achievement of k.i.t geographic information project and...

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について K . I . T . A c h i e v e m e n t o f K . I . T G e o g r a p h i c I n f o r m a t i o n P r o j e c t a n d R e g i o n a l C o l l a b o r a t i o n 鹿 M a s a a k i S H I K A D A , M i t s u h a r u T O K U N A G A , Y o s h i r o T S U C H I D A Y u i c h i S H I M O K A W A , R a n K A M I Y A M A , T a k u m i K A W A M O T O a n d N a o t a k e N A K A Y A M A 「空間情報」をキーワードとして環境土木工学科、建築デザイン学科の教員 3 名が、 平成 17 年度よりゼミ間の交流を目的としてとして「空間情報勉強会」を発足した。 その後、建築学科および環境土木工学科 2 名の教員が加わるとともに、野々市市情 報文化振興財団との協働によるカメリアキッズ、北陸地域を中心とした建設コンサル タント・測量系コンサルタントによる準天頂衛星実証実験や地上型レーザ計測マニュ アルワーキンググループ(以下ワーキンググループは WG と標記)、地域企業および 地域住民対象とした空間情報セミナー、音風景カタログの作成、BIM/CIM WG など が活動を開始し、平成 21 年度からは活動の総称として K.I.T. 空間情報プロジェクトの 名称を使用している。 これらの活動すべてに学部生・大学院生が密接に関与しており、地域志向研究教育 プロジェクトとして多くの成果を上げている。 キーワードカメリアキッズ、地上型レーザー計測、空間情報セミナー、BIM/CIM音風景 K.I.T Geographic Information Project have been organized by three faculty members from the Department of Civil Engineering and Architecture since 2005. The primary purpose of the project was sharing information among faculty members. After a few years , the project members were increased and project field was enlarged such as experiments of Quasi-Zenith Satellite System and Terrestrial Laser Scanner Working Group(WG), and engaged in the Nonoichi City and architectural and survey consultant companies. We also provide the Geographic Information seminars for local residents and companies, produce the brochure of sound-scape, adds BIM/CIM WG. We have renamed the project as “K.I.T. Geographic Information” from 2009. All project activities are organized by undergraduate and master students and contribute to the development of regional education. Keywords: Camellia Kids, Terrestrial Laser Scanner, Geographic Information seminars, BIM/CIM, sound-scape 83 K.I.T. 空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について KIT Progress 23

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マーケティング調査による地域活性化の試み

参考文献 1)池本有里・山本耕司・福島明子:高校生による商店街の魅力を伝える取組みとその課題、地域活性

学会研究大会論文集(5)、315-318、2013 2)嘉納英明:まちづくり総合学習に関する事例的研究、人間科学 (13)、109-129、2004 3)野木村忠度:地域活性化とマーケティング--事例研究:埼玉県川越市の商店街の取組み (平成 17 年

度 現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代 GP) 広域連携支援プログラム--、明大商学論叢(90)、147-160、(2008)

4)岩田貴子:地域コミュニティと情報--商店街と大学の連携とマーケティング戦略、情報科学研究 (14)、 29-43、2005

5)片上洋:広島市および周辺郡部における地域活性化とマーケティングの事例、地域活性化ジャーナ

ル(6)、 41-54、2001 6)中川凌太:課外プロジェクトにおける学生の能力向上の調査、金沢工業大学 経営情報学科 平成 26

年度プロジェクトデザインⅢレポート(2015)

[受理 平成 27 年 3 月 27 日]

武市祥司 教授 情報フロンティア学部

情報フロンティア系 経営情報学科

田中吉史 教授 情報フロンティア学部 情報フロンティア系 心理情報学科

神宮英夫 教授 情報フロンティア学部 情報フロンティア系 心理情報学科

竹内 諭 産学連携機構 産学連携推進部 連携推進室

林 学 産学連携機構 産学連携推進部 連携推進室

事例報告 KIT Progress №23

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

K.I.T.空間情報プロジェクトの

活動成果と地域連携について Achievement of K.I.T Geographic Information Project and

Regional Collaboration

鹿田正昭、徳永光晴、土田義郎、下川雄一、神山 藍、川本拓見、中山尚武 Masaaki SHIKADA, Mitsuharu TOKUNAGA, Yoshiro TSUCHIDA

Yuichi SHIMOKAWA, Ran KAMIYAMA, Takumi KAWAMOTO and Naotake NAKAYAMA

「空間情報」をキーワードとして環境土木工学科、建築デザイン学科の教員 3名が、

平成 17 年度よりゼミ間の交流を目的としてとして「空間情報勉強会」を発足した。 その後、建築学科および環境土木工学科 2 名の教員が加わるとともに、野々市市情

報文化振興財団との協働によるカメリアキッズ、北陸地域を中心とした建設コンサル

タント・測量系コンサルタントによる準天頂衛星実証実験や地上型レーザ計測マニュ

アルワーキンググループ(以下ワーキンググループは WG と標記)、地域企業および

地域住民対象とした空間情報セミナー、音風景カタログの作成、BIM/CIM WG など

が活動を開始し、平成 21 年度からは活動の総称として K.I.T.空間情報プロジェクトの

名称を使用している。 これらの活動すべてに学部生・大学院生が密接に関与しており、地域志向研究教育

プロジェクトとして多くの成果を上げている。 キーワード:カメリアキッズ、地上型レーザー計測、空間情報セミナー、BIM/CIM、

音風景 K.I.T Geographic Information Project have been organized by three faculty members from the Department of Civil Engineering and Architecture since 2005. The primary purpose of the project was sharing information among faculty members. After a few years , the project members were increased and project field was enlarged such as experiments of Quasi-Zenith Satellite System and Terrestrial Laser Scanner Working Group(WG), and engaged in the Nonoichi City and architectural and survey consultant companies. We also provide the Geographic Information seminars for local residents and companies, produce the brochure of sound-scape, adds BIM/CIM WG. We have renamed the project as “K.I.T. Geographic Information” from 2009. All project activities are organized by undergraduate and master students and contribute to the development of regional education. Keywords: Camellia Kids, Terrestrial Laser Scanner, Geographic

