7-14.コロナウイルス感染症北大病院感染対策マニュアル 第6 版...

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北大病院感染対策マニュアル 第6版 コロナウイルス(R2.2 改訂)-1 7-14.コロナウイルス感染症 目次 Ⅰ.疾患の概要 ................................................................................................................................ 2 Ⅱ.感染対策(含患者隔離).......................................................................................................... 3 1.コロナウイルス感染症疑い外来患者の対応......................................................................... 3 2.夜間・休日・祝日(含年末年始)の救急外来受診.............................................................. 6 3.コロナウイルス感染症患者(含疑い)を入院させる場合の対応 ....................................... 7 Ⅲ.患者に接する医療従事者.......................................................................................................... 8 Ⅳ.感受性者に対する 2 次感染予防............................................................................................... 8 Ⅴ.コロナウイルス感染症に罹患した職員の就業 ........................................................................ 8 Ⅵ.その他 ....................................................................................................................................... 9 1.コロナウイルス感染症に関する電話相談 ............................................................................ 9 【資料1:重症急性呼吸器症候群(SARS コロナウイルス)の届出基準】................................... 13 【資料2:MERS 疑似症患者の定義】 ........................................................................................ 16 【資料3:新型コロナウイルス(COVID-19)関連肺炎の疑い例の定義等】........................... 18 【資料4:新型コロナウイルス(COVID-19)疑い例発生時の検体提出】 .............................. 20

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北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-1

7-14.コロナウイルス感染症

目次

Ⅰ.疾患の概要 ................................................................................................................................ 2

Ⅱ.感染対策(含患者隔離) .......................................................................................................... 3

1.コロナウイルス感染症疑い外来患者の対応 ......................................................................... 3

2.夜間・休日・祝日(含年末年始)の救急外来受診 .............................................................. 6

3.コロナウイルス感染症患者(含疑い)を入院させる場合の対応 ....................................... 7

Ⅲ.患者に接する医療従事者 .......................................................................................................... 8

Ⅳ.感受性者に対する 2次感染予防 ............................................................................................... 8

Ⅴ.コロナウイルス感染症に罹患した職員の就業 ........................................................................ 8

Ⅵ.その他 ....................................................................................................................................... 9

1.コロナウイルス感染症に関する電話相談 ............................................................................ 9

【資料1:重症急性呼吸器症候群(SARS コロナウイルス)の届出基準】 ................................... 13

【資料2:MERS 疑似症患者の定義】 ........................................................................................ 16

【資料3:新型コロナウイルス(COVID-19)関連肺炎の疑い例の定義等】 ........................... 18

【資料4:新型コロナウイルス(COVID-19)疑い例発生時の検体提出】 .............................. 20

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-2

Ⅰ.疾患の概要

1.病原体名:コロナウイルス/coronavirus。ヒトに病原性を有するヒトコロナウイル

ス(human coronavirus: HCoV)は,αコロナウイルスのHCoV-229EとHCoV-NL63,βコ

ロナウイルスのHCoV-OC43, HCoV-HKU1, SARS-CoV, MERS-CoVならびにSARS-CoV-2で

ある。本項の「コロナウイルス」とは,SARS-CoV, MERS-CoVならびにSARS-CoV-2を指

すものとする。

2.アルコールに対する感受性:コロナウイルスはエンベロープを有するため,アルコ

ールは有効である。

3.潜伏期:SARSは2~10日,MERSは2~14日(中央値は5日程度)。COVID-19は2~14日とさ

れている(2020/2/19現在)。

4.ウイルス排出期間:SARS発症後,喀痰から14~52日(中央値は21日),便から16~126

日(中央値は27日)検出されたとの報告がある。MERS発症後18日~25日まで喀痰から

検出されたとの報告がある。COVID-19に関しては不明である(2020/2/19現在)。

5.伝播経路:飛沫感染と接触感染が主体であるが,空気感染も起こりえる。

6.臨床経過:

