5.3 (1) インドネシア国における石炭資源の見通し...

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進) ファイナルレポート 5-13 5.3 石炭資源の見通し (1) インドネシア国における石炭資源の見通し エネルギー鉱物資源省地質庁が 2010 年に公表したインドネシアの石炭資源量は、 5.3-1 示し たように 1,048 億トンである。このうち、スマトラが 525 億トン、カリマンタンが 519 億トンで、 この 2 つの地域に大半が賦存している。インドネシアの石炭は気乾ベースの発熱量で区分されてお り、7,100 kcal/kg 以上が Very high rank coal6,1007,100 kcal/kg High rank coal(瀝青炭)5,1006,100 kcal/kg Medium rank coal (亜瀝青炭)、 5,100 kcal/kg 以下が Low rank coal (褐炭)とされてい る。この炭種別では、瀝青炭が 14%、亜瀝青炭が 66%、褐炭が 20%となっており、亜瀝青炭、褐炭 の低品位炭が資源量の 86%を占めている。 石炭埋蔵量は 213 億トンであり、スマトラに 112 億トン、カリマンタンに 99 億トンと見積もら れている。炭種別では、瀝青炭が 11%、亜瀝青炭が 60%、褐炭が 29%で、亜瀝青炭、褐炭の低品位 炭が埋蔵量の 89%を占めている。 インドネシアの石炭のほとんどが、カリマンタンとスマトラに賦存している。カリマンタンでは 主に東カリマンタン州、南カリマンタン州に埋蔵されており、亜瀝青炭及び瀝青炭が中心となって いる。スマトラでは 60%程度が南スマトラに埋蔵されているが、その大半は低品位炭である。 Reserves : 21,13 b. t Lignite : 29 % Subituminous : 60 % Bituminous : 11 % 11.23 b.t Resources : 104,842 b. t Lignite : 20 % Subituminous : 66 % Bituminous : 14 % 52.53 b.t b.t : billion tons 0.01 b.t 51.92 b.t 0.23 b.t 0.002 b.t 0.15 b.t 9.90 b.t Reserves : 21,13 b. t Lignite : 29 % Subituminous : 60 % Bituminous : 11 % 11.23 b.t Resources : 104,842 b. t Lignite : 20 % Subituminous : 66 % Bituminous : 14 % 52.53 b.t b.t : billion tons 0.01 b.t 51.92 b.t 0.23 b.t 0.002 b.t 0.15 b.t 9.90 b.t Reserves : 21,13 b. t Lignite : 29 % Subituminous : 60 % Bituminous : 11 % 11.23 b.t Resources : 104,842 b. t Lignite : 20 % Subituminous : 66 % Bituminous : 14 % 52.53 b.t b.t : billion tons 0.01 b.t 51.92 b.t 0.23 b.t 0.002 b.t 0.15 b.t 9.90 b.t 5.3-1 インドネシアの石炭資源量と埋蔵量 出典:Geological Agency, 2010, and other sources 5.3-2 にインドネシアの石炭資源量の推移を示した。インドネシアの石炭資源は 2004 年には 605 億トンであったが、平成 16 年度から開始した日尼共同事業の石炭資源解析調査で南スマトラ、東 及び南カリマンタンの資源量の詳細評価を行った結果、 2007 年の石炭資源量は 934 億トンと大きく 増加した。その後も石炭需要の増加による新規及び既存鉱区の探査、開発、生産の進展により、新 たな資源量データが加えられて石炭資源量が増加しており、 2010 年の石炭資源量は 1,052 億トンに なっている。この増加は Medium rankLow rank の低品位炭に区分される石炭が主なものである。

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5.3 石炭資源の見通し

(1) インドネシア国における石炭資源の見通し

エネルギー鉱物資源省地質庁が 2010 年に公表したインドネシアの石炭資源量は、図 5.3-1 に示し

たように 1,048 億トンである。このうち、スマトラが 525 億トン、カリマンタンが 519 億トンで、

この 2 つの地域に大半が賦存している。インドネシアの石炭は気乾ベースの発熱量で区分されてお

り、7,100 kcal/kg 以上が Very high rank coal、6,100~7,100 kcal/kg が High rank coal(瀝青炭)、5,100~

6,100 kcal/kg が Medium rank coal(亜瀝青炭)、5,100 kcal/kg 以下が Low rank coal(褐炭)とされてい

る。この炭種別では、瀝青炭が 14%、亜瀝青炭が 66%、褐炭が 20%となっており、亜瀝青炭、褐炭

の低品位炭が資源量の 86%を占めている。

石炭埋蔵量は 213 億トンであり、スマトラに 112 億トン、カリマンタンに 99 億トンと見積もら

れている。炭種別では、瀝青炭が 11%、亜瀝青炭が 60%、褐炭が 29%で、亜瀝青炭、褐炭の低品位

炭が埋蔵量の 89%を占めている。

インドネシアの石炭のほとんどが、カリマンタンとスマトラに賦存している。カリマンタンでは

主に東カリマンタン州、南カリマンタン州に埋蔵されており、亜瀝青炭及び瀝青炭が中心となって

いる。スマトラでは 60%程度が南スマトラに埋蔵されているが、その大半は低品位炭である。

Reserves : 21,13 b. tLignite : 29 %Subituminous : 60 %Bituminous : 11 %

11.23 b.t

Resources : 104,842 b. tLignite : 20 %Subituminous : 66 %Bituminous : 14 %

52.53 b.t

b.t : billion tons

0.01 b.t

51.92 b.t

0.23 b.t 0.002 b.t 0.15 b.t

9.90 b.t

Reserves : 21,13 b. tLignite : 29 %Subituminous : 60 %Bituminous : 11 %

11.23 b.t

Resources : 104,842 b. tLignite : 20 %Subituminous : 66 %Bituminous : 14 %

52.53 b.t

b.t : billion tons

0.01 b.t

51.92 b.t

0.23 b.t 0.002 b.t 0.15 b.t

9.90 b.t

Reserves : 21,13 b. tLignite : 29 %Subituminous : 60 %Bituminous : 11 %

11.23 b.t

Resources : 104,842 b. tLignite : 20 %Subituminous : 66 %Bituminous : 14 %

52.53 b.t

b.t : billion tons

0.01 b.t

51.92 b.t

0.23 b.t 0.002 b.t 0.15 b.t

9.90 b.t

図 5.3-1 インドネシアの石炭資源量と埋蔵量

出典:Geological Agency, 2010, and other sources

図5.3-2にインドネシアの石炭資源量の推移を示した。インドネシアの石炭資源は2004年には605

億トンであったが、平成 16年度から開始した日尼共同事業の石炭資源解析調査で南スマトラ、東

及び南カリマンタンの資源量の詳細評価を行った結果、2007年の石炭資源量は 934億トンと大きく

増加した。その後も石炭需要の増加による新規及び既存鉱区の探査、開発、生産の進展により、新

たな資源量データが加えられて石炭資源量が増加しており、2010年の石炭資源量は 1,052億トンに

なっている。この増加は Medium rank、Low rank の低品位炭に区分される石炭が主なものである。

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図 5.3-2 インドネシアの石炭資源量の推移

出典:Indonesian Coal Book 2010/2011 ( Indonesia Coal Mining Association)

上記のように、インドネシアの石炭は高炭化度の瀝青炭が少なく、亜瀝青炭や褐炭の低品位炭が

多い。また、瀝青炭は主に輸出用として生産されているため、インドネシア国内では低品位炭を中

心に利用していくことになる。表 5.3-1 にインドネシアの資源量の多い代表的な低品位炭の性状を

示したが、水分が高く、発熱量が低いことがわかる。また、灰の融点も一般的な瀝青炭と比べて低

いため、ボイラ等の燃焼で炉内での灰付着を起こしやすい。

図 5.3-3 には低品位炭の一般的性状と利用上の特性を示した。低品位炭は高水分に加え、炭素含

有量が低く酸素含有量が高いため発熱量が低い。また、内部に空隙が多いため表面積が大きいこと

から、自然発火性が高い。一方、揮発分が多いことから燃焼性は良好である。さらに、ガス化反応

性が高いことや灰融点が低いため噴流床ガス化には適していることから、将来的には IGCC の原燃

料として利用可能である。

表 5.3-1 インドネシア低品位炭の性状

Coal A B C D

Region S.Kalimantan E.Kalimantan E.Kalimantan S.Sumatra

Moist. (%, GAR) 35 45 45 60

CV (kcal/kg, GAR) 4200 3400 3400 2400

AFT (℃ ; Reducing)Initial DeformationHemisphericalFluid

112611541192

117912301289

122812471268

112011701380

Resources (million ton) 1,608 281 9,527 2,000

出典:調査団作成

0

20

40

60

80

100

120

2004 2007 2010

Billion ton

Low (<5100) Medium (5100-6100)High (6100-7100) Very High (>7100)

66%

20%

13%93.4

60.5

105.2

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図 5.3-3 低品位炭の性状と利用特性

出典:大高康雄(石炭技術会議 2006)

(2) 石炭価格の見通し

将来の石炭価格を想定するには、石炭の消費量予測が重要となる。

図 5.3-4 および図 5.3-5 は米国エネルギー省エネルギー情報局(Energy Information Administration)に

よる 2035 年までの GDP および石炭消費量の見通しである。先進国の OECD 加盟国の GDP は今後

も上昇していくが、開発途上国である OECD 非加盟国の GDP は急激に増加し、2015 年頃には先進

国に並び、その後も先進国を上回る経済成長となることが明らかである。この高い経済成長に伴い

エネルギー消費量も大きく増加するが、図 5.3-5 から明らかなように、中国、インド等のアジア地

域のエネルギー消費量が大きく増加し、石油やガスに比べて安価で、資源量が多い石炭がエネルギ

ー源の中心となる。

0

20

40

60

80

100

1990 2000 2007 2015 2025 2035

trilllion 2005 U.S. dollars

OECD

Non-OECD

History Projections

図 5.3-4 世界の GDP の見通し 出典:International Energy Outlook 2010 (US. Energy Information Administration)

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図 5.3-5 OECD 国及びアジアの非 OECD 国の石炭消費量の見通し

出典:International Energy Outlook 2010 (US. Energy Information Administration)

1) 石炭需給計画

インドネシアも良好な経済状況から、今後も高い経済成長率を維持していくと予想される。イン

ドネシアには石油、ガス、石炭の化石エネルギー源が豊富に埋蔵されていたが、石油、ガスの資源

量、生産量には限界が見えてきていることから、エネルギー政策として石炭を今後の主要エネルギ

ー源とすることになっている。図 5.3-6 に示したように、インドネシア国内の石炭需要は増大して

いくが、高炭化度の石炭が 1%程度の増加に留まるのに対し、低品位炭は 36%の増加となることか

ら、今後の消費量の増加の大半は褐炭である。また、この国内の石炭需要のほとんどは、経済成長

に伴って増大する電力需要を満たすための石炭火力発電用となっている。

44.5 40 4048 52

0.5

50

108

136

184

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2006 2010 2015 2020 2025

Domestic Coal Demand (Mil Tons)

+ 36%

+1%

= Bituminous and Sub Bituminous

= Low Ranked Coal (Lignite)

図 5.3-6 インドネシア国内の石炭需要の見通し 出典:Jefrey Mulyono (Coaltrans Conference, Investing in Coal Upgrading and New Technologies, 2007)

quadrillion Btu

0

40

80

120

160

1990 2000 2007 2015 2025 2035

Non-OECD Asia

OECD

History Prediction

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図 5.3-7 にインドネシアの石炭生産量の実績及び計画を示した。インドネシアの石炭は、低灰分、

低硫黄分で環境対策に適した性状から、中国、インド等のアジア地域への輸出が増えているため、

今後も輸出を目的に生産量も増加すると見込まれているが、増大する国内需要を満たすために、

DMO 規則や高付加価値義務化により国内供給を優先させることから輸出量はほとんど変化せずほ

ぼ一定となり、2020~2025 年には国内向けの供給量が輸出量を上回ると予測されている。

石炭の増産における環境対策については、2.1 項で記述したように事業開始時に生産計画による

AMDAL の環境評価等により、環境悪化抑制をする生産が行われる。石炭の生産方法、状況から大

気、騒音、水質等への影響はわずかであるが、地形、土壌、動植物生態系にはマイナスの影響があ

る。このため、新鉱業法や森林法により自然・森林保護区域での鉱業活動禁止、特定区域での露天

掘禁止により生物多様性や生態系の保護を行うとともに、鉱業活動の許可区域でも生産終了後の森

林の修復、再生が義務付けられるなど、政策面からも環境の悪化をできるだけ抑えることとしてい

る。

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2006 2007 2008 2009 2010 2015 2020 2025

(millio

n t

on)

Production Export Domestic

図 5.3-7 インドネシアの石炭生産量実績及び見込み 出典:エネルギー鉱物資源省鉱物石炭総局

2) 石炭価格の見通し

1980 年以降の国際市場における石炭価格を図 5.3-8 に示した。1980 年から 2004 年頃までの石炭

価格は、多少の変動はあるものの 24~40US$/トンで推移していたが、2004 年以降、中国、インド

等の需要増加を背景とした需要逼迫に加え、輸出国の輸送インフラ制約と生産国に於ける異常気象

と生産障害に伴う供給低下により価格が上昇し、2007 年から 2008 年には金融危機の影響もあり

200US$/トンまで一気に急騰後一端下落し、その後再度上昇傾向にある。

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New Castle FOB

0

50

100

150

200

250

0 60 120 180 240 300 360 4201980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

図 5.3-8 石炭価格(ニュ-キャッスル FOB)の推移

出典:調査団作成

インドネシアの輸出用石炭価格についての国際的な価格指標は、2007 年頃まではほとんどなかっ

た。インドネシアの輸出用炭は、一部の瀝青炭を除いて比較的発熱量が低いことや、5000kcal/kg 程

度の亜瀝青炭の輸出量も増加してきているが、一方、豪州炭等よりも低灰分、低硫黄の特徴がある。

また、インドネシアは 2004 年に豪州に次いで世界で 2 番目の石炭輸出国となり、一般炭だけでは

世界一となったが、米国、豪州を中心とする石炭価格指数が必ずしもインドネシア炭の価格状況を

反映していないことや、インドネシアの石炭価格が他国で形成される市場価格に影響を受けること

を避けるため、インドネシア石炭鉱業協会等を中心にしてインドネシア炭独自の価格指数である

Indonesian Coal Index(ICI)を設定することとし、3 種類の ICI-1(6,500 kcal)、ICI-2(5,800 kcal)、

ICI-3(5,000 kcal/kg)を公表した(発熱量は到着ベースの総発熱量)。価格は石炭会社、ユーザー、

貿易会社等により設立された PT Coalindo Energy 社が、石炭会社 10 社、ユーザー10 社、商社等社等

からの価格情報を毎週収集し、上下 10%を除去した後に設定され、さらにエネルギー関係情報の主

要会社の一つである英国 Argus 社の市場情報による評価を加えて ICI として報告しており、50%の

先物取引価格と 50%の実質価格から構成されている。その後、中国、インドからの引合いが多くな

り、これまであまり取引のなかった 5,000 kcal/kg 以下の低品位炭の取引も増加してきたことから、

2008 年 7 月より ICI-4 として 4,200 kcal/kg の石炭の価格指数を、2011 年 11 月からは ICI-5 として

3400kcal/kg の石炭の価格指数を設定し報告を始めている。この ICI-5 は、現在の価格指数では最も

低発熱量のものである。

一方、国内向けの石炭については、ユーザーと石炭生産会社間の長期契約や入札による調達が行

われているが、国内向けの統一された市場価格指標は無かったことから、エネルギー鉱物資源省は

新たな石炭政策として 2010 年に HBA 制度を発足させ、輸出、国内に関係なく統一された価格指標

を制定した。HBA は 4 つの国際価格指標に基づいて算出されているため、基本的には国際価格に連

動しているものと見なすことができる。現在 HBA では、3,400 kcal/kg の ICI-4 より低い発熱量の

3000kcal/kg の石炭まで指数が設定されているため、インドネシアにおける低品位炭の価格動向は、

ICI-4、ICI-5 及び低発熱量の HBA により知ることが可能である。

図 5.3-9 に 2008 年からの ICI4種及び HBA、HBA3500、HBA3000 の動向を示した。4つの ICI

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は発熱量の違いによって価格が異なっているが、価格変動は全く同様に推移している。また、3種

類の HBA は、ICI の変動より若干遅れて変化する傾向を示しているが、これは HBA が公表された

ICI 等のデータに基づいて算出されること、ICI 等の国際価格指標は毎週公表されるが HBA は1月

単位で公表されることによるが、変化は同じ傾向を示している。従って、低品位炭価格指標の ICI-4

を元に今後の低品位炭の価格見通しを検討した。2008 年以降の石炭価格急騰後に一端下がった後の

変化を図 5.3-10 に示したが、この価格上昇が今後も継続するものとした場合には年率 7%程度の価

格上昇となることから、2020 年には ICI-4 および HBA3500、HBA3000 は、2010 年のほぼ2倍の価

格となるものと想定される。このように、今後も低品位炭の価格が上昇することから、低品位炭を

使用する発電プラントにおいてもより高効率な CCT 技術採用のニーズは高まるものと想定される。

$0

$50

$100

$150

2008/10/03 2009/08/03 2010/06/03 2011/04/03

ICI-1(6500kcal)

ICI-2

ICI-4(4200kcal)

ICI-3

HBA(3000kcal)

HBA(3500kcal)

HBA

October 2008 Augst 2009 June 2010 April 2011

図 5.3-9 ICI 及び HBA の動向 出典:調査団作成

図 5.3-10 低品位炭(ICI-4)の価格推移

出典:調査団作成

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5.4 CO2削減効果及び諸制度の利用可能性

(1) CCT 導入による CO2排出削減の可能性

DNPIは 2005 年に森林セクター、泥炭地等の排出源も含めたインドネシアのGHG総排出量は約

2.1Gt-C(e)で、BAUシナリオによると 2030 年には約 3.3Gt-C(e)に達すると予測している(下図 20)。

その中でも急激な伸びが想定されているのが電力セクターである。現時点でもインドネシアの最

大の排出源とされているる森林セクターが 2 割減、泥炭地からの排出も 1.26 倍の伸びにとどまるの

に対し電力セクターは 7.36 倍で 2030 年には森林セクターを抜く 810Mt-C(e)に達する、とされてい

る。

770 890 970

840 730 670

110370

810

60

220

440

130

145

150

95

100

105

25

45

75

25

30

40

2005 2020 2030Peat LULUCF2 PowerTransport Agriculture Petroleum and gasCement Buildings

4.97%

図 5.4-1 インドネシアの GHG 排出量予測(DNPI 資料より)

出典:調査団作成

DNPI 同じ報告書の中で電源別発電量を比較、BAU シナリオでは石炭の発電量が 645 TWh(66%)

に達する、としている(下図)。そして石炭火力発電が BAU ベースでの GHG 排出量急増の原因で

ある、と明示した上で 2030 年時点での石炭による排出削減ポテンシャルを 225Mt-C(e)と予測して

いる。

20 DNPI, Indonesia’s Greenhouse Gas Cost Avatement Cost Curve, August 2010.本書はインドネシア政府が官民

の専門家の連携の下、GHG 排出量及び削減ポテンシャルについて国連への第 2 次国別報告書の予測内容及び経済状況

等を再検証しつつより精度の高い中長期予測を試みた内容となっている。

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図 5.4-2 電源別発電量及び化石燃料からの GHG 排出量の伸び(DNPI 資料より) 出典:調査団作成

(2) CCT 導入による CO2削減効果

1) CO2削減量 2017 年以降の新設石炭火力をすべて USC で建設すると仮定。この場合の発電効率を 42%とし、

SC での発電効率 39%との差 3%による CO2排出量削減効果を算出すると 2020 年で 157 万トン/年、

2025 年で 668 万トン/年の CO2排出量削減が可能となる。更に、2025 年における USC 発電の一部を

IGCC 発電プラントとした場合は、832 万トン/年の CO2排出量削減が可能となる。

2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025

5.6 Mil T/Y

22.5 Mil T/Y

67.6 Mil T/Y

50.7 Mil T/Y

39.5 Mil T/Y

78.9 Mil T/Y

95.8 Mil T/Y

0.38 Mil T/Y reduction

1.57 Mil T/Y reduction

2.75 Mil T/Y reduction

3.54 Mil T/Y reduction

4.71 Mil T/Y reduction

5.5 Mil T/Y reduction

6.68 Mil T/Y reduction & 8.32 Mil T/Y with IGCC

+1,000MW

+3,000MW

+3,000MW

+2,000MW

+3,000MW

+2,000MW

+3,000MW

Additional Capacity

Co2 Emission

IGCC

図 5.4-3 CCT 導入による CO2削減量の試算 出典:調査団作成

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)

ファイナルレポート

5-22

2) インドネシアの国家目標への貢献

新規設備建設にはリードタイムを要するため CCT 導入初期におけるインドネシア政府の排出削

減目標への数値的な貢献は比較的小さい。RAN-GRK に掲げられた 2020 年エネルギーセクター全体

の目標値 0.038Gt-C(e)に対し 2020 年までの削減量は 0.38Mt-C(e)で 1%に留まる。ただし目標値に組

み込まれていない追加的な削減量としての 1%は評価に値する。

2025 年及び同年以降については石炭火力発電への CCT 導入の効果が大きく表れて来る。

2025 年の削減目標値は出されていないため仮に 2030 年の石炭からの排出削減目標値 225Mt-C(e)

との比較で述べると IGCC 一部導入の場合で 3.7%、USC のみでもほぼ 3%の貢献が可能になる。

3) 排出削減のクレジット化による経済性向上の可能性 第 2 章に述べたとおり気候変動対策の国際的枠組み継続強化の努力は続けられているものの、京

都議定書の第一約束期間の終了まで残すところ 1 年の段階で開かれたCO17/CMP7 を経てもなお先

行きが不透明な状況にさほどの変化はない。その状況を反映し排出権価格はダーバン合意後 2 月の

一時期若干の回復を見て以降ほぼ下降の一途をたどっており、本報告で参考とした排出権価格は

€4.3421(約 470 円)となっている。

2020 年までの排出削減目標に貢献すべく進められるCCT導入新規石炭火力に関しては、この価格

に機会費用 22を加味すればクレジット価格による経済性向上の可能性は考慮せずに計画を進めるの

が妥当と考えられる。

(3) 諸制度利用の可能性

今後 1 年程度の間に急速に第 2 約束期間における枠組みの検討が進み国際的な合意、制度構築が

十分に進んだ場合、排出権市況が徐々に回復し、CCT 導入による石炭火力発電案件のクレジット化

が経済性の観点から有利となる可能性もある。その際、インドネシアの石炭火力発電への高効率

CCT導入へのクレジット諸制度適用を検討するにあたっては以下の2基本要件を考慮する必要があ

る。

1) 国際的に認められるレベルの方法論に基づくものであること。

理由:NAMA では当該国の自主性が重んじられるとは言え、国際的な基準に照らした MRV(モ

ニタリング、報告、検証)が義務付けられている。また国際的に認められるレベルを満たしていな

い場合炭素クレジットの信頼性=価値自体が損なわれ兼ねない。

2) プロジェクト(建設)の経済性を損なわないスピードでの承認が可能な制度であること。

理由:少なくとも過去の CDM において承認・登録手続には平均 2 年程度を要している。本来プ

ロジェクトの経済性確保を支援すべき炭素クレジットの制度の承認に膨大な時間を費やすことに

なれば、持続的経済発展と削減行動の両立、という NAMA の本来的ありようを阻害しかねない。

以上の諸要件に鑑み、制度構築が終わっており今後も継続見込の CDM 及び二国間交渉及び制度

構築に向け鋭意検討が進められている二国間クレジット制度の適用可能性を検討する。

21 ロイター社(ポイントカーボン社)の市場レポートのセカンダリーCER スポット価格について 2012 年 1-3 月の

平均値による。日経 JBIC 参考気配(3 月 29 日現在)も 431.3 円(売 461.2、買 401.5)でほぼ同様の動きを示

している。 22 国連あるいは関係諸機関への申請手続にかかる時間及び経費並びにその他の不確定要素が想定される他、BAU 比

での排出削減実績をできる限り早期に積み上げるという政策的観点からもクレジット化を考慮しないという選択肢

が有利になる可能性がある。

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5-23

(a) CDM

現行 CDM で適用可能なのは ACM0013(低 GHG 排出強度技術を用いたグリッド接続新規化石

燃料火力発電設備のための統合方法論)で、インドネシアでの高効率 CCT 石炭火力発電所建設へ

の適用に際し検討しなければならない適用条件は以下のとおり。

当該プロジェクト活動が、そのプロジェクト活動が無い場合に当該化石燃料を電源として利

用が想定される技術よりも高効率の発電技術を利用する、グリッドに接続する新規の化石燃

料火力発電設備の建設及び稼動であること。

当該プロジェクト活動が、コジェネレーション発電設備ではないこと。

最近建設された発電設備の燃料消費量及び発電量に関するデータが入手可能であること。

同定されたベースライン燃料が、当該ホスト国内の地理的区域(本方法論の以下で定義する)