Information seminars, BIM/CIM, sound-scape

83K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

KIT Progress №23

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

1.はじめに

「空間情報」をキーワードとして環境系(環境土木工学科)、建築系(建築デザイン学科)の教員 3

名が、平成 17年度よりゼミ間の交流を目的としてとして「空間情報勉強会」を発足した。平成 19年度

に本学大学院修了生であり、野々市市(当時は野々市町)情報文化振興財団ディレクターの松田尚子氏

からの依頼で、野々市町在住の小中学生を対象とした空間情報の魅力を体験するサイエンスセミナー「カ

メリアキッズ」が開始された。

約 10年前に 3研究室で開始した勉強会はその後 5研究室に増えるとともに、プロジェクト参加者を地

域住民・企業に拡大し、平成 21年度からは「K.I.T.空間情報プロジェクト」と改称し、毎年 5回~6回

開催する「空間情報セミナー」をはじめとして、地上型レーザー計測を公共測量に適用申請するための

「地上型レーザー計測マニュアル WG」、3次元データの活用を探る「BIM/CIM WG」、北陸地方で初めて実

証実験をおこなった「準天頂衛星システム実証実験 WG」、金沢市内や兼六園の音風景を紹介する「音風

景プロジェクト」など多くの活動をおこなっている。

K.I.T.空間情報プロジェクトで期待される効果は、大学(学生)、企業、自治体および地域住民が、研

究、教育、地域産業イノベーションに向けて相互啓発の可能性を含んでいることである。例えば、地上

型レーザー計測マニュアル WGが提唱する「公共測量作業規程の準則」へのマニュアル化については、参

加企業が共同で平成 26年 11月に国土交通省国土地理院へ仮申請(公共測量作業規程の準則第 17条(機

器等および作業方法に関する特例))をおこない、若干の修正の後に作業計画機関(自治体)からの申請

ができるまでに至った。

本事例報告では、各 WGの活動について紹介するとともに、学生への教育効果、地域連携効果などにつ

いて紹介する。

2.プロジェクトの概要と構成

平成 26 年度現在、本プロジェクトは5名の教員と連携推進室の職員2名で実施している。WG 担当教

員および主な実施内容は以下の通りである。職員2名はプロジェクト全体の事務掌握を行うとともに、

COC事業では予算管理を行った。各 WGの詳細は次章以降で詳しく紹介する。

2.1 野々市市カメリア主催「カメリアキッズ」の支援

対象:野々市市在住の小中学生

開始年:平成 17年

期 間:毎年概ね 5月~10月までの期間で各研究室が 1回担当。

外部連携者:野々市市情報文化振興財団(カメリア:ディレクター松田尚子氏)

指導担当メンバー:鹿田、徳永、土田、下川、神山

実施内容:野々市町在住の小中学生を対象とした空間情報の魅力を体験する。

2.2 地上型レーザー計測マニュアル WG

対象:本学および北陸地方の測量系コンサルタント(10社)

開始年:平成 21年

期間:通年で開催(毎月 WGを開催し、平成 27年 2月時点で延べ 57回開催)

外部連携者:地上型レーザー計測マニュアルWG(幹事社 日本海コンサルタント)

指導担当メンバー:鹿田、徳永

活動実績:毎月 WGを本学および各幹事社において実施した。平成 26年 11月 9日にこれまでの成果と

して公共測量作業規程による 17条申請を目的とする「地上型レーザー測量作業マニュアル(案)」を

国土地理院へ仮提出した。

84 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

1.はじめに

「空間情報」をキーワードとして環境系(環境土木工学科)、建築系(建築デザイン学科)の教員 3

名が、平成 17年度よりゼミ間の交流を目的としてとして「空間情報勉強会」を発足した。平成 19年度

に本学大学院修了生であり、野々市市(当時は野々市町)情報文化振興財団ディレクターの松田尚子氏

からの依頼で、野々市町在住の小中学生を対象とした空間情報の魅力を体験するサイエンスセミナー「カ

メリアキッズ」が開始された。

約 10年前に 3研究室で開始した勉強会はその後 5研究室に増えるとともに、プロジェクト参加者を地

域住民・企業に拡大し、平成 21年度からは「K.I.T.空間情報プロジェクト」と改称し、毎年 5回~6回

開催する「空間情報セミナー」をはじめとして、地上型レーザー計測を公共測量に適用申請するための

「地上型レーザー計測マニュアル WG」、3次元データの活用を探る「BIM/CIM WG」、北陸地方で初めて実

証実験をおこなった「準天頂衛星システム実証実験 WG」、金沢市内や兼六園の音風景を紹介する「音風

景プロジェクト」など多くの活動をおこなっている。

K.I.T.空間情報プロジェクトで期待される効果は、大学(学生)、企業、自治体および地域住民が、研

究、教育、地域産業イノベーションに向けて相互啓発の可能性を含んでいることである。例えば、地上

型レーザー計測マニュアル WGが提唱する「公共測量作業規程の準則」へのマニュアル化については、参

加企業が共同で平成 26年 11月に国土交通省国土地理院へ仮申請(公共測量作業規程の準則第 17条(機

器等および作業方法に関する特例))をおこない、若干の修正の後に作業計画機関(自治体)からの申請

ができるまでに至った。

本事例報告では、各 WGの活動について紹介するとともに、学生への教育効果、地域連携効果などにつ

いて紹介する。

2.プロジェクトの概要と構成

平成 26 年度現在、本プロジェクトは5名の教員と連携推進室の職員2名で実施している。WG 担当教

員および主な実施内容は以下の通りである。職員2名はプロジェクト全体の事務掌握を行うとともに、

COC事業では予算管理を行った。各 WGの詳細は次章以降で詳しく紹介する。

2.1 野々市市カメリア主催「カメリアキッズ」の支援

対象:野々市市在住の小中学生

開始年:平成 17年

期 間:毎年概ね 5月~10月までの期間で各研究室が 1回担当。

外部連携者:野々市市情報文化振興財団(カメリア:ディレクター松田尚子氏)

指導担当メンバー:鹿田、徳永、土田、下川、神山

実施内容:野々市町在住の小中学生を対象とした空間情報の魅力を体験する。

2.2 地上型レーザー計測マニュアル WG

対象:本学および北陸地方の測量系コンサルタント(10社)

