マイクロジオデータで見る東日本大震災被災地の変遷と将来への備え

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東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員 愛知大学三遠南信地域連携研究センター 研究員 国土交通省国土交通政策研究所 研究官 秋山祐樹(Yuki Akiyama) [email protected] マイクロジオデータで見る 東日本大震災被災地の変遷と将来への備え 日時:2015616(火)18:00場所:東北大学片平キャンパス エクステンション教育研究棟 6セミナー室(601地域産業復興調査研究プロジェクト 2015年度第1回勉強会

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東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員 愛知大学三遠南信地域連携研究センター 研究員 国土交通省国土交通政策研究所 研究官

秋山祐樹(Yuki Akiyama) ([email protected]

マイクロジオデータで見る 東日本大震災被災地の変遷と将来への備え

日時:2015年6月16日(火)18:00~ 場所:東北大学片平キャンパス エクステンション教育研究棟 6階 セミナー室(601)

地域産業復興調査研究プロジェクト 2015年度第1回勉強会

自己紹介 氏名:秋山祐樹(Yuki Akiyama)

出身地:岡山県岡山市東区

出身大学:北海道大学工学部建築都市学科(学士) 東京大学大学院新領域創成科学研究科(修士・博士)

所属:東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員 愛知大学三遠南信地域連携研究センター 研究員 国土交通省国土交通政策研究所 研究官(2015/06~) マイクロジオデータ研究会 運営委員長

主な研究領域:空間情報学・地理学・都市工学

元々は建築学が専門。卒論での札幌のヒートアイランドの研究をきっかけに、リモートセンシング・GISの世界に入りました。その後東京大学大学院に進学し、柴崎亮介教授の元で空間情報の研究を本格的に始めました。修了後は東京大学地球観測データ統融合連携研究機構で助教として空間情報学を応用した都市地域研究(商業地域分析)、新しい統計・GISデータ開発、防災(震災ビッグデータ)、情報学(自然言語処理等)の分野の研究を行っています。また2015年6月から国土交通政策研究所に期限付研究官として勤務し、ビッグデータ・オープンデータの活用や、国と大学の連携のあり方などについて研究をしています。

主な所属学会:地理情報システム学会 日本建築学会 日本都市計画学会 日本写真測量学会 交通工学研究会 日本地理学会

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近年様々なジオデータが利用可能に

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建物単位→世帯単位→人単位のジオデータ活用時代の到来

建物単位 世帯単位

人単位

人の流れデータ ©CSIS

高精細な時空間情報を持つ アーバンデータ・ジオデータ

=マイクロジオデータ(MGD)

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マイクロジオデータを活用した研究は国際的にも注目されつつある

http://sigspatial2015.sigspatial.org/

http://www.geobig5.com/events/big-data/ https://cupum2015.mit.edu/

http://www.ieeebigdata.org/2014/

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マイクロジオデータの活用は日本政府も注目している

平成25年度総務省所管補正予算案より

http://www.soumu.go.jp/main_content/000264428.pdf

NHK News Web(2014/06/09)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140609/k10015066701000.html

日本政府はビッグデータ活用推進ための法整備に着手。個人情報保護法改正に向けた検討を開始。

2010年代はマイクロジオデータ活用とオープンデータ普及の時代。

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マイクロジオデータの本格的活用の時代へ

混雑統計®

http://www.g-expo.jp/2013/message/corner01.html

NHK(私も番組作成に協力しました)

http://www.nhk.or.jp/datajournalism/about/

室蘭市のオープンデータ化推進

http://wiki.openstreetmap.org/wiki/Muroran_ortho

これまでは想像もし得ないほど膨大な規模の時空間データが利用可能になりつつある。またそれらが日々蓄積され続けている。

・電話帳データ(例:タウンページ, テレポイントデータ等) ・携帯電話GPSデータ(例:モバイル統計 等) ・デジタル地図データ(例:住宅地図(ZmapTOWNⅡ) 等) ・Webデータ、SNSデータ(例:Facebook, Twitter等)

など空間的に高精細・最小単位(非集計)の時空間データ(マイクロジオデータ)の取得・普及および研究方法の共有を行う。

産学官の研究者・データ保有者・データ利用者でマイクロジオデータ(MGD)の利活用方法・開発・普及に関するアイディアを持ち寄り共有する場とする。

マイクロジオデータ研究会

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2011年8月発足から これまでに7回の研究会、4回のデータ講習会を開催。 研究会メンバー発の論文 ・査読付17編 ・査読無70編以上 他多数の講演・受賞・展示

これまではミクロなスケールのデータ(建物店舗単位、人単位)取得は、現地調査を実施することが多かった。そのため広域に渡ってミクロなデータを継続的に収集することは困難だった。

広域をカバー出来るミクロなデータは大規模データとなるため、ハードウェアの性能の制約によりまともにハンドリングが出来なかった。

一方、近年ではハードウェアの性能向上により、大規模データ(ビッグデータ)の取り扱いが可能になりつつある。また安価で大規模なハードディスクの普及により様々なビッグデータの蓄積も進みつつある。MGDもこれらに含まれる。

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今、MGDが活用可能な環境が整いつつある

空間的、時間的な分解能が細かく(建物・人単位など) 同時に都市全体・更には日本全土をカバー出来るビッグデータ

=マイクロジオデータ の開発・活用・普及に関する研究が注目されつつある。

マイクロジオデータの紹介

集計単位 個店・個人 都道府県・ 市区町村

地域メッシュ

既存の統計・データ MGD 新たに開発したMGD

オープンデータ 原則有料(研究目的を除く場合あり) 10

時間的分解能

数年~1年

2ヶ月

5分

1時間

5年

商業統計 立地環境特性編

国勢調査 商業統計 事業所・企業統計

電話帳データ

各種モバイル統計

混雑統計®

国勢調査(メッシュ) 商業統計(メッシュ)

