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20
住商アビーム自動車総合研究所 自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と 製品ごとのトレンド・投資戦略 ~自動車部品メーカーの経営企画部と投資ファンドへの提言~

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住商アビーム自動車総合研究所

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

~自動車部品メーカーの経営企画部と投資ファンドへの提言~

Contents

目  次

はじめに 1

調査概要 2

1. 自動車部品業界動向 3部品メーカーに求められる役割、機能の変化 3評価される部品メーカーとは 4

2. 部品分野別動向 5分析の前提 5成長性と開発力要件 6自動車メーカーとの関係の変化 7中国進出、中国調達の進展 8業界構造の変化 9グループ別の特徴、傾向 10

3. 総括と提言 12自動車部品メーカーへの提言 12自動車業界外の投資家への提言 14

住商アビーム自動車総合研究所のご紹介 16

1

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

はじめに

21世紀の自動車産業は大きな変化を見せている。日米欧といった先進市場が成熟に向かう一方で、中国、

ロシア、インドといった新興市場が成長し、2010年には全世界で7,500万台を超える規模の市場になるこ

とが予想されている。自動車メーカー各社はグローバル供給体制の構築を進めると同時に、環境、安全、情

報化といった莫大な開発費用を要する最新技術への対応にも迫られている。このような状況の中、自動車

部品メーカーには、これまで主に要求されてきたQ (Quality)、C (Cost)、 D (Delivery)とは異なる要素が求

められるようになってきている。

そこで我々は自動車メーカーに勤務している人を対象に、自動車部品業界の今後について、アンケート

調査を実施した。その中で、今後、部品メーカーに求められる要素、評価できる部品メーカー、部品分野別

の今後の動向といった項目に関し、業界の生の声を収集分析し、その集計結果をもとに、今後の環境変化に

対して部品メーカーがどのような対応をとるべきかに関する提言を行なった。同時に、業界全体が活性化

することを期待して、自動車部品業界を投資対象として検討する業界外の投資家への提言も行なった。

開発系47%

その他 12%

購買系 3%

営業系 7%

企画系 7%

事務系 8%

製造系 16%

専門職 15%

管理職25%

一般社員60%

図1.職種 図2.役職

2

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

調査概要

調査概要

2004 年 6 月に、弊社が発信しているメールマガジ

ン「住商アビーム Auto Business Insight」上で、自動車

メーカーに勤務している人を対象にアンケート調査を行

い、103 名より回答を得た。回答者の属性は以下の通

りである。(図 1、2参照)

回答者の職種は開発系が最も多く、約半数を占めて

いる。また、役職は一般社員が最も多く、約6割を占める。

回答者の職種は、購買系、製造系と比較して、開発系が

多いことから、自動車部品メーカーに対して、生産技術

やコスト競争力より機能・性能や企画力・提案力を重視

する回答となる可能性がある。

52.4%

58.3%

29.1%

41.7%

8.7%

5.8%

53.4%

41.7%

34.0%

31.1%

23.3%

4.9%0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

ブランド力・商品力を高める先端技術開発力やR&D

グローバル展開を支えるグローバルな供給力強化や設備投資

製品・技術を束ねるマネジメント能力・システム構築力

既存製品・技術のQCDを高めるための主として生産技術

自動車メーカーのリスク負担を軽減できるリスクテーキング力

その他

現在注力している今後強化すべき

3

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

1. 自動車部品業界動向

部品メーカーに求められる役割、機能の変化

これまで、一般的に自動車部品メーカーの利益率は、

自動車メーカーと比べると低いレベルで推移してきた

が、部品メーカー間でも利益率に格差が生じている。そ

れは主として、自動車メーカー側の部品メーカー政策(系

列取引か自由競争か、部品メーカーにどのような役割、

業務を期待するか)、及び部品メーカー自身の戦略(自社

の製品特性や自動車メーカーのニーズを十分把握したう

えで適切な施策を展開しているか)により生じているも

のと思われる。

現在、自動車メーカー各社はグローバル供給体制の構

築を進めると同時に、環境、安全、情報化といった莫大な

開発費用を要する最新技術への対応にも迫られている。

そうした自動車メーカーの環境変化の結果、自動車部品

メーカーに期待される役割も変化しつつある。

今後、自動車部品メーカーは、変化を先取りした戦略

的な施策を展開していくことが必要であり、そうするこ

とが他社との差別化、収益性改善にも寄与するものと思

われる。

自動車部品業界、特に部品メーカーと自動車メーカー

の関係において、これまで進展してきた主要な変化を概

観すると、従来、ほとんどの日系自動車メーカーは系列

取引を重視した部品調達を進めてきたが、トヨタ、ホン

ダが、これまで通り系列を維持していく一方で、日産、

マツダ、三菱自動車は事業再構築の過程において系列の

枠にとらわれない調達を進めており、結果として自動車

メーカーと部品メーカーとの間で取引のオープン化が進

行している。また、各社の企業体力、調達方針によって多

少相違はあるものの、業界全体として部品の外注化、モ

ジュール化、開発機能のアウトソースへの動きは今後も

進展していくことが予想される。加えて、ITS(Intelligent

Transport Systems)、燃料電池といった次世代の技術開

発でも、部品レベルの技術革新が求められている。一方、

成熟市場では新車販売が鈍化する中、自動車メーカーは

中国を始めとする新興市場攻略に向けて、海外での現地

生産を推進しており、部品メーカー側でもグローバルレ

ベルでの部品供給が求められている。

図 3. 自動車部品メーカーが現在注力して行なっていると思われることと今後いっそう強化すべきこと(複数回答)

