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実践知の 実践知の 実践知の 実践知の 実践知の 実践知の 実践知の 実践知の - - - - - - と知の場づく と知の場づく と知の場づく と知の場づく と知の場づく と知の場づく と知の場づく と知の場づく - - - - - - 一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授 一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授 一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授 一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授 大学名誉 大学名誉 大学名誉 大学名誉 大学名誉 大学名誉 大学名誉 大学名誉 野中次 2010 2010 2010 2010年 年4 4 4月 月9 9 9日 日( ( (金 金) ) )

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Page 1: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ-------- スクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくり --------

一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授

カリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラーカリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラーカリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラーカリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラー

クレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラークレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラークレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラークレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラー

野中郁次郎

2010201020102010年年年年4444月月月月9999日日日日((((金金金金))))

Page 2: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

最も影響力あるビジネス思想家トップ最も影響力あるビジネス思想家トップ最も影響力あるビジネス思想家トップ最も影響力あるビジネス思想家トップ20---- The most influential business thinkers, Wall Street Journal ----

氏名氏名氏名氏名 特徴特徴特徴特徴

1.1.1.1. ゲリー・ハメルゲリー・ハメルゲリー・ハメルゲリー・ハメル コンサルタントコンサルタントコンサルタントコンサルタント

2.2.2.2. トーマストーマストーマストーマス L.フリードマンL.フリードマンL.フリードマンL.フリードマン ニューヨーク・タイムズニューヨーク・タイムズニューヨーク・タイムズニューヨーク・タイムズ 特約寄稿家特約寄稿家特約寄稿家特約寄稿家

3.3.3.3. ビル・ゲイツビル・ゲイツビル・ゲイツビル・ゲイツ マイクロソフト会長マイクロソフト会長マイクロソフト会長マイクロソフト会長

4.4.4.4. マルコム・グラッドウェルマルコム・グラッドウェルマルコム・グラッドウェルマルコム・グラッドウェル 『ブリンク』著者『ブリンク』著者『ブリンク』著者『ブリンク』著者

5.5.5.5. ハワード・ガードナーハワード・ガードナーハワード・ガードナーハワード・ガードナー ハーバード大学教授ハーバード大学教授ハーバード大学教授ハーバード大学教授

6.6.6.6. フィリップ・コトラーフィリップ・コトラーフィリップ・コトラーフィリップ・コトラー ノースウェスタン大学教授ノースウェスタン大学教授ノースウェスタン大学教授ノースウェスタン大学教授

6.6.6.6. ロバートロバートロバートロバート B.ライヒB.ライヒB.ライヒB.ライヒ 前労働省長官前労働省長官前労働省長官前労働省長官

8.8.8.8. ダニエル・ゴールマンダニエル・ゴールマンダニエル・ゴールマンダニエル・ゴールマン 心理学者心理学者心理学者心理学者

9.9.9.9. ヘンリー・ミンツバーグヘンリー・ミンツバーグヘンリー・ミンツバーグヘンリー・ミンツバーグ マギル大学教授マギル大学教授マギル大学教授マギル大学教授

10.10.10.10. スティーブンスティーブンスティーブンスティーブン R.R.R.R.コヴィーコヴィーコヴィーコヴィー 『七つの習慣』著者『七つの習慣』著者『七つの習慣』著者『七つの習慣』著者

11.11.11.11. ジェフリー・フェファージェフリー・フェファージェフリー・フェファージェフリー・フェファー スタンフォード大学教授スタンフォード大学教授スタンフォード大学教授スタンフォード大学教授

11.11.11.11. ピーターピーターピーターピーター M.センゲM.センゲM.センゲM.センゲ 『最強組織の法則『最強組織の法則『最強組織の法則『最強組織の法則――――新時代のチームワークとは何か』著者新時代のチームワークとは何か』著者新時代のチームワークとは何か』著者新時代のチームワークとは何か』著者

13.13.13.13. リチャード・ブランソンリチャード・ブランソンリチャード・ブランソンリチャード・ブランソン ヴァージン・グループヴァージン・グループヴァージン・グループヴァージン・グループ創業創業創業創業者者者者

14.14.14.14. マイケルマイケルマイケルマイケル E.ポーターE.ポーターE.ポーターE.ポーター ハーバード大学教授ハーバード大学教授ハーバード大学教授ハーバード大学教授

15.15.15.15. マイケルマイケルマイケルマイケル S.デルS.デルS.デルS.デル デル創業者デル創業者デル創業者デル創業者

16.16.16.16. ギァート・ホーフステッドギァート・ホーフステッドギァート・ホーフステッドギァート・ホーフステッド 『経営文化の国際比較『経営文化の国際比較『経営文化の国際比較『経営文化の国際比較――――多国籍企業の中の国民性』著者多国籍企業の中の国民性』著者多国籍企業の中の国民性』著者多国籍企業の中の国民性』著者

17.17.17.17. クレイトンクレイトンクレイトンクレイトン M.クリステンセンM.クリステンセンM.クリステンセンM.クリステンセン ハーバード大学教授ハーバード大学教授ハーバード大学教授ハーバード大学教授

18.18.18.18. ジャック・ウェルチジャック・ウェルチジャック・ウェルチジャック・ウェルチ 前GE前GE前GE前GE CEOCEOCEOCEO

18.18.18.18. トム・ピーターズトム・ピーターズトム・ピーターズトム・ピーターズ 『エクセレント・カンパニー』著者『エクセレント・カンパニー』著者『エクセレント・カンパニー』著者『エクセレント・カンパニー』著者

20.20.20.20. マイロンマイロンマイロンマイロン S.ショールズS.ショールズS.ショールズS.ショールズ ノーベル賞受賞者ノーベル賞受賞者ノーベル賞受賞者ノーベル賞受賞者

20.20.20.20. 野中野中野中野中 郁次郎郁次郎郁次郎郁次郎 一橋大学教授一橋大学教授一橋大学教授一橋大学教授

Page 3: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題知識創造企業とマネジング・フローの命題

「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」「企業は知識創造体である」The knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing FlowThe knowledge Creating Company and Managing Flow

Page 4: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ実践知のリーダーシップ-------- スクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくりスクラムと知の場づくり --------

一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授一橋大学大学院国際企業戦略研究科名誉教授

カリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラーカリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラーカリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラーカリフォルニア大学ゼロックス名誉ファカルティ・スカラー

クレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラークレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラークレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラークレアモント大学ドラッカー・スクール名誉スカラー

野中郁次郎

2010201020102010年年年年4444月月月月9999日日日日((((金金金金))))

Page 5: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

知識社会観知識社会観知識社会観知識社会観

�知識は今日唯一の意義ある資源である。知識は今日唯一の意義ある資源である。知識は今日唯一の意義ある資源である。知識は今日唯一の意義ある資源である。�知識が、経済資源として、どのように蓄積・配分・知識が、経済資源として、どのように蓄積・配分・知識が、経済資源として、どのように蓄積・配分・知識が、経済資源として、どのように蓄積・配分・使用するかは、まだ完全にはわかっていない。使用するかは、まだ完全にはわかっていない。使用するかは、まだ完全にはわかっていない。使用するかは、まだ完全にはわかっていない。�今言えることは、何らかの理論が必要とされてい今言えることは、何らかの理論が必要とされてい今言えることは、何らかの理論が必要とされてい今言えることは、何らかの理論が必要とされているということ、つまり、るということ、つまり、るということ、つまり、るということ、つまり、知識を富の創造過程の中心知識を富の創造過程の中心知識を富の創造過程の中心知識を富の創造過程の中心に据える経済理論が必要とされているに据える経済理論が必要とされているに据える経済理論が必要とされているに据える経済理論が必要とされているということでということでということでということである。ある。ある。ある。�そのような理論のみが、イノベーションを説明し、そのような理論のみが、イノベーションを説明し、そのような理論のみが、イノベーションを説明し、そのような理論のみが、イノベーションを説明し、今日の経済を説明し、経済成長を説明することが今日の経済を説明し、経済成長を説明することが今日の経済を説明し、経済成長を説明することが今日の経済を説明し、経済成長を説明することができる。できる。できる。できる。

P. F. P. F. P. F. P. F. ドラッカードラッカードラッカードラッカー 『『『『ポスト資本主義社会ポスト資本主義社会ポスト資本主義社会ポスト資本主義社会』』』』 1993199319931993

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A dynamic social process of justifying

personal belief towards the truth.

知識ベース企業観:知識ベース企業観:知識ベース企業観:知識ベース企業観:企業はユニークな未来を創る存在企業はユニークな未来を創る存在企業はユニークな未来を創る存在企業はユニークな未来を創る存在

イノベーションは知識創造プロセスであるイノベーションは知識創造プロセスであるイノベーションは知識創造プロセスであるイノベーションは知識創造プロセスである

© Nonaka I.