Webデータ (不動産、飲食, twitter)

人の流れ データセット

高い空間的・時間的分解能

住宅地図 マイクロジオデータの登場

・任意の集計単位の設定が可能 ・広域に渡る比較的詳細な地域 分析・把握が可能 ・データ保有者は利活用方法を 模索している。

商業集積統計

マイクロ人口統計

擬似人流 データ

マイクロジオデータの紹介

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様々なマイクロジオデータ(建物・店舗・企業関連)

住宅地図・電話帳 商業集積統計

Web情報(SNS等)

Eric Fischer, “Eric Fischer’s photostream”, http://www.flickr.com/photos/walkingsf/

Web情報(検索結果の活用)

Continuation

Change

Emergence

Demise

LegendTime-series changes 2003-2008

店舗等時系列変化データ

企業間取引ビッグデータ

マイクロジオデータの紹介

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様々なマイクロジオデータ(人・人流関連)

人の流れデータ 各種モバイル統計

SNS情報に基づく擬似人流データ マイクロ人口統計

人の流れプロジェクト http://pflow.csis.u-tokyo.ac.jp/index-j.html ・パーソントリップ調査の結果を加工して作成

©株式会社ナイトレイ ©東京大学 柴崎・関本研究室 ©マイクロジオデータ研究会 ©人の流れプロジェクト ©東京大学空間情報科学研究センター

Akiyama, Y., Takada, T. and Shibasaki, R., 2013, "Development of Micropopulation Census through Disaggregation of National Population Census", CUPUM2013 conference papers, 110.

発表の流れ

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マイクロジオデータで見る 東日本大震災被災地の変遷と将来への備え 1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災 2 商業集積統計で見る東日本大震災 今回ご紹介する内容はまだまだ発展途上の内容となります。 色々とご意見ご感想頂ければと思います。

1. はじめに

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2011年3月に発生した東日本大震災では東北地方を中心に主に 津波による甚大な被害が発生した. 同地震に伴う津波による建物や道路などへの物理的な被害や, 人的被害とそれらの回復状況については既に官学をあげて詳細な調査・分析が進められている(関本ほか, 2013;総務省消防庁,2014).

仙台市沿岸に襲来した津波 (http://blogs.yahoo.co.jp/kirisutobaka/62630428.html)

復興が進む女川町 (発表者による撮影 2015/03/13)

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

1. はじめに

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一方,企業への津波被害による企業間取引への網羅的な影響評価はまだ殆どなされていない. 津波の影響により事業の継続が困難に. →操業・営業の一時停止や廃業 に追い込まれた企業も少なくない.

その結果・・・ →被災自治体の税収低下や雇用の喪失 →被災企業と取引を行っていた被災地以外の企業活動への影響 が少なからず出たものと考えられる. (東日本大震災発生から3年,「東日本大震災関連倒産」は累計1,485件発生.同じ3年間で比較すると「阪神大震災関連倒産」(394件)の約3.8倍となっている.((株)帝国データバンク)

企業の高台移転を含めた国・自治体による防災政策を考えていく上では,東日本大震災の津波被害による企業活動の喪失と回復の状況を空間的に把握・可視化することが求められている.

全国の企業の立地 企業間取引の時系列的な変化

に関する情報をいかにして収集するのか?

http://www.city.sendai.jp/fukko/ayumi_1103.html

被災した工業地帯(仙台港)

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

きっかけは・・・

NHKスペシャル「震災ビッグデータ」制作への協力 http://www.nhk.or.jp/datajournalism/ 16

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

きっかけは・・・

(株)帝国データバンク (日本最大の信用調査会社) 企業間取引ビッグデータを用いた被災前後の取引変化の可視化

東京大学 各種統計・GISデータを活用した ・建物被害予測 ・建物単位の居住者分布 ・初期対応力(共助力)推定

企業間取引ビッグデータを活用した ・将来の地震・津波に備えた企業間取引への津波被害モデルの構築

・国土政策(防災、復興、地域再生など)への活用

コラボレーション(共同研究)

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1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

1. はじめに:目的

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企業間取引ビッグデータ ((株)帝国データバンク)

本研究全体の流れと目的 東日本大震災津波データアーカイブ

津波浸水域データ

東日本大震災の津波による企業間取引の喪失・復興状況の整理・可視化 (浸水深別・市区町村別など)

東日本大震災の津波による企業間取引の喪失・復興状況に基づく 企業間取引の喪失・復興モデルの開発

都市レジリエンス評価指標の実現 ・物理的被害、人的被害に加えて経済的なインパクトも評価

・企業の組織力、初期対応力、被災からの回復力を考慮

× × × ほか・・・

様々な津波被害モデルにおける企業間取引へのインパクト評価 被害回復モデルに基づいた要対策地域・企業の設定(順位付け)

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災 1. はじめに:目的

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企業間取引ビッグデータ ((株)帝国データバンク)

本研究全体の流れと目的 東日本大震災津波データアーカイブ

津波浸水域データ

東日本大震災の津波による企業間取引の喪失・復興状況の整理・可視化 (浸水深別・市区町村別など)

東日本大震災の津波による企業間取引の喪失・復興状況に基づく 企業間取引の喪失・復興モデルの開発

様々な津波被害モデルにおける企業間取引へのインパクト評価 被害回復モデルに基づいた要対策地域・企業の設定(順位付け)

都市レジリエンス評価指標の実現 ・物理的被害、人的被害に加えて経済的なインパクトも評価

・企業の組織力、初期対応力、被災からの回復力を考慮

× × × ほか・・・

今回の発表では 主にこの部分を紹介

2. データの紹介:企業間取引ビッグデータとは

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企業間取引データ (2008~2013年)

