940 2188 新潟県長岡市上富岡町1603...

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肌表面形状のフラクタル性に基づいた定量的評価手法の提案 長岡技術科学大学 電気電子情報工学専攻 カオス・フラクタル情報数理工学研究室 9402188 新潟県長岡市上富岡町16031 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/ ヒトが行う肌の評価には主観が混入 肌表面の状態を客観的に定量化 ◆フラクタル次元 ◆エントロピー(平均情報量) を特徴量とした 肌の評価手法の提案 肌画像 300×300 [pixels] BMP画像 グレースケール化して使用 計測装置: デジタル一眼レフカメラ D100 (Nikon社製) 計測装置: レーザーイメージプロセッサ LIP-50 (サイエンスシステム ズ社製) 肌起伏 942×1000 [pixels] 2次元 データ 高さ方向の分解能 : 0.5[μm] 参考文献 [1] 栗田,中川,水越,松本,“肌情報のフラクタル解析”, 信学技報 NLP2006-84, Vol.106 No.345, 2006. [3] 佐々木, 中川, ”フラクタルとエントロピーを用いた肌表面形状の 定量的評価”, 信学技報 MBE2008-37, Vol.108 No.219, 09/2008[2] Koji Mizukoshi, Midori Oyobikawa, Katsuo Matsumoto, Yasutaka Kurita and Masahiro Nakagawa, Proceedings of IFSCC (Osaka) 18A-28,pp.74-75,2006. 画素値のヒストグラムに基づいて 各輝度が画像中に出現する確率を p i として算出 標準偏差を用いた 拡張型Box-counting[1][2] エントロピー(平均情報量) の計算 [3] 0 5 10 15 20 0 1 2 3 4 5 log 2 h log 2 N ( h ) 16傾き:D 参考: 自然界(木,雲など)では1桁倍程度 スケール h とボックスの個数 N (h) の関係 N(h) h -D 肌画像のスケーリング不変性は約16肌の構造は高いフラクタル性を有する ◆肌画像のスケーリング特性 [1] フラクタル性を有する ◆起伏面全体(XY)をスケールhの立方体で 被覆した時のボックスの個数N(h) D:フラクタル次元 h h N D log ) ( log D D - = = = = m i i h h n h Y X h N 1 2 ) ( ) ( s 肌起伏面 単位領域 領域中の標準偏差 単位領域を被覆する立方体 σ i h h x y 領域中の起伏データ g(x,y) h h Y X y x i s h h n i i s = ) ( 0 100 200 0 1000 2000 3000 level frequency i=0~255(画像の場合) = - = 255 0 2 log i i i p p I (a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分) フラクタル次元のヒストグラム 2.5 2.6 2.7 2.8 0 10 20 30 40 Fractal dimension D Frequency 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 0 10 20 30 40 50 Fractal dimension D Frequency 1. フラクタル次元・エントロピーの統計解析 (a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分) エントロピーのヒストグラム 4 4.5 5 5.5 6 0 10 20 30 40 50 Entropy I Frequency 5 6 7 8 0 10 20 30 40 50 Entropy I Frequency ⇒ フラクタル次元・エントロピー 共に単峰型の分布を示す 肌画像 肌画像 (a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分) 被験者年齢とフラクタル次元値 10 20 30 40 50 60 2.45 2.5 2.55 2.6 2.65 2.7 Age A Fractal Dimension D r = -0.7154 10 20 30 40 50 60 2.2 2.25 2.3 2.35 2.4 2.45 Age A Fractal Dimension D r = -0.4823 (a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分) 