土壌微生物によるバイオクロッギングの温度依存性について
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土壌微生物によるバイオクロッギングの温度依存性について
東京大学 大学院農学生命科学研究科○ 関勝寿・神谷準一・宮崎毅・井本博美
平成 16 年度 農業土木学会大会講演会北海学園大学豊平キャンパス
2004 年 9 月 8 日
研究の背景
1. バイオクロッギングとは微生物活動による土壌の目詰まりである。
2. 微生物の活性は温度条件に影響される。土壌呼吸速度は 20℃ から 40℃ の間でアレニウス式にしたがって指数関数的に増加し、それ以上高温では減少する (Wiant, 1967) 。
3. 温度がバイオクロッギングに及ぼす影響は?Guputa and Swartzendruber (1962) による 23℃ と 1.5℃ における浸透実験
研究の目的
温度条件がバイオクロッギングを原因とする透水係数低下に与える影響を明らかにすること
温度条件を設定した恒温槽内でカラムの試料へ栄養水を24時間連続浸透させる
測定項目
・透水係数
・有機物量
・微生物数糸状菌
細菌・放線菌強熱減量法
希釈平板法
カラム浸透実験
実験条件
温度 15,20,25,30℃
浸透期間 4、7、10日間連続浸透
供試土壌 豊浦砂 (ρd = 1.52 Mg m-3)
浸透溶液 100ppm グルコース水溶液
フラックス 2.55 ×10-5 m s-1 (要旨訂正)
装置図
供試土壌
マリオット管
カラム
1㎝湛水
透水係数の変化
-6
-5
-4
-3
0 2 4 6 8 10
Time (days)
Log
[Ks
(m s-1
)]
15℃20℃25℃30℃
温度と透水係数変化
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
0.4
15 20 25 30Temperature(℃)
(m/s
/day
)近
似直
線の
傾き
7 日間連続浸透における温度と有機物量
0
1
2
3
4
15 20 25 30Temperature (℃)
(Lo
ss o
n ig
niti
on)
(mg
g強
熱減
量-1
)
上層中層下層
7 日間連続浸透における微生物数
アレニウス的 25℃ 前後でピーク
0
5
10
15
20
25
30
35
15 20 25 30Temperature (℃)
Num
bers
×10
5 / g d
ry sa
nd
上層中層下層
0
10
20
30
40
15 20 25 30Temperature (℃)
Num
bers
×10
5 / g d
ry sa
nd
上層中層下層
細菌 糸状菌
Davidson et al. (2003): Study of temperature-growth interactions of entomopathogenic fungi with potential for control of Varroa destructor (Acari: Mesostigmata) using a nonlinear model of poikilotherm development. Journal of Applied Microbiology 94(5): 816-825.
バイオクロッギングと糸状菌に関する既往の研究
1. Seki et al. (1996)栄養水を流したときのクロッギング部位 ( 表面 1cm) において、細菌数は増加しなかったが糸状菌数が増加した。
2. Seki et al. (1998)細菌殺菌剤を流して糸状菌のみを増殖させたときに、細菌、糸状菌を増殖させた場合と同様の透水係数低下が観察された。
3. ほとんどの研究は細菌によるバイオクロッギングを対象としている。
結論
1. バイオクロッギングを原因とする土壌の透水性低下は温度依存性があることが明らかとなった。
2. ℃温度条件15、20、25、30 における透水係数の低下速度、有機物量、糸
℃状菌数は25 で最大となった。