企業間の取引情報を格納したデータベース。約2,200万取引(約590万企業間ネットワーク)を格納。 以下の情報を含む。 ・発注企業ID ・受注企業ID ・取引品目 ・取引発生時期 ・推定取引額1)

企業データ (2008~2013年)

企業間取引に関わった約160万社の企業情報を格納したデータベース。以下の情報を含む。 ・企業ID ・売上高 ・住所 ・資本金 ・従業者数 ・業種 ・主業 ・代表者年齢 ・営業所数 ・後継者有無 など

発注 受注

取引品目:牛乳 取引発生時期:201401 推定取引額:1.1億円

企業ID:2 企業ID:1

企業ID:1 売上高:5億円 住所:北海道根室市・・・ 業種:製造業(乳製品製造) などの情報

企業ID:2 売上高:200億円 住所:福岡県福岡市・・・ 業種:卸売業(各種商品卸) などの情報

1) Tamura, K., Miura, W., Takayasu, M., Takayasu, H., Kitajima, S., and Goto, H., 2012, "Estimation of Flux Between Interacting Nodes on Huge Inter-firm Networks", International Journal of Modern Physics: Conference Series, 16,93–104.

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企業間取引データ (2008~2013年)

企業間の取引情報を格納したデータベース。約2,200万取引(約590万企業間ネットワーク)を格納。 以下の情報を含む。 ・発注企業ID ・受注企業ID ・取引品目 ・取引発生時期 ・推定取引額

企業データ (2008~2013年)

企業間取引に関わった約160万社の企業情報を格納したデータベース。以下の情報を含む。 ・企業ID ・売上高 ・住所 ・資本金 ・従業者数 ・業種 ・主業 ・代表者年齢 ・営業所数 ・後継者有無 など

取引品目:牛乳 取引発生時期:201401 推定取引額:1.1億円

発注

企業ID:2

受注

企業ID:1

企業ID:1 売上高:5億円 住所:北海道根室市・・・ 業種:製造業(乳製品製造) などの情報

2. データの紹介:企業間取引ビッグデータとは

企業ID:2 売上高:200億円 住所:福岡県福岡市・・・ 業種:卸売業(各種商品卸) などの情報

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企業間取引データ (2008~2013年)

企業間の取引情報を格納したデータベース。約2,200万取引(約590万企業間ネットワーク)を格納。 以下の情報を含む。 ・発注企業ID ・受注企業ID ・取引品目 ・取引発生時期 ・推定取引額

企業データ (2008~2013年)

企業間取引に関わった約160万社の企業情報を格納したデータベース。以下の情報を含む。 ・企業ID ・売上高 ・住所 ・資本金 ・従業者数 ・業種 ・主業 ・代表者年齢 ・営業所数 ・後継者有無 など

取引品目:牛乳 取引発生時期:201401 推定取引額:1.1億円

企業ID:1 売上高:5億円 住所:北海道根室市・・・ 業種:製造業(乳製品製造) などの情報

2. データの紹介:企業間取引ビッグデータとは

受注

企業ID:1

発注

企業ID:2

企業信用調査に伴う調査員約1,700人による企業1件1件に対するアンケートと聞き取り調査により整備されている、日本最大規模の企業信用調査データ

企業ID:2 売上高:200億円 住所:福岡県福岡市・・・ 業種:卸売業(各種商品卸) などの情報

3. データ処理

[Pl]津波浸水域データセット※1 (市区町村別・100mメッシュ)

[Pl]津波浸水域データセット※1 (全域・100mメッシュ)

マージ処理

[T]企業データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業データ (2008~2013年の 全企業:1ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年

時系列化:1ファイル)

ファイル結合・ アドレスマッチング

ファイル結合・ 時系列化

[Po]企業データ (津波浸水深付き)

空間結合

[T]企業間取引データ (津波浸水深付き)

DB結合

※1 http://grene-city.csis.u-tokyo.ac.jp/dataset/list_all

被災前後の年で喪失/回復した取引を集計・可視化 (市区町村別・浸水深別など)

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<データ規模> 企業データ:約165万件(約400MB) 取引データ:約590万件(約4GB) ※データの種類 [T]テキストデータ [Po]ポイントデータ [Pl]ポリゴンデータ

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

3. データ処理

[Pl]津波浸水域データセット※1 (市区町村別・100mメッシュ)

[Pl]津波浸水域データセット※1 (全域・100mメッシュ)

マージ処理

[T]企業データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業データ (2008~2013年の 全企業:1ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年

時系列化:1ファイル)

ファイル結合・ アドレスマッチング

ファイル結合・ 時系列化

[Po]企業データ (津波浸水深付き)

空間結合

[T]企業間取引データ (津波浸水深付き)

DB結合

※1 http://grene-city.csis.u-tokyo.ac.jp/dataset/list_all

被災前後の年で喪失/回復した取引を集計・可視化 (市区町村別・浸水深別など)

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<データ規模> 企業データ:約165万件(約400MB) 取引データ:約590万件(約4GB) ※データの種類 [T]テキストデータ [Po]ポイントデータ [Pl]ポリゴンデータ

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

津波浸水域データセット (100mメッシュ集計)

GRENE環境情報分野「環境情報技術を用いたレジリエントな国土のデザイン」のアーカイブデータの一つ「津波データアーカイブ」を利用. 東日本大震災で発生した津波の浸水深が100mメッシュ単位で収録されている. 収録範囲は右地図赤色の範囲 (千葉県九十九里海岸~青森県六ケ所村)

3. データ処理

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市区町村別に分割されたファイルを結合処理し1つのファイル(21252メッシュ)に整理した.

