5% 2% 5%陸揚げ価格のうちの輸送費シェア 26.5 28.9 21.0 18.9 21.2 18.4...

16
34 24 2 2.1 2.1.1 ブラジルでは、積み出し港までの移動距離は産地によって大きく異なり、 3001,500 キロメートルの幅 がある。特にブラジルで最大の産地となったマトグロッソ州が内陸に位置しており、南部の主要輸出港ま での平均距離が 9001,000 キロメートルと長距離の移動であって、輸送がコスト高となっている点が最 大の課題となっている。米国も穀物産地から輸出港までの距離は 1,000 キロメートルであるが、河川輸送 が発達していることによってコストが低く抑えられている。ブラジルではトラック輸送が穀物輸送のうち 60%で、特にマトグロッソ州からの長距離輸送がトラックに偏重していることがコストを大きく引き上げ ており、北部のアマゾン川とその支流を利用した河川交通の開発が将来の課題となっている。 (次頁図参照) アルゼンチンでは、積み出し湾までの平均移動距離は 250300 キロメートルである。アルゼンチンで 1990 年代にパラナ川の浚渫が進み、大型のパナマックス船がロサリオまで遡ることができるようにな っており、移動距離が短いために輸送コストはブラジルに比べれば比較的抑えられている。ただし、鉄道 の劣化が激しく大部分をトラックに依存しているため、米国に比べれば輸送距離は三分の一程度と短いに もかかわらず、米国とほぼ同程度の輸送コストが発生しており、やはり改善の余地は大きいと考えられて いる。 ブラジル アルゼンチン 米国 港湾までの距離 300~1,500 250~300 1,000 26 ブラジルとアルゼンチンの穀物輸送における輸送手段のシェア 出所)アルゼンチン:ロサリオ商品取引所(BCRブラジル・米国:ブラジル穀物輸出協会(ANEC注)アルゼンチンは 2009/10 年現在、ブラジル・米国は 2007 年現在 トラック 60% 鉄道 33% 河川 7% トラック 84% 鉄道 15% バージ 2% トラック 16% 鉄道 23% 河川 61%

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  • 34

    24

    2

    2.1

    2.1.1

    ブラジルでは、積み出し港までの移動距離は産地によって大きく異なり、300~1,500 キロメートルの幅

    がある。特にブラジルで最大の産地となったマトグロッソ州が内陸に位置しており、南部の主要輸出港ま

    での平均距離が 900~1,000 キロメートルと長距離の移動であって、輸送がコスト高となっている点が最

    大の課題となっている。米国も穀物産地から輸出港までの距離は 1,000 キロメートルであるが、河川輸送

    が発達していることによってコストが低く抑えられている。ブラジルではトラック輸送が穀物輸送のうち

    60%で、特にマトグロッソ州からの長距離輸送がトラックに偏重していることがコストを大きく引き上げ

    ており、北部のアマゾン川とその支流を利用した河川交通の開発が将来の課題となっている。(次頁図参照)

    アルゼンチンでは、積み出し湾までの平均移動距離は 250~300 キロメートルである。アルゼンチンで

    は 1990 年代にパラナ川の浚渫が進み、大型のパナマックス船がロサリオまで遡ることができるようにな

    っており、移動距離が短いために輸送コストはブラジルに比べれば比較的抑えられている。ただし、鉄道

    の劣化が激しく大部分をトラックに依存しているため、米国に比べれば輸送距離は三分の一程度と短いに

    もかかわらず、米国とほぼ同程度の輸送コストが発生しており、やはり改善の余地は大きいと考えられて

    いる。

    ブラジル アルゼンチン 米国

    港湾までの距離 300~1,500 ㎞ 250~300 ㎞ 1,000 ㎞

    図 26 ブラジルとアルゼンチンの穀物輸送における輸送手段のシェア

    出所)アルゼンチン:ロサリオ商品取引所(BCR) ブラジル・米国:ブラジル穀物輸出協会(ANEC)

    注)アルゼンチンは 2009/10 年現在、ブラジル・米国は 2007 年現在

    トラック

    60%

    鉄道

    33%

    河川

    7%

    トラック

    84%

    鉄道

    15%

    バージ

    2%

    トラック

    16%

    鉄道

    23%

    河川

    61%

  • 35

    24

    図 27 ブラジルとアルゼンチンの大豆生産地と、主要穀物輸出港とそのシェア

    出所)ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)、アルゼンチン農牧漁業省 農牧漁業情報統合システム(MINAGRI/SIIA)、マトグロッ

