6.事例集 (1)ファシリティマネジメント 1-① …- 22 - 6.事例集...

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- 22 - 6.事例集 (1)ファシリティマネジメント 1-① 基本方針の策定・体制の整備 組織 タイトル 23 北海道 北海道ファシリティマネジメント導入基本方針の策定 26 青森県 青森県県有施設利活用方針に基づくファシリティマネジメントの推進 30 青森県 青森県県有施設長寿命化指針の策定 33 栃木県 県有施設の長寿命化について 36 宮崎県 県有建物保全業務推進プランの策定 39 宮崎県 県有建物長寿命化指針の策定 42 川崎市 庁舎等建築物の長寿命化への取組 45 浜松市 ファシリティマネジメントによる資産経営の取組み 48 名古屋市 名古屋市アセットマネジメント推進プランによる取り組み 52 堺市 堺市市有施設等整備活用基本方針の策定 1-② 所管施設全体の中長期の整備計画の策定 組織 タイトル 55 福井県 県有施設ファシリティマネジメント推進計画の策定 58 愛知県 県有施設の利活用・保守管理プログラムによる施設機能の集約化 61 奈良県 ファシリィティマネジメントの手法を用いた効果的な中長期整備計画作成及び施設整備 64 広島県 県営住宅再編5箇年計画の策定 67 京都市 京都市市営住宅ストック総合活用計画 70 堺市 市営住宅における長寿命化計画の策定 73 広島市 市営住宅ストック有効活用計画に基づく改善工事等の実施 77 国土交通省 長寿命化に資する一定地域内における官庁施設の整備構想の策定について

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6.事例集

(1)ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

頁 組織 タイトル

23 北海道 北海道ファシリティマネジメント導入基本方針の策定

26 青森県 青森県県有施設利活用方針に基づくファシリティマネジメントの推進

30 青森県 青森県県有施設長寿命化指針の策定

33 栃木県 県有施設の長寿命化について

36 宮崎県 県有建物保全業務推進プランの策定

39 宮崎県 県有建物長寿命化指針の策定

42 川崎市 庁舎等建築物の長寿命化への取組

45 浜松市 ファシリティマネジメントによる資産経営の取組み

48 名古屋市 名古屋市アセットマネジメント推進プランによる取り組み

52 堺市 堺市市有施設等整備活用基本方針の策定

1-② 所管施設全体の中長期の整備計画の策定

頁 組織 タイトル

55 福井県 県有施設ファシリティマネジメント推進計画の策定

58 愛知県 県有施設の利活用・保守管理プログラムによる施設機能の集約化

61 奈良県 ファシリィティマネジメントの手法を用いた効果的な中長期整備計画作成及び施設整備

64 広島県 県営住宅再編5箇年計画の策定

67 京都市 京都市市営住宅ストック総合活用計画

70 堺市 市営住宅における長寿命化計画の策定

73 広島市 市営住宅ストック有効活用計画に基づく改善工事等の実施

77 国土交通省 長寿命化に資する一定地域内における官庁施設の整備構想の策定について

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1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『北海道ファシリティマネジメント導入基本方針の策定』

北海道総務部総務課

011-231-4111(22-430)

1.背景・目的

1-1 導入の意義

(1)道有建築物等の膨大なストックとその老朽化への対応

約 2 万 1 千棟、延床面積 817 万㎡(H15 年度末)という膨大な道有建築物等

の老朽化に対応する適切な維持保全と長期活用に係る全庁的な方針の策定

(2)危機的な財政状況への対応

厳しい財政状況の下、従前同様の道有建築物等の建て替えは困難であり、す

べてのファシリティについて総合的に企画・管理・活用する経営管理手法の導入

(3)全庁的な視点でのマネジメント不

在という現状への対応

事後的な修繕による修繕費の増

嵩と修繕頻度・内容の部局ごとの格

差、専門的な保全の知識を持たない

職員による施設管理など(図1)、全

庁的な視点でのマネジメント不在の

状況に対する、道全体としての「施設

経営」という視点からの取組

(4)少子・高齢化社会への対応

人口増による経済成長を見込むことは困難であり、建築物等のストックの価値

を保持し、次世代の負担を軽減

(5)環境問題への対応

建設廃棄物の発生抑制や適切な維持管理による省エネルギー対策、建築物

等の LCCO2の縮減に向けた対応

1-2 策定の目的

ファシリティマネジメントの導入に向けて、基本的な考え方や取り組むべき具体

的な方策を明らかにした基本方針を策定することにより、全庁的な合意と共通認

図1 施設管理者が感じている課題

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識の下、ファシリティマネジメントを効果的に進めることを目的とする。

2.取組の成果・効果

建築物等の使用状況や劣化状況、施設(建築物等)管理費の全容を統一的に

把握することにより、限られた予算の中でより最適な維持管理が図られるほか、全体

を見渡すことで個々に見た場合に気づかなかった無駄を排すること、施設の一元的

な情報管理を活用し、新規整備に際して、既存建築物等の統合など、整備手法を

総合的に検討することにより、建築物等の有効活用を図ること、スペースの有効活

用、コスト指標による評価及び道有資産の有効活用についても、全庁的見地から長

期的・効率的な取り組みが可能となる効果が見込まれる。

3.取組内容(基本的な考え方)

道が保有するすべてのファシリティについて、「施設経営」の視点に立ち、ファシリ

ティの整備・維持運営に係る財政負担を軽減することを目的に推進体制を整備し、

「3つの視点」と「5つの取り組み」により進めていく。 2-1 3つの視点

①道政全般にわたるファシリティマネジメントの導入を目指し着実かつ段階的に実

②事業費の削減など財政負担軽減効果が高いものから順次着手

③各取り組みの中でも緊急性の高いものから順次実施 2-2 5つの取り組み

(1)道有建築物等の長寿命化に向けた取り組み(ストックマネジメント)

建築物等の施設情報の一元管理、保全業務の充実、計画修繕の実施などをは

じめとする施設管理者への技術的支援体制等を確立する。

[具体的取組]

区分 本庁総括機能

(総務部総務課) 各施設管理者

建築物等の施設情報

の一元化

情報確認後、電子情報を

一元化に管理 施設概要の把握

保全業務

維持運営業務

[点検、保守]

保全マニュアル作成、研修会

等の開催、コールセンター機能

マニュアルに基づく維持運営

業務の実施

修繕改修

長期保全計

画の作成

施設管理者に対する作

成支援

計画作成により所管建

築物等の状況把握

施設整備計

画書の作成

及び審査

技術的視点から審査し、

所見を所管部及び財政

課へ通知

予算要求に先立ち作成

し、本庁総括機能の審査

を受ける

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保全業務の制度化と

義務づけ

知事部局の施設に対する保全規程(訓令)に基づ

く保全業務の実施及び指導

(2)ファシリティコスト(光熱水費等)縮減に向けた取り組み

光熱水費や清掃等の委託費の縮減を図るため、他の類似建築物等との比較等

が行える手法や施設(建築物等)内の各種委託事業の包括契約、施設群ごとの一

括契約などの手法の導入を検討する。

[具体的取組]

・ ファシリティコストの縮減(ベンチマーキングの活

用、一括契約等の委託手法の検討)

・インハウスエスコの実施(電気、機械設備等に係

る改修や運用方法の改善)

(3)スペースの有効活用に向けた取り組み

オフィスの空きスペースの排除や不足スペースの転用などにより、オフィス環境の

改善やコスト縮減等を図る。

[具体的取組]

・ユニバーサルレイアウトによる執務

空間の縮小と打合せ空間の増加

・公募による売店出店など庁舎空き

スペースの有効活用と来庁者の利

便性向上

(4)道有資産の有効活用に向けた取り組み

建築物等のネーミングライツ(施設命名権)や広告掲載など民間の活力を活用し

た新たな手法の導入や土地・建物などすべての道有資産の利活用を推進してい

く。

[具体的取組]

