新しい出版権への契約実務対応

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著作権入門セミナー 「新しい出版権への契約実務対応」 2014.10.23 日本電子出版協会

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Page 1: 新しい出版権への契約実務対応

日本電子出版協会セミナー

2014年10月

弁護士 村瀬 拓男

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新しい出版権への契約実務対応―― 書協新ヒナ型の解説を通して――

Page 2: 新しい出版権への契約実務対応

出版契約書「ヒナ型1~3」の使い分けのポイント

•  紙媒体出版および電子出版について出版の予定があり、いずれも具体的な計画がある場合    → 【ヒナ型1】 出版契約書

•  紙媒体出版および電子出版について出版の予定はあるが、紙または電子の一方にだけ具体的な計画がある場合       → 【ヒナ型1】 出版契約書

•  紙媒体出版のみ出版の予定がある場合  → 【ヒナ型2】 出版契約書(紙媒体)

•  電子出版(配信型)のみ出版の予定がある場合 →  【ヒナ型3】 出版契約書(電子配信)

 ※あくまでも「ヒナ型」であり、いずれも各社自由に内容の書き換えが可能  (ヒナ型の「別掲」部分については、各社で取捨選択が必要な箇所もあり)  

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Page 3: 新しい出版権への契約実務対応

出版契約書(ヒナ型1)と改正出版権規定

第1条 出版権の設定 第1項 権利設定の表明 第2項 権利内容を第2条で定めること 第3項 登録(著作権者は登録義務者となる)

◇ 法79条(出版権の設定)→権利設定者及び出版権者を規定する(登録は法88条)

 設定権者 法21条又は法23条1項に規定する権利を有する者        (「複製権等保有者」) 出版権者たりうる者  ①「出版行為」   又は  ②「公衆送信行為」 を引き受ける者

「出版行為」=文書若しくは図画として出版すること電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録し、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物により頒布することを含む→パッケージ型電子出版

「公衆送信行為」=(複製物を用いて)公衆送信を行うことこの複製物とは、電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された、その著作物の複製物

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Page 4: 新しい出版権への契約実務対応

第2条 出版権の内容 第1項 ①→1号出版権に対応      ②→1号出版権に対応      ③→2号出版権に対応

◇ 法80条(出版権の内容)→どのような権利を設定できるのか 1項1号 頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又

は図画として複製する権利→(1号出版権)原作のまま法79条1項に規定する方式により記録媒体に記録された電磁的記録として

複製する権利を含む2号 原作のまま法79条1項に規定する方式により記録媒体に記録された当該著作物の

複製物を用いて公衆送信を行う権利→(2号出版権)

「専有する」→「独占的」な出版契約に対して出版権が設定できる。「一部を専有」→「独占的」ということが意味を持つ範囲で設定できる。

注意 出版の態様を制限する記載は、出版権の範囲を限定してしまうおそれを生じさせる。 印税支払いや出版期日の設定部分の書き方に注意。

 第2項 電子出版で必要となる権利の拡張

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Page 5: 新しい出版権への契約実務対応

第2条 出版権の内容 第3項 出版権者による再許諾

◇ 法80条3項→無条件禁止を条件付OKとした出版権者は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、複製又は公衆送信を他人に対し、許諾することができる

電子出版で、出版社が配信事業者に対して、利用者への配信を許諾することは、通常「公衆送信権の再許諾」となり、再許諾を行う契約も出版権が設定できる契約となることを確認するために改正が行われた。

これまでの実務では、いわゆる二次出版を、「出版権の再許諾」という構成を採らずに行っていた。→法改正により再許諾形式をとることは可能だと考えられるが、契約にあたっては十分な注意が必要。

◇ 法80条4項→再許諾の権利内容   (著作物の利用許諾条項である法63条を準用)      再許諾を受けた者は、出版権者が設定された範囲内でのみ出版権を行使できる。   再許諾の権限は、出版権者の承諾なく譲渡できない。   

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Page 6: 新しい出版権への契約実務対応

第3条 著作権者の利用制限 第1項 出版社が権利を専有することを著者から見た制約 第2項 機関リポジトリ等への対応条項 第3項 個人全集・選集への収録対応  法80条2項の、「出版から3年」を「出版権設定期間中」へ修正  ◇ 法80条2項 著者死亡  又は 最初の出版行為等の後3年(契約で排除可能)

 個人全集等の複製・公衆送信を複製権等保有者は行うことができる。

 疑問 電子出版の個人全集・選集が意味するものは何か?