浸水深[m]

3. データ処理

26

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

3. データ処理

[Pl]津波浸水域データセット※1 (市区町村別・100mメッシュ)

[Pl]津波浸水域データセット※1 (全域・100mメッシュ)

マージ処理

[T]企業データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業データ (2008~2013年の 全企業:1ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年

時系列化:1ファイル)

ファイル結合・ アドレスマッチング

ファイル結合・ 時系列化

[Po]企業データ (津波浸水深付き)

空間結合

[T]企業間取引データ (津波浸水深付き)

DB結合

※1 http://grene-city.csis.u-tokyo.ac.jp/dataset/list_all

被災前後の年で喪失/回復した取引を集計・可視化 (市区町村別・浸水深別など)

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<データ規模> 企業データ:約165万件(約400MB) 取引データ:約590万件(約4GB) ※データの種類 [T]テキストデータ [Po]ポイントデータ [Pl]ポリゴンデータ

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

企業間取引データの時系列化処理

発注 受注 発注 受注 発注 受注A社 - B社 A社 - B社 A社 - B社C社 - B社 C社 - B社 D社 - A社D社 - E社 D社 - A社 D社 - E社

2010年 2011年 2012年

2010年、2011年、2012年の企業間取引の例

発注・受注する企業が重複する取引をマージ+ 年別の取引有無を整理

2010年 2011年 2012年A社 - B社 ○ ○ ○C社 - B社 ○ ○ ☓D社 - E社 ○ ☓ ○D社 - A社 ☓ ○ ○

取引

震災前 震災後

年ごとの取引件数 ・2008年:2,471,689件 ・2009年:3,367,724件 ・2010年:3,841,549件 ・2011年:4,174,799件 ・2012年:4,453,946件 ・2013年:4,672,870件 2008~2013年の 全取引件数:5,900,052件 ※同一企業間の異なる年の取引はまとめて1件と見なした場合。

3. データ処理

28

※実際のデータは取引有無だけでなく取引額や取引 品目など企業間取引データが持つ全属性を格納・ 継承している.

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

3. データ処理

[Pl]津波浸水域データセット※1 (市区町村別・100mメッシュ)

[Pl]津波浸水域データセット※1 (全域・100mメッシュ)

マージ処理

[T]企業データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年:

7ファイル)

[T]企業データ (2008~2013年の 全企業:1ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年

時系列化:1ファイル)

ファイル結合・ アドレスマッチング

ファイル結合・ 時系列化

[Po]企業データ (津波浸水深付き)

空間結合

[T]企業間取引データ (津波浸水深付き)

DB結合

※1 http://grene-city.csis.u-tokyo.ac.jp/dataset/list_all

被災前後の年で喪失/回復した取引を集計・可視化 (市区町村別・浸水深別など)

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<データ規模> 企業データ:約165万件(約400MB) 取引データ:約590万件(約4GB) ※データの種類 [T]テキストデータ [Po]ポイントデータ [Pl]ポリゴンデータ

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

件数 割合[%]

合計 1,654,179 100.00号・建物レベル 769,623 46.53番地・枝番レベル 805,993 48.72丁目レベル 19,176 1.16大字以上レベル 59,387 3.59失敗 304 0.02

アドレスマッチングの結果(東大CSIS非公開版アドレスマッチングを使用)

年ごとの企業数 ・2008年:1,256,565件 ・2009年:1,264,317件 ・2010年:1,358,858件 ・2011年:1,409,579件 ・2012年:1,430,673件 ・2013年:1,439,060件

[T]TDB企業データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]TDB企業データ (2008~2013年の 全企業:1ファイル)

3. データ処理

なおアドレスマッチングに失敗した企業も全件手作業で座標を取得することで,全ての企業に座標情報を与えることが出来た.

重複を取り除いた企業数 (2008~2013年)

1,654,179件 ファイル結合・

アドレスマッチング

30

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

GISを用いて企業立地と津波浸水深情報を結合(石巻市の例)

座標有企業1,654,179社のうち、7,218件が津波浸水域に分布していた。

浸水深[m]

被災有企業

被災無企業

3. データ処理

31

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

3. データ処理

[Pl]津波浸水域データセット※1 (市区町村別・100mメッシュ)

[Pl]津波浸水域データセット※1 (全域・100mメッシュ)

マージ処理

[T]企業データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年:

6ファイル)

[T]企業データ (2008~2013年の 全企業:1ファイル)

[T]企業間取引データ (2008~2013年

時系列化:1ファイル)

ファイル結合・ アドレスマッチング

ファイル結合・ 時系列化

[Po]企業データ (津波浸水深付き)

空間結合

[T]企業間取引データ (津波浸水深付き)

DB結合

※1 http://grene-city.csis.u-tokyo.ac.jp/dataset/list_all

被災前後の年で喪失/回復した取引を集計・可視化 (市区町村別・浸水深別など)

32

<データ規模> 企業データ:約165万件(約400MB) 取引データ:約590万件(約4GB) ※データの種類 [T]テキストデータ [Po]ポイントデータ [Pl]ポリゴンデータ

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化~市区町村別集計~

津波浸水地域に立地する企業が関わる全取引(2010年) 21,652取引

集計

全取引(約160万取引)のうち 津波浸水地域に 立地する企業が 関わる取引の割合(2010年)

33

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水地域に立地する企業数~市区町村別集計~

34

被災企業数

市区町村別浸水域内企業数(左)と 浸水域内企業数上位20市区町村(上)

・市区部で高い値となる. ・特に石巻市が突出して数多くの企業が津波浸水域 に分布していたことがわかる. ・必ずしも多くの企業が浸水深の深い地域(3m以上) に分布するとは限らない.