    ソ州大豆トウモロコシ生産者協会(Aprosoja)、ロサリオ商品取引所(BCR)より作成

    注)港湾シェアはブラジル 2009 年、アルゼンチン 2011 年

    2.1.2

    穀物の物流コストについては、ブラジルの輸送コストが非常に急速に増大していることが指摘できる(次

    頁図参照)。2009 年の大豆輸出では、FOB 価格に占める輸送コストの割合は、米国で 5.26%であったのに

    比べ、アルゼンチンでは 5.76%、ブラジルでは 21.05%となった(次頁表参照)。

    これは、39 頁表にみるように、マトグロッソ州北部からサントス港等の南部の輸出港湾向けの輸送コス

    トが最も大きな原因で、トラック輸送距離が長いため、燃料価格の増大や混雑の悪化にともなって輸送コ

    ストが大幅に上昇している。その他の主要地域からの輸送では、ブラジルと米国やアルゼンチンで輸送コ

    ストにそれほど大きな差異はみられない。

    なお、トウモロコシは FOB 価格が大豆に比べて低いが、従量に応じて大豆と同じ輸送費用がかかるた

    め、トン当たりの輸送コスト負担割合は重くなる。このため、冬トウモロコシの主要産地として成長して

    きたマトグロッソ州であるが、トウモロコシの収益性は依然としてあまりよくない。

    イタコチアラ港5%

    サンタレン港2%

    イタキ港5%

    ヴィトリア港2%

    サントス港25%

    パナラグア港&サンフランシスコドスル

    36%

    リオグランデ港16%

    ロサリオ港27%

    サンロレンツォ/サンマルタン港38%

    ケケン港13%

    バイアブランカ港17%

    大豆生産面積(2011/12)■3,000ha以上■1,000ha以上■500ha以上

  • 36

    24

    図 28 アルゼンチン、米国、ブラジルの輸送コスト比較

    出所)ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)

    注)2011 年は予測

    表 13 大豆 FOB 価格における輸送コストのシェア比較(2009)

    ブラジル アルゼンチン 米国

    輸出港での平均 FOB価格 399 399 399

    輸出港までの輸送費① 78 20 18

    港湾費用② 6 3 3

    輸送コスト計(①+②) 84 23 21

    生産者価格 315 376 378

    FOB価格における輸送コストのシェア 21.05% 5.76% 5.26%

    出所)ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)

    図 29 ブラジルにおける大豆輸送コスト分布(2009)

    出所)マトグロッソ州大豆トウモロコシ生産者協会(Aprosoja)2010 「ブラジル大豆生産及び加工見通し(Brazil’s Soybean Production

