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Tornion kaupunki Tornion kaupungin tarkastuslautakunta ARVIOINTI- KERTOMUS 2017

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事例6-1 従業員の喧嘩とその対応

関連情報

1.企 業 の 業 種 自動車用品製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2002年4月~ 2005年6月頃

3.場所(省又は都市名) ホーチミン市

4.体験の際の職種・職務 技術部門担当役員

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社 100人以下

A.困難事例の概要

 ささいなことから工場内で喧嘩があった。

事例①

 新入社員の男性に入社6カ月の大学卒業の新人エンジニアが作業を指導してい

たところ、その教え方が気に食わないということで新入社員は仕事をしなくなっ

た。新人エンジニアがそのことに対して新入社員に注意したところ、新人社員は

そばにあったパイプを持って新人エンジニアに襲い掛かった。

 幸いにも、直接パイプが新人エンジニアに当たらず軽い怪我程度で済んだのだ

が、たまたま私も近くにおり、新入社員を取り押さえて、騒動を止めることがで

きた。

事例②

 3カ月後、朝、現場で女性のなじり合いの声が聞こえ、事務所から急いで飛び

出し現場に向かったところ、2名の作業員が取っ組み合いの喧嘩をしており、頭

髪を引っ張り平手打ちをしたり、女性とは思われない姿を見て唖然としてしまっ

たが、すぐに止めに入りその場は収まった。

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 喧嘩の原因は、会社の規則で着替えのロッカーには食べ物や飲料水を入れない

ようになっていたにもかかわらず、氷の入っているカップをロッカーに入れ、そ

のロッカーの下の作業員のロッカーの服に水滴が落ちていたことから発生したも

のであった。

 最初は大きな声でなかったが、次第に2人とも大きな声になり、関連して通常

面白くないと思っていたことが言葉として出てきて、本来の原因であること以外

の方向になっていき、それが双方ともエスカレートすることになっていった。

 双方ともかすり傷程度でよかったが、遺恨を残した。

B.対処概要

 事例①・②とも興奮が収まったころ、1人ずつ会議室に呼び、原因と言い分を

詳しく聞いた後、会社の組合のメンバーを集め事情を説明した。組合は会社側と

意見交換後、組合としての処罰や意見をまとめ、今度は両名を一緒に会議室に呼

び、会社側と組合の幹部で作っている懲罰委員会にて再度2名の社員から事情を

説明させた後、懲罰委員会からの判断を連絡した。

 その内容は、怪我をさせる行為は警察沙汰で、会社に限らず絶対に加害者が悪

いことをよく説明し、納得が行くまで話をするという根気比べであった。

 裁判でいう判決は加害者が悪いことは明白であるが、それを受けて会社内で騒

動を発生させた人にも40%の非があることも理解させた。

 その結果、両名とも同じような騒動を次回発生させた場合には、会社から退職

指示が出ても文句を言わない旨の念書を書かせ、会社側がそれを保管した。

 また、全員朝礼でこの騒動のことを簡単に話し、会社としての処置及び従業員

のモラルについて再度教育した。

 その結果、会社内の雰囲気も逆に引き締まった感じがあり、会社としも安心で

きた。

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C.教訓、知っておくべき情報・知識など

 喧嘩など騒動が発生した場合は、ベトナム人気質(頑固さ、他人のせいにする)

を把握した上で双方から言い分をよく聞き、原因がどちら側にあるか、なぜ発生

したかを分析し、悪い場合は本人が納得いくまで説明し理解させないと他の従業

員にも悪影響を及ぼすことがあるため、十分な配慮が必要である。

 会社としての規律、規則の従業員への徹底、問題の起きた時の即時対処(時間

を置いてはだめ)、即断、即決、即実行が必要である。

 ベトナムの労働法では、社員として採用した場合、特段の事情がない限り会社

側から一方的に労働契約の解除をすることができないこととなっている。(試用

員、臨時従業員は除く)

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事例6-2 社有PCの業務外利用

関連情報

1.企 業 の 業 種 製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2007年1月~2007年6月頃