戦略は、現実を解釈し、新たな現実を社会的に創造し戦略は、現実を解釈し、新たな現実を社会的に創造し戦略は、現実を解釈し、新たな現実を社会的に創造し戦略は、現実を解釈し、新たな現実を社会的に創造し続ける知力である。知識とは、続ける知力である。知識とは、続ける知力である。知識とは、続ける知力である。知識とは、個人の信念/思いを個人の信念/思いを個人の信念/思いを個人の信念/思いを「真理」に向って社会的に正当化していくダイナミック・「真理」に向って社会的に正当化していくダイナミック・「真理」に向って社会的に正当化していくダイナミック・「真理」に向って社会的に正当化していくダイナミック・プロセスである。プロセスである。プロセスである。プロセスである。

Page 7: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

知識創造は暗黙知と形式知の相互変換運動である知識創造は暗黙知と形式知の相互変換運動である知識創造は暗黙知と形式知の相互変換運動である知識創造は暗黙知と形式知の相互変換運動である

相互作用の相互作用の相互作用の相互作用のスパイラルアップスパイラルアップスパイラルアップスパイラルアップ

アナログ知-デジタル知の動的綜合アナログ知-デジタル知の動的綜合アナログ知-デジタル知の動的綜合アナログ知-デジタル知の動的綜合

言語・文章で表現できる言語・文章で表現できる言語・文章で表現できる言語・文章で表現できる

客観的・理性的な言語知客観的・理性的な言語知客観的・理性的な言語知客観的・理性的な言語知

特定の文脈に依存しない一般的な特定の文脈に依存しない一般的な特定の文脈に依存しない一般的な特定の文脈に依存しない一般的な

概念や論理(理論・問題解決手法・概念や論理(理論・問題解決手法・概念や論理(理論・問題解決手法・概念や論理(理論・問題解決手法・

マニュアル・データベース)マニュアル・データベース)マニュアル・データベース)マニュアル・データベース)

言語・文章で表現するのが難しい言語・文章で表現するのが難しい言語・文章で表現するのが難しい言語・文章で表現するのが難しい

主観的・身体的な経験知主観的・身体的な経験知主観的・身体的な経験知主観的・身体的な経験知

特定の文脈ごとの経験の反覆に特定の文脈ごとの経験の反覆に特定の文脈ごとの経験の反覆に特定の文脈ごとの経験の反覆によって体化されるよって体化されるよって体化されるよって体化される思考スキル(思い・メンタル・モデ思考スキル(思い・メンタル・モデ思考スキル(思い・メンタル・モデ思考スキル(思い・メンタル・モデル)や行動スキル(熟練・ノウハウ)ル)や行動スキル(熟練・ノウハウ)ル)や行動スキル(熟練・ノウハウ)ル)や行動スキル(熟練・ノウハウ)

暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知 (Tacit Knowledge) 形式知形式知形式知形式知 (Explicit Knowledge)

© Nonaka I.

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暗黙知と形式知暗黙知と形式知暗黙知と形式知暗黙知と形式知---- 氷山のメタファー氷山のメタファー氷山のメタファー氷山のメタファー ----

© Nonaka I.

水面下の領域には、膨大な感覚・イメージ的な経験知がある。水面下の領域には、膨大な感覚・イメージ的な経験知がある。水面下の領域には、膨大な感覚・イメージ的な経験知がある。水面下の領域には、膨大な感覚・イメージ的な経験知がある。

それを共感し、共有し、変換して、新しい知をつくりだす。それを共感し、共有し、変換して、新しい知をつくりだす。それを共感し、共有し、変換して、新しい知をつくりだす。それを共感し、共有し、変換して、新しい知をつくりだす。

形式知形式知形式知形式知

暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1.1.1.1. メタファーの本質とは、ある種類のことがらを別の種類のことがらのメタファーの本質とは、ある種類のことがらを別の種類のことがらのメタファーの本質とは、ある種類のことがらを別の種類のことがらのメタファーの本質とは、ある種類のことがらを別の種類のことがらの見地から理解し経験することである。見地から理解し経験することである。見地から理解し経験することである。見地から理解し経験することである。

(レイコフ(レイコフ(レイコフ(レイコフ GGGG. . . . &&&& MMMM. . . . ジョンソンジョンソンジョンソンジョンソン 『『『『レトリックと人生レトリックと人生レトリックと人生レトリックと人生』』』』 ))))

2.2.2.2. 本来まったく異なる領域にあるものどうしを重ね合わせることで、そ本来まったく異なる領域にあるものどうしを重ね合わせることで、そ本来まったく異なる領域にあるものどうしを重ね合わせることで、そ本来まったく異なる領域にあるものどうしを重ね合わせることで、その領域にはなかったイメージを導入し、新たな関係(連想・仮説)をの領域にはなかったイメージを導入し、新たな関係(連想・仮説)をの領域にはなかったイメージを導入し、新たな関係(連想・仮説)をの領域にはなかったイメージを導入し、新たな関係(連想・仮説)を作り出す。作り出す。作り出す。作り出す。 (井崎正敏(井崎正敏(井崎正敏(井崎正敏 『『『『<考える>とはどういうことか?<考える>とはどういうことか?<考える>とはどういうことか?<考える>とはどういうことか?』』』』 洋泉社洋泉社洋泉社洋泉社 2008200820082008))))

例: 暗黙知のイメージ → 氷山のメタファー

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トヨタ生産方式の本質はトヨタ生産方式の本質はトヨタ生産方式の本質はトヨタ生産方式の本質は暗黙知・形式知のスパイラルアップ暗黙知・形式知のスパイラルアップ暗黙知・形式知のスパイラルアップ暗黙知・形式知のスパイラルアップ

出所:出所:出所:出所: 奥田碩・朱建栄奥田碩・朱建栄奥田碩・朱建栄奥田碩・朱建栄 『『『『「地球企業トヨタ」は中国で何を目指すのか「地球企業トヨタ」は中国で何を目指すのか「地球企業トヨタ」は中国で何を目指すのか「地球企業トヨタ」は中国で何を目指すのか』』』』 角川学芸出版角川学芸出版角川学芸出版角川学芸出版 2007200720072007

(マニュアルをポンと渡すのは形式知を与えているのにすぎないの(マニュアルをポンと渡すのは形式知を与えているのにすぎないの(マニュアルをポンと渡すのは形式知を与えているのにすぎないの(マニュアルをポンと渡すのは形式知を与えているのにすぎないの

であって、勘やコツの目に見えない暗黙知の世界が基盤にある)であって、勘やコツの目に見えない暗黙知の世界が基盤にある)であって、勘やコツの目に見えない暗黙知の世界が基盤にある)であって、勘やコツの目に見えない暗黙知の世界が基盤にある)

IT化により、暗黙知だったものが形式知に移っIT化により、暗黙知だったものが形式知に移っIT化により、暗黙知だったものが形式知に移っIT化により、暗黙知だったものが形式知に移っ

ていくことが出てくるかもしれません。しかしていくことが出てくるかもしれません。しかしていくことが出てくるかもしれません。しかしていくことが出てくるかもしれません。しかし

移ってはいくけれど、新しい暗黙知もどんどん移ってはいくけれど、新しい暗黙知もどんどん移ってはいくけれど、新しい暗黙知もどんどん移ってはいくけれど、新しい暗黙知もどんどん

出てくるわけです。今の社長の渡辺は、出てくるわけです。今の社長の渡辺は、出てくるわけです。今の社長の渡辺は、出てくるわけです。今の社長の渡辺は、「暗黙「暗黙「暗黙「暗黙

知と形式知がうまくスパイラルアップし知と形式知がうまくスパイラルアップし知と形式知がうまくスパイラルアップし知と形式知がうまくスパイラルアップし

ていくことで向上する」ていくことで向上する」ていくことで向上する」ていくことで向上する」と言っています。と言っています。と言っています。と言っています。

Page 10: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

身体・五感を駆使、身体・五感を駆使、身体・五感を駆使、身体・五感を駆使、直接経験を通じた直接経験を通じた直接経験を通じた直接経験を通じた暗黙知の獲得、暗黙知の獲得、暗黙知の獲得、暗黙知の獲得、共有、創出(共感)共有、創出(共感)共有、創出(共感)共有、創出(共感)

組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為組織的知識創造の行為-- SECISECIモデルモデルモデルモデルモデルモデルモデルモデル 「どう知るか」「どう知るか」「どう知るか」「どう知るか」「どう知るか」「どう知るか」「どう知るか」「どう知るか」 --

暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知 暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知

形式知形式知形式知形式知 形式知形式知形式知形式知

暗黙

知暗

黙知

暗黙

知暗

黙知

暗黙

知暗

黙知

暗黙

知暗

黙知

形式

知形

式知

形式

知形

式知

形式

知形

式知

形式

知形

式知

I = 個人個人個人個人G = 集団集団集団集団O = 組織組織組織組織E = 環境環境環境環境

形式知を行動を形式知を行動を形式知を行動を形式知を行動を通じて具現化、通じて具現化、通じて具現化、通じて具現化、新たな暗黙知として新たな暗黙知として新たな暗黙知として新たな暗黙知として理解・学習(実践)理解・学習(実践)理解・学習(実践)理解・学習(実践)