    and Processing Outlook)」

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

    米ドル/トン

    米国

    アルゼンチン

    ブラジル

    イタコチアラ港 サンタレン港

    イタキ港

    ヴィトリア港

    パラナグア・サンフランシスコドスル港

    リオグランデ港

    サントス港

  • 37

    24

    表 14 ブラジル各産地と米国から上海への大豆の輸送コスト比較

    単位:米ドル/トン

    2006 2007 2008 2009 2010 2011

    ブラジル

    マトグロッソ州北部―サントス港―上海

    トラック(産地-輸出港) 79.46 97.67 115.74 97.00 116.78 123.31

    海洋(輸出港-上海) 57.31 82.83 70.38 58.78 55.84 50.50

    輸送費計 136.77 180.51 186.12 155.78 172.62 173.81

    農家価格(産地) 164.88 233.82 358.99 324.34 318.15 392.10

    陸揚げ価格(上海) 301.65 414.33 545.11 480.12 490.77 565.91

    陸揚げ価格のうちの輸送費シェア 45.4 43.9 34.1 32.6 38.6 30.6

    パラナ州北中部-パラグアナ港―上海

    トラック(産地-輸出港) 21.31 32.36 33.60 27.37 34.51 39.54

    海洋(輸出港-上海) 56.31 80.81 71.66 59.00 58.92 57.32

    輸送費計 77.62 113.18 105.26 86.37 93.43 96.86

    農家価格(産地) 213.81 281.14 399.31 372.46 350.44 431.66

    陸揚げ価格(上海) 291.43 394.32 504.56 458.83 443.87 528.52

    陸揚げ価格のうちの輸送費シェア 26.5 28.9 21.0 18.9 21.2 18.4

    リオグランデドスル州北西部-リオグランデ港―上海

    トラック(産地-輸出港) 16.16 21.82 22.29 24.50 28.18 38.94

    海洋(輸出港-上海) 55.81 81.56 72.08 59.42 58.21 51.10

    輸送費計 71.97 103.37 94.37 83.92 86.39 90.03

    農家価格(産地) 210.34 267.06 394.66 359.51 344.90 415.87

    陸揚げ価格(上海) 282.31 370.43 489.03 443.43 431.29 505.90

    陸揚げ価格のうちの輸送費シェア 25.2 28.1 19.4 19.0 20.1 17.8

    ゴイアス州南部-サントス港―上海

    トラック(産地-輸出港) 43.56 50.47 55.33 50.83 64.71 63.92

    海洋(輸出港-上海) 57.31 82.83 70.38 58.78 55.84 50.50

    輸送費計 100.87 133.30 125.71 109.62 120.56 114.42

    農家価格(産地) 189.63 268.65 373.13 338.31 324.27 412.89

    陸揚げ価格(上海) 290.50 401.95 498.84 447.93 444.82 527.31

    陸揚げ価格のうちの輸送費シェア 34.6 33.5 25.4 24.6 27.4 21.7

    米国

    ミネアポリス(ミネソタ州)―上海

    トラック(産地-鉄道駅) 9.75 10.09 11.50 10.01 9.45 11.38

    鉄道(鉄道駅-河川中継港) - - 26.00 - 10.86 34.74

    はしけ(河川中継港-輸出港) 33.21 29.38 34.75 25.56 41.41 31.93

    海洋(輸出港-上海) 41.59 81.36 91.18 51.21 54.56 53.08

    輸送費計 84.54 120.84 143.93 86.78 108.13 105.05

    農家価格 200.41 274.79 411.71 363.80 355.37 446.13

    陸揚げ価格 284.95 395.62 555.64 450.57 463.51 551.18

    陸揚げ価格のうちの輸送費 29.54 30.1 25.4 19.2 23.3 19.1

    ダベンポート(アイオワ州)―上海

    トラック(産地-鉄道駅) 9.75 10.09 11.50 10.01 9.45 11.38

    鉄道(鉄道駅-河川中継港) - - - - 10.86 10.86

    はしけ(河川中継港-輸出港) 25.59 23.89 30.41 19.77 35.61 25.99

    海洋(輸出港-上海) 41.59 81.36 91.18 51.21 51.84 53.08

    輸送費計 76.93 115.35 133.09 80.99 99.61 97.06

    農家価格 204.07 285.74 416.89 370.01 364.16 458.68

    陸揚げ価格 281.00 401.09 549.98 450.99 463.77 555.74

    陸揚げ価格のうちの輸送費 27.31 28.3 23.7 17.9 21.5 17.5

    出所)米国農務省(USDA) 2011「大豆物流ガイド(Soybean Transportation Guide)」

  • 38

    24

    なお、ブラジルとアルゼンチンは、他の穀物生産主要国及び日本と比較すると、物流インフラは鉄道、

    道路、港湾共に貧弱であるが、なかでも特に鉄道の整備が遅れている。

    図 30 物流関連インフラ設備の国際比較

    出所)世界経済フォーラム 2011「国際競争力レポート(The Global Competitiveness Report 2011-2012)」

    図 31 鉄道総延長の国別比較

    出所)ブラジル運輸連盟(CNT)

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0

    米国

    フランス

    日本

    カナダ

    オーストラリア

    中国

    インド

    メキシコ

    ロシア

    アルゼンチン

    ブラジル

    鉄道 道路 港湾

    3.5

    4.7

    5.0

    5.1

    8.7

    9.0

    9.4

    13.3

    19.5

    22.9

    0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

    ブラジル

    カナダ

    豪州

    ロシア

    メキシコ

    中国

    チリ

    アルゼンチン

    インド

    米国

    国土千㎢あたりの鉄道総延長(㎞)

    ポイント

  • 39

    24

    2.1.3

    ブラジル、アルゼンチン、米国の大豆とトウモロコシの価格は、輸出港 FOB 価格でほぼ一致している

    ため、日本へ輸出する場合の輸送コストは、ほぼ主要輸出港から日本の輸入港までの海上運賃のみの差と

    なる。ただし、海上運賃は時期や契約形態等によって大きく異なり、ブラジル、アルゼンチンから日本へ

    大豆を輸出する場合と、米国から日本へ大豆を輸出する場合とでは、以下の理由から、あまり有意な差は

    無いものと考えられる。

    37 ページ表 14 で大豆のバルクでの上海までの海上輸送コストを比較すると、ブラジル主要港湾からと、

    米国主要港湾からのコストはほとんど変わらず(例えば、2011 年の場合、1 トンあたり、ブラジルサント

    ス港-中国上海間 51 米ドルに対して、米国ガルフ-中国上海間 53 米ドルである。)、年によってブラジル

    の方が高くなり、あるいは米国の方が高くなる。また、年によって海上輸送コストは大きく異なり、運賃

    が高騰した 2007 年や 2008 年では、1 トンあたり 70~90 米ドルに上った。

    仮に全く同じ条件とした場合には、米国ガルフ-中国上海間と米国ガルフ-日本東京間、あるいはブラ

    ジル サントス港-中国上海間とブラジル サントス港-日本東京間では、海上輸送コストはほとんど差が

    無いと考えられ、日本向けの輸出においても、ほぼ同じ状況であると想定される。ただし、現時点では南

    米から日本向けの穀物輸出の物量・頻度は、米国から日本向けの穀物輸出の物量・頻度に比べて少ないた

    め、割高になっている可能性は指摘できる。

    平成 22 年度に農水省が行った「食料供給安定化国際農業連携対策事業」調査では、2010 年にブラジル

    のミナスジェライス州から食用の非遺伝子組換大豆 5 トンを試験輸入している。この試験輸入では、20

    フィートのドライ・コンテナで、ブラジルのサントス港から喜望峰経由で名古屋港において陸揚げされて

    いるが、海上運賃全体で約 2,500 米ドルの費用が掛かっている。この内、20 フィートのコンテナに対する

    海上輸送費に約 1,500 米ドルの費用の他、燃料割増費(Bunker Adjustment Factor-BAF)及びセキュ

    リティに対する費用で約 500 米ドルの費用が加算されている。更に、名古屋港に到着し、陸揚げの際に発

    生する費用として、コンテナの取り扱い費(Terminal Handling Charge-THC)、荷渡し指図書(DOC)