開始年:平成 21年

期間:通年で開催(毎月 WGを開催し、平成 27年 2月時点で延べ 57回開催)

外部連携者:地上型レーザー計測マニュアルWG(幹事社 日本海コンサルタント)

指導担当メンバー:鹿田、徳永

活動実績:毎月 WGを本学および各幹事社において実施した。平成 26年 11月 9日にこれまでの成果と

して公共測量作業規程による 17条申請を目的とする「地上型レーザー測量作業マニュアル(案)」を

国土地理院へ仮提出した。

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

2.3 空間情報セミナー

対象:北陸地方を中心とした産学官の登録メンバー、日本写真測量学会北信越支部会員

日本測量協会北陸支部会員、個人参加、本学学生

外部連携者:日本写真測量学会北信越支部、日本測量協会北陸支部

開始年:平成 23年

期間:奇数月の第 4金曜日に開催(平成 26年度は 5月 30日から平成 27年 1月 16日の間で 6回)

実施内容:学生、地域住民、企業を対象に空間情報に関する最新技術などを紹介

2.4 準天頂衛星システム(みちびき)実証実験 WG

対象:本学および北陸地方を中心とした測量系コンサルタント

開始年:平成 23年

期間:通年

外部連携者:一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC),JAXA

担当メンバー:鹿田、徳永

活動実績:徳永研究室:L1-SAIFを用いた受信実験 鹿田研究室:LEXを用いた受信実験を実施

2.5 BIM/CIM WG

対象:本学学生および北陸地方の建設コンサルタント・測量コンサルタント

開始年:平成 26年

期間:通年

外部連携者:株式会社地域みらい、ほか北陸地方の建設コンサル、ICTコンサルタント

指導担当メンバー:下川

活動実績:BIM/CIM関連のソフトウェアやその機能活用、およびそれらを応用した計画手法等に関す

る勉強会を開催

2.6 音風景プロジェクト

対象:本学学生を中心としたグループ

開始年:平成 24年

期間:通年

外部連携者:金沢市、日本サウンドスケープ協会

指導担当メンバー:土田

活動実績:学生によるサウンドウォーク(音風景を辿るまち歩き)を企画し、地域住民とともに都市

空間の魅力である音風景を作成した。また、新しい地域ブランドとしての風鈴「かなざわ風鈴」を作

るワークショップにより都市の街路に音風景を創出した。

2.7 G-空間エキスポ・測量コンテスト

対象:空間情報プロジェクト研究室学生

開始年:平成 10年

期間:6月~11月の間(平成 26年 11月 13日(木)~15日(土))

場所:日本科学未来館、東京ビックサイト、パシフィコ横浜他

外部連携者:国土交通省国土地理院、日本測量協会他

指導担当メンバー:鹿田、徳永、土田、下川、神山

活動実績:様々な地理空間情報(G空間情報)に関する独創的なアイデア等を紹介する G-空間エキス

ポに参加し、空間情報工学に関する知識を深めるとともに、関連企業との交流を深める。併催されて

いる測量コンテストに参加したグループのうち 1つがアイデア賞を受賞した。

85K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

3.野々市市カメリア主催「カメリアキッズ」の支援

「カメリアキッズ」とは、平成 17 年から金沢工業大学と(公財)野々市市情報文化振興財団(情報交

流館カメリア)が連携し運営する事業プログラムである。事業内容は、野々市市内に在住する小学生を

対象に身近にある科学を遊びながら実体験して科学のおもしろさを知り、アイディアを形にするための

道具としてパソコンを使用し、子どもたちの創造力や発想力、表現力を養うプログラムである。以下で

は、平成 24年度から 26年度に実施したプログラムについて紹介する。

カメリアキッズの参加者は自由応募の中から毎年 15名程度の参加者を抽選する(表1)。プログラム

開催期間は 5月~10月であり、5名の担当教員が異なるテーマを提示し、各教員が 1回の実験や実習を

担当して合計 5回行う(図1)。平成 24年度から 26年度に行われたテーマとその内容について表 2に示

す。

表 1 実施場所と参加者人数

平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度

実施場所 カメリアホール椿・研修室及び金沢工業大学

参加者総数 84 人 85 人 77 人

小学 4 年~6 年生 16 人 15 人 15 人

金沢工業大学生 47 人 46 人 62 人

その他 21 人 24 人 0 人

図1-① 図1-② 図1-③ 図1-④

図1-⑤

図 1 プログラムの実施風景

図1-①:平成 24年度 第 2回 8月 4日 実施テーマ:パソコンデハイテククラフト

図1-②:平成 24年度 第 3回 8月 7日 実施テーマ:空から見た、世界遺産と野々市

図1-③:平成 25年度 第 4回 8月 5日 実施テーマ:音ではかる?音でわかる!

図1-④:平成 25年度 第 3回 7月 6日 実施テーマ:植物図鑑を作ろう!

図1-⑤:平成 25年度 第 5回 8月 7日 実施テーマ:GPSで宝探し&パノラマで遊ぼう!

86 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

3.野々市市カメリア主催「カメリアキッズ」の支援

「カメリアキッズ」とは、平成 17 年から金沢工業大学と(公財)野々市市情報文化振興財団(情報交

流館カメリア)が連携し運営する事業プログラムである。事業内容は、野々市市内に在住する小学生を

対象に身近にある科学を遊びながら実体験して科学のおもしろさを知り、アイディアを形にするための

道具としてパソコンを使用し、子どもたちの創造力や発想力、表現力を養うプログラムである。以下で

は、平成 24年度から 26年度に実施したプログラムについて紹介する。

カメリアキッズの参加者は自由応募の中から毎年 15名程度の参加者を抽選する(表1)。プログラム

開催期間は 5月~10月であり、5名の担当教員が異なるテーマを提示し、各教員が 1回の実験や実習を

担当して合計 5回行う(図1)。平成 24年度から 26年度に行われたテーマとその内容について表 2に示

す。

表 1 実施場所と参加者人数

平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度

実施場所 カメリアホール椿・研修室及び金沢工業大学

参加者総数 84 人 85 人 77 人

小学 4 年~6 年生 16 人 15 人 15 人

金沢工業大学生 47 人 46 人 62 人

その他 21 人 24 人 0 人

図1-① 図1-② 図1-③ 図1-④

図1-⑤

図 1 プログラムの実施風景

図1-①:平成 24年度 第 2回 8月 4日 実施テーマ:パソコンデハイテククラフト

図1-②:平成 24年度 第 3回 8月 7日 実施テーマ:空から見た、世界遺産と野々市

図1-③:平成 25年度 第 4回 8月 5日 実施テーマ:音ではかる?音でわかる!

