編集とは何か
TRANSCRIPT
編集とは何か
0.講師紹介 1.出版およびコンテンツ産業のマクロ環境 2.編集者の仕事 一般論とライトノベル 3.クリエイターと共同作業をするツール 4.これからの編集 5.編集者に求められる資質とスキル
1 飯田一史(2013.6.21)
編集とは何か
※これは、 「ビジネススクールで学ぶ フレームワークを使って 編集業とはなんぞや、 を少し整理してみた」 というものです。 「お前できんの?」とか そういうツッコミは遠慮ください……
2
飯田一史『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』
3
・Amazonで1位に
なった作品をひたすら読んで分析
・中高生に取材+統計
・現場の編集経験者による著作
0.講師紹介:著書
4
1.2012,3年の市場規模 出版全体…1兆8000億円弱(15年で1/3消滅) 小説全体(推定)…1000~1500億円 マンガ(単行本+雑誌)…4000億円弱 →落ち込んでいる 電子書籍…650億円? トレーディングカードゲーム…1000億円 ソーシャルゲーム…4000億~6000億円 映画(興行)…2000億円弱 パチンコ…19兆円 IT産業…23兆円
2.出版産業のバリューチェーン
5
企画・制作
出版社
印刷・製本
印刷所
営業・宣伝
出版社
流通・金融
取次
小売
書店
購買・読書
読者
企画・制作
出版社
印刷・製本
印刷所
営業・宣伝
出版社
流通・金融
取次
小売
書店
購買・読書
読者
2.出版社内部のバリューチェーン
6
企画
作家、編集
執筆
作家
編集、
校正
編集、
校閲
制作手配
絵師、デザイナ、印刷所に編集が
発注
取次と交渉、部決
営業(販売)
広告、営業
宣伝、
営業
※通常、作家は出版社の中にはいませんが、 抜くとわかりにくいので便宜上入れてあります
2.編集者の仕事は2系統
7
・プロデュース …グランドデザイン バリューチェーン全体を見越し統括 偉そうでクリエイティブっぽい仕事 ・雑用 …デザイン実行のサポート 社内外の調整:対作家、対営業など 各種手配、交渉、校正、報・連・相 泥くさくて地道な、人づきあい
2.編集者の仕事は2系統
8
・プロデュース…クリエイティブっぽい ・雑用…泥くさく地道な、人づきあい 話してるうちに企画、ネタが浮かぶ 上流と下流の工程が連動してる
編集者が企画やパッケージングをグランドデザインできなくても、 作家やデザイナができればOK
2.企画とは何か?
9
企画書=提案書 Target Market(顧客)に価値を提案(Value proposition)するためのプレゼン資料
・読んでほしい人達に「ここがいいんだ」と期待させるもの
・俺のやりたいことを見てくれ!は企画書ではない。まずお客さんありき(少なくとも編集者はそのほうがベター)
2.企画立案に必要な問い
10
顧客軸と↑ 自分(自社)軸 作品や特集のコンセプトは? 対顧客で大事なポイントはどこ? 他より差があって優れてる点は? この仕事は何がキモ? できる?
顧客誰?どんな人?ニーズ,課題は何?
マーケットのサイズは?
何があれば買うの?
参考:一般的に言われているビジネスプランの作り方
11
①ターゲットマーケットを決める
ほとんどの「編集」指南本には顧客だれ、ニーズは何?を絞る過程がない。 ②バリュープロポジションを明確化 何を目指すべきかという目的も抜けている。 作業のHowしか書いていない。 ③ビジネスモデルとサービスつくる ④実行,①~③を試行錯誤,カイゼン
2.A4で1~3枚の企画書作成にいる要素
■顧客の情報 定量:販売データ、マクロマーケット概況 定性:ペルソナづくり、ニーズの言語化
どこに住む、何歳くらいの、どんな趣味嗜好の人か。どんなシーンで、どんなモヤモヤ(ニーズ、課題)を抱えているか。何があれば反応してしまうのか。
■作品概要 コンセプト 顧客にとって大事な点&他と差があるウリ 小説の場合は設定、キャラ表、プロット →人物の変化の流れ、構造、要所を書く ※あくまで理想。ここまでできたら誰も苦労しない 12
3.原稿をもらったら…
13
・詰めの編集作業:リテイク、校正
どうやるかは編集者次第。やりかたはまちまち。 例)問題解決アプローチを使う 1.ゴールの確認、すりあわせ what 2.良い点、気になる点の感想 where 3.詳細を分析して課題の抽出 why 4.どうするともっとよくなるか how
3.どうするともっとよくなるか how
14
序盤
中盤
終盤
※Howのサジェスチョンは 打ち合わせ用の叩き台 取捨選択は作家がする
ここを踏み越える(勘違いする)のは よくないと個人的には思っています
抽象的なオーダーになることもよくある
3.やりとりに際しての注意点
15
■あるべき関係性、作品の姿を意識 ・否定的,感情的,場当たり的対応は避ける ・細かい各論から入ると迷走する ■作品は作家のもの。勘違いしない ・人間は、やりたくないことはしない ・評価するのは読者。勘違いさせない ■失敗や衝突はよくある。次に活かす ・試行錯誤して良くする。ミスしたら認める
3.本のガワをつくる工程:
16
・イラストレータに絵を描いてもらう(※ラノベの場合) pixivや他のラノベなど見て絵師決める 絵にする位置の決め方は編集次第 ・デザイナに表紙などのデザイン発注
・印刷所に泣いてもらうことがないようにスケジュール調整。 著者校や色校をやりとり
4.これからの編集:紙の出版社の編集者 で、あっても ・デジタルコンテンツ、 ウェブメディア、ウェブ広告を 軸にビジネスするノウハウ ・フリーミアムモデルの導入 は避けられない ※でも今の出版社には不足 17
4.ウェブメディアの編集についてはみなさん調べて下さい
18 田端信太郎「メディア運営に必要なソロバン計算―PVを軸にしたKPI構造の把握」 http://www.advertimes.com/20120604/article69914/ より引用
4.出版以外での編集業の需要@web 以下ができる人が各企業に必要な時代に ・コンテンツマーケティング ・オウンドメディアマーケティング ・インバウンドマーケティング
=宣伝など用の自社メディア持つ →ひとを呼び込むコンテンツつくる
→検索で人が来る→企業やブランドを好きになる→商品、サービスを買ってもらう
19
5.編集者に必要な能力まとめ
20
■お客さんのきもちと数がわかる ・数字を見る:定量的にマーケットを把握する ・客に憑依する:ニーズをつかむ ・フェティシズム:顧客の体験価値を高める
■仕事相手に気持ちよくやってもらう ・良い意味でのヨイショ:人材をマネージする ・良い意味での他力本願:ひとを気持ちよく巻きこむ ・べしゃり:プレゼンテーションする ・ネゴる、ゴネる:交渉する
■スマホファースト時代のビジネススキル ・ビジネスモデル構築、転換 ・デジタルコンテンツのマネタイズ、ウェブメディアの運営力
※全部できるひとなんていない。得意なところで戦う
21
考え方、やり方は人それぞれ。 あくまで参考までに…