a3 表1表4 0610 - cordis...図11.膝窩動脈に対するevt saber 5.0x40mm...

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Clinical Update 当院におけるPTA用バルーン"SABER TM "の使用経験 小倉記念病院  循環器内科  曽我芳光 先生 症例提示1 患者背景 70歳代 女性 右間歇性跛行 現病歴 2年ぐらい前から右間歇性跛行症状を自覚するようになった。 休むと軽快することから放置していたが、最近になり症状の増 悪を自覚し近医受診。右ABI低下を指摘されPADと診断された。 薬物療法を行うも改善が十分でな く、当院紹介となった。血管エコー で右浅大腿動脈閉塞を認め、血管内 治療目的にて入院となった。 ABI:右0.49、左0.81 危険因子:高血圧、高脂血症、透析 EVT 右膝窩動脈より3Frシースを逆向性 に挿入した後、左鼠径部より 6Fr ガイディングシースを股越しに右 総大腿動脈まで挿入し、術前造影を 行った(図1)。 術前造影では、右浅大腿動脈起始部 がわずかに造影されるのみで、 30cmの完全閉塞を認めた。 4Fr カテーテルと0.035-inchガイドワイヤーで順向性に治療を 開始した。石灰化をメルクマールに閉塞部下端まで掘り進め、次に 逆向性に穿通性の高い0.014-inchガイドワイヤーで掘り進め、 閉塞内で順向性の4Frカテーテル内に逆向性の.014-inchガイド ワイヤーを挿入することに成功した(Rendezvous Technique)。通過後、 IVUSでガイドワイヤーが真腔を通過して いることを確認し、Chevalier Universal 300cmに変更後、 SABER4.0x150mmで病変部を前拡張した(図2)。 考察 今回、我々はSABERを用いてEVTに成功した透析患者2例を経験した。 いずれの症例も透析患者であり、IVUSを併用しEVTを施行した。IVUS所見では、いずれの症例も血管内腔に突出する偏心 性の強い石灰化像を認めた。通常であれば、十分な拡張を得るための高圧拡張によりバルーンの破損も懸念される状況であっ たが、今回経験した2例は破損なく、繰り返しバルーンで拡張することに成功した。 EVTにとってバルーンの役割は、病変や部位によって幾分異なる。 ◎症例1では長区域の慢性完全閉塞であり、バルーンの役割はステント留置を念頭に置いた前拡張・後拡張が中心であった。 ◎症例2では、膝窩から膝下動脈であり、ステントを前提としないoptimal PTAが期待される部位である。 それぞれの場面で期待される効果を発揮することは容易ではないが、今回の経験からSABERではその可能性を感じられた。 筆者が考えるSABERの特徴は下記である。 ①Pushability OTWの強みを生かして、十分なPushabilityがある。石灰化や閉塞病変内でも強い抵抗を感じずにバルーンを進めることが 可能であった。 ②Kink Resistance Crossover Approachや膝下病変治療時にシャフトのkinkingが起こりにくいため、手の力が直接バルーン先端に伝わるこ とで、強いPushabilityを実現していると思われた。 ③Remoldability/Rewrapping 高度な石灰化病変でも破れることなく繰り返しストレスなく使用が可能であった。膝下動脈のように、同じバルーンで異なる 部位に使用する際にも通過性が維持されると考えられた。 日本のPAD患者は透析患者が多く含まれており、強い石灰化に悩まされることも少なくない。SABERは高い通過性と耐久性を 併せ持つバルーンであり、日本のPAD患者のEVTにおいて標準的な病変から複雑病変にまで幅広く使用できると考えられた。 使用製品 SABER TM 名:SABER PTAカテーテル 承認番号:22600BZX00271000 製造販売元:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 Chevalier ® 14 Floppy 名:エフエムディ ガイドワイヤー 承認番号:21800BZZ10070000 製造販売元:株式会社エフエムディ Chevalier ® 14 Universal 300 名:エフエムディ ガイドワイヤーIR 承認番号:21800BZZ10007000 製造販売元:株式会社エフエムディ S.M.A.R.T. ® Long 浅大腿動脈用スマート ステント 販 売 名:SMARTステント 承認番号:22500BZX00195000 製造販売元:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ※製品のご使用にあたっては、添付文書をご確認ください 図 1. 術前造影 図 2. 前拡張 SABER 4.0x150mm はじめに 近年、末梢動脈疾患(PAD;peripheral artery disease)の診断能力の向上と循環器領域での意識の高まりによ り、多くの患者がPADと診断されるようになってきた。PAD患者の増加とともに血管内治療(EVT; Endovascular therapy)を受ける患者も増加傾向である。しかし、すべての病変がEVTで治療を完遂出来る訳 ではない。とりわけ、透析患者に多く見られる高度な石灰化はEVTの苦手とする代表的な病変の一つである。仮に ワイヤーが通過してもバルーンが通過しないことや、慢性閉塞内で強い抵抗のためバルーンが通過しないことも しばしば経験する。また、せっかく通過しても石灰化によりバルーンが破損することも少なくない。 今回、我々はCordisより発売されたPTA用バルーンSABERを用いて、透析患者の高度石灰化症例の治療を行っ たので報告する。 .018” OTW BALLOON SIZES DESIGNED WITH MORE CROSSABILITY MORE POWER. MORE CONTROL. 2-8mm DIAMETERS 20-150mm LENGTHS © Cardinal Health Japan G.K. 2015 問い合わせ先: IED1755A-02-201510/SP50 http://www.cordisjapan.jp 上記サイトでは医療従事者を対象として様々な情報をご提供しています。 Cordis Circle 検 索 検索 〒101-0065 東京都千代田区西神田3丁目5番2号 Cardinal Health Japan 合同会社 [販売元] FOCUSING ON CURRENT ENDOVASCULAR CLINICAL PROCEDURES Clinical Update

