6.3.3 白砂青松に関る瀬戸内海における団体の活動状況 (1)瀬戸内...

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6.3.3 白砂青松に関る瀬戸内海における団体の活動状況

(1)瀬戸内海沿岸の活動状況

瀬戸内海沿岸の各種団体等の活動状況を把握するため、既存資料を収集してリストアッ

プし、現地を訪問し、ヒヤリング調査を行った。

対象地を選定するにあたり、(社)日本の松の緑を守る会が選定した「白砂青松地 100

選」および「瀬戸内海の白砂青松~海浜資源マップ~ (財)中国産業活性化センター 平

成 11 年度」を元に選定した。

選定に際しては白砂青松に重点をおいて選定した。例えば、海浜部はあっても松林が見

られないあるいは松林が少ない所などについて今回は対象外とした。同様に、松原は存在

しても前面が人工構造物であり、玉砂利の海岸である箇所についても同様に対象外とした。

表 6.2 に選定した箇所を一覧表にまとめた。

表 6.2 本研究における訪問・ヒヤリング調査対象の選定地一覧

名 称 場 所 資 料

須磨海浜公園 兵庫県神戸市 白砂青松 100 選

高砂海浜公園 兵庫県高砂市 白砂青松 100 選

大浜公園 兵庫県洲本市 白砂青松 100 選

吹上の浜 兵庫県南あわじ市 白砂青松 100 選

慶野松原 兵庫県南あわじ市 白砂青松 100 選

渋川海岸 岡山県玉野市 白砂青松 100 選・瀬戸内海の白砂青松

田井海岸 香川県小豆郡土庄町 瀬戸内海の白砂青松

小部海岸 香川県小豆郡土庄町 瀬戸内海の白砂青松

白鳥神社松原 香川県東かがわ市白鳥 白砂青松 100 選

津田の松原 香川県さぬき市津田 白砂青松 100 選・瀬戸内海の白砂青松

観音寺松原 香川県観音寺市 白砂青松 100 選

松原海岸 愛媛県越智郡上島町 瀬戸内海の白砂青松

唐子浜海岸 愛媛県今治市 瀬戸内海の白砂青松

志島ヶ原海岸 愛媛県今治市 白砂青松 100 選・瀬戸内海の白砂青松

桂浜 広島県呉市倉橋町 白砂青松 100 選・瀬戸内海の白砂青松

包ヶ浦海岸 広島県廿日市市宮島 白砂青松 100 選・瀬戸内海の白砂青松

室積・虹ヶ浜海岸 山口県光市 白砂青松 100 選

奈多海岸 大分県杵築市 白砂青松 100 選

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(2)虹ヶ浜海岸

市民参加が積極的であり行政との連携・協働が確立されている地域である。行政との連

携・協働は先進事例である。

1)砂浜域の活動

虹ヶ浜海岸では、行政によるビーチクリナーによる海浜清掃の他、海水浴シーズン前後

には、光市クリーンアップ大作戦と称して、砂浜域のみならず市民による町中の清掃活動

が定着している。参加総数は2万人に達し、虹ヶ浜海岸のみでも5~6千人の規模である。

収集されたゴミは自治体の支援により回収され、処分される。海藻などが打ち上げられ

ているものは、自然の営みによるものであるためゴミと考えず収集を行わないのが特徴の

ひとつである。

夏季には、ナイター海水浴や花火大会、サンドアート大会など多様な企画を行い、観光

客や地域住民の砂浜域への接点は大きい。

ビーチコーミングやスナメリウオッチなどの活動を展開している団体もみられる。

2)海浜植物の活動

多様な海浜植物が生息しているものの、団体を通じての活動は乏しい。しかし、個人で

写真撮影を行ったり、種子を蒔いて生息数が増加傾向にあるなど個人で活動している人は

みられる。

3)松林での活動

虹ヶ浜海岸での特徴は、行政と市民が連携・協働し松林を大切に保全しようという意識

が根付いている点である。自治会や公民館での活動を通じて、毎年2月頃に苗木の植樹、

成長した苗木の間伐作業、大きな木にはナンバーを記したプレートの設置作業などを市民

の手で行っている。松林の管理は自治体が行っているが、住民との連携は先進的な事例と

思われる。

松の消毒、枯死した松の除去などは自治体が行っている他、コモ巻き・コモ外しなども

毎年行い、この作業に地元小学校が参画するなど地域住民の意識が高いことが伺える。

写真 6.3 虹ヶ浜海岸

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(3)観音寺松原

活動の中心は、「香川の水辺を考える会」(代表:吉田一代氏)であり、干潟から松林ま

での幅広い活動内容を見る事ができる。また、学校との連携による継続性の課題や世代継

承の課題への対応策について参考になる

1)砂浜域の活動

観音寺松原の前面砂浜域は、有明浜と呼ばれ、行政によるビーチクリナーによる海浜清

掃が行われている。定期的に地元小学校から高校までの生徒が主に参加して、海浜清掃活

動を行っている。また、最近では砂浜域の前面に干出する干潟において、生物観察会等の

取り組みも始まった。

2)海浜植物の活動

多様な海浜植物が生息し、希少な種が多い事がこの地域の特徴といえる。小学校から高

校までの参画が積極的で、定期的かつ継続的に行われているため、地元の自然環境に対す

る認識度の高い青年が育成されている。この点は、本研究会での検討を進める上で大いに

参考になる点であった。

希少種が多く見られる事から、情報発信についても慎重に行う必要があることも参考に

なる点である。

3)松林での活動

ここの松は、枝の張り方や形状が特徴的な松が多く、個性的な松林を形成している。松

林についても小学校から高校までが参画し、学年に応じた勉強会や観察会が開催されてい

る。学校側でも年中行事として組み込まれており、継続性の上で参考になる事例である。

この点で、地元紙や地元局を中心にマスコミに取り上げられるケースが多く、地元住民へ

の情報発信、認識度は高いものと思われる。

一方、行政との連携が確立されている状況であるいえる状態ではなく、住民側の積極性

で活動が展開されている。

松林自体の管理は、自治体で行っており植樹作業は行われているが、その数は虹ヶ浜海

岸と比較するとかなり少ない。また、この作業に市民の参画はない状況であり、今後は、

市民と行政の連携・協働が確立されるとさらいに良い活動の展開が可能であると思われる。

写真 6.4 観音寺松原

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(4)桂浜

地区長の呼びかけに参加者が集まるが、現状では海浜清掃に留まっている。また、参加

人数も比較的すくなく、また高齢者が多いため、今後の活動に継続性が課題となる事が考

えられる。

1)砂浜域の活動

桂浜では、自治会に相当する組織(区)が中心となり、毎月1回海浜清掃を行っている。

ここでは、自然に打ち上げられた海藻などもゴミとして回収するが、その後分別され堆

肥化を行っている。堆肥は、地元の農家が取りに来て畑に使用されており、循環型のサイ

クルが形成されている。この方法は、古来より行われてきた方法であるが、この地域の特

徴であるといえる。

2)海浜植物の活動

松林と砂浜部の間にコンクリート構造物があり、海浜植物の生息は乏しい。

地元市民の海浜植物に関する活動は見られない。

3)松林での活動

桂浜では、近傍に位置する桂浜神社の参道的意味もあり、松林を大切にする意識が高い

事が特徴である。しかし、松枯れや台風による倒木などにより、松林の面積は減少し、構

成する松も大木は数が少なくなっている。

この対策として、自治体による植樹が行われている。また、成長した苗木の間伐作業、

消毒などの管理についても自治体で行われているが、地元市民の参画はみられない。

写真 6.5 桂浜

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(5)唐子浜

安部和文氏ら数名が中心となり活動を展開している。行政との連携・協働が図られると

さらに異なった展開が可能かと思われた。

1)砂浜域の活動

砂浜域では、不定期ではあるものの海浜清掃を行っている。愛媛県では残り少ないハク

させ承知のひとつであり、有名な場所であるため地元以外の団体がここでの海浜清掃に来

る事が時々あるとのことである。

地元市民の参画は、多くなく実質的には少人数のグループでの活動となっている。

2)海浜植物の活動

白砂青松をつなぐ間の海浜植物が生息する範囲に興味を持ち、海浜植物を増やす様な取

り組みを行いたいが、知識や経験が乏しく、また十分な書籍も少ない事から活動できてい

ない。このことは、地域を越えての人的交流が必要であることを象徴しており、本研究会

での検討に参考となる事例である。

3)松林での活動

松林は、時折松枯れが生じるがすぐに伐採し、消却等の対応が行われており被害の拡大

は見られないとのことであった。松枯れする松よりも植栽する数が多ければ松林は減少す

ることはないとの考え方に基づき、松の植栽を続けている。

植栽は、虹ヶ浜の事例とは異なり一本一本離して植栽されており、それ以降は事前に放

置して成長させているという事であった。

どちらが正しいという結論よりも、現状の活動を尊重しつつ、以下にネットワークを構

築し、連携を図れるかという意味で参考になる事例であると考えた。

写真 6.6 唐子浜

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(6)松原海岸

NPO 法人 グリーンキャンドゥ(代表:濱村 隆氏)が中心となり活動している。会員

数は地元住民を中心とし多数いるものの、高齢者が多いため実質的活動は 20 数名程度とな

っている。

1)砂浜域の活動

松原海岸では、海水浴シーズン前に地元の小学校から商船高校の生徒が多く参加し、海

浜清掃を行っている。

2)海浜植物の活動

松林と砂浜部の間にコンクリート構造物があり、海浜植物の生息は乏しい。

地元市民の海浜植物に関する活動は見られない。

3)松林での活動

松林は、神社が中にあるなど松林を大切に保全しようという意識が根付いている。松林

の中はキャンプ場として活用されているが、テントを張るために整備がされている点はな

く、自然に近い形での松林である。

護岸や道路が近接し松林の幅は狭いが、植栽などの活動を続けている。

一方、要望や支援要請に対して行政が応えくれないなど、行政との連携について課題が

見られる。点である。自治会や公民館での活動を通じて、毎年2月頃に苗木の植樹、成長

した苗木の間伐作業、大きな木にはナンバーを記したプレートの設置作業などを市民の手

で行っている。松林の管理は自治体が行っているが、住民との連携は先進的な事例と思わ

れる。

松の消毒、枯死した松の除去などは自治体が行っている他、コモ巻き・コモ外しなども

毎年行い、この作業に地元小学校が参画するなど地域住民の意識が高いことが伺える。

写真 6.7 観音寺松原

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(8)まとめ

瀬戸内海沿岸の各種団体等の活動状況を把握するため、既存資料を収集してリストアッ

プし、現地を訪問し、ヒヤリング調査を行った。その結果概要を一覧表にまとめた(表 6.3)。

表 6.3 各地の活動概要一覧

砂浜域の活動 海浜植物の活動 松林での活動 備考・その他

虹ヶ浜海岸

海浜清掃(海水浴前)

ビーチクリーナー

サンドアート大会

個人で活動してい

る人はいる模様

苗木植樹(密植)

成長苗木の間伐

市民参加・行政との連

携も確立されている。

観音寺松原

海浜清掃

ビーチクリーナー

海浜生物観察会

小・中学生を中心に

勉強会や観察会を

多数実施している。

中・高生を中心に

勉強会 や観察 会

を多数実施。

小・中・高の学校との

連携が確立

マスコミ報道多数

桂 浜

海浜清掃

海藻の堆肥化

(毎月1回)

