―説明的文章 における 読解力 の育成 · トの読解力 だけではなく...

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-1- 平成17・18年度香川県教育委員会研究団体等研究委託事業国語部会研究成果のまとめ 論理的思考力を育成する国語科学習の改善 ―説明的文章における読解力の育成― 香川県小学校教育研究会国語部会 研究主題設定について (1)国際的な学力調査の結果から~国語科の本質的な事項~ PISA調査(読解力)の結果から明らかになった課題として,「熟考・評価」の問題に 対して正答率が極端に低いこと,加えて無答率が非常に高いということが挙げられる。 国際的な「読解力」の捉えは,我が国の国語教育等で従来用いられていた「読解力」とい う語の意味するところとは大きく異なっている。つまり,単なる「テキストの中の情報の取 り出し」だけではなく,書かれた情報から推論して意味を理解する「テキストの解釈」,書 かれた情報を自らの知識や経験に位置付ける「熟考・評価」の3つの読む行為のプロセスの 観点から問題が構成されている。さらに,「連続型テキスト」と呼ばれている文章で表され たものだけではなく,「非連続型テキスト」と呼ばれているデータを視覚的に表現したもの (図や地図,グラフなど)からの読解も要求されている。 また,PISA調査のねらいとするところは,現行の学習指導要領で子どもに身に付けさ せたい資質・能力と相通じる。学習指導要領では,「学ぶ意欲や,自分で課題を見付け,自 ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力の育成」 を大切にしている。このことを国語科の学びに置き換えてみれば,PISA調査のねらいは, まさに学習指導要領のねらいと一致するのである。 このPISA調査の結果は,私たちが,現行の学習指導要領のねらいを十分に徹底できて い な い と い う 側 面 を 浮 き 彫 り に し た と も 言 え る 。そ こ で ,上 記 の「 読 解 力 」の 育 成 ,つ ま り , 読み手として主体的にテキストに対峙する意欲と,自らの視点を明らかな根拠として,よさ や問題点を的確に指摘し,よりよい方法を提案できる読みの力,いわば「批判的に読む力(ク リティカル・リーディング)」の育成を直接的に目指していくことこそ,「生きる力」をは ぐくむ国語科の学習の実現になると考えたのである。 (2)国語力育成の重要性から~国語科と他教科の関連の中で~ 平成17年10月26日に出された中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」で は,「国語力はすべての教科の基本となるものであり,その充実を図ることが重要である。」 と述べられている。国語力は,当然ながら国語科の学習において育成されるのだが,他教科 や他領域の学びに活用できない閉ざされた学力ではいけない。この意味においても,「話し 方・聞き方,書き方,読み方」を,様々な場面や対象によって「使いこなせる力」にまで高 めておく必要がある。 サブテーマでねらう「説明的文章における読解力」は,「批判的に読む力」の育成を目指 している。しかし,単にテキストを批判するだけの力ではない。明確な根拠から,テキスト のよさや,問題点,書きぶりなどを的確に判断し,指摘し,必要に応じて改善策を提案でき るまでの読みの力である。このような力を育てることが,「すべての教科の基本となるもの」 という要請に応えることができると考える。 また,国語力は,規範性に基づいて共通・普遍に応じる能力であるとともに,一方では,

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平成17・18年度香川県教育委員会研究団体等研究委託事業国語部会研究成果のまとめ

論理的思考力を育成する国語科学習の改善

―説明的文章における読解力の育成―

香川県小学校教育研究会国語部会

1 研究主題設定について

(1)国際的な学力調査の結果から~国語科の本質的な事項~

PISA調査(読解力)の結果から明らかになった課題として,「熟考・評価」の問題に

対して正答率が極端に低いこと,加えて無答率が非常に高いということが挙げられる。

国際的な「読解力」の捉えは,我が国の国語教育等で従来用いられていた「読解力」とい

う語の意味するところとは大きく異なっている。つまり,単なる「テキストの中の情報の取

り出し」だけではなく,書かれた情報から推論して意味を理解する「テキストの解釈」,書

かれた情報を自らの知識や経験に位置付ける「熟考・評価」の3つの読む行為のプロセスの

観点から問題が構成されている。さらに,「連続型テキスト」と呼ばれている文章で表され

たものだけではなく,「非連続型テキスト」と呼ばれているデータを視覚的に表現したもの

(図や地図,グラフなど)からの読解も要求されている。

また,PISA調査のねらいとするところは,現行の学習指導要領で子どもに身に付けさ

せたい資質・能力と相通じる。学習指導要領では,「学ぶ意欲や,自分で課題を見付け,自

ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力の育成」

を大切にしている。このことを国語科の学びに置き換えてみれば,PISA調査のねらいは,

まさに学習指導要領のねらいと一致するのである。

このPISA調査の結果は,私たちが,現行の学習指導要領のねらいを十分に徹底できて

いないという側面を浮き彫りにしたとも言える。そこで,上記の「読解力」の育成,つまり,

読み手として主体的にテキストに対峙する意欲と,自らの視点を明らかな根拠として,よさ

や問題点を的確に指摘し,よりよい方法を提案できる読みの力,いわば「批判的に読む力(ク

リティカル・リーディング)」の育成を直接的に目指していくことこそ,「生きる力」をは

ぐくむ国語科の学習の実現になると考えたのである。

(2)国語力育成の重要性から~国語科と他教科の関連の中で~

平成17年10月26日に出された中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」で

は,「国語力はすべての教科の基本となるものであり,その充実を図ることが重要である。」

と述べられている。国語力は,当然ながら国語科の学習において育成されるのだが,他教科

や他領域の学びに活用できない閉ざされた学力ではいけない。この意味においても,「話し

方・聞き方,書き方,読み方」を,様々な場面や対象によって「使いこなせる力」にまで高

めておく必要がある。

サブテーマでねらう「説明的文章における読解力」は,「批判的に読む力」の育成を目指

している。しかし,単にテキストを批判するだけの力ではない。明確な根拠から,テキスト

のよさや,問題点,書きぶりなどを的確に判断し,指摘し,必要に応じて改善策を提案でき

るまでの読みの力である。このような力を育てることが,「すべての教科の基本となるもの」

という要請に応えることができると考える。

また,国語力は,規範性に基づいて共通・普遍に応じる能力であるとともに,一方では,

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個に応じた理解や受容もあり,それに基づいた創造的な活動であることも忘れてはならない。

サブテーマでねらう力は,共通・普遍の言語形式を学び,それを活用して批判する読みとい

う,個にとっては非常に能動的・個性的な読みを求めていくものである。

一方,国語力は,国語科の学習で育成されると同時に,他教科においても育成されなけれ

ばならない。つまり,各教科の能力構造に位置付く国語力があるということも考えておかな

ければならないのである。言語の教育に関しては「事実・事象(現実)」と「言語」との往

復関係が重要である。例えば,言語化する(抽象化する)ことによって,比較や類別といっ

た思考活動を成立させる場合もあるだろうし,言語を事実を結び付けて捉えていくこともあ

るだろう。数や色や図,グラフといった記号から読み取れることを言語化したり,逆に言語

内容を言語以外の記号化する場合もある。このようなことに関しては,これまで国語科の学

習では,読みの方法として活用されることは多かったものの,育成したい力としてはあまり

重視されなかった。これからの国語力の育成を考えるとき,これまでのような連続型テキス

トの読解力だけではなく,非連続型テキストの読解力も国語科の学習に取り入れていく必要

がある。そのための一つの視点が,他教科等の能力構造に位置付く国語力を明確にしていく

ことであると考える。

(3)国語科を越えた国語力(読書力)の視点から~読書活動との関連の中で~

井上一郎氏は,「読書力」を次の七つの柱によって構想することができると述べている。

○課題設定力 ○読書計画力 ○読書行為力 ○読書生活力

○読書反応力 ○コミュニケーション力 ○記録・評価力

(『初等教育資料』平成17年3月号)

このような「読書力」は国語科に限って言えば,読んだ内容について報告し合う読書発表

会を行ったり,自分の意見文の中に読んだ本の一部を引用したりなど,「読むこと」の領域

に加え,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」の3領域の中で有機的に展開することで育成

することができると考えられる。さらに,他教科の中でとらえれば,学習に必要な文献を自

分の力で検索したり,パンフレットやカタログ,図表やグラフなどの実用的な資料を読み分

かったことをまとめたり,論説文や解説文など論理的な思考力が求められる資料を読み筆者

の主張に対して自分の考えを持ったりするなど,幅の広い読書活動が必要になってくる。

このことは,PISA調査の結果により求められている学力に通じるところである。この

ような読書力を備えた子どもを育てていくためには,当然国語科の授業だけではなく,他教

科での取り組み,さらには学校教育活動全体で取り組んでいかなければならない。その中に

おいて,国語科の学習では,その読書力を鍛えていく読書活動の基礎・基本となる部分を受

け持ち,子どもたちに定着させていく必要があると考えている。

2 研究経過

研究においては,「何を,どのように」ということを明らかにしておくことが大切である。

国語科で今,最も子どもに定着させなければならない「確かな学力」とは,どんな力なのか,

また,その学力についての子どもの実態はどうなのか。つまり,「何を」が明確になって初め

て,学習指導の工夫・改善といった「どのように」といった方法論が考えられるのである。

本研究委託を2年間で受けた香川県小学校教育研究会国語部会では,まず,第1年次におい

ては,「何を」に当たる部分の研究に重点を置き,第2年次の「どのように」といった方法論

の構築につないでいきたいという大まかな構想を描いた。

(1)研究内容設定までの歩み 資料1「研究内容設定」参照

私たちは,まず「何を」を明らかにするために,編集会議間に十分な個人研究を挟む形で,

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2回の編集者会議を開催した。以下がその概要である。

① 国語科で育成すべき「読解力」とは

「テキスト(主には連続型テキスト)を視点を明確にして批判的(良さや問題点を明ら

かにする)に読み,それを表現する力」を育てていくことが最重要課題である。また,学

習指導要領に則り,低・中・高の系統と重点も考慮することが大切である。

② そのための単元編成とはどうあるべきか

③ そのための学習指導・評価の在り方はどうあるべきか

・ 思考様式(言語形式)について吟味し,一般化し,転移していくまでの単元編成。

・ ボトムアップ的な読み方だけではなく,トップダウン的な読み方の導入。

・ 批判に終わらず,リライト(書き改め,再構成)を取り入れる。

・ 比較,分析,総合,抽象,関係づけ,推理といった概念的思考活動を位置付ける。

(2)研究の経緯(第1年次 研究内容設定から調査活動)

研究内容の決定

児童の実態調査(アンケート・テスト) 現状の指導・評価法の課題調査

① 調査対象・調査項目等の検討,決定 ① 単元の選定

② 一般的に行われている単元編成・学

習指導・評価法のモデル化

② 調査用紙の作成,検討 ③ 教師の指導実態に関するアンケート

の作成,検討

合同編集委員会

③ アンケート・テストの実施 ④ 課題達成に向かう実践例の洗い出し

④ アンケート・テストの集計・考察 ⑤ アンケートの実施,分析

合同編集委員会

【第1年次のまとめ】

・ 児童の力に対する実態把握と教師の指導における実態把握,それらの関連を探る。

・ 単元開発,指導法,評価法の改善の視点の明確化。

(3)研究の経緯(第2年次 単元開発,指導法,評価法の改善)

① モデル単元作成・発表 5年『動物のからだ』(平成18年度夏季研修会にて提案)

② 単元開発と実践(1年『じゃんけん』,2年『ビーバーの大工事』,6年『宮沢賢治』)

【第2年次のまとめ】

・ 研究成果と課題,研究成果の公表

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3 研究成果

(1)第1年次 研究内容設定から調査活動 資料2「児童の実態調査」参照

① 児童の実態調査

以下のように,調査内容,調査形式・方法,児童へのアンケート調査についての意見を

まとめた。そして,その意見を基に,調査用紙を作成し,県下の協力校(11校,第2学年

第4学年 第6学年 児童約1,000名)を対象に調査を実施した。

「批判的に読み,それを表現する力」の児童への実態調査について

○ 調査内容について

・ 「関係付ける力」(比較・順序・類別・定義づけ・理由づけ・推理)を学習指導要

領に照らし合わせて,既習の,または,ぜひ学習すべき内容を出題する。したがって,

上記の6つの思考全てを,全学年に問うというわけではない。例えば,順序について

は,時間的順序から重要さの順序のように,低学年でも高学年でも問うべきであろう

し,定義づけの思考については,今回の調査で必要かどうかの判断をしなければいけ

ないというふうに吟味していく必要がある。

・ 上記のことを,児童が積極的判断(批評)するという形で出題する。

○ 調査内容形式・方法について

・ 実施学年については,2年,4年,6年とする。上記のように既習内容の活用を問

うわけであるから,学習指導要領の内容を終える偶数学年が妥当である。

・ 実施時期については,問題作成・吟味も考慮し,また,学習がほぼ終了する2月末

から3月上旬にかけてが妥当である。

・ 問題については,上記の意図を最大限に反映するため,自作テキストが望まれる。

教科書巻末のテキストを基に作成することも考えられる。場合によっては,各思考を

総合的に問うこともできるし,一つの思考をピックアップして設問することもできる。

・ 調査時間は,45分でできるのが負担が少なくてよい。できれば,20分程度の設問に

し,後の20分程度で全学年共通問題を実施するといったことにできないか。

左図のように

第2学年用,第

4学年用,第6

学年用と,全学

年共通問題の全

4種類の調査問

題を作成し,平

成18年2月に,

県下11校の協力

を得て,約千名

の児童を対象に

実施した。

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② 調査結果の分析・考察

○ グラフ中,縦軸の単位は(人)

