Ⅰ トピックス - tochigi prefecture...- 1 - Ⅰ トピックス 1...

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- 1 - Ⅰ トピックス 1 「スカイベリー」の品質向上と県内一の産地育成 専門部の研究会活動を通して、「スカイベリー」の導入推進や技術向上の支援を行いました。JAと 連携して計画的に新規栽培者の掘り起こしを行ったことや、「とちおとめ」との栽培管理の違いを明確 にして技術支援したことにより、令和 2 2020)年産は栽培戸数 47 戸、栽培面積 6.3ha と県内最大の 産地となっています。 また、毎月品質調査を行い、品質向上に向けた意識啓発を行うとともに、新規栽培者や品質改善が必 要な生産者への個別巡回指導を JA と連携して重点的に行うことで、品質も安定してきており、 12~2 月の平均糖度は 9.5 度となりました。 今後も継続的に食味向上に向けた技術支援を行い、高位安定生産を目指します。 2 なし早期成園化技術ジョイント仕立て栽培の推進 なし園地の高樹齢樹の割合が増加し、生産性が減少していることから、園地や産地の若返りを図るた め、計画的な改植および新植が必要となっています。 そこで、改植および新植後の早期収量確保のため、早期成園化技術であるジョイント仕立て栽培等の 普及推進、また、技術定着、課題解決に向けた現地検討会等を開催してきました。 同栽培法の推進にあたっては、規模拡大および改植意向調査結果による志向者の掘り起こしと、JA とタイアップした志向者への推進を図りました。 その結果、後継者のいる担い手を中心に導入が進み、令和2(2020)年1月現在、栽培戸数20戸、栽 培面積646aと県内随一の産地となっています。 早期成園化技術は様々、開発されているので、技術の周知を図りながら、担い手を中心に計画的な改 植を推進し、更なる園地の若返りと産地の活性化を図り、生産性の向上を目指します。 品質調査 出荷目揃会・栽培講習会 新規に導入されたジョイント栽培用棚 ジョイントせん定講習会

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    Ⅰ トピックス 1 「スカイベリー」の品質向上と県内一の産地育成

    専門部の研究会活動を通して、「スカイベリー」の導入推進や技術向上の支援を行いました。JAと

    連携して計画的に新規栽培者の掘り起こしを行ったことや、「とちおとめ」との栽培管理の違いを明確

    にして技術支援したことにより、令和2(2020)年産は栽培戸数47戸、栽培面積 6.3ha と県内最大の

    産地となっています。

    また、毎月品質調査を行い、品質向上に向けた意識啓発を行うとともに、新規栽培者や品質改善が必

    要な生産者への個別巡回指導をJA と連携して重点的に行うことで、品質も安定してきており、12~2

    月の平均糖度は9.5 度となりました。

    今後も継続的に食味向上に向けた技術支援を行い、高位安定生産を目指します。

    2 なし早期成園化技術ジョイント仕立て栽培の推進

    なし園地の高樹齢樹の割合が増加し、生産性が減少していることから、園地や産地の若返りを図るた

    め、計画的な改植および新植が必要となっています。

    そこで、改植および新植後の早期収量確保のため、早期成園化技術であるジョイント仕立て栽培等の

    普及推進、また、技術定着、課題解決に向けた現地検討会等を開催してきました。

    同栽培法の推進にあたっては、規模拡大および改植意向調査結果による志向者の掘り起こしと、JA

    とタイアップした志向者への推進を図りました。

    その結果、後継者のいる担い手を中心に導入が進み、令和2(2020)年1月現在、栽培戸数20戸、栽

    培面積646aと県内随一の産地となっています。

    早期成園化技術は様々、開発されているので、技術の周知を図りながら、担い手を中心に計画的な改

    植を推進し、更なる園地の若返りと産地の活性化を図り、生産性の向上を目指します。

    品質調査 出荷目揃会・栽培講習会

    新規に導入されたジョイント栽培用棚 ジョイントせん定講習会

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    3 もち性大麦新品種「もち絹香」の普及拡大へ向けた取り組み支援