※3m以上浸水:木造の9割全壊 5m以上浸水:非木造の9割全壊 http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/8/pdf/sub2.pdf

企業数

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水地域に立地する企業数~市区町村別集計~

35

市区町村別全企業に占める浸水域内企業率(左)と 全企業に占める浸水域内企業率上位20市区町村(上)

・浸水域内企業率の高い地域は地理的に偏って分布 することがわかる.(宮城県東松島市~岩手県山 田町にかけての地域に連続的に分布) ・この割合が高い市区町村では浸水深も大きい地域 (3m以上)に多くの企業が分布する事がわかる.

浸水率

東松島市

山田町

女川町

浸水率

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水地域に立地する企業数~市区町村別集計~

36

市区町村別全企業に占める浸水域内企業率(左)と 全企業に占める浸水域内企業率上位20市区町村(上)

・浸水域内企業率の高い地域は地理的に偏って分布 することがわかる.(宮城県東松島市~岩手県山 田町にかけての地域に連続的に分布) ・この割合が高い市区町村では浸水深も大きい地域 (3m以上)に多くの企業が分布する事がわかる.

浸水率

東松島市

山田町

女川町

浸水率

ただし津波浸水=取引喪失とは限らない →取引情報を組み合わせる。

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化~市区町村別集計~ 津波浸水地域に立地する企業が関わる取引件数の増減 (2011年2010年比:受注・発注何れかが津波浸水域に分布している取引を集計)

37 津波被災地を含む地域では被災後の取引件数が回復せず、取引件数が減った地域も広がりつつある. 一方で被災地から離れた地域では取引件数を維持・回復している地域も見られる.

2011年 2012年 2013年

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化~市区町村別集計~ 津波浸水地域に立地する企業が関わる取引総額の増減 (2010年比:受注・発注何れかが津波浸水域に分布している取引を集計)

38 津波被災地を含む地域では被災後の取引総額が回復していない. 一方で被災地から離れた地域では取引総額が維持・回復している地域も見られる.

2011年 2012年 2013年

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化~市区町村別集計~ 津波浸水地域に立地する企業が関わる取引の平均取引額の増減 (2010年比:受注・発注何れかが津波浸水域に分布している取引を集計)

39 被災地では地域によってかなりばらつきがみられる. 一方で被災地から離れた地域では回復を続ける地域と減少する地域に分かれている.

2011年 2012年 2013年

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化(2011~2013年)

40

比較的被害の少なかったいわき市や八戸市などでは1取引あたりの平均取引額は増加している. 取引件数の2010年比(横軸)の減少は比較的低い水準にとどまっている. =地元企業同士の繫がり(ネットワーク)の維持・回復の動きと考えられる.

受注・発注何れかが津波浸水地域に立地する企業が関わる取引の割合が多い 上位10市区町村(2010年時点:津波被災市区町村)の場合

※括弧内数字は2010年の取引件数

41

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化(2011~2013年)

被災地に近い地域(仙台市泉区・盛岡市)では平均取引額の減少がみられるが,被災地から 離れると取引件数の減少は著しいものの,平均取引額は被災前よりも大きくなっている. =一部の重要な企業同士の取引は被災したとしても維持されている.

受注・発注何れかが津波浸水地域に立地する企業が関わる取引の割合が多い 上位10市区町村(2010年時点:津波被災市区町村を除く)の場合

※括弧内数字は2010年の取引件数

42

4.企業間取引の喪失と回復の可視化 津波浸水による取引状況の変化~被災地からの距離別集計~

・津波被災市区町村では取引件数,平均取引額いずれの減少も少ない. ・被災市区町村近隣(0-50km)では平均取引額の減少が続いている. ・被災地域から離れた地域では取引件数は減少を続けているが平均取引額が増加している.

被災自治体からの距離別集計(市区町村毎に最近隣の津波に被災した市区町村

までの距離をユークリッド距離で算出・集計)

※括弧内数字は該当する市区町村数

仙台市青葉区・山形市・ 福島市など

東京23区・青森市 宇都宮市 など

名古屋市・金沢市 釧路市 など

大阪市・京都市 神戸市 など

福岡市・広島市 鹿児島市 など

5.結論と展望

結論

企業間取引ビッグデータを利用可能な状態に整理するデータ整備環境が 実現した. ・約2,200万件の取引データの時系列化処理の実現. ・約160万件の企業データのアドレスマッチングの実現. ・両データベースを結合した時系列企業間取引データベースの実現.

津波による企業間取引の喪失・復興モデル開発に向けたデータ整備を実施した. ・津波浸水域データセット(津波データアーカイブ)を整理し,東日本大震災の 津波浸水深を全国で把握できるデータの実現. ・津波浸水域データセットと企業データの結合により,津波浸水深付き企業データ を実現.

以上のデータを用いて東日本大震災に伴う津波による企業間取引の喪失と回復の可視化を行った. ・津波被災地の市区町村では取引件数,平均取引額共に減少幅は少なかった. 被災地域の企業同士の繫がりが維持され,また回復しつつあることが期待できる. ・被災地近隣の市区町村では取引件数、平均取引額ともに減少が続いている. ・被災地域から離れた市区町村では取引件数は減少が続いているが,平均取引額は 増加傾向にある.

43

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

5.結論と展望 津波被害による企業間取引への影響の集計化・モデル化

以下の要素をクロスした取引損失・回復モデルを構築する.

受注・発注の被災状況:3分類 ①受注のみ被災 ②発注のみ被災 ③両方被災

業種 大分類:14分類×2(受発注両方)

企業規模=従業者数:a分類×2

津波深:b分類×2

取引の企業間距離:c分類×2

後継者有無 有り/無し/不明:3分類×2

震度分布(震度0~7):10分類×2 (入手できれば追加:津波被害無しでも地震動で被害を受けている可能性あり)

以上の条件のクロス集計を作成(3×28×2a×2b×2c×6×20=80640abc通り). 全ての条件の被害・回復モデルを整備し、影響予測が可能な環境構築を目指す.