・ネーミングライツ(施設命名権)の募集(現在、2施設で愛称使用

契約を締結)

・広告付庁舎等案内板の導入、エレベーター扉・内部の広告掲

示など

(5)評価に向けた取り組み

PDCAサイクルによるファシリティコスト等の評価手法を確立、実施するとともに、職

員の意識改革を促す取り組みを進める。

[具体的取組]

・各取り組みについての評価・情報提供の実施と結果の公表など

改修前

改修後

EV 公告

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1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『青森県県有施設利活用方針』に基づく

ファシリティマネジメントの推進

青森県 総務部財産管理課

017-722-1111(2884)

1.背景・目的・概要

青森県が保有する施設は、平成 24年度末現在で棟数約 3,800 棟、延床面積約

213 万平方メートルにのぼる膨大な量となっており、平成 24 年度には、従来の建て

替えの目安である築後 30 年を経過するものが全体の半数を超えるなど施設の老朽

化が進み、維持管理費の増加が懸念される一方、厳しい財政状況にあって、これら

膨大な量の県有施設を効率的に管理し、効果的に利活用することが喫緊の課題と

なっている。

このため、ファシリティマネジメントの

考え方に基づき、県有施設の利活用に関す

る基本的な考え方や具体的な取組方策に

ついて、平成19年3月に「青森県県有施

設利活用方針」を定め、全庁的な共通認識

のもとで利用調整を行い、施設の保有総量

縮小、施設の共同利用等による集約化、施

設の計画的な保全等を進めることにより、

県有施設の有効な利活用を推進している。

シナリオA :現状(現在の施設量保持)

40年 5,771億円改 築 (192億円/年)

シナリオB :Aに加え統廃合(行革等による施設減)

5,567億円 △204億円(185億円/年) (△7億円/年)

施設減

シナリオC :Bに加え長寿命化(60年または88年使用)

4,908億円 △863億円60年 (163億円/年) (△29億円/年)

延命改修 改 築 88年の場合

シナリオD :Cに加え総量縮小(人口推計をベースに5%縮小)

4,575億円 △1,196億円(152億円/年) (△40億円/年)

総量縮小

LCCシミュレーションの設定条件30年間の保有コスト

(単純平均)効果額(Aとの比較)

(単純平均)

図2 主な県有施設のライフサイクルコスト試算(H17 年度)

施設の選別

将来の施設

積極的な売却等

・現在の遊休施設

・将来的な利用が見込めない施設

共同利用・省スペースによる集約

・利用状況の検証

・施設間の利用調整

目標年数に至るまで計画保全

・長く利用する施設への重点的措置

・長期的な財政負担予測と縮減

1.保有総量縮小

2.効率的利用

3.長寿命化

利用しない

利用する

現在の施設

図1 県有施設に係る取組の推進

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年度 内容

2001 始まり 県行革見直しの意見に“ファシリティマネジメント”登場

青森県行政改革大綱における位置付け

2002 調査研究 政策形成推進調査研究事業でのFM導入調査研究

チームFM(全庁 11 名)

2003 事業化 庁内ベンチャー制度に職員 5 名で提案し、知事が採択

「県有施設管理運営におけるFM導入推進事業」

2004 導入 新設の行政経営推進室に、提案者 5 名をFM担当として配置

維持管理業務の支援とコスト削減 →2 ヵ年で 2 億 6 千万円の削減

2005 枠組&道具 事務事業の「枠組」づくり → FM推進体系

必要となる「道具」づくり → 施設評価手法&LCC試算手法

2006 推進

全県有施設で施設情報システムを稼動

廃止施設等の利活用と県有施設の利用調整を開始

「青森県県有施設利活用方針」を制定

2007 組織化

公有財産管理の取組の充実強化のため財産管理課を新設

県の正規の事務事業に「ファシリティマネジメントに関すること」

庁内に「県有不動産利活用推進会議」を設置

第 2 回日本ファシリティマネジメント大賞『最優秀賞』受賞

2008 加速

職員公舎集約・共同利用計画(2008~2013 年度)の着手

宅地建物取引業者への売却業務委託等を導入

執務スペースの標準化に着手

2009 展開 施設管理者による「長期保全計画書」作成を支援

2010~ 体系化 資産戦略・中期実施計画の策定着手・全庁チェックシステムの構築検討

全国知事会先進政策バンク「優秀政策」受賞(2011)

表1 青森県 FM 年表

2.取組の成果・効果

「青森県県有施設利活用方針」に基づく施設の保有総量縮小等の取り組みを推

進するため、平成19年6月に設置した「県有不動産利活用推進会議」において、廃

止となった庁舎等の利活用や利用調整による施設の共同利用等に関して全庁的

な検討を行い、不用となった財産の積極的な売却を進めている。

平成19年度から平成24年度までの同会議における検討の結果として、廃止庁

舎や職員公舎等の売却等が172件、庁舎等の移転・集約等が8件、庁舎等の余裕

スペースの貸し付けが3件等の方針が決定されており、このうち、その後の売却手続

きを経て平成25年3月末までに売却済みとなったものは128件で、金額にして約20

億8千万円となっている。

年度 立 案

廃止庁舎等の利活用 遊休施設等の利活用 庁舎等の利用調整

19 売却3件

継続検討3件 売却49件(うち公舎43件)

民間ビルから県有施設に移転1件

土地の交換1件

20 売却1件

継続検討3件 売却5件(うち公舎1件)

廃止庁舎等のへの移転1件

余裕スペースの貸付1件

21 市町村2件、売却1件

継続検討2件 市町村1件

既存庁舎への移転・集約1件

隣接施設の駐車場に転用1件

22 市町村1件、売却4件

継続検討2件 余裕スペースの貸付1件(公舎)

廃止庁舎等への移転1件

既存庁舎への移転・集約1件

23 継続検討1件 市町村1件

売却1件

建替庁舎への移転・集約1件

取得庁舎への移転・集約1件

24 継続検討2件 遊休施設の貸付1件

売却4件 県有施設敷地への移転1件

表2 県有不動産利活用会議における立案状況

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3.取組内容

●庁舎等の利用調整

廃止施設や低利用施設の建物の質が良好であるなど、長寿命化を見込める場

合には、耐震性能や老朽化等の課題がある同一地区内の施設の移転先として利

用調整を行い、不用となった施設は売却する等、既存施設の有効活用と総量縮小

を進めている。

図3 利活用パターンと調整例

図4 青森市内庁舎の利用調整事例

低 高建物性能

利用ニー

再生

建替

転用

【利用調整】

・出先機関等と

建物の組合せ

・共同利用等

売却等

利用ニーズ:低

建物性能:高

【検討方向】

他機関が利用

あるいは

利用ニーズ:低

建物性能:低

【検討方向】

売却等

利用ニーズ:高

建物性能:低

【検討方向】

改修等

あるいは

他建物の利用

を検討した上

維持

利用ニーズ:高

建物性能:高

【検討方向】

保持

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●廃止施設等の市町村による有効活用

県で不用となった施設については、施設が所在する市町村に利活用の希望を確

認し、公益的な利用に配慮している。

<主な有効活用事例>

・野辺地高等学校横浜分校(平成19年3月閉校)

→横浜町統合保育所(3保育所を平成22年4月に統合)

・五所川原高等学校東校舎(平成22年3月閉校)

→五所川原市立第二中学校(平成23年8月移転)

・田子高等学校教職員公舎(平成22年12月譲渡契約)

→田子町若者定住促進住宅(平成23年4月入居開始)

写真1 田子町若者定住促進住宅 外観

写真2 田子町若者定住促進住宅 内観

【写真提供:田子町】

改修前 改修後

改修前 改修後

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1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『青森県県有施設長寿命化指針』の策定

青森県 県土整備部建築住宅課

017-722-1111(4369)