3.場所(省又は都市名) ビンズン省

4.体験の際の職種・職務 ゼネラル・マネージャー

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 301人以上

        日本本社 301人以上

A.困難事例の概要

 当社は製造業であるので、受注管理・在庫管理から製造ラインの実績収集まで

数多くのPCを使用している。工場事務所ではほぼ全員が使用しており、製造ライ

ンに対する業務連絡も各班長を通じて電子メールで行われている。従業員の年齢

が若く関心も高いことから、日本と比較してPCスキルは高く、以前より業務に利

用してきた。自宅にインターネット接続環境が整ってなくとも、街でのネットカ

フェ利用がポピュラーであることもPCへの関心を高めていると思われる。

 しかし、PCは社有資産であるとの意識が薄く、制服などと同様に支給されたも

のと認識違いがあり、業務時間内外での個人目的のインターネット接続、メディ

アファイル再生、ゲームが横行するようになった。昼休時間の接続は禁されてい

ないが、シフトがずれる場合など隣の職場が作業中であることもあり、製造現場

の規律を乱す原因の一つとなってきた。また、サーバー上にメディアファイル保

管によるリソースの消費、LAN上での再生、メール添付によるネットワークトラ

フィックの増大などの障害も目立ち、USB経由でのウィルス感染も心配される事

態となった。

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B.対処概要

 サーバー上のファイルは定期的にモニターしているが、PCのドライブを共有さ

れるとモニターは行えないし、業務時間内の使用状況を常に監視することも不可

能である。従業員の良識に訴えてみても効果ははっきりせず、最終的には本社の

方針もあり、全社のPCの稼動状況をモニターするソフトウェアを導入すること

となった。各PCのハードウェア・ソフトウェアの構成を把握し動作を規制し、す

べての操作を記録・分析することで問題行動の抑止を目的とした導入であった。

USB端子の使用規制など厳格に行ってはいないが、操作履歴がすべてモニターさ

れているとの意識から明らかな業務外の利用は少なくなってきている。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

 PCは便利な道具であるが、規模が大きくなるとその管理方針をハッキリさせて

おかなくては、目に見えにくい時間のロスあるいは資産のロスにつながってしま

う。大きな問題となる前に会社の管理方針を明確にして、新人教育から始まる従

業員教育の中で徹底していくことが重要である。

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事例6-3 社員の副業 リベート

関連情報

1.企 業 の 業 種 卸売・小売業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2006年10月~ 2007年4月頃

3.場所(省又は都市名) ホーチミン市

4.体験の際の職種・職務 社長代理

5.資 本 形 態

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社

A.困難事例の概要

 日本向けの輸出を強化する方針が打ち出され、併せてベトナム国内販売も積極

的に取り組むことになった。急遽、営業社員を採用して3~6カ月の人材育成教

育を実施した後、本格的に国内営業に取り組むこととなった。その結果、国内営

業も順調に伸長してきたので、成績の良い営業社員を責任者として課長に抜擢し

た。

 一年を過ぎたころから急に営業成績が悪くなり、会議で理由を聞いても言い訳

ばかりを繰り返した。言い訳にも不自然なものがあったので調べたところ、販売

先に対して会社を通さず個人の副業として営業していたことが判明した。また、

仕入れ担当者も仕入先に対してリベートを要求し、仕入価格にリベート分を上乗

せして支払いをしていたことが判明したため、両者とも解雇した。

B.対処概要

 営業社員には採用時又は管理職への昇格時に副業の禁止について誓約書に同意

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させることにした。また、仕入れ担当者に対しては、仕入れ業者へリベートを要

求した場合もしくは金銭を受け取った場合には解雇するという誓約書に同意させ

ることにした。営業社員の副業については誓約書に同意させてもあまり効果が期

待できないので、再発を防止するためにも、絶えず管理職は営業社員と会話した

り、食事に誘うなど日常の行動について把握に努める。

 仕入れ担当者が仕入れ業者へリベートを要求した事実を把握することは非常に

難しいため、管理者は抜き打ち的に仕入れ担当者を同席させず仕入先と話し合う

機会を設け、リベート要求の有無に対して防止策を取り入れることとした。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

 ベトナム国内では、副業は当たり前のように日常的に必要悪として根付いてい

る。新聞にも出ていたが、病院勤務の医者は就業時間が過ぎると患者がいてもさっ

さと自宅に帰ってしまう。夕方からは自宅で個人の夜間診療を開業し、病院勤務

の給料より副業の収入が多いことが社会問題になっていた。医者不足が根本の原

因である。

 貧困から立ち上がるため、副業、兼業をして家族の生活を守ってきた文化と土

壌があることを認識する必要がある。そのため、副業、リベートは必要悪と考え、

あまり悪いと思っていない国民意識があることを知っておく必要がある。また、

採用時に会社内規をしっかり説明し理解させることも必要である。

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事例6-4 ブラックレター(内部告発)