    の発行手数料、及び、デリバリー・オーダー(D/O)を発行するための手数料などの費用が加算されると共に、

    全損に対する保険費および戦争棄権担保およびストライキ暴動騒乱等に係る保険費を含めると、更に約 4

    万円(日本円払い)の追加となる。よって、ブラジル側でコンテナを引き取った時点から、名古屋港にて

    コンテナを引き渡すまでの費用は合計 2,500 米ドルとなり、この額が海上輸送業者に支払われることとな

    る。

    大豆を 20 フィートのコンテナで輸送する場合、一般的に、最大で約 20 トンの大豆輸送が可能である。

    20 フィートのコンテナ一つあたり 20 トンの大豆が輸送可能であると想定し、上記した海上輸送費のみ(費

    用を除く)で計算した場合、ブラジルのサントス港から名古屋港までの 1 トンあたりの海上輸送費は約 75

    米ドルと計算される。また、BAF 費用などの諸経費を含めた場合、1 トンあたりの海上輸送費は約 125 米

    ドルとなる。

    ただし、同調査の結果、食用大豆として輸送する場合、赤道を越えての運搬になると、腐敗の問題が発

    生するので、ブラジルやアルゼンチンから食用大豆としてコンテナ輸送するのは実質上困難である。この

    ため、現実的には大豆、トウモロコシともに、飼料用あるいは搾油用等として、バルク輸送することにな

    ると考えられ、上記の海上輸送費や経費よりは若干安くなり、前述のバルク輸送でのブラジルサントス港

    ―上海間とほぼ同じ程度の金額になると想定される。

  • 40

    24

    参考までに、東京までの海上輸送距離とルートを比較する。

    ブラジルの場合は現在の主要輸出港であるサントス港、パラナグア港、サンフランシスコドスル港等か

    ら大西洋を横断して喜望峰を経由する場合、2 万 1700~1800 キロメートル程度の輸送距離となる。これ

    に比べると、今後開発が望まれている北東部のイタキ港、アマゾン川のサンタレン港、イタコチアラ港等

    からパナマ運河を経由して輸送する場合は、1 万 9000 キロメートル程度の輸送距離となって節約ができ

    ることになる。もちろん、米国の西海岸ルート(ポートランド港、シアトル港、タコマ港)や、カナダの

    バンクーバー港からの輸送とは比べられないが、米国のガルフ(ニューオリンズ港)からパナマ運河経由

    の輸送に比べれば、輸送距離は 12%程度の差に縮まる。

    アルゼンチンの場合は、海洋港バイアブランカ港やケケン港から、ホーン岬経由で 10,500 海里、喜望

    峰経由で 2 万 2500~2600 キロメートル程度の距離となっている。

    表 15 東京までの海上輸送距離の比較

    国 位置 港 経由 海里 キロメートル

    ブラジル 南部 サントス港 喜望峰経由 11,723 21,711

    南部 パラナグア港 喜望峰経由 11,790 21,835

    北東部 イタキ港 パナマ運河経由 10,250 18,983

    アマゾン川 サンタレン港 パナマ運河経由 10,267 19,014

    アルゼンチン パナマ川 ロサリオ港 喜望峰経由 12,222 22,635

    南部 バイアブランカ港 喜望峰経由 12,146 22,494

    米国 メキシコ湾岸 ニューオリンズ港 パナマ運河経由 9,134 16,916

    西海岸 ポートランド港 - 4,370 8,093

    カナダ 太平洋岸 バンクーバー港 - 4,306 7,975

    出所)AXSMarine 社

    南部のサントス港からの場合 アマゾン川サンタレン港からの場合

    図 32 ブラジルからの海上輸送ルート

    出所)AXSMarine 社

  • 41

    24

    2.2

    2.2.1

    ブラジルの穀物輸出港湾では、南部に位置するサントス港、パラナグア港とサンフランシスコドスル港、

    リオグランデ港が主要な港となっており、これら 4 港がブラジルからの輸出の 77%を占める(36 ページ

    図 29 参照)。ブラジルの大豆・トウモロコシ輸送においては、中心的な産地であるマトグロッソ州から港

    までの輸送コストが非常に高額になっている点が最も大きな課題である。また、今後大きく生産拡大が期

    待できるマピトバ地域もブラジル東北部に位置する。

    このため、アマゾン川流域の河川港、あるいは東北部のイタキ港等への北部・北東部の輸送ルート構築・

    拡充が最も求められている。次頁図には、これら東北部流通網の整備が 2020 年までに完了した場合、産

    地からの仕向け港がどのように変化するかという模式を示した。北部・東北部の主要なルートでの現状と