青森県 総務部財産管理課

017-722-1111(2884)

1.背景・目的・概要

青森県県有施設利活用方針に基づき、県有施設の長寿命化を図るため、目標

とする使用年数、維持すべき性能水準及び維持管理業務に係る技術的項目につ

いて、あるべき状態とその実現方法を長期的視点から明らかににし、その取り組みを

推進することを目的として、「青森県県有施設長寿命化指針」(以下「長寿命化指

針」という。)を平成20年3月に策定した。

2.取組の成果・効果

長寿命化指針では、施設の長寿命化がもたらす効果として次の①~③を掲げて

いる。

①施設の性能と資産価値の向上

・長期にわたる機能維持と良好な施設環境の提供

・施設情報の共有化によるコスト意識の向上

・施設情報の視覚化による施設経営の総合的判断とマネジメントへの寄与

②ライフサイクルコスト(LCC)の縮減と事務事業の効率化

・建設・保全コストの縮減

・修繕周期の適正化と保全業務の効率化

・予算に関する優先度判断の明確化と支出の平準化

③地球環境保全

・CO2排出量の削減

・省エネルギー対策の実践

・資源の有効活用と廃棄物の削減

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3.取組内容

●目標使用年数の設定(還暦・米寿まで生きる活かす)

既存施設及び新築施設の長寿命化の目標として、施設使用の計画期間である

「目標使用年数」を設定している。

使用期間を明確にし、長寿命化のための計画的な改修の実施や材料・工法等

の的確な選択をすることにより、LCCの縮減を図ることが可能となる。

目標使用年数は、鉄筋コンクリート造建築物に関する材料の耐久設計強度等か

ら導かれる限界期間を物理的耐用年数として位置付け、既存施設・新築施設それ

ぞれにおいて、一般施設・長期使用施設を表1のとおり設定している。

種別

施設 新築施設 既存施設

一般施設 88年 60年

長期使用施設 100年超 88年

一般施設 :長期使用施設以外の施設

長期使用施設:①大規模な施設、②行政需要等から長期的使用が見込まれる施設等

ただし、既存施設は、耐震性能等が確保できる施設、または、平成9年

度以降に設計された施設であること。

表1 目標使用年数

●計画的な修繕の実施

施設を長寿命化するためには、一定の性能水準を確保する維持管理が重要で

ある。維持管理のうち修繕は、部位・部材の耐用年数を考慮して定期的に行う必要

があるが、工事を一括して発注することで、仮設コストの縮減と工期の短縮が期待で

きる。また、長期使用が見込まれる施設については、築後40年を目安として、長寿

命化を図るための改修工事の実施を検討することとしている。

そのため、目標とする修繕(更新)周期と部位・部材を表2のとおり設定している。

種別 使用区分 築後 20 年 築後 40 年 築後 60 年

庁舎

一般

屋上防水

空調熱源

ポンプ類

躯体以外の建築全般

電気設備(機材のみ)

機械設備全般

長期使用 同上 躯体以外全般

バリアフリー対応

屋上防水

電気設備(機材のみ)

機械設備全般

校舎

一般

屋上防水・外壁塗装

内装(仕上げのみ)

暖房設備・ポンプ類

躯体以外の建築全般

電気設備(機材のみ)

機械設備全般

長期使用 同上 躯体以外全般

バリアフリー対応

屋上防水・外壁塗装

内装(仕上げのみ)

電気設備(機材のみ)

機械設備全般

表2 目標修繕(更新)周期

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●長寿命化指針における長寿命化への取り組み

<保全の計画的実施のための取り組み>

①長期保全計画書の作成

青森県県有施設「長期保全計画書作成マニュアル」を策定し、施設管理者が

長期保全計画書を作成している。

②修繕の計画的実施

長期保全計画書を参考として各施設管理者が実施している。

<適切な維持管理のための技術的支援等のための取り組み>

③簡易な劣化度調査の実施

経年による劣化状況及び管理状況等の把握のため、簡易な劣化状況調査を

実施している。この調査結果は、施設整備の妥当性や優先度に関する意見の作

成や施設アセスメント等に活用されている。

④保全マニュアルの整備

維持管理全般に関する情報をまとめた業務の手引きとして「県有施設保全マ

ニュアル」を策定し、施設管理担当者の日々の業務に活用されている。

⑤保全情報システムの活用

保全情報システムを導入し、施設間の維持管理費の比較や施設管理担当者

の支援ツールとして活用している。

<県有施設長寿命化設計基準の策定>

⑥県有施設長寿命化設計基準の策定

長寿命化のための改修工事等を適切に実施するための具体的な基準を「県有

施設長寿命化設計基準」として整備することとしている。

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1.ファシリティマネージメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『県有建築物の長寿命化について』

栃木県 県土整備部建築課

028-623-2516

1.背景・目的・概要

本県の県有施設は、約 6,300 棟、延べ面積約 270 万㎡(平成 22 年 3 月末現在)

あり、そのうち築後 30 年以上の面積割合が約4割、10 年後にはその割合が6割を超

える状況である。近い将来、これら老朽施設にかかる維持、修繕、更新費等が増大

し、県財政の逼迫を招くおそれが大きいため、県有施設の保全・長寿命化による既

存ストックの有効活用を図ることが喫緊の課題となっている。

この課題に対応するため、平成 23 年 3 月に「栃木県県有財産の総合的な利活

用に関する指針」を策定した。長寿命化については、「すべての県有施設について

は、常時最適な状態に維持管理することにより、財産価値の保全、建物の性能維

持、ライフサイクルコストの縮減及び環境保全に努める。特に、将来の行政需要、耐

用年数、耐震性及び劣化状況等から将来にわたり利用する施設については、長期

的な視点で計画的な保全措置を講じることで長寿命化を推進する。」と定めている。

これをもとに、県有施設の長寿命化に向けた様々な取り組みを行うこととした。

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2.取組の成果・効果

これまで事後的・短期的な視点で行ってきた施設の維持修繕について、長期的

な視点で計画的・予防的に実施することにより、施設を長期間に渡って最適に有効

活用できる状態に保つことを目指すとともに、財政負担の軽減・平準化を図る。

それぞれの施設に求められる性能水準が常に保たれ、長期にわたって有効かつ

経済的に利活用されることとなり、良好な県民サービスを提供することが可能となる。

3.取組内容

これまでは、地方合同庁舎を例に、現状を調査し、様々な与条件の整理や検討

を行ってきたところである。

・長寿命化によるコスト縮減効果

・事後保全から計画保全への移行で期待される効果

・現在の工事執行体制の問題点の抽出

今後はより具体的な検討を行い、全庁的な施設の長寿命化を推進していく。

・「栃木県県有建築物長寿命化針」の策定

建築物の耐用年数の設定、計画保全対象施設の抽出や保全の手法などについ

て、基本方針を示す。

・「県有建築物長寿命化設計基準」の作成

長寿命化を図るために建築物の設計・施工段階で必要となる要素について、具

体的な基準を示す。

・「中長期保全計画」の試作・試行・検証

地方合同庁舎において、中長期保全計画を試作し、予防保全への移行に必要

な具体策について試行・検証しながら、実現可能な保全計画の整備を進める。

・技術職による点検の見直し

営繕調査や定期点検を見直し、技術職による支援体制を確立するとともに、保

全・長寿命化対策との連携を強化する。

・営繕費(修繕費)の見直し

緊急修繕に対応するための営繕費について、適応範囲や上限額等について見

直しを行う。

・施設管理に関する業務委託等の見直し

清掃公仕業務、警備業務等の業務委託等について、全庁的な共通仕様書を順

次作成していく。

・「施設保全マニュアル」の作成

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- 35 -

施設管理者の日常的な施設管理について、技術的なサポートを行う。

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- 36 -

1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『『県県有有建建物物保保全全業業務務推推進進ププラランンのの策策定定』』