○ 各設問の内容

設問1・・・書かれている内容のタイト

ル,ラベリング

設問2・・・ホットケーキ作りの順序と

記述の順序の整合性

設問3・・・1文1内容の簡潔な表記

○ 評価規準

完全正答・・・各設問において上記設問

内容(言語形式)の違い

を指摘した上で,その読

み手に対する効果を記述

している。

誤答1・・・・各設問において,上記設問内容(言語形式)の違いを指摘するにとどまっ

ている。

無回答・・・・各設問において,上記設問内容(言語形式)の違いもふれていない。

※ 正答・・・期待される反応という意味で使用

誤答・・・期待される反応には達していないという意味で使用

上記のように,各設問において結果を分析・考察した結果,また,同時に調査を行った

「国語科の授業に関するアンケート」(教員対象)の結果を併せてみると,国語科の学習

改善の視点として,以下の3点が浮かび上がってきた。資料3「教師のアンケート」参照

○ 論理的な思考の仕方を意識化させる

ことにより,読みの具体的力の転移・

活用力を育成する。

【論理的思考力を意識した国語力として

の基礎・基本の設定と育成の視点】

○ 文章や資料に基づいて論理的に考え

その結果を表現できる力を育成する。

【比較・類推・関係づけの思考と思考し

たことの十分な表現の育成】

○ 建設的に批判する力を育成する。

【非連続テキストの活用,モニタリング】

【教師に対するアンケート調査用紙】

(2)第2年次 単元開発,指導法,評価法の改善

上記の「国語科の学習改善の視点」を基に,第5学年『動物の体』の説明文を教材とした学

習モデルを考案した。このことについては,平成18年度の香川県小学校教育研究会国語部会夏

季研修会において,本研究委託メンバーが,調査結果の分析・考察を含め,演習形式で提案し

た。また,この他にも3実践の単元開発と実践を行っている。資料4「実践例」参照

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(3)モデル単元例 第5学年『動物の体』 資料5「モデル単元」参照

① 論理的思考力を育成する指導のポイント

○ 言語情報と写真や図・絵等の情報を関係付けて読む活動の場の設定

○ 論理的思考力を育てる話し合いの場の設定

○ 学んだことを書く場の設定

② 写真の扱いについて

―読みの検証として扱ってみてはどうか?―

教科書37ページにある2枚の写真を見てみよう。ホッキョクギツネとフェネックが,筆

者の言うとおり,ほぼ同じ体積の体であることが分かる。顔が隣り合わせになっているこ

とで,耳の形や大きさを比べるのも容易にできる。背景がはっきり写っていて,どんな環

境のところに住んでいるのかが手に取るよう分かる。

文章から読み取ったことを写真で検証することで,あるいは写真から読み取ったことを

文章で検証することで,言語情報と写真や図・絵等の情報を関係づけて読む力が育つと考

えられる。

③ 話し合いが,単に内容の確かめで終わらないためにどうするか

―何をどのように読めばいいかを分からせる話し合いになることが大切―

寒い地方の動物に比べて,暑い地方の動物についての記述は少ない。だからといって,

暑い地方の動物についての情報を読み取ることができないかというと,そんなことはない。

両者は対比の関係で述べられているという説明の論理に気づくことができれば,一方の情

報を逆の意味に変えることによって,対等の情報を読み取ることが可能になる。そのため

には,比較して類推して読むということを,もっと意識付ける必要がある。

④ まとめを書くことに対する指導

―教材文の内容を要約して紹介したり,再構成したり,自分の知識や経験と関連付けた

り,自分の意見を論じさせたりする機会を設ける―

比較して読んだ結果を書くのだから,それが分かるように,「一方とか逆に・もう一方

では・それに対して」と言う言葉を使って比較しながら書かせる指導を取り入れる。読み

取ったことを,自分の言葉でまとめる表現活動をする中で,論理的に考えを構築していく

力を育てていくことができる。

4 成果と課題

(1)成果

○ PISA型読解力も視野に入れ,小学生対象の調査問題を作成し,その結果を分析す

る過程で,どのような力をどの段階で身に付けさせるべきかということが明確になって

きた。

○ 夏季研修会等で,実態調査の結果,モデル単元を基に,具体的に単元開発の視点や方

法,指導法の改善について提案し,研究成果を広げることができた。

(2)課題

○ いくつかの実践例を通して明らかになった単元開発の視点や方法,指導法の改善につ

いて,それらを総合的な視野から見て,学年間の系統性を明らかにする必要がある。

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【資料1】 研究内容設定までの歩み

私たちは,まず「何を」を明らかにするために,編集会議間に十分な個人研究を挟む形で,

2回の編集者会議を開催した。

1 研究委託の内容の周知と第1回編集者会議までのレポート作成

限られた時間を有効に使い,一人一人の編集委員の考えを確立しながら,そのよさを生かし

ていく研究を進めていくために,編集者会議に先立ち,一人一人がレポートを作成して会議に

臨むようにした。

【第1回編集者会議のレポート依頼】

テーマ 「確かな学力の定着・向上のための学習指導の工夫・改善」

視点

① 学ぶ意欲の向上を図る指導方法の工夫・改善

・ 「国語が好き」と答える子どもを増やすために

・ 「この指導で子どもがこう変容した」という具体事例を集めて整理する

② 確かな学力の定着を目指す教材研究の手引きの作成

・ 国語科の本質と教材研究

・ 教材研究の手順

・ 教材研究の具体

・ 発問・助言,板書を見直す

③ 補充的な学習,発展的な学習における教材開発及び実践

・ 香川型教材の活用・応用

・ 児童の確かな学力の定着状況の追跡調査

上記が,香小研国語部会に委託されたテーマと視点及び項目です。これら3つの視点か

ら研究をしていくわけですが,これらは「視点」であって,研究を構造的に捉えたもので

はありません。「この方向から見たら」というのが3つあると考えます。

研究を進めていくには,まずテーマや視点を構造的に捉えて,研究内容を設定していく

必要があります。

そのために,今回,研究委託事業のメンバーになられた先生方のお考えをお聞きしなが

ら,研究内容を見いだしていきたいと考えております。

第1回会議までの宿題

そこで,まずは,上記の「視点」やその次に挙げられている「項目」について,自由に

意見を述べ合いたい,そして,そこでの意見をまとめながら研究内容や研究計画を立てて

いきたいと考えました。現在のところは,拡散的になってよい,どちらかといえば拡散的

になることをねらっています。また,視点間や項目間の関連性等についても考慮する必要

は全くありません。自由な発想からの,ご意見をお願いしたいと思います。

つきましては,このことについてのレジュメを,10月1日(土)の会にご用意下さい。

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わずか3時間足らずの会議となります。多くの情報がありましても,未消化に終わると思

います。そこで,敢えて,レジュメの分量は,A4用紙1枚以内とさせていただきます。

2 第1回編集者会議(平成17年10月1日)

第1回編集者会議では,委託された研究テーマの解釈,国語科としては,どのような力を育

成すべきかといった研究のアウトラインについて話し合いが行われた。以下が,その会議の基

調提案資料と議事録,及び,第2回編集者会議までのレポート作成内容である。

【第1回編集者会議の基調提案】

1 学ぶ意欲の向上を図る指導方法の工夫・改善について

学ぶ意欲を,「教材の工夫による活動への興味付け」や「学習の目的意識を高める言語

活動の設定」のように,学ぶ意欲の一部分を取り上げて述べるのはどうか?

・ 言語活動・学びを始動させようとする意欲の向上・ 言語活動・学びを継続しようとする意欲の向上 言葉のおもしろさ・深さの実感・ 言語活動・学びを評価,変更,中止しようとする意欲の向上

国語力を身に付けているという実感 向上の術(すべ)がとらえられる実感

「国語が好き」と答える子どもは,上記のような実感をもっている子どもではないか?

2 確かな学力の定着を目指す教材研究の手引きの作成

① 目標レベルでの教材研究

例えば,小学校1年生には,その発達段階や学習経験に応じた目標がある。したがって

その目標を達成すべく教材としての価値を見いだすことが教材研究である。当然ながら学

習指導要領がその基本となる。しかし,指導内容は,「場面の様子などについて,想像を

広げながら読むこと」(第一学年及び第二学年 C読むこと ウ)といったように非常に

抽象的である。この指導内容をそのまま一時間の目標にはできない。当然,評価について

も目標に準拠した評価をしなければならないから,この目標では,子どもの学習状況を判

断する基準を見いだすことができない。そこで,具体化を図る。具体化すると「人物の行

動を表す言葉から,具体的な動きを想像する」といったように,その視点は,言語形式を

意識したものになるだろう。

② 単元(教材単元)レベルでの教材研究

国語科の学習において,単元レベルでは,「言語活動研究」が,非常に大切であると考

える。言語活動研究と一口に言っても,以下の三視点が考えられる。

○ ある言語活動によって,どのような力を育成することが期待できるのかの研究

例 新聞づくり…5W1Hを端的に表す力等 なお,領域間の関連性も,ここに含ま

れる。

○ ある言語活動を,子どもたちはどう受けとめ,どのように活動を展開していくのか

の研究

例 物語の劇化…人物に同化するが,人物間の位置関係等,立体的な視点はない等

○ 同一,もしくは同類の言語活動をどう配列し,指導の重点をどこに置くのかの研究

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例 低学年のスピーチは、中学年では…。

③ 学習指導レベルでの教材研究

いわゆる教材研究。しかし,子どもの反応研究,それをどう組織して活動を組むかが重

要である。

3 補充的な学習,発展的な学習における教材開発及び実践

トピック単元の開発・・・

複数教材の開発・・・・・ 香川型教材に加えてという視点から

既習教材の活用・・・・・

【第1回編集者会議で話し合われたこと及び次回までのレポート】

① 委託された研究テーマは,「確かな学力の定着・向上のための学習指導の工夫・改善」

であり,視点として「学ぶ意欲の向上を図る指導方法の工夫・改善」,「確かな学力の定

着を目指す教材研究の手引きの作成」,「補充的な学習,発展的な学習における教材開発

及び実践」の3つが挙げられていることが確認された。また,それぞれの視点に対する各

編集委員の意見交流を行い,②以下のことについて話し合われた。

② 「確かな学力」育成のための研究の重点化については,以下の通りである。PISA調

査や各種学習状況調査の結果からも「読解力」を育成することが最重要課題である。

そこで,国語部会としても「読解力」に重点化を図った研究を行うべきである。ここで

いう読解力とは,単なる入力(インプット)において働く力だけではなく,例えば,テキ

ストの内容を要約,紹介,再構成したり,自分の知識や経験と関連付け,意味付けたりと

いった出力(アウトプット)を伴う言語行為としても,捉えておく必要がある。したがっ

て,研究の内容についても,領域で言えば「読むこと」,テキストのジャンルで言えば,

説明的(科学的)文章に焦点化することが考えられる。

③ 「思考力」を育成することを重視した研究を展開することも大切である。国語科で育成

したい資質・能力として「思考力や想像力及び言語感覚」を養うことが学習指導要領の目

標として掲げられている。解説書の中では,「思考力」は,「言語を手がかりとしながら

論理的に思考する力」と記されている。そこで,国語科で育成すべき論理的思考力の実体

を明らかにして,②で述べたように「読解力」との関連で研究を進めていくことが求めら

れる。

参考までに・・・

※ 人間において言語と思考は密接に関係している。言語は思考の基盤となる記憶に深い

関係を持つだけでなく,感覚,知覚,注意,想像,意識といった人間の基本的な思考活

動全てにおける重要な構成要素になっている。国語科教育は,言葉の教育であるから,

思考と言葉を一体として扱っている。例えば,思考力と書く能力を明確に区別すること

が難しいように,他の教科のような学力の切り方ができにくいのである。国語科におい

ては,当然,各領域において思考力の育成が重要な課題とされてきた。

④ これからの研究の見通しは,まず,第1年次には,調査研究を主に,第2年次は,教材

研究の手引き,学習指導の工夫,教材開発といったことを中心に進めていきたい。そのた

め,本年度は,②③で述べたように,育成すべき「読解力」と「論理的思考力」について

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の共通理解のもと,児童の実態調査,学習指導の実態の調査等を行う。調査対象について

は,会長,編集委員の学校,附属2校で十分ではないかと考える。場合によっては,香小

研国語部会の研究推進委員にも協力を依頼できる。

そこで,次回の第2回編集委員会には,以下の資料をご用意いただきたい。

テーマ 「国語科で育成する論理的思考力とは―読解力の視点から―」

書式等 A4用紙 縦長 横書き 2ページ以内 12部コピー

内容 原則として自由。

(論理的思考の分析からでも,具体的単元からでも可)

3 第2回編集者会議(平成17年10月1日)

第2回の編集者会議では,前回の話し合いの結果を基に,以下のように,「読解力」に焦点

を当て,国語科で育成すべき「読解力」の実体を明らかにすべく協議を進めていった。

編集委員全てが,以下のテーマに添ってをレポートを作成し,その発表内容を目標,単元,

学習指導・評価の各レベルで整理しながら,今後の研究の方向性を探りながら,今後の研究計

画を立てていった。

国語科で育成すべき「読解力」(論理的に読む力)とは

① 国語科で育成すべき「読解力」とは

宿題の発表をもとに,私たちがこれから育成すべき「読解力」について話し合った。そ

の結果,「テキスト(主には連続型テキスト)を視点を明確にして批判的(良さや問題点

を明らかにする)に読み,それを表現する力」を育てていくことが最重要課題であるとい

うことが導かれた。山下主任指導主事のご指導でも,この方向性については評価をいただ

けた。また,学習指導要領に則り,低・中・高の系統と重点も考慮することが確認された。

② そのための単元編成とは

③ そのための学習指導・評価の在り方は

・ 思考様式(言語形式)について吟味し,一般化し,転移していくまでの単元編成。

・ ボトムアップ的な読み方だけではなく,トップダウン的な読み方の導入。

・ 批判に終わらず,リライト(書き改め,再構成)を取り入れる。

・ 比較,分析,総合,抽象,関係づけ,推理といった概念的思考活動を位置付ける。

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- 1 -

【資料2】

国語力調べ(第二学年用)