4

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

このような状況の中、部品メーカーは自動車メーカー

に対し、従来通りのQCDに留まらない新たな価値を提供

し、より重要な役割を果たすことが望まれていることは

間違いない。そのような観点から自動車部品メーカーが

現在注力して行なっていると思われることと、今後いっ

そう強化すべきことに関して質問をした。(図3参照)

現在、注力して行っていることの上位3項目が①グ

ローバル展開を支えるグローバルな供給力強化や設備

投資(58.3%)、②ブランド力・商品力を高める先端技術

力やR&D(52.4%)、③既存製品・技術のQCDを高める

ための主として生産技術(41.7%)であったのに対し、今

後いっそう強化すべきことの上位3項目は ①ブランド

力・商品力を高める先端技術力やR&D(53.4%)、②グロー

バル展開を支えるグローバルな供給力強化や設備投資

(41.7%)、③製品・技術を束ねるマネジメント力・システ

ム構築力(34.0%)であった。これらの結果から、今後部

品メーカーに対しては何よりも開発力の強化が求められ

ていると言える。

また、今後いっそう強化すべきとの回答が、現在注力

して行なっているとの回答を大きく下回っている(即ち、

今後の期待度が現在より低い)ものとしては「グローバ

ル展開を支えるグローバルな供給力や設備投資」、「既存

製品・技術のQCDを高めるための主として生産技術」が

挙げられる。グローバル供給力がここに挙げられるのは

少し意外な感もあるが、現在拡大を続ける中国市場の影

響等で過熱気味となっている部品メーカーの海外進出

が、部品分野別に見た場合の格差はあるものの、全体と

しては一旦、落ち着く形となるかもしれない。

逆に、今後いっそう強化すべきとの回答が、現在注力

して行なっているとの回答を大きく上回っているものと

しては「自動車メーカーのリスク負担を軽減できるリス

クテーキング力」が挙げられる。「製品・技術を束ねるマ

ネジメント能力・システム構築力」が今後強化すべき項

目としてそれほど伸びを示していないこととも関連する

が、単なる取り纏め役としてのシステム、モジュールサ

プライヤーでなく、従来自動車メーカーが行なっていた

業務、役割(システムの全体最適の視点、ティア2以下の

部品の技術・性能に関する理解、部品メーカーのQCDマ

ネジメント、PL責任、開発費負担等)を、責任をもって

アウトソースすることができる真のパートナーが求めら

れているということを示唆している。

デンソー55%

特になし 8%

その他 10%

トヨタ系列部品メーカー 2%

カルソニックカンセイ 2%

豊田合成 2%

アイシンAW 3%

日立製作所 4%

アイシン精機 7%ボッシュ 7%

技術開発力52%

その他10%

コスト競争力 3%

企業規模 3%

品質 4%

経営の安定性 6%

顧客対応力 6%

グローバル供給力 7%

総合力 9%

5

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

評価される部品メーカーとは

今後、部品メーカーに求められる役割が変化していく

ことは前述したが、他方でどのような部品メーカーが評

価されているのだろうか。そこで我々は評価できる自動

車部品メーカーの具体的な社名と評価の理由に関しても

質問した。(図4,、5参照)

その結果、デンソーを評価していると回答した人が

55%と圧倒的であった。またデンソーを評価する理由に

としては、52%が技術開発力を挙げ、今後部品メーカー

に対して求められる技術開発力が、同社の強みと評価し

ている。

さらに言えば、「自動車メーカー視点の開発」といった

評価コメントが示すように、顧客である自動車メーカー

の置かれた状況を理解し、自動車メーカーの競合他社か

らの差別化に寄与するような部品を提案していること、

加えて、顧客である自動車メーカーの先にあるユーザー

や市場を意識した技術開発や製品開発(ニーズの汲み取

り、価値の提供)をしていることが「トヨタのみならず他

メーカーが系列を超えてでも調達したい」というような

状況を作り出しているものと思われる。

図 4. 評価できる自動車部品メーカー 図 5. デンソーを評価する理由

6

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

2. 部品分野別動向

分析にあたって自動車部品産業を下記9つの部品分

野に分類した。

① エンジン・吸排気関連部品(以下「エンジン部品」)

② 駆動・伝導・操縦装置関連部品(以下「駆動・伝導・

操縦部品」)

