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1 AIM/Enduse[Global]モデルの概要 AIM プロジェクトチーム 独立行政法人 国立環境研究所 2009 3 27 資料2-2 ②

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  • 1

    AIM/Enduse[Global]モデルの概要

    AIM プロジェクトチーム

    独立行政法人 国立環境研究所

    2009 年 3 月 27 日

    資料2-2 ②

  • 2

    目次

    1. 手法............................................................................................................................................................ 3 1.1. モデルの概要 ..................................................................................................................................... 3 1.2. 地域・対象ガス・セクターの定義 ................................................................................................. 5 1.3. 削減ポテンシャル・限界削減費用の定義 ..................................................................................... 7 1.4. 限界削減費用曲線 ............................................................................................................................. 7

    1.4.1. 削減費用曲線の概要 .................................................................................................................. 7 1.4.2. 計算に関する諸量について ...................................................................................................... 8

    1.5. 地球温暖化係数 ............................................................................................................................... 11 2. 前提条件.................................................................................................................................................. 12

    2.1. 概要................................................................................................................................................... 12 2.2. 社会経済・マクロ経済のパラメータ設定 ................................................................................... 13

    2.2.1. 人口............................................................................................................................................ 13 2.2.2. GDP............................................................................................................................................. 13 2.2.3. エネルギー価格 ........................................................................................................................ 16

    2.3. 発電部門........................................................................................................................................... 18 2.3.1. 概要............................................................................................................................................ 18 2.3.2. 推計手法 .................................................................................................................................... 18

    2.4. エネルギーサービス需要 ............................................................................................................... 21 2.4.1. 産業部門 .................................................................................................................................... 21 2.4.2. 運輸部門 .................................................................................................................................... 26 2.4.3. 民生部門 .................................................................................................................................... 30 2.4.4. 農業部門 .................................................................................................................................... 34 2.4.5. 廃棄物処理部門 ........................................................................................................................ 36 2.4.6. 化石燃料生産由来 CH4 漏洩部門............................................................................................ 37 2.4.7. フロン排出部門 ........................................................................................................................ 38

    2.5. 対策技術........................................................................................................................................... 40 付録 1 地域の定義 ................................................................................................................................... 47

  • 3

    1. 手法 1.1. モデルの概要

    (1) 主要なモデル出力

    工業製品需給量,サービス需給量,エネルギー需給量,GHG 排出量,大気汚染物質排出量,

    廃棄物排出量,対策コストなど

    (2) 対象地域

    世界各国・各地域 (23 地域)

    (3) 対象年

    2005 年から 2020 年

    (4) 対象セクタ

    エネルギー転換部門,産業部門(鉄鋼,セメント,その他産業),民生家庭・業務部門,運

    輸部門,燃料漏洩起源排出部門,農業部門,廃棄物部門, フロンガス排出部門

    (5) 対象技術

    約 200 種の GHG 排出削減技術を考慮している.現在,実用化されている既存の技術のみを

    対象とし,将来に期待される革新的な技術は考慮していない.

    (6) モデル手法

    マクロ経済およびサービス需要モデルによる需要推計と技術積み上モデルによる GHG 排

    出量推計を組み合わせている.技術積み上げモデルでは、限界削減費用ごとの GHG 排出量が

    推計される.

  • 4

    人口、労働力

    GDP産業別付加価値額

    社会・経済マクロフレームモデル

    鉄鋼生産モデル

    セメント生産モデル

    輸送量モデル

    民生エネルギーサービスモデル

    農業生産モデル

    廃棄物発生モデル

    鉄鋼生産量 セメント生産量第2次産業付加価値額

    輸送量(旅客・貨物)

    家庭エネルギーサービス需要量

    農業生産量 廃棄物発生量

    技術積上モデル(発電部門)

    GHG排出量

    Fガス排出量

    エネルギー採掘量

    モデル

    内生変数

    技術データベース

    エネルギーデータベース

    技術積上モデル(エネルギー採掘部門)

    鉄鋼部門 セメント部門 その他産業部門 運輸部門 家庭部門

    業務エネルギーサービス需要量

    業務部門 農業部門 廃棄物部門 Fガス部門

    データベース

    技 術 積 上 モ デ ル

    マクロ経済指標推計

    サービス需要量推計

    GHG排出量推計

    電力需要量

    エネルギー価格

    排出係数

    初期費用 効率

    寿命 最大普及率

    外生変数

    Fガス排出モデル

    図 1 AIM/Enduse[Global]モデル推計フロー

    推計作業は大きくマクロ経済指標推計,サービス需要量推計,GHG 排出量推計からなる.

    まず,社会・経済マクロフレームモデルを用いてマクロ経済指標の推計を行う.社会・経済マ

    クロフレームモデルは,供給型のマクロ計量経済モデルであり,人口,労働力を入力として,将

    来の GDP(実質価格)および産業別付加価値額(実質価格)を推計する.

    次に,鉄鋼生産モデル,セメント生産モデル,輸送量モデル,民生エネルギーサービスモデル,

    農業生産モデル,廃棄物発生モデルといった要素モデルを用いて鉄鋼生産量,セメント生産量,

    輸送量等のサービス需要量を推計する.これらの要素モデルでは,社会・経済マクロフレームモ

    デルで推計された GDP が入力として用いられる.

    最後に,技術積み上げモデルを用いて GHG 排出量の推計を行う.技術積み上げモデルでは,約

    200 種の具体的技術を対象とし,単位 CO2換算削減あたりのコストが安い順にそれらの技術を積

    み上げることにより限界削減費用ごとの GHG 排出量を推計する.

    技術積み上げモデルに関する推計の順番としては,はじめに鉄鋼部門,セメント部門等の最終

    需要部門についてエネルギー消費量および GHG 排出量を推計する.このとき,事前に推計した鉄

    鋼生産量,セメント生産量,輸送量等のサービス需要量を入力データとして用いる.次に,最終

    需要部門において消費される電力量を所与として,発電部門におけるエネルギー消費量および

    GHG 排出量を推計する.最後に,最終需要部門および発電部門で消費される 1 次エネルギー量を

    所与として,エネルギー採掘部門における GHG 排出量を推計する.

  • 5

    1.2. 地域・対象ガス・セクターの定義

    世界を複数の地域に分類する際,何を分析の対象とするか,その目的によって対象となる地域

    分類の仕方は異なる.本研究では,主要な GHG 排出国に注目し,アジア地域を中心に世界を 23

    地域に分類し,地域毎の削減量や削減費用を比較検討する.その地域分類を図 2 に示す.人為起

    源の GHG については,京都議定書に定められる CO2,CH4,N2O, HFCs,PFCs,SF6 を分析対象

    とする.対象部門については,発電部門,産業部門,民生家庭・業務部門,運輸部門,農畜産部

    門,廃棄物部門,フロンガス排出部門を考慮した.その対象部門,対象ガスを表 1 に示す.また,

    各部門において技術データベースを構築し,技術積み上げ型の評価方法を用いて,一国あるいは

    一地域に適用し,部門毎にシミュレーションを行った.

    表 1 対象ガスおよび対象部門

    GHG 部門 サービス分類

    発電部門 火力発電(石炭,石油,天然ガス),再生可能エネルギー(風力,

    太陽光,バイオマス)

    産業部門 鉄鋼,セメント,その他産業(ボイラー,モーター等)

    運輸部門 乗用車,トラック,バス,鉄道(旅客,貨物),船舶,飛行機,(パイプライン輸送や国際輸送を除く)

    民生家庭

    CO2

    民生業務 冷房,暖房,給湯,調理,照明,冷蔵庫,テレビ(家庭のみ)

    農畜産部門 稲作,農耕地土壌,家畜反芻,家畜糞尿管理 CH4, N2O 廃棄物部門 一般廃棄物 CH4 燃料漏洩 燃料漏洩(石炭,石油,天然ガス) HFCs, PFCs, SF6

    フロンガス HCFC-22 の副産物,冷媒,エアロゾル,断熱材・発泡剤,洗浄剤,金属生産工程,絶縁ガス,その他

    注1) 原子力,水力,地熱発電はベースラインでは考慮しているが,対策技術としては考慮していない.

    注2) 石油化学産業における CO2 削減技術,化学産業における N2O 削減技術,汚水処理におけるN2O 削減技術など,いくつかの業種における対策技術はデータの有効性を検討中のため,本研究の削減ポテンシャルには含まれていない.

    注3) 実用化されている既存の技術のみを評価対象とし,将来に期待される革新的な技術はデータの制約等により考慮されていない.(例えば CCS は 2020 年の分析には含まれていない).

  • 6

    JPN(日本)

    CHN(中国)

    IND(インド)

    IDN(インドネシア)

    KOR(韓国)

    THA(タイ)

    XSE(他東南アジア)

    XSA(他南アジア)

    XME(中東)

    AUS(オーストラリア)

    NZL(ニュージーランド)

    CAN(カナダ)

    USA(米国)

    XE15(西欧15国)

    XE10(東欧10国)

    RUS(ロシア)

    ARG(アルゼンチン)

    BRA(ブラジル)

    MEX(メキシコ)

    XLM(他南米)

    ZAF(南アフリカ)

    XAF(他アフリカ)

    XRW(その他地域)

    世界23地域

    図 2 AIM/Enduse[Global]の地域分類

    表 2 World 23 regions in AIM/Enduse[Global] Code 地域名 分類 Code 地域名 分類

    JPN 日本 Annex I CAN カナダ Annex I CHN 中国 Non Annex I USA 米国 Annex I IND インド Non Annex I XE15 西欧 15 カ国 Annex I IDN インドネシア Non Annex I XE10 東欧 10 カ国 Annex I KOR 韓国 Non Annex I RUS ロシア Annex I THA タイ Non Annex I ARG アルゼンチン Non Annex I XSE その他東南アジア Non Annex I BRA ブラジル Non Annex I XSA その他南アジア Non Annex I MEX メキシコ Non Annex I XME 中東 Non Annex I XLM その他南米 Non Annex I AUS オーストラリア Annex I ZAF 南アフリカ Non Annex I NZL ニュージーランド Annex I XAF その他アフリカ Non Annex I

    XRW その他地域 Annex I &Non Annex I 注4) その他地域(XRW)の中には,Non Annex I と Annex I に含まれる国があるが,IEA(2007e)より,

    現状の排出量は Non Annex I 諸国の方が多い.将来の排出量について,その他地域各国の経済活動や排出量の動向が異なるため,その他地域に含まれる Annex I 諸国のみを恣意的に分割することを避け,その他地域に含まれる Annex I 諸国については,Annex I の結果に含めずに分析を行なっていた.ただし,中期目標検討対応においては,分析の評価項目の一つに Annex Iも考慮されている.そこで,その他地域(XRW)に含まれる Annex I および Non Annex I については,2020 年のその他地域各国の経済活動量,排出量の割合が,2005 年時点と同様と仮定し,2005 年の「その他 Annex I(AXRW)」と「その他 Non Annex I(OXRW)」の割合を用いて,2020 年のその他地域(XRW)の排出量を簡易に按分する形で分析をしている.