44

展望

1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災

今後の展開 ・被害,回復モデルの構築を進める.

・モデル構築に必要なデータの収集,整理を進める.

・東海地震等の津波被害予測データとの組み合わせ,被害推定を実施する.

様々な津波被害モデルにおける企業間取引へのインパクト評価 被害回復モデルに基づいた要対策地域・企業の設定(順位付け)

45

5.結論と展望 津波被害による企業間取引への影響の集計化・モデル化

都市レジリエンス評価指標の実現 ・物理的被害、人的被害に加えて経済的なインパクトも評価

・企業の組織力、初期対応力、被災からの回復力を考慮

× × × ほか・・・

発表の流れ

46

マイクロジオデータで見る 東日本大震災被災地の変遷と将来への備え 1 企業間取引ビッグデータで見る東日本大震災 2 商業集積統計で見る東日本大震災 今回ご紹介する内容はまだまだ発展途上の内容となります。 色々とご意見ご感想頂ければと思います。

1. はじめに

47

2011年3月に発生した東日本大震災により被災地を中心に、 日々の生活を支える場である商店街も大きな被害を受けた。 石巻市石巻立町商店街の被災状況 (http://blog.livedoor.jp/whitebeach2009/archives/ 1577448.html)

かつては商店街の分布が見られた女川町中心部 (発表者による撮影 2015/03/13)

2 商業集積統計で見る東日本大震災

地域を限定した商店街の被災・復興状況の分析(山本ほか 2012)や、仮設・復興商店街の現状分析(鈴木 2013)はみられるものの、広域的に被災前後の商店街の分布変遷を明らかにした例は見られない。

広域の商店街の分布・時系列的変遷 に関する情報をいかにして収集するのか?

1. はじめに

48

2 商業集積統計で見る東日本大震災

商業集積統計(仙台市:2014年) 店舗・事業所数

10~20

20~30

30~50

50~100

100~

商店街・商業地域の位置・形状をポリゴンで表現。

1. はじめに

49

2 商業集積統計で見る東日本大震災

商業集積統計(仙台市:2014年) 店舗・事業所数

10~20

20~30

30~50

50~100

100~

商店街・商業地域ごとの業種別店舗数、最寄り駅・バス停情報などの属性も持つ。

商業集積統計:開発の流れ

東京大学+株式会社ゼンリン+株式会社JPSで開発。2012年商品化。

共同研究 アドバイザー

大学・研究者

民間企業

提供・貸与

販売

50

商業集積統計 =ポリゴン1つ1つが商業地域を表現

デジタル電話帳データ (テレポイントPack! 株式会社ゼンリン・ポイントデータ)

商業地域を構成する業種を決定しデータを絞り込み (業種は複数箇所の商店街ホームページから収集)

各ポイントからバッファ領域を発生させ結合(マージ) 店舗数10件以下の集積は除外

秋山祐樹・仙石裕明・柴崎亮介,2013年,「全国の商業集積統計とその利用環境」,GIS-理論と応用,21(2),pp.11-20.

商業集積統計:現地調査との比較

51

小田急線経堂駅前商店街の場合

商業集積統計:現地調査との比較

52

成田山新勝寺門前町の場合

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:石巻市 53

石巻駅南部に大規模な商業集積地域(603件)がみられる。また沿岸部にも小規模な商業集積地域が数多く分布していることが分かる。

2010年10月

大規模な 商業集積

沿岸部の商業集積

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:石巻市 54

まだ津波の影響がデータに十分に反映されていないため、沿岸部にも商業集積地域が残っている。石巻駅北部では津波の影響か、商業集積地域の形状に変化がみられる。

2011年10月

大規模な 商業集積

沿岸部の商業集積

駅北部の商業集積

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:石巻市 55

沿岸部にみられた小規模な商業集積地域はほぼ全て消滅した。石巻駅南部の大規模な集積も店舗数が大きく減少している(595件→471件)。石巻駅北部では引き続き商業集積地域の形状に変化がみられる。

2012年10月

大規模な 商業集積

沿岸部の商業集積

駅北部の商業集積

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:石巻市 56

2013年10月

沿岸部の商業集積地域は完全に消滅し、復活の兆しも無いようである。石巻駅南部の大規模な集積の店舗数減少には歯止めがかかり始めたとみられる(471件→456件)。石巻駅北部では商業集積地域そのものの集積が進み、小規模なものは消滅している。

大規模な 商業集積

沿岸部の商業集積

駅北部の商業集積

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:女川町 57

女川駅周辺から黄金町にかけての地域に連続的に比較的大規模な商業集積地域が見られる。黄金町付近では一部商店街の連続性が失われて商業集積の分裂が見られる。最大規模の商業集積は各種小売店・食料品店・飲食店を多く含む。

店舗・事業所数

10~20

20~30

30~50

50~100

100~

2010年10月

107

23 10

14 女川駅

黄金町

工事業, 1 製造業, 4 銀行・金

融業, 4

不動産業, 3

各種サービ

ス業, 17娯楽文化施設,

0

飲食店, 22

宿泊・観光業,

4医療業, 2大型小売店, 0

各種小売店, 52

食料品店, 24

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:女川町 58

電話帳は2ヶ月毎に更新されるが、更新・継続の連絡が届かない事業所はその後1年間はそのまま掲載が継続する。そのため2011年10月時点ではまだ数多くの店舗・事業所が存続扱いとなっていることが分かる。