又は当該ホスト国にある設備による総発電量の 50%以上について利用されていること。この

適用条件を実証するためには、直近 3 年間のデータを用いなければならない。3 年間の同一

化石燃料による発電推計量の最大値は、50%以上であるべきである。

現時点で唯一満たされていない 4 番目の条件、つまり当該地理的区域(この場合はジャワ-バ

リ送電系統)において石炭が総発電量の 50%以上について利用されている、という条件に関して

も全電源に対する石炭火力発電容量の割合が 2015年で 61.7%に達するとの予測を考慮すれば 50%

を超えるのは時間の問題であろう。

ただし方法論自体の適用可能性とは別に、以下の点を考慮するとポスト京都において CDM 自

体の基本的な枠組み、考え方に変更がない限り高効率 CCT 石炭火力発電への CDM の適用に大き

く期待はできないと考える。

EUを中心に石炭火力発電自体へのCDM適用に対する否定的な意見 23が根強いこと。

CDMのベースラインの考え方を踏まえると異なる案件として複数の同種CCTによる石炭火

力発電を実施しても 2 件目以降の案件承認は困難。また政策的に当該 CCT を導入すること

が決められている場合も追加性の証明が難しくなる。

(b) 二国間クレジット制度

二国間クレジット制度はコペンハーゲン合意でその基本的方向性を認められた柔軟性メカニズ

ムで、現在各国により取り組みが検討されているもの。実現すれば、途上国と先進国が、技術移

転の促進とクレジットの生成を通じた互恵関係の構築が期待でき、その特徴は以下のとおりであ

る。

二国間の合意に基づくものであり、ホスト国の制度・政策の実情にあった制度の構築が可能。

高効率 CCT 石炭火力発電の場合日本の技術移転を伴う削減行動となることから、日本の二

国間クレジット制度の利用が適当。

承認に関しては一定の制度構築が必要。一方で承認に関し国連の直接の関与を必要としない

ことから、比較的迅速な手続が期待できる。

基本要件の a.に照らし二国間クレジット制度を適用する場合にも国際的に認知されるレベ

ルの MRV 構築が必須。

23 CDM で求められる追加性の議論(CDM がなくても実施されていたかどうか)との関係で省エネ案件の多くと同

様石炭火力への CDM 適用は不適とする見解。最近石炭火力及び大規模水力案件の CER をEU-ETS から排除する動

きが出ている。

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5-24

現時点で国際的な MRV のガイドライン自体が構築中であることからあくまで参考としてでは

あるが、CDM の ACM0013 と共通の精神に基づきつつも追加性を柔軟に捉えて石炭火力発電に特

化した方法論、JBIC の J-MRV004(低炭素発電技術を導入する化石燃料火力発電プロジェクト用

方法論)を参考としつつ MRV を策定することを提案したい。

<J-MRV004 の適用条件>24

低炭素発電技術を導入する化石燃料火力発電所の新設あるいは既存の発電所の改造である

こと。

グリッドに電力を供給する発電所であり、コジェネレーション発電設備ではないこと。

既存の発電所においては、原則として改造前と同じ種類の燃料を使用すること(燃料転換を

含まない)。

<事業の物理的範囲(バウンダリー)>

本方法論で適用する事業のプロジェクトバウンダリーは、プロジェクトサイト内の当該発電施設

とする。

<ベースライン排出量>

a. ベースライン排出量の基本的考え方及び前提・根拠

〔新設の場合〕

プロジェクトの周辺状況に応じて、下記 i)~iii)(原則は i)とする)のうちいずれかを選択する。

i) ベースライン排出係数は、当該国における全ての発電所の平均排出係数とする。

ii) ベースライン排出係数については、国全体の排出係数として「J-MRV ガイドライン」別

添 3 に記載された排出係数を利用する。

iii) また、別に適当と思われる排出係数を採用することもできる。

b. 当該国における燃料、エネルギー政策、経済面等による制約がある場合には、ベースライン

排出係数は、当該国における同種燃料の発電所をベースとした平均排出係数とすることがで

きる。

i) この場合、事業者が上記制約を考慮したうえで選択した燃料についての選択の背景につ

いて確認する。

ii) ベースライン排出係数については、同種燃料の発電所の排出係数を、国際エネルギー機

関(IEA)公表データ等を基に作成し利用する。

iii) また、別に適当と思われる排出係数を採用することもできる。

iv) 同種燃料の発電所が当該国内に存在しない場合には、専門家へのヒアリングあるいは文

献調査等により、当該国あるいは周辺国の技術レベルや電力事情なども考慮したうえで、

妥当なベースライン排出係数を決定する。

c. 発電効率や CO2 排出原単位に関する当該国の基準あるいは国際的なデファクトスタンダード

等の最低限の要件がある場合は、それらを考慮したうえでベースライン排出係数を決定する。

なお二国間クレジットによる削減行動は他の炭素クレジットを伴う削減行動と同様 Credited

NAMA としてホスト国の数値的な削減実績とは区別されることを付言する。

24 「国際協力銀行の地球環境保全業務における温室効果ガス排出削減量の測定・報告・検証に係るガイドライン」平

成 23 年 2 月改訂

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5-25

5.5 CCT経済性比較

(1) 経済性比較の前提条件

CCT の経済性評価は以下の前提条件のもとで行った。

(a) 熱効率は、石炭熱量の低下に伴い水分量が増加することから、ミルにおける乾燥用熱量増加に

伴う熱効率低下を考慮した。

(b) 建設コスト(IGCC除く)は、2,400/3,000 kcal/kgの場合 25、褐炭焚き用のボイラ設計となり、ス

ラッギング防止や火炎温度の低下、保炎確保のため大型火炉を採用する必要があり、ボイラ容

量の大幅な増加を考慮した。

(c) IGCC の建設コストは、2,400/3,000 kcal/kg の場合でも、ガス火炉の形状に違いがないことから

同じとした。ただし、現在は IGCC の商用機はないため、建設コストは 2020 年時点におけるメ

ーカーの目標値を用いる。

(d) 今後の石炭価格の上昇を見込み、2020 年の石炭価格は 2011 年の 2 倍とした。

表 5.5-1 経済性比較の前提条件(建設コスト、熱効率、O&M コスト、石炭単価)

Precondition of cost comparison Sub Critical SC USC IGCC Coal Price

($/ton)

Gross Power 1,000MW 1,000MW 1,000MW 1000MW Class Y 2011 Y 2020

PlantEfficiency

4,200kcal/kg 36% 39% 42% 49% 53.8 107.6

3,000kcal/kg 33% 36% 39% 45% 31.4 62.8

2,400kcal/kg 30% 33% 36% 42% 21.7 43.4

Construction Cost

4,200kcal/kg 100%(Base) 106.5%. 108.5% 130.0% - -

3,000kcal/kg 107.0% 111.0% 115.0% 130.0% - -

2,400kcal/kg 110.5% 115.5% 119.0% 130.0% - -

Coal Consumption (kg/kWh.net) 100%(Base) 90% 84% 75% - -

O & M cost 2 .5% 3 % 3 % 3.% - -

出典:調査団作成

(2) 経済性比較

1) 経済性比較は、亜臨界、超臨界、超々臨界及び IGCC に於ける各々のプラント効率、建設費、石

炭消費量及び運転補修費が違うことから、発電コスト(1kWh 当り)として比較する。

2) 設備コストは資本回収係数を用いプロジェクト期間で均等とした。なお、資本回収係数の算出条

件であるプロジェクト年数、利子率は以下のとおりとした。

(a) プロジェクト年数:30 年

(b) 利子率:12%

ここから算出される建設コスト、プラント効率と石炭価格から算出される燃料コストにプラント

種別により設定した O&Mコストを合算し、発電コストを算出した。IGCCについては、運転実績はな

いものの、メーカからの聞き取り結果をもとに他プラントと同等の 30年で参考値として評価した。

25表 5.3-1 および図 5.3-9 に示す Indonesian Coal Index (ICI)等に基づき選定

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5-26

3) 経済性比較を図 5.5.1 に示す。図のうち、左上のグラフは石炭発熱量毎のプラント効率を示して

おり、右上のグラフからは 2010 年時点での発電コストの差が確認できる。左下、右下のグラフ

からは、2010 年および 2020 年の石炭価格による発電コストの差が確認できる。

5.3

5.4

5.5

5.6

5.7

5.8

5.9

5.3

5.4

5.5

5.6

5.7

5.8

5.9

5.3

5.4

5.5

5.6

5.7

5.8

5.9

Plant efficiency (gross, HHV) by Coal Type

25%

35%

45%

25%

35%

45%

25%

35%

45%

Sub-C SC USC IGCC

Sub-C SC USC IGCC

Sub-C SC USC IGCC

36%39%

42%

49%

33%36%

39%

45%

30%33%

36%

42%

4,200 Kcal/kg

3,000 Kcal/kg

2,400 Kcal/kg

Sub-C SC USC

Sub-C SC USC

Sub-C SC USC

5.88 5.82 5.65

5.70 5.59

5.49

5.64 5.56

5.44

2010 Generation Cost (US cent/kWh)

-2.9%

-2.2%

-1.8%

=△11.3 MUSD/Y

=△6.6 MUSD/Y

=△7.9 MUSD/Y

4,200 Kcal/kg = 53.8 US$/t

3,000 Kcal/kg = 31.4 US$/t

2,400 Kcal/kg = 21.7 US$/t

5.3

5.4

5.5

5.6

5.7

5.8

5.9

7

7.5

8

8.5

9

9.5

7

7.5

8

8.5

9

9.5

IGCC

IGCC

5.68

5.55

2010 Generation Cost (US cent/kWh)

7

7.5

8

8.5

9

9.5

 

9.218.82

8.44 8.43

8.668.25

7.95 7.88

8.468.06

7.74 7.55

Sub-C SC USC IGCC

Sub-C SC USC IGCC

Sub-C SC USC IGCC

2020 Generation Cost (US cent/kWh)

-4.3%-4.3%

-3.6%-3.6%

-4.0%-4.0%

=△25.3 MUSD/Y

=△19.9 MUSD/Y

=△21.3 MUSD/Y

5.3

5.4

5.5

5.6

5.7

5.8

5.9

5.3

5.4

5.5

5.6

5.7

5.8

5.9

Sub-C SC USC

Sub-C SC USC

5.88 5.82 5.65

5.70 5.59

5.49

5.64 5.56

5.44

-2.9%-2.9%

-2.2%-2.2%

-1.8%-1.8%

=△11.3 MUSD/Y

=△6.6 MUSD/Y

=△7.9 MUSD/Y

4,200 Kcal/kg = 53.8 US$/t

3,000 Kcal/kg = 31.4 US$/t

4,200 Kcal/kg = 107.6 US$/t

3,000 Kcal/kg = 62.8 US$/t

2,400 Kcal/kg = 43.4 US$/t

図 5.5-1 経済性比較

出典:調査団作成

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5-27

経済性評価

4) 2011 年の石炭価格では、いずれの炭種においても USC の経済優位性が確認されるものの、その

差はわずかである。しかし、2020年の石炭価格では、USCの優位性は明らかである。これは、USC

において石炭使用量が少なくなるが石炭価格が高くなると発電コストに与える影響が大きくな

るためである。

5) IGCCについては、商用機の導入が可能とされる 2020年の石炭価格では、特に低品位炭で USCに

対する経済優位性が確認された。

1,000 MW級の発電所で比較した場合、USCは SCに比べて建設費は年間費用換算で 2,400万ドル

程度高くなる。また、O&Mコストも 100万ドル/年増加する。しかし、燃料費が 3,000万ドル/年程

度削減できることから、建設費の増分コストは、1年弱で回収できることになる

Initial Cost

+

-

Annual Fuel cost Annual BenefitAnnual

O&M cost

Pay back period

Cost

Diff

eren

ce (m

illion

USD

)

Initial Cost ÷ Annual Benefit

24 ÷ 29 ≒ 1 year

- 30 - 29

24

1

Comparison of the cost between SC and USC

+ =

図 5.5-2 コスト比較(SC 及び USC)

出典:調査団作成

Impact of generating cost difference of 0.1 cent/kWh.

= 0.1 (cent/kWh) × 950(MW) × 8760(h) × 0.8

Net Capacity Hours in a year

CapacityFactor

= 0.1 × 6,657,600,000 (kWh)

= 6.66 (Million US$ per year)

Annual Electric power generationCost

DifferenceAnnual Difference of generating cost = ×

※ Net Capacity = [Unit Gross Capacity] - [Auxiliary Power]= 1000MW × (1 - 0.05)= 950 MW

図 5.5-3 発電コスト 1kwh の与えるインパクト

出典:調査団作成

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5-28

(3) CCT 導入の課題

1) 熱効率・稼働率低下の影響 USC 導入のメリットは、建設コストの増分を上回る燃料費削減および CO2削減効果である。しか

しながら、設計・施工不良や経年化等により熱効率や稼働率の著しい低下が発生した場合、USC 導

入のメリットを大きく損なうこととなる。

具体的には、熱効率が想定より 1%低下した場合のデメリットを建設コストに換算すると

82 US$/kW となる。言い換えれば、熱効率が1%未達のプラントは、82 US$/kW 高いプラントを購

入したことと同じとなる。

また、同様に、稼働率がトラブルの発生や出力未達等により、想定より 10%低下した場合は、

76 US$/kW 高いプラントを購入したことと同じとなる。

このように、USC 導入に際しては、建設コストの比較だけでなく、熱効率や稼働率面からの評価

が不可欠となる。(表 5.5-2 参照)

表 5.5-2 熱効率・稼働率の低下によるコスト影響分析

Rated plantoutputs

Plant efficiency degradation

100% 99%(▲1%)

95%(▲5%)

90%(▲10%)

0% base 8 38 76

▲1% 82 90 120 158

▲2% 168 176 206 244

▲3% 259 267 297 335

Rated plantoutputs

Plant efficiency degradation

100% 99%(▲1%)

95%(▲5%)

90%(▲10%)

0% base 8 38 76

▲1% 82 90 120 158

▲2% 168 176 206 244

▲3% 259 267 297 335

出典:調査団作成

2) 高効率・高稼働運転の実現に向けた取り組み

図 5.5-4 は、インドネシアの石炭火力発電所と日本(中部電力)の石炭発電所におけるプラント

運転時間と設備の経年劣化による熱効率の低下を示したものである。

図中の中部電力の碧南火力発電所は、出力 700MW の USC コンベンショナルプラントであり、イ

ンドネシアは 300MW の亜臨界プラントのデータを集計したものを用いている。

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5-29

20

25

30

35

40

45

0 5 10 15 20 25

インドネシア300MW級

CEPCO碧南1号

(700MW)

Remarkable decreases in the efficiency of coal-fired power generation by aging

Years of operation

Effic

ienc

y(%

)

* Efficiency of each power plant inIndonesia plotted based on yearsof operation

300 MW facilities in Indonesia

CEPCO Hekinan unit #1 (700MW)

図 5.5-4 インドネシアと日本(中部電力)の石炭火力発電所における熱効率の推移 出典:調査団作成

データを比較してわかるとおり、インドネシアのプラントにおける熱効率の低下は、運転開始か

ら約 10年で 10%程度低下しているのに対して、日本(中部電力)の石炭火力発電所では 1%程度の

低下である。

USC のような高効率の発電技術を採用し、そのメリット(経済性、CO2削減効果等)を享受する

ためには、経年化に伴う熱効率および稼働率の低下を防止する取り組みが不可欠となる。

SC、USC プラントの運転には、亜臨界圧プラントと比較した場合、以下のような運転管理技術が

求められる。

<厳密な水質管理>

亜臨界圧プラントのドラム型ボイラと SC、USCプラントの貫流ボイラの構造の違いを図 5.5-5に

示す。

図 5.5-5 ユニットタイプ別ボイラ構造の違い

出典:調査団作成

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5-30

不純物をブローできるドラムボイラと違い、貫流ボイラでは、給水中の不純物がすべてボイラに入

り、管内面のスケールとなる。スケールの付着が蓄積すると伝熱効率を低下させるだけではなく、管

を過熱させ、最終的には損傷に至る。このため、貫流ボイラではドラム型ボイラ以上に水質管理を厳

密に行う必要がある。図 5.5-6 に運転中に伝熱管に付着するスケールの状況、図 5.5-7 に過熱により損

傷した伝熱管を示す。

通常の伝熱管 スケールが付着した伝熱管

図 5.5-6 伝熱管スケール付着状況 出典:調査団作成

図 5.5-7 過熱により損傷した伝熱管

出典:調査団作成 次に代表として、給水系統の水質管理についてドラムユニットと貫流ユニットの違いを比較する。

給水の水質管理の目的は、以下のとおりである。

(a) 給水系統の腐食防止

(b) 給水系統のスケール生成防止

(c) 脱気器の性能管理

(d) ボイラ給水水質の最終確認

図 5.5-8、図 5.5-9 にドラムユニットおよび貫流ユニットの水質管理箇所と薬品注入箇所を示す。

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ファイナルレポート

5-31

図 5.5-8 ドラムユニットの水質管理箇所および薬品注入箇所

出典:調査団作成

RH

高圧タービン

ドラム

脱気器

節炭器

CP

BFP

HP-HTR

低圧タービン

復水器

① ② ③

② ④

◎ ◎

LP-HTR

◎ :

○ : リン酸ナトリウム注入点 (Na2PO4 : Na2HPO4)

設置計器名 ①pH計 ②電気伝導率計 ③シリカ計 ④DO計 ⑤検塩計

SH

N2H4 注入点

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5-32

SH

RH

高圧タービン

W・W

脱気器

節炭器

CP

BFP

HP-HTR

低圧タービン

復水器

LP-HTR

◎ : N2H4注入点

◇ : NH3 注入点

CBP ②

コンデミ

設置計器名

①pH計

②電気伝導率計

③シリカ計

④DO計

⑥鉄モニター

⑦ナトリウム計

⑧検塩計

⑤ヒドラジン計

図 5.5-9 貫流ユニットの水質管理箇所および薬品注入箇所 出典:調査団作成

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5-33

水質の管理基準については、各発電所で実施された過去の水処理特性試験、メーカ推奨値、JIS

等の文献値を参考とし、以下のように定めている。

表 5.5-3 ドラムユニット運転時の給水水質管理基準値

試験水 測定項目 単位 基準値 ( )の値は目標値

給水

脱気器出口 溶存酸素 mg/l 0.007 以下

脱気器出口 または 節炭器入口

pH - 8.6~9.4 電気伝導率 μS/cm 0.3 以下 全鉄 mg/l (0.020 以下) 全銅 mg/l (0.010 以下)

出典:調査団作成

表 5.5-4 貫流ユニット運転時の給水水質管理基準値

試験水 測定項目 単位 揮発性物質処理法 酸素処理法

亜臨界圧 超臨界圧 以上

超臨界圧 以上

給水

脱気器出口 溶存酸素 mg/l 0.007 以下 0.007 以下 - 脱気器出口 または 節炭器入口

全鉄 mg/l 0.010 以下 0.010 以下 0.010 以下

全銅 mg/l 0.020 以下 0.020 以下 0.020 以下

節炭器入口

pH - 9.2~9.4 9.3~9.7 8.5~9.0 電気伝導率 μS/cm 0.25 以下 0.25 以下 0.25 以下 全鉄 mg/l 0.010 以下 0.010 以下 0.010 以下 溶存酸素 mg/l 0.05~0.15

出典:調査団作成

上記を比較してわかるとおり、貫流ユニットはドラムユニットと比較して測定点が多く、基準値

も厳しく設定する必要がある。また、これらを測定する自動分析装置の保守点検も計画的に実施さ

れる必要がある。

厳密な水質管理を実施するためには、体制の確立(測定項目、測定箇所、管理値、連続監視、計

器の適切な保守)が必要となる。CEPCO では運転中の復水・給水ラインの水質を常時監視してお

り、発電担当・保守担当の役割区分は表 5.5-5 のように定められている。

表 5.5-5 発電所における水質管理の役割分担

発電担当

・モニターによる連続監視 ・1 時間ごとの運転記録の確認(管理値との比較) ・異常兆候監視システムによる監視 ・1 日 1 回の巡視で計器の健全性を現場で確認。

保守担当 ・定期的な計器の点検・校正 ・点検実績の管理

出典:調査団作成

一例として、表 5.5-5 中の異常兆候監視システムについて紹介する。異常兆候監視システムは、

プラントの計算機で保存している運転実績データから統計的手法を用いて算出した基準値よりし

きい値を設定し、プラント運転状態値のオンライン監視を行うシステムである。しきい値の逸脱時

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5-34

は、注意を促すメッセージの出力を行い、プラントおよび各機器の異常を知らせる役割を果たす。

図 5.5-10 にシステムの概念図を示す。

図 5.5-10 異常兆候監視システム概念図

出典:調査団作成

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5-35

異常兆候監視システムを利用した監視業務のフローを図 5.5-11 に示す。

図 5.5-11 異常兆候監視システムによる監視業務のフロー 出典:調査団作成

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5-36

異常兆候監視システムを使用することにより、以下の効果が期待できる。

i) 運転員による異常兆候監視業務が機械化され、大幅な労力削減が見込める。

ii) 運転状態によりリアルタイムで変化するしきい値に対して、微妙な変化を見逃さない。

iii) 最短 1 分周期で測定、監視が可能なため、早期に異常を発見することができる。

iv) 全てのプラントの入力点を監視対象とすることができ、監視漏れが発生しない。

異常兆候監視システムは、水質の監視に限らず、プラントを運転する上で将来故障につながる可

能性を持った軽微な異常を検出し、早期に運転員に知らせる運転支援機能である。CEPCO では異

常兆候監視システムをはじめとする様々な監視ツールを使用して、プラントの運転状態を管理して

いる。

<高度な制御技術>

ドラム型ボイラでは、水の比重差を利用して内部の給水を循環させており、応答性が遅く、水の比

重差が小さくなる高温・高圧の大容量化については限界がある反面、制御が比較的容易であるという

利点がある。これに対して、貫流ボイラでは、給水ポンプから送られる給水を高圧蒸気として使用す

るため、大型化・高効率化が可能であるが、保有水量が少なく、負荷の変動によって大きな圧力変動

が生じやすいため、高度な制御技術が必要となる。貫流ボイラではドラムがないため、ボイラの熱保

有量が小さく、蒸気圧力、温度、過剰空気率を一定に保つためには、負荷-給水量-燃料量-空気量

の関係をより正確にバランスさせる必要がある。

これらの高度な運転技術を有する技術者を育成、また技術の維持・向上を図るため、CEPCO では

研修施設を設置し、シミュレータ設備、研修設備を利用した様々な教育・訓練を実施している。

図 5.5-12 に研修所の設備、表 5.5-6 に研修設備にて実施される項目の例を示す。

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5-37

図 5.5-12 研修所設備

出典:調査団作成

表 5.5-6 研修項目の例

Type of trouble by simulator Training with using actual thing

MFT behavior ・Cross-section models of various detectors, etc.

Turbine trip ・Turbine-related accessories, cross-section models of detectors,

etc.

86 G behavior ・Protective relays

Directly-connected

M/C bus conductor trip

・Experiencing electric shocks by using the relevant equipment (for

those who have never experienced such shocks)

Water supply and fuel Tx failures ・Cross-section models of detectors and transmitters, etc.

