ウイルス感染に対する免疫応答をあげればウイルス性の癌は治療できるはず.
• 腫瘍の局所へは白血球浸潤が起きる.• 実験的証明,図4.6• 移植癌 vs 自然発症
• 悪性度,段階的悪性化,転移・・・
4.4 腫瘍免疫(p118)
• 441 腫瘍細胞の抗原性• 442 免疫学的監視機構• 443 免疫エスケープ機構• 444 癌の免疫療法
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がんのエスケープ機構腫瘍免疫が成立するなら癌はできない?免疫系をすり抜けたものが癌になる?
がんワクチン療法の効果を高めるためには制御が必須
• 免疫学的監視機構をすり抜ける機構–潜在的な免疫抑制傾向–免疫抑制因子の産生;TGFβ,ホルモン–組織適合性抗原の消失–血管新生,血管透過性の亢進–接着分子の欠損– ・・・・
担癌宿主の免疫抑制機構• T細胞機能の抑制
– T細胞の種々の受容体またはシグナル伝達分子の発現変化と機能修飾
– APC/DC機能の変化によるT細胞活性化の抑制• 宿主免疫系細胞による腫瘍免疫の制御
– B細胞によるIL-2,IFNγの産生抑制– Th2サイトカインによるTh1機能の抑制– CD4+CD25+抑制性T細胞による抗腫瘍免疫制御– CTLによる抗原提示DCの除去– ミエロイド系細胞によるT細胞活性化の抑制
• 腫瘍細胞の変化による抗腫瘍免疫の減弱– MHC発現の低下– 腫瘍抗原の発現低下– 腫瘍細胞のアポトーシス異常
• 腫瘍由来因子による抗腫瘍免疫応答の制御– TGFβ,IL-10,IL-6,VEGF– PGE2– 腫瘍細胞の産生するFasLによる免疫抑制
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担癌ステージとサイトカイン産生
TCRとシグナル伝達
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CTLA-4による免疫抑制
B細胞による免疫抑制
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担癌状態の進行とTGFβ・IL-6産生
IL-12/IFNγ産生抑制経路
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IL-6によるT細胞の抑制
腫瘍抗原ペプチド発現の欠陥
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FLIPによるCaspase-8活性化阻害
腫瘍のTGFβ産生と免疫抑制
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活性化T細胞の細胞死
エスケープ機構の例2
• クラスⅠ抗原の消失
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García-Lora, A., Algarra, I., Collado, A. & Garrido, F. (2003)Tumour immunology, vaccination and escape strategies.European Journal of Immunogenetics 30 (3), 177-183.
4.4 腫瘍免疫(p118)
• 441 腫瘍細胞の抗原性• 442 免疫学的監視機構• 443 免疫エスケープ機構• 444 癌の免疫療法
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レンチナン・ソニフィランの特徴と腫瘍免疫療法
• 多糖製剤,直接毒性は全く認められない.• 非特異的免疫増強物質といえる.• 保険適用されている.• 使用上の制限は強く,効果は今ひとつか?
• 関連の製剤として,ピシバニール,クレスチン,丸山ワクチン,BCGなど
• これらの示す効果では満足度が低い!!
従来の方法
18-21 非特異的な免疫増強物質(BRM)
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・満足度を上げたいというニーズ・それでも免疫で癌は治るかの疑問・根拠を求めて
癌ペプチドワクチンに用いられた配列実験的治療
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メラノーマに対する癌ワクチンの臨床試験
21世紀の癌免疫療法は?
・・・・未だに,“実験的治療が中心”病期ごとに使い分け,
無駄な延命に対する患者教育・・・
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癌に対する免疫療法
• 実体の明らかになった癌抗原をターゲットにする.
• 抗原は明確になっていないが,あると推定して,免疫強化を行なう.
• 抗原の関与とは無関係に,免疫を強化する.
• その他?
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教科書123
がん抗体医薬の分子標的とメカニズム
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がん抗体医薬の開発状況
米国で許可されている抗体医薬
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ハーセプチン
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ハーセプチン
• 〈外国人における成績〉• 国外における臨床試験成績概要は以下のとおりであった。• (表5)• 第III相試験において、本剤の投与期間は、化学療法併用群で1~131週(中央値:36週)、本剤単独投与群で1~181週(中央値:17週)であった。対象症例のうち、高齢者(65歳以上)は化学療法併用群で35例、本剤単独投与群で30例であった。
• 病勢進行までの期間について本剤+化学療法併用群と化学療法単独群とを比較すると、中央値は、アントラサイクリン+シクロホスファミド併用群9.08ヶ月、パクリタキセル併用群6.87ヶ月であり、。それぞれ化学療法単独の場合の6.48ヶ月、2.89ヶ月に比べ延長が認められたさらにHER2過剰発現の程度別に病勢進行までの期間を比較すると、パクリタキセルとの併用において3+群7.1ヶ月、2+群5.3ヶ月、本剤単独投与において3+群3.3ヶ月、2+群1.9ヶ月と、いずれも3+群の方が2+群に比べ延長が認められた。
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