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1.企 業 の 業 種 運輸・倉庫業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2000年3月~2002年6月頃

3.場所(省又は都市名) ホーチミン

4.体験の際の職種・職務

5.資 本 形 態 合弁

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社 301人以上

A.困難事例の概要

 共産政権下、治安維持を目的に組織された隣組監視体制は、体制批判に対して

は親子、兄弟といえども連帯責任を負い、義務としてその秘匿は厳罰に処せられ

た。

 その名残として、ブラックレターは晴天下、正当な行為として保護推奨されて

いる。その内容は、

 内部では、

1.日常における不正行為(キックバック、リベート、横流し、窃盗行為、ポケッ

ト入金など)

2.個人、人間関係に起因するもの

 外部では、

1.人民委員会

(1)廃水・排煙・廃棄物など環境に影響する施設に関するもの

(2)土地使用に関するもの

2.労働局

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(1)(無断)欠勤、プライドを傷つける言動を伴う不正行為などによる解雇など

(2)労働契約に関するもの

3.顧客・同業者

 内部情報の提供(漏洩)

B.対処概要

 こうしたブラックレターの防止手段としては、自らの考え、事実を主張し、善

処を期待する曖昧な妥協、口頭での解決はせず、必ず文書にし、相手方の署名を

取るという姿勢が大事である。

 また、次のような注意も必要である。

・個人の人間関係に起因する誹謗中傷などは、情報として意識するも深入りしな

い。

・経営に関する事項は、1回目は参考情報の調査、2回目は処置、3回目は懲罰

委員会による処分を行い、処置・処分については労働協約に基づいて行う。

・問題を放置しない。

・バランスよく公正に対処し、改善結果を明示する。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

1.1対(全-1)であることを認識すると、ブラックレターは現状を把握する最

良の手段・機会・味方である。

2.二人だけの話は守られることがない。

3.ステップアップ、ジョブホッピングの意欲が強い。

4.法・倫理を理解するには、性悪説に立てば理解し易い。

5.弱者、貧者、内国人に利がある。(外資、外国人は不利)

6.地縁、血縁での結束力は強い。(採用、 取引、 情報交換)→外部に対する猜

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疑心が強い。

7.民族性として利己的で自己主張が強く、討論好きである。

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事例6-5 現地担当者の不正行為(バックマージン)

関連情報

1.企 業 の 業 種 製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2006年7月~2007年3月頃

3.場所(省又は都市名) ビンズン省

4.体験の際の職種・職務 社長

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社 301人以上

A.困難事例の概要

 副資材購入のベトナム語の契約書へのめくらサインや不必要に高い購入が行わ

れており、バックマージンが現場担当者に流れていたことが、従業員の密告で発

覚した。

 また、産業廃棄物売却の際、カートンBOXや木製パレット、テープの廃材など、

再利用可能なものは業者に売却している。すべて重量に応じていくらかで引取り

をさせるが、その際に作業者とガードマンが結託して重量を過少にごまかして、

業者からバックコミッションを得ていた。これも密告で発覚した。

B.対処概要

 契約する前には相見積りを取ることをルールとし、契約書は英文併記とするこ

ととした。できないものは、アドミニストレーター、経理担当者の確認後、当方

へ提出することとしたが、確定証拠がなかったため、当該担当者は労働契約更新

時に解雇した。

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 ただし、英文併記とはしたものの、安い資材を提供できるローカル系には英文

書類の作成能力がなく、ローカルスタッフを信頼し、口頭説明を確認しての対応

を継続している。

 また、産業廃棄物も会社の資産であるため、売却の際に必ず経理担当者(女性)

を立会いさせての目方確認、記帳をさせた。産業廃棄物の低減を継続テーマに掲

げ、担当を決めて取り組ませた。これは昇給の際の評価項目の一つにした。

 密告がし易いように、現場と食堂、事務所に鍵つきの改善提案箱を設置し、毎

月開封して内容を確認している。本来は改善が目的のメインであるが、どんな内

容でも投稿できるため、不正行為の防止効果も期待できる。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

 日系企業でもローカル購買担当者からバックマージンを要求されるケースは

多々あり、拒否してローカルや中華系の商社に発注が流れるケースも多い。その

度に日本人担当と面談して調整するが、他社も同様で日本人はほとんど内容を把

握できていない。古参の日本人の方に確認したところ、ある意味ベトナムの商習

慣であり、全くなくしてしまうことは無理と言われた。

 総じてこの手の問題は男性従業員が起こすため、監視役として女性従業員も配

置している。また、従業員の親族、友人関係の採用は行っていない。

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事例6-6 現地調達物品購買に関する不正行為に注意

関連情報

1.企 業 の 業 種 労働集約型製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2002年3月~2006年6月頃

