シンポジウムⅡ:個人情報・マイナンバー・ビッグデータ「個人」に関する社会課題と電子行政...
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発表の背景(自己紹介)• 情報社会学(公文俊平)
• 近代社会の成熟局面にあたる情報社会の諸側面の包括的研究• 「設計科学」(吉田民人)
• 地域情報化研究• 地域 SNS• 少子高齢化・人口減少と地域社会
• 電子行政研究• 国民 ID 、マイナンバー• オープンガバメント、オープンデータ
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「個人」に関する社会課題
年 単独世帯 「夫婦と子」世帯 備考
1980 年 19.8% 42.1% 最多は「夫婦と子」
2015 年 33.3% 27.0% 05-10 年の間に逆転
2035 年 37.2% 23.3%
2035 年 65 歳以上の 37.7% ( 762.2 万世帯)、 75 歳以上の 39.7% ( 4,66 万世帯)が単独
• 少子高齢化・人口減少
• 単独世帯の増加
国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」 2013 年 1 月推計
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より「個人」を単位とする社会へ
複属
• 「単一社会」(中根千枝)…全面的参加を要求• 政策方針における「複属」志向
• 『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』(経済審議会報告書 1999 年 ※小渕内閣)• 「「単属者」であり続ける者もいるが、多くは、これらに加えて好み
の縁で繋がった集団にも帰属意識を持つ「複属者」となる」• 社会的包摂、地域社会での高齢者・若者等の居場所と役割
• 社会の実態• ソーシャルメディア• 働き方、意識、時間の使い方
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ソーシャルメディアとグループ形成ネットワーク• リードの法則・ Group Forming Network (リード)
• 放送型 1 対多 価値は視聴者数 N に比例:サーノフの法則• 電話型 1 対多 価値はペアの数= N の 2 乗:メトカーフの法
則• 集団形成型 多対多 価値はグループ形成の数= 2 の N 乗• GFN であるソーシャルメディアがもたらす価値は放送型や電
話型よりも高く、参加者が増えるほど価値が高まる。
• ソーシャルメディアは個人を単位とし、個人間の多様なつながり・グループ形成を支援して自らの価値を高める
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分人 (dividual)
• 概要• 個人( individual ):否定( in- )+分ける( divide )• individual を分割。分人( dividual =分けられる)単位で扱う提案• ドゥルーズ「管理社会について」( 1990 )
• 分人民主主義 Divicracy (鈴木健)• 政治・選挙への導入: 1票の分割
• 分人主義 (平野啓一郎)• ミクロな人間関係・社会生活への導入
• マイナンバー等の活用による電子行政への導入の構想6
「分人・複属」のイメージ
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辻大介:自我構造の2つの模式図「若者の親子・友人関係とアイデンティティ 16~ 17 歳を対象としたアンケート調査の結果から」
多元的自己/複数のアイデンティティ(辻大介)左図:親密= 1 つの円からなる個人の最深部まで分かり合う右図:複属し複数の円を個人が持つ。深く知り合っても全ては知れない
電子行政と「分人・複属」
• 個人を最小単位とせず、 1/a + 1/b + 1/c … 人の分人の合計として扱うことは技術的には容易に
• エストニア e-Residency ( 2014 年 12 月-)• 非在住外国人がエストニア(+ EU )のサービスを利用可能に
• 外国からの銀行口座開設、会社設立、納税等が可能• オンライン申請
• 日本のエストニア大使館で受取り可能
• 2025 年までに 1000 万人配布が目標(国民は 130 万人)• 国民 ID ・市民権とは異なる
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9news.err.ee ESTONIAN PUBLIC BROADCASTING “Japanese Prime Minister becomes Estonian e-resident”2015 年 4 月 9 日
電子行政と「分人・複属」
• ふるさと納税• 自治体への寄付+控除 県民・市民税の一部移転≒
• 自治体には税収、納税者は特産品等を獲得
• バーチャル村民(北山村「村ぶろ」)• 村民 440 人に対しバーチャル村民は 1.7 万人( 38倍)• バーチャル村民は住民と交流、特産品購入
• 応用• 行政:複属化による人口減少対策、多重国籍 / 国際化の問題• 個人:複数の地域への所属意識の具現化 主体的な生き方
リスク分散・安全網• 多様な働き方、生活様式を認める基盤になるのではないか
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課題
• ビッグデータ• レコメンデーション、個人マーケティング、プッシュ型サービスは、変化しつづける分人の束である個人を捉えられるか(モザイク効果で本当に個人が分かるのか)
• 個人を丸裸にするのではなく、環境を丸裸にし、個人のその都度の判断を支援した方が受け容れやすいのでは
• 政府は分人化した個人の情報を適切に管理できるのか• 人間が介在することによる失敗・弊害
• 個人は分人・複属化した自分をマネージできるのか• 電子行政において個人がデータにならない余地の要否
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