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ブック
Vol.2
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目次:
第 4 章: ディスクリート素子パワー・ディバイダのデザイン
第 5 章: マイクロ波ディスクリート/マイクロストリップ・フィルタのデザイン
第 6 章: ディスクリート/マイクロストリップ・カップラのデザイン
第 7 章: マイクロストリップ/CPW パワー・ディバイダのデザイン
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第 4 章:ディスクリート素子パワー・ディバイダの
デザイン
この記事は、WD&D 誌 2004 年 1 月号に、“Simulation Oriented design of Power Dividers”というタ
イトルで掲載されたものです。WD&D 誌の許可を得て転載されています。
使用する ADS ライセンス:
• リニア・シミュレーション
要約:
マイクロ波システムでは、RF パワーを複数の経路に分配することが、さまざまなアプリケーションで
必要になります。これを実現する最も簡単な方法は、パワー・ディバイダ回路を使用することです。こ
の記事では、低周波で動作する集中定数素子パワー・ディバイダを Agilent ADS を使用してデザインす
るための、シミュレーション指向のデザイン手法について解説します。ここで説明するデザイン手法は、
8 方向や 16 方向などのパワー・ディバイダのデザインにも拡張できます。
はじめに:
2 方向(3 dB)パワー・ディバイダは、図 4.1 に示すように、水平軸に関して対称な 3 ポート回路と考
えることができます。すべてのポートは同一の抵抗 R で終端されます。このような回路は、ポート 1 を
入力ポート、ポート 2 とポート 3 を出力ポートとして使用することにより、パワー・ディバイダの役割
を果たします。同じ回路で、図 4.2 に示すように、ポート 2 と 3 に入力を印加し、ポート 1 を出力とす
ると、パワー・コンバイナになります。A と記されている回路は同一であり、インピーダンス変換機能
を持っています。その役割は、2 つのアームを並列に接続したときに、整合された入力信号源抵抗 R を
示すようにすることです。Zm と記された素子は相互結合素子であり、ポート 2 とポート 3 を分離する
役割を果たします。
図 4.1. パワー・ディバイダとして使用される、対称な 3 ポート回路
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図 4.2. パワー・コンバイナとして使用される、対称な 3 ポート回路
N 方向パワー・ディバイダ:
N 方向のパワー・ディバイダを作成する一般的な方法は、図 4.3 に示すように、2 方向のディバイダを
ツリー状のトポロジーで接続したツリー構造を採用することです。図 4.3 に示すレイアウトは、4 方向
パワー・ディバイダに相当します。各出力分岐に 2 方向セクションをもう 1 つ追加することにより、8方向のパワー・ディバイダを実現できます。ここで注意すべきなのは、隣接する分岐に分配されるパワ
ーを等しくするためには、各分岐に追加する回路が同一(A1、A2 など)でなければならないことです。
N 方向パワー・ディバイダのシンセシス:
N 方向のパワー・ディバイダをデザインするには、個々のセクションを別々に考慮してデザインする必
要があります。 最初のセクション A1、すなわち図 4.3 のノード 1 からノード 21/ノード 22 までは、インピーダンス変
換フィルタと考えることができます。インピーダンス変換集中定数/分布定数素子、ローパス/ハイパ
ス/バンドパス・フィルタ、または単純な集中定数素子を用いた狭帯域インピーダンス整合素子も、イ
ンピーダンス変換回路として使用できます。その場合、選択したインピーダンス整合フィルタに対する
アイソレーション・インピーダンス Zm を求めて評価する必要があります。
図 4.3. ツリー型の 4 方向パワー・ディバイダ
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Zm には、選択したインピーダンス変換フィルタに応じて、抵抗、自己/相互インダクタ、キャパシタ
を伴うかもしれません。 図 4.3 に A1、A2 として示されているインピーダンス整合フィルタのシンセシスの際には、信号源イン
ピーダンスを 100 Ωにしておきます。これは、2 つの同一の整合フィルタを並列に接続したときに、50 Ωの信号源と整合するようにするためです。負荷インピーダンスは、理想システムでは 50 Ωにしてお
きます。出力ポートに実際に接続するシステムの入力インピーダンスに応じて、それ以外の負荷インピ
ーダンスが具体的に必要になった場合にのみ、負荷インピーダンスを変更します。次に、使用する整合
回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分
岐に同様のインピーダンス変換フィルタ/回路を追加することで、2 方向のパワー・ディバイダを 4 方
向、8 方向などのパワー・ディバイダにすることができます。アイソレーション・インピーダンス
(Zm1、Zm2 など)の決定には、回路の要件に応じたチューニングが必要です。すべてのセクションを
組み合わせた後で、素子の値をさらに最適化することにより、すべてのポートでのリターン・ロス、挿
入損失、出力ポート間のアイソレーションを改善できます。理想 N 方向パワー・ディバイダの分配損失
は、次の式で与えられます。 分配損失 = 10*log10 (1/N) dB この損失を超える分が、パワー・ディバイダの挿入損失です。経路ごとの全損失の違いを振幅不平衡、
経路ごとの位相の違いを位相不平衡と呼びます。 さまざまなパワー・ディバイダの理論的な分配損失を下の表 1 に示します。
出力ポート数(N) 理論的な分配損失(dB) 2 3.0 3 4.8 4 6.0 5 7.0 6 7.8 8 9.0 10 10.0 12 10.8 16 12.0 24 13.8 48 16.8
表 1. 理論的な分配損失
4 方向パワー・ディバイダのデザイン:
ここに示すデザインは、250 MHz の 4 方向パワー・ディバイダです。 このデザインを作成するにあたって、最初にセクション 1(図 4.3 のノード 1 から 21 まで)のインピー
ダンス変換フィルタを、0~0.3 GHz の周波数、100 Ωの信号源インピーダンス、50 Ωの負荷インピー
ダンスでデザインしました。
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図 4.4. セクション 1 のインピーダンス変換フィルタのシンセシスの結果
セクション 1 のフィルタと各素子の値を図 4.4 に示します。信号源インピーダンスは 100 Ω、負荷イン
ピーダンスは 50 Ωです。セクション 1 のフィルタの結果を図 4.5 に示します。図 4.4 に示す回路は、コ
ンポーネントの Q 値を考慮しない理想素子を使用してシミュレートされているので、回路素子を ADSで使用できる実際のライブラリ・コンポーネント(Piconics、Coilcraft、ATC、AVX などのベンダ・コ
ンポーネント)に置き換えます。 ライブラリ素子を使用した回路を図 4.6 に、その結果を図 4.7 に示します。
図 4.5. 図 4.4 のフィルタの応答
シミュレーションでは、個々のチャネルの信号源インピーダンスを 100 Ωとしています。これは、すで
に説明したように、パワーを均等に分配するためにこのフィルタを並列に接続したときに、その組み合
わせが 50 Ωの信号源インピーダンスに整合するようにするためです。
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図 4.6 セクション 1 のインピーダンス変換フィルタのライブラリ素子を使用したシンセシスの結果
図 4.7. 図 4.6 のライブラリ・コンポーネントを使用したフィルタの応答
これらの個々のチャネルを並列に接続することにより、図 4.8 に示すように、これらのチャネルに均等
なパワーを分配できます(2 方向パワー・ディバイダ)。入力リターン・ロスを最適化するために、10 nH のインダクタ L3 を 1 個追加しました。図 4.8 に示す個々のセクションのコンポーネントの値は、図
4.6 と同じです。十分なアイソレーションを実現するために、2 つの出力端子の間に 100 Ωのアイソレ
ーション抵抗を追加しました。図 4.9 にリターン・ロスと挿入損失の結果を示します。図 4.10 に示すよ
うに、2 つの出力ポートの間のアイソレーションは 30 dB です。
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図 4.8. 100 Ωのアイソレーション抵抗を備えた 2 方向パワー・ディバイダ
図 4.9. 2 方向パワー・ディバイダのリターン・ロスと挿入損失
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図 4.10. 2 方向パワー・ディバイダのアイソレーション
最後に、2 方向パワー・ディバイダを図 4.11 に示す回路の各出力分岐に接続して、4 方向パワー・ディ
バイダを実現します。インピーダンス変換フィルタのコンポーネント値は変更されていません。このパ
ワー・ディバイダを製造してテストした結果を図 4.12 に示します。すべてのセクションを組み合わせた
後で、必要なアイソレーションとリターン・ロスの値を得るために、セクション 1 とセクション 2、3との間の出力セクション・アイソレーション抵抗と直列インダクタの値を少し調整しています。回路は
1.6 mm の FR4 基板サブストレート上に作成され、シミュレーション結果には、Piconics PA シリー
ズ・チップ・インダクタ、ATC 100A シリーズ・チップ・キャパシタ、Vishay DALE 0805 シリーズ・
チップ抵抗に対して提供されている実際の取り付けパッドの効果が考慮されています。
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図 4.11. シミュレートしてテストした 4 方向パワー・ディバイダの完成したスケマティック
図 4.12. 作成してテストした 4 方向パワー・ディバイダ
シミュレーションと測定の結果:
シミュレーション結果を表 4.2、4.3、4.4 に、測定結果を図 4.13、4.14、4.15 に示します。
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表 4.2. リターン・ロスのシミュレーション結果 表 4.3. 挿入損失のシミュレーション結果
表 4.4. アイソレーションのシミュレーション結果
図 4.13. 入力リターン・ロスと挿入損失の測定結果
図 4.14. 2 つの隣接出力ポート間のアイソレーションの測定結果
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図 4.15. 出力リターン・ロスと逆方向伝送損失の測定結果