図1-④:平成 25年度 第 3回 7月 6日 実施テーマ:植物図鑑を作ろう!

図1-⑤:平成 25年度 第 5回 8月 7日 実施テーマ:GPSで宝探し&パノラマで遊ぼう!

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

表 2 実施テーマとその内容

平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度

1

テーマ 音ではかる?音でわかる! 衛星画像解析に挑戦! 立体スケッチとペーパークラフト

内容

音を使った距離測定や、目

の不自由な人に必要な音の

合図づくりを通して、音の科

学に触れる

人工衛星の画像データを利用

して調査・分析する

パソコンを用いて立体的なお絵

かきに挑戦し、空間や形の不思

議とおもしろさに触れた。自分で

デザインしたあかりのオブジェを

制作する

2

テーマ パソコンデハイテククラフト 立体スケッチとペーパークラフ

ト 音ではかる?音でわかる!

内容

パソコンを使って、立体的な

お絵かきを学び、空間や形

の不思議とおもしろさに触れ

パソコンを用いて立体的なお

絵かきに挑戦し、空間や形の

不思議とおもしろさに触れた。

自分でデザインしたあかりのオ

ブジェを制作する

音を使った距離測定や目の不自

由な人に必要な音の合図づくりを

通して、音の科学に触れる

3

テーマ 空から見た、世界遺産と

野々市 植物図鑑を作ろう!

ののいち大実験!地球で遊ぼ

う!

内容

Google Earth を用いた世界

遺産を巡る旅行に出かけよ

う!航空写真で昔の野々市

にタイムスリップ!今年、市

になる野々市の移り変わりを

上空からの視点で観察する

身近な樹木の見分け方を学習

し、デジカメで撮影。オリジナ

ルの樹木標本を作製する

地球で起きている様々な現象を、

身の回りにある材料を使って実験

する

4

テーマ この木なんの木? 音ではかる?音でわかる! GPS で宝探し&パノラマで遊ぼ

う!

内容

身近な樹木を地図情報やデ

ジカメを使って調べ、オリジ

ナルの樹木標本を製作する

音を使った距離測定や目の不

自由な人に必要な音の合図づ

くりを通して、音の科学に触れ

カーナビなどで知られるGPS。な

ぜ GPS で位置が測れるかを学

び、GPS 電波やデジカメを利用し

た宝探しゲームとパノラマ写真の

撮影やクイズに挑戦する

5

テーマ GPS とデジカメで遊ぼう! GPS で宝探し&パノラマで遊

ぼう! 衛星画像解析に挑戦!

内容

カーナビなどで知られる

GPS。なぜ GPS で位置が測

れるかを学び、GPS 電波や

デジカメを利用した宝探しゲ

ームなどに挑戦する

カーナビなどで知られる GPS。

なぜ GPS で位置が測れるかを

学び、GPS 電波やデジカメを

利用した宝探しゲームとパノラ

マ写真の撮影やクイズに挑戦

する

人工衛星の画像データを利用し

て調査・分析する

カメリアキッズは、平成 17年から野々市と金沢工業大学が連携し開始した事業である。その成果の一

部として、平成 25年度の第 1回テーマ(衛星画像解析に挑戦!)より「第 2回衛星データ利用コンテス

ト(公財 日本宇宙少年団)」に応募し、1名が優秀賞、2名が特別賞に入賞した。続いて、平成 26年度

の第 5回テーマ(衛星画像解析に挑戦!)より参加児童が解析した成果を「衛星データ利用コンテスト

(公財 日本宇宙少年団)」に応募するなど、市内の小学生が科学に対する興味が深まっていると言える。

4.地上型レーザー計測マニュアル WG1)-2)

TS(トータルステーション)や GNSS(衛星測位)などによる公共測量の方法等を定めた「国土交通省

公共測量作規程」には現時点で地上型レーザー計測は含まれていない。地上型レーザー計測は車両で走

87K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

りながらの測量(MMS)にも適しており、災害発生時の調査などに威力を発揮する。WGでは平成21年に

北陸地方を中心に同型機を持っている企業に働きかけ、本学の施設などで同一日時に同一条件で測定し

た結果を解析して、測定精度を検証すればマニュアル化への道が開けるとして実証実験を開始した。

図2 17条申請のため国土地理院へ仮提出した

「地上型レーザー測量作業マニュアル(案)」

5年間にわたる延べ5回の実験では、表面の素材(アスファルト土瓦など)や測定角度などを変

化させて測量を行った。また、大規模な計測を想定した庄川の河川敷における実験では約500m離れた

場所から同じデータが取得できるかなどについて調査した。

WGは中立の立場にある大学が中心となって、実験方法と場所を提供することにより、本来はライバル

である企業が測定機器を並べて実験をおこなうことができた。結果としてマニュアル案の成案を作成す

ることができ、平成26年 11月 9日に国土交通省国土地理院に仮提出することができた。

現在、国土地理院からの修正意見(図化に関する補足説明)に関する補備実験を実施しており、(平成

27年 3月末より4月にかけて)その結果を追記して承認が得られる予定である。その後、しかるべき計

画機関(自治体)から測量法作業規程の準則第17条申請をしてもらう計画である。

5.空間情報セミナー4)