1)感冒:HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1に感染すると,2~4日の潜

伏期間の後,頭痛,咽頭痛,鼻汁,全身倦怠感,咳嗽,悪寒などの症状が出現する

。発熱も20%程度にみられるが,概して症状は軽い。感染しても無症状の症例が半

数程度あるとされる。肺炎等の重症例の報告も稀にある。

2)SARS (重症急性呼吸器症候群):通常38度以上の発熱と悪寒,筋肉痛,頭痛,倦怠

感などのいわゆるインフルエンザ様症状で発病する。発症後3~7日後に乾性咳嗽,

呼吸困難などの下気道症状が出現する。呼吸器症状を有する例のほぼ全例で肺炎

を合併する。死亡率は全体で9.6%である。基礎疾患を有する例や65歳以上では予後

が悪く,小児は相対的に予後が良い。

3)MERS (中東呼吸器症候群):発熱,咳嗽,呼吸困難の頻度が高く,消化器症状もみ

られる。多くの患者は集中治療(含人工呼吸管理)が必要となる。不顕性感染や軽

症例の報告もあるが,その頻度は不明である。

4)COVID-19 (新型コロナウイルス感染症):入院例については,発熱,咳,呼吸苦の

頻度が高い。初期には下痢,吐き気,その他消化器系の異常,頭痛などがあり,一

部では動悸,胸部圧迫感などが確認されたとの報告があるが,2020/1/27時点では

詳細は不明である。

7.診断:

1)感冒:血清診断は可能であるが,多くは症状から臨床診断される。

2)SARS:2019年12月時点では,地球上にSARS感染者の報告はない。遺伝子検査(PCR,

LAMP法),抗体検査,ウイルス分離検査が可能である。感染症法に基づく届出基準

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-3

を参照(資料1)。

3)MERS:アラビア半島(サウジアラビア国等)の各都市で散発的に1次感染者が発生し

,病院内において医療関係者や入院患者に2次感染がみられる。従って,アラビア

半島からの旅行者を介して日本国内にMERS-CoVが侵入する可能性がある。日本に

おいてMERS感染が疑われる者の要件は「38℃以上の発熱と急性呼吸器症状があり,

発症前14日以内にアラビア半島に滞在していた人」である。MERS-CoV感染者はイン

フルエンザなどの呼吸器感染症と区別がつかないため,衛生研究所や保健所でリ

アルタイムPCRによる病原体遺伝子検査を行う必要がある。MERS疑似症患者の定義

(資料2)参照。

4)COVID-19:新型コロナウイルス(COVID-19)関連肺炎の疑い例の定義等を参照(

資料3)。

8.予防:ワクチンは実用化されていない。

9.治療:輸液,去痰剤の投与,酸素投与等の対症療法を行う。呼吸不全が進行する重症

例では人工換気の適応となる。

Ⅱ.感染対策(含患者隔離)

1.コロナウイルス感染症疑い外来患者の対応

1)平日の初診患者

① コロナウイルス感染症疑い患者のスクリーニング:

a. 初診受付窓口に「外来患者,入院患者に配布する調査用紙」(3-1.医

科外来受診患者(平日)への対策,資料1~3)を置き,初診患者に記入

を依頼する。

b. 患者が記載した調査用紙は,医事課窓口職員が確認する。コロナウイルス

感染症疑い患者を発見した場合には,②以下に従う。

② 診察場所:担当者は N95 マスクを着用し,コロナウイルス感染症疑い患者をト

リアージ室 1, 2, 3 に案内する。トリアージ室に案内する前に,部屋の空き

状況を総合外来(内線 5750)に問い合わせる。医事課医事係では利用状況

(患者数,利用時間)を把握・集計する。

③ コロナウイルス感染症疑い患者のマスク着用:患者にはサージカルマスク着用

を勧める。原則として自動販売機での購入をすすめるが,患者の協力が得ら

れない場合や自動販売機で購入できない場合には,病院が貸与する。

④ 担当医師:該当診療科の新来担当医師とする。患者を診察した担当医がコロナ

ウイルス感染症の可能性を疑った場合,「3-1.医科外来受診患者(平日日

中)の対策」「6.他診療科へのコンサルテーション」に基づいて担当診療科

に依頼するか否かは担当医の判断に委ねる。

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-4

⑤ 担当看護師:看護師の介助が必要な場合,総合外来の看護師が対応する。

⑥ 診療に当たる医師,看護師の感染対策:コロナウイルス感染症疑い患者の診療

を行う場合には,N95 マスクを着用する。患者に接触する場合は,原則として

手袋・ガウン・ゴーグル・キャップを着用する。診療終了後は手指衛生とう

がいを行なう。

⑦ 採血検査,エックス線撮影の際の対応:

a. 中央採血室での採血は避け,外来トリアージ室で採血を行う。

b. 胸部エックス線撮影が必要な場合には,原則として外来トリアージ室でポ

ータブル撮影する。担当診療科外来がポータブル撮影担当技師(PHS:82-

831)に連絡する。ポータブル撮影で診断が困難な場合には,一般撮影室受

付(内線 5649)に連絡して時間調整を行う。

c. 胸部 CT 撮影:担当診療科外来が CT 受付(内線 6990)に連絡し,時間調整

を行う。

d. コロナウイルス感染症疑い患者に対応する職員は N95 マスクを着用する。

患者に接触する場合は,原則として手袋・ガウン・ゴーグル・キャップを

着用する。診療終了後は手指衛生とうがいを行なう。

⑧ 検査結果等が出るまでの患者待機場所:

a. 待機場所として外来トリアージ室を利用できる場合には,外来トリアージ

室で待機する。

b. 待機場所として外来トリアージ室が利用できない場合には,サージカルマ

スクを着用したうえで,人混みを避けて待機する。

⑨ 担当医師は感染制御部医師と連絡をとり,コロナウイルス感染症疑い患者に該

当するかどうかを確認する。コロナウイルス感染症が疑われる場合,札幌市

保健所感染症総合対策課(電話 622- 5199)に相談する。コロナウイルス感

染症疑い患者に該当しない場合,通常通りの診療を行う。

⑩ 原則としてコロナウイルス感染症患者の入院治療は行なわない。但し,緊急を

要する場合は一時的対応を行うこともありうる。その際は,事前に診療科医

師と感染制御部とで連絡調整を行う。

⑪ 会計と処方:患者の会計は優先的に行い,院内処方とする。

2)平日の再診患者

① コロナウイルス感染症疑い患者のスクリーニング:各診療科の外来受付に感染

症早期発見のためのポスターを貼り,再診患者に自己判断して頂く。患者から

申し出があった場合,各診療科の外来受付で「外来患者,入院患者に配布する

調査用紙」(3-1.医科外来受診患者(平日)への対策,資料1~3)を配

布して,記入を依頼する。各診療科の受付あるいは診察時にコロナウイルス感

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-5

染症疑い患者を発見した場合には,②以下に従う。

② 診察場所:担当診療科の外来あるいは外来トリアージ室 1,2,3 とする(その選

択は担当医の指示に従う)。

③ コロナウイルス感染症疑い患者のマスク着用:患者にはサージカルマスク着用

を勧める。原則として自動販売機での購入をすすめるが,患者の協力が得ら

れない場合や自動販売機で購入できない場合には,病院が貸与する。

④ 担当医師:各診療科の再診担当医師が診察にあたる。患者を診察した担当医が

コロナウイルス感染症の可能性を疑った場合,「3-1.医科外来受診患者

(平日日中)の対策」「6.他診療科へのコンサルテーション」に基づいて担

当診療科に依頼するか否かは担当医の判断に委ねる。

⑤ 担当看護師:看護師の介助が必要な場合,各診療科外来の看護師が対応する。

⑥ 診療に当たる医師,看護師の感染対策:コロナウイルス感染症疑い患者の診療

を行う場合には,N95 マスクを着用する。患者に接触する場合は,原則として

手袋・ガウン・ゴーグル・キャップを着用する。診療終了後は手指衛生とう

がいを行なう。

⑦ 採血検査,エックス線撮影の際の対応:

a. 中央採血室での採血は避け,各診療科外来で採血を行う。

b. 胸部エックス線撮影が必要な場合には,原則として外来トリアージ室でポ

ータブル撮影する。担当診療科外来がポータブル撮影担当技師(PHS:82-

831)に連絡する。ポータブル撮影で診断が困難な場合には,一般撮影室受

付(内線 5649)に連絡して時間調整を行う。

c. 胸部 CT 撮影:担当診療科外来が CT 受付(内線 6990)に連絡し,時間調整

を行う。

d. コロナウイルス感染症疑い患者に対応する職員は N95 マスクを着用する。

患者に接触する場合は,原則として手袋・ガウン・ゴーグル・キャップを

着用する。診療終了後は手指衛生とうがいを行なう。

⑧ 検査結果等が出るまでの患者待機場所:サージカルマスクを着用したうえで,

原則として外来トリアージ室 1,2,3 で待機する。

⑨ 担当医師は感染制御部医師と連絡をとり,コロナウイルス感染症疑い患者に該

当するかどうかを確認する。コロナウイルス感染症が疑われる場合,札幌市

保健所感染症総合対策課(電話 622- 5199)に相談する。コロナウイルス感

染症疑い患者に該当しない場合,通常通りの診療を行う。

⑩ 原則としてコロナウイルス感染症患者の入院治療は行なわない。但し,緊急を

要する場合は一時的対応を行うこともありうる。その際は,事前に診療科医

師と感染制御部とで連絡調整を行う。

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-6

⑪ 会計と処方:患者の会計は優先的に行い,院内処方とする。

2.夜間・休日・祝日(含年末年始)の救急外来受診

1)コロナウイルス感染症疑い患者が直接来院した場合

① 救急外来の患者は,初診患者(本学職員・学生)と再来患者である。

② 初診患者の場合,事務当直は N95 マスクを着用すると同時に,患者にサージカ

ルマスクを着用してもらい,「外来患者,入院患者に配布する調査用紙」(3

-4,夜間,休日,祝日(含年末年始)の対策,資料1~3)を置き,初診

患者に記入を依頼する。患者が記載した調査用紙は,事務当直室受付窓口職

員が確認する。P.9 に記載した基準により,コロナウイルス感染症疑い患者を

発見した場合には,救急科担当医師(内線 5736)に連絡する。コロナウイルス

感染症の疑いがある場合には,下記2)~3)に従う。

③ 再診患者の場合,各診療科の医師・歯科医師が患者から電話で診察依頼を受け

たときには,担当医師・歯科医師は「外来患者,入院患者に配布する調査用

紙」(3-4,夜間,休日,祝日(含年末年始)の対策,資料1~3)その判

定基準を元に,コロナウイルス感染症の可能性を判断する。コロナウイルス

感染症の可能性がある場合には,その旨を事務当直に伝える。患者が来院し

たら,事務当直はその旨を担当医に連絡する。コロナウイルス感染症の疑い

がある場合には,下記2)~3)に従う。

2)診察場所

① コロナウイルス感染症の疑いがあるときには,救急室(2)あるいは外来トリア

ージ室 1,2,3 で診察を行う。外来トリアージ室 1,2,3 を使用する際には,防

災センター(内線 6999)に連絡して,外来トリアージ室の開錠を依頼すると

共に,患者を外来トリアージ室に案内する。

3)コロナウイルス感染症疑い患者のマスク着用

① 患者は原則として院内ではサージカルマスク着用とし,サージカルマスクは自

動販売機での購入をすすめる。患者の協力が得られない場合や自動販売機で

購入できない場合には,病院が貸与する。

4)担当医師

① 患者の診察に当たるのは,再診診療科の担当医師・歯科医師とする。

② 患者を診察した担当医がコロナウイルス感染症の可能性を疑った場合,「3-

1.医科外来受診患者(平日日中)の対策」「6.他診療科へのコンサルテー

ション」に基づいて担当診療科に依頼するか否かは担当医の判断に委ねる。

5)診療に当たる医師,看護師の感染対策

① コロナウイルス感染症疑い患者の診療を行う場合には,N95 マスクを着用す

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-7

る。患者に接触する場合は,原則として手袋・ガウン・ゴーグル・キャップ

を着用する。診療終了後は手指衛生とうがいを行なう。

6)採血検査,エックス線撮影の際の対応

① 採血を行う場合には,外来トリアージ室で採血を行う。

③ エックス線撮影が必要な場合には,日当直者(PHS 82-830)に連絡して時間調

整を行う。コロナウイルス感染症疑い患者はサージカルマスクを着用して,

通常通りエックス線撮影を行う。コロナウイルス感染症疑い患者に対応する

職員は N95 マスクを着用する。患者に接触する場合は,原則として手袋・ガ

ウン・ゴーグル・キャップを着用する。診療終了後は手指衛生とうがいを行

