サルコペニアとリハビリテーション栄養
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桜十字病院 医師 吉村芳弘
【はじめに】
リハビリテーションにおいて,筋力増強,ADL 向上をめざすことは重要な課題である。積極的な機能訓練
を行って十分な訓練効果を出すためには、栄養状態が良好で栄養管理が適切であることが必要条件であ
る。2010年の診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟に入院中の患者に対して、より積極的
な機能訓練を行うための2つの加算が新設された(休日リハ提供体制加算、リハ充実加算)。栄養状態が良
好で栄養管理が適切であれば、積極的なリハビリにより訓練効果がより高まることが期待できる。しかし、回
復期リハ病棟の入院患者は低栄養を認めることが多く、低栄養の患者では積極的なリハビリではかえって
栄養状態の悪化や体力、筋力の低下をもたらす可能性がある。
また、高齢者のリハビリにおいては、サルコペニアの適切な診断と対応が、リハビリ効率に大きく影響する
と思われる。サルコペニアの原因としては、①加齢、②活動、③疾患、④栄養、に大きく分類される。これら
の原因に対して多職種によるリハビリチームで個別に適切に対応することが、回復期リハビリテーションの
帰結としての患者の筋力や身体機能、ADLなどの改善につながると強く期待される。
筋肉を構成している必須アミノ酸の約3~4割がBCAA(分岐鎖アミノ酸;Branched-chain amino acid)である。
BCAAは主に骨格筋で代謝を受ける。筋肉において比率の高いBCAAをリハビリと併用することで、筋蛋白
の合成促進、分解抑制に大きく寄与する可能性が健常人を対象とした臨床研究で示されている。また運動
によりタンパク質合成が増大するのは運動終了直後からであり、運動直後にBCAA等のアミノ酸/タンパク
質を摂取することにより、筋蛋白同化の効率が上昇することが考えられる。またBCAAは筋蛋白分解を抑制
する効果や、その結果としての運動後筋肉痛を抑制する効果も示されている。
BCAAは2g以上摂取すると2時間経過後も血中濃度が高く維持されることが報告されている。BCAAを2g
摂取するためには牛肉で70g以上摂取する必要がある。このためサプリメントとしてBCAA含有の栄養剤をリ
ハビリの直後に摂取する意義はあるものと考えられる。
また骨粗鬆症の治療として用いられるビタミンDを低ビタミンD血症の高齢者に投与することで運動能力の
向上と転倒リスク低下を認めたという報告がある。
(参考資料) 高齢者の栄養評価の指標
1.身体計測指標
a) 身体組成; 身長、体重、理想体重比(%Ideal Body Weight; %IBW)、体重減少率
b) 脂肪量; BMI(Body Mass Index)
上腕三頭筋部皮下脂肪厚(TSF; Triceps Skinfold Thickness)
c) 筋蛋白量; 上腕周囲長(AC; Arm Circumference)
上腕筋囲(AMC; Arm Muscle Circumference)
上腕筋面積(AMA; Arm Muscle Area)
下腿周囲長(CC; Calf Circumference)
AMC(cm) = AC(cm) – 3.14×TSF(cm) AMA(cm²) = ( AC(cm) – 3.14×TSF(cm) )² ÷(4×3.14)
2. 血液生化学検査
a) 蛋白合成能; Alb、T-cho(総コレステロール)、Ch-E(コリンエステラーゼ)、
b) 貧血; Hb
c) 免疫能; TLC(総リンパ球数)
d) 腎機能; BUN、Cr
e) 炎症反応; CRP
f) 微量元素; Zn(亜鉛)、Cu(銅)
3. スクリーニングツール
a) MNA® (Mini Nutritional Assessment)