宮崎県 県土整備部 営繕課

0985-26-7918

1.背景・目的・概要

県有建物の長寿命化、ライフサイクルコストの縮減及び保全に関する財政負担の

軽減化・平準化を実現するため、「県有建物保全業務推進プラン(平成 18 年 3 月

策定、平成 23 年 3 月改定)に基づき、計画的かつ効率的な保全業務を推進してい

る。

具体的には、建物の保全データを継続的に収集し、管理・活用する仕組や保全

に関わる全ての者が円滑に業務を実施できる体制等を整備するとともに、保全計画

の実効性を確保するため、次の推進方策1~3を定め、全庁的な共通認識のもとで

取り組むこととしている。

・推進方策1 劣化状況等の調査と保全計画の更新

・推進方策2 推進体制の充実・強化とマニュアル等の整備、更新

・推進方策3 県有建物長寿命化に向けた計画的な取組

2.取組の成果・効果

県有建物の劣化状況等調査は3巡目となり、施設管理者との連携による体制が

整備され、主要な建物の改修について、保全計画に基づき予算要求する仕組は定

着してきた。

① 劣化状況等調査

第1期(平成 18 年度~平成 20 年度)

一般・学校施設 578 棟、住宅・小規模施設 1,026 棟

第2期(平成 21 年度~平成 23 年度)

一般・学校施設 559 棟、住宅・小規模施設 2,673 棟

第3期(平成 24 年度~平成 29 年度)

一般・学校施設 579 棟(予定)、住宅・小規模施設 2,378 棟(予定)

② 県有建物保全計画

平成 21 年度(平成 22 年 3 月)策定

一般施設 330 棟、県立学校 49 施設

平成 24 年度(平成 25 年 3 月)更新

一般施設 335 棟

③ 県有建物保全相談窓口

平成 22 年度 46 件(平成 22 年 9 月相談窓口開設以降)

平成 23 年度 107 件

平成 24 年度 102 件

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- 37 -

3.取組内容

3-1 劣化状況等の調査と保全計画の更新

県有建物の保全業務を計画的、効率的に行うため、建物の劣化・不具合に関

する情報や主要な部材、機器に関する情報の収集、更新等を目的として、定期

的、継続的に建物の劣化状況等調査を行い、得られた情報を一般財団法人建

築保全センターが提供する「保全情報システム(BIMMS)」に入力し、建物毎の今

後 30 年間の改修工事及び設備機器の取替等について、実施すべき時期及び

費用を示した中長期の県有建物保全計画を作成している。

3-2 推進体制の充実・強化とマニュアル等の整備、更新

① 庁内の相互支援・協力体制の整備

県有建物保全業務推進委員会を設置し、庁内の連携と協力体制を構築して

いる。

図-1 県有建物保全業務推進体制の体系図

② 保全業務に関するマニュアル等の整備・拡充

維持管理に関するマニュアル等の各種資料を整備し、職員ポータルサイトで自

由に閲覧できるようにしている。

図-2 保全業務に関するマニュアル等

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- 38 -

3-3 県有建物長寿命化に向けた計画的な取組

① 県有建物長寿命化指針

持続可能な県有建物(財産)経営の実現に向けた取組を推進するための方

針を明確にすることが重要であることから、目標とする使用年数、建物に求めら

れる性能、長寿命化に向けた保全業務等について、その考え方と実現方法を

示す「宮崎県県有建物長寿命化指針(平成 24 年 3 月)」を策定した。

図-3 持続可能な県有建物経営の実現に向けた取組

② 県有建物評価基準

棚卸を実行していくための有効な手段が建物評価であるとして、評価の方法

等を具体的に定めた「県有建物評価基準(平成 25 年 3 月)」を策定した。

建物評価の実施に当たっては、建物性能のハード面と施設ニーズなどソフト

面について、合わせて評価する。

【分析例】

■施設ニーズ等が高く、建物性能も高い

→継続して利用する。

■施設ニーズ等が高く、建物性能が低い

→建替や大規模改修を実施する。

■施設ニーズ等が普通、建物性能も普通

→ウィークポイントを改善しながら利用する。

■施設ニーズ等が低く、建物性能が高い

→他施設への転用や売却・複合化を図る。

■施設ニーズ等が低く、建物性能も低い

→解体・処分の検討対象とする。

図-4 建物評価における分析(イメージ)

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- 39 -

1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『『県県有有建建物物長長寿寿命命化化指指針針のの策策定定』』

宮崎県 県土整備部 営繕課

0985-26-7918

1.背景・目的・概要

本県の県有建物は、建物の劣化が顕著に現れ始める建設後 30 年を経過した建

物の割合は、平成 24 年度末時点では延床面積で4割を超えており、今後も増え続

ける。

今後、改修あるいは建替が必要な時期を迎え、保全や更新費用が増大していく

ことを考えると、今ある建物を長く大切に使うための取組を継続するとともに、これま

で以上に建物の利用調整を図りながら、総量縮小を含めた有効な利活用について

の検討を行い、整備費・維持管理費等の選択と集中を行うなど、持続可能な県有

建物(財産)経営の実現に向けた取組が求められる。

これらの取組が実効あるものとなるためには、全庁的な共通認識を醸成するととも

に、その取組を推進するための方針を明確にすることが重要であることから、「宮崎

県県有建物長寿命化指針(平成 24 年 3 月)」を策定した。

この指針では、県有建物を長く大切に使っていくための取組を推進する方針を明

らかにしている。

図-1 持続可能な県有建物経営の実現に向けた取組

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- 40 -

2.取組の成果・効果

建物の長寿命化を図ることにより、以下の効果が考えられる。

① 建物性能の維持と資産価値の保全

② ライフサイクルコストの縮減、財政支出の平準化

③ 地球環境保全への貢献

3.取組内容

●目標使用年数の設定

既存建物及び新築建物の長寿命化の目標として、建物使用の計画期間である

「目標使用年数」を、表-1のとおり、新築・既存及び一般・長期使用の別に設定す

る。

表-1 目標使用年数

建物 種別 新築 既存

一般 88年 65年

長期使用 100年 88年

一般 :長期使用以外の建物

長期使用:大規模な建物又は行政需要等から長期的使用が見込まれる建物等

●県有建物長寿命化設計基準の設定

県有建物の設計に当たっては、より一層の長寿命化を図るために、可変性や更

新性、メンテナビリティの確保など長寿命化に有効な対策について、十分に考慮、

検討する必要がある。

このため、長寿命化のための新築、改築、増築または改修の設計に関する基準

を「県有建物長寿命化設計基準」として、表-2のとおり設定する。

表-2 県有建物長寿命化設計基準

項目 考慮・検討すべき事項

可変性 将来の機能向上や用途変更に柔軟に対応できる余裕のある計画

更新性 建築設備の更新を容易に実施できる機器類の選択、スペースの

確保

高耐久性 構造躯体における耐久性の確保、耐久性の高い部材の選択

メンテナビリティ 保守・点検の容易さを考慮した機器類の配置、維持管理業務に

必要な設備の設置

省資源・

省エネルギー

環境負荷の低減、ライフサイクルコストの削減

Page 20: 6.事例集 (1)ファシリティマネジメント 1-① …- 22 - 6.事例集 (1)ファシリティマネジメント 1-① 基本方針の策定・体制の整備