なう。

7)検査結果等が出るまでの患者待機場所

① サージカルマスクを着用したうえで,救急室(2)あるいは外来トリアージ室

1,2,3 で待機。

8)コロナウイルス感染症疑い患者に該当しない場合

① 通常通りの診療を行う。

9)コロナウイルス感染症が疑われる場合

① 感染制御部医師に連絡すると同時に,札幌市保健所感染症総合対策課(電話

622- 5199)に相談する。

② 原則としてコロナウイルス感染症患者の入院治療は行なわない。但し,緊急を

要する場合は一時的対応を行うこともありうる。その際は,事前に診療科医

師と感染制御部とで連絡調整を行う。

3.コロナウイルス感染症患者(含疑い)を入院させる場合の対応

1)コロナウイルス感染症患者を入院させる病室

① 原則として陰圧空調のある個室を準備する。陰圧空調のある個室を準備できな

い場合,トイレ付きの個室を簡易陰圧化して利用する。

② 入口のカーテンを除去する。

③ 病室前に PPE(個人防護具)ホルダーを設置して,必要な個人防護具(「医療従

事者の個人防護具着用」参照)を準備する。

2)病室のポスター掲示

① 病室前には「接触感染予防策ポスター,入室する職員へのお願い」と「空気感

染予防策ポスター,入室する職員へのお願い」を貼り,病室内には「接触感染

予防策ポスター,退室時の注意事項」と「空気感染予防策ポスター,退室時の

注意事項」を貼る。(詳細は当院感染対策マニュアル「感染経路別予防策」を

参照のこと。)

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-8

3)コロナウイルス感染症患者の診療に当たる医療従事者

① 原則として患者の主科の医師が主治医を務める。必要に応じて他診療科の応援

を得る。

② 病室に入る医療従事者は必要最小限の人数とし,ある程度固定されたメンバー

であることが望ましい。

4)感染制御部への連絡

① 平日日中であれば感染制御部(内線 5703),夜間・休日・祝日(含年末年始)

であれば感染制御部医師に連絡する。

5)医療従事者の個人防護具着用

① 入室前に手指衛生を行い,次の手順で個人防護具を着用する。「手指衛生」→

エプロン/ガウン→N95 マスク及びシールチェック(※)→キャップ→ゴーグル/

フェースシールド→手袋。

② 退室時には室内で,次の手順で(N95 マスク以外の)防御具を外す。手袋→

「手指衛生」→ゴーグル/フェースシールド→キャップ→エプロン/ガウン→

「手指衛生」。

④ 退室後に室外で,N95 マスクを外した後で,病室入口のアルコール手指消毒薬

で「手指衛生」を行う。

※ N95 マスク周囲から空気が漏れないかを確認する方法。当院感染対策マニュア

ル「感染経路別予防策」の「空気感染対策」を参照のこと。

Ⅲ.患者に接する医療従事者

1.コロナウイルス感染症疑い患者の診療を行う場合には,N95マスクを着用する。患者

に接触する場合は,原則として手袋・ガウン・ゴーグル・キャップを着用する。

2.診療終了後は手指衛生とうがいを行なう。

Ⅳ.感受性者に対する 2 次感染予防

1.ワクチンや予防薬は実用化されていない。

2.飛沫感染と接触感染が主体であるが,空気感染も起こりえるので,十分な感染対策を

実施することが重要である。

Ⅴ.コロナウイルス感染症に罹患した職員の就業

1.病原体を保有しなくなるまでの期間又はその症状が消失するまでの期間は就業制限

することが,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で規定され

ている。

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-9

Ⅵ.その他

1.コロナウイルス感染症に関する電話相談

1)平日の対応

① コロナウイルス感染症に関する電話相談は総合外来(内科)(内線:5750,

5751)が対応する。一般的な質問や相談については,札幌市保健所感染症総

合対策課(電話 622- 5199)を紹介する。

② コロナウイルス感染症疑いの成人患者で当院初診の判断が必要な場合には,

「MERS 疑い患者対応フローチャート」、「新型コロナウイルス(COVID-19)関連

肺炎疑い患者対応フローチャート」に従って,8 時 30 分から 12 時までは総合

案内(内線:6000)あるいは内科総合外来(内線:5750),12 時から 17 時ま

では内科Ⅰ(内線:5752,6031)が対応する。紹介状がない場合には基本的

に受診をお断りする。

③ コロナウイルス感染症疑いの小児患者で当院初診の判断が必要な場合には,

「MERS 疑い患者対応フローチャート」、「新型コロナウイルス(COVID-19)関連

肺炎疑い患者対応フローチャート」に従って,小児科(内線:5766,5767)

