金沢工業大学の課外活動における現状と課題について -体育系課外活動...

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T h e c u r r e n t s i t u a t i o n a n d i s s u e s i n t h e e x t r a c u r r i c u l a r a c t i v i t i e s a t K a n a z a w a I n s t i t u t e o f T e c h n o l o g y - a s t u d y o f t h e s p o r t s c l u b a c t i v i t i e s - T a k a s h i S U Z U K I , S u s u m u S A T O , T a t s u y a K A W A S H I R I , T o s h i y a M U R A T A . S a t o k o U N E M O T O . 近年、高等教育機関で知識や専門的技術の習得を目的とする正課教育だけでなく、 学生が自主性を持って主体的に参加することのできる正課外活動の充実が求められて いる。部活動を含めた課外活動は、正課外にありながら「人格の陶冶」に教育意義が あるとされ、学生の人格形成に大きな役割を果たす活動と認識されている。しかし、 運動部活動では、いじめ・体罰問題をはじめとした、その認識に反する出来事が全国 的にも散見されており、スポーツ全般における活動の在り方が問われている。 本研究では、金沢工業大学体育部会に所属する 1 年次生に対し、課外活動に関する アンケート調査を実施し、本学における体育系課外活動の現状と課題について検討し た。 キーワード:正課外活動、運動部、課題 In recent years, not only the improvement of the regular curriculum but also the extracurricular activities, which students with willingness can proactively participate, has been required for the purpose of the acquisition of knowledge and the expertise in a higher education system. It is said that the extracurricular activities including sports and art club activities have a significant educational meaning for “the cultivation of the personality”, and recognized that those activities, although they are not regular curriculum, play an important role in personal development. However, in spite of the educational impact on the extracurricular activities, the issues of bullying and physical punishment in the sports club activities have been reported throughout country, and the way the activities should be managed has been questioned. For this study, the questionnaire about extracurricular was given to the first year students who belong to the sports club at Kanazawa Institute of Technology (KIT), and examines the current situation and the issues in the extracurricular activities, especially sports related club activities, at KIT. Keywords: Extracurricular, sports club, tasks 31 金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として- KIT Progress 26

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論文 KIT Progress №26

金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

金沢工業大学の課外活動における現状と課題について

-体育系課外活動団体を対象として- The current situation and issues in the extracurricular activities at

Kanazawa Institute of Technology -a study of the sports club activities-

鈴木貴士,佐藤 進,川尻達也,村田俊也,畝本紗斗子 Takashi SUZUKI,Susumu SATO,Tatsuya KAWASHIRI,

Toshiya MURATA.Satoko UNEMOTO.

近年、高等教育機関で知識や専門的技術の習得を目的とする正課教育だけでなく、

学生が自主性を持って主体的に参加することのできる正課外活動の充実が求められて

いる。部活動を含めた課外活動は、正課外にありながら「人格の陶冶」に教育意義が

あるとされ、学生の人格形成に大きな役割を果たす活動と認識されている。しかし、

運動部活動では、いじめ・体罰問題をはじめとした、その認識に反する出来事が全国

的にも散見されており、スポーツ全般における活動の在り方が問われている。

本研究では、金沢工業大学体育部会に所属する1年次生に対し、課外活動に関する

アンケート調査を実施し、本学における体育系課外活動の現状と課題について検討し

た。

キーワード:正課外活動、運動部、課題 In recent years, not only the improvement of the regular curriculum

but also the extracurricular activities, which students with willingness can proactively participate, has been required for the purpose of the acquisition of knowledge and the expertise in a higher education system. It is said that the extracurricular activities including sports and art club activities have a significant educational meaning for “the cultivation of the personality”, and recognized that those activities, although they are not regular curriculum, play an important role in personal development. However, in spite of the educational impact on the extracurricular activities, the issues of bullying and physical punishment in the sports club activities have been reported throughout country, and the way the activities should be managed has been questioned.