対話・思索・比喩によ対話・思索・比喩によ対話・思索・比喩によ対話・思索・比喩による概念・図像・仮説のる概念・図像・仮説のる概念・図像・仮説のる概念・図像・仮説の創造創造創造創造((((概念化)概念化)概念化)概念化)

形式知の組み合わ形式知の組み合わ形式知の組み合わ形式知の組み合わせによる情報活用とせによる情報活用とせによる情報活用とせによる情報活用と知識の体系化(分知識の体系化(分知識の体系化(分知識の体系化(分析)析)析)析)

1.1.1.1.組織内外の活動によ組織内外の活動によ組織内外の活動によ組織内外の活動によ

る現実直感る現実直感る現実直感る現実直感

2.2.2.2.感情移入・気づき・予感情移入・気づき・予感情移入・気づき・予感情移入・気づき・予

知の獲得知の獲得知の獲得知の獲得

3.3.3.3.暗黙知の伝授、移転暗黙知の伝授、移転暗黙知の伝授、移転暗黙知の伝授、移転

9.9.9.9.反省的実践を通じた反省的実践を通じた反省的実践を通じた反省的実践を通じた

形式知の体化形式知の体化形式知の体化形式知の体化

10.10.10.10.目標目標目標目標----成果の持続的成果の持続的成果の持続的成果の持続的

追求、自己超越追求、自己超越追求、自己超越追求、自己超越

4.自己の暗黙知の自己の暗黙知の自己の暗黙知の自己の暗黙知の言語化言語化言語化言語化

5.言語から概念・仮説・言語から概念・仮説・言語から概念・仮説・言語から概念・仮説・原型の原型の原型の原型の 創造創造創造創造

6.概念間の関係生成と概念間の関係生成と概念間の関係生成と概念間の関係生成と

モデル化モデル化モデル化モデル化

7.形式知の伝達、普及・形式知の伝達、普及・形式知の伝達、普及・形式知の伝達、普及・

共有共有共有共有

8.形式知の編集・操作形式知の編集・操作形式知の編集・操作形式知の編集・操作

化、化、化、化、IT化化化化

共同化共同化共同化共同化((((S))))共同化共同化共同化共同化((((S)))) 表出化表出化表出化表出化((((E))))表出化表出化表出化表出化((((E))))

内面化内面化内面化内面化(((( I ))))内面化内面化内面化内面化(((( I )))) 連結化連結化連結化連結化((((C))))連結化連結化連結化連結化((((C))))O

G

E

G

G

G

G

Org.

I

Environment

Individual

I

I

I

I

I

Group

IE

E

I

O

© Nonaka I. & H. Takeuchi

Page 11: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

イノベーションはイノベーションはイノベーションはイノベーションはイノベーションはイノベーションはイノベーションはイノベーションはSECISECIスパイラルであるスパイラルであるスパイラルであるスパイラルであるスパイラルであるスパイラルであるスパイラルであるスパイラルである

直接経験を通じて現実に共感し(直接経験を通じて現実に共感し(直接経験を通じて現実に共感し(直接経験を通じて現実に共感し(S=S=S=S=共同化)、共同化)、共同化)、共同化)、気づきの本質をコンセプトに凝縮し(気づきの本質をコンセプトに凝縮し(気づきの本質をコンセプトに凝縮し(気づきの本質をコンセプトに凝縮し(E=E=E=E=表出表出表出表出化)、コンセプトを関係づけて体系化し(化)、コンセプトを関係づけて体系化し(化)、コンセプトを関係づけて体系化し(化)、コンセプトを関係づけて体系化し(C=C=C=C=連連連連結化)、技術、商品、ソフト、サービス、経験に結化)、技術、商品、ソフト、サービス、経験に結化)、技術、商品、ソフト、サービス、経験に結化)、技術、商品、ソフト、サービス、経験に価値化し価値化し価値化し価値化し、知を血肉化する(、知を血肉化する(、知を血肉化する(、知を血肉化する(I=I=I=I=内面化)と同時内面化)と同時内面化)と同時内面化)と同時に、組織・市場・環境の新たな知を触発し、再に、組織・市場・環境の新たな知を触発し、再に、組織・市場・環境の新たな知を触発し、再に、組織・市場・環境の新たな知を触発し、再び共同化につなげる。このび共同化につなげる。このび共同化につなげる。このび共同化につなげる。このSECISECISECISECIの「高速回転の「高速回転の「高速回転の「高速回転化」が創造性と効率性をダイナミックに両立さ化」が創造性と効率性をダイナミックに両立さ化」が創造性と効率性をダイナミックに両立さ化」が創造性と効率性をダイナミックに両立させる知の綜合力(せる知の綜合力(せる知の綜合力(せる知の綜合力(Synthesizing CapabilitySynthesizing CapabilitySynthesizing CapabilitySynthesizing Capability)で)で)で)である。ある。ある。ある。

©©©© NonakaNonakaNonakaNonaka I.I.I.I. (2007)(2007)(2007)(2007)

Page 12: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ「知流」を機能させるリーダーシップ

知識創造体を構成するビジョン、価値命題、知識創造体を構成するビジョン、価値命題、知識創造体を構成するビジョン、価値命題、知識創造体を構成するビジョン、価値命題、

顧客基盤、組織基盤と環境(エコシステム)顧客基盤、組織基盤と環境(エコシステム)顧客基盤、組織基盤と環境(エコシステム)顧客基盤、組織基盤と環境(エコシステム)

との相互作用をトータルに関係づけて、知との相互作用をトータルに関係づけて、知との相互作用をトータルに関係づけて、知との相互作用をトータルに関係づけて、知

の綜合力を発揮させるダイナミック・プロセの綜合力を発揮させるダイナミック・プロセの綜合力を発揮させるダイナミック・プロセの綜合力を発揮させるダイナミック・プロセ

スである。その根幹にあるのは、知識を「知スである。その根幹にあるのは、知識を「知スである。その根幹にあるのは、知識を「知スである。その根幹にあるのは、知識を「知

恵」に練磨するフロネシスである。恵」に練磨するフロネシスである。恵」に練磨するフロネシスである。恵」に練磨するフロネシスである。

© Nonaka I.

Page 13: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

フロネシスとは何かフロネシスとは何かフロネシスとは何かフロネシスとは何かフロネシスとは何かフロネシスとは何かフロネシスとは何かフロネシスとは何か

�フロネシスは、アリストテレスの提唱した概念でフロネシスは、アリストテレスの提唱した概念でフロネシスは、アリストテレスの提唱した概念でフロネシスは、アリストテレスの提唱した概念でその意味は賢慮(その意味は賢慮(その意味は賢慮(その意味は賢慮(PrudencePrudencePrudencePrudence))))、実践的知恵、実践的知恵、実践的知恵、実践的知恵((((Practical WisdomPractical WisdomPractical WisdomPractical Wisdom)))) と翻訳されている。と翻訳されている。と翻訳されている。と翻訳されている。

�フロネシスフロネシスフロネシスフロネシス ((((phronesisphronesisphronesisphronesis))))とは、とは、とは、とは、

価値・倫理の思慮分別をもって、個別のその都価値・倫理の思慮分別をもって、個別のその都価値・倫理の思慮分別をもって、個別のその都価値・倫理の思慮分別をもって、個別のその都度の状況とコンテキスト(文脈)の只中で、最善度の状況とコンテキスト(文脈)の只中で、最善度の状況とコンテキスト(文脈)の只中で、最善度の状況とコンテキスト(文脈)の只中で、最善の判断・行為ができるの判断・行為ができるの判断・行為ができるの判断・行為ができる実践知実践知実践知実践知である。である。である。である。

Contextual Judgment Contextual Judgment Contextual Judgment Contextual Judgment ・・・・ Timely BalancingTimely BalancingTimely BalancingTimely Balancing

© Nonaka I.