調査時間二十分

二年(

)組(

)番

名前

つぎの

四まいの

カードを

じゅんじょよく

ならべかえて、□の中に

1から4の

番ごうを

書きなさい。

なっ

ャボン

玉は

、女

の子よ

りも

んで

まし

た。シ

ボン

には

にじが

つって

ます

。にじ

少し

ずつ

大き

なりました。

女の子が

シャボン玉を

作って

います。

シャボン玉は

少しずつ

大きく

なりました。

5番目の

カードが

あります。あなたなら

どちらの

カードを

えらび

ますか。えらんで

○を

つけなさい。また、えらんだ

わけを

書きなさい。

シャボン玉は、きえました。

シャボン玉は、ふわふわ

とんで

かべに

あたると、ぱちんと

きえて

しまいました。

えらんだ

わけ

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- 2 -

国語力調べ(第四学年用)調査時間二十分

四年(

)組

)番

名前(

次の文章を読んで、後の問いに答えましょう。

これから、六年生を送る会について話し合いたいと思います。どんなこと

をすればいいのか、いろいろ意見を出してください。

Aさん

ぼくは、六年生が喜んでくれるようなプレゼントを作って、わたすのがい

いと思います。わけは、心をこめて手作りをした品物はずっと残るので、ぼ

くたちのこともずっと覚えていてくれるのではないかと思うからです。

Bさん

Aさんが言うようにプレゼントはいい方法ですね。わたしは、六年生との

楽しい思い出ができるように、いっしょにゲームをするのがいいと思います。

各学年で楽しいゲームを考えると六年生も喜んでくれると思います。

Cさん

なるほど、ゲームは楽しいと思いますが、大ぜいでやるとぐちゃぐちゃに

なり、さわがしくなるばかりです。だから、あまりよくないと思います。で

も、楽しそうだから、やっぱりゲームでもいいのかな。

ゲームをするということに意見が集中していますが、ゲームは取り入れる

ということでいいですか。

Dさん

ぼくは、全校合唱をしたらいいと思います。それは、全校生でいっしょに

歌を歌う機会は今回で最後になると思うので、とてもいい思い出になると思

うからです。

Eさん

ゲームのことにもどりますが、わたしは、六年生が楽しめるゲームをする

ことはとてもいい考えだと思います。例えば、じゃんけん列車は、みんなが

楽しめていいのではないでしょうか。

この話を読んで、あなたはCさん、Dさんの発言の仕方について、どう思い

ますか。くわしく書きなさい。

発言者

さん

さん

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- 3 -

国語力調べ(第六学年用)

調査時間二十分

六年(

)組

)番

名前

「ボランティア活動に取り組もう」というテーマで

総合的な学習に取り組んでいます。

次の資料をもとに、下の問いに答えなさい。

資料①

まゆみさんからの手紙

資料②

まゆみさんの一日の生活

資料③

まゆみさんの生活の様子

起きる・着替え7:00

朝 食8:00

洗たく9:00

10:00仕 事

11:00

12:00昼 食

13:00そうじ

14:00買い物

15:00洗たく物の取り入れ

16:00

17:00夕 食

18:00

ボランティアが必要な時間

こんにちは

先日は、大原小学校にうかがい、六年生のみなさん

に、「障害を乗りこえて」というテーマでお話をしまし

た。みなさんが真けんに聞いてくださり、とてもうれ

しかったです。

そのときに、みなさんから、ボランティア活動の申

し出があり、どんなことをお願いすればよいのかを考

えてみました。

わたしは、お話ししたように、足が不自由で自分の

力でできることが限られています。食事の準備や片付

けをしたり、買い物をしたりすることなどができませ

ん。そ

こで、もし手助けをしていただけるのでしたら、

都合のよいときにお願いしたいと思います。

みなさんが、わたしへのボランティア活動をとおし

て、障害のある人に対する理解を深め、自分からすす

んでかかわろうとする気持ちをもってくださることを

願っています。

さようなら

平成十八年二月十二日

香川

まゆみ

大原小学校

六年生のみなさま

まゆみさんが、ボランティア活動をお願いしようと

思った理由を書きなさい。

まゆみさんが手助けを必要としていることを書きな

さい。

写真(資料③)をいっしょに送ったまゆみさんが伝

えたかったことを書きなさい。

資料①、②、③をもとに、まゆみさんに返事を書き

なさい。(本文のみでかまいません。)

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- 4 -

国語力調べ(全学年共通)

調査時間二十分

)年(

)組(

)番

名前

つぎの

二つの

文しょうを

読んで、後の

といに

答えなさい。

【さとしさんが

書いた

文しょう】

まず、

ホットケーキの

こなと、たまごを

一こと、牛にゅうを

入れ

よく

かきまぜて

生地を

作ります。

その前に、フライパンを

あたためて

おきます。

つぎに、フライパンに

あぶらを

ひいて

生地を

丸い形に

ながし

こみ、プツプツと、あわが

生地の上に

できたら

うらがえして、ふっ

くらと

ふくらんだら

火を

とめます。

さい後に、おさらに

のせて、はちみつを

かけたら

ホットケーキの

でき上がりです。

【ゆり子さんが

書いた

文しょう】

【ホットケーキの

作り方】

まず、フライパンを

あたためて

おきます。

つぎに、

ホットケーキの

こなと、たまごを

一こと、牛にゅうを

れて

よく

かきまぜて

生地を

作ります。

そして、フライパンに

あぶらを

ひいて

生地を

丸い形に

ながし

こみます。プツプツと、あわが

生地の上に

できたら

うらがえします。

ふっくらと

ふくらんだら

火を

とめます。

さい後に、おさらに

のせて、はちみつを

かけたら

でき上がりです。

さとしさんと、ゆり子さんの

どちらの

書き方が

分かりやすいですか。

さん

そう

考えた

わけを

書きなさい。

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- 5 -

国語力調べ(第二学年用)

調査時間二十分

二年(

)組(

)番

名前

つぎの

四まいの

カードを

じゅんじょよく

ならべかえて、□の中に

1から4の

番ごうを

書きなさい。

期待する解答

大き

シャ

ボン

玉は、

女の

子より

高く

とん

いき

まし

た。

ャボ

玉に

じが

うつ

って

いま

す。

にじ

しず

なりました。

女の子が

シャボン玉を

作って

います。

シャボン玉は

少しずつ

大きく

なりました。

順序を入れかえて、効果的な表現をすることはよくある。しかし、低学年では、時

間や物事の順序にしたがって捉えていくことを学習している。したがって、この設問

について

、「シャボン玉」が、徐々に大き

くなる過程にしたがって

番号をうつこと

を期待している。

女の子が

シャボン玉を

作って

います。

何について述べているかをまず最初に書く必要性から、この文が最初になることを

期待する。

シャボン玉は

少しずつ

大きく

なりました。

シャボン玉には

にじが

うつって

います。にじも

少しずつ

大きくなりました。

ちらもシャボン玉が大き

くなって

いる過程について

述べて

いる。しかし

、「にじ

も」という表現に着目すれば、この順序にすることが期待される。

大きく

なった

シャボン玉は、女の子よりも

高く

とんで

いきました。

今回の調査で期待する解答を示した子どもの割合

%08

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- 6 -

5番目の

カードが

あります。あなたなら

どちらの

カードを

えらび

ますか。えらんで

○を

つけなさい。また、えらんだ

わけを

書きなさい。

シャボン玉は、きえました。

シャボン玉は、ふわふわ

とんで

かべに

あたると、ぱちんと

きえて

しまいました。

えらんだ

わけ

解答類型

%51

期待する解答例・・・A

ふわふわという言葉から、どのように飛んでいったのかがよく分かるから。

ぱちんとという言葉から、どんな様子で割れたのかが分かるから。

かべにあたるとという言葉から、なぜ割れたのかがよく分かるから。等

様子を表す言葉または、なぜ割れたのかという原因を説明していることに着目し、

選択理由を述べている。

%5

解答例・・・B

詳しいから。よく分かるから。わけがあるから。等

表現の仕方について述べようとはしているが、具体的表現を取りあげて説明をして

いない。

%6

解答例・・・C

シャボン玉が割れるのを見たことがあるから。等

書かれている内容に目が向き、表現の仕方については述べていない。

%3

解答例・・・D

なんとなく。きれいな感じがするから。等

選択理由が明確でない。

無解答

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- 7 -

国語力調べ(第四学年用)調査時間二十分

四年(

)組

)番

名前(

次の文章を読んで、後の問いに答えましょう。

これから、六年生を送る会について話し合いたいと思います。どんなこと

をすればいいのか、いろいろ意見を出してください。

Aさん

ぼくは、六年生が喜んでくれるようなプレゼントを作って、わたすのがい

いと思います。わけは、心をこめて手作りをした品物はずっと残るので、ぼ

くたちのこともずっと覚えていてくれるのではないかと思うからです。

Bさん

Aさんが言うようにプレゼントはいい方法ですね。わたしは、六年生との

楽しい思い出ができるように、いっしょにゲームをするのがいいと思います。

各学年で楽しいゲームを考えると六年生も喜んでくれると思います。

Cさん

なるほど、ゲームは楽しいと思いますが、大ぜいでやるとぐちゃぐちゃに

なり、さわがしくなるばかりです。だから、あまりよくないと思います。で

も、楽しそうだから、やっぱりゲームでもいいのかな。

ゲームをするということに意見が集中していますが、ゲームは取り入れる

ということでいいですか。

Dさん

ぼくは、全校合唱をしたらいいと思います。それは、全校生でいっしょに

歌を歌う機会は今回で最後になると思うので、とてもいい思い出になると思

うからです。

Eさん

ゲームのことにもどりますが、わたしは、六年生が楽しめるゲームをする

ことはとてもいい考えだと思います。例えば、じゃんけん列車は、みんなが

楽しめていいのではないでしょうか。

この話を読んで、あなたはCさん、Dさんの発言の仕方について、どう思い

ますか。くわしく書きなさい。

発言者

自分の立場を明確にせず話を展開している話し方の不備を指摘でき

さん

るかをみる設問。

話し合いの全体像をとらえ、話題から外れていることを指摘できる

さん

かをみる設問。

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- 8 -

設問C

さんについて

今回の調査で期待する解答を示した子どもの割合

期待する解答例

%93

ゲームをすることに賛成なのか、反対なのかがはっきりしないのでよくない。等

結論が述べられていない、または、揺れていることを指摘して批評している。

その他の解答例

%16

前の人の意見を受けて続けているからよい。等

話題にそって述べていることを評価している。

ゲームをすることに賛成なのか、反対なのか。等

理由は述べているが、Cさんの話しぶりについての自分の結論がのべられていない。

わたしは、ゲームは用意が大変なのでだめだと思う。等

自分の意見を述べている。

無解答。

設問D

さんについて

期待する解答例

%42

司会者がゲームについて話すように言っているのに他のことを話しているのでよくな

い。等

話題から外れていることを指摘して批評している。

その他の解答例

%67

最初に結論を言い、その理由を後で話しているからよい。等

話題ではなく、意見の述べ方のみを評価している。

六年生のことをよく考えた意見でよい。等

話しぶりではなく、内容についての評価をしている。

わたしは、ゲームの方がみんなが楽しめていいと思う。等

自分の意見を述べている。

無解答。

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- 9 -

国語力調べ(第六学年用)

調査時間二十分

六年(

)組

)番

名前

「ボランティア活動に取り組もう」というテーマで

総合的な学習に取り組んでいます。

次の資料をもとに、下の問いに答えなさい。

資料①

まゆみさんからの手紙

資料②

まゆみさんの一日の生活

資料③

まゆみさんの生活の様子

まゆみさんが、ボランティア活動をお願いしようと

思った理由を書きなさい。

わたしへのボランティア活動をとおして、障害の

ある人に対する理解を深め、自分からすすんでかか

わろうとする気持ちをもってくださることを願って

いるから。

調査対象外の設問

まゆみさんが手助けを必要としていることを書きな

さい。

調査対象の設問

写真(資料③)をいっしょに送ったまゆみさんが伝

えたかったことを書きなさい。

具体的にどんなことに困っているかを知らせたか

ったから。

言葉で説明するより、写真の方が自分のことを伝

えやすいと思ったから。等

調査対象外の設問

資料①、②、③をもとに、まゆみさんに返事を書き

なさい。(本文のみでかまいません。)

まゆみさんからの情報を基にして、自分の考え

や思いが書けていればよい。

調査対象外の設問

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- 10 -

設問二

今回の調査で期待する解答を示した子どもの割合

期待する解答例

%63

「食事の準備や片付け、買い物」「そうじ、洗たく物の取り入れ」を記述。

文章から・・・「食事の準備や片付け、買い物」図から・・・「そうじ、洗たく物の取り入れ」を結び付けて読みと

り記述している。

その他の解答例①

%3

「そうじ、買い物、洗たく物の取り入れ」

図からのみの情報を記述している。

その他の解答例②

%05

「食事の準備や片付け、買い物」

文章からのみの情報を記述している。

その他の解答例③

%11

「朝食、仕事」等。

誤答、または、無解答。

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- 11 -

1 各設問(解答の視点)について

○ 各設問の内容

設問1・・・書かれている内容のタイトル,ラベリングがあること

設問2・・・ホットケーキ作りの順序と記述の順序の整合性

設問3・・・1文1内容の簡潔な表記

○ 完全解答・・・各設問において上記設問内容(言語形式)の違いを指摘した上で,

その読み手に対する効果を記述している。

○ 誤答1・・・・各設問において,上記設問内容(言語形式)の違いを指摘するにと

どまっている。

○ 無回答・・・・各設問において,上記設問内容(言語形式)の違いもふれていない。

2 各設問における正答率(ここでは期待する解答という意味で使用)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1 2 3

設問

6年

無回答率

誤答1率

正答率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1 2 3

設問

全学年

無回答率

誤答1率

正答率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1 2 3

設問

各設問の正答率 4年

無回答率

誤答1率

正答率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1 2 3

設問

2年

無回答率

誤答1率

正答率

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- 12 -

3 全問正答率(ここでは期待する解答という意味で使用)

全学年 正答なし 1問正答 全問正答 2問正答

19人 全問正答者数

102人 2問正答者数

359人 1問正答者数

300人 正答なし者数

2.44% 全問正解率

13.08% 2問正解率

46.03% 1問正解率

38.46% 正解なし率

6年

12人

46人

135人

59人

4.76% 5%

18.25% 32.5%

53.57% 45%

23.41% 17.5%

4年

7人

36人

131人

92人

2.63% 0%

13.53% 13.5%

49.25% 54%

34.59% 32.4%

2年

0人

20人

93人

149人

0.00% 2.63%

7.63% 28.95%

35.50% 47.37%

56.87% 21.05%

1

2

3

4

1

2

3

4

1

2

3

4

1

2

3

4

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- 1 -

【資料3】国語科の授業に関するアンケート

男・女 教職経験( )年

1・ 香川型教材をどのように利用して授業を行っています

か。

1 全単元ですべてのシートを使用している 2 単元を選択して使用している

3 単元の中で一部を使用している 4 年間1単元程度すべてのシートを使用している

5 使用していない

2・ 国語科の授業で指導が難しいと感じるのは、次のどの

学習ですか。(複数回答可)

1 スピーチの学習 2 ディベートの学習 3 パネルディスカッションの学習

4 意見文を書く学習 5 感想文を書く学習

6 物語文の学習 7 説明文の学習 8 読書に関する学習

2 敬語など言葉に関する学習 10 漢字の学習 11 書写の学習

12 その他( )

