①中釜班の概要 ②偶発的所見等の取扱いに関する論点 ③人材...
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第6回ゲノム医療等実用化推進TF 3/11/2016(金)14:00、厚労省
平成27年度日本医療研究開発機構研究費(ゲノム医療実用化推進研究事業)
「メディカル・ゲノムセンター等におけるゲノム医療実施体制の構築と人材育成に関する研究」より
① 中釜班の概要
② 偶発的所見等の取扱いに関する論点
③ 人材育成に関する論点
研究代表者
国立がん研究センター研究所 所長
中釜 斉
#1
第6回 ゲノム医療等実用化推進TF
平成28年3月11日
参考人 資料
① H27年度ゲノム医療実用化推進事業:ゲノム医療体制の試行的・実証的構築(中釜班)
② 検証と微量臨床検体の臨床ゲノム解析等
③ 同定された変異の
生物学的・医学的
意義付けと対処方案
④ 報告(一次・ 二次・偶発的
所見)
・ 産学官の様々な
疾患ゲノム研究 ⑥ ゲノム医療対応電子カルテ・
診断支援システム
⑤ 効果・ 安全性・ 予後等追跡
・がん及び遺伝診療の現場
⑦ ゲノム医療実施を支える多職種人材育成
① 説明・同意
一部抽出・匿名化
顕名化個人情報に連結したゲノム医療情報
クリニカル・シークエンシング*
臨床
ニーズ
偶発的
所見等
*本研究での定義:受診中または受診可能な患者に関して、最終的に担当医に報告することを目的として行う塩基配列解析
臨床ゲノム情報統合DB・ 知識ベース
(J-ClinVar/ ClinGen)
#2
⑦
•ゲノム医療従事者の育成プログラム
開発:遺伝性疾患
(信州大、慶應大、お茶大)
•同上:家族性腫瘍(栃木がんセ)
①「中釜班」サブテーマの構成(平成26年度厚労科研委託費公募要領に基づく)
①~⑥
•がん領域(NCがん、東大)
•神経・筋疾患及び知的障害領域
(NC精神)
•小児遺伝性疾患領域(NC成育)
•循環器疾患領域(NC循環器)
•感染症・糖尿病等疾患領域(NC国際)
•認知症・運動器疾患領域(NC長寿)
①、④
•ゲノム医療実施に係る患者等の意思決定支援と情報の管理手法の開発
(阪大、NC循環器、NC精神、京大、
岡大、千葉大、北大、静岡がんセ)
②、⑥
• ISOにおけるバイオバンクの規格化等への対応(NC長寿、NCがん、慶應大)
#3
② 現時点の議論での「偶発的所見等(IFs)」の範囲:細分類毎の議論は今後の課題
・出典:H25年度厚労科研特別研究 高坂新一班
「メディカル・ゲノムセンター等における個人の解析結果等の報告と、公的バイオバンクの試料・情報の配布に関する論点整理と提言」報告書(2014年3月)
いわゆる「偶発的所見」は、様々な分類が
試みられている。下記はその一例。
・原典:
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sues (生命倫理問題の研究に関する
大統領諮問委員会、
20
13年
12月)
#4
② 偶発的所見等(IFs)に関する国内外の動向の把握
1)IFsの倫理的な返却義務をめぐる近年の国際的議論を、文献をもとに分析した。IFsの生じる
文脈の相違(研究/診療の別)とともに、
(i) clinical importance(臨床的重要性)、
(ii) actionability(対処可能性)の少なくとも
2つの軸で検討することがほぼ共通の了解と考えられた。
2)がん、成育、循環器の3NCで聞き取り調査を実施した。
「クリニカル・シークエンス」の意味内容及びIFsへの対処可能性
(actionability)概念に関して、各疾患領域間で多様性が認められた。
3)国内のIFsの取り組み・検討状況を広く把握するために、
多数の研究機関・プロジェクトの参加を得て、平成27年
11月30日に「偶発的所見等に関する合同検討会議」を
開催した。
【参加機関】 NCがん、NC成育、NC精神、NC循環器、
静岡がんセンター、東北メディカルメガバンク、4大学コンソー
シアム(京大・岡山大・北大・千葉大)、バイオバンクジャパン。
対処可能性
臨床的重要性
返さず (SNP)
返す (HBOC)
返す? (Huntington)
返さず? (親子関係)
#5
② H27年度I「偶発的所見等に関する合同検討会議」から:クリニカルシークエンスにおけるIFsの主な論点
●IFsの事前説明:
1. インフォームド・コンセント
a. メリット・デメリットの伝え方において、遺伝子関連検査への温度差により、施設差・医師の個人差がある。
b. 対象集団別のリスクに関する基本的情報の整備が必要(e.g. 漿液性卵巣がんでは~20%にBRCA1/2の病的変異)
●IFsの同定:
2. 我が国に至適化されたIFsのリスト作成と、その更新
a. 「提供者及び血縁者」の「生命に重大な影響を与え」、「有効な対処方法があるとき」の意味は?