パラメータ シミュレーション値 測定値 S(1,1) -29.604 dB -29.9 dB S(2.2) -19.528dB -25.03 dB S(2.1) -6.608 dB -6.65 dB S(4.1) -6.608 dB -6.6 dB S(2.3) -18.034dB -20.66 dB
表 4.5. 250 MHz でのシミュレーション結果と測定結果の比較
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第 5 章:マイクロ波ディスクリート/
マイクロストリップ・フィルタのデザイン
Thiagarajar 工科大学(インド、マドゥライ市)の許可を得て転載
使用する ADS ライセンス:
• リニア・シミュレーション • Momentum 電磁界シミュレーション • レイアウト
理論:
マイクロ波フィルタは、あらゆる RF フロントエンドで帯域外信号の抑圧に重要な役割を果たします。
このようなフィルタには、集中定数素子を使用するものと分布定数素子を使用するものがあり、商用と
軍事の両方のアプリケーションで広く使用されています。フィルタとは、必要な周波数帯域だけを通し、
それ以外のすべての周波数帯域をほぼ完全に阻止するリアクタンス性の回路です。伝送帯域と減衰帯域
を分ける周波数のことをカットオフ周波数と呼び、fc で表します。フィルタの減衰率は、デシベルまた
はネーパで表されます。フィルタは一般に、阻止帯域で隔てられた通過帯域をいくつでも持つことがで
きます。主に使用されるフィルタとしては、ローパス、ハイパス、バンドパス、バンドストップの 4 種
類があります。 理想的なフィルタは、通過帯域の挿入損失がゼロで、阻止帯域の減衰率が無限大であり、通過帯域では
リニアな位相応答を示します。理想フィルタは実際には実現できません。理想的なローパス・フィルタ
やバンドパス・フィルタの応答は、周波数ドメインでは方形パルスになるからです。この方形パルスを
タイム・ドメインに変換すると、sinc 関数となり、フィルタ・システムは因果律を満たしません。この
ように理想フィルタは実現不可能なので、フィルタのデザインではカットオフとロールオフの間のバラ
ンスを考慮する必要があります。フィルタのシンセシスには基本的に 3 つの方法があります。イメー
ジ・パラメータ法、挿入損失法、数値シンセシスの 3 つです。イメージ・パラメータ法は古くからある
精度の低い方法であり、数値シンセシス法は新しい方法ですが手間がかかります。これに対して、挿入
損失法によるフィルタ・デザインは、高周波アプリケーションに最適で広く用いられています。挿入損
失法によるフィルタのデザイン・フローを図 1 に示します。
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図 1. 挿入損失法に基づくフィルタのデザインのフローチャート 理想フィルタの特性は実現できないので、フィルタ・デザインの目標は、理想的な要件を適用範囲内で
近似することになります。近似には、Butterworth(最大フラット)、Chebyshev、Bessel、Elliptic の
4 種類があります。プロトタイプ・フィルタの場合は、最大フラット(Butterworth)法を使えば、与え
られたフィルタ次数で通過帯域応答のフラットネスを最大にできます。Chebyshev 法では、急峻なカッ
トオフが得られ、通過帯域応答には振幅が 1+k2 のリップルが見られます。Bessel 近似は Bessel 関数に
基づいたもので、カットオフが急峻になります。Elliptic 近似では通過帯域と阻止帯域にリップルが現
れます。どの近似を使用するかは、アプリケーションとコストに応じて選択します。応答と部品の観点
から最適なのは、Chebyshev フィルタです。上記の近似を使用して、フィルタは集中定数でも分布定数
でもデザインできます。
マイクロ波フィルタのデザイン:
マイクロ波フィルタのデザインの最初のステップは、プロトタイプ・モデルに使用する最適な近似を仕
様に基づいて選択することです。 与えられた仕様に基づいて、必要なロールオフからフィルタの次数を計算します。
目的の応答特性のプロトタイプを選択 (常にノーマライズされた値とローパス回路が得られ
る)
目的の周波数帯域と特性インピーダンスに 変換(集中定数回路が得られる)
ステップ 2 の結果を適切なマイクロ波形式 (マイクロストリップなど)で実現
カスケード接続された マイクロストリップ伝送ライン、
各セクション<λg/4
シングル・タイプ共振器に変換したあと、 並列結合半波共振器のカスケード接続による
実現を適用
LPF デザイン BPF デザイン または
挿入損失シンセシス手順
HPF/BSF 用の他の構造
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次数は次の方法で計算できます。
Butterworth 近似:
LA(ω’) = 10log10 1+ε (ω’/ ωc) 2N ここで、 ε = Antilog10 LA/10 - 1 および LA = 3dB(バターワースの場合)
Chebyshev 近似:
( )
′′
+=′ −
1
1210 coscos1log10
ω
ωεω nLA
(′≤′ 1ωω の場合)
( )
′′
+=′ −
1
1210 coshcosh1log10
ω
ωεω nLA
(′≥′ 1ωω の場合)
ここで、ωcはカットオフ角周波数 ω'は減衰角周波数 LA(ω’)は ω’での減衰率 N はフィルタの次数 ε = Antilog10 LAr/10 - 1 および LAr = 通過帯域のリップル フィルタ・デザインの次のステップでは、近似の種類に応じて、フィルタのプロトタイプ値を計算しま
す。Chebyshev および Butterworth 近似でのプロトタイプ値は、次の式で計算できます。 Butterworth 近似 g0 =1 gk = 2sin (2k- 1)π/2n、ここで k = 1,2,…..n gN+1 =1 ここで、N はフィルタの次数 Chebyshev 近似 素子の値は次のように計算できます。
=
37.17cothln ArLβ
LArは通過帯域のリップル
=
n2sinh βγ
( )
−=n
ak
k2
12sin π
, k=1, 2, 3….n
+=
nkbkπγ 22 sin
, k=1, 2, 3….n
γ1
12ag =
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−−
−=kk
kkk gb
aag
, k=2, 3…..n
1+ng =1(n が奇数の場合)
=
4coth 2 β
(n が偶数の場合)
プロトタイプ値を計算した後、周波数とインピーダンスに関して仕様を満たすようにプロトタイプ・フ
ィルタを変換する必要があります。変換は次の式で実行できます。 ローパス・フィルタの場合:
インピーダンスおよび周波数スケーリングの後: C’k=Ck/R0ω c L’k=R0Lk/ω c、ここで R0 = 50 Ω 分布定数デザインの場合、電気長は次の式で与えられます。 キャパシタンス・セクションの長さ:Zl/R0 Ck, インダクタンス・セクションの長さ:Lk R0/Zh ここで、Zlは低インピーダンス値、 Zhは高インピーダンス値 バンドパス・フィルタの場合: インピーダンスおよび周波数スケーリング:
L’1 =L1Z0/ω0∆
C’ 1= ∆ / L1Z0ω0
L’2 = ∆ Z0/ω0C2
C’2=C2/ Z0 ∆ ω 0
L’3 =L3Z0/ω0∆
C’ 3= ∆ / L3Z0ω0
ここで、∆は比帯域幅 ∆ = (ω 2- ω 1)/ω 0 ADS による集中定数および分布定数ローパス・フィルタのシミュレーション 代表的なデザイン: カットオフ周波数(fc) : 2 GHz (f = 4 GHz)での減衰率 : 30 dB(LA(ω)) 近似の種類 : Butterworth
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フィルタの次数: LA (ω) = 10log10 1+ε (ω/ ωc) 2N ここで、 ε = Antilog10 LA/10 - 1 LA (ω)、ω、ωcの値を代入すると、N の値は 4 と求められます。 ローパス・フィルタのプロトタイプ値: フィルタのプロトタイプ値は、次の式で計算されます。 g0 =1 gk = 2sin (2k- 1)π/2N、ここで k = 1,2,…..N gN+1 =1 与えられた仕様に対するフィルタのプロトタイプ値は次のとおりです。 g1 = 0.7654 = C1、g2 = 1.8478 = L2、g3 = 1.8478 = C3、g4 = 0.7654 = L4 フィルタの集中定数モデル 周波数およびインピーダンス・スケーリング後のローパス・フィルタの集中定数値は、 次の式で与えられます。 Ck’= Ck /R0ωc Lk’=R0 Lk /ωc、ここで R0は 50 Ω 結果の集中定数値は次のようになります:C1’ = 1.218 pF、L2’ = 7.35 nH、 C3’ = 2.94 pF、L4’ = 3.046 nH フィルタの分布定数モデル 分布定数デザインの場合は、電気長は次の式で与えられます。 キャパシタンス・セクションの長さ(βLc) : Ck Zl/R0 インダクタンス・セクションの長さ(βLi) : Lk R0/Zh ここで、Zlは低インピーダンス値 ここで、Zhは高インピーダンス値 R0は信号源および負荷インピーダンス ωcは目的のカットオフ周波数 Zl = 10 Ω、Zh = 100 Ωを考慮すると、βLc1 = 0.153、βLi2 = 0.9239、 βLc3 = 0.3695、βLi4 = 0.3827 となります。 β = 2π/λなので、物理長は次のように与えられます。 Lc1 = 1.68 mm Li2 = 10.145 mm Lc3 = 4.057 mm Li4 = 4.202 mm
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集中定数ローパス・フィルタのスケマティック・シミュレーションの手順: ADS の Schematic ウィンドウを開きます 集中定数コンポーネント・ライブラリから、集中定数モデルに必要なコンポーネントを選択します。必
要なコンポーネントをクリックし、図 2 のように ADS の Schematic ウィンドウに配置します。
図 2. 集中定数コンポーネントが表示された ADS の Schematic ウィンドウ 適切な集中定数コンポーネントを配置し、回路素子をワイヤで接続して、ローパス・フィルタの
集中定数モデルを Schematic ウィンドウに作成します。 ローパス・フィルタの 2 つのポートを、Simulation- S_Param ライブラリから選択した終端で終端しま
す。これにより、フィルタの集中定数モデルのデザインが図 3 のように完成します。
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図 3. バターワース・ローパス・フィルタの集中定数モデル Simulation- S_Param ライブラリから SP(パラメータ・シミュレーション・コントローラ)アイコンを
選択し、Schematic ウィンドウに配置します。 S- param アイコンをダブルクリックして、S パラメータ・シミュレーション・ダイアログ・ボックスを
図 4 のように開きます。ダイアログ・ボックスで、シミュレーションの開始/終了/ステップ周波数を