店舗・事業所数

10~20

20~30

30~50

50~100

100~

2011年10月

96

13 13

工事業, 1 製造業, 3 銀行・金融業,

5

不動産業, 1

各種サービ

ス業, 16

娯楽文化施設,

1飲食店, 19

宿泊・観光業,

7医療業, 2

大型

小売

店, 0

各種小売店,

52

食料品店,

20

女川駅

黄金町

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:女川町 59

更新・継続の連絡が届かない事業所が消滅判定となり電話帳から削除されたことで、商業集積地域の分布状況も大幅に変化した。女川駅周辺から黄金町にかけて見られた大規模な商業集積は消滅し、その南北端に小規模な商業集積がわずかに残った。

店舗・事業所数

10~20

20~30

30~50

50~100

100~

2012年10月

14

11

工事業, 0 製造業, 0銀

行・

金融

業, 0

不動産業, 0 各種

サー

ビス

業, 3

娯楽文化

施設, 0

飲食店, 4

宿泊・観光業,

1医療業, 0大型小売店, 0

各種小売店, 8

食料品店, 3

女川駅

黄金町

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:女川町 60

女川駅の近くにみられた小規模な商業集積も消滅し、黄金町付近の小規模な商業集積のみ残った。かつてみられた最大規模の商業集積と同様に各種小売店・食料品店・飲食店を中心とした業種構成となっている。

店舗・事業所数

10~20

20~30

30~50

50~100

100~

2013年10月

15

工事業, 0 製造業, 0銀

行・

金融

業, 0

不動産業, 0 各種

サー

ビス

業, 3

娯楽文化

施設, 0

飲食店, 4

宿泊・観光業,

1医療業, 0大型小売店, 0

各種小売店, 8

食料品店, 3

女川駅

黄金町

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:岩手県~福島県 61

商業集積地域の数の変化(2010年比)

2011年 2012年 2013年 減少率上位5位 (太平洋沿岸) 1:広野町 1→0 2:南三陸町 7→3 3:大船渡市 19→9 4:野田村 2→1 5:七ヶ浜村 2→1

減少率上位5位 (太平洋沿岸) 1:広野町 1→0 2:南三陸町 7→2 3:大船渡市 19→8 4:野田村 2→1 5:七ヶ浜村 2→1

減少率上位5位 (太平洋沿岸) 1:広野町 1→0 2:南三陸町 7→1 3:大船渡市 19→9 4:野田村 2→1 5:七ヶ浜村 2→1

太平洋沿岸を中心に商業集積地域の減少がみられ、2012年以降もそれが回復していないことが分かる。

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷:岩手県~福島県 62

商業集積地域を構成する店舗・事業所数の変化(2010年比)

2011年 2012年 2013年 減少率上位5位 (太平洋沿岸) 1:広野町 10→0 2:陸前高田市 173→57 3:双葉町 40→14 4:大槌町 224→100 5:野田村 23→11

減少率上位5位 (太平洋沿岸) 1:広野町 10→0 2:陸前高田市 173→35 3:女川町 154→38 4:南三陸町 157→39 5:山田町 183→81

減少率上位5位 (太平洋沿岸) 1:広野町 10→0 2:南三陸町 157→23 3:女川町 154→31 4:陸前高田市 173→35 5:大槌町 227→104

商業集積地域を構成する店舗数の変化に注目してみると、太平洋沿岸での減少が著しいことがよりはっきりと見える。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013

仙台市青葉区 郡山市 盛岡市 福島市

大規模店舗 10~20 20~30 30~50 50~100 100~

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷: 規模別商業集積地域の数の変化

63

規模別商業集積地域の数の変化:津波被災なし市区町村のうち商業集積数降順

東日本大震災前後で商業集積地域の総数は多少の大小の変化がみられるものの、その規模の構成比や大規模小売店舗の数も含めてそれほど大きな変化はみられない。

[店舗]

0

20

40

60

80

100

120

2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013

いわき市 仙台市宮城野区 石巻市 仙台市若林区

大規模店舗 10~20 20~30 30~50 50~100 100~

64

商業集積地域が分布している地域が津波の被害を受けたいわき市や石巻市では被災後商業集積地域の数が減少しているものの回復しつつある。大規模な商業集積地域の数は維持されている。

[店舗]

規模別商業集積地域の数の変化:津波被災あり市区町村のうち商業集積数降順

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷: 規模別商業集積地域の数の変化

65

大規模な商業集積地域が消滅・分裂し小規模な商業集積地域に変化している。また大規模小売店舗の進出もみられる。大船渡市では大規模な商業集積地域が存続している。

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013 2010 2011 2012 2013

南三陸町 女川町 陸前高田市 大船渡市

大規模店舗 10~20 20~30 30~50 50~100 100~ [店舗]

規模別商業集積地域の数の変化:津波被災あり市区町村のうち10年から13年増減率昇順

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷: 規模別商業集積地域の数の変化

111

101

17 2

2

1 31

63 3

11

11

13

1

1 1

14

2

1

6 2

1

1

1

4

11

4 1

21

1

1 4

1

2

1 3

2

142

2 15

1

4

3 1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

0m以上1m未満

(木造の多くが半壊)

1m以上2m未満

(木造の多くが全壊)

2m以上5m未満

(非木造も多くが半壊)

5m以上

(非木造も多くが全壊)

消滅 0~50%(大幅減) 50~90%(減少) 90~110%(維持) 110%以上(増加)

66

<規模の小さい商業集積地域> 浸水深が小さい地域では消滅してしまったものもある一方で、規模を拡大させている地域もみられる。 浸水深が大きくなるに連れて消滅の割合も増大し、特に20件以下の商業集積地域では5m以上の津波に襲われるとほとんど全滅してしまうことが分かった。

