ニセモノ創り実験工房

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SFC [email protected] http://twitter.com/ks91020 http://www.facebook.com/ks91media 2014 1 20 ( ) – p.1/31

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SFC での当面の最後の授業を勝手に記念して、科目「モノ創り実験工房」の時間を使って「ニセモノ創り実験工房」というタイトルの特別講義をしました。そのスライドです。おカネとビットコインとおカネの要らない世界についての話をしています。

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Page 1: ニセモノ創り実験工房

「ニセモノ創り実験工房」慶應義塾大学 SFC「モノ創り実験工房」特別講義

大学院政策・メディア研究科特任講師斉藤賢爾

[email protected]

http://twitter.com/ks91020 http://www.facebook.com/ks91media

2014 年 1 月 20 日 (改稿)

「ニセモノ創り実験工房」 – p.1/31

Page 2: ニセモノ創り実験工房

ところでお前は誰だっけ斉藤賢爾慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師http://twitter.com/ks91020 http://www.facebook.com/ks91media

経歴1988∼1996日立ソフトウェアエンジニアリング (株)小型通信端末のオペレーティングシステムの開発・応用 ((C/µI)TRON)

1992∼1993コーネル大学大学院計算機科学科 (M.Eng)実時間システムの研究

1997∼2002 Geoworks, Ltd.小型通信端末のソフトウェア開発のサポート (µITRON)

2000∼2005慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 (博士課程、助手)

2006∼2009慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構2009∼2014慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科村井研究室所属P2Pとかソーシャルメディアな研究

今日が当面 SFCで最後の授業「ニセモノ創り実験工房」 – p.2/31

Page 3: ニセモノ創り実験工房

あまり気づかれないニセモノの物語

「ニセモノ創り実験工房」 – p.3/31

Page 4: ニセモノ創り実験工房

これは、なに?

「ニセモノ創り実験工房」 – p.4/31

Page 5: ニセモノ創り実験工房

では、これは?

「ニセモノ創り実験工房」 – p.5/31

Page 6: ニセモノ創り実験工房

ニセモノってなんだろう?その

し しゃも柳葉魚はホンモノ?

その○○はホンモノ?

カペリンはし しゃも柳葉魚の代用品

おカネは○○の代用品

ずっと代用品で過ごすことを通して、それがホンモノのような気がしていて . . .

ホンモノと触れたとき、むしろ違和感がある

「ニセモノ創り実験工房」 – p.6/31

Page 7: ニセモノ創り実験工房

おカネは信用・信頼の代用品「. . .貨幣がなければ、信頼関係なんかあったって、駄目だという考えは、もっと間違っています。貨幣はそもそも信頼関係の代替物に過ぎないので、信頼関係があったら、貨幣がなくともなんとかなります。このことを銘記しておいてください」

—安冨歩「生きる技法」p.91

「ニセモノ創り実験工房」 – p.7/31

Page 8: ニセモノ創り実験工房

なぜ、おカネは使えるのか

おカネでモノが買えるのは、おカネでモノが買えると人々が信じているからその信念が法律によって支えられることもある

「ニセモノ創り実験工房」 – p.8/31

Page 9: ニセモノ創り実験工房

おカネはニセモノだ

A

ホテルのフロントに勤めるAdam を θ が訪れ、24時間預かってほしいと 100ドル紙幣を置いていった

「ニセモノ創り実験工房」 – p.9/31

Page 10: ニセモノ創り実験工房

おカネはニセモノだ

AABZ

Adamは Bobに 100ドルの借金があったAdamは Zoeに 100ドル貸していたAdamは考えた . . .

「これで返しちゃえば?」

「ニセモノ創り実験工房」 – p.9/31

Page 11: ニセモノ創り実験工房

おカネはニセモノだ

AB

C

D

ZAdamは Bobに 100ドル返し、Bobは Caroleに 100ドル返し、...

めぐりめぐってZoe は Adam に 100ドル返した

「ニセモノ創り実験工房」 – p.9/31

Page 12: ニセモノ創り実験工房

おカネはニセモノだ

AB

D

Z

24時間後、Adamのもとにふたたび θ が現れたAdamは θ に 100ドル紙幣を渡した一件落着に見えたが . . .

「ニセモノ創り実験工房」 – p.9/31

Page 13: ニセモノ創り実験工房

おカネはニセモノだ

AB

D

Z

θ は「あなたがこのお札を使わなくてよかった!」と言って紙幣に火をつけて燃やした「ニセ札だったんですよ、それを確かめに行ってたんです」と付け加えて . . .