海浜植物について

は活動していない。

植樹・間伐・管理

ともに行政中心

市民は関与なし

地区長を中心に参加

を呼びかけている。

唐 子 浜

海浜清掃

(不定期)

取組みを開始した

いが知識がない

苗木植樹

密植で はなく独

立させて植樹

実質数名の仲間での

活動になっている。

松 原 海 岸

海浜清掃

(海水浴前)

海浜植物について

は活動していない。

苗木植樹

道路脇 などに植

メンバーは多いが高

齢者が多い。

実質は数名で実施。

そ の 他

海浜清掃は、所々で

行われている。

活動している所な

活動し ている所

なし

多くの所で活動の実

態が確認できなかっ

た。

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6.3.4 ネットワーク構築のためのモニタリング手法の検討

(1)課題の抽出

各地を訪れ、状況を見聞きする中で前述した各地域の状況を把握した上で、抽出された

課題とその対応方針について、表 6.4 に一覧表を整理した。

表 6.4 白砂青松モニタリングの課題とその対応策一覧

白砂青松

モニタリン

グの課題

1.同じ白砂青松地といえども、その規模、立地条件、人的導入

力などの条件は地域によってそれぞれ異なる。

2.白砂青松地は残っているものの、そこで活動している人、団

体が存在しない地域が多くみられる。

3.各地での活動は、海浜清掃が最も多く実施されているものの、

その内容、処理方法などは地域性などそれぞれの考え方があ

る。

4.海浜植物などは、興味をもつ人は多い物の知識や経験のある

人材が少なく活動している地域は限定的である。

5.松に関する取組みは少ない。行政との連携が必要であるが確

立されている地域は限定されている。

6.高齢者が多く体力的に負担になる事、複雑な事に関する事項

は限界があり、後継者の問題も課題である。

対応策

1.既存の活動を尊重しながら、活動の記録を残す事から開始し、

他地域との情報交換の中で活動を発展させていく様に考慮す

る。

2.画一的に押しつけとならないよう、客観的に幅広い項目を設

定し、各地域に応じた対応可能な項目について対応を検討し

てもらう。

3.他地域との交流を促す様なモニタリングを提案し、各地域で

の不足する知識や人材を補える形を目指す。

(2)モニタリング項目の抽出

白砂青松モニタリングの課題とその対応策を踏まえ、現状の活動の有無のみでなく、想

定できる範囲で幅広く網羅できる各項目を抽出するようにした。

行動から分類してモニタリング対象を整理した一覧表を表 6.5 に示した。

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表 6.5 モニタリング項目の抽出一覧

行 動 大分類 小分類 モニタリング対象 判定

生物をみる

動物をみる

海獣をみる スナメリをみる -

魚をみる 浜に打ち上げられる魚をみる △

海岸生物をみる 底生生物、貝殻等漂着物をみる ○

鳥をみる 留鳥、夏鳥、冬鳥などをみる ○

昆虫をみる マツノマダラカミキリなど ○

植物をみる 海藻・海草をみる 漂着物をみる ○

草木をみる 海浜植物、松、キノコなど ○

水をみる 水質をみる

- (対 象 外) × 水の動きをみる

土をみる

底質・地質をみる - 粒径、鉱物などをみる △

土の動きをみる

地形をみる 幅・長さ、面積、勾配、

人工構造物などをみる ○

堆積をみる 地盤高、断面変化、堆積傾向、

減少傾向などをみる △

ゴミをみる ゴミの質をみる - 生活系、産業系、自然系 ○

ゴミの動きをみる - (対 象 外) ×

「スナメリをみる」では、海浜部よりスナメリを目撃できる事を想定しているが、ここ

では取上げず、スナメリモニタリングの中で取り上げるようにする。

「浜に打ち上げられる魚をみる」では、魚の生死には関係なく砂浜に打上げられる魚を

見ることを想定している。大型魚類やスナメリなどに魚群が追われると、逃げ場を失った

魚の群が浜に打ち上げる事が起こるものである。魚の遺骸が打ち上げられる事も含め、そ

の数や機会が多く無いことが想定され、定常的なモニタリングにはならないため△として

いる。

「水をみる」では、一般市民が陸側からのアプローチによる作業を想定しているため、

白砂青松モニタリングとしては対象から除外して考えている。

「土をみる」の中で、「底質・地質をみる」「粒径・鉱物などをみる」は、専門的知識や

技術を要するため△としている。

「堆積をみる」についても同様に、詳細にデータを取得するためには測量技術が必要と

なる事から△としている。

「ゴミの動きをみる」では、手間と時間、位置精度確保する事が必要となるため一般市

民を対象としたモニタリングとしては対象から外して検討を進めている。

(3)モニタリング手法の検討

魚をみる

「魚をみる」では、海岸部に漂着した魚類の遺骸や大型魚類や海獣等に追われて逃げ場

を無くし浜に打ち上がる魚類などが考えられる。

「ゴミをみる」との関連がある。

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海岸生物をみる

モニタリング

対象

データ取得方法 備 考

底生生物 干潮時に砂浜域または干潟において一定量を底質ごと採種し

振るい分ける。

二枚貝、斧足類、

カニ、多毛類など

貝殻などの漂

着物

海岸線に沿って散策しながら貝殻等を収集する。 「ゴミをみる」と

の関連がある。

鳥をみる

モニタリング

対象

対象種の例 手 法

留鳥

アオゲラ、アカゲラ、イカル、イソシギ、イソヒヨドリ、ウ

グイス、ウミネコ、エナガ、オオタカ、カケス、カワラヒワ、

キジバト、キセキレイ、セグロセキレイ、ゴイザギ、コゲラ、

コジュケイ、シジュウカラ、トビ、ヒガラ、ヒヨドリ、フク

ロウ、ホオジロ、ミサゴ、ムクドリ、メジロ、モズ、ヤマガ

ラなど。 目視および鳴き

声による。

渡り鳥

夏鳥 オオルリ、キビタキ、クロツグミ、コチドリ、コムクドリ、

センダイムシクイなど。

旅鳥 エゾビタキなど。

冬鳥

アオジ、アカハラ、アトリ、ウソ、カシラダカ、クロジ、シ

メ、ジョウビタキ、シロハラ、ツグミ、ビンズイ、ベニシマ

コ、マヒワ、ルリビタキなど

昆虫をみる

モニタリング

対象

対象種の例 手 法

セミ ハルゼミ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミ、クマゼミ、

ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、チッチゼミなど。

目視および採補

による。 チョウ

ベニシジミ、アオスジアゲハ、アゲハ、ヤマトシジミ、コジ

ャノメ、ヒメウラナミジャノメ、ヒメジャノメ、スジグロシ

ロチョウ、イチモンジセセリ、ダイミョウセセリ、アサギマ

ダラ、キマダラルリツバメ、クロシジミ、キマダラセセリ、

キチョウ、アカタテハ、キタエテハ、ルリタテハなど。

その他 マツノマダラカミキリ(即駆除)

ハサミムシ、コメツキムシ、ヒメバチ、アリなど約 20 種など。

海藻・海草をみる

「海藻・海草をみる」では、海岸部に漂着した海藻や海草を収集して同定作業を行う事

が考えられる。「ゴミをみる」との関連があり、地域により汀線部に打ち上げられた海藻や

海草をゴミと捉えるか、自然の物であるためゴミでは無いと捉えるか地域によって異なる。

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草木をみる

海浜植物(キノコ含む)をみる

モニタリング

対象

対象種の例 手 法

海浜植物 コウボウムギ、チガヤ、ハマダイコン、ハマハタザオ、コウボ

ウシバ、ハマエンドウ、ハマニガナ、ミヤコグサ、ツルナ、ハ

マヒルガオ、ハマボッス、キリンソウ、タイトゴメ、スナビキ

ソウ、ツルソバ、ノハナショウブ、ハマニンニク、ハマボウフ

ウ、ギョウギシバ、スカシユリ、ハマナデシコ、アオツヅラフ

ジ、ノブドウ、ナンバンギセル、ハマオモト、ラセイタソウ、

オカヒジキ、カワラナデシコ、ハマカンゾウ、ハマグルマ、ハ

マスゲ、ハマベノギク、ワダン、アシタバ、ウンラン、シロヨ

モギ、ススキ、ハイメドハギ、ハマゼリ、ホソバハマアカザ、

ダンチク、ハマエノコロ、カワラヨモギ、ハマギク、イソギク、

ツワブキ、スイセン、オニヤブソテツ、ヒサカキ、アキグミ、

ウバメガシ、シャリンバイ、トベラ、マルバシャリンバイ、ハ

イネズ、ツルウメモドキ、ノイバラ、シャシャンボ、テリハノ

イバラ、ハマナシ、マサキ、ハマボウ、ヤブコウジ、ハマゴウ、

ネコノシタ、クコ、オオバクミ、ナワシログミ、ハマヒサカキ

など。

目視および写

真撮影等によ

る。 キノコ スミゾメシメジ、シャカシメジ、ホンシメジ、ウラムラサキ、

シモコシ、シモフリシメジ、ネズミシメジ、マツタケ、シロマ

ツタケモドキ、ハエトリシメジ、カキシメジ、ミネシジミ、シ

ロオニタケ、カバイロツルタケ、ザラエノハラタケ、ショウゲ

ンジ、オウギダケ、クギタケ、チチアワタケ、ヌネメリイグチ、

アミタケ、ムラサキヤマドリタケ、ニガイグチモドキ、ミドリ

ニガイグイチ、モエギアミアシイグチ、アカヤマドリ、セイタ

カイグチ、キヒビタケ、ベニイグチ、ハナガサイグチ、キクバ

ナイグチ、ミヤマベニイグチ、ツチカブリ、ケシロハツ、アカ

ハツ、ハツタケ、ドクベニタケ、ニオイコベニタケ、トキイロ

ラッパタケ、ムラサキナギナタタケ、ケロウジ、コウタケ、ク

ロカワ、ツチグリ、コツブタケ、エリマキツチグリ、ツチクラ

ゲ、シラタマタケ、ショウロ、マツオウジ、サマツモドキ、ヒ

メカバイロタケ、スギヒラタケ、ニガクリタケ、ミドリスギタ

ケ、ヒトクチタケ、カワヒラタケなど。

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マツをみる

「マツをみる」では、他の項目と異なり松林の管理に関連する活動を整理する様に考え

る。これはマツの寿命は、数百年とも言われ日々の活動を通じてのモニタリングには変化

が捉えにくい側面があるためである。

しかし、住民参加型のイベントや環境学習という面では意義があり、これらの活動を通

じて松林の維持管理および松枯れの早期発見に繋がる事が重要であると考える。また、こ

れらの活動を記録することは長期的にはモニタリングに繋がり、地元住民の意識向上にも

貢献できる材料となると思われる。

従って、マツについては事項で詳細に維持管理活動という側面から整理するものとした。

土の動きをみる

モニタリング対象 対象種の例 手 法

底質・地質をみる 粒径:

鉱物: 試料採種

土の動きを

みる

地形をみる

面積:幅・長さを計測し面積を算出する。

勾配:断面測量、ポール横断測量など。

人工構造物:施工年、形状、位置などを記録する。 目視および計

測による。

堆積をみる

地盤高:水準測量、ポール横断測量など

断面変化:堆積傾向か減少傾向かをみる。

※定点を決めての写真撮影も効果的である。

ゴミをみる

ゴミの区分 ゴ ミ の 例

産業系ゴミ 発砲スチロール、漁具・漁網、養殖関連備品、ロープ、ワイヤー、タイヤ、

電気機器、車輌関連部品

生活系ゴミ ペットボトル、ビニール袋、空き缶、ライター、食品等の包装材、花火、釣り

具関連

自然系ゴミ 海藻・海草、流木、貝殻、動物の死骸など

※魚を見る、海岸生物をみる、海藻・海藻をみると関連する。

6.3.5 ネットワークの試行

(1)松林の活動項目と各地の実施状況

白砂青松を構成する要素のうち最も重要な要素である松林では、他の項目と異なり松林

の管理に関連する活動を整理し、地域住民等の参画を得ながら活動できるように検討を行

った。これはマツの寿命が数百年とも言われ、日々の活動を通じてのモニタリングには変

化が捉えにくい側面があるためである。しかし、住民参加型のイベントや環境学習という

面では意義があり、これらの活動を通じて松林の保全、維持管理および松枯れの早期発見

に繋がる事が重要であると考える。

つまり、これらの活動を記録することで長期的にはモニタリングに繋がり、地元住民の

意識向上にも貢献できる材料となると思われる。

既存の知見と活動地域を訪問する中でのヒヤリング等により、表 6.6 に示すように松林

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の管理に関する活動のサイクルが整理できた。

松かさを収集しその中より「採種」を行う事から考えると、発芽して育苗する事になる。

3~5年掛けて育苗した後、現地へ苗木として「植裁」が行われる。この時に、一般的に

は 30cm~50cm 程度の間隔で密植で植えるのが一般的とされている。

密植する事を前提で考えると、苗木の成長に伴って5年間隔程度で「間伐」が行われる。

間伐は定期的に複数回行われ、多くの苗木の中から大木に成長させるのは数本程度という

事になる。

マツが大きく成長した後は、晩秋での「こも巻き」と、啓蟄あたりでの「こも外し」が

行われる。管理保全上どの程度有効なものかは不明であるが、先人からの知恵と文化の継

承の意味もあり、子供達の参加するイベントとして活動が行われている所もある。これら

が全ての地域で同じように行われている訳ではないが、概ね同様のサイクルになっている。

表 6.6 作業項目と各地域の実施状況一覧

現状の活動に加えて、管理的側面が強くなるが毎木管理を行える可能性がある。加えて、

前述した通り松林の保全、維持に有効であろうと見直されて来ているのが「落ち葉かき」

である。

「落ち葉かき」は、昭和に入っても家事や風呂の燃料として生活に密着する中で行われ

てきた松林を保全する活動であった。土壌の肥沃化を防ぐ事で、広葉樹の侵入を防ぎ、

事項より、松林におけるモニタリング活動を検討する上で、毎木管理と落ち葉かきにつ

いて記述する。

(2)毎木管理

毎木管理は、1本ごとのマツについてカルテや台帳を効率良く作成し、マツの管理や保

全に活用する目的で検討を行った。

作業には、表 6.7 に示すような地理情報システム(GIS)を用いて行い、観音寺松原で

の既存データの活用と虹ヶ浜海岸における現地作業の検証を行った。

GIS は市民団体等でも入手可能な低価格ものを選定した。

場所・項目 採取 植裁 間伐

こも巻き

(外し含

む)

毎木管理 落ち葉か

虹ヶ浜海岸 △ ○ ○ ○ ○ △

観音寺松原 × △ × ○ △ △

桂 浜 × ○ × × × △

唐子浜海岸 × ○ - × × △

松 原 海 岸 × ○ × ○ × △

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表 6.7 使用した GIS アプリケーション

アプリケーション

地図太郎

バージョン 6.2 および 6.4

会社名 東京カートグラフィック株

式会社

座標系 緯度経度(WGS84)

1)観音寺松原の調査データの整理

平成 14 年度に観音寺松原で行われた一斉調査後、吉田一代氏が追跡している 200 本の

松について図化およびデータの電子化を試行した。

吉田氏により記録されていたマツの位置図面をスキャニングした。読み取ったラスター

画像は、緯度経度(WGS84)の座標系で座標付与し、GIS の基本図として作成した。

次に、調査野帳から一本一本のマツの位置を点情報で表現し、これに胸高直径および樹

高の属性データを持たせ主題図を作成した。作成した主題図を図 6.6 に示す。

赤い丸印がマツの位置情報となっており、その周囲の茶色の円は直径を表している。図

の右上に示しているのが、マツの現況写真でありマツの位置を表す赤い丸印をクリックす

る事で現れる。

属性データは、他の項目でも入力が可能であるため、本研究で検討している松林のでの

活動を記録するカルテや台帳の様に活用することを想定している。

現状では、一本一本の大木のマツのみ試行しているが、密植した苗木については、エリ

アをポリゴンデータで表現し、点情報と同様に属性データを持たせる事ができるため、植

栽日や本数、間伐実施時期の計画や記録にも活用できるものと考える。

行政と連携して活用するなど、有効なツールとして活用されることを想定している。

図 6.6 観音寺松原の調査結果

2)虹ヶ浜海岸のマツ位置調査

2009 年2月 15 日に虹ヶ浜海岸では、既存図面の無い場合を想定して、マツの位置につ

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いて調査を行った。調査は、GPS とデジタルカメラを使用し以下の手順で行った。

イ)デジタルカメラを用意し電波時計にて秒単位で撮影時刻がわかるように時刻合わせ

を行う。

ロ)GPS(RoyalTek 社製、RGM-3800)を天空に向け、調査中の移動軌跡を記録させる。

ハ)マツの近傍(1m以内)より、付けられている番号札が映るよう写真撮影を行う。

ニ)デジタルカメラの写真撮影時刻と GPSの時刻をパソコン上で照合し、緯度経度デー

タとマッチングさせ、写真データに緯度経度を書き込ませた。

ホ)緯度経度を書き込ませた写真データを GIS で整理し主題図を作成した。

作成した主題図の例を図 6.7 に示した。

図 6.7 光市虹ヶ浜におけるマツの立ち位置

GPS とデジタルカメラとを用い 1919本のマツについて位置を把握するのに、6名で半日

程度の現地作業であり比較的短時間で安価に調査できた。

3)モニタリングの検討

数千本におよぶ松においても、その立ち位置を調査することは、低価格で比較的簡単に

できることがわかった。既存の図面等が作成されていない地域においても管理する上で有

効な電子図面の作成が可能である。

作成された主題図は、松の基盤図として、各団体にとって様々な活用ができると思われ

る。立ち枯れの場所の状態確認調査や区域毎の樹周や樹高の用いることが可能と思われる。

(3)落ち葉かき

前述したように松林の保全、維持管理を行う上で人が手を入れ管理する必要がある。そ

の中でも落ち葉かきはマツノザイセンチュウによる松枯れを防ぐ意味でも、有効な対策の

ひとつであると言える。落ち葉かきは、地域住民が誰でも参画でき季節性も強く無いこと

から地域住民の参画を促すには良い項目でもあると言える。

松林中の地表面がきれいになることで、ショウロ(松露)を中心としたキノコ類が生育

する可能性もあり、そうなれば地域の話題性や活性化につながる可能性も想定される。

しかし、収集した落ち葉の処理やショウロなどが育成した場合には、瀬戸内海沿岸の白

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砂青松地は国立公園であることからも注意が必要である。いすれも、活動する地域住民と

行政の連携が必要であり、環境保全と地域活性化を合わせた活動が求められてくるものと

思われる。

行政との連携あるいは支援体制というものは、活動の継続性とりわけ後継者の育成の上

で非常に重要な要素となるものである。

(4)松林における活動イメージ

図 6.8 に示すように松林を中心に検討した活動は、ほぼ1年間を通じて多様な活動が可

能であると思われる。これを全て行える事が理想的ではあるものの、地域の現状や課題に

応じて取組みが展開されれば当面良いと考えられる。

その活動の結果を広く情報公開しながら、長期的に蓄積することが市民活動によるモニ

タリングの礎となるものと思われる。

ここに、海浜植物や海岸清掃、昆虫や鳥類などの他の項目を加味して考えると、白砂青

松地には多くの人の参画が必要であることがわかる。

図 6.8 松林における活動のイメージ

春 夏

こも巻き

こも外し

松かさ

採種

毎木監視

落葉かき

海浜植物

海岸清掃

昆虫調査

鳥類調査

環境学習

育苗期間(3〜5年)

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6.3.6 ネットワークの枠組みの検討

(1)検討会による検討

白砂青松モニタリングが、実質的に活動し継続していくためにどの様に検討を進めれば

良いか具体的にするために、実際に地域で活動されている方に集まって頂き、検討会を実

施した。

検討会の概要は次の通りである。

【日 付】平成 21 年 12 月 24 日(木曜日)

【時 間】15:00~17:30

【場 所】八丁堀シャンテ 3階 ヒスイ

【出席者】

氏 名 地域等 所 属

森本勝利

(代理:井手畑氏) 桂浜 倉橋地区自治会連合会 会長

植村芳弘 虹ヶ浜海岸 光市虹ヶ浜自治会連合会 会長

濱村 隆 松原海岸 NPO 法人 グリーンキャンドゥ

吉田一代 観音寺松原 香川の水辺を考える会 代表

上嶋英機 本研究会 広島工業大学 教授

松原雄平 本研究会 鳥取大学 教授

検討会の中で、議論された主な意見は以下の通りであった。

①モニタリング項目の中に「地形をみる」という項目を加えるべきである。

人工構造物ができてから地下から塩分が逃げず松枯れがひどくなったと言われている。

②海岸と砂浜、松原と一体として考える事が必要である。

③松原や砂浜の現状を維持するために、他地域に無関心では良い結果に繋がらない。他

地域との情報交換や交流を持ち、みんなで守る事が需要であると感じた。

④様々な問題をもっと表に出して、皆で対策を考える様な場となって欲しい。集まって

意見を出し合い、様々な事例を収集するサミットやシンポジウム的活動を行いたい。

⑤非常に刺激になり自分の地域の足りない点も見いだせた。次の世代に繋げて行く事も

考えていきたい。

⑥樹木医の定期的な巡回などを環境省がサポートして貰えると心強い。

(2)白砂青松モニタリングのイメージ

白砂青松モニタリングのイメージを図 6.9 に示す

検討会の参加者の中では、虹ヶ浜海岸が地域住民の参画状況や行政との連携のはかり方

などで先進的な事例として非常に参考になる地域であった。

この地域で活動されている、植村好弘氏を中心に白砂青松モニタリングネットワークを

構築できる状況が整いつつある。

植村氏を中心に、各地域の情報共有や人的交流を行いながら社会に対して情報を発信し

ていく。その事が、他地域での活動に繋がり他の地域からの参画が期待される所である。

各地域の参画者は、インターネットを通じて情報を知り、自分の地域の活動の参考にで

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きる。活動の結果は、インターネット上で記録公開されることにより、データを蓄積する