指定します。
図 4. Scattering Parameter Simulation ダイアログ・ボックス
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F7 を押すか、シミュレーション・ギア・アイコンをクリックして、回路をシミュレートします。
Simulation- >Simulation Setup をクリックすると、図 5 に示すシミュレーション・セットアップ・ダイ
アログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、データセットとデータ・ディスプレイの名前
を指定し、Simulate を選択します。
図 5. Simulation Setup ダイアログ・ボックス シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に開きま
す。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックし
ます。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択します。配置属性ダイアログ・
ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアログ・ボックスで選択し、OK を押して
図 7 に示すようにグラフをプロットします。
図 6. Butterworth ローパス・フィルタの集中定数モデルの S パラメータ
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結果と考察:
スケマティック・シミュレーションより、ローパス・フィルタの集中定数モデルのカットオフは 2 GHzでロールオフは仕様に適合していることがわかります。
分布定数ローパス・フィルタのレイアウト・シミュレーションの手順:
前述のデザイン手順で、分布定数ローパス・フィルタの物理パラメータを計算します。ステップ・イン
ピーダンス・ローパス・フィルタのデザインに関して、Zl および Zh 伝送ラインの幅を計算します。この
例では、Zl = 10 Ω、Zh = 100 Ωであり、誘電率を 4.6、厚さを 1.6 mm とした場合、対応するライン幅
は 24.7 mm と 0.66 mm です。
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図 7 に示すように、ADS の Line Calc(Tools- >Line Calc- >Start Line Calc)ウィンドウで、50 Ωライン
の長さと幅を計算します。 50 Ωライン 幅:2.96 mm 長さ:13.7 mm
図 7. フィルタの 50 Ωフィード・ラインの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ
ADS の Layout ウィンドウで、ローパス・フィルタのモデルを作成します。モデルの作成には、ライブ
ラリ・コンポーネントを使用する方法と、長方形を作図する方法とがあります。 ライブラリ・コンポーネントを使用してモデルを作成するには、Tlines – Microstrip ライブラリを選択
します。適切な種類のマイクロストリップ伝送ラインをライブラリから選択し、図 9 に示すように
Layout ウィンドウに配置します。
図 8. マイクロストリップ・ライブラリが表示された ADS の Layout ウィンドウ
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伝送ライン同士を接続して、図 9 に示すようなステップ・インピーダンス・ローパス・フィルタを作成
すれば、モデルは完成です。
図 9. ローパス・フィルタの分布定数モデルを示す ADS の Layout ウィンドウ Momentum>>Substrate>>Create/Modify をクリックして、フィルタのサブストレート・パラメータを定
義します。これにより、Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックスが開きます。 図 10 に示すように、Create/ Modify Substrate ダイアログ・ボックスで、サブストレートの厚さと誘
電率の値を指定します(例えば、誘電率の値として 4.6、厚さとして 1.6 mm を入力します)。
図 10. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックス
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ADS の Layout ウィンドウのツールバーでポート・アイコンをクリックするか、Insert>>Port をクリッ
クして、フィルタのすべてのアームにポートを適用します。 ポートのプロパティを変更するには、必要なポートを選択し、Momentum>>Port>>Editor をクリックし
ます(図 11 を参照)。ポートのプロパティ・ウィンドウが開き、ポートのタイプやインピーダンスな
どのプロパティを変更できます。ポートのタイプをシングル、インピーダンスの実数部を 50 Ωに設定
します。
図 11. ポートのプロパティを示すダイアログ・ボックス Momentum>>Simulation>>S Parameters をクリックして、回路をシミュレートします。これにより、
Simulation Control ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、掃引タイプを
Adaptive、開始周波数を 0.1 GHz、終了周波数を 5 GHz、サンプル・ポイント・リミットを 25 に設定
します。Simulation Control ダイアログ・ボックスの Update ボタンをクリックして値を更新し、デー
タセットに名前をつけてから、Simulate を押します。
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図 12. Momentum Simulation Control ダイアログ・ボックス ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 13 のように
表示されます。
図 13. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用) シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に開きま
す。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックし
ます。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択します。配置属性ダイアログ・
ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアログ・ボックスで選択し、OK を押して
図 14 に示すようにグラフをプロットします。
![Page 26: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/26.jpg)
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図 14. ステップ・インピーダンス・ローパス・フィルタの S パラメータ(最適化前)
次に、目的のカットオフ特性が得られるように、フィルタのデザインを長さに関して最適化します。例
えば、キャパシタンス・セクションとインダクタンス・セクションの長さを変更し、デザインをもう一
度シミュレートすると、図 15 に示す新しい応答が得られます。変更後の値は次のように与えられます。 Lc1 = 1.68 mm Li2 = 10.227 mm Lc3 = 1.572 mm Li4 = 4.202 mm
図 15. ステップ・インピーダンス・ローパス・フィルタの S パラメータ(最適化後)
結果と考察:
レイアウト・シミュレーションより、最適化後のローパス・フィルタの 3 dB カットオフ周波数が 2 GHz であることがわかります。
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ADS による集中定数および分布定数バンドパス・フィルタのシミュレーション
代表的なデザイン:
上側カットオフ周波数(fc1) : 1.9 GHz 下側カットオフ周波数(fc2) : 2.1 GHz 通過帯域のリップル : 0.5 dB フィルタの次数 : 3 近似の種類 : Chebyshev
フィルタのプロトタイプ値:
Chebyshev 近似のフィルタのプロトタイプ値は、前に示した式で計算されます。 与えられた仕様に対するフィルタのプロトタイプ値は次のとおりです。 g1 = 1.5963、g2 = 1.0967、g3 = 1.5963
フィルタの集中定数モデル:
周波数およびインピーダンス・スケーリング後のバンドパス・フィルタの集中定数値は、次のように与
えられます。 L’1 =L1Z0/ω 0 ∆ C’ 1= ∆ / L1Z0ω 0 L’2 = ∆ Z0/ω 0 C2 C’ 2 = C2 / Z0 ∆ ω 0 L’3 =L3Z0/ω 0 ∆ C’ 3 = ∆ / L3Z0ω 0 ここで Z0は 50 Ω ∆ = (ω2 – ω1) / ω0 結果の集中定数値は次のように与えられます。 L’1 = 63 nH C’1= 0.1004 pF L’2 = 0.365 nH C’2 = 17.34 pF L’3 = 63 nH C’3 = 0.1004 pF 集中定数素子バンドパス・フィルタの形状を図 17 に示します。
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図 16. 集中定数モデル・バンドパス・フィルタの形状
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フィルタの分布定数モデル: プロトタイプ値より j の値を次のように計算します。
=
∆
1210 gjZπ
nn ggnjz120 −
∆= π
n =2, 3….N に対して、
1210+
∆+ =
NN ggNjz π
ここで、∆ = (ω2 – ω1) / ω0 Z0 = 特性インピーダンス = 50 Ω これより、奇数次モードと偶数次モードのインピーダンスは、次のように計算できます。
])(1[
])(1[2
0000
20000
jzjzzzjzjzzz
o
e
+−=
++=
集中定数バンドパス・フィルタのスケマティック・シミュレーションの手順:
ADS の Schematic ウィンドウを開きます 集中定数コンポーネント・ライブラリから、集中定数モデルに必要なコンポーネントを選択します。必
要なコンポーネントをクリックし、図 17 のように ADS の Schematic ウィンドウに配置します。
図 17. 集中定数コンポーネントが表示された ADS の Schematic ウィンドウ
適切な集中定数コンポーネントを配置し、ワイヤで回路を完成して、バンドパス・フィルタの集
中定数モデルを Schematic ウィンドウに作成します。 バンドパス・フィルタの 2 つのポートを、Simulation S param ライブラリから選択した終端で終端し