③ 懸架・制動装置関連部品(以下「懸架・制動部品」)

④ 外装部品

⑤ 内装部品

⑥ 電装部品

⑦ 用品

⑧ 素材

⑨ 金型・治具※括弧内を略称として用いる。

また、製品の機能、性能といったコスト以外の付加価値

がどれだけ必要とされるかを測る指標として「付加価値

指数」を以降の部品分野別の分析に用いているが、これは

今後、「コスト競争力の向上が必要」と回答した人数に対

する、「製品の機能・性能の向上が必要」と回答した人数

の割合であり、その値が1よりも大きければその部品分野

は機能・性能重視の傾向が強く、1よりも小さければコス

ト重視の傾向が強いということである。

分析の前提

自動車部品業界を取り巻く全般的な傾向については前

章の通りだが、乗用車1台あたり数万点にも及ぶ自動車

部品の種類は多岐に渡っており、一括りに議論すること

は難しい。そこで、自動車部品産業を複数の分野に分類

し、各分野別の傾向や特徴を抽出することとする。

7

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

自動車部品業界の全般的な傾向として、今後、自動車部

品メーカーに対しては何よりも開発力の強化が必要とさ

れることは前章にて言及した。そこで、まず、9つの自動車

部品分野を、「成長性」と「開発力要件」という2つの観点

から検証し、その傾向・特徴をグループ分類する。

縦軸の「成長性」は、それぞれの部品分野に関し、今後

どれだけ市場の成長が期待できるかを示しており、これ

が高いほど設備投資等の「成長リソース」が必要となる。

横軸は「開発力要件」であるが、開発とは製品の効用を

向上させる活動のことであり、効用はコストの削減、ま

たは機能・性能の向上といった形で表れる。開発力要件

が高いほど、それぞれの部品分野で、コスト、または機能・

性能といった製品の効用向上のための「開発リソース」

が必要となることを示している。

また、円の大きさには前述の「付加価値指数」であり、

各部品分野でコストと機能・性能のどちらがより重視さ

れるのかを示している。(ここでは同時に、開発リソース

投入によりコストと機能・性能のどちらをより強化する

ことが期待されているかも示している。)

上記の観点から、9つの自動車部品分野を見ると図6

の通りとなる。

図 6. 成長性と開発力要件

・ 縦軸は、成長指数(「成長が見込まれない」と回答した人数に対する、「成長が見込ま

れる」と回答した人数の割合)の偏差値。中央線が平均値。9つの分野の平均値を

基準として、その高低を2つに選別した。

・ 横軸は、「開発力強化が必要」と回答した人数の偏差値。中央線が平均値。「今後、一

層の開発力強化が必要」と回答した人数を指標とし、9つの分野の平均値を基準と

して、その高低を2つに選別した。

・ 円の大きさは付加価値指数。

図6の斜めの矢印が示す通り、成長性が高いと見込ま

れている分野ほど、開発力要件が高く、開発リソースの

投入による機能・性能面での製品力向上が要求される傾

向にある。

また、各部品分野は大きく4つのグループに分類される。

グループ1(駆動・伝動・操縦部品、電装部品)

成長性と開発力要件が共に高く、成長リソースと開発

リソースの双方が必要とされる分野。該当する部品分

野は製品の機能・性能とコスト競争力のバランスが重

視される。

グループ2(エンジン部品、懸架・制動部品)

成長性は低いが開発力要件が高く、成長リソースより

も開発リソースが必要とされる分野。該当する部品分

野は高付加価値なものが中心となり、機能・性能の向

上が強く求められる。

グループ3(素材)

成長性は高いが開発力要件は低く、開発リソースより

も成長リソースが必要とされる分野。該当する部品分

野はコスト競争力が重視される。

グループ4(内装部品、外装部品、用品、金型・治具)