- 41 -

●長寿命化に向けた保全業務

今後も、各施設管理者をはじめ関係するすべての部局が、相互に連携・協力しな

がら、長寿命化に向けた取組を継続していくことが重要であるが、これらの取組を保

全業務のサイクルとして表すと、図-2のとおりとなる。

長寿命化に向けた保全業務を効率よく、効果的に行うためには、計画、実施、記

録、分析・評価を繰り返し行い、その建物の特性にあった保全の方法を確立するこ

とが大切である。

図-2 県有建物保全業務のサイクル

●建物評価について

これからの保全業務においては、今ある建物を長く大切に使う取組を継続すると

ともに、これまで以上に建物の利用調整を図りながら、総量縮小を含め組織全体と

して 適な状態にするための棚卸を推進していく必要がある。

この棚卸を実行していくための有効な手段が建物評価である。

建物評価の実施に当たっては、建物性能のハード面と施設ニーズなどソフト面に

ついて、合わせて評価する。建物の利活用等の検討に当たっては、これらのバラン

スを踏まえた上で、改修や転用、売却等の今後の利用方針を決定するための材料

として活用することとする。

県有建物保全相談窓口

✧県有建物保全業務推進委員会

✧県有建物保全業務推進委員会幹事会

✧県有建物長寿命化・評価手法検討部会

✧県有建物保全連絡会議

〇日常・定期業務計画の作成 〇保全計画(中長期改修計画)の

更新

計 画

〇日常・定期業務 ・日常点検

・日々修繕

・メンテナンス業務

・法定点検

・清掃等

〇改修工事 〇劣化状況等調査

(県有建物保全マニュアル)

(県有建物保全業務運用マニュアル)

(建築保全業務共通仕様書・積算基準)

実 施

〇データ分析・検証 〇その他情報の収集・評価

・取得処分計画

・改修の要望等

分析・評価

〇保全情報システムのデータ更新 ・建物基本情報

・維持管理費情報、

・機器・部材情報

〇改修工事図面等の保管 (保全情報システム入力の手引き)

(管理委託費システム入力用整理シート)

記 録

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42

1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『庁舎等建築物の長寿命化の取組』

川崎市まちづくり局施設整備部施設保全担当

044-200-2977

1.背景・目的

本市は、高度経済成長期に、京浜工業地帯の一翼を担うなど、産業の発展ととも

に人口が急増し、1972(昭和 47)年7月に政令指定都市に移行した。こうした地方

自治体としての役割と責任の拡大に伴い、施設整備が急速に進み、現在、市有建

築物(企業会計を除く)の総床面積は約 359 万㎡に至っている。この内、築 30 年以

上が経過した建築物の延床面積の割合は約4割程度であるが、10 年後には約7割

にまで増加し(図表1)、施設老朽化に伴う今後の大規模修繕や更新のための財政

負担の増大・集中が懸念される。また、引き続く人口増(図表 2)や本格的な少子高

齢化による行政ニーズの増加・変化に的確に対応していくことが求められる。

持続可能な財政基盤の構築に向け、既存建築物を対象とした一定の前提条件

の下での試算において、全ての公共建築物について長寿命化に配慮することで、

過年度事業費を下回ること(図表3)などを踏まえ、長寿命化を推進する。

公共建築物の修繕費・更新費の将来見通し

図表3

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1950年1960年1970年1980年1990年2000年2005年2010年2015年2020年2025年2030年2035年2040年2045年2050年

(万人)

老年人口

生産年齢人口

年少人口

104.1

142.6150.8

74.3(71.5%)

23.9(22.9%)

23.7(16.8%)

98.9(70.0%)

33.9(22.5%)

100.7(66.7%)

5.8(5.6%)

18.6(13.1%)

16.3(10.8%)

2030 年にピークを迎える見込み 図表 2 図表 1 公共建築物の建築年別面積

本市人口の推移

(平成25年3月31日現在)

■全 ての公 共 建 築 物 について長 寿 命 化 の場 合 ※新規整備分は算入していない。(3図共通)

■非 長 寿 命 化 の場 合 ■既 存 取 組 反 映 の場 合

0

500

1000

1500

2000

2500

2014~2018年度 2019~2023年度 2024~2028年度 2029~2033年度

(億円) 20年間平均 423/年度

477/年度

344/年度

402/年度

467/年度

1,829(366/年度)

0

500

1000

1500

2000

2500

2014~2018年度 2019~2023年度 2024~2028年度 2029~2033年度

(億円) 20年間平均 398/年度482/年度

401/年度

315/年度

394/年度

1,829(366/年度)

0

500

1000

1500

2000

2500

2014~2018年度 2019~2023年度 2024~2028年度 2029~2033年度

(億円)

修繕費 更新費 過年度事業費(5か年度平均)

20年間平均 255/年度

239/年度258/年度276/年度245/年度

【3図共通】

1,829(366/年度)

2.取組の成果・効果

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43

3.取組内容

3-1 かわさき資産マネジメントカルテ<資産マネジメントの第2期取組期間の実施方針>

第1期取組期間(平成 23~25 年度)の取組を経て、引き続き見込まれる行政ニー

ズの増加・変化への対応も踏まえ、施設の長寿命化を主体とした3つの戦略により、

資産マネジメントの第2期の取組を推進する。対象施設は「本市が保有する建築物、

道路及び橋りょう等のインフラ施設(企業会計を含む)」とし、「戦略1 施設の長寿

命化」については、平成 26~32 年度までを重点的取組期間とする。

【戦略1】施設の長寿命化(全ての施設について長寿命化に配慮した取組を実施)

今後の事業のあり方や、コストメリット等の観点により適しない場合を除き、長寿命

化に配慮した取組を実施する。

【戦略2】資産保有の 適化(将来の財政状況等を見据えた建築物総量の管理)

引き続く人口増加等による多様な市民ニーズに対応しながら、将来の財政状況

等を見据えた建築物総量の管理を行う。

【戦略3】財産の有効活用(多様な効果創出に向けた財産有効活用の取組拡大)

歳入確保等の財政効果のみならず、地域や本市全体の施策推進・課題解決に

向け、取組を拡大する。

3-2 施設の長寿命化

本市は、総床面積約 359 万㎡(企業会計施設を除く)の公共建築物や市域面積

の1割を超える総面積 1655 万㎡の道路など、さまざまな施設を保有している。図表4

に庁舎等建築物(学校施設と市営住宅を除いた公共建築物)及びその他施設につ

いて、第2期取組期間における長寿命化への取組を示す。

施 設 の種 類

(保 有 量 ) 主 な取 組

庁 舎 等 建 築 物

(床面積約 116 万 m2)

資 産 マネジメントの第 2 期 取 組 期 間 の実 施 方 針 (平 成 25 年 度 策 定 ):

法 定 ・日 常 点 検 に基 づく施 設 の劣 化 状 況 等 に応 じた工 事 の優 先 度 判

定 を踏 まえた工 事 実 施 による長 寿 命 化 を推 進 し、財 政 負 担 の縮 減 ・平

準 化 を図 る。

学 校 施 設

(床面積約 131 万 m2)

学 校 施 設 長 期 保 全 計 画 (平 成 25 年 度 策 定 ):長 期 的 な視 点 による効

率 的 な施 設 マネジメントを行 い、建 築 年 数 等 に応 じた施 設 の予 防 保 全

や、改 修 による再 生 整 備 を計 画 的 に実 施 し、施 設 の長 寿 命 化 による財

政 負 担 の縮 減 ・平 準 化 を図 るとともに、安 全 で快 適 な教 育 環 境 の整 備

を推 進 する。

市 営 住 宅

(床面積約 112 万 m2)

第 3次 市 営 住 宅 等 ストック総 合 活 用 計 画 (平 成 23 年 度 策 定 ): 築 年 数

が 50 年 未 満 で、建 替 えを優 先 的 に実 施 するものを除 いた市 営 住 宅 に

ついて、計 画 的 な改 善 を実 施 することによる長 寿 命 化 を推 進 する。

道 路

( 実 延 長 2 4 6 6 k m )

道 路 維 持 修 繕 計 画 (平 成 25 年 度 策 定 ): 幹 線 道 路 の舗 装 、生 活 道

路 の舗 装 、重 要 構 造 物 、道 路 附 属 物 の分 類 別 に、施 設 の特 性 に応 じ

た効 率 的 で効 果 的 な維 持 管 理 を推 進 し、財 政 負 担 の縮 減 ・平 準 化 を

図 る。

橋 り ょ う

( 橋 数 6 1 9 橋 )