Steam tube leakage ・Broken steam tube

Feed-water heater leakage ・Vertical-type heater model

Abnormal turbine vibration ・Main turbine and GT rotating blades

出典:調査団作成

多目的設備

・機器の分解点検、各種試験を実施

シミュレータ訓練

・プラントの運転、トラブルの訓練

伝熱管パネル

・劣化管理ポイントの修得、溶接の実習 研修所外観

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5-38

また、表 5.5-7 に示す通り運転員に求められる技能をレベル毎に分け、資格取得試験を実施して

いる。

表 5.5-7 資格取得制度の概要

出典:調査団作成

高度自動化プラントの安定的な運転を維持し、稼働率を向上させるためには、計器類、自動弁

の適切な保守管理に加え、トラブル時においても、運転員が制御ロジックを理解し、適切に対応

できる能力が求められる。これらの技術力を修得するためにも、研修設備を利用した教育・訓練

が必要となる。

<余寿命診断等の予防保全技術>

蒸気条件が高温、高圧となるため、経年的な部品への負荷が高くなり、適切な点検、保守を実施

せず運転を継続した場合、設備トラブルによりプラントに大きな損傷を与え、長期間の停止、多額

の修理費用が発生するリスクが高くなる。

プラントを構成している機器の劣化の原因には多くのものがあるが、主なものとして以下の 3つ

があげられる。

クリープおよびクリープ疲労

疲労(低サイクル疲労、高サイクル疲労)

腐食・侵食と摩耗による減肉

余寿命管理評価とは、機器のより正確な寿命を把握し、より長く機器を使用できるようにするこ

と、および機器の故障が発生する前に事前に機器を取替ることの 2つを主な目的として、機器の劣

化の進行具合を評価することである。さまざまな劣化要因にたいする評価技術が開発され使用され

てきている。各々の劣化要因についての評価手法の概要を以下に示す。

(a) クリープおよびクリープ疲労

高温環境下では、荷重を継続してかけられている金属材料は時間とともに変形し、やがて破壊に

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5-39

いたる。この現象はクリープ損傷と呼ばれている。クリープ疲労とは後述する疲労現象と、金属が

高温下で繰り返し応力を受けることにより生じるクリープ現象が組み合わさったものである。火力

発電所において、その現象の対象となるものはボイラの過熱器、再熱器、高圧タービン等、450℃

以上にて使用されるものである。変形や破壊は材質・運転温度・応力によってことなったメカニズ

ムによって生じる。しかし、クリープの検査方法はすべてのメカニズムに対して同じである。その

検査方法は大きく以下の 3つに分けられる。

非破壊検査法

破壊検査法

分析法

(i) 非破壊検査方法

非破壊検査方法は、金属材料の内部組織のクリープの進展を伴うさまざまな変化をパラメー

タとし、損傷具合の状況を示すものである。非破壊検査方法は、材料組織の微視的変化、硬

さの変化、電気抵抗値の変化等をパラメータとして使用し、対象とする機器から得られたデ

ータを実験等により得られたデータをもとに作られたマスターカーブと照合し、余寿命を評

価する方法である。

(ii) 破壊検査法

破壊法は対象とする機器からサンプルを採取し、そのサンプルから試験片を作り、さまざま

なテストを実施し余寿命を評価する方法である。試験片に対するテストとしては、サンプル

のクリープ破断時間を求めるクリープテスト、引張強度のような機械的強度を求めるテスト

等がある。

(iii) 分析法

分析法とは、有限要素法その他の方法により、対象機器が使用される条件(温度、圧力)、材

料の劣化特性(温度、圧力と破壊との関係)をもとに、機器の余寿命を評価する間接的評価

手法である。

破壊法の評価精度は高く、サンプルが採取し易いボイラーチューブの評価等に使用される。しか

し、クリープテストにはかなりの時間を要し、他の機械的テストではテスト片を作成する必要があ

るため、非破壊検査法、分析法と比べ高コストとなる。

非破壊検査法ではデータの採取は容易である。ただし、金属組織の微視的な変化をパラメータと

しなければならないため、損傷を定量化することが難しい。

(b) 疲労

熱疲労による低サイクル疲労が火力発電における余寿命評価において一般的に問題とされる。熱

疲労は、通常、肉厚の機器、例えば、ボイラのドラム、火炉蒸発管の附属金物、蒸気タービンのロ

ーター、主要弁、車室等で問題となる。停止起動等に伴う温度変化により繰り返し応力が発生し、

疲労が蓄積され破損にいたる。疲労の余寿命評価法には、クリープ疲労の評価と同様な非破壊検査

法、分析法が用いられる。非破壊検査法は、疲労の蓄積による材料の硬さの変化、材料組成の変化、

微視的なクラックを評価するために使用される。分析法は、停止起動もしくは負荷変化に伴う温度

変化により生じる応力を計算し、その応力変化と材料の疲労特性から疲労を評価する。

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5-40

(c) 腐食、侵食、摩耗による減肉

物体の表面が化学的反応によりはがされていく現象が腐食、物体の表面が物理的な作用によりは

がされていく現象が侵食である。摩耗は、侵食と同じく、物理的な作用により物体の表面がはがさ

れる現象であるが、石炭灰のような硬いものが高速で物体に衝突することにより生じる現象である。

腐食、侵食、摩耗の原因はさまざまであるが、それらの管理方法は、それらの事象が問題となっ

ている部品の肉厚を測定し、肉厚の減少速度を計算し、その部品が使用に耐えうる必要最低肉厚と

なる時期を予測することである。肉厚測定は超音波肉厚測定器、サンプル採取により実施される。

ここで、中部電力にて実際に運用されている配管肉厚管理システムを紹介する。配管肉厚管理シ

ステムとは、配管の減肉量を定期的に測定し、システム内にデータとして入力することで、自動的

に余寿命評価を行うシステムである。

配管肉厚管理システムによる測定の対象は、通常運転時に常時通水状態にある主要系統内の減肉

発生の恐れがある部位(渦流発生箇所、エルボ等の継手類)並びにその下流部分である。また、測

定の目的は、減肉が進行した場合に多量の液体噴出等の影響が懸念される配管の内面に発生する流

れ加速度型腐食(FAC)および液滴衝撃やキャビテーション等による浸食を定量的に把握し、予防

保全を図ることである。

測定および評価のフローは以下のとおりである。

図 5.5-13 配管肉厚管理システムの概要

出典:調査団作成

i) 超音波肉厚測定器での記録を携帯端末で保存

ii) 事務所にて配管肉厚管理システムを搭載したパソコンへ記録を転送

iii) 自動計算による測定記録評価

<評価方法>

減肉速度=(公称肉厚–測定肉厚)/検査時の累積運転時間

余 寿 命=(測定肉厚-tsr)/減肉速度

※ 測定を実施しなかった箇所については、同種箇所の減肉速度を流用し、余寿命評価を行うが、

局所的な減肉が発生している可能性もあるため、計算上寿命の半分を消費したと考えられる時

点で必ず一度は測定を実施して実際の減肉速度を確認することとし、検査の精度を高めている。

また、測定ポイントの微妙なずれにより、減肉速度に誤差が生じることを防ぐため、肉厚測定

時はマーキング範囲のうち最小値を常に測定する工夫を施している。マーキング範囲は測定時

に磨くため、次回以降も同じ測定ポイントとして判別が可能である。

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5-41

図 5.5-14 測定記録の概要

出典:調査団作成

このシステムを活用することで、上記のような膨大なデータを部位毎に管理することができ、算

出された余寿命から最適な次回点検修理時期を決定することができる。

これらの余寿命評価手法を基に、設備の弱点部位を把握し、適切に点検を行い、劣化傾向を管理

することでプラントのトラブルを最小限に抑え、結果的に修理費用の低減、稼働率を向上させるこ

とが重要である。

高効率・高稼働運転の実現に必要な取り組みについて、各手法を紹介したが、これらが確実に実

施される体制が整っていることが非常に重要である。CEPCOでは、プラントが適切な状態で運転さ

れていることを確認するため、図 5.5-15 に示す体制で性能維持・管理体制を構築している。また、

必要に応じて各発電所の代表者を集め性能推進会議を開催し、性能管理に関する計画の審議および

性能実績の評価・検討を行い、プラントの運営に反映している。

図 5.5-15 中部電力における性能管理体制

出典:調査団作成

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5-42

確実な技術移転への提案

USC の導入には、前述した運転管理技術の確立が不可欠であるが、これまでの技術供与国

での研修等の短期一過性の教育だけではなく、技術移転を確実にする長期的かつ継続的な

技術移転スキームの構築が求められる。

また、IGCC を早期に導入する場合は、技術リスクの回避も不可欠となる。

一方で、高効率化競争が進んでいるガスタービン複合発電設備においては、重要部品の点

検・保守、トラブル時の対応等、技術リスクをメーカが担保する長期保守契約(LTSA)が主

流となっている。

LTSA により定期点検を実施する場合、メーカに自社のメンテナンス要員を活用させれば、

メーカの指導と責任のもと、メンテナンス要員への確実な技術移転が可能となる。

よって、USC、IGCC プロジェクトに対しても、LTSA の採用を積極的に検討する必要があ

る。例えば、メーカによる定期点検、緊急保守点検、計画外停止点検の実施や、運転状態

の遠隔監視、メーカ技術者の常駐サポート等が実現すれば、実務を通じた運転管理技術の

確実な移転が期待できる。

USC、IGCC といった高効率発電設備導入によるメリットを享受するためには、高度な運転

制御技術や適切な保守管理が必要となる。これらの技術やノウハウを習得するためには、

事前研修や運転・保守 OJT を発電所建設段階から計画的に実施していくことが重要である。

建設過程での研修スケジュール(例)を図 5.5-16 に示す。

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5-43

Apr

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出典:調査団作成

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5-44

5.6 CCT導入ロードマップ

5.2~5.5 に述べた CCT導入ロードマップの検討結果は、以下のとおり結論付けられる。 1) 技術的な観点

USC は、世界中で導入が進んでおり、技術的にも成熟していることから、経済性と CO2排出量

削減の両立を実現する鍵となる CCT である。インドネシアでは、2016 年に適用可能である。

一方、IGCC は 2020 年以降に商用機の導入が期待される有望技術である。インドネシアでの導

入時期は、他の国の開発実績(建設コスト)や運転実績(O&M コスト)を確認してからとする。

特に、低灰融点・低品位炭の発電利用が望まれており、LTSA の採用などにより技術リスクを回避

しつつ導入を検討する必要がある。

日本では、2020年に IGCCの商用機を建設する計画があり、計画通りに進めば、2025年には IGCC

の商用機が運転開始することになる。

2) 政策的な観点

インドネシアは石炭資源を今後の主要エネルギー源とする方針であり、長期的な視点では、低

品位炭を高効率火力発電に利用するニーズが高くなる。低品位炭は IGCC の原燃料として利用可

能であることから、CCT の導入は政策上の観点からも適合する。

また、5.4 の算出結果から、USC および IGCC の CO2削減価値は SC より高く、CCT の導入が

GHG 排出量削減に貢献することが確認された。

3) 経済的な観点

2011 年の石炭価格ではいずれの炭種においても、Sub-C および SC と比べて USC の発電コスト

は低く、CCT の経済優位性が確認された。

2020 年の石炭価格では、価格上昇によりいずれの発電実コストは高くなるが、Sub-C および SC

と比べて石炭使用量が少ない USC および IGCC の経済優位性はより明確となる。

以上を集約すると次の様になる。

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5-45

Rational for USC/IGCC introduction in Indonesia

Alignment with Indonesia’s Policy

Economic validity

Is it possible to use low rank coal (LRC) ?→ Yes, LRC can be utilized Does it contribute to GHG emission reduction ?→ Yes, GHG emission amount will be reduced

Is USC & IGCC readily available ?→ USC: readily available, IGCC: available in 2020 When can it be introduced in Indonesia→ USC: 2017, IGCC: 2025

Is it economically viable ?→ Yes, Generation cost will be lower than Sub-c or SC

Technical availability

Target for introduction of USC and IGCC in Indonesia USC should be introduced for next new coal fired power plant project (2016) IGCC will be introduced around 2025, considering the development situation in

the world

CCT Technology for Coal Fired Power Plants

Matured technology to achieve lowelectricity costs & low GHGemissions

• Proven and already commercialized technology• Introduced all around the world• Can utilize low rank coal with above average ash melting point• Economic superiority to SC• Lower GHG emission compared to SC

Promising technology to achievelow electricity cost, lower GHG emissions & LRC utilization

• Technology yet to be commercialized• Will be introduced at the beginning of 2020s in commercial base in the world • Promising technology for low rank coal with low ash melting point• Economic superiority to SC and USC • Lower GHG emission compared to SC & USC

USC IGCC

図 5.6-1 Conclusion for Road Map

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)

ファイナルレポート

5-46

上記の結論に基づき作成した CCT 導入ロードマップを図 5.6-2 に示す。なお、石炭火力開発量

は、2020 年までは RUPTL の計画値に従い、2021 年からの 5 年間は PLN から入手した情報に基づ

き 1,3000 MW とした。

ロードマップで提案した CCT は、RUKN、RUPTL に反映される予定である。

GHG Target

Promotion of CCT

PLN (MW) 660 0 1000 600 600 10003000 2000 3000 2000 3000

IPP (MW) 1660 2860 2200 2200 0 0

Coal Fired Power Plant (USC&IGCC)

Training

GHG △26% Energy Mix (Coal 33%)

1000MW Model P lant (USC) U-1

1000MW Indramayu(USC) U-1

1000MW Indramayu(USC) U-2

3000MW or 2000MW New Power Plant(USC) Each Year

COD

1000MW Class IGCC x 3

COD

COD

COD

SC: Super Critical USC: Ultra Super Critical IGCC: Integrated coal Gasification Combine Cycle COD: Commercial Operation Date

2010 2015 2020 2025

SCEfficiency 35-40%

USC Efficiency around 42% IGCC

45-49%

2 X1000MW Central Jawa(USC)COD

Introduction of CCTIntroduction of USC

O & M On-the-Job TrainingIntroduction of IGCC/A-USCO & M On-the-Job Training

図 5.6-2 CCT 導入ロードマップ 出典:調査団作成

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6-1

第6章 CCTモデル発電所の検討

インドネシアの電力需要増加に対する供給計画として、現状クラッシュプログラムによる石炭

火力発電所(大半は亜臨界圧および超臨界圧の蒸気条件)の建設が進んでいるが、前章までの検

討により、今後は大容量で高効率な発電所を建設することが、環境影響面(CO2排出削減)及び

エネルギー消費量節約の観点から有効であるとの結論に達し、超々臨界圧(USC)蒸気条件の石

炭発電所を適用した 2025 年までの CCT 導入ロードマップを策定した。

以上から本案件では、CCT を考慮した次世代の大型高効率石炭火力発電所をモデル発電所とし

て建設するための予備実行可能性調査(Pre-Feasibility Styudy: Pre-FS)を実施した。

6.1 モデル発電所の選定

(1) モデル発電所選定の考え方

モデル発電所の Pre-FS を実施する地点の選定に当り、以下の考え方に基づき調査及び検討を

実施した。

インドネシア全体の電力系統(スマトラ、ジャワ-バリ、カリマンタン及びスラウェシ)

をモデル発電所建設計画の候補地とする。

スマトラ、ジャワ-バリ、カリマンタン及びスラウェシ地域の各電力系統における現在

の送電線系統容量、今後の電力需要予測及び将来の送電線建設計画等を勘案し、大型発

電所(単機容量 1,000MW)の系統への投入の可能性の有無について調査する。

モデル発電所計画の調査に当り、周辺地域のインフラ状況も勘案する。

また、以上の考え方に加え、以下の建設条件も考慮した。

1) 石炭火力発電所を新たに建設する場合、2012 年中にモデル発電所計画の実施に着手した

としても、フィージビリティスタディー(以下 FS とする。2013 年中)、環境アセスメン

ト期間(EIA, 2012~2014 年)、入札期間(2014~2016 年)及び建設期間(2016~2020 年)を

必要とし、2020 年から 2021 年頃の運転開始が最短であることから、2021 年の運転開始

をターゲットとする。 2) モデル発電所の建設予定地の選定にあたっては、新規地点(グリーンフィールド)は勿

論のこと、既存インフラの有効活用が期待できる既存発電所のリプレース及び増設可能

地点についても評価を実施する。 3) モデル発電所は、USC 蒸気条件の石炭火力発電所で、発電容量 1,000MW 級×1 基(但し、

将来の増設も考慮し 2 基分の建設地計画とする)とする。

(2) モデル発電所計画地点選定にあたって

今回 Pre-FS を実施するモデル発電所建設計画地点の選定にあたっては、PLN が RUPTL(2011

~2020 年)で計画している新規開発地点をベースに、更に PLN からの推奨地点であるリプレー

ス地点及び増設候補地点の中から本計画が実施可能であるか現地調査を実施し、且つ自然条件

等を勘案し、第 2 回ステアリング・コミッティーにて決定した CCT ロードマップを考慮し、電

力の潮流、環境面及び社会面更に経済性を勘案し、最終的に 1 箇所を選択し Pre-FS を実施する

こととした。

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6-2

1) CCT ロードマップにて決定した主な仕様は次の通り: (a) 燃料:石炭(低品位炭)を使用する。

(b) 蒸気条件:超々臨界圧

(c) 発電所容量:1000MW×1 基(但し将来の増設分 1000MW×1 基を考慮すること)

(d) 商用運転開始時期:2021 年

(e) モデル発電所建設候補地点:ジャワ島

(他の候補地、スマトラ島、カリマンタン島及びスラウェシ島については将来的にも送電線の

系統容量に対する単機容量が非常に大きいことから投入不可能と判断し対象外とした。)

(3) 選定方法

1) 予備調査:PLN にてリストアップされた候補地点(表 6.1-5 及び図 6.1-2 参照の事)の現

地調査を実施し、リプレース及び増設を含めモデル発電所の建設が可能かを調査した。

(図 6.1-1(2) スクリーニングプロセスへ)

図 6.1-1(1) 候補地点の予備調査 出典:JICA 調査団作成

2) スクリーニング:上記予備調査後、第 1 次から第 3 次までのスクリーニングを実施する。 第 1 次から第 3 次までの各スクリーニング方法に関するクライテリアについては、調査団

の石炭火力発電所建設の経験に基づき建設計画を実施する場合において必要なクライテリア

(選定基準)を選定した。その後、選定したクライテリアついて、PLN と打合わせ及び第 3 回

ステアリング・コミッティーにて協議を実施し決定した。図 6.1-1(2)スクリーニングプロセス

を参照の事。

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6-3

(図 6.1-1(1)より)

Selection of Model power plant site by 3rd steering committee

Commencement of Pre-FS study

Technical Aspect Social AspectEnvironmental Aspect

Construction Cost

Balance of power supplyand power demand

2nd Screening

1st Screening

3rd Screening

図 6.1-1(2) スクリーニングプロセス

出典:JICA 調査団作成

(4) スクリーニングクライテリア

1) 第 1 次スクリーニング: 電力需給バランス面から、電力需要地の近郊であること及び送

電線の潮流状況からスクリーニングを実施する。 ジャワ島内の電力供給・需要バランス及び送電線の容量・安定性を考慮し、地点を選択する。

表 6.1-1 第 1 次スクリーニングクライテリア(電力需給バランス)

○ △ X

West Java Yes No

Near the Jakarta less than100km

more than100km

Criteria RequirementsDefinitions

Notes

Balance of power supplyand demand

Transmissionline and grid

Developing areabalance(Balance of Stability andReliability for powertransmission)Close to the demandarea

1st screening

出典:JICA 調査団作成

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6-4

2) 第 2 次スクリーニング:(a)技術面からのスクリーニング、(b)環境面からのスクリーニン

グ及び(c)社会面からのスクリーニングを実施する。 なお、第 2 次スクリーニングは(a)、(b)及び(c)について同時並行的に評価を実施する。

表 6.1-2 第 2 次スクリーニングクライテリア(技術的観点、環境面及び社会面)

○ △ X

Flat and compacted Compaction Wetland,Swampy

River water( or underground water) From the river From the sea

(desalinations) not available

Sea Depth MSL-4.0m less than 1km 1 to 2km more than 2km

Sea Depth MSL-7.5m less than 2km 2 to 4km more than 4km

(Near the site) less than20km 20 to 40km more than 40km

smooth and wide Smooth andwide

narrow /bumpy Hard to access

b) EnvironmentalImpact study of the sitec) Social Impact studyof the site

Landavailability Project Complex

a) Technical study of theSite Fresh water supply

Distance to unloading Jetty from land

Distance to grid from the Site

Condition of access road to the site

Not available

* It is power block onlyavailable in projectconstruction area. Andcoal storage yard andash pond should beconstructed at otherlocation.

Used check list below based on Table 5.1-3 Environmental impact and Social impact chck list of format for candidate sites

Used check list below based on Table 5.1-3 Environmental impact and Social impact chck list of format for candidate sites

850m(W)×1,000m(L)・Power block area: 330m(W)×1,000m(L) Major Facilities, such as Boiler and Turbine with BOP・Coal storage area:410m(W)×520m(L) Storage for 30 days (4,000kcal/kg base)・Ash pond area: 400m(W)×500m(L) Storage for at least 5 years

Topographical condition

1000MW x 2 1000MW x 1*

Distance to Cooling Water supplyIntake point from Land

Requirements NotesCriteriaDefinitions

出典:JICA 調査団作成

(a) 技術面からのスクリーニング:

第 1 次スクリーニングにおいて選択された候補地について、技術面からの評価を実施する。

技術面での評価において、第一に重要な項目は、そもそも物理的に 1,000MW×2 基の発電所

及び付属設備を建設できる土地の広さが確保できるか否かであり、確保できないものについて

は、“X”となり、この時点(第 2 次スクリーニング)において落選とする。

(b) 及び(c)環境面及び社会面からのスクリーニング

第 1 次スクリーニングにおいて選択された候補地について、技術面でのスクリーニングと

同時並行的に環境面及び社会面からのスクリーニングを実施する。スクリーニングの基準と形

式については、以下の条件で選択した。(スクリーニングの基準と形式は、表 6.1-3 参照)

候補地を比較評価できる基準、形式である。

Pre-FS 調査の対象地選定を目的としたものである。

インドネシア法規、JICA 環境社会配慮ガイドラインが基準選択の基礎条件である。

具体的には、インドネシア法規では、この Pre-FS 事業段階に関する環境社会配慮上の評価

基準は特に規定されていないため、基本法規である「環境保護と管理に関する法(2009 年法

律第 32 号)」、「空間計画法(2007 年法律第 26 号)」などに見る環境保全上の重要項目、すな

わち地域の環境容量、環境影響とリスク、生態系の機能、生物多様性の復元力、地域の空間計

画との整合性などへの潜在的な影響をチェックできる項目を含めるよう配慮した。

JICA 環境社会配慮ガイドライン(2004 年 4 月版)では、「別紙 2 一般に影響を及ぼしやす

いセクター・特性、影響を受けやすい地域の例示」、「別紙 3 スクリーニング様式」をベンチマ

ークとして、候補地比較表のチェックリストの項目選定に役立てた。

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6-5

候補地比較表のチェックリストは以下の通り。

表 6.1-3 候補地比較のための環境面・社会面スクリーニング書式

Criteria Sub criteria Check items Compliance with spatial

plan ---------- ☐Land use and utilization of local resources ☐Poor, indigenous, or ethnic people

☐Protected area ☐Cultural heritage ☐Other ( Items prescribed in local spatial plan ) Environmental impacts Terrestrial impacts ☐Naturally fragile area*

☐Geographical features ☐Biota and ecosystems ☐Ground subsidence Maritime impacts ☐Geographical features ☐Biota and ecosystems ☐Land reclamation ☐Bottom sediment ☐Water pollution Coal and ash pollution ---------- Social impacts Resettlement and land

i i i ☐Involuntary resettlement (scale:

Existence of residential area in vicinity and pollution impacts

☐Air pollution ☐Noise and vibrations ☐Offensive odors Adverse impacts on

local economies, resources and infrastructures

☐Water usage ☐Local economies, such as employment,

☐Industries, such as fisheries and agriculture ☐Existing social infrastructures and services ☐Misdistribution of benefits and damages ☐Other ( )

選定された各項目の判定は以下のような判断基準で行った。

A 潜在的には大規模な負の影響が予想される。 C 負の影響が生じる可能性があるが、現時点ではその

規模や様態は不明である。

B 潜在的には中小規模の負の影響が予想される。 D 潜在的な負の影響は、最小規模か無視できる程度だ

と見なしうる。

出典:JICA 調査団作成

3) 第 3 次スクリーニング(建設コスト面から): 第 2 次スクリーニングを通過した候補地について建設コスト面から評価を実施し、候補地1

箇所を選定する。

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6-6

表 6.1-4 第 3 次スクリーニングクライテリア(建設コスト面から)

L (Low)

M(Medium)

H(High)

3rd screening

Land preparation

- Land filling Less than 3mlandfilling

more than 3mlandfiling

- Improvement of land Compactionarea Wetland Swampy area

- Soil transportation Less than 20km 20 to 50km More than 50km

- Access road to the site from main road Smooth andwide Narrow Narrow and

bumpy

Facility

- Power block

- Jetty Less than 2km 2 to 3 km More than 3km

Minimum Distance (straight route from the Site)

Less than 20km 20 to 30km More than 30km

Necessity of substationCan useexisting

substation

Need toconstruct new

substation

Notes

Power Plant

Definitions

Transmission line

Construction Cost

Criteria Cost Item

In case of Green field project, power block cost is no significant difference.