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実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力実践知リーダーシップの6能力

①①①① 「善い」目的をつくる能力「善い」目的をつくる能力「善い」目的をつくる能力「善い」目的をつくる能力

②②②② 場をタイムリーにつくる能力場をタイムリーにつくる能力場をタイムリーにつくる能力場をタイムリーにつくる能力

③③③③ ありのままの現実を直観する能力ありのままの現実を直観する能力ありのままの現実を直観する能力ありのままの現実を直観する能力

④④④④ 直観の本質を概念に変換する能力直観の本質を概念に変換する能力直観の本質を概念に変換する能力直観の本質を概念に変換する能力

⑤⑤⑤⑤ 概念を実現する能力概念を実現する能力概念を実現する能力概念を実現する能力

⑥⑥⑥⑥ 実践知を組織化する能力実践知を組織化する能力実践知を組織化する能力実践知を組織化する能力

© Nonaka I., Toyama R

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①①①①①①①①「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる「善い」目的をつくる

「何が善いことか」についての判断基準となる高貴な「何が善いことか」についての判断基準となる高貴な「何が善いことか」についての判断基準となる高貴な「何が善いことか」についての判断基準となる高貴な目的をつくる能力である。目的をつくる能力である。目的をつくる能力である。目的をつくる能力である。

「あらゆる行為や選択はすべて何らかの善を希求する」「あらゆる行為や選択はすべて何らかの善を希求する」「あらゆる行為や選択はすべて何らかの善を希求する」「あらゆる行為や選択はすべて何らかの善を希求する」アリストテレスアリストテレスアリストテレスアリストテレス 『『『『ニコマコス倫理学ニコマコス倫理学ニコマコス倫理学ニコマコス倫理学』』』』

例:幸福ないし自己実現:手段にならない、自己充足的価値例:幸福ないし自己実現:手段にならない、自己充足的価値例:幸福ないし自己実現:手段にならない、自己充足的価値例:幸福ないし自己実現:手段にならない、自己充足的価値

「美徳は社会的に確立された卓越性の基準を達成しよう「美徳は社会的に確立された卓越性の基準を達成しよう「美徳は社会的に確立された卓越性の基準を達成しよう「美徳は社会的に確立された卓越性の基準を達成しようとする無限の実践に内在する」・・・職人道とする無限の実践に内在する」・・・職人道とする無限の実践に内在する」・・・職人道とする無限の実践に内在する」・・・職人道(artisanship)(artisanship)(artisanship)(artisanship)

マッキンタイアマッキンタイアマッキンタイアマッキンタイア『『『『美徳なき時代美徳なき時代美徳なき時代美徳なき時代』』』』

© Nonaka I.

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企業の目的:企業の目的:企業の目的:企業の目的: 知識ビジョン知識ビジョン知識ビジョン知識ビジョン

未来社会に向けた「善い」パラダイムの洞察と未来社会に向けた「善い」パラダイムの洞察と未来社会に向けた「善い」パラダイムの洞察と未来社会に向けた「善い」パラダイムの洞察と価値創造へのコミットメント価値創造へのコミットメント価値創造へのコミットメント価値創造へのコミットメント Thought LeadershipThought LeadershipThought LeadershipThought Leadership

例:例:例:例:

IBMIBMIBMIBM:::: Smarter PlanetSmarter PlanetSmarter PlanetSmarter Planet

GEGEGEGE::::EcomaginationEcomaginationEcomaginationEcomagination

ホンダ:ホンダ:ホンダ:ホンダ: 人間尊重・三つの喜び人間尊重・三つの喜び人間尊重・三つの喜び人間尊重・三つの喜び((((買う喜び、売る喜び、創買う喜び、売る喜び、創買う喜び、売る喜び、創買う喜び、売る喜び、創る喜びる喜びる喜びる喜び))))

エーザイ:エーザイ:エーザイ:エーザイ: human health care (human health care (human health care (human health care (hhchhchhchhc))))

ユニクロ:ユニクロ:ユニクロ:ユニクロ: 服を変え、常識を変え、世界を変えていく服を変え、常識を変え、世界を変えていく服を変え、常識を変え、世界を変えていく服を変え、常識を変え、世界を変えていく

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②②②②②②②②場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる場をタイムリーにつくる

人間存在の根底にあるケア、愛、信頼、人間存在の根底にあるケア、愛、信頼、人間存在の根底にあるケア、愛、信頼、人間存在の根底にあるケア、愛、信頼、

安心など感情の知(安心など感情の知(安心など感情の知(安心など感情の知(Social Capital: Social Capital: Social Capital: Social Capital: 社会関社会関社会関社会関

係資本)とコンテクスト(文脈)を共有し相係資本)とコンテクスト(文脈)を共有し相係資本)とコンテクスト(文脈)を共有し相係資本)とコンテクスト(文脈)を共有し相

互主観性を生成する能力である。互主観性を生成する能力である。互主観性を生成する能力である。互主観性を生成する能力である。

© Nonaka I.

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生きた文脈の共有生きた文脈の共有生きた文脈の共有生きた文脈の共有生きた文脈の共有生きた文脈の共有生きた文脈の共有生きた文脈の共有

BaBaBaBa

< >の経験の共有が場の基盤

相互主観性相互主観性相互主観性相互主観性////intersubjectivityintersubjectivityintersubjectivityintersubjectivity

開放開放開放開放 閉鎖閉鎖閉鎖閉鎖 開放開放開放開放閉鎖閉鎖閉鎖閉鎖

<いま・ここ>の経験が共有されると、共創に向けて知が創発される© Nonaka I.

いま・ここいま・ここいま・ここいま・ここHereHereHereHere----NowNowNowNow

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知識創造理論による場知識創造理論による場知識創造理論による場知識創造理論による場知識創造理論による場知識創造理論による場知識創造理論による場知識創造理論による場-- 個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場個の相互作用を触発するのは抽象的組織ではなく具体的場 --

従来の理論従来の理論従来の理論従来の理論

© Nonaka I. & A. Hirose

個人個人個人個人

組織組織組織組織

環境環境環境環境

知識創造理論知識創造理論知識創造理論知識創造理論

場場場場個人個人個人個人 組織組織組織組織

環境環境環境環境空間軸

時空間と文脈

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多様な場の形態多様な場の形態多様な場の形態多様な場の形態多様な場の形態多様な場の形態多様な場の形態多様な場の形態物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される物理的手段や時空間によって支援される

会議、飲み会会議、飲み会会議、飲み会会議、飲み会

インフォーマル組織インフォーマル組織インフォーマル組織インフォーマル組織

プロジェクト・チームプロジェクト・チームプロジェクト・チームプロジェクト・チーム

オフィスオフィスオフィスオフィス////工場工場工場工場////店舗店舗店舗店舗

公式組織構造・システム公式組織構造・システム公式組織構造・システム公式組織構造・システム

電子メール、電子メール、電子メール、電子メール、TVTVTVTV会議会議会議会議

現実現実現実現実

仮想仮想仮想仮想

© Nonaka I.

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故故故故

三日三晩の三日三晩の三日三晩の三日三晩の生きた時空間の共有生きた時空間の共有生きた時空間の共有生きた時空間の共有

個の殻を破る個の殻を破る個の殻を破る個の殻を破る

全人的な共感と議論全人的な共感と議論全人的な共感と議論全人的な共感と議論

(相互主観性)(相互主観性)(相互主観性)(相互主観性)

ホンダのワイガヤホンダのワイガヤホンダのワイガヤホンダのワイガヤ

個個個個

チームチームチームチーム

思考の飛躍思考の飛躍思考の飛躍思考の飛躍コンセプト構築コンセプト構築コンセプト構築コンセプト構築

出所:出所:出所:出所: 小林三郎小林三郎小林三郎小林三郎「知識創発型研究開発マネジメント~ホンダ~」「知識創発型研究開発マネジメント~ホンダ~」「知識創発型研究開発マネジメント~ホンダ~」「知識創発型研究開発マネジメント~ホンダ~」『知識創造経営とイノベーション』『知識創造経営とイノベーション』『知識創造経営とイノベーション』『知識創造経営とイノベーション』野中郁次郎野中郁次郎野中郁次郎野中郁次郎・・・・遠山亮子遠山亮子遠山亮子遠山亮子 (編)(編)(編)(編) 丸善丸善丸善丸善 2006200620062006pp.120pp.120pp.120pp.120----121121121121

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ワイガヤのプロセスワイガヤのプロセスワイガヤのプロセスワイガヤのプロセスワイガヤのプロセスワイガヤのプロセスワイガヤのプロセスワイガヤのプロセス

� 会社負担で場(よい宿とよい食事)を手配会社負担で場(よい宿とよい食事)を手配会社負担で場(よい宿とよい食事)を手配会社負担で場(よい宿とよい食事)を手配� 日常的仕事環境からの脱却日常的仕事環境からの脱却日常的仕事環境からの脱却日常的仕事環境からの脱却

� 初日:初日:初日:初日: 個と個のぶつかり合い個と個のぶつかり合い個と個のぶつかり合い個と個のぶつかり合い� 話は上司の悪口、不満、対立から始まる話は上司の悪口、不満、対立から始まる話は上司の悪口、不満、対立から始まる話は上司の悪口、不満、対立から始まる

� 徹底的に話させると、喧嘩も起きるが逃げ場がない徹底的に話させると、喧嘩も起きるが逃げ場がない徹底的に話させると、喧嘩も起きるが逃げ場がない徹底的に話させると、喧嘩も起きるが逃げ場がない

� そのうちうわべの形式知が尽き、自己中心の殻がとれるそのうちうわべの形式知が尽き、自己中心の殻がとれるそのうちうわべの形式知が尽き、自己中心の殻がとれるそのうちうわべの形式知が尽き、自己中心の殻がとれる