  • 7

    1.3. 削減ポテンシャル・限界削減費用の定義

    本研究において,活動量とは「GHG を排出する要因となる活動の量」と定義し,その種類を活

    動種と呼ぶ.たとえば, 民生家庭・業務部門における冷暖房や照明,産業部門の鉄鋼業における

    粗鋼生産量,運輸部門の輸送量などを指す.また,ベースラインに対して追加的な緩和策を講じ

    たものを削減ポテンシャルとするが,IPCC 第四次評価報告書第三作業部会(IPCC AR4WG3)で

    は,ベースラインを「緩和策の結果を定量的に評価するうえで比較とされる基準」とし,削減ポ

    テンシャルを「所与の炭素価格(GHG 排出量を 1 単位削減するための費用)において,ベースラ

    インの排出量との比較における GHG 削減量を表す概念」のように定義している.本研究は,同様

    の定義に従って削減ポテンシャルを算定した.

    この削減ポテンシャルは,考慮する対策技術の範囲やその効率や普及率,将来の価格(技術価格,

    エネルギー価格,炭素価格)などによって結果が変わってくるが,それだけでなく,ベースライン

    の設定の差異によっても結果が変わる.そこで,本研究では,技術積み上げ型の分析において IPCC

    AR4WG3 でレビューされた論文にも用いられている「技術固定ケース」をベースラインとし,つ

    まり,将来において基準で用いられる技術のシェアやその効率などが,基準年の状況と同様と設

    定した.したがって,本研究における,削減ポテンシャルとは,「分析の対象年,対象地域,対象

    部門にて,技術の普及(シェアや効率など)が基準年の導入状況と同様としたときと比較し,新

    たな対策技術の導入による削減量」と定義する.そして,対策費用とは,個々の技術対策を導入

    する際に必要な初期費用(つまり固定費用)および燃料費用や運転費用など活動量に伴って変動

    する運用費用(つまり可変費用)の和を表わす.したがって,限界削減費用とは「GHG の排出量

    を追加的に 1 単位削減するために必要な対策費用の増加分」と定義する.部門毎に様々な技術対

    策があり,その規模も異なるので,技術毎に異なる限界削減費用が算出されるが,導入された技

    術が導入に要した費用を相殺するほどのエネルギー削減効果をもたらす場合には,限界削減費用

    は負となることもある.

    1.4. 限界削減費用曲線

    1.4.1. 削減費用曲線の概要

    以下の手順で,削減費用曲線を求める.

    ① 対象地域,対象部門にて,技術別に基準年の技術を設定.技術データベース(技術コスト,

    エネルギー消費量,技術あたりの活動供給量,寿命,普及率など)やエネルギーデータベー

    ス(エネルギー種,エネルギー価格,排出原単位など)を設定する.

    ② 分析の対象年 t ,対象地域 i ,対象部門 j にて,活動量を設定する.

    ③ 各部門の各技術別 l について,活動供給量1単位あたりの GHG 排出削減量 ,GHG,ˆtl iQΔ ,基準で

    普及している技術(ストック平均)と比較し対策技術 1 単位あたりの追加費用 ,ˆtl iCΔ ,導入可

    能量 max,,t

    l iSΔ を求める.

    ④ 部門 j 毎あるいは地域全体で,削減量あたりの追加費用 GHGt iltil QC

    ,,,

    ˆˆ ΔΔ が小さい技術の順に,

    縦軸に削減量あたりの追加費用,横軸に可能削減量 ,GHG,ˆ t

    l iQΔ の技術 l に関する累積量を算定す

  • 8

    る.

    例えば,削減費用が 100 ドル(CO2 換算トン当たり)以下の対策を取った場合の削減量を,対策

    技術の削減ポテンシャルとする.

    限界

    削減

    費用

    0

    累積GHG削減量(CO2換算トン)

    技術1

    技術2

    技術3

    削減費用100ドル(CO2換算トンあたり)

    削減ポテンシャル

    技術4

    技術5

    図 3 限界削減費用曲線

    1.4.2. 計算に関する諸量について

    初めに、推計式で用いた記号を表 3 に示す.

    表 3 記号表 記号 名前 記号 名前

    i 地域 SC l,i 補助金率,外生変数

    j サービス種 T l,i 技術lの寿命,外生変数k エネルギー種 U k,l 技術lに投入されるエネルギー種kのうち燃料使用される比率,外生変数l 技術種 W j サービス種jの技術lの集合

    m ガス種 X l,i 地域iにおける技術lの運転量

    t 第t年(年単位) 利子率,外生変数t0 初期年 第l技術の削減費用より高い技術によるサービス需要量

    第t年での第l技術の導入可能技術量

    技術lの一単位運転による第jサービスの供給量 第t年での第l技術導入の1単位サービスあたりの追加費用

    第t年での第l技術導入による削減一単位あたりの追加費用 第t年での第l技術導入の1単位サービスあたりの第mガス排出削減量技術lの原価,外生変数 第t年での第l技術導入の1単位サービスあたりのGHG排出削減量

    第jサービス供給の費用 第t年での第l技術導入による可能削減量

    技術lの固定費,運転費を含んだ年価 第t年での第j種需要量の初期年ストック供給量とのギャップ分

    地域iにおけるサービス種jのサービス需要量,外生変数 運転余裕係数,外生変数技術lを1単位運転するときのエネルギー種kの消費量,外生変数 供給効率改善係数,外生変数

    技術lを1単位運転するときの第mガスの排出量 技術lの運転方法や整備によるエネルギー種kの効率改善係数,外生変数

    技術lを1単位運転するときにエネルギー以外から排出されるガスmの量,外生変数 サービス種jでの技術lの最大占有率,外生変数

    技術lにてエネルギー種kを1単位消費したときに排出されるガスmの量,外生変数 技術lのサービス種jに対する最大可能占有率GWP m 第mガスのGWP,外生変数

    技術lを1単位運転したときの燃料費以外の運転費用,外生変数

    エネルギー種k 1単位の価格,外生変数

    第j種サービス供給によるガスmの排出量第t年での初期ストックの残存量

    ,tl iAC

    , ,ˆ tl j iA

    ,ˆ t

    l iB

    ,tj iC

    ,ˆ tl iC

    ,tj iD

    , ,ˆ t

    k l iE,,ˆ

    t ml ie

    ,0,ˆ t m

    lf,,

    ˆ t mk lf

    0, ,ˆt

    l ig

    1, ,ˆt

    k ig,,

    t mj iQ

    ,tl iS

    , ,tl j iDΔmax,,

    tl iSΔ

    ,ˆ t

    l iCΔ,,

    ˆ t ml iQΔ,GHG,

    ˆ tl iQΔ

    ,GHGpot, ,t

    l iQΔinit,,

    tj iDΔ

    ,tl iΛ

    ,tj iΨ

    , ,tk l iξ

    , ,tl j iθ', ,t

    l j iθ

    第 j 種サービス供給のためのガス m の排出量 ,,

    t mj iQ

    地域 i での技術 l の運転量 Xtl,i に地域 i の技術 l を 1 単位運転するときのガス m の排出量である,,ˆ

    t ml ie を乗じることによって得られる.

    , ,, , ,ˆ

    j

    t m t t mj i l i l i

    l W

    Q X e∈

    = ⋅∑ (1.1)

  • 9

    ガス排出原単位量 ,,ˆt ml ie

    技術 l を 1 単位運転するとき,エネルギー消費以外から排出されるガス m の量である ,0,ˆt mlf ,お

    よび技術 l にてエネルギー種 k を 1 単位消費したときに排出されるガス m の量である ,,ˆt m

    k lf ,投入

    燃料中の燃料使用率(1-原料率)である Uk,l,技術 l を 1 単位運転するときのエネルギー種 k の消費量 , ,

    ˆ tk l iE ,エネルギー効率改善係数 , ,

    tk l iξ を用いて次式で表される.

    ( ), , ,, 0, , , , , , ,ˆ ˆ ˆˆ 1t m t m t m t tl i l k l k l i k l i k lk

    e f f E Uξ= + ⋅ − ⋅ ⋅∑ (1.2)

    サービス需要量 ,

    tj iD

    地域 i におけるサービス種 j の供給効率改善係数である ,tj iΨ ,技術 l の一単位運転によるサービ

    ス種 j の供給量 , ,ˆtl j iA を用い次式で表される.

    ( ), , , , .ˆ1j

    t t t tj i j i l j i l i

    l W

    D A X∈

    = + Ψ ⋅ ⋅∑ (1.3)

    運転量 ,l iX

    地域 i における技術 l のストックに運転余裕係数 Λtl,iを考慮した値とする

    ,,

    ,1

    tl it

    l i tl i

    SX =

    + Λ (1.4)

    技術 l の年価 ,ˆ

    tl iC

    ,ˆ t

    l iB を技術 l の原価,αiを利子率,SCl,iを補助金率,Ti,i を技術 l の寿命,技術 l を 1 単位運転し

    たときの燃料費以外の運転費用を 0, ,ˆt

    l ig ,エネルギー種 kを1単位消費したときにかかる燃費を 1, ,t

    k ig

    として,

    ( ),

    ,

    t0, , 1, , , , , ,

    , , ,,

    ˆˆ 1(1 )ˆ ˆ (1 )

    1(1 ) 1

    l i

    l i

    t t tl i k i k l i k l iT

    t t i i kl i l i l i T t

    l ii

    g g EC B SC

    ξα α

    α

    + ⋅ ⋅+

    = ⋅ − ⋅ ++ Λ+ −

    ∑ - (1.5)

    第 j サービス供給の費用 ,

    tj iC

    , , ,ˆ

    j

    t t tj i l i l i

    l W

    C C S∈

    = ⋅∑ (1.6)

    時期 t のストック残存量 ,

    tl iS

    技術 l は時間とともに退役する.技術 l の寿命を Tl,iとすれば,初期年ストックが第 t 年に残存

    している量は, 0

    .