出典:JICA 調査団作成

(5) モデル発電所候補地点の概要

モデル発電所候補地点については PLN より提案された 11 箇所であり、候補地点名、所在地

等についての情報は、表 6.1-5 モデル候補地点リスト及び図 6.1-2 モデル発電所候補地点図の通

りである。また、各地点の詳細状況は別添の現地報告書を参照されたい。

表 6.1-5 モデル発電所候補地点リスト Name of listed site Location of site Category Existing capacity Owner Demand area Area dimension

1 Bojonegara Banten prefecture, North West and 100km from Jakarta city Green Field None None Jakarta 1040m x 1500m(156ha)

2 Tanjung Puyut Banten prefecture, North West and 120km from Jakarta city Green Field None None Jakarta 600m x 1200m(64ha)

3 Muara Gembong Bekasi, Jawa Barat Province, 85km from Jakarta city Green Field None None Jakarta 1000m x 2000m(200ha)

4 Paiton Extension 100km North East from Surabaya city Extension 400MW x 2 (1&2)660MW x 1(#9) PLN Surabaya 350mx 400m

5 Tanjung Jati B Extension 100km North East from Semarang city Extension 660MW x 2 (3&4) PLN Semarang 200m x 600m+100m x 500m

6 Suralaya Power Plantsfor Unit 1&2 Banten prefecture, North West and 130km from Jakarta city Replacement

400MW x 2 (1&2)Coal400MW x 2 (3&4)Coal600MW x 3 (5-7)Coal

PLN Jakarta 150m x 400m

7 Gresic for 3 GTG and 2 oil PP 50km North West from Surabaya city Replacement

20MW x 3 (GTG)100MW x 2 (1 & 2 Oil)200MW x 2 (3 & 4 Oil/Gas)500MW x 3 (CCGT)

PLN Surabaya400m x 500m+400m x 200m +350m x 900m

8 Tanjung Perak for unit 1 & 2 10km North West from Surabaya city Replacement 25MW x 2 (1&2)50MW x 2 (3&4) PLN Surabaya 98m x 123m

9 Muara Karang for unit 3 & 4 Pluyit district, 10km North from Jakarta city Replacement500MW+70MWx3 (2GT+3ST)200MWx 2 (3&4) Oil107MWx3+185MW x1(3GT+1ST)

PLN Jakarta 120m x 280m+100m x 255m

10 Tanjung Pakis 90km North East from Jakarta city Green Field None None Jakarta 1000m x 2000m(200ha)

11 Tanjung Sedari 100km North East from Jakarta city Green Field None None Jakarta 1000m x 2000m(200ha)

出典:JICA 調査団作成

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6-7

Suralaya

Tanjung Puyut Bojonegara

Muara Karang

Muara Gembong Tanjung Pakis

Tanjung Sedari

Tanjung Jati B

GresikTanjung Perak

Paiton

Suralaya

Tanjung Puyut Bojonegara

Muara Karang

Muara Gembong Tanjung Pakis

Tanjung Sedari

Tanjung Jati B

GresikTanjung Perak

Paiton

図 6.1-2 モデル発電所候補地点図

出典:JICA 調査団作成

(6) Pre-FS 調査地点の選定

1) 評価結果 第 1 次スクリーニング(電力需給バランス評価)の結果を表 6.1-6 に示す。また、第 2 次スク

リーニング(技術的評価、環境面及び社会面の評価)の結果を表 6.1-7 に示す。更に第 3 次スク

リーニング(経済面(建設コスト))の評価を表 6.1-8 に示す。

(a) 第 1 次スクリーニング結果

表 6.1-6 第 1 次スクリーニング結果(電力需給バランス評価面から) Tanjung TanjungPakis Sedari

Criteria Sub-criteria Sub-sub criteriaDeveloping area balance(Balance of Stability and Reliability forpower transmission)

○ X ○ ○ ○ ○ ○ X X ○ X X ○

Close to the demand area ○△X ○ ○ ○ ○ ○ X X ○ X X ○

ReplacementCandidate Sites Bojonegara Tanjung

PuyutMuaraGembong Paiton Tanjung

Jati BMuaraKarang

Site category Extension

Pre-Condition (1000MW x 2) & USC with Coal fired Grading

Green field

Transmission lineand grid

Balance ofpower supplyand demand

TanjungPerakGresikSuralaya

出典:JICA 調査団作成

上記、第 1 次スクリーニングの結果、x 印がついた候補地は落選とし、当初の 11 箇所から

7 箇所に絞られた。この結果を踏まえ、第 2 次スクリーニングを次の様に実施した。

(b) 第 2 次スクリーニング結果

上記第1次スクリーニングにおいて落選となった 4 箇所については、これ以上の評価を実

施せず、残りの 7 箇所について技術面、環境面及び社会面からの評価を実施する。

表 6.1-7 第 2 次スクリーニング結果(技術面、環境面及び社会面からの評価) Candidate Sites

Pre-Condition

GradingCriteria Sub-criteria Sub-sub criteria

Land availability Project Complex ○△X ○ X ○ ○ ○ X X

Topographical condition ○△X △ ○ △ △ △ ○ ○

Fresh water supply ○△X △ △ △ △ △ △ △

Distance to Cooling Water supply Intake point from Land ○△X △ ○ △ △ △ ○ ○

Distance to unloading Jetty from land ○△X △ △ △ △ △ △ △

Distance to grid from the Site ○△X ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

Condition of access road to the site ○△X ○ ○ △ △ △ △ △

Terrestrial impacts A,B,C,D B A A B A D D

Maritime impacts A,B,C,D B B B B B C B

Coal and Ash pollution A,B,C,D C C C C C C B

Resettlement and land acquisition A,B,C,D C B D B C D D

Existence of residential area in vicinity and pollution impacts A,B,C,D B C B B B C A

Adverse impacts on local economies, resources and infrastructures A,B,C,D C C A B C C B

TanjungJati B

MuaraKarang

a) Technical studyof the Site

TanjungPerak

TanjungPuyut

MuaraGembongBojonegara Tanjung

PakisTanjungSedari Suralaya GresikPaiton

b) EnvironmentalImpact study of the

site

c) Social Impactstudy of the site

出典:JICA 調査団作成

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6-8

表 6.1-8 環境面及び社会面スクリーニング結果の凡例

A 潜在的には大規模な負の影響が予想される。 C 負の影響が生じる可能性があるが、現時点ではその

規模や様態は不明である。

B 潜在的には中小規模の負の影響が予想される。 D 潜在的な負の影響は、最小規模か無視できる程度だ

と見なしうる。

出典:JICA 調査団作成

上記、第 2 次スクリーニングの結果、技術的(物理的)にモデル発電所用土地の確保がで

きない候補地が 3 箇所あったことからこれを落選として、残り 4 箇所を第 3 次スクリーニング

候補地として評価を実施した。

(c) 第 3 次スクリーニング結果

表 6.1-9 第 3 次スクリーニング結果(建設コストでの評価) Candidate Sites

Pre-Condition

GradingCriteria Topographical condition

Power Plant Land preparation

- Land filling L M H L M M M

- Improvement of land L M H M H H H

- Soil transportation L M H L H H H

- Access road to the site from main road L M H L H M H

Facility

- Power block L M H

- Jetty L M H M M M M

Transmission line Minimum Distance(straight route from the Site) L M H M M M M

Necessity of substation L M H H H H H

Tanjung Perak Muara KarangTanjung

PuyutTanjung

PakisTanjungSedari Paiton Tanjung Jati B Suralaya GresikBojonegara Muara

Gembong

Economical aspect(Construction

Cost)

In case of Green field project, power block cost is no significant difference.In case of Green field project, power block cost is no significant difference.

出典:JICA 調査団作成

上記第 3 次スクリーニングの結果:

発電所の主要部分であるパワーブロック(BTG(ボイラ・タービン・発電機)、BTG 付

属装置、貯炭場(含む、消化設備、発火防止対策設備等)、環境対策装置等)に係るコ

ストについては、どの地点においても同等コストが係り、特段の差や違いが無いことか

ら特に優劣はつけないこととした。

その他の建設に係るコスト及び送電線建設に係るコストについて優劣をつけて判断し

た。

なお、環境対策設備費(排水処理、防音対策、排ガス対策等)は 4 地点ともに同規模かつ

使用石炭が同様の条件では同水準となり差異がない。その他必要とされる緩和策は FS 段階で

具体的に特定されることから、現時点では財務面での検討はなされていない。

さらに、モデル発電所建設による地域経済への影響として、正の効果としては、雇用創出

効果、近隣地域からの物品調達による経済効果、周辺インフラの開発促進、負の効果としては、

景観の変化による地元産業への影響(観光業等)、陸上および海上交通量の増加、桟橋および

バースによる海上交通への影響等が考えられるが、第 2 次スクリーニング後に絞り込まれた 4

地点ではこれらの影響は概ね同等であり、大幅な差異は認められない。

以上の各評価段階における評価結果から第 1 次スクリーニングにて、11 箇所から 7 箇所へ、

第 2 次スクリーニングにて 7 箇所から 4 箇所へ絞り込まれ、第 3 次スクリーニングにて最終的

に建設コスト面での評価を実施し、今回 Pre-FS を実施する候補地は、Bojonegara となった。

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6-9

(d) 評価結果まとめ

表 6.1-10 各評価結果まとめ 1st Screening

Criteria Sub-criteria Sub-sub criteria

Developing area balance(Balance of Stability and Reliability for powertransmission)

○ X ○ ○ ○ ○ ○ X X ○ X X ○

Close to the demand area ○△X ○ ○ ○ ○ ○ X X ○ X X ○

2nd ScreeningCandidate Sites

Pre-Condition

GradingCriteria Sub-criteria Sub-sub criteria

Land availability Project Complex ○△X ○ X ○ ○ ○ X X

Topographical condition ○△X △ ○ △ △ △ ○ ○

Fresh water supply ○△X △ △ △ △ △ △ △

Distance to Cooling Watersupply Intake point fromL d

○△X △ ○ △ △ △ ○ ○

Distance to unloading Jettyfrom land ○△X △ △ △ △ △ △ △

Distance to grid from theSite

○△X ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

Condition of access road tothe site

○△X ○ ○ △ △ △ △ △

Terrestrial impacts A,B,C,D B A A B A D D

Maritime impacts A,B,C,D B B B B B C B

Coal and Ash pollution A,B,C,D C C C C C C B

Resettlement and landacquisition A,B,C,D C B D B C D D

Existence of residentialarea in vicinity and pollutionimpacts

A,B,C,D B C B B B C A

Adverse impacts on localeconomies, resources andinfrastructures

A,B,C,D C C A B C C B

3rd ScreeningCandidate Sites

Pre-Condition

GradingCriteria Topographical condition

Power Plant Land preparation

- Land filling L M H L M M M

- Improvement of land L M H M H H H

- Soil transportation L M H L H H H

- Access road to the site from main road L M H L H M H

Facility

- Power block L M H

- Jetty L M H M M M M

Transmission line Minimum Distance(straight route from the Site) L M H M M M M

Necessity of substation L M H H H H H

1 3 2 3

Balance of powersupply anddemand

10.

b) EnvironmentalAspect

c) Social Aspect

Pre-Condition (1000MW x 2) & USC with Coal fired

Suralaya GresikPaiton

Transmission line andgrid

ReplacementCandidate Sites 1. 2. 3. 6.5.4.

BojonegaraTanjungPuyut

9.8.7.

Ranking

a) Technical Aspect

Construction Cost

11.Site category Extension

TanjungPerak

Grading

Green field

TanjungPuyut

GresikTanjungPerak

MuaraKarang

Suralaya GresikBojonegara MuaraGembong

MuaraGembongBojonegara Tanjung

Pakis

MuaraGembong

TanjungPakis

TanjungSedari

PaitonTanjungJati B

Suralaya

Tanjung Perak Muara KarangTanjung

PuyutTanjung

PakisTanjungSedari

TanjungJati B

Paiton Tanjung Jati B

MuaraKarang

TanjungSedari

In case of Green field project, power block cost is no significant difference.

RESULT: 11Locations to 7 Locations

RESULT: 7 Locations to 4 Locations

RESULT: 4 Locations to 1 Location

RESULT: Bojonegara

In case of Green field project, power block cost is no significant difference.

出典:JICA 調査団作成

なお、建設コスト面での評価によって次点以下となった 3候補地点、Muara Gembong、Tanjung

Pakis, Tanjung Sedari について、PLN の意向(ジャカルタ近郊にベース電源となりえる石炭火

力発電所が必要とのこと)からこの 3 候補地の中から 1 つを選出し別途 Pre-FS を実施してほ

しい旨の提案があった。

2) プラントレイアウトイメージ 図 6.1-3 に USC 石炭火力発電所(1,000MW×2u)の概略図を示す。

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)

ファイナルレポート

6-10

図 6.1-3 USC 石炭火力発電所(1,000MW × 2u)概略図

出典:JICA 調査団作成

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6-11

(7) 環境社会配慮調査の進め方

本調査は、モデル石炭火力発電所の建設計画に関する Pre-FS 調査段階にある。環境社会配慮

面では、本体調査の進捗に応じて、本調査段階で初期環境調査(IEE)を行う。

インドネシアの環境影響評価(AMDAL)関連法規には IEE 調査規定がないため、初期環境

評価は実施されない。JICA 支援事業である本調査の実施に際し、JICA は、JICA 環境社会配慮

ガイドラインの方針に準じ、IEE 支援調査を実施する。IEE 調査では、ベースラインデータの収

集と 2 次資料に基づいて、環境影響を同定し、基本的な緩和策やモニタリング指針を立て、環

境影響評価(EIA/AMDAL)のスコーピングの役割を果たす。

本調査の次の段階として、本調査に基づき、インドネシア側実施機関が同計画事業化の検討

に入りフィージビリティ(FS)調査に進んだ場合、インドネシア側は、国内法に基づく事業承認

を受けるために環境影響評価(EIA/AMDAL)を実施する。この AMDAL 段階では、基本設計

の進捗に伴い、より定量的な影響評価が行われ、環境管理計画とモニタリング計画の策定が要

求される。同時に、ステークホルダーとの協議と計画合意が要求される。JICA は引き続き、こ

の EIA 調査を支援する可能性がある。

1) 予備的スコーピング IEE 調査の調査範囲を決めるために、Pre-FS 調査に入る前に、想定される計画がもたらす影

響の可能性について、下表のとおり検討した。

表 6.1-11 Pre-FS 段階における IEE 調査範囲検討のためのスコーピング

A 潜在的には大規模な負の影響が予想される。 C 負の影響が生じる可能性があるが、現時点ではその

規模や様態は不明である。

B 潜在的には中小規模の負の影響が予想される。 D 潜在的な負の影響は、最小規模か無視できる程度だ

と見なしうる。

大分類 チェック項目 潜在的 影響 留意点

上位計画と

の整合・遵

土地利用や地域資源利用 C

候補地は工業団地用地内にあり、現在 PLN の

所有地である。PLN の取得前は、養殖池などが

広く分布していた。盛土用土砂は、半島内の山

間部から、土取り場の影響は検討対象となる。

貧困層・先住民族・少数民族 C

近傍に住む貧困層、先住民、少数民族について

は、調査により確認する必要がある。現地状況

から、先住民、少数民は現段階では近傍には居

住していないと考えられる。

自然保護区 C 陸地部は保護区にかからないが、海上沖合は、

海洋保全区域にかかる可能性がある。 文化遺産 C 現段階では情報がない。要調査。

その他 (地域の Spatial Plan の規定)

C

インドネシアでは、国、州、市県がそれぞれ

Spatial Plan(国土空間管理計画)を策定してお

り、同計画を遵守した開発計画を策定する必要

がある。

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6-12

大分類 中分類 チェック項目 潜在的

影響 留意点

環境影響

陸地へ の影響

影響を受けやす

い自然 B

候補地は、海に面した低湿地である。候補地

の海岸線沿い、南側を東へ流下する河川河口部

あたりに、マングローブが生育するが、大きく

発達したものではない。

地形、地質等 B

プロジェクトの敷地面積は約 170 ヘクタール

と想定されており、2–3m の盛土による土地造成

がなされると予想。表流水、地下水系、土質、

地盤情報は、土木調査情報を待つ。

生物・生態系 B

敷地用地の大半は、畑や古い養殖池と草地で、

自然林や未開の生息地などはサイトとその周辺

には残されていない。沿岸部と南の敷地境界を

流れる河川河口沿いに、小規模の漁業が見られ、

魚や虫を餌とする鳥類も見られるが、群棲はな

い。

地盤沈下 C 現段階では予想が難しいので、プロジェクト

による水利用の形態・規模や土木調査情報を、

今後収集する。

海への 影響

地形、海況等 B

候補地は、なだらかにカーブした湾奥部に面

する。非常に遠浅になっている。外海に面して

いないので、少し水の流れが滞る場所があると

考えられる。

生物・生態系 B 地元の漁師によれば、南側の河口から沖合約

2km のところにサンゴ礁が 3 ヘクタール程度広

がっている。

埋立て、浚渫等 C 非常に遠浅なため、揚炭桟橋(jetty)を 3km

程度沖合まで突き出す必要がある。これに伴う、

浚渫等が想定される。 低質 B 砂地状だと思われる。

水質汚染 B

海の地形、海況から、温排水が外洋に面した

場所ほど、拡散しにくいことが考えられる。 排水口もかなり沖に張り出す必要がある。

石炭灰と

汚染 ---------- C

敷地に隣接する場所には養殖場、海も小規模

な漁場となっているので、石炭灰池からの浸出

水には、遮水対策を十分行うとともに、河川お

よび海から一定の離隔距離をとる。 注: 「影響を受けやすい自然」は、JICA 環境社会配慮ガイドラインのスクリーニング様式を参照して、1)

原生林、熱帯の自然林、2)生態学的に重要な生息地(サンゴ礁、マングローブ湿地、干潟等)、3)国内

法、国際条約等において保護が必要とされる貴重種の生息地、4)大規模な塩類集積あるいは土壌浸食

の発生する恐れのある地域、5)砂漠化傾向の著しい地域などを含める。

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6-13

大分類 中分類 チェック項目 潜在的

影響 留意点

社会影響

住民移転

と土地取得 非自発的 住民移転

C

候補地は PLN(国有電力会社)が既に購入

済みの空き地で、このエリアを含む一帯が工

業用団地内にあるため、基本的には居住者は

いない。しかしながら、現地調査では、敷地

内で畑作などをする少数の農民が見られた。

また、敷地外ではあるが、南側の河川南岸に

は、数 100 軒規模の家屋がある。小規模な漁

業、農業を営む家が多い。

汚染影響と 居住区域の

隣接

大気汚染 B

サイトから 4km にチレゴン市(人口 30 数

万)、80km にジャカルタがある。想定される

煙突は 250∓30m。最大着地濃度出現地点は数

10km と予測される。 騒音・振動 B 南側河川沿いに数100軒の住居がある。

悪臭 D 既存のスララヤ石炭火力の敷地内などで

も、特に石炭火力からの悪臭は認められなか

った。

地域経済、 地域資源、 社会インフ

ラへの負の

影響

水利用 C 冷却水等の利用は、地下水か、海水淡水化

装置によるか、検討が必要。 雇用や生計手

段等の地域経

済 D

地域経済への影響は、正の効果が高いので

はないかと考えられる。

農業、漁業など

地域の産業活

動 B

小規模な刺し網漁や定置網漁、養殖などへの

影響が考えられる。敷地内外で農作業に若干影

響が考慮される。

既存の社会イ

ンフラや社会

サービス C

半島東岸を北に向かう幹線道路が、予定サ

イトのすぐ近くを通っており、工事用アクセ

ス道路も、敷地外については特別に架設する

必要がなく、既存のインフラやサービスへの

負の影響は考えにくい。一方、海上交通や近

接する港湾への影響は、IEE では基本的な規制

を調べる。将来の社会インフラ計画との整合

は図る必要があるが、この点は「上位計画と

の整合・遵守」の項で考慮する。 被害と便益の 偏在

C この点を検討するには、地域住民の生活概

況を調べる必要がある。 その他( )

出典:JICA 調査団作成

2) 初期環境調査の調査概要 初期環境調査は、以下の内容について実施する。 以下の調査は、特に現地調査とデータの収

集、データ測定などの基礎調査を、インドネシア側調査機関に委託して行う。詳細な調査仕様

については、添付文書 No.1 として、巻末に添付するので参照してください。

(a) 地域空間計画との整合性(規定を遵守していること)の確認調査

想定されるモデル発電所の立地計画が、当該地域自治体の計画する地域空間計画と整合性

(規定を遵守)していることを確認する。モデル発電所の開発候補地として検討された 11 カ所

のうち、電力需給バランスの観点からの第 1 次スクリーニングと第 2 次スクリーニングの技術

的観点のスクリーニングにより選ばれた以下の 4 ヵ所について、空間計画との整合性調査を行

う。

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6-14

Bojonegara

Muara Gembong

Tanjung Pakis

Tanjun Sedari

(b) 初期環境調査(IEE 調査)

モデル発電所の最終候補地は、前節のスクリーニング(技術、経済、環境・社会)により、

ボジョネガラ(Bojonegara)に決まった。

IEE調査の調査内容は、インドネシアのAMDAL関連法規とJICA環境社会配慮ガイドライ

ン 26に従う。AMDAL関連法規ではIEE段階の調査について具体的な規定がないため、環境基

準等についてはインドネシア国と地域の法規を参照し、調査内容と範囲の設定については、主

にJICAガイドラインのIEE調査に関する指針に従った。

調査対象地:ボジョネガラ計画候補地とその周辺地域

調査内容:

現地調査

対象地域の地形、地質、土地利用概況

陸地と海域の水文概況

希少種を含む動植物の分布概況

周辺住民の居住概数と生活・職業概況

周辺 50 キロ圏の国立公園、自然保護区、文化財の分布

その他、環境保全上の特記事項

計画実施の場合の住民移転の可能性と概数確認

参考情報・データの文献調査

地形図、海洋地図、上記、希少種を含む動植物の分布概況分布図

気温・風・降雨などの気象および自然災害統計の調査

環境ベースラインデータの測定調査(大気質、水質、騒音・振動)

下記のそれぞれの項目・場所について、調査期間内で調査可能な雨期と乾期の 2 回測定・

分析調査を実施する。調査方法と測定データの比較基準はインドネシアの関連する環境法規に

従う。

測定項目:

• 大気質 二酸化硫黄 / 窒素酸化物 / 一酸化炭素 / オゾン / 煤塵(SPM)

• 水 質 pH/ SS/ BOD/ COD/ 溶存酸素/ アンモニア/ 全窒素/ 全リン/ フェノール類/

油分/重金属類 (Cd/ Cr/ Cu/ Hg/ Mn/ Ni/ Sn/ Zn)

• 騒音・振動 昼間 6:00-22:00 の等価騒音レベル、夜間の 22:00–6:00 の等価騒音レベ

26 当該計画「CCT 導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)」は、現在の環境社会配慮ガイ

ドラインの施行(2010 年 4 月)以前に要請されたため、旧ガイドライン(2004 年 4 月版)が適用される。

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6-15

測定場所:(現調査段階で想定できる暫定地点)

• 大気質 計 5 地点 ①計画施設立地点, ②事業地から風下方向の 10km、30km 地点

事業地近隣風下側で、互いに離れている居住地 2 地点

• 水質 計 4 地点 ①計画取水点、②温排水の排出口付近、③桟橋突堤付近(8m 水

深、浚渫地点)、④石炭灰捨場の下手の海水

• 騒音・振動 計 5 地点 ①計画立地点の中心 ②敷地境界(風上側、風下側)③事業

地最寄りの居住地区内 2 地点

環境影響と考えられる影響の緩和策に関する初期検討

可能性のある環境社会影響とその緩和策の検討は、インドネシアの環境法規に照らし

ながら、火力発電所に関する JICA 環境ガイドラインのチェックリストを踏まえる

(‘2.Thermal Power Station’ at

http://www.jica.go.jp/english/operations/social_environmental/guideline/ref.html を参照)。

影響源となる可能性のある主要な施設・設備構成は、現時点で以下のように想定する。

陸上構造物:

タービン、ボイラなど電力設備施設

環境対策設備(集塵器、脱硫装置)、煙突

貯炭場、灰捨場、排水処理装置など

海上構造物

揚炭桟橋、コンベア架構

取水口、排水口など

3) ステークホルダー協議 本調査を通じて、3 回のステークホルダー協議が持たれた。エネルギー鉱物資源省の電力総

局が会合を主催した。会合の目的、議題、参加者、内容は以下のとおりである。

(a) 第 1 回ステークホルダー会合

2011 年 4 月 26 日(10:00 – 12:00)開催:インセプション時 第 1 回会合の目的は、インドネシア側カウンターパート機関(MEMR と PLN)、環境行政

機関、計画行政機関と日本側関係機関(大使館と JICA)の間で、ロードマップ策定と Pre-FS

調査を含む本調査全体の範囲と進め方について情報共有し、内容に合意すること。

議題

i) 調査概要:JICA 調査団による発表と参加者間の協議(1 時間)

ii) 環境社会配慮調査に関するスコーピング:JICA 調査団による発表と参加者間の協議

(0.5 時間)