3. VUS(臨床的意義が不確実なバリアント(多型・変異))
a. Genotype-phenotypeデータベースの整備が必要:hospital-basedのみならず、 population-basedのデータが重要。
b. 機能解析、家系内の分離分析、タンパク質構造解析、バイオインフォマティクスなど学際的アプローチが必要。
4. 検査のQC・規格化と拠点化
a. 取り間違え防止のための仕組みが重要。
b. 検査は拠点化、コンサルテーションは地域で。
●IFsの伝え方:
5. 患者の希望と主治医の判断の組合せで行っているが、それでよいか?
6. 小児の場合の代諾と16歳になった場合の報告に関する問題。
7. 体細胞変異の結果報告は主治医から、germlineは一次・二次・偶発的所見のいずれも遺伝カウンセリング外来で。
●IFs発見後の対処:
8. 院内多職種連携によるCSチームと全国的な遺伝診療のコンサルテーション・ネットワークが必要
a. 日本人類遺伝学会、全国遺伝子医療部門連絡会議等の既存のネットワークの活用。
9. IFs報告後の保険医療体制
10.差別防止の社会の仕組みの大前提を作ることが先決
a. 日本の「差別」は保険・就職よりも、結局、結婚関係。「差別」よりも忌避感、法律では防ぎきれない。
b. 国民の遺伝literacyの課題。
c. IFs対処法の検討は、早くから患者・家族・社会のメンバーとともに取り組むべき(協調的パートナーシップ)。 #6
1)日本国内で、どの程度「臨床につながる*」大規模シークエンス(全ゲノム、
エクソーム)や数十以上の遺伝子パネルでのゲノム解析*が行われているかを、より詳しく把握する。
* 定義: 受診中または受診可能な患者に関して、最終的に担当医に報告することを目的として
行う塩基配列解析(クリニカルシークエンス)、またはそれに準ずるゲノム解析
2)それらの「現場」において、IFsの取り扱いや開示の可能性について検討しているかどうかを調査する。
・調査のポイント: (a)上記1)のゲノム解析の目的と全体像。
(b)遺伝子のリストを検討しているか。
(c)開示のプロセスを検討しているか(手順案があるか)。
3)IFsへの対応案(手順および対象遺伝子リスト)を策定し、上記1の現場で、
実行可能かどうか調査する。実行が難しい場合はその理由を探る。
・調査のポイント: (a)臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなどの配置の有無、
(b)疾患領域横断的な連携が可能となっているかどうか、
4)IFsの適切な対応を含むゲノム医療を実現するための具体的要件を抽出する。
・調査のポイント: (a)体制整備
(b)人材育成と配置(サブテーマ4と連携)。
② 今後に向けた提言:偶発的所見への適切な対応のために
#7
説明・同意
試料の採取
結果の報告
治療・予防法の説明
追跡・臨床試験等
臨床ニーズの理解、症例選択・
ゲノム解析法選択
ニーズに応じた技術
開発・至適化、解析
変異情報の臨床的
有用性判断、
国内外臨床試験動向
遺伝カウン
セリング、
ELSI理解
変異等ゲノム情報の取得・解釈
in silico解析、in vitro/in vivo機能解析
日本人における変異の理解
病理学・疫学・遺伝学の専門知識
データ集積・ 統合解析
詳細かつ正確な診療情報
を用いた病因病態の理解
多分野の専門家による
合議と報告書作成
バイオインフォ
マティクス解析 品質保証下での
ゲノム解析 (次世代シークエンサー等)
③ チームとネットワークが主是のゲノム医療専門人材育成 (医師・看護師・薬剤師・遺伝カウンセラー、ゲノム医科学・ELSI研究者、バイオインフォマティシャン、他)
ゲノム医療の現場で求められる多彩な専門的スキルと、その人材育成
各種認定資格・ セミナー等に加えて
鍵は OJT
#8
1)ゲノム情報を生み出す:次世代シークエンサー(NGS)、マイクロアレイ染色体
検査の解析・精度管理(wet)
2)ゲノム情報を解釈する:NGS、マイクロアレイ染色体検査のデータの解釈(dry)
・ 臨床細胞遺伝学認定士制度、ジェネティックエキスパート制度はあるものの、On the Job
Training のシステムを構築し、継続実施できることが最も重要。
・ 全国遺伝子医療部門連絡会議の調査では,すでに20の大学病院等でNGSの解析結果を臨床の場で利用している。これらの施設でOn the Job Training(OJT)を継続的に行える環境を整備するのがもっとも現実的。
3)ゲノム情報を伝える:遺伝カウンセリング
・ 遺伝やリスク(確率)に関する理解や捉え方が欧米人とは異なる部分があり、欧米で行われている遺伝カウンセリングの手法をそのまま応用することはできない。