    ( )0

    , ,l i

    t tTt

    l i l iS S e−

    −= ⋅ (1.7)

  • 10

    第 t 年での第 j 種需要量の初期年ストック供給量とのギャップ分 init,,

    tj iDΔ

    ( )0, ,init, 0 0

    , , , . .,

    1 ˆ1

    l i

    j

    t t tj iTt t

    j i j i l i l j itl il W

    D D S e A−

    + ΨΔ = − ⋅ ⋅ ⋅

    + Λ∑ (1.8)

    第 t 年での第 l 技術の1単位サービスあたりの第 m ガス排出削減量 ,,ˆ

    t ml iQΔ および GHG 排出削減量

    ,GHG,

    ˆ tl iQΔ

    第 m ガスの GWP を GWPmとして,

    ( )0, ,, ,,

    , 0, , , ,

    ˆˆˆ 1

    m t mj i l it m

    l i t tj i l j i j i

    Q eQ

    D AΔ = −

    + Ψ (1.9)

    ,GHG ,, ,

    ˆ ˆt t ml i m l i

    m

    Q GWP QΔ = ⋅ Δ∑ (1.10)

    第 t 年での第 l 技術導入の1単位サービスあたりの追加費用 ,ˆ

    tl iCΔ

    0, , ,

    , 0, , , ,

    ˆ (1 )ˆˆ (1 )

    t tj i l i l it

    l i t tj i l j i j i

    C CC

    D A

    ⋅ + ΛΔ = −

    ⋅ + Ψ (1.11)

    第 t 年での第 l 技術導入による削減一単位あたりの追加費用 ,

    tl iAC

    ,, ,GHG

    ,

    ˆ

    ˆ

    tl it

    l i tl i

    CAC

    Q

    Δ=Δ

    (1.12)

    第 t 年での第 l 技術の導入可能技術量 max,,t

    l iSΔ

    ( )( ) ( )

    , , , , ,max, 1,

    , , ,

    1,ˆ 1

    t t tl j i l j i l it

    l i t tl j i j i

    DS j W l

    A

    θ−

    Δ ⋅ ⋅ + ΛΔ = =

    ⋅ + Ψ 

    (1.13)

    ただし, , ,tl j iDΔ とは第 l 技術の単位削減費用より低い単位削減費用の技術では供給できなかったサ

    ービス需要量,θtl,j,iは技術 l のサービス種 j に対する最大可能占有率である.

    ( )( )( ), ,

    max,, , ,,init,

    , , ,, , ,

    ˆ 1

    1t tl i l i

    t t tl j i j il it t

    l j i j i t tl j i l il AC AC

    S AD D

    θ′

    ′′

    ′ ′′∈ <

    Δ ⋅ ⋅ + ΨΔ = Δ −

    ⋅ + Λ∑

    (1.14)

    第 t 年での第 l 技術導入による可能削減量 ,GHGpot, ,t

    l iQΔ ,GHG ,GHG

    pot, , , , ,ˆt t t

    l i l i l j iQ Q DΔ = Δ ⋅ Δ (1.15)

  • 11

    1.5. 地球温暖化係数

    CO2 以外の温室効果ガスによる温暖化効果は,地球温暖化係数(Global Warming Potential: GWP)を用いて評価される.GWP とは,時刻t=0 において大気中に放出された単位質量の温室効果物質が,時刻 t までに大気に及ぼした放射的な効果を,基準物質との相対値として表わしたものである.この基準物質に何をとるかによって異なるが,IPCC より基準物質に CO2を用いることが定められ,したがって,CO2 以外の温室効果ガスについては,CO2 等価換算量として表わされれる.ただし,この GWP には,温暖化への直接効果は考慮されているが,間接効果,例えば大気中での化学反応によって生じるエアロゾルによる冷却効果は考慮されていない.この GWP値は,IPCC の第二次評価報告書(IPCC 1995)),第三次評価報告書(IPCC 2001),第四次評価報告書(IPCC 2007)と表 4 のように値が更新されている.第四次評価報告書の GWP 値が最新版であるが,京都議定書の第一約束期間に使用する GWP 値は,京都議定書 5 条 3 で「COP3 で決められたものを使用する」と定められ,COP3 では,IPCC 第二次評価報告書に記載されている GWP100年値を使用すると決められているため,本分析でもそれらを用いている.ただし,現在,IPCC 第四次評価報告書に記載されている GWP100 年値に変更するべき,という議論もある.

    表 4 The Global Warming Potentials of major non-CO2 GHGs

    Species Chemical Formula

    Climate Change 1995

    Climate Change 2001

    Climate Change 2007

    Methane CH4 21 23 25 Nitrous oxide N2O 310 296 298 HFCs HFC-23 CHF3 11700 12000 14800 HFC-32 CH2F2 650 550 675 HFC-125 C2HF5 2800 3400 3500 HFC-134a CH2FCF3 1300 1300 1430 HFC-143a CF3CH3 3800 4300 4470 HFC-152a C2H4F2 140 120 124 HFC-227ea C3HF7 2900 3500 3220 HFC-236fa C3H2F6 6300 9400 9810 HFC-245ca C3H3F5 560 640 640 HFC-43-10mee C5H2F10 1300 1500 1640 PFCs Perfluoromethane CF4 6500 5700 7390 Perfluoroethane C2F6 9200 11900 12200 Perfluoropropane C3F8 7000 8600 8830 Perfluorobutane C4 F10 7000 8600 8860 Perfluorocyclobutane c-C4F8 8700 10000 10300 Perfluoropentane C5F12 7500 8900 9160 Perfluorohexane C6F14 7400 9000 9300 SF6 Sulphur hexafluoride SF6 23900 22200 22800

  • 12

    2. 前提条件 2.1. 概要

    本研究では,GHG 排出削減ポテンシャルを推計するために,まず,各部門,各業種の活動量を外生的に設定する必要がある.そこで,各部門ともに数十件(部門により異なるが 10~50 件)の国内・国際統計書を元に過去~基準年の地域別のデータを整備し,それらを用いて各部門におけ

    るサービス量推計モデルを作成し,将来の活動量を推計する.粗鋼は粗鋼生産量推計モデル,セ

    メントはセメント生産量推計モデル,その他産業は社会経済マクロフレームモデル,輸送量は旅

    客輸送量推計モデルおよび貨物輸送量推計モデルなど,部門別活動量を地域別に推計する.各推

    計において,GDP や人口を説明変数に用いる場合は,全部門共通の値を用いている.将来の人口は UN による中位推計を,将来の経済成長率は日本経済研究センターが提示した各主要国および世界の GDP 成長率をもとに,マクロ計量モデル(社会経済マクロフレームモデル)により 23 地域別に推計した.現在の世界のエネルギー価格については,IEA Energy Prices and Taxes(IEA, 2007b)を参照し,将来のエネルギー価格については,日本エネルギー経済研究所の将来見通しを用いて

    いる. ここで重要な点は,本研究のような積み上げ型モデルでは,活動量は外生的に設定する必要が

    ある.したがって,温暖化の対策を取ったことによる活動量や価格の変化,社会構造の変化とい

    った波及効果は本研究では考慮されていない. 本研究では,削減対策において,初期費用とランニング費用を考慮しているが,割引率の設定

    の違いにより,対策費用も異なってくる.投資に関する割引率の設定と投資回収年の関係につい

    て,本研究では表 5 に示す異なるケースを検討している.

    表 5 割引率の設定

    分類 対象部門 評価基準および投資回収年数の設定投資回収年の例

    (カッコ内はモデルで設定した寿命)

    長い回収年

    全部門

    エネルギー消費に関連する部門において,投資回収年数を約3年と短く設定すると,利益が得られる限られた対策にしか投資がされず,省エネ対策が十分に導入されない.そこで,省エネ投資や炭素の価格付けなどの政策により省エネ対策が十分に導入される場合を考慮し,全部門において十分な投資回収期間(各対策技術の寿命の5~7割に相当する投資回収年)となるように設定する.

    民生機器:7-10年 (10-15年)乗用車・トラック・バス:6-9年 (8-12年)プラント:14-15年 (30年)鉄道・船舶:12-13年 (20年)断熱住宅:15-16年(30年)

    短い回収年

    家庭・業務(白物家電)

    運輸(自動車)

    産業(その他業種横断)

    中央環境審議会地球環境部会では,投資回収年数を産業,民生業務で3年,民生家庭で5年とし,省エネセンターによるアンケート調査でも,各部門を平均して4.4年と報告されている.これらの文献やアンケート調査に基づいて,「対策技術の見通し」があり,また「技術改善の進歩が速い」,エネルギー消費に関連するこれらの部門では,投資回収年数を約3年程度と設定.

    民生機器:3年 (10-15年)乗用車・トラック・バス:3年 (8-12年)その他業種横断:3年

    発電

    産業(鉄鋼,セメント)

    運輸(鉄道,船舶,航空)家庭・業務(断熱住宅)

    鉄鋼プラントやセメントプラントのように設備の規模が大きいもの,断熱住宅のように対策技術の寿命が長いもの,また,発電や鉄道のように公共性の高いものについては,投資回収年を約10年程度と長めに設定.

    プラント:9-10年 (30年)鉄道・船舶: 8-9年 (20年)断熱住宅: 9-10年 (30年)

    農業畜産

    廃棄物

    フロンガス排出

    上述するエネルギー消費関連部門とは異なる特徴を持ち,例えば,排ガスの回収や設備管理といった対策技術のように,技術の見通しが大きく変わらない,また技術改善の進歩が速くないこれらの部門では,各種技術の寿命を考慮し,十分な投資回収期間(各対策技術の寿命の5~7割に相当する投資回収年)となるようにする.

    農畜産: 1-11年 (1-15年)廃棄物:10-16年 (15-30年)フロン: 1-13年 (1-20年)

  • 13

    2.2. 社会経済・マクロ経済のパラメータ設定

    2.2.1. 人口

    人口および生産年齢人口は,United Nations (2007)の中位推計値を用いた.ただし,United Nations

    (2007)には台湾が含まれていないので,台湾に関しては Council for economic planning and

    development(2008)の中位推計値を用いた.表に用いた人口シナリオを示す.

    1971 年時点で世界の人口は約 38 億人だったが,2005 年には 65 億人になり,2020 年には約 77

    億人(2005 年の 1.18 倍)になると予想されている.特に発展途上国における人口の伸びは著しく,

    単独国としては,中国 14.3 億人(1.08 倍),インド 13.8 億人(1.22 倍),地域としてはアフリカも

    12.7 億人(1.38 倍)となる.また,中国,インドをはじめとしたアジア地域の人口は約 41 億人,

    世界の 53%を占めるようになっている.

    表 6 人口シナリオ

    2005 2020 2030 2005 2020 2030日本 128 124 118 85 75 69中国 1,321 1,430 1,467 934 998 975インド 1,134 1,379 1,506 704 918 1,028インドネシア 227 264 282 150 183 195韓国 48 49 48 34 35 31タイ 63 68 69 44 47 45東南アジア 268 327 359 169 220 244南アジア 384 500 575 229 319 375中東 192 254 293 119 166 198オーストラリア 20 23 25 14 15 16ニュージーランド 4 5 5 3 3 3カナダ 32 37 39 22 24 24アメリカ 300 343 366 201 222 229西ヨーロッパ 387 399 402 258 256 245東ヨーロッパ 74 72 69 52 48 45ロシア 144 132 124 102 92 83メキシコ 104 121 128 66 82 86アルゼンチン 39 44 48 25 29 31ブラジル 187 220 236 123 148 157中南米 228 275 301 142 180 197南アフリカ 48 51 53 31 33 35その他アフリカ 874 1,219 1,465 478 704 890その他世界 332 354 362 222 242 242世界全体 6,538 7,691 8,341 4,208 5,039 5,444

    百万人

    人口 生産年齢人口

    2.2.2. GDP

    社会・経済マクロフレームモデルは,人口を入力として GDP,産業別付加価値額,民間最終消

    費,総固定資本形成といったマクロ経済指標を推計する.固定資本ストックと就業者数から GDP

    を推計し,それに基づきその他のマクロ経済指標を決定する供給型のマクロ経済モデルである.