    課題は以下のようにまとめられる。

    ① マトグロッソ州中部からパラ州サンタレンに抜けるルート:道路 BR163 建設が当初予定より 3 年

    遅れの 2014 年にようやく完成見込みで、完成すれば流通状況の改善に大きく寄与する見込み。ア

    マゾン川サンタレン港で積み込むか、アマゾン川支流のタパジョス川イタイトゥバでバージに積み、

    アマゾン川か海洋港湾で輸出船に積み替える。テレス川からタパジョス川への河川ルートの工事も

    一部開始しているが、まだ時間を要する。BR163 と並走する鉄道建設に中国が関心を示している。

    ② マトグロッソ州、トカンチンス州、マラニョン州からイタキ港に抜けるルート:南北鉄道が一部区

    間で工事完了し、ターミナル等が準備されている。ただ、マトグロッソ州内東部を南北に結ぶ道路

    BR158 の舗装は概ね完了したが、そこから南北鉄道へのアクセスが無く、湿地帯や先住民保護地区

    を挟むので難航が予想される。

    ③ トカンチンス川・アラグアイア川を利用してベレン港に抜けるルート:トゥクルイ閘門の建設が

    2010 年に完了したものの、本格的な利用にはアラグアイア川やトカンチンス川の浚渫等が必要で、

    またベレン港も穀物ターミナルが無い等設備投資が貧弱である。

    ④ マトグロッソ州西部からマデイラ川を経由してアマゾン川に抜けるルート:1997 年に開通したル

    ートで、現在マデイラ川ポルトヴェーリョにバージへの積み替え施設を 2 社(アマッジ、カーギル)

    が持ち、さらに 1 社が施設建設を予定。マデイラ川は 5~11 月に水量が不足してバージ通行できな

    い問題がある。欧州向けの非遺伝子組換え大豆の物流ルートとして専ら活用されている。

  • 42

    24

    現在 2020 年

    図 33 産地から輸出港までの輸送ルートの将来予測

    出所)マトグロッソ州大豆トウモロコシ生産者協会(Aprosoja)

    注)赤色:アマゾン川経由ルート、黄色:イタキ港ルート、水色:イルニョス港・サルバドール港ルート、オレンジ:ヴィトリア港ルート、灰色:サントス港ルート、緑:サン

    フランシスコ・パラナグア港ルート、黄緑:リオグランデ港ルート

    AC:アクレ州、AL:アラゴアス州、AP:アマパー州、AM:アマゾナス州、BA:バイーア州、CE:セアラー州、ES:エスピリトサント州、GO:ゴイアス州、MA:

    マラニョン州、MT:マットグロッソ州、MS:マットグロッソ・ド・スル州、MG:ミナスジェライス州、PA:パラー州、PB:パライバ州、PR:パラナ州、PE:

    ペルナンブーコ州、PI:ピアウイ州、RJ:リオデジャネイロ州、RN:リオグランデ・ド・ノルテ州、RS:リオグランデ・ド・スル州、RO:ロンドニア州、

    RR:ロライマ州、SC:サンタカタリーナ州、SP:サンパウロ州、SE:セルジッペ州、TO:トカンティンス州、DF:連邦直轄区

    ただし、関係者らによれば、北部・東北部のルートの受益地はブラジルでも人口が非常に少ない地域で

    あるため、農業関連インフラは選挙の票に直接結び付かないため、これらの開発は大きく遅れている。例

    えばワールドカップに向けたスタジアムや空港等には政府予算を継ぎこんで整備を急いでいるのに比べる

    と、北部・東北部のルートは計画の実施はおぼつかない現状である。また一方で、中部・北部・東北部は

    アマゾンの森林地帯や湿地帯、原住民保護区が位置し、ブラジルでは議会や大統領、メディアに対して環

    境関連の非政府組織(NGO)等の政治的な影響力が非常に強いことから、道路や設備等の新設にあたって

    の環境面での認可取得が難しくなっており、これも開発の遅れの大きな原因となっている。こういったこ

    とから、少なくとも全面的な北部・東北部ルートの拡充には今後 20~30 年はかかる長期的な計画になる

    可能性もある。

    加えて、既存の南部の港湾に至る主要な流通ルートにおいても、道路交通網では舗装や複線化の遅れや

    舗装の傷みが目立ち、鉄道交通網は延長距離が十分でない上に寡占状況下で運賃が高い、港湾設備が十分

    でなく輸送計画に大幅に遅れが出る等、様々な課題が山積している。

    以下の節では、これら課題に対する政府の物流インフラ整備計画と、鉄道、道路、河川交通、港湾の物

    流インフラの現状と計画の実際の進行状況をとりまとめる。

    ① ②④

  • 43

    24

    図 34 将来的な輸出港別の産地区分けと物流インフラ

    出所)Macrologistica Consultoria 社

    鉄道 軌道幅 1.0m 軌道幅 1.6m

    道路

    水運

    パイプライン

    港湾(ケープサイズ)