第4条 著作物利用料の支払い 第1項 別掲に詳細を記入(一部取捨選択の必要あり) 第2項 宣伝・業務利用の印税免除、電子的利用も含む

第5条 本出版物の利用 第1項 版面やデータの再利用は出版社の許諾が必要 第2項 著者の権利を制約しない旨の確認

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Page 7: 新しい出版権への契約実務対応

第6条 権利処理の委任 第1項 紙媒体出版物の複製と貸与が対象 第2項 著作権管理事業法登録管理団体への委託承諾

第7条 著作者人格権の尊重

第8条 発行の期日と方法 第1項 発行期日の設定      法の「6カ月」を修正可能、期日未定部分があっても許容されると考えられる。      出版可否判断の決定権は出版社にある旨の確認 第2項 出版物の制作・宣伝等の決定権が出版社にある旨の確認

◇ 法81条(出版の義務) 任意規定であることが明示されている→現行法と同じ

 1号出版権について イ 複製のために必要な原稿等を受領後6カ月以内に出版行為 ロ 慣行に従い、継続出版行為義務 2号出版権について イ 公衆送信のために必要な原稿等を受領後6カ月以内に公衆送信行為 ロ 慣行に従い、継続公衆送信義務

 継続出版義務は「慣行」のため、契約内容からはずした。法がそのまま適用される。

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Page 8: 新しい出版権への契約実務対応

第9条 贈呈部数 第1項 部数 第2項 著者直売     紙媒体出版物のルールを、電子出版、オンデマンド出版には適用できないため、     協議事項とした。電子出版物にはDRMの問題もある。

第10条 増刷の決定および通知義務等 第1項 著作者及び著作権者への通知(法82条2項、著作権者も対象) 第2項 修正増減への対応(法82条1項、著作権者との協議事項とした) 第3項 オンデマンド出版、電子出版を協議事項とすること      1号出版権には法82条2項の通知義務あるため

◇ 法82条(著作物の修正増減) 1項 「正当な範囲内」での修正又は増減

 1号出版権  改めて複製する場合           →オンデマンドはどう考えるのか?           →「正当な範囲内」で調整 2号出版権  公衆送信を行う場合           →通常、自動公衆送信なので、この場合とは何を意味するのか?           →サーバーにある場合と読むしかない。「正当な範囲内」で調整  2項(通知義務) 著作者のみ(死亡時は不要)  1号出版権の場合のみ、現行法通り 8

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第11条 改訂版・増補版の発行      協議事項とした。改訂版・増補版については新たな契約書作成となる。

第12条 契約の有効期間      自由記入、自動継続条項付き      記入により、法83条の適用が排除される。

◇ 法83条(出版権の存続期間) 任意規定であることを明示→現行法と同じ 最初の出版行為又は公衆送信行為から3年

第13条 契約終了後の頒布 第1項 紙媒体について 印税支払いを条件として在庫分 第2項 電子書店の再ダウンロードに期限の定めなく対応

第14条 締結についての保証

第15条 内容についての保証 第1項 権利侵害がないこと、他者に出版権等を設定していないこと 第2項 対応の責任は著作権者にあること

第16条 二次的利用      出版社に窓口を委託する→個別条件は別途協議となる。

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第17条 権利義務の譲渡禁止      仮に著作権者が移転しても、登録した出版権者は出版権を主張できる。

第18条 不可抗力の場合の措置

第19条 契約の解除      契約の解除に関する民法の一般規定が適用される。      法84条の消滅請求も出版契約の解除となる。1項は債務不履行解除と同じ。      出版権独特の法定解除条項は2項及び3項となる。

◇ 法84条(出版権の消滅請求) 基本的に現行法と同じ 1号出版権と2号出版権は可分 1項 出版義務違反 2項 継続出版義務違反(3ヵ月以上の催告期間) 3項 廃絶請求→これは理屈上両方か?

第20条 秘密保持

第21条 個人情報の取扱い 第1項 個人情報については個人情報保護法の趣旨に従う。 第2項 出版権設定情報を含む出版に必要な情報は出版社の判断で利用・提供可      ただし、著作者個人の経歴・写真の扱いは協議事項

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第22条 契約内容の変更      書面による変更のみ有効

第23条 契約の尊重      誠実義務

第24条 著作権等の侵害に対する対応      盗作等の著作権侵害      海賊版等の出版権侵害、著作権侵害      これらについては、その態様や効果的な対策について協議事項とする

第25条 特約条項 

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Page 12: 新しい出版権への契約実務対応

法施行(平成27年1月1日)前の契約の効力

附則3条により、「従前の例による」とされ、現行規定が適用される。

① 法施行前に成立した出版権設定契約  →そのまま有効  →電子出版(ROM出版を含む)についての契約部分は出版権設定契約に転化しない。  (③と同様に、別途の覚書または再契約が必要)

② 法施行前に成立した独占的著作物利用契約(紙の本について)  →独占的著作物利用契約としてそのまま有効  →出版権設定契約には転化しない(別途の覚書または再契約が必要)

③法施行前に成立した独占的電子出版契約  →独占的電子出版契約としてそのまま有効  →2号出版権設定契約には転化しない(別途の覚書または再契約が必要)

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