3.場所(省又は都市名) ハイフォン

4.体験の際の職種・職務 社長

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 301人以上

        日本本社 301人以上

A.困難事例の概要

 ベトナムで事業を展開していると、必ず現地調達物品の購買ということに直面

する。特に製造工場を運営する場合は、かなりの金額に達するのが実態である。

これらの購買業務を出向者が直接担当すると外国人向価格となってしまうため、

否応なしに従業員の担当者に任せるのが通常である。ところが、担当者を信用し

て任せておくと、とんでもない高い物、数量足らずの物を購入する者、会社に対

して背任行為をする者が出てくる。

 例えば、

1.事務消耗品購入担当者は販売店と手を結び、本来100円の品物を120円で会社

に請求し、後で20円を業者と山分けする。

2.工場の営繕部門の者は、鉄骨、木材、工具、その他を購入する際、会社より

仮払いをして現金を持参して現金で買い物し、その時点で手数料を受け取り自

分だけ太ってしまう。

3.ベトナムでもインボイスがあるが、そのインボイスを担当者が書く場合もあ

る。(偽物のインボイスが巷に出回っている)

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4.工場運営をしていると従業員の食堂を用意して給食を支給するが、担当者は

主食である米を月間にすると数トン単位で購入するが、その米のグレードを誤

魔化し、その差額をポケットに入れる。

 例を挙げれば数え切れないほど列記できる。

 操業を開始してから数カ月すると直ぐにこれらの異常に気付くことになるの

で、これから進出する企業は注意が必要である。

B.対処概要

 事業展開する当初より上記事例を排除できればそれが最善である。以下に幾つ

かの対処策を挙げる。

1.購入品を1カ所の販売店だけから買うのではなく、同じ町の中でも2カ所以

上の店から相見積りを取り、買うようにすること。

2.購入品を同一地域だけでなく遠隔地の町からも見積りを取り、価格を比較す

ること。

3.値段の推移表を作り、異常な価格を検知すること。(出向者も見ていること

をアピールする)

4.インボイスの偽物、本物を見分ける光学器を備えて抜き打ち検査をすること。

5.社内に総合監視システムを創業当初より設置して監視すること。

 このような余分な出費を無駄と判断するか、経費の一部と判断するかで対処の

仕方が大きく異なるが、いずれにせよ経営者にとっては精神的にも物理的にも気

分の良いものではない。よって、上記対処方法を創業当初よりシステム化して取

り入れ、少しでも経費節減の道具としてほしい。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

1.なるべく担当者には現金取引をさせず、振込み、業者に集金させること。

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2.ベトナムにおいては一般的に紹介者に手数料を払うのが常識となっているこ

と。

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事例6-7 営業社員による代金横領事件

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1.企 業 の 業 種 鉄鋼加工販売業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2005年1月~2005年3月頃

3.場所(省又は都市名) ハノイ

4.体験の際の職種・職務 アドバイザー

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社

A.困難事例の概要

 

 ベトナムの友人が鉄鋼の加工販売会社を設立した。仕事は日本から輸入した鉄

を大量に在庫としておいて、顧客の要求に従って切ったり加工して販売すること

である。現地の顧客はある日突然決まったサイズや規格の鉄が必要になったりす

るが、日本に発注した場合、いくら急いで空輸しても最低一週間はかかり、輸送

コストもかさむ。わずかな数量の鉄でもそれがないと工場の操業に影響が出る場

合もある。この会社は発注された翌日に納入できるので、順調に業容を拡大して

いき、顧客の数が増えるのに併せて設備も新しく入れ、在庫量も増えていった。

従来、ホーチミン市でスタートしたこの会社も北のハノイでの需要が増えてきた

ため、ハノイでも同じような倉庫を新設して販売を伸ばしていった。

 ところが、ハノイでの販売がある時点から利益が出なくなったのである。社長

は本社のあるホーチミン事務所に常駐しており、週に一回程度の割合でハノイ出

張を繰り返して、業績の確認と従業員の指導をしていた。

 当時の傾向として、ホーチミン市の市場よりもむしろ、ハノイの方の伸び方が

大きく、大型企業進出に続いて、その周辺産業がハノイ周辺で相次いで工場を建

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設していた。ところが、ハノイ事務所における企業業績に陰りが見えてきていた