    港湾(パナマックス)

    港湾(河川)

    点線は計画中

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    24

    図 35 ブラジル北部・北東部の物流インフラ計画状況

    出所)Macrologistica Consultoria 社

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    24

    2.2.2

    ブラジル政府の近年の主な物流インフラ投資計画には、2007 年から始まった4ヶ年の経済成長加速化計

    画(PAC1)、次いで 2010 年から始まった新しい4ヶ年の経済成長加速化計画 2(PAC2)がある。物流に

    ついては、PAC1 と同じく 2007 年に国家物流プログラム(PNLT)が策定され、2023 年までの長期的な

    枠組みを示し、PAC1 の物流分野はこれに統合されている。さらに 2012 年 8 月に新たな鉄道と道路に係

    る物流インフラ整備計画、同年 12 月に空港、港湾についての整備計画が新しく発表された。

    PAC1

    2007 年 1 月に第 2 期ルーラ政権下で、PAC1 が発表された。2007 年から 2010 年までの 4 年間に 5039

    億レアルの投資を計画し、港湾、高速道路・道路、河川・水路等の物流インフラ、発電・電気網等のエネ

    ルギーインフラ、公衆衛生等の社会・都市インフラプロジェクトが企画された。投資予算額のうち、678

    億レアルを連邦政府、残りの 4,631 億レアルを公社・民間セクターからの投資を見込んだ。このうち、運

    輸・交通分野では、道路、港湾、鉄道、空港、河川路を含み、計 583 億レアルが充てられた。

    ただし、PAC1 の計画進捗は非常に遅れ、大部分は後に 2010 年以降の 4 ケ年計画に統合されている。

    表 16 経済成長加速化計画(PAC)におけるインフラ投資分野

    単位:億レアル

    分野 概要 北部 北東部 中西部 南東部 南部 その他 合計

    運輸

    交通

    道路 45,337km(R$334)

    63 74 38 79 45 284 583

    港湾 12 港(R$27)、海運(R$106)

    鉄道 2,518km(R$77)

    空港 20 空港(R$30)

    河川路 67 河港、1ダム(R$7)

    エネ

    ルギ

    石油・

    ガス 石油精製・化学工場:4、ガス・パイプライン:4,526km(R$1,790)

    327 293 116 808 187 1,017 2,748 電力 発電:12,386w(R$659)、電力供給網:13,826km(R$125)

    再生可能燃料

    バイオ・ディーゼル工場: 46(R$174)

    社会

    都市

    住宅 主に最低賃金 5 倍までの低所得者層 400 万家族(R$1,063)

    119 437 87 418 143 504 1,708

    衛生 主に都市部 2,250 万世帯への上下水道整備・ゴミ処理(R$400)

    水資源 サンフランシスコ河流域の灌漑・上水道網の整備(R$127)

    電気 主に農村部への電気供給(R$87)

    地下鉄 主要大都市を対象(R$31)

    合計 509 804 241 1,305 375 1,805 5,039

    出所)(近田 2007)

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    PNLT

    同じく 2007 年に、国家物流プログラム(PNLT)が発表され、ここでは経済成長加速化計画(PAC)

    と統合させつつ、より長期的な計画が示されている。

    2023 年までの期間を 3 段階に分け、フェーズⅠ:2008~2011 年 1,092 億レアル、フェーズⅡ:2012

    ~2015 年 843 億レアル、フェーズⅢ:2015~2023 年 973 億レアル規模での投資を呼び込む計画である。

    このうち、鉄道が 51%の 1,501 億レアル、道路が 24%で 697 億レアル、港湾が 14%で 389 億レアル、内

    水面交通が5%で158億レアルとなっている。道路建設は国土全域で幅広い地域が対象になっているほか、

    特に鉄道建設と港湾整備では中南部と東部、内水面交通ではアマゾン地域と中北部が主要対象地域である。

    これらの整備によって、道路の割合を 2005 年の 58%から 2025 年には 30%に減らし、鉄道を 25%か

    ら 35%に、河川を 13%から 29%に拡大させるとの目標を示した。

    表 17 2025 年の物流割合の目標

    2005 年 2025 年

    高速道路 58% 30%

    鉄道 25% 35%

    河川 13% 29%

    その他 4% 6%

    出所)ブラジル運輸省(MT)