橋 梁 長 寿 命 化 修 繕 計 画 (平 成 22 年 度 策 定 ):長 寿 命 化 の対 象 とした

橋 りょうについて、効 率 的 ・計 画 的 な予 防 保 全 型 維 持 管 理 による長 寿 命

化 を推 進 し、財 政 負 担 の縮 減 ・平 準 化 を図 る。

図表4

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44

3-3 庁舎等建築物の長寿命化の具体的な取組

●点検を介した劣化状況等の一元的な管理と全庁横断的な工事優先度判定

施設管理者等による法定及び日常の点検結果に基づき、各施設の劣化情報を、

屋根、外壁、受変電設備、空調設備などの部位別に、一元的に管理し、劣化の状

況に応じて、さらに技術職員による詳細調査や、施設管理者等への聞き取りを実施

し、これらを総合的に判断して、工事の優先度判定を行う。

●資産マネジメントシステム

各施設の仕様や劣化状況、修繕履歴を一元的に管理し、中長期保全計画の

共有化、長寿命化へ向けた対応方法の管理などについてシステム化を行い、

劣化状況の評価・分析を行うなど、効率的・効果的に長寿命化の取組を推進

する。

システム

●点検のための帳票出力

(点検チェックシート、点検マニュアル、部位状況確認シート等)

●劣化状況等の入力(部位別劣化状況、修繕履歴など)

●BIMMS 管理データ連携(保全計画、部位台帳)

●現地調査や分析のための各種データ出力

●予定工事年度、予定部位、予定工事費のシミュレーション

図表5

取組フロー

図表6

資産マネジメントシステム

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- 45 -

1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『『フファァシシリリテティィママネネジジメメンントトにによよるる資資産産経経営営のの取取組組みみ』』

浜松市 財務部 資産経営課

053-457-2533

1.背景・目的・概要

浜松市は平成 17 年 7 月、12 市町村の大合併を経て平成 19 年 4 月に政令指

定都市へ移行したが、結果的に膨大な公共施設を保有することとなった。本市が保

有する施設の改修・建替えにかかる経費は、60 年で建替えすると、今後 50 年ベー

スで1兆 3,000 億円が必要と試算され、運営管理経費も含め、これら老朽化や耐震

化への対 応などは、将来にわたり行財政運営に大きな影 響を及ぼす。そこで平成

20 年度に専門部署として資産経営課を設置し、ファシリティマネジメントの導入によ

り、保有資産の総量縮減から資産の有効活用、また、公共建築課と連携し計画的

な施設の長寿命化まで総合的な保有資産改革に取組んでいる。

2.取組の成果・効果

現在、平成26年度末までに全体の約 2,000 施設のうち、簡易的な施設を除く

383 施設の削減に取組んでいる。383 施設の削減により年間のランニングコストで約

3億円、更新改修経費で約 900 億円の削減が見込まれ、長寿命化により、今後 50

年間で約 3200 億円の削減効果になると試算している。

また、廃止により遊休化した施設の積極的な処分や貸付、借地の返還等により新

たな財源確保や財政負担の軽減に取組むことで、計画的な改修による長寿命化の

ための予算確保にも寄与している。(参考)平成24年度末の削減383施設に対す

る進捗状況は187施設(48.8%)となっている。

3.取組内容

ファシリティマネジメントによる資産経営の取組み

●資産経営推進のための環境整備 (平成 20 年~21 年度)

着実かつスピード感を持った資産経営を推進するための体制や方針策定、デー

タベース化を実施

・資産経営推進会議の設置

・資産経営推進方針の策定、公表

・2001施設の公共施設データを一元化

※運営経費、利用状況、減価償却費等

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- 46 -

●一元化データを活用した施設評価の実施(平成 21 年~22 年度)

施設別に品質、財務、供給等に関する改善点の洗い出しや施設の「継続」「廃

止」の仕分けを実施

・第1期施設評価を実施 ※スポーツ施設、文化施設など736施設

・第2期施設評価を実施 ※小中学校、幼稚園、消防施設など1265施設

●効率的な施設再配置の検討 (平成 22 年~23 年度)

第1期施設評価で「継続」としたものを中心に、庁内横断的な視点から統廃合や

施設再編を検討し再配置個別計画を策定

・所管別ではなく、用途や利用圏域による施設の整理と統廃合を検討

●「適正化計画」「廃止計画」によるPDCA管理 (平成 24~26 年度)

施設評価や再配置計画を着実なものとするため、個別の施設方針に沿った個別

計画を策定し毎年進捗管理を実施

・施設評価、再配置計画に基づき、施設毎に5ヵ年計画(「適正化計画」「廃止計

画」)を作成し、PDCA管理を継続的に実施

11

◆「資産経営推進方針」の作成について

資産経営の取組み【方針策定】

【構成】① 資産経営推進基本方針 (全体の考え方や方針)② 資産経営推進実施方針 (具体的な取組みや考え方)③ 個別方針 (重要な案件等について)

(個別1)遊休財産の利活用に関する方針(個別2)旧庁舎の利活用に関する方針(個別3)中山間地域の廃校・廃園の利活用に関する方針(個別4)市施設敷地借用に関する方針(個別5)施設長寿命化に関する方針(平成22年度作成)

【進行管理】・第1期評価実施期間として5ヵ年を設定

・実施方針に基づき、施設の状況の検証や見直しなどを毎年度実施する。・資産経営推進会議にて計画の進捗管理を行なう。

【概要】保有する財産の見直しや活用等に関する取組みを資産経営として位置付け、資産経営の考え方や具体的な取組み等を示したもの

【目的】市民への取組みに関する周知と市の姿勢の明確化庁内等への取組みに関する明確化と意思統一

着実かつスピード感を意識した財産改革取組みへの布石

「財産管理」から「資産経営」へ

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- 47 -

・行政財産、普通財産⇒新たな財産区分の設定と具体的な手法の確立・利用用途別分類、利用圏域別分類の設定⇒評価手法の確立と市における施設の位置付け

資産経営の取組み【新たな財産区分】

資産経営(保有財産の最適化に向けた経営的視点による、見直し・活用・運営管理などに関する取組み

■目指すべき資産経営のすがた・保有財産(土地・建物)の縮減と効率的な施設運営・既存財産の戦略的な有効活用の推進・安全で快適に利用できる施設やサービスの提供

ファシリティマネジメント(資産経営のための推進手法)

資産経営の取組みの考え方 資産経営のための具体的な手法

施設の方向性や今後の考え方

手法による結果資産経営のための財産区分

■取組みの4つの柱・保有財産の最適化

・保有財産の利活用

・維持管理コストの最適化と環境対策

・活用財産の長寿命化

最適化への取組み

資産活用の取組み

行政財産

普通財産

事業財産

計画財産

貸付財産

遊休財産

施設評価、PDCAサイクルによる、施設の見直し、運営面、構造面などの総合経営管理

計画実施期間の明確化と実態検証による資産管理

貸付状況把握と処分の推進による資産管理と活用

・利活用の計画化と戦略的な処分・貸付の推進・活用可能財産の公開に

よるニーズの拡大

利用用途別分類

利用圏域別分類

状況に応じた方向性や考え方の適応

遊休財産の利活用に関する方針

・最小コストで最大の効果の推進

「継続」「改善」

・最良の活用「見直し」「廃止」

・財産の縮減と財源の確保

「処分」「貸付」

施設を横串(群)し全体の最適化を目指す。

適正な財産管理と計画的な活用を目指す。

13

Ⅱ適正化評価

◇保有財産の最適化●施設の見直しによる

財産のスリム化

●指定管理者導入の推進●施設利用者への

サービスの向上

●稼働率の向上●資産運営としての

職員意識の向上

◇保有財産の利活用●廃止に伴う

遊休財産化による活用

●市民ニーズに合った施設への転用

◇維持管理コストの最適化と環境対策

●ベンチマーク化による維持管理コストの適正化

●委託業務一括発注

◇活用財産の長寿命化●計画的な改修計画による

施設の長寿命化

●安全で快適に利用できる施設の提供

4つの柱への効果

「継続」

機能 ■移転■廃止

施設 ■転用■廃止

廃止計画

データ一元化

一次評価(個別評価)