ことができる。

図 6.9 白砂青松モニタリングのイメージ

(3)まとめ

表 6.8 にまとめを示す。

表 6.8 白砂青松ネットワークまとめ一覧

手 法

・各地域の活動状況を尊重しつつ中長期的に足並みを揃える方向性。

・幅広く活動できるよう対象や項目を幅広く設定した。

・現状の活動記録を残し、情報公開しながらモニタリングを進める。

スキーム

・白砂青松ネットワークの基盤となるものが構築できた。

・HP やブログを通じて、地域間交流や人的交流を活性化する。

・ネットワークの拡大を目指して広域化を進める。

・取り組めていない活動内容を他地域を参考に取り組み開始できる。

課 題

・統一的な手法が確立できておらず、広域での比較が困難な点が課題。

・HPのサーバー管理をはじめ活動資金をどこから得るのか不確定

・高齢者が多いため、インターネットが手段として適正か疑問な点が残る

が運用開始後の費用を考慮するとインターネットが安価と思われる。

・後継者の育成に向けた対策が十分検討出来ていない点は課題である。

・モニタリングで見えてきた事項に対し、環境政策が対応されるかが不確定

・参画地域が少なく、広域性が乏しい

6.4 干潟ネットワーク

6.4.1 ネットワークのねらい

瀬戸内海の多くの干潟は、埋め立てなどにより消失したが、多様な生物が棲む干潟はま

だまだ残されている。そのような干潟を後世に受け継いでいくため、また地域の干潟を地

情報公

データ

ネットワークの拡大 (地

唐唐 子子

観観 音音 寺寺 松松

桂桂 浜浜

虹虹 ヶヶ浜浜

植植 村村 氏氏

松松 原原 海海 岸岸

白砂青松という 共通の資源を 持つ地域にお

いての

一般市民の白砂青松再認識 各地の白砂青松地情報公開・情報

活動の継続を促し、保全へ繋げる

ホームペー

各地のト

ピック モニタリングの

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域住民が見守りながらお互いにネットワークを構築することで、「干潟を通し、瀬戸内海の

環境を見続け、保全に結びつけること」をテーマとして取り上げた。

① 干潟へ関心をもつこと、干潟の大切さを理解してもらうこと

② 干潟の健康状態を常に把握し、異常があれば調査を実施できる体制を作ること

③ 後世へ、今と変わらない干潟を継承していくこと

ここでは、瀬戸内海の干潟の現状を把握した上で、市民が長期的に実施できるモニタリ

ングの項目と手法について検討し、実際に実施可能であるか試行を行った。その結果を基

に、今後の継続に結びつけるためのネットワークの形成と情報発進・情報交換のためのシ

ステムを構築した。干潟ネットワークにおける研究の流れを図 6.10 に示す。

図 6.10 干潟ネットワークにおける研究の流れ

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6.4.2 瀬戸内海の干潟の現状

瀬戸内海における干潟面積は、1898 年から 1949 年までの 50 年間に、25,190ha から

15,200ha へとおよそ 10,000ha 減少した。その後、1949 年から 1990 年までの 40 年間で約

3,500ha減少し、1990年時点で11,700haとなっている(瀬戸内海環境情報センター、2007)。

また、環境省の第4回環境保全基礎調査(1997)によると、岡山県、広島県、山口県、愛

媛県、香川県、大分県の6県で、昭和 20 年以降消失した干潟が 71 箇所にも及び現在残さ

れている干潟は 427 箇所である。

このデータからも分かるように、現在では埋め立てなどにより、自然のままの状態が残

されている干潟は、非常に少なくなっている。例えば、瀬戸内海の四国沿岸では、かつて

瀬戸内海沿岸に特徴的であった前浜干潟が、瀬戸内海側の海岸線がほとんど埋め立てられ、

愛媛県東予市から西条市にかけての沿岸に見られる程度となった(環境保全基礎調査:

2007)。

次ぎに、市民による干潟での環境活動についてであるが、瀬戸内海の干潟をフィールド

として活動している市民団体は少なく、まだ知られていない干潟が残されている。

本調査の結果では、瀬戸内海の干潟 427 箇所に対し、環境調査や環境学習など何らかの

活動のフィールドとなっている干潟は、わずか 25 箇所であった。

図 6.11に、瀬戸内海の干潟の分布と活動状況を示す。

図 6.11 瀬戸内海における干潟の分布と調査/活動のある干潟

6.4.3 ネットワーク構築のためのモニタリング手法の検討

(1)干潟領域の定義

干潟とは、秋山ら(1983)によると「一般的に、干潮時に露出する砂泥質の平底を干潟

と呼んでいるが、これが形成されるためにはいくつかの条件と長い歴史が必要とされる」

と説明している。また、安田ら(2004)は「干潟とは、河川からの土砂の流入や波浪の働

きにより浸食や運搬が繰り返され、長い年月をかけて砂泥が堆積してできたもので、満潮

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時には平底が海に沈み、干潮時には露出する平底のことである」と定義している。

ここでは、長い年月をかけて形成された干潮時に露出する砂泥質の平坦な場であり、低

潮線から潮の影響のない区域あるいは護岸などで分断されている区間までを干潟と定義し、

高潮線より陸側あるいは浸水しない区域を後背地とする。図 6.11 に示すように、磯場、

後背地、アマモ場やヨシ原が含まれる。

また、一般的に干潟は前浜干潟、河口干潟、潟湖干潟、人工干潟の4種類に分類され、

瀬戸内海では主に前浜干潟と河口干潟が存在している。各干潟の定義を以下に示す。

前浜干潟

河川などによって運ばれた砂泥が海に面して前浜部に堆積して形成された干潟

河口干潟

河口部や河川干潮域に河川の運んだ砂泥が堆積して形成された干潟

潟湖干潟

浅海の一部が砂州、砂丘、三角州などによって外海から隔てられてきた浅い汽水

域の区域に形成された干潟

人工干潟

人工的に土砂などを投入して新しく形成した干潟

(環境省:1994)

図 6.12 干潟イメージ図

(2)干潟におけるモニタリング項目

干潟の環境は、様々な要因から構成されているが、一つの干潟の環境を総合的にモニタ

リングしていくために、干潟を構成する要素を整理し、干潟におけるモニタリング対象を

抽出した。そこから、様々なところで実施されている調査手法を参考に、実際に一般市民

が実施できるモニタリングを整理した。

ここで、各モニタリング項目に対し、“専門知識を持たなくてもできること”、“誰でも

簡単に使用道具が用意できること”を前提とし、各項目について、簡易的なモニタリング

の方法をまとめた。

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モニタリングの分類と項目一覧を表 6.9 に示した。ここでは、生物の観察会など様々な

団体が既存で行っている活動を重視することとし、道具を使わず五感を使って実施できる

ことを基本にした。モニタリング手法については、実際の労力や精度について、現地にお

いて試行をしながら検討することで、市民が継続的に実施可能であるか検証した。

表 6.9 干潟におけるモニタリングの分類と項目

分類 項目 方法

自然形態 全体景観 目視

面積 GPS・地図

勾配 目視

沈下および隆起 目視

後背地の有無 目視

磯場の有無 目視

人工物 目視

干潟の生物 生物多様性 鳥類の種数 目視

甲殻類の種数 目視

二枚貝類の種数 目視

腹足類の種数 目視

多毛類の種数 目視

巣穴の数 目視

砂団子の被度 目視

生物の生息環境 底質 温度 計測

粒度 目視

硬度 目視

におい 目視

水質 水温 計測

塩分 計測

色(濁り) 目視

におい 目視

親水性 活動 潮干狩り 目視、ヒヤリンク ゙

釣り 目視、ヒヤリング

散策 目視、ヒヤリング

漁業 目視、ヒヤリング

環境活動 目視、ヒヤリンク ゙

広報 ホームページ、看

板等

目視、ヒヤリング

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(3)自然形態モニタリング

ここで、干潟の自然形態を「干潟全体を通し景観的な意味も含めた干潟の形」と定義し、

干潟全体の視覚的な構成をモニタリングすることとした。

干潟の自然形態は主に、全体景観、面積、沈下および隆起、勾配、後背地や磯場、植生、

人工物から構成されている。自然形態は、短期的に大きく変化することは考えにくいが、

長期的な視点からすると、目に見えない程の変化が蓄積し大きな変化になる。このことか

らも、長期的に監視していくことは、重要なことであると言える。

本項では、自然形態における各項目のモニタリング方法について説明する。

1)干潟の形態・景観

干潟についたらまずは、全体を眺めて干潟の状況を観察し、干潟の地形や植生、後背地

などがどのように構成しているかをモニタリングすることとし、それを模式図に表現する

こととした。そうすることで、干潟全体の様子がその図一枚から把握でき、モニタリング

調査毎に更新することで、その時々の変化が把握することが可能である。

そこで、誰にでも分かりやすく干潟の形状を示す模式図を作成することとした。香川県

観音寺市にある有明浜の模式図を図 6.13 に示す。また、写真と併用することで、その様

子と全体の構成がわかる。

図 6.13 有明浜の模式図

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2)面積

本調査の結果、干潟の面積について正式な定義はなく、現地におけるモニタリング事例

は確認できなかった。

ここでは、年間の平均的な干潮位に干出する範囲を干潟の面積と定義する。面積の調査

方法について、GPS を使用した現地での調査法、航空写真や衛星画像を使用した机上での

測定法の2種類の方法について検討した。

a)干潟の水際を、GPS を持って歩く

平成 21 年 9月 18 日(金)大潮の干潮時(15:48、41cm)の前後合わせて1時間程度で、

広島県竹原市のハチの干潟の面積を測定した。方法は、GPS を着用し、潮位 50cm 辺りの水

際を歩き、縁辺部の距離を測定せいした。その後、GIS ソフト地図太郎を使用し、GPS デー

タを解析し、面積を計算した。

方法としては簡単であり誰でも実施可能であるが、特に底質の柔らかい泥の部分では、

歩くことが困難であり、正確に水際を歩くことができなかった。また、歩いているうちに

潮が満ち始め、一定の潮位線のデータが取れなかった。

調査実施日の潮汐を図 6.14 に、GPS を持って歩いた場所を図 6.15 に示した。

2009年9月18日(金)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

潮位(cm)

大潮干 潮 15:48(41cm)

図 6.14 平成 21 年 9月 18 日 竹原港の潮汐

図 6.15 最干時前後1時間に歩いた線

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b)航空写真から読みとる

航空写真は、2007 年 11 月 19日(月)長潮の干潮時付近(10:30、110cm)に、上空 600m

から撮影されたものである。図 6.16 に示すように、航空写真は、干潮時に合わせて撮影

することが可能であり、費用がかかるが、その詳細な情報から縁辺部を特定することが可

能である。そこから、大潮の干潮時に干出すると思われるラインを想定し、写真から読み

とった。

面積は、フリーソフト(!0_0!Excel シリーズ 長さ・面積測定 Free Ver2.20)を使用

して測定した。

図 6.16 航空写真からの読み取った干潟縁辺部のライン

c)衛星画像から読みとる

無料の衛星画像は、インターネット(例えば Google)から入手可能である。図 6.17 に、

Google Earth の画像から読みとった干潟のラインを示した。

無料の衛星画像は、撮影時間の設定が出来ないため、干潮時の画像を確実に入手するこ

とが困難であり、図 6.17 に示すように満潮時に撮影されている場合、干潟の状況が分か

りづらい。また、画像の更新が頻繁にされないため、リアルタイムの干潟の状況を把握で

きず、継続的なモニタリングには適していないことがわかった。

次ぎに、有料の衛星画像から読みとる方法についても検討した。これは、航空写真と同

様に撮影時間を設定することが可能であり、広範囲の情報を得ることができるが、非常に

高価なもので一般の市民が購入し、使用するには適さない。

図 6.17 衛星画像(無料)から読みとった干潟縁辺部のライン

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GPS徒歩 航空写真 衛生画像(無料)  Google

画像

方法 最干時に合わせ、GPSを持ち、干潟の水際沿いを歩く最干時に合わせ、航空写真を撮影し、干潟が干出している面積を見積もる

衛生画像を無料で入手できるサイトから、画像を取り出し、大まかな干潟の面積を見積もる

面積 11.13ha 13.8ha 9.15ha

メリット ✔非常に簡易的であり、知識がなくても実施可能である。✔最干時に合わせ、撮影することが可能であり、詳細な情報 から簡単に水際線を特定することが可能である。