ます。これにより、フィルタの集中定数モデルのデザインが図 18 のように完成します。
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図 18. Chebyshev バンドパス・フィルタの集中定数モデル Simulation S param ライブラリから SP アイコンを選択し、Schematic ウィンドウに配置します。 S- param アイコンをダブルクリックして、S パラメータ・シミュレーション・ダイアログ・ボックスを
図 19 のように開きます。ダイアログ・ボックスで、シミュレーションの開始/終了/ステップ周波数
を指定します。
図 19. Scattering Parameter Simulation ダイアログ・ボックス Simulate>>Simulation setup をクリックして、回路をシミュレートします。図 20 に示すシミュレーシ
ョン・セットアップ・ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、データセットとデ
ータ・ディスプレイの名前を指定し、Simulate を選択します。
![Page 31: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/31.jpg)
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図 20. Simulation Setup ダイアログ・ボックス
シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に開きま
す。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックし
ます。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択します。配置属性ダイアログ・
ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアログ・ボックスで選択し、OK を押して
図 21 に示すようにグラフをプロットします。
図 21. 集中定数モデル・バンドパス・フィルタの S パラメータ
結果と考察:
スケマティック・シミュレーションより、バンドパス・フィルタの集中定数モデルの上のカットオフは
1.9 GHz、下のカットオフは 2.1 GHz で、ロールオフは仕様に適合していることがわかります。
![Page 32: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/32.jpg)
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分布定数バンドパス・フィルタのレイアウト・シミュレーションの手順:
前述のデザイン手順で、バンドパス・フィルタの奇数次モードと偶数次モードのインピーダンス値
(Zoo と Zoe)を計算します。サブストレート厚さ 1.6 mm、誘電率 4.6 の結合ラインの物理パラメータ
(長さと幅)のシンセシスを行います。 Zoo と Zoe の与えられた値に対する結合ラインの物理パラメータは、次のように与えられます。 サブストレート厚さ : 1.6 mm 誘電率 : 4.6 周波数 : 2 GHz 電気長 : 90° セクション 1:Zoo = 70.67、Zoe = 39.22 幅: 2.335 mm 長さ: 20.586 mm 間隔: 0.444 mm セクション 2:Zoo = 56.68、Zoe = 44.73 幅: 2.852 mm 長さ: 20.198 mm 間隔: 1.74 mm セクション 3:Zoo = 56.68、Zoe = 44.73 幅: 2.852 mm 長さ: 20.198 mm 間隔: 1.74 mm セクション 4:Zoo = 70.67、Zoe = 39.22 幅: 2.335 mm 長さ: 20.586 mm 間隔: 0.444 mm
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図 22. 結合ラインの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ ADS の LineCalc ウィンドウで、50 Ωラインの長さと幅を計算します。 50 Ωライン: 幅: 2.96 mm 長さ: 13.3 mm
図 23. フィルタの 50 Ωフィード・ラインの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ
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ADS の Layout ウィンドウで、バンドパス・フィルタのモデルを作成します。モデルの作成には、ライ
ブラリ・コンポーネントを使用する方法と、長方形を作図する方法とがあります。 ライブラリ・コンポーネントを使用してモデルを作成するには、TLines–Microstrip ライブラリから
MCFIL を選択します。適切な種類のマイクロストリップ伝送ラインをライブラリから選択し、図 24 に
示すように Layout ウィンドウに配置します。
図 24. マイクロストリップ・ライブラリが表示された ADS の Layout ウィンドウ 結合ライン同士を接続して、図 25 に示すようなエッジ結合バンドパス・フィルタを作成すれば、バン
ドパス・フィルタのモデルは完成です。
図 25. バンドパス・フィルタの分布定数モデルを示す ADS の Layout ウィンドウ
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Momentum>>Substrate>>Create/Modify をクリックして、カップラのサブストレート・パラメータを定
義します。これにより、Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックスが開きます。 図 26 に示すように、Create/ Modify Substrate ダイアログ・ボックスで、サブストレートの厚さと誘
電率の値を指定します(例えば、誘電率の値として 4.6、厚さとして 1.6 mm を入力します)。
図 26. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックス ADS の Layout ウィンドウのツールバーでポート・アイコンをクリックするか、Insert>>Port をクリッ
クして、パワー・ディバイダのすべてのアームにポートを適用します。 ポートのプロパティを変更するには、必要なポートを選択し、Momentum>>Port>>Editor をクリックし
ます(図 27 を参照)。ポートのプロパティ・ウィンドウが開き、ポートのタイプやインピーダンスな
どのプロパティを変更できます。ポートのタイプをシングル、インピーダンスの実数部を 50 Ωに設定
します。
図 27. ポートのプロパティを示すダイアログ・ボックス Momentum>>Simulation>>S Parameters をクリックして、回路をシミュレートします。これにより、
Simulation Control ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、掃引タイプを
Adaptive、開始周波数を 0.1 GHz、終了周波数を 5 GHz、サンプル・ポイント・リミットを 25 に設定
します。Simulation Control ダイアログ・ボックスの Update ボタンをクリックして値を更新し、デー
タセットに名前をつけてから、Simulate を押します。
![Page 36: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/36.jpg)
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図 28. Simulation Control ダイアログ・ボックス ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 29 のように
表示されます。
図 29. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用) シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に開きま
す。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックし
ます。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択します。配置属性ダイアログ・
ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアログ・ボックスで選択し、OK を押して
図 30 に示すようにグラフをプロットします。
![Page 37: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/37.jpg)
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図 32. エッジ結合ローパス・フィルタの S パラメータ
結果と考察:
レイアウト・シミュレーションより、バンドパス・フィルタの挿入損失は 1 dB で、ロールオフは仕様
に適合していることがわかります。ただし、中心周波数は 2 GHz から低い周波数にずれています。これ
は、デザインの最適化によって修正できます。
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第 6 章:ディスクリート/マイクロストリップ・
カップラのデザイン
Thiagarajar 工科大学(インド、マドゥライ市)の許可を得て転載
使用する ADS ライセンス:
• リニア・シミュレーション • Momentum 電磁界シミュレーション • レイアウト
理論
カップラは基本的には、入力ポートからのパワーを、2 つ以上の出力ポートに、均等に少ない損失で結
合するデバイスです。出力は位相差を持つ場合と持たない場合があります。分岐ライン・カップラは、
3 dB のカップラで、2 つの出力ポートの間に 90°の位相差があります。図 1 に示す理想分岐ライン・
カップラは、4 ポート回路であり、4 つのポートすべてで完全に整合しています。
図 1. 4 ポート・カップラのブロック図
ポート 1
ポート 2
ポート 4
ポート 3
入力 スルー
結合 アイソレート
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ポート 1 に入射したパワーは、ポート 2 と 3 の間で均等に分配され、ポート間に 90°の位相シフトが生
じます。4 番目のポートはアイソレートされたポートであり、パワーは伝達されません。分岐ライン・
カップラは対称性が高く、4 つのポートのどれでも入力ポートとして使用できます。入力ポートの反対
側のポートが出力ポートとなり、入力ポートと同じ側のポートがアイソレートされたポートとなります。
この対称性により、S マトリクスの各行は、1 行目の各要素の配置を換えたものになります。理想分岐
ライン・カップラの[S]マトリクスを次に示します。