が行う。紹介状がない場合には基本的に受診をお断りする。

④ コロナウイルス感染症疑いの再来患者で当院受診の判断が必要な場合には,

「MERS 疑い患者対応フローチャート」、「新型コロナウイルス(COVID-19)関連

肺炎疑い患者対応フローチャート」に従って,かかっている再来の診療科が

行う。

2)夜間・休日・祝日(含年末年始)の対応

① コロナウイルス感染症に関する電話相談は事務当直室:(DI)011-706-5610 が対

応。一般的な質問や相談の窓口は,札幌市保健所感染症総合対策課(電話

622- 5199)を紹介する。

② コロナウイルス感染症疑いの初診患者で当院受診の判断が必要な場合には,

「MERS 疑い患者対応フローチャート」、「新型コロナウイルス(COVID-19)関連

肺炎疑い患者対応フローチャート」に従って,救急科医師が対応する。

③ コロナウイルス感染症疑いの再来患者で当院受診の判断が必要な場合には,

「MERS 疑い患者対応フローチャート」、「新型コロナウイルス(COVID-19)関連

肺炎疑い患者対応フローチャート」に従って,かかっている再来の診療科当

直医が対応する。MERS に関する電話相談は総合外来(内科)(内線:5750,

5751)が対応する。

感染制御部 石黒 信久

小山田 玲子

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-10

渡邊 翼

岩崎 澄央

(R2.2 改訂)

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コロナウイルス(R2.2 改訂)-11

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-12

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-13

【資料1:重症急性呼吸器症候群(SARS コロナウイルス)の届出基準】

(1)定義

コロナウイルス科ベータコロナウイルス属の SARS (Severe Acute Respiratory Syn-

drome)コロナウイルスの感染による急性呼吸器症候群である。

(2)臨床的特徴

多くは2~7日,最大10日間の潜伏期間の後に,急激な発熱,咳,全身倦怠感,

筋肉痛などのインフルエンザ様の前駆症状が現れる。2~数日間で呼吸困難,乾性咳

嗽,低酸素血症などの下気道症状が現れ,胸部CT,X線写真などで肺炎像が出現す

る。肺炎になった者の80~90%が1週間程度で回復傾向になるが,10~20%

が ARDS (Acute Respiratory Distress Syndrome)を起こし,人工呼吸器などを必要と

するほど重症となる。致死率は10%前後で,高齢者及び基礎疾患のある者での致死

率はより高い。

(3)届出基準

ア 患者(確定例)

医師は,(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果,症状や所見から重症急性

呼吸器症候群が疑われ,かつ,次の表の左欄に掲げる検査方法により,重症急性呼

吸器症候群の患者と診断した場合には,法第12条第1項の規定による届出を直ち

に行わなければならない。

この場合において,検査材料は,同欄に掲げる検査方法の区分ごとに,それぞれ

同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は,診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが,次の表の左欄に掲

げる検査方法により,重症急性呼吸器症候群の無症状病原体保有者と診断した場合

には,法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において,検査材料は,同欄に掲げる検査方法の区分ごとに,それぞれ