成長性と開発力要件がともに低く、成長リソースと開発

リソースの双方がそれほど必要とされない分野。該当す

る部品分野はコスト競争力が重視される。

以降では、自動車メーカーとの関係の変化(外注・脱系

列化、システム化・モジュール化)、中国進出・中国調達

の進展、業界構造の変化といった、現在、自動車部品業界

で起こっている変化における部品分野別の特徴、傾向を

分析し、そののちに上記のグループがそれら変化とどの

ような関係があるかについて整理する。

成長性と開発力要件

8

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

今後の自動車メーカーとの関係の方向性を、自動車

メーカーからの独立度合いを示す「外注・脱系列化傾向」

と、自動車メーカーへの製品供給形態を示す「システム

化・モジュール化の進展」の2つの観点から検証する。

まず、縦軸の「外注・脱系列化傾向」であるが、一般的に、

外注・脱系列化が進む部品分野は、開発等で部品メーカー

の担う役割、業務が増加する、また系列のしがらみなく

純粋にコストを基準に調達が行なわれる傾向があると考

えられる。逆に、内製・系列化が進む部品分野は、自動車

メーカーが開発の主導権を握り、その機能・性能を独占

することで、他社との差別化の源泉とするというような

狙いがあるものと考えられる。また、横軸は「システム化・

モジュール化の進展」であるが、システム化・モジュー

ル化には従来、自動車メーカーが内製していた部品を外

注化する際にモジュール供給となるケースや、元々外注

化していたが複数の部品メーカーから調達していたもの

を1社が取り纏めてシステムとして供給するケース等が

考えられるが、主としてシステム・モジュール供給者と

なるのはティア1部品メーカーである。システム化・モ

ジュール化が進展するということは、製品の開発や、供

給におけるリスクを引き受けることが、部品メーカーに

対して求められるということを意味する。

そして円の大きさは付加価値指数であり、各部品分野

で重視される要素(コストまたは製品の機能・性能)と外

注・脱系列化、及びシステム化・モジュール化との相関

性を示している。

上記の観点から、9つの自動車部品分野を見ると図 7

の通りとなる。

図 7. 外注・脱系列化とシステム化・モジュール化の傾向

・ 縦軸は、「外注・脱系列化が進む」と回答した人数の偏差値。上側に行くほど外注・

脱系列化が進むという意見が多い。

・ 横軸は、「システム化・モジュール化が進む」と回答した人数の偏差値。右側に行く

ほどシステム化・モジュール化が進むという意見が多い。

・ 円の大きさは付加価値指数。円の色は前述のグループを示す。

金型・治具、素材を除くと、外注・脱系列化が進むと見

られている部品分野ほど、システム化・モジュール化が

進むと考えられている傾向がある。金型・治具と素材は、

製品特性的に外注・脱系列化、システム化・モジュール

化の対象とは考えにくく、実際、該当するという回答は

ほとんどなかった。また、電装部品分野を除けば、付加価

値指数が低く、コストが重視される分野ほど、外注・脱

系列化、システム化・モジュール化が進むという傾向が

ある。つまり、従来、付加価値が低いにもかかわらず内製

していた部品分野が外注化され、ティア1部品メーカー

によるモジュール供給に変わりつつあると考えられる。

電装部品の場合は、例外的にコストと同程度に機能・性

能が重視される部品分野にありながらシステム化・モ

ジュール化が進むと見られているが、系列内や単品での

開発や購入よりも系列外の有力な部品メーカーの力を借

りてモジュール化を進めることが合理的だというのが自

動車メーカーの認識だと思われる。

自動車メーカーとの関係の変化

9

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

中国進出、中国調達の進展

海外進出が相次ぐ自動車部品業界では、中国は特に注

目される市場である。ここでは、「中国への進出」と「中国

からの調達」という2つの観点から、今後の中国との関

係の方向性を検証する。

まず、縦軸の「中国進出への期待」であるが、各部品分

野につき、自動車メーカーがどの程度、日系部品メーカー

に対して中国に進出し拠点を設立することを期待してい

るかを示している。

また、横軸の「中国からの調達」であるが、これは各部

品分野につき、自動車メーカーがどの程度中国拠点から

の調達を期待しているか(日系自動車部品メーカーから

に限らず)を示している。

そして、円の大きさは付加価値指数であり、各部品分野

で重視される要素(コストまたは製品の機能・性能)と中

国進出、及び中国調達との相関性を示している。

上記の観点から、9つの自動車部品分野を見ると図8

の通りとなる。

図8. 中国進出への期待と中国調達の傾向

・ 縦軸は、「中国への進出を期待する」と回答した人数の偏差値。上側に行くほど中国

進出への期待が高い。

・ 横軸は、「中国からの調達が進む」と回答した人数の偏差値。右側に行くほど中国か

らの調達が増加するという意見が多い。

・ 円の大きさは付加価値指数。円の色は前述のグループを示す。

電装部品を除くと、コスト競争力が重視される部品分

野の方が、中国進出への期待が高いと同時に、中国調達

も進む傾向にある。また、該当する部品分野は前述した

「外注・脱系列化とシステム化・モジュール化の傾向」と

ほぼ一致している。コスト競争力の一層の向上のために、

中国進出や中国調達が期待されているものと思われる。

しかし、同時に、日系部品メーカーにとっては、今後中国

からの市場参入の脅威にさらされ、競争が激化する部品

分野とも考えられる。

中国進出への期待と中国調達の増加のバランスという

観点では、用品、電装部品、駆動・伝導・操縦部品、エンジ

ン部品は、「中国進出」への期待度が「中国調達」への期待

度を上回る。これら「中国進出」への期待度が「中国調達」