    PAC2

    2010 年には、2014 年のワールドカップと 2016 年のオリンピックに向けたインフラ整備を行うため、

    PAC で 2010 年までに完了しなかった部分に、新たな投資計画を加え、PAC2 が発表された。2011 年から

    2014 年までの 4 年間に 9,589 億レアル、2014 年以降の投資額を含めると計 1 兆 5,905 億レアルの投資を

    行うことを計画したもので、PAC の 2 倍以上の規模となった。

    都市の衛生・交通から、診療所・保育、住宅供給、エネルギー関連事業のほか、運輸交通部門において

    は港湾、高速道路・道路、河川・水路等の基礎物流インフラの整備が含められた。運輸交通部門では計 1,090

    億レアルの投資額となる。

    表 18 経済成長加速化計画 2(PAC2)におけるインフラ投資分野

    単位:億レアル

    項目 内訳 投資予定額

    2011~14 年 2014 年~

    より良い街 衛生改善、居住不適切地域対策、都市公共交通網整備、土

    地舗装 571

    市民

    コミュニティ

    救急診療所、基礎医療診療所、保育託児所、学校の運動施

    設、地域公共施設、コミュニティ交番の設置・整備 230

    マイホーム・マイライフ 低所得者用住宅供給、不動産融資拡充、劣悪住宅整備 2,782

    電気と水をす

    べての人に

    全世帯への電気供給、都市部の上下水道整備、水資源開

    発・整備 306

    運輸交通

    道路(R$504 億)、鉄道(R$460 億)、港湾(R$51 億)

    河川・水路(R$27 億)、空港(R$30 億)

    建設重機の入手支援(R$18 億)

    1,045 45

    エネルギー 発電・送電、海底資源採掘施設、石油・天然ガス、再生可

    能燃料、効率的エネルギー、鉱物調査 4,655 6,271

    合計 1 兆 5,905 億レアル 9,589 6,316

    出所)(近田 2010)

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    24

    2012 2037

    2012 年 8 月 15 日には、ジルマ・ルセフ大統領が新たな鉄道と道路に係る物流インフラ整備計画

    (Program of Investments in Logistics)を発表した。同計画によれば、新たに 2012 年から 2037 年まで

    の 25 年間で、道路分野で 7,500 キロメートルの延長に 420 億レアル、鉄道分野で 1 万キロメートルの延

    長におよそ 910 億レアル、計 1,330 億レアルの投資を誘致する。うち 795 億レアルは 2017 年までの 5 年

    間、残りの 535 億レアルを 20~25 年間との見通しである。また、既に同計画に従って、現在物流関連に

    携わる行政機関が分断されている問題に対処するため、プロジェクトの進捗管理及び行動計画の策定等を

    行い、ブラジルの物流統合を推進する組織として「物流システム・計画公社(EPL)」を立ち上げている

    (下図参照)。

    同年 12 月 6 日には、大統領は新たな港湾に係る物流インフラ整備計画を発表した。同計画では、民営

    化と、既に民営企業が操業している港湾ターミナルの再入札によって、2014 年からの 4 年間で港湾分野

    に 542 億レアル(2013~2015 年に 310 億レアル、2016~17 年に 232 億レアル)の投資を呼び込む予定

    である。このほかに、連邦政府が 64 億レアルを投資し、港湾へのアクセス関連の物流インフラを整備す

    る。このほか 12 月末に空港の物流インフラ整備計画も発表された。

    計画の実施がスムーズに行われるかどうかについては疑問視されているが、民間企業の活力を積極的に

    導入するものであった点は高評価を得ている。

    図 36 ブラジルの運輸関連政策の統合を行うための組織再編図

    出所)ブラジル運輸省(MT)