参加者

MEMR 7 名(電力総局 6 名、石炭総局 1 名)、PLN 4 名、民間企業(PT.IP) 1 名

日本大使館 1 名、JICA 2 名、JICA 調査団 7 名

同会合では、以下のような意見交換(Q&A)があった。

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6-16

Q1. CCT 導入ロードマップの検討にあたり、最適技術の選定に至るまでに、様々な代替手

法を検討してほしい。

A1. ロードマップでは、SC・USC・ガス化プラントの比較、様々なカロリーの燃料石炭に

ついて資源量・技術・コスト上の適否が検討された。

Q2. NEDO や JCOAL など、他の日本の組織も、CCT に関連するセミナーを様々な視点で開

催しているので、重複や不整合がないよう共同セミナーを開催してはどうか。

A2. NEDO や JCOAL とは、本件プロジェクト形成時に CCT に関する意見交換をしており、

本調査が開始した今後も、意見交換を続ける予定である。

調査への反映

i) 上記 A1 の内容は、CCT 導入ロードマップの策定過程で調査と検討がなされた。CCT 導

入ロードマップは 2011 年 7 月に策定され、インドネシアでの CCT 技術導入は、まず USC

型発電所を 2017 年から導入し、次に商用機の導入が 2023 年から 2025 年ごろに想定され

る IGCC 型発電所の促進を図ることを計画した。

ii) Q2 の要請を踏まえた形で、CCT に関する NEDO との合同セミナーを、2011 年 11 月下旬

第 2 回ステークホルダー会合

(b) 2012 年 2 月 16 日(10:00–12:30)開催:Pre-FS の開始時 第 2 回会合の目的は、第 1 回会合時のステークホルダーおよびボジョネガラ地域の地方政

府関係者との間で、本調査の第 1 ステージの「CCT 導入ロードマップ」と「モデル石炭火力

発電所 Pre-FS 調査地点選定」を簡潔にレビューした後、ボジョネガラ地点での Pre-FS 調査と

それに伴う IEE 調査の調査範囲と進め方について情報共有し、内容に合意すること。

議題

i) CCT 導入ロードマップおよび、モデル発電所 Pre-FS 調査地点の選定の概要:PLN による

発表(1/3 時間)

ii) ボジョネガラ地点でのモデル発電所建設に関する Pre-FS 調査の概要:JICA 調査団による

発表(1/3 時間)

iii) ボジョネガラ地点でのモデル発電所建設に関する初期環境調査(IEE)の概要:JICA 調査

団による発表(1/3 時間)

iv) 質疑応答:参加者との協議(1/2 時間)

参加者

MEMR 9 名、PLN 2 名、DEN 3 名、環境省 1 名、森林省 1 名、経済調整大臣府 1 名、民

間企業 4 名(PT.IP 2 名、PT. Indramayu 1 名、石炭鉱業協会 1 名)

JICA 1 名、JICA 調査団 7 名

同会合では、以下のような意見交換があった。

Q1. ボイラ技術の供給国、先進技術とコスト面の負荷、低カロリー炭の適合性、送電線の

増強ニーズとその方法など技術的確認

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6-17

A1. 供給国は独のシーメンスや日本。IGCC は 2020 年までに商用化が想定され、商用化さ

れればコストも下がるだろう。低カロリー炭の利用は可能。送電容量の増量について

は、既存線を増強するか代替ルートを付加するか検討中。

Q2. 候補地点と戦略的投資促進地域(上位計画)との整合について

A2. (この質問については、後で確認して回答することとした。その後、候補地はボジョネ

ガラ戦略経済ゾーンに位置することを確認した。)

Q3. ボジョネガラ地点の近傍(西方)に国有林があるが影響はないか。

A3. 検討する。(後に、この問題については緩和策の対象に含めることとした、と同時に、

当該国有林はほとんどが開墾されプランテーションになっているのが現況であると分

かっている。)

Q4. 海上の埋立ては必要か、また海洋環境評価は実施されるのか。

A4. 海上埋立ての必要性は Pre-FS で検討しているが、それについての詳細調査は FS 調査で

実施されることになる。

Q5. AMDAL(EIA)時には、それを管轄する地方政府の環境規定を詳細に確認する必要があ

る。

A5. AMDAL は FS 調査時に実施される。IEE では、基本計画である国土空間管理計画(Spatial

Plan)を確認している。

Q6. モデルプラントには、脱硝装置は必要か。

A6. 低 NOx バーナや二段燃焼等を適用するが、実際に排出基準を満たすかどうかについて

FS 調査で検討される。

調査への反映

i) Q1は技術的な問い。その場で PLNが回答し、報告書にも該当する検討内容が記載された。

ii) Q2 はその場で回答ができなかったが、後に、戦略的投資促進地域であることを確認した。

iii) Q3 は、報告書の中で、IEE 調査結果の「影響」と「緩和策」に関する個所で記述した。

iv) Q4 については、海上埋立ての必要性が判断される FS 調査時の EIA 調査で海洋環境評価

を実施することを、報告書の表 6.2-23 に提言・記載した。

v) Q5 については、AMDAL(EIA)で必ず実施される。

vi) Q6 はその場で回答がなされたが、報告書 6.2 (3)-2)-(d)節にも該当内容を記載した。

(c) 第 3 回ステークホルダー会合

• 2012 年 6 月 13 日(13:30–15:00)開催:最終調査報告書案の説明時

• 第 3 回会合の目的は、MEMR、PLN および関係する政府機関と協力して、地方の

ステークホルダーと、モデル石炭火力発電所計画に関する Pre-FS と IEE 調査の結

果について情報共有し、かつ CCT を採用する石炭火力発電所導入の効果や影響に

ついて、どう考えるか協議すること。招待者リストには、中央政府関係者、日本

側関係機関に加えて、計画候補地ボジョネガラ地区を管轄するバンテン州とセラ

ン県の計画部局(BAPPEDA)、環境部局(BLHD)、大学、民間事業者団体、対象地

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6-18

域で活動している NGO などが含まれた。

議題

i) ボジョネガラ・モデル発電所計画に関する Pre-FS 調査結果:JICA 調査団による発表(1/3

時間)

自然条件(地形、土地利用など)Natural Background(Topography and Landuse)

設備レイアウト案

ii) ボジョネガラ・モデル発電所計画に関する初期環境調査(IEE 調査)の結果:JICA 調査

団による発表(1/3 時間)

潜在的影響と必要な緩和策

今後の計画・調査段階での環境社会配慮の流れ

iii) 質疑応答:PLN 環境担当者による司会進行と参加者との協議(1/2 時間)

参加者

MEMR 13 名(電力総局 10 名、石炭総局 3 名)、PLN 9 名、DEN1 名

JICA 1 名、JICA 調査団 10 名

同会合では、以下のような意見交換があった。

Q1. 調査への参考として、先月、中部ジャワ州のプロジェクトで、地元コミュニティの漁

民による発電所反対運動があったことを伝えておきます。彼らは、当該地域にある発

電所がサンゴ礁のある海洋公園の規則を破り、サンゴ礁を傷つけたと言っている。こ

の計画事業の実施に際しても、このような不都合な事態に直面しないように、これを

教訓とすべきだ。

A1. 教訓として、本件 FS 調査時にも参考にする、特に海洋管理計画(marine spatial plan)

の確認に注意する。

Q2. EIA 調査を FS 調査と連携して実施するよう薦めたい、そうすれば EIA の要求事項を

FS 調査の結果に反映できる。

A2. EIA 調査は、通常、FS 調査が 50%程度進捗した段階で、開始する。EIA 調査は FS 調査

の内容を参照する必要があるので。

Q3. 石炭の貯炭場や灰捨場などからの浸出水に関する関連法規定を考慮しているか。排煙

脱硫装置についても、湿式タイプならば、更に注意が必要だ。

A3. 管理型(閉鎖系)システムで、排水処分場を管理・運用する。排煙脱硫装置が湿式か

乾式かは、現段階では未定だ。

Q4. 調査へのフィードバックとして、インドネシアの環境管理は、大気汚染、水質汚染、

有害廃棄物管理に基づいて分類される。それら以外の問題については、発表スライド

の 12 や 22 番のように重ねてアセスメントする必要はなく、(上の3つに)統合できる。

ボジョネガラ発電所の設計では、MEMR の規則(No.1457.K/28/MEM/ 2000)を適用す

るよう注意してほしい。同規則で、発電所のレイアウト基準を定めている。例えば、

河川等の水域と石炭灰処分場との離隔に関する参考基準が同規則にある。

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6-19

A4. 了解した。情報に感謝する、当該指針を確認する。

計画への反映

i) Q1 については、A1 に回答したように、報告書の表 6.2-23 に、関係地方行政府の定める海洋

管理計画や保全区域の確認をとるよう、調査提言した。

ii) Q2 の助言は、環境影響評価(AMDAL/EIA)実施の責任主体である、本計画の事業提案者に

なると想定される PLN が留意した。

iii) PLN は Q3 の事柄には十分問題意識を持っており、FS/EIA 調査時に、当該問題は注意深く

検討されることになる。

iv) Q4 については、A4 で回答があったように、関係法規は FS/EIA 時に参照するとともに、報

告書の表 6.2-23 で、FS/EIA の早期段階で、石炭灰捨処分場の規則に関する確認を行うよう

提言した。

地方政府機関へのフォローアップ

第 3 回ステークホルダー協議に招待した関係地方行政府から、当日の会合出席がなかった。

このため、計画の責任担当機関である MEMR と PLN の同意を得て、PLN と JICA 調査団が後

日(2012 年 6 月 19 日)関係地方機関を訪問し、計画についての情報を共有した。訪問した機

関は、以下の 4 機関である。

1. バンテン州の計画局(BAPPEDA of Banten Province)

2. セラン県の計画部(BAPPEDA of Serang District)

3. バンテン州の環境局(BLHD of Banten Province)

4. セラン県の環境部(BLHD of Serang District)

4 機関とも、基本的には訪問と計画内容の説明を歓迎したが、同時に、6 月 12 日に開

催された上記会合に参加できなかったのは残念だと表明した。当該計画について、彼ら

は、州または県の空間管理計画(Spatial Plan)と合致していると述べた。また、今後、

調査ステージが進めば、早い段階で MEMR からのレターに付帯して計画内容のより具

体的な説明を要望した。その際は、BAPPEDA、BPLHD に加え、エネルギー局にも説

明がなされるよう要望があった。

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6-20

6.2 Pre-FS概要

前述までの項において、選択されたモデル発電所の Pre-FS を実施したことから、この報告書

の概要について以下の通り記述する。

(1) 序論

1) モデル発電所計画の背景及び目的 モデルプラント建設計画候補地として、前述までに記述した候補地の中から、Bojonegara を

USC(超々臨界圧)石炭火力発電所建設計画の候補地として第2回ステアリングコミッティー

にて選択した。

本 Pre-FS は、将来 Bojonegara に発電所を建設するための FS を実施する前の予備実行可能性

調査の位置づけとして、検討されたものである。

2) モデル発電所計画の概要 本モデル発電所計画は、1,000MW×1 基(将来追設 1,000MW×1 基)の、高効率石炭火力発電所

で、超々臨界圧(USC)技術を採用するものである。

本モデル発電所に採用される蒸気条件は、25MPa、600/620℃(タービン入口)の、世界でも

最先端であり、且つ、実績のある技術が採用される予定である。

尚、燃料である石炭は、インドネシアの国内炭であり、低品位炭(Low Rank Coal: LRC)、平

均熱量 4,000kcal/kg(HHV)の使用を予定している。

発電所の熱効率は、前述の LRC を使用した場合、約 40%(HHV)でボイラ効率は 84%以上、タ

ービン効率は 47%以上を予定している。

主な環境対策設備は、煤塵対策設備、脱硫設備、排水処理設備及び石炭灰埋め立て地である。

3) プロジェクトサイトの概要 モデル発電所サイトは、現在 PLN が所有しており、173.3 ha の土地である。その 60%は湿地

帯で且つ一部マングローブ植生、残りの 40%が低地で稲作地等である。

海岸からの海底勾配は非常に緩やかで、2.5–3.0 km 沖合にて漸く 7m 程度の深さを取ることが可

能である。

石炭の産炭地及び搬送は主にスマトラ及びカリマンタンを計画しており、大型石炭バージ又

は石炭船(13,000 DWT)の利用を計画している。

送電線については、発電所近郊に 500 kV の送電線が設備されている。

(2) モデル発電所計画用地の条件

1) 選定地点の現況 (a) 選定地点位置

選定場所であるボジョネガラ地点は、バンテン州セラン県に位置する PLN が土地を所有し

ている部分であり、ジャバベカ工業団地の一部である。このボジョネガラ地点は、ジャカルタ

から西に約 100 km に位置し、高速道路を利用した場合チレゴン・チムール料金所から州道を

利用して約 2 km の距離である。また、PLN のスララヤ石炭火力発電所まで約 20 km の距離に

位置している。位置図を図 6.2-1 に示す。

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6-21

図 6.2-1 選定地点位置図

出展:JICA team

2) 地形的特徴(現地踏査結果) (a) 概要

地点の座標は、南緯 6º00’、東経 106 º 06’、土地の高さは海抜(M.W.L.)約 2 m と平坦である。

土地の 60%の範囲は養殖池、残りの 40%は稲作地等で利用されている。

(b) 境界区域

土地境界線は、所有者である PLN により境界杭が設置されており、今回の CCT モデルプラ

ント検討の中で、境界線測量も合わせて調査した。境界区域は、北側と西側は工業地帯と接し

ているが、東側は海岸線および南側は河川と自然境界に面している。地形測量調査の結果、土

地面積は 173.3 ha であった。

3) 地質的特徴(現地踏査結果) (a) 概要

現地踏査に基づく調査において、現地で露出している岩盤や地盤を観察した結果、海域部

も含めて次の種類に分類することができる。

岸域堆積物:堆積物が土地の北側に広がっている様子が調査で確認された。

サンゴ礁由来の石灰岩(海域部):サンゴ礁が海岸線から海側に向かって約 2.0 km の

地点で確認された。GPS での調査の結果、9 ha の広さの岩礁で形成されている。

湿地帯での堆積物:沿岸堆積物範囲の南側で観察された湿地堆積物は、平坦な土地を形

成しており、地元の人々は稲作地として利用している。

火山性堆積物:調査地点の南側で露出している火山性堆積物は、湿地性堆積物の上層に

1m から 2 m の厚みで堆積している。地元の人々はこの範囲をプランテーションとして

利用している。

(b) 水深調査

調査は、揚炭桟橋の設置に必要な海底水深を知るために行われた。桟橋に必要な最低深さ

は 7.5m である。浅海部から調査していった結果、8 m の水深は海岸線から概ね 4km の位置で

Study Site

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6-22

確保できる。

4) 土木工事調査(現地踏査結果) (a) 砕石場

地点周辺には多くの砕石場を有する会社があるが、地点での大規模な盛土工事を想定した

場合、3 百万 m3 ~ 4 百万 m3 もの大量の土砂を 1 社で供給することは不可能である。そのため、

地点に近接していないプラントを使うことも考慮して、数社で供給体制を確立するという選択

は可能である。

(b) コンクリート工場

地点周辺には 2 つのコンクリート工場があり、その供給能力は、一方は 35 m3/h、もう一方

は 70 m3/h である。大量のコンクリートが必要となる特殊な場合には、供給会社と別途契約を

結んだ上で、その構内に独占的に利用できるコンクリートプラントを設置する方法が一般的で

ある。

(c) 電力供給

スララヤ石炭火力発電所からの既設(運用中)の送電線容量は 500kV であり、現在新規に

計画されている送電線容量は 150 kV である。

(d) プルタミナ・ガス導管

既設のプルタミナ社のガス配管がサイトへのアクセス道路沿いに、選定地点から約 10km 北

方に位置するチレゴン・コンバインドガス火力発電所まで埋設されている。

(e) 水準点(BM)

地点周辺には公共の水準点はないが、国土庁(BPN)からの情報に寄れば、2 等水準点が地点

から約 6 km 離れたボジョネガラ県事務所前にある。

(f) 工業用水

地点周辺地区の水供給配管に関しては、地方の水供給会社に属している配管以外は明確で

はなかった。地点周辺で工業目的として最も供給されている水は、バンテン州セラン県に本拠

を置く水供給会社であるサウバテラ・サムデラ社の配水管網から供給されている。

(g) 近隣の荷揚岸壁設備

地点から最も近い荷揚げや海上輸送に適する設備として、PT. SIM 社と PT. DAM 社が地点

から約 2km の位置に有する桟橋設備がある。

(h) 河川

地点の南側境界には、東方向に流れる天然の河川(Kedungingas River)が流れている。

(i) マングローブの植生

ボジョネガラ地点の海岸線に沿って、マングローブが植生する緑化地帯があり、その規模

は長さ(海岸線)1,000m×幅(内陸側)100m 程度である。

5) 海域の状況(文献調査) (a) 海底の水深

地点の海底水深は、0m ~ 8m の範囲の水深は、海岸線から約 4km の距離になる。

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6-23

(b) サンゴ礁

海図や現地踏査の結果から、地点の海域および周辺にサンゴ礁の存在が確認された。

(c) 潮位

地点の潮位変動は、日周潮が交わったものである。潮位観測所(Labuan Tide Station)での観

測統計結果によれば、L.W.L.は-0.0 m、H.W.L は 1.5m であり、その変動幅は 1.5m。同(Tanjung

Cikoneng Tide Station)での観測統計結果によれば、L.W.L.は-0.1 m、H.W.L.は 1.2 m であり、

変動幅は 1.3 m であった。

(d) 波浪

海岸域での波高は最大でも 1m であるが、東西の強風が卓越するシーズンでは沖合での波高

が 2 ~ 3m に達する場合もある。

(e) 海水温

インドネシア科学院の海洋調査センターによる調査結果(2002)によれば、海洋水温の平均

値は 28.01~30.38℃の範囲である。

(f) 海水の濁度

インドネシア科学院の海洋調査センターによる調査結果(2002)によれば、海水濁度の平均

値は 4.85~20.59ntu の範囲である。

(g) 海水の塩分

インドネシア科学院の海洋調査センターによる調査結果(2002)によれば、海水塩分の平均

値は 31.776~33.828psu の範囲である。

(h) 海水の水質

バンテン州の地域開発計画庁(Bapedda)によるモニタリング結果によれば、水質パラメータ

の内、BOD、COD、H2S、NH3N などの調査項目が環境基準値よりも大きいことが示されてい

る。

6) 地盤に関する調査(文献調査) (a) 地形学的知見

セラン県の四角状の地形は 3 つの地形学的な単位に細分することができ、低地に広がって

いる平原地帯、ゆるやかに起伏した丘陵地帯、そして火山地帯である。低地の平原地帯はこの

四角形状の土地の北方部分を占めており、東西に伸縮している。この地域は、通常沿岸堆積物

や湿原堆積物により形成されており、したがって当該地点は低地の平原地帯に属する。

(b) 層位学的知見

文献調査により、対象地点周辺の層位学的な調査結果を基に、地盤の年代から構成をまと

めると、表 6.2-1 のとおりとなる。

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6-24

表 6.2-1 対象地点の層序

年代 区分記号 岩層 構成 第四紀層 Qa 沖積層、沿岸堆積物 少量の軟体動物の殻の破片を含んだ小石、

砂利、緩い砂、シルト、泥により形成され、

北部の海岸に沿って存在。養殖池として利用。 Ql サンゴ サンゴの群生、軟体動物の殻の破片

Qbp 丘陵の基部(Pinang) 貫入玄武岩。建設資材として利用。 Qpvb 凝灰岩(Banteng) 凝灰岩、軽石凝灰岩、凝灰質砂岩 Qpvg 火山生成物(Gede) 溶岩、角礫岩、固結岩(lahar)。建設資材と

して利用。 出典:JICA 調査団作成

(c) 構造と地殻

この地域の地殻変動活動が多くのしゅう曲や断層として存在し、顕在化している。一般に、

地殻の傾斜はマイナーな地質構造の変動を示しており、傾斜角も 30°以下である。また、し

ゅう曲は北北東から南南西へ向かっており、断層とその外形はほとんどが北西から南東に向か

っている。断層はごく一般的なものである。

(d) 鉱物資源

調査地区の近傍において、安山岩と玄武岩が建設資材として採掘されており、道路用にも

用いられている。また、風化した凝灰岩がブロックとして製造されており、土工材料として充

填材としても利用されている。

(e) 表層の地盤条件

地点周辺の表層地盤条件は、地点周辺での過去の地盤調査結果から得ることができた。過

去の地盤調査は、スララヤ-ボジョネガラの 150 kV の送電線に関する地盤調査である。

地盤調査によれば、上層 6 m 区間は非常に軟弱か軟弱粘土に分類され、N 値は 1 から 4、一

軸圧縮強度は 10 kg/cm2 以下である。また、6 m 以深では密あるいは非常に密な地盤であり、N

値は 35 から 50 を超えており、一軸圧縮強度も 200 kg/cm2 以上である。

(f) 地震力

地震係数の分布図(2002)を考慮した場合、地点の地震時の基盤面での震度(Z)は 100 年

の再現期間で 1.2 ~ 1.4(平均 1.3)、地表面の加速度 ac は 190 gal となり、ゾーン E に属する。

地点の表層地盤条件が密な砂であれば、補正係数(v)は 1.1 となる。これらのパラメータを

基にすると、地点の地表面最大加速度 Ad は 271.7 gal、静的震度は 0.28 g である。

2010 年に公共事業省から公表された最新のゾーンマップに従うと、この地点の基盤での静

的震度は 0.25 ~ 0.30 g のゾーンに入る。

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6-25

(3) モデル発電所の基本設計

モデル発電所は、環境調和型、かつ、高効率の USC 発電所を導入することを前提として Pre-FS

を行った。また、USC 発電設備は SC(超臨界圧)発電設備と基本的に同等の設備構成となるこ

とから、発電所の主要設備および USC に限った事項について検討を行った。本項では、Pre-FS

の結果を要約して記載する(なお、詳細な仕様検討は Pre-FS の次段階である FS で行なう必要

がある)。

1) モデル発電所の設計方針 (a) 設計方針

モデル発電所は 1,000 MW×1ユニットとし、主な設計条件は表 6.2-2 のとおりとした。

表 6.2-2 モデル発電所 設計条件

No. Name of criteria Unit Data 1 Rated Output MW 1000 2 Number of Unit Unit 1 3 Plant Efficiency (HHV) % 40 4 Plant Capacity Factor/Availability Factor % 80/84 5 Annual Operating hours h/ y 7,358 6 Annual Gross Generation Output GWh/y 7,008 7 Auxiliary power consumption rate % 8.0 8 Annual Net Generation Output (@ Main Transformer end) GWh/y 6,447 9 Boiler Efficiency (HHV) % >84

10 Turbine Efficiency % >47 11 Fuel Consumption

a. Heating Value of coal (Gross as received) kcal/kg 4,000 b - Per hour (100% load) t/h 538 c - Per day (Averaged, CF = 80%) t/d 10,400 d - Per month (Averaged, CF = 80%) t/Month 314,000 e - Per year (CF = 80% ) t/y 3,767,000 f - Coal storage yard capacity days 36

12 Capacity of Ash disposal area Years 5 出展:JICA 調査団作成

(b) 蒸気条件

モデル発電所に適用する蒸気条件は、タービン入口において現時点で最高クラスである主

蒸気温度 600℃、再熱蒸気温度 620℃とした。

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6-26

表 6.2-3 モデル発電所 蒸気条件

NO Item Rated Value Remarks

1 Main Steam (at Boiler outlet)

Pressure 25.4 MPa (g) Temperature 605 oC

2 Reheat Steam (at Boiler outlet)

Pressure 3.83 MPa(g) Temperature 623 oC

3 Main Steam (at HP Turbine inlet)

Pressure 25.0MPa (g) Temperature 600 oC

4 Reheat Steam (at IP Turbine inlet) Temperature 620 oC

5 Condensate Vacuum & Saturated Temperature

Approx.8.47kPa (a), 42.6 oC Sea Water Temp. 30oC

6 Sea Water Temperature 30 oC At CW intake point 出典:JICA 調査団作成

(c) 環境基準

モデル発電所に適用される環境基準は、大気、水質、騒音、振動、臭気 等があり、主要な基準

を次表に示す。

表 6.2-4 排ガス環境基準(石炭火力)

No. Parameter Maximum Limit (mg/Nm3) 1. Total Particulate 100 2. Sulfur Dioxide (SO2) 750 3. Nitrogen Oxide (NOx) 750 4. Opacity 20 %

出典:Annex 2 the Decree of Jakarta Governor No. 670 Year 2000 regarding the Emission Gas Standard from Fix Sources

表 6.2-5 排水環境基準(総合処理)

No Parameters Unit Limit 1 pH - 6-9 2 TSS mg/l 100 3 Fat and oil mg/l 10 4 Free Chlorine (Cl2) mg/l 0.5 5 Total Chromium (Cr) mg/l 0.5 6 Copper (Cu) mg/l 1 7 Iron (Fe) mg/l 3 8 Zinc (Zn) mg/l 1 9 Phosphate (PO4-) mg/l 10

出典:Ministerial Environment Regulation No. 8 Year 2009 (annex 1)

表 6.2-6 冷却水排水基準

No Parameters Unit Limit 1 Temperature °C 40 2 Free Chlorine (Cl2) mg/l 0.5

出典:Ministerial Environment Regulation No. 8 Year 2009 (annex 2)

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6-27

表 6.2-7 海水淡水化装置 排水基準

No Parameters Unit Limit 1 pH - 6-9 2 Salination - Within 30 m from the location of exile waste

water to the sea, the salinity of waste water shall remain the same as natural salinity of the sea water.