    社会・経済マクロフレームモデルの構造を図 4 に示す.また,推計式で用いた記号を表に示す.

  • 14

    民間最終消費CPi, t

    総固定資本形成Ii, t

    固定資本ストックKi, t

    就業者数Li, t

    生産年齢人口

    タイムトレンド

    産業付加価値額シェア

    RVAi, s, t

    産業別付加価値額VAi, s, t

    国内総生産GDPi, t

    推計式 定義式

    内生変数 外生変数

    i: 地域t: 年s: 産業

    民間最終消費CPi, t

    総固定資本形成Ii, t

    固定資本ストックKi, t

    就業者数Li, t

    生産年齢人口

    タイムトレンド

    産業付加価値額シェア

    RVAi, s, t

    産業別付加価値額VAi, s, t

    国内総生産GDPi, t

    推計式 定義式

    内生変数 外生変数

    民間最終消費CPi, t

    総固定資本形成Ii, t

    固定資本ストックKi, t

    就業者数Li, t

    生産年齢人口

    タイムトレンド

    産業付加価値額シェア

    RVAi, s, t

    産業別付加価値額VAi, s, t

    国内総生産GDPi, t

    推計式 定義式

    内生変数 外生変数

    i: 地域t: 年s: 産業

    ,i tPOP1564

    TIME

    図 4 社会・経済マクロフレームモデルの構造

    表 7 使用した記号 記号 名前 記号 名前

    サフィックス i 地域t 年

    s産業{AGR:第1次産業, IND:第2次産業, SER:第3次産業}

    パラメータ cpa i 係数cpb i 係数cpc i 係数ka i 係数gdpa i 係数gdpb i 係数gdpc i 係数ia i 係数ib i 係数ic i 係数id i 係数

    パラメータ rvaa i 係数rvab i 係数rvac i 係数la i 係数lb i 係数

    外生変数 生産年齢人口タイムトレンド変数

    内生変数 CP i,t 民間最終消費GDP i,t GDPI i,t 総固定資本形成IND i,t 第2次産業付加価値額K i,t 固定資本ストックL i,t 就業者数LRVA s,i,t ロジットモデルの従属変数RVA s,i,t 産業別付加価値額シェアVA s,i,t 産業別付加価値額

    TIME,i tPOP1564

    (1) GDP

    GDP 生産関数は,コブ=ダグラス型生産関数を採用し,固定資本ストック Ki,t と就業者数

    Li,tから実質 GDP(2000 年ドル基準)が決定するとした.経時的な技術進歩を表現するためにタ

    イムトレンド変数TIME を導入した.ここで exp(gdpa)は全要素生産性を表し,TIME の係数gdpb はその年変化率を表す.

    , ,

    , ,

    ln lni t i ti i ii t i t

    GDP Kgdpa gdpb TIME gdpc

    L L⎛ ⎞ ⎛ ⎞

    = + ⋅ + ⋅⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎝ ⎠ ⎝ ⎠

    (2.2)

    (2) 就業者数

    就業者数 Li,tは,生産年齢である 15 才~64 才の人口(以下,生産年齢人口) ,i tPOP1564 に

    よって決定されるとした.

    ,, i ti t i iL la lb POP1564= + ⋅ (2.3)

  • 15

    (3) 総固定資本形成

    総固定資本形成 Ii,tは,GDP により説明される.さらに,ストック調整を考慮し前年期の資

    本形成 Ii,t-1,前年期の資本ストック Ki,t-1を説明変数として用いている.

    , , , 1 , 1i t i i i t i i t i i tI ia ib GDP ic I id K− −= + ⋅ + ⋅ + ⋅ (2.4)

    (4) 固定資本ストック

    固定資本ストック Ki,tは,前年の固定資本ストック Ki,tから減耗分を差し引き,さらに総固

    定資本形成 Ii,t を足すことにより計算される.ここで,パラメータ kai は固定資本ストックの

    減耗率を表す.

    ( ), , 1 ,1i t i i t i tK ka K I−= − ⋅ + (2.5)

    (5) 民間最終消費

    民間最終消費 CPi,tは習慣仮説を考慮し,GDP および前年期の民間最終消費により決定され

    るとした.

    , , , 1i t i i i t i i tCP cpa cpb GDP cpc CP −= + ⋅ + ⋅ (2.6)

    (6) 産業別付加価値額

    産業別付加価値額 VAi,s,t は,GDP に産業別付加価値額シェア RVAi,s,t を掛け合わせることに

    より求めた.産業別付加価値額シェアとは,各産業の付加価値額の GDP に占める割合である.

    , , , , ,s i t i t s i tVA GDP RVA= ⋅ (2.7)

    (7) 産業別付加価値額シェア

    産業別付加価値額シェア RVAs,i,tは,多項ロジットモデルにより定式化を行った.説明変数

    には,一人あたり GDP の自然対数を使用した.

    ( ){ }( ){ }

    , , ,, ,

    ', ', ,'

    exp ln

    exp lns i s i i t

    s i ts i s i i t

    s

    rvaa rvab GDPPRVA

    rvaa rvab GDPP

    + ⋅=

    + ⋅∑ (2.8)

    GDP の推計結果を表に示す.

  • 16

    表 8 GDP の推計結果

    2005 2020 2030 2005 2020 2030

    日本 38.8 48.2 57.7 4,960 5,994 6,821中国 1.5 4.6 8.1 2,024 6,540 11,824インド 0.5 1.3 2.2 611 1,767 3,287インドネシア 0.9 1.5 2.0 203 403 565韓国 12.1 22.1 30.9 577 1,088 1,495タイ 2.4 4.6 6.8 151 311 470東南アジア 1.4 2.6 3.9 383 860 1,394南アジア 0.5 0.8 1.0 189 376 556中東 4.1 6.3 8.3 785 1,599 2,436オーストラリア 22.8 31.0 38.4 463 725 972ニュージーランド 15.2 20.1 25.5 62 93 125カナダ 25.3 31.2 36.2 815 1,142 1,416アメリカ 36.2 42.3 48.7 10,868 14,496 17,844西ヨーロッパ 22.5 28.6 32.8 8,690 11,404 13,176東ヨーロッパ 5.5 8.1 10.5 405 583 727ロシア 2.3 5.1 7.8 328 677 964メキシコ 6.0 10.2 14.6 622 1,230 1,864アルゼンチン 7.9 10.6 12.1 308 471 574ブラジル 3.5 5.7 7.7 663 1,251 1,814中南米 2.8 4.1 5.3 633 1,127 1,595南アフリカ 3.3 4.9 6.1 156 251 325その他アフリカ 0.7 1.0 1.3 568 1,205 1,851その他世界 4.0 6.1 7.9 1,317 2,144 2,855世界 5.5 7.2 9.0 35,782 55,738 74,9481) 2000年基準実質価格

    一人あたりGDP

    [10億US$]1)[1000US$]1)

    GDP

    2.2.3. エネルギー価格

    2.2.3.1. 概要

    現在の各国および世界のエネルギー価格については,IEA Energy Prices and Taxes (IEA, 2007b)

    を参照し,将来のエネルギー価格については,日本エネルギー経済研究所の見通しを用いてい

    る.

    2.2.3.2. 結果

    本研究では,IEA Energy Prices and Taxes (IEA, 2007b)および日本エネルギー経済研究所による

    将来のエネルギー価格の見通しを用いて,表 9 に示すエネルギー価格を用いて分析を行ってい

    る.

  • 17

    表 9 23 地域の部門別エネルギー価格 JPN CHN IND IDN KOR THA XSE XSA XME AUS NZL CAN

    Industry 2000 Coal 0.07 0.04 0.05 0.03 0.08 0.05 0.05 0.05 0.04 0.07 0.07 0.07Oil 0.23 0.15 0.29 0.05 0.30 0.24 0.24 0.29 0.08 0.21 0.27 0.19Gas 0.50 0.18 0.13 0.05 0.38 0.13 0.13 0.13 0.03 0.15 0.07 0.10Electricity 1.67 0.71 0.93 0.42 0.60 0.66 0.66 0.93 0.64 0.53 0.33 0.45

    2006 Coal 0.10 0.06 0.07 0.05 0.13 0.08 0.08 0.07 0.06 0.10 0.10 0.10Oil 0.47 0.34 0.59 0.10 0.59 0.50 0.50 0.59 0.18 0.48 0.44 0.35Gas 0.48 0.37 0.26 0.10 0.55 0.26 0.26 0.26 0.06 0.31 0.21 0.30Electricity 1.40 0.66 1.18 0.53 0.76 0.83 0.83 1.18 0.80 0.66 0.71 0.55

    2020 Coal 0.14 0.10 0.11 0.09 0.17 0.12 0.12 0.11 0.10 0.14 0.14 0.14Oil 0.63 0.50 0.74 0.26 0.75 0.65 0.65 0.74 0.33 0.64 0.60 0.50Gas 0.81 0.58 0.47 0.31 0.76 0.47 0.47 0.47 0.27 0.48 0.38 0.47Electricity 1.63 0.77 1.19 0.85 0.81 1.05 1.03 1.03 1.42 1.03 0.75 0.71

    Electricity plants 2000 Coal 0.05 0.04 0.03 0.03 0.08 0.05 0.05 0.03 0.05 0.05 0.05 0.03Oil 0.19 0.15 0.29 0.05 0.30 0.24 0.24 0.29 0.08 0.21 0.27 0.13Gas 0.19 0.18 0.13 0.05 0.33 0.13 0.13 0.13 0.04 0.15 0.07 0.15

    2006 Coal 0.10 0.06 0.05 0.04 0.08 0.07 0.07 0.05 0.07 0.07 0.07 0.04Oil 0.44 0.34 0.59 0.10 0.64 0.51 0.51 0.59 0.18 0.48 0.60 0.28Gas 0.28 0.37 0.26 0.10 0.53 0.26 0.26 0.26 0.08 0.31 0.13 0.31

    2020 Coal 0.14 0.10 0.09 0.08 0.12 0.11 0.11 0.09 0.11 0.11 0.11 0.08Oil 0.60 0.50 0.74 0.26 0.80 0.67 0.67 0.74 0.33 0.64 0.76 0.44Gas 0.61 0.58 0.47 0.31 0.74 0.47 0.47 0.47 0.29 0.48 0.30 0.48