For this study, the questionnaire about extracurricular was given to the first year students who belong to the sports club at Kanazawa Institute of Technology (KIT), and examines the current situation and the issues in the extracurricular activities, especially sports related club activities, at KIT. Keywords: Extracurricular, sports club, tasks

31金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

KIT Progress №26

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

1.はじめに

大学における教育改革が、全国規模で進められている。その背景としてグローバル化の進展に伴う教

育ニーズの変遷と、少子高齢化、核家族化、情報化社会における家庭教育および初等・中等教育の変質、

高等教育の大衆化などに伴う学生資質の多様化が挙げられる。松尾(2014)は、これらの改革は、大学

や学部・学科の教育目的・学修目標を達成するための正課教育の改革が中心となるのが普通であるが、

これからの社会で持続的に人類の福祉・幸福の向上に貢献するには、正課外教育すなわち課外活動によ

る自主的、能動的な心技体の鍛錬が必要であると述べている1)。運動部の活動については、結果を出す

ために、的確な判断と行動ができる分析力、判断力、適応力に加え、緊張に耐えてチャンスを待ち、そ

れを逃さないための忍耐力、集中力、さらには個々の力を結集する統率力、協調力など、優れた知力と

人間力が必要であるとも述べている 1)。

平成 24(2012)年 12 月に起きた高校のバスケットボール部での暴力事件を発端として、次々と運動

部活動の問題点が明るみとなった。しかし、このような社会問題となる以前から運動部活動に対しては、

行き過ぎた「勝利至上主義」や「精神主義」、「権威主義」など、その在り方について様々な指摘がなさ

れてきた 2)3)4)。これらの問題は中学校・高校・大学の違いに関わらず、日本における運動部活動全体の

問題として捉えることができる。

本研究では、本学における体育系課外活動の現状を分析し、課題を明確にすることを目的とする。本

研究の成果は、多様な資質をもった学生が、それぞれの興味と関心、及び活動目的に応じて自分にあっ

た課外活動に積極的に参加し、正課教育だけでは身につけることが難しい人間力を磨き、次代を担う社

会人としての成長を成し遂げるために大学が何をなすべきかという問いに対し、有効な知見を提供しう

ると考えられる。

2.研究方法

2.1 調査対象・方法

金沢工業大学体育部会に所属している平成27年度、28年度の1年次生を対象とした。最終的に、176

名(27年度:85名、28年度:91名)の有効回答を得た。

質問紙法による調査とし、生涯スポーツ演習(部活動)の講義Ⅰ実施時(平成27年 7月 27日、平成

28年 7月 26日)に、配布・回収を行った。

2.2 調査内容

調査は以下の項目を用いて行った。

部の活動状況に関する項目(活動日、時間帯、出欠席に関するルールの有無)と、個人の活動状況に

関する項目(入部のきっかけ、入部の理由、出席状況、出欠席の理由、部活動を行うにあたり苦労して

いる点)、それに加え平成28年度の一年次生においては部におけるトラブルとなり得る事柄について質

問した。入部の理由と部におけるトラブルとなり得る事柄については自由記述とし、集計後グループ化

を行った。

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

05

10152025303540

割合(%)

3.結果

3.1 活動の現状

表1は学友会への参加状況を

示したものである。年度により

人数に差はあるものの、体育部

会には毎年 700~800 人程度が

参加をしており、全体の学生数

の約1割が参加をしていること

になる。

表2は入部のきっかけを示し

たものである。複数のきっかけがある者がいるものの、自分の意思で入部した者が86.9%であり、次い

で友人の誘いが13.1%、部からの勧誘が9.7%と続いている。先生や先輩、保護者による勧めもきっか

けの一つとして挙げられている。

図1は入部の理由を示したものである。「対人スキルの向上」「好きだから」が1/3を上回り、次いで

「競技面の向上」「仲間・人脈づくり」「体力向上・健康」「精神面の向上」となった。その他の回答とし

て、「新たな挑戦」が約11%、「気分転換・楽しむ」「学業との両立」「就職・単位のため」が10%未満で

あった。

表3は各団体の一週間あたりの活動日数と土曜・日曜の活動の有無を年度ごとに示したものである。

28年度では、週 5回が 5団体、週 4回が 8団体、週 3回が 11団体、週 2回が 1団体であった。そのう

ち、山岳部と卓球部においては、27年度は2回だったものが、28年度には3回に増加している。土曜・

日曜の休日の活動においては、27年度と28年度では変化はなく、17団体が休日も活動を行っている。

表4は団体の出欠席に関するルールの有無を年度ごとに示したものである。28 年度では 18 団体が出

欠席ルールを設けているが、7 団体が出欠席についてはルールを設けていない。男子バレー部において

は 27 年度にはルールを設けていなかったが、28 年度はルールを設けている。反対に、バドミントン部

と卓球部においては27年度にはルールを設けていたが、28年度はルールを設けていない。

表1 学友会への参加状況(人)