への期待度を上回る品目は、総じて自動車メーカーが品

質等の問題により、中国での現地調達に苦労している品

目であり、概ね日本企業の国際競争力が高い品目とも重

なると思われる。

10

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

ここでは、業界構造の変化を「外部資金導入の必要性」、

「業界再編の必要性」という2つの観点から検証する。

まず、縦軸の「外部資金導入の必要性」であるが、外部

資金が必要ということは、それだけ研究開発投資、設備

投資等で資金需要が旺盛な分野といえる。昨今では業界

外からの自動車業界への投資も増加しているが、自動車

メーカーの考え方如何によってはその流れがさらに加速

すると思われ、その意味で注目される。

次に、横軸の「業界再編の必要性」であるが、一般的に

業界再編が必要とされる分野は規模の経済が必要とされ

る分野と考えられる。元々、自動車業界は規模の経済性

が機能する業界であり、規模の拡大により開発コスト、

生産コストの負担が軽減される傾向にある。自動車メー

カーレベルでは最新技術の開発費負担を軽減するために

1990年代後半、合従連衡が引き起こされたが、自動車部

品メーカーレベルでもそのような業界再編が起こる可能

性は否定できない。

そして円の大きさは付加価値指数であり、各部品分野

で重視される要素(コストまたは製品の機能・性能)と外

部資金導入、及び業界再編との相関性を示している。

上記の観点から、9つの自動車部品分野を見ると図9

の通りとなる。

基本的に、業界再編が必要な部品分野は外部資金導入

の必要性も高い。規模の経済が必要とされる分野は、規

模を大きくするための資金需要があるためと推測され

る。特に、機能・性能が求められるエンジン部品、駆動・

伝動・操縦部品、電装部品の分野では開発費負担の軽減

のため、業界再編による規模のメリットの享受、ひいて

は外部資金の導入も必要とされているようである。

図9. 外部資金導入と業界再編の必要性

・ 縦軸は、「外部資金導入が必要」と回答した人数の偏差値。中央線が平均値。上側に

行くほど外部資金導入が必要という意見が多い。

・ 横軸は、「業界再編が必要」と回答した人数の偏差値。中央線が平均値。右側に行く

ほど業界再編が必要という意見が多い。

・ 円の大きさは付加価値指数。円の色は前述のグループを示す。

 

業界構造の変化

外注化 モジュール 化 中国進出 中国調達

外部資金導入 業界再編

駆動・伝導・操縦部品

電装部品

エンジン部品

懸架・制動部品

3 高 低 素材

内装部品

外装部品

用品

金型・治具

4 低 低

1 高 高

2 低 高

付加価値指数*

自動車メーカーとの関係の変化**

中国進出、中国調達の進展** 業界構造の変化**

グループ 成長性 開発力要件 該当部品分野

(1.0)

(1.1)

(1.2)

(1.5)

(0.6)

(0.5)

(0.2)

(0.9)

(0.3)●→高い、傾向が強い ○→低い、傾向が弱い

* 付加価値指数については1.2以上を●、1以上1.2未満を 、1未満を○で表示している。 ** その他は偏差値55以上を●、45以上55未満を 、45未満を○で表示している。

11

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

グループ別に現在、自動車部品業界で進展している変

化の傾向を整理すると図10の通りとなる。

グループ1(駆動・伝動・操縦部品、電装部品)

成長性と開発力要件:成長リソースと開発リソースの双方が必要とされる付加価値指数:製品の機能・性能とコスト競争力のバランスが重視される

自動車メーカーとの関係の変化

駆動・伝動・操縦部品と電装部品では傾向が異なる。

駆動・伝導・操縦部品は内製・系列化が進み、システム化・

モジュール化はさほど進むとは見られていない。一方、

電装部品は外注・脱系列化が進み、システム化・モジュー

ル化の傾向も強い。

中国進出、中国調達の進展

駆動・伝動・操縦部品と電装部品では傾向が異なる。

内製化傾向の強い駆動・伝導・操縦部品よりも、外注化

傾向の強い電装部品のほうが、中国進出への期待、中国

調達の増加見込みが共に高い。しかし、両者共通して、中

国調達の増加よりも、中国進出への期待のほうが高い。

業界構造の変化

成長性が高く、開発力要件が高い部品分野であるため、

成長リソースと、開発リソースの双方が必要とされる。

そのため、業界再編による規模のメリットの享受、外部

資金導入の必要性は共に高い。

グループ2(エンジン部品、懸架・制動部品)

成長性と開発力要件:成長リソースよりも開発リソースが必要とされる付加価値指数:製品の機能・性能が重視される

自動車メーカーとの関係の変化

製品の機能・性能が大いに重視されるこのグループは、

内製・系列化傾向が強く、システム化・モジュール化も

それほど進展しないと見られている。

中国進出、中国調達の進展

製品の機能・性能が大いに重視されるこのグループは、

中国進出もあまり期待されておらず、中国調達もあまり

増加しない。

業界構造の変化

エンジン部品と懸架・制動部品では傾向が異なる。エ

ンジン部品は、外部資金導入、業界再編の必要性が共に

最も高い。機能・性能重視の傾向が極めて高いため多大

な開発リソースが必要とされ、規模のメリットの享受、

外部資金の導入が求められていると考えられる。

一方、懸架・制動部品は、エンジン部品に比べると外

部資金導入、業界再編の必要性はそれほど高くない。同

じグループに属していても、エンジン部品ほどの開発リ

ソースは要求されないためと思われる。

図 10. 自動車部品業界の変化における各部品分野別の傾向

グループ別の特徴、傾向

12

自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

グループ3(素材)