「ニセモノ創り実験工房」 – p.9/31

Page 14: ニセモノ創り実験工房

なぜニセ札なのに役立ったかそもそも、すべてのおカネはニセモノだから日本銀行券も同じ仕組みで作られているお札が日本銀行に戻ってくると溶かされてリサイクルされる

おカネは不思議だし、謎だ物理的というより、仮想的な存在日本銀行券も不思議な通貨であり、謎の通貨ついでに言うとマネーロンダリングに使えたり、違法なモノを買うのにも使える

「ニセモノ創り実験工房」 – p.10/31

Page 15: ニセモノ創り実験工房

ニセモノが世界を支配するおカネの問題なデザイン

1. 額面上いつまでも同じ価値であること2. 希少であること3. 利子がつくこと

⇒ これらすべてが問題1により他の商品に対して絶対的な優位性を持つ2が 3に繋がり、必ず経済の敗者が生まれる敗者は増えつづける

さらに . . .

変動相場制により一瞬で富が失われたりして大変迷惑

「ニセモノ創り実験工房」 – p.11/31

Page 16: ニセモノ創り実験工房

We are the 99%!

「ニセモノ創り実験工房」 – p.12/31

Page 17: ニセモノ創り実験工房

ビットコインの物語

「ニセモノ創り実験工房」 – p.13/31

Page 18: ニセモノ創り実験工房

郵便の電子化 vs. おカネの電子化日本郵便の電子系郵便サービスレタックス (電子郵便)

http://www.post.japanpost.jp/service/letax/index.html

電子内容証明郵便サービスhttp://enaiyo.post.japanpost.jp/mpt/

これらが「電子メール」だと言われたら?自分で「ポストオフィス」を立てられない従量課金されるし手続きが煩雑

現在の「電子マネー」のレベルとは?自分で「バンク」を立てられない(中央)銀行の手のひらから逃れていない

「ニセモノ創り実験工房」 – p.14/31

Page 19: ニセモノ創り実験工房

ビットコインとは何か「必要なのは、信用ではなく暗号学的証明にもとづいた電子的支払いシステムである」

Satoshi Nakamoto, “Bitcoin: A Peer-to-PeerElectronic Cash System”, 2009

その信念にもとづいて開発された P2Pデジタル通貨http://bitcoin.org/

http://www.bitcoin.co.jp

単位は BTC

商品として売買されている2013年 11月末、1BTCの価格が 10万円を超え、騒ぎに

「ニセモノ創り実験工房」 – p.15/31

Page 20: ニセモノ創り実験工房

BTC-日本円の相場の変動

「ニセモノ創り実験工房」 – p.16/31

Page 21: ニセモノ創り実験工房

ビットコインをめぐる言説「仮想通貨」「謎の通貨」「不思議な通貨」「マネーロンダリング/違法な売買に使用」「暴落の危険性」

⇒ 日本銀行券って知ってますか?

「ニセモノ創り実験工房」 – p.17/31

Page 22: ニセモノ創り実験工房

電子コイン

コインをデジタル署名のチェイン連 鎖として表現する

ダブル二重

スペンディング消 費を避ける仕組みは?

「ニセモノ創り実験工房」 – p.18/31

Page 23: ニセモノ創り実験工房

ブロックチェインとマイニング

POW (Proof Of Work)による偽造防止ブロック内の最初の取引は新しい BTCの誕生 (今は 25BTC)

「ニセモノ創り実験工房」 – p.19/31

Page 24: ニセモノ創り実験工房

ビットコインとき ん

金2100万BTC以上はつくられないマイニングは 10分に 1回の割合に調整されるマイニングで得られる BTCは 4年毎に半分に(2009年に 50BTCでスタート)2140年までに 2100万BTCに到達

ビットコインの経済圏が拡大する (いろんなモノが買えるようになる) なら、1BTCあたりの価値は必ず上昇する

⇒ デフレーションが組み込まれている

鉱物資源を模している

「ニセモノ創り実験工房」 – p.20/31

Page 25: ニセモノ創り実験工房

ビットコインと巨石貨幣

「ニセモノ創り実験工房」 – p.21/31

Page 26: ニセモノ創り実験工房

ビットコインの問題秘密鍵の紛失・漏洩に対する保障がない健全性に対する保証がない3層のギャンブル性グローバリズムへの加担投機の助長マイニングに潜むギャンブルの構造

⇒ 人間不在のデジタル巨石貨幣

詳しくはテクニカルレポートをhttp://member.wide.ad.jp/tr/wide-tr-ideon-bitcoin2013-00.pdf

「ニセモノ創り実験工房」 – p.22/31

Page 27: ニセモノ創り実験工房

ビットコインは成功しているのかもし「おカネ」が抱える問題を解決するために作ったのなら . . .