H22 H23 H24 H25 H26 H27

学友会専門委員会 137 136 163 193 194 166

体育部会 710 750 755 805 735 747

文化部会 527 618 697 712 632 539

同好会 132 184 206 195 190 199

サークル 351 468 474 642 703 721

合計 1,857 2,156 2,295 2,547 2,454 2,372

全体の学生数 7,321 7,199 7,235 7,516 7,400 7,418

表2 入部のきっかけ

人数 %

自分の意思 153 86.9

友人の誘い 23 13.1

部からの勧誘 17 9.7

先生(高校・大学)の勧め 8 4.5

先輩の勧め 8 4.5

保護者の勧め 6 3.4

注)n=176,複数回答可.

図1 入部の理由(複数回答可)

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

団体名 H27 H28 変化弓道 ○ ○硬式野球 ○ ○柔道 ○ ○正伝長尾流躰術 ○ ○陸上 × ×少林寺拳法 ○ ○ソフトテニス × ×男子バスケットボール ○ ○男子バレー × ○ ×⇒○バドミントン ○ × ○⇒×ハンドボール ○ ○ラグビー × ×アメフト × ×アイスホッケー ○ ○空手道 ○ ○剣道 ○ ○女子バスケットボール ○ ○女子バレー ○ ○水泳 ○ ○スキー × ×テニス ○ ○ヨット ○ ○ゴルフ ○ ○山岳 ○ ○卓球 ○ × ○⇒×

49.7

39.3

8.42.6

全て出席している

ほとんど出席して

いる

あまり出席してい

ない

出席していない

010203040

割合(%)

図2は活動日の出席状況を示したものである。

活動日全てを出席している者は約50%、ほとん

ど出席している者が約40%である。あまり出席

していない者、ほとんど出席していない者は併

せて11%であった。

図3は活動日全てを出席している者の、出席

できている理由を示したものである。「出席する

ことが当たり前である」「スケジュール管理をし

っかりとしている」「向上心がある」「好きだか

ら」と回答の割合に大きな差はなく、25%前後

であった。「体調管理をしっかりとしているから」

は約12%であった。

図4は活動日に欠席をしている者の、欠席し

た理由を示したものである。レポート課題やテ

スト勉強などの「個人的な学習」と「グループ

活動」が約34%、「アルバイト」が約18%、「プ

ロジェクト活動」「補講・教職科目」「私的な用

事」「活動への参加が自由」が約10%、「やる気

がない」が約3%であった。

団体名 H27 H28 変化 H27 H28

弓道 5 5 ○ ○

硬式野球 5 5 ○ ○

柔道 5 5 ○ ○

正伝長尾流躰術 5 5 × ×

陸上 5 5 ○ ○

少林寺拳法 4 4 ○ ○

ソフトテニス 4 4 ○ ○

男子バスケットボール 4 4 ○ ○

男子バレー 4 4 ○ ○

バドミントン 4 4 ○ ○

ハンドボール 4 4 ○ ○

ラグビー 4 4 ○ ○

アメフト 4 4 ○ ○

アイスホッケー 3 3 ○ ○

空手道 3 3 ○ ○

剣道 3 3 × ×

女子バスケットボール 3 3 × ×

女子バレー 3 3 × ×

水泳 3 3 × ×

スキー 3 3 × ×

テニス 3 3 ○ ○

ヨット 3 3 ○ ○

ゴルフ 2 2 × ×

山岳 2 3 2⇒3 ○ ○

卓球 2 3 2⇒3 × ×

活動日数(日/週) 土日の活動

表3 一週間あたりの活動日数と

土曜・日曜の活動の有無

表4 出欠席に関するルールの有無

図2 活動日の出席状況

図3 出席できている理由

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

0

5

10

15

20

25

30

35

40

割合(%)