成長性と開発力要件:開発リソースよりも成長リソースが必要とされる付加価値指数:コスト競争力が重視される

自動車メーカーとの関係の変化

素材分野は、製品特性的にシステム化・モジュール化

は考えにくい。

中国進出、中国調達の進展

素材分野は、コスト重視の傾向が強いにも関わらず、

グループ4と比較しても、中国進出はあまり期待されて

おらず、中国調達もあまり増加しない。中国進出を期待

する声がそれほど出ていないのは現在問題視されている

中国現地企業の品質等の問題が今後改善されると自動車

メーカーが考えている可能性がある。また、中国からの

調達に関しては、素材は製造拠点の近くで調達した方が

コスト的にもメリットがあることが、今後もそれほど増

加しないという見方に関連していると思われる。

業界構造の変化

外部資金導入の必要性は高いが、業界再編の必要性は

高くない。成長性が高いため、設備投資等の成長リソー

スが必要とされていると思われる。一方、製品特性上、そ

れほど規模のメリットの享受は期待できないため、業界

再編の必要性は低い。

グループ4:(内装部品、外装部品、用品、金型・治具)

成長性と開発力要件:成長リソースと開発リソースの双方がそれほど必要とされない付加価値指数:コスト競争力が重視される

自動車メーカーとの関係の変化

付加価値が低いことも関連し、外注・脱系列化傾向、シ

ステム化・モジュール化傾向共に強い。但し、「金型・治

具」は元々系列には属していないものの、自動車メーカー

側で内製化しようという見解になく、製品特性的にもモ

ジュール化に馴染まないため例外的な扱いとなる。内装

部品、用品等は、電装部品との関係が密接ということも

あり、同様の傾向になったものと考えられる。

中国進出、中国調達の進展

コスト競争力が競争の焦点となる部品分野ゆえに、金型・

治具を除く各分野は中国進出への期待、中国調達の増加

見込みが共に高い。一方、金型・治具は、中国進出への期

待、中国調達の増加見込み共に低い。中国進出への期待が

低いということは、自動車メーカーの海外生産拠点が今

後、現地企業からの調達を推進していく可能性がある。ま

た、中国調達に関しては、金型・治具は、迅速な対応が要

求されること、輸送コストもかかることから、国内調達の

メリットが依然として大きいことが、今後もそれほど増

加しないことの背景にあると思われる。

業界構造の変化

全般的に、外部資金導入、業界再編の必要性は共に低い。

中でも、金型・治具は、専用設計が主流なため、規模のメ

リットが期待できず、また開発等で要求されるリソース

が小さいこともあり(自動車メーカーが担う部分が多い)、

特に低いものと思われる。また、外装部品は車種別にカス

タマイズする必要が生じ、規模のメリットを享受しづら

いため、外部資金導入、業界再編の必要性共に低い結果と

なっている。一方、内装部品、用品は業界再編の必要性が

若干高いが、これは電装部品等とのシステム化・モジュー

ル化によって引き起こされるものと考えられる。

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自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

3. 総括と提言

自動車部品メーカーへの提言

顧客である自動車メーカーの変化に対応して、部品メー

カーにはこれまで以上に多種多様な要素が期待されてい

くのは間違いない。特に、開発力の向上に対する期待は

最も高いが、期待される部品メーカー側では、製品の機

能・性能向上のための多大な開発リソースが必要となる。

開発リソース需要が高いグループ1、グループ2の部品

分野では業界再編の傾向も見られる結果となった。また、

従来、コスト競争力に焦点を当てられることが多かった

部品分野でも、単なる単価引下げではなく、システム化・

モジュール化等の進展を機会に新たな付加価値を発揮で

きる可能性がある。但し、その際、単なる取り纏め機能だ

けではなく、十分なリスクテーキング力が求められる傾

向にある。

いずれにしても、これまで以上に多種多様な要素が要

求されるということは、従来焦点を当てられていたQCD

以外にも競争力の焦点が広がるということであり、部品

メーカーの立場から見ると、競合他社との差別化を図れ

る要素が増えるということが言える。部品メーカーには

独自の価値の提供、戦略経営の必要性がこれまで以上に

高まるものと思われる。重要なのは、部品分野別の傾向

も踏まえた上で、自社の競争力の源泉を定義し、自動車

メーカーに対して、どのような価値を提供できるのかと

いう戦略を明確にすることである。

これまでの分析結果から、グループ別に有効と思われ

る戦略的方向性を参考として以下に示している。勿論、

同じグループでも、そこに属する部品の種類や企業ごと

に違いは存在する。また、複数の部品分野にまたがる製

品群を持つ企業も多数ある。そのため、実際の戦略を策

定する際には、自社の置かれている状況を十分に勘案、

分析した上で方向性を定義する必要がある。

グループ1(駆動・伝動・操縦部品、電装部品)