またゼロから同じ「おカネ」を作っただけなので失敗では?同じというより、極限まで強化したと言えるかも

もし、デジタルで貝殻貨幣/巨石貨幣を作ってみせるためだったのなら . . .

大したもの

「ニセモノ創り実験工房」 – p.23/31

Page 28: ニセモノ創り実験工房

「おカネのない社会」と「人間のデジタル通貨」の物語

「ニセモノ創り実験工房」 – p.24/31

Page 29: ニセモノ創り実験工房

「未来の経済は、ちょっと違っているのです。24世紀には、お金は存在しないのですよ。. . .富の獲得は、もはや私たちの生活の駆動力ではありません。私たちは、自分と社会をよりよくするために働いているのです」

—ジャン=リュック・ピカード

“The economics of the future are somewhatdifferent. You see, money doesn’t exist in the 24thcentury. . . . The acquisition of wealth is no longerthe driving force in our lives. We work to betterourselves and the rest of humanity.”

— Capt. Jean-Luc Picard

「ニセモノ創り実験工房」 – p.25/31

Page 30: ニセモノ創り実験工房

「おカネ」や「仕事」のない社会は珍しくありません

私たちは、みんなそこからやってきました

それは「家族」です

「ニセモノ創り実験工房」 – p.26/31

Page 31: ニセモノ創り実験工房

「おカネ」や「仕事」のない社会は珍しくありません

私たちは、みんなそこからやってきましたそれは「家族」です

「ニセモノ創り実験工房」 – p.26/31

Page 32: ニセモノ創り実験工房

経済と信用の氷山モデル

私たちは、人生のほとんどの時間を水面下で過ごしている「ニセモノ創り実験工房」 – p.27/31

Page 33: ニセモノ創り実験工房

人間のデジタル通貨人間不在のデジタル通貨 人間のデジタル通貨

グローバルなデータ構造 (元帳)

を持つグローバルなデータ構造 (元帳)

を持たない鍵ペアを個人に帰属させない 鍵ペアを個人/法人に帰属させる

(頻繁な再生成を奨励しない)

POWシステムを採用する POWシステムを採用しない貨幣の発行量を制限する 貨幣の発行量を制限しない貨幣は同語反復的 貨幣が根拠 ∗を持つようにする

(ex. 同語反復しない債務証書)∗ かつ、その根拠が時を経るにつれ減額するようにする。

「ニセモノ創り実験工房」 – p.28/31

Page 34: ニセモノ創り実験工房

実は . . .

「人間のデジタル通貨」は、つくってありますhttp://www.media-art-online.org/iwat/

SFCで博士号を取得するに至った研究

普及のための技術開発とプロモーションが課題その点でビットコインに関わる人々を尊敬します

「ニセモノ創り実験工房」 – p.29/31

Page 35: ニセモノ創り実験工房

私が体験したこと福島のこどもたちのための「アカデミーキャンプ」

http://academy-camp.org

「遊び」と「学び」のエクストリームな体験どれくらいエクストリームかのご参考

http://youtu.be/JTccTl2qLCo

予算で比較すると「のんびり型」のキャンプと変わらないほとんどソーシャルな力で実現宿泊費、食費、交通費が問題 ←これらさえ何とかしたい

なぜか大人たちが熱中して関わってくれる「学ぶ」「遊ぶ」「働く」「休む」を同時に楽しむ

「ニセモノ創り実験工房」 – p.30/31

Page 36: ニセモノ創り実験工房

まとめ「おカネ」というニセモノはいろいろ問題だビットコインもいろいろ問題だつくりなおすヒントは「経済と信用の氷山モデル」に

アドバイスみたいなものがあるとしたら投資するなら長く価値を生み出し続けるものに自分にとって一番長く続くものは自分そしてその次の世代、この星を継ぐものたち

どうせ「おカネ」を使うのなら、信用の海に飛び込むために

Remember : おカネは信用・信頼の代用品Pro-social spending!

「ニセモノ創り実験工房」 – p.31/31