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Page 1: A3 表1表4 0610 - Cordis...図11.膝窩動脈に対するEVT SABER 5.0x40mm 図12.術前・術後造影 Pre Post Title A3_表1表4_0610 Author 新里時男 Created Date 10/9/2015

Clinical Update

当院におけるPTA用バルーン"SABERTM"の使用経験

小倉記念病院  循環器内科  曽我芳光 先生

 症例提示1

■患者背景

70歳代 女性 右間歇性跛行

■現病歴

2年ぐらい前から右間歇性跛行症状を自覚するようになった。

休むと軽快することから放置していたが、最近になり症状の増

悪を自覚し近医受診。右ABI低下を指摘されPADと診断された。

薬物療法を行うも改善が十分でな

く、当院紹介となった。血管エコー

で右浅大腿動脈閉塞を認め、血管内

治療目的にて入院となった。

ABI:右0.49、左0.81

危険因子:高血圧、高脂血症、透析

■EVT

右膝窩動脈より3Frシースを逆向性

に挿入した後、左鼠径部より 6Fr

ガイディングシースを股越しに右

総大腿動脈まで挿入し、術前造影を

行った(図1)。

術前造影では、右浅大腿動脈起始部

がわずかに造影されるのみで、

30cmの完全閉塞を認めた。

4Fr カテーテルと0.035-inchガイドワイヤーで順向性に治療を

開始した。石灰化をメルクマールに閉塞部下端まで掘り進め、次に

逆向性に穿通性の高い0.014-inchガイドワイヤーで掘り進め、

閉塞内で順向性の4Frカテーテル内に逆向性の.014-inchガイド

ワイヤーを挿入することに成功した(R e n d e z v o u s

Technique)。通過後、IVUSでガイドワイヤーが真腔を通過して

いることを確認し、Chevalier Universal 300cmに変更後、

SABER4.0x150mmで病変部を前拡張した(図2)。

■考察

今回、我々はSABERを用いてEVTに成功した透析患者2例を経験した。

いずれの症例も透析患者であり、IVUSを併用しEVTを施行した。IVUS所見では、いずれの症例も血管内腔に突出する偏心

性の強い石灰化像を認めた。通常であれば、十分な拡張を得るための高圧拡張によりバルーンの破損も懸念される状況であっ

たが、今回経験した2例は破損なく、繰り返しバルーンで拡張することに成功した。

EVTにとってバルーンの役割は、病変や部位によって幾分異なる。

◎症例1では長区域の慢性完全閉塞であり、バルーンの役割はステント留置を念頭に置いた前拡張・後拡張が中心であった。

◎症例2では、膝窩から膝下動脈であり、ステントを前提としないoptimal PTAが期待される部位である。

それぞれの場面で期待される効果を発揮することは容易ではないが、今回の経験からSABERではその可能性を感じられた。

筆者が考えるSABERの特徴は下記である。

①Pushability

OTWの強みを生かして、十分なPushabilityがある。石灰化や閉塞病変内でも強い抵抗を感じずにバルーンを進めることが

可能であった。

②Kink Resistance

Crossover Approachや膝下病変治療時にシャフトのkinkingが起こりにくいため、手の力が直接バルーン先端に伝わるこ

とで、強いPushabilityを実現していると思われた。

③Remoldability/Rewrapping

高度な石灰化病変でも破れることなく繰り返しストレスなく使用が可能であった。膝下動脈のように、同じバルーンで異なる

部位に使用する際にも通過性が維持されると考えられた。

日本のPAD患者は透析患者が多く含まれており、強い石灰化に悩まされることも少なくない。SABERは高い通過性と耐久性を

併せ持つバルーンであり、日本のPAD患者のEVTにおいて標準的な病変から複雑病変にまで幅広く使用できると考えられた。

■使用製品SABERTM

販 売 名:SABER PTAカテーテル承認番号:22600BZX00271000製造販売元:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

Chevalier® 14 Floppy販 売 名:エフエムディ ガイドワイヤー承認番号:21800BZZ10070000製造販売元:株式会社エフエムディ

Chevalier® 14 Universal 300販 売 名:エフエムディ ガイドワイヤーIR承認番号:21800BZZ10007000製造販売元:株式会社エフエムディ