出典:Ministerial Environment Regulation No. 8 Year 2009 (annex 2)

表 6.2-8 海水 FGD 排水基準

No. Parameters Unit Limit 1 pH - 6-9 2 SO4(2-) % The maximum increasing of the sulfate inlet

sea water not more then 4 % 出典: Ministerial Environment Regulation No. 8 Year 2009 (annex 2)

表 6.2-9 騒音基準

Land Utilization Type/Activity

Environment

Level of Noise db

(A) A. Land Utilization Type 1. Housing Complex and Settlement 55 2. Trade and Service Center 70 3. Office and Trade Area 65 4. Industrial Area 50 5. Government and Public Facility 60 6. Recreation Area 70 7. Specific Area:

- Airport - Railway Station 60 - Sea Port 70 - Cultural Heritage

B. Activity Environment 1. Hospital 55 2. School 55 3. Religion Facility 55

出典:The Decree of State Ministry of Environment No. 48/1996

(d) 設計炭

設計炭は、PLN より提供された石炭性状(表 6.2-10)をベースに、モデル発電所の設計条

件として考慮した。

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6-28

表 6.2-10 設計炭性状 Range

Minimum MaximumProximate Analysis (% as received)

Total Moisture 25 40 35Inherent Moisture 13.8 25 18Ash 3.3 6 5Volatile Matter 27.9 40 35Fixed Carbon 23 41 25

Specific Energy (as received)Gross Calorific Value (GCV) = Higher 3,700 4,300 4,000Heating Value (HHV) (kCal/kg)

Ultimate Analysis (% dry ash free)Carbon 65 80 68.2Hydrogen 3 2.9 5.7Nitrogen 0.54 1.2 1.13Oxygen 12 30 23.17Sulphur 0.13 2.2 1.8

Range Minimum Maximum

Ash Analysis (%)SiO2 2 60 34Al2O3 3 52 6Fe2O3 4.7 52.5 39TiO2 0.02 4.1 0.48Mn3O4 0.2 8.8 2CaO 0.8 27.7 10MgO 0.02 32.6 5Na2O 0.05 4.12 0.71K2O 0.1 2.4 1.3P2O5 0.03 0.8 0.51SO3 0.2 24.6 1

Ash Fusion Temperature (°C) Reducing Reducing ReducingI.D.T. (deformation) 1,050S.T. (softening) 1,100H.T. (hemispherical) 1,150F.T. (fluid) 1,200

Ash Fusion Temperature (°C) Oxidizing Oxidizing OxidizingI.D.T. (deformation)S.T. (softening)H.T. (hemispherical)F.T. (fluid)

Hardgrove Grindability Index (HGI) 40 65 50

Description Typical

Description Typical

出典:PLN

(e) 石炭使用量

表 6.2-1 のモデル発電所設計条件において、1,000 MW×1 ユニットの石炭消費量は、以下の

とおり。(Capacity Factor=80%, Coal Calorific Value = 4,000 kcal/kg, Thermal efficiency = 40%)

• 年間石炭消費量 : 3,767,000 (t/Year)

• 月平均石炭使用量 : 314,000 (t/Month)

• 日平均石炭使用量 : 10,400 (t/Day)

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6-29

2) 発電設備主要仕様 本項ではモデル発電所に設置される主な設備(ボイラ、タービン発電機、BOP)および推奨する

主要仕様について記載する。

(a) ボイラ

• 燃料:インドネシア炭 低品炭 (Low Rank Coal)、補助燃料:軽油

• 蒸気条件:USC(605/623°C)

• ボイラ型式:微粉炭専焼 超々臨界圧貫流ボイラ

• その他仕様:屋外式一部屋根付き、平衡通風、縦型ミル、低 NOx バーナ、2 段燃

(b) タービン

• 蒸気条件 : USC(600/620°C)

• タービン型式 : TC4F

串型 4 流排気、再熱再生復水式

回転数 : 3,000 rpm

(c) 発電機

• 型式:回転界磁型

• 冷却方式:水素直接冷却(回転子)、水直接冷却(固定子)

• 容量:1,250 MVA(定格)

• 力率:0.8(詳細は、FS 実施時とする)

• 回転数:3,000 rpm

• 周波数:50Hz

(d) Balance of Plant(BOP)

主機と呼ばれるボイラ、タービン、発電機とその付属装置以外のその他設備は Balance of

Plant(BOP)と呼ばれ、水処理設備、排水処理設備、環境対策設備等が含まれる。以下に主な

BOP 設備を示す。

• 水処理設備:海水淡水化装置、純水製造装置

• 排煙処理設備:電気集塵機、脱硫装置(海水 FGD)

※脱硝装置:非設置(現状設計炭)、低NOxバーナ+2段燃焼により

排出基準を満たすため、最終的には FS 段階において拡散シミュレ

ーションを行った後に設置判断を行うことが必要。

• 排水処理設備: 総合排水処理装置

• 運炭・貯炭設備: 受入ベルトコンベヤ、払出ベルトコンベヤ、貯炭場(消火設備

および自然発火防止対策設備等を含む)、スタッカ、リクレーマ。尚、貯炭容量は、

屋外型貯炭場として 30 日及び屋内型(屋根のみ)貯炭場として約1週間分とする。

• 揚炭設備および桟橋: 揚炭機(アンローダ)、揚炭桟橋(Unloading Jetty)、桟橋(Trestle)

• 灰処理設備 : ボトムアッシュ(クリンカ)回収設備、フライアッシュ回収設備、フ

ライアッシュ貯蔵設備

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6-30

• 灰捨て場 : 管理型灰捨て場(5 ヵ年容量)

※ 石炭灰は、セメント混和材としての需要があるため有償または無

償にて外部に引取って貰うことが前提であり、実需要については FS

段階において更なる調査が必要。

• 冷却水設備 : 海水冷却水設備(取水口、取水配管、循環水ポンプ、放水配管、放水口)

3) 発電所建設計画地概略配置 発電所を既存のPLNの所有地内に配置する前に以下のその他利用目的地を考慮するようPLN

から要請があった。

a) 太陽光発電設備 組み立て工場用地:2ha

b) 石炭混炭設備用地:13ha 以上

以上を PLN 所有地 173.3h から差し引いた 158.3ha に発電所のボイラ・タービン他主要設備、

灰捨て場及び貯炭場を配置するものとする。

図 6.2-2 General Plant Area layout

出典:JICA 調査団作成

(4) 送電計画

1) 検討ケース Bojonegara モデル発電所は USC 技術が採用される高効率プラントであり、ベース電源として

の運用が見込まれる。発電設備容量 2,000MW(1,000×2unit)のうち、2021 年に 1 号機(1,000MW)

が運開し、将来 2 号機(1,000MW)が増設されるものとする。

モデル発電所の送電方法については、発電所立地地点近傍の送電設備を考慮し、以下の 2 ケー

スについて検討を行った。

Case 1:モデル発電所から 500kV 送電線にて Balaraja 変電所へ接続

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6-31

Case 2:モデル発電所近傍に建設される 500kV 送電線に接続

Case 1においては、モデル発電所からBalaraja変電所まで約 60kmの送電線建設が必要である。

PLN によれば、モデル発電所から Balaraja 変電所までのエリアには、送電線が建設できない森

林保護区は存在しない。Case 2にてモデル発電所と接続される新500kV Sularaya-Balaraja線(2012

年 10 月に完工予定)は、発電所敷地に隣接して建設される計画である。このため、モデル発電

所との接続送電線は非常に短くて済む(500 m 以下)。ただし、新 Sularaya-Balaraja 線には 2016

年に IPP 発電所が接続される予定であり、送電容量の確保を考慮する必要がある。

CLGON

SLAYA

KMBNG

BKASI

GNDUL

CWANG

CBATU

CIBNG

CRATA

SGLNG BDSLN

CRBON

BLRJA

DEPOK

MRTWR

TSMYA

BANTEN

Bojonegara Power Plant siteCase2

Case1

Existing Plan ProposedPower plantSubstationTransmission line

図 6.2-3 Bojonegara Power Plant Site And Study Case of Transmission

出典:調査団作成

2) 検討結果 各ケースにおける系統解析は PLN により実施された。信頼度については、「N-1 基準」に基

づき設備増強の必要性をチェックした。コスト比較は、建設コスト、O&M コスト及び送電損失

コストをもとに計算した概算年間経費で比較した。

各ケース検討結果の比較を表 6.2.-11 に示す。

Case 1 は、建設送電線の亘長が長く、且つ送電用地や地役権の取得に時間を要するため建設

工期が長くなるものの、既存系統の増強が不要であり、系統ロスも少なく系統構成・系統運用

の面で最適である。また、送電ロスコストも考慮した年間経費をみると、Case2 に比べては経

済性が高い。

Case 2 は、発電所用地近傍に建設される送電線を活用することで、接続送電線建設が非常に

容易となっている。しかしながら、近隣に開発予定の IPP 発電所と同一送電線に接続するため、

電源の集中から既存系統の増強が必要であったり、潮流バランスが崩れたりと、運用面での負

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6-32

担が大きい。

以上より、机上検討が中心となる Pre-FS 段階では、系統構成の最適さを重視し、Case 1 を本案

として推奨したい。ただし、Case 1 は地役権確保の困難さが指摘されており、遅延リスクを持つ

ため、Case 2 を代案として本案の工期(用地)面でのリスク回避案の一つとして位置付けたい。

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表 6.2-11 Comparison Between Transmission Study Cases For Bojonegara Power Plant

Case 1 Case 2

Description

Access to Balaraja S/S Suralaya Bojonegara

625 87 1427 1000*1 (Y2021)

1000

2712 120 660 Banten MKRNG (Y2016)

660*1 510 500*2

19 (Y2016)

(Y2012) DUKSMBI (Y2014)

CLGON 194 2081 711 500*2

500*2 1225

1687 (Y2013) 2242 KMBNG

1639 500*2

821

BLRJA to CWANG2 1157

500*2 1746 630 (Y2015)

175 LKONG 614 to TMBUN

500*2 (Y2014) GNDUL -264

1127 1273 500*2

1936 1242 to CSKAN

TPCUT (Y2016) 513 -821

HVDC 1031 CIBNG

-2869 330 DEPOK 500*2

500*2

HVDC BOGORX 538

(Y2016) HVDC (Y2016) CIGRE 680

276

Y2021N0.8

660*1

(Y2011)

No.1-7

400*4,

600*3

No lines overloded in N-1 contingencyLoss: 991MW

Access to the T/L near the site and upgrade to 4x310mm2 Lisbon Suralaya Bojonegara

625 87 299 1000*1 (Y2021)

1000 (Y2016)

2519 120 660 Banten MKRNG (Y2016)

660*1 511 500*2

106 1299

(Y2012) DUKSMBI (Y2014)

CLGON 209 1955 711 500*2

500*2 1225

2633 (Y2013) 2120 KMBNG

1640 500*2

817

BLRJA to CWANG2 1135

500*2 1517 753 (Y2015)

103 LKONG 618 to TMBUN

500*2 (Y2014) GNDUL -335

896 1273 500*2

2268 1453 to CSKAN

TPCUT (Y2016) 507 -909

HVDC 1130 CIBNG

-2872 315 DEPOK 500*2

500*2

HVDC BOGORX 546

(Y2016) HVDC (Y2016) CIGRE 738

184

Y2021N0.8

660*1

(2011)

No.1-7

400*4,

600*3

After upgrading to Lisbon 4x 310mm2

Construction cost

(i) Access line (60km) 50 MUS$ (ii) Switchgear (2 sets) 4.5 MUS$

Total cost 54.5 MUS$

(i) Access line (0.5km) 0.2 MUS$ (ii) Reconductor (60km) 32 MUS$

Total cost 32.2 MUS$

System loss

Peak loss 991 MW Annual loss 5,209 GWh

Peak loss 1,011 MW (‘Case2-1=’ 20MW) Annual loss 5,313 GWh (‘Case2-1=’ 104GWh)

Annual cost

7.9 MUS$/year 9.2 MUS$/year

Remark The route length of access line is long (60km) and term of construction may become longer due to difficulty of the acquisition of ROW.

There is no need to upgrade of existing system for N-1 criteria.

Although the construction cost is more expensive, the annual cost is cheaper than Case 2 because of lower transmission loss.

Operating is easier and effective due to exclusive line from Bojonegara.

The route length of access line is very short (less than 500m) because new T/L will go through beside the power plant site.

Reconductoring is needed in order to comply with N-1 criteria.

The reconductoring work needs planned outage of 500kV line, which will force uneconomical operation during the work.

The power flow with two plants operated on Suralaya-BLRJA line is unbalance and disadvantage in system loss.

出典:調査団作成

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6-34

(5) 環境社会配慮(初期環境評価の支援)

1) 関連する環境法規と計画 (a) 関連する環境法規

石炭火力発電所の環境影響評価に関連する法規は多肢に上る。そのうち重要とみなされる

ものを下記のとおりリストアップした。(詳細は、別冊「モデル発電所 Pre-FS 報告書」の 5.1.3

を参照)

a. 環境管理法規

法律 No.32 / 2009、法律 No. 5 / 1990、政令 No.7 / 1999

b. 環境影響評価(AMDAL)

政令 No.51 / 1993、No.27 / 1999; 環境省規定 No.17 / 2001、No.11 / 2006、No.08 / 2006、No.24

/ 2009、No.27 / 2009、No.13 / 2010; 環境省令 No.86 / 2002、No.05 / 2000、No.41 / 2000、

BAPEDAL 長官令 No.8/ 2000

c. 国土空間管理計画(Spatial Plan:保護区管理に関する法規を含む)

法律 No.26 / 2007; 政令 No.26 / 2008、No. 68/1998、No. 69 / 1996; 大統領令 No. 57 / 1989、

No. 32 / 1990、公共事業省令(PU)No.15/PRT/M/2009

d. 大気汚染防止

政令 No. 41 / 1999; 環境省令 No.13 / 1995、No. 45 / 1997; 環境省規定 No.07 / 2007、No.21 /

2008、No.12 / 2010

e. 騒音・振動、悪臭

環境省令 No. 48 / 1996、No. 49 / 1996、No. 50 / 1996

f. 水質汚濁防止

政令 No. 82 / 2001、No.19 / 1999; 環境省令 No.51 / 1995、No.122 / 2004、No.04 / 2001、No.37

/ 2003、No.110 / 2003、No.51 / 2004、No. 179 / 2004、No.201 / 2004、No.112 / 2003、No. 113

/ 2003、No. 08 / 2009

g. 廃棄物管理(特に、有害廃棄物管理に関する法規を含む)

法律 No.18 / 2008; 政令 No.18 / 1999、No.85 / 1999、No.74 / 2001; BAPEDAL 長官令 No.1, 2,

3, 4 and 5/BAPEDAL/09/1995; 環境省規定 No.03 / 2007、No. 02 / 2008、No.18 / 2009

h. 石炭火力発電所の環境アセスメントと対策関連の法規

法律 No.5 / 1994(生物多様性)、No.41 / 1999(森林)、No.81 / 2000(船舶航行)、No.7 / 2004(水

資源管理)、No.32 / 2004(地方政府)、No.24 / 2007(災害管理)、No.27 / 2007(沿岸部・

島嶼部管理)、No.4 /2009(石炭鉱山)、No.36 / 2009(保健)、No.45 / 2009(漁業);

政令 No.20 / 2010(海上交通)、No.10 / 2010(森林分類の変更)、No.24 / 2010(林地利用);

MEMR 省令 No.1899 / 1994(電力環境モニタリングの技術指針)、No.1457.K/28/MEM/

2000(鉱山・エネルギー分野の環境管理の技術指針)保健省令 No.876/Menkes/SK/VIII/

2001(健康影響評価の技術指針)

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6-35

i. 地方政府の関連法規

バンテン州の国土空間管理計画(2011-2031) No.2 / 2011

バンテン州の環境影響評価運用計画 No.51 / 2002

ジャカルタ州知事令 No.670 / 2000(首都圏の火力発電所を含む固定発生源からの排ガス基

準)

ジャカルタ州知事令 No.551 / 2001(首都圏の大気環境と騒音環境基準)

セラン県の国土空間管理計画(2011-2031) No 10 / 2011

(b) 国土空間管理計画

インドネシアの環境影響評価は、地方政府が管轄する。大規模設備の立地に関しては、管

轄地方政府の上位計画、特に国土空間管理計画(Spatial Plan)との整合性が重要になる。そこ

で、ボジョネガラを管轄するバンテン州とセラン県の当該計画で、特に留意すべき点を以下に

整理した。

a. バンテン州の国土空間管理計画

国の国土空間管理計画(National Spatial Plan)と中期開発計画(2009-2014)がイン

ドネシア全土から指定した 5 つの経済特区(KEK)のひとつが、計画候補地のある

Bojonegara 経済特区で、バンテン州の国土空間管理計画でも 2011 年に承認している。

沿岸部と河川境界のグリーンベルト帯の保全を重視している。ベルト帯の範囲は、場所

条件で異なる。

(注釈)国土空間管理計画に関する法律 No.26 / 2007 やバンテン州法 No.2 / 2011 によれば、

グリーンベルト帯の主たる保全目標は、 以下の点にある。

近接する開発・開拓区域の水資源涵養のための「貯水池」の維持

魚類の繁殖とえさ場の保護

海岸線浸食の防止

都市部からの汚染物と有害廃棄物の流出削減

このベルト帯は「保護区域」として、開墾地としてはならないが、公共目的、研究・教育、

エコツーリズムなどの制限的利用は認められる。また、環境法 No. 5 / 1990、森林法令 No.24 /

2010 などにより、マングローブ林の保全が奨励されている。

「沿岸部・島嶼部管理に関する法律 No.27 / 2007」を参照しながら、バンテン湾内の 30ヘクタールの範囲を、海洋保全区域に指定している。(しかし、下記のセラン県の当該

計画では、海洋保全区域としていないので、この点について更に調査が必要である)

b. セラン県の国土空間管理計画

計画候補地のある Bojonegara 経済特区は、セラン県の国土空間管理計画も 2011 年に

承認した。

森林省令 No.419/Kpts-II/1999 により、計画候補地のある Kramatwatu と Bojonegara郡の西方が保護林に指定されている。この区域は既に 2008 年の土地利用図からすべて

開墾地となっているが、保護林指定が残ったまま変更されていない。

州の計画と同様、沿岸部と河川境界は重要な保全対象となっている。

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6-36

計画候補地のある Kramatwatu と Bojonegara 郡は工業地帯になっており、PLN が所

有する計画候補地はジャバベカ工業団地管理会社が管理する工業団地用途地である。

セラン県の現在の土地利用状況を示す図を以下に示した。

凡例

県(Deistrict)境 Bojonegara 特別経済圏 土地利用

郡(Sub-district)境 Bojonegara 国際港湾(区画) 森林

村(Village)境 Ex Golden Key(区画) プランテーショ

河川 Jababeka 工業団地(区画) 乾燥地

国道 Cilegon ガスコンバインド発電所 湿地

州道 発電所用地(PLN 所有地) 居住地域

県道 本計画候補地 水源地

その他の道路

鉄道

Suralaya 火力発電所

特別経済圏の境界

出典: バンテン州計画局(BAPPEDA)と地形図 (scale 1/ 250.000), Bakosurtanal, 1999

図 6.2-4 バンテン州セラン県の現在の土地利用

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6-37

(c) 火力発電所の排出基準(排ガス、排水)

石炭火力発電所の環境影響評価で、汚染物質の排出抑制は重要事項である。そこで、石炭

火力発電所の汚染物質の排出に関係する基準を、以下に整理した。

a. 排ガス基準

表 6.2-12 火力発電所の排ガス基準(常時排ガス監視装置付き施設)

指標 最大許容値(mg/Nm3) Coal Oil Gas

1 二酸化硫黄(SO2) 750 650 50 2 窒素酸化物(NOx) NO2を指標として 750 450 320 3 粒子状物質(T P) 100 100 30 4 不透明度(Opacity) 20% 20%

出典:MOE Regulation No. 21/2008 regarding Emission Limit for Thermal Powel Plant (Annex 1b)

1. ガス体積は標準条件で測定 (気温 25.0度で1気圧). 2. 不透明度(Opacity)は実用的なモニタリング指標として使用される。 3. 全ての排出許容値は少なくとも3日間の95%の時間達成されること

b. 排水基準

表 6.2-13 火力発電所 CPU(中央排水処理装置)からの排水基準

指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 全浮遊粒子(TSS) mg/L 100 3 油脂 mg/L 10 4 遊離塩素(Cl2)* mg/L 0,5 5 全クロム(Cr) mg/L 0,5 6 銅(Cu) mg/L 1 7 鉄(Fe) mg/L 3 8 亜鉛(Zn) mg/L 1 9 リン酸(PO4-) mg/L 10

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 1)

表 6.2-14 火力発電所ボイラ排水基準

指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 銅(Cu) mg/L 1 3 鉄(Fe) mg/L 3

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 1)

表 6.2-15 火力発電所冷却塔の排水基準

指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 遊離塩素(Cl2)* mg/L 1 3 亜鉛(Zn) mg/L 1

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 1)

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6-38

表 6.2-16 火力発電所排水処理場の脱塩処理排水基準

指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 全浮遊粒子(TSS) mg/L 100

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 1)

c. 冷却水排水基準(付帯設備)

表 6.2-17 火力発電所冷却水の排水基準

指標 単位 許容値 1 水温 0C 40 2 遊離塩素 (Cl2)* mg/L 0,5

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 2)

表 6.2-18 火力発電所からの脱塩処理水の排水基準

指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 塩分濃度 0/00 放水口から30m以内で、排水塩分濃度が海水の塩分濃度と同じになる

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 2)

表 6.2-19 火力発電所の排煙脱硫システム(海水湿式スクラバー)の排水基準

指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 SO4(2-) % 原水(海水)の硫酸塩濃度と比較した硫酸塩増加が4%未満

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 2)

d. 排水基準(貯炭場)

表 6.2-20 貯炭場の排水基準 指標 単位 許容値 1 pH - 6-9 2 全浮遊粒子(TSS) mg/L 100 3 鉄 mg/L 5 4 マンガン mg/L 2

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 2)

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6-39

e. 排水基準(油分)

表 6.2-21 廃油を含む排水の基準 指標 単位 許容値

1 COD mg/L 300 2 全浮遊粒子(TSS) mg/L 110

出典: Ministry of Environment Regulation No.8 / 2009 (annex 3)

2) 環境社会影響 本項では、上記に示したような環境法規や上位計画と、IEE 委託調査で得られたベースライ

ン情報に基づき、6.1(5)のスコーピング項目について、本計画により引き起こされる可能性があ

る影響について、整理した。

(a) 項目別の初期影響評価

上位計画との整合・遵守

a. 土地利用・地域の国土空間管理計画(Spatial Plan)の規定

候補地は、国指定のボジョネガラ経済開発特区にあり、その中の工業団地用途地域に PLN

が所有する土地である。ボジョネガラ経済開発特区は、州と県の行政府もそれぞれの国土

空間管理計画で承認しており、同特区には、新規国際港湾の開発と大規模工場の集積が始

まっている。したがって、発電所建設に関する本計画は、国、州、県のそれぞれの行政単

位が示す上位計画としての国土空間管理計画において、土地利用目的に合致する。

b. 貧困層 27・先住民族・少数民族

候補地周辺には、先住民、少数民族は居住していない。候補地周辺には、スラム化した集

落は見られない。候補地南端に接する河川南岸にある集落(Teratai村)での聞き取りでは、

住民構成は 100 世帯超の漁民、10 人の魚の仲買人で、50-60 程度の船外機付き漁船を所有

していた。1 家族 5-9 人ぐらいの家族数で、漁民は雨期の 3-4 カ月を除く、9 か月程度沿

岸漁業が可能だと言う。漁民は 1 回の漁で、1艘あたり最低 30 万ルピア程度の水揚げが

あり、1 家族 1 月当たり、100–200 万ルピア程度の収入が得られている。仲買人は、平均

すると月 800–1,000 万ルピアの収入を得ている。

統計で見ると、中央統計局(BPS)の定義に基づき、国家家族計画調整庁(BKKBN)が

「貧困世帯(Pre-prosperous)」と分類した世帯は、計画候補地のあるクラマトゥワトゥ

(Kramatwatu)郡で全世帯数の約 18%、候補地の北に隣接するボジョネガラ郡

(Bojonegara)郡で約 20%となっている(KramatwatuおよびBojonegara郡役場の 2008 年度

統計資料、IEE調査団収集)。

27 (1)「貧困ラインとしては、各国共通の尺度として世界銀行や MDGs が使用してきた一人 1 日 1 米ドルや 1.25

米ドル(購買力平価)を基準とするものがある。また、これとは別に多くの国で独自の貧困ラインが設定され

ている。絶対的貧困状況の把握にあたっては両者を参照することが望ましい。」(引用:独立行政法人国際協力

機構 公共政策部/貧困削減タスクフォース、課題別指針「貧困削減」、平成 21 年 9 月 (2009 年)、p3-注釈

17) (2) インドネシアの貧困ラインは、中央統計局(BPS)が社会経済調査(SUSENAS)のデータに基づき、「貧困

ライン」を「1 人 1 日 2,100 キロカロリー相当の食糧と、それ以外の必需品(衣服・住居・教育・保健・交通

等の 25~27 非食品項目)を得るのに最低限必要な支出水準」と定義し、都市部と農村部別に総合貧困ライン

を定めている。農村部での貧困ラインは、2011 年 9 月時点で、1 人 1 カ月あたり Rp243,729(円換算¥2064@2012 年 7 月 1 日レート)である(BPS 情報サイト http://www.bps.go.id/brs_file/kemiskinan_02jan12.pdf より)。

