実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

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実務の中で行う、 資料保存体制づくりの試み 神戸大学附属図書館 小村 愛美

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大阪大学附属図書館 研修会「資料保存の基礎を学ぶ」

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Page 1: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

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実務の中で行う、資料保存体制づくりの試み

神戸大学附属図書館小村 愛美

Page 2: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

自己紹介

神戸大学附属図書館 電子図書館係

機関リポジトリ、コレクション電子化 担当

2009年4月~2012年3月まで

大阪大学附属図書館 フロアサービス班に

勤務。

閲覧サービス、資料管理を担当していた。

本日のおはなしは、主に阪大での3年間の経験から。

Page 3: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

本日のおはなし① 資料保存体制の第一歩

◇一般資料の破損

・そもそも(破損資料がいっぱい)

・まず行ったこと(補修の知識・技術を学ぶ)

・行き詰まる(時間・労力・基準)

・仲間を増やす(課内で共有,他の係と連携)

・体制づくり(保存ガイドライン,対処の基準

ツール)

Page 4: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

本日のおはなし②

◇環境管理

・新たに劣化発生(虫害・カビ)

・応急対処

・中長期的対処―可能な範囲の環境管理

体制(温湿度管理・点検)

◇まとめ・お伝えしたいこと

Page 5: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~そもそも

資料保存:実施したい。

知識が欲しい、研修を受けたい。

→多くの人が感じているはず?

→目の前の「壊れた図書を何とかしたい」

から始まっていませんか?

Page 6: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~そもそも

私の場合:「まず補修のテクニックが欲しい!」

最初に読んだ文献:

『図書館員のための図書補修マニュアル』 小原由美子著

教育史料出版会,2000年

『防ぐ技術・治す技術:紙資料保存マニュアル』「防ぐ技

術・治す技術:紙資料保存マニュアル」編集ワーキング

グループ編,日本図書館協会,2005年

破損パターン別の補修方法が載ったもの。

予防的保存や保存計画の記述も読み飛ばし。

・ 多量の破損資料

年間300冊以上(2011年度)

→まず目の前の破損資料を何とかしたかった

注:補修マニュアルとしてはとても参考に

なった

Page 7: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~まず行ったこと

補修の知識,技術を学ぶ

◇文献を読む

◇資料保存関連の講演・研修に参加、

同僚からも資料をもらう

(◇書物修復NPOの講座に参加)

破損パターン別に補修の簡易マニュアルを作成

手当てできる破損資料はとにかく手当てしようとした

Page 8: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~行き詰まる

日常の実務の中で作業する

→補修に割ける時間の限界

1人で行う

→労力の限界

手当てできる資料は全て補修する

→作業量の限界

補修作業の効率化、

破損への対処基準が必要

Page 9: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~仲間を増やす

課内で共有。

閉館日にミニワークショップ。

「紙の目の話」、「補修の基礎」

「革装図書の手当てとカバー」

「簡易保存箱(カイルラッパー)」などなど

他の係と連携

目録係も書庫の破損資料に対処。

補修の材料、技術の共有

Page 10: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~体制づくり

保存のガイドライン

骨子:資料の劣化要因

予防的対策 > 劣化後の対策

資料保存の基本文献,オンライン研修

後半でお話する環境管理、総合図書館の現

状や今後への簡単な提言も盛り込む

Page 11: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

一般資料の破損~体制づくり

基準ツール作成

「破損資料仕分けシート」

どのような対処を採るか、フローチャート式

診断シート

主な基準:代替購入・修理製本の可不可

複本の有無・破損程度・利用頻度

*判断の目安、対処方法のメリット・デメリッ

トなど記載

*阪大の予算事情に拠った内容

Page 12: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理

新たに劣化発生(虫害・カビ害)

◇虫害(シバンムシ)

2011年6月 貴重図書室の古文書資料群

同 7月 書庫の一部

同 8月 被害範囲の調査、

搬入予定資料を事前調査

(害虫用トラップ)

Page 13: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理

◇虫害(シバンムシ)

Page 14: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理

◇虫害(シバンムシ)

◆応急対処 2012年3月

被害資料・搬入予定資料の燻蒸

貴重図書室・書庫に殺虫剤散布

Page 15: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理◇カビ害

2011年10月 書庫の製本新聞にカビ害を発見

Page 16: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

EV

階段

110 108 106 104 102

階段

124 122 118 116 114 112136 134 132 130 128 126148 146 144 142 140 138155 154 153 152 151 150161 160 159 158 157 156167 166 165 164 163 162170 169 168

107B 107A 105 103 101 100119A 117 115 113 111 109127 125B 125A 123 121 119B137B 137A 135 133 131 129149 147 145 143 141 139177 176 174 173 172 171179 178

階段階段

◇カビ害

被害範囲

環境管理

Page 17: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理

◇カビ害

◆応急対処

消毒用クロスによる拭き取り(委託)

→カビを除去

◇虫害・カビ害

予防が必要(再発生を防ぐ)

Page 18: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理

中長期的対処―可能な範囲の環境管理体制

◇温湿度管理

実施:書庫の一部,貴重図書室,マイクロ

資料室

・保存環境の現状を知る

・複数の劣化要因に効果

・費用(労力) 対 効果 が高い

◆温湿度管理の例

Page 19: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

環境管理

その他、ガイドライン内での提言

◇定期的な清掃

◇虫害の点検(年1回)

◇劣化予防に効果的な環境整備

再び被害が起こった時のために

◇虫害:簡便な殺虫法を職員間で共有

◇カビ害:発生条件・対処の記録

Page 20: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

まとめ

3年間模索した内容

まだまだできていないことは多い。

ex.)資料全体の状態調査,保存計画策定,

清掃・点検の充実etc.

大阪大学(総合図書館)の事情に拠った話。

資料保存の原則より偏った所も。

資料保存は、原則と各館の事情を

踏まえるもの。

Page 21: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

お伝えしたいこと

実践と原則を往復する

・文献(=原則)はわかりにくいかも

・原則=全体的・抽象的

・実践しつつ、原則を踏まえる

資料保存を考える → 問題が起こった時

→ チャンス

対症療法で終わらせない

現状を把握する

Betterにしていく

Page 22: 実務の中で行う資料保存体制づくりの試み

ご清聴ありがとうございました。