[ ]
−=
010001
100010
21
jj
jj
S
このカップラの最大の利点は、実現が容易なことです。欠点としては、1/4 波長伝送ラインが実現に用
いられているために帯域幅が狭いことや、接合部で不連続性が生じることです。このような欠点を回避
する方法として、分岐ライン・カップラの複数のセクションをカスケード接続することにより、帯域幅
を 1 桁程度拡大できます。また、シャント・アームの長さを 10~20°増やすことにより、不連続効果に
よるパワー損失を補償できます。
目的:
ADS を使用して、2 GHz の分岐ライン・カップラをデザインし、性能をシミュレートします。
集中定数素子分岐ライン・カップラのデザイン
図 2. 方向性カップラの集中定数モデル
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cfπω 2=
KZC
01
1ω
=
ここで、3 dB カップラの場合は K = 1
( ) 1201 C
LC −=
ω
1
0
1 CZoZ
Lωω +
=
ここで、fcはフィルタのデザイン周波数 Z0は伝送ラインの特性インピーダンス 代表的なデザイン: デザイン周波数 fc = 2 GHz 角周波数ω(ラジアン) = 2π fc = 1.25 x 1010 特性インピーダンス Z0 = 50 Ω
上記のデザイン式に値を代入することにより、集中定数モデルの値が次のように求められます。 C1 = 1.6 pF L = 2.8 nH C0 = 0.66 pF スケマティック・シミュレーションの手順
1. ADS の Schematic ウィンドウを開きます 2. 集中定数コンポーネント・ライブラリから、集中定数モデルに必要なコンポーネントを選択しま
す。必要なコンポーネントをクリックし、図 3 のように ADS の Schematic ウィンドウに配置し
ます。
図 3. 集中定数コンポーネントが表示された ADS の Schematic ウィンドウ
3. 適切な集中定数コンポーネントを配置し、ワイヤで回路を完成して、カップラの集中定
数モデルを Schematic ウィンドウに作成します。
4. カップラの 4 つのポートすべてを、Simulation S param ライブラリから選択した終端で終端し
ます。これにより、カップラの集中定数モデルのデザインが図 4 のように完成します。
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図 4. 分岐ライン・カップラの集中定数モデル
5. Simulation S param ライブラリから SP アイコンを選択し、Schematic ウィンドウに配置しま
す。 6. S- param アイコンをダブルクリックして、S パラメータ・シミュレーション・ダイアログ・ボッ
クスを図 5 のように開きます。ダイアログ・ボックスで、シミュレーションの開始/終了/ス
テップ周波数を指定します。
図 5. Scattering Parameter Simulation ダイアログ・ボックス
7. Simulate>>Simulation setup をクリックして、回路をシミュレートします。図 6 に示すシミュ
レーション・セットアップ・ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、デー
タセットとデータ・ディスプレイの名前を指定し、Simulate を選択します。
![Page 42: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/42.jpg)
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図 6. Simulation Setup ダイアログ・ボックス
8. シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に
開きます。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックします。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択し
ます。配置属性ダイアログ・ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアロ
グ・ボックスで選択し、OK を押して図 7 に示すようにグラフをプロットします。
図 7. 集中定数モデル分岐ライン・カップラの S パラメータ
分布定数分岐ライン・カップラのデザイン:
1. カップラのデザインにとって適切な、厚さ(h)と誘電率(εr)のサブストレートを選択します。 2. 与えられた周波数仕様から、波長λgを次のように計算します。
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42
fc
rg
ελ =
ここで、c は空気中での光速 f はカップラの動作周波数 εrはサブストレートの誘電率です。
3. インピーダンスが Z0および Z0/ 2 (Z0 はマイクロストリップ伝送ラインの特性インピーダンス
で、値は 50 Ω)のλ/4 ラインの物理パラメータ(長さと幅)のシンセシスを行います。分岐ラ
イン・カップラの形状を図 8 に示します。
図 8. 分岐ライン・カップラ ADS によるレイアウト・シミュレーション 1. 分岐ライン・カップラの物理パラメータを、Z0 や電気長などの電気パラメータから、前述のデ
ザイン手順で計算します。物理パラメータのシンセシスは、図 10 に示すように、ADS の
LineCalc で行うことができます。50 Ω(Z0)および 35 Ω(Z0/ 2 )のマイクロストリップ伝送ラ
インの物理パラメータを次に示します。 50 Ωライン:
i. 幅:2.9 mm ii. 長さ:20 mm
35 Ωライン:
iii. 幅:5.14 mm iv. 長さ:19.5 mm
Z0 Z0
Z0 Z0
Z0 Z0
λ/4
λ/4
Z0/ 2
Z0/ 2
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図 9. カップラの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ
2. ADS の Layout ウィンドウで、分岐ライン・カップラのモデルを作成します。モデルの作成には、
ライブラリ・コンポーネントを使用する方法と、長方形を作図する方法とがあります。
3. ライブラリ・コンポーネントを使用してモデルを作成するには、TLines – Microstrip ライブラ
リを選択します。適切な種類のマイクロストリップ伝送ラインをライブラリから選択し、図 10に示すように Layout ウィンドウに配置します。
図 10. マイクロストリップ・ライブラリが表示された ADS の Layout ウィンドウ
4. 伝送ライン同士を接続して、図 11 に示すようなカップラを作成すれば、モデルは完成です。な
お、4 つの各ポート番号は本章図 1 に準じます。
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図 11. 分岐ライン・カップラの分布定数モデルを示す ADS の Layout ウィンドウ
5. Momentum>>Substrate>>Create/Modify をクリックして、カップラのサブストレート・パラメ
ータを定義します。これにより、Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックスが開きます。 6. 図 12 に示すように、Create/ Modify Substrate ダイアログ・ボックスで、サブストレートの厚
さと誘電率の値を指定します(例えば、誘電率の値として 4.6、厚さとして 1.6 mm を入力しま
す)。
図 12. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックス 7. ADS の Layout ウィンドウのツールバーでポート・アイコンをクリックするか、Insert>>Port を
クリックして、カップラのすべてのアームにポートを適用します。 8. ポートのプロパティを変更するには、必要なポートを選択し、Momentum>>Port>>Editor をク
リックします(図 13 を参照)。ポートのプロパティ・ウィンドウが開き、ポートのタイプやイ
ンピーダンスなどのプロパティを変更できます。ポートのタイプをシングル、インピーダンスの
実数部を 50 Ωに設定します。
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45
図 13. ポートのプロパティを示すダイアログ・ボックス
9. Momentum>>Simulation>>S Parameters をクリックして、回路をシミュレートします。これに
より、Simulation Control ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、掃引
タイプを Adaptive、開始周波数を 0.5 GHz、終了周波数を 4 GHz、サンプル・ポイント・リミ
ットを 20 に設定します。Simulation Control ダイアログ・ボックスの Update ボタンをクリッ
クして値を更新し、データセットに名前をつけてから、Simulate を押します。
図 14. Simulation Control ダイアログ・ボックス
10. ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 15のように表示されます。
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図 15. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用) 11. シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に
開きます。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックします。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択し
ます。配置属性ダイアログ・ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアロ
グ・ボックスで選択し、OK を押して図 16 に示すようにグラフをプロットします。
図 16. 分布定数分岐ライン・カップラの S パラメータ
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まとめ
集中定数等価回路スケマティック・シミュレーションより、カップラの挿入損失(S31 および S41)は
3.1 dB、リターン・ロス(S11)は約 40 dB であることがわかりました。ここで使用している L および
C コンポーネントは理想的なので、優れた応答を示すことに注意してください。 レイアウト・シミュレーションでは、カップラの挿入損失(S21 および S31)は 3 ないし 4 dB、リター
ン・ロス(S11)は約 13.5 dB でした。スケマティックとレイアウトのこの違いは、伝送ラインの Q 値