    栃木県農業試験場で開発したもち性大麦新品種「もち絹香」の普及拡大を図るため、展示ほを設置し

    て栽培性を確認するとともに、生産者や関係者の理解促進を図るため現地検討会を開催しました。

    展示ほの単収は、目標の400kg/10aを大幅に超える527kg/10aとなり、品種特性や管内における栽培性

    が確認・理解されました。

    その結果、河内管内の作付面積は令和元(2019)年産40aから令和2年(2020)産320aに拡大しました。

    また、生産者と加工業者のマッチングやラベルデザインの作成、さらに消費拡大のためのPR資料を

    作成するなど「もち絹香」の販売に向けた支援を行い、スーパーマーケットや直売所等にいて管内産「も

    ち絹香」の販売が開始されました。

    今後、健康を志向する消費者を中心に「もち絹香」の普及拡大が期待されます。

    4 土地利用型農業におけるスマート農業の取り組み支援

    土地利用型農業の規模拡大には、ICT技術の導入などスマート農業の取り組みが必要です。

    そこで、今後普及が期待されるICT技術(水田の水管理システムやセンサ搭載型可変施肥田植機、

    リモートセンシングによる生育診断等)について、生産者や関連メーカー等の協力を得て実証ほの設置、

    また現地検討会の開催などスマート農業の周知及び普及に向けた取り組みを行いました。

    その結果、水管理システムにより作業の効率化が図れることから大規模担い手を中心に導入が始ま

    りました。

    また、センサ搭載型可変施肥田植機やリモートセンシングによる生育診断については、担い手や関係

    者を中心に技術の内容や効果について理解が進みました。

    ICTなどの先端技術は現在様々な技術が開発されているので、情報収集を行い実証ほを設置する

    など、技術の周知を図りながら導入の可能性について今後も検討していきます。

    現地検討会 収穫期のもち絹香

    センサ搭載型可変施肥田植機 水管理システム

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    5 4Hクラブと宇都宮大学の交流会開催

    河宇地区 4H クラブでは、これまで農産物販売などを通じて地元消費者との交流を行ってきました。

    令和元年度は活動の幅を広げるために、新たな取組みとして、宇都宮大学農学部農業経済学科の学生約

    40 名とクラブ員との交流会を行いました。

    交流会には 12 名のクラブ員が参加し、そのうち 8 名が、就農したきっかけや農作物に対するこだ

    わりなど、自身の経営について発表しました。発表を聞いた学生からは、「農家の方々が学生と真剣に

    向き合ってお話してくださり、自分の職業に誇りをもっているのが伝わってきた。」「農業を行うために

    は、地域とのつながりが不可欠で、円滑な人間関係を築いていくコミュニケーション能力が求められる

    と感じた。」など様々な意見が挙がりました。また、発表を行ったクラブ員からも、「様々な角度から質

    問が挙がり、大学生の農業への関心の高さが伺えた。」「他のクラブ員の経営について改めて知ることが

    できる機会になった。」との声が多く出ました。

    今後も、4H クラブの活動支援を通して、青年農業者の様々な世代との交流やネットワークづくり

    をサポートします。

    6 地域支援チームによる和牛繁殖基盤強化推進

    和牛繁殖基盤の強化を図るためには、繁殖成績の向上や事故の低減を図ることが重要です。そこで、

    農業振興事務所及び関係機関で地域支援チームを作り、モデル農家の抱える課題の抽出と解決のため

    の検討、支援を実施しました。令和元年度は4戸のモデル農家を設定し、定期巡回による飼養管理状況

    の確認や妊娠鑑定、衛生指導を実施しました。また、血液生化学検査や飼料分析に基づく飼養管理改善

    について取り組みました。

    これらの取組により、モデル農家2戸で栄養状態の改善により、子牛の下痢の発生を減少させること

    ができました。また、モデル農家1戸では繁殖成績について改善がみられました。

    関係機関が協力し、それぞれの得意分野を活かして農家の指導を行うことで、大きな改善効果が期待

    されます。今後も地域支援チームの活動を継続すると共に、得られた成果を地域で共有することで、本

    地域全体の和牛繁殖基盤の強化を推進していきます。

    河宇地区4Hクラブの活動紹介 4つの分科会でクラブ員の経営発表

    モデル農家の定期巡回