のである。売り上げは増えるが、利益率が落ちてきていた。

 ハノイ事務所の販売部門は、セースルマネージャーとその下に2人の販売要員

がいる。この3人を問い詰めたところ、大手の顧客3社に対して大幅な値引きを

し、そこからリベートをもらっていたことが判明した。会社としては、新規の顧

客開拓に熱心なあまり、採算無視の無理な販売を容認していたのだが、それをセー

ルス担当が個人の利益確保に悪用していたのである。さらに、社内調査をしたと

ころ、販売先の回収代金の一部が経理に入金されていないことも分かった。販売

関係者が口裏を合わせて着服していたのである。

B.対処概要

 このセールス担当3人を呼んで、退職金もその日まで働いた給料もなしで即刻

解雇した。横領された金額の回収は最初から無理と分かっていたが、時間がかかっ

てもよいので返還するよう諭して解放した。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

1.売上金横領やリベート行為はベトナムではよくあることであり、特に珍しい

ことではない。これは、ベトナム政府の必死の汚職撲滅キャンペーンにもかか

わらず、政界にしても官界にしても汚職がなくならないからである。民間企業

の従業員も、そのようなベトナム社会に蔓延する汚職体質に感化されて、神経

が麻痺しているところが見えないこともない。リベートが公然と横行するゆえ

んである。販売代金の横領も、彼らにとってはそれほど悪いこととは思ってい

ない。

2.ベトナム人は真面目でよく働き、また頭も良い。しかし、これが悪い方向に

働くと、とんでもないことに発展していく危険性がある。そのため、普段から

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社内の管理体制を整備して、できるだけその芽が小さいうちに摘み取っておく

こと。

3.業者からリベートを受け取ったり、支払うことは悪事であり、会社として認

めないということを徹底させること。また、仕事上の立場を利用して副業に励

む従業員がいることがあるので、そのような行為が発覚した場合、即効解雇と

いうような条項を業務規定に織り込むこと。

4.営業は担当者に全面的に任せないで、時折社長自らが相手の会社に通い、責

任者と親しくなること。業績が伸びるだけではなく、回収代金の横領などの不

正防止にも必ず貢献する。また、営業人員に余裕がある限り、担当の交代を定

期的に実施することは不正行為の予防だけではなく、マンネリ化が避けられ、

また本人の勉強にもなる。

5.売上金の着服防止のため、代金の授受はできるだけ現金を避け、銀行振込み

とさせること。顧客であるベトナム企業は、税務当局にほそくされやすい振込

みを避けたがる傾向にあるが、会社の方針として相手を説得すること。

6.会計監査はできれば外部に依頼して定期的に実行すること。不正は大金が一

度に動くのではなく、長期間に少しずつ発生し気が付いたときには莫大な金額

になっていることが多い。定期的な外部による会計監査は経費がかかるが、最

終的には安くつくはずである。

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事例6-8 経理担当者による横領

関連情報

1.企 業 の 業 種 製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2005年10月~

3.場所(省又は都市名) ハイフォン

4.体験の際の職種・職務

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社

A.困難事例の概要

 A社は、日本人技術者1名、ベトナム人従業員70名程度で構成される製造業で

ある。製造管理については、日本人技術者が常駐しているが、総務についてはベ

トナム人従業員を雇用し、一任していた。

 日本人技術者には、会計・経理の知識はなく、ベトナム語で記載される署名に

言われるがまま署名していたところ、経理部長が不正な引き出し、送金を行い、

数百万円を横領した。

B.対処概要

 A社では、日本人技術者が書類について疑問を持つことなく署名していたこと

から、経理担当者が明らかな不正を行い始めた。証拠を残す取引をしていたため、

最終的には当該従業員も罪を認め、賠償に応じた。(会社のお金で家屋を購入し

ていたため、その家屋を売り払い、賠償に充てた)

 当該従業員に対する訴訟は起こしていない。

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C.教訓、知っておくべき情報・知識など

 中小企業の進出では、まず技術ありきで技術者のみを派遣し、当該技術者に会

社経営を一任している形態が増えている。会社が技術者へ経営を一任する場合に

は、ベトナムにおける法律・手続・会計などを事前に研修するなどの工夫が必要

だと感じている。ただし、ベトナムの法律は日々変わることも多く、会計基準も

情報入手が困難な状況であるから、技術者を一人だけ派遣する形式の場合には、

会計や税務は会計事務所へ委託する、弁護士と顧問契約を結ぶなど専門機関の補

助を受けることを薦めたい。

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事例6-9 日本語通訳による不正行為

関連情報

1.企 業 の 業 種 製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2002年5月~2005年5月頃