と、その他の電磁界に関する現実の効果が原因です。 この例では、実際のパラメータからは、スケマティックでもレイアウトでも、良好な結果が得られてい
ます。性能に周波数シフトが見られる場合は、結合ラインの長さを 1~2 %最適化する必要があります。
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第 7 章:マイクロストリップ/CPW パワー・
ディバイダのデザイン
Thiagarajar 工科大学(インド、マドゥライ市)の許可を得て転載
使用する ADS ライセンス:
• リニア・シミュレーション • 電磁界シミュレーション • レイアウト
理論:
パワー・ディバイダは、パワー分配やパワー結合に用いられる 3 ポートのマイクロ波デバイスです。理
想的なパワー・ディバイダでは、図 1 に示すように、パワー分配の場合は、ポート 1 に供給されたパワ
ーが、2 つの出力ポートに均等に分配されます。パワー結合の場合はその逆です。パワー・ディバイダ
のアプリケーションとして、局部発振器パワーのコヒーレント・パワー分配、フェーズド・アレイ・レ
ーダのアンテナ・フィードバック回路、外部レベリングおよび無線測定、複数入力信号のパワー結合、
ハイ・パワー増幅器のパワー結合などがあります。
図 1. 理想パワー・ディバイダおよびパワー・コンバイナのモデル
T ジャンクション・パワー・ディバイダ:
パワー・ディバイダには、T ジャンクション・パワー・ディバイダ、抵抗ディバイダ、Wilkinson 型パ
ワー・ディバイダ、ハイブリッド・カップラなどの種類があります。T ジャンクション・パワー・ディ
バイダは、単純な 3 ポート回路であり、マイクロストリップ、ストリップライン、コプレナ・ラインな
どの、任意の伝送媒体を使って実現できます。すべての 3 ポート回路は、無損失、可逆的、かつすべて
のポートで整合することはできないので、無損失で可逆的な T ジャンクション・パワー・ディバイダは、
すべてのポートで完全に整合することはできません。T ジャンクション・パワー・ディバイダは、図 2に示すような 3 つの伝送ラインの接合としてモデリングできます。
パワー・ ディバイダ
P1 P3 P2
パワー・ コンバイナ
P1
P3 = P1 + P2 P2
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図 2. T ジャンクション・パワー・ディバイダのモデル
目的:
ADS を使用して、3 GHz のパワー・ディバイダをデザインし、性能をシミュレートすること。
分布定数 T ジャンクション・パワー・ディバイダのデザイン:
• パワー・ディバイダのデザインにとって適切な、厚さ(h)と誘電率(εr)のサブストレートを選択し
ます。 • 与えられた周波数仕様から、波長λgを次のように計算します。
fc
rg
ελ =
ここで、c は空気中の光速度 f はカップラの動作周波数 εrはサブストレートの誘電率
• インピーダンスが Z0 および 2 Z0(Z0 はマイクロストリップ伝送ラインの特性インピーダンス
で、値は 50 Ω)のλ/4 ラインの物理パラメータ(長さと幅)のシンセシスを行います。
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50
ADS によるレイアウト・シミュレーション:
• T ジャンクション・パワー・ディバイダの物理パラメータを、Z0 や電気長などの電気パラメータ
から、前述のデザイン手順で計算します。物理パラメータのシンセシスは、図 3 に示すように、
ADS の LineCalc で行うことができます。50 Ω(Z0)および 70.7 Ω( 2 Z0)のマイクロストリップ
伝送ラインの物理パラメータを次に示します。
50 Ωライン: 幅:2.96 mm 長さ:13.3 mm 70.7 Ωライン: 幅:1.54 mm 長さ:13.6 mm
図 3. パワー・ディバイダの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ
• ADS の Layout ウィンドウで、T ジャンクション・パワー・ディバイダのモデルを作成します。
モデルの作成には、ライブラリ・コンポーネントを使用する方法と、長方形を作図する方法とが
あります。 • ライブラリ・コンポーネントを使用してモデルを作成するには、TLines – Microstrip ライブラ
リを選択します。適切な種類のマイクロストリップ伝送ラインをライブラリから選択し、図 4 に
示すように Layout ウィンドウに配置します。
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図 4. マイクロストリップ・ライブラリが表示された ADS の Layout ウィンドウ
• 伝送ライン同士を接続して、図 5 に示すような T ジャンクション・パワー・ディバイダを作成
すれば、モデルは完成です。
図 5. T ジャンクション・パワー・ディバイダの分布定数モデルを示す ADS の Layout ウィンドウ
• Momentum>>Substrate>>Create/Modify をクリックして、パワー・ディバイダのサブストレー
ト・パラメータを定義します。これにより、Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックスが
開きます。
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• 図 6 に示すように、Create/ Modify Substrate ダイアログ・ボックスで、サブストレートの厚さ
と誘電率の値を指定します(例えば、誘電率の値として 4.6、厚さとして 1.6 mm を入力しま
す)。
図 6. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックス
• ADS の Layout ウィンドウのツールバーでポート・アイコンをクリックするか、Insert>>Port をクリックして、パワー・ディバイダのすべてのアームにポートを適用します。
• ポートのプロパティを変更するには、必要なポートを選択し、Momentum>>Port>>Editor をク
リックします(図 7 を参照)。ポートのプロパティ・ウィンドウが開き、ポートのタイプやイン
ピーダンスなどのプロパティを変更できます。ポートのタイプをシングル、インピーダンスの実
数部を 50 Ωに設定します。
図 7. ポートのプロパティを示すダイアログ・ボックス
• Momentum>>Simulation>>S Parameters をクリックして、回路をシミュレートします。これに
より、Simulation Control ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、掃引タ
イプを Adaptive、開始周波数を 0.5 GHz、終了周波数を 4 GHz、サンプル・ポイント・リミッ
トを 25 に設定します。Simulation Control ダイアログ・ボックスの Update ボタンをクリック
して値を更新し、データセットに名前をつけてから、Simulate を押します。
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図 8. Simulation Control ダイアログ・ボックス
• ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 9 の
ように表示されます。
図 9. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用)
• シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に
開きます。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックします。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択し
ます。配置属性ダイアログ・ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアロ
グ・ボックスで選択し、OK を押して図 10 に示すようにグラフをプロットします。
![Page 55: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/55.jpg)
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図 10. T ジャンクション・パワー・ディバイダの S パラメータ
結果と考察:
レイアウト・シミュレーションより、T ジャンクション・パワー・ディバイダの挿入損失(S21 および
S31)は 3.2 dB、リターン・ロス(S11)は約 12 dB であることがわかりました。
Wilkinson パワー・ディバイダ:
理論:
Wilkinson パワー・ディバイダは、信頼性の高いパワー・ディバイダであり、すべての出力ポートが整
合していて、反射パワーだけに損失があります。Wilkinson パワー・ディバイダは、T ジャンクショ
ン・パワー・ディバイダに比べて、出力ポート間のアイソレーションが優れています。また、
Wilkinson パワー・ディバイダは任意のパワー分割を実現できます。Wilkinson パワー・ディバイダの
形状と伝送ライン等価回路を図 11 に示します。
図 11. Wilkinson パワー・ディバイダの形状と伝送ライン等価回路
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集中定数モデルの Wilkinson パワー・ディバイダのデザイン
図 12 のカップラの集中定数モデルに必要なキャパシタンス(C1、C2、C3)、インダクタンス(L1、
L2)、抵抗(R)の値を、次の式で計算します。
図 12. Wilkinson パワー・ディバイダの集中定数モデル
( )2212
1
ω⋅⋅==
cba RRRCC
223
2ω
cba RRRLL ==
21 2ωcba RRR
L =
ba RRR 2=
ここで、任意のインピーダンスに対して、Z0 = Ra = Rb = Rc = 50 Ω ωは減衰角周波数
代表的なデザイン
デザイン周波数 = 3 GHz 角周波数(ラジアン) = 1.88 x 1010 C1 = C2 = 0.75 pF L2 = L3 = 3.75 nH L1 = 1.87 nH R = 100 Ω
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スケマティック・シミュレーションの手順
1. ADS の Schematic ウィンドウを開きます 2. 集中定数コンポーネント・ライブラリから、集中定数モデルに必要なコンポーネントを選択しま
す。必要なコンポーネントをクリックし、図 13 のように ADS の Schematic ウィンドウに配置
します。
図 13. 集中定数コンポーネントが表示された ADS の Schematic ウィンドウ
3. 適切な集中定数コンポーネントを配置し、ワイヤで回路を完成して、パワー・ディバ
イダの集中定数モデルを Schematic ウィンドウに作成します。 4. パワー・ディバイダの 3 つのポートすべてを、Simulation S param ライブラリから選択した終