空間情報セミナーは、北陸地方を中心とした産学官の登録メンバー、日本写真測量学会北信越支部会

員、日本測量協会北陸支部会員、個人、本学学生を対象として開催しているセミナーである。入試など

特別の事情がないかぎり、奇数月の第4金曜日の午後に年5回から6回の頻度で本学にて開催している。

この他、特別講演を企画することがある。

当セミナーは、日本写真測量学会に認定されたセミナーであるため、セミナーに参加することにより、

測量系CPDポイントを取得することができる。北陸地方では、測量系CPDポイントを取得できる学習機

会がそれほど多くないため、参加者にとって貴重な学習の場となっている。

セミナーの参加費は、本学学生教職員と官公庁職員は無料となっているが、個人もしくは企業には、

年会費を基本とした有償となっている。年度が始まる前に、セミナーの開催日、講演者を決定して、そ

れを公開してから、参加者を募集している。そのため参加希望者は、あらかじめ講演者リストを確認す

ることで、当セミナーの価値と参加費を検討できることができる。

セミナーの参加者数は開催の時期などで変動するが、北陸信越地方の建設コンサルタント会社を中心

に、地図会社、ベンチャー企業などの外部からの参加者と本学学生を含め、毎回80名から120名程度の

規模となっている。セミナーの内容は、当該分野の第一線の研究者実務者に講演をお願いし、空間情

88 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

りながらの測量(MMS)にも適しており、災害発生時の調査などに威力を発揮する。WGでは平成21年に

北陸地方を中心に同型機を持っている企業に働きかけ、本学の施設などで同一日時に同一条件で測定し

た結果を解析して、測定精度を検証すればマニュアル化への道が開けるとして実証実験を開始した。

図2 17条申請のため国土地理院へ仮提出した

「地上型レーザー測量作業マニュアル(案)」

5年間にわたる延べ5回の実験では、表面の素材(アスファルト土瓦など)や測定角度などを変

化させて測量を行った。また、大規模な計測を想定した庄川の河川敷における実験では約500m離れた

場所から同じデータが取得できるかなどについて調査した。

WGは中立の立場にある大学が中心となって、実験方法と場所を提供することにより、本来はライバル

である企業が測定機器を並べて実験をおこなうことができた。結果としてマニュアル案の成案を作成す

ることができ、平成26年 11月 9日に国土交通省国土地理院に仮提出することができた。

現在、国土地理院からの修正意見(図化に関する補足説明)に関する補備実験を実施しており、(平成

27年 3月末より4月にかけて)その結果を追記して承認が得られる予定である。その後、しかるべき計

画機関(自治体)から測量法作業規程の準則第17条申請をしてもらう計画である。

5.空間情報セミナー4)

空間情報セミナーは、北陸地方を中心とした産学官の登録メンバー、日本写真測量学会北信越支部会

員、日本測量協会北陸支部会員、個人、本学学生を対象として開催しているセミナーである。入試など

特別の事情がないかぎり、奇数月の第4金曜日の午後に年5回から6回の頻度で本学にて開催している。

この他、特別講演を企画することがある。

当セミナーは、日本写真測量学会に認定されたセミナーであるため、セミナーに参加することにより、

測量系CPDポイントを取得することができる。北陸地方では、測量系CPDポイントを取得できる学習機

会がそれほど多くないため、参加者にとって貴重な学習の場となっている。

セミナーの参加費は、本学学生教職員と官公庁職員は無料となっているが、個人もしくは企業には、

年会費を基本とした有償となっている。年度が始まる前に、セミナーの開催日、講演者を決定して、そ

れを公開してから、参加者を募集している。そのため参加希望者は、あらかじめ講演者リストを確認す

ることで、当セミナーの価値と参加費を検討できることができる。

セミナーの参加者数は開催の時期などで変動するが、北陸信越地方の建設コンサルタント会社を中心

に、地図会社、ベンチャー企業などの外部からの参加者と本学学生を含め、毎回80名から120名程度の

規模となっている。セミナーの内容は、当該分野の第一線の研究者実務者に講演をお願いし、空間情

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

報に関する最新技術、動向、様々な事例などを紹介してもらっている。

講演者は、次の 3種類の方法で選定している。

第一に、(一社)日本測量協会協力の下、「空間情報総括監理技術者」資格保有者に講演をお願いして

いる。「空間情報総括監理技術者」とは、日本測量協会認定の「地理空間情報専門技術者」の上位クラス

の技術者として創設された資格であり、地理空間情報分野の高度な技術が求められる 計画(調査)・解析、

技術監理等の技術的な役割を担う技術者とされる。受験資格が、測量士の資格を有し、さらに技術士ま

たは博士もしくは同等の能力を有し、空間情報関連業務に 15 年以上従事し、かつ当該業務の責任者(原

則として主任技術者)を 2 回以上経験していること(日本測量協会より転記)、と当該分野では最上位

の資格となっている。 第二に、大学の教員、企業の研究員・技術者など、空間情報に関する最新技術、動向に明るい講演者

を選定し、講演をお願いしている。講演をお願いする内容も、地元の参加企業にとって参考となる内容

であれば、空間情報そのものでなくてもよいとしている。 最後は、本プロジェクトに関係する研究室の院生もしくは学部生による研究成果の発表を口頭もしく

はパネルにより年 1 回程度行っている。学生は、研究成果を企業の人に説明するだけではなく、議論す

ることで、得られた意見を各自の研究にフィードバックし、研究をさらにブラッシュアップすることが

体験できる。特に学部生にとって、外部の人に対するプレゼンは初めてであるのでよい学習機会となっ

ている。

図 3 学生によるパネルの発表風景 図 4 セミナーの講演風景

6.準天頂衛星「みちびき」実証実験 WG3)

準天頂衛星システム(以下 QZSS)初号機「みちびき」(以下 QZS)は GPS互換信号(L1C/A,L1C,L2C,L5)

を用い、GPS衛星の幾何学的な位置を補完するための「GPS補完」と QZSS独自の補強信号(L1-SAIF,LEX)