✔最も簡単に入手可能である。

デメリット

✔干潟が干出していても、特に泥干潟では、水際を歩くことが困難である。✔干潟が広い場合は特に、縁辺部を歩くのに時間がかかり、完全に干潮時の面積を図るのは困難である。

✔撮影費用がかかる。✔撮影時間が決められないため、潮が満ちている時の画像となる合がある。✔定期的な情報更新がないため、情報が古くなる。

市民による実施の可能性

△ × △

衛生画像(有料) CeisNet (環境省 環境保全基礎調査) 衛星画像(無料)+ 現地観察

画像

方法衛生画像を無料で入手できるサイトから、画像を取り出し、大まかな干潟の面積を見積もる

地形図、空中写真の読みとり、その他既存資料の収集、ヒヤリングおよび現地確認により面積を見積もる

衛生画像を無料で入手できるサイトから、画像を取り出し、現地での観察結果を踏まえ、面積を見積もる

面積 ー 15ha 12.1ha

メリット✔最干時に合わせ、撮影することが可能であり、詳細な 情報から簡単に水際線を特定することが可能である。

✔比較的詳細に調査をしており、精度の高いデータが 入手できる。

✔簡単に入手可能である。✔現地での観察結果を踏まえているため、より正確な値が出る。

デメリット ✔画像の購入に、費用がかかる。✔最新の干潟分布調査は、第5回(平成9年~13年度)自然環境基礎調査時であり、情報が古い。

✔現地の潮の高さによって、見える範囲が異なってくる。

市民による実施の可能性

× ー ○

図 6.18 干潟面積の測定方法

3)干潟の微地形

干潟の微地形は、潮の干満に応じて発生する海水の流れを集めたり分散したりすること

で海水交換や栄養塩の移動、それに伴う生物の分布に大きな影響を与える(中村ら、2007)

このことからも、干潟面積の減少、砂の移動、表面の凹凸、タイドプール(潮だまり)や

クリーク(水路)などの細かな情報についてモニタリングすることも重要である。

実際に干潟に出てみると、干潟の小さな変化はわかりづらいが、流況や波浪の影響を簡

単に受け、特に台風などの大きなイベントの後に微地形は瞬時に変化する。その変化につ

いて、モニタリング項目として特に取り上げないが、干潟に出て全体を見回した時に、注

意して見て欲しい点である。

4)勾配

干潟の勾配は一般的に、1/100から 1/1000 と言われている。この事を考えると、少しの

沈下によってその水際線は大きく変動することとなる。水際線が変動することは、潮位の

高さで棲み分けをする生物にとっては大きな打撃となる。このことから、勾配をモニタリ

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ング項目に含み、簡易的に実施できる手法について検討した。

モニタリング方法を、図 6.19 に示した。潮が引く前(できれば満潮時)に水際に目印

となる棒をたて、一定の時間(5 分、10 分など)に、水がどこまで引いたかを確認し、目

印から水際までの歩数を数える。(一歩はおおよそ 50cm とし、歩数×50cm で、おおよその

距離が計算できる。)調査は、出来るだけ平均的な傾斜の場所実施することとする。

図 6.19 勾配の調査方法

ここで、注意しなければならないのは、干潟の状態に応じ適宜、時間を調整して潮位差

と距離から勾配を測ることが適切であるという結果になった。

勾配の計算の仕方を以下に示す。

5)後背地、磯場、人工物、その他について

後背地や磯場の有無については、生態系の多様性についても非常に重要な位置を示して

いる。埋め立てや人工物の造成のため、後背地や磯場が見られない干潟が多いが、これら

の存在を確認することで、干潟の場の多様性を把握できる。このことから、これらについ

て着目するとともに、干潟に漂着しているゴミについても項目にあげた。

それぞれ、定義を明確にし、干潟にこれらの場所の有無や状況についてモニタリングす

ることとした。次ぎに、それぞれの定義について説明する。

<後背地>

満潮線より陸側の場所。後背地に海浜植物などが生育していることで、より多様な環境

を保持することとなり、干潟の生態系はより豊かになる。

<磯 場>

岩がごろごろしている場所を磯場とする。ここには、たくさんの生物が棲んでおり、生

物の多様性という面において干潟では重要な場所となる。

<排水や河川の流入>

干潟は、陸から流れてくる豊富な栄養分を取り除くフィルターのような働きをしている。

干潟に棲むたくさんの生物がそれぞれのやり方で豊富な栄養分を吸収しているため、河川

や排水の流入は、干潟に棲む生き物にとって重要なファクターとなる。

目印

一定の 時間後

目印

水際

Xm

勾配 = 潮位差(最初に目印をたてた時間の潮位-水際までの距離を

距離(目印から水際まで)

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<ゴ ミ>

瀬戸内海の干潟に漂流するゴミには次の様なものが多く見られる。

生活系(発砲スチロール、ペットボトル、空き缶、ビン、ビニールなど)

産業物(ホタテ貝殻(カキ養殖用)、漁具(網、パイプなど)など)

また、ゴミの量の定義を以下に示す。

多い :海岸線にぎっしりゴミが流れ着いている。(50%以上)

少ない:海岸線にところどころゴミが流れ着いている。(1~50%)

ない :海岸線に全くゴミは落ちていない。(0%)

(4)生物モニタリング

1)生物種

干潟に生息する底生生物の中でも優占する種として、多毛類、腹足類、二枚貝類、甲殻

類があげられ、これらの4群が干潟の動物の 90%を占めている(秋山他:1983)。干潟の大

部分を占めるこれらの種と干潟の食物連鎖の頂点に立つ鳥類をモニタリングすることで、

干潟に棲む生物から見られる干潟の健康状態が把握出来る。

以上のことに注目して、干潟における生物モニタリング方法を整理した。さらに、干潟

で活動する団体のほとんどは、既存の活動として干潟生物の観察会などを中心に行ってい

ることを考慮し、ここでは、干潟でのイベントや観察会の際に見つけた種について記録し

て貰うこととした。

ここで、知識や努力量によって確認される種の量が異なってくることが課題としてあげ

られた。そのため、図 6.20 の様に、調査をした大まかな範囲、人数、時間を記録しても

らうことで、調査努力量を推定することが可能になる。

図 6.20 生物モニタリングの努力量について

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次ぎに、既存資料および専門家のアドバイスを参考に、瀬戸内海の干潟で一般的に見ら

れる種および特に着目すべき種について整理し、生物リストを作成した。また、専門知識

を持たなくてもある程度の生物が把握できるように、干潟の生物ハンドブックを作成した。

本モニタリングで特に着目してモニタリングを行う生物種のリストを表 6.10に示す。

表 6.10 干潟の生物

No. 分類 生物種名 学名1 鳥類 サギ類 Ardeidae spp.2 ミサゴ Pandion haliaetus3 カニ・エビ類 スナガニ Ocypode stimpsoni 4 ヤマトオサガニ Macrophthalmus japonicus5 アシハラガニ Helice tridens 6 ハクセンシオマネキ Uca lactea 7 コメツキガニ Scopimera globosa8 マメコブシガニ Philyra pisum9 アナジャコ Upogebia major 10 二枚貝類 ハボウキガイ Pinna bicolor 11 マテガイ Solen strictus12 アサリ Ruditapes philippinarum13 マガキ Crassostrea gigas14 ケガキ Saccostrea kegaki 15 ムラサキイガイ Mytilus galloprovincialis16 ムラサキインコ Septifer virgatus Wiegmann17 巻き貝類 フトヘナタリ Cerithidea(Cerithidea) rhizophorarum18 タマキビ Littorina(Littorina) brevicula19 アラムシロガイ Nassarius(Hima) festivus20 マツバガイ Cellana nigrolineata21 オオヘビガイ Serpulorbis imbricatus 22 イボニシ Thais(Reishia) clavigera23 カメノテ Pollicipes mitella24 クロフジツボ Tetraclita japonica 25 ヒザラガイ Acanthopleura japonica 26 ゴカイ類 タマシキゴカイ Arenicola basiliensis27 ツバサゴカイ Chaetopterus cautus28 魚類 ミミズハゼ Luciogobius guttatus29 トビハゼ Periophthalmus modestus30 海藻類 アナアオサ Ulva pertusa31 ウミトラノウオ Sargassum thunbergii32 ヒジキ Hizikia fusiformis33 イロロ Ishige sinicola34 フクロノリ Colpomenia sinuosa35 アマモ Zostera marina36 コアマモ Zostera japanica37 海浜植物 ツルナ Tetragonia tetragonoides38 ハマゴウ Vitex rotundifolia39 ボタンボウフウ Peucedanum multivittatum40 オカヒジキ Salsola komarovii

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2)巣穴

干潟の物質循環を把握する指標の一つとして、巣穴に着目した。干潟で有機物の分解を

主に担うのは微生物であるが、干潟のカニ類は巣穴を掘ることで土壌の奥まで空気を循環

させ、微生物の有機物分解を促している。さらに、巣穴の数より、干潟のおおよその生物

量が推測できる(釜田ら、1996)ことから、巣穴の数の計測をモニタリングすることによ

り、干潟の有機物分解の程度や大まかな干潟の生物量について把握できることが考えられ

る。モニタリング方法を検討した結果、次の方法で実施することとした。

干潟の中で、最も巣穴がたくさんみられる場所に、30cm の金尺(硬度を測る際に使用し

たもの)を置き、50cm2におおよそ何個の巣穴があるか数える。さらに、50cm2 全体が入る

ように、写真を撮影することで、後に巣穴の状況がどうであったか確認することができる。

図 6.21に、モニタリング例(チゴガニおよびゴカイの巣穴)、ハクセンシオマネキの巣

穴、スナガニの巣穴およびコメツキガニの巣穴を示した。

図 6.21 巣穴モニタリングの例

(5)生息環境モニタリング

干潟には、底質や水質などの多様な環境に対応して底生藻類や海藻類等の植物が生育し、

底生動物や魚類等の様々な動物が生息している(環境省、2008)。また、多くの生物は水位

や底質を始めとした環境に応じて棲み分けをしている。そのため、その状態が変わると干

潟の生物相に大きな影響を与えることとなる。

1)底質

底質は、干潟の性質を把握する上で最も重要な要素の一つである。干潟には、その基底

に生活の基盤を置く生物が極めて多く、泥干潟であるか砂干潟であるかにより、生息する

生物は異なる。基底の性質を表すものとして、泥温、含水率、有機物、粒度、硬度などが

ハハククセセンンシシオオママネネキキのの 巣巣 穴穴 (( 直直 径径

ココメメツツキキガガニニのの巣巣穴穴((直直径径 55ススナナガガニニのの 巣巣穴穴((直直径径 1155 ~~

ゴカイの巣穴

チゴガニの巣

も の さ

モモニニタタリリンンググ例例((チチゴゴガガニニのの巣巣

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あげられる。ここで、市民が実施できるモニタリング項目として、泥温、粒度、硬度につ