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    7 とちぎGAPの第三者確認を支援・推進

    栃木県では 2020 東京オリンピック・パラリンピック食材要件を満たす、“とちぎGAPの第三者確

    認”を認証しています。オリ・パラ食材提供や取引先の拡大、農場管理のレベルアップ等の目的でとち

    ぎGAP認証の取得をめざす団体や個人に対して支援を行い、管内で4件が認定されました。

    とちぎGAPの第三者確認(3月現在、県内認定 13件)

    1.第4号 2019.7. 1 宇都宮市 (株)千葉ファーム・ほうれん草

    2.第7号 2019.9. 2 宇都宮市 (株)サラダコスモ・もやし

    3.第9号 2019.11.20 宇都宮市 栃木県立農業大学校・水稲

    4.第 13号 2020.3.18 宇都宮市 JAうつのみや梨専門部GAP研究会 23名(団体)・なし

    8 第1回栃木県農業大賞で「(有)卵明舎」が大賞(農林水産大臣賞)を受賞!

    本県農業・農村の発展に資するため、優良な経営や農村地域の活性化に取り組む団体を表彰する第1

    回栃木県農業大賞が開催されました。経営発展に顕著な成果を収めた経営を表彰する農業経営の部で、

    (有)卵明舎(代表取締役社長 寺内昌文 氏、採卵養鶏、宇都宮市針ヶ谷町)が本コンクールの最優

    秀賞となる大賞(農林水産大臣賞)を受賞しました。

    (有)卵明舎は、採卵鶏約25,000羽を飼養し、自家製の特別配合飼料による安全・安心、高品質ブラ

    ンド鶏卵の生産販売を行っています。また、自家生産のこだわり卵を使用した「スィーツ&デリカ」を

    製造販売するなど6次産業化にも取り組んでいます。大消費地である「宇都宮市」で新しい都市型養鶏

    を展開していることが高い評価を得ました。都市部での農業のモデルケースとして、今後も益々の活躍

    が期待されています。

    (株)千葉ファーム(ほうれんそう) 農大での農薬空き容器の保管の確認

    代表取締役社長 寺内昌文 氏 直売所

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    9 人・農地プランの実質化などを促す「地域の未来の話合い推進会議」を開催

    令和元(2019)年11月27日、宇都宮市、上三川町の人・農地プラン実質化の推進を図りながら、将

    来に向けた地域主体の話合いを促すため、「次代の担い手から選ばれる魅力ある『農業・地域』」をテ

    ーマに会議を開催しました。農地利用最適化推進委員、農業委員等を中心に、農業の担い手やJAな

    ど関係機関・団体の職員も含めた約100名が参加しました。

    河内地域の人・農地プランの進め方を共有したのち、新潟県十日町市で「雪の日舎」を経営する佐

    藤可奈子さんから、自身の移住・就農した経験や取り組んできた活動など、「選ばれる地域農業を目指

    して」としてご講演をいただきました。

    ワークショップでは、14グループに分かれてそれぞれテーブルを囲み、参加者自身が「新規就農に

    むけて準備中の30歳」「定年を迎えたのち実家の農業を継ごうと考えているサラリーマン」になった想

    定で、選ばれる地域像や地域で取り組みたいこと等の意見を出し合いました。

    人口減少・超高齢化は進行しつつありますが、アイデアのたくさん詰まった講演、活発な意見が飛

    び交ったワークショップから、何か1つでもヒントを見つけていただき、参加者の皆様が、それぞれ

    の地域で活躍することが期待されています。

    10 岡本頭首工のストックマネジメント

    鬼怒中央2地区は、受益面積3,000ha余りの岡本頭首工のゲート及び管理橋等の附帯施設に発生した

    錆や水管理制御設備の年数経過に伴う劣化への対策を行います。

    令和元年度は、機能保全計画に基づき、ゲートの塗装を実施したほか、水管理制御設備の更新計画を

    完成させました。

    計画的な施設の保全管理を実施し、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を図り、安定的な

    用水供給の維持と農産物の生産とともに、設備の正常な運転確保により災害を未然に防止します。

    佐藤可奈子さんによる講演 ワークショップの実施

    岡本頭首工の塗装されたゲート

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    11 ほ場整備を契機とした土地利用型園芸の推進とスマート農業の実践