端で終端します。これにより、パワー・ディバイダの集中定数モデルのデザインが図 14 のよう
に完成します。
図 14. Wilkinson パワー・ディバイダの集中定数モデル
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5. Simulation- S_Param ライブラリから SP アイコンを選択し、Schematic ウィンドウに配置しま
す。 6. S- param アイコンをダブルクリックして、S パラメータ・シミュレーション・ダイアログ・ボッ
クスを図 15 のように開きます。ダイアログ・ボックスで、シミュレーションの開始/終了/ス
テップ周波数を指定します。
図 15. Scattering Parameter Simulation ダイアログ・ボックス
7. Simulate>>Simulation setup をクリックして、回路をシミュレートします。図 16 に示すシミュ
レーション・セットアップ・ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、デー
タセットとデータ・ディスプレイの名前を指定し、Simulate を選択します。
図 16. Simulation Setup ダイアログ・ボックス
8. シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に
開きます。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックします。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択し
ます。配置属性ダイアログ・ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアロ
グ・ボックスで選択し、OK を押して図 17 に示すようにグラフをプロットします。
![Page 59: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/59.jpg)
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図 17. 集中定数モデル・Wilkinson パワー・ディバイダの S パラメータ
結果と考察:
スケマティック・シミュレーションより、Wilkinson パワー・ディバイダの集中定数モデルの挿入損失
(S12および S13)は 3 dB、リターン・ロス(S11)は約 53 dB であることがわかりました。
分布定数 Wilkinson パワー・ディバイダのデザイン:
ADS によるレイアウト・シミュレーション:
1. Wilkinson パワー・ディバイダの物理パラメータを、Z0 や電気長などの電気パラメータから計算
します。物理パラメータのシンセシスは、図 19 に示すように、ADS の LineCalc で行うことが
できます。50 Ω(Z0)および 70.7 Ω( 2 Z0)のマイクロストリップ伝送ラインの物理パラメータ
を次に示します。 50 Ωライン: 幅:2.96 mm 長さ:13.3 mm 70.7 Ωライン: 幅:1.54 mm 長さ:13.6 mm
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図 18. パワー・ディバイダの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ 2. ADS の Layout ウィンドウで、Wilkinson パワー・ディバイダのモデルを作成します。モデルの
作成には、ライブラリ・コンポーネントを使用する方法と、長方形を作図する方法とがあります。
3. ライブラリ・コンポーネントを使用してモデルを作成するには、Tlines – Microstrip ライブラ
リを選択します。適切な種類のマイクロストリップ伝送ラインをライブラリから選択し、図 19に示すように Layout ウィンドウに配置します。
図 19. マイクロストリップ・ライブラリが表示された ADS の Layout ウィンドウ
4. 伝送ライン同士を接続して、図 20 に示すような Wilkinson パワー・ディバイダを作成します。
![Page 61: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/61.jpg)
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図 20. Wilkinson パワー・ディバイダの分布定数モデルを示す ADS の Layout ウィンドウ
5. Momentum>>Substrate>>Create/Modify をクリックして、Wilkinson パワー・ディバイダのサブ
ストレート・パラメータを定義します。これにより、Create/Modify Substrate ダイアログ・ボ
ックスが開きます。 6. 図 21 に示すように、Create/ Modify Substrate ダイアログ・ボックスで、サブストレートの厚さ
と誘電率の値を指定します(例えば、誘電率の値として 4.6、厚さとして 1.6 mm を入力しま
す)。
図 21. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックス
7. ADS の Layout ウィンドウのツールバーでポート・アイコンをクリックするか、Insert>>Port をクリックして、パワー・ディバイダのすべてのアームにポートを適用します。
![Page 62: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/62.jpg)
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8. ポートのプロパティを変更するには、必要なポートを選択し、Momentum>>Port>>Editor をク
リックします(図 22 を参照)。ポートのプロパティ・ウィンドウが開き、ポートのタイプやイ
ンピーダンスなどのプロパティを変更できます。ポートのタイプをシングル、インピーダンスの
実数部を 50 Ωに設定します。
図 22. ポートのプロパティを示すダイアログ・ボックス
9. Momentum>>Simulation>>S Parameters をクリックして、回路をシミュレートします。これに
より、Simulation Control ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、掃引
タイプを Adaptive、開始周波数を 0.5 GHz、終了周波数を 4 GHz、サンプル・ポイント・リミ
ットを 25 に設定します。Simulation Control ダイアログ・ボックスの Update ボタンをクリッ
クして値を更新し、データセットに名前をつけてから、Simulate を押します。
図 23. Simulation Control ダイアログ・ボックス
10. ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 24のように表示されます。
![Page 63: ADS RF 回路デザイン・クック・ · 回路のトポロジーに応じて、アイソレーション・インピーダンスを計算する必要があります。各出力分](https://reader030.vdocuments.pub/reader030/viewer/2022040812/5e55b47572c80855b5627e68/html5/thumbnails/63.jpg)
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図 24. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用) 11. レイアウト・シミュレーションが終了したら、デザインを ADS のスケマティック・ウィンドウ
にエクスポートして、100 Ωの抵抗と組み合わせます。このためには、図 25 に示すように、
Momentum>>Component>>Create/Update をクリックします。
図 25. ADS の Schematic ウィンドウへのパワー・ディバイダのレイアウトのエクスポート 12. ドロップダウン・ボックスで Create/Update アイコンをクリックすると、図 26 に示す Create
Layout Component ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスに、最低周波数、
最高周波数などの値を図のように入力し、OK を押します。
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図 26. Create Layout Component ダイアログ・ボックス
13. レイアウト更新の終了を示す情報メッセージが表示されます。OK を押して先に進みます。
図 27. レイアウト・コンポーネントの完成を示す情報メッセージ
14. 図 28 のように、レイアウト・コンポーネントのシミュレーション・データをモデル・データベ
ースに追加するかどうかを確認するダイアログ・ボックスが表示される場合があります。Yes を
押して先に進みます。
図 28. シミュレーション・データのモデル・データベースへの追加を確認する ダイアログ・ボックス
15. 図 29 のように、ADS の Schematic ウィンドウを開き、Insert>>Component>>Component
library を選択して、コンポーネント・ライブラリを挿入します。
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図 29. コンポーネント・ライブラリ・ドロップダウン・ボックス
16. コンポーネント・ライブラリ・アイコンをクリックすると、図 30 に示すコンポーネント・ライ
ブラリ・ダイアログ・ボックスが開きます。コンポーネント・ライブラリ・ダイアログ・ボック
スには、ライブラリとコンポーネントの 2 つのリストがあります。パワー・ディバイダが
Layout ウィンドウで保存されたときのプロジェクト名が、ライブラリ・リストのサブ回路の下
に表示されます。適切なプロジェクト・タイトルを選択すると、選択したプロジェクト・タイト
ルの下のさまざまなデザインが、コンポーネント・リストに表示されます。
図 30. Component Library ダイアログ・ボックス
17. Layout ウィンドウでデザインしたパワー・ディバイダのタイトルを選択します。デザインした
パワー・ディバイダが Schematic ウィンドウに点線で表示されます。これを図 31 に示すように
Schematic ウィンドウに配置します。
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図 31. レイアウトからインポートしたパワー・ディバイダ・コンポーネントが表示された ADS の Schematic ウィンドウ
18. 集中定数コンポーネント・ライブラリから 100 Ω抵抗を選択し、パワー・ディバイダの出力ア
ームの間に図 32 のように接続します。