図5は学生生活で苦労している点を示したものである。「学習時間の確保」に苦労している者は75%、

「グループ活動の時間調整」に苦労している者は約30%、「アルバイトとのバランス」が約22%であり、

次いで「私的な用事とのバランス」が約14%、「プロジェクトとのバランス」が約5%であった。

3.2 部における問題点

図6は部におけるトラブルとなり得る事柄について示したものである。「意欲の差による雰囲気の悪化」

は半数以上、次いで「無断欠席」が 30%以上となっている。「人間関係(暴言・陰口等)」「自分勝手な

部員がいる」「上下関係」が 20%前後、「時間を守らない」「準備・片づけをしない」「お酒の強要・未成

年の飲酒」が10%前後であった。活動の出席状況によって「連絡が行き渡らない」が7%、「備品の個人

使用」「部費の未払い」「意見交換の場がない」「暴力」においては5%未満であった。

図6 部におけるトラブルとなり得る事柄

0102030405060708090

割合(%)

図4 欠席した理由 図5 苦労している点

0

10

20

30

40

50

60

割合(%)

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

表5は部におけるトラブルとなり得る事柄を団体ごとに示したものである。表中の「◎」は部員数 2

名以上かつ回答者の過半数以上が回答、「○」は部員数2名以上かつ回答者の過半数以下が回答、「△」

は部員数2名以上かつ1名のみが回答、「▲」は部員数1名かつ回答、として示している。

「意欲の差による雰囲気の悪化」は19団体が挙げ、そのうち8団体は部員の過半数が挙げている。部

員が1名のみである部を含めると13団体であった。「無断欠席」は13団体が挙げ、そのうち5団体は部

員の過半数が挙げている。部員が1名のみである部を含めると8団体であった。「人間関係(暴言・陰口

等)」は12団体が挙げ、そのうち3団体は部員の過半数が挙げている。「自分勝手な部員がいる」「上下

関係」はそれぞれ9団体が挙げているが、部員の過半数が挙げているのは「自分勝手な部員がいる」が

1 団体、「上下関係」が 3団体(部員 1名のみの部を含めると 4団体)であった。以下、「時間を守らな

い」が5団体、「準備・片づけをしない」が6団体、「お酒の強要・未成年の飲酒」が7団体、「連絡が行

き渡らない」が5団体、「備品の個人使用」が3団体、「意見交換の場がない」は2団体であった。その

他の項目は1団体のみであった。

表5 各団体におけるトラブルとなり得る事柄

4.考察

4.1 体育系課外活動の現状と入部理由

本研究の結果から、本学における体育系課外活動の現状をまとめると以下の通りである。

工科系総合大学でありながら、体育系課外活動には全学生の1割が参加しており、本学学生において

も体育系課外活動は主要な課外活動であるといえる。8割以上の学生が自らの意思で入部をしているが、

友人や部からの誘いをきっかけとして入部する者が1割程度、高校や大学の教員・先輩・保護者の勧め

で入部する者が5%程度、存在している。

入部の理由においては「対人スキルの向上」「好きだから」が1/3を上回り、次いで「競技面の向上」

「仲間・人脈づくり」「体力向上・健康」「精神面の向上」となった。文部科学省によると、中学生・高

校生を対象とした調査では、中学生・高校生は入部の理由として、「楽しさ」「技術」「体力」「活躍」な

どを筆頭に挙げている。高校生になると「充実」「人間的な成長」「友達」が中学生に比べ倍増している5)。

回答者数

意欲の差による雰囲気の悪化

無断欠席が多い

人間関係(暴言・陰口等)

自分勝手な部員がいる

上下関係

時間を守らない

準備・片づけをしない

お酒の強要

未成年の飲酒

連絡が行き渡らない

備品の個人使

部費の未払い

意見交換の場がない

金銭の貸し借り

暴力

アイスホッケー 1 ▲ ▲ ▲

アメフト 1 ▲ ▲

ゴルフ 1 ▲

スキー 1 ▲ ▲

ソフトテニス 7 ◎ ◎ △ ○ ◎ △ △

テニス 6 ◎ △ △ △

バドミントン 4 ◎ ◎ △

男子バレー 2 ◎ ◎

ハンドボール 5 △ ◎ △

ヨット 1 ▲

ラグビー 7 ◎ △ △ ○ △ △

弓道 7 ◎ △ △ ◎ ○ ○ △ △

剣道 3 △ ◎ △ △

山岳 3 ◎ △ △

柔道 3 △ ◎ ◎

女子バスケットボール 6 △ ◎ ○ △ ○ △ △ △

女子バレー 1 ▲

少林寺拳法 3 ◎ ◎ ◎ △ △ △

水泳 1 ▲

卓球 10 ○ ○ ○ ○ ○ △ △ ○

男子バスケットボール 4 ○ △ ○ △ △

正伝長尾流躰術 1 ▲

硬式野球 5 △ ◎ ○ △ ◎ ○ △

陸上 5 ◎ ○ △ △

注)◎=部員数2名以上かつ回答者の過半数以上が回答,○=部員数2名以上かつ回答者の過半数以下が回答,△=部員数2名以上かつ1名のみが回答,▲=部員数1名かつ回答.