3・ 授業を行う際,何を使って教材研究していますか。使

用頻度の高いもの三つに○をつけてください。

1 香川型教材 2 教科書赤刷り 3 教師用指導書 4 国語の学習

2 県版テスト 6 関連教育書 7 教材と関連のある文献資料

8 他社の教科書 9 その他( )

4・ 1時間の授業の中で書く活動を行っていますか。

1 1時間の中で必ず行っている。 2 毎時間ではないが,行うことが多い。

3 行ったり行わなかったりである。 4 行うことは少ない。

・ 具体的にどのような書く活動を行っていますか。

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- 2 -

5・ 授業以外で、国語科の力を育てるために実践している

ことがありますか。(複数回答可)

1 定期的に漢字テストを行っている 2 朝の時間等で読書タイムを週一回程度は行っている

3 朝の会や国語の授業のはじめ等でスピーチを行っている 4 音読タイムを行っている

5 短作文の時間をとっている

6 その他( )

6・ 読書の時間と国語の時間とを結びつけていますか。

1 全単元で 2 必要な単元で 3 長期休業前の図書紹介で 4 していない

・ 上の問いで2と答えた方にうかがいます。おもにどん

な学習の時に行うことが多いですか。(複数回答可)

1 物語文の学習 2 説明文の学習 3 作文の学習 4 言葉の学習

5 スピーチの学習 6 その他( )

7・ 国語科で学習した内容や力が、他の教科の学習に生き

ていると感じることはありますか。

1 ある 2 ない 3 そんなふうに考えたことはない

・ 上の問いで「1 ある」と答えた方にうかがいます。

具体的にどんな学習場面や生活場面でそれを感じますか。

ご協力ありがとうございました。

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国語科の授業に関するアンケート集計結果 その1

1 香川型教材をどのように利用して授業をおこなっていますか。

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 全単元ですべてのシートを使用 0 0 0 0 1 0 1                   2 単元を選択して使用 7 1 3 11 8 8 383 単元の中で一部を使用 4 1 8 8 14 8 434 年間1単元程度すべてのシートを使用 0 0 0 0 0 0 05 使用していない 11 3 5 11 13 8 51合計 22 5 16 30 36 24 133

 香川型教材の使用状況は、指導に際して必要性を感じる単元、あるいは、単元の中で児童の実態に合わせて、必要なシートだけを使用しているという教員が経験年数の長短を問わず多い。使用していないという教員のほとんどは、1・2年生の担任で香川型教材の回答である。

2 国語科の授業で指導が難しいと感じるのは、次のどの学習ですか。(複数回答可)

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1  スピーチの学習 7 1 7 7 19 4 452  ディベートの学習 10 1 6 8 12 9 463  パネルディスカッションの学習 8 1 6 11 15 13 544  意見文を書く学習 13 0 9 15 17 12 665  感想文を書く学習 5 1 12 12 21 8 596  物語文の学習 8 2 5 8 7 6 367  説明文の学習 2 1 3 4 4 5 198  読書に関する学習 3 1 2 1 2 0 99  敬語などに関する学習 4 0 3 0 4 3 1410 漢字の学習 0 0 1 0 1 0 211 書写の学習 1 0 2 1 0 0 412 その他 0 0 0 1 1 0 2合計 61 8 56 68 103 60 356

 領域ごとにみると、「書くこと」の学習を難しいと感じている意見が多い。また、「パネル ディスカッション」の指導の困難さを感じていることと併せて、自分の考えを表現する学習や評価に時間がかかったり、評価の難しい学習指導に抵抗感のある教員が多い。

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その23 授業を行う際、何を使って教材研究していますか。使用頻度の高いもの三つに○を  つけてください。

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 香川型教材 3 0 5 2 4 5 192 教科書赤刷り 20 3 13 25 28 19 1083 教師用指導書 22 4 18 26 30 24 1244 国語の学習 9 3 13 12 29 13 795 県版テスト 4 0 1 3 2 0 106 関連教育書  5 0 1 8 5 5 247 教材と関連のある文献資料 4 1 2 7 12 5 318 他社の教科書 8 0 0 0 0 2 109 その他 1 0 1 1 0 1 4合計 76 11 54 84 110 74 409

 教材研究の中心は、経験の長短に関係なく、「教科書赤刷り」・「教師用指導書」・「国語の学習」が中心のようである。教材と関連のある資料をインターネットを利用して使っている教員も多い。

4 1時間の授業の中で書く活動を行っていますか。

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 1時間の中で必ず行っている。 9 1 9 17 18 10 642 毎時間ではないが、行うことが多い。 10 2 9 11 16 13 613 行ったり行わなかったりである。 3 0 2 2 2 1 104 行うことは少ない。 0 1 0 0 0 0 1合計 22 4 20 30 36 24 136

 書く活動を必ず1時間の学習の中に入れている。あるいは行うことが多いと答えた割合は9割を越える。教員が、様々なねらいをもって書く活動を授業中に位置づけていることがうかがいしれる。

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その3

4 具体的にどのような書く活動を行っていますか。

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1  感想を書く 7 0 3 10 23 24 672  自分の考えを書く  6 1 7 10 2 2 283  要点(見出し)を書く  1 0 4 1 7 2 154  めあて・課題を書く 1 1 2 1 5 2 125  学習のまとめ 3 1 0 9 4 7 246  読みとったことをまとめる 2 1 9 7 2 0 217  ふり返り 0 0 2 0 1 1 48  漢字・語句 4 0 5 11 8 7 359  板書の利用 1 1 2 6 3 1 1410 視写・聴写 1 1 4 5 3 2 1611 友達の意見のメモ 0 0 0 0 1 0 112 単元の表現物 1 0 0 0 2 0 313 国語の学習 0 0 0 2 3 0 5合計 27 6 38 62 64 48 245

 感想や意見を書かせたり、学習のまとめとして書く活動を入れたりすることが多いようである。感想や考えを自分の言葉で書かせることは大切だという意識をもっている教員が多くいることに起因しているのではないか。しかし、状況調査等によると、この部分の無解答児童が多くいることを考えると、書く活動を通して学んだことは定着しにくく、今後の授業研究の対象となるところであろう。 その他にも、漢字のミニテスト、視写、聴写を毎時間のはじめに行っているという回答もあり、国語科の基礎の部分の指導に位置づけて、書く活動を実施している先生方も少なくない。

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その4

5 授業以外で、国語科の力を育てるために実践していることがありますか。(複数回答可)

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 漢字テスト 17 2 14 23 30 18 1042 読書タイム 21 4 14 26 29 23 1173 スピーチタイム 12 4 8 15 21 11 714 音読タイム 7 2 6 13 13 11 525 短作文活動 9 1 2 7 13 6 386 その他 3 0 2 3 5 6 19合計 69 13 46 87 111 75 401

その他の意見 スキルを鍛えるワークシート 日頃の話し言葉 日記 日記アニマシオン 日記 言語に関するミニゲーム

三行日記 新聞の感想 テレビニュースについてのスピーチ

クラスでドリル作成

 漢字テストと読書タイムは、ほとんどの先生方によって実践されている取り組みであることが分かった。特に読書タイムについては、「ただ楽しむために読む」時間も大切であるが、国語科の授業の中に「読書タイム」から学んだことを組み込むことで、生きて働く「読書力」を養うことが できるのではないか。そういう方向性を探ることも研究の対象となろう。 そういう意味で、次の「6」の質問を行った。

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その56 読書の時間と国語の授業とを結びつけていますか。

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 全単元で 1 0 0 1 1 0 32 必要な単元で 16 3 16 24 33 19 1113 長期休業前の図書紹介で 4 0 3 4 3 8 224 していない 3 1 1 1 2 1 9合計 24 4 20 30 39 28 145

6 上の問いで2と答えた方にうかがいます。おもにどんな学習の時に行うことが多いですか。(複数回答可)

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 物語文の学習 14 3 16 25 29 18 1052 説明文の学習 6 2 12 13 18 11 623 作文の学習 0 0 1 2 4 0 74 言葉の学習 0 0 0 0 2 0 25 スピーチの学習 0 0 0 2 0 2 46 その他 0 0 0 0 2 1 3合計 20 5 29 42 55 32 183

その他の意見 読書の窓 国語辞典本の帯

 「読書の時間」を国語科の授業とを何らかの形で結びつけているという回答が多かった。  特に、「必要な単元で」結びつけている割合がたいへん高くなっている。 その中をみてみると、やはり「読むこと」の学習と関連させている先生方が多いようである。さらにみると、物語文の学習と関連させたという回答が説明文のそれを上回っている。教材と同じ作者、同じテーマの本を読み、さらに学習を深めたり、テーマを決めて文章を書くための参考文献として読んだ内容を引用したりという関連のさせ方が中心である。 今後、学年の系統を考慮した「読書の時間」を組み込んだ単元の構想や「書くこと」「言語事項」との関連についても検討課題である。

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その6

7 国語で学習した内容や力が、他の教科の学習に生きていると感じることはありますか。

経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計1 ある 18 3 18 28 32 23 1222 ない 0 0 0 1 2 0 33 そんなふうに考えたことはない 5 0 0 1 2 1 9合計 23 3 18 30 36 24 134

上の問いで「ある」と答えた方は具体的にどんな学習場面や生活場面でそれを感じますか。

各教科経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計 社 会 資料の読み取り 2 2

まとめ・話し合い 5 1 5 3 14 算 数 文章題の読み取り 4 4 2 2 12

問題づくり 1 1 理 科 結果のまとめ 1 1 生 活 インタビュー 1 1

発表の仕方 1 4 5表現物 2 1 1 1 5自分の考え 1 1 2情報選択・活用 1 1

 総 合 表現 1 1 2 4 8 16読み取り 2 4 6

 学 活 ディベート 2 3 5合計 10 0 13 15 21 12 71

学習全般経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計読み取りの力 2 4 6交流・表現する力 1 5 4 10作文する力 2 1 3 2 8

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音読 1 2 2 5 その7順序立てて話す 6 1 7場に応じた言葉づかい 2 2 4スピーチする力 1 3 4課題文の読み取り 6 1 7分かりやすく発表する 3 1 1 5学習の基礎は読む力と聞く力 2 2 1 5集会活動で 2 1 3学習発表会で 1 2 3文字の丁寧さ 2 2合計 7 2 6 19 15 20 69

生活の中で経験年数 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~ 合計日記 2 2 1 5手紙 3 3コミュニケーション 3 4 3 10漢字が正しく使える 2 2自分の意見を述べる 5 5全校放送 1 1 2合計 0 0 2 8 12 5 27

 国語科が言葉の学習である以上、どの教科にも国語科で学んだことがいかされていると感じることはあるはずである。集計結果をみても各教科に関すること、学習全般、生活の中、など、多岐に渡っている。すべての学習の基礎となる国語力という立場に立つと、ここに挙げられている項目の内実を分析したうえで、国語科の学習で受け持たなければならない事項を明らかにしていく必要がある。

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- 1 -

【資料4】

1 1年生における実践

(1)単元名 じゃんけん

-挿絵を有効的に用いながら読み,読み取ったことを実の場で表現する力の育成-

(2)単元の構想にあたってー国語部会研究主題との関連ー

①単元のねらい

本単元の主教材「じゃんけん」は児童にとって身近な遊びである「じゃんけん」の勝ち負けの

仕組みについて説明した文章である。文章の理解を助け,イメージを喚起させるような挿絵も用

いられており,有効的に扱っていける。特にじゃんけんの勝ち負けの仕組みを説明する部分では

擬人化された石・はさみ・紙が勝ち負けを示しており,今にも声を発しそうな表情もしている。

挿絵の石・はさみ・紙の会話を引き出しながら,勝ち負けをまとめていくことで理解を深くする

こともできるのではないだろうか。そして,じゃんけんの勝ち負けの仕組みが一目で分かるよう

な図も,学習のステップに合わせて三例提示されている。図と図の間に矢印や○×などを書き入

れて, 勝ち負けを確認することは順序よく説明していくための大切な助けとなる。一方,文章は段落のまとまりがはっきりしており,問題提示(問いかけ)→説明(勝ち負けの

仕組み)→まとめ(答え)というように,文章全体の構造が分かりやすくなっている。じゃんけ

んの勝ち負けの仕組みを説明する部分では,勝つ理由を表す文末表現はそれぞれ異なっているが,

「・・・からです。」に統一して書き直すことも可能である。この表現は本単元で身に付けた後,実際の学習や生活の場で使っていけるようにしたいものである。また,この教材文のように,順

序よく説明することは読み手(聞き手)によく分かる説明の仕方であることにも気付かせ,活用

できるようにさせたいと考えた。そこでサブタイトルとして「読み取ったことを実の場で表現す

る力の育成」を位置づけた。

「読み取ったことを実の場で表現する力」とは

国語力の概念として第一に定義したコミュニケーションの能力を保障する言語能力は,言語活動の側面

から大別すれば,表現力と読解力に分けられる。従来,読解力が作品の狭隘で表面的な解釈にとどまり,

作品を生かすことも読者個々の考えを育成することにも億劫であったことが,国語科以外の各教科等にあ

まり役立たず,ひいては実社会や実生活に生かせていないことが PISA調査で明らかになった。「読解力向上に関する指導資料」で述べている次のような改善点を十分理解し,教育課程に位置付けることが重要であ