    注)特別港湾局は大統領府に直属して 2007 年に設立、民間航空局は防衛省傘下。

  • 48

    24

    2.2.3

    ブラジルでは、開発商工省(MDIC)傘下のブラジル輸出投資振興庁(APEX)と外務省傘下の企業投

    資促進・技術移転制度(SIPRI)4が海外投資の誘致を主に担当しているが、こういった政府の動きでは不

    足するとして、各州政府、あるいは民間団体も物流インフラ関連の投資誘致に積極的に動いている。

    今回、新しく発表された物流インフラ整備計画に則って、ブラジルでは国内外からの物流インフラ投資

    誘致が今後強化されていくとみられる。もちろん企業にとって最大のインセンティブは事業そのものであ

    るが、連邦政府は更にインセンティブを提供する計画であり、入札計画を具体的にしていく中で追加のイ

    ンセンティブを提供する可能性もある。ただし、ブラジルでは、外資であってもブラジル国内で会社を設

    立すれば、内資・外資の差別は無く、外資に特化したインセンティブを供与することは難しい。一方、州

    政府レベル、あるいはその下の地方自治体レベルでは、比較的ケースバイケースで VAT 等を割り引く、土

    地の提供等も行われている。

    物流インフラ整備計画について、APEX によればこれまでのところ国レベルで興味を示しているのはま

    ず中国、そしてシンガポールである。シンガポールはソブリンファンドを持っており、こういった物流イ

    ンフラ投資に積極的である。他には米国、英国、ドイツ、あるいは日本等が投資誘致のターゲット国にな

    る見込みである。

    APEX RENAI SIPRI

    日本の日本貿易振興機構(JETRO)にあたるブラジルの貿易投資促進機関が APEX である。MDIC 傘

    下の貿易投資促進機関で、ブラジル産品の輸出促進、国内企業の国際化、投資促進を担当している。本部

    の他、ブリュッセル、北京、モスクワ等 7 か所の海外事務所と、10 ヶ所の国内地域事務所を擁する。財源

    は企業の企業の支払い給与に対する「分担金(contribution)」で賄われている。義務的な負担であり、ほ

    とんど税金と同じであるが、分担金と呼んでいる。APEX は給与に対して 0.19%の負担率となっている。

    およそ年間 300 百万レアル程度の予算を有する。

    APEX の主体的な活動分野は、1石油・ガス、2再生可能エネルギー(風力発電と太陽光発電)、3航

    空、4調査開発センター、5自動車、6インフラストラクチャ、7不動産の7分野で、セミナーやワーク

    ショップの開催の他に、①国内のニーズ、サプライチェーンにおけるギャップ(不足分野)の調査・特定、

    ②海外の民間企業でこういったギャップを埋められるようなキャパシティのある会社を探し、直接個別の

    会社にアプローチし、ブラジルへ招致する等といった手段で、投資を誘致する二段階の活動を行なってい

    る。物流インフラ投資誘致については、2012 年に発表された連邦政府の物流インフラ計画に添って、空港・

    道路・鉄道等についての投資誘致について新しく活動を開始したばかりで、今後、新しく設立された物流

    システム・計画公社(EPL)のリーダーシップの下で、運輸省と協力しながら活動を行う予定となってい

    る。

    APEX は他に、受動的な活動分野として、企業からの求めに応じて、経済の状況や、税制、インフラの

    状況等の情報提供を行い、また連邦政府や州政府等との良い関係性を活かし、地域の選定等様々な側面を

    サポートすることも行っている。問い合わせのあった企業のうち、ブラジルの国益や優先順位等で選別し、

    年間およそ 150 社程度に対して無料でサポートを提供しているが、農業関連は非常に少なく、昨年は肥料

    関連会社 2 社があった程度に留まっている。

    投資促進関連の機関には、政府機関では他に開発商工省の一部局として全国投資情報網(RENAI)があ

    るが、ここは主に主要な投資機会のリスト作成や、外資の投資報告のリスト、その他教育・訓練、制作策

    4 国内拠点と各国大使館・領事館の通商部によって構成される投資誘致網

  • 49

    24

    定等を担当している。最近 JETRO からコンサルタントが 2 名派遣されて、訓練関連のキャパビル事業等

    が実施されている。

    また、外務省には各国大使館の商務部投資誘致組織として SIPRI がある(最近名前の変更を検討中)。5

    〜6 人が本国スタッフで、ほとんどが大使館・領事館にいる。外務省は 100〜150 カ所程度に商務部を置

    いているので、これは APEX に比べて現地へのアクセスが容易である。ブラジルに投資する際の法制度ガ

    イド等の出版物の作成を行っているほか、セミナーやイベント開催、ロードショーなどを行っており、

    APEX と業務がやや重なるが、ほぼ毎月コミュニケーションを行って協力関係にある。外国企業からのフ

    ァーストコンタクトは SIPRIである場合が多く、個別企業対応は APEXの方がキャパシティがあるので、

    こういった企業を APEX に紹介する。また、中国への官民合同ミッション等では、政府サイドを SIPRI

    が、民間企業サイドを APEX が担当する等の形で協力する。

    農業関係では、バイア州政府の代表事務所を APEX 内に置いた例があり、同様に後述のブラジル農業連

    盟(CNA)も代表事務所を APEX 内に設置している。バイア州政府は中国からの投資誘致に非常に積極

    的で、インフラ、農業、鉱業、最近では自動車の組み立て工場についても中国からの投資を得た。

    CNA

    CNA は 1960 年代に設立された団体で、農家の利益を代表する団体である。農家と政府の間にあって、

    政策を政府に提示する役割を持つ。予算は、連邦法に基づいて農家から徴収する。出荷額から自動的に徴

    収される仕組みである。2012 年 11 月に CNA は APEX 北京内に中国事務所を開設し、2 名のスタッフを

    配置した。①中国向けの農産物輸出促進、②ブラジルのイメージ・地位の向上、③ブラジルへの農業・物

    流インフラ投資誘致を主要な目的とする。さらに、農業に係る二酸化炭素排出権取引についても、大きな

    ビジネスチャンスがあると見込まれている。

    輸出促進では、中国向け輸出を大豆だけでなく多様化していきたいという考えがあり、当面、牛肉、コ

    ーヒー、林産物を重点分野として対象にしている。また投資促進では、ブラジルには明らかに投資ニーズ

    があり、一方で食料安全保障を進めたい中国とお互いに利害が合致していると考えており、2013 年 4 月

    に中国で農業インフラに特化した内容での大きな投資セミナー開催を予定している。農業インフラでは特

    に河川運輸を重視している。なお、農地に対する投資も CNA としては歓迎している。CNA は海外からの

    土地投資に対する近年の規制について、これを改善して海外投資を促進することをトップアジェンダの一

    つとして考えており、国会の当該委員会で討議が行われているところであるが、CNA も政府に対して働

    きかけを強めている。他に CNA は、物流、税制、登記、森林保護等の分野を重視して、議会対策チーム

    を設置している。