いて調査方法を整理した。

最初に、調査をする地点についてであるが、いくつかの地点で底質調査を行った結果、

当然のことながら一つの干潟でも場所によって、測定結果は全く別の値となる。ここでは、

干潟の大部分を占める場所(典型的な地点)において、干潮ラインと満潮ラインの中間で

底質のモニタリングを行うことを基本とし、可能であれば満潮ラインおよび干潮時の水際

ラインを含む3地点で実施することに設定した。

次ぎに泥温は、季節や時間によって大きく変化し、そこに棲む生物にも大きな影響を与

える要因の一つであり、干潟の基礎的な情報として調べることは重要である。方法は単純

であるが、棒状温度計を地表から3cm ほどの深さまで差し込み、0.1℃単位で測定するこ

ととした。また、硫化水素臭など底質のにおいや色についても目視あるいは臭覚によりモ

ニタリングすることとした。

硬度については、誰でも計測出来るように、簡易的に作成できる硬度計を使用した計測

法について検討した。森田ら(2009)の実験結果を参考に、市販の 30cm金尺を2枚貼り合

わせた物を使用した。調査方法は、1m の高さから垂直に落下させ、底質に突き刺さった深

さを読みとるというものである。様々な硬さの干潟でテストした結果、図 6.22 に示すよ

うに、山中式土壌計との相関が 0.7 となり、相関が高いことから今後硬度を計測する道具

として適していることがわかった。図 6.23 に硬度計測状況を示した。

y = -2.917x + 30.777

R2 = 0.7026

0

5

10

15

20

25

30

0 2 4 6 8 10 12

ものさし[cm]

硬度

計[m

m]

図 6.22 硬度計相関

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図 6.23 硬度の測定状況

2)水質

干潟は一日の約半分の時間は空気中に露出する一方、残りの時間は海水中に水没すると

いうこともあり、水質も底質同様に干潟の生息環境において非常に重要である。また、干

潟は、内湾の比較的閉鎖的な地理的条件のもとに形成されており、人口の集中地域に一致

することも多いため、海洋環境としては最も汚染の影響を受けやすい場所とも言える(秋

山ら、1983)。このことからも、水質のモニタリングは干潟の環境を把握する上で重要であ

る。

水質には、水温、塩分、水色、pH、クロロフィル、溶存酸素、栄養塩、有機物、プラン

クトンなどが含まれる。ここから、比較的に簡単に調査出来る項目として、水温、塩分濃

度、水色(濁り)を抽出し、さらに排水や河川の流入も重要な要素であることから項目に

追加した。

塩分濃度が低い河口干潟では、前浜干潟より底生動物相が単調であると言われている

(海の自然再生ワーキンググループ、2003)。全般的に貝類、特に腹足類が少なく甲殻類が

増大する。このことからも、生物の棲み分けを大きく左右する塩分濃度のモニタリングは、

生物の生息環境を把握する上で重要になってくると言える。

塩分濃度計は、いくつかあるが、今回NPO法人釣り文化協会が開発したものと市販の

塩分計を使い調査を行った。釣り文化協会の比重計は、非常にシンプルな作りとなってい

るため、誰でも自分で作成することができる。一方、市販の塩分計は比較的低価格で近く

の熱帯魚店で入手可能であり、コンパクトであることから手軽に使用可能である。本モニ

タリングでは、どこでも入手可能な、市販の塩分計を使用することとした。

図 6.24 に塩分濃度を測定する比重計を示した。左が NPO 法人釣り文化協会から入手し

た塩分計であり、右が市販のものである。

なお、水温については、棒状温度計を用い直上水を測定することとし、水色については、

赤褐色の濁りがあるかに着目して行うこととした。

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図 6.24 塩分濃度計

(6)親水性モニタリング

干潟の社会的なファクターも干潟を構成する要素として重要であり、ここでは人と干潟

の繋がりを親水性とし、それについてもモニタリングをすることとした。干潟は潮干狩り、

バードウォッチング、釣り、散策の場として、さらには自然学習や教育の場となり、昔か

ら潮干狩りなどで人々に親しまれてきた。ところが、図 6.25 の様に、以前は春~夏にな

ると潮干狩りをする人たちで賑わっていた干潟も、近年においてはアサリなどの二枚貝の

減少や干潟の埋め立てなどにより、見られるところが少なくなっている。

図 6.25 潮干狩りで賑わう干潟

一方、近年の社会的な環境意識の高揚と地域住民の市民活動への参加意欲の高まりによ

って、海岸に関心を持ち、独自の調査や活動を行っている団体が増加傾向にある(増岡ら、

2006)。瀬戸内海の干潟においてはまだ少ないものの、環境学習の場として利用されている

干潟がいくつかある。

例えば、香川県観音寺の有明浜や広島県竹原市のハチの干潟などでは、小学生を対象と

した干潟の観察会などを行っている。また、山口県では、県内の干潟でカブトガニの観察

会を行っている。図 6.26 に干潟における環境活動の例を示す。

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図 6.26 干潟における環境活動

ここでは、干潟の親水性について、次の項目をあげた。

潮干狩りを楽しむ人がみられるか?

釣りをする人はいるか

干潟周辺や干潟の中を散策する人がいるか?

干潟での環境学習や清掃などをはじめとした環境活動の実施はあるか?

干潟や干潟の生物あるいは植物を紹介する看板、管理されていることが分かる看

板は立てられてあるか?干潟の紹介冊子はでているか?

干潟を紹介するホームページ等はあるか?

また、利用の度合いを標準化するため、よくみる、まれにみる、みられないについて定

義を決めた。定義を以下に示す。

<潮干狩りや釣り、散策などについて>

よくみる :ほぼ毎日数人(5人以上)利用しているのをみる

まれにみる:週に1回程度 1人~数人利用しているのをみる

みられない:年間を通して、一度も人の利用をみたことがない。

<環境活動について>

よくみる :ほぼ毎週何かしらの活動をしているのをみる

まれにみる:3ヶ月に一回程度、何かしらの環境活動をしているのをみる

みられない:環境活動をしているところを、年間を通して全くみない

干潟のガイドプレートについては、ゴミの不法投棄や工事の看板が見られることがあ

るが、それらは干潟の環境が悪いことに対しての看板であるため、カウントしないものと

した。ここでは図 6.27 に示すように、干潟の植物群落や干潟の自然そのものについて説

明する看板の有無を把握することとした。このことにより、干潟の管理状況が把握するこ

とが出来る。

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図 6.27 干潟にあるガイドプレート

6.4.4 ネットワークの試行

検討したモニタリング手法が実際に市民活動において実施可能であるかを検証するた

め、ヒヤリング調査および現地での試行を実施した。そこから、検討したモニタリング手

法の課題と改善策を整理し、今後の干潟ネットワークによる長期的モニタリング手法を設

定した。

まず、瀬戸内海の干潟で活動を行っている7団体にヒヤリングを行い、モニタリング項

目と方法について既存の活動と平行して実施する場合にどの程度であれば協力できるか、

ネットワークに期待することや現状の活動などについて調査した。ヒヤリング先を表 6.11

に示した。

ここでは、実際に干潟で活動を行っている現場サイドの声を調査方法とマニュアルに反

映させるため、モニタリング項目および調査方法についての意見を頂いた。各団体の活動

主旨や内容は様々で、定期的な干潟調査を行っている団体は少なく、多くの団体の活動は、

主に春~夏にかけての環境学習や観察会を実施するもので、干潟自体の調査を実施してい

るものはなかった。

一方、生物のみならず生物の生息環境の情報も把握しておくことは重要であると感じて

いる人は多かった。このことからも、統一的な方法で定期的・継続的にモニタリングを実

施していくことは有効であると考えられる。また、彼らの活動の最も大きな関心としては、

生物の多様性や貴重な種についてであり、ネットワークを構築することで、これらの情報

についてもキャッチアップしていく必要があると考えられる。

表 6.11 ヒヤリング実施者および活動場所

団体名 代表者名 活動場所

宮島の磯・生き物調査団 金山 芳之 広島湾周辺の磯・干潟/宮島

ハチの干潟調査隊 岡田 和樹 広島県竹原市 ハチの干潟

西条自然学校 山本 貴仁 愛媛県西条市の干潟/加茂川河口干潟

山口カブトガニ研究懇話会 原田 直宏 山口県の干潟

香川の水辺を考える会 吉田 一代 香川県観音寺市 有明浜

とくしま自然観察の会 井口 利枝子 徳島県徳島市 吉野川河口干潟

水辺に遊ぶ会 足利 由紀子 大分県中津市 中津干潟

(1)モニタリング試行

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モニタリングを試行した場所を表 6.12 および図 6.28 に示した。東京都の人工干潟(大

井干潟)を含め 9 地点においてモニタリングの試行を行った。

モニタリングの試行は、平成 21 年 9 月~10 月に行った。既存の活動に重点を置き、そ

のついでにできる項目についてモニタリングの試行を実施して貰い、各地の結果を整理し

た。また、モニタリングデータと共に実際にモニタリングを試行してみて、実施が難しか

った点、改良すべき点についてヒヤリングを行い、情報をまとめた。

表 6.12 モニタリング試行場所

図 6.28 モニタリング試行場所の分布

モニタリング結果を表 6.13 に示す。

No. 場所 干潟名

1 香川県観音寺市 有明浜

2 愛媛県西条市 加茂川河口干潟

3 山口県山陽小野田市 前場川河口干潟

4 山口県 ふしのがわ河口干潟

5 山口県 ふしのがわ河口干潟

6 広島県竹原市 ハチの干潟

7 広島県廿日市市宮島 宮島 大鳥居前干潟

8 広島県 太田川河口干潟

9 東京都(人工干潟) 大井干潟

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表 6.13 からもわかるように、場所によって実施できなかった項目がいくつかあった。

例えば、勾配については、前場川河口干潟や椹の川河口干潟の(相原・中潟)では、泥干

潟のため水際まで歩けなかった勾配が緩いため距離が遠く歩けなかったという理由から計

測できなかった。また、大きな泥干潟では干潮時に水際まで歩くのが困難なため水質につ

いて実施できなかったところもあった。

モニタリング調査自体は、生物モニタリングを除いては 10 分程度で実施可能であった。

また、面積の測定についてもほとんどの干潟で実施できず、地図からの読みとりを行い、

ただ、調査箇所の設定が難しい、生物のモニタリングに時間がかかるとの意見があった。

また、親水性のモニタリングについては、その場をよく知らなければ、利用者の状況がわ

からないことがあり、干潟の状況をよく把握している地域の人によるモニタリングがより

有効であることがわかった。

表 6.13 モニタリングの試行結果

有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 ハチの干潟 加茂川河口 太田川 大井干潟(人工)

2009/9/2 2009/10/4 2009/9/17 2009/9/16 2009/9/16 2009/9/18 2009/10/17 2009/9/15 2009/9/18

15:00~17:00 13:50~ 12:25~14:30 11:10~12:30 13:45~14:45 13:50~16:30 15:00~17:00 10:40:00~12:05 -

晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ時々曇り 晴れ 晴れ

31 25 32 30 30 27 25.5 28 26

面積(ha) 50 69 11 58.4 18.9 15 54 35 <1

勾配(cm) 289.8/14200 - 28/2500 - - 42/3700 - 17.6/450 -

連続した後背地 ある ある よくわからない ある ある ある ない ない ない

隣接する磯場 ある ある ある ある ない ある ない よくわからない ない

人工護岸 ある ある ある ある ある ない ある ある ある

消波ブロック ある ない ない ない ない ない ない ない ある

巣穴の数 8 5 0 50 50 52 246 30 5

鳥類 2 1 2 4 2 5 3 2 8

カニ・エビ類 10 4 4 6 4 5 7 3 1

二枚貝類 5 1 6 1 3 3 2 3 3

巻き貝類 5 3 2 3 4 4 5 2 0

ゴカイ類 2 1 3 3 3 3 0 1 2

植物種類数 6 4 0 5 1 6 0 0 0

海藻種類数 2 2 7 0 0 5 0 0 0

動物種類数 28 19 22 12 18 27 21 14 14

排水の流入 よくわからない ない ある ない ない よくわからない よくわからない ない よくわからない

河川の流入 ある ある ある ある ある ある ある ある よくわからない

水色(にごり) ない ない ない ない ない ない ある ない ない

水温 31 26 27 29 - 27 23 25.5 ー

塩分濃度 33.5 36 34 29.5 - 34 26.5 30.5 ー

底質-硬さ 4~6cm 5cm 2cm 9 5 2.5cm 6.5 6cm 7cm

底質ー色 オリーブ 灰 黒 暗オリーブ 黄色 黒 黒オリーブ 黒 灰

底質-臭い におわない 少し 少し 少し 無 少し 少し 少し 無

底質-温度 30 - 26 29 29.5 26.5 23.6 26 ー

粒度 砂 シルト混じり砂 砂 砂混じりシルト 砂混じりシルト シルト混じり砂 砂混じりシルト 砂混じりシルト ー

潮干狩り よくみる ない よく見る ない ない よく ない まれ まれ

釣り まれにみる ない ない ない ない まれ ない まれ よく

散策 よくみる ない よく見る ない ない よく ない よく よく

清掃活動 よくみる ない まれ ない ない ない ない ない ない

環境活動 よくみる ない よく見る まれに まれ よく ある まれ ない

ガイドプレート ある ない ない ない ない ない ない ある ある

紹介冊子 ある ない ある ある ある ない ある ある ある

ホームページ ない ない ある ある ある ある ない ある ない

ゴミ 人工ゴミ 少ない 多い 少し 多い 少し 少し 少し 少し 少し

親水性

項目

形態

生物

環境

モニタリング実施日

時間

天気

気温(℃)

広報

地形

人工物

行動

種の豊富さ

水質

底質

(2)モニタリング試行による課題と対策

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各地でのモニタリングの試行により、調査方法についていくつかの課題があげられた。

モニタリング調査方法細かい課題については、マニュアル作成において再検討し、より

簡易で継続可能な方法をまとめた。各分類であげられた課題について、以下に説明する。

<自然形態>

感覚で観察することは以外と難しいことがわかった。例えば、干潟の面積の変化や隆起

の有無など、実際に観察して、何となく変わったような気がするが、具体的にどこが変わ

ったかわからないということもある。

また、面積の計測については、地図と現地観察結果をもとに計算することとしたが、パ

ソコンを使い慣れていなければ、値を出すのが難しいという課題が挙げられた。

また、「勾配は底質が柔らかく水際まで歩けないので計れない」との声もあり、市民が

安全に実施できる範囲でのモニタリング方法について再検討する必要がある。

<生物生息環境>

水質や底質モニタリングの手法は簡易的に実施でき、時間もかからない。しかし、平坦

に見える干潟でも多様な環境が入り混ざっており、調査地点の設定をどこにするかが大き

な課題としてあげられた。これについては、干潟の大部分を占める平均的な場所で実施す

ることとし、可能であれば環境の違う数地点で実施することとした。

また、「硬度計が刺さりにくく計測が難しい」といった問題が挙げられた。これについ

ては、硬度計に改良を加えることで解決したが、地盤が固く硬度計が刺さらない場合につ

いては、おおよその値を読むこととする。

<親水性>

該当干潟の近くに住み、日頃から干潟の利用状況を把握していないと、本当の情報がわ

かりにくい。これについては、地元住民によるモニタリングということを基本とすること

とする。

<生物>

生物の知識がない人にとって、出てくる全ての種を調べるのは難しい。また、生物モニ

タリングに時間がかかりこれまで実施してきたモニタリングが実施できないとの意見もあ

った。これについては、ハンドブックを作成し、瀬戸内海で見られる一般的な生物種につ

いてすぐに調べられるようにした。

その他に、モニタリング結果の精度についてなど、根本的な課題も指摘された。また、

干潟の一部のみの情報で全体を評価することに意味があるのかという意見もあった。しか

し、本ネットワークの目的はそこに住む市民が地域の干潟を見守り続ける仕組みを保ち、

各地の干潟がネットワークすることで瀬戸内海全体の環境を見守ることであるため、これ

らの課題については、今後モニタリングを継続していく上でモニタリング方法に改良を加

えながら対処していくこととする。

(3)モニタリング結果の診断方法

1)干潟の診断について

本診断方法は、生態系景観の観点から干潟の健全さを評価する手法を取りまとめたもの

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である。健全な干潟とは、水産庁-砂質系干潟の健全度評価手法マニュアルにおいて、「干

潟機能が高いレベルで持続的に保たれている状態」と定義されており、具体的には、「多様

な生物の生息により、生態系の物質循環が円滑に進行していること」と考えられる。した

がって、健全な干潟の指標は、「干潟生物が豊かに生息すること」とする。それに加えて、

干潟とその地域で生活する住民との繋がりを有することが超長期的モニタリングを継続す

る上で重要であり、地域特有の関わりや活動等も評価の視点として加えた。一方、超長期

的モニタリングと診断の実施に際しては、地域住民の一般知識で対応出来る容易なモニタ

リング手法と診断手法が望ましい。そこで、誰もが容易に診断可能なチャート式の手法を

採用した。

2)診断チャートにおける軸の設定

干潟の機能は、一般的に生物生息(種の保存・多様性、研究・学問)、水質・底質浄化

(食物網、物質循環)、生物生産(漁業生産)、親水性(学習、自然体験、レクリエーショ

ン)が挙げられる(海の自然再生ワーキンググループ、2003)。ここで、本研究のテーマで

ある生態系景観というキーワードを踏まえ、診断軸を設定した。診断軸は、自然形態、物

質循環、生物多様性、生物生息環境、親水性の5軸とし、各軸に対しそれぞれ項目を分類

した(図 6.29)。

干潟は広大な土地を有し、底生生物や鳥類などの生息域として貴重な空間である。ここ

での自然形態は、生物の生息する形跡からみられる景観と定義する。干潟の形状(地形)、

後背地や磯場の有無、人間活動がもたらす負の要素としての人工構造物を診断要素とした。

次ぎに、干潟の持つ物質循環機能は、生物生産、有機物分解、有機物浄化、鳥類などで

構成されている。底生生物の巣穴の数を構成要素として取り入れ、生物量の指標とした。

さらに、食物連鎖および餌資源の観点から、埋在性堆積物食生物の多毛類、表在性堆積物

食生物の甲殻類、懸濁物食生物の二枚貝類、腐肉食生物の腹足類、高次捕食者の鳥類を物

質循環における経路の複雑さを示す指標とした。

干潟の物質循環を支える生物多様性は、様々な生物によって構成され種の豊富さを意味

しており、生物の種類数を指標とした。また、生物生息環境では、底生生物の生息に直接

影響を与える底質の硬さ、硫化物指標としての色と臭いとし、同様に水の臭いと赤潮を観

測するための水の色も指標に加えた。

最後に、干潟とその地域で生活する住民との繋がりを有することが超長期的モニタリン

グを継続する上で重要であり、潮干狩り、釣りおよび散策など住民が直接干潟と触れ合う

行動を構成要素とした。またそれを広報する案内、紹介看板、冊子、ホームページも加え

て親水性とした。

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1.自然形態

Data 5 4 3 2 1

面積 51ha~ 21~50ha 5~20ha ~5ha ~1ha

連続した後背地 あり - よくわからない - なし

隣接する磯場 あり - よくわからない - なし

人工護岸 なし - よくわからない - あり

消波ブロック なし - よくわからない - あり

2.物質循環(動物食物連鎖による)

Data 5 4 3 2 1

巣穴の数(/50cm2) 51個/50cm枠~ 21~50個/50cm枠 6~20個/50cm枠 ~5個/50cm枠 なし

鳥類 5種~ 3~4種 2種 1種 なし

カニ・エビ類 11種~ 6~10種 3~5種 1~2種 なし

二枚貝類 5種~ 3~4種 2種 1種 なし

巻き貝類 5種~ 3~4種 2種 1種 なし

ゴカイ類 5種~ 3~4種 2種 1種 なし

3.生物多様性

Data 5 4 3 2 1

植物種類数 11種~ 6~10種 3~5種 1~2種 なし

海藻種類数 6種 4~5種 2~3種 1種 なし

動物種類数 31種~ 21~30種 11~20種 1~10種 なし

4.生物生息環境

Data 5 4 3 2 1

排水の流入 なし - よくわからない - あり

河川の流入 あり - よくわからない - なし

水色の変化 なし - よくわからない - あり

底質-硬さ 2cm以上 - 2cm程度 - 計測不可(硬い)

底質ー色 黒以外 - 黒ではないが黒っぽい - 黒(ヘドロ)

底質-臭い 無臭 - やや臭う - 硫化水素臭

5.親水性

Data 5 4 3 2 1

潮干狩り よくみられる - まれにみられる - みられない

釣り よくみられる - まれにみられる - みられない

散策 よくみられる - まれにみられる - みられない

清掃活動 よくみられる - まれにみられる - みられない

環境活動 あり - - - なし

ガイドプレート あり - - - なし

紹介冊子 あり - - - なし

ホームページ あり - - - なし

ゴミ 人工ゴミ ない - 少ない - 多い

総合診断No. 診断項目 得点 診断点

1 自然形態 0.0

2 物質循環 0.0

3 生物多様性 0.0

4 生物生息環境 0.0

5 親水性 0.0

合計値/総合評価 0 0.0

広報

行動

水質

底質

種の豊富さ

動物

干潟診断チャート

調査地:           

地形

調査日:    年   月   日 記録者:             

人工物

0

20

40

60

80

100自然形態

物質循環

生物多様性生物生息環境

親水性

干潟生態系景観診断結果

図 6.29 干潟診断チャート

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3)モニタリング試行結果の診断

モニタリングの試行を行った場所について、モニタリング結果をまとめ診断した。チャ

ートからは有明浜、宮島大鳥居前干潟やハチに干潟が5軸のバランスがよいことが分かる。

表 6.14 に診断結果の一覧を、図 6.30 にレーダーチャートをそれぞれ示した。チャー

トからは有明浜、宮島大鳥居前干潟やハチに干潟が5軸のバランスがよいことが分かる。

表 6.14 干潟診断チャート一覧

1.自然形態

有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 加茂川河口 ハチの干潟 太田川

面積 4 5 3 5 3 5 3 4

連続した後背地 5 5 3 5 5 1 5 1

隣接する磯場 5 5 5 5 5 1 5 3

人工護岸 1 1 1 1 1 1 5 1

消波ブロック 1 5 5 5 5 5 5 5

合計 16 21 17 21 19 13 23 14点数 64.0 84.0 68.0 84.0 76.0 52.0 92.0 56.0

2.物質循環(動物食物連鎖による)