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)

ファイナルレポート

6-40

c. 自然保護区、保全区域

候補地を管轄する州および県の国土空間管理計画では、海岸線(満潮位)より 100 から

200m 幅の陸地、敷地南側を流れる川北岸から 50-75 m 幅の河岸部は、グリーンベルトと

して、護岸・魚類資源保護・汚染浄化能力維持などの目的で保全することが求められてい

る。

周辺陸地側には、自然保護区は存在しないが、国土空間管理計画では半島西側山間部の現

在のプランテーション区域を、保護林として保全する計画が見られる(候補地は半島東の

沿岸部)。

酸化物やばいじんなど、環境基準に沿った排気ガス対策が取られる必要があるが、適切な

対策がなされれば、特に影響はない。最近 30 年間の風向統計では、年間で卓越する風向

は東向き。

候補地が面するバンテン湾の沖合は、州の国土空間管理計画が海洋保全区域に指定してい

る。一方、県の当該計画は、同海域を保全区域に指定していない。本来は、両者が整合す

べきなので、この点について、次の調査段階で確認する必要がある。また、地図スケール

が粗いために保全区域の境界線が曖昧だが、保全区域設定の目的と揚炭桟橋と突堤、温排

水の影響等について、国土空間管理計画を管轄する地元行政府と情報交換しながら、対策を

練る必要がある。

d. 文化遺産

候補地境界から北に 2 km 強に、サントリ丘(Bukit Santri)と呼ばれるイスラム教徒の宗

教遺跡があり、遠隔地からも参拝者が訪れる。上記保護林計画地と同様に、適切な排ガス

対策が必要になる。その他の文化遺産は、周辺で特に確認されていない。

環境影響

e. 影響を受けやすい自然、生物・生態系への影響

候補地の海岸線沿い、南側を東へ流下する河川河口部あたりに、マングローブが生育す

るが、大きく発達したものではない。しかし、マングローブはジャワ島で減少しつつある

と同時に、多面的な環境サービス機能を持つ貴重な資源である。計画事業による石炭運搬

用設備や入排水路設備などによる影響は避けられないため、マングローブの多機能性に着

目して、FS/EIA 調査で詳細なアセスメント調査を実施し、適切な保全対策を検討する必

要がある。

現地調査、地元の漁師の話と衛星写真(Google Earth)から判断すると、候補地南側の河

口から方位 65 度方向の沖合約 1.7km のところに、約 9 ヘクタールのサンゴ礁がある。ま

た、東方約 5km 沖合には環礁島と見られる小島が 3 つある。更に、北東 40 度方向 7km 沖

合にはパンジャン島(Pulau Panjang)があり、この島の周辺は地元の漁業にとって優れた

漁場となっており、海藻養殖場でもある。

漁師への聞き取りでは、河川河口部や海岸沿いは、生活汚水や土砂による汚濁が進んでお

り、マングローブも豊かではないことから、魚介類のあまり豊かな養育場とは考えられて

いない。一方、サンゴ礁の保全とパンジャン島周辺の環境保全は、漁業資源の保全と重要

な関係があると考えているが、最近少し資源劣化していると漁師たちは感じている。彼ら

は、乱獲と周辺の工場からの汚染をその要因にあげた。

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ファイナルレポート

6-41

以上から、緩和策では、河川沿いと海岸線のグリーンベルトの保全とサンゴ礁の保全を検

討する必要がある。

f. 地形、海況、地質、低質

プロジェクトの敷地面積は約 170 ヘクタールで、盛土による土地造成に、300-400 万立米

の土石量が必要だと予想される。調達量が大きくなるので、多くは候補地のある半島内の

既存の土取り場から調達し、残りは少し離れた土取り場からの調達になると見られる。既

存の土取り場からの調達なので、保全林等に影響を与えないが、プロジェクト実施段階で

は、土砂の調達先の選定プロセスで、採石・採土事業に係る AMDAL 承認と環境許可を

持たない非合法な採石会社と事業主を選択することのないように、注意が払われる必要が

ある。また、通常のインフラ工事と同様に、輸送中の安全とダスト防止などに対策が必要

になる。

候補地は、なだらかにカーブした湾奥部に面し、非常に遠浅になっている。候補地沖合の

低質は、シルトと砂地が分布している。約 2.5 から 3.5 キロの揚炭桟橋・突堤が想定され

るので、海流を遮断する訳ではないが、浚渫等を伴う場合は海況にも影響する(次項 g 参

照)。

g. 埋立て、浚渫、地盤沈下等の問題

候補地の広い範囲が低湿地で、満潮時に水没する部分も多いため、埋立てが必要になる。

原則 1m 以下の埋立てに留めるよう考慮されるが、それ以上必要になる部分の造成は、適

切な工法により地盤への影響と海岸線での土砂流出を抑える必要が生じる。

石炭運搬用のコンベア架構及び石炭揚炭岸壁建設に伴う浚渫の必要性は、現段階では不要

としている。FS 調査で、浚渫が必要になった場合は、海況への影響、浚渫土の処理、近

傍のサンゴ礁などへの影響を検討する必要が生じる。

汚染影響

h. 大気汚染

サイトから 4km にチレゴン市(人口 30 数万)、80km にジャカルタがある。想定される煙

突高は 250±30m。最大着地濃度の出現地点は、標準的には 9km(煙突高 200m)から

15km(500m)の範囲が予想される。 本計画で想定される USC を採用した発電所の場合、

従来型(SC)と比べると、同じ発電量に対して石炭消費量(4,200 kcal/kg 石炭で想定)が

約 7%程度抑制できるため、大気汚染物質の排出量も相対的には低減されるが、排出濃度

には特に変化は見込まれない。CO2 の排出量は従来型より低減されるが、SO2、NOx、ば

いじんの影響は免れないので、環境法規の排ガス基準の遵守に加え、できるだけ環境に負

荷を与えない排ガス抑制策が求められる。

i. 水質汚染(汚濁)

冷却水の放水、いわゆる温排水について、Pre-FS では、取水時の水温 30℃(既存データ

想定)に対して放水温度(復水器出口において)を 37℃(原水+7℃)の設計構想とした。

また、復水器の下流側に海水脱硫装置を設置することとしていることから、復水器出口の

海水温度は更に 2℃ほど上昇することになるが、これは火力発電所に対する排水基準の「放

水温 40℃以下」を遵守したものになる(環境省規定 2009 年第 8 号)。

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6-42

この地域は、海の地形、海況から、外洋に面した場所と比較すると、温排水が拡散しにく

いことが考えられる。また、近傍にあるサンゴ礁への影響が不明である。サンゴ礁等にス

トレスを与えないよう、次段階の FS 調査で放水口設計時に温排水の拡散シミュレーショ

ンを実施することを要望する。

発電所からのその他の排水については、上記規定の排出基準に沿って、適切に処理するた

めの排水処理装置及び設備が設置される。

j. 石炭の運搬・保管、石炭灰の管理

燃料用石炭は、揚炭桟橋、コンベヤを経て、貯炭場(消火設備および自然発火防止対策設

備等を含む)に保管される。コンベヤの囲い、貯炭場の防風フェンスや散水など、粉塵の

飛散防止システムで、粉塵が飛ばないよう管理される。

石炭灰の灰捨場(Ash Pond)は、浸出液による地下水や公共水域の汚染を防止するため、

適切な対策が取られる必要があり、管理型処分場とする計画である。

なお、石炭灰には重金属などが含まれる場合があるため、有害廃棄物に分類される。国

際標準および日本の法規では、有害廃棄物の処分場は管理型処分場とすることが定められ

ているが、インドネシアには該当する規定がない。一方、同国では「有害廃棄物処分場は、

灌漑用水・浄水に利用される恒常河川から 500m の離隔をとって設置しなくてはならない(環境

影響管理庁(BAPEDAL)長官令 No.4/09/1995)」という規定があり、処分場の形態でなく配置によ

って安全措置を講ずる規定となっている。

これが本計画候補地に適用された場合、約 170ha の敷地内で、その条件を満たすことができな

い。この点について、同国環境省有害廃棄物管理課長(2012 年 2 月 IEE 委託調査)への確認を

行ったところ、当該規定が本計画にも適用になるとの前提だった。その上で、「実施事業主体であ

る PLN から環境省同管理課あてレターを出し、本計画の電力供給上の戦略的重要性と最適技術

による管理型処分場とすることが確認できれば、同規定の適用外とする特別許可を発出すること

ができる。この許可証明が、AMDAL(EIA)承認の前提条件のひとつになる。」という面談結果が

得られている。

k. 騒音・振動・悪臭等

南側河川沿いに 100 軒強の住居がある。この土地の所有者である「ジャバベカ工業団地管

理会社」と対象地区住民への聞き取りでは、既にこの地区の全世帯が 1990 年代初めに住

居および土地の権利を同管理会社に売り渡しているが、開発業者が決まり実際の開発が開

始されるまでの期間は、住民と管理会社の同意のもとに、現在も以前のまま住んでいる(借

地料も払っていない)。ただし、開発が決まった場合には、無条件で立ち退くことに集落

全体が合意しているということが、確認された。現在、ここに住む住民の大半は、河川を

下り海に出て漁をする漁民と、魚介類の仲買人、少数の農民とその家族である(1 世帯 5

-9 人家族)。

一方、計画候補地の西側を、半島周回道路(州道と国道)が通り、道路の西側に小集落があり、

南側河川沿い集落の次に計画候補地に近い集落は、発電ユニットの予定区画から約 1.5km の

距離になる。

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6-43

従って、南側河川沿いの住民が移転した場合、発電所敷地境界近くに集落はなくなり、工業団

地のエリアとなる。その結果、周辺居住地への騒音・振動の大きな影響は生じにくく、また、

他の既存石炭火力発電所でも、悪臭問題は発生していない。

このような点から、敷地境界での環境基準の遵守が重要になる。法規上も求められる敷地境

界での環境モニタリングと標準的な防音・消音機器の採用、敷地境界での防音壁などが標

準的な対策として、想定される。

社会影響

l. 住民移転

候補地の敷地境界にあたる南側河川沿いの 100 軒強の住居に暮らす住民。彼らは、厳密に

は敷地外に暮らしているが、本計画事業が実施された場合は、移転してもらうことになる

だろう。上記 k 項(騒音・振動・悪臭等)で述べたように、既に法的には 20 年前に土地

を明け渡しているので、正規居住者に対する場合のような移転補償は発生しないが、現状

の生活と生計を維持するための住民対話と支援策は、検討されなければならない。

一方、計画候補地は PLN が土地を所有しており、ジャバベカ工業団地管理会社が管理し

ているが、現在同敷地内で稲作・畑作を営む農民、養殖池を営む漁民が、60 人弱いる。

法的には非合法な立場である。彼らも、前段と似た理由で、土地の所有権や施設所有権は

一切なく、PLN に 2004 年に所有権が移って以降、空き地状態になっているため、工業団

地管理会社との同意の下に、周辺の町や村から通ってきている。彼らも、借地料等は払っ

ておらず、開発時には無条件で立ち退く約束になっている。彼らの立ち退きについても、

補償等は必要ないということに合意済みのようだが、農作物の収穫と養殖サイクルの終了

時に立ち退きするなどの配慮を期待している(3 カ月程度のサイクル)。

m. 水利用

冷却水は海水が利用されるので、水量面での問題はない。その他の用水使用(工業用水、

純水、上水)については、深井戸、海水淡水化装置、外部調達などが考えられるが、Pre-FS

での設計では、海水淡水化装置を使用するとしている。FS 調査で詳細検討する予定であ

る。しかし、深井戸が選択された場合には、地域の水資源量・水利用に影響があるかどう

か、FS 調査時に検討する必要がある。

n. 地域経済、産業活動、地域資源、社会インフラ、サービスなどへの影響

計画候補地は、州・県の計画により戦略的工業地域とするエリアの工業団地用地内なので、

発電所敷地本体の地域経済への負の影響は考えられない。

留意点は、海域での漁業活動と海上交通への影響である。FS および EIA 調査では、石炭運搬

船、揚炭桟橋・突堤の計画時に、漁場、養殖場(サンゴ礁、パンジャン島周辺)までの漁船

航行、候補地北側の民営港湾を含む湾内交通に対する影響を検討する必要がある。

沖合のサンゴ礁周辺、パンジャン島周辺などの水産資源の保護についても、前記項目 e の

生態系への影響の検討と併せて、可能な方策を立てることが望ましい。

o. 被害と便益の偏在

大規模電力設備の特徴として、電力消費地は施設立地の地元ではなく、大規模需要地にな

る。本計画も、ジャカルタ首都圏を含む広範囲の需要とエネルギーの安全保障を、域内全

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6-44

体の電源でまかなう計画である。地元に対しては、雇用促進などの正の効果も考えられる

が、生活環境(大気・水環境)、生態環境(沿岸部や海域の植生、生態)や一次資源(漁

業資源)の確保のための対策費を検討する必要がある。

3) 影響の緩和策 本項では、前項の影響を回避または最小化するために、現段階で想定できる必要な緩和策を

整理した。初期環境評価なので、概念的な整理である。

ただし、本項の表 6.2-22 に挙げた項目は、緩和策がとられなければ何らかの負の影響がある

ことを現段階で想定できるものであるが、FS 調査段階で想定される EIA 調査では、具体的な緩

和策の検討のための詳細なアセスメントが、全項目について必要である。

また、負の影響の前提となる事象の発生と影響の発生について、現段階では不確定部分が大

きい項目については、次項の表 6.2-23 に、FS/EIA 時の調査確認・アセスメント事項として整理

した。

表 6.2-22 本計画による環境社会影響の緩和策(初期環境評価による概念的整理)

項 目 緩 和 策 自然保護区・

保全区域

敷地境界グリーンベルトの確保:海岸線(満潮位)より 100 から 200m 幅の陸地、

敷地南側を流れる川北岸から 50–75 m 幅の河岸部

半島内陸部の保護林計画地の保全:適切な排ガス対策(「大気汚染」の項目参照)

文化遺産 Bukit Santri 宗教遺跡の保護:適切な排ガス対策(「大気汚染」の項目参照)

自然・生態系

への影響 河川沿いと海岸線のマングローブ林とグリーンベルトの保全:

現地マングローブ林が果たしている環境サービス機能の詳細調査と必要な保全

策の立案と実施

マングローブ林保護とグリーンベルト保全(上記「自然保護区・保全区域」の

項目参照) の調整計画と実施

サンゴ礁の保全:

環境基準を遵守した温排水対策とサンゴ礁に影響を与えないための揚炭桟

橋・突堤の設計上の配慮

地形、地質 採石・採土事業に係る AMDAL 承認と環境許可を取得した合法的な採掘業者から

の盛土材の調達:

FS/EIA 時に、合法的な採掘業者(調達先となりうる業者)リストの作成

建設・事業実施段階での入札図書に、「盛土材の調達は、上記リストに基づ

き合法的な採掘業者から行うこと」を義務付けることを明記

盛土用土砂の運搬:

工事中の交通安全対策やダスト飛散防止

埋立て、浚

渫、地盤沈下等 埋立て・土地造成による地盤沈下防止と土砂流出防止:

段階別埋立工法(staged construction method)

適切な盛土圧縮法(embankment fill compaction)の採用

大気汚染 排ガス対策:

最大着地濃度シミュレーション(SO2、NOx、ばいじん)の実施

適切な煙突高の設計

排ガス対策:火力発電所排ガス基準(環境省規定 No.21/2008)の遵守と環境保全

基準と保全目的に適う、電気集塵機の設置

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6-45

項 目 緩 和 策 基準と保全目的に適う、排煙脱硫装置の設置

基準と保全目的に適う、低 NOx 排出技術の使用と(不十分な場合)脱硝装置の

設置

水質汚染 排水処理対策:火力発電所排水基準(環境省規定 No.8/2009)の遵守と環境保全

基準と保全目的に適う排水処理システムと設備の設置

石炭の運搬・保

管、石炭灰の管

粉塵の飛散防止:

コンベヤの囲いや貯炭場の防風フェンス、散水設備、フェンス外のグリーン

ベルトなど粉塵の飛散防止設備の設計

貯炭場管理計画の策定

灰捨場浸出液の流出防止:

自然災害による有害物を含む浸出液の漏出リスクを考慮した石炭灰管理計

画の策定

管理型処分場の最適技術の導入

十分な遮水対策(遮水工、浸出水を集める集水設備、集めた浸出液の処理施

設等を含む)

騒音・振動 計画候補地(建設予定地)の敷地境界での騒音・振動シミュレーション:

敷地境界での騒音・振動の測定と減衰計算

シミュレーション結果に応じた防音・消音機器の採用

敷地境界での防音壁などの標準的な対策の検討

住民移転 南側河川沿いの住民移転計画の策定:

対象住民との対話とコンサルテーション

移転先の確保と移転後の生計・生活維持のための支援策

計画候補地内で農業、養殖業を営む人のコンサルテーションと立退き計画策定:

立退きに際しては、農作物と養殖の収穫までの猶予期間を取ること

立退き後の生計支援策

被害と便益

の偏在 地域環境整備費のための支援金の検討と実施:

生活環境(大気・水環境)、生態環境(沿岸部や海域の植生、生態)や一次

資源(漁業資源)の確保のための対策費の補助

出典:JICA 調査団作成

4) 環境影響の EIA 事項(現段階で事象の発生が不明なもの)と環境モニタリング指針 本項では、負の影響の前提となる事象の発生と予測される影響を確定するために、FS/EIA 時

に必要となる調査確認とアセスメント事項を表 6.2-23 に、更に事業実施・運用段階で必要にな

る監視事項について表 6.2-24 に整理した。表 6.2-23 で、影響が同定できた場合は、EIA 調査内

で必要な緩和策を新たに講ずること。

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6-46

表 6.2-23 前表事項に加え FS/EIA 調査時に実施すべき調査確認とアセスメント事項

調査確認・アセスメントの対象 確認とアセスメントの内容 実施時期 州と県の国土空間管理計画を管轄する

部署と海洋保全区域の確認 保全区域設定の目的と揚炭桟橋と突

堤、温排水の影響等について FS/EIA 調査時

石炭運搬用の揚炭桟橋・突堤建設に伴う

浚渫の必要性の確認 海況・海洋底への影響、浚渫土の処

理、近傍のサンゴ礁、マングローブな

どへの影響について

FS/EIA 調査時

温排水の拡散シミュレーションの実施 近傍のサンゴ礁、ベントス(底生生

物)、浮遊期を持つ生物を含む対象海域

の海洋生物などへの影響について

FS/EIA 調査時

計画候補地および周辺海域の保護すべ

き動植物と生態系の分布 動植物リストの作成、希少種・固有

種と保護すべき生態系の存在の有無、

保護すべき対象が同定された場合の保

護策の策定

FS/EIA 調査時

環境省有害廃棄物管理課あてレターと

特別許可確認 石炭灰の灰捨場の設置位置確認につ

いて FS/EIA 調査時

(早期段階に)

施設用水の利用

(深井戸が選択された場合)

地域の水資源量・水利用への影響に

ついて

FS/EIA 調査時

石炭運搬船、揚炭桟橋・突堤の計画時の

確認 パンジャン島周辺を初めとする海域

での漁業活動と海上交通への影響

FS/EIA 調査時

出典:JICA 調査団作成

表 6.2-24 本計画について実施すべきモニタリング事項(初期環境評価による概念的整理)

モニタリング方法の規定 モニタリング項目 実施時期 環境モニタリング(環境省規定

No.86/2002 および No.13/2010 に準ずる) 大気環境モニタリング

(IEE 時ベースライン・データと比較)

水質モニタリング(河川、海水)

(IEE 時ベースライン・データと比較)

建設・運用時

排ガスモニタリング

排水モニタリング(温排水を含む)

騒音・振動モニタリング

(IEE 時ベースライン・データと比較)

悪臭モニタリング

建設・運用時

環境モニタリング(EIA で保全目標の

設定とモニタリング方法を規定する) サンゴ礁、近海漁場、海岸線・河川沿

いマングローブ林とグリーンベルト帯

のモニタリング

建設・運用時

環境モニタリング(環境省規定

No.86/2002 および No.13/2010 に準ずる) 環境管理計画実施状況モニタリング

(灰捨場、貯炭場の管理状況を含む)

運用時

出典:JICA 調査団作成

5) 今後の環境社会配慮プロセス 6.1(5)冒頭に述べたように、インドネシア側実施機関が本計画事業化の検討に入りフィージビ

リティ(FS)調査に進んだ場合、実施機関はインドネシアの環境法に基づき、AMDAL を実施

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6-47

することになる。

その際の手続きの流れを再度示すと、次図のようになる。AMDAL では、関係住民に対する

説明と合意確認のためのステークホルダー協議も要求されている。また、AMDAL の承認を得

るための前提条件として、PLN の土地所有権の確認、MEMR による事業認可、県知事による事

業認可、県政府による立地許可、おなじく建設許可などがあり、最後に AMDAL の承認と環境

許可証が発出される。

Pre-FS Study FS Study Construction Stage

KA ANDAL DRAFT

SECRETARIAT OF BADAN PENGELOLAAN LINGKUNGAN HIDUP (BPLH)

Address : Jl. Kh Sam,Un No. 7 Serang-BantenEmail : [email protected] or [email protected]

Phone : +62 254 213862 ; Fax : +62 254 200177

EVALUATION KA ANDAL WITH :•AMDAL TECHNICAL TEAM OF SERANG DISTRICT•AMDAL COMMISSION TEAM OF SERANG DISTRICT

REVISION OF KAANDAL

APPROVAL OF KA ANDAL

EVALUATION ANDAL, RKL, RPL DOCUMENT WITH •AMDAL TECHNICAL TEAM OF SERANG DISTRICT•AMDAL COMMISSION TEAM OF SERANG DISTRICT

REVISION OF ANDAL, RKL, RPL DOCUMENT

APPROVAL OF ANDAL, RKL, RPL DOCUMENT

AMDAL PLAN AMDAL (EIA) process

Note: KA= Terms of ReferenceAMDAL= EIARKL= Environmental Management PlanRPL= Environmental Monitoring Plan

Required Permitduring

AMDAL process

PLN’s site legal status

Land certificate

Principal permit from MEMR

Principal permit by Bupati(District Head)

Location permitfrom District Gov.

Construction permit from District Gov.