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

高校までは「楽しさ」が50%近かったものが、本調査では「楽しむ」が約6%となっている。しかし

本調査では「好きだから」という項目が上位にあり、この中には好きな理由として「スポーツとしての

楽しさ」も含まれると考える。大学生活では自由度の高まりにより選択肢が増加し、部活動への加入・

継続割合は低くなるが、好きであること・楽しいことは入部する理由としては大きいと考えられる。ま

た、「競技面の向上」「体力向上・健康」においては文言が違えども中高・大学共に上位に位置している。

大学では中高では少なかった「対人スキルの向上」「仲間・人脈づくり」が上位にあり、これは、全国か

ら学生が集うことが多い大学において、共通の趣味・特技を媒体として仲間をつくり、大学生活の充実

を目的としたものだと考えられる。また、対人スキルの中には、コミュニケーション能力や組織の中で

の能力の向上などといった記述があり、卒業し社会に出るにあたり、正課では獲得しにくい能力を向上

させたいという目的があるのだろう。以上のことから、本学における体育系課外活動では、好き・楽し

い・仲間づくりといった「大学生活の充実」、競技面・体力面・精神面といった「競技を通した個人的成

長」、対人スキルといった「組織の中で活動する能力の向上」を目的としている学生が多いと考えられる。

4.2 体育系課外活動の活動状況と出席状況

平成28年度は1週間あたり3~5回の活動が多い。これは本学における活動場所の共有が理由として

挙げられる。例えば、第2体育館はA・Bコートをバスケットボール部とバドミントン部がそれぞれ使用

し、大学と高専が曜日ごとに使用するという形式である。そのため平日のみでは多くても3回となり、

それに土曜日・日曜日を加えると4~5回となる。毎日活動を行っている部はなく、学業との両立を考え

た活動頻度となっている。

しかし、活動日全てを出席している者はおよそ50%程度である。欠席の程度はそれぞれであるが、残

りの50%ほどの者はなにかしらの理由により欠席していることになる。その理由として、レポート課題

やテスト勉強などの「個人的な学習」と「グループ活動」によるものが約34%、「アルバイト」が約18%、

「プロジェクト活動」「補講・教職科目」「私的な用事」「活動への参加が自由」が約10%、「やる気がな

い」が約 3%であった。全て出席している者は「出席は当たり前と考え、個人的な学習は別の時間を使

い」「スケジュール管理をしっかりと行っている」現状がある。出席・欠席は定かではないが、「学習時

間の確保」に苦労している者は 75%と多く、学業との両立は容易ではないことが窺える。「グループ活

動の時間調整」に苦労している者は約30%、「アルバイトとのバランス」は約22%、「私的な用事とのバ

ランス」は約14%、「プロジェクトとのバランス」は約5%と、部活動を行っている者の中だけでも、生

活スタイルは一律ではなく、多様な生活スタイルであることが窺える。

4.3 体育系課外活動のトラブル要因

現在の活動において、今後トラブルになると考えられる事柄について「意欲の差による雰囲気の悪化」

を50%以上の者が挙げている。次いで「無断欠席が多い」が30%以上となっている。団体ごとにみても

「意欲の差による雰囲気の悪化」を24団体中19団体が、「無断欠席が多い」を13団体が挙げている。

出欠席に関するルールのない団体のみならず、ルールを設けている団体においても過半数の部員が「無

断欠席が多い」ことを問題として挙げているケースもあり、団体における共通認識をもつことが必要で

あると考えられる。しかし、出席のみを強制したとしても「意欲の差による雰囲気の悪化」の改善には

至らない。「意欲差」「自分勝手な部員の存在」「上下関係」「準備・片づけをしない」といった不満の蓄

積が「暴言や陰口」に結びつき、部内でのいじめや暴力などの大きな問題に結びつくと考えられる。阿

江ら(1998)は、「人間関係の軋礫」が主な退部理由であることを明らかにしている 6)。また、渋倉(2001)