S.M.A.R.T.® Long浅大腿動脈用スマート ステント販 売 名:SMARTステント承認番号:22500BZX00195000製造販売元:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

※製品のご使用にあたっては、添付文書をご確認ください

図 1. 術前造影 図 2. 前拡張

SABER 4.0x150mm

■はじめに近年、末梢動脈疾患(PAD;peripheral artery disease)の診断能力の向上と循環器領域での意識の高まりにより、多くの患者がPADと診断されるようになってきた。PAD患者の増加とともに血管内治療(EVT ; Endovascular therapy)を受ける患者も増加傾向である。しかし、すべての病変がEVTで治療を完遂出来る訳ではない。とりわけ、透析患者に多く見られる高度な石灰化はEVTの苦手とする代表的な病変の一つである。仮にワイヤーが通過してもバルーンが通過しないことや、慢性閉塞内で強い抵抗のためバルーンが通過しないこともしばしば経験する。また、せっかく通過しても石灰化によりバルーンが破損することも少なくない。今回、我々はCordisより発売されたPTA用バルーンSABERを用いて、透析患者の高度石灰化症例の治療を行ったので報告する。

.018” OTW BALLOON SIZES DESIGNED WITH MORE CROSSABILITYMORE POWER. MORE CONTROL.

2-8mm DIAMETERS

20-150mm LENGTHS

© Cardinal Health Japan G.K. 2015

問い合わせ先:

IED1755A-02-201510/SP50

http: //www.cordisjapan.jp上記サイトでは医療従事者を対象として様々な情報をご提供しています。

Cordis Circle 検 索検 索〒101-0065 東京都千代田区西神田3丁目5番2号

Cardinal Health Japan 合同会社[販売元]

F O C U S I N G O N C U R R E N T E N D O VA S C U L A R CLINICAL PROCEDURES

Clinical Update

Page 2: A3 表1表4 0610 - Cordis...図11.膝窩動脈に対するEVT SABER 5.0x40mm 図12.術前・術後造影 Pre Post Title A3_表1表4_0610 Author 新里時男 Created Date 10/9/2015

Clinical Update 当院におけるPTA用バルーン"SABERTM"の使用経験

拡張後、病変部全体をカバーするよ

うにステント留置が必要と判断し

た。まずは遠位部からSMART

6 .0x150mmを留置し、続いて

SMART 6.0x150mmを、既に留

置されたステントから繋げるよう

にして右浅大腿動脈起始部まで留

置した(図3)。

留置後SABER5.0x100mm用いて後拡張を行った。(図4)

良好な結果を得て手技を終了した(図5)。

最後に膝窩動脈のEVTを施行した。病変部をSABER5.0x40mm

で拡張した(図11)。

これによって良好な結果を得て手技を終了した(図12)。

術後、安静時痛の改善を認め、現在創部は縮小傾向である。

マイクロカテーテルとChevalier 14 Floppyのシステムで後

脛骨動脈から治療を開始した。ガイドワイヤー通過後、閉塞部を

遠位部からSABER2.0x40mmで拡張した(図9A,B)。 拡張

後、脛骨腓骨幹と膝窩動脈遠位部をSABER3.0x40mmで拡張

した(図9C)。

良好な拡張が得られたことから、次に前脛骨動脈の治療を開始した。

ガイドワイヤーで病変通過後、閉塞部近位部をSABER3.0x40mm

で(図10A)、遠位部をSABER2.0x40mmで拡張した(図10B)。

術後、右ABIは0.49から1.04に改善し(図6)、跛行症状も改善

を認めた。

 症例提示2

■患者背景

60歳代 女性 左重症下肢虚血

■現病歴

以前から夜間に安静時の足趾痛を自覚していたが、経過をみて

いた。数日前に左第4趾を家具で打撲し皮下出血を生じたが、そ

の内治ると思い経過をみていたが、むしろ血腫が黒くなり拡大

傾向にあることから近医受診。重症下肢虚血(CLI;critical limb

ischemia)と診断され当科紹介となった(図7)。

治療歴:冠動脈バイパス術、大動脈弁置換術

来院危険因子:高血圧、糖尿病、透析

■EVT

左鼠径部より3.3Frシースを順向性に挿入し、術前造影を行っ

た(図8)。術前造影では、左浅大腿動脈に病変はなく、膝窩動脈

90%、脛骨腓骨幹 90%、前脛骨動脈 90%、後脛骨動脈

100%の狭窄/閉塞を認めた(図8矢印)。

図 7. 創部写真

図 3. ステント留置

SMART 6.0x150mm x2

図 4. 後拡張

SABER 5.0x100mm

図 10.前脛骨動脈に対する EVT

SABER 3.0x40mm SABER 2.0x40mm

A B

図 9. 後脛骨動脈と脛骨腓骨幹に対するEVT

A

SABER 2.0x40mm SABER 3.0x40mm

B C

図 8. 術前造影

Pre

図 5. 術前・術後の造影所見

Pre Post

図 6. 術前術後の ABI図 11. 膝窩動脈に対する EVT

SABER 5.0x40mm

図 12. 術前・術後造影

Pre Post