・ 双方向のコミュニケーションが必要であり、マニュアルやガイドラインの作成のみでは対応できない。遺伝カウンセリング実施施設におけるOJT支援が重要。
・ 医学教育における臨床遺伝学教育、一般的なコミュニケーション教育も不足
・ 臨床遺伝専門医制度、認定遺伝カウンセラー制度による遺伝カウンセリング担当者の人材育成は順調に進んでいる。
・ 事例検討中心の遺伝カウンセリングロールプレイ研修会(全国14箇所)は効果的。
③ 人材育成についての提言:ゲノム医療実現に必要な人材(その1)
#9
2011年がん罹患者 1位 2位 3位 4位 5位
男性 496,304人 胃 90,083 前立腺 78,723 肺 75,433 大腸 72,101 肝臓 29,192
女性 355,233 乳房 72,472 大腸 52,820 胃 41,950 肺 36,425
子宮 26,741
頸部 11,378
体部 14,763
男女計 851,537 胃 132,033 大腸 124,921 肺 111,858 前立腺 78,723 乳房 72,472
* 赤字は、比較的強い遺伝的素因が報告されているがん。合計 408,151人。
このうちの約10%が遺伝学的検査の対象とすると、年間4万件の生殖細胞系列遺伝学的検査が必要となる。
家族性腫瘍コーディネーター、家族性腫瘍カウンセラーがその受け皿として必要。
③ 人材育成についての提言:ゲノム医療実現に必要な人材(その2)
4)がんのゲノム医療の特殊性に対応した人材育成: ・ 年間85万人が罹患するがんの本態は体細胞ゲノム・エピゲノム異常。体細胞変異及び一部の生殖細胞変異を
標的にした分子標的治療あるいは免疫治療が今世紀のがんの個別化治療・precision medicineの主流として、
予後を大きく改善しつつある。
・ ゲノム情報に基づくがん個別化医療では、未承認薬・適応拡大等の臨床試験が重要な一翼を占める。
・ 一方、遺伝性腫瘍は全がんの約5%と言われ、表現型からは多因子疾患のがんと区別し難いものも多く、拾い上げ対象はかなりの数となる(下表)。欧米では全大腸がんを対象にしたリンチ症候群(遺伝性大腸がん)のUniversal Screeningも提唱されている。
・ 遺伝性腫瘍はACMG 24疾患のうち16疾患を占め、体細胞変異解析からしばしば二次的・偶発的に同定される。
・ 有効な対処法がある(actionableな)遺伝性疾患として、そのゲノム医療においては、早期発見・治療・予防等に適確に結びつけるための、がん医療そのものの知識と経験が求められる。
・ 質・量ともに増大するニーズに直面しているがんのゲノム医療の人材育成と配備においては、全国約400箇所のがん診療連携拠点病院等におけるOJTや、関連学会の教育・臨床腫瘍学会の専門医認定機能の活用が必要。
#10
③ ゲノム医療におけるクライエント対応関連の認定資格等
資格 対象 概要 人数
臨床遺伝
専門医 医師
• 基本領域の専門医資格に上乗せで認定。
• 特定の領域での専門家であり,かつ他の領域でもジェネラルな遺伝医療ができる幅広い遺伝医学的知識
• あらゆる場面における基本的遺伝カウンセリング能力
• ゲノム情報を正しく解釈し,適切かつ明快に医師や患者に伝えられる
1,263
認定遺伝
カウンセラー
主として非医師
• 最新の遺伝医学の知識と、専門的なカウンセリング技術を身につけている。
• 倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に対応できる。
• ・常に患者サイドにたつが、主治医や他の診療部門との協力関係を維持できる。
• 全国12の大学院修士課程で養成される。
182
家族性腫瘍
カウンセラー
医師・ 非医師
• 臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーの資格(遺伝医療の専門職)を有し、日本家族性腫瘍学会家族性腫瘍セミナーを3回受講した者。
71 家族性腫瘍コーディネーター
医師・ 非医師
• 医療・福祉に関わる職種(医師、看護師等々)であり、家族性腫瘍あるいはがん医療について2年以上医療機関での実務経験を有し、日本家族性腫瘍学会家族性腫瘍セミナーを3回受講した者。
• 家族性腫瘍が疑われる患者を拾い上げ、院内外の各種部門と連携し、患者とその家族が必要な遺伝医療を受けられるように調整(コーディネーション)する。
• 患者と血縁者の生涯にわたるサーベイランス(多重多発がんの早期発見と治療および予防)に必要な医学的管理を受けられるように支援する。
がん体細胞変異のゲノム医療の認定資格
• 無し
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