図 32. パワー・ディバイダと抵抗の組み合わせ 19. パワー・ディバイダのすべてのポートを終端で終端し、図 33 に示すように回路を完成します。
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図 33. 終端で終端したパワー・ディバイダ 20. Simulation S param ライブラリから S- param アイコンを選択し、Schematic ウィンドウに配
置します。 21. S- param アイコンをダブルクリックして、S パラメータ・シミュレーション・ダイアログ・ボッ
クスを図 34 のように開きます。ダイアログ・ボックスで、シミュレーションの開始/終了/ス
テップ周波数を指定します。
図 34. Scattering Parameter Simulation ダイアログ・ボックス
22. Simulate>>Simulation setup をクリックして、回路をシミュレートします。図 35 に示すシミュ
レーション・セットアップ・ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、デー
タセットとデータ・ディスプレイの名前を指定し、Simulate を選択します。
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図 35. Simulation Setup ダイアログ・ボックス
23. ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 36のように表示されます。
図 36. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用) 24. シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に
開きます。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックします。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択し
ます。配置属性ダイアログ・ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアロ
グ・ボックスで選択し、OK を押して図 37 に示すようにグラフをプロットします。
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図 37. Wilkinson パワー・ディバイダの S パラメータ
結果と考察:
レイアウト・シミュレーションより、Wilkinson パワー・ディバイダの挿入損失(S21および S31)は 3.2 dB、リターン・ロス(S11)は約 12.4 dB であることがわかりました。
CPW T ジャンクション・パワー・ディバイダのデザイン
目的:
ADS を使用して、2.4 GHz の CPW T ジャンクション・パワー・ディバイダをデザインし、性能をシミ
ュレートすること。
デザイン手順
1. パワー・ディバイダのデザインに適切な、厚さ(h)と誘電率(εr)のサブストレートを選択します。 2. 与えられた周波数仕様から、波長λgを次のように計算します。
fc
rg
ελ =
ここで、c は空気中の光速度 f はカップラの動作周波数 εrはサブストレートの誘電率
3. インピーダンスが Z0および 2 Z0(Z0は CPW ラインの特性インピーダンスで、値は 50 Ω)の
λ/4 CPW ラインの物理パラメータ(長さと幅)のシンセシスを行います。
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ADS によるレイアウト・シミュレーション:
1. T ジャンクション・パワー・ディバイダの物理パラメータを、Z0 や電気長などの電気パラメータ
から、先に説明したデザイン手順で計算します。物理パラメータのシンセシスは、図 38 に示す
ように、ADS の LineCalc で行うことができます。50 Ω(Z0)および 70.7 Ω( 2 Z0)の CPW ライ
ンの物理パラメータを次に示します。 50 Ωライン: 幅:3 mm 長さ:19.67 mm ギャップ:0.32 mm
70.7 Ωライン: 幅:1.5 mm 長さ:19.45 mm ギャップ:0.63 mm
図 38. パワー・ディバイダの物理パラメータのシンセシスを示す ADS の LineCalc ウィンドウ
2. ADS の Layout ウィンドウで、T ジャンクション・パワー・ディバイダのモデルを作成します。
モデルの作成には、ライブラリ・コンポーネントを使用する方法と、長方形を作図する方法とが
あります。
3. モデルは次の方法で作成できます。insert>>rectangle をクリックすると、カーソルが画面上に点
線で表示されます。insert >> Coordinate entry をクリックし、長方形の座標を図 40 に示すよ
うに指定します。例えば、幅 1.5 mm、長さ 19.37 mm の長方形を作成する場合、座標は(0, 0)および(1.5, 19.37)となります。
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図 39. 座標入力ダイアログ・ボックス 4. CPW ラインのグランド・プレーンを作図します。この際、グランドの幅が中心導体の幅の 5 倍
より大きくなるようにします。 5. 伝送ライン同士を接続して、図 40 に示すような T ジャンクション・パワー・ディバイダを作成
すれば、モデルは完成です。
図 40. CPW T ジャンクション・パワー・ディバイダの分布定数モデルを示す ADS の Layout ウィンドウ
6. ポート・アイコンをクリックし、回路内に配置して、CPW 伝送ラインにポートを割り当てます。
CPW ラインの中心導体とグランド・プレーンの両方にポートを割り当てる必要があります。グ
ランド・プレーンのポートはエッジではなく、グランド・プレーンの内側に配置します。
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7. CPW ポートに割り当てるプロパティを指定します。中心導体のポートは内部ポートとして、グ
ランド・ラインのポートはグランド基準ポートとして定義します。このためには、プロパティを
定義する適切なポートを選択し、momentum>>Port>>editor をクリックします。これにより、図
41 に示すポートのプロパティ・ダイアログ・ボックスが開きます。導体に対するポート・タイ
プは内部、グランド・ラインに対するポート・タイプは導体ポートに対応するグランド基準ポー
トに設定します。
図 41. Port Properties Editor ウィンドウ
8. Momentum>>Substrate>>Create/Modify をクリックして、パワー・ディバイダのサブストレー
ト・パラメータを定義します。これにより、図 42 に示す Create/Modify Substrate ダイアロ
グ・ボックスが開きます。
図 42. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックス
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9. サブストレート・レイヤの Add ボタンをクリックして、サブストレート・レイヤを追加します。
サブストレート・レイヤ・リストの Alumina レイヤは、CPW パワー・ディバイダの下のレイヤ
(層)を表します。Alumina レイヤの誘電率として 4.6、厚さとして 1.6 mm を入力し、
Alumina_0 レイヤの誘電率として 1 を入力し、Alumina_0 の下の層を、///GND///をクリックし
て Bondary を Open に指定することにより、オープンと指定します 10. Create/Modify Substrate ダイアログ・ボックスで layout layers タブをクリックして、デザイン
のメタライゼーション・プロパティを定義します。各レイアウト・レイヤを対応するサブストレ
ートの上にマッピングします。これはサブストレート・レイヤ・リストに自動的に表示されます。 11. このためには、図 43 のように、各サブストレート・レイヤの上の点線をクリックし、対応する
レイヤを選択して、Strip をクリックします。
図 43. サブストレートのプロパティを示すダイアログ・ボックス
12. Momentum>>Simulation>>S Parameters をクリックして、回路をシミュレートします。これに
より、Simulation Control ダイアログ・ボックスが開きます。ダイアログ・ボックスで、掃引
タイプを Adaptive、開始周波数を 0.5 GHz、終了周波数を 4 GHz、サンプル・ポイント・リミ
ットを 25 に設定します。Simulation Control ダイアログ・ボックスの Update ボタンをクリッ
クして値を更新し、データセットに名前をつけてから、Simulate を押します。
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図 44. Simulation Control ダイアログ・ボックス
13. ADS の Momentum エンジンが回路をシミュレートし、シミュレーションのステータスが図 45のように表示されます。
図 45. シミュレーションのステータス・ウィンドウ(上の図は単なる参考用) 14. シミュレーションが終了すると、結果を表示したデータ・ディスプレイ・ウィンドウが自動的に
開きます。データ・ディスプレイ・ウィンドウが開かない場合は、Window>>New Data Display をクリックします。データ・ディスプレイ・ウィンドウで、直交座標プロットを選択し
ます。配置属性ダイアログ・ボックスが自動的に開きます。プロットするトレースをダイアロ
グ・ボックスで選択し、OK を押して図 46 に示すようにグラフをプロットします。
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図 46. T ジャンクション・パワー・ディバイダの S パラメータ
結果と考察:
レイアウト・シミュレーションより、T ジャンクション・パワー・ディバイダの挿入損失(S21 および
S31)は 3 dB、リターン・ロス(S11)は約 30 dB であることがわかりました。
まとめ
集中定数および分布定数パワー・ディバイダのデザインとシミュレーションを実行しました。ここに示
したデザインとシミュレーション結果から、複数分配の要件(例えば、1×8 や 1×16 の分配が必要なフ
ェーズド・アレイ・システム)に適合するパワー・ディバイダのデザイン方法が理解できるはずです。
ある種のアンテナ・アレイでサイドローブの抑圧のために使用される不均等なパワー分配も、不均等分
配型 Wilkinson パワー・ディバイダを使用して実現できます。
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Published in Japan, November 26, 2009 5990-5042JAJP
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