ろう。

①【目的に応じた解釈力の育成】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

②【関連づけて解釈する能力の育成】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

③【実用的・現実的活用の言語経験】

より明確に,かつ必要な範疇で関連する事項を抽出したり,意味付けたりすることが可能となる

ように,取り出した知識や情報を,自らの目的に沿った言語体験をする,実用的・現実的言語経験

を重ねることが必要である。

④【条件に対応した読むことの能力の育成】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

⑤【多用なテキストに即応した読む能力の育成】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

⑥【評価しながら読む能力の育成】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

⑦【自分の感じたことや考えたことを簡潔に記述する能力の育成】・・・・・・・・・・・・詳細略

(実社会や実生活とのかかわりを大切にした国語科の授業つくり」井上一郎

『初等教育資料』2006年7月号 P46~ P57 一部引用

本単元では,まず教材文を読み日本のじゃんけんの勝ち負けの仕組みをまとめる。次にその文

型を生かして,ある程度情報のあるインドネシアのじゃんけんの仕組みを,挿絵を読み取りなが

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- 2 -

ら文章にまとめる。最後に,自分で作ったり,調べたりしたじゃんけんの仕組みをまとめるとい

う指導過程をとる。

②低学年で求められる説明的文章の読解力

低学年の児童は,一人一人言葉の力の違いはあるものの,学習に対する関心は高く,意欲的に

取り組む者が多い。このような児童に学習の楽しさを味わわつつ,基本的な学習態度や学習の仕

方を身に付けていくことが低学年,特に1年生でまず求められる。

また,読解力においても基盤作りの学年である。評価を加えながら読んだり,自分なりの考え

を徐々に確立したりするために,1年生でも感想や意見を持ちながら読んだり,読書と関連させ

て読んだり,読むことと書くことを関連させたりするなどの学習活動をとりたい。

このためにも「読書によって調べ読みする」「順序をおさえ内容を叙述に即して読み取る」「写

真や挿絵などと文章とを対比して読む」「問題とその答えに着目しながら読む」「感想や意見をも

ちながら読む」「読んだ内容を自分なりにまとめる」「語や文のまとまりや内容を考えながら音読

する」などの言語活動をどのように設定し,展開していくかを考えていく必要がある。

(3)単元の目標

関心・意欲・態度 話す・聞く 書く 読む

じゃんけんに興味 調べたり作ったりし 調べたり作ったりし 教材文からじゃん

を持って進んで調べ たじゃんけんの仕組み たじゃんけんについて けんの仕組みを読み

たり作ったり,話し や勝ち負けの理由を考 勝ち負けの関係と理由 取る。

合ったりする。 え話し合う。 を文型に沿って分かり

やすく書く。

(4)単元の構成

学習内容 学習のねらい 教師の支援

第一次 今までにじゃんけん じゃんけんに興味をも 挿絵を使いながらどのよ

(2時間) をした経験を話し合い, ち教材文を読む。 うな内容なのかを把握しや

教材文を通読する。 すくする。

学習課題を設定し, 学習の見通しを立て, 実際にじゃんけんを作る

学習計画を立てる。 じゃんけんについて調べ ことでじゃんけんに対する

たり,作ったりすること 興味を喚起する。

に興味をもつ。

第二次 既習の教材文と比べ 内容の違いを考えなが 既習の「いろいろなふね」

(3時間) ながら全文をはじめ・ ら,全文を三つに分ける。 と比べることで,構成をと

なか・おわりに分ける。 らえやすくする。

じゃんけんの仕組み 問いかけの文の特徴を 「どれ」の部分を「グー」

に対する問いかけの内 つかみ,内容を読み取る。 「チョキ」「パー」に置き

容を読み取る。 換えて読ませることで,理

解しやすくする。

「グー」「チョキ」「パ それぞれが何を表して 何を表し,どういう仕組

ー」が表すものをそれ いるのか,どういう仕組 みなのかを,話し合いにも

ぞれとらえ,じゃんけ みで勝ち負けが決まるの 使えるような形式のワーク

んの仕組みを読み取る。 かを読み取る。 シートにまとめさせる。

ワークシート①

第三次 てびきをもとにじゃ 相手に分かりやすく話 話し方のきまりを常掲す

(3時間) んけんの勝ち負けの関 したり,分からないとこ るなどして,それに則って

係やその理由について ろを質問したりする。 話し合わせる。

話し合う。

インドネシアのじゃ 勝ち負けの関係を「・ 日本のじゃんけんをまと

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- 3 -

んけんについて勝ち負 ・・からです。」という理 めた時と同じようなワーク

けの関係を読み取り, 由を述べる文型を使って シートを使用するが,「・

その理由をまとめる。 まとめる。 ・・からです。」という文

型は既習事項なので,ワー

クシート②には自分で書か

せるようにする。

ワークシート②

インドネシアのじゃ 自分で考えたきまりを 自分の考えと比べながら

んけんの勝ち負けを聞 話したり聞いたりするこ 友達の考えを聞くようにさ

き合ったり,他のじゃ とで,友達の考えにふれ せる。

んけんの仕組みを作っ る。 読書体験と結び付けるこ

たりする。 三すくみの関係の作り とで三すくみの関係が作れ

本時 方を知る。 ることにも気付かせる。

第四次 じゃんけんについて 三すくみになる関係を 調べ活動を取り入れたり

(3時間) 調べたり,自分で作っ 作ったり,じゃんけんで 読書体験を生かしたりしな

たりする。 使う物を連想できるよう がら,自分のじゃんけんを

な手や指の形を考えたり 作らせる。

する。

文型にならって,じ 勝ち負けの関係を図に 今までの学習に使った形

ゃんけんの勝ち負けの まとめたり,勝ち負けの 式でまとめさせることで,

関係を文章に書く。 理由を書いたりする。 理由の述べ方を一層定着さ

せる。 ワークシート③

第五次 じゃんけんを紹介す どうやって紹介すれば 話し方に気を付けて,練

(4時間) る方法を考えて,紹介 分かりやすいかを考えて, 習させる。

の練習をする。 紹介の練習をする。

おもしろじゃんけん 作ったり調べたりした 実際にじゃんけんをしな

大会を開く。 じゃんけんを分かりやす がら紹介し,分からないと

く説明する。 ころは質問するように助言

する。

学習のまとめをする。 自分が面白いと思った じゃんけんに対するまと

じゃんけんのことをノー めだけでなく,説明的文章

トにまとめる。 の読み方についても書ける

児童にはそれもまとめさせ

たい。

(5)本時の学習指導

①目標 自分で考えたじゃんけんのきまりを話したり,聞いたりすることで,友達の考えにふれ

ることができる。

②学習指導過程

学習活動 児童の意識の流れ 教師の支援

1 前時までの学 インドネシアのじゃんけんの勝ち負けを考えたよ

習を振り返り, みんなはどんなわけにしたのかな。

本時の学習課題

をつかむ。 人 自分の考えた勝ち負けの

きまりを説明しよう。 ・話す側には「声の大きさ・

象 あり 口の形・話す速さ・最後まで

2 発表をする。 しっかり話す」などの話し方

(1)ペアで 話す側 聞く側 のポイントを,聞く側には「大

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- 4 -

「人差し指」と「小指」と「親 事なことを落とさずに聞く」

指」でじゃんけんをします。 というポイントがあることを

「人差し指」は「小指」に勝 なぜ,「人差し指」は 示す。

ちます。 「小指」に勝つので ・「人→あり」「象→人」の関

すか。 係は考えやすいが,「あり→

「人」は( )からです。 象」の考えは飛躍があり難し

いと思われる。 聞く際には,

「小指」は「親指」に勝ちま なぜ,「小指」は「親 特にそのわけを注意して聞き

す。 指」に勝つのですか。 感想を言うようにさせる。

「あり」は( )からです。 評 友達の考えのよさに気付

くことができたか。 自分と

「親指」は「人差し指」に勝 なぜ,「親指」は「人 友達の意見の違いに気付く

ちます。 差し指」に勝つので ことができたか。(交流中・

すか。 ワーク シート)

「象」は( )からです。 ・「あり→象」の関係について,

友達の面白い考えを理由を付

わたしの考えたきまりは,ど ○○さんのきまりは, けて全体の場で発表させる。

うですか。 □□ですね。 また,友達に面白いと言われ

(2)全体で たものも発表させる。直接交

流していない友達の考えを聞

ありが象に勝つわけは,みんないろいろ違っていたよ くことで,発想を広げさせた

自分のとも違っていておもしろかったよ。 い。

・ペープサートを使いながら

3 じゃんけんを 自分でもじゃんけんが作れるかな。どうやって作ると 読み聞かせをすることで,視

作る際の仕組み いいのかな。 覚的に登場人物を意識させ,

を考える。 「三すくみ」の関係を作りや

A すくする。

教師の読み聞かせ ・教材文の「石・はさみ・紙」

「かにむかし」 やインドネシアの「人・あり

C B (ペープサート ・象」の図はどのように作ら

れているかを確認するために

も「A は B に勝つ」「B は Cさる グー に勝つ」「C は A に勝つ」関

係をみんなの意見で作ってい

パー チョキ く。このステップを入れるこ

子がに 母がに とで,次時の活動である,自

分で作る・他の国のじゃんけ

お話に出てくる人や物を使って,じゃんけんの仕組みを んを調べる・お話から作ると

作れそうだね。 いう3コースに分かれての活

動をスムーズなものにしてい

4 本時の学習の きたい。

まとめを行い, 自分でもじゃんけんを考えて,勝ち負けの理由を ・学習の振り返りを行い,本時

次時の確認をす 説明しよう。(自分で作るコース・調べるコース・ の学習の伸びを自覚させた

る。 お話コース) い。

③評価 わけ(理由)を述べる表現に注意しながら,友達に話したり聞いたりすることができ

たか。

→ 前時

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インドネシアのじゃんけんの仕組みを文章と図から読み取らせる。勝ち負けの理由に

ついては書かれていないので,教材文の文型をモデルにして,ワークシートに考えを書

かせておく。

→ 「話すときの『あいうえお』」「聞くときの『「あいうえお』」などまとめておくと意識し

やすい。( あいてのほうをむいて・いいしせいで・うなずきながら・・・)

→ 友達の考えを聞いて発表する際も理由の述べ方「・・・からです。」を自然に使えるよ

うにしたい。

→ すぐに調べたり,作ったりせず読書体験と結ぶ工夫をしている。お話には三すくみを

作れるものが他にもある。(「北風と太陽」「ねずみの嫁入り」など)読解力向上プログ

ラムにも読書活動の充実は謳われており,単元の中に意図して設定したものである。

(6)本単元で使用した「学習カード」(ワークシート)

参考文献

読解力を高める説明的文章の指導 低学年 岸本修二編 東洋館出版社

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じゃんけん

一―

で、じゃんけんを

します。

かちます。

なぜ、

かつのですか。

からです。

チョキの絵

はさみの

かちます。

グーの絵

石の絵

からです。

紙の絵

パーの絵

かちます。

からです。

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- 7 -

じゃんけん

一―

で、じゃんけんを

します。

かちます。

なぜ、

かつのですか。

小指の絵

ありの絵

人差し指の絵

かちます。

人の絵

からです。

象の絵

親指の絵

かちます。

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じゃんけん③

一―

で、じゃんけんを

します。

かちます。

なぜ、

かつのですか。

かちます。

かちます。

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2 2年生における実践

(1) 単元名 ビーバー絵本を作ろう「ビーバーの大工事」

― ―

(2) 単元の構想に当たって― ―

本単元は,①教材分析,②児童の実態を踏まえ育てたい力を次のように定め,③読解力向上の指

導のねらいと照合し,学習指導の工夫・改善を提案,実践したものである。

〈本単元の主張点〉

・ 形式段落を整理しまとめながら絵本の目次を考えたり,主述の関係をとらえ 児

教 ながら箇条書きに整理したりすることで,物事の手順を正しく読み取る論理的

思考力を育てる。 童

材 ・ 絵本づくり(言葉と絵で読み取ったことを表現する)を単元の中心となる学

習活動とすることで,①読む目的,表現する(クイズ作り)目的を明確にし,目 の

分 的に応じて理解したり,自分の考えを表現する力を育てる,②非言語情報を言

語化したり統制したりする場を必然的に設け,絵や写真を言語化して表現する 実

析 力や言語と写真や絵とを結びつけて読む力,写真・絵などを効果的に活用する

力を育てる。 態

〈読解力向上の指導のねらい『読解力向上に関する指導』(文部科学省)p15~ 18参照〉ア(ア) 目的に応じて理解し,解決する能力の育成

小学校低学年の段階から何のためにそのテキストを読むのか,読むことによってどうい

うことを目指すのかといった明確な目的を設定し,その解決のためにテキストを読む活動

に慣れさせる。

(ウ) 課題に即応した読む能力の育成

一つの単元(教材)が終了したときどのような能力を習得したのかを学習者が明確に自覚

できるようにする。

イ(ア) テキストを利用して自分の考えを表現する能力の育成

ウ(ア) 多様なテキストに対応した読む能力の育成

指導目標や学習課題に必然的に関わったり目的に応じたりするパンフレットや図表など

も含めた多様なテキストとの出会いを大切にする。

① 教材分析との関連

本単元は,絵本づくりという表現活動を核に,まず前半で「ビーバーの大工事」の事柄の順序

に注意した正確な読み取りを,後半では読むことによって,さらに興味・関心を持った事柄につ

いて情報を収集・選択し,絵本の関連ページにクイズコーナーとしてつけ加え,交流し合うこと

を目標とした「読むこと」「書くこと」の関連単元である。

教材文「ビーバーの大工事」は,アメリカビーバーを素材に,その生態をビーバーの行動を主

体とした「中心的な説明」とビーバーの体の構造や機能などの事柄を説明した「補足的な説明」

の組み合わせで表現された説明文である。ビーバーの仕事の手順に従って「木を切り倒し運ぶビ

ーバー」「ダムをつくるビーバー」「すをつくるビーバー」の三つの部分で構成されており,その

うえ,それぞれの部分の中で「木の運び方」「ダムのつくり方」「すのつくり方」と順序が述べら

れ,くり返し順序や事柄のまとまりを考えながら読み取ることができる。また,効果的な擬声語

や臨場感あふれる修飾語,具体的な数値表現,比喩表現を用いながら平易で無駄のない簡潔な表

現で書かれているうえ,叙述を補う写真があるため,子ども達がイメージをもって読むのにそう

困難はないだろう。情報の把握の観点として,ビーバーの「仕事の手順」をとらえること,ビー

バーの「体の特徴の表し方」,に注目して内容を読むこと,ビーバーの「大工事を行うわけ」を

考えることを押さえつつ,一人ひとりの読みのイメージを交流し,読み深めることを楽しむこと

も大切にしながら「説明文の読み取り方」を意識させるようにした。次に,読みとった内容やも

っと知りたいことを調べてクイズ形式に表して伝える後半では,読み取りで知り得た情報や各自

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の新たな疑問に基づいて調べた情報を,クイズという形で再構成することによって情報を伝える

力を育てる場とした。

② 児童の実態との関連

児童は,6月に「たんぽぽ」で,まとまりや順序に気をつけて,たんぽぽの仕組みや花の開閉

の秘密,なかまの増やし方など,説明されている事柄を読み取る学習を経験している。そして,

①形式段落の大体をとらえ,文章全体の構成(意味段落)に気づく力,②時・花の様子を書き出

したカードを操作したり動作化→絵で表現したりしながら順序を正しく読みとる力,③友だちと

の学び合いを通して,共通点や相違点を見つけ出そうとする力,④言葉と絵をつないで考える力

などを育み,内容を正しく理解したり,説明文を読む時の力として意識したりできるようになっ

てきている。

そこで,本単元では,まず,書かれている事柄の順序に注意して正確に読みとる力を育てる場

を,以下の四つの学習活動の場とし,段階を経ながら確かな力として身につけることができるよ

うにしたいと考えた。

Ⅰ 絵本の目次づくり・・・ビーバーが安全なすを作るまでの全体の順序を読み取る。(目次)