による「GPS補強」の機能を持っている。

K.I.T.空間情報プロジェクト「準天頂衛星「みちびき」実証実験 WG」では、平成 22 年にプロジェク

トに参加する北陸地方の7つの企業と共同で SPAC(財団法人衛星測位利用推進センター)が公募する「準

天頂衛星初号機を用いた民間利用実証」に応募した。北陸地方では平成24年3月に金沢地区と上越地区、

平成 24年 4月、平成 25年 3月、平成 26年 3月に金沢地区で LEX信号の受信実験を実施した。

L1-SAIFによる実験は年間を通じて実施することができるため、適宜実施されているが、LEX信号は衛

星のアンテナ方向を変化させる必要があり、年間を通して 1 週間程度のみが実験期間として割り当てら

れている。

89K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

図 5 LEX信号用受信装置と解析用 PC 図 6 移動計測用の車両とアンテナの設置状況

準天頂衛星は現状では試験運用の 1機のみであるが、平成 30年に 4機体制になり、日本独自で衛星測

位が実施できるようになる。実験成果は地元測量系関連企業のイノベーションに役立つほか、参画した

研究室の学生が研究成果を国内外の学会において発表しており、学生および地域企業のアクティビティ

ー向上に貢献している。なお、実証実験は現在も継続しており、平成 27年は 3月 2日より本学扇が丘キ

ャンパス、金沢市内および北陸自動車道において実施された。

図 7 金沢城跡における実験場所と低速移動実による軌跡(L1-SAIF)

7.BIM/CIM WG

近年、建築分野および土木分野での建設ライフサイクルにおける 3次元モデル活用が注目されており、

それぞれ BIM(Building Information Modeling)、CIM(Construction Information Modeling)という名で

各種業務における 3次元モデル活用が普及しつつある。

BIM/CIM WG の活動は平成 26 年度から開始し、同年度には、北陸地域の建設・測量コンサルタント会

社とともに、定期的に会合を開き、BIM/CIM(建築・土木分野における 3次元設計技術)関連のソフトウ

ェアやその機能活用、およびそれらを応用した計画手法等に関する調査研究を実施した。

WGには、1自治体・15社・1個人が参加しており、自らの業務への BIM/CIM技術の応用可能性を研究

する活動を推進している。平成 26 年度の WG 参加企業の多くが建設系コンサル会社であり、BIM よりも

CIMに興味が集まったため、CIM系の勉強会を6回開催した(うち4回は外部講師による講演と意見交換)。

各回の内容は以下の通りである。

・第 1回 平成 26年 05月 1日(木) 下川からの BIMに関する情報提供、メンバー自己紹介

・第 2回 平成 26年 6月 24日(火) 福井コンピュータによる CIM ソフトとユーザー事例の講演、意見交換

●VRS-GPS

●L1-SAIF

●GPS単独測位

90 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

図 5 LEX信号用受信装置と解析用 PC 図 6 移動計測用の車両とアンテナの設置状況

準天頂衛星は現状では試験運用の 1機のみであるが、平成 30年に 4機体制になり、日本独自で衛星測

位が実施できるようになる。実験成果は地元測量系関連企業のイノベーションに役立つほか、参画した

研究室の学生が研究成果を国内外の学会において発表しており、学生および地域企業のアクティビティ

ー向上に貢献している。なお、実証実験は現在も継続しており、平成 27年は 3月 2日より本学扇が丘キ

ャンパス、金沢市内および北陸自動車道において実施された。

図 7 金沢城跡における実験場所と低速移動実による軌跡(L1-SAIF)

7.BIM/CIM WG

近年、建築分野および土木分野での建設ライフサイクルにおける 3次元モデル活用が注目されており、

それぞれ BIM(Building Information Modeling)、CIM(Construction Information Modeling)という名で