同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 疑似症患者

医師は,(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果,症状や所見から,重症急

性呼吸器症候群の疑似症患者と診断した場合には,法第12条第1項の規定による

届出を直ちに行わなければならない。

エ 感染症死亡者の死体

医師は,(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果,症状や所見から,重症

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-14

急性呼吸器症候群が疑われ,かつ,次の表の左欄に掲げる検査方法により,重症急

性呼吸器症候群により死亡したと判断した場合には,法第12条第1項の規定によ

る届出を直ちに行わなければならない。

この場合において,検査材料は,同欄に掲げる検査方法の区分ごとに,それぞれ

同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

オ.感染症死亡疑い者の死体

医師は,(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果,症状や所見から,重症

急性呼吸器症候群により死亡したと疑われる場合には,法第12条第1項の規定に

よる届出を直ちに行わなければならない。

検査方法 検査材料

分離・同定による病原体の検出 鼻咽頭拭い液,喀痰,尿,便

PCR 法による病原体の遺伝子の検出

ELISA 法又は蛍光抗体法による IgM 抗体若しくは IgG

抗体の検出,又は中和試験による抗体の検出 血清

(4)疑似症患者の判断に必要な事項

ア 病原体診断又は抗体検査で陰性になった場合でも,患者と臨床的特徴が合致する

場合は,SARSを否定できないため,医師の総合判断により,疑似症患者とし

て取り扱う。

イ 臨床所見,渡航歴などにより,以下の(ア)又は(イ)に該当し,かつ(ウ)の

条件を満たす場合は,疑似症患者として取り扱う。

(ア) 平成 14 年 11 月 1日以降に,38℃以上の急な発熱及び咳,呼吸困難などの

呼吸器症状を示して受診した者のうち,次のいずれか1つ以上の条件を満たす

(1) 発症前 10 日以内に,SARS が疑われる患者を看護若しくは介護していた者,

同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者

(2) 発症前 10 日以内に,SARS の発生が報告されている地域(WHOが公表した

SARS の伝播確認地域)へ旅行した者

(3) 発症前 10 日以内に,SARS の発生が報告されている地域(WHOが公表した

SARS の伝播確認地域)に居住していた者

(4) SARS コロナウイルス又は SARS 患者の臨床検体を取り扱う研究を行っている

研究者,あるいは SARS コロナウイルス,又は患者検体を保有する機関の研

究者で,ウイルスへの曝露の可能性がある者

(5) 5 日以上継続する重症の呼吸器症状及び肺炎で,治療に反応せず,他にこれ

北大病院感染対策マニュアル 第 6 版

コロナウイルス(R2.2 改訂)-15

ら症状を説明できる診断がつかない場合

(イ) 平成 14 年 11 月 1日以降に死亡し,病理解剖が行われていない者のうち,

次のいずれか1つ以上の条件を満たす者

(1) 発症前 10 日以内に,SARS が疑われる患者を看護若しくは介護していた者,

同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者

(2) 発症前 10 日以内に,SARS の発生が報告されている地域(WHOが公表した

SARS の伝播確認地域)へ旅行した者

(3) 発症前 10 日以内に,SARS の発生が報告されている地域(WHOが公表した

SARS の伝播確認地域)に居住していた者

(4) SARS コロナウイルス又は SARS 患者の臨床検体を取り扱う研究を行っていた

研究者,あるいは SARS コロナウイルス,又は患者検体を保有する機関の研

究者で,ウイルスへの曝露の可能性があった者

(5) 5 日以上継続する重症の呼吸器症状及び肺炎で,治療に反応せず,死亡まで

に,他にこれら症状を説明できる診断がついていなかった場合

(ウ) 次のいずれかの条件を満たす者

(1) 胸部レントゲン写真で肺炎,又は急性呼吸窮迫症候群の所見を示す者

(2) 病理解剖所見が肺炎,呼吸窮迫症候群の病理所見として矛盾せず,はっき

りとした原因がない者

注) 他の診断によって症状の説明ができる場合は除外すること。

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コロナウイルス(R2.2 改訂)-16

【資料2:MERS 疑似症患者の定義】

定義 1

次のア又はイに該当する者(ただし,これらの者が MERS ではなく他の疾病であること

が明らかな場合は除く。)

ア.38℃以上の発熱及び咳を伴う急性呼吸器症状を呈し,かつ臨床的又は放射線学的に

肺炎,ARDS 等の肺病変が疑われる者であって,発症前 14 日以内に流行国(※1)

において,MERS であることが確定した患者との接触歴があるもの又はヒトコブラ

クダとの濃厚接触歴(※2)があるもの。

イ.発熱又は急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって,発症前 14 日

以内に,MERS であることが確定した患者を診察,看護若しくは介護していたも

の,MERS であることが確定した患者と同居(当該患者が入院する病室又は病棟に

滞在した場合を含む。)していたもの又は MERS であることが確定した患者の気道

分泌液,体液等の汚染物質に直接触れたもの。

※1 流行国:中東地域の一部(2019 年 3 月の時点では,アラブ首長国連邦,イエメ

ン,オマーン,カタール,クウェート,サウジアラビア,ヨルダンの 7か国を指

す。)