(木を切り倒し川へ運ぶビーバー→ダムをつくるビーバー→すをつくる

ビーバー)

Ⅱ 木を運ぶ様子

Ⅲ ダムをつくる様子 を絵本に表しながら読む。

Ⅳ すをつくる様子 運び方・つくり方など,物事の手順を順序を正しく読み取る。

(箇条書き)

Ⅱ~Ⅳでは,まずⅡで,本文を箇条書きに書き出すことで物事の順序をわかりやすく表す方法

を知り,Ⅲで各々がその方法を使って読み取り,Ⅳで前時までの読み取りを生かして本文では省

略されている順序をリライトすることで読みの確認,評価を行う。このように,三つの学習場面

で段階的に目標を設け,論理的思考力を育みながら,説明文を読む時の力として,子ども達自身

にも自覚させたい。

次に,低学年の発達段階の特性を考慮して順序を追いながら動作化することでビーバーの行動

を具体的にイメージできるようにした。後で挙げた本時の「ダムづくりをするビーバーの様子」

では,ビーバーの動作化に加え,ダムの様子の変化を実感できるように絵や簡易模型に表す体験

活動を通して具体的にイメージできるようにした。ダムづくりの一連の順序は,何度も繰り返さ

れることや家族とともに繰り返されることが新たな気づきとして再発見,再認識できた。

さらに,絵本に載せる写真や絵を考える場を設け,本文と写真とをつないで読むことを繰り返

すことで,写真の効果や役割を考え,非言語からの情報の読みとりに気づき自分の読みを深める

力として身につけることができるようにした。例えば,写真にタイトルを付けたり写真から得た

情報を言語で付け加えたりして絵本のページを作り上げていくのである。このように,写真や絵

は単なるイラストやカットではなく,常に言葉を補ったり新しい情報を得ることのできるものと

して意識できるようにした。本時では,教材文に載せられている写真が「ダムづくりをするビー

バーの様子」を表す一部分であることに気づいたうえで,自分の絵本に載せる写真や絵について

考える場を設定した。教材文に載せられた写真も含めた数枚の写真や絵から理由を明らかにして

選ぶことで,非言語情報を読みとる力だけでなく,自分の読みの根拠に基づいた効果的な写真や

絵の活用を考える力を育てることにもつながると思われる。

③ 「読解力向上の指導のねらい」と学習指導の工夫との関連(単元構成参照)

・ア(ア)明確な目的の設定のために

本単元は,絵本づくりという表現活動を軸に展開する。ビーバーについて正しく分かりやす

く伝えたいという課題意識を明確に持つことで,学習の必然性が生まれ,子ども達は主体的に

読もうとする。さらに,絵本のページに何を書くのか,どんな情報をどう表せばいいのか等読

む目的をはっきり持つことができる。例えば,「ダムをつくるビーバー」のページでは,ダム

のつくり方の手順を,「いつ」「どこ」「だれ」「どうする(材料とすること)」という観点で整

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理することで情報を読み取り(どんな情報を),箇条書きに表すことで分かりやすく伝えるた

めの方法を知る(どう表すか)とともに自分の読み取りを確認できるようにした。

・ア(ウ)学習者がどのような能力を習得したのかを自覚できるために

あとがきを書く場では,読み取りの内容だけでなく表現の工夫も観点に持たせることで,自

分の学習した力を自覚できるようにした。さらに,最終時の絵本の交流の場では,学習の成果

を明示,賞賛することで自らの学びが自覚できるように支援した。

・イ(ア)テキストを利用して

・ウ(ア)多様なテキストを読む経験

(3) 単元の目標

話す・聞く 書く 読む

・ 分かりやすいクイズとする ・ 事柄の順序に注意して箇条 ・ 書かれている事柄の順序に

ため互いのクイズの感想を聞 書きに整理する。 注意して正確に読み取る。

き合う。 ・ 調べたことから取り上げる ・ 叙述にそって具体的に場面

・ 聞き手を意識してクイズを 事柄を選び,わかりやすいク を想像し,イメージ豊かに読

発問したり,友達のクイズに イズにまとめたり解答を書い む。

意欲的に答えたりする。 たりする。 ・ 写真と言葉を結びつけて読

む。

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(4) 単元構成(全19時間)時 学 習 内 容 学習のねらい 教師の支援1 ・ビーバーについて知っている 教材文を通読したり 写真を利用したり児童の既習知

ことを話し合う。 初発の感想を交流した 識を引き出したりしながら,学習第 ・題名から内容を予想する。 りしながら,学習の見 意欲を喚起する。一 ・教材文を通読して,初発の感 通しを持つ。 感想の内容を類別,まとめなが次 想を書く。 (明確な目的の設定) ら話し合いをリードし,明確に課

1 ・初発の感想を話し合い,学習 題意識が持てるようにする。計画(学習課題と方法)を立 文章構成をとらえるてる。 とともに,まとまりご

とに内容をとらえ,小2 ・形式段落のあらましをつかみ, 見出しをつける。 短くまとめた形式段落の内容を

全体を四つのまとまりに分け (テキストの構成理解) (キーワードの取り出し)をもとて小見出しをつけ,ビーバー ビーバーが木をかじって に,大きなまとまり(意味段落)を絵本の目次とする。 倒す様子,切り倒した木を 考えることができるようにする。

運んで泳いでいくビーバー (WS①)・まとまりごとに,ビーバーの の様子,ビーバーがダムを ワークシートを使いながら絵本様子を読み取る。 作る様子,安全な巣を作っ のページのイメージ化を図り,学

第 5 木をかじりたおすビーバー て暮らすビーバーの生活の び方を指導する。 (WS②③)二 木を運ぶビーバー 様子を絵本に表しながら叙 順序をわかりやすく表現するこ次 ダムをつくるビーバー(本時) 述にそって読み取る。 とができる箇条書きについて指導

すをつくるビーバー 順序を表す事柄は箇条書 する。きに整理して書く。 (番号を打つ,一文に一つの事柄,(テキストの理解解釈) 常体表記等)(テキストを利用した表現力) 「たんぽぽ」の学習を想起させ,(多様なテキストに対応す 写真や絵の活用の仕方を助言する読解力) る。

1 ・「ビーバーの大工事」に対し 読みとったことと自分の 後書きの観点を明らかにしておて, 思ったことや考えたこと 考えをつないで様々な知恵 く。など を発表する。 を持つビーバーについての 説明文の内容について・発表をもとに,絵本の後書き 感想や絵本のくふう点や良 絵本のくふう点良さについてを書く。 さについて書く。

3 ・楽しく伝えるための工夫とし クイズ作りに興味を持 教科書の例を参考にして,クイて,クイズ作りを提案し,ク ち, ズの書き方(○×問題,三択問題,イズの作り方を学ぶ。 教材文からクイズに取り上 穴埋め問題等)や出題の仕方を確

・教材文をもとに「ビーバーの げる事柄を積極的に調べた かめる。第 ひみつ」クイズを作成する。 り探したりする。 クイズの問題文が教材文の叙述三 ・グループでクイズを読み合っ 文章から読みとったこと に沿っているか,問題と答えが呼次 て,分かりやすい表現になっ をクイズの問題と答えにし 応しているか,答えやすいクイズ

ているかを教え合う。 て書く。 形式を選んでいるか等について話聞く人にとって,分かり し合えるように話し合いの観点を

やすいクイズになっている 示す。か話し合う。(テキストを利用した表現力)

5 ・教材文に書かれていないビー 調べる目的を明確に持つ。 情報収集の手段について具体的バーについて知りたいことを 本やビデオ・インターネ に指導する。発表し合う。 ットなどから,クイズに取 収集した情報から友達に伝えた

・情報を得るための方法として, り上げる事柄を積極的に調 い事柄を選択し,前次の学習方法本やビデオ・インターネット べたり探したりする。 を活用してクイズをつくることがなどがあることを知る。 クイズを作るための材料 できるようにする。

第 ・興味のある事や知りたい事に として調べた事を書き出し四 関する情報を探して調べる。 それをもとにクイズの問題次 ・調べて分かったことを書き出す。 と答えを考えて分かりやす

・調べたことをもとにクイズを く書く。作成する。 聞き手を意識してクイズ

・クイズが分かりやすい表現に を発問したり,友だちのクなっているか見直す。 イズに意欲的に答えたりす

・できあがったクイズを絵本の目次 る。と関連させてクイズのページとして付け加え発表し合う。

第 1 ・絵本を仕上げて交流し合い, 学習の振り返りをして感 学習の成果を明示,賞賛するこ五 学習活動を振り返る。 想をもつことができる。 とで児童の意欲を喚起したり学習次 の充実感を得,学びの自覚ができ

るようにしたりする。

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(5) 本時の学習指導①目標 ダムづくりの様子を絵本(文や言葉と絵)に表すことにより,ダムづくりの手順を正しく読み取り,文や言葉と絵をつないで様子を読み深めることができる。②本時の学習指導過程

学 習 活 動 予 想 さ れ る 児 童 の 意 識 の 流 れ 教 師 の 支 援

いよいよ大工事の一つ,ダムづくりの場面だ。 高さ2 m,長さ450 m もあるダムをつくるな ・学習する場面を本文で確認しておく。1 本時のめあてを確かめる んてすごいな。ビーバーのダムづくりのすごさを絵本に表すよ。

・「ダムづくりをするビー ・□15段落で紹介されているダムの大きさを,具体的に実感でバー」の場面⑩~⑮を教 きるように助言し,意欲を図る。科書で確かめる。 ビーバー絵本(文や言葉・絵)に表しながら,ダムづくりのようすを読み取ろう

・事前の学習をふり返り,どのように文や言葉で書き表すか・じゅんじょよくダムをつくっているところ(ダムのつくり方) 思い出すことができるようにする。・水中に15分間もいられること

絵本に載せたいビーバーのすごいところは ・家族そう出でしごとをすること だよ。 ・観点・夕方から夜中までしごとをすること ・つくり方の書き方・・・箇条書き・大きなダムをつくれること など 材料とビーバーがしたこと

前ページと同じ方法で,分かりやすくまとめよう。・主述の関係を捉えることや書き方が困難な児童には,文章に補足説明を加えるなどして個別に援助する。

2 絵本に書く言葉や文を考 言 いつ どこ だれ つくり方(材料と手順)える。 葉

や 夕方から 水の中 ビーバー ① 木をくわえたまま,水の中へもぐっていく。 ・全体交流で「そうして」や「その」を提示し,順序を考え(1)「いつ」「どこで」「だ 文 夜中まで 川のほとり 家族のビーバー ② 木のとがった方を川の底にさしこんで流れないようにする。 る時のヒントとなる言葉であることに気付くようにする。

れ」「つくり方」の観 で たち ③ さしこんだ木の上に小えだをつみ上げていく。点に基づいて,本文よ 書 ④ 小えだの上から石でおもしをする。りワークシートに一人 く ⑤ どろでしっかりかためる。一人書く。 こ (⑥ 一方の川ぎしから,反対の川ぎしまでつくればでき上がり。)

と ・ダムづくりの様子を動作化したり絵や簡易模型で表したり(2)全体交流をして確か することで,手順の確認をする。また,木→石→泥の作業

める。 ダムづくりの様子はうまくまとめられたかな。ダムができあがっていく様子を再現して確かめよう 工程の間の時間や,繰り返ししていることに気づくよう助言する。※簡易模型 川底…粘土

ビーバーの動き(動作化) ダムのできあがる様子(絵・簡易模型) 木……えんぴつ・何度も何度も木や石や泥を運ばないと行けないよ。 ・木→小枝→石・泥の順番でダムがつくられるよ。など 小枝…数え棒・家族で力を合わせてするよ。 石……けしごむ 等・作り方の順番をまちがえないようにするよ。など

・「動作化」「絵」「簡易模型」の選択は,個性に応じて選択できるように助言する。

⑭こうして,一方の川ぎしからはんたいの川ぎしまで少しずつのびていき,ダムができあがります。 ・⑭段落と結びつけて,⑩段落の手順がダムづくりの一部分

であることに気づくようにする。家族みんなで力を合わせて何時間も,木・石・泥をつかって正しい順序で繰り返し繰り返し仕事をするからりっぱなダムができるんだね。やっぱりビーバーはすごい!(読解) 評 ダムづくりの手順を箇条書きに表して正しく読みとるこ

3 ダムづくりのようすを表 とができる。す絵を考える。 文ができたよ。どんな絵をかいたらいいかな。教科書の写真を見直してみよう。

(1)教科書に載せられてい P28→木をくわえて水中にもぐるビーバー P29→小えだをはこぶビーバー ・教科書に載せられている写真から読みとれることは,ダムる写真を見直す。 つくり方①のところ 川のほとりでしごとをしている2ひきのビーバー づくりの一部であることに気づき,効果的な絵を考えよう

ダムづくりの一部分しか表してないよ。ダムづくりの様子がよく分かるような絵を考えて絵本に表そう。 とする課題意識をもつことができるようにする。

ダムづくりに関連する写真や図(5場面) ・ダムづくりの様子がよく分かる絵は,どんな絵がよいか児(2)「ダムづくりに関連す 童に考えさせた後,教師が用意した5場面の絵や写真(教科

る写真や図」の中から自 P28写真 P29写真 水中でのダムづくりの絵 川のほとりでのダムづ 完成したダムの写真 書掲載分2枚を含む)を提示する。分の絵本にのせたいもの 水の中へ潜っていく 小枝を抱えているビ 家族総出で仕事をしてい くりの絵 りっぱなダムの様子が ・絵や写真に題を付けたり,すでに書いている文や言葉を線を選択する。 ビーバーの様子がよ ーバーの様子がよく る様子がよく分かる。 家族総出で仕事をして よく分かる。 でつないだりすることで,非言語を読みとる力や言語とつ

く分かる。 分かる。 できあがっていくダムの いる様子がよく分か ほんもののダムを写し ないで読む力を育てる。(3)ワークシートにはって 写真は本当の姿を写 写真は本当の姿を写 様子がよく分かる。 る。 など ている。 ・絵や写真を選択しにくい児童には,絵や写真から分かるこ