各種業務における 3次元モデル活用が普及しつつある。

BIM/CIM WG の活動は平成 26 年度から開始し、同年度には、北陸地域の建設・測量コンサルタント会

社とともに、定期的に会合を開き、BIM/CIM(建築・土木分野における 3次元設計技術)関連のソフトウ

ェアやその機能活用、およびそれらを応用した計画手法等に関する調査研究を実施した。

WGには、1自治体・15社・1個人が参加しており、自らの業務への BIM/CIM技術の応用可能性を研究

する活動を推進している。平成 26 年度の WG 参加企業の多くが建設系コンサル会社であり、BIM よりも

CIMに興味が集まったため、CIM系の勉強会を6回開催した(うち4回は外部講師による講演と意見交換)。

各回の内容は以下の通りである。

・第 1回 平成 26年 05月 1日(木) 下川からの BIMに関する情報提供、メンバー自己紹介

・第 2回 平成 26年 6月 24日(火) 福井コンピュータによる CIM ソフトとユーザー事例の講演、意見交換

●VRS-GPS

●L1-SAIF

●GPS単独測位

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

・第 3回 平成 26年 7月 23日(水) メンバー間での意見交換

・第 4回 平成 26年 10月 24日(金) Autodesk・大塚商会による CIM ソフトとユーザー事例の講演、意見交換

・第 5回 平成 26年 12月 17日(水) 吉光組(小松市)による情報化施工の講演、意見交換

・第 6回 平成 27年 2月 16日(月) 小松市での BIM/CIMの取り組みに関する講演、意見交換

図 8 第 4回WG開催風景 図 9 第 5回WG開催風景

第 2 回と第 4回では、CIMの基礎知識の共有や自社業務への CIM 導入可能性の検討のための情報収集

を目的として、ソフトウェアベンダー2 社に CIM 系ソフトウェアの機能紹介や当該ソフトユーザーの活

用事例などを紹介して頂いた。意見交換を重ねる中で、メンバー毎の業務領域の違いから CIMへの理解

度や親近感に大きな差があること、日常の業務における部門間の壁(例えば、測量部門と設計部門の未

連携、設計会社と施工会社の未連携)が大きいこと、現在の発注者(行政)側で定める設計図書の様式

が 3次元モデル活用推進に必ずしも適さないこと、などが徐々に明らかになっていった。

第 5回と第 6回では、吉光組(小松市)と小松市という身近な方々による CIM系の具体的な応用実例

が紹介され、より具体的な CIMの活用イメージがメンバー間で共有された。吉光組によるマシンガイダ

ンスによる情報化施工の取り組みは測量や設計に携わるメンバーにとって 3次元データの施工現場での

具体的な活用イメージに繋がった。また、小松市の発注者サイドにおける建築・土木事業での 3次元モ

デル活用の取り組みは、顧客不在の技術研究というリスクを少なからず軽減してくれる。

平成 26年度におけるこれらの交流を契機に、吉光組と小松市も平成 27年度から WGのメンバーとして

連携を進めることとなった。これにより、発注者、測量、設計、施工という、建設ライフサイクルに大

きく関わる4領域のステークホルダーが WG に出揃い、CIM の実践的な研究を展開し得る体制が整った。

今後は積極的に学生の教育研究の場として捉え、メンバーと学生の連携も図っていきたい。

8.音風景プロジェクト

土田研究室のプロジェクトデザインと連動した活動を行っている。2013年度(平成 24年度)は「かな

ざわ風鈴」、「兼六園の音風景」、「金沢の水の音風景」の 3 テーマ、2014 年度(平成 25 年度)は「かな

ざわ風鈴」、「金沢茶室案内」の 2テーマで活動した。調査に基づいた成果物を制作するとともに、市民

を対象としたワークショップも行っている。これらは多くメディアでも取り上げられ、2年間で 15件の

紙面掲載や放送があった。

「かなざわ風鈴」は土田研究室で考案した新しい形態の風鈴である。2013 年度は金沢市の『「学都金

沢」地域づくり活動支援事業』の助成を受けるとともに、広坂振興会の協力を得て実施した。2014年度

は COC事業の中に位置づけなおし独自開催とした。この活動では広坂の路面店に風鈴を寄贈し、展示し

た。それとともに、市民向けのワークショップを企画した(表 3、図 10)。ワークショップで作成した風

鈴は、各自の家庭で楽しんでもらうべく、持ち帰っていただいた。2015 年度も継続的に地域と連携し、

91K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

7月から 8月にかけて 2回の企画の企画が進行中である。

表 3 かなざわ風鈴ワークショップの実施要領

2013年度 2014年度

日時 8月 17日(土)、24日(土)13:30-17:00 8月 10日(日) 10:00-18:00

場所 Gallery & Workshop Colony しいのき迎賓館 セミナールーム A

図 10 かなざわ風鈴ワークショップの状況

(左:ワークショップの状況(2013 年度)、右: 商店街への設置(2014 年度))

2013年度に試作した「金沢の河川・用水散策マップ」は、金沢市内の大野庄用水、鞍月用水、辰巳用

水と浅野川、犀川の音風景を散策ルートととともに記したもので、水の音を聴きながら散策が楽しめる

内容とした(図 11)、実際にまちを歩くイベントも開催された(図 12)。これは、自治体関係者の他、要

望に応じて一般市民へも配付された。

図 11 金沢の河川・用水散策マップの作成

図 12 実際にマップを利用したまち歩き(左:常盤不動、右:浅野川河岸)

「兼六園の音風景」では出原研究室と協働して、AR技術を利用した博物館における音の展示手法を開

発した。模型の画像を認識させることで、そこで聞くことのできる音を再生し、同時に付加的情報を添

92 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

7月から 8月にかけて 2回の企画の企画が進行中である。

表 3 かなざわ風鈴ワークショップの実施要領

2013年度 2014年度

日時 8月 17日(土)、24日(土)13:30-17:00 8月 10日(日) 10:00-18:00

場所 Gallery & Workshop Colony しいのき迎賓館 セミナールーム A

図 10 かなざわ風鈴ワークショップの状況

(左:ワークショップの状況(2013 年度)、右: 商店街への設置(2014 年度))

2013年度に試作した「金沢の河川・用水散策マップ」は、金沢市内の大野庄用水、鞍月用水、辰巳用

水と浅野川、犀川の音風景を散策ルートととともに記したもので、水の音を聴きながら散策が楽しめる

内容とした(図 11)、実際にまちを歩くイベントも開催された(図 12)。これは、自治体関係者の他、要

望に応じて一般市民へも配付された。

図 11 金沢の河川・用水散策マップの作成

図 12 実際にマップを利用したまち歩き(左:常盤不動、右:浅野川河岸)

「兼六園の音風景」では出原研究室と協働して、AR技術を利用した博物館における音の展示手法を開

発した。模型の画像を認識させることで、そこで聞くことのできる音を再生し、同時に付加的情報を添

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

えた展示とした。楽しみながらもよりリアルに、環境を感じ取ることのできる結果となることが示され

た。この展示は日本サウンドスケープ協会の 20周年記念展の一部として、2013年 10月 5-6日、および

11月 2-3日の延べ 4日間千葉県立中央博物館において実際に展示された(図 13)。

図 13 兼六園の音図鑑の展示

2014年度は研究室で扱っていた茶室の音響特性に関する研究を踏まえて「金沢茶室案内」という冊子

を制作することとした(図 14)。ここでは、市内にある 12席の代表的な茶室を調査し、室内の色彩、立

面の構成をデータベースとして整備した。また、基礎的な用語集も作成し掲載した。さらに冊子には QR

コードを活用して、Webとの連携を図ったものとしている。

図 14 金沢茶室案内の作成

9.G-空間エキスポ・測量コンテスト

環境系・建築系では空間情報関連企業等で活躍する学生の人材育成を目的として、平成 10 年(1998

年)より「全国測量技術大会」「地理空間情報フォーラム」「G 空間エキスポ」に参加している。K.I.T.

空間情報プロジェクトの発足以降も毎年参加しているが、本報告では「G空間 EXPO 2013」および「G空

間 EXPO 2014」について紹介する。 G 空間エキスポは地理空間情報活用推進基本計画に基づき、G 空間

社会の裾野を広げることを目的として、産学官の連携により平成 22年 9月から開催され、G空間社会の

実現へ向けて広く一般の方々への普及と G空間関連産業の発展に寄与している。

G空間 EXPO 2013(平成 25年 11月 14日(木)~11月 16日(土))および G空間 EXPO 2014(平成 26

年 11月 13日(木)~11月 15日(土))には鹿田研究室と徳永研究室が参加した。

G 空間 EXPO 2013 ではジオアクティビティーフェスタ(審査有)に参加し、当時の大学院修士課程 2

年の白石宗一郎君(現、朝日航洋)が K.I.T.空間情報プロジェクトについてプレゼンテーションをおこ

なった。

G空間 EXPO 2014では、学生 13名と教員 2名が参加し、各種展示、講演会、測量コンテスト等に参加

93K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

した。測量コンテストでは、鹿田研究室から参加した 3チームのうち 1チームがアイデア賞を獲得した。

また、大学院生は公益社団法人日本測量協会が主催する学生フォーラムに参加し、測量分野を研究して

いる全国の大学研究室との交流を深めた。

図 15 測量コンテストに参加中の学生 図 16 アイデア賞を獲得(表彰式)