    宇都宮市海道地区では、圃場整備を契機に高収益作物の導入について地域で話合いを行い、複数の新

    規就農者により1.0haのいちご団地を形成する営農計画を樹立しました。また、露地野菜の生産拡大も

    推し進めることにしました。

    さらに目標年次(10年後)までに担い手の農地集積率92%を達成するために、担い手の農地集積区域

    にICT型自動給水栓を計画し、水稲作付けにかかる作業時間・労力等を軽減しスマート農業の実践を目

    指します。

    12 多面的機能支払交付金における女性を中心とした共同活動

    宇都宮市の申 内ざるうち

    地区は、役員の後継者がいなかったこと等により共同活動を一旦休止した地域でした

    が、「農家・農村地域を守っていくには、共同活動を再開する必要がある」という機運が女性組織を中心と

    して高まり、平成 27年度に申内環境保全会が設立され活動を再開しました。

    女性役員の発案で、環境保全会が社会福祉法人に花の苗作りを委託し、社会福祉法人と連携しながら植

    栽活動を実施しています。

    海道地区(南側) 海道地区(北側)

    福祉法人と連携した植栽活動

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    13 企業と連携したグリーン・ツーリズムによる地域活性化の取組

    上三川町は、グリーン・ツーリズムに関心の高い農業者を対象にワークショップを開催し、専門家に

    よる課題の整理やモデルプログラム(農業・農村体験ツアー)開発を進めています。

    平成30年度は、町内の日産自動車栃木工場社員がワークショップに参加したことを機に、地域と企業

    の交流の芽出しとして日産自動車の社員とその家族を対象とするモニターツアーを実施し、参加者から

    好評を得ました。令和元年度は、町内の農業者ら3名が、県主催のグリーン・ツーリズムコーディネー

    ター養成講座を受講し、モデルプログラムの企画運営に取り組みました。ツアー参加者が町の自然に触

    れ、郷土料理作りを体験できる内容を組み込み、参加者が楽しむだけでなく、農業者にはやり甲斐のあ

    るツアーを開催する事ができました。

    今後も、地元企業との連携を継続し、社員やその家族に上三川町の農業者等との交流機会を増やし、

    農村地域や農産物直売所への誘客促進等による地域振興につなげていきます。

    14 食品メーカーとコラボした農福連携の取組

    いちご生産ほ場では、収穫期の終盤にあたる5月中旬以降、品質管理の手間や労力不足等の理由から、

    収穫されないいちごが多くあります。一方で、いちごを加工原料とする食品企業には、県産いちごに対

    する需要があります。

    そこで、農福連携の共同受注窓口であるとちぎセルプセンターを介し、農業法人「(株)JAアグリう

    つのみや」と福祉施設「(一社)無邪気ポラリス」及び「NPO法人ひとつの花」、そして食品企業「フタバ

    食品(株)」の三者のマッチングにより、新たな農福連携による、いちごの収穫に取り組みました。収穫

    作業は、5月中旬から6月中旬にかけ、農業法人の管理するビニールハウスで福祉施設利用者がいちご

    を収穫し、食品企業が買い取りました。食品企業から福祉施設に支払う労賃は、収穫量に応じた出来高

    制としたため、成果がわかりやすく、福祉施設利用者がやり甲斐を持って取り組むことができました。

    食品企業における県産いちごに対するニーズが高いことから、今後は地域のいちご生産者にも本取組

    を拡大していきます。

    さつまいも詰め放題競争 かまどで新米炊飯体験

    福祉施設利用者によるいちごの収穫作業