� 二日目:二日目:二日目:二日目: 相互理解・許容相互理解・許容相互理解・許容相互理解・許容� 違いを認める、お互いの思いを知るようになる違いを認める、お互いの思いを知るようになる違いを認める、お互いの思いを知るようになる違いを認める、お互いの思いを知るようになる

� 気に入らない相手の意見も全人的に受け入れる気に入らない相手の意見も全人的に受け入れる気に入らない相手の意見も全人的に受け入れる気に入らない相手の意見も全人的に受け入れる

� 三日目:自己意識を越えた深みからの共同主観の創造三日目:自己意識を越えた深みからの共同主観の創造三日目:自己意識を越えた深みからの共同主観の創造三日目:自己意識を越えた深みからの共同主観の創造性性性性� 建設的思考、コンセプトの飛躍が生まれる建設的思考、コンセプトの飛躍が生まれる建設的思考、コンセプトの飛躍が生まれる建設的思考、コンセプトの飛躍が生まれる 出所:出所:出所:出所: 小林三郎小林三郎小林三郎小林三郎

「知識創発型研究開発マネジメント~ホン「知識創発型研究開発マネジメント~ホン「知識創発型研究開発マネジメント~ホン「知識創発型研究開発マネジメント~ホンダ~」ダ~」ダ~」ダ~」 『知識創造経営とイノベーション』『知識創造経営とイノベーション』『知識創造経営とイノベーション』『知識創造経営とイノベーション』野中郁次郎野中郁次郎野中郁次郎野中郁次郎・・・・遠山亮子遠山亮子遠山亮子遠山亮子 (編)(編)(編)(編) 丸善丸善丸善丸善 2006200620062006

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相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程相互主観性の発達過程-------- IntersubjectivityIntersubjectivity --------

意識の3段階意識の3段階意識の3段階意識の3段階� 母と子のように「生き生きした現在」が主客未分の母と子のように「生き生きした現在」が主客未分の母と子のように「生き生きした現在」が主客未分の母と子のように「生き生きした現在」が主客未分の

状態で共有されている間身体性の受動的相互主観状態で共有されている間身体性の受動的相互主観状態で共有されている間身体性の受動的相互主観状態で共有されている間身体性の受動的相互主観(感性の綜合)(感性の綜合)(感性の綜合)(感性の綜合)

� その意味を、自分自身の意図・意識による志向性にその意味を、自分自身の意図・意識による志向性にその意味を、自分自身の意図・意識による志向性にその意味を、自分自身の意図・意識による志向性によって、自己の中で「我-それ-関係」という形で意よって、自己の中で「我-それ-関係」という形で意よって、自己の中で「我-それ-関係」という形で意よって、自己の中で「我-それ-関係」という形で意味化する能動的相互主観(知性の綜合)味化する能動的相互主観(知性の綜合)味化する能動的相互主観(知性の綜合)味化する能動的相互主観(知性の綜合)

� 「我-汝-関係」において、感覚は再度、高次の次「我-汝-関係」において、感覚は再度、高次の次「我-汝-関係」において、感覚は再度、高次の次「我-汝-関係」において、感覚は再度、高次の次元で自他の区別から開放され、自己を振り返ること元で自他の区別から開放され、自己を振り返ること元で自他の区別から開放され、自己を振り返ること元で自他の区別から開放され、自己を振り返ることなく、自己に無関心に、自己中心化から開放され他なく、自己に無関心に、自己中心化から開放され他なく、自己に無関心に、自己中心化から開放され他なく、自己に無関心に、自己中心化から開放され他者と触れあう無心・無我の相互主観(感性と知性の者と触れあう無心・無我の相互主観(感性と知性の者と触れあう無心・無我の相互主観(感性と知性の者と触れあう無心・無我の相互主観(感性と知性の綜合)綜合)綜合)綜合)

出所:出所:出所:出所: 山口一郎山口一郎山口一郎山口一郎 『『『『存在から生成へ存在から生成へ存在から生成へ存在から生成へ』』』』 知泉書館知泉書館知泉書館知泉書館 2005200520052005

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相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性相互主観性の基盤は間身体性-------- IntercorporalityIntercorporality --------

感覚の反転感覚の反転感覚の反転感覚の反転: : : : 右手によって左手に触れる経験右手によって左手に触れる経験右手によって左手に触れる経験右手によって左手に触れる経験

二本の手はおのおの触れるもの二本の手はおのおの触れるもの二本の手はおのおの触れるもの二本の手はおのおの触れるもの(touching)(touching)(touching)(touching)と触と触と触と触れられるものれられるものれられるものれられるもの(being touched)(being touched)(being touched)(being touched)でありながら、そでありながら、そでありながら、そでありながら、その役割はやがて交替し、反転する。最初は触の役割はやがて交替し、反転する。最初は触の役割はやがて交替し、反転する。最初は触の役割はやがて交替し、反転する。最初は触れられていた左手がほどなく右手に触れてきて、れられていた左手がほどなく右手に触れてきて、れられていた左手がほどなく右手に触れてきて、れられていた左手がほどなく右手に触れてきて、「二重感覚」が成立する。「二重感覚」が成立する。「二重感覚」が成立する。「二重感覚」が成立する。

(メルロ=ポンティ)(メルロ=ポンティ)(メルロ=ポンティ)(メルロ=ポンティ)

CopyrightCopyrightCopyrightCopyright ©©©© 2010201020102010 NonakaNonakaNonakaNonaka, I, I, I, I

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ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見ミラーニューロンの発見-------- 神経科学の共同化神経科学の共同化神経科学の共同化神経科学の共同化神経科学の共同化神経科学の共同化神経科学の共同化神経科学の共同化 --------

「鏡のように相手の行動を自分に映す神経細「鏡のように相手の行動を自分に映す神経細「鏡のように相手の行動を自分に映す神経細「鏡のように相手の行動を自分に映す神経細

胞」が発見された。身体行為の模倣によって、胞」が発見された。身体行為の模倣によって、胞」が発見された。身体行為の模倣によって、胞」が発見された。身体行為の模倣によって、

自分の体験に照らし合わせて他人の心を推定自分の体験に照らし合わせて他人の心を推定自分の体験に照らし合わせて他人の心を推定自分の体験に照らし合わせて他人の心を推定

する。ミラーニューロン系には、多様な行為がする。ミラーニューロン系には、多様な行為がする。ミラーニューロン系には、多様な行為がする。ミラーニューロン系には、多様な行為が

コード化されているので、他人の行為を目にすコード化されているので、他人の行為を目にすコード化されているので、他人の行為を目にすコード化されているので、他人の行為を目にす

るとそれに該当する行為が脳内で行われ、そのるとそれに該当する行為が脳内で行われ、そのるとそれに該当する行為が脳内で行われ、そのるとそれに該当する行為が脳内で行われ、その

行動の意味が直感的に理解できる。行動の意味が直感的に理解できる。行動の意味が直感的に理解できる。行動の意味が直感的に理解できる。出所:出所:出所:出所: リゾラッティリゾラッティリゾラッティリゾラッティ G.G.G.G. & C. & C. & C. & C. シニガリアシニガリアシニガリアシニガリア『『『『ミラーニューロンミラーニューロンミラーニューロンミラーニューロン』』』』 紀伊國屋紀伊國屋紀伊國屋紀伊國屋 (2009)(2009)(2009)(2009)

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Copyright Copyright Copyright Copyright NonakaNonakaNonakaNonaka I. 2010I. 2010I. 2010I. 2010

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創業者ヴィンセンツォ創業者ヴィンセンツォ創業者ヴィンセンツォ創業者ヴィンセンツォ

二代目アンドレア二代目アンドレア二代目アンドレア二代目アンドレア

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知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件知を創発させる場の要件

①①①① 自己超越的な意思・目的をもつ自己組織(セル自己超越的な意思・目的をもつ自己組織(セル自己超越的な意思・目的をもつ自己組織(セル自己超越的な意思・目的をもつ自己組織(セルフ・オーガナイジング)フ・オーガナイジング)フ・オーガナイジング)フ・オーガナイジング)

②②②② 自他の感性、感覚、感情が直接的に共有される自他の感性、感覚、感情が直接的に共有される自他の感性、感覚、感情が直接的に共有される自他の感性、感覚、感情が直接的に共有される(間身体性)(間身体性)(間身体性)(間身体性)

③③③③ 場で生成する「コト」の傍観者でなく当事者として場で生成する「コト」の傍観者でなく当事者として場で生成する「コト」の傍観者でなく当事者として場で生成する「コト」の傍観者でなく当事者として全人的に関わる(コミットメント)全人的に関わる(コミットメント)全人的に関わる(コミットメント)全人的に関わる(コミットメント)

④④④④ 他者との関係性のなかでの自己認識(メタ認知)他者との関係性のなかでの自己認識(メタ認知)他者との関係性のなかでの自己認識(メタ認知)他者との関係性のなかでの自己認識(メタ認知)⑤⑤⑤⑤ 境界は開閉自在で中心は動くー細胞(浸透可能境界は開閉自在で中心は動くー細胞(浸透可能境界は開閉自在で中心は動くー細胞(浸透可能境界は開閉自在で中心は動くー細胞(浸透可能

性)性)性)性)⑥⑥⑥⑥ 異質な知の矛盾と効率よいインターフェイスの両異質な知の矛盾と効率よいインターフェイスの両異質な知の矛盾と効率よいインターフェイスの両異質な知の矛盾と効率よいインターフェイスの両

立立立立ーーーー球体(最少有効多様性)球体(最少有効多様性)球体(最少有効多様性)球体(最少有効多様性)© Nonaka I.