有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 加茂川河口 ハチの干潟 太田川

巣穴の数 3 2 1 4 4 5 5 4

鳥類 3 2 3 4 3 4 5 3

カニ・エビ類 4 3 3 4 3 4 3 3

二枚貝類 5 2 5 2 4 3 4 4

巻き貝類 5 4 3 4 4 5 4 3

ゴカイ類 3 2 4 4 4 1 4 2

合計 23 15 19 22 22 22 25 19点数 76.7 50.0 63.3 73.3 73.3 73.3 83.3 63.3

3.生物多様性

有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 加茂川河口 ハチの干潟 太田川

植物種類数 4 3 1 3 2 1 4 1

海藻種類数 3 3 5 1 1 1 4 1

動物種類数 4 3 4 3 3 4 4 3

合計 11 9 10 7 6 6 12 5点数 73.3 60.0 66.7 46.7 40.0 40.0 80.0 33.3

4.生物生息環境

有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 加茂川河口 ハチの干潟 太田川

排水の流入 3 5 1 5 5 3 3 5

河川の流入 5 5 5 5 5 5 5 5

水色(にごり) 5 5 5 5 5 1 5 5

底質-硬さ 5 5 3 5 5 5 5 5

底質ー色 5 5 1 5 5 3 1 1

底質-臭い 5 3 3 3 5 3 3 3

合計 28 28 18 28 30 20 22 24点数 93.3 93.3 60.0 93.3 100.0 66.7 73.3 80.0

5.親水性

有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 加茂川河口 ハチの干潟 太田川

潮干狩り 5 1 5 1 1 1 5 3

釣り 3 1 1 1 1 1 3 3

散策 5 1 5 1 1 1 5 5

清掃活動 5 1 3 1 1 1 1 1

環境活動 5 1 5 3 3 5 5 3

ガイドプレート 5 1 1 1 1 1 1 5

紹介冊子 5 1 5 5 5 5 1 5

ホームページ 1 1 5 5 5 1 5 5

ゴミ 人工ゴミ 3 1 3 1 3 3 3 3

合計 37 9 33 19 21 19 29 33点数 82.2 20.0 73.3 42.2 46.7 42.2 64.4 73.3

No. 評価項目 有明浜 前場川河口 宮島 相原 中潟 加茂川河口 ハチの干潟 太田川1 自然形態 64.0 84.0 68.0 84.0 76.0 52.0 92.0 56.02 物質循環 76.7 50.0 63.3 73.3 73.3 73.3 83.3 63.33 生物多様性 73.3 60.0 66.7 46.7 40.0 40.0 80.0 33.34 生物生息環境 93.3 93.3 60.0 93.3 100.0 66.7 73.3 80.05 親水性 82.2 20.0 73.3 42.2 46.7 42.2 64.4 73.3

合計値/総合評価 77.9 61.5 66.3 67.9 67.2 54.8 78.6 61.2

種の豊富さ

動物

地形

人工物

広報

行動

水質

底質

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図 6.30 レーダーチャート

図 6.31にレーダーチャートを地図上に示した。

図 6.31からも分かるように、各干潟の特徴が一目で分かるようになっている。

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図 6.31 モニタリング試行場所の診断結果

4)診断チャートにおける課題

診断チャートの項目を検討する際に、干潟を総合的に多方面から診断するために、診断

軸を設けそれぞれに項目を設定した。ここで、より精度の高い診断を行なうために、出来

るだけ多くの各診断軸を構成する診断要素を抽出した。しかし、モニタリングの試行結果

により、調査項目を可能な限り単純化させることで長期的なモニタリングが可能であると

判断したため、診断要素を大幅に省略し、診断チャートは最もシンプルな形を採用するこ

ととした。

干潟の情報を数値化しチャートで見ることで、干潟の状態が誰にでも分かりやすい。し

かし、これはあくまでも干潟の特徴を示すものであり、干潟の善し悪しを評価するもので

はない。例えば、「底質が柔らかければ柔らかい程その干潟は健康である」ということには

ならないが、数値化する上で、干潟の硬度が 2cm 以上であれば 5 点、計測出来ないほど硬

ければ 1 点としている。ここで、診断チャートは干潟を評価するものではなく、干潟の状

態がどのようになっているか誰もが一定の基準で見るためのものであることを理解しても

らう必要がある。また、診断チャートの点数配分について、試行モニタリング結果を踏ま

えバランスを考えて実施したが、サンプルが十分でないため点数区分の根拠が十分に検討

しきれていない。今後、各地のモニタリング結果より、より多くのサンプルを集め、適切

な診断チャートの点数区分を設定する必要がある。

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また、本来あるべき姿の干潟の状態は、地域や場所によって全く異なる。それらを統一

した手法により診断することで、干潟の善し悪しにバイヤスが生まれる可能性も考えられ

る。しかしながら、一つの干潟が経年的にどのように変化しているかをモニタリングする

ことが最も重要なことであり、他の干潟と比較することは重要ではない。今後、このよう

な課題に対し、継続してモニタリングを実施していく上で、随時見直しが必要になってく

ると思われる。

6.4.5 ネットワークの枠組みの検討

(1)検討会の実施

平成 21 年 11 月 27 日に、広島県広島市内において干潟ネットワークについて、各地の

干潟で活動する団体の代表が集まり、検討会を実施した。出席者を表 6.15 に示す。

表 6.15 干潟ネットワーク検討会の出席者

氏 名 所 属

金山 芳之 宮島の磯・生き物調査団

原田 直宏 山口カブトガニ研究懇話会

吉田 一代 香川の水辺を考える会

上嶋 英機 広島工業大学 教授

事務局 ―

検討会では、各出席者の自己紹介の後、本研究で提案したモニタリング項目や手法の妥

当性およびスキームについて話した。具体的に議題にあがった主な内容は、ネットワーク

の拡大、モニタリング項目と手法について、生物モニタリングについて、今後のスキーム

についてである。

まず、生物のモニタリングについては、知識がないとモニタリングは難しいという意見

が出た。また、手間がかかり人員の少ない団体では生物のモニタリングを実施するまでの

余裕があるかが疑問である。これに対し、特に着目して見る生物を絞り生物リストを作成

すること、また調査時に調べられる様に生物ハンドブックを作成することとした。この生

物リストは重要であり、そこから干潟の大体の環境が把握できる種を抽出する必要がある。

次ぎに、その他のモニタリング項目と手法について様々な意見が出た。特に重要な点は、

モニタリング項目が多すぎると調査する側のモチベーションが下がり、適当なデータにな

ってしまいそれでは意味がないということがあがった。実際に各地で試行した結果、調査

項目が多くコンスタントにモニタリングするのは大変だと思ったという意見もあった。さ

らに、モニタリングの頻度や時期、場所についても決めていく必要があることが指摘され

た。これについて、来年度から継続的なモニタリングが実行できるように検討しなければ

ならない。

最後に、今後のスキームについて話し合いを行った。ここでは、現在本ネットワークに

参画している団体が少なく、今後どのようにネットワークを広げるか、またどのように干

潟のことを一般の人に知ってもらえるかなどについて議論した。

現状において、瀬戸内海の干潟で活動している団体は非常に少なく、誰も把握していな

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い干潟がたくさんある。このような干潟について、地域の人がモニタリングしていく体制

を作ることが最も理想的であることから、知識のある人が各地へ行き、数回は一緒に調査

を行うことで現地の人を育成していくことが必要となってくるだろうとの意見があった。

さらに、干潟に興味のある人を増やすことが最優先である。ホームページなどで情報を発

信することもいいが、そこには興味を持った人しか見に来ない。例えば、誰でも見る新聞

や興味のある先生を見つけることが一番の方法だと思う。そして、まずは調査に参加して

もらうことから始まるのではないかとの意見が出た。

図 6.32 干潟ネットワーク検討会の様子

(2)干潟モニタリング実施体制の検討

ヒヤリング、モニタリングの試行および意見交換会を通し、長期的にネットワークを構

築することで各地の干潟を繋ぎ、モニタリングを実施するために必要なことと可能なこと

が分かった。ネットワークについては、既存で活動している団体が非常に少ないのが現状

である。金山氏が中心となり、EPO ちゅうごくに拠点を置き干潟で活動する団体を増やし

ていく。ホームページやブログを通し、あるいは EPO ちゅうごくに情報センターを設置す

ることで、現在干潟で活動している団体に限らず誰にでも情報が届くようにしていくこと

で、新たなネットワークを構築が可能になることが考えられる。

また、ハチの干潟調査隊の岡田氏が主催する「市民ひがた交流会」では、全国の干潟で

活動する団体が集まり、2008 年から各地の干潟に集まり意見交換会や各地の活動報告を行

っている。この団体との連携も視野に入れてネットワークの体制を考える必要がある。

干潟ネットワークのイメージ図を図 6.33 に示した。

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図 6.33 ネットワークのイメージ図

(3)干潟ネットワークの維持・継続性の提案

超長期的に 50 年 100 年と継続して実施できるモニタリングは、簡単に手間をかけずか

つ楽みながら出来ることが最も重要である。また、図 6.34 に示すように、干潟ネットワ

ークによるモニタリングの実施に必要なことは、ネットワーク参画者の開拓、モチベーシ

ョンの維持、モチベーション維持に繋がる情報公開やフィードバック、人材育成と活動の

継承が重要なポイントとなる。

図 6.34 ネットワーク継続の重要ポイントと流れ

1)ホームページおよびブログによる情報公開と交流

モニタリングの情報をすぐにフィードバックされ、各地の干潟の情報と合わせてみるこ

とは、モニタリング実施者のモチベーションに繋がる。

ここで、ホームページやブログという媒体を利用し、モニタリングデータの公開や干潟

毎の情報交換の場とする。ウェブ上による情報の流れのイメージを図 6.35 に示した。ホ

ームページでは、モニタリング結果や各地の干潟情報を発信する場とし、ここではサーバ

ーの管理者が各地の情報を管理し、随時データを更新する。また、干潟のモニタリングマ

ニュアルや生物ハンドブック、記録表をダウンロードできるようにし、誰でも気軽にモニ

ネットワーク参画者の開拓

モチベーションの維持

情報の公開・フィードバック

人材育成

活動の継承(世代交代)

ホームページ ブログ マスコミ

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タリングが実施できるようにする。

次ぎに、ブログでは、ネットワーク参加者同志の直接的な情報交換の場とする。これは、

ホームページより最新の情報が得られることから、干潟のイベント情報や変化についてな

ど、干潟について自由に書き込みをしながら、干潟に興味を持った人の率直な意見を交換

することが可能である。気軽に情報交換を行うことで、干潟に対して共通意識が生まれ、

団体同志のつながりが強まることが想定できる。

図 6.35 ウェブ上による情報の流れイメージ

2)ハンドブックおよびマニュアル

知識がなくても、誰でもモニタリングが実施できるように、瀬戸内海の干潟で見られる

生物について説明した干潟モニタリングハンドブックおよび調査方法を記載した干潟モニ

タリングマニュアルを作成した。

これらについて、図 6.36 と図 6.37 にそれぞれイメージ図を示した。

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図 6.36 干潟モニタリングハンドブックイメージ

図 6.37 干潟モニタリングマニュアルイメージ