    Residential 2000 Coal 0.20 0.07 0.14 0.14 0.20 0.14 0.14 0.14 0.14 0.20 0.20 0.20Oil 0.53 0.28 0.28 0.04 0.70 0.46 0.46 0.28 0.24 0.47 0.47 0.30Gas 1.44 0.44 0.28 0.02 0.50 0.28 0.28 0.28 0.13 0.37 0.40 0.22Electricity 2.49 0.94 0.38 0.29 0.97 0.70 0.70 0.38 0.56 0.73 0.70 0.62

    2006 Coal 0.28 0.11 0.19 0.19 0.28 0.19 0.19 0.19 0.19 0.28 0.28 0.28Oil 0.83 0.52 0.52 0.08 1.39 0.91 0.91 0.52 0.51 0.88 0.88 0.84Gas 1.38 0.43 0.49 0.03 0.71 0.49 0.49 0.49 0.22 0.66 0.86 0.54Electricity 2.20 0.89 0.46 0.35 1.14 0.84 0.84 0.46 0.67 0.89 1.54 0.73

    2020 Coal 0.32 0.15 0.23 0.23 0.32 0.23 0.23 0.23 0.23 0.32 0.32 0.32Oil 0.98 0.67 0.67 0.24 1.54 1.07 1.07 0.67 0.67 1.04 1.04 1.00Gas 1.70 0.64 0.70 0.24 0.92 0.70 0.70 0.70 0.44 0.83 1.04 0.71Electricity 2.43 1.01 0.48 0.66 1.20 1.06 1.04 0.32 1.29 1.25 1.58 0.89

    Transportation 2000 Oil 1.15 0.38 0.84 0.15 1.54 0.48 0.48 0.84 0.18 0.61 0.64 0.592006 Oil 1.42 0.67 1.22 0.59 2.19 0.94 0.94 1.22 0.25 1.12 1.32 1.032020 Oil 1.57 0.83 1.38 0.75 2.35 1.10 1.10 1.38 0.40 1.28 1.48 1.19

    USA XE15 XE10 RUS MEX ARG BRA XLM ZAF XAF XRWIndustry 2000 Coal 0.05 0.07 0.06 0.06 0.07 0.07 0.07 0.07 0.02 0.02 0.07

    Oil 0.17 0.18 0.12 0.11 0.17 0.17 0.17 0.17 0.21 0.21 0.17Gas 0.19 0.18 0.15 0.03 0.13 0.13 0.13 0.13 0.26 0.26 0.33Electricity 0.53 0.42 0.43 0.15 0.59 0.59 0.59 0.59 0.20 0.20 0.71

    2006 Coal 0.09 0.10 0.11 0.11 0.10 0.10 0.10 0.10 0.04 0.04 0.10Oil 0.35 0.37 0.31 0.24 0.35 0.35 0.35 0.35 0.48 0.48 0.36Gas 0.33 0.36 0.33 0.07 0.25 0.25 0.25 0.25 0.36 0.36 0.46Electricity 0.70 0.59 0.85 0.28 1.15 1.15 1.15 1.15 0.25 0.25 0.66

    2020 Coal 0.13 0.14 0.15 0.15 0.14 0.14 0.14 0.14 0.08 0.08 0.14Oil 0.50 0.53 0.47 0.40 0.51 0.51 0.51 0.51 0.64 0.64 0.52Gas 0.51 0.58 0.54 0.28 0.42 0.42 0.42 0.42 0.57 0.57 0.67Electricity 0.86 0.79 1.29 0.51 1.46 1.27 1.54 1.16 0.42 0.42 0.91

    Electricity plants 2000 Coal 0.05 0.06 0.06 0.06 0.07 0.07 0.07 0.07 0.01 0.01 0.05Oil 0.18 0.18 0.12 0.11 0.17 0.17 0.17 0.17 0.21 0.21 0.17Gas 0.19 0.18 0.15 0.03 0.13 0.13 0.13 0.13 0.26 0.26 0.27

    2006 Coal 0.06 0.09 0.10 0.10 0.09 0.09 0.09 0.09 0.02 0.02 0.07Oil 0.34 0.39 0.31 0.26 0.35 0.35 0.35 0.35 0.48 0.48 0.37Gas 0.31 0.36 0.30 0.07 0.25 0.25 0.25 0.25 0.54 0.54 0.39

    2020 Coal 0.10 0.13 0.14 0.14 0.13 0.13 0.13 0.13 0.06 0.06 0.11Oil 0.49 0.55 0.47 0.42 0.51 0.51 0.51 0.51 0.64 0.64 0.53Gas 0.48 0.58 0.52 0.28 0.42 0.42 0.42 0.42 0.75 0.75 0.60

    Residential 2000 Coal 0.20 0.20 0.15 0.15 0.20 0.20 0.20 0.20 0.02 0.02 0.03Oil 0.40 0.50 0.45 0.24 0.47 0.47 0.47 0.47 0.24 0.24 0.24Gas 0.36 0.39 0.27 0.01 0.20 0.28 0.28 0.28 0.57 0.57 0.44Electricity 0.95 1.18 0.76 0.31 0.79 0.79 0.79 0.79 0.46 0.46 0.94

    2006 Coal 0.28 0.28 0.26 0.26 0.28 0.28 0.28 0.28 0.03 0.03 0.05Oil 0.72 0.95 1.01 0.51 0.88 0.88 0.88 0.88 0.45 0.45 0.51Gas 0.59 0.79 0.62 0.02 0.35 0.46 0.46 0.46 0.68 0.68 0.43Electricity 1.21 1.67 1.54 0.42 1.17 1.17 1.17 1.17 0.69 0.69 0.89

    2020 Coal 0.32 0.32 0.30 0.30 0.32 0.32 0.32 0.32 0.07 0.07 0.09Oil 0.88 1.11 1.16 0.67 1.04 1.04 1.04 1.04 0.61 0.61 0.67Gas 0.76 1.00 0.83 0.23 0.52 0.63 0.63 0.63 0.89 0.89 0.64Electricity 1.36 1.88 1.97 0.65 1.48 1.29 1.56 1.18 0.86 0.86 1.15

    Transportation 2000 Oil 0.47 1.24 0.92 0.30 0.68 1.02 1.02 1.02 0.55 0.55 0.652006 Oil 0.81 1.92 1.64 0.67 0.78 1.44 1.44 1.44 1.12 1.12 0.922020 Oil 0.97 2.08 1.80 0.82 0.94 1.60 1.60 1.60 1.28 1.28 1.07

    Unit: US$/kgoe

  • 18

    2.3. 発電部門

    2.3.1. 概要

    原子力,水力,地熱発電は対策技術として考慮せず,ベースラインで導入された総量を固定して

    分析を行っている.したがって,発電部門における対策とは,従来の火力発電から高効率な火力発

    電への転換や再生可能エネルギーの導入について意味する.

    2.3.2. 推計手法

    2.3.2.1. 化石燃料

    2020 年のベースラインシナリオにおける各国・地域の電源構成は,World Energy Outlook(IEA,

    2007a)における reference シナリオを参考に,本研究では設定している.特に,次に示す 2 ケー

    スを検討している.

    ケース 1:電源構成のセキュリティーを考慮したケース.電源構成の大幅なシフトが起こら

    ないように火力発電に制約を与える.例えば,稼働中の既設の石炭火力や石油火力

    を全て止めてでもガス火力を新設し,ガス火力に完全代替することは許容しない.

    ケース 2:電源構成において費用最小化に基づいて選択されるように計算したケース.費用

    が最小であれば,例えば,稼働中の既設の石炭火力や石油火力を全て止めてでも

    ガス火力を新設し,ガス火力に完全代替することは許容する.

    2.3.2.2. 再生可能エネルギー

    再生可能エネルギーに関する様々な研究機関による報告書を見ると,太陽光,風力,バイオ

    マスの世界のポテンシャルは大きい.ただし,社会的な障壁や技術的な制約,地域別のグリッ

    ドアクセスの問題など,様々な課題もある.したがって,本研究では,全体の発電構成に占め

    る再生可能エネルギーの導入割合の上限値を 20%までとした.

    (1) 太陽光発電

    太陽光発電ポテンシャルの計算は,地理情報システム(GIS:Geographic Information System)

    データを利用して 3 分グリッドセル毎に行った.

    まず,グリッドセル毎の土地被覆分類データ(USGS, 2005)および土地被覆分類別利用可能

    面積率を用いて,グリッドセル面積から太陽電池の設置可能面積を算出した.このとき,太

    陽電池の設置に関する地形の制約として,標高 GLOBE データ(USDOC, 2008)から算出した斜

    度の上限を 60%とした.

    次に,グリッドセルの中心の緯度,経度を用いて,月別時刻別の太陽高度や方位角を算出

    した.日平均水平面日射量のデータ(NASALaRC, 2008)を時刻別に按分することで時刻別の水

    平面日射強度を算出し,受光面の年間日射量が最大となる太陽電池設置傾斜角を求め,月別

    時刻別の最適傾斜面日射強度を算出した.太陽光発電システムは太陽光を追尾しないものを

    想定している.また,このとき,グリッドセルの場所や時間によっては,地形の影響により

    陰ができ日射が得られない可能性があるが,ここで用いている日射量データは空間解像度が

  • 19

    1 度であるため,このような地形の影響は考慮されていない.そこで,標高のデータを用い

    て 8 方位における地形の仰角を計算し,各時刻の太陽高度が太陽の方位の地形仰角を下回り,

    地形の陰となる場合には日射強度を 0 とした.

    最適傾斜角で設置する場合,影が太陽電池パネルの後方にできるため,一定の間隔を空け

    て設置する必要がある.最適傾斜角で設置した太陽電池パネルの各月各時刻における影の長

    さを計算することで,パネルの設置間隔を決定した.この間隔と太陽電池設置可能面積を用

    いて太陽電池による受光可能面積,つまり太陽電池パネルの面積を算出し,日射強度と太陽

    電池モジュールの効率を考慮して,そのグリッドにおける太陽光発電の技術的ポテンシャル

    を算出した.推計方法の概要を図 5 に示す.

    外生変数

    内生変数

    利用可能面積率

    日平均水平面日射量

    太陽高度・太陽方位角

    最適傾斜面日射強度

    土地被覆

    地形による陰の有無

    太陽電池モジュール効率

    標高 緯度・経度

    太陽電池設置可能面積

    太陽光発電技術的ポテンシャル

    時刻別水平面日射強度

    斜度

    図 5 太陽光発電ポテンシャル推計モデルの構造

    (2) 風力発電

    風力発電ポテンシャルについても,GIS データを利用して 3 分グリッドセル毎にポテンシ

    ャルを算出した.定格出力 2 MW,ハブ高さ 80m,ロータ直径 90m,カットイン風速 3.0m/s,

    カットアウト風速 25.0m/s,定格風速 12.0m/s の風車を想定している.

    風車の設置可能な高度の上限を 2000m,斜度の上限を 30%とし,これを超えないグリッド

    セルにおいて,グリッドセルの面積に土地被覆分類別利用可能率を乗じた面積を,風車の設

    置可能面積とした.さらに風車の配置方法を考慮して,その面積に設置可能な風車の基数を

    算出した.