二次評価(全体評価)

「継続」「廃止」

P 戦略・計画

■課題■方針・方策■中長期計画

A 改善

■再評価■改善策

D プロジェクト管理

■財務の最適化■品質の最適化■供給の最適化

総括マネジメント■評価基準・戦略基準■資産管理システム■資産経営推進会議■資産経営推進方針

C 評価

■財務評価■品質評価■供給評価

指定管理者事後評価

Ⅰ施設別・分類別評価

Ⅲ見直し評価

三次評価(資産評価)PDCA評価

結果による見直し

総合評価(最終評価)

見直しによる「継続」

・ライフサイクルコスト・中期財政計画

■継続■改善■見直し■管理主体変更

適正化計画

「継続」

再配置計画

Ⅱ適正化評価(PDCA評価)

「廃止」

Ⅱ適正化評価

◇保有財産の最適化●施設の見直しによる

財産のスリム化

●指定管理者導入の推進●施設利用者への

サービスの向上

●稼働率の向上●資産運営としての

職員意識の向上

◇保有財産の利活用●廃止に伴う

遊休財産化による活用

●市民ニーズに合った施設への転用

◇維持管理コストの最適化と環境対策

●ベンチマーク化による維持管理コストの適正化

●委託業務一括発注

◇活用財産の長寿命化●計画的な改修計画による

施設の長寿命化

●安全で快適に利用できる施設の提供

4つの柱への効果

「継続」

機能 ■移転■廃止

施設 ■転用■廃止

廃止計画

データ一元化

一次評価(個別評価)

二次評価(全体評価)

「継続」「廃止」

P 戦略・計画

■課題■方針・方策■中長期計画

A 改善

■再評価■改善策

D プロジェクト管理

■財務の最適化■品質の最適化■供給の最適化

総括マネジメント■評価基準・戦略基準■資産管理システム■資産経営推進会議■資産経営推進方針

C 評価

■財務評価■品質評価■供給評価

指定管理者事後評価

Ⅰ施設別・分類別評価

Ⅲ見直し評価

三次評価(資産評価)PDCA評価

結果による見直し

総合評価(最終評価)

見直しによる「継続」

・ライフサイクルコスト・中期財政計画

■継続■改善■見直し■管理主体変更

適正化計画

「継続」

再配置計画

Ⅱ適正化評価(PDCA評価)

「廃止」

資産経営の取組み【データ一元化から施設評価】

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- 48 -

1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『『名名古古屋屋市市アアセセッットトママネネジジメメンントト推推進進ププラランンにによよるる取取りり組組みみ』』

名古屋市 財政局アセットマネジメント推進室

052-972-2338

1.背景・目的・概要

本市の公共施設のうち、市設建築物は昭和 40 年代から 60 年代を中心

に、公共土木施設は昭和 30 年代から集中的に整備された結果、今後一斉

に老朽化が進み、従来どおりの維持管理・更新の手法では、一時期に大き

な財政負担が見込まれる。

このような状況に対応するため、平成 20 年度に「名古屋市アセットマネジメント

基本方針」を策定し、平成 24 年 3 月に本市の建築物や公共土木施設などの資

産の現状を明らかにし、施設の維持管理・更新に関する基本的な事項を取りまと

めた「名古屋市アセットマネジメント推進プラン」(計画期間:平成 24~33 年)を策

定した。

2.取組の成果・効果

計画的・効率的な維持管理や、施設の長寿命化を行い経費の抑制と平準化を

図ることにより、今後 40 年間で市設建築物では 106 億円/年、公共土木施設では

85 億円/年の抑制効果が見込まれる。

<計画的・効率的な維持管理の効果の試算> (億円)

区 分 試算結果(年平均)

差額 導入前 導入後

市設建築物 854 748 106

公共土木施設 170 85 85

3.取組内容

3-1 経費の抑制と平準化

●長寿命化の推進

(1)市設建築物

ア 構造体耐久性調査

概ね築 40 年以上の建築物を対象に、今後どの程度の期間、建築物が使用

できるか確認するため構造体耐久性調査を実施している。これまでの調査結果か

ら、40 年程度以上期待できるものが全体の約 3 割、20 年程度以上期待できるも

のが約7割あることが判明した。

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<構造体耐久性調査の結果(平成 24 年度までの調査)> (単位:棟)