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スクラムスクラムスクラムスクラムスクラムスクラムスクラムスクラム アプローチアプローチアプローチアプローチアプローチアプローチアプローチアプローチ““The New The New NewNew Product Development GameProduct Development Game””

Source: Takeuchi, H. & Nonaka, I. (1986). The New New Product Development, Harvard Business Review January-February, 1986.

連続的連続的連続的連続的 (A) vs. (A) vs. (A) vs. (A) vs. 重複的重複的重複的重複的 (B (B (B (B 及び及び及び及び C) C) C) C) 開発フェーズ開発フェーズ開発フェーズ開発フェーズ

1111 2222 3333 4444 5555 6666

1111 2222 3333 4444 5555 6666

1111 2222 3333 4444 5555 6666

AAAA

BBBB

CCCC

フェーズフェーズフェーズフェーズ

フェーズフェーズフェーズフェーズ

フェーズフェーズフェーズフェーズ

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スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発SCRUM DevelopmentSCRUM Development

製品製品製品製品バックログバックログバックログバックログ

スプリントスプリントスプリントスプリントバックログバックログバックログバックログ

日々のスク日々のスク日々のスク日々のスクラム会議ラム会議ラム会議ラム会議

24時間時間時間時間

2‐‐‐‐4週間週間週間週間

出荷可能な出荷可能な出荷可能な出荷可能な仕様仕様仕様仕様

�Source: http://en.wikipedia.org/wiki/Scrum_%28development%29

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スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発スクラム開発SCRUM DevelopmentSCRUM Development

� スクラム開発では、各メンバーは独自に動きながらも全体としスクラム開発では、各メンバーは独自に動きながらも全体としスクラム開発では、各メンバーは独自に動きながらも全体としスクラム開発では、各メンバーは独自に動きながらも全体としては同じゴールを目指すては同じゴールを目指すては同じゴールを目指すては同じゴールを目指す� 1チームは6~7人1チームは6~7人1チームは6~7人1チームは6~7人

� チーム代表(スクラム・マスター)の仕事はプロセスの実行と管理チーム代表(スクラム・マスター)の仕事はプロセスの実行と管理チーム代表(スクラム・マスター)の仕事はプロセスの実行と管理チーム代表(スクラム・マスター)の仕事はプロセスの実行と管理

� 開発プロセス開発プロセス開発プロセス開発プロセス� 製品バックログ作成:顧客からの要求仕様を明確化し、製品化するソ製品バックログ作成:顧客からの要求仕様を明確化し、製品化するソ製品バックログ作成:顧客からの要求仕様を明確化し、製品化するソ製品バックログ作成:顧客からの要求仕様を明確化し、製品化するソ

フトウェアの各仕様の経済価値と開発工数を明らかにするフトウェアの各仕様の経済価値と開発工数を明らかにするフトウェアの各仕様の経済価値と開発工数を明らかにするフトウェアの各仕様の経済価値と開発工数を明らかにする

� スプリントバックログ作成:製品バックログを詳細仕様に落とし込み、スプリントバックログ作成:製品バックログを詳細仕様に落とし込み、スプリントバックログ作成:製品バックログを詳細仕様に落とし込み、スプリントバックログ作成:製品バックログを詳細仕様に落とし込み、詳細仕様を2~4週間の開発工程に変換しメンバーで共有する詳細仕様を2~4週間の開発工程に変換しメンバーで共有する詳細仕様を2~4週間の開発工程に変換しメンバーで共有する詳細仕様を2~4週間の開発工程に変換しメンバーで共有する

� 毎日のスクラム会議:開発の進捗状況を日々チェックする毎日のスクラム会議:開発の進捗状況を日々チェックする毎日のスクラム会議:開発の進捗状況を日々チェックする毎日のスクラム会議:開発の進捗状況を日々チェックする

� 出荷可能な仕様:スプリントバックログのテストされ問題なく稼働する出荷可能な仕様:スプリントバックログのテストされ問題なく稼働する出荷可能な仕様:スプリントバックログのテストされ問題なく稼働する出荷可能な仕様:スプリントバックログのテストされ問題なく稼働する部分を積み重ね、最終的に顧客の製品要求仕様に仕上げる部分を積み重ね、最終的に顧客の製品要求仕様に仕上げる部分を積み重ね、最終的に顧客の製品要求仕様に仕上げる部分を積み重ね、最終的に顧客の製品要求仕様に仕上げる

Source: http://en.wikipedia.org/wiki/Scrum_%28development%29

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スクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるためにスクラムを前へ進めるために

1.1.1.1. 不安定な状態を保つ不安定な状態を保つ不安定な状態を保つ不安定な状態を保つ

メンバーには高い自由裁量と同時に、極端に困難なゴールを与えるメンバーには高い自由裁量と同時に、極端に困難なゴールを与えるメンバーには高い自由裁量と同時に、極端に困難なゴールを与えるメンバーには高い自由裁量と同時に、極端に困難なゴールを与える

2.2.2.2. プロジェクトチームは自ら組織化するプロジェクトチームは自ら組織化するプロジェクトチームは自ら組織化するプロジェクトチームは自ら組織化する

設立したばかりの企業のように、「情報ゼロ」の状態から始めると、メンバーは自設立したばかりの企業のように、「情報ゼロ」の状態から始めると、メンバーは自設立したばかりの企業のように、「情報ゼロ」の状態から始めると、メンバーは自設立したばかりの企業のように、「情報ゼロ」の状態から始めると、メンバーは自律、自己超越、相互交流を自ずと始める律、自己超越、相互交流を自ずと始める律、自己超越、相互交流を自ずと始める律、自己超越、相互交流を自ずと始める

3.3.3.3. 開発フェーズを重複させる開発フェーズを重複させる開発フェーズを重複させる開発フェーズを重複させる

開発フェーズを重複させることで、「分業の共有」という状態を作り出し、メンバー開発フェーズを重複させることで、「分業の共有」という状態を作り出し、メンバー開発フェーズを重複させることで、「分業の共有」という状態を作り出し、メンバー開発フェーズを重複させることで、「分業の共有」という状態を作り出し、メンバーはプロジェクト全体に責任感をもつようになるはプロジェクト全体に責任感をもつようになるはプロジェクト全体に責任感をもつようになるはプロジェクト全体に責任感をもつようになる

4.4.4.4. 「マルチ学習」「マルチ学習」「マルチ学習」「マルチ学習」

メンバーの学習は、職位と機能のメンバーの学習は、職位と機能のメンバーの学習は、職位と機能のメンバーの学習は、職位と機能の2222つのレベルで行われる。つのレベルで行われる。つのレベルで行われる。つのレベルで行われる。

5.5.5.5. 巧みにマネージする「マルチ学習」巧みにマネージする「マルチ学習」巧みにマネージする「マルチ学習」巧みにマネージする「マルチ学習」

放任せず、自己管理、メンバー間管理、と愛情による管理を強調する放任せず、自己管理、メンバー間管理、と愛情による管理を強調する放任せず、自己管理、メンバー間管理、と愛情による管理を強調する放任せず、自己管理、メンバー間管理、と愛情による管理を強調する

6.6.6.6. 学びを組織で共有する学びを組織で共有する学びを組織で共有する学びを組織で共有する

過去の成功・失敗からの学びの習得・忘却を組織内で浸透させる過去の成功・失敗からの学びの習得・忘却を組織内で浸透させる過去の成功・失敗からの学びの習得・忘却を組織内で浸透させる過去の成功・失敗からの学びの習得・忘却を組織内で浸透させる

Source: Takeuchi, H. & Nonaka, I. (1986). The New New Product Development, Harvard Business Review January-February, 1986.

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場の連鎖をつくる場の連鎖をつくる場の連鎖をつくる場の連鎖をつくる---- スモール・ワールド・ネットワークスモール・ワールド・ネットワークスモール・ワールド・ネットワークスモール・ワールド・ネットワーク ----

6次の隔たり6次の隔たり6次の隔たり6次の隔たり(six degrees of separation) (six degrees of separation) (six degrees of separation) (six degrees of separation) ティッピング・ポイントティッピング・ポイントティッピング・ポイントティッピング・ポイント

© Nonaka I.