    風速のデータ(NASALaRC, 2005)は,地上 50[m]における平均風速データを用いたので,ま

    ず,ハブ高さ 80[m]における平均風速をウインドシアー指数則に基づいて計算した.このと

    き,指数は一律に 7 と仮定して計算した.この平均風速および Rayleigh 分布を用いて,各風

    速の出現確率を算出し,これと風車の設置基数および風車の出力曲線を用いて,そのグリッ

    ドにおける風力発電の技術的ポテンシャルを算出した.推計方法の概要を図 6 に示す.

  • 20

    外生変数

    内生変数

    利用可能面積率

    地上50m平均風速

    風速分布

    土地被覆

    出力補正・ロス

    標高

    風車設置可能面積

    風力発電技術的ポテンシャル

    ハブ高さ平均風速

    斜度

    風車設置可能基数

    ウインドシアー指数則

    Rayleigh分布

    図 6 風力発電ポテンシャル推計モデルの構造

    (3) バイオマス

    以下の残渣系バイオマスについて利用ポテンシャル量を推計した.本研究では,残渣系バ

    イオマスを 11 種類に分類した: 1)産業用丸太伐採時残渣, 2)黒液, 3)製材残渣, 4)古紙スクラ

    ップ, 5)廃材スクラップ, 6)穀物収穫時残渣, 7)サトウキビ収穫時残渣, 8)バガス, 9)家畜糞, 10)

    生ごみ, 11)人糞.

    6)穀物収穫時残渣と 7)サトウキビ収穫時残渣について輸送用, その他を発電用と想定し,利

    用ポテンシャル量から 2005 年消費量を差し引き将来利用可能量とした

  • 21

    2.4. エネルギーサービス需要

    2.4.1. 産業部門

    2.4.1.1. 鉄鋼部門

    IISI(2006)によれば,世界全体の鉄鋼の生産量に占める貿易量の割合は 2004 年で約 42%にの

    ぼり,鉄鋼生産は国際分業体制にあると言える.つまり,各地域の鉄鋼生産量を推計するには,

    その地域内の需要のみならず,輸出入量を考慮する必要がある.

    鉄鋼の生産量については,国際分業モデルを用いて推計を行った.モデルは価格を媒介にし

    て鉄鋼の国際市場,国内市場が均衡する部分均衡モデルである.鉄鋼国際分業モデルの構造を

    図 7 に示す.

    生産量PRDi,t

    相対輸出価格PEWi,t

    タイムトレンド

    推計式 定義式内生変数 外生変数

    国際価格PWt

    輸出量EXCi,t

    輸入量MCi,t

    輸出割合REXCi,t

    生産者価格PSi,t

    輸入割合RMCi,t

    一人あたりGDPGDPPi,t

    消費量CNSi,t

    人口

    一人あたり消費量CNSPi,t

    国際市場均衡式: EXCi,t = MCi,ti∑

    i∑

    国内市場均衡式i: CNSi,t=PRDi,t-EXCi,t+MCi,t

    輸出価格PEi,t

    国内価格PDi,t

    相対国内価格PDMi,t

    輸入価格PMi,t

    TIME

    ,i tPOP

    i: 地域t: 年

    図 7 鉄鋼国際分業モデルの構造

    鉄鋼消費量は,一人あたり消費量と人口を掛け合わせることにより求める.一人あたり消費

    量は,一人あたり GDP から推計する.生産量は生産者価格に依存する.輸出量は生産量と輸出

    割合(生産量に占める輸出量の割合)を掛け合わせることにより求める.輸出割合は輸出価格と国

    際価格の比(相対輸出価格)に依存するが,輸出価格は国内価格(国内生産者が国内市場で財

    を販売する価格)から輸出補助分を割り引くことにより求める.このことから,輸出量は生産

    量,および国内価格,国際価格に依存する.輸入量は,消費量と輸入割合(消費量に占める輸

  • 22

    入量の割合)を掛け合わせることにより求める.輸入割合は国内価格と輸入価格の比(相対国

    内価格)に依存するが,輸入価格は国際価格に関税分を上乗せすることにより求める.このこ

    とから,輸入量は消費量,および国内価格,国際価格に依存する.

    以上のように,各地域の生産量,輸出量,輸入量は国内価格,国際価格に依存する.ここで,

    国内市場および国際市場の均衡条件式を課すことにより,各地域の生産,輸出量,輸入量が同

    時に決定される.推計式で用いた記号を表に示す.

    表 10 使用した記号

    記号 名前 記号 名前サフィックス i 地域 外生変数 輸入関税率

    t 年 内生変数 CNS i,t 消費量パラメータ cnspa i 回帰係数 CNSP i,t 一人あたり消費量

    cnspb i 回帰係数 EXC i,t 輸出量cnspc 回帰係数 MC i,t 輸入量prda i 回帰係数 PD i,t 国内価格prdb 回帰係数 PDM i,t 相対国内価格prdc 回帰係数 PE i,t 輸出価格rexca i 回帰係数 PEW i,t 相対輸出価格rexcb 回帰係数 PM i,t 輸入価格rmca i 回帰係数 PRD i,t 生産量rmcb 回帰係数 PS i,t 生産者価格

    外生変数 一人あたりGDP PW t 国際価格人口 REXC i,t 輸出割合タイムトレンド変数 RMC i,t 輸入割合輸出補助金率

    ,i tGDPP,i tPOP

    ,i tXPM

    TIME,i tXPE

    (1) 一人あたり消費量

    一人あたり消費量 CNSPi,tは一人あたり GDP ,i tGDPP を説明変数として定式化した.具体的

    には,一人あたり消費量の自然対数が一人あたり GDP に対し S 字型の増加関数となると想

    定し,ロジスティック関数により定式化を行った.

    ( ){ }, ,ln( )

    1 expi

    i ti t i

    cnspaCNSP

    cnspc GDPP cnspb=

    + − ⋅ − (2.9)

    (2) 消費量

    消費量は,一人あたり消費量 CNSPi,tに人口 ,i tPOP を掛け合わせることにより求めた.

    ,, , i ti t i tCNS CNSP POP= ⋅ (2.10)

    (3) 生産量

    生産量 PRDi,t は生産者価格 PSi,t に応じて変化するとした.また,生産技術の経時的な進歩

    を表現するためタイムトレンド変数TIME を導入し,定式化を行った.

  • 23

    , ,ln( ) ln( )i t i i tPRD prda prdb TIME prdc PS= + ⋅ + ⋅ (2.11)

    (4) 輸出量

    輸出量 EXCi,tは,生産量 PRDi,tに輸出割合 REXCi,tを掛けることにより求めた. , , ,i t i t i tEXC PRD REXC= ⋅ (2.12)

    (5) 輸出割合

    当該地域の輸出価格 PEi,t が,国際価格 PWtより相対的に安ければ,当該地域の財が他地域

    の財に比べ相対的に優位となるため輸出割合 REXCi,t は増加する.逆に輸出価格が高ければ,

    輸出割合は減少する.このような考え方に基づき,輸出割合は,相対輸出価格 PEWi,t の関数

    として定式化した.ここで相対輸出価格とは,当該地域の輸出価格と国際価格との比である.

    関数形としてはロジット型の関数を用いた.

    ,,

    ,

    ln1

    i ti i t

    i t

    REXCrexca rexcb PEW

    REXC⎛ ⎞

    = + ⋅⎜ ⎟⎜ ⎟−⎝ ⎠ (2.13)

    (6) 輸入量

    輸入量 MCi,tは,消費量 CNSi,tに輸入割合 RMCi,tを掛けることにより求めた.

    , , ,i t i t i tMC CNS RMC= ⋅ (2.14)

    (7) 輸入割合

    消費者が国内財を購入するか,輸入財を購入するかは国内財の価格と輸入財の価格バラン

    スによって決まる(価格バランス以外の要因として財の質の違いが考えられるが,本研究では,

    短期的には質の異なる財間での代替は行われないが,長期的将来には技術的対応も可能であ

    ると考え,財の質の違いを考慮しなかった.).例えば,国内財の価格 PDi,t が輸入財の価格

    PMi,tに比べ相対的に高ければ,輸入財が購入される割合が高くなる.このような考え方から,

    輸入割合 RMCi,tは,相対国内価格 PDMi,tを説明変数としたロジット型の関数により定式化し

    た.ここで相対国内価格とは,国内価格と輸入価格の比である.

    ,,

    ,

    ln1

    i ti i t

    i t

    RMCrmca rmcb PDM

    RMC⎛ ⎞

    = + ⋅⎜ ⎟⎜ ⎟−⎝ ⎠ (2.15)

    (8) 相対輸出価格

    相対輸出価格 PEWi,tは,輸出価格 PEtを国際価格 PWtで除したものと定義した.

    ,,

    i ti t

    t

    PEPEW

    PW= (2.16)

    (9) 相対国内価格

    相対国内価格 PDMi,tは,国内価格 PDt を輸入価格 PMi,tで除したものと定義した.

    ,,

    ,

    i ti t

    i t

    PDPDM

    PM= (2.17)

  • 24

    (10) 輸出価格

    輸出価格 PEi,t は,国内価格 PDi,t(国内生産者が国内市場で販売する価格)から輸出補助分

    を割り引くことにより求めた.ここで ,i tXPE は輸出補助金率を表す.

    ,, , (1 )i ti t i tPE PD XPE= ⋅ − (2.18)

    (11) 輸入価格

    輸入価格 PMi,tは,国際価格 PWtに関税分を上乗せすることにより求めた.ここで ,i tXPM は

    輸入関税率を表す.

    ,, (1 )i ti t tPM PW XPM= ⋅ + (2.19)

    (12) 生産者価格

    生産者価格 PSi,tは,当該地域の生産者が国内向けに販売した価格 PDi,tと輸出した価格 PEi,tの加重平均により求めた.

    ( ), , , , ,,

    ,

    i t i t i t i t i ti t

    i t

    PD PRD EXC PE EXCPS

    PRD⋅ − + ⋅

    = (2.20)

    (13) 国内市場均衡

    国内市場は,生産量に輸入量を加え,輸出量を引いたものが消費量と等しくなる点におい

    て国内市場は均衡するとした.

    , , , ,i t i t i t i tCNS PRD MC EXC= + − (2.21)

    (14) 国際市場均衡

    国際市場は,各地域の輸出量の総和が各地域の輸入量の総和と等しくなる点で均衡すると

    した.

    , ,i t i ti i

    EXC MC=∑ ∑ (2.22)

    2.4.1.2. セメント部門

    セメントの生産量は国内需要量に依存すると想定してモデルを構築した.モデルでは,まず

    一人あたり GDP をインプットとし,一人あたり生産量を推計する.その後一人あたり生産量に

    人口を掛け合わせることにより生産量を推計した.セメント生産量推計モデルの構造を図 8 示

    す.また,推計式で用いた記号を表 11 に示す.