被験者年齢とエントロピー 10 20 30 40 50 60 4.5 5 5.5 Age A Entropy I r = 0.5850 10 20 30 40 50 60 5.5 6 6.5 7 7.5 Age A Entropy I r = 0.4225 ⇒主観評価値とフラクタル次元値は 負相関,エントロピーは正相関 (a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分) 主観評価値とフラクタル次元値 10 20 30 40 50 2.45 2.5 2.55 2.6 2.65 2.7 Subjective score S Fractal dimension D r = -0.6656 10 20 30 40 50 2.2 2.25 2.3 2.35 2.4 2.45 Subjective score S Fractal dimension D r = -0.6163 (a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分) 主観評価値とエントロピー 10 20 30 40 50 4.5 5 5.5 Subjective score S Entropy I r = 0.6768 10 20 30 40 50 5.5 6 6.5 7 7.5 Subjective score S Entropy I r = 0.5601 ⇒ 年齢とフラクタル次元値は 負相関,エントロピーは正相関 正相関 正相関 負相関 負相関 負相関 負相関 正相関 正相関 肌画像 肌画像 肌画像 肌画像 肌起伏 肌起伏 肌起伏 肌起伏 肌起伏 肌起伏 研究背景・目的 解析対象データ 肌画像データ 肌起伏データ 主観評価 上位 下位 100 200 300 400 500 600 700 800 900 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 100 200 300 400 500 600 700 800 900 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 100 200 300 400 500 600 700 800 900 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 肌情報解析手法 解析結果 2. 肌画像のフラクタル次元の時間依存性 1朝 1昼 1夕 2朝 2昼 2夕 3朝 3昼 3夕 4朝 4昼 4夕 5朝 5昼 5夕 2.54 2.56 2.58 2.6 2.62 2.64 2.66 2.68 timeline Dim A B C ◆フラクタル次元の時間推移 •被験者間のフラクタル次元の 大小関係は時間的にほぼ不変 •フラクタル次元の時間推移の 傾向は被験者毎に異なる フラクタル次元の時間変化 (被験者3名(A-C),5日間・3時間帯表示) α次モーメントを用いた被験者・時間帯別評価 2.55 2.6 2.65 2.7 0 5 10 15 20 25 30 Fractal Dimension frequency 解析対象となるフラクタル次元のヒストグラムの一例 (被験者C,時間帯:朝,14日分140サンプル) (c) (b) 2 3 4 -5 0 5 10 15 20 dimension Fixed alpha-moment ξ A B C (norm) 2 3 4 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 dimension Fixed alpha-moment ξ A B C (norm) 2 3 4 -2 0 2 4 6 8 dimension Fixed alpha-moment ξ A B C (norm) (a) •正規分布に比べて狭い範囲に分布 (4次正規化モーメント>3.0 •被験者,時間帯に依らず3次モーメントが負 肌のフラクタル次元は非対称分布 正規化α次モーメント (被験者A~C,3時間帯,各時間帯14日分140サンプル,比較用に正規分布のモーメント値を表示) α 正規化 モーメント 意味 3 歪度 分布の非対称性 正規分布は0 4 尖度 分布の尖り具合 正規分布は3 •α次モーメントI α の計算式 •α次正規化モーメント •正規分布との比較を行うため 1 2 2 D D s = - ただし I s = I D D = - まとめ 主観評価とフラクタル次元・エントロピーの間に高い相関 ⇒ 肌のフラクタル次元・エントロピーは肌のキメ細かさを 十分に表すパラメータである 肌画像 肌起伏 主観評価 フラクタル次元 -0.67 -0.62 エントロピー 0.68 0.56 年齢 フラクタル次元 -0.72 -0.48 エントロピー 0.59 0.42 主観評価・被験者年齢との相関係数