成長性と開発力要件:成長リソースと開発リソースの双方が必要とされる付加価値指数:製品の機能・性能とコスト競争力のバランスが重視される

グループ1に属する部品分野は設備投資等の成長リ

ソース、製品の機能・性能向上のための開発リソースが

共に必要とされるため、投資負担が大きい。しかも付加

価値指数は1前後で機能性向上と同時にコスト削減も要

求される。従って、水平統合による規模の経済や利益率

の高い市場に絞った海外進出を検討していくべきであろ

う。特に技術革新が速く、継続的な開発リソースの投入

が必要な電装部品は、システム化・モジュール化や垂直

統合のメリットも最大限活かしていく必要がある。

グループ2(エンジン部品、懸架・制動部品)

成長性と開発力要件:成長リソースよりも開発リソースが必要とされる付加価値指数:製品の機能・性能が重視される

グループ2に属する部品分野は成長リソースよりも開

発リソースが必要とされ、極めて機能・性能が重視され

る。しかもモジュール化や外注化が進めにくい領域であ

る。グループ1と比較すると部品分野自体の成長性が低

いため、収益確保には付加価値向上に見合う価格設定が

必要となるので、自動車メーカーに正しく価値を認知し

てもらう努力が欠かせない。

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自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

グループ3(素材)

成長性と開発力要件:開発リソースよりも成長リソースが必要とされる付加価値指数:コスト競争力が重視される

グループ3に属する部品分野は、開発リソースは必要

とされないが成長性は高いため、設備投資等の成長リ

ソースが必要となる。但し、システム化・モジュール化、

海外進出といった規模拡大の施策が取りづらいのに加

え、そもそも製品特性により規模の経済が働きづらく、

規模を拡大しても収益的なメリットは薄い。従来とは異

なるアプローチとして、新製品開発やそのベースとなる

中長期的な基礎研究などの研究開発投資に注力し、機能・

性能面での競争力を向上させて、競争のルールを変える

試みも有効かと思われる。

グループ4(内装部品、外装部品、用品、金型・治具)

成長性と開発力要件:成長リソースと開発リソースの双方がそれほど必要とされない付加価値指数:コスト競争力が重視される

グループ4に属する部品分野は、成長リソースと開発

リソースの双方がそれほど必要とされないが、コスト競

争力は重視される。海外生産の推進や海外調達、水平統

合等により、徹底したコスト低減を追求するのも一つの

方向ではあるが、低成長市場でのコスト競争は、中国を

はじめとした安い労務費を武器とする海外勢力に徐々に

シェアを奪われていくことも懸念される。従って、内装

部品は、積極的にシステム化・モジュール化を推進し、モ

ジュールとしての機能・性能での競争力を向上させ、競

争のルールを変えていくことが有効と思われる。用品は

付加価値指数が比較的高いので、高機能化、高性能化に

よって収益性を高めることも検討するべきであろう。ま

たシステム化・モジュール化に馴染みにくく、規模の経

済も働きにくい外装部品、金型・治具は、外装部品は海

外展開や海外調達によるコスト削減、金型・治具は業務・

製造プロセス面でのコスト削減を検討することが有効か

と思われる。

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自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

自動車業界外の投資家への提言

バイアウト・ファンド、ベンチャー・キャピタルを問

わず、投資ファンド各社は、自動車部品業界を有望な投

資対象と位置付けている。その背景には、日本での投資

活動を行なう場合に、GDPの2割に相当する基幹産業

であり、国際的競争力の高い自動車産業はポートフォリ

オから外しにくいことと、脱系列化や業界再編等のオポ

チュニティの予兆が出てきていることが挙げられる。

とはいえ、3万点に及ぶ自動車部品の、どの部品分野

に投資のオポチュニティが発生しつつあるのか、投資し

たとしてリターンは十分確保できるのか等、業界外から

は見えないことが多い。今回の調査ではそれらの疑問に

対して一定の示唆が示されていると思われる。

まず、投資のオポチュニティに関して言えば、何より

も業界構造の変化の可能性(業界再編の必要性、外部資

金導入の必要性)がなければ発生しにくいということか

ら、グループ4のうちの金型・治具および外装部品は投

資の対象とは考えにくい。オポチュニティとして重点的

に注視していくべき領域は、グループ1~3とグループ

4のうち内装部品と用品ということになろう。

次に、投資に対するリターンが十分確保できるかとい

う視点では、①部品分野自体がリソースの投入以上の成

長性を秘めているか、もしくは、②何らかの施策を行な

うことでの収益改善のポテンシャルがあるか、といった

要素を検討していく必要がある。下記ではそれらの要素

を踏まえた上で、投資を行なうにあたり具体的に注視す

べきポイントをグループ別に示している。

グループ1(駆動・伝動・操縦部品、電装部品)