Finally, AMDAL approval and Env. permit

IEE Study

図 6.2-5 Pre-FS 調査および IEE 調査以降の環境社会配慮のプロセス

出典:JICA 調査団作成

(6) モデル発電所建設工程

1) モデル発電所建設計画工程 このセクションは、1,000MW×1 基の USC 石炭火力発電所の建設計画の工程および将来の追

加設備(1,000MW×1 基)を考慮し、記載する。

発電所の建設計画は PLN が所有しているインドネシアのボジョネガラ地区とする。

この建設工程は、1,000MW×1 基の石炭火力発電所のみのものとする。

2) モデル発電所建設計画プロジェクトの事前準備手続き 本プロジェクトが実際に Pre-FS 終了後直ちに遂行されることになった場合、EPC 契約を締結

するまでの期間として、過去の実績から約 3 年間が必要であると考えられる。この 3 年間の事

前準備における各諸手続きとしては、次の工程表の通りである。

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6-48

表 6.2-25 プロジェクトの準備から EPC 契約までの工程表

項 概要 期間 その他 A. 1,000MW 石炭発電所開発に関する FS の了承 2012 年 12 月末まで

B. 1,000MW 石炭発電所FSの実施とインドネシア政府の

承認 2013 年 1 月初旬から

2013 年 10 月まで 10 ヶ月

C. EPC 用入札図書の作成とインドネシア政府の承認 2013 年 11 月初旬から

2014 年 11 月末まで 13 ヶ月

D. EPC の競争入札、評価及び契約 2014 年 12 月初旬から

2016 年 3 月末まで 14 ヶ月

出典:JICA 調査団作成

3) モデル発電所建設計画プロジェクトの建設工程 モデル発電所の建設期間は過去の実績から建設開始から商業運転開始までの 48 ヶ月間を想

定している。

併せて、送電線の建設に関しては、建設開始から 30 ヶ月を想定している。発電所の建設時に

おける受電までには、建設終了することとなっている。

表 6.2-26 建設工程

項 概要 期間 その他 A. 1,000MW 石炭発電所建設

2017 年から 2021 年末 48 ヶ月 (4 年間)

1. 建設用地準備工事 2. 土木・建築工事 3. 機械、電気及び各種設置工事 4. 試運転 5. 商業運転開始

B. 500kV 送電線建設工事 2017 年から 2020 年末までに完成

のこと 30 ヶ月

(2.5 年間) 出典:JICA 調査団作成

4) モデル発電所建設工事概要 モデル発電所の建設工事機関としては 48 ヶ月を想定しており、以下の通りである。

(a) 準備工事

モデル発電所建設予定用地を含む PLN の所有地面積は 173.3 ha であり、この所有地全てを

使用するものとする。

主な準備工事内容は次の通り:

整地(表土はつり及び埋め戻し)

海岸線の保護及び境界フェンスの建設

(b) 建設工事

準備工事が終了してから以下の工事内容にて実施する。

土木建築工事、ボイラ本体等の構築、タービン建屋構築、各種機械装置及び電気機器設置、

試運転、商業運転となる。

5) 500kV 送電線建設に係る入札及び契約 500kV 送電線の建設に係る入札及び契約については通常、発電所建設工事の EPC 入札及び契

約とは分離発注され、別途契約される。建設期間は、30 ヶ月を予定している。

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6-49

このことから、発電所側の建設工事に併せて建設を進めるが、発電所側の試運転開始前には

必ず完成していなければならない。

(7) 事業費、経済・財務分析

1) 事業費 JICA 調査団はインドネシアにおける IPP 案件等の情報を基に事業費を概算した。1 基建設お

よび 2 基建設(共に共通部分を含む)の概算結果は表 6.2-27 の通りである。尚、概算は以下の

仮定に基づいている。

3,700~4,300 kcal/kg の石炭を使用。

土地は PLN 所有のため、土地代は含まない。

公租公課は概算には含まれていない。

2 基のコストは同時建設(2 号機は 1 号機の半年遅れの工程)とした。

環境基準を遵守するための環境関連対策費(例:排水処理、防音対策、排ガス対策等 28)

は以下のコストに含まれているが、現時点で具体的に想定することが出来ない発電所の

敷地外における環境社会影響の緩和対策費は含まれていない。

表 6.2-27 事業費概算 (百万米ドル)

内訳 1 基 × 1,000MW

2 基 × 1,000MW

(A) 建設費(プラント) 1,548.9 2,788.0 (B) 建設費(送電線) 60.0 60.0 (C) 物価上昇 (A)& (B) i) 163.6 289.5 (D) 小計: 建設費 (A)~(C)の合計 1,772.4 3,137.5 (E) コンサルサービス 47.6 85.7 (F) 小計: (D)+(E) 1,820.0 3,223.2 (G) 予備費: (F)×5% 91.0 161.2 (H) 総事業費: (F)+(G) 1,911.0 3,384.4

i) ((A)+(B)) × (1.02454 – 1) : 建設開始まで 4 年かかると想定し、この 4 年間の間、2.45%/年で物価が上昇

すると仮定した。(2.45%は米国 CPI の過去 10 年平均) 出典:JICA 調査団作成

上記の事業費を基に財務分析および経済分析を行った。

2) 財務分析 本項ではモデル発電所建設の持続性、資金面での影響を確認するため、財務評価を行った。

そのため、以下のパラメーターを前提として、財務的内部収益率(FIRR)および正味現在価値

(NPV)を試算した。(表の(i)はケース 1(1 基+共通施設を建設)、(ii)はケース 2(2 基+共通施

設)を指している)

28 適用されている技術については 5.2 (3)の項を参照

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6-50

表 6.2-28 財務分析の前提条件 想定 メモ

初期投資 総事業費 (i) US$1,911.0 million

(ii) US$3,384.4 million 6.2 (7) 1)参照

O&M 費 O&M 費(発電所) (i) US$51.16mil/年

(ii) US$92.09mil/年 (i) US$7.30/MWh (ii) US$6.57/MWh

O&M 費(送電線) US$1.1mil/年

O&M 費 物価上昇率 4.41% US CPIの10年平均およびインドネシ

ア CPI の過去 5 年平均の加重平均(米

ドル建て費用とルピア建て費用は 50:50と想定)

燃料費 (i) US$400.72 mil/年 (ii) US$801.43 mil/年

US$57.18/MWh

燃料費 物価上昇率 5% 2008 年以降の ICI-4 上昇率の概数

出力 設備利用率 80%

所内率 8%

年間発電量 (i) 7,008GWh (ii) 14,016GWh

操業期間 30 年

売電 2017 年時点売電単価 US$0.089 2010 年時点のPLN売電単価 29を過去

の売電単価上昇率で調整 30 売電単価上昇率(2017 年

以降) 5.00% 2001 年からの年平均上昇率は 8.5%だ

が、昨今の政治状況を鑑み、2017 年以

降の上昇率はそれよりも低く仮定

資金調達 自己資金 (i) US$286.66 mil

(ii) US$507.66 mil 総事業費の 15%

融資 (i) US$1,757.41mil (ii) US$3,109.21 mil

返済期間 25 年

猶予期間 6 年

金利(年) 4.03% スワップレート 31 + 財務省へのマー

ジン(0.5%) 返済頻度 半年

コミットメント・フィー (未ディスバースメント

金額に対して)0.15%

減価償却 減価償却 20 年

残存価値 0%

償却方法 定額

公租公課 法人税 25%

出典:JICA 調査団作成

29 Rp. 699.09 (出典: PLN statistics 2010) 30 ((1+3.47%)^5)。3.47%は 2003 年以降の売電価格の年成長率 31 国際開発援助機関の金利(LIBOR 6 ヶ月+0.4%)を固定金利にスワップすると仮定。(2012 年 3 月時点レート)

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6-51

(a) ベースケース

表 6.2-28 を前提とした試算結果は以下の通りである。

表 6.2-29 財務分析ベースケース

(i) ケース1(1基+共通施設) (ii) ケース 2(2 基+共通施設)

Financial IRR 12.55% 13.84%

NPV (US$ million) 93.73 570.46

出典:JICA 調査団作成

なお、投資判断のハードルレートとしてはWACC(加重平均資本コスト)を基準にすること

が多い。例えば、PLN全体の 2011 年のWACCは 8.34%32である。しかし、2011 年を通じてLIBOR

がかなり低い水準であったことから、今後負債コストが上昇することも十分に考えられる。そ

のため、PLNが投資判断の基準としている 12%(PLN全体の負債コスト+インドネシアのイン

フレ率の概数)をハードルレートとした。その場合、表 6.2-27 を前提としたベースケースで

は、ケース 1 およびケース 2 のFIRRはハードルレートを上回る。NPVはこの 12%を割引率と

設定して算出している。

(b) 感度分析

売電単価、売電単価上昇率、建設費、燃料費上昇率による本モデル発電所の収益性に対す

る影響は以下の通りである。

2017 年まで売電単価は据え置かれると仮定すると、売電単価はUS$0.075/kWh33であり、こ

の場合、いずれのケースでもハードルレートを下回ることになる。

表 6.2-30 2017 年時点の売電単価による影響

($/kWh) (i) ケース 1(1 基+共通施設) (ii) ケース 2(2 基+共通施設)

FIRR NPV (US$ mil)

DSCR Min FIRR NPV

(US$ mil) DSCR Min

ベース 0.089 12.55% 93.73 1.52 13.84% 570.46 1.72

0.075 8.21% - 555.91 0.93 9.35% - 708.87 1.09

出典:JICA 調査団作成

さらに、ベースケースでは 2017 年以降、売電単価が 5%で上昇すると仮定しているが、こ

の上昇率が 2003 年以降の平均年上昇率(3.47%)程度でしか上昇しない場合、いずれのケー

スでも案件の収益率はハードルレートを大幅に下回る。

32 PLN からのヒアリング情報

33 Rp. 699.09 (出典:PLN statistics 2010)

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6-52

表 6.2-31 売電単価上昇率による影響

売電単価上昇率 (i) ケース 1(1 基+共通施設) (ii) ケース 2(2 基+共通施設)

FIRR NPV (US$ mil)

DSCR Min FIRR NPV

(US$ mil) DSCR Min

ベース 5.00% 12.55% 93.73 1.52 13.84% 570.46 1.72 CACR after 2003 3.47% 5.72% - 639.17 0.93 7.26% - 894.82 1.17

+1% 6.00% 15.31% 682.89 1.73 16.63% 1,748.79 1.95

出典:JICA 調査団作成

建設費の変動については、表 6.2-27 の事業費には 2016 年までの物価上昇率を織り込んでい

る。この物価上昇分が現時点の予想を下回った場合(例えば物価上昇分が現在の想定の 50%

程度で、その結果、建設費が 1)の額を下回った場合)、両ケースの FIRR は改善する。(下の

表では、「物価上昇分▲50%」および「物価上昇分▲100%」に該当)他方、総事業費がベース

ケースを 10%上回った場合、ケース 1 の FIRR はハードルレートを下回るが、ケース 2 であれ

ばハードルレート以上の FIRR を確保できる。

表 6.2-32 建設費の変動による影響(ケース 1) 総事業費

(mil US$) FIRR NPV (US$ mil)

DSCR Min

1,911.0(ベース) 12.55% 93.73 1.52 1,739.3(物価上昇分▲100%) 13.37% 215.89 1.65 1,825.2(物価上昇分▲50%) 12.95% 155.01 1.58 2,006.6(総事業費 5%増) 12.15% 25.57 1.46 2,102.2(総事業費 10%増) 11.77% - 42.03 1.41

出典:JICA 調査団作成

表 6.2-33 建設費の変動による影響(ケース 2) 総事業費 (mil US$) FIRR NPV

(US$ mil) DSCR Min

3384.4(ベース) 13.84% 570.46 1.72 3,080.4(物価上昇分▲100%) 14.72% 785.80 1.86 3,232.4(物価上昇分▲50%) 14.26% 678.14 1.79

3,553.6(5%増) 13.40% 450.68 1.65

3,722.8(10%増) 13.00% 330.92 1.59

出典:JICA 調査団作成

さらに、以下のシナリオでは燃料費の上昇率が収益性に与える影響を試算した。ベースケ

ースでは燃料費の上昇率と売電単価の上昇率は同水準であるが、燃料費の上昇率が売電単価の

上昇率を 1%上回った場合、ケース 1 の FIRR はハードルレートを下回る。他方、これが売電

単価の上昇率を 1%下回った場合には収益性は向上する。

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6-53

表 6.2-34 燃料費上昇率による影響

燃料費上昇率 (i) ケース 1(1 基+共通施設) (ii) ケース 2(2 基+共通施設)

FIRR NPV

(US$ mil) DSCR Min FIRR

NPV (US$ mil)

DSCR Min

ベース 5.00% 12.55% 93.73 1.52 13.84% 570.46 1.72

-1% 4.00% 13.62% 299.65 1.56 14.89% 982.29 1.76

1% 6.00% 11.02% - 144.38 1.48 12.35% 94.23 1.67

出典:JICA 調査団作成

(c) 財務分析まとめ

ケース 1 およびケース 2 のベースケースでは、PLN が投資判断基準に用いている 12%をハ

ードルレートとすると、FIRR はハードルレートを超える。他方、ケース 1 よりもケース 2 の

方が(つまり、1 基よりも 2 基建設)、本モデル発電所の FIRR はベースケースで 1%以上高く、

収益性を確保することが容易である。但し、感度分析で示されたように、この収益性を確保す

るには、従来のインドネシア政府の政策通り、売電収入が少なくとも燃料費の上昇と同じペー

スで引き上げられることが前提である。(現在の法律では PLN の供給コストにマージンを加え

た額とエンドユーザーから徴収した収入を引いた額との差分は政府から補助金が供与される

ため、実質的に燃料費が増加しても売電収入でカバーされる。)

総事業費の変動も本モデル発電所の収益性に影響を与える。例えば、総事業費のうち現時

点で想定している物価上昇分が予想を下回り、総事業費が安くなった場合、両ケースの FIRR

は改善する(例えば物価上昇率が想定の 50%だった場合)。他方、総事業費がベースケースを

10%上回った場合、ケース 1 はハードルレートを下回るものの、ケース 2 であれば FIRR はハ

ードルレートを上回る。このように、2 基建設の場合には、これらの前提条件の変化があった

としても、1 基のみの場合よりも収益性を確保することが容易である。

3) 経済分析 本項ではモデル発電所建設による影響を評価するため費用便益分析を行い、経済的内部収益

率(Economic IRR)および正味現在価値(NPV)を試算した。尚、費用便益分析にあたり、前

提条件は基本的に財務分析と同じ条件を用いた上で、非貿易財に対するシャドー為替レートに

対する補正等を行い、経済価格に変換している。今回前提としている超々臨界圧プラントでは

現在普及している亜臨界圧プラントに比べると効率の向上により(他の条件が一定であると仮

定すると)石炭の使用量が減るため環境への負荷は減少する。しかしながら、環境影響物質の

排出はゼロではないため、近隣地域および広範囲地域への環境への影響も評価に組み込むため、

可能な範囲でこれらの地域に対する外部費用を入れて試算した。具体的には、(i)SO2、NOx、TSP

(総浮遊粒子)、(ii)CO2 排出による影響である。(試算結果では(i)の影響を「近隣への外部性考

慮」、(ii)の影響を「広範囲への外部性考慮」としている。)(i)の金額換算には、世界銀行、BATAN

(インドネシア原子力庁)の調査による kWh あたりの外部費用単価、(ii)には EU ETS の CER

価格の過去 3 カ月平均を用いた。

他方、便益としては、企業によるディーゼル自家発電からPLNからの(追加)電力購入への

移行も便益の一つと考えられる。現在PLNからの電力供給が追い付かない際に企業はディーゼ

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6-54

ルの自家発電等で必要な電力をまかなっているが、この発電コスト(4,315.43Rp./kWh34)はPLN

からの電力料金よりも高い。本モデル発電所によりPLNの供給能力が拡張されれば、企業は割

高なディーゼルによる自家発電からPLNからの買電への移行が期待できる。しかしながら、本

モデル発電所導入に伴い自家発電からPLN購入に移行する電力量を推定することは困難である

ことから、現行のPLNの平均発電コストを便益の単価のベースにした。つまり、ディーゼル発

電による発電コストは電力料金を大幅に上回るけれども、今回の分析ではこの発電コストは用

いず、便益を保守的に見積もっている。よって、便益の単価は送配電も含めた平均供給コスト

(979Rp./kWh35)を政府補助金供与前の電力料金として、本モデル発電所建設による便益を定

量化した。以上を前提とした試算結果は以下の通りである。

(a) ベースケース

表 6.2-35 経済分析ベースケース

ケース 1(1 基+共通部分) ケース 2(2 基+共通部分)

Economic IRR (%)

NPV (mil US$)

Economic IRR (%)

NPV (mil US$)

外部性考慮なし 18.59% 1,343 20.77% 3,066

近隣への外部性考慮の場合 16.48% 976 18.50% 2,333

近隣・広範囲への外部性考慮の場合 15.20% 765 17.13% 1,911

NPV: 10%割引率を使用 出典:JICA 調査団作成

開発援助機関は 10-12%を経済分析の際のハードルレートとすることが多いが、ベースケー

スではケース 1、ケース 2 のいずれの場合も 12%を超えている。さらに、前述の通り便益の単

価を保守的に見積もっていることから、この便益部分も考慮すると Economic IRR はさらに高

いと考えられ、本モデル発電所建設はいずれのケースの場合にも国民経済上の経済合理性があ

ると評価できる。

(b) 感度分析

ベースケースでは現時点で考えられる想定で Economic IRR および NPV を試算した。しか

し、将来的には経済価格ベースで想定と乖離する可能性もある。そのため、建設費、燃料費の

経済価値の変動が Economic IRR および NPV に与える影響について試算した。それぞれの結果

は以下の通りである。

34 PLN の場合のディーゼル発電コスト(PLN statistics 2010) 35 PLN Investor update 2010 H1 および PLN statistics 2010 より調査団試算

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表 6.2-36 建設費の変動(10%上昇)

ケース 1(1 基+共通部分) ケース 2(2 基+共通部分)

Economic IRR (%)

NPV (mil US$)

Economic IRR (%)

NPV (mil US$)

外部性考慮なし 17.20% 1,208 19.25% 2,828

近隣への外部性考慮の場合 15.20% 841 17.11% 2,094

近隣・広範囲への外部性考慮の場合 13.98% 630 15.81% 1,672

出典:JICA 調査団作成

経済費用ベースで建設費が 10%上昇した場合でも、両ケースにおいて近隣・広範囲への外

部性を考慮しても Economic IRR はハードルレートを上回る。ハードルレートを割り込むのは、

建設費がケース 1 では約 29%、ケース 2 では約 49%以上、ベースケースに比べて増加した場

合である。

表 6.2-37 燃料費の変動(5%上昇)

ケース 1(1 基+共通部分) ケース 2(2 基+共通部分)

Economic IRR (%)

NPV (mil US$)

Economic IRR (%)

NPV (mil US$)

外部性考慮なし 18.23% 1,278 20.38% 2,937

近隣への外部性考慮の場合 16.09% 912 18.09% 2,204

近隣・広範囲への外部性考慮の場合 14.80% 700 16.70% 1,782

出典:JICA 調査団作成

経済費用ベースで燃料費が 5%上昇した場合でも、いずれのケースにおいても Economic IRR

はハードルレートを上回る。ハードルレートを割り込むのは、ベースケースに比べて、ケース

1 では約 37%、ケース 2 では約 55%以上増加した場合である。

(c) 経済分析まとめ

財務分析ではケース 1 はケース 2 に比べ、収益性が見劣りするものの、Economic IRR では

ハードルレートを上回り、ケース 1 でも国家経済の観点からはモデル発電所の建設に経済合理

性があるものと考えられる。さらに、建設費・燃料費等の変動に対しても一定の耐性があり、

経済合理性を確保できる。ケース 2 の Economic IRR はケース 1 よりも高く、社会に与えるネ

ットでの便益がケース 1 よりもさらに高いと考えられる。

4) ファイナンシャル・スキーム 今のところ、本モデル発電所は PLN が自身の案件として実施することを考えている。この場

合、資金調達先について検討する必要がある。PLN は商業銀行や債券の発行等、商業ベースで

も一定程度の資金調達をする能力がある。例えば、2011 年 12 月には 10 年債で 2000 百万米ド

ルを調達しており、クーポンは 5.5%であった。しかしながら、開発援助機関からの資金調達は

金利、返済期間の面で優遇されている。そのため、本モデル発電所のような大型案件では、PLN

にとっては開発援助機関から資金調達することが有利である。(例えば、国際開発銀行では

LIBOR+0.4%の融資がある。)

上記 2)の財務分析で検討した通り、1 基分のみよりも 2 基を建設する方が共通施設の費用を

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6-56

共同で負担できるため資金面では合理的である。他方、PLN 自身でプロジェクトコストを全額

資金調達できるかどうかは不透明である。(共通施設を含む 2 基分のプロジェクトコストは

3,384.4 百万米ドル)ただし、1 基目および共通施設は PLN 自身が建設し、2 基目は IPP によっ

て建設すれば、当初設備投資による資金調達の負担を軽減できる。または、2 基目も PLN が建

設すると仮定するのであれば、2 基目の建設を数年後に遅らせることも一案だが、その場合、

建設人員数、工事機材数、間接人件費等が 1 および 2 号同時建設より不利になるため建設単価

(kW 単価)は定性的に増える方向となる。ただし、単純に新設でなく拡張工事であることから 1

および 2 号共通部分の費用の節約になり、また、1 号機と同じ設備仕様にすることでプロジェ

クトコストを引き下げることは可能である。

(8) FS 実施時への提言

本 Pre-FS 実施を実施したことにより、判明したいくつかの事項について、次段階の業務であ

る FS 実施時に以下の事項について詳細検討することを提言する。

1) 本プロジェクトにおいて使用が予定されている主要燃料である低品位炭(LRC)は、自然発

火性があり、発火した場合、環境影響等が懸念される。よって、発火防止対策及び消火

設備等について、詳細に検討すること。 2) 発電所建設予定地であるボジョネガラ地区には、マングローブ等の植生があることから、

EIA において詳細調査の上、緩和策についても詳細検討すること。 3) 発電所建設予定地の準備工事において土盛り等が必要な場合、土盛り材や石材等の確保

に関して調査を実施し、EIA にて記載すること。 4) 揚炭岸壁、受け入れコンベア等の建設に関して、

a) 浚渫・海洋土砂投棄をする検討する場合、サンゴ礁、マングローブ林、海洋底部を含む沿

岸域と海洋の生態系に対する影響について EIA において詳細調査検討すること。

b) 計画予定地近隣の漁業活動に対する影響について EIA において詳細調査検討すること。

c) 海上交通、特に近隣の大型港への船舶の航行への影響等については詳細検討すること。

5) 建設予定地及び数編海域等の動植物などの生態系の詳細調査を実施し、EIA に記載する

こと。 6) 発電所からの排煙・排水による影響についてシミュレーション等を実施し、その影響度

合いを EIA に記載すること。 7) 石炭灰の灰捨て場に関して、構造については管理型とし、且つ自然災害においても漏出

等が発生しない等の検討、対策を実施すること。

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6-57

6.3 その他の開発候補地点

インドネシア国では、石炭火力発電所の開発促進が政策的に進められているが 2020 年以降の新

規候補地点が少なく、さらには今後の電力需要の増大が着実に見込まれるジャカルタ周辺での新

規開発が望まれている。そこで、本調査では図 6.3-1 に示すジャカルタから 100 km 以内圏内を対

象地域として、3 箇所程度の新規開発候補地点を選定・抽出した。調査は、ローカルコンサルタ

ントとの再委託手続きも含め、2011 年 11 月から 2012 年 2 月までの工期で進め、現地出張は 2011

年 12 月と 2012 年 1 月~2 月の 2 回に亘り実施した。

図 6.3-1 開発候補地点選定範囲

出典:JICA 調査団作成

(1) 合同調査チームの編成

調査は,JICA調査団およびカウンターパート等を含む合同調査チームを編成して進めた。合

同調査チームは次の組織で構成された。

エネルギー鉱物資源省(MEMR)電力総局(DGE)

環境省(MOE)

PT. PLN (Persero)(国有電力会社)

JICA 調査団(JICA Study Team)

現地再委託調査会社(LC Team, PT. INDOKOEI INTERNATIONAL)

(2) 候補地域のゾーニング

初めに、1/25,000 の地形図、海図、自然社会環境を示す図書類を基に、土地利用状況および

土地取得の難易度、人口分布状況、環境社会配慮等の簡易調査を実施した。また、合同調査チ

ームで、立地に適した地点を絞り込むための対象地域を比較・検討した結果、図 6.3-2 に示す 3

箇所のゾーニング範囲を選定し、この地域内でさらに詳細調査を進めることにした。なお、送

電計画策定方針も PT. PLN および P3B と確認した。

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)

ファイナルレポート

6-58

図 6.3-2 ゾーニング範囲の設定

出典:JICA 調査団作成

(3) ゾーニングした地域内の詳細調査実施

合同調査チーム検討会において、3 箇所にゾーニングした地域から現地踏査対象地区(1,000 ha 程度)を選定するため、詳細な各種文献調査データ等を基に、下記の 1)~7)に示す観点から

対象地区を比較・検討した。 1) 陸域および海域地形、陸域および海域の利用形態、土地取得の難易度、周辺住民の居住

環境 2) 地域開発計画の有無、周辺地域の産業、周辺のインフラの整備状況 3) 地域開発に関する地方の法令・規制類、環境保護地区など設定状況 4) 陸域および海域の地盤、海域の水深、海域の自然環境条件、漁業の実態 5) 周辺の水源地、工業用水の状況 6) 既設送電線の容量、増設送電線ルートの確保 7) 石炭の輸送経路、輸送形態、実績等

(4) 現地踏査対象地区

合同調査チーム検討会において、下記の 5 地区を詳細調査対象として絞り込んだ。さらに、

この地区から最終的な候補地点(150 ha~300 ha)を選定・抽出するため、合同現地踏査を実施

した。なお、必要に応じて地域の行政機関等への訪問調査も行った。

1) ゾーニングエリア 1 の対象地区: セラン県 A 地区

2) ゾーニングエリア 2 の対象地区: セラン県 B 地区

タンゲラン県 C 地区

3) ゾーニングエリア 3 の対象地区: カラワン県 D 地区

Zoning Area-1 Zoning Area-3 Zoning Area-2

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インドネシア国クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト(高効率石炭火力発電設備導入促進)

ファイナルレポート

6-59

カワラン県 E 地区

(5) 新規石炭火力発電所候補地点の選定および抽出 合同現地踏査および法規制等の情報確認に基づき、合同調査チーム検討会において 5 箇所の

対象地区で選定・抽出された候補地点の優劣を総合的に比較・検討した結果、石炭火力立地に

適した候補地点(150 ha~300 ha)として、3 箇所を第 1 優先候補地点とした。また、残りの 2

箇所は立地環境条件を考慮した場合に不確定要素があることから、第 2 優先候補地点として順

位を下げることにした。

なお、送電線容量は、2025 年断面の電力需要想定と候補地点を反映した電源開発計画に基づ

いて検討した。