3.場所(省又は都市名) ハイフォン

4.体験の際の職種・職務 社長

5.資 本 形 態 独資

6.従業員数  ベトナム 301人以上

        日本本社 301人以上

A.困難事例の概要

 創立当初、日本語がよくできるということで、通訳兼務で購買の仕事を担当さ

せた。日本語の通訳であるので、日本人出向者も信用して何でも任せていた。

 2年ぐらい経過して工場も落ち着いてきたころ、輸出用のケースマーク用ス

テッカーの価格があまりにも高いので調査したところ、3,000ベトナムドン/1枚

で購入していたものが、ハノイで見積りを取ると300ベトナムドン/1枚であり、

10倍の価格で購入していたことが判明した。信用して任せていた通訳に騙されて

いたのである。

B.対処概要

1.ハノイの業者から購入した方が安いと判明した時点から業者を変更した。

2.窓口の通訳を即解雇した(無条件解雇)。

3.この一件が判明した後からは現地調達品はすべて相見積りを取り、購入先を

決定することとした。

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4.同一地域だけの相見積りだけでなく、参考に遠隔地からも見積りを取り、安

くて品質がよければ、遠隔地からの購買も実施することとした。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

1.日本人は言葉が分かり、自分の意思が不自由なく伝わると、100%信用して

しまう傾向がある。

2.通訳だからといってすべてを任せることは非常に危険である。

3.同一地域での相見積りは業者同士が談合している場合が多くある。

4.できる限り広範囲に情報を収集することが大事である。

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事例6-10 日本に帰化したベトナム人通訳

関連情報

1.企 業 の 業 種 製造業

2.問 題 の あ っ た 時 期 2006年8月~2007年12月頃

3.場所(省又は都市名) ハノイ市

4.体験の際の職種・職務 社長

5.資 本 形 態 合弁

6.従業員数  ベトナム 100人以下

        日本本社 301人以上

A.困難事例の概要

 日本の親会社は2003年頃からベトナム進出を計画し、日本国籍のベトナム人B

氏を採用し、担当役員の直属部下として事前検討からF/S作成、さらに合弁のパー

トナー探しや現地での人材発掘・育成まで設立準備のための業務を幅広く担当さ

せた。

 彼はベトナムの南部出身で少年期に難民として日本に逃れ、苦労して大学を卒

業した人物で当然日本語能力は優秀である。

 ハノイ市における現地会社創立(1995年)とともに、総務部の課長として主に

通訳と文書関係を担当し、日本人社長の耳と口になって創業時の官公庁や大学と

の折衝、社内諸規則の整備など合弁会社の基盤確立に貢献した。

 創業開始後しばらくは合弁パートナーとの打ち合わせも多く、通訳としてのB

氏の存在は不可欠であったが、時間が経つにつれて通訳者としての欠点が気にな

り始めた。通訳の基本は、発言者の言葉を正確に、相手が理解できるように翻訳

して伝えることであるが、時々自分の判断で省略したり、意訳したりしているこ

とが社長をはじめ、日本人にも分かるようになってきた。英語が分かるパートナー

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の役員と話した際、彼らもそのことに気が付いていて不信と不満を持っているこ

とが分かり、このままではパートナーとの意思疎通に問題が生じる恐れもあると

判断した。

B.対処概要

 創業後2年ほど経過したころには合弁会社の運営も徐々に軌道に乗り、日本語

の話せるベトナム人スタッフも数名ほどになって、B氏がいなくても日常業務

には支障が無いと判断された。もともと事業計画では日本人出向者を徐々に減ら

すことになっており、日本本社やB氏本人とも話し合って退職してもらうことに

なった。

 もちろんベトナム人スタッフの日本語能力はB氏と比較して劣り、不安もある

ので、重要な会議などの通訳は大学の日本語科教授などに依頼するとともに、能

力のある日本語専攻の大卒新人を採用して長期的に育成した。

C.教訓、知っておくべき情報・知識など

 通訳はベトナム語の話せない私たち駐在員にとって極めて重要な存在であり、

日本語とベトナム語の能力はもちろん、両側から信頼される人物でなければなら

ず、このような人材を獲得するのは大変難しい。特に最近は、通訳や経理など専

門性の高い人材が逼迫しており、新たに進出する日本企業にとって頭の痛い問題

となっている。