  • 25

    生産量PRDi, t

    一人あたり生産量PRDPi,t

    人口

    推計式

    定義式

    内生変数

    外生変数

    一人あたりGDP

    i: 地域t: 年

    ,i tGDPP

    ,i tPOP

    図 8 セメント生産量推計モデルの構造

    表 11 使用した記号

    記号 名前サフィックス i 地域

    t 年パラメータ prdpa i 係数

    prdpb i 係数prdpc i 係数

    外生変数 一人あたりGDP人口

    内生変数 PRD i,t 生産量PRDP i,t 一人あたり生産量

    ,i tGDPP,i tPOP

    (1) 一人あたり生産量

    一人あたり生産量 PRDPi,tは一人あたり GDP ,i tGDPP を説明変数として定式化した.

    具体的には,一人あたり生産量の自然対数が一人あたり GDP の自然対数に対し S 字型の

    増加関数となると想定し,ロジスティック関数により定式化を行った.

    ( )( ){ }, ,

    ln( )1 exp ln

    ii t

    i t i

    prdpaPRDPprdpc GDPP prdpb

    =+ − ⋅ −

    (2.23)

    (2) 生産量

    生産量 PRDi,t は一人あたり生産量 PRDPi,t に人口 ,i tPOP を掛け合わせることにより求めた.

    ,, , i ti t i tPRD PRDP POP= ⋅ (2.24)

    2.4.1.3. その他産業

    その他産業については具体的な単一製品の生産量によってサービス需要量を表すことができ

    ない.そのため,その他産業のサービス需要量を表す代表的指標として第 2 次産業付加価値額

    を用い,第 2 次産業付加価値額の伸び率を,その他産業のサービス需要量の伸び率と設定した.

    なお,第 2 次産業付加価値額は社会・経済マクロフレームモデルにより推計される.

  • 26

    2.4.2. 運輸部門

    2.4.2.1. 旅客輸送量推計モデル

    旅客輸送量推計モデルでは乗用車,バス,鉄道,国内航空,国際航空の輸送量を推計する.

    輸送量の単位には百万人キロを用いた.図 9 に旅客輸送量推計モデルの構造を示す.

    輸送量PKTOTi, t

    一人あたり輸送量PKTOTPi, t

    人口

    一人あたりGDP

    機関別輸送量PKm, i, t

    機関分担率SHm, i, t

    内生変数外生変数 推計式定義式i: 地域t: 年m: 輸送機関

    ,i tPOP

    ,i tGDPP

    図 9 旅客輸送量推計モデルの構造

    まず,一人あたり GDP を説明変数として一人あたり輸送量を推計する.次に,一人あたり輸

    送量に人口を掛け合わせることにより輸送量を推計する.一方で,一人あたり GDP から機関分

    担率を推計し,最後に,輸送量と機関分担率を掛け合わせることにより機関別輸送量を推計す

    る.推計に使用した記号を表に示す.

    表 12 使用した記号

    記号 名前サフィックス i 地域

    t 年

    m輸送機関{PC: 乗用車, BS: バス, RLPS: 旅客鉄道,ARDM: 国内航空, ARIT: 国際航空}

    パラメータ pka i 回帰係数pkb i 回帰係数pkc 回帰係数sha m,i 係数shb m 係数shc m,i 回帰係数shd m 回帰係数

    外生変数 一人あたりGDP人口

    内生変数 PK m,i,t 機関別旅客輸送量PKTOT i,t 旅客輸送量PKTOTP i,t 一人あたり旅客輸送量LG m,i,t ロジットモデルの従属変数SH m,i,t 機関分担率

    ,i tGDPP,i tPOP

  • 27

    (1) 一人あたり輸送量

    一人あたり輸送量 PKTOTP は,一人あたり GDP ,i tGDPP を説明変数として定式化した.

    式型としてはロジスティック曲線を採用し,一人あたり総旅客輸送量が一人あたり GDP に

    対し S 字型の増加曲線となることを想定している.

    ( ){ }, ,1 expi

    i ti t i

    pkaPKTOTP

    pkc GDPP pkb=

    + − ⋅ − (2.25)

    (2) 輸送量

    輸送量 PKTOTi,tは,一人あたり輸送量 PKTOTPi,t に人口 ,i tPOP を掛け合わせることにより求

    める.

    ,, , i ti t i tPKTOT PKTOTP POP= ⋅ (2.26)

    (3) 機関分担率

    各機関の分担率 SHm,i,t は,多項ロジットモデルにより定式化を行った.説明変数には一人

    あたり GDP ,i tGDPP の自然対数を用いた.

    ( ){ }( ){ }

    ,,

    , ,,', '

    '

    exp ln

    exp ln

    i tm i m

    m i ti tm i m

    m

    sha shb GDPSH

    sha shb GDP

    + ⋅=

    + ⋅∑ (2.27)

    (4) 機関別輸送量

    各機関の輸送量 PKm,i,t は,輸送量 PKTOTi,t に機関分担率 SHm,i,t を掛け合わせることにより

    求める.

    , , , , ,m i t i t m i tPK PKTOT SH= ⋅ (2.28)

    2.4.2.2. 貨物輸送量

    本研究では貨物輸送量推計モデルを構築し,将来の貨物輸送量を推計した.貨物輸送量推計

    モデルでは,貨物輸送を陸上輸送と船舶輸送に分けた.

    陸上輸送モデルでは,トラック,鉄道の輸送量を推計する.輸送量の単位には,百万トンキ

    ロを用いた.まず,一人あたり GDP を説明変数として一人あたり輸送量を推計する.次に,一

    人あたり輸送量に人口を掛け合わせることにより輸送量を推計する.一方で,一人あたり GDP

    から機関分担率を推計し,最後に輸送量と機関別分担率を掛け合わせることにより機関別の輸

    送量を推計する.

    船舶に関しては,全世界を対象とした精度ある輸送量データが存在しない.そこで輸送量の

    代替指標としてエネルギー消費量を用いることとした.ただし,ここで推計する将来のエネル

    ギー消費量は,消費されるエネルギーの量ではなく,あくまで輸送量の規模を表す指標である

    ことに留意が必要である.ここで推計する将来のエネルギー消費量は,具体的には,輸送トン

  • 28

    キロあたりのエネルギー消費が将来変化しなかったと仮定した場合のエネルギー消費量である.

    本項では,輸送量の代替的指標としてのエネルギー消費量を,国内船舶,国際船舶別に推計す

    る.エネルギー消費量の単位には 1000toe を使用した.推計には GDP を説明変数として使用す

    る.貨物輸送量推計モデルの構造を図 10 に示す.また,推計で用いた記号を表に示す.

    輸送量TKTOTi, t

    一人あたり輸送量TKTOTPi, t

    人口

    一人あたりGDP

    機関別輸送量TKmld, i, t

    機関分担率SHmld, i, t

    内生変数外生変数 推計式定義式

    i: 地域t: 年mld: 陸上輸送機関mnv: 船舶

    GDP

    機関別輸送量TKmnv, i, t

    陸上輸送 船舶輸送

    ,i tPOP

    ,i tGDPP ,i tGDP

    図 10 貨物輸送量推計モデルの構造

    表 13 使用した記号

    記号 名前サフィックス i 地域

    t 年

    m輸送機関{TC: トラック, RLFR: 貨物鉄道, NVDM: 内航船舶, NVIT: 国際船舶 }

    mld 陸上輸送機関{TC: トラック, RLFR: 貨物鉄道 }

    mnv 船舶{NVDM: 内航船舶, NVIT: 国際船舶 }

    パラメータ tka i 回帰係数tkb i 回帰係数tkc 回帰係数sha m,i 係数shb m 係数shc m,i 回帰係数shd m 回帰係数tknva m,i 係数tknvb m,i 係数

    外生変数 GDP一人あたりGDP人口

    内生変数 LG m,i,t ロジットモデルの従属変数SH m,i,t 機関分担率TK m,i,t 機関別輸送量TKTOT i,t 貨物輸送量TKTOTP i,t 一人あたり貨物輸送量

    ,i tGDPP,i tPOP

    ,i tGDP

  • 29

    (1) 陸上輸送:一人あたり輸送量

    一人あたり輸送量 TKTOTPi,tは,一人あたり GDP ,i tGDPP を説明変数として定式化した.式

    型としてはロジスティック曲線を採用し,一人あたり貨物輸送量が一人あたり GDP に対し S

    字型の増加曲線となることを想定している.

    ( ){ }, ,1 expi

    i ti t i

    tkaTKTOTP

    tkc GDPP tkb=

    + − ⋅ − (2.29)

    (2) 陸上輸送:輸送量

    輸送量 TKTOTi,tは,一人あたり輸送量 TKTOTPi,tに人口 ,i tPOP を掛け合わせることにより求

    める.

    ,, , i ti t i tTKTOT TKTOTP POP= ⋅ (2.30)

    (3) 陸上輸送:機関分担率

    各機関の分担率 SHmld,i,tは,ロジットモデルにより定式化を行った.説明変数には一人あた

    り GDP ,i tGDPP の自然対数を用いた.

    ( ){ }( ){ }

    ,,

    , ,,', '

    '

    exp ln

    exp ln

    i tmld i mld

    i mld ti tmld i mld

    mld

    sha shb GDPPSH

    sha shb GDPP

    + ⋅=

    + ⋅∑ (2.31)

    (4) 機関別輸送量

    各機関の輸送量 TKmld,i,tは,輸送量 TKTOTi,tに機関分担率 SHmld,i,tを掛け合わせることにより

    求める. , , , , ,mld i t i t mld i tTK TKTOT SH= ⋅ (2.32)

    (5) 船舶輸送:機関別輸送量

    船舶輸送に関しては,輸送量 TKmnv,i,t の GDP に対する弾力性が一定であるとして定式化を

    行った.

    ,,, , ,mnv itknvb

    i tmnv i t mnv iTK tknva GDP= ⋅ (2.33)

  • 30

    2.4.3. 民生部門

    民生部門では,エネルギーサービス需要を満たすために,地域の発展状況により様々な種類の

    エネルギーを消費する.未発展な地域では,サービスの多くはバイオマスを利用して賄われるが,

    発展していくにつれ,化石燃料の直接利用が進み,次にガスや電気などが導入されていく.さら

    に発展すると再生可能エネルギーの利用が導入される.今後アジアを中心に,発展途上国では人

    口の増加,経済の発展に伴うサービス需要量そのものが増加し,またサービスを賄うエネルギー

    種の変化が起きることが予想される.本手法では,比較的簡易に民生部門におけるエネルギーサ

    ービス需要量を推計する手法を提案する.