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Page 1: 940 2188 新潟県長岡市上富岡町1603 //pelican.nagaokaut.ac.jp/research/poster/img/poster/hada.pdf · 定量的評価”, 信学技報 MBE2008-37, Vol.108 No.219, 09/2008.

肌表面形状のフラクタル性に基づいた定量的評価手法の提案 長岡技術科学大学 電気電子情報工学専攻 カオス・フラクタル情報数理工学研究室

〒940–2188 新潟県長岡市上富岡町1603–1 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/

ヒトが行う肌の評価には主観が混入 ⇒肌表面の状態を客観的に定量化

◆フラクタル次元 ◆エントロピー(平均情報量)

を特徴量とした 肌の評価手法の提案

• 肌画像 • 300×300 [pixels] のBMP画像 • グレースケール化して使用

計測装置: デジタル一眼レフカメラ

D100 (Nikon社製)

計測装置: レーザーイメージプロセッサ

LIP-50 (サイエンスシステムズ社製)

• 肌起伏 • 942×1000 [pixels] の2次元データ • 高さ方向の分解能 : 0.5[μm]

【 参考文献 】 [1] 栗田,中川,水越,松本,“肌情報のフラクタル解析”, 信学技報 NLP2006-84, Vol.106 No.345, 2006.

[3] 佐々木, 中川, ”フラクタルとエントロピーを用いた肌表面形状の 定量的評価”, 信学技報 MBE2008-37, Vol.108 No.219, 09/2008.

[2] Koji Mizukoshi, Midori Oyobikawa, Katsuo Matsumoto, Yasutaka Kurita and Masahiro Nakagawa, Proceedings of IFSCC (Osaka) 18A-28,pp.74-75,2006.

画素値のヒストグラムに基づいて 各輝度が画像中に出現する確率を pi

として算出

標準偏差を用いた 拡張型Box-counting法 [1][2]

エントロピー(平均情報量) の計算 [3]

0

5

10

15

20

0 1 2 3 4 5log2 h

log 2

N(h

) 約16倍

傾き:-D

参考: 自然界(木,雲など)では1桁倍程度

スケール h とボックスの個数 N (h) の関係

N(h) ~ h -D 肌画像のスケーリング不変性は約16倍

⇒ 肌の構造は高いフラクタル性を有する

◆肌画像のスケーリング特性 [1]

⇒ フラクタル性を有する

◆起伏面全体(XY)をスケールhの立方体で 被覆した時のボックスの個数N(h)

D:フラクタル次元

h

h N D

log

) ( log

D

D - =

=

= ・

= m

i

i

h h n

h

Y X h N

1 2

) ( ) ( s

肌起伏面

単位領域 領域中の標準偏差

単位領域を被覆する立方体

σi

h

h

x

y

領域中の起伏データ

g(x,y)

h h Y X

y x

ish

h n i i

s = ) (

0 100 2000

1000

2000

3000

level

freq

uenc

y

i=0~255(画像の場合) =

- = 255

0

2 log i

i i p p I

(a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分)

図 フラクタル次元のヒストグラム

2.5 2.6 2.7 2.80

10

20

30

40

Fractal dimension D

Fre

quen

cy

2.1 2.2 2.3 2.4 2.50

10

20

30

40

50

Fractal dimension D

Fre

quen

cy

1. フラクタル次元・エントロピーの統計解析

(a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分)

図 エントロピーのヒストグラム

4 4.5 5 5.5 60

10

20

30

40

50

Entropy I

Fre

quen

cy

5 6 7 80

10

20

30

40

50

Entropy I

Fre

quen

cy

⇒ フラクタル次元・エントロピー 共に単峰型の分布を示す

肌画像

肌画像

(a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分)

図 被験者年齢とフラクタル次元値

10 20 30 40 50 60

2.45

2.5

2.55

2.6

2.65

2.7

Age A

Fra

ctal

Dim

ensi

on

D

r = -0.7154

10 20 30 40 50 60

2.2

2.25

2.3

2.35

2.4

2.45

Age A

Fra

ctal

Dim

ensi

on

D

r = -0.4823

(a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分)

図 被験者年齢とエントロピー

10 20 30 40 50 60

4.5

5

5.5

Age A

Ent

ropy

I

r = 0.5850

10 20 30 40 50 60

5.5

6

6.5

7

7.5

Age A

Ent

ropy

I

r = 0.4225

⇒主観評価値とフラクタル次元値は 負相関,エントロピーは正相関

(a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分)