は、部員間の人間関係に起因するストレッサーが、部員のストレスに多大な影響を及ぼすことを指摘し

ている 7)。このように運動部活動において「人間関係」は、部員の部への適応やメンタルヘルスの維持

に影響を及ぼすことが明らかにされている。

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

4.4 改善方法

課外活動はあくまで「正課外」であり、学生の自主性を尊重すべきである。しかし、やりたい者はや

り、やりたくない者は来ない・来てもやらないといった現状に不満を持っている学生がいることは憂慮

すべきことである。正課活動のみならず、学生生活すべてが教育の一環であるとするならば、学生の 1

割が参加している体育系課外活動においては、ある程度教職員(指導者)の介入はすべきであろう。そ

れは技術的な指導ではなく、組織をマネジメントしていくための指導である。定期的な部内ミーティン

グを実施し、そのミーティングへ指導者(顧問・監督・コーチ)が参加し、組織における在り方などを

考えさせる場の構築が必要であると考える。

生涯スポーツ教育では、生涯スポーツ演習(部活動)を通し、学生部長による「本学における課外活

動の在り方」について、組織マネジメントに関する講義を行ってはいるが、参加者は限られており、体

育系課外活動の加入者すべてに伝わっているとは言い難い現状である。

5.まとめ

本学における体育系課外活動には、「大学生活の充実」「競技を通した個人的成長」「組織の中で活動す

る能力の向上」を目的としている学生が多いと考えられる。その活動は概ね週3~5回行われているが、

半数は「個人的な学習」や「グループ活動」などの理由で欠席をしている現状である。全て出席してい

る者は個人的な学習は課外活動時間外で行うようにしており、そのためのスケジュール管理をしっかり

と行っているが、全体的に「学習時間の確保」や「グループ活動の時間調整」に苦労している者が多い

現状が明らかとなった。

活動においては「無断欠席」「意欲の差による雰囲気の悪化」「自分勝手な部員の存在」「上下関係」「準

備・片づけをしない」などといった不満の蓄積が「暴言や陰口」に結びつき、いじめや暴力行為に結び

つく可能性があると考えられる。また、「部内における人間関係」が部員の部への適応やメンタルヘルス

の維持に影響を及ぼすことから、学生の自主性は尊重しつつも、組織をマネジメントしていくための指

導をするなど、ある程度教職員(指導者)の介入はすべきである。定期的な部内ミーティングを実施し、

そのミーティングへ指導者(顧問・監督・コーチ)が参加し、組織における在り方などを考えさせる場

の構築が必要であると考える。

参考文献

1)松尾直規:人間力を養う課外教育活動,工学教育,Vol.62, No.5,pp.2,公益社団法人 日本工学教育

協会,2014.

2)森川貞夫,遠藤節昭:必携スポーツ部活動ハンドブック,大修館書店,東京,1989.

3)城丸章夫,水内宏:スポーツ部活は今,青木書店,東京,1991.

4)友添秀則:大学スポーツという問題,現代スポーツ評論,28,pp.8-18,創文企画,東京,2013.

5)文部科学省:運動部活動の在り方に関する調査研究報告書(中学生・高校生のスポーツ活動に関する

調査研究協力者会議),1997.

6)阿江美恵子,雨ヶ崎俊子,掛水通子:本学競技者に関する研究(5) 運動部所属卒業生への心理学

的調査,東京女子体育大学紀要,33,pp.22-28,1998.

7)渋倉崇行:高校運動部員の部活動ストレッサーとストレス反応との関連,新潟工科大学研究紀要,6,

pp.137-146,2001.

[原稿受付日 平成 29 年 8 月 17 日、採択決定日 平成 29 年 11 月 13 日]

38 金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

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金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-

鈴木 貴士

講師

基礎教育部

修学基礎教育課程

佐藤 進

教授

基礎教育部

修学基礎教育課程

川尻 達也

講師

基礎教育部

修学基礎教育課程

村田 俊也

准教授

基礎教育部

修学基礎教育課程

畝本 紗斗子

助手

基礎教育部

修学基礎教育課程

39金沢工業大学の課外活動における現状と課題について-体育系課外活動団体を対象として-