    2.4.3.1. 対象

    地域:AIM/Enduse[global] 23 地域

    部門:民生家庭部門,民生業務部門

    サービス種:暖房,冷房,給湯,調理,照明,冷蔵庫,テレビ,その他

    ただし民生業務部門では「テレビ」はその他に含める

    エネルギー種:古典的バイオマス,石炭,灯油,LPG,天然ガス,電気,熱,太陽光+太陽熱,

    地熱

    2.4.3.2. 推計手法

    初めに,サービスについて定義を行う.エネルギーサービス需要量は,エネルギー消費量をエ

    ネルギー機器の効率で除したものであると定義する.過去のエネルギーサービス需要量を推計す

    るには,過去のエネルギー消費機器のデータが必要になるが,長期間にわたり把握することは困

    難であるので,本研究では,エネルギー消費量を利用して,将来のサービス量の推計を行う.推

    計の手順を図 11 に示す.

  • 31

    図 11 民生部門のエネルギーサービス需要量の推計手法

    (1) 将来のエネルギー消費量の推計

    過去のエネルギー消費量をもとに,将来のエネルギー消費量の伸びを推計する(過去のエ

    ネルギー消費量の伸びにはサービス量の伸びと,機器効率変化の効果が両方含まれている)

    (2) エネルギー種別,サービス種別エネルギー消費量の設定

    将来のエネルギー消費量をエネルギー種,サービス種別に分ける.分配のための割合の情報

    を複数の報告書から設定する.

    (3) サービス需要量の推計

    (2)で算出した現状から将来までのサービス種別エネルギー消費量の伸びを,サービス需要

    量の伸びと読み替えて,将来サービス需要量を推計する((1)に既述の通り,エネルギー消費

    量の伸びには,サービス需要量の伸びと機器効率変化の効果とが含まれており,本来であれ

    ば機器効率変化を考慮した上でサービス量を算出することが望ましい.しかし,機器効率の

    変化を地域ごとにきめ細かく調査・設定することは困難を極めるため,上述の方法で簡易的

    にサービス需要量を推計することとした).

    2.4.3.3. データ設定

    (1) 過去のエネルギー消費量の設定

    過去(1971-2005年)のエネルギー消費量は IEA(2007c, 2007d)のResidential(家庭部門),Service

    (業務部門)の総エネルギー消費量から設定した.

    エネルギーバランス表では,家庭部門や業務部門が含まれる Other sector の中に

    Non-specified を含む.これは,Other sector における家庭部門,業務部門,Agriculture(農業部

    門)に含まれないエネルギー消費量,または,いずれかに含まれるが,どこで使用されたか

  • 32

    明確でないものを含む.これらについては,OECD Development centre(1998)で示されている

    手法に則って各部門に振り分けた.

    最新のエネルギーバランス表では Fishery(漁業部門)が含まれるが,まだ一部の国のみし

    か報告されていないうえ,報告されているデータに関してもデータの信頼性は低いと思われ

    るため,本研究では,漁業部門について報告値のあるものは農業部門に含め,3 部門(家庭

    部門,業務部門,漁業部門)にエネルギーを振り分けた.

    (2) 過去のエネルギー消費量から将来のエネルギー消費量の伸びを推計

    1971 年から 2005 年のエネルギー消費量を,説明変数として一人あたり消費支出(家庭部

    門),もしくは一人あたり第三次産業 GDP(業務部門)を用いて推計した.推計式には,a)一

    人あたりエネルギー消費量(被説明変数)を説明変数で回帰,b)被説明変数および説明変数

    の対数値を回帰,から選択した.

    (3) 将来のサービス種別サービス需要量の伸びの設定

    a) 基準年のサービス種別エネルギー消費量データ

    基準年(2005 年)のエネルギー種別エネルギー消費量データの作成については,2.4.3.3.(1)で

    説明した手法をエネルギー種別に行ったものなので,内容の詳細は省略する.このエネルギ

    ー種別エネルギー消費量データにエネルギー種別サービス種別エネルギー消費量割合の係数

    を乗じて,基準年のエネルギー種別サービス種別エネルギー消費量を作成した.この基準年

    のエネルギー種別サービス種別エネルギー消費量割合の係数は表 14 に示すデータから作成

    した.ここで作成した,エネルギー種別サービス種別エネルギー消費量をサービス種別にま

    とめたものが基準年のサービス種別エネルギー消費量である.

    表 14 エネルギー種別サービス種別エネルギー消費量割合の係数の参照データ

    本研究 データソース

    日本 EDMC 家庭用用途別エネルギー種別マトリクス(EDMC, 2006)

    中国 中国の住宅におけるエネルギー消費と居住環境問題特別委員会 報告書(2005)

    アメリカ Residential Energy consumption survey (EIA, 2001)

    カナダ Energy use data handbook tables (Natural Resource Canada, 2006)

    オーストラリア Australian residential building sector for greenhouse gas emissions 1990-2010(Australian

    greenhouse office, 1999)

    上記以外の国 SAGE(USDOE, 2003)

    b) 将来のサービス種別エネルギー消費量割合の設定

    複数の報告書により将来のエネルギー消費やサービス需要に関する情報が得られる.将来

    のサービス需要量の伸びについては SAGE(USDOE, 2003),将来のエネルギー種別エネルギー

    消費量については IEA(2006)を参考にし,将来のサービス需要量を設定した.SAGE(USDOE,

  • 33

    2003)からは,2005 年から 2020 年の地域別サービス種別の伸び,IEA(2006)では,Residential,

    services, and agriculture 部門の地域別エネルギー種別エネルギー消費量の伸びを参考データと

    した.

    c) 将来のサービス需要量の推計

    2.4.3.3. (3) b)で設定した割合と 2.4.3.3. (2) で推計したエネルギー消費量の伸びを乗じて,将

    来のサービス種別エネルギー消費量を推計した.これを 2.4.3.3. (3) a)で作成した基準年のデ

    ータと比較し,その伸び率を将来のサービス種別サービス需要量の伸びと読み替えた.

  • 34

    2.4.4. 農業部門

    農業部門で対象とした排出源および対象ガスを表に示す.家畜糞尿管理・家畜反芻のサービ

    ス量は畜産物の生産量である.将来における畜産物生産量を推計には,農業国際分業モデルを

    用いた.農業国際分業モデルは,人口や GDP 等のマクロ経済社会指標に基づき,世界 23 地域

    の地域ごとに農畜産物 34 品目の食料需給量を予測するモデルである.モデルの骨格は,米国農

    務省が開発した農業貿易・政策の価格均衡モデルである PEATSIM(Abler, 2007)をベースにした.

    PEATSIM では将来の人口増加や所得増加による食料需要への影響を考慮していないので,本研

    究ではそれらの影響も考慮できるように修正を行った.

    表 15 排出源および対象ガス 排出源 サービス量 対象ガス

    乳牛・肉牛 バッファロー羊 山羊ラクダ 馬ラバ ロバ豚 鶏アヒル 七面鳥

    米 小麦トウモロコシ その他粗粒穀物ダイズ 油糧作物(6種)搾糖作物 綿作物

    稲作 CH4*農耕地土壌のN2Oは稲作由来のN2Oを含む.

    対象家畜 (13種)

    対象作物 (13種)

    家畜反芻・糞尿管理

    農耕地土壌

    農作物生産量

    畜産物生産量

    反芻:CH4糞尿:CH4/N2O

    N2O*

    モデルの全体像を図 12 に示す.国内および国際間における需給は価格によって国際市場の需

    給調整が行われる.価格を介して,各国・地域の品目別の需要・供給のバランスが決まり,各

    地域の需給ギャップを純貿易量として国際市場で精算し,世界全体の需給バランスをとるよう

    に国際価格が決定される.さらに,国際価格が各国・地域内の価格を動かし,その価格で再び

    次期の需給が決まるという,逐次的に計算される仕組みになっている.地域別人口,GDP を入

    力値とし,各地域における農畜産物の生産量を出力として得る.

    本モデルは地域別品目別に,生産量,需要量,在庫,輸出入量のほか,貿易価格,国内中間

    価格,生産者価格,需要者価格,輸入制限に関する方程式を含む連立方程式体系である.多く

    はパラメータを固定した行動方程式である.なお,各方程式は基準年において実績値

    (FAOSTAT,2005)と合うように調整を行った.モデル上では各品目は同質の単一商品として扱い,

    品質の差は考慮しない.また,貿易の相手国を特定せず,世界全体で品目毎に需給が均衡する.

  • 35

    国際価格

    運送費用 生産者保護

    生産者保護消費者保護 国内中間価格

    生産者価格人口 需要者価格GDP

    需要量

    在庫

    世界23地域

    外生変数 内生変数

    PQ0

    国際市場

    PQ0

    国内市場

    純貿易量

    畜産物

    生産量

    農作物

    生産量

    図 12 農業国際分業モデルの全体像

    農業国際分業モデルでは,生産量は収穫面積と農作物生産性の積として表され,収穫面積の

    推計結果は,FAO(2002),Rosegrant et al. (2001,2002)の結果と類似した.農業国際分業モデルで

    対象としていない農作物の面積については,FAOSTAT(2005)の国別土地利用データの農耕地

    (Arab&Perm Cropland)面積のデータを用いて,農業国際分業モデルでカバーしている農耕地面積

    とそれ以外の面積の比率を求め,これを将来に渡って一定と仮定し調整した.

    推計の際に用いたデータの参照先を表に示す.基準年における農畜産物の生産性や生産量,

    消費量,在庫,貿易量のデータは FAOSTAT(2005)のデータを用いた.生産関数や需要関数で用

    いたパラメータや変数はFAO(1998)のWorld Food Model,IFPRIの IMPACT Model (Rosegrant et al,

    2002)などを参照し設定した.

    表 16 用いた統計データ

    参照先

    農畜産物データ FAOSTAT(2005, 2007)窒素肥料投入量 IFA/FAO/IFDC(1999,2002)関税 AMAD(2002)価格弾性値 European Simulation Model (Josling et al. , 1998)

    Baseline Projections Model (USDA/ERS, 2003)FAPSIM (Salathe et al. , 1982, Westcott and Price, 2001)AGLINK Model-OECD (Conforti et al. , 2001)WFM(FAO,1998)POLYSYS-ERS Model (Lin et al. , 2000)IMPACT Model (Rosegrant, 2002)SWOPSIM(Sullivian, 1992)

    所得弾性値 IFPSIM(Oga, 1995)

    項目

    農業国際分業モデルでカバーしていないバッファロー,羊,ヤギは FAO(2002)の成長率を用

    い,ラクダ,ウマ,ラバ,ロバは成長率を「0」と仮定して将来の頭数を算出した.

  • 36

    2.4.5. 廃棄物処理部門

    一般廃棄物処理からの GHG 排出のドライビングフォースは一般廃棄物発生量である.一般

    廃棄物発生量は,一人当たりの廃棄物発生量と廃棄物回収対象人口を乗じて算出した.将来

    における一人当たりの廃棄物発生量は,一人当たりの廃棄物発生量と一人当たりの GDP との

    関係式を用いて算出した.その関係式のパラメータは実績値から推定した.実績値として,

    1996年における世界 23カ国分,2000年における世界 69カ国分 (IPCC,2006),