図 17 G空間 EXPO 2014会場の様子 図 18 学生フォーラムで発表する大学院生

10.地域連携・地域貢献の総括

本プロジェクトは、地域の建設コンサルタント系企業や金沢市・野々市市との連携から、学生に対し

て最先端技術の知識修得や産学連携による実践的な研究に取り組む機会を提供すること、建設コンサル

タント業界の課題に対する技術者の学びの場や地域の子供達を対象としたサイエンスプログラムを提供

する取組であり、その多様な学習機会を提供する仕組は COC事業における地域志向教育研究プロジェク

トのあるべき姿である。

今後、プロジェクトを推進するにあたり、空間情報というキーワードは様々な産業界が注目するテー

マであることを踏まえ、従来の分野に ICT 分野等、情報系教員の参画を図っていくことで、地域社会に

おける K.I.T空間情報プロジェクトの存在価値がさらに高まると思われる。

今後も K.I.T.空間情報プロジェクトでは、大学(学生)、企業、自治体および地域住民が、研究、教

育、地域イノベーションに向けて相互啓発の場となるよう活動を行っていく。

11.おわりに

本事例報告では平成 24 年度に採択された COC(地域志向教育研究プロジェクト推進事業)を中心に

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域貢献について述べた。COC 事業申請書には本プロジェク

トと他 2件のプロジェクトが事例として紹介され、積極的な地域貢献および教育効果が評価された結果

として採択に至ったと自負している。

事例報告で紹介した WGは 10年以上にわたる長い歴史を持つ WGから、平成 26年度に開始されたばか

94 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

した。測量コンテストでは、鹿田研究室から参加した 3チームのうち 1チームがアイデア賞を獲得した。

また、大学院生は公益社団法人日本測量協会が主催する学生フォーラムに参加し、測量分野を研究して

いる全国の大学研究室との交流を深めた。

図 15 測量コンテストに参加中の学生 図 16 アイデア賞を獲得(表彰式)

図 17 G空間 EXPO 2014会場の様子 図 18 学生フォーラムで発表する大学院生

10.地域連携・地域貢献の総括

本プロジェクトは、地域の建設コンサルタント系企業や金沢市・野々市市との連携から、学生に対し

て最先端技術の知識修得や産学連携による実践的な研究に取り組む機会を提供すること、建設コンサル

タント業界の課題に対する技術者の学びの場や地域の子供達を対象としたサイエンスプログラムを提供

する取組であり、その多様な学習機会を提供する仕組は COC事業における地域志向教育研究プロジェク

トのあるべき姿である。

今後、プロジェクトを推進するにあたり、空間情報というキーワードは様々な産業界が注目するテー

マであることを踏まえ、従来の分野に ICT 分野等、情報系教員の参画を図っていくことで、地域社会に

おける K.I.T空間情報プロジェクトの存在価値がさらに高まると思われる。

今後も K.I.T.空間情報プロジェクトでは、大学(学生)、企業、自治体および地域住民が、研究、教

育、地域イノベーションに向けて相互啓発の場となるよう活動を行っていく。

11.おわりに

本事例報告では平成 24 年度に採択された COC(地域志向教育研究プロジェクト推進事業)を中心に

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域貢献について述べた。COC 事業申請書には本プロジェク

トと他 2件のプロジェクトが事例として紹介され、積極的な地域貢献および教育効果が評価された結果

として採択に至ったと自負している。

事例報告で紹介した WGは 10年以上にわたる長い歴史を持つ WGから、平成 26年度に開始されたばか

K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

りの WGもある。いずれも学生が中心となって企画・運営あるいは実験参加しているものである。COC事

業の目的は、大学が自治体や地域企業を中心に地域社会と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・

社会貢献を進めるプロジェクトを支援することで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる

地域コミュニティの中核的存在としての機能強化を図るとされており、この主旨に大きく寄与している

と考える。

最後に、K.I.T.空間情報プロジェクトの遂行にあたって、本学の教職員はもとより、野々市市、金沢

市を含む多くの自治体関係者、プロジェクトに参画していただいた地元企業の方々の絶大なるご支援と

ご協力を得た。ここに深甚なる謝意を表するとともに、今後も本プロジェクトに対してご支援・ご協力

をお願いして本稿を閉じる。

参考文献

1)K.I.T.空間情報プロジェクト地上型レーザー計測マニュアル WG、地上型レーザー測量作業マニュア

ル(案)、pp.1-20.

2)鹿田正昭,白石宗一郎:北陸地区における準天頂衛星LEX信号の受信実験による精度検証、写真測

量とリモートセンシング、Vol.52,No.3,pp.121-127.

3)SPAC:準天頂衛星初号機を用いた利用実証について、

http://www.eiseisokui.or.jp/ja/demonstration/about.php?PHPSESSID=e2ffced70bce6f726b3a561

ee0222f81(2013年 11月 12日参照)

4)公益社団法人 日本測量協会、地理空間情報フォーラム、

http://www.jsurvey.jp/geoforum.htm(2015年 2月 16日参照)

[受理 平成 27 年 3 月 26 日]

鹿田正昭 専門基礎教育部長 サブジェクトライブラリアン室長 教授・工学博士 環境・建築学部 環境系 環境土木工学科 徳永光晴 環境系主任 環境土木工学専攻主任 教授・博士(工学) 環境・建築学部 環境系 環境土木工学科

95K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

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K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について

土田義郎 教授・博士(工学) 環境・建築学部 建築系 建築学科 下川雄一 准教授・博士(工学) 環境・建築学部 建築系 建築デザイン学科 神山 藍 講士・博士(工学) 環境・建築学部 環境系 環境土木工学科 川本拓見 副主幹 産学連携機構 産学連携推進部 連携推進室

中山尚武 産学連携機構 産学連携推進部 連携推進室

96 K.I.T.空間情報プロジェクトの活動成果と地域連携について