図 主観評価値とフラクタル次元値

10 20 30 40 50

2.45

2.5

2.55

2.6

2.65

2.7

Subjective score S

Fra

ctal

dim

ensi

on

D

r = -0.6656

10 20 30 40 50

2.2

2.25

2.3

2.35

2.4

2.45

Subjective score S

Fra

ctal

dim

ensi

on

D

r = -0.6163

(a)肌画像(248名分) (b)肌起伏(238名分)

図 主観評価値とエントロピー

10 20 30 40 50

4.5

5

5.5

Subjective score S

Ent

ropy

I

r = 0.6768

10 20 30 40 50

5.5

6

6.5

7

7.5

Subjective score S

Ent

ropy

I

r = 0.5601

⇒ 年齢とフラクタル次元値は 負相関,エントロピーは正相関

正相関 正相関

負相関 負相関 負相関 負相関

正相関 正相関

肌画像 肌画像

肌画像 肌画像

肌起伏

肌起伏 肌起伏

肌起伏 肌起伏

肌起伏

研究背景・目的 解析対象データ

肌画像データ

肌起伏データ 主観評価 上位 下位

100 200 300 400 500 600 700 800 900

100

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1000100 200 300 400 500 600 700 800 900

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600

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800

900

1000

肌情報解析手法

解析結果

2. 肌画像のフラクタル次元の時間依存性

1朝 1昼 1夕 2朝 2昼 2夕 3朝 3昼 3夕 4朝 4昼 4夕 5朝 5昼 5夕2.54

2.56

2.58

2.6

2.62

2.64

2.66

2.68

timeline

Dim

ABC

◆フラクタル次元の時間推移

•被験者間のフラクタル次元の 大小関係は時間的にほぼ不変

•フラクタル次元の時間推移の 傾向は被験者毎に異なる

図 フラクタル次元の時間変化

(被験者3名(A-C),5日間・3時間帯表示)

◆α次モーメントを用いた被験者・時間帯別評価

2.55 2.6 2.65 2.70

5

10

15

20

25

30

Fractal Dimension

frequ

ency

図 解析対象となるフラクタル次元のヒストグラムの一例

(被験者C,時間帯:朝,14日分140サンプル)

(c) 夕 (b) 昼

2 3 4-5

0

5

10

15

20

dimension

Fix

ed

alph

a-m

om

ent ξ

ABC(norm)

2 3 4-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

dimension

Fix

ed

alph

a-m

om

ent ξ

ABC(norm)

2 3 4-2

0

2

4

6

8

dimension

Fix

ed

alph

a-m

om

ent ξ

ABC(norm)

(a) 朝

•正規分布に比べて狭い範囲に分布 (4次正規化モーメント>3.0 ) •被験者,時間帯に依らず3次モーメントが負 ⇒ 肌のフラクタル次元は非対称分布

図 正規化α次モーメント

(被験者A~C,3時間帯,各時間帯14日分140サンプル,比較用に正規分布のモーメント値を表示)

α 正規化

モーメント 意味

3 歪度 分布の非対称性 正規分布は0

4 尖度 分布の尖り具合 正規分布は3

•α次モーメントIαの計算式

•α次正規化モーメント •正規分布との比較を行うため

1

2 2D Ds = -ただし I

s=

I D D

= -

まとめ

主観評価とフラクタル次元・エントロピーの間に高い相関

⇒ 肌のフラクタル次元・エントロピーは肌のキメ細かさを 十分に表すパラメータである

肌画像 肌起伏

主観評価 フラクタル次元 -0.67 -0.62

エントロピー 0.68 0.56

年齢 フラクタル次元 -0.72 -0.48

エントロピー 0.59 0.42

表 主観評価・被験者年齢との相関係数