遠く離れた一面識もない遠く離れた一面識もない遠く離れた一面識もない遠く離れた一面識もない人でも6人の仲介者が人でも6人の仲介者が人でも6人の仲介者が人でも6人の仲介者がいればつながる。世界いればつながる。世界いればつながる。世界いればつながる。世界は意外にせまいのだ。は意外にせまいのだ。は意外にせまいのだ。は意外にせまいのだ。

コネクターは、ノードがコネクターは、ノードがコネクターは、ノードがコネクターは、ノードが膨大な数をもつスーパー膨大な数をもつスーパー膨大な数をもつスーパー膨大な数をもつスーパースプレッダーはネットのスプレッダーはネットのスプレッダーはネットのスプレッダーはネットの「要」である。「要」である。「要」である。「要」である。

Page 34: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

場の連結による飛躍:場の連結による飛躍:場の連結による飛躍:場の連結による飛躍:トヨタプリウスの開発トヨタプリウスの開発トヨタプリウスの開発トヨタプリウスの開発

� Baの有機的結合Baの有機的結合Baの有機的結合Baの有機的結合

� 技術の横展開・異質技術技術の横展開・異質技術技術の横展開・異質技術技術の横展開・異質技術の知の融合と創発の知の融合と創発の知の融合と創発の知の融合と創発

� RE:レジデンシャル・エンRE:レジデンシャル・エンRE:レジデンシャル・エンRE:レジデンシャル・エンジニアリング手法ジニアリング手法ジニアリング手法ジニアリング手法� 設計者が試作段階で現場設計者が試作段階で現場設計者が試作段階で現場設計者が試作段階で現場

に一時的に滞在し、つくりに一時的に滞在し、つくりに一時的に滞在し、つくりに一時的に滞在し、つくりやすさ、製品の安定性、品やすさ、製品の安定性、品やすさ、製品の安定性、品やすさ、製品の安定性、品質や性能向上など現物を質や性能向上など現物を質や性能向上など現物を質や性能向上など現物を前にした作業者との対話前にした作業者との対話前にした作業者との対話前にした作業者との対話のなかでスピーディな設計のなかでスピーディな設計のなかでスピーディな設計のなかでスピーディな設計変更を繰り返す変更を繰り返す変更を繰り返す変更を繰り返す

� 逆逆逆逆RERERERE

© Nonaka I. & T. Hirata

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③③③③③③③③ありのままの現実を直観するありのままの現実を直観するありのままの現実を直観するありのままの現実を直観するありのままの現実を直観するありのままの現実を直観するありのままの現実を直観するありのままの現実を直観する

時々刻々と変化する、ありのままの個別具体時々刻々と変化する、ありのままの個別具体時々刻々と変化する、ありのままの個別具体時々刻々と変化する、ありのままの個別具体

の現実を凝視し、その背後にある本質を直観の現実を凝視し、その背後にある本質を直観の現実を凝視し、その背後にある本質を直観の現実を凝視し、その背後にある本質を直観的に見抜く状況洞察能力。「一回性」の出来事的に見抜く状況洞察能力。「一回性」の出来事的に見抜く状況洞察能力。「一回性」の出来事的に見抜く状況洞察能力。「一回性」の出来事に「普遍」を洞察する。に「普遍」を洞察する。に「普遍」を洞察する。に「普遍」を洞察する。

神は細部に宿る神は細部に宿る神は細部に宿る神は細部に宿る(God is in detail)(God is in detail)(God is in detail)(God is in detail)

© Nonaka I.

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現実とは何か:現実の二義性現実とは何か:現実の二義性現実とは何か:現実の二義性現実とは何か:現実の二義性リアリティとアクチュアリティリアリティとアクチュアリティリアリティとアクチュアリティリアリティとアクチュアリティ

(モノ的現実)(モノ的現実)(モノ的現実)(モノ的現実) (コト的現実)(コト的現実)(コト的現実)(コト的現実)

� 現実の二義性現実の二義性現実の二義性現実の二義性� アクチュアリティ(アクチュアリティ(アクチュアリティ(アクチュアリティ(actualityactualityactualityactuality))))

「いま・ここ」の時点で進行している関係性(コト)の中で身をもって経験してい「いま・ここ」の時点で進行している関係性(コト)の中で身をもって経験してい「いま・ここ」の時点で進行している関係性(コト)の中で身をもって経験してい「いま・ここ」の時点で進行している関係性(コト)の中で身をもって経験している現実。一瞬も固定できないので、科学では扱えない。主客未分の直観。る現実。一瞬も固定できないので、科学では扱えない。主客未分の直観。る現実。一瞬も固定できないので、科学では扱えない。主客未分の直観。る現実。一瞬も固定できないので、科学では扱えない。主客未分の直観。

� リアリティ(リアリティ(リアリティ(リアリティ(realityrealityrealityreality))))

「モノ」的な現実。完了形で固定化できるので、因果律が明確であり、科学で「モノ」的な現実。完了形で固定化できるので、因果律が明確であり、科学で「モノ」的な現実。完了形で固定化できるので、因果律が明確であり、科学で「モノ」的な現実。完了形で固定化できるので、因果律が明確であり、科学で扱える。扱える。扱える。扱える。

� コトが活き活きとしたアクチュアリティとして感じられるためには、それはコトが活き活きとしたアクチュアリティとして感じられるためには、それはコトが活き活きとしたアクチュアリティとして感じられるためには、それはコトが活き活きとしたアクチュアリティとして感じられるためには、それは

モノによって媒介されている。モノによって媒介されている。モノによって媒介されている。モノによって媒介されている。

� ホンダウエイ:ホンダウエイ:ホンダウエイ:ホンダウエイ:三現主義三現主義三現主義三現主義�現場に行くこと:現場に行くこと:現場に行くこと:現場に行くこと: the the the the actualactualactualactual placeplaceplaceplace

�現物・現物・現物・現物・ 現状を知ること:現状を知ること:現状を知ること:現状を知ること: the the the the actualactualactualactual thing or situationthing or situationthing or situationthing or situation

�現実的であること:現実的であること:現実的であること:現実的であること: being realisticbeing realisticbeing realisticbeing realistic© Nonaka I.

出所:木村敏『心の病理を考える』岩波新書1994

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対象に棲み込む対象に棲み込む対象に棲み込む対象に棲み込む対象に棲み込む対象に棲み込む対象に棲み込む対象に棲み込む--------IndwellingIndwelling--------

提供:本田技研工業提供:本田技研工業提供:本田技研工業提供:本田技研工業

あらゆる状況のあらゆる状況のあらゆる状況のあらゆる状況の手がかりを統合し手がかりを統合し手がかりを統合し手がかりを統合して対象に住み込て対象に住み込て対象に住み込て対象に住み込み、ライダーの視み、ライダーの視み、ライダーの視み、ライダーの視点点点点((((内側内側内側内側))))から切開から切開から切開から切開していく暗黙的なしていく暗黙的なしていく暗黙的なしていく暗黙的な知り方知り方知り方知り方

「マシンを見てい「マシンを見てい「マシンを見てい「マシンを見てい

ると、いろんなこると、いろんなこると、いろんなこると、いろんなことがわかります。とがわかります。とがわかります。とがわかります。あのカーブを切るあのカーブを切るあのカーブを切るあのカーブを切るには、ああやれには、ああやれには、ああやれには、ああやれば、こうすればば、こうすればば、こうすればば、こうすればと・・・。そして次のと・・・。そして次のと・・・。そして次のと・・・。そして次の製作過程へ自然製作過程へ自然製作過程へ自然製作過程へ自然に入っているんでに入っているんでに入っているんでに入っているんです。」す。」す。」す。」

Page 38: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

④④④④直観を本質を究めた概念にする直観を本質を究めた概念にする直観を本質を究めた概念にする直観を本質を究めた概念にする

ミクロの直観を、マクロの構想力(歴史的想像ミクロの直観を、マクロの構想力(歴史的想像ミクロの直観を、マクロの構想力(歴史的想像ミクロの直観を、マクロの構想力(歴史的想像

力・ビジョン・テーマ)と関係づけ、対話を通じて力・ビジョン・テーマ)と関係づけ、対話を通じて力・ビジョン・テーマ)と関係づけ、対話を通じて力・ビジョン・テーマ)と関係づけ、対話を通じて抽象化し、概念化し、仮説化し、物語化する能抽象化し、概念化し、仮説化し、物語化する能抽象化し、概念化し、仮説化し、物語化する能抽象化し、概念化し、仮説化し、物語化する能力である。力である。力である。力である。

「物語は自己を歴史的文脈に位置づけることである」「物語は自己を歴史的文脈に位置づけることである」「物語は自己を歴史的文脈に位置づけることである」「物語は自己を歴史的文脈に位置づけることである」

マッキンタイアマッキンタイアマッキンタイアマッキンタイア『『『『美徳なき時代美徳なき時代美徳なき時代美徳なき時代』』』』

© Nonaka I.