文とつないだり言葉を書 している。 など している。 など など など とを具体的に助言して理由づけしやすいように個別に援助き加えたりする。 自分の考えにもとづいた写真や絵の選択 する。

4 絵本のページを仕上 ダムづくりの様子を分かりやすく伝えるために絵本のページを工夫したよ。 評 ビーバーの知恵を生かしたダムづくりの様子を読み取り,げる。 文を短くまとめる。大切な事柄を落とさないように整理して。 自分の考えの根拠にもとづいた絵を考えることができる。

文だけで分からないところの絵や写真。文や言葉と絵や写真を結びつけて。など

次は,すづくりをするビーバーのページだよ。

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(6) 絵本の実際

WS① 目次づくり

(形式段落のまとめ)

⑳ ⑲ ⑱ ⑰ ⑯ ⑮ ⑭ ⑬ ⑫ ⑪ ⑩ ⑨ ⑧ ⑦ ⑥ ⑤ ④ ③ ② ①

形式段落のキーワードの取り

出し。

(大きなまとまりを考え小見出しをつけてもくじとする)

⑳ ⑲ ⑱ ⑰ ⑯ ⑮ ⑭ ⑬ ⑫ ⑪ ⑩ ⑨ ⑧ ⑦ ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① ① 形式段落で分けた線をは

ずしたものを用意し,自分

で分かれると思ったところ

に線を引き小見出しを書く。

② 全体交流で確認をする。

③ 上のワークシートに重ね

上部を貼り,4つのまとま

りの分かれ目を示す線をは

さみで切り,思考の跡が残

るようにした。

ハサミ

WS②「木をかじりたおすビーバー」のページ

内容読解の1ページにあたるため一斉指導で絵本の定義(※1)や絵本の作り方(※2)を学び方と

して共通理解できるようにした。また,必要な絵や写真をあらかじめ印刷して,具体的に絵本に表

す方法を学べる場とした。

ビーバーのすんでいる場しょ

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黒板に掲示した資料

※1 絵 本 ※2

絵 文

WS③「木をはこぶビーバー」「ダムづくりをするビーバー」「すをつくるビーバー」のページ

(それぞれのページの指導の違いは(2)②に記述)

二 ア 小見出しを書く。

イ このページで伝えなければいけ

ウ ないことを観点にそって書く。

イ ア ウ していることの手順を箇条書き

で表す。

エ 余白には,言葉で伝えられない

ことを表すことができる写真や絵

エ を選んで貼る。選んだ写真や絵に

は題を付け,関連する言葉と線で

結ぶ。

わかりやすくまとめて

みじかく大切なことを

文でわかりにくいところ

文やことばとむすんで

……

つたえたいビーバーのすごいところを

書いている本文に、しるし(

!)

をつける。

文・ことばで書くことをきめて、書く。

(

いつ・どこ・だれ・していること)

絵やしゃしんをはったり書いたりする。

・だいをつける。

・文やことばとつながるところはせ

んでむすぶ。

・文やことばを書きくわえる。

絵本の作り方

(いつ)

(どこ)

(だれ)

(していること)

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3 6年生における実践

(1)単元名 私の 伝記「宮沢賢治」

-伝記に評価を加えながら読み、自分なりの考えを表現する力の育成-

(2)単元の構想にあたって-国語部会研究主題との関連-

① 評価を加えながら読むということについて

本単元の主教材「宮沢賢治」(西本鶏介 著)は伝記である。伝記は、子どもたちに「評価を

加えながら読む力」をつけるのに適した教材であると考えている。

確かに伝記は、筆者が収集した膨大な情報をもとにして書かれている。しかしながら、その人

物を描くのにふさわしいエピソードは何だろうか。どの作品を紹介すればその人となりが伝わる

だろうか。その人の人生の中で、いったいどの時代にウエイトをかければいいのだろうか。など

の表現の仕方は、筆者の考え方一つなのである。つまり、主観的な思いがそこに込められていて

も何ら不思議ではない。むしろ当然だと考える。

伝記がそういう文章であるからこそ、書かれていることをすべてうのみにしてしまうのではな

く、その人の一生年表と比べて、おかしいと感じたことを指摘してみたり、同じ人物を描いた他

の筆者の伝記と比べてながらその内容を吟味したりする学習、すなわち、「評価を加えながら読

む」といった学習が十分可能になるのである。

「評価を加えながら読む」ことの大切さは次のようにも取り上げられている。

「評価を加えながら読む力」とは…

国語力の概念として第一に定義したコミュニケーションの能力を保障する言語能力は、言語活

動の側面から大別すれば、表現力と読解力に分けられる。従来、読解力が作品の狭 隘で表面的きょうあい

な解釈にとどまり、作品を生かすことも読者個々の考えを育成することにも億劫であったことが、

国語科以外の各教科等にあまり役立たず、ひいては実社会や実生活に生かせていないことがPI

SA調査で明らかになった。「読解力向上に関する指導資料」で述べている次のような改善点を

十分理解し、教育課程に位置付けることが重要であろう。

①目的に応じた解釈力の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

②関連づけて解釈する能力の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

③実用的・現実的活用の言語経験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

④条件に対応した読むことの能力の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

⑤多様なテキストに即応した読む能力の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳細略

⑥評価しながら読む能力の育成

与えられたテキストについて、主張の信頼性や客観性、現実的・科学的知識や情報との対

応、引用や数値の正確性、論理的な思考の十分さ、目的や表現様式に応じた表現法の妥当性、

など多様な観点から評価しながら読む能力を育成しなければならない。

⑦自分の感じたことや考えたことを簡潔に記述する能力の育成・・・・・・・・・・詳細略

(「実社会や実生活とのかかわりを大切にした国語科の授業づくり」井上一郎

『初等教育資料』2006年7月号P46~P57 一部引用)

このことと関連することは、『小学校学習指導要領解説 国語編』の中にも見られ、特に、次

に示す事項と深くかかわってくる。

〔第5学年及び第6学年〕「C読むこと」②内容

エ 書かれている内容について事象と感想、意見の関係を押さえ、自分の考えを明確にしな

がら読むこと。

エの事項は、文章における事実の述べ方と感想の述べ方の違いについて気付き、筆者がどのような事実に

基づき、どのような考え方や論理を用いて読者に語りかけているか考えることをねらいとしている。高学年で

は、説得したり、問題を解明したりする文章構造を理解しながら読みを深めることが大切である。

さらに、筆者の意見、感想をとらえることにとどまるだけではなく、自分の立場からそれらの意見について

どのように考えるか、常に意識しながら読むことが主体的な読みにつながる。読みを深めるためには、教師が

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論点を整理し、話し合いなどを通してお互いに考えを交流する場を設定するなどの指導の手立てが必要である。

そのためには、主観に偏らず、文章構成や文末表現に着目するなど言葉を手がかりにして意見や感想をとらえ

る能力と態度を身に付けることが大切である。

その際、言語事項(1)のオ「文及び文章の構成に関する事項」の「(ア)文や文章にはいろいろな構成があることについて理解すること。」を十分考慮して学習の計画を立てたい。筆者の意見と事実との読み分けをする

ためには、それにふさわしい教材を提示するよう配慮する必要がある。

なお、ここでの指導は、中学校第1学年の「オ 文章に表れているものの見方や考え方を理解し、自分のも

のの見方や考え方を広くすること。」へと発展していく。

(『小学校学習指導要領解説 国語編』 P113~ P114)

② 単元化のねらい

そこで,本単元では、教科書教材「宮沢賢治」(伝記)を核にして、各領域を総合的にとらえ、

単元化を試みた。

伝記は、その人の一生を様々なエピソードを取り上げながら肯定的に描くことが多い。しかし、

先にも述べたように、少し見方を変えれば、伝記は、筆者がその対象となった人物を主観的にと

らえた文章であり、筆者の偏った考え方(強い思いや願い)も含まれている。そういった文章で

あるからこそ、読み手は、テキストにしっかりと評価を加えながら読まなければならないのであ

る。そこに、価値のある国語科の学習が展開される可能性を見出すことができる。

第一次では、伝記に書かれている内容を正確に読み、筆者の主張点を正しく読み取るといった

学習活動が中心となる。その段階では、まだまだ、筆者の考えに疑問をもつ児童は少ない。

そして、第二次の初めには、一人一人が賢治の伝記を書き上げることを伝える。それをふまえ

たうえで、賢治の生き方をついて、賢治の作品とかかわらせてポスターセッションを行う。その

際、子どもたちは、何冊かの賢治童話に触れる。感想を書く中で、そして、ポスターを作る段階

で、子どもたちは、賢治と賢治の童話との背後にいる筆者の存在を強く意識するようになる。「な

ぜ、筆者はこの作品を伝記に取り上げなかったのだろうか?」、「同じテーマなら、こちらの作

品の方が子ども向けで分かりやすいのに…」、「伝記のこの表現は、この作品のこの部分と重な

る。意識しているのか。」などと、少しずつ疑問を抱き始める。

そして、ポスターセッションの中で、子どもたちは、筆者に対して持った疑問点や逆に賞賛点

についても作成したポスターをもとにしながら自分の言葉で語り合う。それが、後の伝記作りに

生きてくるのである。

そして、第三次では、違う著者の賢治の伝記「イーハトーヴの夢」を読み、「宮沢賢治」との

共通点や相違点を挙げ、それについて話し合う。二つの伝記を通して抱いた賢治についての自分

の考えの深まりを実感することで、自分ならこんな伝記を書きたいというイメージとつないで、

伝記を書くという作文学習にも取り組ませたい。

このように考えてくると、本単元は、まさに、今求められている PISA 型「読解力」を取り巻く、国語科における授業改善の具体的方向をも示した単元になると考えている。

(3)単元の目標

関心・意欲・態度 話 す・聞 く 書 く 読 む

ポスター作りのために ポスターを用いながら作 教材文や自らが読んだ宮 2種類の伝記について、

宮沢賢治の童話を楽しん 品の内容や宮沢賢治とのか 沢賢治の童話を基にしなが それぞれを正確に読み取

で読むことができる。 かわりについて分かりやす ら、構成を工夫し、賢治の り、賢治の一生をまとめる

く紹介したり、友達の説明 伝記を書くことができる。 ことができる。

に対して、質問したり、意 さらに、2種類の伝記の

見を述べ合ったりできる。 共通点や相違点を比較しな

がら読むことができる。

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(4)単元の構成

単元構成(全16時間)※①~⑯は時間数

学 習 内 容 評 価 規 準 と 教 師 の 支 援

第1次 伝記を正確に読み、筆者の主張点を正しく読み取る。(4時間)

① 伝記を通読し、書かれて 【読 む】 生い立ちの説明が始まるところを指摘することができる。ま

いる内容から大きく三つの た、人生の大きな転機に気づくことができる。

まとまりに分ける。

〔支 援〕

通った学校や就いた仕事にアンダーラインを引きながら読み、人生の節

目に気づかせる。

② 教科書教材「宮沢賢治」 【読 む】 「賢治がしたこと」を読み取るとともに、そこから「賢治の

をまとまりごとに読み、筆 思いや願い」や「どのように農民として生きたか」ということ~

④ 者の主張点をまとめる。 を関連づけながら読むことができる。

〔支 援〕

「国語の学習」を利用しながら、「賢治がしたこと」や「エピソード」

と「賢治の思いや願い」とをつなぐことで、賢治という人の人間性にも気

づけるようにする。

第2次 宮沢賢治の童話を読み、ポスターセッションを行う。(5時間)

⑤ 賢治の生き方と作品とを 【読 む】 賢治の童話を読み、「五行感想」を書くことができる。

関係づけるために、賢治の~

⑦ 童話を読み、ポスターを作 〔支 援〕

る。 読んだ童話に対しては、次のような「五行感想」を書かせる。

内容は、作品と賢治の生き方とを関連させて書くように指示するが、個

人差があり最初の段階からうまく書けない子どももいる。そこで、感想の

後に、教師が一言コメントを付けるので、それに続けてさらに感想を書く

ように支援した。それによって、感想が深まったり、再度童話を読み直し

たりする子どもが出てくる。つまり、五行感想には、一人一人がその童話

を読んで得たこだわりが込められており、ポスター作りやポスターセッシ

ョンにつながる。また、ポスターセッションの際、質問が出ると、ここに

戻ってくることもある。自己の深まりを実感できる、感想文である。

【書 く】 読んだ童話と賢治の願いや理想としたこととを関連させてポ

スターを書くことができる。

〔支 援〕

さらに、読んだ童話の中から、自分が一番気に入った童話について、「ポ

スター」を作成する。

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〔作成したポスター〕 ポスターに書く内容は、教科書に準じ、次に示すことを書くようにした

が、その際、◎の内容は必ず入れるようにした。

◎ その作品に対する見出し

・ その童話が、どんな内容なのか説明する力を評価する。

◎ 作品と賢治とのかかわり

・ 今回の単元の基礎・基本の部分である。書けなければ

いけない。

◎ 絵

・ 印象に残った場面を想像してかく。それに言葉を付け、

読みを深める。

○ あらすじ

○ 感想

○ 疑問点

○ 賢治に言いたいこと など

すなわち、このポスターには、自分のお気に入りの作品に対

する、個人的見解が詰まっており、ポスターセッションを通し

て、友達との対立や納得も起こる。また、それと同時に、筆者

との対立や納得も起こり始めるのである。

⑧ ポスターセッションを行 【話・聞】 ポスターを用いながら作品の内容や賢治とのかかわりについ

・ い、いろいろな童話と賢治 て分かりやすく紹介したり、説明に対して、質問したり,意見

⑨ の生き方との関連性につい を述べ合ったりできる。

て知る。

〔支 援〕

〔ポスターセッションの様子〕 ポスターセッションは、学習カードを使いながら、次のような時間配分

で行った。

● 発表(3分)→質疑(3分)→感想・評価(5分)