商業集積地域ごとの店舗事業所数の変化(2010~2013年)と浸水深の関係

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷: 津波浸水深別商業集積地域の被災状況

111

101

17 2

2

1 31

63 3

11

11

13

1

1 1

14

2

1

6 2

1

1

1

4

11

4 1

21

1

1 4

1

2

1 3

2

142

2 15

1

4

3 1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

0m以上1m未満

(木造の多くが半壊)

1m以上2m未満

(木造の多くが全壊)

2m以上5m未満

(非木造も多くが半壊)

5m以上

(非木造も多くが全壊)

消滅 0~50%(大幅減) 50~90%(減少) 90~110%(維持) 110%以上(増加)

67

<規模の大きい商業集積地域> 50件以上の規模の大きい商業集積地域では、浸水深に関わらず被災前の店舗数の水準に回復出来ていない事が分かる。ただし浸水深が大きくなっても消滅しない商業集積地域もみられる。

商業集積地域ごとの店舗事業所数の変化(2010~2013年)と浸水深の関係

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷: 津波浸水深別商業集積地域の被災状況

111

101

17 2

2

1 31

63 3

11

11

13

1

1 1

14

2

1

6 2

1

1

1

4

11

4 1

21

1

1 4

1

2

1 3

2

142

2 15

1

4

3 1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

10~

20件

20~

30件

30~

50件

50~

10

0件

10

0~件

0m以上1m未満

(木造の多くが半壊)

1m以上2m未満

(木造の多くが全壊)

2m以上5m未満

(非木造も多くが半壊)

5m以上

(非木造も多くが全壊)

消滅 0~50%(大幅減) 50~90%(減少) 90~110%(維持) 110%以上(増加)

68

<規模の大きい商業集積地域> 50件以上の規模の大きい商業集積地域では、浸水深に関わらず被災前の店舗数の水準に回復出来ていない事が分かる。ただし浸水深が大きくなっても消滅しない商業集積地域もみられる。

商業集積地域ごとの店舗事業所数の変化(2010~2013年)と浸水深の関係

2. 商業集積統計でみる被災地の変遷: 津波浸水深別商業集積地域の被災状況

女川町中心部 (107件→0件)

大槌町中心部 (143件→17件)

釜石市只越町付近 (184件→109件)

3.結論と展望

商業集積統計を用いることで東日本大震災前後の商業集積地域の分布変遷を追

うことができることが分かった. ・石巻市の例が示すように、津波浸水地域で商業集積地域が消滅・縮小していること が明らかになった.

市区町村単位で集計することで、市区町村ごとに津波による商業集積地域の被害と回復の状況が明らかになった. ・太平洋沿岸,特に三陸沿岸では被害の大きさと回復の遅れがみられた.

津波データと組み合わせることで浸水深別の被害状況も明らかになった. ・小規模な商業集積地域の場合,浸水深が小さい地域では被災後も存続しているが, 浸水深が大きくなるに連れて消滅する割合が大きくなっていた. ・大規模な商業集積地域の場合,浸水深が大きくなっても存続している場合が 多かった.ただし商業集積地域の規模は小さくなっていた.

69

2 商業集積統計で見る東日本大震災

展望 商業集積統計を構成する店舗単位の被害状況の把握(浸水深別・業種別など) 被害モデルの構築 →他地域(南海トラフ地震の被害想定地域など)への適用 →商業集積地域消滅に伴い影響を受ける定住人口の推定(BtoC) など

MGDを用いた東日本大震災把握の可能性

70

電話帳・住宅地図の変遷 >仮設住宅・商店街も分かる

大規模人流データ(パーソントリップ、モバイル統計など) >被災前後の人流把握が可能。

Web情報(SNS、検索結果の利用) >特にSNSはAPIの活用で過去データも収集できる場合有

Eric Fischer, “Eric Fischer’s photostream”, http://www.flickr.com/photos/walkingsf/

マイクロ人口統計 >世帯の分布変遷把握

Akiyama, Y., Takada, T. and Shibasaki, R., 2013, "Development of Micropopulation Census through Disaggregation of National Population Census", CUPUM2013 conference papers, 110.

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MGD活用への課題

MGDを操作・分析出来る研究者・技術者の育成が必要。 MGD活用は都市・地域の把握・解析に関する研究領域において一つのトレンドになりつつある。そのような時代が到来した中、我々はMGDを操作・解釈するための技術と知識を身につけていく必要がある。

>対象がビッグデータとなるため、テラバイトクラスのデータでも 処理できる程度のプログラムスキルは必須。 >可視化のためにGISのスキルも必要。

>結果の解釈のために統計の知識も必要(+分析ソフト・プログラムのスキルも。)

MGDを万能のデータ・道具と考えてはならないことを理解する 現場(特に住民レベル)での活用にはまだまだ壁がある。MGDとフィールドデータをバランスよく使い分け、あるいは組み合わせていくセンスも求められてくると考えられる。

MGDの活用領域の開拓 世界的にもビッグデータ活用は活発になってきており、それに関連した研究も今後ますます盛んになる。日本がこの分野のイニシアティブを握り、日本初の研究・技術を普及させていくためには、関連する研究者・事業者との連携が重要である。

ご清聴頂きありがとうございました

<Contact> 秋山祐樹 東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員 愛知大学三遠南信地域連携研究センター 研究員 国土交通省国土交通政策研究所 研究官 マイクロジオデータ研究会 運営委員長

Email: [email protected] URL: http://shiba.iis.u-tokyo.ac.jp/member/akiyama/

(MGDに関する資料もダウンロード出来ます)

マイクロジオデータ研究会ホームページ http://geodata.csis.u-tokyo.ac.jp/wp/

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