成長性と開発力要件:成長リソースと開発リソースの双方が必要とされる付加価値指数:製品の機能・性能とコスト競争力のバランスが重視される

まず、グループ1の電装部品と駆動・伝導・操縦部品は、

成長リソースと開発リソースの双方が要求され、所要資

金やリスクの総量が最も高くなるので、高いリターンが

確保されることが投資の要件となろう。

しかしながら、いずれも付加価値指数は1前後で、機

能・性能向上の要求と同程度にコスト低減が要求される

ので、開発リソースを主として機能・性能の向上に充て

ながらコストを削減する打ち手があるかどうかを、投資

の要件とすべきである。

このうち、電装部品は、外注化やモジュール化が可能で、

海外展開の期待度も高いので、水平統合(規模の経済)だ

けでなく、垂直統合(シナジー)によるコストダウンの実

行可能性や、利益率の高い海外市場の選択による収益性

の改善機会の有無が判断の材料になろう。

一方、駆動・伝導・操縦部品は、若干付加価値指数が高

いが、外注化やモジュール化は歓迎されていない。従って、

この分野への投資は、機能・性能の向上により、優位な価

格交渉ができるポジションにあるかどうかと、水平統合(規

模の経済)の実行可能性や、利益率の高い海外への展開機

会の有無を慎重に見極める必要がある。

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自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

グループ2(エンジン部品、懸架・制動部品)

成長性と開発力要件:成長リソースよりも開発リソースが必要とされる付加価値指数:製品の機能・性能が重視される

グループ2のエンジン部品と懸架・制動部品は、開発

リソースは要求されるが、大きな成長が期待しにくい分

野である。また、リソース投入の成果として、開発リソー

スは、成長リソースと比較した場合の回収の確率やス

ピード面で一層難易度が高い点に留意する必要がある。

モジュール化や外注化によるコストダウンが進みにくい

領域でもあるので、この分野への投資を検討する場合に

は、機能・性能の向上に見合う価格設定が可能な取引構

造や競争ポジションにあるかどうかが、投資判断のポイ

ントになるだろう。その点、付加価値指数が1.5と最も高

いエンジン部品は比較的優位性があると思われるが、同

指数が1前後の懸架・制動部品は慎重な見極めが求めら

れる。

グループ3(素材)

成長性と開発力要件:開発リソースよりも成長リソースが必要とされる付加価値指数:コスト競争力が重視される

グループ3の素材は、大きな開発リソースの投入は求

められていないものの、成長リソースの投入が必要とさ

れる分野である。また、付加価値指数が1を大きく割っ

ており、コスト削減の期待が高い。外注化やモジュール

化が馴染みにくく、海外進出の期待度も低い分野でもあ

るので、この分野の投資は、成長リソース投入に対する

リターンの大きさ、早さと、機能・性能の向上を図って競

争のルールを変えることが可能かどうかが、投資の判断

基準になると思われる。

グループ4(内装部品、外装部品、用品、金型・治具)

成長性と開発力要件:成長リソースと開発リソースの双方がそれほど必要とされない付加価値指数:コスト競争力が重視される

グループ4のうち、投資のオポチュニティがあると思

われるのは内装部品と用品である。どちらも、大きな成

長リソースと開発リソースを必要とされていない。外注

化、モジュール化、中国調達・中国進出、業界再編(垂直

統合、水平統合とも)は期待されている。

このうち、用品は、付加価値指数が1前後で、上記のよ

うなコスト削減策に加えて、研究開発の強化により機能・

性能を高めて収益性を改善する余地があるかどうかが、

投資の判断基準になると思われる。他方、内装部品は付

加価値指数が低く、コスト削減要求が高い。コスト削減

策は既に相当実施済みと想定されるので、この分野への

投資は、コストダウンのための更なる打ち手が残ってい

るかどうか、機能・性能の向上により競争のルール変更

が可能かどうかを慎重に見極める必要がある。

なお、「自動車部品メーカーへの提言」でも言及したが、

同じグループや製品群でも当然、そこに属する個別の企

業ごとに必要なリソース、見込めるリターンなどが異な

る点は留意しなければならない。そのため、投資先を選

定する際には、対象会社個別の状況を十分に勘案、分析

した上での判断が必要である。

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自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略

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住商アビーム自動車総合研究所は、住友商事とアビーム コンサルティングが共同で設立した自動車業界特化型コンサルティングファームです。自動車部品メーカー500社とのビジネスネットワーク、自前の自動車ディーラー90店舗の経営で住商が培った自動車事業の知見に、アビームのコンサルティングノウハウを加えて、「経営と現場」、「業界と市場」の双方を結ぶ視点から、業界各社の自動車固有の課題にソリューションを提供しています。 http://www.sc-abeam.com

著者

住商アビーム自動車総合研究所副社長秋山 喬[email protected]

住商アビーム自動車総合研究所ストラテジスト 製品・技術統括 本條 聡[email protected]

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