学習カードが評価カードになっており、カードにしっかりと書かせ

ることにより、最後の感想・評価の際に、相互の考えが深まるように

配慮する。

(聞き手用学習カード)資料編参照

《カードの内容》

1 なるほどと思ったこと

2 疑問に思ったこと

《相手の目を見つめて話し合う。 3 質問してみたいこと

その子の心の中がうかがえる。》 4 発表者との交流を通して学んだこと

5 評価しよう

○発表者さんへ

・はっきりとした声でした

・ためになりました

・質問にきちんと答えてくれました

○聞き手だった自分へ

・よかったところを伝えられた

・相手のためになる質問ができた

(発表者用学習カード)資料編参照

《カードの内容》

1 3分間時間いっぱい話すために、計

画を立てる

2 ぜひ、伝えたいこと

3 聞き手との交流を通して学んだこと

4 評価しよう

《白熱する議論。伝えたいことが ○聞き手のみなさんへ

はっきりとしていればいるほど ・真剣に聞いてくれました

真剣さが増す。》 ・考えが深まる質問でした

○発表者だった自分へ

・質問にはきちんと答えた

・交流して自分の考えが深まった

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第3次 他の著者の賢治の伝記を読み、その内容を比べる話し合い活動を通して、自分なりの賢治像をつく

り、賢治の伝記を書く。(7時間)

⑩ 他の人が書いた宮沢賢治 【読 む】 宮沢賢治について書かれた二人の伝記を比べながら読み、共

の伝記を、教科書教材の内 通点、相違点を出し合い、それぞれの伝記の内容について話し~

⑬ 容と比べながら読む。 合うことができる。

【話・聞】 友達と話し合うことを通して、友達の意見や考えから自分の

本時⑫ ためになったものを発見したり、友達を納得させる意見が発言

できたりすることで、自分の考えをふくらませたり、自信を深

めたりすることができる。

〔支 援〕

ワークシートを利用し、二つの伝記の違いが比較しやすいようにすると

ともに、話し合い活動のもとになるようにしっかりと読み取った内容を書

かせる。

⑭ これまでに学んだことを 【書 く】 これまでに学んだ教材や読んだ童話や詩をもとにしながら、

生かして、一人一人が、そ 構成に気を付けて、賢治の伝記を書くことができる。~

⑯ れぞれの思いを込めて「私

の 伝記『宮沢賢治』」を 【書 く】 二つの伝記の良さを活用したり、自分がこだわった作品を利

書く。 用したりしながら、自分なりの賢治の伝記に仕上げることがで

きる。

〔支 援〕

二つの伝記の違いを比べた項目について、自分ならどう考えるかをワー

クシートに書かせることで、構成や書く内容を整理させる。

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(5)本時の学習指導① 目標

・ 筆者の違う宮沢賢治の伝記を読み比べて、それぞれの伝記に共通に取り上げられている作品の解説文や賢治

の描かれ方の違いを読み取り、それぞれの筆者の賢治への迫り方の違いに気づく。

・ 友達の考えと自分の考えの違いはどこにあるのか注意しながら話し合い活動に取り組み、質問や意見を出し

合いながら、自分なりの賢治像をつくる。

② 学習指導過程 (○…基礎・基本の習得,◎・・・才能の伸長を促すかかわり)

学 習 活 動 自己実現に向かう児童の変容 教師の支援と評価

前時までの学習 二つの伝記を読み比べて、よく似ている内容とちが ○ 同じような内容になっているった内容の所を見つけたよ。同じ人物の伝記なのに、 ことや違った内容になっているこんなにも違う内容があることに驚いたよ。 ことをワークシートを使ってま

とめ、その違いについて自分なりの考えをもっておく。

1 本時の学習課題を この二つの伝記は、どうしてこんなにも賢治の書き ○ 本時のめあてを「学習カード」確認する。 表し方が違うのだろうか。きっと筆者の考えがあるは を使いながら全体で確認

ずだ。自分の考えをしっかりもって友達と話し合おう。 ◎ その際、発表したい事柄を各自が持てるように、前時に使用

2 二つの伝記の賢治 まず、共通に取り上げている「セロ弾きのゴーシュ」 したワークシートを見直し、本の書き表し方の違い の解説の仕方を比べてみよう。 時へのかかわり方を自らで決定について話し合う。 する。

○ 発言者は、筆者のどの表現に「宮沢賢治」 「イーハトーヴの夢」 ついて述べているのかを明確に

(1) 共通に取り上げて ・どんな話か分かりにく ・話の内容が分かりやす する。聞き手は、自分の立場かいる作品の解説文に いな。 いよ。 らその発言を聞いて、自分の考ついて。 ・意味の分かりにくい言 ・言葉の意味が分かりや えを深められるように、メモを

葉があるな。 すいよ。 とりながら聞く。・筆者の思いが込められ ・話のあらすじだけが、 ◎ 先に行った、ポスターセッシているよ。 たんたんと書かれている ョンを想起し、そこで得た確信

よ。 や疑問とをつないで発言するよ(交 流) うに促す。

評:作品の解説の仕方の違いにつ他の作品の解説にも同じことが言えるのかな? いて理解することができたか。

また、話し合い活動で、自分の「グスコーブドリの伝記」でも同じようなことが言え 考えを述べたり、友達の発表にるよ。作品の解説の仕方も筆者によって変わるんだな。 対して質問したり,意見を述べ

たりできたか。(2) 中心的に描かれて 次に、中心的に描かれている時代や取り上げたエピ ○ ワークシートと二人の人生をいる時代の違いにつ ソードについて比べてみよう。 表した掲示物を詳しく見直すこいて。 とで、二つの伝記の賢治の迫り

方の違いを明らかにし、話し合「宮沢賢治」 「イーハトーヴの夢」 いの指針をもたせる。

・教師時代のことがあま ・農民としての賢治があ ◎ 発言に困っている子どもには、り書かれていないよ。 まり書かれていないよ。 賢治の一生年表を読んで、理解・それは、農民として生 ・それは、教師時代にも、 していることとつないで発言すきた賢治をはっきりと伝 「いねの心が分かる人間 るように促す。

3 二つの伝記の賢治 えたかったからではない になれ。」という賢治のへの迫り方の違いに かな。 生き方を表した言葉があついて、自分なりの ・農民として生きた賢治 るからかな。 ◎ 賢治の弟、清六の伝記のどの考えをもつ。 を重く見ているのが、こ ・すべての時代のことを 部分を読みたいか、自分なりに

の筆者の伝記の特徴だ。 取り上げているのがこの その箇所を指摘する。筆者の伝記の特徴だ。 評:それぞれの立場で話し合い活

(交 流) 動に取り組み、それぞれの筆者の賢治への迫り方の違いを理解

宮沢清六の書いた賢治の伝記 することができたか。◎「私だったら、宮沢賢治につい

それぞれの筆者に、自分の表現したい賢治がいるこ てこんな伝記を書く。」というテとが分かった。私もそんなふうにこだわりをもって伝 ーマで作文を書き、本時の学習記を作りたい。 をまとめる。

4 次時への課題をも 伝記は筆者のとらえ方によって内容が変わる文章な 評:賢治の生き方と作品とのかかつ。 んだな。二つの伝記を読み比べて、賢治の生き方がい わりについての自分の考え方を

ろいろな角度から詳しく分かったよ。さあ、私も書い 持ち、自分なりの賢治像をつくてみよう。 ることができたか。

(6)本単元で使用した「学習カード」(ワークシート)

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五行感想を書こう

読んだ本については、感想を五行ぐらいにまとめよう。五行いっぱいにならな

くてもいいけれど、四行は書けるようにしよう。今回は宮沢賢治の生き方や願い

とその本を読んだ感想とを関連させて書いてみよう。

先生は、その感想を読んで、てびきを書きますから、みんなは、それに続けて

書き加えてください。

(例)

「注文の多い料理店

」(

外見は着かざっているが、その言葉や行動から

はみえと欲望しか見えてこない都会のしんし。そ

んなしんしを山ねこがこらしめ、人間として大切

なものはそんなものではないと私たちに強く訴え

かけてきていて、何か考えさせられる作品だった。

この作品を通してわかる、賢治の考えている人間として大切なものは・・・・

(先生の書いたてびき)

この続きを書き加えよう。

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て六

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めて

西

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(最

(童

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【資料5】 論理的思考力を育成する国語科学習のモデル単元

1 はじめに

平成 17・18 年度香川県教育委員会研究団体等研究委託事業として,論理的思考力を育成する国語科学習の改善について考える機会を得た。1年次は,国語科で今求められている「確か

な学力」とは何か,その学力についての子どもたちの実態はどうなのかということに重点を置

いて調査研究を行った。2年次は,「どのように」学習指導の工夫・改善を行えばよいのか具

体的な方法について考えてきた。ここでは,夏季研修会で提案したことを振り返りながらまと

めてみた。

2 児童の実態と手立て

3 第5学年説明文教材「動物の体」の学習

(1)目標:文章の仕組みを考えて,書かれていることを読み取る

(2)香川型教材を使って,文章の仕組みを考える。

① 教科書に例として挙げられている動物の名前を黄色の付箋紙に書いて,出てくる順番

に貼っていく。

よく「ニホンシカ」まで書いてしまう子どもがいる。その場合は,「ニホンシカを例

にとってみると」という文章表現に着目させる。また,例えばアキタケンやブルドック

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やプードルなどをまとめて「犬」というように,身近な動物を例に挙げて,ここでは使

わないカードであることに気づかせる。

② 対比している動物を見つけて線でつなぎ,青色の付箋紙に小見出しをつける。

③ 体の形・体格・毛皮の役割をつなぐと,「外から見える形」という大見出しがつく。

これをピンク色の付箋紙に書く。それに対比して,ヒトコブラクダの例を「体の中の仕

組み」であるととらえると,この二つもつながることが分かる。

◎ ツリー図(文章構造図)を作成を通して,内容を整理して視覚的に説明文全体の構成

を理解することができる。その上,帰納的な読みとして,例示されたものから筆者の主

張に迫ることや,あるいは,環境に適応しながら生きているという共通性を,一つ一つ

の具体的な事例に当てはめながら演繹的に読むことの指針にもなる。

◎ 作成したこのツリー図を,目次とみなし,見通しをもって学習に取り組むことができ

る。

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(3)「ツリー図の本論①の部分」の学習

① 従来よくあるパターン

・学習範囲を確かめて,教材文を読む。

・学習のめあてを確認する。

・挙げられている動物の写真を貼る。

・書かれている内容を読み取っていく。

・読み取ったことをもとに,話し合う。

・それぞれの体形の特徴・そうなる理由や説明・具体例を書いていく。

・最後に分かったことをまとめたり,感想を書いたりする。まとめがなく終わってしま

うこともある。

② 論理的思考力を育成する指導のポイント

ア 言語情報と写真や図・絵等の情報を関係付けて読む活動の場を設定する

イ 論理的思考力を育てる話し合いの場を設定する

ウ 学んだことを書く場を設定する

ア 写真の扱いについて

写真は,導入での動機付け,興味や関心を高めるものとして使うが,それに加えて読

みの検証として扱ってみてはどうだろうか。

37ページにある2枚の写真を見てみると,ホッキョクギツネとフェネックが,筆者

の言うとおり,ほぼ同じ体積の体であることが分かる。顔が隣り合わせになっているこ

とで,耳の形や大きさを比べるのも容易にできる。背景がはっきり写っていて,どんな

環境のところに住んでいるのかが手に取るよう分かる。

写真

写真

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文章から読み取ったことを写真で検証することで,あるいは写真から読み取ったこと

を文章で検証することで,言語情報と写真や図・絵等の情報を関係づけて読む力が育つ

と考えられる。

イ 話し合いが,単に内容の確かめで終わらないために

読む力を高めるためには,教材文を肯定的にとらえて理解する,いわゆる情報の取り

出しは必要だ。それで終わらせてしまうのではなく,何をどのように読めばいいかを分

からせる話し合いになることが大切である。

寒い地方の動物に比べて,暑い地方の動物についての記述はあまりない。だからとい

って,暑い地方の動物についての情報を読み取ることができないかというと,そんなこ

とはないだろう。

両者は対比の関係で述べられているという説明の論理に気づくことができれば,一方

の情報を逆の意味に変えることによって,対等の情報を読み取ることが可能になる。

今までも,比較や対比をし,類推して補いながら読むことはしていただろう。

しかし,読み取り方を知らない,あるいは活用できないという子どもが多いのが実態

である。そのため,比較して類推して読むということを,もっと意識付ける必要がある。

なぜ,情報量が少ないのに,暑い地方に住む動物の体形について分かるのかをめぐっ

て話し合わせることで,関係づけて読む力や比較する力・類推する力が育つのではない

だろうか。

一例として,“比較法”とか“類推法”などとネーミングして,言葉カードを示して

おくと,さらに意識化させることもできると思われる。それを,次の時間や他の教材に

出会った時の読み取りに,転移・活用させたいものである。

ここでの類推を助け可能にしているのは,筆者の論を裏付けるにふさわしい具体例や

2枚の写真があることだ。

また,筆者は,暑い地方の動物のことを類推してくれるだろうと思って,わざと記述

を省略したのかも知れない。そういうことに気づくのは,建設的に批判しながら読む力

が育っていることだと言えよう。

フェネック ホッキョクギツネ

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ウ まとめを書くことに対する指導を入れて

教材文の内容を要約して紹介したり,再構成したり,自分の知識や経験と関連付けた

り,自分の意見を論じさせたりする機会を設けることで,書き切る力を付けていきたい。

ここでは,比較して読んだのだから,それが分かるように「一方」とか「逆に」「も

う一方では」「それに対して」などと言う言葉を使って比較しながら書かせていく。

(例) 寒い地方に住んでいる動物の体は,まるっこくてでっぱりが少ない。それは,う

ばわれる熱を少なくするためである。逆に,暑い地方に住んでいる動物の体は,熱

を放散させるために,でっぱりを多くしている。

また,序論の「環境に適応しながら生きている。」という文章と関係づけて,本論①

のまとめをさせたいと思う。

(例) 動物たちは,住む気候に合った体の形をしている。だから,動物たちは生きてい

ける。

厳しい自然の中で生きている動物の体の形は,それぞれ気候の違いや生きている

場所など環境によって違っている。このような違いは,環境に適応したすばらしい

形だと言える。

など,読み取ったことを,自分の言葉でまとめる表現活動をする中で,論理的に考えを

構築していく力を育てていくことができると考える。

写真

写真

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(4)教科書掲載教材の写真を批判的に読む

【批判的な読みの結果生まれた代案 ―体の大きさを表示し,写真を重ね合わせる―】

エゾシカ ホンシュウシカ ヤクシカ ケラマジカ

【 ―写真に体重を表示― 】

エゾシカ ホンシュウシカ

ヤクシカ ケラマジカ

70㎝80㎝

100㎝

65㎝

80kg100kg

50kg30kg

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