Page 39: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

その場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合うその場で概念(コンセプト)を紡ぎ合う

床の上の床の上の床の上の床の上の

設計図設計図設計図設計図

言葉と動作言葉と動作言葉と動作言葉と動作

提供:本田技研工業提供:本田技研工業提供:本田技研工業提供:本田技研工業

言語化によって言語化によって言語化によって言語化によって

初めて自己の考えが初めて自己の考えが初めて自己の考えが初めて自己の考えが

明確になる明確になる明確になる明確になる

Page 40: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

⑤⑤⑤⑤⑤⑤⑤⑤コンセプトを実現するコンセプトを実現するコンセプトを実現するコンセプトを実現するコンセプトを実現するコンセプトを実現するコンセプトを実現するコンセプトを実現する

情熱と勇気をもって、あらゆる方法を駆使し、情熱と勇気をもって、あらゆる方法を駆使し、情熱と勇気をもって、あらゆる方法を駆使し、情熱と勇気をもって、あらゆる方法を駆使し、状況に応じて、ビジョンを共有・説得し、価値創状況に応じて、ビジョンを共有・説得し、価値創状況に応じて、ビジョンを共有・説得し、価値創状況に応じて、ビジョンを共有・説得し、価値創造を実現するパワーマネジメント能力。造を実現するパワーマネジメント能力。造を実現するパワーマネジメント能力。造を実現するパワーマネジメント能力。

© Nonaka I.

Page 41: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

なぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかなぜ実践が重要なのかコンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断コンテクストの只中での判断

マネジメントの本質:マネジメントの本質:マネジメントの本質:マネジメントの本質: 「何をどこまで見て、やればよいか」「何をどこまで見て、やればよいか」「何をどこまで見て、やればよいか」「何をどこまで見て、やればよいか」の理論はない。究極は、その都度の具体的なコンテクスの理論はない。究極は、その都度の具体的なコンテクスの理論はない。究極は、その都度の具体的なコンテクスの理論はない。究極は、その都度の具体的なコンテクスト(文脈ト(文脈ト(文脈ト(文脈: : : : 時間・場所・人との関係性)における相互作用の時間・場所・人との関係性)における相互作用の時間・場所・人との関係性)における相互作用の時間・場所・人との関係性)における相互作用の中で判断・行動すること。中で判断・行動すること。中で判断・行動すること。中で判断・行動すること。

「やるべきことはいつも同じなんです。現場の人も、中間「やるべきことはいつも同じなんです。現場の人も、中間「やるべきことはいつも同じなんです。現場の人も、中間「やるべきことはいつも同じなんです。現場の人も、中間管理職も、経営者も本当は全部知っているわけですよ。管理職も、経営者も本当は全部知っているわけですよ。管理職も、経営者も本当は全部知っているわけですよ。管理職も、経営者も本当は全部知っているわけですよ。でも、でも、でも、でも、それをどこまで徹底するか、どの水準までするかがそれをどこまで徹底するか、どの水準までするかがそれをどこまで徹底するか、どの水準までするかがそれをどこまで徹底するか、どの水準までするかが問題なんです。問題なんです。問題なんです。問題なんです。…………手抜きや、低い水準の仕事は「仕事手抜きや、低い水準の仕事は「仕事手抜きや、低い水準の仕事は「仕事手抜きや、低い水準の仕事は「仕事じゃない」と言っています。じゃない」と言っています。じゃない」と言っています。じゃない」と言っています。

柳井正柳井正柳井正柳井正 「僕の理想は人より高い」「僕の理想は人より高い」「僕の理想は人より高い」「僕の理想は人より高い」 日経ビジネス日経ビジネス日経ビジネス日経ビジネス2009.06.012009.06.012009.06.012009.06.01

© Nonaka I.

Page 42: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

⑥⑥⑥⑥⑥⑥⑥⑥賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する賢慮を伝承・育成する

個人の全人格に埋め込まれている賢慮を、実践個人の全人格に埋め込まれている賢慮を、実践個人の全人格に埋め込まれている賢慮を、実践個人の全人格に埋め込まれている賢慮を、実践のなかで伝承し、育成し、自律分散的賢慮のなかで伝承し、育成し、自律分散的賢慮のなかで伝承し、育成し、自律分散的賢慮のなかで伝承し、育成し、自律分散的賢慮(distributed (distributed (distributed (distributed pppphronesishronesishronesishronesis))))を体系化する能力。を体系化する能力。を体系化する能力。を体系化する能力。そうすることによって、何が起ろうとも、弾力的・そうすることによって、何が起ろうとも、弾力的・そうすることによって、何が起ろうとも、弾力的・そうすることによって、何が起ろうとも、弾力的・創造的に、リアルタイムで対応できるしなやかな創造的に、リアルタイムで対応できるしなやかな創造的に、リアルタイムで対応できるしなやかな創造的に、リアルタイムで対応できるしなやかな組織組織組織組織(resilient organization)(resilient organization)(resilient organization)(resilient organization)を構築できる。を構築できる。を構築できる。を構築できる。

© Nonaka I.

Page 43: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム手本を進化させるシステム-------- 人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑む人事権をもたずに革新に挑むLPLLPL--------

LPLLPLLPLLPL

開発責任者開発責任者開発責任者開発責任者

設計設計設計設計PLPLPLPL テストテストテストテストPLPLPLPL デザインデザインデザインデザインPLPLPLPL

●●●●エンジンエンジンエンジンエンジン

●ボディ●ボディ●ボディ●ボディ

●サスペンション●サスペンション●サスペンション●サスペンション

●艤装●艤装●艤装●艤装

などなどなどなど

●●●●エンジンエンジンエンジンエンジン

●風洞●風洞●風洞●風洞

●衝突●衝突●衝突●衝突

●エミッション●エミッション●エミッション●エミッション

●耐久●耐久●耐久●耐久

などなどなどなど

●●●●レイアウトレイアウトレイアウトレイアウト

●エクステリアデザイン●エクステリアデザイン●エクステリアデザイン●エクステリアデザイン

●インテリアデザイン●インテリアデザイン●インテリアデザイン●インテリアデザイン

●カラー●カラー●カラー●カラー////表皮表皮表皮表皮

●デザインデータ●デザインデータ●デザインデータ●デザインデータ

●デザインモデル●デザインモデル●デザインモデル●デザインモデル

などなどなどなど出所:本田技研工業株式会社 社内資料

Page 44: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン組織的賢慮:ミドル・アップ・ダウン

矛盾解消矛盾解消矛盾解消矛盾解消

矛盾矛盾矛盾矛盾

知識の転移知識の転移知識の転移知識の転移(現(現(現(現実はこうだ)実はこうだ)実はこうだ)実はこうだ)

トップトップトップトップ

中範囲コンセプト中範囲コンセプト中範囲コンセプト中範囲コンセプト

ミドルミドルミドルミドル

壮大な理論(あるべき理想)壮大な理論(あるべき理想)壮大な理論(あるべき理想)壮大な理論(あるべき理想)

フロントフロントフロントフロント © Nonaka I.

Page 45: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

共通善共通善共通善共通善共通善共通善共通善共通善共通善共通善共通善共通善

重層的

重層的

重層的

重層的ネットワーク

ネットワーク

ネットワーク

ネットワーク

場場場場場場場場

形式知形式知形式知形式知形式知形式知形式知形式知

暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知暗黙知

生活世界生活世界生活世界生活世界生活世界生活世界生活世界生活世界

対話と実践

対話と実践

対話と実践

対話と実践

感性感性感性感性感性感性感性感性

型型型型型型型型(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)(クリエイティブ・ルーティン)

主観主観主観主観経験経験経験経験

個別具体個別具体個別具体個別具体現実主義現実主義現実主義現実主義

客観客観客観客観言語言語言語言語普遍普遍普遍普遍

理想主義理想主義理想主義理想主義

実践知リーダーシップ実践知リーダーシップ実践知リーダーシップ実践知リーダーシップ----PhroneticPhroneticPhroneticPhronetic LeadershipLeadershipLeadershipLeadership----

© Nonaka I., Hirata T.

Page 46: AgileJapan2010 基調講演:野中郁次郎先生による「実践知のリーダシップ~スクラムと知の場作り」

実践知のリーダー実践知のリーダー実践知のリーダー実践知のリーダー「動きながら考え抜く」「動きながら考え抜く」「動きながら考え抜く」「動きながら考え抜く」(Contemplation in Action)

頭頭頭頭 Brain

思索家思索家思索家思索家 Deep Thinker

体体体体 Brawn

実践家実践家実践家実践家 Doer

知的体育会系知的体育会系知的体育会系知的体育会系知的体育会系知的体育会系知的体育会系知的体育会系

““Intellectual MuscleIntellectual Muscle””

共通善に向けた共通善に向けた共通善に向けた共通善に向けた共通善に向けた共通善に向けた共通善に向けた共通善に向けた

「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求「よりよい」の無限追求 © Nonaka I., Toyama R.