※2 ヒトコブラクダとの濃厚接触歴:ヒトコブラクダの鼻や口等との接触(ヒトコブ

ラクダから顔を舐められるなど)や,ヒトコブラクダの生のミルクや非加熱の肉

などの摂取。

定義 2

「医師及び指定届出機関の管理者の管理者が都道府県知事に届け出る基準」における

疑似症患者の定義に該当する者

医師は,(※2)の臨床的特徴を有する者について,上述の情報提供を求める患者の要

件に該当すること等から中東呼吸器症候群が疑われ,かつ,次の表の左欄に掲げる検査

方法により,病原体の少なくとも 1 つの遺伝子領域が確認されたことから,当該者を中

東呼吸器症候群の疑似症と診断した場合には,法第 12 条第 1 項の規定による届出を直ち

に行わなければならない。

この場合において,検査材料は同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

(※2)臨床的特徴:ヒトコブラクダが MERS コロナウイルスを保有しており,ヒトコブ

ラクダとの濃厚接触が感染リスクであると考えられている。一方,家族間,感染対策が

不十分な医療機関などにおける限定的なヒト-ヒト感染も報告されている。中東諸国を

中心として発生がみられている。潜伏期間は 2~14 日(中央値は 5 日程度)。無症状例か

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コロナウイルス(R2.2 改訂)-17

ら急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を来す重症例まである。典型的な病像は,発熱,咳嗽等

から始まり,急速に肺炎を発症し,しばしば呼吸管理が必要となる。下痢などの消化器

症状のほか,多臓器不全(特に腎不全)や敗血性ショックを伴う場合もある。高齢者及

び糖尿病,腎不全などの基礎疾患を持つ者での重症化傾向がより高い。

検査方法 検査材料

分離・同定による病原体の検出 鼻腔吸引液,鼻腔拭い液,咽頭拭い液,喀痰,気

道吸引液,肺胞洗浄液,剖検材料 検体から直接の PCR 法による病原

体の遺伝子の検出

中東呼吸器症候群(MERS)の国内発生時の対応について(健感発 0707 第 2号平成 29 年 7

月 7日)より抜粋

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コロナウイルス(R2.2 改訂)-18

【資料3:新型コロナウイルス(COVID-19)関連肺炎の疑い例の定義等】

1.疑い例の定義について

以下の(1)~(4)のいずれかに該当し,かつ,他の感染症又は他の病因によることが明ら

かでない場合を「疑い例」とする。

(1) 発熱または呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって,新型コロナウイ

ルス感染症であることが確定したものと濃厚接触歴があるもの。

(2) 37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し,発症前 14日以内に WHO の公表内容から新

型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたも

の。

(3) 37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し,発症前 14日以内に WHO の公表内容から新

型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたも

のと濃厚接触歴があるもの。

(4) 発熱,呼吸器症状その他感染症を疑わせるような症状のうち,医師が一般に認めら

れている医学的知見に基づき,集中治療その他これに準ずるものが必要であり,か

つ,直ちに特定の感染症と診断することができないと判断し(法第 14 条第 1 項に

規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当),新型コロナウイルス感染症の鑑別

を要したもの。

※濃厚接触とは,次の範囲に該当するものを指す。

・新型コロナウイルス感染症が疑われるものと同居あるいは長時間の接触(車内,航

空機内等を含む。)があったもの。

・適切な感染防護無しに新型コロナウイルス感染症が疑われる患者を診察,看護若し

くは介護していたもの。

・新型コロナウイルス感染症が疑われるものの気道分泌液若しくは体液等の汚染物質

に直接触れた可能性が高いもの。

※令和 2 年 2 月 4 日現在,流行が確認されている地域は中華人民共和国湖北省である。

WHO の公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域となり,

今後更新される可能性がありますのでご注意ください。

2.疑い例受診時の対応について

(1) 主治医は札幌市保健所感染症総合対策課(011-622-5199)あてに早急に連絡する。

(2) 検体の採取が必要な場合、主治医は感染制御部および細菌検査室(夜間は時間外検

査)に連絡する。

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コロナウイルス(R2.2 改訂)-19

(3) 検体を採取し、細菌検査室(夜間は時間外検査)に提出する。

① 咽頭ぬぐい液(必須)

(ア)乾燥防止のため 1-2mL 程度の生理食塩水をスピッツ管に入れておく。

(イ)綿棒で咽頭を拭った後,スピッツ管に入れ,拭った綿棒の先を(ア)で入れ

た生理食塩水に浸し,蓋を閉める。(綿棒の余った柄の部分はカット)。

(ウ)検体は複数部位からの採取が望ましい。咽頭ぬぐい液のほか,鼻腔ぬぐい液

も採取できる場合は 1 本のスピッツ管に鼻腔と咽頭スワブの 2 本をまとめて

入れる。どちらか一方のみ採取する場合は,咽頭スワブを優先する。

② 喀痰,気管支内吸引液(必須)

(ア)1-2mL 程度をスピッツ管に入れて保管する。

(イ)スクリューキャップ付きカップにて採取して,パラフィルムでシールをして

保管する。

※北海道大学病院における検体採取は、以下【資料4:新型コロナウイルス(COVID-

19)疑い例発生時の検体提出】を参照する。

<参考文献>

https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f1kansen/020106_muhan_pneumonia.html

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コロナウイルス(R2.2 改訂)-20

【資料4:新型コロナウイルス(COVID-19)疑い例発生時の検体提出】