区分 今後期待できる建築物使用期間

計 40 年程度以上 20 年程度以上 20 年程度未満

学 校 129 346 2 477

市営住宅 37 108 0 145

一般施設 31 31 0 62

計 197 485 2 684

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イ リニューアル改修等

今後の整備にあたっては、概ね築 40 年程度での改築に替え、構造体耐久性

調査の結果を踏まえ、構造体の耐用年数まで使うことを目標に、リニューアル改

修(R改修 ※1)、セミリニューアル改修(セミR改修 ※2)などの合理的な整備方法に

より、施設の長寿命化を図る。

※1 R改修 : 改築の代替となるもので、築 40 年程度の時期に、建築物の構

造体を残して、内外装の改修と設備機器の更新を行い、今後

40 年程度使用できるようにするもの。

※2 セミR改修: 内外装の一部の改修、空調機器等の設備の一部の更新・改

修を行うことにより、施設の機能回復を図るもの。

(2)公共土木施設

中長期を見据え、点検調査に基づく計画的で効率的な維持管理を実施するこ

とにより、施設の長寿命化を図る。

社会に与える影響や取り組み効果を勘案し、優先度を「STEP1」から「STEP3」の

3つに仕分け、優先的に取り組む「STEP1」の施設から、順次計画的な維持管理

を行う。

<取り組み優先度>

区分 STEP1 STEP2 STEP3

道路施設

車道舗装 橋りょう 街路灯 街路樹

歩道橋

その他の施設 河川施設

ポンプ施設

雨水排水施設 河川護岸

公園施設 遊具 ナイター照明

公園橋

公園便所

●応急保全の実施

R 改修や改築に至る前に施設の安全性や、快適性を含む施設の運営に重大な

支障をきたすことのないよう、下図に示した応急保全を実施する。実施にあたって

は、施設の重要度や劣化状況に応じて優先度をつけて、計画的に改修・更新す

る。

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<応急保全の主な項目>

項 目 安全性 施設運営に 重大な支障

将来的に補修費増大

屋根・防水 ― ○ ○

外壁 ○ ― ○

受変電設備、中央監視装置 ― ○ ―

昇降機 ○ ― ―

自家発電装置・蓄電池 ○ ― ― 空調熱源機器(ボイラー、冷凍機、冷却塔など) ― ○ ―

給水装置(貯水タンク) ― ○ ―

自動火災報知機、機械排煙装置、

防火戸・防煙垂れ壁 ○ ― ―

3-2 施設の集約化

新築または改築の際は、他施設との集約化により類似・重複機能の統合を検討

するとともに、施設規模に対する敷地のバランスを見直して余剰地の創出を図る。

また、駅そば等の交通利便性のよい場所に集約化を図るなど、施設の再配置に

ついて検討する。

3-3 保有資産の有効活用と財源確保

○ 既存施設の活用

高齢化社会の進展などによる新しいニーズに対しては、原則として新規施設

の整備ではなく既存施設の空スペースの活用などで対応する。

○ 土地の取得の抑制と売却等の推進

都市計画施設の整備などでは、事業の進捗状況などを勘案し、当面必要な

ものに限定して取得を行う。

施設の集約化などによって余剰となり利用予定がなくなった土地などは、原

則売却し、売却が困難な場合は貸付等の有効活用を行う。

○ その他の有効活用

ネーミングライツ、壁面広告、自動販売機設置における競争入札の導入など

を行ってきたが、一層の財源確保に努める。

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52

1.ファシリティマネジメント

1-① 基本方針の策定・体制の整備

『堺市市有施設等整備活用基本方針の策定』

堺市 財政局 財政部 財産活用課

072-228-7409

1.背景・目的・概要

高度経済成長や人口増加を背景に整 備・拡充してきた公共施設の多くが更 新

時期を迎えようとしている。

そのため本市では、道路・橋りょう等のインフラ施設について、計画的な補修、老

朽化対策、長寿命化に取り組むことで、安全性の確保と、維持管理費用の縮減・平

準化に努めている。一方、市有建物の現状は、30 年以上前に建築した施設が全体

の約 5 割を占めており、今後、大規模な改修・改築、建替えが集中して発生し、財

政負担が懸念される。市民ニーズが多様化する中で、人口減少や少子高齢化の進

展が公共施設に与える影響、施設の維持管理コストの縮減、耐震化といった防災

対策等への対応が喫緊の課題となっている。

このため今後は、施設の長寿命化、転用・集約化といった既存施設を有効活用

する施策に方向転換し、財産を戦略的かつ適正に管理・活用していく取組を推進

する。

2.取組の成果・効果

公有財産のマネジメントを実施・推進することで、市有施設等の有効な利

活用に計画的かつ効率的に取り組み、健全な財政の維持を図るとともに、現

在そして将来の市民ニーズに対応した機能重視型の公共施設を形成するこ

とで、さらなる行政サービスの向上が見込まれる。

【構造特性による分類と竣工年の分布状況】

竣工年

新耐震基準

20,000 

40,000 

60,000 

80,000 

100,000 

120,000 

延床

面積

(㎡)

竣工年

延床面積(㎡)

学校施設

市営住宅

その他用途

【将来推計人口】

83.0  83.1 83.9  83.6 

82.2 

80.1 

77.5 

83.8 

82.7 

81.0 

78.7 

84.0 83.3 

81.9 

80.3 

83.1 

81.4 

78.8 

75.7 

74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 

(万人)

2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030

人口実績値 将来推計人口① (低位)

将来推計人口② (中位) 将来推計人口③ (高位)

超低位推計(※参考値)

(年)※ ・・・2000 年 ( 平 成 12 年 ) は 旧 美 原 町 人 口 と の 合 計 値

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53

3.取組内容

3-1 堺市市有施設等整備活用基本方針

●3 つの基本方針

①ライフサイクルコストの削減

・予防保全による施設の長寿命化

・保全情報システムを活用した短期計画、中長期計画の策定

・維持管理費、光熱水費の削減につながる仕様

・PFI事業など公民連携(PPP)による民間資金、ノウハウの活用

②施設総量の 適化

・行政需要の変化を想定した施設規

模とする

・統廃合、再配置、他用途への転換、

複合機能化を推進

・広域連携、公民連携によるフルセッ

ト主義からの脱却

・不要と判断された財産は売却

・一時利用が可能な財産は積極的に

貸付

③バリュー・アップ(価値の向上)

・防災対策への対応

・バリアフリー、ユニバーサルデザインへの対応

・環境性能など質的向上への対応

3-2 施設情報管理の一元化

ファシリティマネジメントに必要な情報をデータベース化し、施設カルテを作成す

る。

3-3 利活用方針決定の方策

●方向性検討マトリックス

方向性検討マトリックス等により利活用方針を検討

する。

●利活用案の類型化

未利用・低利用財産の利活用案を類型化して検討することで、全庁的な意思決

定と事業実施の迅速化を図る。

現在

年数

将来の市民ニーズに

対応した公共施設

【将来の市民ニーズに対応した施設規模の考え方】

≪総量縮減≫

廃止、売却、貸付、公民連携 など

≪効率的な利活用≫

再配置、用途転換、複合機能化、

統廃合 など

≪長寿命化≫

予防保全、耐震化、建替え、

省エネ、バリアフリー など

取組内容

将来

施設総量 施設総量

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54

3-4 施設保全予算の配分

「施設の価値(施設が果たすべき機能)」と「劣化・不具合の状況」によって分析し、

その他の情報も加味しながら、総合的に勘案して予算配分を行う。

3-5 推進体制等

●堺市公有財産管理・活用庁内委員会の設置と活用案検討・審議の流れ

トップマネジメントに直結した機関である委員会の設置により、全庁横断的に取り

組み、経営的な視点からファシリティマネジメントを推進する。

●PDCAサイクルによる継続的な取組

PDCAサイクルにより、公有財産のマネジメントを継続的に実施する。

未・低利用財産の情報提供

施 設 活 用 案 の 作 成

所管部局

事務局

公有財産管理・活用庁内委員会

幹事会

委員会

財政課

案件を検討・評価

案件に対する意見

幹事会の審議

委員会の開催

市長へ報告

① 照会 回答

③ 付議

依頼

④ 議案

⑤ 議案+

審議結果

⑥ 審議結果

予算要求案に反映

施設活用案の作成に反映

② ヒアリング

意見調整

②~⑤ 意見調整

⑧ 予算要求

ヒアリング

査定

⑨ 今年度の計画の達成度を検証次年度以降の計画を検討

⑩ 次年度以降の予算案への検討 予算の調整

⑦ 審議結果 通知書

審議結果報告

書の作成

ファシリティマネジメント推進のため、

未・低利用財産の利活用、施設の再配置、

統廃合、転用などの必要性・可能性につ

いて研究し、所管部局へ検討を依頼

事務局

堺市公有財産管理・活用庁内委員会の事務フロー【堺市公有財産管理・活用庁内委員会の事務フロー】

【利活用案の類型化(分類)】

中区分 小区分

売却

貸付

PPP、PFI、指定管理者制度など

行政活用 再配置、統廃合、転用など

条件整備が必要なもの自治会等に一時的に使用又は貸付けしているもの、近い将来に用途廃止する見込みのもの など

所管換え・所属替えを伴う再配置、統廃合、転用などにより整備

新たに用地を取得して整備

現地建替え

所管換え・所属替えを伴う再配置、統廃合、転用などによる移転など

民間へ貸付

地元へ貸付

民間へ貸付

地元へ貸付

売却するもの

売却するための条件整備が必要なもの

貸付するもの

貸付するための条件整備が必要なもの

条件整備に一定の期間が必要と考えるもの

地形的要因等から現状では売却が困難なため、検討を要するもの

地元要望があるもの

代替地として必要な財産 事業用代替地として当面保有していくもの

大区分

まちづくり活用型

(市全体への効果波及が期待できる財産)

市域の中でも地理的な優位性が高く、利活用を図る主体が官・民を問わず、市や市民のための十分な利活用が期待できる財産

(利活用策は、民間活用を視野に入れた幅広い観点から検討する)

民間活用

新設、新築整備

建替え、移転など

関連計画に位置づけがある場合や住民福祉の向上のために公共用財産として活用する必要性が明確である財産

(財源や他事業進捗などと整合を図りながら、順次に整備を図る)

行政活用型

(市が主体的に整備すべき財産)

一定の問題を解決する必要があるもの

処分優先型

(保有せず処分を図るべき財産)

市の政策的な位置づけや地域のまちづくりにおける必要性、他事業との関連性がない財産

(収益性に配慮しながら売却や貸付を図る)

利用計画はあるもの

明確な方向性はないもの

終的な利用計画はあるものの実施まで暫く時間を要する財産や、明確な方向性はないものの将来的に価値向上が期待できる財産

(現状保全を基本に保有し、一時貸付など 適な利活用を図る)

暫定活用型

(暫定的に市が保有すべき財産)

売却が可能なもの

貸付が可能なもの